JP7200394B2 - フォトンアップコンバージョンフィルム、積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、フォトンアップコンバージョンフィルム、および、積層体に関する。
低エネルギーの光を高エネルギーの光に変換するフォトンアップコンバージョン(以下、単に「アップコンバージョン」ともいう。)現象は、一般には観測されない特殊な現象である。
特許文献1においては、アクセプター、ドナー、および、ポリビニルアルコール系樹脂を含む延伸フィルムが、発光効率の高いフォトンアップコンバージョンフィルムとして機能することが開示されている。
特許第6429158号
一方で、近年、各種デバイスへの応用の点から、発光部材の発光効率のより一層の向上が求められている。
本発明者らが、特許文献1のフォトンアップコンバージョンフィルムの発光効率について検討を行ったところ、昨今の要求レベルを考慮すると、更なる改良が必要であった。
本発明は、上記実情を鑑みて、発光効率が高いフォトンアップコンバージョンフィルムを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記フォトンアップコンバージョンフィルムを含む積層体を提供することも課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
(1) アクセプターと、ドナーと、マトリックスとを含み、
マトリックスが、液晶化合物が配向した状態で固定化してなるマトリックスである、フォトンアップコンバージョンフィルム。
(2) 液晶化合物が配向した状態が、液晶化合物が一軸配向している状態である、(1)に記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
(3) 液晶化合物が配向した状態が、ホモジニアス配向である、(1)または(2)に記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
(4) 液晶化合物が、円盤状液晶化合物を含む、(1)~(3)のいずれかに記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
(5) アクセプターが、縮合芳香族環構造を有する、(1)~(4)のいずれかに記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
(6) アクセプターが、アントラセン構造を有する、(1)~(5)のいずれかに記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
(7) (1)~(6)のいずれかに記載のフォトンアップコンバージョンフィルムと、
フォトンアップコンバージョンフィルムの少なくとも一方の主面上に配置された、酸素透過度1000cc/m・day・atm以下の酸素バリア層と、を有する積層体。
(8) (1)~(6)のいずれかに記載のフォトンアップコンバージョンフィルムと、
フォトンアップコンバージョンフィルムの両主面上に配置された、酸素透過度1000cc/m・day・atm以下の酸素バリア層と、を有する積層体。
本発明によれば、発光効率が高いフォトンアップコンバージョンフィルムを提供できる。
また、本発明によれば、上記フォトンアップコンバージョンフィルムを含む積層体を提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
本発明のフォトンアップコンバージョンフィルム(以下、単に「UCフィルム」ともいう。)の特徴点としては、液晶化合物が配向した状態で固定化してなるマトリックスを用いる点が挙げられる。
液晶化合物が配向した状態で固定化してなるマトリックスを使用することにより、UCフィルム中に含まれるアクセプター同士、並びに、アクセプターおよびドナーがより近接して存在しやすくなるため、発光効率がより向上したものと推測される。
本発明のUCフィルムは、アクセプターと、ドナーと、マトリックスとを含み、マトリックスが、液晶化合物が配向した状態で固定化してなるマトリックスである。つまり、本発明のUCフィルムは、マトリックスと、マトリックス中に分散したアクセプターおよびドナーとを含む。
なお、フォトンアップコンバージョンとは、低いエネルギーの光(長波長光)を高いエネルギーの光(短波長光)に変換する機構である。フォトンアップコンバージョンは、アクセプターとドナーとの間のエネルギー移動によって生じる。より具体的には、まず、光を吸収して励起一重項状態となったドナーは、系間交差を経て励起三重項状態となる。この励起三重項状態となったドナーからアクセプターに三重項エネルギーが移動(三重項-三重項エネルギー移動)し、これにより生じた励起三重項状態にある2つのアクセプターが衝突して三重項-三重項消滅することにより、2分子(2つのアクセプター)のうち1分子が励起三重項状態よりも高い励起一重項状態となり、アップコンバージョン発光が生じる。本発明は、上記フォトンアップコンバージョンが生じるドナーとアクセプターとの組み合わせが用いられる。
以下では、まず、UCフィルムに含まれる材料について詳述し、その後、UCフィルムの製造方法について詳述する。
<アクセプター>
