JP7208353B2 - 旋動式破砕機 - Google Patents

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Description

本発明は、岩石等を破砕する旋動式破砕機に関する。
従来、大きな原石(岩石)を破砕するための破砕機として、ジャイレトリクラッシャまたはコーンクラッシャ等の旋動式破砕機が使用されている。なかでも、マントルが設けられた主軸を上部軸受と下部軸受とで回転自在に支持し、主軸を油圧により上下動させる油圧式の旋動式破砕機が知られている(例えば特許文献1)。このような従来の旋動式破砕機のうち、油圧式コーンクラッシャを例として、その概要および破砕原理について、図22を参照して説明する。
図22に示した従来の旋動式破砕機は、截頭錐体形状を有する管状の上部フレーム1とそれに連結された下部フレーム2とで形成された内部空間の中央部に、主軸5が設けられている。主軸5の中心軸線L1は、上部フレーム1の中心軸線L2に対して傾斜して配置されている。なお、上部フレーム1と下部フレーム2とを合わせてフレーム31という。
主軸5は、下部が円筒形状を有し、下部軸受15に回転自在に支持されている。下部軸受15は、主軸5の下端部が回転自在に嵌挿される主軸嵌挿穴3を有する偏心スリーブ4を備えている。偏心スリーブ4は、偏心スリーブ4の下方において偏心スリーブ4を相対回転自在に支持する偏心スリーブ支持体32を備えている。偏心スリーブ支持体32は、下部フレーム2に固定されている。また、偏心スリーブ4は、その外周面が下部フレーム2に配設された外筒7に形成された偏心スリーブ嵌挿穴27に回転自在に嵌挿されている。また、主軸5の上端部は上部軸受17により回転自在に支持されている。上部軸受17は上部フレーム1に連結されたスパイダ18により支持されている。なお、スパイダ18は、上部フレーム1の中心部を通過して上部フレーム1の上端部を連絡する梁体を形成している。
ここで、図22に示される旋動式破砕機において、下部軸受15の下方には、主軸5を油圧により上下動させる油圧シリンダ30が設けられている。下部軸受15の上方に設けられた円筒形状の仕切板24の内周側には、油圧室28が形成されている。主軸5の下端部と主軸嵌挿穴3の内周面との間、および偏心スリーブ4の外周面と偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面との間には、円滑な摺動の確保、摺動面の摩耗防止等のための油膜を形成すべく、油圧室28から潤滑油が供給される。これにより、下部軸受15の偏心スリーブ4および外筒7は、ラジアルすべり軸受として機能する。なお、油圧室28へのダストの侵入防止のために、ダストシール25が、マントルコア12の底面にダストシールカバー26を使用して取り付けられている。
以下、主軸嵌挿穴3内に嵌挿された主軸5の外周面と偏心スリーブ4(主軸嵌挿穴3)の内周面とで構成される軸受部分を主軸軸受10といい、偏心スリーブ4の外周面と外筒7(偏心スリーブ嵌挿穴27)の内周面とで構成される軸受部分を偏心スリーブ軸受11ということがある。また、主軸軸受10および偏心スリーブ軸受11を特に区別せずに下部軸受15ということがある。
主軸5の上部の外面(上部軸受17の下方)には、截頭円錐状の外周面を形成するマントルコア12が焼き嵌めにより強固に取り付けられている。マントルコア12の外周面には、耐摩耗性材料(例えば、高マンガン鋳鋼)で製造され、截頭円錐状の外周面を形成するマントル13が取り付けられている。
また、上部フレーム1の内面には、耐摩耗性材料(例えば、高マンガン鋳鋼)で製造されたコーンケーブ14が備えられている。コーンケーブ14とマントル13とにより形成され、鉛直断面において下部が狭くなるほぼ楔状をなす空間により破砕室16が形成される。
主軸5の中心軸線L1と上部フレーム1の中心軸線L2とは、破砕機の上部空間における交点Oにおいて交差している。主軸5は、主軸5の中心軸線L1と上部フレーム1の中心軸線L2とを含む平面において、上部フレーム1に対して傾斜している。また、偏心スリーブ4は、上部フレーム1(上部軸受17)の中心軸線L2とほぼ同一の中心軸線L4を有し、当該中心軸線L4の回りに回転できるように配置されている。
この構成により、フレーム31の外部に設けられた電動機(図示省略)によりプーリ22、横軸、ベベルギア19(駆動側ベベルギア20および従動側ベベルギア21)等の動力伝達機構を介して、従動側のベベルギア21と連結された偏心スリーブ4が、上部フレーム1の中心軸線L2を回転中心として回転する。これにより、主軸5が、交点Oを空間上の固定点として破砕室16内において偏心旋回運動、いわゆる歳差運動を行う。なお、前記挙動は、理想的な幾何学上のものである。現実の装置においては、運転時等において、上部軸受17における軸受隙間やケーシングの変形等により交点Oは微小変動する。それに伴い、主軸5も幾何学的な運動挙動が微小変動することがある。
このような偏心旋回運動により、破砕室16におけるコーンケーブ14の内面上の任意の位置と当該位置に対向するマントル13の外周面との距離が、主軸5の回転と同一周期で変化する。すなわち、偏心スリーブ4を回転させて主軸5を破砕室16内で旋回させると、例えば破砕室16の鉛直最下端におけるマントル13外表面とコーンケーブ14内表面との最短距離の位置は、図2に示されるように、主軸5の旋回に伴い変化する。
破砕対象となる岩石(以下、「被破砕物」という。)9は、破砕機の上方から投入され、破砕室16内に落下する。破砕室16は、コーンケーブ14とマントル13との間隔が下方に向かうほど狭くなり、かつ当該間隔の広狭が主軸5の旋回に伴い周期的に変化する。これにより、被破砕物9は、落下と圧縮とを繰り返しながら、破砕が進行する。コーンケーブ14の下部において、コーンケーブ14とマントル13との間隔が最も狭い部分より小さく破砕された被破砕物9が、破砕品として下方より排出され、回収される。
旋動式破砕機における破砕原理によれば、マントル13における被破砕物9の破砕(破砕荷重W)に伴い、主軸5には破砕位置からフレーム31の内側へ向かう反力P1(後述する図2における反力P)が作用し、フレーム31には破砕位置からフレーム31の外側へ向かう反力P2が作用する。主軸5に作用する反力P1により、主軸5の下端部は偏心スリーブ4の主軸嵌挿穴3の内周面に向かって移動する(並進運動)。また、前記2つの反力による主軸5およびフレーム31などの変位、変形等により、主軸5の中心軸線L1と主軸嵌挿穴3の中心軸線L3との平行が損なわれ、主軸5の中心軸線L1が主軸嵌挿穴3の中心軸線L3に対して傾く(回転運動)。これにより、主軸軸受10において、上端側または下端側で最小油膜が薄くなる状態、いわゆる片当たり状態となることがある。このような片当たりが進行すると、主軸5の下端部の外周面と偏心スリーブ4の主軸嵌挿穴3の内周面とが、流体膜を介する流体潤滑状態から微視的な接触を伴う混合潤滑状態、あるいは固体表面同士が接触しながら摺動する状態に移行する。この結果、主軸5と偏心スリーブ4とがいわゆる焼き付きに至ることがある。
同様に、偏心スリーブ軸受11においても、主軸5を介して偏心スリーブ4に作用する反力P1により、偏心スリーブ4は、外筒7における反力P1の作用する側と反対側の内周面に向かって移動する。さらに、主軸5等に作用する反力P1およびフレーム31等に作用する反力P2による偏心スリーブ4、フレーム31等の変位、変形等により、偏心スリーブ4の中心軸線L4と偏心スリーブ嵌挿穴27の中心軸線L5との平行が損なわれ、偏心スリーブ4の中心軸線L4が偏心スリーブ嵌挿穴27の中心軸線L5に対して傾く。これにより、偏心スリーブ軸受11において、上端側または下端側で最小油膜が薄くなる状態、いわゆる片当たり状態となることがある。このような片当たりが進行すると、偏心スリーブ4の外周面と外筒7の偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面とが、流体膜を介する流体潤滑状態から微視的な接触を伴う混合潤滑状態、あるいは固体表面同士が接触しながら摺動する状態に移行する。この結果、偏心スリーブ4と外筒7とがいわゆる焼き付きに至ることがある。
以下、下部軸受15(主軸軸受10または偏心スリーブ軸受11)の上端側の片当たりを「上当たり」、下端側の片当たりを「下当たり」という。なお、下部軸受15は、破砕運転時における反力の大きさ、下部軸受15の油膜厚(軸受隙間の大きさ)、主軸5の変形、偏心スリーブ4の変形等の破砕機の状態の変動により、上当たりおよび下当たりの両方が生じることがある。
このように、旋動式破砕機は、前記の破砕原理から、本質的に軸受の片当たりが発生し易いという特徴を有している。
また、このように下部軸受15が片当たり状態になると、下部軸受15は端部に局所的に大きな面圧が発生し、通常の使用では問題とならないような負荷条件で摩耗や焼き付き等が発生することにより早期の交換等が必要となることがある。
また、旋動式破砕機の主たる破砕対象物である岩石は、強度または脆性等が多種多様である。破砕が困難な種類の被破砕物9を破砕する場合には、マントル13の受ける反力が非常に大きく、下部軸受15が短時間に損耗または破損する。このため、被破砕物9の種類に応じて、下部軸受15等の調整または試験による確認を行ったり、適切な旋動式破砕機を選定ないし使い分ける等の必要がある。このように旋動式破砕機の取扱いは、非常に煩雑あり、費用や労力が大きな負担であった。
また、旋動式破砕機においては、運転の経過により、マントル13またはコーンケーブ14の表面が徐々に摩耗して厚さが薄くなり、マントル13の外周面とコーンケーブ14の内面との間の距離が変化する(広く)なる。このため、その距離の変化に応じて上部フレーム1の位置または主軸5の位置を変更(調整)する必要がある。この結果、同一の種類の被破砕物9であっても、破砕荷重またはその反力が変化し、下部軸受15に対する荷重条件等が変化する。
特開平10-272374号公報
