JP7201088B2 - 測距装置 - Google Patents
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Description
本発明は、測距装置に関し、特に、飛行時間方式の測距技術に関する。
従来から、物体との距離を測定する技術としてTOF(Time of Flight:飛行時間)方式が知られている。TOF方式の測距処理では、レーザを発光させて、そのレーザ光が物体に反射して戻るまでの飛行時間を測定し、光速を乗じることで物体との距離を導出する(非特許文献1参照)。
TOF方式の測距技術の具体例として、非特許文献2は、地表を掘削することなく下水道管などの管路を構築する工事に用いる地下の掘削機の位置を、TOF方式で計測する測距装置を開示している。
また、非特許文献1および2に記載された技術では、時間を測定する基準となる参照信号と、測距対象の物体の表面を反射して戻ってきた光を光電変換した検出信号との2つの信号の時間差を測定する必要がある。例えば、2チャネルを持つアナログ-ディジタル変換器(ADC)を用いてこれら2つの信号が取り込まれる。このとき、2つの信号の時間差がΔtだとすると、物体までの距離の測定値Lは、cΔt/2と表される。ここで、cは光速である。
このような従来の測距装置では、ADCのチャネル間のタイミング差(skew、スキュー)が時間変動する場合に、正確な測距ができなくなるという問題があった。つまり、ADCのチャネル間の信号取得時間にずれ(skew、スキュー)がある場合は、距離の測定値Lはそれに応じて変動する。例えば、参照信号に対して検出信号がADCのチャネル間スキューによってδtだけ遅れた場合、物体までの距離の測定値L’はc(Δt+δt)/2となり、cδt/2だけ異なる。
この場合は、スキューδtが固定値であれば、予めスキューδtを測定しておき、距離の測定時に、参照信号と検出信号との時間差から、予め測定されたスキューδtを引けば、正しい距離が得られる。しかし、スキューδtが、信号の取得ごとに異なる場合は、信号の取得ごとに距離の測定値が異なることとなり、得られた距離の精度が悪くなるという問題がある。
大石航志、太田充彦、松原弘幸、「レーザレーダにおけるFPGAを用いた複数反射光に対する飛行時間測定」、電子情報通信学会、2018年 電子情報通信学会総合大会 エレクトロニクス講演論文集2、p.38、C-12-3、2018年03月6日発行
小平徹、八木生剛、藤浦和夫、森治郎、渡邊武士、「波長掃引技術を応用した光掃引方式位置計測システム」、光技術コンタクト、55巻、8号、pp.18-27、2017年08月20日発行
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ADCのチャネル間のタイミング差(skew、スキュー)が信号の取得ごとに変動する場合であっても、物体までの距離を高精度に測定することができる測距装置および測距方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明に係る測距装置は、周期的に強度変調された光の一部を参照光として受光し、第1参照信号に変換する第1フォトディテクタと、前記光が測定対象の物体の表面を反射した反射光を検出し、第1検出信号に変換する第2フォトディテクタと、前記第1参照信号と前記第1検出信号とのそれぞれに第1基準信号を加算して、第2参照信号と第2検出信号とをそれぞれ出力する加算器と、前記第2参照信号をAD変換してディジタルの第3参照信号を出力する第1AD変換器と、前記第2検出信号をAD変換してディジタルの第3検出信号を出力する第2AD変換器とを有するアナログ-ディジタル変換器と、前記第3参照信号から、前記参照光に基づく第4参照信号と前記第1基準信号に基づく第2基準信号とを取り出す第1フィルタと、前記第3検出信号から、前記反射光に基づく第4検出信号と前記第1基準信号に基づく第3基準信号とを取り出す第2フィルタと、前記第2基準信号と前記第3基準信号とに基づいて、前記第1AD変換器と前記第2AD変換器との間のタイミング差であるスキューを測定し、測定された前記スキューを示すスキュー信号を出力するスキュー測定部と、前記スキュー信号を用いて、前記第4参照信号の波形に含まれる第1ピークの第1ピーク時刻と、前記第4検出信号の波形に含まれる、前記第1ピークに対応する第2ピークの第2ピーク時刻との第1時刻差を補正する補正部と、補正された前記第1時刻差に基づいて、前記第1ピーク時刻ごとの前記物体までの距離を求め、距離信号を出力する測距部とを備える。
本発明によれば、第1AD変換器と第2AD変換器との間のタイミング差であるスキューを測定し、測定されたスキューを用いて、第1AD変換器でAD変換された参照光に基づく第4参照信号の波形に含まれる第1ピークの第1ピーク時刻と、第2AD変換器でAD変換された測定対象の物体を反射した反射光に基づく第4検出信号の波形に含まれる、第1ピークに対応する第2ピークの第2ピーク時刻との第1時刻差を補正する。そのため、ADCのチャネル間の時間差(skew、スキュー)が信号の取得ごとに変動する場合であっても、物体までの距離を高精度に測定することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図16を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る測距装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る測距装置1は、図1に示すように、TOF方式により、測距装置1から物体105までの距離を測定する。より詳細には、測距装置1は、カプラ102から光が出射されてから、測距対象の物体105の表面を反射した反射光がフォトディテクタPDs107で受光されるまでの飛行時間と、カプラ102から出射されてからフォトディテクタPDr106で受光されるまでの飛行時間の差を測定し、測距装置1から物体105までの距離を求める。
図1に示すように、測距装置1は、光源100、光強度変調器101、カプラ102、サーキュレータ103、光偏向器104、フォトディテクタ(第1フォトディテクタ)(以下、「PDr」という。)106、フォトディテクタ(第2フォトディテクタ)(以下、「PDs」という。)107、加算器(以下、「ADr」という。)108、加算器(以下、「ADs」という。)109、アナログ-ディジタル変換器(ADC)110、および信号処理装置111を備える。カプラ102は光を分岐(スプリット)する光分岐器(光スプリッタ)として使用するものである。また、測距装置1の外部には、ファンクションジェネレータFGm,FGbが設けられている。
