以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る装具、装具の製造方法、情報処理装置、情報処理方法、システム、及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
以下の実施形態では、装具の一例として医療用のインソールについて説明する。ただし、実施形態はインソールに限定されるものではなく、例えば、手、肘、膝、肩、頭部等、人体の各部位に当てて利用される装具に広く適用可能である。また、実施形態は医療用の装具に限定されるものではなく、例えば、スポーツや日常生活における身体機能の補助や保護のために利用される装具に広く適用可能である。なお、インソールは、中敷き、中底等とも呼ばれる。
図1は、第1の実施形態のインソール100の構造の一例を示す図である。図1の左図には、右足用のインソール100を人体の各部位と直接的または間接的に接触する当接面側から見た平面図を例示する。図1の右図には、左図の側面図を例示する。なお、図1の上側にインソール100のつま先側を示し、図1の下側にインソール100の踵側を示す。
図1に示すように、第1の実施形態のインソール100は、領域R1、領域R2、及び領域R3を有する。領域R1は、インソール100の全体的な外形を構成する領域である。領域R2は、踵骨付近の部位が接する領域である。領域R3は、母指の中足指関節付近の部位が接する領域である。
第1の実施形態に係る領域R1、領域R2、及び領域R3は、互いに異なる単位格子構造により構成される。なお、図1に示したインソール100の構造はあくまで一例であり、例えば、インソール100を構成する各領域の数、位置、大きさ、形状、及び厚みについては、装着する人の使用目的や症状に応じて任意に変更可能である。すなわち、インソール100は、互いに異なる単位格子構造により構成される領域を少なくとも2つ有する。以下、図2及び図3を用いて、単位格子構造について説明する。図2及び図3は、第1の実施形態の単位格子構造について説明するための図である。
図2には、単位格子構造が一単位とする空間形状を例示する。図2に示すように、単位格子構造は、6つの正方形の面により構成される立方体形状の空間を一単位とする。単位格子構造は、頂点に対応する8つの点P1~点P8を有する。
ここで、単位格子構造における線及び面の表記方法について説明する。第1の実施形態では、線及び面を表記する場合、その線又は面を構成する頂点を括弧書きで示す。例えば、「線(P1,P2)」という表記は、点P1と点P2とを結ぶ線を表す。また、「線(P1,P7)」という表記は、点P1と点P7とを結ぶ線(対角線)を表す。また、「面(P1,P2,P3,P4)」という表記は、点P1、点P2、点P3、及び点P4を頂点とする面(底面)を表す。なお、構造柱は、線の表記方法と同様に表記する。
第1の実施形態に係る単位格子構造は、複数の点P1~点P8のうち2点を接続する構造柱を複数備える。つまり、図2の空間形状は、単位格子構造の形状に対応する。構造柱の数及び方向(配置方向)については、例えば、単位格子モデルにより予め規定されている。
図3には、単位格子構造の基本的な骨格形状を示す単位格子モデルを例示する。図3において、破線は、一単位に相当する立方体形状の空間(図2の空間)を示す。また、実線は、構造柱の存在を示す。なお、図3に例示の単位格子モデルは、その配置方向が図3の鉛直下方向に装具にかかる荷重方向と一致するようにインソール100の各領域に配置されるのが好適である。なお、装具にかかる荷重方向とは人体の各部位から受けた荷重が加わる方向である。
図3に示すように、例えば、単位格子モデルは、モデルA、モデルB、モデルC、モデルD、及びモデルEを含む。ここで、モデルA、モデルB、及びモデルCは、立方体形状の空間の中心に構造柱の交差部を有する。また、モデルD及びモデルEは、立方体形状を構成する複数の面のうち少なくとも1つの面の中心に構造柱の交差部を有する。
モデルAは、立方体形状の対角線に沿って配置される4本の構造柱を備える単位格子モデルである。具体的には、モデルAは、構造柱(P1,P7)、構造柱(P2,P8)、構造柱(P3,P5)、及び構造柱(P4,P6)を有する。
モデルBは、モデルAと同様の4本の構造柱に加えて、立方体形状を構成する底面及び上面を囲む複数の辺に沿って配置される8本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルBは、モデルAが有する4本の構造柱を有する。更に、モデルBは、底面(P1,P2,P3,P4)を囲む4本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、及び構造柱(P4,P1)を有する。また、モデルBは、上面(P5,P6,P7,P8)を囲む4本の構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有する。
モデルCは、モデルBと同様の12本の構造柱に加えて、荷重方向に沿って配置される4本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルCは、モデルBが有する12本の構造柱を有する。更に、モデルCは、インソールにかかる荷重方向に沿って配置される4本の構造柱(P1,P5)、構造柱(P2,P6)、構造柱(P3,P7)、及び構造柱(P4,P8)を有する。
つまり、モデルBとモデルCとの差異は、荷重方向に沿って配置される4本の構造柱(P1,P5)、構造柱(P2,P6)、構造柱(P3,P7)、及び構造柱(P4,P8)を有するか否かである。
モデルDは、6つの面それぞれの対角線に沿って配置される12本の構造柱を備える単位格子モデルである。具体的には、モデルDは、底面(P1,P2,P3,P4)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P3)及び構造柱(P2,P4)を有する。また、モデルDは、上面(P5,P6,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P5,P7)及び構造柱(P6,P8)を有する。また、モデルDは、側面(P1,P2,P5,P6)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P6)及び構造柱(P2,P5)を有する。また、モデルDは、側面(P2,P3,P6,P7)の対角線に沿った2本の構造柱(P2,P7)及び構造柱(P3,P6)を有する。また、モデルDは、側面(P3,P4,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P3,P8)及び構造柱(P4,P7)を有する。また、モデルDは、側面(P1,P4,P5,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P8)及び構造柱(P4,P5)を有する。
モデルEは、モデルDと比較して底面及び上面の対角線に沿った構造柱を備えず、底面及び上面を囲む複数の辺に沿って配置される8本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルEは、側面(P1,P2,P5,P6)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P6)及び構造柱(P2,P5)を有する。また、モデルEは、側面(P2,P3,P6,P7)の対角線に沿った2本の構造柱(P2,P7)及び構造柱(P3,P6)を有する。また、モデルEは、側面(P3,P4,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P3,P8)及び構造柱(P4,P7)を有する。また、モデルEは、側面(P1,P4,P5,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P8)及び構造柱(P4,P5)を有する。また、モデルEは、底面(P1,P2,P3,P4)を囲む4本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、及び構造柱(P4,P1)を有する。また、モデルEは、上面(P5,P6,P7,P8)を囲む4本の構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有する。
つまり、モデルD及びモデルEの差異は、底面及び上面に配置された構造柱の有無である。具体的には、底面及び上面の対角線に沿った4本の構造柱(P1,P3)、構造柱(P2,P4)、構造柱(P5,P7)、及び構造柱(P6,P8)を有するのが、モデルDである。また、底面及び上面を囲む8本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、構造柱(P4,P1)、構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有するのが、モデルEである。
なお、図6では、モデルD及びモデルEの構造柱を2種類の太さの実線によって図示したが、これは実際の構造柱の太さを示すものではなく、図示の明瞭化を意図したものである。つまり、太い方の実線は、立方体形状の空間を箱に見立てた場合に、「箱の手前側に見える面」に含まれる構造柱を示す。また、細い方の実線は、立方体形状の空間を箱に見立てた場合に、「箱の奥側に見える面」にのみ含まれる構造柱を示す。なお、「箱の手前側に見える面」とは、上面(P5,P6,P7,P8)、側面(P1,P2,P5,P6)、及び側面(P1,P4,P5,P8)である。また、「箱の奥側に見える面」とは、底面(P1,P2,P3,P4)、側面(P2,P3,P6,P7)、及び側面(P3,P4,P7,P8)である。
このように、領域R1、領域R2、及び領域R3は、互いに異なる単位格子構造により構成される。すなわち、インソール100の各領域は、複数の単位格子構造が繰り返し連続して配列された構造である。具体的には、インソール100の各領域は、複数の単位格子構造が同一平面上に配列された層を少なくとも1つ有し、この層が積層されて構成される。なお、構造柱の断面形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等、任意の形状が適用可能である。
なお、図2及び図3に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図2に示した立方体形状の空間はあくまで一例であり、単位格子構造が一単位とする空間形状は、多角柱形状であっても良い。この場合、単位格子構造は、例えば、三角柱形状、四角柱形状、及び六角柱形状のうちいずれか1つの形状の空間を一単位とすることが好適である。三角柱形状としては正三角柱形状が好適である。また、四角柱形状としては上述した立方体形状以外に直方体形状が好適である。また、六角柱形状としては正六角柱形状が好適である。ただし、装具を構成する各領域R1~領域R3の単位格子構造は、同一の空間形状であるのが好適である。また、構造柱は、多角柱形状又は円柱形状等の柱状である。また、構造柱の短手方向とは、構造柱の軸方向に直交する方向である。
また、図3に示したモデルはあくまで一例であり、単位格子モデルは任意の位置に構造柱を備えていても良い。ただし、単位格子構造は、多角柱形状の空間を構成する全ての頂点をいずれかの構造柱が通るように、複数の構造柱を備えるのが好適である。
また、単位格子構造は、荷重方向に対して交わる方向(斜め方向)に配置された構造柱を有するのが好適である。例えば、モデルA、モデルB、及びモデルCは、立方体形状の対角線に沿った構造柱を有する、また、モデルD及びモデルEは、立方体形状を構成する面の対角線に沿って配置される構造柱を備える。つまり、単位格子構造は、複数の頂点のうち任意の頂点と、その頂点を含む辺上の頂点とは異なる頂点とを接続する構造柱を少なくとも1つ有する。
また、単位格子構造は、立方体形状の空間の中心に構造柱の交差部を有する構造、及び、立方体形状を構成する複数の面のうち少なくとも1つの面の中心に構造柱の交差部を有する構造に限定されるものではない。ただし、単位格子構造は、複数の頂点とは異なる位置で少なくとも2つの構造柱が交差する交差部を有するのが好適である。
また、立方体形状の空間の中心に構造柱の交差部を有する構造の場合には、単位格子構造は、多角柱形状の対角線に沿って配置され、交差部において互いに交差する少なくとも2つの構造柱を有するのが好適である。また、四角柱形状であれば、単位格子構造は、四角柱形状の対角線に沿って配置され、交差部において互いに交差する4つの構造柱を有するのが好適である。
また、立方体形状を構成する複数の面のうち少なくとも1つの面の中心に構造柱の交差部を有する構造の場合には、単位格子構造は、多角柱形状を構成する底面、上面、及び側面のうち少なくとも1つの面の対角線に沿って配置され、交差部において互いに交差する少なくとも2つの構造柱を有するのが好適である。
また、単位格子構造は、多角柱形状を構成する底面及び上面のうち少なくとも一方の面を囲む複数の辺に沿ってそれぞれ配置される複数の構造柱を有するのが好適である。また、単位格子構造は、インソール(装具)にかかる荷重方向に沿って配置されるのが好適である。
図1の説明に戻る。インソール100において、領域R1の単位格子構造、領域R2の単位格子構造、及び領域R3の単位格子構造は、物性を規定する形状パラメータが互いに異なる。形状パラメータは、例えば、単位格子構造の形状、単位格子構造の各辺の長さ、構造柱の数、構造柱の方向、構造柱の太さ、及び交差部の容積のうち少なくとも1つを含む。
図4は、第1の実施形態のインソール100の各領域に規定された形状パラメータについて説明するための図である。なお、図4では、単位格子モデルの種類により構造柱の数及び方向が規定される場合を例示する。
図4に示すように、例えば、領域R1には、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S1」、単位格子モデル「モデルC」、構造柱の太さ「W1」。及び交差部の容積「V1」が規定される。これは、領域R1がモデルCの単位格子モデルにより構成され、その構造柱の太さが「W1」であり、その交差部の容積が「V1」であることを示す。
また、領域R2には、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S2」、単位格子モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W2」。及び交差部の容積「V2」が規定される。これは、領域R2がモデルAの単位格子モデルにより構成され、その構造柱の太さが「W2」であり、その交差部の容積が「V2」であることを示す。
また、領域R3には、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S3」、単位格子モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W3」。及び交差部の容積「V3」が規定される。これは、領域R3がモデルAの単位格子モデルにより構成され、その構造柱の太さが「W3」であり、その交差部の容積が「V3」であることを示す。
このように、各領域R1~領域R3は、単位格子構造の形状、単位格子構造の各辺の長さ、構造柱の数、構造柱の方向、構造柱の太さ、及び交差部の容積のうち少なくとも1つの形状パラメータが異なる。これにより、各領域R1~領域R3は、互いに異なる物性を有する。また、領域R1の単位格子構造、領域R2の単位格子構造、及び領域R3の単位格子構造は、互いに同一の形状及び同一の大きさ(ここでは、各辺の長さ)を有する空間を一単位とすることが好適である。次に、図5~図9を用いて、各形状パラメータと物性の関係について説明する。
図5、図6、図7、図8、及び図9は、第1の実施形態の形状パラメータと物性の関係について説明するための図である。図5~図9では、物性として荷重-変位特性を例示して説明する。荷重-変位特性とは、物体に印加された荷重[N]と、その荷重による物体の変位[mm]との関係を表したものであり、物体の硬度や密着性を表す物理的指標として利用される。本実施形態では、荷重-変位特性は、単位格子構造により構成された物体に対して荷重を印加することにより計測される。図5~図8において、グラフの縦軸は荷重[N]に対応し、グラフの横軸は変位[mm]に対応する。つまり、図5~図8では、硬い物体ほど急峻なグラフが得られ、柔らかい物体ほど緩やかなグラフが得られる。なお、通常、グラフは曲線として得られる場合が多いが、図5~図8では説明の簡素化のため直線で示す。
図5には、単位格子モデルの種類と荷重-変位特性の関係を例示する。図5では、図3に示したモデルA、モデルB、及びモデルCの単位格子モデルにより構成された物体の荷重-変位特性を用いて説明する。なお、図5において、モデルA、モデルB、及びモデルCの構造柱の太さ及び交差部の容積は一定である。
図5に示す荷重-変位特性から、各モデルに含まれる構造柱の数が多いほど、物体が硬くなる傾向が認められる。また、図5に示す荷重-変位特性から、構造柱の方向が荷重方向に近いほど、物体が硬くなる傾向が認められる。このため、異なる種類の単位格子モデルで各領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図6には、構造柱の太さ(L)/単位空間の一辺の長さ(S)と荷重-変位特性の関係を例示する。図6では、図3のモデルAにおいて、異なる太さの構造柱を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。なお、図6において、各物体の交差部の容積は一定である。
また、図6では、構造柱の太さの一例として、構造柱の太さ(L)と、単位空間の一辺の長さ(S)との比率が異なる場合を説明する。図6の例では、「L/S:1/3」が最も構造柱が太い場合に対応し、「L/S:1/5」及び「L/S:1/8」が順に構造柱がより細い場合に対応する。なお、構造柱の太さは、例えば、構造柱の「短手方向の断面において、重心を通る直線の中で、最も長い直線の長さとすることができる。
図6に示す荷重-変位特性から、L/Sが大きい(太い)ほど、物体が硬くなる傾向が認められる。また、L/Sが小さい(細い)ほど、物体が柔らかくなる傾向が認められる。このため、異なる太さの構造柱を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図7には、荷重印加時において、交差部の容積と荷重-変位特性の関係を例示する。図7では、図3のモデルAにおいて、異なる容積の交差部を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。図7において、各物体の構造柱の太さ(L)は一定である。なお、図7に示す荷重印加時の荷重-変位特性においては、荷重に応じた変位を表すグラフ上の点(位置)が、グラフ中の矢印の方向に向かって移動することとなる。
図7に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が大きい場合には、グラフに変曲点P11が認められる。つまり、交差部の容積が大きい物体は、荷重を印加していった場合に、原点Oから変曲点P11までの間では硬い物質のように振る舞い、変曲点P11以降には柔らかい物質のように振る舞う。この荷重-変位特性における物性の変化(グラフの傾きの変化)は、装具を利用する人がインソールに荷重を印加したときの密着性として感じられる。また、交差部の容積が中程度の物体は、柔らかい物体と同様に振る舞う。このため、異なる容積の交差部を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図8には、荷重解放時において、交差部の容積と荷重-変位特性の関係を例示する。図8では、図3のモデルAにおいて、異なる容積の交差部を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。図8において、各物体の構造柱の太さ(L)は一定である。なお、図8に示す荷重解放時の荷重-変位特性においては、荷重に応じた変位を表すグラフ上の点(位置)が、グラフ中の矢印の方向に向かって移動することとなる。また、図8に示す破線のグラフは、荷重印加時のグラフに対応する。