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、油圧により主軸を上下動させる油圧式の旋動式破砕機において、簡単な構成で、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有する旋動式破砕機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一の態様による旋動式破砕機は、コーンケーブの内部に回転可能に配置され、その中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜して偏心旋回運動をする主軸と、前記主軸の上端部を回転自在に支持する上部軸受と、前記主軸に設けられたマントルと、前記主軸の下端部を回転自在に支持する下部軸受と、前記下部軸受の下方に設けられ、前記主軸を油圧により上下動させる油圧シリンダと、を備え、前記下部軸受は、前記主軸の下端部が回転自在に嵌挿される主軸嵌挿穴を有する偏心スリーブと、前記偏心スリーブが回転自在に嵌挿される偏心スリーブ嵌挿穴を有する外筒と、を備え、前記主軸嵌挿穴の内周面、前記偏心スリーブの外周面、および前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面の少なくとも何れか1つが、軸線方向の少なくとも一部の領域において、上方に向かうほど対向する面との距離が広がるようなテーパ形状を有している。
上記構成によれば、上記のようなテーパ形状を有するため、破砕荷重が大きくなって従来の構成においては上当たり状態となるような状況であっても、主軸と下部軸受の内周面の上端部との近接が抑制される。したがって、下部軸受が上当たり状態となることを回避することができ、最小油膜厚さが減少することを抑制することができる。したがって、簡単な構成で、下部軸受において焼付き等の発生を防止し、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有する旋動式破砕機を実現することができる。
前記テーパ形状は、前記主軸嵌装穴の内周面が、上方に向かうほど拡径するような第1テーパ形状を含んでもよい。
前記テーパ形状は、前記偏心スリーブの外周面が、下方に向かうほど拡径するような第2テーパ形状を含んでもよい。
前記テーパ形状は、前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面が、上方に向かうほど拡径するような第3テーパ形状を含んでもよい。
前記第1テーパ形状は、前記主軸嵌挿穴の内周面の軸線方向における上端位置を含み、前記主軸嵌挿穴の内周面の軸線方向長さの1/3以上の長さを有する領域に形成されてもよい。
前記第3テーパ形状は、前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面の軸線方向における上端位置を含み、前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面の軸線方向長さの1/3以上の長さを有する領域に形成されてもよい。
前記主軸の下端部の外周面と前記主軸嵌挿穴の内周面との間の隙間、および、前記偏心スリーブの外周面と前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面との間の隙間に、潤滑油が供給されており、前記テーパ形状は、破砕荷重の変化に対する前記潤滑油の最小油膜厚さの変化においてロバスト領域を有する程度のテーパ角またはテーパ率に設定されてもよい。
上記構成によれば、テーパ形状のテーパ角またはテーパ率を調整することによりロバスト領域の設定を比較的容易に実現することができる。
前記テーパ形状は、前記主軸の中心軸線を通る断面視において、前記下部軸受において前記テーパ形状が形成される領域の中心軸線方向長さに対する、前記領域の直径Dtの変化の割合を示す角度が0.001°以上1°以下であるように形成されてもよい。
前記下部軸受は、前記偏心スリーブの下方において前記偏心スリーブを相対回転自在に支持する偏心スリーブ支持体を備え、前記偏心スリーブは、当該偏心スリーブの下面において、前記偏心スリーブ支持体の上面との接触を許容する第1スラスト軸受面を備え、前記偏心スリーブ支持体は、当該偏心スリーブ支持体の上面において、前記第1スラスト軸受面との接触を許容する第2スラスト軸受面を備え、前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面の少なくとも何れか一方が、前記偏心スリーブの径方向外方に向かうほど、対向する前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面間の距離が広がるような第4テーパ形状を有していてもよい。
上記構成によれば、偏心スリーブと偏心スリーブ支持体との間に偏心スリーブの傾斜を許容する第4テーパ形状が形成される。このため、偏心スリーブの傾斜による偏心スリーブまたは偏心スリーブ支持体の変形を抑制することができる。
本発明の他の態様における旋動式破砕機は、コーンケーブの内部に回転可能に配置され、その中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜して偏心旋回運動をする主軸と、前記主軸の上端部を回転自在に支持する上部軸受と、前記主軸に設けられたマントルと、前記主軸の下端部を回転自在に支持する下部軸受と、前記下部軸受の下方に設けられ、前記主軸を油圧により上下動させる油圧シリンダと、を備え、前記下部軸受は、前記主軸の下端部が回転自在に嵌挿される主軸嵌挿穴を有する偏心スリーブと、前記偏心スリーブが回転自在に嵌挿される偏心スリーブ嵌挿穴を有する外筒と、前記偏心スリーブの下方において前記偏心スリーブを相対回転自在に支持する偏心スリーブ支持体と、を備え、前記偏心スリーブは、当該偏心スリーブの下面において、前記偏心スリーブ支持体の上面との接触を許容する第1スラスト軸受面を備え、前記偏心スリーブ支持体は、当該偏心スリーブ支持体の上面において、前記第1スラスト軸受面との接触を許容する第2スラスト軸受面を備え、前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面の少なくとも何れか一方が、前記偏心スリーブの径方向外方に向かうほど、対向する前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面間の距離が広がるようなテーパ形状を有している。
上記構成によれば、上記のようなテーパ形状を有するため、破砕荷重が大きくなって従来の構成においては上当たり状態となるような状況であっても、主軸と偏心スリーブの主軸嵌挿穴の内周面の上端部との近接が抑制される。したがって、下部軸受が上当たり状態となることを回避することができ、最小油膜厚さが減少することを抑制することができる。したがって、簡単な構成で、下部軸受において焼付き等の発生を防止し、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有する旋動式破砕機を実現することができる。
本発明によれば、油圧により主軸を上下動させる油圧式の旋動式破砕機において、簡単な構成で、負荷条件の変化に対するロバスト性を有する旋動式破砕機を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態1に係る旋動式破砕機の全体構成を示す断面図である。 図2は、旋動式破砕機による破砕原理を説明するための平面図である。 図3Aは、旋動式破砕機の下部軸受が下当たり状態である場合を示す図である。 図3Bは、旋動式破砕機の下部軸受が均等当たり状態である場合を示す図である。 図3Cは、旋動式破砕機の下部軸受が上当たり状態である場合を示す図である。 図4Aは、図3Cにおける軸が主軸である場合の下部軸受の拡大縦断面図である。 図4Bは、図3Cにおける軸が偏心スリーブである場合の下部軸受の拡大断面図である。 図5は、仕様Aの下部軸受について、破砕荷重の変化に対する軸受の最小油膜厚の変化を示すグラフである。 図6は、仕様Aの下部軸受について、破砕荷重の変化に対するに対する軸の傾斜角度の変化を示すグラフである。 図7は、仕様Bの下部軸受について、破砕荷重の変化に対する軸受の最小油膜厚の変化を示すグラフである。 図8は、仕様Bの下部軸受について、破砕荷重の変化に対するに対する軸の傾斜角度の変化を示すグラフである。 図9は、上当たり状態における下部軸受の油膜圧力分布を示す図である。 図10は、図9と同一の破砕荷重および仕様の下部軸受について均等当たり状態における下部軸受の油膜圧力分布を示す図である。 図11は、ロバスト特性を有しない下部軸受とロバスト特性を有する下部軸受との比較を示す図である。 図12は、仕様Aの下部軸受について、ロバスト特性を表す模式的な特性曲線を示すグラフである。 図13は、図12に示すロバスト特性曲線を2次関数で近似したグラフである。 図14は、図12に示すロバスト特性曲線を3次関数で近似したグラフである。 図15は、仕様Bの下部軸受について、ロバスト特性を表す模式的な特性曲線を示すグラフである。 図16は、図15に示すロバスト特性曲線を2次関数で近似したグラフである。 図17は、図15に示すロバスト特性曲線を3次関数で近似したグラフである。 図18は、図1に示す旋動式破砕機の下部軸受近傍の拡大断面図である。 図19Aは、本実施形態の変形例1に係る旋動式破砕機の下部軸受近傍の拡大断面図である。 図19Bは、本実施形態の変形例2に係る旋動式破砕機の下部軸受近傍の拡大断面図である。 図19Cは、本実施形態の変形例3に係る旋動式破砕機の下部軸受近傍の拡大断面図である。 図19Dは、本実施形態の変形例4に係る旋動式破砕機の下部軸受近傍の拡大断面図である。 図20Aは、本発明の実施形態2に係る旋動式破砕機における偏心スリーブの下端部近傍の拡大断面図である。 図20Bは、実施形態2の変形例1に係る旋動式破砕機における偏心スリーブの下端部近傍の拡大断面図である。 図20Cは、実施形態2の変形例2に係る旋動式破砕機における偏心スリーブの下端部近傍の拡大断面図である。 図21は、本発明の実施形態3に係る旋動式破砕機の下部軸受近傍の拡大断面図である。 図22は、従来の旋動式破砕機の一例の全体構成を示す縦断面図である。
以下、本発明の一態様に係る旋動式破砕機の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態による旋動式破砕機は、基本的な構成については、図22に示す構成と同様である。以下、図22に示す構成と同様な構成については、図22と同じ符号を付し、説明を省略する。以下では、図22に示す構成と異なる構成を中心に説明する。また、以下における実施形態においては、図22と同様に油圧式コーンクラッシャを一例として説明する。ただし、本実施形態による旋動式破砕機は、油圧式コーンクラッシャに限定されるものではなく、ジャイレトリクラッシャやその他の形式の旋動式破砕機にも適用可能であることはいうまでもない。
