以下、本発明の一実施形態を、図1~図23を参照して説明する。
このスライディングウォールSWは、図1~図5に示すように、対面する建築壁W間に形成される空間を開放可能に間仕切るべく設けられたもので、それら建築壁Wにそれぞれ固設された左右の固定フレーム1と、これら固定フレーム1の上端間に配された天井レール2と、この天井レール2に沿って移動可能な複数枚の間仕切パネル3と、例えば正面視右側の固定フレーム1に蝶着されたドアパネル4とを備えたものである。
天井レール2は、図14~図17に示すように、底壁21に長手方向に連続する溝21aを有した角柱パイプ状のもので、その天壁23の外面には取付け用の突条23aが一体に形成されている。この天井レール2は、突条23aに掛止された図示しない懸吊部材を介して図示しない建築構造物に懸吊されている。天井レール2の両側には天井材Ceが配設されており、これら天井材Ceの下面に相当する天井面Ceaと天井レール2の下面2aとは略面一となっている。
各間仕切パネル3は、図1及び図7~図10に示すように、面板8の周縁に枠体9を配してなるパネル本体5と、このパネル本体5の下端部及び上端部にそれぞれ設けられた圧接体6A、6Bと、操作部10に加えられる操作力により圧接体6A、6Bを床面F及び天井レール2の下面2aにそれぞれ圧接させる圧接体駆動手段7とを備えたものであり、圧接体駆動手段7の全構成部品が枠体9に沿って配されている。
パネル本体5は、図6及び図7に示すように、厚み方向に間隔をあけて配された対をなす面板8と、これら面板8の周縁部間に介設された枠体9とを備えている。
各面板8は、図6及び図7に示すように、透明なガラス板25を主体に構成されたもので、このガラス板25の周縁に金属製の縁部材27が装着されている。また、この面板8の縁部材27には、当該面板8を枠体9に取り付けるための取付爪29が設けられている。
枠体9は、図8~図12に示すように、左右の起立フレーム31、33と、これら起立フレーム31、33の下端同士を連結するボトムフレーム35と、前記起立フレーム31、33の上端同士を連結するトップフレーム37とを備えたものである。
正面視左の起立フレーム31は、角柱パイプ状のもので、図6に示すように、外側壁39に突条39aを備えている。図8~図12に示すように、この起立フレーム31の下端部は、ブラケット41を介してボトムフレーム35に止着されているとともに、上端部は、ブラケット41を介してトップフレーム37に止着されている。また、図6~図10に示すように、内側壁43には、面板8の取付爪29を掛け止めするためのスリット45aを備えた取付部材45が設けられている。
正面視右の起立フレーム33は、角柱パイプ状のもので、図6に示すように、外側壁47に凹陥部47aを備えている。図8~図12に示すように、この起立フレーム33の下端部は、ブラケット49を介してボトムフレーム35に止着されているとともに、上端部は、ブラケット49を介してトップフレーム37に止着されている。また、図6~図10に示すように、内側壁51には、面板8の取付爪29を掛け止めするためのスリット53aを備えた取付部材53が設けられている。さらに図8~図10に示すように、この起立フレーム33の内側壁51には、後述する伝達ロッド12を昇降可能に保持するロッド保持部材55が設けられている。
ボトムフレーム35は、図7~図12に示すように、ブラケット41、49を介して前述した起立フレーム31、33に連結された上方に開口する内側チャンネル材57と、この内側チャンネル材57の下面に取り付けられた下方に開口する外側チャンネル材59とを備えたもので、この外側チャンネル材59に圧接体6Aを突没可能に収容するとともに、内側チャンネル材57に圧接体駆動手段7の圧接機構部11を収容している。
トップフレーム37は、図7~図12に示すように、ブラケット41、49を介して前述した起立フレーム31、33に連結された下方に開口する内側チャンネル材61と、この内側チャンネル材61の上面に取り付けられた上方に開口する外側チャンネル材63とを備えたもので、この外側チャンネル材63に圧接体6Bを突没可能に収容するとともに、内側チャンネル材61に圧接体駆動手段7の圧接機構部11を収容している。このトップフレーム37の左右方向中央には、当該間仕切パネル3を天井レール2に懸吊支持させるための単一の懸吊機構13が設けられている。この懸吊機構13は、天井レール2内を移動する走行体65と、この走行体65に上端部を支持させて間仕切パネル3を懸吊する懸吊桿67とを備えたもので、懸吊桿67は下端部をトップフレーム37に止着された棒状ナット67aと、この棒状ナット67aに螺着され上端部を走行体65に支持させた懸吊ボルト67bとを備えたものであり、この懸吊桿67は天井レール2の溝21aに挿通させてある。