アクセプター(アクセプター化合物)は、上記機構から明らかなように、ドナーから三重項-三重項エネルギー移動を受け、励起三重項状態を生成するとともに、励起三重項状態のアクセプター同士が衝突することで、三重項-三重項消滅を起こし、より高いエネルギーレベルの励起一重項を生成するものである。つまり、アクセプターは、ドナーからの三重項エネルギー移動を受けた後に励起一重項状態となり発光体として機能する化合物である。
アクセプターは、上記フォトンアップコンバージョンを生じえる化合物(発光体)であればよく、特に制限されない。なかでも、アクセプターは、縮合芳香族環構造を有することが好ましい。つまり、アクセプターは、部分構造として、縮合芳香族環構造を有することが好ましい。縮合芳香族環構造は平面性の高い構造であるため、アクセプターが縮合芳香族環構造を有すると、UCフィルム中でアクセプター内の縮合芳香族環構造同士が対向しやすくなり、結果として発光効率がより向上すると推測される。
縮合芳香族環構造とは、単環の芳香族環が複数縮合して得られる構造である。
単環の芳香族環としては、単環の芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環)、および、単環の芳香族複素環(例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環およびイミダゾール環)が挙げられる。
縮合芳香族環構造に含まれる環の数(単環の芳香族環の数)は特に制限されないが、2~6が好ましく、3~5がより好ましい。
縮合芳香族環構造としては、例えば、ナフタレン構造、アントラセン構造、ピレン構造、ペリレン構造、および、テトラセン構造が挙げられ、UCフィルムの発光効率がより優れる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、アントラセン構造が好ましい。
アクセプターとしては、本発明の効果がより優れる点で、式(X)で表される化合物が好ましい。
式(X) Ar-(R)
Arは、縮合芳香族環構造を表す。縮合芳香族環構造は、上述した通りである。
Rは、置換基を表す。置換基は特に制限されず、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族ヘテロ環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(例えば、ヘテロアリール基)、シリル基、およびこれらを組み合わせた基などが挙げられる。なお、上記置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
置換基としては、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいヘテロアリール基が好ましい。
mは、0以上の整数を表す。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、mは1~10の整数が好ましく、2~5の整数がより好ましく、2または3がさらに好ましい。
アクセプターとしては、式(1)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0007200394000001
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を表す。
置換基としては、上記で例示した基が挙げられる。なかでも、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~8の分岐を有してもよいアルキル鎖を有するアミノ基、炭素数1~12の分岐を有してもよいアルキル基、炭素数1~12の分岐を有してもよいアルコキシ基、式(2)で表されるエチレンオキシド鎖、式(3)で表されるエチレンオキシド鎖、または、式(4)で表されるアンモニウムイオンを表す。
Figure 0007200394000002
式(2)において、Rは炭素数1~3のアルキル基を表し、nは1~4の整数を表す。
Figure 0007200394000003
式(3)において、R10およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基を表し、mおよびlは、それぞれ独立して、1~4の整数を表す。
Figure 0007200394000004
式(4)において、oは1~8の整数を表し、R12~R15は、それぞれ独立して、炭素数1~6の分岐を有してもよいアルキル基を表す。
<ドナー>
ドナー(ドナー化合物)は、上記機構から明らかなように、入射光を吸収し、励起一重項状態からの系間交差により励起三重項状態となるとともに、かつ、アクセプターに三重項-三重項エネルギー移動を生じさせるものである。つまり、ドナーとは、光を吸収して励起三重項状態となり増感剤として機能する化合物である。
ドナーとしては、上記フォトンアップコンバージョンを生じえる化合物(増感剤)であればよく、特に制限されない。例えば、ドナーは、ポルフィリン構造、フタロシアニン構造、または、フラーレン構造を有するものが好ましい。また、上記構造は、その内部に、Pt、Pd、Zn、Ru、Re、Ir、Os、Cu、Ni、Co、Cd、Au、Ag、Sn、Sb、Pb、P、および、Asからなる群から選択される金属原子を有していてもよい。