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る旋動式破砕機の全体構成を示す縦断面図である。本実施形態による油圧式コーンクラッシャは、截頭錐体形状を有する管状の上部フレーム1とそれに連結された下部フレーム2とで形成された内部空間の中央部(コーンケーブ14の内部)に配置された主軸5を備えている。主軸5の中心軸線L1は、破砕機(上部フレーム1)の中心軸線L2に対して傾斜して配置されている。
主軸5は、上端部が上部軸受17に回転自在に支持されている。また、主軸5は、下端部が下部軸受15に回転自在に支持されている。下部軸受15は、主軸5の下端部が回転自在に嵌挿される主軸嵌挿穴3を有する偏心スリーブ4を備えている。偏心スリーブ4は、偏心スリーブ4の下方において偏心スリーブ4を相対回転自在に支持する偏心スリーブ支持体32を備えている。偏心スリーブ支持体32は、下部フレーム2に固定されている。主軸嵌挿穴3内に嵌挿された主軸5の外周面と偏心スリーブ4(主軸嵌挿穴3)の内周面とが、所定の隙間を保持したラジアルすべり軸受(主軸軸受10)を構成する。所定の隙間には、潤滑油が供給され、油膜が形成されている。
また、偏心スリーブ4は、その外周面が下部フレーム2に配設された外筒7に形成された偏心スリーブ嵌挿穴27に回転自在に嵌挿されている。偏心スリーブ4の外周面と外筒7(偏心スリーブ嵌挿穴27)の内周面とは、所定の隙間を保持したラジアルすべり軸受(偏心スリーブ軸受11)を構成する。所定の隙間には、潤滑油が供給され、油膜が形成されている。なお、以下では、説明の便宜上、主軸軸受10および偏心スリーブ軸受11を特に区別せずに下部軸受15ということがある。
このように、主軸5は、上部軸受17と下部軸受15とに回転自在に支持されることにより、中心軸線L1がコーンケーブ14の中心軸線L2に対して傾斜して偏心旋回運動可能に構成される。また、油圧シリンダ30が下部軸受15の下方に設けられている。これにより、主軸5は、油圧により上下動可能に構成されている。主軸5が偏心旋回運動および上下動を行うことにより、主軸5に設けられたマントル13と、コーンケーブ14とで区画される破砕室16内で被破砕物9が破砕される。
以下、本発明の実施形態における下部軸受15の構成について、詳細に説明する。本実施の形態において、図1および図18に示すように、主軸嵌装穴3(偏心スリーブ4)の内周面4aは、上方に向かうほど拡径するような第1テーパ形状を含んでいる。
被破砕物の種類・性状(材質、大きさ、水分含有量など)、運転条件(回転数、被破砕物の投入量など)を変更することによる破砕荷重ひいては反力の変化によって、主軸5またはフレーム31等が変位または変形する。これにより、下部軸受15の状態が変化する。
特に、主軸5の上端部が上部軸受17に支持される油圧式の旋動式破砕機において、被破砕物の種類・性状等の変更によって破砕荷重が変化することにより、下部軸受15は、大別すると、図3A~図3Cに示す3つの状態を取りうる。
図3A~図3Cは、下部軸受15の動作または挙動を抽出して説明するための図であり、破砕荷重Wの大きさに応じて変化する軸受荷重Fの大きさによる下部軸受15の状態と、最小油膜厚さTとの関係を3つの状態に分類し模式的に示す図である。図3Aは、旋動式破砕機の下部軸受15が下当たり状態である場合を示す図である。また、図3Bは、旋動式破砕機の下部軸受15が均等当たり状態である場合を示す図である。また、図3Cは、旋動式破砕機の下部軸受15が上当たり状態である場合を示す図である。また、図4Aは、図3Cにおける軸41が主軸5である場合の下部軸受15の拡大縦断面図である。4Bは、図3Cにおける軸41が偏心スリーブ4である場合の下部軸受15の拡大断面図である。
なお、図3A~図3Cおよび図4A~図4Bは、説明の便宜のため、テーパ形状を有していない下部軸受15が示されている。また、下当たり、均等当たりおよび上当たりの各状態における最小油膜厚さをそれぞれ、T1、T2およびT3とする。
図3A~図3Cにおいて、軸41の中心軸線をLaとし、下部軸受15の中心軸線をLbとする。図4A~図4Bにおいて、主軸5の中心軸線をL1とし、上部軸受17の中心軸線をL2とし、主軸嵌挿穴3の中心軸線をL3とし、偏心スリーブ4の中心軸線をL4とし、偏心スリーブ嵌挿穴27の中心軸線をL5とする。
ここで、主軸軸受10および偏心スリーブ軸受11について、個別に説明すれば、以下の通りである。
図3A~図3Cにおいて、下部軸受15が主軸軸受10であると考えた場合は、軸41が主軸5に相当し、軸41の中心軸線Laが主軸5の中心軸線L1に相当する。また、軸受15の中心軸線Lbが主軸嵌挿穴3の中心軸線L3に相当する(図4A参照)。この場合、図3Bの状態は、Laに対応する主軸5の中心軸線L1がLbに対応する主軸嵌挿穴3の中心軸線L3にほぼ平行であって、主軸嵌挿穴3の(紙面に向かって)右方の内面側に接近している状態を示す。図3Bの状態は、軸長方向全体にわたりほぼ均等な厚さの油膜が形成されている状態(均等当たり状態)である。軸受荷重Fは、破砕荷重の増減に応じて増減する。図3Bの状態は、軸41が上部軸受17と下部軸受15との間の部分で破砕荷重Fを受けることによりある程度弾性変形した状態(軸41の中心軸線Laが軸41の中央部である程度屈曲している状態)と言える。この図3Bの状態を基準として、軸受荷重Fが均等当たり状態となる軸受荷重Fより小さいときは、主軸5等の変位、変形が小さい。すなわち、軸41の中心軸線Laの屈曲が図3Bの状態に比べて小さくなる。このため、図3Bの状態に比べて主軸5の下端部の中心軸線L1(La)が主軸嵌挿穴3の中心軸線L3(Lb)に対して紙面に向かって反時計回りに傾斜する。この結果、図3Aに示すように、軸41が下部軸受15の下端部に近接する下当たり状態となる。逆に、図3Bの状態を基準として、軸受荷重Fが均等当たり状態となる軸受荷重Fより大きいときは、主軸5等の変位、変形が大きい。すなわち、軸41の中心軸線Laの屈曲が図3Bの状態に比べて大きくなる。このため、図3Bの状態に比べて主軸5の中心軸線L1(La)が主軸嵌挿穴3の中心軸線L3(Lb)に対して紙面に向かって時計回りに傾斜する。この結果、図3Cに示すように、軸41が下部軸受15の上端部に近接する上当たり状態となる。
ここで、主軸5は、軸受荷重Fによりフレーム31の内周方向(図3A~図3Cにおいて紙面の右方向)に向かって押し付けられる。このため、最小油膜厚さが発生する領域は、一般に、主軸軸受10におけるフレーム31の内周側となる。
図3A~図3Cに示されるように、下当たり状態、均等当たり状態および上当たり状態のときに主軸軸受10における最小油膜厚さが発生する位置は、それぞれ、軸受荷重Fが作用する側の反対側における下端部、軸線方向全域(ほぼ均等)および上端部である。また、最小油膜厚さTの大きさは、下当たり状態、均等当たり状態、上当たり状態の順に小さくなる。
また、図3A~図3Cにおいて、下部軸受15が偏心スリーブ軸受11であると考えた場合は、軸41は偏心スリーブ4に相当する。図3Bは、偏心スリーブ4の中心軸線L4が偏心スリーブ嵌挿穴27の中心軸線L5にほぼ平行であって(図4A参照)、偏心スリーブ嵌挿穴27の(紙面に向かって)右方の内面側に接近している状態を示す。図3Bは、軸長方向全体にわたりほぼ均等な厚さの油膜が形成されている状態(均等当たり状態)である。主軸軸受10の場合と同様に、図3Bの状態を基準として、軸受荷重Fが小さいときは、偏心スリーブ4の中心軸線L4が偏心スリーブ嵌挿穴27の中心軸線L5に対して紙面に向かって反時計回りに傾斜する。この結果、図3Aに示すように、軸41が下部軸受15の下端部に近接する下当たり状態となる。逆に、図3Bの状態を基準として、軸受荷重Fが大きいときは、偏心スリーブ4の中心軸線L4が偏心スリーブ嵌挿穴27の中心軸線L5に対して紙面に向かって時計回りに傾斜する。この結果、図3Cに示すように、軸41が下部軸受15の上端部に近接する上当たり状態となる。
ここで、偏心スリーブ軸受11において、下当たり状態、均等当たり状態および上当たり状態のときに最小油膜厚さが発生する位置および最小油膜厚さTの大きさについては、軸41が主軸軸受10であると考えた場合と同様である。
なお、図3A~図3Cおよび図4においては、理解の容易のため、主軸5の外周面と偏心スリーブ4(主軸嵌挿穴3)の内周面との間隙、および偏心スリーブ4の外周面と外筒7(偏心スリーブ嵌挿穴27)の内周面との間隙を誇張して大きく描いている。
破砕荷重の大きさの相違による下部軸受15についての以上の3つの状態を整理すると、表1の通りである。
Figure 0007208353000001
本実施形態による旋動式破砕機の下部軸受15が、上述したような特性、すなわち、破砕荷重の増加に伴い上当たり状態に向かい、破砕荷重の減少に伴い下当たり状態に向かう特性があるのは、主には、下部軸受15に対する軸41の局部的な当接位置が下部軸受15の下端部から上端部へ移行していくためである。この当接位置の移行は、下部軸受15と上部軸受17との中間部に作用する軸受荷重Fにより、主軸5が、下部軸受15および上部軸受17を支持点として、変形(弾性変形)することによって生じる。
主軸5の弾性変形または変位は、上部軸受17と下部軸受15(主軸軸受10または偏心スリーブ軸受11)との軸受中心間距離、および主軸5の直径などから決まる主軸の曲げ剛性に強く依存する。ここで、破砕荷重が一定であると仮定した場合に、例えば、上部軸受17と下部軸受15との軸受中心間距離が大きくなると、主軸5の変形または変位は大きくなる。また、例えば、主軸嵌挿穴3に嵌挿された主軸5の下端部の直径またはマントル13の底面の直径が大きくなると、主軸5の変形または変位は小さくなる。
そのため、一般に、旋動式破砕機では、構造的に下部軸受15が上当たり状態になりやすい。そのため、下部軸受15で焼付きが生じる場合は上当たり状態であることが多い。特に、1次破砕機または2次破砕機として用いる旋動式破砕機では、構造的に主軸の直径に対する軸受中心間距離(上部軸受17の軸受中心と下部軸受15の軸受中心との間の距離)が長くなる。このため、上記のような旋動式破砕機では、下部軸受15は破砕荷重の増加に伴い強い上当たり状態になりやすい。
一方、破砕荷重(反力)が大きくなり、主軸5、フレーム31などの変位または変形が大きくなることにより、均等当たり状態から上当たり状態に移行すると、最小油膜厚さが減少する。これにより、上当たり状態においては、下部軸受15の油膜圧力は、図9に示されるように、上端部にピークを有する分布となる。