光源100、光強度変調器101、カプラ102、サーキュレータ103、光偏向器104、PDr106、およびPDs107は、測距装置1が備える光学系OSを構成する。
光源100は、時間的に強度が一定の光を物体105に向けて出射する。光源100として、例えば、CW光源を用いることができる。
光強度変調器101は、光源100から出射された光を周期的に強度変調する。より詳細には、ファンクションジェネレータFGmによって生成されるパルス波や正弦波などの周期的な変調信号Semで、光源100の光の強度を変調する。光源100から出射される光は、周期的に強度変調されて、後述の光偏向器104に入射される。
カプラ102は、光強度変調器101から出力された光を参照光路と物体光路とに分ける。カプラ102によって分けられた光の一方は、参照光路上のPDr106に入力され、他方の光は物体光路上のサーキュレータ103および光偏向器104を介して物体105に照射される。
サーキュレータ103は、光路上で互いに反対方向に進む光を分離する。より詳細には、サーキュレータ103は、カプラ102から出射され物体105に照射される光と、物体105を反射して戻ってきた光とを分離する。
光偏向器104は、光源100から入射され、光強度変調器101で周期的な強度変調がなされた光の光軸を偏向して出射する。より詳細には、光偏向器104は、光源100から出射され、光強度変調器101で正弦波などに強度変調され、カプラ102およびサーキュレータ103を介して入射される光を偏向して出射する。以下、光偏向器104が入射される光の光軸を変化させて出射することを「光を偏向する」ということとする。
光偏向器104は、予め設定された偏向角度の範囲で光強度変調器101からの光を偏向する。光偏向器104としては、例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、KTN(タンタル酸ニオブ酸カリウム)結晶を用いた偏向器を用いることができる。光偏向器104による偏向角度θは、ミラーの設計や光偏向器104が備える図示されない駆動装置による制御により所望の偏向角度の範囲となるように設定することができる。
光偏向器104は、光強度変調器101から出射された光を偏向して出射することによって、物体105ならびにその周辺の空間をスキャン(空間的に掃引、つまり、偏向)して、測距対象の物体105で反射させる。光偏向器104が、光強度変調器101からの光を設定された偏向角度θの範囲内で出射した光でスキャンする毎に、物体105からの反射光が後述のPDs107で検出される。
PDs107は、物体105からの反射光をサーキュレータ103を介して検出し、アナログ信号の検出信号Ses(以下、「第1検出信号Ses」という。)に変換する。
PDr106は、光源100から出射され、光強度変調器101で周期的な光強度に変調され、カプラ102で参照光路に分けられた参照光を検出し、アナログ信号の参照信号Ser(以下、「第1参照信号Ser」という。)に変換する。
ADr108は、ファンクションジェネレータFGbで生成されたアナログの基準信号(以下、「第1基準信号」という。)Sebと、第1参照信号Serとを加算し、加算結果として第2参照信号Ser+ebを出力する。
ADs109は、ファンクションジェネレータFGbで生成されたアナログの第1基準信号Sebと、第1検出信号Sesとを加算する。ADs109は、加算演算の結果として第2検出信号Ses+ebを出力する。
ADr108およびADs109は、図2に示すようなオペアンプを利用したアナログ加算器を備えることができる。図2に示すアナログ加算器は、反転増幅器を使用しているので、出力は入力の極性を反転したものとなる。具体的に説明すると、図2に示すアナログ加算器の入力IN1の電圧をV1、入力IN2の電圧をV2とすると、出力電圧Voutは、-Rf(V1/Ri1+V2/Ri2)と表される。このように、入力電圧V1、V2と出力電圧Voutは極性が反転する。ここで、Rfは帰還抵抗、Ri1,Ri2は入力抵抗である。
ADr108、ADs109は、極性が反転した出力電圧Voutを出力してもよいが、アナログ加算器の出力側に図示されない反転増幅器を設けて、出力電圧Voutの極性を入力電圧V1,V2の極性にそろえる構成としてもよい。
図2に示すアナログ加算器において、Rf=Ri1=Ri2とすると、Vout=-(V1+V2)の関係となる。この場合、アナログ加算器の設計が簡単化される利点がある。また、入力抵抗Ri1,Ri2の抵抗値を下げると、オペアンプの入力側の容量に起因して発現するローパスフィルタのカットオフ周波数が高周波となるので、入力信号IN1,IN2の高周波成分まで加算回路で加算演算することができる。例えば、入力抵抗Ri1,Ri2は、50[Ω]とすることができる。
図3は、図2に例示したアナログ加算回路を備えるADr108、およびADs109のそれぞれにおける入力信号IN1,IN2、および出力信号OUTの関係を示している。図3の例では、入力信号IN1は、周波数が30[MHz]の正弦波、入力信号IN2は、周波数が11[MHz]の正弦波となっている。出力信号OUTは、これらの信号を足し合わせた信号である。
このように、ADr108は、第1基準信号Sebと参照信号の第1参照信号Serとを加算した第2参照信号Ser+ebを、ADC110のチャネルCH1に入力する。また、ADs109は、第1基準信号Sebと検出信号の第1検出信号Sesとを加算した第2検出信号Ses+ebを、ADC110のチャネルCH2に入力する。
次に、ADC110の構成について説明する。
ADC110は、3つのチャネルを備え、アナログの入力信号をディジタル信号に変換して出力する。ADC110がチャネルごとに変換して出力するディジタル信号は、信号処理装置111に入力される。
ADC110は、3つのチャネルを備え、アナログの入力信号をディジタル信号に変換して出力する。ADC110がチャネルごとに変換して出力するディジタル信号は、信号処理装置111に入力される。
