JP7217452B2 - 建築用壁材 - Google Patents

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Description

本発明は、建築用壁材に関する。
物質や空間を冷却したり加温したりするときに使用される蓄熱材として、物質の熱容量や比熱(顕熱)を利用する材料、物質の相変化に伴い発生する熱量(潜熱)を利用する材料、物質の化学反応熱を利用する材料、等が挙げられるが、現在は潜熱を利用する潜熱型の蓄熱部材が多く使用されている。
このような蓄熱部材は、特に建築材料と組み合わせて用いることで、建築物の空調に必要なエネルギーの低減に効果があることが知られており、例えば、カプセル化した蓄熱物質をモルタル、コンクリートに練り込んで建築材料とする、蓄熱物質を容器中に封入したものを床材の下面に配設する、といった用途が知られている。
また、熱エネルギーを効率良く使用するための様々な技術や構造が開発され、建築物などでこのような技術が採用されている。中でも太陽光による熱エネルギーを蓄熱可能とする材質からなる蓄熱部材を建築材料に用いる技術が研究されている(例えば、特許文献1~2参照)。
特開2003-520915号公報 特開平5-171881号公報
しかしながら、特に石膏系壁材では、石膏系壁材内での蓄熱材の分散不良、あるいは蓄熱材であるマイクロカプセルの破壊を生ずることがあり、蓄熱機能を確保するためには大量の蓄熱材を添加することを必要とする一方で、蓄熱機能を確保するのに要する添加量では、石膏系壁材の難燃性が失われるという課題があった。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上記課題の少なくとも一部を解決することで、難燃性及び蓄熱性が共に優れた建築用壁材を提供することを目的とする。また、本発明に係る幾つかの態様は、難燃性及び蓄熱性に加えて、建築材料としての重要な特性である調湿性に優れ、またホルムアルデヒド等のシックハウス原因物質発生が抑制された建築用壁材を提供することを目的とする。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る建築用壁材の一態様は、
基材上に、
少なくとも、母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の層を有し、前記第1の層中の前記蓄熱材の含有量が、10~30質量%である。
[適用例2]
本発明に係る建築用壁材の一態様は、
基材上に、
少なくとも、母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の層、
少なくとも母材を含有する第2の層をこの順に有し、
前記第1の層中の前記蓄熱材の含有量が、15~30質量%である。
[適用例3]
適用例2の建築用壁材において、
前記第2の層が、潜熱蓄熱材料をさらに含有し、
前記第2の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量は、前記第1の層中の前記蓄熱材の含有量よりも小さくすることができる。
[適用例4]
適用例3の建築用壁材において、
前記第2の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量が、0~10質量%であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の建築用壁材において、
前記母材が、珪藻土、シラス、半水石膏、石灰、骨材、増粘剤、無機質粉体及び有機質粉体から選ばれる少なくとも1種を含有することができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例の建築用壁材において、
前記潜熱蓄熱材料が、マイクロカプセルに潜熱蓄熱物質を内包させた粒子であり、該粒子の体積平均粒子径が1~500μmであることができる。
[適用例7]
適用例6の建築用壁材において、
前記潜熱蓄熱物質が、パラフィン化合物及び脂肪酸エステルから選ばれた一種であることができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか一例の建築用壁材において、
前記第1の層が、組成物から形成されたものであり、
前記組成物が、少なくとも、珪藻土又はシラスを5~40質量%、半水石膏及び/又は石灰を0.5~45質量%、前記潜熱蓄熱材料を10~30質量%、無機質粉体を1~55質量%、及び有機質粉体を1~10質量%含有することができる。
[適用例9]
適用例2ないし適用例8のいずれか一例の建築用壁材において、
前記第2の層が、組成物から形成されたものであり、
前記組成物が、少なくとも、珪藻土又はシラスを5~40質量%、半水石膏及び/又は石灰を0.5~45質量%、前記潜熱蓄熱材料を0~10質量%、無機質粉体を1~55質量%、及び有機質粉体を1~10質量%含有することができる。
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか一例の建築用壁材において、
前記基材が、石膏ボード、コンクリート、ベニア又は合板であることができる。
本発明の一実施形態に係る建築用壁材によれば、蓄熱性に優れるため、住宅内の室温の変化を低く保ち、快適な暮らしが実現できると共に、難燃性にも優れた住宅を提供することができる。また、本発明の一実施形態に係る建築用壁材によれば、蓄熱性及び難燃性に加え、調湿性及びホルムアルデヒド等のシックハウス原因物質抑制にも優れるため、より快適に暮らせる住宅を提供することができる。
第1実施形態に係る建築用壁材の断面を模式的に示す概念図である。 第2実施形態に係る建築用壁材の断面を模式的に示す概念図である。