このように下部軸受15において下当たり状態から上当たり状態へ移行すると、下部軸受15において主軸5(の中間部)に作用する破砕荷重の反力を受ける支持点(反作用点)が下部軸受15の下端部から上端部へ変化する。このため、破砕荷重の反力が作用する主軸の作用点と、下部軸受15の支持点との距離が短くなる。したがって、上当たり状態においては、主軸5に作用する破砕荷重の反力が同一であっても、下当たり状態および均等当たり状態に比べて、下部軸受15に作用する軸受荷重が大きくなる傾向にある。このため、軸受としては過酷な条件となる。
以上のように、上部軸受17および下部軸受15で支持される主軸5を備えた油圧式の旋動式破砕機においては、上当たり状態を回避することが望まれる。そこで、本実施の形態においては、下部軸受15の内周面が、上方に向かうほど拡径するようなテーパ形状を有している。より具体的には、上述したように、図1および図1の下部軸受15の近傍の拡大図である図18に示すように、テーパ形状は、偏心スリーブ4に設けられる主軸嵌挿穴3の内周面4aが、上方に向かうほど拡径するような第1テーパ形状を含んでいる。
図3Cの例において、このようなテーパ形状を備えた下部軸受15の内周面は、破線42で示される。なお、図3Cの破線42、図1および図18の主軸嵌挿穴3の内周面4aは、見易さのためにテーパ角を誇張して大きく表している。図1および図18の構成のように、上記のようなテーパ形状を有することにより、破砕荷重が大きくなって従来の構成においては上当たり状態となるような状況であっても、軸41と下部軸受15の内周面42の上端部との近接が抑制される。図3Cの例では、テーパ形状を有していない場合、図3A~図3Cの各状態のうちで最小油膜厚さが最も小さかったが、テーパ形状を有することにより、図3Bの均等当たり状態とほとんど変わらない最小油膜厚さを保持することができる。
このように、上記のようなテーパ形状(第1テーパ形状)を有することにより、下部軸受15が上当たり状態となることを回避することができ、最小油膜厚さT3が減少することを抑制することができる。したがって、簡単な構成で、下部軸受15において焼付き等の発生を防止し、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有する旋動式破砕機を実現することができる。
図3A~図3Cに示されるような状態を取り得る旋動式破砕機における下部軸受15についての設計範囲は、以下の通りである。すなわち、一般的に、軸直径に対する軸受長さの比(L/D)がおよそ0.5~2の範囲におけるゾンマーフェルト数Sのオーダは、およそ0.0001~0.1であり、最小油膜厚さは、およそ数μm~数百μmである。ここで、ゾンマーフェルト数Sは、オイルなどにより潤滑されるすべり軸受と軸(流体潤滑)との潤滑状態を評価するための無次元量であって、流体潤滑軸受の油膜特性を代表する評価指標である。ゾンマーフェルト数Sは、次式(1)により計算される。
S=(ηn/P)(r/c) (1)
ここで、ηは潤滑油の粘性係数[Pa・s]であり、nは軸回転数[s-1]、Pは軸受面圧[Pa]であり、rは軸径[m]であり、c(=R-r。R:軸受半径、r:軸半径)は軸受隙間[m]である。
このために、上記テーパ形状は、破砕荷重の変化に対する潤滑油の最小油膜厚さの変化において後述するロバスト領域を有する程度のテーパ角に設定されている。具体的には、例えば、テーパ形状は、主軸5の中心軸線L1を通る断面視において、軸41と下部軸受15の内周面42の角度(テーパ角)θtが0.001°以上1°以下である。すなわち、本実施の形態において、下部軸受15においてテーパ形状が形成される領域の中心軸線Lb方向長さLtに対するテーパ形状が形成される領域の直径Dtの変化の割合を角度で示すテーパ角θtが0.001°以上1°以下である。下部軸受15においてテーパ形状が形成される領域の中心軸線方向長さLtに対するテーパ形状が形成される領域の直径Dtの変化の割合を示すテーパ率に換算すると、2/100000以上2/100以下である。なお、図18に示すように、本実施の形態における上記長さLtは、偏心スリーブ4の軸長に等しい。また、テーパ形状が形成される領域の直径Dtは、主軸嵌装穴3の内周面4aの直径に等しい。テーパ率は、ΔDt/Ltで示される。ΔDtは、テーパ形状が形成される領域における最長の直径Dt_maxと最短の直径Dt_minとの差分(ΔDt=Dt_max-Dt_min)を示す。
以下、上記のようなテーパ角に設定されたテーパ形状を備えた旋動式破砕機において、下部軸受15が、仕様A(軸直径に対する軸受長さの比L/D=約1.4、ゾンマーフェルト数S=約0.001)および仕様B(L/D=約0.8、S=約0.01)である場合について、解析により求めた破砕荷重に対する最小油膜厚さおよび傾斜角度との関係について説明する。
図5は、仕様Aにおける、破砕荷重の変化に対する下部軸受15の最小油膜厚さの変化を示すグラフである。図5においては、まず、仕様Aにおける主軸5およびフレーム31(上部フレーム1および下部フレーム2)等の構造物の変形または変位を、FEM(有限要素法)またはBEM(境界要素法)などの構造解析により求めた。さらにそれらの値を用いて、仕様Aの下部軸受15の油膜厚さを、流体潤滑理論に基づくレイノルズ方程式を用いた油膜解析により求め、その結果を整理してグラフ化した。図6は、仕様Aにおける、破砕荷重の変化に対する下部軸受15の傾斜角度の変化を示すグラフである。また、図7は、仕様Bにおける、破砕荷重の変化に対する下部軸受15の最小油膜厚さの変化を示すグラフである。図7は、仕様Bにおいて図5と同様の方法で油膜厚さを求めてグラフ化したものである。図8は、仕様Bにおける、破砕荷重に対する下部軸受15の傾斜角度の変化を示すグラフである。
ここで、前記構造解析および油膜解析は、解析結果を、それぞれ実験機または実績機での軸受状態(摺動痕など)と比較して、その妥当性を検証することが望ましい。なお、前記油膜解析では、軸と軸受との変形または傾斜を考慮した解析手法が用いられる。また理想的には、構造解析および油膜解析は双方向に連成した解析手法が望まれる。ただし、一般には、前記の通り構造解析の結果を用いて油膜解析をする、いわゆる一方向の連成解析が実用的である。
前記解析手法の妥当性評価においては、解析から求められる片当たり状態(接触面圧分布)、最小油膜厚さなどと、実機を運転して得た摺動痕とを比較する方法などが有効である。
なお、図5ないし図8においては、横軸の破砕荷重は定格荷重を100%として正規化している。
ここで、定格荷重とは、旋動式破砕機を駆動する電動機の定格出力で運転可能な旋動式破砕機においては、投入された原料(例えば岩石など)を定格出力で破砕処理を行う状態で旋動式破砕機が発生しうる破砕荷重をいう。また、電動機の定格出力で破砕処理を行う際に発生しうる破砕荷重がその旋動式破砕機の本体若しくは構成装置の一部が継続的に耐えうる負荷の上限を超えるため、電動機の定格出力で運転できない旋動式破砕機において、定格荷重とは、安全に破砕処理を継続しうる最大出力を定格出力とみなした場合の、その出力に対応する破砕荷重をいう。
なお、コーンクラッシャは、一般に、連続的な破砕が継続する状態を想定して設計される。これに対して、一次破砕機などで使用されるジャイレトリクラッシャは、連続的な破砕を継続する状態のほか、大塊原料(具体的に例えば石など)などの単粒子破砕または不連続的な破砕を常用的に行う場合がある。ジャイレトリクラッシャのように不連続に運転される旋動式破砕機においても、定格荷重は前記定義によるものとする。
また、図5および図7における縦軸の最小油膜厚さは、破砕荷重を100%としたときの下部軸受15の最小油膜厚さを1として正規化している。
また、図6および図8における縦軸の傾斜角度は、下部軸受15の中心軸線L2を基準として軸41が紙面に向かって時計回りに傾斜する方向(上当たり状態に向かう方向)を正方向としている。また、図6および図8における縦軸の傾斜角度は、破砕荷重を50%としたときの傾斜角度の絶対値を1として正規化している。正規化した傾斜角度に係る正負号は、負(-)が下当たり状態を、正(+)が上当たり状態を示す。
下部軸受15における傾斜角度は、図6および図8に示されるように、一般に、破砕荷重の増加に対してほぼ直線的ないしなだらかな曲線を描くように単調に増加する。一方、下部軸受15における最小油膜厚さは、図5および図7に示されるように、一般に、破砕荷重の増加に対して全体的にはほぼ単調に減少する。ここで、本実施形態において、下部軸受15における最小油膜厚さは、破砕荷重が特定範囲である場合に、当該特定範囲以外の範囲に比較して破砕荷重の増加に対する変化(減少)割合が小さくなっている。より具体的に説明すると、図5に示す仕様Aの下部軸受15においては、破砕荷重が50%から増加するに伴い最小油膜厚さが減少するが、破砕荷重が増加するにつれて最小油膜厚さの減少の割合が連続的に緩やかになる。その傾向は、破砕荷重が約105%になり、破砕荷重の増加に対する最小油膜厚さの減少の割合が急激に増加するまで継続する。図7に示す仕様Bの下部軸受15においても、破砕荷重が50%から増加するのに伴い最小油膜厚さが減少するが、破砕荷重が増加するにつれて最小油膜厚さの減少の割合が連続的に緩やかになる。その傾向は、破砕荷重が約145%になり、破砕荷重の増加に対する最小油膜厚さの変化の割合が急激に増加するまで継続する。
このように、破砕荷重が特定範囲以外の範囲である場合に比べて、破砕荷重の増加に対する最小油膜厚さの変化(一般には減少)割合が小さく、かつ前記の最小油膜厚さの変化の割合が急激に増加するまでの特定範囲を、本明細書においては、「ロバスト領域」とよぶ。また、下部軸受15において、そのようなロバスト領域を備える性質を「ロバスト特性」とよぶ。破砕荷重に対する最小油膜厚さの変化は、図5および図7に示されるように、ロバスト領域における破砕荷重の上限値までは、破砕荷重が小さい状態からなだらかに移行するため、ロバスト領域における破砕荷重の下限値は、明確に特定できない場合が多い。一方、ロバスト領域における破砕荷重の上限値は、前記の通り、それまで緩やかであった破砕荷重の増加に対する最小油膜厚さの減少の割合が、急激に増加する特徴により特定される。具体的には、例えば、仕様Aの下部軸受15において、ロバスト領域における破砕荷重の上限値は約105%である。また、仕様Bにおいて、ロバスト領域における破砕荷重の上限値は約145%である。なお、ロバスト領域における破砕荷重の上限値の数学的な特定方法については、後述する。