図8に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が大きい場合には、形状回復速度が速く、比較的線形に近い傾斜が得られる。つまり、交差部の容積が大きい物体は、荷重を解放していった場合の変位の戻りが速い。この物性は、装具を利用する人がインソールから荷重を解放したときの密着性として感じられる。一方、図8に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が小さい場合には、形状回復速度が遅く、変曲点P12が認められる。つまり、交差部の容積が小さい物体は、荷重を解放していった場合に、変曲点P12までは変位の変化量が小さく、変曲点P12から原点Oまでの間で形状が元に戻る。このため、異なる容積の交差部を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図9では、図3のモデルAにおける単位格子構造の上面から底面に向けて加重を印加した場合において、交差部の容積に応じた形状回復速度の違いについて説明する。図9には、荷重印加時から荷重解放時に移行したときの交差部の形状の変化と、その変化における形状回復速度の速さを示す。図9の上段には交差部の容積が大きい場合を示し、中段には交差部の容積が中程度の場合を示し、下段には交差部の容積が小さい場合を示す。なお、形状回復速度を示す矢印の長さは、形状回復速度の速さに対応する。
図9において、交差部の形状について説明する。特段容積の調整を行わない場合には、交差部は、図9の中段(荷重解放時)に示すような形状となる。本実施形態では、この形状を、交差部の容積が中程度である状態として説明する。
交差部の容積が大きい場合には、交差部は、図9の上段(荷重解放時)に示すように、交差部を略中心とする球形状又は多面体形状を有する。つまり、交差部は、複数の構造柱を単に交差させた状態と比較して積極的に隆起した形状を有する。この場合、交差部は、構造柱の短手方向の断面より大きい断面を有する。具体的には、交差部の断面の面積は、構造柱の短手方向の断面と比較して1.1倍以上20倍以下の断面であることが好適であり、1.2倍以上10倍以下の面積であることがより好適であり、特に1.5倍以上5倍以下の面積であることがより好適である。なお、ここで交差部の断面の面積は、交差部の重心を通る面の中で、面積が最大となる面を基準とする。
一方、交差部の容積が小さい場合には、交差部は、図9の下段(荷重解放時)に示すように、交差部付近の構造柱を細くした形状を有する。この場合、交差部は、構造柱の短手方向の断面より小さい断面を有する。具体的には、交差部の断面の面積は、構造柱の短手方向の断面と比較して0.05倍以上0.9倍以下の断面であることが好適であり、0.1倍以上0.8倍以下の面積であることがより好適であり、特に0.2倍以上0.7倍以下の面積であることが特に好適である。なお、ここで交差部の断面の面積は、交差部の重心を通る面の中で、面積が最大となる面を基準とする。
ここで、図9に示すように、荷重印加時には、形状を回復するためのエネルギーが交差部に蓄積されると考えられる。例えば、図9の上側から下側へ向けて荷重が印加された場合には、交差部の領域R13の両側にある2本の構造柱が押し広げられる結果、これを元に戻すための復元力が領域R13に蓄積される。また、交差部の領域R14の両側にある2本の構造柱が狭められる結果、これを元に戻すための反発力が領域R14に蓄積される。
交差部の容積が大きい場合には、復元力及び反発力は大きなエネルギーとして蓄積される。このため、領域R11の復元力は領域R13の復元力よりも大きく、領域R12の反発力は領域R14の反発力よりも大きくなる。この結果、交差部の容積が大きいほど形状回復速度が速くなると考えられる。
また、交差部の容積が小さい場合には、復元力及び反発力は小さなエネルギーとして蓄積される。このため、領域R15の復元力は領域R13の復元力よりも小さく、領域R16の反発力は領域R14の反発力よりも小さくなる。この結果、交差部の容積が小さいほど形状回復速度が遅くなると考えられる。
このように、互いに異なる形状パラメータを有する単位格子構造により複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域をインソール100に設けることが可能となる。
なお、図4~図9に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図4では、例示の空間形状が立方体形状であるため、各辺の長さが一律の値(S1、S2、S3等)で設定される場合を説明したが、これに限定されるものではなく、各辺の長さが個別に設定されても良い。また、例えば、図9では、交差部の容積を3段階で示したが、3段階に限定されるものではなく、所望の容積になるように製造可能である。
上述してきたように、第1の実施形態のインソール100は、多角柱形状の空間を一単位とする単位格子構造であって、多角柱形状を形成する複数の頂点のうち2点を接続する構造柱を複数備える第1単位格子構造により構成される第1領域を有する。また、第1の実施形態のインソール100は、第1単位格子構造とは異なる第2単位格子構造により構成される第2領域を有する。これにより、第1の実施形態のインソール100は、領域に応じて適切な物性を有する。例えば、インソール100の製造者は、荷重のかかり方や患部の具合に応じて、部分的に任意の物性に調整したインソールを提供することができる。
(第1の実施形態に関するその他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(装具の製造方法)
上記の実施形態では、実施形態のインソール100について説明したが、インソール100を製造する者(製造者)は、以下の製造方法によりインソール100を製造することができる。
ここで、インソール100の各領域は、異なる形状パラメータの単位格子構造により構成することで、異なる物性を有することとなる。このため、インソール100の各領域は、均一な材料で製造したとしても異なる物性を有することが可能である。これにより、製造者は、材料押出方式、液槽光重合方式、粉末焼結積層方式等の各種付加造形技術(3次元造形技術)により、複数の領域を有するインソール100を一体として造形(成形)することができる。
図10は、第1の実施形態の製造方法の一例を示すフローチャートである。図10に例示の製造方法は、液槽光重合方式による3次元造形技術を実行可能な造形装置により実行される。造形装置は、インソール100の材料となる感光性樹脂を充填するための液槽(タンク)と、液槽内の感光性樹脂を光重合反応により位置選択的に硬化させるためのレーザーとを有する。なお、造形装置としては、公知の造形装置が任意に適用可能である。
図10に示すように、造形装置は、モデルデータを読み出す(ステップS101)。このモデルデータは、造形装置で造形する際の元となる情報である。モデルデータは、例えば、義装具士により予め作成され、造形装置が有する記憶装置に予め記憶されている。なお、記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等に対応する。
続いて、造形装置は、指定された感光性樹脂をタンクに充填する(ステップS102)。ここで、感光性樹脂は、モデルデータにより予め指定されていても良いし、造形方法が実行される毎に操作者により指定されても良い。
そして、造形装置は、モデルデータに基づいて規定されるタンク内の各位置を、レーザーを用いて位置選択的に硬化させる(ステップS103)。例えば、造形装置は、モデルデータにおいて構造柱が存在する位置に対応するタンク内の位置に対してレーザーを順次照射する。つまり、造形装置は、領域R1、領域R2、及び領域R3それぞれの単位格子構造に応じたタンク内の位置を順次硬化させる。これにより、造形装置は、単一の感光性樹脂を用いて、互いに異なる物性を有する複数の領域を含むインソールを造形することができる。
なお、インソール100の材料としては、造形技術に利用可能な材料であれば任意の材料を適用可能であり、例えば、付加製造技術により造形可能な任意の感光性樹脂が適宜選択可能である。
(荷重方向)
上記の実施形態では、例えば図9に示すように荷重方向が図中の鉛直下方向に対応する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、装具内での単位格子構造の方向は、製造者の任意により適宜設定可能である。例えば、手に装着する装具であれば、手と装具との接点における法線方向を荷重方向として定義してもよい。この場合、図3の単位格子構造は、図中の鉛直下方向が人体との接点における法線方向に対応するように装具内に配列される。
以上説明した実施形態によれば、領域に応じて適切な物性を有する装具及び装具の製造方法を提供することができる。
(第2の実施形態)
従来の技術においては、必ずしも適切な物性の装具が設計されているとは限らない。例えば、従来の装具設計では、インソールの製造にどのような物性の材料を利用するかの判断は、装具設計を行う義装具士の経験に委ねられている。このため、仮に、ある症状を有する被検体に対して異なる義装具士が装具を作成する場合、それぞれの装具には互いに異なる物性の材料が用いられる場合が多く、必ずしも適切な物性の装具が設計されているとは限らない。
第2~第5の実施形態は、適切な物性の装具を設計することができる情報処理装置、システム、装具の製造方法、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
図11は、第2の実施形態のシステム1の概略構成の一例を示す図である。図11に示すように、実施形態のシステム1は、情報処理装置10と、造形装置20とを含む。図11に例示する各装置は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等のネットワークにより、直接的、又は間接的に相互に通信可能な状態となっている。
情報処理装置10は、装具を設計するためのモデルデータを生成する。モデルデータとは、被検体(装具の装着者)により装着される装具を造形装置20で造形する際の元となる情報である。モデルデータを生成する処理内容については後述する。そして、情報処理装置10は、生成したモデルデータを造形装置20へ送る。
なお、以下の実施形態では、装具の一例として医療用のインソールについて説明する。ただし、実施形態はインソールに限定されるものではなく、例えば、手、肘、膝、肩、頭部等、人体の各部位に当てて利用される装具に広く適用可能である。また、実施形態は医療用の装具に限定されるものではなく、例えば、スポーツや日常生活における身体機能の補助や保護のために利用される装具に広く適用可能である。なお、インソールは、中敷き、中底等とも呼ばれる。また、以下の実施形態に係るインソールは、第1の実施形態にて説明したインソール100に対応する。
造形装置20は、情報処理装置10から受け取ったモデルデータに基づいて、被検体が装着する装具を造形する造形部21を備える。本実施形態では、造形部21は、3次元プリンタの機能を提供するハードウェア要素群で構成される。
例えば、造形部21は、インソールの材料となる感光性樹脂を充填するための液層(夕ンク)と、液層内の感光性樹脂を光重合反応により硬化させるためのレーザーとを有する。造形部21は、モデルデータに基づいて規定される液層内の位置を、レーザーを用いて位置選択的に硬化させることで、モデルデータに対応する3次元構造体を造形する。
次に、本実施形態の情報処理装置10について説明する。図12は、第2の実施形態の情報処理装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。図12に示すように、情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、補助記憶装置14と、入力装置15と、表示装置16と、外部I/F(Interface)17と、を備える。
CPU11は、プログラムを実行することにより、情報処理装置10の動作を統括的に制御し、情報処理装置10が有する各種の機能を実現するプロセッサ(処理回路)である。情報処理装置10が有する各種の機能については後述する。
ROM12は、不揮発性のメモリであり、情報処理装置10を起動させるためのプログラムを含む各種データ(情報処理装置10の製造段階で書き込まれる情報)を記憶する。RAM13は、CPU11の作業領域を有する揮発性のメモリである。補助記憶装置14は、CPU11が実行するプログラム等の各種データを記憶する。補助記憶装置14は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。
入力装置15は、情報処理装置10を使用する操作者が各種の操作を行うためのデバイスである。入力装置15は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル又はハードウェアキーで構成される。なお、操作者は、例えば、装具を作成する義装具士、医師や理学療法士等の医療関係者、及び装具を装着する被検体等に対応する。
表示装置16は、各種情報を表示する。例えば、表示装置16は、画像データやモデルデータ、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、医用画像等を表示する。表示装置16は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はブラウン管ディスプレイで構成される。なお、例えばタッチパネルのような形態で、入力装置15と表示装置16とが一体に構成されても良い。
外部I/F17は、造形装置20等の外部装置と接続(通信)するためのインタフェースである。なお、図示しないが、外部I/F17は、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の医用画像診断装置と接続されても良い。
図13は、第2の実施形態の情報処理装置10が有する機能の一例を示す図である。なお、図13の例では、本実施形態に関する機能のみを例示しているが、情報処理装置10が有する機能はこれらに限られるものではない。図13に示すように、情報処理装置10は、記憶部101、受付部102、生成部103、及び出力制御部104を有する。記憶部101は、例えば、補助記憶装置14(例えばHDD)により実現される。受付部102、生成部103、及び出力制御部104は、例えば、CPU11により実現される。
記憶部101は、モデルデータのプリセット情報や、モデルデータの生成の際に参照されるデータベース等を記憶する。また、記憶部101は、医用画像診断装置により撮像された画像データ(DICOMデータ)を記憶することも可能である。
受付部102は、操作者の入力を受け付ける機能を有する。例えば、受付部102は、操作者が入力装置15を介して行った入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号へ変換して情報処理装置10内の各部へ送る。
例えば、操作者は、入力装置15を操作して、インソールの外形データを設定する。インソールの外形データは、互いに異なる物性を有する複数の領域について、各領域の形状、大きさ、厚み、位置、互いの領域の位置関係などの情報を含む。
図14は、第2の実施形態のインソールの外形データの一例を示す図である。図14の左図には、右足用のインソールを人体の各部位と直接的または間接的に接触する当接面側から見た平面図を例示する。図14の右図には、左図の側面図を例示する。なお、図14の上側にインソールのつま先側を示し、図14の下側にインソールの踵側を示す。
図14に示すように、例えば、インソールの外形データは、領域R1、領域R2、及び領域R3の情報を含む。このうち、領域R1は、インソールの全体的な外形を構成する領域である。領域R2は、踵骨付近の部位が接する領域である。領域R3は、母指の中足指関節付近の部位が接する領域である。
ここで、インソールの外形データは、領域R1、領域R2、及び領域R3のそれぞれについて、各領域の形状、各領域の大きさ、各領域の厚み、各領域の位置に関する情報を含む。また、インソールの外形データは、領域R1に対する領域R2の位置を示す情報と、領域R1に対する領域R3の位置を示す情報とを含む。
具体的には、インソールの外形データのプリセット情報が記憶部101に予め記憶されている。受付部102は、操作者からの操作に応じて、インソールの外形データのプリセット情報を記憶部101から読み出す。そして、操作者は、インソールの外形データのプリセット情報に設定された領域の数、大きさ、形状、厚み、及び位置等の情報を、被検体に合わせて設定(調整)する操作を行う。受付部102は、この操作を受け付けると、受け付けた操作に応じてインソールの外形データを設定する。
そして、受付部102は、感覚を識別する識別情報の入力を受け付ける。ここで、識別情報とは、例えば、「感覚A」「感覚B」など、物体の利用により利用者に与えられる感覚を識別するための情報である。ただし、単純な識別情報とするよりも、「硬さ」、「フィット感」等の感覚的な用語で表現した方が操作者に直感的に伝わるため好適である。以下、このような感覚的な用語で表現した情報を、「質感情報」と称する。なお、質感情報は、感覚を識別する識別情報の一例である。
図15は、第2の実施形態の質感情報の入力画面の一例を示す図である。図15に示すように。例えば、受付部102は、インソールの各領域について、質感情報の入力を行うための画面を表示する。この画面には、「硬さ」及び「フィット感」について、それぞれ3段階で指定可能な目盛りが表示される。ここで、「硬さ」は、物体(装具の各領域)の硬度を表す質感情報である。また、「フィット感」は、例えば、装具を装着する人と物体との密着性を表す質感情報である。
例えば、操作者は、「硬さ」及び「フィット感」のそれぞれについて、各目盛りの上部にあるカーソル(図の逆三角形)の位置を変更することで、質感情報及び程度情報の入力を行う。図15に示す例では、「硬さ」の程度情報として「3」、「フィット感」の程度情報として「2」が指定された場合を例示する。なお、以下の説明では、質感情報及び程度情報を組み合わせて表記する。例えば、硬さ「3」は、質感情報「硬さ」及び程度情報「3」が指定されたことを示す。
操作者が質感情報及び程度情報の入力を行うと、受付部102は、入力された質感情報及び程度情報を受け付ける。具体的には、受付部102は、装具のうちの複数の領域それぞれについて、質感情報の入力を受け付ける。そして、受付部102は、受け付けた質感情報及び程度情報を生成部103に送る。図15に示す例では、受付部102は、硬さ「3」及びフィット感「2」を生成部103に送る。
なお、図14及び図15に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図14に示したインソールの外形データに含まれる各領域の数、位置、大きさ、形状、及び厚みについては、装着する人の使用目的や症状に応じて任意に変更可能である。また、図15に示した質感情報は、「硬さ」及び「フィット感」に限らず、任意の質感情報を設定可能である。また、程度情報は、3段階に限定されるものではなく、任意数の段階を設定可能である。
生成部103は、受付部102により受け付けられた質感情報に基づいて、装具を設計するためのモデルデータを生成する。例えば、生成部103は、質感情報と、程度情報と、装具の物性を規定する形状パラメータとが関連づけられた関連情報(テーブル)を参照することで、受付部102により受け付けられた質感情報と程度情報の組み合わせに対応する形状パラメータを決定する。
ここで、本実施形態に係るインソールの各領域は、互いに異なる単位格子構造により構成される。単位格子構造とは、多角柱形状の空間を一単位とする単位格子構造であって、多角柱形状を形成する複数の頂点のうち2点を接続する構造柱を複数備える。インソールの各領域の単位格子構造は、多角柱形状の空間を一単位とする単位格子構造を構成する複数の構造柱の数、構造柱の方向、構造柱の太さ、構造柱が交差する交差部の容積、及び単位格子構造の大きさのうち少なくとも1つを含むパラメータにより規定される。