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。
1.建築用壁材
本発明の建築用壁材の具体的な実施形態は、大別して2つある。以下、図面を参照しながら、実施形態ごとに説明する。
1.1.第1実施形態
図1は、第1実施形態の一例に係る建築用壁材100の断面を模式的に示す概念図である。図1に示されるように、本発明の第1実施形態に係る建築用壁材100は、基材10上に、少なくとも、母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の層20を有している。図1中の点は、潜熱蓄熱材料を表している。前記第1の層20中の前記潜熱蓄熱材料の含有量は、10~30質量%であり、好ましくは10~25質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。第1の層20の潜熱蓄熱材料の含有量が前記範囲であることにより、建築用壁材に優れた蓄熱性を付与することができるので、住宅内の室温の変化を低く保ち、快適な暮らしが実現できると共に、建築用壁材の難燃性が向上する。第1の層20中の潜熱蓄熱材料の含有量が前記範囲未満であると、蓄熱性が低下し、前記範囲を超えると、難燃性が低下する。また、第1実施形態に係る建築用壁材によれば、優れた断熱性能や調湿性を付与することもでき、省エネ対策の向上にも貢献できる。
基材10としては、特に制限されないが、石膏ボード、コンクリート、ベニア、合板等が挙げられる。
第1の層20は、少なくとも母材及び潜熱蓄熱材料を含有する組成物(以下、第1実施形態において、単に「組成物」ともいう。)を、基材10上に塗布及び乾燥させることにより形成することができる。第1の層20は、前記組成物を基材10上に塗布した後、各種デザインによる表面仕上げ加工を施工現場で施してから乾燥させてもよい。
基材10上の組成物の塗布量は、特に制限されないが、好ましくは0.5~6kg/m、より好ましくは1~4kg/m、特に好ましくは1.8~3.8kg/mである。また、第1の層20の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.5~6mm、より好ましくは1~5mm、特に好ましくは2~4mmである。
前記組成物中に含まれる母材の成分としては、珪藻土、シラス、半水石膏、石灰、骨材
、増粘剤、無機質粉体、有機質粉体、水、各種添加剤(ガス吸着剤、防黴剤等)が挙げられる。前記組成物は、これらの母材としての成分と潜熱蓄熱材料とからなる混練物である。
以下、前記組成物中に含まれる母材の各成分及び潜熱蓄熱材料について説明する。
<珪藻土>
前記組成物は、珪藻土を含有することが好ましい。珪藻土とは、植物プランクトンが海中や湖沼で化石化した土であり、多孔質の無機固体である。珪藻土は、断熱性、調湿性、消臭性等の際立った特性を有する軽量素材であり、嵩密度が0.4g/cm程度、平均粒子径が10μmと著しく軽い粉末素材である。
珪藻土の含有量は、組成物100質量%中、好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは10~30質量%であり、特に好ましくは15~25質量%である。珪藻土の含有量が前記範囲であると、断熱性、調湿性、消臭性のバランスに優れた建築用壁材が得られやすく、また十分な表面強度及び接着強度を有する建築用壁材が得られる。
<シラス>
前記組成物は、珪藻土に代えてシラスを含有してもよい。シラス(白砂)とは、南九州の方言で白い砂を意味するが、地質学的には鹿児島県を始めとする南九州一帯に厚く堆積している、白色の火山噴出物(細粒の軽石や火山灰など)が集積した地層をいう。シラスは、1000℃を超す温度で自然焼成された完全無機質粉状の物質である。シラスは、珪酸70%、アルミナ14%、カルシウム3%、ナトリウム3%、磁鉄2%、カリウム2%、その他マグネシウム、チタン、マンガンなどの成分を含む。シラスの含有量は、組成物100質量%中、好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは10~30質量%であり、特に好ましくは15~25質量%である。
<半水石膏/石灰>
前記組成物は、半水石膏及び/又は石灰を含有することが好ましい。半水石膏及び石灰は、硬化剤として機能する。半水石膏は、硫酸カルシウム二水和物の鉱物名であり、黒鉱鉱床中に多産するほか、二次鉱物としての硫化物の分解によって生成される。半水石膏としては、例えば、α型半水石膏、β型半水石膏が挙げられる。これらの半水石膏は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
一方、石灰としては、生石灰、消石灰、苦土石灰、有機石灰等が挙げられる。これらの石灰は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。石灰岩は、有孔虫、サンゴ、二枚貝、巻き貝、石灰藻など、CaCOの殻や骨格をもつ生物の遺骸が堆積して作られたもので、石灰岩を炉で熱すると、二酸化炭素を放出して、酸化カルシウム(生石灰)CaOになる。生石灰に水を加えると、発熱して水酸化カルシウム(消石灰)Ca(OH)が得られる。
これらの中でも、汎用性や現場施行での可使時間を考慮すると、β型半水石膏、消石灰を好適に用いることができる。
半水石膏及び/又は石灰の含有量は、組成物100質量%中、好ましくは0.5~45質量%であり、より好ましくは0.5~25質量%である。半水石膏及び/又は石灰の含有量が前記範囲にあると、建築用壁材の表面強度と湿度調節機能とのバランスが良好なものとなる。