図6に示すように、仕様Aにおいて、下部軸受15の傾斜角度は、破砕荷重が約100%である場合に、負から正に変化している。このため、仕様Aにおいては、破砕荷重の約105%付近のときに、均等当たり状態であると言える。したがって、破砕荷重が、約105%より小さいときに下当たり状態となり、約105%より大きいときに上当たり状態となる。同様に、図8に示すように、仕様Bにおいて、下部軸受15の傾斜角度は、破砕荷重が約145%である場合に、負から正に変化している。このため、仕様Bにおいては、破砕荷重の約145%付近のときに、均等当たり状態であると言える。したがって、破砕荷重が、約145%より小さいときに下当たり状態となり、約145%より大きいときに上当たり状態となる。
ここで、比較のために、片当たり状態における油膜圧力分布の解析結果を図9に示す。また、均等当たり状態における油膜厚力分布の解析結果を図10に示す。なお、図9および図10において、旋動式破砕機の仕様および軸受荷重は同一である。また、図9および図10における軸41の傾斜角度は、それぞれ0.015度および0度であり、圧力分布のスケールは両図において同一である。
図10に示すように、均等当たり状態における圧力分布は、軸方向において際立ったピークがなく、全体的に低くなだらかな分布をしている。
主軸5を回転駆動するモータの動力が増加して、破砕荷重がロバスト領域の下限値から上限値まで変化する場合に、下部軸受15、すなわち主軸軸受10および偏心スリーブ軸受11の少なくとも一方は、下当たり状態から均等当たり状態へ変化する。このため、潤滑油の油膜厚さが最小となる位置が、軸受の下端部から軸受上下方向全体へと変化する。すなわち、下部軸受15が下当たり状態から均等当たり状態へ変化するのに伴い、下部軸受15の油膜圧力分布は、下部軸受15の下端側に偏った分布から、軸受上下方向全体にわたり平滑となる分布に近づくように変化する。
さらに破砕荷重が増加し、破砕荷重がロバスト領域の上限値を超過すると、軸受15は上当たり状態に変化する。このため、油膜厚さが最小となる位置は、下部軸受15の上端部へと移動する。この結果、油膜圧力分布は、均等当たり状態から上当たり状態へと変化するのに伴い、軸受上下方向全体にわたり平滑となる分布から、図9に示すような、下部軸受15の上端部に偏った急峻な分布へと変化する。
なお、図9の片当たり状態における最小油膜厚さは、図10の均等当たり状態における最小油圧厚さの約13%程度まで減少している。このように、同一の荷重条件および同一の仕様において、最小油膜厚さを大きくするためには、均等当たり状態が有利である。逆に、片当たり状態、特に上当たり状態は、最小油膜厚さが小さくなるため、軸受としては過酷な条件となる。
ただし、本実施形態において、下部軸受15は、下部軸受15が破砕荷重の増加に伴い、軽度の下当たり状態から均等当たり状態に、緩やかに変化するロバスト領域を有するため、当該ロバスト領域において、破砕荷重の変化に対する最小油膜厚さの変化が、ロバスト領域の範囲外である場合に比べて鈍感な状態が確保される。したがって、最小油膜厚さが確保されやすいという特徴がある。
以下、ロバスト特性を有する軸受における特徴を詳細に説明する。
図11は、ロバスト特性を有しない軸受とロバスト特性を有する軸受との比較を示す図である。図11におけるグラフ(a)は、それぞれの軸受における破砕荷重の変化に対する最小油膜厚さの変化を示す。図11におけるグラフ(b)は、それぞれの軸受における破砕荷重の変化に対する傾斜角度の変化を示す。ここで、図11においては、破砕荷重については定格荷重を100%とし、最小油膜厚さについては破砕荷重が定格荷重の100%のときの最小油膜厚さを1とし、傾斜角度については破砕荷重が定格荷重の20%のときの傾斜角度の絶対値を1として正規化している。また、図11において、説明および理解の容易のため、最小油膜厚さおよび傾斜角度は、簡略して表現している。なお、ロバスト特性を有する軸受におけるロバスト領域の範囲については、ロバスト特性を有する場合と有しない場合との相違を明確にするために、ロバスト特性を有する軸受のロバスト領域における破砕荷重の上限値を、破砕荷重の120%と設定している。
旋動式破砕機において、例えば、破砕荷重を定格荷重に設定して破砕運転を行うと、破砕室16に投入される原料の投入量、形状、大きさ、性状等のばらつきにより、運転中の破砕荷重の大きさは変動する。このため、破砕荷重が、定格荷重に対して増加(例えば5%増加)すれば、ロバスト特性を有するか否かに拘わらず、それに応じて、軸受の傾斜角度が増加して、片当たり(上当たり)状態に移行する(図11のグラフ(b))。傾斜角度に関して、ロバスト特性を有しない軸受では、破砕荷重が50%以上で上当たり状態である。一方、ロバスト特性を有する軸受では、破砕荷重が50%では下当たり状態であり、破砕荷重が120%で完全な均等当たり状態となり、それ以上では上当たり状態に移行する。
最小油膜厚さについては、ロバスト特性を有する軸受であるか否かに拘わらず、破砕荷重の増加に対して全体的にはほぼ単調に減少する。ロバスト特性を有しない軸受では、破砕荷重が50%において既に上当たり状態であり、それ以上では傾斜角度が大きくなり、強い上当たり状態に移行する。この結果、ロバスト特性を有しない軸受では、最小油膜厚さは破砕荷重の増加に対する最小油膜厚さの変化割合があまり変わることなく単調に減少する。一方、ロバスト特性を有する軸受でも、破砕荷重が50%から増加するに伴い最小油膜厚さが減少するが、ロバスト領域において破砕荷重が増加するにつれて最小油膜厚さの変化(一般には減少)の割合が連続的に緩やかになるロバスト特性を示す。図11において、その傾向は、破砕荷重が約105%で、破砕荷重の増加に対する最小油膜厚さの減少の割合が急激に増加するまで継続する。図11の例では、特に破砕荷重が約80%から120%の範囲が、このようなロバスト特性を示すロバスト領域になっている。破砕荷重の変化を軸受の片当たりの状態と関連付けて言い換えると、図11の例では、軽度の下当たり状態から均等当たり状態までの範囲が、最小油膜厚さについてロバスト特性を示すロバスト領域になっている。
以上より、旋動式破砕機においては、片当たり状態の移行点を調整することで、破砕荷重の変化に対する最小油膜厚さの変化においてロバスト特性を示すロバスト領域を生成することが可能である。軸受は、ロバスト領域において破砕荷重の変動に対する油膜特性の安定性を確保することができることがわかる。
なお、前記の通り、ロバスト領域は軽度の下当たり状態から均等当たり状態までの範囲において形成される。図11において、ロバスト領域を有しない軸受として、常に上当たり状態のみが生じる軸受を例に説明したが、軽度の下当たり状態を含まず、比較的に強い下当たり状態のみが生じる軸受についても同様にロバスト領域を有しないと言える。
なお、ロバスト特性を有する軸受では、ロバスト領域の上限値または上限値より少し小さい破砕荷重で、破砕荷重の変化に対する最小油膜厚さの変化の割合が最も鈍感に(小さく)なる。一般に破砕荷重に対する最小油膜厚さの変化は単調減少であるが、ロバスト領域の上限値よりも少し小さい破砕荷重で変化の割合が0(ゼロ)になる場合がある。係るケースにおいては、当該破砕荷重からロバスト領域における破砕荷重の上限値までの間で、破砕荷重の増加に伴い最小油膜厚さが微小に増加し、破砕荷重が上限値を超えると再度、最小油膜厚さは破砕荷重の増加と共に減少に転ずる場合がある。ただしこの挙動は微小で限られた条件でのみ発生しうることから、破砕荷重に対する最小油膜厚さ変化は、一般には単調に減少すると見做して問題ない。
以上のようなロバスト特性の有無による最小油膜厚さの相違により、ロバスト特性を有する軸受とロバスト特性を有しない軸受とでは、摺動痕に相違が生じる。以下、両者の摺動痕の相違について説明する。
一般的な旋動式破砕機では、軸、軸受および潤滑油が健全であれば、軸受の材質特性、または潤滑油中の極圧添加剤などの効果により、軽微な接触を伴う摺動で直ちに焼付くことはない。多くの場合、軸受は軽微な接触を経験すると、軸受端近傍において自然に望ましいクラウニングが形成されたり、軸受表面では表面の凹凸が滑らかにされたりする。これにより、軸受は新品状態よりも強い片当たり状態が生じた場合または薄い油膜厚さとなった場合でも健全に機能するように改質される。これは、一般に「慣らし」または「なじみ」と呼ばれる現象である。この過程で軸または軸受の表面にはなんらかの摺動痕が形成される。ただし健全な軸受油膜が形成されている場合であっても、油膜厚さに対して無視できない大きさまたは量の異物が潤滑油に混入すると、線状痕、研磨痕などの摺動痕、または異物の噛込み痕が形成される。
前記の通り、本実施の形態における下部軸受15は、軽度の下当たり状態から均等当たり状態までの範囲において、最小油膜厚さに関するロバスト特性を有する。
そのため、ロバスト領域の範囲内においては、局所的で強い摺動痕ではなく、比較的に広く、滑らかな摺動痕が形成される。また、ロバスト領域において形成された摺動痕が、潤滑油中の微細な異物による場合は、異物が研磨材のように作用することにより、比較的に広い範囲に摺動痕(研磨痕)が形成される。
下部軸受15が軽度の下当たり状態にあるときは、下部軸受15の下端部に最小油膜が形成され、上方に向かうに従って油膜厚さが緩やかに変化(一般に減少)する。このため、摺動痕は、下部軸受15の下端から軸長の約1/5ないし約1/3の位置までの領域にわたって形成され易い。また、下部軸受15が均等当たり状態にあるときは、摺動痕は、下部軸受15の下端から軸長の約1/5ないし1/3の位置と、下部軸受15の上端から軸長の約1/5ないし1/3の位置との間の領域に連続して形成され易い。さらに下部軸受15が、均等当たり状態から上当たり状態に移行すると、下部軸受15はロバスト領域の上限値を超えるため、ロバスト特性が失われる。このように軸受が上当たり状態に移行した場合には、逆に、下部軸受15の上端部に最小油膜が形成され下方に向かうに従って油膜が厚くなる。このため、摺動痕は、下部軸受15の上端から軸長の約1/5ないし1/3の位置までの領域にわたって形成され易い。
したがって、ロバスト領域を有する本実施形態の下部軸受15において、破砕荷重がロバスト領域内の均等当たり状態からロバスト領域の上限値を超えて下部軸受15が上当たり状態に移行する場合には、上記均等当たり状態の摺動痕と上当たり状態の摺動痕とが下部軸受15に形成される。