ドナーとしては、有機金属錯体も好ましい。有機金属錯体を構成する金属は特に制限されないが、例えば、Li、Mg、Al、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Pd、Ag、Re、Os、Ir、Pt、および、Pbが挙げられ、PtまたはPdが好ましい。有機金属錯体の具体例としては、ポルフィリンまたはその置換体の金属錯体、および、フタロシアニンまたはその置換体の金属錯体が挙げられる。
ドナーとしては、式(5)で表される化合物がより好ましい。
Figure 0007200394000005
式(5)において、R16~R23は、それぞれ独立して、水素原子、または、置換基を表す。
置換基としては、上記で例示した基が挙げられる。なかでも、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~8の分岐を有してもよいアルキル鎖を有するアミノ基、炭素数1~12の分岐を有してもよいアルキル基、炭素数1~12の分岐を有してもよいアルコキシ基、または、式(6)で表されるエチレンオキシド鎖が好ましい。
Figure 0007200394000006
式(6)において、R24は炭素数1~3のアルキル基を表し、pは1~4の整数を表す。
Mは、水素原子、白金原子、パラジウム原子、亜鉛原子、または、銅原子を表す。
Ar~Arは、それぞれ独立して、水素原子、式(7)で表される置換基、式(8)で表される置換基、式(9)で表される置換基、または、式(10)で表されるアンモニウムイオンを表す。
Figure 0007200394000007
Figure 0007200394000008
Figure 0007200394000009
式(9)において、R25は炭素数1~3のアルキル基を表し、qは1~4の整数を表す。
Figure 0007200394000010
式(10)において、rは1~8の整数を表し、R26~R29は、それぞれ独立して、炭素数1~6の分岐を有してもよいアルキル基を表す。
<マトリックス>
マトリックスは、上述した、アクセプターおよびドナーを固定化する機能を有する。つまり、ドナーおよびアクセプターはマトリックス内部に分散して配置される。
マトリックスは、液晶化合物が配向した状態で固定化してなるマトリックスである。つまり、液晶化合物を配向させて配向状態として、その配向状態を固定化することにより形成されるマトリックスである。
以下では、まず、液晶化合物について詳述する。
液晶化合物の種類は、特に制限されない。一般的に、液晶化合物はその形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(ディスコティック液晶化合物)とに分類できる。さらに、液晶化合物は、低分子タイプと高分子タイプとの分類できる。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井正男著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできるが、棒状液晶化合物またはディスコティック液晶化合物を用いるのが好ましく、棒状液晶化合物を用いるのがより好ましい。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上のディスコティック液晶化合物、または、棒状液晶化合物とディスコティック液晶化合物との混合物を用いてもよい。
なお、棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1、および、特開2005-289980号公報の段落0026~0098に記載の液晶化合物が挙げられる。
ディスコティック液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落0020~0067、および、特開2010-244038号公報の段落0013~0108に記載の液晶化合物が挙げられる。
液晶化合物は、重合性基を有することが好ましい。つまり、液晶化合物は、重合性液晶化合物であることが好ましい。液晶化合物が重合性基を有する場合、後述する硬化処理によって、液晶化合物の配向状態を容易に固定化できる。
液晶化合物が有する重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基がより好ましく、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、または、アリル基がさらに好ましい。
液晶化合物が配向した状態(配向状態)は特に制限されず、公知の配向状態が挙げられる。配向状態としては、例えば、ホモジニアス配向、および、ホメオトロピック配向が挙げられる。より具体的には、液晶化合物が棒状液晶化合物である場合、配向状態としては、例えば、ネマチック配向(ネマチック相を形成している状態)、スメクチック配向(スメクチック相を形成している状態)、および、コレステリック配向(コレステリック相を形成している状態)が挙げられる。液晶化合物がディスコティック液晶化合物である場合、配向状態としては、ネマチック配向、カラムナー配向(カラムナー相を形成している状態)、および、コレステリック配向が挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、液晶化合物の配向状態としては、ホモジニアス配向またはホメオトロピック配向が好ましく、スメクチック配向またはカラムナー配向がより好ましい。