半水石膏及び石灰は、水和による凝結硬化性に優れる。また、半水石膏の凝結硬化反応
は極めて短時間で硬化し、完全水和するまでの時間が短いため、現場施工後の養生期間を短くすることができ、工期短縮が図れる。さらに、半水石膏の凝結硬化反応時間を調整することで、少人数での作業においても、前記組成物の可使時間を延ばし、作業者の負荷を軽減できる。
なお、一般的な内装塗り仕上げは、石膏ボード下地等に石膏プラスター下地を塗り付け、2~3日間以上養生後、内装塗り仕上げを行う。一方、本実施形態で使用する組成物は、半水石膏を使用することで、水和が数十分でほとんど完了するため、石膏ボード下地等に直接塗り付けることが可能となり、石膏プラスター下地の工程を省略でき、現場での負荷を軽減することができる。また、石膏プラスター下地の工程が省略されることで養生期間が不要となり、工期短縮が図れる。
<骨材>
前記組成物は、骨材を含有してもよい。骨材としては、有機質骨材でも無機質骨材でもよく、それらを併用してもよい。また、他の材料との比重が近似する軽量骨材を用いることが分散性の観点から好ましいが、重量骨材と併用してもよい。なお、軽量骨材の嵩比重は、1.1以下であることが好ましい。重量骨材は、珪砂、砂、寒水石などのことを指し、それらの嵩比重は1.3前後以上のものが多い。
軽量骨材としては、粒径約1.2mm以下の公知の建築用壁材に用いられる各種の骨材を用いることができ、例えばゼオライト、パーライト、炭酸カルシウム等を用いることができる。これらの軽量骨材は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
重量骨材としては、粒径約1mm以下の公知の建築用壁材に用いられる各種の骨材を用いることができ、例えば砂、寒水石、色砂等を用いることができる。これらの重量骨材は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
骨材の含有量は、組成物100質量%中、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは5~45質量%であり、特に好ましくは10~35質量%である。
<増粘剤>
前記組成物は、増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤としては、公知の各種水溶性樹脂、再乳化型粉末樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、水に可溶で、粉末状であるため、予め乾燥状態で混合しておくことができる。前記組成物が増粘剤を含有することにより、組成物の塗布作業性や基材への接着性を向上できる。
水溶性樹脂としては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;でんぷん及びその誘導体、ニカワ、ゼラチン;海藻類等の天然高分子等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
再乳化型粉末樹脂としては、例えば、酢酸ビニル-ベオバ共重合体、エチレン酢酸ビニル、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの再乳化型粉末樹脂は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
増粘剤の含有量は、組成物100質量%中、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~3質量%であり、特に好ましくは0.5~1.5質量%である。増粘剤の含有量が前記範囲にあると、組成物に適度な粘性が付与されて、組成物の塗布作業性
や基材への接着性がより良好となる。
<無機質粉体>
前記組成物は、無機質粉体を含有してもよい。無機質粉体は、粒径約100μm以下の各種無機質粉体を用いることができ、例えばドロマイトプラスター、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー等を用いることができる。これらの無機質粉体は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。吸湿しやすい粉体は、凝集又は凝塊化し易いので、選定の際はその点も考慮して使用材料の選定ならびに配合量を決定すればよい。
無機質粉体の含有量は、組成物100質量%中、1~55質量%の範囲で使用することができるが、作業性、表面強度、調湿性を考慮しながら、前記骨材と無機質粉体の合計含有量が30~55質量%の範囲となるように決定すればよい。
<有機質粉体>
前記組成物は、有機質粉体を含有することが好ましい。有機質粉体は、粘性の改良のために添加されるものであり、公知の建築用壁材に用いられる各種の有機質粉体を用いることができる。有機質粉体の中でも、有機質繊維であることが好ましい。
有機質粉体の含有量は、組成物100質量%中、好ましくは1~10質量%であり、より好ましくは2~9質量%であり、特に好ましくは3~8質量%である。有機質粉体の含有量が前記範囲にあると、組成物の混練り性が良好となり、また建築用壁材の表面状態も良好となり、多種のデザインによる表面仕上げ施工性も良好となる。
<添加剤>
前記組成物は、必要に応じて、作業性を良くするための作業性改良材、天然のホウ酸カルシウム(コレマナイト)等の防黴剤、ホルムアルデヒド等の有害ガスを吸着するためのガス吸着剤、着色するための顔料、難燃性をより向上させるための難燃剤(ハロゲン化合物系、リン系、窒素系、シリコーン化合物、無機化合物、イントメッセント系等)、難燃助剤等の添加剤を含有することができる。
<潜熱蓄熱材料>