チャネルCH1(第1AD変換器)に入力されたアナログの第2参照信号Ser+ebは、ディジタルの第3参照信号Sr+bに変換され、後述のフィルタF1,F3に入力される。チャネルCH2(第2AD変換器)に入力された第2検出信号Ses+ebについても、ディジタルの第3検出信号Ss+bに変換され、フィルタF2,F4に入力される。また、チャネルCH3には、光偏向器104の偏向角度を示すアナログ信号である角度信号Sea(以下、「第1角度信号Sea」という。)が入力され、ディジタルの角度信号Sa(以下、「第2角度信号Sa」という。)に変換されて、後述の時間-角度変換部114に入力される。
信号処理装置111は、フィルタF1,F2,F3,F4、スキュー測定部112、測距部113、および時間-角度変換部114を備える。信号処理装置111は、ADC110の各チャネルから出力される信号を入力として、偏向角度θごとの物体105までの距離Langle,nを算出する。
フィルタF1,F2,F3,F4は、第3参照信号Sr+bおよび第3検出信号Ss+bをフィルタリングして、第3参照信号Sr+bおよび第3検出信号Ss+bのそれぞれに含まれる所定の信号を分離して出力する。
フィルタF1,F3(第1フィルタ)は、第3参照信号Sr+bから、参照光に基づく信号Sr(以下、「第4参照信号Sr」という。)と第1基準信号Sebに基づく信号Sbr(以下、「第2基準信号Sbr」という。)とを取り出す。
フィルタF1は、第4参照信号Srの周波数成分を通過させるフィルタであり、入力された第3参照信号Sr+bから、第4参照信号Srを分離して出力する。分離された第4参照信号Srは、測距部113に入力される。
フィルタF3は、ファンクションジェネレータFGbで生成された第1基準信号Sebに関する第2基準信号Sbrの周波数成分を通過させるフィルタであり、入力された第3参照信号Sr+bから第2基準信号Sbrを分離して出力する。分離された第2基準信号Sbrは、スキュー測定部112に入力される。
フィルタF2,F4(第2フィルタ)は、第3検出信号Ss+bから、反射光に基づく信号Ss(以下、「第4検出信号Ss」という。)と第1基準信号Sebに基づく信号Sbs(以下、「第3基準信号Sbs」という。)とを取り出す。
フィルタF2は、第4検出信号Ssの周波数成分を通過させるフィルタであり、入力された第3検出信号Ss+bから、第4検出信号Ssを分離して出力する。分離された第4検出信号Ssは、測距部113に入力される。
フィルタF4は、ファンクションジェネレータFGbで生成された第1基準信号Sebに基づく第3基準信号Sbsの周波数成分を通過させるフィルタであり、入力された第3検出信号Ss+bから第3基準信号Sbsを分離して出力する。分離された第3基準信号Sbsは、スキュー測定部112に入力される。
ここで、フィルタF1,F2,F3,F4の構成およびファンクションジェネレータFGm,FGbのそれぞれで生成される変調信号Sem、第1基準信号Sebについてより詳細に説明する。
光源100から出射された光の強度を変調するための変調信号Sem、およびADr108、ADs109に入力されて第1参照信号Ser、第1検出信号Sesのそれぞれと加算すなわち重畳される第1基準信号Sebは、フィルタF1,F2,F3,F4によって分離することができる信号波形を持つ電気信号である。本実施の形態では、フィルタF1,F2は、変調信号Semを通過させて第1基準信号Sebを阻止する。また、フィルタF3,F4は、第1基準信号Sebを通過させて、変調信号Semを阻止する。
例えば、ファンクションジェネレータFGmが生成する変調信号Sem、およびファンクションジェネレータFGbが生成する第1基準信号Sebとしては、互いに周波数の異なる正弦波を用いることができる。例えば、第1基準信号Sebおよび変調信号Semが何らかの理由で歪むなどして、それぞれの高調波が発生する可能性がある。このような可能性を考慮した場合、各々の信号の周波数は、他方の信号の周波数の高調波の周波数に一致しないことが望ましい。
具体例として、変調信号Semの周波数を30[MHz]、第1基準信号Sebの周波数を11[MHz]とすると、第1基準信号Sebの高調波は11[MHz]の整数倍であり、変調信号Semの周波数(30[MHz])になることはないといえる。
このように、変調信号Semおよび第1基準信号Sebを正弦波信号とする場合には、フィルタF1,F2,F3,F4として周波数フィルタを用いることができる。具体的には、フィルタF1,F2は、変調信号Semの周波数を中心周波数とし、第1基準信号Sebの周波数をカットするフィルタとすることができる。フィルタF3,F4は、第1基準信号Sebの周波数を中心周波数とし、変調信号Semの周波数をカットするフィルタとすることができる。
例えば、[変調信号Semの周波数]>[第1基準信号Sebの周波数]である場合、カットオフが[(変調信号Semの周波数+第1基準信号Sebの周波数)/2]に設定されたハイパスフィルタをフィルタF1,F2に設け、ローパスフィルタをフィルタF3,F4に設けることができる。
また、別の例を挙げると、フィルタF1,F2,F3,F4としてバンドパスフィルタを用いることができる。具体的には、フィルタF1,F2は、変調信号Semの周波数を中心周波数として第1基準信号Sebの周波数およびその整数倍の周波数(第1基準信号Sebの高調波の周波数)の信号を通さないバンドパスフィルタとし、フィルタF3,F4は、第1基準信号Sebの周波数を中心周波数として変調信号Semの周波数およびその整数倍の周波数(変調信号Semの高調波の周波数)の信号を通さないバンドパスフィルタとしてもよい。また、これらのバンドパスフィルタを狭帯域フィルタとすると、ノイズや信号歪(元信号の高調波となって現れる歪等)の除去が可能となり、測距の高精度化に資する。
また、前述の変調信号Semおよび第1基準信号Sebは、互いに直交する信号を用いることができる。なお、正弦波信号の例においても変調信号Semおよび第1基準信号Sebは互いに直交している。直交する信号の具体例としては、Haar変換核、Walsh変換核、Hadamard変換核、直交ウェーブレット核などが挙げられる。
上記の互いに直交する信号中においては、データの数に対応する数の変換核があり、例えば、ディジタル信号に含まれる離散データがN個であれば、N個の核が存在する。変調信号Semおよび第1基準信号Sebに対応して、これらの核の中から2つの核を選択して用いることができる。この場合、フィルタF1,F2,F3,F4は、変調信号Semおよび第1基準信号Sebを分離するフィルタとなる。
次に、スキュー測定部112の機能構成について説明する。
