JP7218091B2 - プラントの保守管理方法 - Google Patents
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Description
しかし、例えば検査対象の交換を行う場合、交換品がすぐに入手できなければ、プラントをいったん稼働させた後、次回の検査の前に検査対象の交換のためにプラントを再び停止させなければならない。そのため、いったん稼働させた後のプラントの停止時及び検査対象の交換後の再稼働に係るコストや、いったん稼働させた後のプラント停止時に係る逸失利益が生じることとなる。このように、検査対象の余寿命を所定の期間(例えば、許容期間)延命させることが求められる場合がある。
プラントの保守管理メニュー決定方法であって、
前記プラントにおいて流体と接する保守対象部位の探傷検査結果に基づいて、該保守対象部位の余寿命を予測するステップと、
予測した前記余寿命が許容期間よりも短い場合、前記保守対象部位の余寿命評価に用いる入力因子値を前記保守対象部位の寿命延長策により変更したときの前記余寿命を再予測するステップと、
再予測した前記余寿命が前記許容期間よりも長くなることが確認された場合、前記寿命延長策を含む前記プラントのための保守管理メニューを立案するステップと、
を備えることを特徴とする。
前記プラントは、発電プラントであって、
前記流体は、蒸気である。
上記(1)乃至(12)の何れかの保守管理メニュー決定方法により、前記プラントの保守管理メニューを決定するステップと、
前記保守管理メニューに従って、前記保守対象部位の保守管理を行うステップと、
前記保守管理後において、前記保守対象部位の監視を行うステップと、
を備える。
前記保守対象部位の監視を行うステップで前記項目の値が前記許容範囲を逸脱すると判断されると、前記入力因子値を前記保守対象部位の新たな寿命延長策により変更したときの新たな余寿命を予測するステップと、
前記新たな余寿命が許容期間よりも長くなることが確認された場合、前記新たな寿命延長策を含む前記プラントのための保守管理メニューを立案するステップと、
をさらに備える。
上記(15)の方法によれば、新たな寿命延長策の採用後の新たな余寿命が許容期間よりも長くなることを確認した上で該新たな寿命延長策を含む保守管理メニューを立案するので、保守対象部位の余寿命を許容期間よりも長くすることができる。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
図1は、幾つかの実施形態に係る保守管理メニュー決定方法を用いたプラントの保守管理方法における各工程を示す図である。幾つかの実施形態に係るプラントの保守管理方法は、保守対象部位を選定するステップS1と、保守対象部位の検査を行うステップS2と、保守管理メニューを決定するステップS3と、保守対象部位の保守管理を行うステップS7と、保守対象部位の監視を行うステップS8と、を含む。
幾つかの実施形態に係る保守管理メニュー決定方法は、保守管理メニューを決定するステップS3を含む。
幾つかの実施形態に係る保守管理メニュー決定方法及びプラントの保守管理方法は、高温で大きな負荷が掛かる環境下で長時間使用される金属製の部材の保守管理に適用される保守管理メニュー決定方法及びプラントの保守管理方法であり、例えば、火力発電設備におけるボイラと蒸気タービンとの間を接続する蒸気配管等の溶接部の保守管理に適用される。
蒸気配管等の溶接部には、溶接による熱影響部が含まれる。熱影響部には、以下のようなクリープ損傷が生じる。すなわち、熱影響部には、長期間に亘る高温での使用によってクリープボイドが発生する。クリープボイドは長時間の使用によってその数が増加し、隣接するクリープボイド同士が繋がって亀裂となる。そして、亀裂は徐々に成長し、最終的には溶接部を厚さ方向に貫通して、内部流体のリークが発生する。このため、ボイラ等の運用においては、蒸気配管等の溶接部の保守を適確に行う必要がある。
なお、幾つかの実施形態に係るプラントの保守管理方法における各工程は、必ずしも図1に示した順に順次行うのではなく、後述するように、実施しない工程があってもよく、図1に示した順番とは異なる順番で実施される工程があってもよく、繰り返し実施される工程があってもよい。
保守対象部位を選定するステップS1は、プラントにおいて複数存在する蒸気配管等の溶接部の中から、保守管理を行う保守対象部位を選定するステップである。