前記組成物は、潜熱蓄熱物質を含む潜熱蓄熱材料を含有する。潜熱蓄熱物質は、温度が上昇すると熱を吸収して融解し、温度が下がると熱を放出して凝固するので、温度を一定時間所定の温度に保つのに適している。潜熱蓄熱物質としては、パラフィン化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族エーテル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコール、オレフィン系重合体、無機水和物等が挙げられる。潜熱蓄熱物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
パラフィン化合物としては、相転移の温度が潜熱蓄熱物質の使用温度として有用である点から、炭素数が7~60のパラフィン化合物が好ましい。パラフィン化合物としては、潜熱量が大きい点から、直鎖状のパラフィン化合物が好ましい。パラフィン化合物は、比較的低分子量のパラフィン化合物(a)と、比較的高分子量の石油ワックス(b)とに分類される。
パラフィン化合物(a)の炭素数は、相転移の温度が潜熱蓄熱材料の使用温度として有用である点から、7~24が好ましく、11~20がより好ましい。パラフィン化合物(a)の炭素数は、潜熱蓄熱材料の使用温度に応じて、前記範囲から適宜に選択すればよい。パラフィン化合物(a)は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、潜熱量が大きい点から、直鎖状のパラフィン化合物が好ましい。パラフィン化合物(a)としては
、潜熱蓄熱材料の使用温度範囲を広げる点から、-20~50℃の温度範囲に融点を有するものが好ましい。融点は、JIS K 7121に準拠して示差走査熱量計(DSC)によって測定した際の結晶融解ピークにおける補外融解開始温度(Tim)である。
パラフィン化合物(a)としては、n-ウンデカン(-21℃)、n-ドデカン(-12℃)、n-トリデカン(-5℃)、n-テトラデカン(6℃)、n-ペンタデカン(9℃)、n-ヘキサデカン(18℃)、n-ヘプタデカン(21℃)、n-オクタデカン(28℃)、n-ノナデカン(32℃)、n-イコサン(37℃)、n-ヘンイコサン(41℃)、n-ドコサン(46℃)が好ましい。括弧内の温度は、融点である。
石油ワックス(b)としては、潜熱量及び入手性の点から、炭素数が20以上のものが好ましい。石油ワックス(b)としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。パラフィンワックスは、石油または天然ガスを原料として減圧蒸留の留出物から分離精製して製造される、常温において固体のパラフィン化合物である。パラフィンワックスとしては、潜熱量及び入手性の点から、炭素数が20~40のものが好ましい。パラフィンワックスの市販品としては、日本精蝋社製のHNP-9、HNP-51、FNP-0090、FT115等が挙げられる。マイクロクリスタリンワックスは、石油を原料として減圧蒸留残渣油又は重質留出油から分離精製して製造される、常温において固体のパラフィン化合物である。マイクロクリスタリンワックスとしては、潜熱量及び入手性の点から、炭素数が30~60のものが好ましい。
脂肪酸としては、相転移の温度が潜熱蓄熱材料の使用温度として有用である点から、炭素数が8~30の脂肪酸が好ましい。脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸、直鎖不飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸及び分岐不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、潜熱量が大きい点から、直鎖飽和脂肪酸が好ましい。
直鎖飽和脂肪酸としては、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸等が挙げられる。脂肪酸金属塩としては、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、2-エチルヘキサン酸アルミニウム等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、乳酸ブチル、乳酸エチル、オレイン酸メチル、コハク酸ジエチル、デカン酸エチル、デカン酸メチル、テトラデカン酸メチル、ヘキサデカン酸メチル、オクタデカン酸メチル、エイコサン酸メチル、ベヘン酸メチル、ドデカン酸ブチル、パルミチン酸n-ヘキサデシル、ステアリン酸ステアリル等が挙げられる。
脂肪族エーテルとしては、相転移の温度が潜熱蓄熱材料の使用温度として有用である点から、炭素数が14~60の脂肪族エーテルが好ましい。脂肪族エーテルとしては、ヘプチルエーテル、オクチルエーテル、テトラデシルエーテル、ヘキサデシルエーテル等が挙げられ、潜熱量が大きく、合成が容易である点から、酸素原子数が1つであり、対称構造を有するエーテルが好ましい。
脂肪族ケトンとしては、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、3-ノナノン、シクロヘプタノン等が挙げられる。
脂肪族アルコールとしては、相転移の温度が潜熱蓄熱材料の使用温度として有用である点から、炭素数が8~60の脂肪族アルコールが好ましい。脂肪族アルコールとしては、潜熱量が大きい点から、1級アルコールが好ましい。脂肪族アルコールとしては、2-ド
デカノール、1-テトラデカノール、7-テトラデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。