以上より、ロバスト特性を有する下部軸受15においては、破砕荷重の変動等が生じても、油膜の欠損等による焼き付き等の発生が生じ難く、軸長方向において比較的広い範囲に滑らかな摺動痕が形成される傾向がある。なお、ロバスト特性を有する下部軸受15が、破砕荷重に応じて片当たり状態に変化するとき、均等当たり状態における最小油膜厚さT2および下当たり状態おける最小油膜厚さT1は、上当たり状態における最小油膜厚さT3より大きくなる。そのため、ロバスト特性を有する下部軸受15は、上当たり状態に比べて、軽度の下当たり状態、および均等当たり状態の方が、油膜状態がよく、摺動痕自体が形成され難い構成になる。したがってロバスト特性を有する下部軸受15において摺動痕が形成される場合であっても、その摺動痕は、比較的に軽度であるか、或いは形成されていない場合がある。
一方、ロバスト領域の範囲外においては、軸受は比較的に傾斜が強い下当たり状態、または上当たり状態にある。ロバスト領域の範囲外における下当たり状態では下部軸受15の下端部付近に局部的な摺動痕が形成される。また、ロバスト領域の範囲外における上当たり状態では下部軸受15の上端から軸長の約1/5ないし1/3の位置までの領域に摺動痕が形成される。なお、ロバスト領域の範囲外における上当たり状態にある下部軸受15において、破砕荷重をさらに増加させると、上当たり状態の進行と共に最小油膜厚さが急激に減少するため、局所的に強い摺動痕が形成されやすくなる。さらには摺動痕に止まらず、油膜の欠損等による焼き付き等が発生することがある。
ロバスト特性を有しない軸受は、ロバスト特性を有する下部軸受15における破砕荷重に対する最小油膜厚さの関係において、上当たり状態を範囲とする軸受、または、比較的に傾斜の強い下当たり状態を範囲とする軸受と言える。言い換えると、ロバスト特性を有しない軸受は、軽度の下当たり状態ないし均等当たり状態を範囲としない軸受と言える。したがって、この様な軸受では、前記のロバスト領域の範囲外における摺動痕の特徴のうち、何れか一方のみを有し、ロバスト領域を有する場合に特有の摺動痕は形成されない。
一般に、油膜厚さが十分に厚い場合、または油膜厚さに対して無視できない大きさあるいは量の異物が潤滑油に混入していない場合には、摺動痕は形成されない。したがって、このような軸受では摺動痕からロバスト領域の有無を評価できない。ただし、前記のロバスト領域に起因した摺動痕が観察される場合には、ロバスト領域があると判断できる。
なお、図11のグラフ(a)においては、最小油膜厚さが正規化されているため、正規化された最小油膜厚さはロバスト特性を有する軸受けとロバスト特性を有しない軸受とで同一となっている。しかし、ロバスト特性を有しない軸受における破砕荷重の変化に対する最小油膜厚さの変化率を考慮すると、定格荷重時における現実の最小油膜厚さは、ロバスト特性を有しない軸受の方が大きくなっている。
ロバスト特性を有する下部軸受15におけるロバスト領域における破砕荷重の上限値の特定方法について説明する。
前記、図5および図7に関する説明の通り、ロバスト特性を有する下部軸受15では、破砕荷重に対する最小油膜厚さの変化が、ロバスト領域における破砕荷重の上限値の前後で明確に変化する。図5および図7のドット(●)は油膜解析で求めた値であり、実線はドットを直線で結んだものである。ロバスト特性を有する軸受に関しては、図5および図7のように多くの破砕荷重点で最小油膜厚さを取得して解析することにより、ロバスト領域における破砕荷重の上限値を特定することは容易である。図5では約105%が、図7では約145%がロバスト領域における破砕荷重の上限値と判断できる。
ロバスト特性は、数学的な手法を用いることにより、2つの近似曲線で近似することができる。具体的には、ロバスト特性は、例えば2次または3次関数などの近似曲線で近似することができる。また、ロバスト領域における破砕荷重の上限値は、それら2つの近似曲線の交点より同定することができる。図12は、仕様Aの軸受について、ロバスト特性を表す模式的な特性曲線を示すグラフである。図12は、図5のグラフと同一である。図13は、図12に示すロバスト特性曲線を2次関数で近似したグラフである。図14は、図12に示すロバスト特性曲線を3次関数で近似したグラフである。図13の例において、近似曲線の交点を求めることにより得られるロバスト領域における破砕荷重の上限値は104.7%である。また、図14の例において、近似曲線の交点を求めることにより得られるロバスト領域における破砕荷重の上限値は105.1%である。同様に、図15は、仕様Bの軸受について、ロバスト特性を表す模式的な特性曲線を示すグラフである。図15は、図7のグラフと同一である。図16は、図15に示すロバスト特性曲線を2次関数で近似したグラフである。図17は、図15に示すロバスト特性曲線を3次関数で近似したグラフである。図16の例において、近似曲線の交点を求めることにより得られるロバスト領域における破砕荷重の上限値は144.1%である。また、図17の例において、近似曲線の交点を求めることにより得られるロバスト領域における破砕荷重の上限値は145.4%である。
上記の例はロバスト特性が比較的に明瞭な場合である。ロバスト領域における破砕荷重の変化に対する最小油膜厚さの変化率と、ロバスト領域の範囲外における変化率との差が小さい場合には、ロバスト領域が不明瞭になる。このような場合でも、特性曲線を2次関数または3次関数などを用いた2つの近似曲線で近似できる。そして、2つの近似曲線の交点からロバスト領域における破砕荷重の上限値を特定できる場合には、その軸受はロバスト特性を有すると考えられる。
ロバスト領域における破砕荷重の上限値が、著しく高負荷帯または著しく低負荷帯にある軸受の場合には、ロバスト領域における破砕荷重の上限値が現れることなく、油膜厚さが許容油膜厚さを下回ることがある。このような場合は、たとえ特定の範囲において、破砕荷重に対する最小油膜厚さの変化が著しく小さい軸受であっても、ロバスト特性を有するとは見做さない。
ロバスト領域における破砕荷重の大きさ、ロバスト領域の範囲の大きさは、フレーム31、主軸5、軸受支持部(外筒7、偏心スリーブ支持体32)などの剛性の大きさないしバランスの影響を受けて変化する。このため、各部の剛性は、破砕負荷と共に、ロバスト領域設計における重要なパラメータとなる。
また、上記に加えて、上部軸受17の磨耗量も、ロバスト領域設計における重要なパラメータとなる。主軸5を上部軸受17および下部軸受15で支持する必要がある油圧式の旋動式破砕機においては、上部軸受17に用いられる軸受メタルが経年的に摩耗する。上部軸受17の摩耗に伴い、下部軸受15の片当たり状態が上当たり傾向に変化するため、ロバスト領域は設計当初、或いは新品状態から変化する。具体的には例えば、上部軸受17が摩耗した状態では、摩耗のない新品時と比べて、ロバスト領域は負荷が低い側に変化する。図5および図7の例においては、上部軸受17が磨耗すると、それぞれの特性曲線は、紙面に向かって左方に移動する。
旋動式破砕機では、なんらかの理由でマントル13とコーンケーブ14とにより形成される破砕室16内に原料が停留することがある。これにより、破砕工程または排出工程が滞った場合に、運転を継続しようとすると、破砕室16に停留する原料によって破砕機の回転運動が阻害される。この結果、旋動式破砕機に加えられる負荷が瞬間的に定格を大幅に超える事象が発生することがある。
このような事象が発生すると、モータのトルク特性に起因して、モータの定格出力時を超える軸トルクが発生する。具体的には、例えば、三相誘導モータでは一般に定格負荷状態の160%以上の最大トルクが発生することがある。この場合、軸受には前記軸トルクに対応した軸受荷重がかかることがある。この結果、160%以上の破砕荷重が発生することがある。ただし、旋動式破砕機本体の機械的な損傷防止の観点から、旋動式破砕機には、なんらかの安全装置が設けられることが一般的である。このときの破砕荷重の上限値は、大きくても旋動式破砕機の定格荷重の200%以下とすることが好ましい。また、定格荷重以上の過大な破砕荷重が発生すると、モータに過負荷が作用することになる。このため、破砕荷重の上限値は、160%以下であることがさらに好ましい。
かかる事象が発生する場合には、ロバスト領域を、破砕荷重が定格荷重よりも大きい荷重側に意図的に設定してもよい。これにより、万が一の事態に対して信頼性を確保できる。このときの破砕荷重に関して、常用荷重(原料の種類または性状等により通常使用される破砕荷重)、或いは定格荷重が、ロバスト領域における破砕荷重の下限値よりも低い場合が考えられる。上述のように、破砕荷重が小さい場合は、下当たり状態になる傾向にある。しかし、破砕荷重W(軸受荷重F)自体が小さいので、図5および図7に示されるように、そもそも十分な最小油膜厚さT1が確保されやすい。
一方、比較的柔らかい原料を破砕処理するプラントにおいては、旋動式破砕機は、破砕荷重が定格荷重以下、例えば50%程度の破砕荷重による条件で運転されることが多い。このような運転においては、ロバスト領域を破砕荷重が低い領域(範囲)に設定することにより、運転時における軸受の信頼性を高めることができる。
以上の特徴を有する下部軸受15を使用した旋動式破砕機を用いることにより、被破砕物の種類の変更または運転条件の変化(マントル13またはコーンケーブ14の摩耗による破砕荷重の変化も含む)などにより破砕荷重が変化した場合でも、片当たり状態の発生を防止しつつ継続して旋動式破砕機を使用することができる。この結果、破砕荷重の変化に応じて、改めて下部軸受15等の調整または試験による確認を行う必要がなくなる。また、破砕荷重の変化に応じて、適切な旋動式破砕機を選定したり、使い分けたりする必要もなくなる。したがって、破砕荷重の変化による労力または費用を低減し、稼働率の向上を図ることができる。
なお、破砕荷重は、モータ動力(軸トルク)にほぼ比例し、旋動式破砕機の現実の運転においては、破砕荷重よりモータ動力の方が、直接的に測定や管理が容易である。このため、破砕荷重と最小油膜厚さとの関係を用いるよりモータ動力と最小油膜厚さとの関係で整理や把握を行う方が便利である。特に、前記の結果は、破砕荷重を定格荷重(定格値)で正規化しているため、破砕荷重をそのままモータ動力とする(読み替える)ことができる。
上述した実施形態による旋動式破砕機によれば、簡単な構成で、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有することができる。
また、上述した実施形態による旋動式破砕機によれば、下部軸受15における極端な上当たり状態および極端な下当たり状態を回避することができる。
ただし、多少の上当たり状態や多少の下当たり状態は、本技術分野において許容される。むしろ、旋動式破砕機の運転期間において、多少の上当たり状態と多少の下当たり状態との両方の状態が発生することは、極端な上当たり状態または極端な下当たり状態を回避する上で有効であると言える。