保守対象部位の検査を行うステップS2は、保守対象部位を選定するステップS1で選定した保守対象部位に対して、探傷検査を行うステップである。保守対象部位の検査を行うステップS2で行われる探傷検査には、例えばフェーズドアレイ法、UT法、開口合成法、高周波UT法、又は、超音波ノイズ法を用いることができる。なお、ここで高周波UT法とは、20MHz以上の周波数の超音波を用いた探傷検査を指す。
保守対象部位の検査を行うステップS2は、例えばプラントの定期検査等、プラントが停止されている際に実施される。以下の説明では、保守対象部位の検査を行うステップS2は、プラントの定期検査の際に実施されているものとし、保守対象部位の検査を行うステップS2の実施時点における定期検査のことを今回の定期検査と称する。なお、今回の定期検査の次に予定されている定期検査を次回の定期検査と称し、次回の定期検査の次に行われる定期検査を、次々回の定期検査と称する。
保守管理メニューを決定するステップS3は、以下で説明する保守対象部位の余寿命を予測するステップS4と、余寿命を再予測するステップS5と、保守管理メニューを立案するステップS6と、を含んでいる。
保守対象部位の余寿命を予測するステップS4は、保守対象部位の検査を行うステップS2で行われた保守対象部位の検査結果に基づいて、保守対象部位の余寿命を予測するステップである。
余寿命とは、現時点から保守対象部位がクリープ損傷により破断するまでの時間である。
余寿命の予測には、例えば亀裂進展計算、FEM、損傷力学的評価、ボイドシミュレーション法又は組織シミュレーション法等を用いることができる。
余寿命を再予測するステップS5は、保守対象部位の余寿命を予測するステップS4で予測した余寿命が、許容期間よりも短い場合や許容期間に対する余裕が少ない場合に実施されるステップである。ここで、許容期間とは、例えば次回以降の定期検査までの期間のように、保守対象部位の余寿命が超えることが期待される時期までの期間である。
余寿命を再予測するステップS5では、保守対象部位の余寿命評価(余寿命の予測)に用いる入力因子値を見直して余寿命を再度予測する。また、余寿命を再予測するステップS5では、許容期間を見直すこともある。
すなわち、一般的には、設計値には裕度を持たされることが多く、実際の値よりも過酷な値に設定されることが多い。例えば、保守対象部位に作用する応力や温度の設計値は、保守対象部位に実際に作用する応力や温度よりも大きい場合が多いと考えられる。
そこで、見直し後の入力因子値として実測値を用いることで、再予測される余寿命が許容期間よりも長くなることが期待される。
なお、見直し後の入力因子値として実測値を用いることに代えて、推定値を用いてもよい。例えば、実測値の計測が困難な場合には、プラントの運転条件や、保守対象部位の近傍における実測値等から保守対象部位における推定値を算出することができる。例えば、保守対象部位が蒸気配管における溶接部であれば、当該蒸気配管に流れる蒸気の温度や圧力をプラントの運転データから得ることで、保守対象部位における温度や応力の値を推定できる。
また、余寿命を再予測するステップS5では、入力因子値の見直しと許容期間の見直しの何れか一方を実施してもよく、双方を実施してもよい。
保守管理メニューを立案するステップS6は、寿命延長策を含むプラントのための保守管理メニューを立案するステップである。例えば、保守管理メニューを立案するステップS6では、余寿命を再予測するステップS5で再予測された余寿命が許容期間よりも短かった場合に、寿命延長策を立案する。具体的には、次のようにして寿命延長策を立案する。
図2のグラフにおいて、実線のプロットP0は、プラントの稼働中に保守対象部位に作用する温度及び応力を示すプロットであり、余寿命を再予測するステップS5において入力因子値を見直す前のものである。
図2のグラフにおいて、破線のプロットP1は、プラントの稼働中に保守対象部位に作用する温度及び応力を示すプロットであり、余寿命を再予測するステップS5において入力因子値を見直した後のものである。
図2のグラフにおいて、実線の直線は、保守対象部位の余寿命が許容期間と等しくなる温度及び応力の条件を表す等寿命線L0である。等寿命線L0は、余寿命を再予測するステップS5において入力因子値や許容期間を見直す前の等寿命線である。