上記マトリックスは、液晶化合物が配向した状態を固定化することにより形成される。
ここで、「固定化した」状態とは、配向状態となっている液晶化合物の配向が保持された状態を意味する。例えば、0~50℃、より過酷な条件下では-30~70℃の温度範囲において、流動性が無く、また、外場もしくは外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向状態を安定に保ち続けることができる状態が好ましい。このような固定化の方法としては、例えば、後段で詳述するように、重合性液晶化合物を配向させて配向状態を形成した後、硬化処理を施して重合性基を反応させることにより、液晶化合物の配向状態を固定化する方法が挙げられる。
UCフィルムは、上述したドナー、アクセプター、および、マトリックス以外の他の成分を含んでいてもよい。
例えば、UCフィルムは、コレステリック配向状態を形成するためのキラル剤を含んでいてもよい。キラル剤の種類は特に制限されず、公知のキラル剤が挙げられる。
また、UCフィルムが含んでいてもよい他の成分としては、後段で詳述するように、UCフィルムを作製する際に用いられるUCフィルム形成用組成物に含まれていてもよい界面活性剤が挙げられる。
UCフィルム中におけるドナーの含有量は特に制限されないが、UCフィルム全質量に対して、0.0001~5質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。
UCフィルム中におけるアクセプターの含有量は特に制限されないが、UCフィルム全質量に対して、0.0001~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
UCフィルム中におけるマトリックスの含有量は特に制限されないが、UCフィルム全質量に対して、79~99.9質量%が好ましく、85~99.9質量%がより好ましい。
UCフィルムの厚みは特に制限されないが、発光効率および薄膜化のバランスの点で、0.5~100μmが好ましく、1~20μmがより好ましい。
上記厚みは平均厚みであり、UCフィルムの任意の10点の厚みを測定して、それらを算術平均した値である。
ホモジニアス配向状態またはホメオトロピック配向状態を固定化してなるマトリックスをUCフィルムが含む場合、オーダーパラメータは高いことが好ましく、具体的には、オーダーパラメータは、0.50以上が好ましく、0.70以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、1.00が挙げられる。
ここで、オーダーパラメータについて説明する。光学異方性を発生させるためには、光学要素の配向が必要である。ここでいう光学要素とは、屈折率の異方性を生じさせる光学的な要素であり、例えば、所定の温度範囲において液晶相を示す液晶化合物が挙げられる。1つの光学要素の固有の複屈折率、および、その光学要素が統計的にどの程度配向しているかによって、光学材料のバルクの複屈折は決まる。例えば、液晶化合物で構成される光学異方性層の光学異方性の大きさは、光学異方性を生じさせる主要な光学要素である液晶化合物の固有の複屈折率と、液晶化合物の統計的な配向の度合いで決まる。配向の度合いを表すパラメータとして、オーダーパラメータSが知られている。オーダーパラメータSは結晶のように分布がない場合に1、液体状態のように完全にランダムな場合に0となる。オーダーパラメータSについては、例えば、DE JEU,W.H.(著) 「液晶の物性」(共立出版、1991年、11頁)に詳しく記載があり、次の式で表される。
Figure 0007200394000011
θは、配向要素の平均的な配向軸方向と、各配向要素の軸とのなす角である。
オーダーパラメータを測定する手段としては、偏光ラマン法、IR(赤外線)法、X線法、蛍光法、および、音速法が知られている。
オーダーパラメータは、光学異方性層が二色性を有する場合に以下の式より比較的容易に求めることができる。
OP=(A||-A⊥)/(2A⊥+A||)
「A||」は、液晶化合物の配向方向に対して平行に偏光した光に対する吸光度
「A⊥」は、液晶化合物の配向方向に対して垂直に偏光した光に対する吸光度を意味する。
オーダーパラメータが液晶化合物の配向秩序度を示す指標の1つであることは、「液晶ポリマーの開発技術-高性能・高機能化」(シーエムシー出版)の5頁や、特開2008-297210号公報などに記載の通り公知である。
なお、吸光度は、「吸光度=1-透過度」で求めることができる。
また、本発明におけるオーダーパラメータの具体的な測定方法としては、以下の通りである。
UCフィルムに対して、分光光度計の入射光の偏光方向を垂直に固定し、液晶化合物の配向方向を垂直にした場合と水平にした場合のスペクトル(吸光度)をそれぞれ測定し、別途測定した石英ガラスの偏光吸収スペクトル(吸光度)を差し引いて、A⊥およびA||とする。これを上記、オーダーパラメータの式から算出する。
<UCフィルムの製造方法>
UCフィルムの製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