ボトムフレーム35に収容される下の圧接体6Aは、図8~図12に示すように、平行に配設された対をなす起立壁69と、これら両起立壁69の下端近傍部同士を剛結する底壁71とを備えたもので、起立壁69の下端には床面Fに圧接される密接材73が設けられているとともに、起立壁69の上端にはボトムフレーム35の内側面に摺接するシール材75が設けられている。この圧接体6Aの両端には、起立フレーム31、33の外側面に連続しうる形状をなす合成樹脂製のキャップ77が嵌着されている。
トップフレーム37に収容される上の圧接体6Bは、図8~図11に示すように、平行に配設された対をなす起立壁79と、これら両起立壁79の上端近傍部同士を剛結する天壁81とを備えたもので、起立壁79の上端には天井レール2の下面2aに圧接される密接材83が設けられているとともに、起立壁79の下端にはトップフレーム37の内側面に摺接するシール材85が設けられている。この上の圧接体6Bの天壁81には、前述した懸吊桿67を貫通させるための貫通孔81aが形成されている。この圧接体6Bの両端には、起立フレーム31、33の外側面に連続しうる形状をなす合成樹脂製のキャッ87プが嵌着されている。
圧接体駆動手段7は、図8~図10、図14及び図16に示すように、右の起立フレーム33に設けられた操作部10と、ボトムフレーム35及びトップフレーム37にそれぞれ設けられ操作部10に加えられる操作力を利用して圧接体6A、6Bを突没動作させる圧接機構部11と、起立フレーム33に沿って設けられ操作部10に加えられる操作力を各圧接機構部11に伝達する伝達ロッド12とを備えたものである。
操作部10は、いわゆるフランス落としと称される構成のもので、図13に示すように、右の起立フレーム33の外側壁47に設けられた取付窓47bに外側から嵌着されている。この操作部10は、外方に開口するハウジング89と、このハウジング89の開口部に設けられた操作レバー91と、この操作レバー91の回動に応じて上下方向に接離動作する一対の出力端93とを備えたもので、操作レバー91を図13の(a)に示すように没入位置に保持している場合には両出力端93が最も接近した退避位置に停止しており、操作レバーを図13の(b)に示す突出位置まで回動させると、両出力端93が相反する方向に突出し、最も離間した付勢位置に達するようになっている。この操作部10は、通常のものであるため、詳細な説明は省略する。なお、両出力端93には、伝達ロッド12の基端部12aがそれぞれ接続されている。
各伝達ロッド12は、角柱パイプ状のもので、右の起立フレーム33に沿って配設されている。すなわち、各伝達ロッド12は、図8~図10、図14及び図16に示すように、右の起立フレーム33の内側面に設けられたロッド保持部材55に昇降可能に保持されており、下の伝達ロッド12の先端12bはボトムフレーム35まで延出しているともに、上の伝達ロッド12の先端12bはトップフレーム37まで延出している。
ボトムフレーム35に収容されている下の圧接機構部11は、下の圧接体6Aを突没動作させるためのもので、図9~図12、図14及び図16に示すように、水平方向に進退する連結バー14と、この連結バー14の進退動作を対応する圧接体6Aの突没動作に変換する第1リンク機構15と、伝達ロッド12の昇降動作を連結バー14の進退動作に変換する第2リンク機構16とを備えたものである。連結バー14には当該連結バー14の動きと前記圧接体6Aの動きとのずれを弾性的に吸収するための動作吸収機構95が設けられている。
連結バー14は、図9~図12、図15及び図17に示すように、下方に解放されたチャンネル状のバー本体97と、このバー本体97内に固設されたスプリングリテーナ99と、このスプリングリテーナ99に対向させてバー本体97に長手方向に進退可能に設けられたスライダ101と、このスライダ101とスプリングリテーナ99との間に介設された圧縮ばね103とを備えたもので、前記スライダ101に付勢ピン105が固設されている。動作吸収機構95は、前述したスプリングリテーナ99と、スライダ101と、圧縮ばね103とにより構成されている。なお、動作吸収機構95は、バー本体97の長手方向に離間した2カ所に設けられている。