オレフィン重合体は、エチレンに基づく単量体単位を主鎖に有する重合体である。エチレンに基づく単量体単位を有することにより、電子線や、有機過酸化物による架橋が効率的に進行し、架橋性を高めることができる。
エチレンに基づく単量体単位の含有量は、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは65モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上である。但し、オレフィン重合体を構成する単量体単位の総量を100モル%とする。また、エチレンに基づく単量体単位の含有量は、蓄熱性能を高める観点から、好ましくは95モル%以下であり、より好ましくは90モル%以下である。
オレフィン重合体は、炭素原子数5以上の分岐鎖を有し、その分岐数が炭素原子数1000個当たり20個以上、40個以下であることが好ましい。オレフィン重合体は、蓄熱性能を高めるという観点から、炭素原子数5以上の分岐数は炭素原子数1000個当たり、好ましくは23個以上、より好ましくは25個以上である。また、ゲル分率を高めるという観点から、炭素原子数5以上の分岐数は炭素原子数1000個当たり、好ましくは37個以下、より好ましくは35個以下である。
オレフィン重合体は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数10以上のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する重合体であることが好ましい。炭素原子数10以上のα-オレフィンに基づく単量体単位としては、人が寒いと感じる環境下で、必要以上に吸熱することを抑えるという点から、炭素原子数14以上のα-オレフィンに基づくものであることが好ましく、炭素原子数18以上のα-オレフィンに基づくものであることがより好ましい。炭素原子数10以上のα-オレフィンに基づく単量体単位としては、人が暑いと感じる環境下で充分に吸熱するという点から、炭素原子数30以下のα-オレフィンに基づくものであることが好ましく、炭素原子数26以下のα-オレフィンに基づくものであることがより好ましい。
炭素原子数10以上のα-オレフィンとしては、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-ドコセン、1-ヘキサコセン、1-オクタコセン、1-トリアコンテン、1-ドトリアコンテン、1-テトラトリアコンテン、1-ヘキサトリアコンテン、1-オクタトリアコンテン及び1-テトラコンテンなどが挙げられる。本発明においては、これらのα-オレフィンはそれぞれ単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
オレフィン重合体が、α-オレフィンに基づく単量体単位が連続する構造を有すると、その構造部位でオレフィン重合体が分解する。α-オレフィンに基づく単量体単位が連続する構造の形成を抑え、さらにオレフィン重合体の分解を抑えるために、オレフィン重合体は、α-オレフィンに基づく単量体単位よりも、エチレンに基づく単量体単位を多く含有する方が好ましい。
潜熱蓄熱物質としては、パラフィン化合物からなるもの;または、脂肪酸エステル、脂肪族ケトン、脂肪族アルコール及び脂肪族エーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種と、脂肪酸又は脂肪酸金属塩との組み合わせが好ましい。潜熱蓄熱物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特定の温度における潜熱量を大きくする点からは、1種を単独で用いるまたは2種を併用することが好ましく、潜熱蓄熱材料の使用温度範囲を広げる点からは、2種以上を併用してもよく、3種以上を併用してもよい。
潜熱蓄熱物質の潜熱量(融解潜熱と凝固潜熱)は、特に限定されないが、100J/g以上が好ましい。100J/g未満であると、壁材中への添加量が多くなり、壁材として必要な特性(施工性、強度、調湿性などの各種機能)が低下する恐れがある。
本実施形態で用いられる潜熱蓄熱材料は、潜熱蓄熱物質が相変化後(融解後)でも液状化せず、形状を維持している固形状のものが好ましい。具体的には、潜熱蓄熱物質をマイクロカプセルに内包させたもの、無機多孔質体に潜熱蓄熱物質を含浸させたもの、熱可塑性樹脂と潜熱蓄熱物質を溶融混合したもの、オレフィン重合体、オレフィン重合体の架橋物等が挙げられ、これらの中でも、潜熱量(蓄熱性能)及び材料強度(蓄熱物質漏えい性)から、潜熱蓄熱物質をマイクロカプセルに内包させたものが好ましい。本発明において「マイクロカプセル」とは、潜熱蓄熱物質を封じ込めるための微小な容器のことをいう。潜熱蓄熱物質をマイクロカプセルに内包させることにより、蓄熱物質が熱を吸収して融解した場合であっても、潜熱蓄熱物質の建築用壁材への漏出を防止することができ、また外部環境から潜熱蓄熱物質を保護することができる。
潜熱蓄熱物質を内包させたマイクロカプセルの体積平均粒子径は、好ましくは1~500μmであり、より好ましくは3~400μmであり、特に好ましくは5~300μmである。マイクロカプセルの体積平均粒子径が500μmを超えると、施工後の意匠性が悪化する恐れがあり、また1μm未満であると施工時の作業性(微粉末による飛散、壁材増粘等)が悪化する恐れがある。