なかでも、生産性に優れる点で、アクセプター、ドナー、および、液晶化合物を含むUCフィルム形成用組成物を用いる方法が好ましい。より具体的には、アクセプター、ドナー、および、重合性液晶化合物を含むUCフィルム形成用組成物を塗布して塗膜を形成して、塗膜に配向処理を施して重合性液晶化合物を配向させ、得られた塗膜に対して硬化処理を施して、UCフィルムを形成する方法が好ましい。
以下、上記方法について詳述する。まず、本方法に使用されるUCフィルム形成用組成物について詳述する。
UCフィルム形成用組成物は、アクセプター、ドナー、および、液晶化合物を含む。これらの成分は、上述した通りである。
UCフィルム形成用組成物中におけるアクセプター、ドナー、および、液晶化合物のそれぞれの含有量は、上述した各成分のUCフィルム中の含有量になるように調整されることが好ましい。
なお、アクセプターは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ドナーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
液晶化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
UCフィルム形成用組成物は、アクセプター、ドナー、および、液晶化合物以外の成分を含んでいてもよい。
UCフィルム形成用組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。使用される重合開始剤は、重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、および、光重合開始剤が挙げられる。
UCフィルム形成用組成物中における重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
なお、固形分とは、溶媒を除去した、UCフィルムを形成し得る成分を意味し、その性状が液体状であっても固形分とする。
また、UCフィルム形成用組成物は、重合性モノマーを含んでいてもよい。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性またはカチオン重合性の化合物が挙げられ、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。また、重合性モノマーとしては、上記の重合性基を有する液晶化合物と共重合性のモノマーが好ましい。例えば、特開2002-296423号公報中の段落0018~0020に記載の重合性モノマーが挙げられる。
UCフィルム形成用組成物中における重合性モノマーの含有量は、液晶化合物の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましい。
また、UCフィルム形成用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、フッ素系化合物が好ましい。例えば、特開2001-330725号公報中の段落0028~0056に記載の化合物、および、特願2003-295212号明細書中の段落0069~0126に記載の化合物が挙げられる。
また、UCフィルム形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、アミド(例:N,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例:ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例:ピリジン)、炭化水素(例:ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例:クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例:アセトン、メチルエチルケトン)、および、エーテル(例:テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン)が挙げられる。なお、2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
また、UCフィルム形成用組成物は、垂直配向剤、および、水平配向剤などの各種配向制御剤を含んでいてもよい。これらの配向制御剤は、界面側において液晶化合物を水平または垂直に配向制御可能な化合物である。
さらに、UCフィルム形成用組成物は、上記成分以外に、密着改良剤、および、可塑剤を含んでいてもよい。
本方法では、まず、UCフィルム形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜に配向処理を施して重合性液晶化合物を配向させる。
UCフィルム形成用組成物は、通常、支持体上に塗布される。
使用される支持体は、組成物を塗布するための基材として機能を有する部材である。支持体は、UCフィルム形成用組成物を塗布および硬化させた後に剥離される仮支持体であってもよい。
支持体(仮支持体)としては、樹脂基板、または、ガラス基板が挙げられる。樹脂基板を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、および、ポリビニルアルコールが挙げられる。