スキュー測定部112は、ADC110の2つのチャネルCH1,CH2間の時間差、すなわちチャネル間のスキューを測定する。より詳細には、スキュー測定部112は、フィルタF3から出力された第2基準信号Sbrのピークの時刻(第3ピークの第3ピーク時刻)を取得するとともに、そのピークに対応する、フィルタF4から出力された第3基準信号Sbsのピークの時刻(第4ピークの第4ピーク時刻)との時刻差(第2時刻差)を求める。なお、第2基準信号Sbrは、チャネルCH1から出力された第3参照信号Sr+bから分離された信号であり、第3基準信号Sbsは、チャネルCH2から出力された第3検出信号Ss+bから分離された信号である。
スキュー測定部112は、ADC110の2つのチャネルCH1,CH2間の時間差、すなわちチャネル間のスキューを測定する。より詳細には、スキュー測定部112は、フィルタF3から出力された第2基準信号Sbrのピークの時刻(第3ピークの第3ピーク時刻)を取得するとともに、そのピークに対応する、フィルタF4から出力された第3基準信号Sbsのピークの時刻(第4ピークの第4ピーク時刻)との時刻差(第2時刻差)を求める。なお、第2基準信号Sbrは、チャネルCH1から出力された第3参照信号Sr+bから分離された信号であり、第3基準信号Sbsは、チャネルCH2から出力された第3検出信号Ss+bから分離された信号である。
スキュー測定部112において、図1に示すような光偏向器104により1次元的に光が偏向する偏光角度θの範囲で、ADC110のチャネルCH1,CH2間のスキューを測定する際には、測距部113は、より細かい角度ごとに物体105までの距離を求めることが考えられる。本実施の形態では、スキュー測定部112は、第2基準信号SbrのピークごとにチャネルCH1,CH2間のスキューを測定することとする。ピーク間に位置する時刻のスキューが必要な場合には、スキュー測定部112がピーク位置において求めたスキューを用いて、後述の補間部130にてスキューを補間し、所望の時刻におけるスキューを求めることとする。
次に、スキュー測定部112の動作について図4を用いて説明する。図4の(a)は、フィルタF4によって分離された第3基準信号Sbsの時間波形を示している。図4の(b)は、フィルタF3によって分離された第2基準信号Sbrの時間波形を示している。図4の例では、ファンクションジェネレータFGbから出力される第1基準信号Sebが正弦波である場合を示している。
スキュー測定部112がスキューを測定するピークの数は、第2基準信号Sbrの光変調の周期をTbとして、光偏向器104のスキャンの周期をTswとすると、約Nbp=Tsw/Tbと表される(図4)。
光偏向器104の偏向し始めの時刻をt=0とし、時刻t=0の方から数えてm個目のピークの時刻をtbmとする。図4の波形に共通する破線に対応する位置が、第2基準信号Sbrのm個目のピークの時刻tbmである。この時刻tbmから±Tb/2の範囲にある第3基準信号Sbsのピーク時刻との差がΔtbmであったとき(図4の(a))、スキュー測定部112は、ピーク時刻の時刻差ΔtbmをチャネルCH1,CH2間のスキューとして求める。
スキュー測定部112は、時刻tbmと、時刻tbmでのスキューを示す時刻差Δtbmとが対応付けられたデータを、図1に示すように、スキュー信号Tsk,mとして出力する。
次に、測距部113の機能構成について説明する。
測距部113は、図6に示すように、補間部130および補正部131を備える。
測距部113は、フィルタF1,F2によって分離された第4参照信号Srおよび第4検出信号Ss、並びにスキュー測定部112によって求められたスキュー信号Tsk,mを入力として、測距装置1から物体105までの距離を求める。より詳細には、測距部113は、チャネルCH1,CH2間のスキュー、すなわち、第4参照信号Srと第4検出信号Ssとのタイミング差を補正し、参照信号に基づく第4参照信号Srのピークの時刻(第1ピークの第1ピーク時刻)における測距装置1から物体105までの距離を求める。
測距部113は、図6に示すように、補間部130および補正部131を備える。
測距部113は、フィルタF1,F2によって分離された第4参照信号Srおよび第4検出信号Ss、並びにスキュー測定部112によって求められたスキュー信号Tsk,mを入力として、測距装置1から物体105までの距離を求める。より詳細には、測距部113は、チャネルCH1,CH2間のスキュー、すなわち、第4参照信号Srと第4検出信号Ssとのタイミング差を補正し、参照信号に基づく第4参照信号Srのピークの時刻(第1ピークの第1ピーク時刻)における測距装置1から物体105までの距離を求める。
測距部113が、光偏向器104によって1次元的に光を偏向する角度の範囲で測距を行う場合には、より細かい角度θごとに測距を行うことが考えられる。本実施の形態では、参照信号に基づく第4参照信号Srのピークごとに物体105までの距離を算出することとする。ピーク間の物体105までの距離が必要な場合には、算出されたピーク位置の距離を使って補間して、より詳細な距離を求めることとする。
第4参照信号Srのピーク数については、光強度変調器101が光変調した光源100の光の光変調の周期をTmとし、光偏向器104のスキャンの周期を前述したようにTswとすると、ピーク数は、約Np=Tsw/Tmと表される。光偏向き104の偏向し始めの時刻t=0とし、時刻t=0の方から数えてn個目のピークの時刻をtnとする。図5の波形に共通に示す破線に対応する位置が、第4参照信号Srのn個目のピークの時刻tnである。この時刻tnから±Tm/2の範囲にある第4検出信号Ssのピークのピーク時刻(第2ピークの第2ピーク時刻)との差(第1時刻差)がΔtnであるとする(図5の(a))。
この時刻差Δtnには、ADC110のチャネル間スキューが含まれている。そのため、測距部113は、時刻差Δtnからチャネル間のスキューを減算して補正する。
補間部130は、スキュー測定部112によって測定されたスキュー信号Tsk,mを補間して補間曲線を生成する。より詳細には、補間部130は、スキュー信号Tsk,mに含まれる、時刻tbmでのスキューを示す時刻差Δtbmの離散データを補間する。
補正部131は、補間部130によって生成されたスキュー信号Tsk,mの補間曲線から、時刻tnでのスキューを示す時刻差Δtb(tn)を抽出する。また、補正部131は、次式(1)により、時刻tnでの第4参照信号Srと第4検出信号Ssとの時刻差Δtnからスキューを示す時刻差Δtb(tn)を減算して時刻差Δtnを補正し、補正後の時刻差Δtcor,nを求める。