図2のグラフにおいて、破線の直線L1は、保守対象部位の余寿命が許容期間と等しくなる温度及び応力の条件を表す等寿命線L1である。等寿命線L1は、余寿命を再予測するステップS5において入力因子値や許容期間を見直した後の等寿命線である。
図2のグラフにおける破線の直線L2については、後で説明する。
運転条件緩和策は、プラントの運転条件を変更することで保守対象部位の負荷を低減する寿命延長策である。
例えば、保守対象部位が蒸気配管における溶接部であれば、当該蒸気配管に流れる蒸気の温度を下げることで、例えば破線のプロットP2で示すように、保守対象部位の温度を下げることができる。
また、例えば、保守対象部位が蒸気配管における溶接部であれば、当該蒸気配管に流れる蒸気の圧力を下げることで、例えば破線のプロットP3で示すように、保守対象部位の応力を下げることができる。
また、例えば、保守対象部位が蒸気配管における溶接部であれば、当該蒸気配管に流れる蒸気の温度及び圧力を下げることで、例えば破線のプロットP4で示すように、保守対象部位の温度と応力を下げることができる。
また、運転条件緩和策が、保守対象部位が接する流体の温度の低減策、又は、該流体の圧力の低減策の少なくとも一方を含むので、保守対象部位に掛かる負荷を低減でき、保守対象部位の余寿命を延長できる。
なお、運転条件緩和策では、上述したように、プラントの運転条件を変更するので、プラントの運転に影響を与えることを考慮する必要がある。例えば、蒸気の温度や圧力を低減することでプラントにおける運転効率が低下するおそれがあることを考慮する必要がある。
保守対象部位に対して実施する局所的な対策は、保守対象部位に対して局所的に実施する寿命延長策である。以下の説明では、保守対象部位に対して実施する局所的な対策のことを単に局所的な対策とも呼ぶ。
局所的な対策としては、例えば、保守対象部位における応力を緩和する応力緩和策、保守対象部位を局所的に冷却する局所冷却、及び、保守対象部位における損傷を回復させる損傷回復策を挙げることができる。
応力緩和策は、保守対象部位の補強、又は、保守対象部位における拘束条件の変更の少なくとも一つを実施することで、保守対象部位の応力を緩和する対策である。
また、保守対象部位に肉盛り溶接を行うことで、保守対象部位における肉厚を増加させて、保守対象部位を補強してもよい。
局所冷却は、保守対象部位を局所的に冷却することで、保守対象部位の温度を低下させる対策である。
例えば、保守対象部位が蒸気配管における溶接部であれば、当該蒸気配管に流れる蒸気の温度よりも温度が低い蒸気や空気を保守対象部位の周囲に吹き付けることで、保守対象部位の温度を下げることができる。これにより、例えば破線のプロットP5で示すように、保守対象部位に作用する温度を下げることができる。なお、局所冷却を行った場合、保守対象部位の周辺の温度が低下して保守対象部位の周辺が収縮するため、保守対象部位に作用する応力は、局所冷却を行う前と比べて大きくなる場合がある。そのため、保守対象部位に作用する応力の変化を加味して、保守対象部位における温度低下量を設定する必要がある。
損傷回復策は、例えば、保守対象部位に補修溶接を行うことで、保守対象部位における損傷を回復させる対策である。
なお、損傷回復策として、例えば、保守対象部位の熱膨張を拘束した状態で保守対象部位を加熱することで、熱応力を利用して保守対象部位のクリープボイドや亀裂を圧接・補修してもよい。
このように、損傷回復策を実施することで、例えば、破線の直線L2で示した等寿命線L2のように、等寿命線の位置が移動する。
上述した各運転条件緩和策や局所的な対策によって入力因子値が変更されるので、例えば以下のようにして、変更後の入力因子値を求める。
例えば、プラントの運転条件として蒸気配管に流れる蒸気の温度を変更した場合、蒸気の流量が多く、且つ保温された配管であれば、該配管における保守対象部位の温度は、蒸気の温度と等しいものと見なすことができる。
なお、例えば、保守対象部位が存在する配管が枝管などのように、蒸気が流れる主たる配管と比べて蒸気の流量が少ない場合や、保温がなされていない配管等では、保守対象部位の温度が主たる配管を流れる蒸気の温度と等しいものと見なせない場合が考えられる。このような場合には、保守対象部位の温度を直接計測できないのであれば、何らかの方法により保守対象部位の温度を推定する必要がある。例えば、枝管における保守対象部位の下流側で枝管の温度又は枝管を流れる蒸気の温度を取得できれば、取得した温度と、主たる配管を流れる蒸気の温度とに基づいて、補間によって保守対象部位の温度を推定してもよい。
