JP7217528B2 - 処理装置、システム、x線測定方法およびプログラム - Google Patents
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Description
(検出システムの構成)
図1は、X線検出システム10の構成の一例を示す概略図である。図1に示すようにX線検出システム10は、X線源20、試料S、X線検出器100および処理装置200で構成されている。
図2は、X線検出器100の構成を示す概略図である。X線検出器100は、フォトン・カウンティング型の半導体検出器であり、2次元のデータバッファ機能を有する。X線検出器100は、X線を検出し、検出データをフレームごとに外部へ転送する。なお、X線検出器100は、1次元検出器または0次元検出器であってもよい。
図3は、処理装置200の構成を示すブロック図である。処理装置200は、測定データ管理部210、記憶部220、算出部230、補正部240を備えており、X線検出器100で検出されたX線の出力値、および、露光の合計時間または露光回数に基づいて計数値または計数率を算出する。
次に、X線の検出から計数値の算出までのX線測定方法の概略を説明する。検出面に入ったX線がセンサにより検出されるとパルスが発生する。パルスは露光によりゲートが開放されている間に検出回路へ通過する。パルスは、検出回路においてそれぞれの閾値より高いか否かを判定され、高い場合には電圧信号としてカウンタへ送出される。パルスは、カウンタで計数される。カウンタの出力値は、メモリで読み出され、転送回路により処理装置に転送される。処理装置では、読み出された出力値に基づいて計数値が算出される。その際には、露光に対するパルス検出率の増加に対し、パルス信号の見かけ上の時定数が単調減少するモデルが用いられる。
パルス信号の時定数τとは、単一のパルス信号の強度が閾値を超えている時間をいう。フォトン・カウンティング型の半導体検出器の場合、ROIC回路に依存する。本発明では、本来のパルス信号の時定数τを、露光条件の設定に用いることができる。また、計数値の算出において使用する補正式にも用いることができる。なお、時定数の測定方法は、実施例として後述する。
図4は、本発明のX線測定方法における、パルスのカウントタイミングを示す概略図である。図4のt1からt10は、ゲートが開放された露光時間δtを示す。これら複数の露光時間δtのそれぞれに対し、その間にパルスの強度が閾値を超えていた場合、カウントをプラス1する。これは、当初から閾値を超えていた場合も、露光時間δtの間に閾値を超えた場合も同様にカウントをプラス1する。また、露光時間δtの間に、閾値を超えていたものが一旦閾値を下回り、再度閾値を超えた場合は、カウントをプラス2する。それ以上の場合も同様である。図4の例では、t3、t6、t7、t10はプラスされず、t1、t2、t5、t8、t9はプラス1、t4はプラス2で合計7カウントされることになる。なお、露光時間と露光時間の間の間隔は、等間隔でなくてもよい。
センサにX線が連続して到達すると、パルス信号が重なり、重なったパルス信号の高さが閾値を超えると、閾値を超えている時間が長くなる。しかし、閾値を超えている時間は、パルスの重なりの分、時定数τにパルスの個数をかけた値よりも短くなる。例えば、2つのパルス信号が重なった場合でも、閾値を超えている時間はτの2倍より短く、3つのパルス信号が重なった場合でもτの3倍より短い。
上記の計数値および計数率を算出するモデルは、以下の条件を有する必要がある。(1)パルス検出率の増加に対して、パルス信号の見かけ上の時定数が単調減少する。(2)パルス検出率が0のとき、パルス信号の見かけ上の時定数は、時定数τに一致する。(3)パルス検出率が1のとき、パルス信号の見かけ上の時定数は、時定数τより小さい。好ましくは、パルス検出率が1に近づくとき、パルス信号の見かけ上の時定数は0に近づく。(4)モデルによって作成される計数値を算出する式は、無次元量である。なお、計数値を露光の合計時間で割ったものが、計数率である。