Δtcor,n=Δtn-Δtb(tn) ・・・(1)
Δtcor,n=Δtn-Δtb(tn) ・・・(1)
ここで、図7を参照して、測距部113、補間部130、および補正部131の動作を説明する。図7の(a)は、測距部113が算出した、第4参照信号Srのピーク時刻tnを基準とした第4検出信号Ssのピーク時刻との時刻差Δtnと時間との関係を示している。図7の(b)は、スキュー測定部112によって求められたスキューを示す時刻差Δtbmおよび補間部130によってスキューが補間されて生成された補間曲線を示している。図7の(c)は、補正部131によって補正された時刻差Δtcor,nと時間との関係を示している。
前述したように、変調信号Semの周波数は、第1基準信号Sebの周波数よりも高い周波数となるように設定されており、第4参照信号Srの周期Tm(図5)と、第2基準信号Sbrの周期Tb(図4)とは互いに異なる。図7に示すように、一般的には、測距部113が時刻差Δtnを求めた際の時刻tnと、スキュー測定部112が時刻差ΔTbmを求めた際の時刻tbmとは互いにずれていると考えられる。
図7の(b)に示すように、補間部130は、スキュー測定部112が求めた、スキューを示す離散的なデータの時刻差Δtbmを補間して、補間曲線を生成する。また、図7の(b)の白抜きのプロット(マーカー)に示すように、補正部131は、補間部130が生成した補間曲線に基づいて、時刻tnにおけるスキューを示す時刻差Δtb(tn)を抽出する。
さらに、図7の(c)に示すように、補正部131は、上述した式(1)を用いて、測距部113が求めた補正前の時刻差Δtn(図7の(a))から補間曲線から抽出した時刻tnでの時刻差Δtb(tn)を減算して、時刻tnでの補正後の時刻差Δtcor、nを求める。
測距部113は、補正部131によって求められた補正後の時刻差Δtcor、nから、時刻tnで測定されるカプラ102から物体105までの距離Lnを次式(2)により求める。ただしcは光速である。
Ln=cΔtcor、n/2 ・・・(2)
Ln=cΔtcor、n/2 ・・・(2)
時間-角度変換部114は、第4参照信号Srのピークが出現する時刻、つまり、補正された時刻差Δtcor,nから算出された距離信号Lnに対応する時刻を偏向角に置き換える。
例えば、図8の(a)および(b)に示すように、時刻tnでのディジタルの角度信号である第2角度信号Saの強度がξnであるとする。時間-角度変換部114は、光偏向器104の偏向角度θに基づく第2角度信号Saの強度ξnを、予め求められた、図8の(c)に示す変換曲線θ(ξ)に代入することにより、強度ξnに対応する偏向角θn=θ(ξn)を得る。そして、時間-角度変換部114は、偏向角θnと距離信号Lnとの対応付けを行った偏向角-距離データ(角度-距離信号)Langle,nを出力する。
図8の(c)に示す変換曲線θ(ξ)は、角度信号に基づく第2角度信号Saの強度と偏向角度との関係を示している。時間-角度変換部114は、第4参照信号Srに含まれる全てのピークの時刻における偏向角を求めて、各偏向角に対応する偏向角-距離データを出力する。
なお、時間-角度変換部114は、第4参照信号Srのピーク間に含まれる偏向角度(時刻)における偏向角と距離信号Lnとが対応付けられた偏向角-距離データを補間により求めることができる。時間-角度変換部114は、第4参照信号Srのピークとピークとの間に含まれる、より詳細な偏向角(時刻)に対する距離のデータを補間後の偏向角-距離データL’angle,nとして出力してもよい。これにより、時間的(角度的)により密な距離を示すデータを求めることができる。
[信号処理装置のハードウェア構成]
次に、上述した機能を有する信号処理装置111のハードウェア構成の一例について、図9のブロック図を参照して説明する。
次に、上述した機能を有する信号処理装置111のハードウェア構成の一例について、図9のブロック図を参照して説明する。
図9に示すように、信号処理装置111は、例えば、バス11を介して接続されるプロセッサ12、主記憶装置13、通信I/F14、補助記憶装置15、入出力I/O16を備えるコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。信号処理装置111は、例えば、表示装置17がバス11を介して接続され、表示画面に時間-角度変換部114から出力される偏向角-距離データLangle,nや、時間-角度変換部114から出力される補間後の偏向角-距離データL’angle,nを表示してもよい。また、例えば、ADC110、ファンクションジェネレータFGm,FGb、ADr108,ADs109や測距装置1の光学系OSが、バス11や入出力I/O16を介して接続されている。
主記憶装置13は、例えば、SRAM、DRAM、およびROMなどの半導体メモリによって実現される。主記憶装置13には、プロセッサ12が各種制御や演算を行うためのプログラムが予め格納されている。プロセッサ12と主記憶装置13とによって、図1に示したフィルタF1,F2,F3,F4、スキュー測定部112、測距部113、時間-角度変換部114を含む信号処理装置111の各機能が実現される。また、プロセッサ12と主記憶装置13とによって、光学系OSやADC110などの設定や制御を行うことができる。
通信I/F14は、通信ネットワークNWを介して各種外部電子機器との通信を行うためのインターフェース回路である。信号処理装置111は、通信I/F14を介して、例えば外部に偏向角-距離データLangle,nなどを送出してもよい。
通信I/F14としては、例えば、LTE、3G、5G、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの無線データ通信規格に対応したインターフェースおよびアンテナが用いられる。通信ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット、専用回線、無線基地局、プロバイダなどを含む。
補助記憶装置15は、読み書き可能な記憶媒体と、その記憶媒体に対してプログラムやデータなどの各種情報を読み書きするための駆動装置とで構成されている。補助記憶装置15には、記憶媒体としてハードディスクやフラッシュメモリなどの半導体メモリを使用することができる。