その意味では、下部軸受15の内周面の上部および下部の両方に、片当たりによる摺動痕が生じている場合には、上述した実施形態のように理想的な運転状態が確保されていると言うことができる。
上述した実施形態におけるロバスト領域は、好ましくは、破砕荷重の上限値がモータ動力の定格値の約70%以上、約80%以上、または約100%以上である。
また、上述した実施形態におけるロバスト領域は、好ましくは、破砕荷重の上限値がモータ動力の定格値の約200%以下、約160%以下、または約110%以下である。
なお、本発明は、大型の旋動式破砕機において特に有効である。具体的には、旋動式破砕機の入口寸法が200mm以上の旋動式破砕機において特に効果を発揮する。ここで、入口寸法とは、コーンケーブ14の内面とマントル13の上端との間の距離である。入口寸法は、旋動式破砕機に供給できる原料の最大寸法を規定する。
上記実施形態によれば、上記のようなロバスト領域の設定を下部軸受15の内周面42に設けられたテーパ形状のテーパ角またはテーパ率を調整することにより実現することができる。テーパ形状のテーパ角θtは、好ましくは、0.001°以上1°以下である。テーパ率に換算すると、2/100000以上2/100以下である。
なお、上記実施の形態においては、上当たり状態を回避するテーパ形状として、主軸嵌挿穴3の内周面4aが、上方に向かうほど拡径するような第1テーパ形状を輸する態様について説明したが、本発明はこれに限られない。
例えば、図19Aに示すように、テーパ形状は、偏心スリーブ4の外周面4bが、下方に向かうほど拡径するような第2テーパ形状を含んでもよい。また、図19Bに示すように、テーパ形状は、外筒7の偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aが、上方に向かうほど拡径するような第3テーパ形状を含んでもよい。また、これらの場合も、ロバスト領域を有するためのテーパ角θtは、上記範囲と同様である。図19Aの例において、下部軸受15においてテーパ形状が形成される領域の中心軸線方向長さLtは、外筒7の軸長に等しい。また、テーパ形状が形成される領域の直径Dtは、偏心スリーブ4の外周面4bの直径に等しい。図19Bの例において、下部軸受15においてテーパ形状が形成される領域の中心軸線方向長さLtは、外筒7の軸長に等しい。また、テーパ形状が形成される領域の直径Dtは、偏心スリーブ嵌装穴27の内周面7aの直径に等しい。
図19Aおよび図19Bに示す変形例では、図3Cにおける軸41は偏心スリーブ4に相当する。図19Aおよび図19Bに示す変形例も、軸41と下部軸受15との相対的な関係において、図3Cと同様に、上当たり状態を回避するような形状を有している。このため、第2テーパ形状または第3テーパ形状を有することによっても、下部軸受15が上当たり状態となることを回避することができ、最小油膜厚さT3が減少することを抑制することができる。したがって、簡単な構成で、下部軸受15において焼付き等の発生を防止し、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有する旋動式破砕機を実現することができる。
なお、図19Bに示す変形例においては、第3テーパ形状が偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向の全部の領域に形成される例を示したが、軸線方向の一部の領域において、第3テーパ形状が形成されてもよい。例えば、図19Cに示すように、第3テーパ形状は、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向における上端位置と、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向中心位置との間の領域7a1に形成される。これにより、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向中心位置と、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向における下端位置との間の領域7a2は、テーパ形状が形成されない(内周面が軸線方向に沿った)領域となる。図19Cの例において、下部軸受15においてテーパ形状が形成される領域の中心軸線方向長さLtは、外筒7の軸長の1/2に等しい。
これにより、第3テーパ形状は、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向における上端位置を含み、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向長さの1/2の長さを有する領域に形成される。偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの全体にテーパ形状(第3テーパ形状)を形成する場合、テーパ角が大きくなると、かえって低負荷での片当たりが強くなり、低負荷にもかかわらず油膜厚さが不足する場合が生じ得る。このような場合、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aにおいて第3テーパ形状が形成される領域を軸線方向に関して一部の領域とすることにより、低負荷時および高負荷時の何れの場合においても最小油膜厚さT3が減少することを抑制することができる。
なお、軸線方向の一部の領域において第3テーパ形状が形成される場合、上記例に限られず、第3テーパ形状は、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向における上端位置を含み、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向長さの1/3以上の長さを有する領域に形成され得る。例えば、第3テーパ形状が偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向長さの1/3の長さを有する領域7a1において、その領域の下端位置は、上端位置から偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向長さの1/3の長さ下方の位置に位置する。また、例えば、第3テーパ形状が偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向長さの2/3の長さを有する領域7a1において、その領域の下端位置は、上端位置から偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向長さの2/3の長さ下方の位置に位置する。第3テーパ形状が形成される領域7a1の軸線方向長さは、偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの軸線方向長さの1/2以上の長さであることがより好ましい。
また、上記実施の形態において、図18に示すように、第1テーパ形状が主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向の全部の領域に形成される例を示したが、図19Cと同様に、軸線方向の一部の領域において、第1テーパ形状が形成されてもよい。例えば、図19Dに示すように、第1テーパ形状は、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向における上端位置と、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向中心位置との間の領域4a1に形成される。これにより、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向中心位置と、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向における下端位置との間の領域4a2は、テーパ形状が形成されない(内周面が軸線方向に沿った)領域となる。図19Dの例において、下部軸受15においてテーパ形状が形成される領域の中心軸線方向長さLtは、偏心スリーブ4の軸長の1/2に等しい。
これにより、第1テーパ形状は、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向における上端位置を含み、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向長さの1/2の長さを有する領域に形成される。主軸嵌挿穴3の内周面4aの全体にテーパ形状(第1テーパ形状)を形成する場合、テーパ角が大きくなると、かえって低負荷での片当たりが強くなり、低負荷にもかかわらず油膜厚さが不足する場合が生じ得る。このような場合、主軸嵌挿穴3の内周面4aにおいて第1テーパ形状が形成される領域を軸線方向に関して一部の領域とすることにより、低負荷時および高負荷時の何れの場合においても最小油膜厚さT3が減少することを抑制することができる。
なお、軸線方向の一部の領域において第1テーパ形状が形成される場合、上記例に限られず、第1テーパ形状は、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向における上端位置を含み、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向長さの1/3以上の長さを有する領域に形成され得る。第1テーパ形状が形成される領域4a1の軸線方向長さは、主軸嵌挿穴3の内周面4aの軸線方向長さの1/2以上の長さであることがより好ましい。
また、第1テーパ形状ないし第3テーパ形状のうちの複数を組み合わせてもよい。すなわち、主軸嵌挿穴3の内周面4a、偏心スリーブ4の外周面4b、および偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの少なくとも何れか1つが、上方に向かうほど対向する面との距離が広がるようなテーパ形状を有していればよい。何れの場合であっても、図1と同様に、下部軸受15が上当たり状態となることを回避することができ、最小油膜厚さT3(図3C)が減少することを抑制することができる。したがって、簡単な構成で、下部軸受15において焼付き等の発生を防止し、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有する旋動式破砕機を実現することができる。