なお、保守対象部位の温度の推定に際し、保守対象部位を含む周囲の配管における放熱や吸熱を考慮することが望ましい。
すなわち、余寿命を再予測するステップS5は、運転条件緩和策、又は、局所的な対策によって変更される入力因子値を求め、求められた該入力因子値に基づいて余寿命を再予測するステップを含む。
このように、運転条件緩和策、又は、局所的な対策によって変更される入力因子値を求めるので、求められた入力因子値が妥当なものとなり、求められた該入力因子値に基づいて再予測される余寿命の精度が向上する。
これにより、寿命延長策の採用後の余寿命が許容期間よりも長くなることを確認した上で該寿命延長策を含む保守管理メニューを立案するので、保守対象部位の余寿命を許容期間よりも長くすることができる。
例えば、図2を参照して検討した結果、許容期間よりも余寿命を長くするためには保守対象部位における温度をT℃下げる必要があると判断された場合、上述した複数の寿命延長策のうちの1つによって、保守対象部位における温度をT℃下げてもよい。また、上述した複数の寿命延長策のうちのある1つの対策によって保守対象部位における温度をt1℃下げ、他の対策によって保守対象部位における温度をt2℃下げることとし、低下温度t1とt2との和がT℃以上となるようにしてもよい。このような考え方は、保守対象部位の応力の低減についても同様である。
さらに、複数の寿命延長策を組み合わせる場合、運転条件緩和策と局所的な対策とを組み合わせてもよい。運転条件緩和策と局所的な対策とを組み合わせることで、プラントの運転条件の変更量を抑制して、プラントの運転に与える影響を抑制できるとともに、局所的な対策を簡素化できる。
例えば、運転条件緩和策により蒸気の温度や圧力を低減させてプラントにおける運転効率が低下すると、運転効率低下の低下度合いと運転条件緩和策の実施期間とをパラメータに含む逸失利益が発生する。
また、例えば、局所的な対策を行うためには、該対策を実施するためのコストが発生する。該コストには、該対策の実施に必要な機材等を用意するコストや、該対策の実施のための施工コストが含まれる。また、該対策の実施のためにプラントの停止期間が延長されるのであれば、停止期間の延長によるプラントの逸失利益が発生する。
すなわち、例えば、運転条件緩和策では、プラントの運転条件を変更するので、上述したようにプラントの運転効率が低下して逸失利益が生じる場合がある。一般的に、プラントの運転条件の変更幅が大きくなるほど、プラントの運転効率が低下して逸失利益が増加する傾向にある。また、局所的な対策では、一般的に、対策の効果を上げるほど対策に要するコストが増加する傾向にある。そこで、例えば、運転条件緩和策と局所的な対策とを組み合わせることで、プラントの運転条件の変更による逸失利益が生じるが、局所的な対策の実施によるコスト増を抑制できる。換言すると、運転条件緩和策と局所的な対策とを組み合わせることで、局所的な対策の実施によるコストが発生するが、プラントの運転条件の変更による逸失利益を低減できる。したがって、運転条件緩和策と局所的な対策とを適宜選定して組み合わせることで、逸失利益及び増加コストの和を抑制できる。
例えば、余寿命が許容期間より短い部分が3箇所発見された場合を考える。ここで、この3箇所について、運転条件緩和策の温度低減にて対処しようとした場合、位置Aは-100℃、位置Bは-50℃、位置Cは-30℃の温度低減が必要と判断されたとする。また、寿命延長策として以下の手段(1)~(3)が可能であるものとする。
手段(1)は、プラントの運転条件である蒸気温度を低下させる手段である。手段(1)では、蒸気温度の低下量は-50℃が限界であると仮定する。なお、手段(1)では、蒸気の温度の低下量に応じた逸失利益が手段(1)の実施期間中、継続的に生じることとなる。
手段(2)は、局所的に温度を低下させる第1の手段である。手段(2)では温度の低下量は-50℃が限界であると仮定する。なお、手段(2)では、後述する手段(3)に比べて、温度の低下量が小さいが、初期コストが少額であり、手段(2)を継続的に実施するための維持コストを無視できるものとする。
手段(3)は、局所的に温度を低下させる第2の手段である。手段(3)では、温度の低下量は-100℃が限界であると仮定する。なお、手段(3)では、上記の手段(2)に比べて、温度の低下量が大きいが、初期コストが高額であり、手段(3)を継続的に実施するための維持コストを無視できるものとする。