マイクロカプセルを構成する材料(皮膜剤)としては、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、水添共役ジエン(共)重合体、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリルアミド、エチルセルロース、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、メラミン樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム等が挙げられる。なお、シックハウス原因物質であるアルデヒド類抑制の観点から、メラミン樹脂の使用は好ましくない。
マイクロカプセルを構成する材料(皮膜剤)の貯蔵弾性率を任意に調整でき、かつ、気密性に優れたマイクロカプセルを作成できる点で、ポリウレタン、ポリウレア、メラミン樹脂を好ましく使用することができる。ポリウレタン及びポリウレアは、原料とするイソシアネート化合物、ポリオール化合物、アミン化合物の分子骨格を適宜選択することにより、貯蔵弾性率を調整できる。例えば、分子内に芳香環を有する剛直な骨格を有する化合物を原料としてマイクロカプセルを形成すると、マイクロカプセルの貯蔵弾性率は増加する。逆に、分子内に脂肪鎖を有する柔軟な骨格を有する化合物を原料としてマイクロカプセルを形成すると、マイクロカプセルの貯蔵弾性率は減少する。
マイクロカプセルの製造方法としては、特に限定されないが、オリフィス法等の機械的方法、in situ重合法や相分離法等の物理的方法、界面重合法等の化学的方法が挙げられる。具体的には、国際公開第2016/208573号、特表2002-516913号公報、特開2006-233342号公報、国際公開第2009/128476号、特開2017-137437号公報、国際公開第2014/109413号、特開2017-149821号公報、特開2016-176013号公報、特開2016-141764号公報、2017-145317公報等に記載されている各方法が挙げられる。
市販のマイクロカプセルとしては、Microtec Laboratories社(旧BASF社)のMicronal(登録商標)シリーズ、三木理研工業社のリケンレヂンPMCDシリーズ、LAシリーズ、三菱製紙のサーモメモリーFPシリーズ、FSシリーズ、JSR社のCALGRIP(登録商標)のNJシリーズ
が使用できる。
<組成物の調製>
前記組成物は、前記各材料を特定範囲で含有し、その混合物を予め強制撹拌などで粉末混合することにより調製することができる。粉末混合の手法としては、公知の手法を適宜に採用すればよく、市販されている各種粉末混合機を用いてもよく、乾燥状態における各材料粉末を撹拌、振動、回転等を適宜に組み合わせて強制撹拌してもよい。
1.2.第2実施形態
図2は、第2実施形態の一例に係る建築用壁材200の断面を模式的に示す概念図である。図2に示されるように、本発明の第2実施形態に係る建築用壁材200は、基材110上に、少なくとも、母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の層120、少なくとも母材を含有する第2の層130をこの順に有している。図2中の点は、潜熱蓄熱材料を表している。
建築用壁材200は、基材110上に、少なくとも母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の組成物を塗布及び乾燥させて第1の層120を形成した後、第1の層120上に、少なくとも母材を含有する第2の組成物を塗布及び乾燥させて第2の層130を形成することにより作製することができる。第2の層130は、前記第2の組成物を第1の層120上に塗布した後、各種デザインによる表面仕上げ加工を施工現場で施してから乾燥させてもよい。
前記第1の層120中の前記潜熱蓄熱材料の含有量は、15~30質量%であり、好ましくは15~25質量%であり、より好ましくは15~20質量%である。第1の層120を形成するための第1の組成物中の潜熱蓄熱材料の含有量についても同様である。第1の層120の潜熱蓄熱材料の含有量が前記範囲であることにより、建築用壁材に優れた蓄熱性を付与することができるので、住宅内の室温の変化を低く保ち、快適な暮らしが実現できると共に、建築用壁材の難燃性が向上する。第1の層120中の潜熱蓄熱材料の含有量が前記範囲未満であると、蓄熱性が低下し、前記範囲を超えると、難燃性が低下する。また、第2の実施形態に係る建築用壁材によれば、優れた断熱性能や調湿性を付与することもでき、省エネ対策の向上にも貢献できる。
基材110上の第1の組成物の塗布量は、特に制限されないが、好ましくは0.5~6kg/m、より好ましくは1~4kg/m、特に好ましくは1.8~3.8kg/mである。また、第1の層120の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.5~6mm、より好ましくは1~5mm、特に好ましくは2~4mmである。
一方、前記第2の層130は、前記潜熱蓄熱材料を含有してもよいし、含有しなくてもよいが、含有しないことが好ましい。第2の層130が潜熱蓄熱材料を含有しないことにより、建築用壁材200の難燃性が大幅に向上する。
第2の層130が潜熱蓄熱材料を含有する場合、第2の層130の潜熱蓄熱材料の含有量は、第1の層120の潜熱蓄熱材料の含有量よりも少ないことが好ましい。したがって、第2の組成物中の潜熱蓄熱材料の含有量についても、第1の組成物の潜熱蓄熱材料の含有量よりも少ないことが好ましい。
第2の層130の潜熱蓄熱材料の含有量は、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0.1~10質量%であり、さらにより好ましくは0.5~8質量%、特に好ましくは1~6質量%である。第2の層130を形成するための第2の組成物中の潜熱蓄熱材料の含有量についても同様である。第2の層130は、第1の層120よりも潜熱蓄熱