第1テーパ形状ないし第3テーパ形状のうちの複数を組み合わせる構成において、ロバスト領域を有するためのテーパ角は、上記範囲と同様である。このときのテーパ角は、組み合わせるテーパ形状のそれぞれのテーパ角の和である。
[実施形態2]
上記実施形態1では、主軸嵌挿穴3の内周面4a、偏心スリーブ4の外周面4b、および偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aの少なくとも何れか1つが、上方に向かうほど対向する面との距離が広がるようなテーパ形状を有している構成について説明した。これに代えて、上当たり状態を回避するための構成として、旋動式破砕機は、偏心スリーブ4と、偏心スリーブ支持体32との間のスラスト軸受33にテーパ形状が設けられた構成を有していてもよい。
図20Aは、本発明の実施形態2に係る旋動式破砕機における偏心スリーブの下端部近傍の拡大断面図である。図20Aの例において、偏心スリーブ4は、当該偏心スリーブ4の下面において、偏心スリーブ支持体32の上面との接触を許容する第1スラスト軸受面23aを備えている。また、偏心スリーブ支持体32は、当該偏心スリーブ支持体32の上面において、第1スラスト軸受面23aとの接触を許容する第2スラスト軸受面23bを備えている。第1スラスト軸受面23aと第2スラスト軸受面23bとで、下部軸受15の偏心スリーブ支持体32(下部フレーム2)に対するスラスト軸受23を構成する。第1スラスト軸受面23aは、偏心スリーブ4の径方向外方に向かうほど、対向する第1スラスト軸受面23aおよび第2スラスト軸受面23b間の距離が広がるような第4テーパ形状を有している。
上記構成によれば、上記のようなテーパ形状を有するため、破砕荷重が大きくなって従来の構成においては上当たり状態となるような状況であっても、主軸5と偏心スリーブ4の主軸嵌挿穴3の内周面の上端部との近接が抑制される。したがって、下部軸受15が上当たり状態となることを回避することができ、最小油膜厚さが減少することを抑制することができる。したがって、簡単な構成で、下部軸受15において焼付き等の発生を防止し、負荷条件の変化に対する高いロバスト性を有する旋動式破砕機を実現することができる。
第1スラスト軸受面23aが第4テーパ形状を有する代わりに、図20Bに示すように、第2スラスト軸受面23bが第4テーパ形状を有してもよい。また、図20Cに示すように、第1スラスト軸受面23aおよび第2スラスト軸受面23bの双方が第4テーパ形状を有してもよい。
[実施形態3]
旋動式破砕機は、上記実施形態1におけるテーパ形状(第1テーパ形状ないし第3テーパ形状のうちの少なくとも何れか1つ)および上記実施形態2における第4テーパ形状(第1スラスト軸受面23aおよび第2スラスト軸受面23bの少なくとも何れか一方に形成されるテーパ形状)を両方備えてもよい。
図21は、本発明の実施形態3に係る旋動式破砕機の下部軸受近傍の拡大断面図である。図21の例では、下部軸受15は、偏心スリーブ4の外周面4bに形成された第2テーパ形状と、外筒7の偏心スリーブ嵌挿穴27の内周面7aに形成された第3テーパ形状と、スラスト軸受23の第1スラスト軸受面23aおよび第2スラスト軸受面23bのそれぞれに形成された第4テーパ形状とを備えている。
上記構成によれば、下部軸受15に形成された第2テーパ形状および第3テーパ形状により偏心スリーブ4の傾きが従来(第2テーパ形状および第3テーパ形状がない構成)に比べて大きい状態が許容され得る。そのため、偏心スリーブ4の傾きによる偏心スリーブ4および偏心スリーブ支持体32に作用する応力が大きくなり得る。一方、偏心スリーブ4と偏心スリーブ支持体32との間には、偏心スリーブ4の傾斜を許容する第4テーパ形状(第1スラスト軸受面23aおよび第2スラスト軸受面23b)が形成される。これにより、偏心スリーブ4および偏心スリーブ支持体32に作用する応力の増大が抑制される。したがって、偏心スリーブ4の傾斜による偏心スリーブ4または偏心スリーブ支持体32の変形を抑制することができる。
なお、第1テーパ形状ないし第4テーパ形状の組み合わせは上記例に限られず、例えば、第1テーパ形状と第3テーパ形状とを備える構成、または、第1テーパ形状ないし第4テーパ形状をすべて備える構成等、様々な組み合わせを採用可能である。
3 主軸嵌挿穴
4 偏心スリーブ
4a 第1テーパ形状を有する内周面
4b 第2テーパ形状を有する外周面
5 主軸
7 外筒
7a 第3テーパ形状を有する内周面
13 マントル
14 コーンケーブ
15 下部軸受
17 上部軸受
23a 第1スラスト軸受面
23b 第2スラスト軸受面
27 偏心スリーブ嵌挿穴
30 油圧シリンダ
32 偏心スリーブ支持体

Claims (10)

  1. コーンケーブの内部に回転可能に配置され、その中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜して偏心旋回運動をする主軸と、
    前記主軸の上端部を回転自在に支持する上部軸受と、
    前記主軸に設けられたマントルと、
    前記主軸の下端部を回転自在に支持する下部軸受と、
    前記下部軸受の下方に設けられ、前記主軸を油圧により上下動させる油圧シリンダと、を備え、
    前記下部軸受は、
    前記主軸の下端部が回転自在に嵌挿される主軸嵌挿穴を有する偏心スリーブと、
    前記偏心スリーブが回転自在に嵌挿される偏心スリーブ嵌挿穴を有する外筒と、を備え、
    前記主軸嵌挿穴の内周面および前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面の少なくとも何れか1つが、軸線方向の上端位置を含む少なくとも一部の領域において、上方に向かうほど対向する面との距離が広がるようなテーパ形状を有している、または、前記偏心スリーブの外周面が、前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面の上端位置に対応する軸線方向の位置を含む少なくとも一部の領域において、上方に向かうほど対向する面との距離が広がるようなテーパ形状を有している、旋動式破砕機。
  2. 前記テーパ形状は、前記主軸嵌挿穴の内周面が、上方に向かうほど拡径するような第1テーパ形状を含む、請求項1に記載の旋動式破砕機。
  3. 前記テーパ形状は、前記偏心スリーブの外周面が、下方に向かうほど拡径するような第2テーパ形状を含む、請求項1または2に記載の旋動式破砕機。
  4. 前記テーパ形状は、前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面が、上方に向かうほど拡径するような第3テーパ形状を含む、請求項1から3の何れかに記載の旋動式破砕機。
  5. 前記第1テーパ形状は、前記主軸嵌挿穴の内周面の軸線方向における上端位置を含み、前記主軸嵌挿穴の内周面の軸線方向長さの1/3以上の長さを有する領域に形成される、請求項2に記載の旋動式破砕機。
  6. 前記第3テーパ形状は、前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面の軸線方向における上端位置を含み、前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面の軸線方向長さの1/3以上の長さを有する領域に形成される、請求項4に記載の旋動式破砕機。
  7. 前記主軸の下端部の外周面と前記主軸嵌挿穴の内周面との間の隙間、および、前記偏心スリーブの外周面と前記偏心スリーブ嵌挿穴の内周面との間の隙間に、潤滑油が供給されており、
    前記テーパ形状は、破砕荷重の変化に対する前記潤滑油の最小油膜厚さの変化においてロバスト領域を有する程度のテーパ角またはテーパ率に設定される、請求項1から6の何れかに記載の旋動式破砕機。
  8. 前記テーパ形状は、前記主軸の中心軸線を通る断面視において、前記下部軸受において前記テーパ形状が形成される領域の中心軸線方向長さに対する、前記領域の直径Dtの変化の割合を示す角度が0.001°以上1°以下であるように形成される、請求項1から7の何れかに記載の旋動式破砕機。
  9. 前記下部軸受は、前記偏心スリーブの下方において前記偏心スリーブを相対回転自在に支持する偏心スリーブ支持体を備え、
    前記偏心スリーブは、当該偏心スリーブの下面において、前記偏心スリーブ支持体の上面との接触を許容する第1スラスト軸受面を備え、
    前記偏心スリーブ支持体は、当該偏心スリーブ支持体の上面において、前記第1スラスト軸受面との接触を許容する第2スラスト軸受面を備え、
    前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面の少なくとも何れか一方が、前記偏心スリーブの径方向外方に向かうほど、対向する前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面間の距離が広がるような第4テーパ形状を有している、請求項3または4に記載の旋動式破砕機。
  10. コーンケーブの内部に回転可能に配置され、その中心軸線が前記コーンケーブの中心軸線に対して傾斜して偏心旋回運動をする主軸と、
    前記主軸の上端部を回転自在に支持する上部軸受と、
    前記主軸に設けられたマントルと、
    前記主軸の下端部を回転自在に支持する下部軸受と、
    前記下部軸受の下方に設けられ、前記主軸を油圧により上下動させる油圧シリンダと、を備え、
    前記下部軸受は、
    前記主軸の下端部が回転自在に嵌挿される主軸嵌挿穴を有する偏心スリーブと、
    前記偏心スリーブが回転自在に嵌挿される偏心スリーブ嵌挿穴を有する外筒と、
    前記偏心スリーブの下方において前記偏心スリーブを相対回転自在に支持する偏心スリーブ支持体と、を備え、
    前記偏心スリーブは、当該偏心スリーブの下面において、前記偏心スリーブ支持体の上面との接触を許容する第1スラスト軸受面を備え、
    前記偏心スリーブ支持体は、当該偏心スリーブ支持体の上面において、前記第1スラスト軸受面との接触を許容する第2スラスト軸受面を備え、
    前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面の少なくとも何れか一方が、前記偏心スリーブの径方向外方に向かうほど、対向する前記第1スラスト軸受面および前記第2スラスト軸受面間の距離が広がるようなテーパ形状を有している、旋動式破砕機。
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