補助記憶装置15は、信号処理装置111がフィルタリング処理、スキュー測定処理、測距処理、補正処理、変換処理、および補間処理を行うためのプログラムを格納するプログラム格納領域を有する。さらには、補助記憶装置15は、例えば、上述したデータやプログラムやなどをバックアップするためのバックアップ領域などを有していてもよい。
補助記憶装置15は、時間-角度変換部114が変換処理に用いる変換曲線を記憶している。また、補助記憶装置15は、第4参照信号Srの周期Tmを記憶している。また、補助記憶装置15は、第2基準信号Sbrの周期Tbを記憶している。
入出力I/O16は、表示装置17など外部機器からの信号を入力したり、外部機器へ信号を出力したりするI/O端子により構成される。
なお、信号処理装置111は、1つのコンピュータによって実現される場合だけでなく、互いに通信ネットワークNWで接続された複数のコンピュータによって分散されていてもよい。また、プロセッサ12は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されていてもよい。
[測距装置の動作]
次に、上述した構成を有する測距装置1の全体の動作について、図10のフローチャートを参照して説明する。
次に、上述した構成を有する測距装置1の全体の動作について、図10のフローチャートを参照して説明する。
まず、光源100から、光を出射する(ステップS1)。光源100には、例えばCW光源が用いられる。次に、光強度変調器101は、光源100から出射された光の光強度に、正弦波などで周期的な変調を与える(ステップS2)。具体的には、光強度変調器101は、ファンクションジェネレータFGmによって生成された、例えば、正弦波の変調信号Semを用いて、正弦波で光源100の光の光強度を変調し、変調した光を出力する。
光源100から出射され、光強度変調器101で周期的に強度変調された光は、カプラ102によって参照光路側と物体光路側とに分けられる。参照光路側の参照光は、PDr106で受光され、光電変換されて第1参照信号Serが出力される(ステップS3)。一方、物体光路側の光は、サーキュレータ103を介して、光偏向器104によって偏向され、スキャン周期をTswとして、物体105の周辺の空間が光でスキャンされる(ステップS4)。
次に、光偏向器104によって偏向された光が空間内を1回スキャンすると、物体105に光が照射され、反射光が光偏向器104およびサーキュレータ103を介して、PDs107で受光されて、光電変換により電気信号に変換され、第1検出信号Sesが出力される(ステップS5)。
次に、ADr108およびADs109のそれぞれは、2つの入力信号を加算して、加算された信号を出力する(ステップS6)。より詳細には、ADr108は、ファンクションジェネレータFGbで生成された第1基準信号Sebと、PDr106から出力された第1参照信号Serとを加算して、第2参照信号Ser+ebを出力する。一方、ADs109は、ファンクションジェネレータFGbで生成された第1基準信号Sebと、PDs107から出力された第1検出信号Sesとを加算して、第2検出信号Ses+ebを出力する。
その後、ADC110は、チャネルCH1、CH2、およびCH3に入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換する(ステップS7)。より詳細には、ADC110のチャネルCH1には、アナログの第2参照信号Ser+ebが入力され、ディジタルの第3参照信号Sr+bに変換される。ADC110のチャネルCH2には、物体105からの反射光に基づくアナログの第2検出信号Ses+ebが入力され、ディジタルの第3検出信号Ss+bに変換される。また、ADC110のチャネルCH3には偏向角度θを示すアナログの第1角度信号Seaが入力され、ディジタルの第2角度信号Saに変換される。
次に、信号処理装置111において、フィルタF1,F2,F3,F4のそれぞれは、ADC110から入力された信号をフィルタリングする(ステップS8)。具体的には、フィルタF1,F3には、チャネルCH1から第3参照信号Sr+bが入力される。フィルタF1は、第3参照信号Sr+bから第4参照信号Srを分離して取り出す。フィルタF3は、第3参照信号Sr+bから第2基準信号Sbrを分離して取り出す。
一方、フィルタF2,F4には、チャネルCH2から第3検出信号Ss+bが入力される。フィルタF2は、第3検出信号Ss+bから第4検出信号Ssを分離して取り出す。フィルタF4は、第3検出信号Ss+bから第3基準信号Sbsを分離して取り出す。
フィルタF1,F2によって分離された第4参照信号Srおよび第4検出信号Ssは、測距部113に入力される。フィルタF3,F4によって分離された第2基準信号Sbrおよび第3基準信号Sbsは、スキュー測定部112に入力される。
次に、スキュー測定部112は、ADC110のチャネルCH1,CH2間のスキューを測定してスキュー信号Tsk,mを出力する(ステップS9)。より詳細には、スキュー測定部112は、第2基準信号Sbrの周期Tbに基づいて、各ピークの時刻tbmから±Tb/2の範囲にある第3基準信号Sbsのピーク時刻との時刻差Δtbmをスキューとして求める(図4)。スキュー測定部112は、時刻tbmと時刻差Δtbmとが関連付けられたスキュー信号Tsk,mを出力する。
次に、測距部113は、スキュー測定部112から入力されたチャネルCH1,CH2間のスキュー信号Tsk,mに基づいて、チャネルCH1,CH2間のスキューを補正する(ステップS10)。
より詳細には、測距部113は、第4参照信号Srの周期Tmを用いて、各ピークの時刻tnから±Tm/2の範囲にある第4検出信号Ssのピーク時刻との時刻差Δtnを求める(図5)。第4参照信号Srは、チャネルCH1でAD変換された信号をフィルタF1を用いてフィルタリングした信号である。第4検出信号Ssは、チャネルCH2でAD変換された信号をフィルタF2を用いてフィルタリングした信号である。
ステップS10において、補間部130は、第2基準信号Sbrのピーク時刻tbmごとに求められた、チャネルCH1,CH2間のスキュー信号Tsk,mについての補間を行い、補間曲線を生成する。
また、ステップS10において、補正部131は、補間曲線から、時刻tnでのスキューを示す時刻差Δtb(tn)を抽出し、上述した式(1)により時刻差Δtnからスキューを示す時刻差Δtb(tn)を減算して時刻差Δtnを補正し、補正後の時刻差Δtcor,nを出力する。