つまり、生成部103は、形状パラメータとして、多角柱形状の空間を一単位とする単位格子構造を構成する複数の構造柱の数、構造柱の方向、構造柱の太さ、構造柱が交差する交差部の容積、単位格子構造の形状及び単位格子構造の大きさのうち少なくとも1つを含むパラメータを決定する。また、生成部103は、単位格子構造を構成する複数の構造柱の配置パターンを示す単位格子モデルを決定することで、構造柱の数及び構造柱の方向を決定する。そして、生成部103は、決定した形状パラメータを含むモデルデータを生成する。以下、図16~図23を用いて、生成部103の処理及び形状パラメータについて説明する。
図16は、第2の実施形態の生成部103で参照される関連情報の一例を示す図である。この関連情報は(テーブル)、質感情報及び程度情報の組み合わせと、各種の形状パラメータとが関連づけられた情報である。この関連情報は、例えば、記憶部101に予め記憶されている。
図16に示すように、関連情報は、「硬さ」、「フィット感」、「単位格子構造の形状」、「単位格子構造の各辺の長さ」、「単位格子モデル」、「構造柱の太さ」、及び「交差部の容積」が対応づけられた情報である。ここで、「単位格子構造の形状」、「単位格子構造の各辺の長さ」、「単位格子モデル」、「構造柱の太さ」、及び「交差部の容積」は、形状パラメータの一例である。各種の形状パラメータについては、図17~図23を用いて後述する。
例えば、図16の関連情報の1つ目のレコードには、硬さ「1」、フィット感「1」、単位格子構造の形状「立方体形状」、各辺の長さ「S1」、単位格子モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W1」、及び交差部の容積「V1」が対応づけられている。これは、硬さ「1」及びフィット感「1」の組み合わせが入力された場合には、単位格子構造の形状「立方体形状」、各辺の長さ「S1」、モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W1」、及び交差部の容積「V1」の形状パラメータが選択されることを意味する。また、図16には、硬さ及びフィット感の他の組み合わせについても同様に、各種の形状パラメータが対応づけて記憶されている。
このように、図16に示す関連情報には、「1」~「3」の硬さと、「1」~「3」のフィット感との各々の組み合わせについて、各種の形状パラメータが対応づけて記憶されている。
なお、図16に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図16では、硬さとフィット感がそれぞれ3段階で入力(選択)される場合を例示したが、任意数の段階数を設定可能である。また、インソール内の各領域において、単位格子構造は、互いに同一の形状及び同一の大きさ(ここでは、各辺の長さ)を有する空間を一単位とすることが好適である。また、図16の関連情報は、記憶部101に限らず、情報処理装置10が通信可能な外部記憶装置に記憶されていても良い。例えば、ネットワーク上の外部記憶装置に関連情報が記憶されている場合、生成部103は、ネットワーク上の外部記憶装置に記憶された関連情報を参照することができる。
以下、図17~図23を用いて、単位格子構造の形状、単位格子構造の各辺の長さ、モデル、構造柱の太さ、及び交差部の容積の各種の形状パラメータについて説明する。
まず、図16の「単位格子構造の形状」及び「単位格子構造の各辺の長さ」について説明する。「単位格子構造の形状」は、単位格子構造が一単位とする空間の形状である。「単位格子構造の各辺の長さ」は、単位格子構造が一単位とする空間の大きさに対応する。
図17は、第2の実施形態の単位格子構造の形状及び各辺の長さについて説明するための図である。図17に示すように、「単位格子構造の形状」は、6つの正方形の面により構成される立方体形状に対応する。この立方体形状の空間は、頂点に対応する8つの点P1~点P8を有する。また、図17の例では、この空間は立方体形状であるため、何れの辺の長さも等しい。図17の空間の各辺の長さは、例えば、点P1と点P2との距離で表される。
ここで、単位格子構造における線及び面の表記方法について説明する。本実施形態では、線及び面を表記する場合、その線又は面を構成する頂点を括弧書きで示す。例えば、「線(P1,P2)」という表記は、点P1と点P2とを結ぶ線を表す。また、「線(P1,P7)」という表記は、点P1と点P7とを結ぶ線(対角線)を表す。また、「面(P1,P2,P3,P4)」という表記は、点P1、点P2、点P3、及び点P4を頂点とする面(底面)を表す。なお、構造柱は、線の表記方法と同様に表記する。
実施形態に係る単位格子構造は、複数の点P1~点P8のうち2点を接続する構造柱を複数備える。つまり、図17の空間形状は、単位格子構造の形状に対応する。構造柱の数及び方向(配置方向)については、例えば、単位格子モデルにより予め規定されている。
なお、図17に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図17に示した立方体形状の空間はあくまで一例であり、単位格子構造が一単位とする空間形状は、多角柱形状であっても良い。この場合、単位格子構造は、例えば、三角柱形状、四角柱形状、及び六角柱形状のうちいずれか1つの形状の空間を一単位とすることが好適である。三角柱形状としては正三角柱形状が好適である。また、四角柱形状としては上述した立方体形状以外に直方体形状が好適である。また、六角柱形状としては正六角柱形状が好適である。ただし、装具を構成する各領域R1~領域R3の単位格子構造は、同一の空間形状であるのが好適である。また、構造柱は、多角柱形状又は円柱形状等の柱状である。また、構造柱の短手方向とは、構造柱の軸方向に直交する方向である。
次に、図16の「単位格子モデル」について説明する。単位格子モデルとは、単位格子構造の基本的な骨格形状を示す。
図18は、第2の実施形態の単位格子モデルについて説明するための図である。図18において、破線は、一単位に相当する立方体形状の空間(図17の空間)を示す。また、実線は、構造柱の存在を示す。なお、図18に例示の単位格子モデルは、その配置方向が図18の鉛直下方向に装具にかかる荷重方向と一致するようにインソールの各領域に配置されるのが好適である。なお、装具にかかる荷重方向とは人体の各部位から受けた荷重が加わる方向である。
図18に示すように、例えば、単位格子モデルは、モデルA、モデルB、モデルC、モデルD、及びモデルEを含む。ここで、モデルA、モデルB、及びモデルCは、立方体形状の空間の中心に構造柱の交差部を有する。また、モデルD及びモデルEは、立方体形状を構成する複数の面のうち少なくとも1つの面の中心に構造柱の交差部を有する。
モデルAは、立方体形状の対角線に沿って配置される4本の構造柱を備える単位格子モデルである。具体的には、モデルAは、構造柱(P1,P7)、構造柱(P2,P8)、構造柱(P3,P5)、及び構造柱(P4,P6)を有する。
モデルBは、モデルAと同様の4本の構造柱に加えて、立方体形状を構成する底面及び上面を囲む複数の辺に沿って配置される8本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルBは、モデルAが有する4本の構造柱を有する。更に、モデルBは、底面(P1,P2,P3,P4)を囲む4本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、及び構造柱(P4,P1)を有する。また、モデルBは、上面(P5,P6,P7,P8)を囲む4本の構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有する。
モデルCは、モデルBと同様の12本の構造柱に加えて、荷重方向に沿って配置される4本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルCは、モデルBが有する12本の構造柱を有する。更に、モデルCは、インソールにかかる荷重方向に沿って配置される4本の構造柱(P1,P5)、構造柱(P2,P6)、構造柱(P3,P7)、及び構造柱(P4,P8)を有する。
つまり、モデルBとモデルCとの差異は、荷重方向に沿って配置される4本の構造柱(P1,P5)、構造柱(P2,P6)、構造柱(P3,P7)、及び構造柱(P4,P8)を有するか否かである。
モデルDは、6つの面それぞれの対角線に沿って配置される12本の構造柱を備える単位格子モデルである。具体的には、モデルDは、底面(P1,P2,P3,P4)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P3)及び構造柱(P2,P4)を有する。また、モデルDは、上面(P5,P6,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P5,P7)及び構造柱(P6,P8)を有する。また、モデルDは、側面(P1,P2,P5,P6)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P6)及び構造柱(P2,P5)を有する。また、モデルDは、側面(P2,P3,P6,P7)の対角線に沿った2本の構造柱(P2,P7)及び構造柱(P3,P6)を有する。また、モデルDは、側面(P3,P4,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P3,P8)及び構造柱(P4,P7)を有する。また、モデルDは、側面(P1,P4,P5,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P8)及び構造柱(P4,P5)を有する。
モデルEは、モデルDと比較して底面及び上面の対角線に沿った構造柱を備えず、底面及び上面を囲む複数の辺に沿って配置される8本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルEは、側面(P1,P2,P5,P6)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P6)及び構造柱(P2,P5)を有する。また、モデルEは、側面(P2,P3,P6,P7)の対角線に沿った2本の構造柱(P2,P7)及び構造柱(P3,P6)を有する。また、モデルEは、側面(P3,P4,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P3,P8)及び構造柱(P4,P7)を有する。また、モデルEは、側面(P1,P4,P5,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P8)及び構造柱(P4,P5)を有する。また、モデルEは、底面(P1,P2,P3,P4)を囲む4本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、及び構造柱(P4,P1)を有する。また、モデルEは、上面(P5,P6,P7,P8)を囲む4本の構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有する。
つまり、モデルD及びモデルEの差異は、底面及び上面に配置された構造柱の有無である。具体的には、底面及び上面の対角線に沿った4本の構造柱(P1,P3)、構造柱(P2,P4)、構造柱(P5,P7)、及び構造柱(P6,P8)を有するのが、モデルDである。また、底面及び上面を囲む8本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、構造柱(P4,P1)、構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有するのが、モデルEである。
なお、図6では、モデルD及びモデルEの構造柱を2種類の太さの実線によって図示したが、これは実際の構造柱の太さを示すものではなく、図示の明瞭化を意図したものである。つまり、太い方の実線は、立方体形状の空間を箱に見立てた場合に、「箱の手前側に見える面」に含まれる構造柱を示す。また、細い方の実線は、立方体形状の空間を箱に見立てた場合に、「箱の奥側に見える面」にのみ含まれる構造柱を示す。なお、「箱の手前側に見える面」とは、上面(P5,P6,P7,P8)、側面(P1,P2,P5,P6)、及び側面(P1,P4,P5,P8)である。また、「箱の奥側に見える面」とは、底面(P1,P2,P3,P4)、側面(P2,P3,P6,P7)、及び側面(P3,P4,P7,P8)である。
つまり、本実施形態のインソールの各領域は、複数の単位格子モデルが繰り返し連続して配列された構造である。具体的には、インソールの各領域は、複数の単位格子構造が同一平面上に配列された層を少なくとも1つ有し、この層が積層されて構成される。なお、構造柱の断面形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等、任意の形状が適用可能である。
なお、図18に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図18に示したモデルはあくまで一例であり、単位格子モデルは任意の位置に構造柱を備えていても良い。ただし、単位格子構造は、多角柱形状の空間を構成する全ての頂点をいずれかの構造柱が通るように、複数の構造柱を備えるのが好適である。
また、単位格子構造は、立方体形状の空間の中心に構造柱の交差部を有する構造、及び、立方体形状を構成する複数の面のうち少なくとも1つの面の中心に構造柱の交差部を有する構造に限定されるものではない。ただし、単位格子構造は、複数の頂点とは異なる位置で少なくとも2つの構造柱が交差する交差部を有するのが好適である。
図19は、第2の実施形態の単位格子モデルの種類と荷重-変位特性の関係を示す図である。ここで、荷重-変位特性とは、物体に印加された荷重[N]と、その荷重による物体の変位[mm]との関係を表したものであり、物体の硬度や密着性を表す物理的指標として利用される。本実施形態では、荷重-変位特性は、単位格子構造により構成された物体に対して荷重を印加することにより計測される。荷重-変位特性のグラフにおいて、グラフの縦軸は荷重[N]に対応し、グラフの横軸は変位[mm]に対応する。つまり、荷重-変位特性のグラフでは、硬い物体ほど急峻なグラフが得られ、柔らかい物体ほど緩やかなグラフが得られる。なお、通常、グラフは曲線として得られる場合が多いが、以下の各図では説明の簡素化のため直線で示す。
図19では、図18に示したモデルA、モデルB、及びモデルCの単位格子モデルにより構成された物体の荷重-変位特性を用いて説明する。なお、図19において、モデルA、モデルB、及びモデルCの構造柱の太さ及び交差部の容積は一定である。
図19に示す荷重-変位特性から、各モデルに含まれる構造柱の数が多いほど、物体が硬くなる傾向が認められる。また、図19に示す荷重-変位特性から、構造柱の方向が荷重方向に近いほど、物体が硬くなる傾向が認められる。このため、異なる種類の単位格子モデルで各領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
次に、図16の「構造柱の太さ」について説明する。構造柱の太さとは、単位格子モデルにおける各構造柱の太さであり、例えば、構造柱の太さ(L)と、単位空間の一辺の長さ(S)との比率により表される。
図20は、第2の実施形態のL/Sと荷重-変位特性の関係を示す図である。図20では、図18のモデルAにおいて、異なる太さの構造柱を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。なお、図20において、各物体の交差部の容積は一定である。
また、図20では、構造柱の太さの一例として、構造柱の太さ(L)と、単位空間の一辺の長さ(S)との比率が異なる場合を説明する。図20の例では、「L/S:1/3」が最も構造柱が太い場合に対応し、「L/S:1/5」及び「L/S:1/8」が順に構造柱がより細い場合に対応する。なお、構造柱の太さは、例えば、構造柱の「短手方向の断面において、重心を通る直線の中で、最も長い直線の長さとすることができる。
図20に示す荷重-変位特性から、L/Sが大きい(太い)ほど、物体が硬くなる傾向が認められる。また、L/Sが小さい(細い)ほど、物体が柔らかくなる傾向が認められる。このため、異なる太さの構造柱を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
次に、図16の「交差部の容積」について説明する。交差部の容積とは、単位空間において少なくとも2つの構造柱が交差する部位(交差部)の容積である。
図21は、第2の実施形態によって生成される単位格子モデルの構造柱の交差部の容積と荷重-変位特性の関係を示す図である。図21には、荷重印加時において、交差部の容積と荷重-変位特性の関係を例示する。図21では、図18のモデルAにおいて、異なる容積の交差部を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。図21において、各物体の構造柱の太さ(L)は一定である。なお、図21に示す荷重印加時の荷重-変位特性においては、荷重に応じた変位を表すグラフ上の点(位置)が、グラフ中の矢印の方向に向かって移動することとなる。
図21に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が大きい場合には、グラフに変曲点P11が認められる。つまり、交差部の容積が大きい物体は、荷重を印加していった場合に、原点Oから変曲点P11までの間では硬い物質のように振る舞い、変曲点P11以降には柔らかい物質のように振る舞う。この荷重-変位特性における物性の変化(グラフの傾きの変化)は、装具を利用する人がインソールに荷重を印加したときの密着性(荷重印加時の密着性)として感じられる。また、交差部の容積が中程度の物体は、柔らかい物体と同様に振る舞う。このため、異なる容積の交差部を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図22は、第2の実施形態の交差部の容積と荷重-変位特性の関係を示す図である。図22には、荷重解放時において、交差部の容積と荷重-変位特性の関係を例示する。図22では、図18のモデルAにおいて、異なる容積の交差部を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。図22において、各物体の構造柱の太さ(L)は一定である。なお、図22に示す荷重解放時の荷重-変位特性においては、荷重に応じた変位を表すグラフ上の点(位置)が、グラフ中の矢印の方向に向かって移動することとなる。また、図22に示す破線のグラフは、荷重印加時のグラフに対応する。
図22に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が大きい場合には、形状回復速度が速く、比較的線形に近い傾斜が得られる。つまり、交差部の容積が大きい物体は、荷重を解放していった場合の変位の戻りが速い。この物性は、装具を利用する人がインソールから荷重を解放したときの密着性(荷重解放時の密着性)として感じられる。一方、図22に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が小さい場合には、形状回復速度が遅く、変曲点P12が認められる。つまり、交差部の容積が小さい物体は、荷重を解放していった場合に、変曲点P12までは変位の変化量が小さく、変曲点P12から原点Oまでの間で形状が元に戻る。このため、異なる容積の交差部を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図23は、第2の実施形態の交差部の容積に応じた形状回復速度の違いについて説明するための図である。図23では、図18のモデルAにおける単位格子構造の上面から底面に向けて加重を印加した場合において、交差部の容積に応じた形状回復速度の違いについて説明する。図23には、荷重印加時から荷重解放時に移行したときの交差部の形状の変化と、その変化における形状回復速度の速さを示す。図23の上段には交差部の容積が大きい場合を示し、中段には交差部の容積が中程度の場合を示し、下段には交差部の容積が小さい場合を示す。なお、形状回復速度を示す矢印の長さは、形状回復速度の速さに対応する。