支持体の厚みは、5~1000μm程度であればよく、10~250μmが好ましく、15~90μmがより好ましい。
なお、必要に応じて、支持体上には、配向膜を配置してもよい。
配向膜は、一般的には、ポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマーとしては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手できる。配向膜用ポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド樹脂、または、その誘導体が好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂とは、-CH-CHOH-を繰り返し単位として含むポリマーであり、ポリビニルアルコールおよびエチレン-ビニルアルコール共重合体からなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。
なお、配向膜には、公知のラビング処理が施されることが好ましい。
また、配向膜としては、いわゆる光配向膜を用いてもよい。
配向膜の厚みは、0.01~10μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましい。
また、必要に応じて、支持体の表面に直接ラビング処理を施してもよい。
UCフィルム形成用組成物の塗布方法としては、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、および、ワイヤーバー法が挙げられる。
次に、支持体上に形成された塗膜に、配向処理を施して、塗膜中の重合性液晶化合物を配向させる。重合性液晶化合物の配向に伴って、アクセプターおよびドナーがより近接した位置に配置され、フォトンアップコンバージョンが生じやすくなる。
重合性液晶化合物の配向状態としては、上述した配向状態が挙げられる。
配向処理は、室温により塗膜を乾燥させる、または、塗膜を加熱することにより行うことができる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶化合物の場合、一般に温度または圧力の変化により転移させることができる。リオトロピック性液晶化合物の場合には、溶媒量などの組成比によっても転移させることができる。
なお、塗膜を加熱する場合の条件は特に制限されないが、加熱温度としては50~250℃が好ましく、50~150℃がより好ましく、加熱時間としては10秒間~10分間が好ましい。
また、塗膜を加熱した後、後述する硬化処理(光照射処理)の前に、必要に応じて、塗膜を冷却してもよい。冷却温度としては20~200℃が好ましく、30~150℃がより好ましい。
次に、重合性液晶化合物が配向された塗膜に対して硬化処理を施す。
重合性液晶化合物が配向された塗膜に対して実施される硬化処理の方法は特に制限されず、例えば、光照射処理および加熱処理が挙げられる。なかでも、製造適性の点から、光照射処理が好ましく、紫外線照射処理がより好ましい。
光照射処理の照射条件は特に制限されないが、50~1000mJ/cmの照射量が好ましい。
光照射処理の際の雰囲気は特に制限されないが、窒素雰囲気が好ましい。
<用途>
本発明のUCフィルムは、種々の用途に適用できる。
例えば、UCフィルムは、いわゆる輝度向上フィルムに使用できる。例えば、UCフィルムが緑色の波長領域の光を吸収して、青色の波長領域の光を発光できる場合、青色用の輝度向上フィルムとして用いることができる。
また、OLED(Organic Light Emitting Diode)およびLCD(Liquid Crystal Display)のように光源とカラーフィルタを用いる表示装置において、通常、発光スペクトルのうち、各カラーフィルタ間の波長の光(例えば、青色カラーフィルタと緑色カラーフィルタとの間の波長の光)はカラーフィルタに吸収されてしまうが、UCフィルムを用いると、この波長が消失することなくカラーフィルタを透過する波長に変換されることから、輝度向上フィルムとして活用できる。
その他、太陽光スペクトルのうち、近赤外光を可視光に変換することで、光電変換を効率化できるなどの応用も挙げられる。
<積層体>
上述したUCフィルムは、他の部材と組み合わせて積層体として用いてもよい。
本発明の積層体としては、例えば、UCフィルムと、UCフィルムの少なくとも一方の主面上に配置された、酸素透過度1000cc/m・day・atm以下の酸素バリア層と、を有する積層体が挙げられる。上記積層体であれば、UCフィルム中に酸素が入ることを防止でき、結果として、本発明の効果がより優れる。
酸素バリア層は、UCフィルムの一方の主面のみに配置されていてもよいし、2つの主面(両主面)に配置されていてもよい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、酸素バリア層は、UCフィルムの両主面に配置されていることが好ましい。
酸素バリア層とは、酸素透過度1000cc/m・day・atm以下の層を意味する。上記酸素透過度は100cc/m・day・atm以下が好ましく、40cc/m・day・atm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、0.01cc/m・day・atm以上の場合が多い。