この条件下で、寿命延長策の組合せパターンと低下温度量とについてまとめた表を図3に例示する。図3におけるパターン1は、最大限手段(1)を活用する場合であり、パターン3は手段(1)を用いない場合であり、パターン(2)はその中間の場合である。手段(1)はプラントの運転条件の変更であり、位置A~Cのすべてに対して効果がある。手段(2)、(3)は局所的な対策であり、対策を施したそれぞれの位置にのみ効果がある。
パターン2では、手段(1)によって各位置A~Cにおける温度を30℃低下させるとともに、手段(2)によって位置Bにおける温度をさらに20℃低下させ、手段(3)によって位置Aにおける温度をさらに70℃低下させる。これにより、位置Aでは温度が100℃低下し、位置Bでは温度が50℃低下し、位置Cでは温度が30度低下する。
パターン3では、手段(2)によって位置Bにおける温度を50℃低下させ、手段(2)によって位置Cにおける温度を30度低下させ、手段(3)によって位置Aにおける温度を100℃低下させる。これにより、位置Aでは温度が100℃低下し、位置Bでは温度が50℃低下し、位置Cでは温度が30度低下する。
なお、上述のようにして立案した寿命延長策によって延長された余寿命の担保のため、必要に応じて、後述する保守対象部位の監視を行うステップS8においてプラントを監視する。上述したように寿命延長策によって延長された余寿命の担保を目的とするため、監視項目及び監視方法は、以下に挙げる監視項目及び監視方法の中で、立案した寿命延長策に適したものとされる。
そこで、保守管理メニューを立案するステップS6では、立案した寿命延長策に適した監視項目及び監視方法を選定する。
なお、監視には、プラントの運転中に行われる監視と、プラントの停止時に行われる監視とが含まれる。
温度の監視方法としては、例えば、熱電対、放射温度計、赤外線カメラ等による温度計測や、光ファイバによる温度計測を挙げることができる。なお、光ファイバによる温度計測は、光ファイバにおけるラマン散乱光強度の温度依存性を利用した温度計測である。
変形(歪)の監視方法としては、例えば、歪ゲージによる測定、レーザスペックルひずみ計による測定、画像相関法による変位計側、クリープボタン、レーザ距離計による計測、光ファイバ変位計による変位計測等を挙げることができる。ここで、クリープボタンとは、運転で発生するクリープ歪を計測するため、予め計測点を定めておく手法である。ボタンとは計測点の形状を示している。具体的には、溶接線を挟んで、両側に突起をつけて、この突起と突起との間の距離を初期値として計測しておき、該距離の経年的な変化を追っていく手段である。
温度の監視方法としては、例えば、レプリカ法による保守対象部位の組織観察により温度履歴を推定する方法、取得した少量のサンプルから温度履歴を推定する方法、時効組織の観察により温度履歴を推定する方法、蒸気酸化スケールの形成状態や析出物の形成状態から温度履歴を推定する方法等を挙げることができる。
保守対象部位の保守管理を行うステップS7では、保守管理メニューを決定するステップS3で決定された保守管理メニュー、すなわち、保守管理メニューを立案するステップS6において立案された、寿命延長策を含む保守管理メニューに従って保守対象部位の保守管理を行うステップである。
保守対象部位の監視を行うステップS8では、保守対象部位の保守管理を行うステップS7の実施による保守管理後において、保守対象部位の監視を行うステップである。
保守対象部位の監視を行うステップS8で行われる監視では、保守対象部位に対して、保守管理メニューを立案するステップS6で選定された監視項目及び監視方法で監視する。
これにより、保守対象部位の余寿命が許容期間よりも短くなり得る状態にあるか否かを判断できるので、必要に応じて寿命延命策を追加して実施するなど、許容期間よりも長くするためのさらなる対応が可能となる。
これにより、寿命延長策を実施することで保守対象部位の余寿命を許容期間よりも長くすることができるとともに、その後のプラントの運転中の保守対象部位の状態を把握できる。