第1リンク機構15は、前述した2つの動作吸収機構95に対応する部位にそれぞれ設けられたもので、各第1リンク機構15は、図9~図12、図14及び図16に示すように、ボトムフレーム35に固設され連結バー14を進退可能に保持する第1リンクベース107と、この第1リンクベース107に支軸111を介して枢着された第1リンクメンバ109と、この第1リンクメンバ109の一方の回動端に接続された前述した付勢ピン105と、第1リンクメンバの他方の回動端に接続ピン115を介して接続され圧接体6Aとともに突没動作を行う連結ベース113とを備えている。第1リンクベース107には、接続ピン115が上下方向にのみ動作するように規制する長孔117が形成されている。そのため、第1リンクメンバ109と付勢ピン105との間及び第1リンクメンバ109と接続ピン115との間には、それぞれ一定の遊動代が設定されている。具体的には、第1リンクメンバ109の回動端側に付勢ピン105及び接続ピン115の微少遊動を許容する長孔119を設けている。
第2リンク機構16は、伝達ロッド12と連結バー14との間に設けられたもので、この第2リンク機構16は、図9~図12、図14及び図16に示すように、ボトムフレーム35に固設された第2リンクベース121と、この第2リンクベース121に支軸125を介して枢着された第2リンクメンバ123と、第2リンクメンバ123の一方の回動端に駆動ピン129を介して接続されたロッド側リンクアーム127と、第2リンクメンバ123の他方の回動端に連結ピン133を介して基端側が接続されるとともに先端側が連結バー14に接続されたバー側リンクアーム131とを備えている。第2リンクベース121には、連結ピン133が左右方向にのみ動作するように規制する長孔135が形成されている。そのため、第2リンクメンバ123と駆動ピン129との間及び第2リンクメンバ123と連結ピン133との間には、それぞれ一定の遊動代が設定されている。具体的には、第2リンクメンバ123の回動端側に駆動ピン129及び連結ピン133の微少遊動を許容する長孔137を設けている。
そして、下の圧接機構部11は、圧接動作の途上において、操作力を一時的に軽減するためのアシスト機構17を備えている。
このアシスト機構17は、図9~図12及び図14~図18に示すように、支点143周りに往復回転可能な回転体139と、この回転体139の作用点の一つ(以下、作用点145と称する)を弾性的に牽引する引張ばね141とを備え、引張ばね141の牽引軸線L0が支点143と前述した一つの作用点145の両方に合致する所定の思案点(Q)を境にして、引張ばね141の回転体139に対する回転付勢方向が反転するように構成されたものであり、回転体139が一方の停止位置(P)(図18(a))から思案点(Q)(図18(b))を超えて他方の停止位置(R)(図18(c))まで回転付勢される際のばね力で、連結バー14を操作力軽減方向に付勢するようにしている。
詳述すれば、このアシスト機構17は、ボトムフレーム35に固設されたアシストベース147と、このアシストベース147に支軸149を介して枢着された前述の回転体139と、この回転体139の一方の回動端に設けられた入力ピン151及びアシストベース147に固設されたばね掛けピン153の間に張設された前述の引張ばね141と、回転体139の他方の回動端に設けられたカム溝157に係合するジョイントピン159を備えたジョイント部材155とを具備してなるもので、ジョイント部材155は連結バー14に一体動作可能に連設されている。しかして、支軸149の軸心が前述した支点143に相当し、入力ピン151の軸心が前述した一つの作用点145に相当する。
トップフレーム37に収容されている上の圧接機構部11は、上の圧接体6Bを突没動作させるためのもので、以上説明した下の圧接機構部11を上下反転させた構成をなしている。そのため、この上の圧接機構部11については、下の圧接機構部11と同一又は対応する部分に同一の符号を付して説明を省略する。
以上説明した各間仕切パネル3は、パネル本体5が天井レール2に対して平行をなしていない交差姿勢(図3~図5)で上の圧接体6Bが天井面Ceaに向けて上動した際に天井レール2の下面2aに優先的に当接して圧接体6Bの天井面Ceaへの接触を禁止する上動禁止要素18と、ボトムフレーム35の長手方向中央を挟んだ2箇所に設けられた接地体19とを備えている。