モデルとして、以下の例のような計数値Nを算出する式(2)を用いることができる。Nは算出された計数値、τはパルス信号の時定数、Tupは露光に対しパルス信号が検出された合計時間、Ttоtは露光の合計時間を表す。また、τ・f(Tup,Ttоt)はパルス信号の見かけ上の時定数を表す。f(Tup,Ttоt)は、Tupが0のとき1になり、Tup/Ttоtが0より大きく1より小さい範囲で増加するとき単調減少する。f(Tup,Ttоt)は、Tup/Ttоtが1に近づくとき、0に近づくことが好ましいが、0より大きく1より小さい定数となってもよい。
なお、露光時間δtが時定数τよりも短い場合、露光の合計時間Ttotは、露光時間δtと時定数τを足した値に露光回数をかけた値を使用することが好ましい。図6は、露光時間δtと時定数τとの関係を示す概念図である。露光時間δt内にカウントされる事象は、図6に示すように露光時間δtに対し、時定数τの分だけ前に発生したパルスから、露光時間δtの終了間際に発生したパルスまでである。そうすると、露光時間δt内にカウントされる事象は、(露光時間δt)+(時定数τ)の間に発生した事象である。したがって、複数の撮影画像を積算して出力するときなどは、この効果を考慮して補正をする必要がある場合がある。
以上のように、パルスが閾値を上向きに切ったタイミングでカウントするのではなく、露光を複数回繰り返し、多数のサンプリングの結果得られた出力値およびパルス検出率に基づいて、露光に対するパルス検出率の増加に対し、パルス信号の見かけ上の時定数が単調減少するモデルを用いて計数値を算出する。サンプリングでは、時定数τよりも短い露光時間δtの間にパルスが閾値を超えていたか否かの判定を、統計的に有意な数になるまで行う。これにより、従来の方法補正でカバーできなかった高い計数率に対しても数え落としの影響を減殺できる。
(大型放射光施設での時定数τの測定)
電子を加速・貯蔵するための加速器群と発生した放射光を利用するための実験施設および各種付属施設を備えるSpring-8のトレインバンチを利用して、実施例のX線検出器の時定数τを測定した。Spring-8の放射光検出装置の一部としてX線検出器を組み込んで、以下の測定を行なった。
本発明のX線測定方法は、X線反射率法で利用するのに適している。X線反射率法では、反射X線の強度が大きいところから小さいところまである。したがって、強度が大きいところでは本発明の方法を適用し、強度が小さいところでは従来の方法を適用することが好ましい。例えば、40nsec露光を100回入れて測定し、それとは別に1msec露光1回を入れて測定すると、面内に強度の分布があっても、弱いところは1msec露光によりデータをとることができ、強いところは40nsec露光によりデータをとることができる。
本発明のX線測定方法は、Spring-8のような大型放射光施設で利用するのに適している。その場合には、大型放射光施設の放射光検出装置に付属する一般的なX線検出器から得られたデータを、本発明のX線測定方法、処理装置、またはプログラムを利用して処理する。
上記の他、単結晶X線回折法のうち金属錯体試料による全反射、X線小角散乱法等は、測定すべきX線の強度が大きくなるため、本発明のX線測定方法の利用が好適である。
本発明のX線測定方法とRising Edgeをカウントする方法との比較を、計算機実験によりシミュレーションした。図11は、Rising Edgeをカウントする方法を示す概略図である。この方法では、図11に示すグラフ上の黒丸の位置、すなわちパルスが閾値を上向きに切ったタイミングでカウントし、これから単位時間あたりの観測計数率を求める。0Mcpsより大きく20Mcps以下のいくつかの計数率に対し、入力される計数率ごとに計算機でランダムにパルスを発生させ、Rising Edgeをカウントする方法、出力値から得られる計数率に単純な数え落とし補正をする方法、および本発明のX線測定方法を使用して得られる計数率をそれぞれ計算した。出力値から得られる計数率に単純な数え落とし補正をする方法では、以下の式(6)を用いて計数率nを算出した。なお、Iは、測定により得られた計数率を表す。図12は露光時間δt、時定数τおよび読み出し時間の関係を示す概念図である。
(大型放射光施設での実験)