材料の含有量が少なく、建築用壁材200のより表面側に存在するので、建築用壁材の難燃性がより向上する。
第1の層110上の第2の組成物の塗布量は、特に制限されないが、好ましくは0.1~3kg/m、より好ましくは0.5~2.5kg/m、特に好ましくは0.8~2kg/mである。また、第2の層130の厚さは、特に制限されないが、好ましくは0.1~5mm、より好ましくは0.5~3mm、特に好ましくは1~2mmである。
第2実施形態に係る建築用壁材200における、基材、母材、潜熱蓄熱材料及び(潜熱蓄熱材料の含有量以外の)組成物の組成については、上記で説明した第1実施形態と同様である。
第2実施形態に係る建築用壁材200は、補強材を用いて補強してもよい。具体的な補強方法としては、第1層または第2層、もしくは第1層および第2層の表面に補強材を塗布または伏せ込む(埋設する)方法が挙げられる。建築用壁材200の補強を行うことで、乾燥収縮ひび割れ抑制や表面強度、不燃性能の向上が見込まれる。補強材には、塗布型と伏せ込み型がある。塗布型補強材としては、アクリルエマルション、酢酸ビニルエマルション、珪酸ナトリウム(水ガラス)やホウ酸系エマルション、リン酸系エマルションなどが挙げられる。塗布型補強材の塗布は、第1層および/または第2層の表面が乾燥した後に行うことが望ましい。一方、伏せ込み型補強材としては、ガラス繊維ネット、カーボン繊維ネット、アラミド繊維ネット、ポリプロピレン繊維ネット、ポリエチレン繊維ネットなどが挙げられる。伏せ込み型補強材の伏せ込みは、第1層および/または第2層を塗り付けた後、直ちに伏せ込みをすることが望ましい。
2.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
2.1.潜熱蓄熱材料の作製
<潜熱蓄熱材料の作成>
脂肪酸エステル(潜熱蓄熱物質)、ポリウレタンウレア(被膜剤)からなる、マイクロカプセルを以下の方法にて作成した。
撹拌機付き2Lのセパラブルフラスコに水800gを仕込み、その水にヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業社製、メトローズ(登録商標)90SH-65)10gを溶解して分散媒を調製した。ヘキサデカン酸メチル(潜熱蓄熱物質;当栄ケミカル社製)166.3g、テトラデカン酸メチル(潜熱蓄熱物質;当栄ケミカル社製)41.6g、ステアリン酸(潜熱蓄熱物質;花王社製)2.1g、HDIのイソシアヌレート体(BASF社製、Basonat HI-100)81.0g、エチレングリコール(三菱化学製)5.0gを混合して原料組成物を調製した。
分散媒を300rpmで撹拌しながら、分散媒に原料組成物を加え、分散液を調製した。分散液を撹拌しながら40℃に昇温し、分散液にエチレンジアミン(住友精化社製)14.0gを添加し、1時間撹拌した。その後、分散液を60℃に昇温し、2時間撹拌した。その後、分散液を90℃に昇温し、1時間撹拌した。次いで、分散液を室温まで冷却し、固液分離によって分散液中の粒子を回収した。粒子を水で充分に洗浄した後、60℃で20時間乾燥してマイクロカプセルを得た。
レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD-2100)を用いて測定
された体積平均粒子径は150μmであった。また、示差走査熱量測定計(DSC、NETZSCH社製、DSC 204 F1 Phoenix)を用いて、100℃において5分間保持した後、100℃から-50℃まで10℃/分の速度で冷却し、-50℃において5分間保持した後、-50℃から100℃まで10℃/分の速度で昇温して得られたマイクロカプセルの融解潜熱量は140J/g(潜熱蓄熱物質の理論含有量は70質量部)であった。
2.2.組成物の調製
表1~表4に示す配合組成の合計量が10kgとなるように各材料をそれぞれ秤量してステンレス製容器内に投入し、上方から羽根攪拌機を用いて5分程度強制撹拌して混合した。得られた組成物をポリプロピレン製袋内に封入して保存した。表1~表4中、組成物組成の数値は「質量%」を表す。
2.3.建築用壁材の作製
このようにして得られた各組成物を用いて建築用壁材を作製した。具体的には、木造住宅の室内部分の内壁及び間仕切り壁の石膏ボードの目地部分に前記組成物を埋めるように塗付け、塗着表面の水分が引いた後、同じ組成物を塗付け、3mm程度となるように施工した。
2.4.評価方法
表1~表4に記載の各評価試験は、以下のようにして行った。
<発熱性試験(コーンカロリーメータ法)>
発熱性試験では、「ISO 5660-1:2015 Reaction-to-fire tests」に従って、上記で得られた建築用壁材の総発熱量(MJ/m)を求めた。その結果を表1及び表2に併せて示す。加熱開始後の10分間の総発熱量が8MJ/m以下である場合、準不燃性と評価でき、加熱開始後の5分間の総発熱量が8MJ/m以下である場合、難燃性と評価することができる。なお、表1~表4に示す総発熱量は、準不燃性である場合、加熱時間10分時の総発熱量を表し、難燃である場合、加熱時間5分時の総発熱量を表す。
<蓄熱性試験>
蓄熱性試験は、特開2015-118012号公報記載されている試験方法に準拠し、以下の試験条件(昇温速度、降温速度、一定温度保持時間)にて蓄熱性(kJ/m)を測定した。その結果を表1~表4に併せて示す。蓄熱性が30kJ/m以上であれば建築用壁材として十分な蓄熱性を有すると評価することができる。
(試験条件)
・0℃で2時間保持
・3℃/時間で50℃まで昇温
・50℃で2時間保持
・3℃/時間で0℃まで降温
・0℃で2時間保持
<調湿性>