図23において、交差部の形状について説明する。特段容積の調整を行わない場合には、交差部は、図23の中段(荷重解放時)に示すような形状となる。本実施形態では、この形状を、交差部の容積が中程度である状態として説明する。
交差部の容積が大きい場合には、交差部は、図23の上段(荷重解放時)に示すように、交差部を略中心とする球形状又は多面体形状を有する。つまり、交差部は、複数の構造柱を単に交差させた状態と比較して積極的に隆起した形状を有する。この場合、交差部は、構造柱の短手方向の断面より大きい断面を有する。具体的には、交差部の断面の面積は、構造柱の短手方向の断面と比較して1.1倍以上20倍以下の断面であることが好適であり、1.2倍以上10倍以下の面積であることがより好適であり、特に1.5倍以上5倍以下の面積であることがより好適である。なお、ここで交差部の断面の面積は、交差部の重心を通る面の中で、面積が最大となる面を基準とする。
一方、交差部の容積が小さい場合には、交差部は、図23の下段(荷重解放時)に示すように、交差部付近の構造柱を細くした形状を有する。この場合、交差部は、構造柱の短手方向の断面より小さい断面を有する。具体的には、交差部の断面の面積は、構造柱の短手方向の断面と比較して0.05倍以上0.9倍以下の断面であることが好適であり、0.1倍以上0.8倍以下の面積であることがより好適であり、特に0.2倍以上0.7倍以下の面積であることが特に好適である。なお、ここで交差部の断面の面積は、交差部の重心を通る面の中で、面積が最大となる面を基準とする。
ここで、図23に示すように、荷重印加時には、形状を回復するためのエネルギーが交差部に蓄積されると考えられる。例えば、図23の上側から下側へ向けて荷重が印加された場合には、交差部の領域R13の両側にある2本の構造柱が押し広げられる結果、これを元に戻すための復元力が領域R13に蓄積される。また、交差部の領域R14の両側にある2本の構造柱が狭められる結果、これを元に戻すための反発力が領域R14に蓄積される。
交差部の容積が大きい場合には、復元力及び反発力は大きなエネルギーとして蓄積される。このため、領域R11の復元力は領域R13の復元力よりも大きく、領域R12の反発力は領域R14の反発力よりも大きくなる。この結果、交差部の容積が大きいほど形状回復速度が速くなると考えられる。
また、交差部の容積が小さい場合には、復元力及び反発力は小さなエネルギーとして蓄積される。このため、領域R15の復元力は領域R13の復元力よりも小さく、領域R16の反発力は領域R14の反発力よりも小さくなる。この結果、交差部の容積が小さいほど形状回復速度が遅くなると考えられる。
このように、互いに異なる形状パラメータを有する単位格子構造により複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域をインソールに設けることが可能となる。
なお、図17~図23に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図23では、交差部の容積を3段階で示したが、3段階に限定されるものではなく、所望の容積になるように製造可能である。
このように、図16の関連情報は、図19~図23にて説明した各種の形状パラメータと荷重-変位特性との関連に基づいて予め設定されている。そして、生成部103は、図16の関連情報を参照することで、受付部102により受け付けられた質感情報及び程度情報に基づいて、形状パラメータを決定する。具体的には、生成部103は、複数の領域それぞれについて、装具の物性を規定する形状パラメータを決定する。そして、生成部103は、インソールの外形データと、決定した形状パラメータとを含むモデルデータを生成する。
出力制御部104は、各種情報を出力する機能を有する。例えば、出力制御部104は、操作者により指定された画像データを表示装置16に表示させる。また、出力制御部104は、操作者により指定された情報を外部I/F17を経由して外部装置に送る。
例えば、出力制御部104は、生成部103により生成されたモデルデータを出力する。具体的には、出力制御部104は、モデルデータを記憶部101に格納する。また、出力制御部104は、モデルデータを表示装置16に表示させる。また、出力制御部104は、モデルデータを造形装置20へ出力する。
図24は、第2の実施形態の出力制御部104による表示画面の一例を示す図である。図24の上側に示すように、出力制御部104は、インソールの外形データを画像データとして表示装置16に表示させる。この画像データには、インソールの各領域R1~R3の位置、大きさ、形状、及び厚み等の情報が含まれる。
また、図24の下側に示すように、出力制御部104は、各領域の形状パラメータの一覧を表示装置16に表示させる。この一覧には、各領域R1~R3に対して決定された形状パラメータがテキストデータとして記載される。図24に示す例では、領域R1の単位格子構造の形状パラメータは、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S1」、単位格子モデル「モデルC」、構造柱の太さ「W1」、及び交差部の容積「V1」である。また、領域R2の単位格子構造の形状パラメータは、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S1」、単位格子モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W2」、及び交差部の容積「V2」である。また、領域R3の単位格子構造の形状パラメータは、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S1」、単位格子モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W3」、及び交差部の容積「V3」である。
なお、図24に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、出力制御部104により表示されるモデルデータの内容は、操作者により設定されたインソールの外形データや、質感情報及び程度情報に基づいて決定された形状パラメータに応じて様々な情報が表示され得る。
図25は、第2の実施形態の情報処理装置10の動作例を示すフローチャートである。なお、各ステップの具体的な内容は上述した通りであるので、詳細な説明は適宜省略する。
図25に示すように、受付部102は、インソールの外形データを設定する(ステップS201)。また、受付部102は、インソールの領域ごとに、質感情報及び程度情報の入力を受け付ける(ステップS202)。
そして、生成部103は、質感情報及び程度情報に基づいて、インソールの形状パラメータを決定する(ステップS203)。そして、生成部103は、形状パラメータを含むモデルデータを生成する(ステップS204)。そして、出力制御部104は、モデルデータを表示させる(ステップS205)。
次に、受付部102は、モデルデータの出力要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS206)。モデルデータの出力要求を受け付けた場合(ステップS206、Yes)、出力制御部104は、造形装置20にモデルデータを出力し(ステップS207)、処理を終了する。
一方、モデルデータの出力要求を受け付けない場合(ステップS206、No)、受付部102は、モデルデータの修正要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS208)。モデルデータの修正要求を受け付けた場合(ステップS208、Yes)、生成部103は、モデルデータの修正要求に応じてモデルデータを修正する(ステップS209)。
一方、モデルデータの修正要求を受け付けない場合(ステップS208、No)、或いは、ステップS209の後、受付部102は、ステップS206に戻って、モデルデータの出力要求を受け付けたか否かを判定する。ステップS209の後に、ステップS206においてモデルデータの出力要求を受け付けた場合(ステップS206、Yes)、出力部205は、造形装置20に修正後のモデルデータを出力し(ステップS207)、処理を終了する。
なお、図25に示した処理手順はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、処理内容に矛盾が生じない範囲で、他の処理手順を追加(挿入)したり、各処理の順番を入れ替えたりすることができる。また、各処理手順は、必ずしも実行されなくても良い。例えば、ステップS208及びS209の処理は、必ずしも実行されなくても良い。
上述してきたように、本実施形態の情報処理装置10は、装具の装着により被検体に与えられる感覚を識別する識別情報の入力を受け付ける。また、情報処理装置10は、受け付けた識別情報に基づいて、装具を設計するためのモデルデータを生成する。また、情報処理装置10は、生成したモデルデータを出力する。これによれば、本実施形態の情報処理装置10は、適切な物性の材料を用いて装具を設計することができる。
例えば、本実施形態の情報処理装置10では、各種の形状パラメータにより規定される物性が、操作者が直感的に把握しやすいように感覚的な用語で表現される。このため、情報処理装置10では、操作者が直感的に想起する用語で装具の物性を入力することができるので、適切な物性の材料を容易に指定することが可能となる。
(第2の実施形態の変形例1)
第2の実施形態では、目盛り上のカーソルを用いて質感情報の入力を行う場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、受付部102は、レーダーチャート上で質感情報の入力を受け付けることができる。
図26は、第2の実施形態の変形例1の入力画面の一例を示す図である。図26に示すように。例えば、受付部102は、インソールの各領域について、質感A、質感B、質感C、質感D、及び質感Eにより規定されるレーダーチャートを表示装置16に表示させる。そして、受付部102は、レーダーチャート上で、質感A、質感B、質感C、質感D、及び質感Eそれぞれの程度情報の入力を受け付ける。なお、質感A~質感Eは、例えば、硬さやフィット感等に対応する。
このように、受付部102は、図26に示すレーダーチャート上においても質感情報及び程度情報を受け付けることができる。
(第2の実施形態の変形例2)
また、例えば、出力制御部104は、荷重-変位特性を示すグラフを表示させることができる。
図27は、第2の実施形態の変形例2の表示画面の一例を示す図である。図27の上側のインソールの外形データは、図24の上側のインソールの外形データと同様であるので説明を省略する。
図27の下側に示すように、出力制御部104は、各領域R1~領域R3について、荷重-変位特性のグラフを表示装置16に表示させる。この荷重-変位特性のグラフは、各領域の形状パラメータにより規定される物性を表したものである。なお、図27に示した荷重-変位特性のグラフは、図24のモデルデータとともに表示されても良い。
このように、出力制御部104は、モデルデータについて、荷重の変化と変位量の変化との関係により表される物性情報のグラフを表示させることができる。これにより、操作者は、自分が入力した質感情報及び程度情報に基づいて決定された形状パラメータが、どのような物性を表すかを容易に把握することができる。
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、生成部103が関連情報を参照することで、質感情報及び程度情報に対応する形状パラメータを決定する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、生成部103は、質感情報及び程度情報に基づいて物性情報を特定し、特定した物性情報に基づいて形状パラメータを決定することも可能である。
すなわち、第3の実施形態の情報処理装置10において、受付部102は、質感情報の入力とともに、識別情報により識別される感覚の程度を表す程度情報の入力を受け付ける。そして、生成部103は、識別情報及び程度情報に基づいて、荷重の変化と変位量の変化との関係により表される物性情報を特定する。そして、生成部103は、特定した物性情報に基づいて、装具の物性を規定する形状パラメータを決定する。そして、出力制御部104は、決定した形状パラメータを含むモデルデータを生成する。
第3の実施形態の情報処理装置10は、図13に示した情報処理装置10と同様の構成を備え、処理の一部が相違する。そこで、第3の実施形態では、第2の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第2の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については説明を省略する。
図28は、第3の実施形態の情報処理装置10の動作例を示すフローチャートである。図28に示す処理手順のうち、ステップS301及びステップS302の各処理は、図25に示したステップS201及びステップS202の各処理と同様であるので説明を省略する。また、ステップS305~ステップS310の各処理は、図25に示したステップS204~ステップS209の各処理と同様であるので説明を省略する。
また、以下の説明では、図29~図31を参照しつつ説明する。図29~図31は、第3の実施形態の生成部103の処理を説明するための図である。なお、図29~図31の荷重-変位特性のグラフにおいて、変位はX方向に対応し、荷重はY方向に対応する。
図28に示すように、生成部103は、質感情報及び程度情報に基づいて、物性情報を特定する(ステップS303)。ここで、物性情報とは、物体(装具)の物性を示す情報であり、例えば、荷重-変位特性を表す情報(例えば、グラフの曲線を示す情報)である。
まず、生成部103は、図29に示すように、「硬さ」に応じて、荷重-変位特性における「傾き」を特定する。ここで、記憶部101には、硬さの程度情報と、荷重-変位特性の傾きの変化とが予め対応づけて記憶されている。例えば、硬さ「3」の場合には、原点Oと点P21とを結ぶ線の傾きが対応づけられている。また、硬さ「2」の場合には、原点Oと点P22とを結ぶ線の傾きが対応づけられている。また、硬さ「1」の場合には、原点Oと点P23とを結ぶ線の傾きが対応づけられている。
例えば、操作者により硬さ「2」が入力された場合には、生成部103は、原点Oと点P22とを結ぶ線の傾きを特定する。
次に、生成部103は、図30に示すように、「荷重解放時の密着性荷重解放時の密着性」に応じて、荷重-変位特性における「積分値の差分」を特定する。ここで、「積分値の差分」は、荷重-変化特性において最小荷重時における変位と最大荷重時における変位とを結んだ直線の積分値(原点Oと点P22とを結ぶ直線、X=(変曲点のX成分)の直線、及びY=0の直線で囲まれる領域の面積)と原点Oと、変曲点及び点P22を結ぶ線の積分値(原点Oと点P22と変曲点とを結ぶ三角形の面積)との差分である。ここで、記憶部101には、荷重解放時の密着性荷重解放時の密着性の程度情報と、荷重-変位特性の積分値の差分の変化とが予め対応づけて記憶されている。例えば、荷重解放時の密着性荷重解放時の密着性「3」の場合には、積分値の差分「0(ゼロ)」が対応づけられている。これは、荷重-変位特性のグラフが変曲点を有さないことを意味する。また、荷重解放時の密着性荷重解放時の密着性「2」の場合には、積分値の差分「X1」が対応づけられている。積分値の差分「X1」は、原点O、点P22、及び変曲点P24を結ぶ三角形の面積に対応する。つまり、積分値の差分「X1」は、荷重-変位特性のグラフが変曲点P24を有することを意味する。また、荷重解放時の密着性荷重解放時の密着性「1」の場合には、積分値の差分「X2」が対応づけられている(なお、X2は、X2>X1を満たす)。積分値の差分「X2」は、原点O、点P22、及び変曲点P25を結ぶ三角形の面積に対応する。つまり、積分値の差分「X2」は、荷重-変位特性のグラフが変曲点P25を有することを意味する。
例えば、操作者により荷重解放時の密着性荷重解放時の密着性「2」が入力された場合には、生成部103は、積分値の差分「X1」を特定する。
すなわち、硬さ「2」及び荷重解放時の密着性荷重解放時の密着性「2」が入力された場合には、生成部103は、荷重印加時にはグラフ上の点(位置)が原点Oから点P22へ移動し、荷重解放時には点が点P22から変曲点P24を軽油して原点に移動するという物性情報を特定する。
そして、生成部103は、物性情報に基づいて、インソールの形状パラメータを決定する(ステップS304)。
図31の左側には、図29及び図30において特定した物性情報が例示される。つまり、図31の物性情報は、図29の傾きと、図30の積分値の差分とを含む。生成部103は、この物性情報に基づいて、図31の右側に示すように、形状パラメータを特定する。
例えば、生成部103は、荷重-変位特性のグラフの概形に基づいて、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S1」、及び単位格子モデルの種類「モデルA」を決定する。そして、生成部103は、荷重-変位特性における「傾き」に基づいて、構造柱の太さ「W2」を決定する。そして、生成部103は、荷重-変位特性における「積分値の差分」に基づいて、交差部の容積「V3」を決定する。このように、生成部103は、物性情報に基づいて、インソールの形状パラメータを決定する。
なお、図31において、荷重-変位特性のグラフの概形と、単位格子構造の形状、単位格子構造の各辺の長さ、及び単位格子モデルの種類の組み合わせとの関係は予め規定され、記憶部101に記憶されているのが好適である。また、荷重-変位特性における傾きと構造柱の太さとの関係は予め規定され、記憶部101に記憶されているのが好適である。また、荷重-変位特性における積分値の差分と交差部の容積との関係は予め規定され、記憶部101に記憶されているのが好適である。なお、図31において説明した物性情報に基づく形状パラメータの決定方法はあくまで一例であり、任意の方法により決定可能である。
上述してきたように、第3の実施形態の生成部103は、質感情報及び程度情報に基づいて物性情報を特定し、特定した物性情報に基づいて形状パラメータを決定することができる。これにより、質感情報と形状パラメータとの対応関係をより詳細に設定することができるので、より適切な物性の材料を用いて装具を設計することが期待される。
(第4の実施形態)
また、例えば、情報処理装置10は、荷重-変位特性のグラフを用いて識別情報の入力を行うことが可能である。
すなわち、第4の実施形態の情報処理装置10において、受付部102は、識別情報として、荷重の変化と変位量の変化との関係により表される物性情報に関する入力を受け付ける。生成部103は、受付部102により受け付けられた物性情報に基づいて、装具の物性を規定する形状パラメータを決定する。生成部103は、決定した形状パラメータを含むモデルデータを生成する。
第4の実施形態の情報処理装置10は、図13に示した情報処理装置10と同様の構成を備え、処理の一部が相違する。そこで、第4の実施形態では、第2の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第2の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については説明を省略する。
図32は、第4の実施形態の情報処理装置10の動作例を示すフローチャートである。図32に示す処理手順のうち、ステップS401の処理は、図25に示したステップS201の処理と同様であるので説明を省略する。また、ステップS404~ステップS409の各処理は、図25に示したステップS204~ステップS209の各処理と同様であるので説明を省略する。
また、以下の説明では、図33を参照しつつ説明する。図33は、第4の実施形態の生成部103の処理を説明するための図である。なお、図33の荷重-変位特性のグラフにおいて、変位はX方向に対応し、荷重はY方向に対応する。
図32に示すように、受付部102は、インソールの領域ごとに、物性情報の入力を受け付ける(ステップS402)。