上動禁止要素18は、図15、図17、図19及び図20に示すように、上の圧接体6Bにおける懸吊桿67の両側に天井レール2の溝21aの幅よりも小幅で上端を上の圧接体6Bの上端よりも上方に位置させた突起161を設けたものである。この突起161は、パネル本体5が天井レール2に対して平行である平行姿勢において、溝21aに進入しうるように構成されている。具体的には、上の圧接体6Bの天壁81には、前述したように懸吊桿67を貫通させるための貫通孔81aが形成されているが、これらの突起161はこの貫通孔81aを挟むようにして天壁81に止着されている。換言すれば、圧接体6Bにおける懸吊桿67を挟んだ2カ所に突起161が設けられている。両突起161の離間距離は、上の圧接体6Bが上動した際に天井レール2の下面2aのみに当接し得る値に設定されている。これらの突起161は、例えばエラストマー樹脂製のもので、上方に向かって漸次平断面が縮小する截頭角錐状をなしている。
両接地体19は、図9、図10、図12、図14~図17、図21及び図22に示すように、ボトムフレーム35にそれぞれ取り付けられたもので、その下端は、床面Fよりも高く且つ没入状態における下側の圧接体6Aの下端よりも低くなるように位置付けられている。下の圧接体6Aの底壁71には、これら接地体19を通過させるための通過窓71aが形成されている。
具体的には、接地体19は、下端に全方向に転動可能な球体201を備えたフリーベアリング状のものである。この接地体19は、図21及び図22に示すように、当該接地体19の下端を構成する樹脂製の球体201と、この球体201を全方向に転動可能に保持するホルダ203とを備えたものである。このホルダ203の上端部は、後述する棒状ナット207に螺着され一体化されている。この接地体19は、接地体支持機構205を介して上下位置を調節可能にボトムフレーム35に設けられたものである。この接地体支持機構205は、接地体19を保持する棒状ナット207と、この棒状ナット207の上端側に螺合した調整ボルト209と、この調整ボルト209を回転可能かつ上下移動不能に支持するとともに棒状ナット207を回転不能かつ上下移動可能に支持する支持台211と、調整後の調整ボルト209の回転を防止する回転防止機構213とを備えたものである。棒状ナット207は、中心部に雌ねじ孔を有する六角柱状のものである。調整ボルト209は、頭部209aに六角形の工具孔を有する通常のもので、棒状ナット207の雌ねじ孔に螺合させてある。調整ボルト209は、支持台211の上板215に回転可能に貫通させたもので、その頭部209aは、支持台211の上板215とボトムフレーム35の外側チャンネル材59の天壁59aとの間に上下移動を禁止された状態で配されている。支持台211は、ボトムフレーム35に止着された側壁219間に前述した上板215と下板217とを架設したもので、上板215には調整ボルト209が貫通する円形孔221が設けられているとともに、下板217には棒状ナット207を回転不能に貫通させるための六角孔223が形成されている。回転防止機構213は、調整ボルト209に対する調整作業を終えた後にボトムフレーム35に取り付けられるもので、調整時の工具に代えて調整ボルト209の頭部209aの工具孔に挿入される六角柱状の工具桿225と、ボトムフレーム35に取り付けられ工具桿225を回転不能に保持する回り止め部材227とを備えたものである。なお、図21は回転防止機構213を取り付ける前の状態を示す図であり、図22は回転防止機構213を取り付けた後の状態を示す図である。
ドアパネル4は、図1~図4及び図6に示すように、厚み方向に間隔をあけて配された対をなすガラス板163と、これらガラス板163の周縁部間に介設された枠体165と、この枠体165と前記ガラス板163の周縁部を包持する周縁部材167とを備えている。
枠体165は、左右の起立フレーム169、171と、これら起立フレーム169、171の下端同士を連結するボトムフレーム173と、前記起立フレーム169、171の上端同士を連結するトップフレーム175とを備えたものであり、右の起立フレーム171が蝶番177を介して右の固定フレーム1に蝶着されている。また、左の起立フレーム169には、取っ手181を備えたドアロック機構179が保持されている。なお、最も右側に配される間仕切パネル3の右縁には、ドアパネル4の回動端を受けるためのドア枠183が取り付けられている。
次いで、このスライディングウォールの作動について説明する。