Spring-8のトレインバンチを使用した10keVのX線に対して、露光時間40nsと露光時間1600nsによるThScanを行ない、プロファイル形状の違いを確認した。ThScanとは、測定の際に設定する閾値(Threshold)を変化させながらX線強度を測定する方法である。光学系について同一露光条件下で、閾値に対する強度の変化を測定できる。
X線反射率法による実験として、ガラス基板上の酸化亜鉛膜(ZnO)の反射X線を測定した。図15は、その結果を表すグラフである。40ns露光し、算出した結果を25000枚加算したグラフでは、X線検出器の時定数τが100nsであるため、実質的な露光時間の合計は、3.5msとなる。これに対し、1、2、3、4ms露光した方法では、ほぼ露光時間の補正は不要である。40ns露光した場合は、実質的に3.5ms露光しているが、4msのグラフよりも計数率が高くなった。これにより、短時間の露光を繰り返すことにより、長時間の露光をしたときよりも数え落としの影響を減殺できることが分かった。
20 X線源
S 試料
100 X線検出器
110 センサ
120 読み出し回路
125 ゲート
130 検出回路
140 カウンタ
150 メモリ
160 転送回路
170 制御回路
200 処理装置
210 測定データ管理部
220 記憶部
230 算出部
240 補正部
300 入力部
400 出力部
SB1 シングルバンチ
TB1 トレインバンチ
Claims (10)
- フォトン・カウンティング型の半導体検出器により、入射X線のパルス信号をカウントして読み出された出力値を記憶する記憶部と、
前記読み出された出力値に基づいて計数値を算出する算出部と、を備え、
前記算出部は、露光に対するパルス検出率の増加に対し、前記パルス信号の見かけ上の時定数が単調減少するモデルを用いることを特徴とする処理装置。 - 前記パルス検出率は、前記露光に対し前記パルス信号が検出された合計時間と前記露光の合計時間との比に相当することを特徴とする請求項1記載の処理装置。
- 前記見かけ上の時定数は、前記パルス検出率がゼロである場合に本来の時定数であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の処理装置。
- 前記見かけ上の時定数は、前記パルス検出率が1である場合に本来の時定数と1より小さい定数との積であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の処理装置。
- 前記記憶部は、前記パルス信号の時定数を記憶し、
前記算出部は、前記モデルを用いる際に、前記記憶された時定数を読み出して利用することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の処理装置。 - 前記半導体検出器と、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の処理装置と、を備えることを特徴とするシステム。 - 前記半導体検出器が、前記パルス信号の時定数より短い時間で露光することを特徴とする請求項6記載のシステム。
- 前記計数値の算出では、前記パルス信号の時定数と前記露光の単位時間とを足した時間で前記パルス信号をカウントしたものとして、前記計数値を補正することを特徴とする請求項7記載のシステム。
- フォトン・カウンティング型の半導体検出器により、入射X線のパルス信号をカウントし出力値を読み出すステップと、
前記読み出された出力値に基づいて計数値を算出するステップと、を含み、
前記計数値の算出では、露光に対するパルス検出率の増加に対し、前記パルス信号の見かけ上の時定数が単調減少するモデルを用いることを特徴とするX線測定方法。 - フォトン・カウンティング型の半導体検出器により、入射X線のパルス信号をカウントし出力値を読み出す処理と、
前記読み出された出力値に基づいて計数値を算出する処理と、をコンピュータに実行させ、
前記計数値の算出処理では、露光に対するパルス検出率の増加に対し、前記パルス信号の見かけ上の時定数が単調減少するモデルを用いることを特徴とするプログラム。
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