図33に示すように、受付部102は、荷重-変位特性のグラフ上で「傾き」及び「積分値の差分」の入力を受け付ける。例えば、操作者は、荷重-変位特性のグラフ上で点P31の位置を任意の位置に移動させることにより、荷重-変位特性における「傾き」を指定する。例えば、操作者は、硬い領域を設定したい場合には、点P31の位置を上方(若しくは左方)へ移動させる。一方、操作者は、柔らかい領域を設定したい場合には、点P31の位置を下方(若しくは右方)へ移動させる。
また、例えば、操作者は、荷重-変位特性のグラフ上で変曲点P32の位置を任意の位置に移動させることにより、荷重-変位特性における「積分値の差分」を指定する。例えば、操作者は、強いフィット感の領域を設定したい場合には、変曲点P32の位置を上方(若しくは左方)へ移動させる。一方、操作者は、弱いフィット感の領域を設定したい場合には、点P31の位置を下方(若しくは右方)へ移動させる。
このように、受付部102は、原点Oと点P31とを結ぶ線の「傾き」を受け付ける。また、受付部102は、原点O、点P31、及び変曲点P32を結ぶ三角形の面積を「積分値の差分」として受け付ける。
そして、生成部103は、物性情報に基づいて、インソールの形状パラメータを決定する(ステップS403)。なお、ステップS403の処理は、図32に示したステップS304の処理と同様であるので説明を省略する。
上述してきたように、第4の実施形態の受付部102は、荷重-変位特性のグラフを用いて識別情報の入力を受け付けることができる。これにより、操作者は、物性情報を直感的に入力することができるので、より適切な物性の材料を用いて装具を設計することが期待される。
(第5の実施形態)
また、例えば、医用画像診断装置により被検体の身体の一部(装具の装着部位)の画像データが撮像可能な場合には、この画像データから得られる情報をモデルデータに反映させることができる。
図34は、第5の実施形態のシステム1の概略構成の一例を示す図である。図34に示すように、第5の実施形態のシステム1は、医用画像診断装置30と、情報処理装置40と、造形装置20とを含む。図34に例示する各装置は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等のネットワークにより、直接的、又は間接的に相互に通信可能な状態となっている。なお、図34の造形装置20の構成は、図11に示した造形装置20の構成と同様であるので説明を省略する。
医用画像診断装置30は、人体を傷つけることなく、通常は目視できない部分を画像化した画像データを生成する装置である。具体的には、図34に示す医用画像診断装置30は、被検体の撮影部位における体表の輪郭と、撮影部位内に存在する骨とが少なくとも描出された3次元の画像データ(ボリュームデータ)を生成可能な装置である。例えば、医用画像診断装置30は、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等である。以下、医用画像診断装置10の一例であるX線CT装置が行う撮影について、簡単に説明する。
X線CT装置は、X線を照射するX線管球と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを対向する位置に支持して回転可能な回転フレームを有する架台装置により撮影を行う。X線CT装置は、X線管球からX線を照射させながら回転フレームを回転させることで、投影データを収集し、投影データからX線CT画像データを再構成する。X線CT画像データは、例えば、X線管球とX線検出器との回転面(アキシャル面)における断層像(2次元のX線CT画像データ)となる。
X線検出器は、チャンネル方向に配列されたX線検出素子である検出素子列が、回転フレームの回転軸方向に沿って複数列配列されている。例えば、検出素子列が16列配列されたX線検出器を有するX線CT装置は、回転フレームが1回転することで収集された投影データから、被検体の体軸方向に沿った複数枚(例えば16枚)の断層像を再構成する。また、X線CT装置は、回転フレームを回転させるとともに、被検体又は架台装置を移動させるヘリカルスキャンにより、例えば、心臓全体を網羅した500枚の断層像を3次元のX線CT画像データとして再構成することができる。
ここで、図34に示す医用画像診断装置30としてのX線CT装置は、立位、座位又は臥位の状態の被検体を撮影可能な装置である。かかるX線CT装置は、例えば、X線透過性の高い材質で作成された椅子に座った状態の被検体を撮影して、3次元のX線CT画像データを生成する。
なお、MRI装置は、位相エンコード用傾斜磁場、スライス選択用傾斜磁場及び周波数エンコード用傾斜磁場を変化させることで収集したMR信号から、任意の1断面のMRI画像や、任意の複数断面のMRI画像(ボリュームデータ)を再構成することができる。
第5の実施形態では、医用画像診断装置30は、被検体の足を含む領域が撮影された3次元のX線CT画像データを画像データとして生成する。そして、医用画像診断装置30は、生成した画像データを、情報処理装置40に送信する。
具体的には、医用画像診断装置30は、画像データを、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則った形式のDICOMデータにして、情報処理装置40へ送信する。なお、医用画像診断装置30は、画像データに付帯情報を付与したDICOMデータを作成する。付帯情報には、被検体を一意に識別可能な患者IDや、患者情報(氏名、性別、年齢等)、画像の撮影が行われた検査の種類、検査部位(撮影部位)、撮影時の患者の体位、画像サイズに関する情報等が含まれる。画像サイズに関する情報は、画像空間における長さを実空間における長さに変換する情報として用いられる。なお、第5の実施形態は、医用画像診断装置30が、立位、座位又は臥位の状態の被検体の足を含んで撮影された3次元のX線CT画像データを画像データとして情報処理装置20へ送信する場合であっても、適用可能である。
図35は、第5の実施形態の情報処理装置40が有する機能の一例を示す図である。図35に示すように、情報処理装置40は、記憶部401、受付部402、生成部403、出力制御部404、及び取得部405を有する。情報処理装置40は、図12に示した情報処理装置10と同様のハードウェア構成を有する。なお、図35に示す記憶部401、受付部402、生成部403、及び出力制御部404は、図11に示した記憶部101、受付部102、生成部103、及び出力制御部104と同様の機能を有するので説明を省略する。
取得部405は、画像データからに基づいて、被検体の身体の少なくとも一部の部位の外形データを含む部位情報を取得する。例えば、取得部405は、患者IDに対応する画像データの送信要求を外部I/F17を介して医用画像診断装置30に送信する。外部I/F17は、医用画像診断装置30から受信した画像データを記憶部401に格納する。そして、取得部405は、記憶部401から画像データを取得する。
そして、取得部405は、画像データに基づいて、被検体の足の外形データを含む部位情報を取得する。例えば、取得部405は、3次元のX線CT画像データに対して、エッジ検出処理等の公知の画像処理を行って、足の輪郭(体表面)を抽出する。これにより、取得部203は、画像データから被検体の足の表面形状を3次元で表す外形データを取得する。そして、取得部405は、取得した部位情報を生成部403へ送る。
そして、生成部403は、部位情報に基づいて、モデルデータを生成する。例えば、生成部403は、取得部405により取得された部位情報に基づいて、モデルデータを生成する。例えば、生成部403は、足の外形データに合わせて、インソールの外形データを調整する。生成部403は、調整されたインソールの外形データを含むモデルデータを生成する。
また、出力制御部404は、モデルデータ及び部位情報を同時に表示させる。そして、受付部402は、モデルデータ及び部位情報が同時に表示された画像上で、モデルデータを修正する操作を受け付ける。そして、生成部403は、受付部402により受け付けられた操作に応じてモデルデータを修正する。
図36は、第5の実施形態に係るモデルデータの修正処理を説明するための図である。図36に示すように、出力制御部404は、モデルデータに含まれるインソールの外形データを、部位情報に含まれる足の外形データとともに表示装置16に表示させる。ここで、出力制御部404は、インソールの外形データの位置と、足の外形データの位置とを対応づけて表示させる。
そして、受付部402は、図36の表示画面上でモデルデータを修正する操作を受け付ける。そして、生成部403は、受付部402により受け付けられた操作に応じてモデルデータを修正する。これにより、操作者は、実際の足の外形データを画面上で確認しながら、インソールの外形データを修正することができる。
(第2~第5の実施形態に関するその他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(装具の製造方法)
実施形態の造形装置20は、以下の製造方法により装具を製造することができる。
例えば、造形装置20は、材料押出方式、液槽光重合方式、粉末焼結積層方式等の各種付加造形技術(3次元造形技術)により、装具を造形(成形)することができる。
図37は、実施形態の製造方法の一例を示すフローチャートである。図37に例示の製造方法は、液槽光重合方式による3次元造形技術を実行可能な造形装置20により実行される。造形装置20(造形部21)は、装具の材料となる感光性樹脂を充填するための液槽(タンク)と、液槽内の感光性樹脂を光重合反応により位置選択的に硬化させるためのレーザーとを有する。なお、造形装置20としては、公知の造形装置が任意に適用可能である。
図37に示すように、造形部21は、モデルデータを読み出す(ステップS501)。このモデルデータは、造形装置20で造形する際の元となる情報である。モデルデータは、例えば、製造者により予め作成され、造形装置が有する記憶装置に予め記憶されている。なお、記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等に対応する。
続いて、造形部21は、指定された感光性樹脂をタンクに充填する(ステップS502)。ここで、感光性樹脂は、モデルデータにより予め指定されていても良いし、造形方法が実行される毎に操作者により指定されても良い。
そして、造形部21は、モデルデータに基づいて規定されるタンク内の各位置を、レーザーを用いて位置選択的に硬化させる(ステップS503)。例えば、造形部21は、モデルデータにおいて構造柱が存在する位置に対応するタンク内の位置に対してレーザーを順次照射する。つまり、造形部21は、装具の各領域それぞれの単位格子構造に応じたタンク内の位置を順次硬化させる。これにより、造形部21は、適切な物性の装具を製造することができる。
なお、装具の材料としては、造形技術に利用可能な材料であれば任意の材料を適用可能であり、例えば、付加製造技術により造形可能な任意の感光性樹脂が適宜選択可能である。
(システム1による装具の製造方法)
上述してきたように、実施形態のシステム1は、情報処理装置10及び造形装置20を備える。つまり、システム1は、情報処理装置10及び造形装置20の機能により、装具を製造することができる。
すなわち、システム1において、情報処理装置10は、装具の利用者に与えられる感覚を識別する識別情報の入力を受け付ける。そして、情報処理装置10は、受け付けた識別情報に基づいて、装具を設計するためのモデルデータを生成する。そして、システム1において、造形装置20は、モデルデータに基づいて装具を造形する。
例えば、システム1において、情報処理装置10は、図25に示したステップS201~ステップS209の処理によりモデルデータを生成する。そして、情報処理装置10は、モデルデータを造形装置20に送る。例えば、情報処理装置10の出力制御部104は、モデルデータを造形装置20にて利用可能なデータ形式に変換し、変換後のモデルデータを造形装置20に送る。
そして、システム1において、造形装置20は、図37に示したステップS501~ステップS503の処理により、情報処理装置10から受け付けたモデルデータに基づいて、装具を造形する。
これによれば、システム1は、適切な物性の装具を製造することができる。なお、情報処理装置10及び造形装置20が有する各処理部は、いずれの装置に備えられても良い。例えば、造形装置20が生成部103を備える場合には、造形装置20が識別情報に基づいてモデルデータを生成しても良い。この場合、情報処理装置10の出力制御部104は、受付部102により受け付けられた識別情報を、造形装置20に送ることとなる。
(荷重方向)
上記の実施形態では、例えば図23に示すように荷重方向が図中の鉛直下方向に対応する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、装具内での単位格子構造の方向は、製造者の任意により適宜設定可能である。例えば、手に装着する装具であれば、手と装具との接点における法線方向を荷重方向として定義してもよい。この場合、図18の単位格子構造は、図中の鉛直下方向が人体との接点における法線方向に対応するように装具内に配列される。
以上説明した実施形態によれば、適切な物性の材料を用いて装具を設計することができる情報処理装置、システム、情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
上述の実施形態は、以上の変形例と任意に組み合わせることができるし、以上の変形例同士を任意に組み合わせても良い。
また、上述した実施形態の情報処理装置10,40で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良いし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、各種プログラムを、例えばROM等の不揮発性の記憶媒体に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
(第6の実施形態)
従来の技術では、装具の設計に時間及びコストがかかり、また、品質のばらつきも生じていた。例えば、従来のインソール製造では、義装具士が手作業で行う工程が多いため、装具の設計に時間及びコストがかかり、また、義装具士感での品質のばらつきも生じていた。
第6の実施形態は、装具を容易に設計するとともに、品質を安定化させることが可能な情報処理装置、システム、装具の製造方法、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
図38は、第6の実施形態のシステム2の概略構成の一例を示す図である。図38に示すように、第6の実施形態のシステム2は、医用画像診断装置50と、情報処理装置60と、造形装置70とを含む。図38に例示する各装置は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等のネットワークにより、直接的、又は間接的に相互に通信可能な状態となっている。
医用画像診断装置50は、人体を傷つけることなく、通常は目視できない部分を画像化した画像データを生成する装置である。具体的には、図38に示す医用画像診断装置50は、被検体の撮影部位における体表の輪郭と、撮影部位内に存在する骨とが少なくとも描出された3次元の画像データ(ボリュームデータ)を生成可能な装置である。例えば、医用画像診断装置50は、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等である。以下、医用画像診断装置50の一例であるX線CT装置が行う撮影について、簡単に説明する。
X線CT装置は、X線を照射するX線管球と、被検体を透過したX線を検出するX線検出器とを対向する位置に支持して回転可能な回転フレームを有する架台装置により撮影を行う。X線CT装置は、X線管球からX線を照射させながら回転フレームを回転させることで、投影データを収集し、投影データからX線CT画像データを再構成する。X線CT画像データは、例えば、X線管球とX線検出器との回転面(アキシャル面)における断層像(2次元のX線CT画像データ)となる。
X線検出器は、チャンネル方向に配列されたX線検出素子である検出素子列が、回転フレームの回転軸方向に沿って複数列配列されている。例えば、検出素子列が16列配列されたX線検出器を有するX線CT装置は、回転フレームが1回転することで収集された投影データから、被検体の体軸方向に沿った複数枚(例えば16枚)の断層像を再構成する。また、X線CT装置は、回転フレームを回転させるとともに、被検体又は架台装置を移動させるヘリカルスキャンにより、例えば、心臓全体を網羅した500枚の断層像を3次元のX線CT画像データとして再構成することができる。
ここで、図38に示す医用画像診断装置50としてのX線CT装置は、立位、座位又は臥位の状態の被検体を撮影可能な装置である。かかるX線CT装置は、例えば、X線透過性の高い材質で作成された椅子に座った状態の被検体を撮影して、3次元のX線CT画像データを生成する。
なお、MRI装置は、位相エンコード用傾斜磁場、スライス選択用傾斜磁場及び周波数エンコード用傾斜磁場を変化させることで収集したMR信号から、任意の1断面のMRI画像や、任意の複数断面のMRI画像(ボリュームデータ)を再構成することができる。
本実施形態では、医用画像診断装置50は、被検体の足を含む領域が撮影された3次元のX線CT画像データを画像データとして生成する。そして、医用画像診断装置50は、生成した画像データを、情報処理装置60に送信する。
具体的には、医用画像診断装置50は、画像データを、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則った形式のDICOMデータにして、情報処理装置60へ送信する。なお、医用画像診断装置50は、画像データに付帯情報を付与したDICOMデータを作成する。付帯情報には、被検体を一意に識別可能な患者IDや、患者情報(氏名、性別、年齢等)、画像の撮影が行われた検査の種類、検査部位(撮影部位)、撮影時の患者の体位、画像サイズに関する情報等が含まれる。画像サイズに関する情報は、画像空間における長さを実空間における長さに変換する情報として用いられる。なお、本実施形態は、医用画像診断装置50が、立位、座位又は臥位の状態の被検体の足を含んで撮影された3次元のX線CT画像データを画像データとして情報処理装置60へ送信する場合であっても、適用可能である。
情報処理装置60は、装具を装着する被検体(装着者)の画像データを医用画像診断装置50から取得する。例えば、情報処理装置60の操作者(義装具士等)は、被検体の患者IDを用いた検索を行う。これにより、情報処理装置60は、医用画像診断装置50から被検体の足を含んで撮影された3次元のX線CT画像データを取得する。
そして、情報処理装置60は、被検体の画像データから取得される各種情報を用いて、被検体が装着する装具を設計するためのモデルデータを生成する。モデルデータとは、被検体(装具の装着者)により装着される装具を造形装置70で造形する際の元となる情報である。モデルデータを生成する処理内容については後述する。そして、情報処理装置60は、生成したモデルデータを造形装置70へ送る。
なお、以下の実施形態では、装具の一例として医療用のインソールについて説明する。ただし、実施形態はインソールに限定されるものではなく、例えば、手、肘、膝、肩、頭部等、人体の各部位に当てて利用される装具に広く適用可能である。また、実施形態は医療用の装具に限定されるものではなく、例えば、スポーツや日常生活における身体機能の補助や保護のために利用される装具に広く適用可能である。なお、インソールは、中敷き、中底等とも呼ばれる。また、以下の実施形態に係るインソールは、第1の実施形態にて説明したインソール100に対応する。
造形装置70は、情報処理装置60から受け取ったモデルデータに基づいて、被検体が装着する装具を造形する造形部71を備える。本実施形態では、造形部71は、3次元プリンタの機能を提供するハードウェア要素群で構成される。
例えば、造形部71は、インソールの材料となる感光性樹脂を充填するための液層(夕ンク)と、液層内の感光性樹脂を光重合反応により硬化させるためのレーザーとを有する。造形部71は、モデルデータに基づいて規定される液層内の位置を、レーザーを用いて位置選択的に硬化させることで、モデルデータに対応する3次元構造体を造形する。