図1及び図2は、全ての間仕切パネル3を天井レール2に平行に配して密に隣接させるとともにドアパネル4を閉めた状態を示している。この状態では、最も左の間仕切パネル3の左の起立フレーム31に設けられた突条39aが左の固定フレーム1に設けられた凹陥部1xに嵌合するとともに、隣接する間仕切パネル3の突条39aと凹陥部47aとがそれぞれ嵌合している。また、各間仕切パネル3の圧接体6A、6Bは、突出して天井レール2の下面2a及び床面Fに圧接させられている。そのため、建築壁W間に形成された空間は大部分がガラス板25により構成された透明なスライディングウォールSWによって間仕切られている。なお、この状態でも、ドアパネル4は開閉が可能であるため、仕切られた空間間の出入りが自在に行いうる。
このスライディングウォールSWを図3及び図4に示す開放状態にする場合には、まず、ドアパネル4を開くとともに、最も右に位置する間仕切パネル3の操作部10を操作して当該間仕切パネル3の圧接体6A、6Bを没入させる。それにより、当該間仕切パネル3が単一の懸吊桿67を軸にして水平に旋回可能となり、例えば天井レール2に直交する交差姿勢にすることができる。しかる後に、次の間仕切パネル3の右の起立フレーム33に設けられた操作部10を操作して当該間仕切パネル3の圧接体6A、6Bを没入させると、この間仕切パネル3も交差姿勢にすることができる。この操作を繰り返すことにより、全ての間仕切パネル3が天井レール2に直交する交差姿勢となる開放状態を実現することができる。開放状態で各間仕切パネル3を固定したい場合には、各間仕切パネル3を操作して圧接体6A、6Bを突出させればよい。一方、開放状態からさらに間仕切パネル3を厚み方向に移動させて建築壁の近傍に片付けたい場合には、圧接体6A、6Bを没入させたままで各間仕切パネル3を移動させればよい。図5は、各間仕切パネル3を片付けた退避状態を示している。
次いで、各間仕切パネル3における圧接体6A、6Bの突没動作について説明する。
図7、図11、図13の(a)、図14及び図15は、圧接体6A、6Bがボトムフレーム35及びトップフレーム37にそれぞれ没入した状態を示している。この没入状態では、操作部10の操作レバー91が図13の(a)に示す没入位置に保持されており、各圧接体6A、6Bは天井レール2の下面2a及び床面Fから離間している。この没入状態から操作レバー91を図13の(b)に示すように突出位置まで回動させると、上下の伝達ロッド12が相反する方向に移動し、その伝達ロッド12の動きが圧接機構部11に伝えられ、圧接機構部11の働きにより対応する圧接体6A、6Bが突出動作する。ここで、下の圧接機構部11の作動を説明すれば、次の通りである。操作レバー91を没入位置から突出位置に回動操作すると、伝達ロッド12が下方に移動し、この伝達ロッド12の動きが第2リンク機構16により連結バー14の左方への移動に変換される。連結バー14が左方に移動すると、この連結バー14の動きが第1リンク機構15により圧接体6Aの下方への突出動作に変換されることになり、その圧接体6Aの下端に設けられた密接材73が床面Fに押しつけられる。この際、連結バー14は所定の初期位置(S)から所定の終点位置(T)まで移動するが、圧接体6Aは連結バー14が終点位置(T)に達する前に床面Fに当接して係止される。そのため、圧接体6Aが床面Fに圧接された後の連結バー14の移動分は動作吸収機構95の圧縮ばね103が圧縮されることにより吸収される。換言すれば、圧接体6Aはこの圧縮ばね103の反発力により床面Fに弾性的に圧接される。図10、図16及び図17は、圧接体6Aが床面Fに圧接された状態である。
なお、以上説明した圧接機構部11には、アシスト機構17が組み込まれており、操作部10の操作レバー91の操作力を軽減しうるようになっている。具体的に説明すれば、操作レバー91が没入位置にある場合には、連結バー14が初期位置(S)に停止しており、アシスト機構17の回転体139は図18の(a)に示す状態に保持されている。すなわち、引張ばね141の牽引軸線L0が支点143よりも上方に位置しており、回転体139は引張ばね141の牽引力により一方の停止位置(P)に係止されており、引張ばね141の牽引力は連結バー14に影響を及ぼさない状態にある。この状態から操作レバー91を突出位置に向けて回動させると、まず、連結バー14が左方に移動してジョイントピン159が回転体139を時計回り方向に押圧することになる。