上記酸素透過度の測定方法は、JIS K 7126に準じた方法にて行う。測定条件としては、温度23℃、相対湿度50%にて実施する。
酸素バリア層としては、上述した酸素透過度を満たす層であれば特に制限されず、有機層または無機層が挙げられる。
有機層としては、樹脂層が挙げられ、樹脂層を構成する材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ナイロンMXD6、および、塩化ビニリデンなどのガスバリア性樹脂が挙げられる。
無機層としては、金属、無機酸化物、窒化物、および、酸化窒化物などの各種無機化合物を含む層が挙げられる。
なお、上述した配向膜がポリビニルアルコール系樹脂から構成される場合、配向膜は酸素バリア層としても機能し得る。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<実施例1>
厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム、富士フイルム社製)を用意した。
次に、下記の成分を混合して混合物を調製し、得られた混合物を撹拌しながら85℃で1時間加熱溶解して、その後、0.45μmフィルターでろ過して、配向膜形成用組成物を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜形成用組成物
――――――――――――――――――――――――――――――――
・PVA203(クラレ社製ポリビニルアルコール) 2.4質量部
・純水 97.6質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
乾燥後の塗膜の膜厚が0.5μmになるように塗布量を調節しながら、配向膜形成用組成物をTACフィルム上に塗布し、得られたTACフィルムに対して、100℃で2分間乾燥処理を施した。
得られた塗膜に対してラビング処理を施して、仮支持体を作製した。ラビング処理の方向は、フィルム長手方向と平行とした。
なお、TACフィルム上に配置された配向膜の酸素透過度は32cc/m・day・atmであり、配向膜は酸素バリア層として作用できる。後段で詳述するように、配向膜上にUCフィルムを形成することにより、UCフィルムの一方の主面上に酸素バリア層が配置された積層体が得られる。
次に、50℃に保温された容器中にて、下記に示す成分を混合して、UCフィルム形成用組成物1を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
UCフィルム形成用組成物1
――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 145.0質量部
下記の棒状液晶化合物の混合物1 100.0質量部
下記のドナー 0.1質量部
下記のアクセプター 5.0質量部
Omnirad907(IGM Resins B.V.社製) 3.0質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1.0質量部
下記の界面活性剤F1 0.067質量部
下記の界面活性剤F2 0.027質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
棒状液晶化合物の混合物1(構造式中の数値は、混合物全量に対する各棒状液晶化合物の含有量(質量%)を表す。)
Figure 0007200394000012
ドナー
Figure 0007200394000013
アクセプター
Figure 0007200394000014
界面活性剤F1
Figure 0007200394000015
界面活性剤F2
Figure 0007200394000016
仮支持体のラビング処理面に、ギーサーを用いてUCフィルム形成用組成物1を塗布(塗布幅1200mm)して、塗膜を形成した。
次に、塗膜を100℃で2分間乾燥し、溶媒を気化させた後に、さらに、115℃で3分間加熱熟成を行って、ネマチック相の配向状態を得た。その後、得られた塗膜を45℃に保持し、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線を塗膜に照射(300mJ/cm)して、配向状態を固定化し、仮支持体とUCフィルム1とを含む積層体1を得た。UCフィルム1の厚みは、5μmであった。
<実施例2>
棒状液晶化合物の混合物1のかわりに、下記棒状液晶化合物の混合物2に用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルム2とを含む積層体2を得た。なお、UCフィルム2は、液晶化合物がスメクチック配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
棒状液晶化合物の混合物2(構造式中の数値は、混合物全量に対する各棒状液晶化合物の含有量(質量%)を表す。)
Figure 0007200394000017
<実施例3>
界面活性剤F1およびF2のかわりに、界面活性剤F3を0.5質量部使用し、さらに垂直配向剤S1を1質量部使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルム3とを含む積層体3を得た。なお、UCフィルム3は、液晶化合物がネマチック配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