次に、本実施形態の情報処理装置60について説明する。図39は、第6の実施形態の情報処理装置60のハードウェア構成の一例を示す図である。図39に示すように、情報処理装置60は、CPU(Central Processing Unit)61と、ROM(Read Only Memory)62と、RAM(Random Access Memory)63と、補助記憶装置64と、入力装置65と、表示装置66と、外部I/F(Interface)67と、を備える。
CPU61は、プログラムを実行することにより、情報処理装置60の動作を統括的に制御し、情報処理装置60が有する各種の機能を実現するプロセッサ(処理回路)である。情報処理装置60が有する各種の機能については後述する。
ROM62は、不揮発性のメモリであり、情報処理装置60を起動させるためのプログラムを含む各種データ(情報処理装置60の製造段階で書き込まれる情報)を記憶する。RAM63は、CPU61の作業領域を有する揮発性のメモリである。補助記憶装置64は、CPU61が実行するプログラム等の各種データを記憶する。補助記憶装置64は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成される。
入力装置65は、情報処理装置60を使用する操作者が各種の操作を行うためのデバイスである。入力装置65は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル又はハードウェアキーで構成される。なお、操作者は、例えば、装具を作成する義装具士、医師や理学療法士等の医療関係者、及び装具を装着する被検体等に対応する。
表示装置66は、各種情報を表示する。例えば、表示装置66は、画像データやモデルデータ、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、医用画像等を表示する。表示装置66は、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ又はブラウン管ディスプレイで構成される。なお、例えばタッチパネルのような形態で、入力装置65と表示装置66とが一体に構成されても良い。
外部I/F67は、医用画像診断装置50や造形装置70等の外部装置と接続(通信)するためのインタフェースである。
図40は、第6の実施形態の情報処理装置60が有する機能の一例を示す図である。なお、図40の例では、本実施形態に関する機能のみを例示しているが、情報処理装置60が有する機能はこれらに限られるものではない。図40に示すように、情報処理装置60は、記憶部601、ユーザインタフェース部602、学習部603、取得部604、生成部605、及び出力制御部606を有する。記憶部601の機能は、例えば、図39に示す補助記憶装置64(例えばHDD)により実現される。ユーザインタフェース部602の機能は、例えば、入力装置65及び表示装置66により実現される。学習部603、取得部604、生成部605、及び出力制御部606の各機能は、例えば、CPU61により実現される。
ここで、第6の実施形態の情報処理装置60は、学習済みモデルを備え、学習済みモデルを用いることで、装具を容易に設計するとともに品質を安定化させることが可能である。なお、以下の実施形態では、情報処理装置60が学習済みモデルを生成する場合を説明するが、これに限定されるものではない。例えば、情報処理装置60は、情報処理装置60とは異なる情報処理装置により生成された学習済みモデルを用いて、装具を容易に設計するとともに品質を安定化させることが可能である。
図41は、第6の実施形態の情報処理装置60により行われる学習時及び運用時の処理を示す図である。図41の上段に示すように、学習時には、情報処理装置60は、例えば、被検体S-1、被検体S-2、・・・及び被検体S-N(以下、「被検体S-1~S-N」と略記する)それぞれの足情報、モデルデータ、及び評価情報を用いて機械学習を行う。ここで、各被検体S-1~S-Nの足情報は、各被検体S-1~S-Nの足の外形データを含む情報である。また、各被検体S-1~S-Nのモデルデータは、各被検体S-1~S-Nの足に装着されるインソールを設計するための情報である。また、各被検体S-1~S-Nの評価情報は、各被検体S-1~S-Nのインソールの評価に関する情報である。情報処理装置60は、各被検体S-1~S-Nの足情報、モデルデータ、及び評価情報を用いた機械学習を行うことで、足情報の入力によりモデルデータを出力可能な学習済みモデルを構築する。この学習済みモデルは、例えば、情報処理装置60の記憶部601に格納される。
そして、図41の下段に示すように、運用時には、情報処理装置60は、インソールの作成対象である被検体S-Xの足情報を学習済みモデルに対して入力することで、学習済みモデルから被検体S-Xのモデルデータを出力させる。そして、情報処理装置60は、学習済みモデルから出力された被検体S-Xのモデルデータを操作者(インソールを設計する者)に提示する。これにより、情報処理装置60は、装具を容易に設計するとともに品質を安定化させることが可能である。
なお、図41では、足情報の入力によりモデルデータを出力可能な学習済みモデルについて例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、情報処理装置60は、手の外形データを含む情報(手情報)と、手に装着される手用装具を設計するためのモデルデータとを用いた機械学習を行う。これにより、情報処理装置60は、手情報の入力により手用装具を設計するためのモデルデータを出力可能な学習済みモデルを構築することができる。すなわち、情報処理装置60は、被検体の部位の外形データを含む部位情報と、その部位に装着される装具を設計するためのモデルデータとを用いた機械学習を行う。これにより、情報処理装置60は、部位情報の入力により当該部位に装着される装具のモデルデータを出力可能な学習済みモデルを構築することができる。
図40の説明に戻り、情報処理装置60が有する記憶部601、ユーザインタフェース部602、学習部603、取得部604、生成部605、及び出力制御部606の各機能について詳細に説明する。
記憶部601は、機械学習に用いられる各種情報や、機械学習を行うための機械学習用プログラム等を記憶する。また、記憶部601は、機械学習により構築された学習済みモデルを記憶する。また、記憶部601は、医用画像診断装置により撮影された画像データ(DICOMデータ)を記憶することも可能である。
ユーザインタフェース部602は、操作者の入力を受け付ける機能、及び、各種情報を出力する機能を有する。例えば、ユーザインタフェース部602は、操作者が入力装置15を介して行った入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号へ変換して情報処理装置60内の各部へ送る。また、ユーザインタフェース部602は、情報処理装置60内の各部から各種情報を受け取り、受け取った情報を記憶部101に格納したり、表示装置16に表示させたりする。また、ユーザインタフェース部602は、操作者により指定された情報を外部I/F67を経由して外部装置に送る。
学習部603は、複数の被検体S-1~S-Nの部位について、各被検体S-1~S-Nの部位の外形データを含む部位情報と、各被検体S-1~S-Nの部位に装着される装具を設計するためモデルデータと、装具の評価に関する評価情報とを用いた機械学習を行うことで、学習済みモデルを生成する。
例えば、ユーザインタフェース部602が学習済みモデルの生成要求を受け付けると、その生成要求が学習部603に送られる。学習部603は、学習済みモデルの生成要求を受け付けると、各被検体S-1~S-Nの足情報と、各被検体S-1~S-Nのインソールのモデルデータと、各被検体S-1~S-Nのインソールの評価情報とを記憶回路204から読み出す。そして、学習部603は、読み出した各被検体S-1~S-Nの足情報と、各被検体S-1~S-Nのインソールのモデルデータと、各被検体S-1~S-Nのインソールの評価情報とを用いて、機械学習を行う。
以下、機械学習に用いられる「足情報」、「モデルデータ」、及び「評価情報」について、順に説明する。
まず、「足情報」について説明する。足情報は、各被検体S-1~S-Nの足の外形データを含む情報である。例えば、足の外形データは、各被検体S-1~S-Nの足が撮影された画像データから取得される。
図42は、第6の実施形態の足情報の一例を示す図である。図42には、一例として、被検体S-1の足情報を例示する。図42に示すように、被検体S-1の足情報は、足の外形データを含む。ここで、足の外形データは、被検体S-1の足の3次元的な表面形状を表す情報である。足の外形データは、例えば、被検体S-1の足が撮影された3次元のX線CT画像データから取得される。なお、足の外形データを取得するための処理は、後述する取得部604における処理と同様であるので、ここでは説明を省略する。
このように、各被検体S-1~S-Nの足情報は、例えば、足の外形データを含む。各被検体S-1~S-Nの足情報は、情報処理装置60、又は、情報処理装置60とは異なる他の情報処理装置により各被検体S-1~S-Nの画像データから取得され、記憶部601に予め記憶されている。なお、図42では、部位情報が部位の外形データを含む場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、部位情報は、外形データ以外にも、X線CT画像データから取得可能な様々な特徴情報を含むことが可能である。
次に、「モデルデータ」について説明する。モデルデータは、各被検体S-1~S-Nの足に装着されるインソールを設計するための情報であり、インソールを造形装置70で造形する際の元となる情報である。モデルデータは、例えば、インソールの外形データと、インソールの物性を規定する形状パラメータとを含む情報である。
図43は、第6の実施形態のインソールの外形データの一例を示す図である。図43の左図には、右足用のインソールを人体の各部位と直接的または間接的に接触する当接面側から見た平面図を例示する。図43の右図には、左図の側面図を例示する。なお、図43の上側にインソールのつま先側を示し、図43の下側にインソールの踵側を示す。
図43に示すように、例えば、インソールの外形データは、領域R1、領域R2、及び領域R3の情報を含む。このうち、領域R1は、インソールの全体的な外形を構成する領域である。領域R2は、踵骨付近の部位が接する領域である。領域R3は、母指の中足指関節付近の部位が接する領域である。
ここで、インソールの外形データは、領域R1、領域R2、及び領域R3のそれぞれについて、各領域の形状、各領域の大きさ、各領域の厚み、各領域の位置に関する情報を含む。また、インソールの外形データは、領域R1に対する領域R2の位置を示す情報と、領域R1に対する領域R3の位置を示す情報とを含む。
また、インソールの形状パラメータは、単位格子構造を構成する複数の構造柱の数、構造柱の方向、構造柱の太さ、構造柱が交差する交差部の容積、単位格子構造の形状、及び単位格子構造の大きさのうち少なくとも1つを含む。
ここで、単位格子構造は、インソールの各領域を構成する構成単位であり、多角柱形状の空間を一単位とする。単位格子構造は、複数の構造柱により構成され、各種の形状パラメータをそれぞれ設定することにより様々な物性を実現することができる。
図44は、第6の実施形態のインソールの形状パラメータの一例を示す図である。図44に示すように、例えば、形状パラメータは、インソールの領域ごとに対応づけられている。図44において、「単位格子構造の形状」、「単位格子構造の各辺の長さ」、「単位格子モデル」、「構造柱の太さ」、及び「交差部の容積」は、形状パラメータの一例である。
図44に示す例では、例えば、領域R1には、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S1」、単位格子モデル「モデルC」、構造柱の太さ「W1」。及び交差部の容積「V1」が規定される。これは、領域R1がモデルCの単位格子モデルにより構成され、その構造柱の太さが「W1」であり、その交差部の容積が「V1」であることを示す。
また、領域R2には、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S2」、単位格子モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W2」。及び交差部の容積「V2」が規定される。これは、領域R2がモデルAの単位格子モデルにより構成され、その構造柱の太さが「W2」であり、その交差部の容積が「V2」であることを示す。
また、領域R3には、単位格子構造の形状「立方体形状」、単位格子構造の各辺の長さ「S3」、単位格子モデル「モデルA」、構造柱の太さ「W3」。及び交差部の容積「V3」が規定される。これは、領域R3がモデルAの単位格子モデルにより構成され、その構造柱の太さが「W3」であり、その交差部の容積が「V3」であることを示す。
このように、各領域R1~領域R3は、単位格子構造の形状、単位格子構造の各辺の長さ、構造柱の数、構造柱の方向、構造柱の太さ、及び交差部の容積のうち少なくとも1つの形状パラメータが異なる。これにより、各領域R1~領域R3は、互いに異なる物性を有する。また、領域R1の単位格子構造、領域R2の単位格子構造、及び領域R3の単位格子構造は、互いに同一の形状及び同一の大きさ(ここでは、各辺の長さ)を有する空間を一単位とすることが好適である。
以下、図45~図51を用いて、単位格子構造の形状、単位格子構造の各辺の長さ、モデル、構造柱の太さ、及び交差部の容積の各種の形状パラメータについては説明する。
まず、図44の「単位格子構造の形状」及び「単位格子構造の各辺の長さ」について説明する。「単位格子構造の形状」は、単位格子構造が一単位とする空間の形状である。「単位格子構造の各辺の長さ」は、単位格子構造が一単位とする空間の大きさに対応する。
図45は、第6の実施形態の単位格子構造の形状及び単位格子構造の各辺の長さについて説明するための図である。図45に示すように、「単位格子構造の形状」は、6つの正方形の面により構成される立方体形状に対応する。この立方体形状の空間は、頂点に対応する8つの点P1~点P8を有する。また、図45の例では、この空間は立方体形状であるため、何れの辺の長さも等しい。図45の空間の各辺の長さは、例えば、点P1と点P2との距離で表される。
ここで、単位格子構造における線及び面の表記方法について説明する。本実施形態では、線及び面を表記する場合、その線又は面を構成する頂点を括弧書きで示す。例えば、「線(P1,P2)」という表記は、点P1と点P2とを結ぶ線を表す。また、「線(P1,P7)」という表記は、点P1と点P7とを結ぶ線(対角線)を表す。また、「面(P1,P2,P3,P4)」という表記は、点P1、点P2、点P3、及び点P4を頂点とする面(底面)を表す。なお、構造柱は、線の表記方法と同様に表記する。
第6の実施形態に係る単位格子構造は、複数の点P1~点P8のうち2点を接続する構造柱を複数備える。つまり、図45の空間形状は、単位格子構造の形状に対応する。構造柱の数及び方向(配置方向)については、例えば、単位格子モデルにより予め規定されている。
なお、図45に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図45に示した立方体形状の空間はあくまで一例であり、単位格子構造が一単位とする空間形状は、多角柱形状であっても良い。この場合、単位格子構造は、例えば、三角柱形状、四角柱形状、及び六角柱形状のうちいずれか1つの形状の空間を一単位とすることが好適である。三角柱形状としては正三角柱形状が好適である。また、四角柱形状としては上述した立方体形状以外に直方体形状が好適である。また、六角柱形状としては正六角柱形状が好適である。ただし、装具を構成する各領域R1~領域R3の単位格子構造は、同一の空間形状であるのが好適である。また、構造柱は、多角柱形状又は円柱形状等の柱状である。また、構造柱の短手方向とは、構造柱の軸方向に直交する方向である。
次に、図44の「単位格子モデル」について説明する。単位格子モデルとは、単位格子構造の基本的な骨格形状を示す。
図46は、第6の実施形態の単位格子モデルについて説明するための図である。図46において、破線は、一単位に相当する立方体形状の空間(図45の空間)を示す。また、実線は、構造柱の存在を示す。なお、図46に例示の単位格子モデルは、その配置方向が図46の鉛直下方向に装具にかかる荷重方向と一致するようにインソールの各領域に配置されるのが好適である。なお、装具にかかる荷重方向とは人体の各部位から受けた荷重が加わる方向である。
図46に示すように、例えば、単位格子モデルは、モデルA、モデルB、モデルC、モデルD、及びモデルEを含む。ここで、モデルA、モデルB、及びモデルCは、立方体形状の空間の中心に構造柱の交差部を有する。また、モデルD及びモデルEは、立方体形状を構成する複数の面のうち少なくとも1つの面の中心に構造柱の交差部を有する。
モデルAは、立方体形状の対角線に沿って配置される4本の構造柱を備える単位格子モデルである。具体的には、モデルAは、構造柱(P1,P7)、構造柱(P2,P8)、構造柱(P3,P5)、及び構造柱(P4,P6)を有する。
モデルBは、モデルAと同様の4本の構造柱に加えて、立方体形状を構成する底面及び上面を囲む複数の辺に沿って配置される8本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルBは、モデルAが有する4本の構造柱を有する。更に、モデルBは、底面(P1,P2,P3,P4)を囲む4本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、及び構造柱(P4,P1)を有する。また、モデルBは、上面(P5,P6,P7,P8)を囲む4本の構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有する。
モデルCは、モデルBと同様の12本の構造柱に加えて、荷重方向に沿って配置される4本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルCは、モデルBが有する12本の構造柱を有する。更に、モデルCは、インソールにかかる荷重方向に沿って配置される4本の構造柱(P1,P5)、構造柱(P2,P6)、構造柱(P3,P7)、及び構造柱(P4,P8)を有する。
つまり、モデルBとモデルCとの差異は、荷重方向に沿って配置される4本の構造柱(P1,P5)、構造柱(P2,P6)、構造柱(P3,P7)、及び構造柱(P4,P8)を有するか否かである。
モデルDは、6つの面それぞれの対角線に沿って配置される12本の構造柱を備える単位格子モデルである。具体的には、モデルDは、底面(P1,P2,P3,P4)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P3)及び構造柱(P2,P4)を有する。また、モデルDは、上面(P5,P6,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P5,P7)及び構造柱(P6,P8)を有する。また、モデルDは、側面(P1,P2,P5,P6)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P6)及び構造柱(P2,P5)を有する。また、モデルDは、側面(P2,P3,P6,P7)の対角線に沿った2本の構造柱(P2,P7)及び構造柱(P3,P6)を有する。また、モデルDは、側面(P3,P4,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P3,P8)及び構造柱(P4,P7)を有する。また、モデルDは、側面(P1,P4,P5,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P8)及び構造柱(P4,P5)を有する。