その後、測距部113は、補正部131によってチャネルCH1,CH2間のスキューが補正された時刻差Δtb(tn)を用いて、上述の式(2)から、距離信号Lnを算出する(ステップS11)。
次に、時間-角度変換部114は、ステップS11で求められた距離信号Lnに対応する時刻tnを角度に変換する(ステップS12)。より詳細には、時間-角度変換部114は、測距部113で求めた第4参照信号Srのピーク時刻、つまり、チャネル間のスキューを補正した後に算出された距離信号Lnに対応する時刻tnを偏向角θnに置き換え、偏向角θnと距離信号Lnが対応付けられた偏向角-距離データLangle,nを出力する。
具体的には、時間-角度変換部114は、予め補助記憶装置15などに記憶されている図8の(c)に示す変換曲線θ(ξ)を読み出して、時刻tnでの第2角度信号Saの強度ξnを変換曲線θ(ξ)に代入し時刻tnを偏向角θn=θ(ξn)に変換する。さらに、時間-角度変換部114は、偏向角θnと距離信号Lnが対応付けられた偏向角-距離データLangle,nを求める。
その後、時間-角度変換部114は、偏向角-距離データLangle,nを出力する(ステップS13)。例えば、表示装置17は、時間-角度変換部114から出力された偏向角-距離データLangle,nを表示画面に表示することができる。また、表示装置17は、スキュー信号Tsk,mやその他のデータを表示画面に表示してもよい。
なお、時間-角度変換部114は、ステップS12で求めた偏向角-距離データLangle,nから、第4参照信号Srのピーク間の値を補間してもよい。
次に、本実施の形態に係る信号処理装置111によって処理された、ある1点の時刻(偏向角)におけるチャネル間のスキューの補正前および補正後の物体105までの距離を図11から図14に示す。
図11および図12は、補正前の測定対象の物体105までの距離を示している。図13および図14は、補正後の物体105までの距離を示している。また、図11および図13は、100回の測定を繰り返した場合の各回での物体105までの距離の測定値のプロットである。図12および図14は、距離の測定値をヒストグラムで示している。
図11および図12は、補正前の測定対象の物体105までの距離を示している。図13および図14は、補正後の物体105までの距離を示している。また、図11および図13は、100回の測定を繰り返した場合の各回での物体105までの距離の測定値のプロットである。図12および図14は、距離の測定値をヒストグラムで示している。
図11から図14に示す測定例では、ADC110において、第1検出信号Sesが入力されたチャネルCH2と、第1参照信号Serが入力されたチャネルCH1とのスキューの時間変動が2極化しており、その差は、約0.5[ns]であった。そのため、図11および図12に示すように、補正前と補正後の距離の差は、約7.5[cm](=3×108×0.5×10-9/2[m])であった。
本実施の形態に係る信号処理装置111により、チャネルCH1,CH2間のスキューの測定および補正処理を行うことによって、図13および図14に示すように、距離の値における2極化がなくなる効果が得られた。なお、標準偏差については、補正前では3.6952[cm]であったものが、補正後は0.8488[cm]となり、補正前の23%程度まで小さくなった。このように、補正処理を行うことで距離の測定精度を改善することができた。
図15および図16は、本実施の形態に係る測距装置1によって、物体105が載置された移動ステージを0[cm]~55[cm]までずらしながら、距離を測定した結果である。物体105が載置された移動ステージの位置ごとに100回の測定を行い、補正前および補正後の距離の平均値と標準偏差をそれぞれ求めた。
図15に示す補正前の標準偏差は、3.8[cm]程度であったが、図16に示す補正後の標準偏差は1[cm]程度まで小さくなっている。このことから、本実施の形態に係る信号処理装置111による補正処理を行うことによって、距離測定の精度が向上していることがわかる。
以上説明したように、本実施の形態に係る測距装置1によれば、スキュー測定部112によって測定されたスキュー信号Tsk,mを用いて、ADC110のチャネルCH1から出力される第4参照信号Srの波形に含まれるピーク時刻と、チャネルCH2から出力される第4検出信号Ssの波形に含まれる対応するピーク時刻との時刻差を補正する。測距装置1は、チャネル間のスキューが補正された時刻差に基づいて、第4参照信号Srのピーク時刻ごとに物体105までの距離を算出する。そのため、ADCのチャネル間のスキューが信号の取得ごとに変動する場合であっても、物体までの距離を高精度に測定することができる。
以上、本発明の測距装置における実施の形態について説明したが、本発明は説明した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に記載した発明の範囲において当業者が想定し得る各種の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施の形態では、信号処理装置111において、時間-角度変換部114が距離信号Lnを偏向角-距離データLangle,nに変換した後に、時間-角度変換部114が補間処理を行う例について説明した。しかし、例えば測距部113が、時間-角度変換部114による変換処理の前に補間処理を実行してもよい。この場合、例えば、測距部113は、距離信号Lnに基づいて第4参照信号Srのピーク間の補間を行い、その後、時刻を偏向角に変換することになる。
補間処理を時間-角度変換処理の前に行う場合において、変換処理で必要となる時刻情報として、測距部113で取得された第4参照信号Srのピーク時刻をそのまま使用できない。なぜなら、測距部113で得られた距離の数(測距部113で得られた時刻の数と等しい)は補間処理を経て出力される距離の数と異なるからである。そこで、補間処理において、測距部113で取得した第4参照信号Srのピーク時刻を用いて、補間で得た距離情報に対応する時刻を算出し、その時刻を用いて時間-角度変換部114が時刻を角度に変換する。