調湿性試験は、JIS A 6909(建築用仕上塗材)の「7.29 吸放湿性試験」に従って行った。その結果を表1~表4に併せて示す。調湿性が70g/m以上であれば建築用壁材として十分な調湿性を有すると評価することができる。
<アルデヒド類放散性(JIS A 1901)>
ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒド放散速度は、JIS A 1901の小型チャ
ンバー法に準じて行った。まず、56cmのガラスシャーレに上記で得られた組成物15gを均等に敷き詰めた測定用サンプルを準備した。測定には、温度28℃±1℃、相対湿度50%±5%の恒温室に設定した小型チャンバーを用いた。換気回数は、0.5回/hrとなるように設定し、捕集管(ジーエルサイエンス社、商品名「GL-Pak mini AERO DNPH」)により容器より排出される空気を10L捕集し、アセトニトリルで抽出し、高速液体クロマトグラフにより分析し放散速度を測定した。その結果を表1~表4に併せて示す。
2.5.評価結果
下表1~下表4に、各組成物の組成及び評価結果を示す。
Figure 0007217452000001
Figure 0007217452000002
Figure 0007217452000003
Figure 0007217452000004
表1~表4に示す各材料は、以下の通りである。
・珪藻土:商品名「ゼムライトスーパーM」、白山工業株式会社製
・シラス:商品名「ウインライト」、株式会社アクシーズケミカル製
・半水石膏:商品名「半水石膏 β型 SB」、株式会社ノリタケカンパニーリミテド
・消石灰:商品名「特選消石灰」、宮田石灰株式会社製
・PCM:上記で作製した潜熱蓄熱材料
・骨材:商品名「ゼオフィル#1632」、新東北化学工業株式会社製 商品名「加工用5号」、三井金属鉱業株式会社製
・無機質粉体:商品名「ミクロンカルMC-100」、旭鉱末株式会社製 商品名「タンカル-0.7」、旭鉱末株式会社製
・有機質粉体:商品名「パルプフロック」、株式会社山田洋治商店製
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が
同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。
10・110…基材、20・120…第1の層、130…第2の層、100・200…建築用壁材

Claims (9)

  1. 基材上に、
    少なくとも、母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の層を有し、
    前記第1の層は、組成物から形成されたものであり、
    前記組成物が、少なくとも、珪藻土又はシラスを5~40質量%、半水石膏及び/又は消石灰を0.5~45質量%、前記潜熱蓄熱材料を10~30質量%、無機質粉体を1~55質量%、及び有機質粉体を1~10質量%含有し、
    前記第1の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量が、10~30質量%である、建築用壁材。
  2. 基材上に、
    少なくとも、母材及び潜熱蓄熱材料を含有する第1の層、
    少なくとも母材を含有する第2の層をこの順に有し、
    前記第1の層は、組成物から形成されたものであり、
    前記組成物が、少なくとも、珪藻土又はシラスを5~40質量%、半水石膏及び/又は消石灰を0.5~45質量%、前記潜熱蓄熱材料を10~30質量%、無機質粉体を1~55質量%、及び有機質粉体を1~10質量%含有し、
    前記第1の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量が、15~30質量%である、建築用壁材。
  3. 前記第2の層が、潜熱蓄熱材料をさらに含有し、
    前記第2の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量が、前記第1の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量よりも小さい、請求項2に記載の建築用壁材。
  4. 前記第2の層中の前記潜熱蓄熱材料の含有量が、0~10質量%である、請求項3に記載の建築用壁材。
  5. 前記母材が、珪藻土、シラス、半水石膏、石灰、骨材、増粘剤、無機質粉体及び有機質粉体から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の建築用壁材。
  6. 前記潜熱蓄熱材料が、マイクロカプセルに潜熱蓄熱物質を内包させた粒子であり、該粒子の体積平均粒子径が1~500μmである、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の建築用壁材。
  7. 前記潜熱蓄熱物質が、パラフィン化合物及び脂肪酸エステルから選ばれた1種である、請求項6に記載の建築用壁材。
  8. 前記第2の層が、組成物から形成されたものであり、
    前記組成物が、少なくとも、珪藻土又はシラスを5~40質量%、半水石膏及び/又は消石灰を0.5~45質量%、前記潜熱蓄熱材料を0~10質量%、無機質粉体を1~55質量%、及び有機質粉体を1~10質量%含有する、請求項2ないし請求項のいずれか一項に記載の建築用壁材。
  9. 前記基材が、石膏ボード、コンクリート、ベニア又は合板である、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の建築用壁材。
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