すなわち、幾つかの実施形態では、保守対象部位の監視を行うステップで監視項目の値が許容範囲を逸脱すると判断されると、入力因子値を保守対象部位の新たな寿命延長策により変更したときの新たな余寿命を予測するステップ、すなわち余寿命を再予測するステップS5を備える。また、幾つかの実施形態では、新たな余寿命が許容期間よりも長くなることが確認された場合、新たな寿命延長策を含むプラントのための保守管理メニューを立案するステップ、すなわち保守管理メニューを立案するステップS6を備える。
このように、新たな寿命延長策の採用後の新たな余寿命が許容期間よりも長くなることを確認した上で該新たな寿命延長策を含む保守管理メニューを立案するので、保守対象部位の余寿命を許容期間よりも長くすることができる。
例えば、上述した幾つかの実施形態では、保守対象部が火力発電設備におけるボイラと蒸気タービンとの間を接続する複数系統の蒸気配管における溶接部であったが、保守対象の溶接部は、ボイラの一部に限定されることはなく、本発明に係る保守管理メニュー決定方法及びプラントの保守管理方法は、高温高圧下に曝される種々の溶接部や溶接部以外の部位に適用可能である。
Claims (9)
- プラントの保守管理方法であって、
前記プラントの停止中に実施される今回検査において取得された、流体と接する保守対象部位の探傷検査結果に基づいて、該保守対象部位の余寿命を予測するステップと、
予測した前記余寿命が許容期間よりも短い場合、前記保守対象部位の余寿命評価に用いる入力因子値を前記保守対象部位の寿命延長策により変更したときの前記余寿命を再予測するステップと、
再予測した前記余寿命が前記許容期間よりも長くなることが確認された場合、前記寿命延長策を含む前記プラントのための保守管理メニューを前記今回検査後の前記プラントの再稼働前に立案し、立案した前記保守管理メニューに含まれる前記寿命延長策を実施するステップと、
を備え、
前記寿命延長策は、前記保守対象部位に対して実施する局所的な対策を少なくとも含み、
前記局所的な対策は、
前記保守対象部位を局所的に冷却する局所冷却、前記保守対象部位における応力を緩和する応力緩和策、又は、前記保守対象部位における損傷を回復させる損傷回復策の少なくとも一つ、
前記保守対象部位における応力を緩和する応力緩和策として、前記保守対象部位の補強、又は、前記保守対象部位における拘束条件の変更の少なくとも一つ、及び
前記保守対象部位における損傷を回復させる損傷回復策として前記保守対象部位の補修溶接、
の内の少なくとも一つを含む
プラントの保守管理方法。 - 前記寿命延長策は、前記プラントの運転条件を変更することで前記保守対象部位の負荷を低減する運転条件緩和策を含む
請求項1に記載のプラントの保守管理方法。 - 前記余寿命を再予測するステップは、前記運転条件緩和策、又は、前記局所的な対策によって変更される前記入力因子値を求め、求められた該入力因子値に基づいて前記余寿命を再予測するステップを含む
請求項2に記載のプラントの保守管理方法。 - 前記寿命延長策は、前記運転条件緩和策と前記局所的な対策とを組み合わせた対策である
請求項2又は3に記載のプラントの保守管理方法。 - 前記寿命延長策は、前記運転条件緩和策及び前記局所的な対策の各々を単独で実施した場合に比べて、逸失利益及び増加コストの和が少なくなるように選定された前記運転条件緩和策と前記局所的な対策との組み合わせである
請求項4に記載のプラントの保守管理方法。 - 前記運転条件緩和策は、前記保守対象部位が接する流体の温度の低減策、又は、該流体の圧力の低減策の少なくとも一方を含む
請求項2乃至5の何れか一項に記載のプラントの保守管理方法。 - 前記延長寿命策を実施するステップでは、前記余寿命を前記許容期間延伸できる前記寿命延長策が複数ある場合、複数の前記寿命延長策の少なくとも一つを適用した場合の影響を金額換算し、金額換算された結果を考慮して保守管理メニューを決定する
請求項1乃至6の何れか一項に記載のプラントの保守管理方法。 - 前記余寿命を再予測するステップでは、前記許容期間の見直し、または、前記入力因子値の見直しの少なくとも一方を行った上で、前記余寿命を再予測する
請求項1乃至7の何れか一項に記載のプラントの保守管理方法。 - 前記プラントは、発電プラントであって、
前記流体は、蒸気であることを特徴とする
請求項1乃至8の何れか一項に記載のプラントの保守管理方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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