モデルEは、モデルDと比較して底面及び上面の対角線に沿った構造柱を備えず、底面及び上面を囲む複数の辺に沿って配置される8本の構造柱を更に備える単位格子モデルである。具体的には、モデルEは、側面(P1,P2,P5,P6)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P6)及び構造柱(P2,P5)を有する。また、モデルEは、側面(P2,P3,P6,P7)の対角線に沿った2本の構造柱(P2,P7)及び構造柱(P3,P6)を有する。また、モデルEは、側面(P3,P4,P7,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P3,P8)及び構造柱(P4,P7)を有する。また、モデルEは、側面(P1,P4,P5,P8)の対角線に沿った2本の構造柱(P1,P8)及び構造柱(P4,P5)を有する。また、モデルEは、底面(P1,P2,P3,P4)を囲む4本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、及び構造柱(P4,P1)を有する。また、モデルEは、上面(P5,P6,P7,P8)を囲む4本の構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有する。
つまり、モデルD及びモデルEの差異は、底面及び上面に配置された構造柱の有無である。具体的には、底面及び上面の対角線に沿った4本の構造柱(P1,P3)、構造柱(P2,P4)、構造柱(P5,P7)、及び構造柱(P6,P8)を有するのが、モデルDである。また、底面及び上面を囲む8本の構造柱(P1,P2)、構造柱(P2,P3)、構造柱(P3,P4)、構造柱(P4,P1)、構造柱(P5,P6)、構造柱(P6,P7)、構造柱(P7,P8)、及び構造柱(P8,P5)を有するのが、モデルEである。
なお、図6では、モデルD及びモデルEの構造柱を2種類の太さの実線によって図示したが、これは実際の構造柱の太さを示すものではなく、図示の明瞭化を意図したものである。つまり、太い方の実線は、立方体形状の空間を箱に見立てた場合に、「箱の手前側に見える面」に含まれる構造柱を示す。また、細い方の実線は、立方体形状の空間を箱に見立てた場合に、「箱の奥側に見える面」にのみ含まれる構造柱を示す。なお、「箱の手前側に見える面」とは、上面(P5,P6,P7,P8)、側面(P1,P2,P5,P6)、及び側面(P1,P4,P5,P8)である。また、「箱の奥側に見える面」とは、底面(P1,P2,P3,P4)、側面(P2,P3,P6,P7)、及び側面(P3,P4,P7,P8)である。
つまり、本実施形態のインソールの各領域は、複数の単位格子モデルが繰り返し連続して配列された構造である。具体的には、インソールの各領域は、複数の単位格子構造が同一平面上に配列された層を少なくとも1つ有し、この層が積層されて構成される。なお、構造柱の断面形状は、四角形、五角形、六角形等の多角形、円形、楕円形等、任意の形状が適用可能である。
なお、図46に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図46に示したモデルはあくまで一例であり、単位格子モデルは任意の位置に構造柱を備えていても良い。ただし、単位格子構造は、多角柱形状の空間を構成する全ての頂点をいずれかの構造柱が通るように、複数の構造柱を備えるのが好適である。
また、単位格子構造は、立方体形状の空間の中心に構造柱の交差部を有する構造、及び、立方体形状を構成する複数の面のうち少なくとも1つの面の中心に構造柱の交差部を有する構造に限定されるものではない。ただし、単位格子構造は、複数の頂点とは異なる位置で少なくとも2つの構造柱が交差する交差部を有するのが好適である。
図47は、第6の実施形態の単位格子モデルの種類と荷重-変位特性の関係を示す図である。ここで、荷重-変位特性とは、物体に印加された荷重[N]と、その荷重による物体の変位[mm]との関係を表したものであり、物体の硬度や密着性を表す物理的指標として利用される。本実施形態では、荷重-変位特性は、単位格子構造により構成された物体に対して荷重を印加することにより計測される。荷重-変位特性のグラフにおいて、グラフの縦軸は荷重[N]に対応し、グラフの横軸は変位[mm]に対応する。つまり、荷重-変位特性のグラフでは、硬い物体ほど急峻なグラフが得られ、柔らかい物体ほど緩やかなグラフが得られる。なお、通常、グラフは曲線として得られる場合が多いが、以下の各図では説明の簡素化のため直線で示す。
図47では、図46に示したモデルA、モデルB、及びモデルCの単位格子モデルにより構成された物体の荷重-変位特性を用いて説明する。なお、図47において、モデルA、モデルB、及びモデルCの構造柱の太さ及び交差部の容積は一定である。
図47に示す荷重-変位特性から、各モデルに含まれる構造柱の数が多いほど、物体が硬くなる傾向が認められる。また、図47に示す荷重-変位特性から、構造柱の方向が荷重方向に近いほど、物体が硬くなる傾向が認められる。このため、異なる種類の単位格子モデルで各領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
次に、図44の「構造柱の太さ」について説明する。構造柱の太さとは、単位格子モデルにおける各構造柱の太さであり、例えば、構造柱の太さ(L)と、単位空間の一辺の長さ(S)との比率により表される。
図48は、第6の実施形態のL/Sと荷重-変位特性の関係を示す図である。図48では、図46のモデルAにおいて、異なる太さの構造柱を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。なお、図48において、各物体の交差部の容積は一定である。
また、図48では、構造柱の太さの一例として、構造柱の太さ(L)と、単位空間の一辺の長さ(S)との比率が異なる場合を説明する。図48の例では、「L/S:1/3」が最も構造柱が太い場合に対応し、「L/S:1/5」及び「L/S:1/8」が順に構造柱がより細い場合に対応する。なお、構造柱の太さは、例えば、構造柱の「短手方向の断面において、重心を通る直線の中で、最も長い直線の長さとすることができる。
図48に示す荷重-変位特性から、L/Sが大きい(太い)ほど、物体が硬くなる傾向が認められる。また、L/Sが小さい(細い)ほど、物体が柔らかくなる傾向が認められる。このため、異なる太さの構造柱を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
次に、図44の「交差部の容積」について説明する。交差部の容積とは、単位空間において少なくとも2つの構造柱が交差する部位(交差部)の容積である。
図49は、第6の実施形態によって生成される単位格子モデルの構造柱の交差部の容積と荷重-変位特性の関係を示す図である。図49には、荷重印加時において、交差部の容積と荷重-変位特性の関係を例示する。図49では、図46のモデルAにおいて、異なる容積の交差部を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。図49において、各物体の構造柱の太さ(L)は一定である。なお、図49に示す荷重印加時の荷重-変位特性においては、荷重に応じた変位を表すグラフ上の点(位置)が、グラフ中の矢印の方向に向かって移動することとなる。
図49に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が大きい場合には、グラフに変曲点P11が認められる。つまり、交差部の容積が大きい物体は、荷重を印加していった場合に、原点Oから変曲点P11までの間では硬い物質のように振る舞い、変曲点P11以降には柔らかい物質のように振る舞う。この荷重-変位特性における物性の変化(グラフの傾きの変化)は、装具を利用する人がインソールに荷重を印加したときの密着性として感じられる。また、交差部の容積が中程度の物体は、柔らかい物体と同様に振る舞う。このため、異なる容積の交差部を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図50は、第6の実施形態の交差部の容積と荷重-変位特性の関係を示す図である。図50には、荷重解放時において、交差部の容積と荷重-変位特性の関係を例示する。図50では、図46のモデルAにおいて、異なる容積の交差部を有する物体の荷重-変位特性を用いて説明する。図50において、各物体の構造柱の太さ(L)は一定である。なお、図50に示す荷重解放時の荷重-変位特性においては、荷重に応じた変位を表すグラフ上の点(位置)が、グラフ中の矢印の方向に向かって移動することとなる。また、図50に示す破線のグラフは、荷重印加時のグラフに対応する。
図50に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が大きい場合には、形状回復速度が速く、比較的線形に近い傾斜が得られる。つまり、交差部の容積が大きい物体は、荷重を解放していった場合の変位の戻りが速い。この物性は、装具を利用する人がインソールから荷重を解放したときの密着性として感じられる。一方、図50に示す荷重-変位特性において、交差部の容積が小さい場合には、形状回復速度が遅く、変曲点P12が認められる。つまり、交差部の容積が小さい物体は、荷重を解放していった場合に、変曲点P12までは変位の変化量が小さく、変曲点P12から原点Oまでの間で形状が元に戻る。このため、異なる容積の交差部を有する複数の領域を構成することで、異なる物性を有する複数の領域を設けることができる。
図51は、第6の実施形態の交差部の容積に応じた形状回復速度の違いについて説明するための図である。図51では、図46のモデルAにおける単位格子構造の上面から底面に向けて加重を印加した場合において、交差部の容積に応じた形状回復速度の違いについて説明する。図51には、荷重印加時から荷重解放時に移行したときの交差部の形状の変化と、その変化における形状回復速度の速さを示す。図51の上段には交差部の容積が大きい場合を示し、中段には交差部の容積が中程度の場合を示し、下段には交差部の容積が小さい場合を示す。なお、形状回復速度を示す矢印の長さは、形状回復速度の速さに対応する。
図51において、交差部の形状について説明する。特段容積の調整を行わない場合には、交差部は、図51の中段(荷重解放時)に示すような形状となる。本実施形態では、この形状を、交差部の容積が中程度である状態として説明する。
交差部の容積が大きい場合には、交差部は、図51の上段(荷重解放時)に示すように、交差部を略中心とする球形状又は多面体形状を有する。つまり、交差部は、複数の構造柱を単に交差させた状態と比較して積極的に隆起した形状を有する。この場合、交差部は、構造柱の短手方向の断面より大きい断面を有する。具体的には、交差部の断面の面積は、構造柱の短手方向の断面と比較して1.1倍以上20倍以下の断面であることが好適であり、1.2倍以上10倍以下の面積であることがより好適であり、特に1.5倍以上5倍以下の面積であることがより好適である。なお、ここで交差部の断面の面積は、交差部の重心を通る面の中で、面積が最大となる面を基準とする。
一方、交差部の容積が小さい場合には、交差部は、図51の下段(荷重解放時)に示すように、交差部付近の構造柱を細くした形状を有する。この場合、交差部は、構造柱の短手方向の断面より小さい断面を有する。具体的には、交差部の断面の面積は、構造柱の短手方向の断面と比較して0.05倍以上0.9倍以下の断面であることが好適であり、0.1倍以上0.8倍以下の面積であることがより好適であり、特に0.2倍以上0.7倍以下の面積であることが特に好適である。なお、ここで交差部の断面の面積は、交差部の重心を通る面の中で、面積が最大となる面を基準とする。
ここで、図51に示すように、荷重印加時には、形状を回復するためのエネルギーが交差部に蓄積されると考えられる。例えば、図51の上側から下側へ向けて荷重が印加された場合には、交差部の領域R13の両側にある2本の構造柱が押し広げられる結果、これを元に戻すための復元力が領域R13に蓄積される。また、交差部の領域R14の両側にある2本の構造柱が狭められる結果、これを元に戻すための反発力が領域R14に蓄積される。
交差部の容積が大きい場合には、復元力及び反発力は大きなエネルギーとして蓄積される。このため、領域R11の復元力は領域R13の復元力よりも大きく、領域R12の反発力は領域R14の反発力よりも大きくなる。この結果、交差部の容積が大きいほど形状回復速度が速くなると考えられる。
また、交差部の容積が小さい場合には、復元力及び反発力は小さなエネルギーとして蓄積される。このため、領域R15の復元力は領域R13の復元力よりも小さく、領域R16の反発力は領域R14の反発力よりも小さくなる。この結果、交差部の容積が小さいほど形状回復速度が遅くなると考えられる。
このように、各被検体S-1~S-Nのモデルデータは、例えば、インソールの外形データ及びインソールの形状パラメータを含む。なお、各被検体S-1~S-Nのモデルデータは、各被検体S-1~S-Nのインソールが造形装置70により造形された際に元となった情報である。つまり、各被検体S-1~S-Nのモデルデータは、各被検体S-1~S-Nのインソールを製造した者によって予め生成されたものであり、記憶部601に予め記憶されている。
なお、図45~図51に示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、図51では、交差部の容積を3段階で示したが、3段階に限定されるものではなく、所望の容積になるように製造可能である。
次に、「評価情報」について説明する。評価情報は、各被検体S-1~S-Nのインソールの評価に関する情報である。例えば、評価情報は、各被検体S-1~S-Nによるインソールの装着感に関する装着感評価情報、及び、各被検体S-1~S-Nの症状に関する症状評価情報のうち少なくとも一方を含む。
装着感評価情報は、例えば、インソールの装着のしやすさ、インソール装着時の締まり具合、サポート感、通気性、装着に要する時間、及びデザイン等の評価項目に基づいて、各被検体S-1~S-Nにより評価される情報である。例えば、装着感評価情報は、「1」~「3」の3段階の数値(スコア)で表される。この数値は、例えば、数値が高いほど評価が高いことを示す。
症状評価情報は、例えば、インソール装着時の姿勢の保持具合、インソールの利用前後における姿勢の変化、及びインソールの利用前後の骨格等の変形の改善状況等の評価項目に基づいて評価される情報である。例えば、症状評価情報は、各被検体S-1~S-N、各被検体S-1~S-Nの周囲にいる者(家族等)、又は各被検体S-1~S-Nの症状や治療具合を評価する医師や理学療法士等の医療従事者によって評価される。例えば、症状評価情報は、「1」~「3」の3段階の数値(整数)で表される。この数値は、例えば、数値が高いほど評価が高いことを示す。
このように、評価情報は、装着感評価情報及び症状評価情報のうち少なくとも一方を含む。なお、評価情報は、学習済みモデルを構築する者によって収集され、記憶部601に予め記憶されている。例えば、学習済みモデルを構築する者は、被検体や家族、医療関係者等に対してアンケート調査等を行って評価情報を収集する。なお、上記の説明はあくまで一例であり、上記の例に限定されるものではない。例えば、評価情報を得るための評価項目は、学習済みモデルを構築する者が任意に設定可能である。
図40の説明に戻る。学習部603は、各被検体S-1~S-Nの足情報と、各被検体S-1~S-Nのインソールのモデルデータと、各被検体S-1~S-Nのインソールの評価情報とを記憶部601から読み出す。そして、学習部603は、読み出した各被検体S-1~S-Nの足情報と、各被検体S-1~S-Nのインソールのモデルデータと、各被検体S-1~S-Nのインソールの評価情報とを学習用データとして機械学習エンジンに入力することで、機械学習を行う。
ここで、学習部603における機械学習は、公知の機械学習エンジンにより実現可能である。例えば、機械学習エンジンとしては、ディープラーニング(Deep Learning)や、ニューラルネットワーク(Neural Network)、ロジスティック(Logistic)回帰分析、非線形判別分析、サポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ナイーブベイズ(Naive Bayes)等の各種のアルゴリズムが適用可能である。
また、この機械学習において、インソールのモデルデータは、正解データとして利用される。また、足情報は、学習済みモデルの運用時に入力データとなる情報に対応する。また、評価情報は、正解データであるモデルデータの重み付けを行うための情報である。
例えば、学習部603は、各被検体S-1~S-Nの足情報について、足情報同士の相関行列を構築する。学習部603は、相関行列を用いた主成分分析により、モデルデータに対して寄与度が大きい上位k個の固有ベクトル空間内の境界平面(超平面)を決定する。このとき、各被検体S-1~S-Nのモデルデータには、各被検体S-1~S-Nの評価情報に基づいて決定される重み付けが与えられる。
このように、学習部603は、機械学習を行って、足情報の入力に対して最適なモデルデータを出力する学習済みモデルを生成する。学習部603は、生成した学習済みモデルを記憶部601に格納する。
なお、上記の説明では、評価情報を用いて各被検体S-1~S-Nのモデルデータの重み付けを行う場合の機械学習について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、学習部603は、評価情報を用いなくとも機械学習を行うことができる。この場合、学習部603は、各被検体S-1~S-Nの足情報と、各被検体S-1~S-Nのインソールのモデルデータとを学習用データとして機械学習エンジンに入力することで、機械学習を行う。
また、上記の説明では、疾患や症状に関係無く、複数の被検体S-1~S-Nの足情報及びモデルデータを学習用データとする場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、学習部603は、特定の疾患や症状により学習用データの絞り込みを行ってもよい。例えば、学習部603は、外反母趾の被検体の足情報と、その被検体の外反母趾を治療又は改善するために製造されたインソールのモデルデータとを学習用データとして機械学習を行う。これにより、学習部603は、外反母趾に特化した学習済みモデルを構築することができる。
取得部604は、被検体S-Xの部位が撮影された画像データに基づいて、被検体S-Xの部位の外形データを含む部位情報を取得する。例えば、取得部604は、画像データとして、インソールの作成対象である被検体S-Xの足が撮影された3次元のX線CT画像データを用いて、足情報を取得する。
例えば、ユーザインタフェース部602がモデルデータの生成要求を受け付けると、その生成要求が取得部604に送られる。ここで、モデルデータの生成要求には、例えば、新たなインソールの作成対象である被検体S-Xを識別するための識別情報(患者ID等)が含まれる。取得部604は、モデルデータの生成要求を受け付けると、記憶部601に記憶された様々な情報の中から、患者IDにより識別される被検体S-Xの画像データ(3次元のX線CT画像データ)を読み出す。
そして、取得部604は、3次元のX線CT画像データに対して、エッジ検出処理等の公知の画像処理を行って、足の輪郭(体表面)を抽出する。これにより、取得部604は、画像データから被検体の足の3次元的な表面形状を表す足の外形データを取得する。
このように、取得部604は、外形データを含む足情報を取得する(図5参照)。なお、上記の説明では、部位情報が外形データを含む場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、部位情報は、外形データ以外にも、セグメンテーション処理やパターンマッチング処理等を用いることでX線CT画像データから取得可能な様々な特徴情報を含むことが可能である。また、上記の説明では、画像データが3次元のX線CT画像データである場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、画像データは、3Dスキャナにより撮影されたものであっても適用可能である。例えば、3Dスキャナは、画像データとして3Dスキャンデータを撮影する。3Dスキャンデータは、足情報として、足の外形データを含む。