回転体139は一方の停止位置(P)から時計回り方向に回転を始め、引張ばね141の牽引軸線0が図18の(b)に示す思案点(Q)を通過すると、引張ばね141の牽引力が回転体139を積極的に時計回り方向に回動させる力として作用することになる。そのため、引張ばね141の牽引力により積極回動する回転体139によりジョイントピン159が図18中左方向に付勢され、連結バー14が左方に牽引される。その結果、操作レバー91に加える操作力が軽減されることになる。図18の(c)は、連結バー14が終点位置(T)まで左へ移動した状態を示しており、この状態では図示しないストッパにより回転体139の回転が係止されて引張ばね141の牽引力が連結バー14に作用しないようになっている。
上の圧接機構部11の作動は、以上説明した下の圧接機構部11の作動に準じたものである。
なお、このスライディングウォールSWには、交差姿勢で上の圧接体6Bが天井面Ceaを傷つけるのを防止するための対策が講じられている。すなわち、図3、図4及び図19に示すような交差姿勢において、圧接体6A、6Bを突出させた場合、下の圧接体6Aは床面Fに密接するが、上の圧接体6Bが天井面Ceaに当接する前に突起161によりその上動が阻止される。具体的に説明すれば、交差姿勢において上の圧接体6Bが上動すると、懸吊桿67の両側に配された突起161が優先的に天井レール2の下面2aに当接し、圧接体6Bのそれ以上の上動が禁止される。そのため、上の圧接体6Bの上端と天井面Ceaとの間には隙間が形成された状態で当該間仕切パネル3が固定されることになる。
また、この実施形態では、圧接体6A、6Bを没入させた状態で間仕切パネル3が傾いた際に天井面Ceaが傷つくことを防止するための対策も講じられている。すなわち、間仕切パネル3が図23の想像線で示すまっすぐに懸吊された垂下状態から実線で示す傾斜状態にまで傾動すると、図中左側の接地体19が床面Fに当接し間仕切パネル3のそれ以上の傾動を抑止することになる。そのため、接地体19の下端位置を適切に設定しておきさえすれば、間仕切パネル3が傾動しても間仕切パネル3と天井面Ceaとの間に隙間SPが残ることになり、当該間仕切パネル3の上端部が天井面Ceaに衝突して天井面Ceaが傷つけられるのを防止することができる。図23において、間仕切パネル3が図示と逆方向に傾動した場合には、図中右側の接地体19が床面Fに当接して同じく間仕切パネル3の上端が天井面Ceaに衝突して天井面Ceaが傷つけられるのを防止することができる。
以上説明したスライディングウォールの構成によれば、圧接体駆動手段7の全構成部品が前記枠体9に沿って配されているので、間仕切パネル3の内部空間を有効利用することができる。すなわち、この実施形態では、面板8を透明なガラス板25を主体に構成し、間仕切パネル3を透光性のあるものにしているが、圧接体駆動手段7の構成部品を前述のように配すれば、ガラス板25の領域を無理なく広げることができる。
また、構成部品の多い圧接機構部11をボトムフレーム35及びトップフレーム37内に収め、一方の起立フレーム(右の起立フレーム33)に設けた操作部10を当該起立フレーム33に添接させた伝達ロッド12により各圧接機構部11に伝達するようにしているので、枠体9内の空間を無理なく開放することができる。
圧接機構部11がアシスト機構17を備えているので、大きな操作力を要することなしに圧接体6A、6Bを確実に床面F及び天井レール2の下面2aに圧接させることが可能となり、作業性を向上させることができる。
そして、アシスト機構17は、回転体139と引張ばね141との相対位置を工夫することにより、操作途中においてのみ引張ばね141の牽引力を連結バー14に作用させるようにしているので、簡単な構成により明確な操作力軽減効果を得ることができる。
また、本実施形態では、交差姿勢で上動禁止要素18が天井レール2の下面2aに優先的に当接し、上の圧接体6Bのそれ以上の上動を禁止しているので、以下のような効果を得ることもできる。すなわち、このスライディングウォールSWでは、各間仕切パネル3が天井レール2に平行でない交差姿勢等においても、圧接体6Bを突出させることにより間仕切パネル3をその姿勢に固定することができるが、このスライディングウォールSWでは、突起161の存在により、間仕切パネル3の固定の際に上の圧接体6Bの上動が途中で禁止されるため、当該圧接体6Bが天井面Ceaに衝突することがなく、天井面Ceaが傷つけられるのを効果的に防止することができる。