また、これまで説明した実施の形態では、光強度変調器101から出力される光は、正弦波など周期的に強度変調された光である場合について説明した。しかし、光源100を波長掃引光源とし、光源100と光強度変調器101とによって周期的な強度変調機能を備えた波長掃引光源を実現してもよい。この場合、光偏向器104には、透過型や反射型の回折格子や屈折率分散の大きい材料からなるプリズムなどの受動光学素子が用いられる。なお、周期的な強度変調機能を備えた波長掃引光源を採用した場合であっても、光偏向器104として公知の空間光変調器を用いることができる。
この場合、回折格子の格子定数などは、光源100の光の波長や、測定が要求される最大距離、および測距装置1の大きさなどに応じて、所望の角度の範囲で偏向するように設計することができる。また、プリズムの屈折率やその波長分散についても、同様に所望の角度で偏向するように、屈折率やその波長分散を持つ材料を選ぶことができる。また、光源100および光強度変調器101において、周期的な強度変調機能を備えた波長掃引光源が採用される場合、偏向角度を示す第1角度信号Seaは、光強度変調器101から出力される光の波長に連動する構成となる。
光源100および光強度変調器101を、周期的な強度変調機能を備えた波長掃引光源として設け、光偏向器104を回折格子やプリズム等の受動光学素子とする利点としては、光偏向器104に機械動作を必要とする部品が必要なくなることが挙げられる。このことから、例えば、測距装置1が備える光学系を光偏向器104とそれ以外とに分離して、光偏向器104をプローブ、それ以外を本体として、プローブと本体を光ファイバで接続した場合、プローブを小型化できる。そのため、測距装置1を狭い場所等にも設置したり、あるいは、人が簡単にプローブ部を持ち運ぶなどして、測定ができる。また、プローブには機械動作をする部品がないため、プローブの振動に対する耐性が高くなる。そのため、本体とプローブを離して、本体を振動の緩慢な場所に退避することにより、振動の激しい環境においても正確に測定ができる。
1…測距装置、100…光源、101…光強度変調器、102…カプラ、103…サーキュレータ、104…光偏向器、105…物体、106…フォトディテクタPDr、107…フォトディテクタPDs、108…加算器ADr、109…加算器ADs、110…ADC、111…信号処理装置、F1,F2,F3,F4…フィルタ、112…スキュー測定部、113…測距部、114…時間-角度変換部、FGm,FGb…ファンクションジェネレータ、11…バス、12…プロセッサ、13…主記憶装置、14…通信I/F、15…補助記憶装置、16…入出力I/O、17…表示装置。
Claims (7)
- 周期的に強度変調された光の一部を参照光として受光し、第1参照信号に変換する第1フォトディテクタと、
前記光が測定対象の物体の表面を反射した反射光を検出し、第1検出信号に変換する第2フォトディテクタと、
前記第1参照信号と前記第1検出信号とのそれぞれに第1基準信号を加算して、第2参照信号と第2検出信号とをそれぞれ出力する加算器と、
前記第2参照信号をAD変換してディジタルの第3参照信号を出力する第1AD変換器と、
前記第2検出信号をAD変換してディジタルの第3検出信号を出力する第2AD変換器と
を有するアナログ-ディジタル変換器と、
前記第3参照信号から、前記参照光に基づく第4参照信号と前記第1基準信号に基づく第2基準信号とを取り出す第1フィルタと、
前記第3検出信号から、前記反射光に基づく第4検出信号と前記第1基準信号に基づく第3基準信号とを取り出す第2フィルタと、
前記第2基準信号と前記第3基準信号とに基づいて、前記第1AD変換器と前記第2AD変換器との間のタイミング差であるスキューを測定し、測定された前記スキューを示すスキュー信号を出力するスキュー測定部と、
前記スキュー信号を用いて、前記第4参照信号の波形に含まれる第1ピークの第1ピーク時刻と、前記第4検出信号の波形に含まれる、前記第1ピークに対応する第2ピークの第2ピーク時刻との第1時刻差を補正する補正部と、
補正された前記第1時刻差に基づいて、前記第1ピーク時刻ごとの前記物体までの距離を求め、距離信号を出力する測距部と
を備える測距装置。 - 請求項1に記載の測距装置において、
前記スキュー測定部は、前記第2基準信号の波形に含まれる第3ピークの第3ピーク時刻と、前記第3基準信号の波形に含まれる前記第3ピークに対応する第4ピークの第4ピーク時刻との第2時刻差を前記スキューとして測定し、前記第3ピーク時刻ごとの前記スキューを前記スキュー信号として出力する
ことを特徴とする測距装置。 - 請求項1または請求項2に記載の測距装置において、
前記スキュー測定部から出力される離散的な前記スキュー信号を補間して補間曲線を生成する補間部をさらに備え、
前記補正部は、前記補間部によって生成された前記補間曲線から、前記第1ピーク時刻でのスキューを抽出し、前記第1時刻差から抽出された前記第1ピーク時刻でのスキューを引いて、前記第1時刻差を補正する
ことを特徴とする測距装置。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の測距装置において、
光源からの光を周期的に強度変調して出力する光強度変調器と、
前記光強度変調器からの光を2つに分岐する光スプリッタと、
前記光スプリッタの一方から出力された光を偏向して前記物体に向けて出射する光偏向器と
をさらに備え、
前記第1フォトディテクタは、前記光スプリッタの他方から出力された前記参照光を受光し、前記第1参照信号に変換し、
前記第2フォトディテクタは、前記光偏向器から出射された出射光が前記物体の表面で反射した前記反射光を検出し、前記第1検出信号に変換する
ことを特徴とする測距装置。 - 請求項4に記載の測距装置において、
前記第1ピーク時刻ごとに求めた前記距離信号の前記第1ピーク時刻を前記光偏向器による偏向角度の情報に変換し、偏向角度と距離とが対応付けられた角度-距離信号を出力する時間-角度変換部をさらに備える
ことを特徴とする測距装置。 - 請求項1から5のいずれか1項に記載の測距装置において、
前記光を周期的に強度変調する変調信号の周波数は、前記第1基準信号の周波数とは異なる
ことを特徴とする測距装置。 - 請求項1から6のいずれか1項に記載の測距装置において、
前記測距部は、前記第1ピーク時刻ごとに求めた前記物体までの距離を示す前記距離信号に基づいて、離散的な前記距離信号の補間を行う
ことを特徴とする測距装置。
Applications Claiming Priority (1)
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