生成部605は、学習済みモデルに対して、被検体S-Xの部位情報を入力することで、被検体S-Xの部位に装着される装具を設計するためのモデルデータを生成する。なお、学習済みモデルは、複数の被検体S-1~S-Nの部位について、各被検体S-1~S-Nの部位の外形データを含む部位情報と、各被検体S-1~S-Nの部位に装着される装具を設計するためのモデルデータと、装具の評価に関する評価情報とを用いて学習されたものである。
例えば、生成部605は、学習部603により生成された学習済みモデルを記憶部601から読み出す。そして、生成部605は、読み出した学習済みモデルに対して、取得部604により取得された被検体S-Xの部位情報を入力することで、被検体S-Xの部位に装着される装具を設計するためのモデルデータを学習済みモデルに出力させる。そして、生成部605は、学習済みモデルから出力されたモデルデータを出力制御部606に送る。
なお、学習済みモデルから出力されるモデルデータは、学習済みモデルの構築に用いられたモデルデータと同一種類の情報を含む。つまり、機械学習に用いられたモデルデータが、単位格子構造の形状、単位格子構造の各辺の長さ、モデル、構造柱の太さ、及び交差部の容積の形状パラメータを含む場合には、学習済みモデルから出力されるモデルデータも同一種類の形状パラメータを含む。
また、生成部605は、モデルデータ及び部位情報が同時に表示された画像上でモデルデータを修正する操作を受け付け、受け付けた操作に応じてモデルデータを修正する。
図52は、第6の実施形態のモデルデータの修正処理を説明するための図である。図52に示すように、表示装置66は、モデルデータ及び足情報を表示する。ここで、インソールの外形データの位置と、足の外形データの位置とは、対応づけて表示されている。
例えば、操作者は、表示装置66に表示されたモデルデータ及び足情報を参照して、モデルデータを修正する操作を、入力装置65を用いて行う。ユーザインタフェース部602は、操作者からモデルデータを修正する操作を受け付けると、受け付けた操作を生成部605に通知する。生成部605は、ユーザインタフェース部602が受け付けた操作に応じた修正をモデルデータに行う。これにより、操作者は、実際の足の外形データを画面上で確認しながら、インソールの外形データを修正することができる。
出力制御部606は、生成部605により生成されたモデルデータを出力する。例えば、出力制御部104は、生成部605により生成された被検体S-Xのモデルデータを記憶部101に格納する。また、出力制御部606は、被検体S-Xのモデルデータを造形装置70に送る。
また、出力制御部606は、被検体S-Xのモデルデータを表示装置16に表示させる。例えば、出力制御部606は、被検体S-Xのモデルデータ及び部位情報を同時に表示させる。これにより、操作者は、表示装置66に同時に表示されたモデルデータ及び足情報を参照しつつ、モデルデータを修正する操作を行うことができる。
図53及び図54は、第6の実施形態の情報処理装置60の動作例を示すフローチャートである。図53には、学習時における情報処理装置60の処理を例示する。また、図54には、学習済みモデルの運用時における情報処理装置60の処理を例示する。なお、各ステップの具体的な内容は上述した通りであるので、詳細な説明は適宜省略する。
図53に示すように、ユーザインタフェース部602は、学習済みモデルの生成要求を受け付ける(ステップS601)。ユーザインタフェース部602は、受け付けた生成要求を学習部603に送る。
学習部603は、被検体S-1~S-Nそれぞれの足情報、モデルデータ、及び評価情報を記憶部601から読み出す(ステップS602)。学習部603は、足情報、モデルデータ、及び評価情報を学習用データとした機械学習によって学習済みモデルを生成する(ステップS603)。そして、学習部603は、学習済みモデルを記憶部601に格納する。
図54に示すように、ユーザインタフェース部602は、モデルデータの生成要求を受け付ける(ステップS701)。ユーザインタフェース部602は、受け付けたモデルデータの生成要求を取得部604に送る。取得部604は、被検体S-Xの画像データを読み出す(ステップS702)。そして、取得部604は、読み出した画像データから足情報を取得する(ステップS703)。
そして、生成部605は、足情報を学習済みモデルに入力することで、モデルデータを生成する(ステップS704)。そして、出力制御部606は、生成されたモデルデータを表示させる(ステップS705)。
次に、ユーザインタフェース部602は、モデルデータの出力要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS706)。モデルデータの出力要求を受け付けた場合(ステップS706、Yes)、出力制御部606は、モデルデータを出力し(ステップS707)、処理を終了する。
一方、モデルデータの出力要求を受け付けない場合(ステップS706、No)、ユーザインタフェース部602は、モデルデータの修正要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS708)。モデルデータの修正要求を受け付けた場合(ステップS708、Yes)、生成部605は、モデルデータの修正要求に応じてモデルデータを修正する(ステップS709)。
一方、モデルデータの修正要求を受け付けない場合(ステップS708、No)、或いは、ステップS709の後、ユーザインタフェース部602は、ステップS706に戻って、モデルデータの出力要求を受け付けたか否かを判定する。ステップS709の後に、ステップS706においてモデルデータの出力要求を受け付けた場合(ステップS706、Yes)、出力制御部606は、修正後のモデルデータを出力し(ステップS707)、処理を終了する。
なお、図53及び図54に示した処理手順はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、処理内容に矛盾が生じない範囲で、他の処理手順を追加(挿入)したり、各処理の順番を入れ替えたりすることができる。また、各処理手順は、必ずしも実行されなくても良い。
上述してきたように、第6の実施形態の情報処理装置60は、第1被検体の部位が撮影された画像データに基づいて、第1被検体の部位の外形データを含む第1部位情報を取得する。また、情報処理装置60は、複数の第2被検体の部位について、各第2被検体の部位の外形データを含む第2部位情報と、各第2被検体の部位に装着される第2装具を設計するための第2モデルデータと、第2装具の評価に関する評価情報とを用いて学習された学習済みモデルに対して、第1部位情報を入力することで、第1被検体の部位に装着される第1装具を設計するための第1モデルデータを生成する。また、情報処理装置60は、第1モデルデータを出力する。これによれば、第6の実施形態の情報処理装置60は、装具を容易に設計するとともに、品質を安定化させることが可能である。
例えば、情報処理装置60は、学習済みモデルに対して足情報を入力することでモデルデータを生成するので、装具の設計にかかる時間及びコストを低減させることができる。また、情報処理装置60は、学習済みモデルに基づいてモデルデータを生成するので、品質のばらつきを低減させることができる。
なお、本実施形態では、学習時の処理と運用時の処理とが一つの情報処理装置60内で実行される場合を説明したが、これらの各処理は個別の情報処理装置内で実行することができる。
例えば、学習時の処理を担う情報処理装置60は、少なくとも学習部603を備える。この場合、学習部603により生成された学習済みモデルは、情報処理装置60とは異なる別装置(別の情報処理装置)にて利用される。このため、情報処理装置60により生成された学習済みモデルは、別装置に受け渡され、別装置の内部の記憶部に格納される。なお、情報処理装置60と別装置との間の情報の受け渡しは、ネットワークを介して行われても良いし、記録媒体を介して行われてもよい。
また、例えば、運用時の処理を担う情報処理装置60は、少なくとも取得部604、生成部605、及び出力制御部606の各機能を備える。この場合、情報処理装置60は、情報処理装置60とは異なる別装置(別の情報処理装置)により構築された学習済みモデルを用いて、モデルデータを生成する。なお、この学習済みモデルは、別装置から受け渡され、記憶部601に予め記憶されている。
(第6の実施形態に関するその他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(装具の製造方法)
第6の実施形態の造形装置70は、以下の製造方法により装具を製造することができる。
例えば、造形装置70は、材料押出方式、液槽光重合方式、粉末焼結積層方式等の各種付加造形技術(3次元造形技術)により、装具を造形(成形)することができる。
図55は、実施形態の製造方法の一例を示すフローチャートである。図55に例示の製造方法は、液槽光重合方式による3次元造形技術を実行可能な造形装置70により実行される。造形装置70(造形部31)は、装具の材料となる感光性樹脂を充填するための液槽(タンク)と、液槽内の感光性樹脂を光重合反応により位置選択的に硬化させるためのレーザーとを有する。なお、造形装置70としては、公知の造形装置が任意に適用可能である。
図55に示すように、造形部31は、モデルデータを読み出す(ステップS801)。このモデルデータは、造形装置70で造形する際の元となる情報である。モデルデータは、例えば、製造者により予め作成され、造形装置が有する記憶装置に予め記憶されている。なお、記憶装置は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)等に対応する。
続いて、造形部31は、指定された感光性樹脂をタンクに充填する(ステップS802)。ここで、感光性樹脂は、モデルデータにより予め指定されていても良いし、造形方法が実行される毎に操作者により指定されても良い。
そして、造形部31は、モデルデータに基づいて規定されるタンク内の各位置を、レーザーを用いて位置選択的に硬化させる(ステップS803)。例えば、造形部31は、モデルデータにおいて構造柱が存在する位置に対応するタンク内の位置に対してレーザーを順次照射する。つまり、造形部31は、装具の各領域それぞれの単位格子構造に応じたタンク内の位置を順次硬化させる。これにより、造形部31は、適切な物性の装具を製造することができる。
なお、装具の材料としては、造形技術に利用可能な材料であれば任意の材料を適用可能であり、例えば、付加製造技術により造形可能な任意の感光性樹脂が適宜選択可能である。
(システム2による装具の製造方法)
上述してきたように、実施形態のシステム2は、情報処理装置60及び造形装置70を備える。つまり、システム2は、情報処理装置60及び造形装置70の機能により、装具を製造することができる。
すなわち、システム2において、情報処理装置60は、第1被検体の部位が撮影された画像データに基づいて、第1被検体の部位の外形データを含む第1部位情報を取得する。そして、情報処理装置60は、複数の第2被検体の部位について、各第2被検体の部位の外形データを含む第2部位情報と、各第2被検体の部位に装着される第2装具を設計するための第2モデルデータと、第2装具の評価に関する評価情報とを用いて学習された学習済みモデルに対して、第1部位情報を入力することで、第1被検体の部位に装着される第1装具を設計するための第1モデルデータを生成する。そして、システム2において、造形装置70は、第1モデルデータに基づいて、第1装具を造形する。
例えば、システム2において、情報処理装置60は、図54に示したステップS701~ステップS709の処理によりモデルデータを生成する。そして、情報処理装置60は、モデルデータを造形装置70に送る。例えば、情報処理装置60の出力制御部606は、モデルデータを造形装置70にて利用可能なデータ形式に変換し、変換後のモデルデータを造形装置70に送る。
そして、システム2において、造形装置70は、図55に示したステップS801~ステップS803の処理により、情報処理装置60から受け付けたモデルデータに基づいて、装具を造形する。
これによれば、システム2は、装具を容易に設計するとともに、品質を安定化させることが可能である。なお、情報処理装置60及び造形装置70が有する各処理部は、いずれの装置に備えられても良い。例えば、造形装置70が生成部605を備える場合には、造形装置70が学習済みモデルを用いてモデルデータを生成しても良い。この場合、情報処理装置60の出力制御部606は、取得部604により取得された部位情報を、造形装置70に送ることとなる。
(荷重方向)
上記の実施形態では、例えば図51に示すように荷重方向が図中の鉛直下方向に対応する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、装具内での単位格子構造の方向は、製造者の任意により適宜設定可能である。例えば、手に装着する装具であれば、手と装具との接点における法線方向を荷重方向として定義してもよい。この場合、図46の単位格子構造は、図中の鉛直下方向が人体との接点における法線方向に対応するように装具内に配列される。
以上説明した実施形態によれば、装具を容易に設計するとともに、品質を安定化させることが可能な情報処理装置、システム、情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
上述の実施形態は、以上の変形例と任意に組み合わせることができるし、以上の変形例同士を任意に組み合わせても良い。
また、上述した実施形態の情報処理装置60で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD、USB(Universal Serial Bus)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良いし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、各種プログラムを、例えばROM等の不揮発性の記憶媒体に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
[実施例]
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
(Architected Materialの力学特性)
実施例として、Architected Materialの力学特性について説明する。以下では、ラティスキューブ構造体の作製と評価、ラティスキューブ構造体の押込挙動、既存3Dプリンタ構造体との比較、及び既存インソール材料との比較について、順に説明する。なお、以下の説明において、単位格子構造を組み合わせて作成された物体を「構造体」と表記する。
(ラティスキューブ構造体の作製と評価)
Architected Materialとして、5×5×5の周期構造を有するラティスキューブ構造体(ラティス構造を組み合わせてなる立方体の構造体。単に「ラティスキューブ」との表記する)をOpenSCADにてデザインした。単位格子構造には、図3に示す立方格子系の構造パターン(体心立方格子モデル:モデルA~C、面心立方格子:モデルD,E)と、単純立方格子モデルFとを用いた。なお、モデルFは、図2に示す立方体形状の空間の各辺に構造柱を有する構造パターンである。
デザインしたラティスキューブ構造体(図56)について、STL(Standard Triangulated Language)構造をもとに光硬化性ウレタンエラストマEPU40(Carbon社製)を用いて、Carbon社製CLIP造形機M2にて造形を行った。各ラティスキューブサンプルは押し込み時の荷重変位曲線を精密万能試験機(インストロン5967)で評価した。なお、図56は、OpenSCADでデザインしたラティスキューブを示す図である。
(ラティスキューブ構造体の押込挙動)
単位格子の構造を変えることで、図57に示すように荷重変位曲線の概形が大きく変化することが確認できた。モデルFの場合のみ、変位1mm(キューブサイズ対比5%)の時点でみられるようなキューブ構造体の座屈に由来すると思われる荷重変位曲線の折れ曲がりが見られた(図58左図)。モデルAからモデルEの場合、初期の変形は構造体の折り畳みに伴う変形によって、圧縮上下の単位格子同士が接触するまで、見かけのポアソン比が0になるような変形が確認できた(図58右図)。また、試験したラティスキューブは全て、50%の圧縮後に除荷を行うと元構造に復元する弾性仕事の挙動を示した。なお、図57は、単位格子を変えたラティスキューブの荷重変位曲線を示す図である。図58は、キューブ圧縮時の挙動を示す図である。図58において、左図は、モデルFの圧縮時挙動を示し、右図は、モデルAの圧縮時挙動を示す。
(既存3Dプリンタ構造体との比較)
比較例として既存の3Dプリンタによる造形構造体の評価を行った。充填密度をコントロールすることで柔軟な構造を実現した事例がある(非特許文献1:J. Li, H. Tanaka: The flexibility controlling study for 3D printed splint, Nanosensors, Biosensors, Info-Tech Sensors and 3D Systems, 101671A, (2017))。熱可塑性エラストマ材料を用いて製造されたフィラメントFABRIAL(登録商標)-R(JSR(株)製)を用い、3Dプリンタの汎用的な方式であるFDM(Fused Deposition Modeling:熱溶解積層)法で、図56で造形したラティスキューブと同じ大きさのキューブ形状を設計した。スライサーの設定によって内部充填パターン(図59)と充填率(設定値を増やすと、造形平面内のL/S:ライン-スペース比が増加し、パターンが緻密化する)を変更し、造形したサンプルは押し込み時の荷重変位曲線を精密万能試験機(インストロン5967)で評価した。なお、図59は、FDM方式でキューブを造形する際のスライサーによる充填パターンを示す図である。図59の左図は直線的(Rectilinear)形状を示し、右図はハチの巣状の(Honeycomb)形状を示す。
図60及び図61にみられるように、充填率や充填パターンを変更しても、初期の荷重変位曲線の傾きは変化しない。このことは、初期の押込み応力が変わらないことを示している。また、充填率が低い時には、図57のモデルF同様に座屈由来と推測される荷重変位曲線の折れ曲がりが見られる。FDM造形サンプルは全て、図62に示すように圧縮時にはみかけのポアソン比が正となる圧縮挙動を示している。圧縮、除荷後のサンプルを観察すると、積層界面の剥離は無いが、キューブ形状としての降伏が生じており、形状の復元は確認できなかった。これらの結果は、FDM造形の場合は、壁を積み上げて形状を作る必要があるため、圧縮時の力の逃げ場がなく座屈変形と降伏につながるものと考えられる。なお、図60は、充填パターンを直線的(Rectilinear)形状として充填率を変量したキューブの荷重変位曲線を示す図である。図61は、充填率を20%に固定し充填パターンを変更したキューブの荷重変位曲線を示す図である。図62は、FDM造形サンプルの圧縮挙動を示す図である。
図57及び図58で評価したEPU40を用いたArchitected Materialは壁でなく、柱で構造を維持しており、ラティスの構造上、図59のモデルAのように構造の折り畳みによって、より広い物理特性の表現が可能となっているものと考えられる。
(既存インソール材料との比較)
一方、図63に示すように、単位格子を固定(モデルA)し、柱の太さ(L/S)と格子寸法比を変えた場合には荷重変位曲線の傾きをコントロール可能であることが示された。また、このコントロール範囲は、既存の装具用材料を圧縮したときの荷重変位曲線を評価した図64と比較して、十分な範囲をカバーしていることが確認できた。これらより、EPU40で作製した、ラティス構造(単位格子構造)によるArchitected Materialは、バルク材と比較して座屈および圧縮の挙動や、荷重変位曲線を自由にコントロールでき、全体形状のデザインだけでなく物性のコントロールに有効と確認できた。なお、図63は、単位格子を固定し、柱太さ(L/S)と格子寸法比を変えた場合のラティスキューブの荷重変位曲線を示す図である。図64は、既存医療用インソール材料の荷重変位曲線を示す図である。