その一方で、パネル本体5が前記天井レール2に対して平行である平行姿勢においては、突起161が天井レール2の溝21aに進入しうるように構成されているので、突起161を設けても平行姿勢における通常の密閉機能は失われることがない。
さらに、突起161を圧接体6Bにおける懸吊桿67を挟んだ2カ所に設けるだけで天井面Ceaの傷つき防止効果を実現できるようにしているので、構造の複雑化や部品点数の増加を招くことがなく実施が容易なものとなる。
加えて、突起161がエラストマー樹脂製のものであるので、この突起161を無理なく円滑に天井レール2に押しつけることができ、交差姿勢においても間仕切パネル3を遊動しないように固定しておくことができる。すなわち、このような突起161であれば、自らが弾性を有するので、天井レール2に衝突した際の衝撃を吸収することができ、衝突音の発生や天井レール2に傷がつくといった不具合の発生も抑制することができる。しかも、突起161と天井レール2との摩擦を高めることができるため、間仕切パネル3の固定をより確実なものにすることができる。
そして、突起161が、上方に向かって漸次平断面が縮小する截頭角錐状のものであるので、平行姿勢で圧接体6Bを突出させた際に突起161が溝21aに円滑に侵入しうるものとなる。
加えて、本実施形態では、間仕切パネル3が傾斜状態にまで傾動すると接地体19が床面Fに当接し当該間仕切パネル3のそれ以上の傾動を抑止するので、以下のような効果を得ることもできる。すなわち、間仕切パネル3が傾斜状態にまで傾動し接地体19が床面Fに当接したときには間仕切パネル3と天井面Ceaとの間に隙間SPが残り、当該間仕切パネル3の上端部が天井面Ceaに衝突して天井面Ceaが傷つけられることを効果的に防止できる。このような効果は、間仕切パネル3が交差姿勢であっても平行姿勢であっても得られるものであり、天井面Ceaや天井レール2を傷つけることなく安心して間仕切パネル3を移動させることができる。
接地体19が、その下端に全方向に転動可能な球体201を備えたものであれば、どのような姿勢で床面Fに接しても、大きな摩擦が生じることがなく、間仕切パネル3の移動作業に支障を与えることがない。
接地体19が、接地体支持機構205を介して上下位置を調節可能にボトムフレーム35に設けられたものであれば、接地体19が床面Fに接した際に間仕切パネル3と天井面Cea又は天井レール2の下面2aとの間に形成される隙間の大きさを最適なものに調節することが可能となる。
特に本実施形態の接地体支持機構205の構成を採用すれば、片方の面板8を取り外すだけで接地体19の上下位置を調整することができ、調整後はその位置を確実に維持することができる。
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
例えば、面板は、上述した実施形態のような透明なガラス板を主体に構成されたものに限らない。面板が不透明な板材を主体に構成されたものである場合に本発明を適用した場合、面板間の空間を広くとることができるので、当該空間に機能性材料を充填し、遮音性や吸音性といった性能を付加することが容易に可能になる。
前記実施形態では、起立フレームの内側面に沿って伝達ロッドを配し、その伝達ロッドを面板側に設けた縁部材により隠すようにしているが、伝達ロッドを起立フレーム内に収容するようにしてもよい。
圧接機構部の構成も、上述した実施形態に係るものに限られないのはもちろんであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
加えて、ドアパネルの有無や、間仕切パネルの枚数も、上述した実施形態に係るものに限られないのはもちろんであり、任意に設定してよい。
接地体の構成も、上述した実施形態に係るものに限られないのはもちろんである。
例えば、接地体の下端は、転動可能な球体に限らず、例えば、先端部を半球状とした棒状の部材を利用して形成してもよい。その材質も、樹脂以外のもの、例えば金属製のものであってもよい。
接地体を設ける箇所も、両端やその近傍に限らず、ボトムフレームの長手方向中央を挟んだ2カ所であれば、中央寄りの箇所に設けるようにしてもかまわない。
そして、接地体のボトムフレームへの設置態様、及び接地体支持機構の構成も、上述した実施形態に係るものに限らず、任意のものを採用してよい。
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。