界面活性剤F3(式中、各繰り返し単位に記載の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返しの含有量(質量%)を表す。)
Figure 0007200394000018
垂直配向剤S1
Figure 0007200394000019
<実施例4>
UCフィルム形成用組成物1に、キラル化合物K1(3質量部)を加えた以外は、実施例1と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルム4とを含む積層体4を得た。なお、UCフィルム4は、液晶化合物がコレステリック配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
キラル化合物K1
Figure 0007200394000020
<実施例5>
UCフィルム形成用組成物1のかわりに、後述する手順で調製されたUCフィルム形成用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルム5とを含む積層体5を得た。なお、UCフィルム5は、液晶化合物がネマチック配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
50℃に保温された容器中にて、下記に示す成分を混合して、UCフィルム形成用組成物2を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
UCフィルム形成用組成物2
――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 145.0質量部
下記のディスコティック液晶化合物101 80.0質量部
下記のディスコティック液晶化合物102 20.0質量部
下記のディスコティック液晶化合物201 5.6質量部
上記のドナー 0.1質量部
上記のアクセプター 5.0質量部
Omnirad907(IGM Resins B.V.社製) 3.0質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1.0質量部
下記の界面活性剤F4 0.09質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ディスコティック液晶化合物101およびディスコティック液晶化合物102
Figure 0007200394000021
ディスコティック液晶化合物201
Figure 0007200394000022
界面活性剤F4(式中、各繰り返し単位に記載の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返しの含有量(質量%)を表す。)
Figure 0007200394000023
<実施例6>
ディスコティック液晶化合物101およびディスコティック液晶化合物102の代わりに、ディスコティック液晶化合物202を100質量部使用した以外は、実施例5と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルム6とを含む積層体6を得た。なお、UCフィルム6は、液晶化合物がカラムナー配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
ディスコティック液晶化合物202
Figure 0007200394000024
<実施例7>
界面活性剤F4のかわりに、界面活性剤F3を0.5質量部使用し、さらに垂直配向剤S1を1質量部使用した以外は、実施例5と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルム7とを含む積層体7を得た。なお、UCフィルム7は、液晶化合物がネマチック配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
<実施例8>
UCフィルム形成用組成物2に、キラル化合物K2(3質量部)を加えた以外は、実施例5と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルム8とを含む積層体8を得た。なお、UCフィルム8は、液晶化合物がコレステリック配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
キラル化合物K2
Figure 0007200394000025
<実施例9>
仮支持体として、厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム、富士フイルム社製)に日産化学製SE-130を膜厚0.1μmになるように塗布し、ラビング処理して得られる仮支持体9を用いた以外は、実施例5と同様の手順に従って、仮支持体9とUCフィルム9とを含む積層体9を得た。なお、UCフィルム9は、液晶化合物がネマチック配向した状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
積層体9には、酸素バリア層は含まれていない。また、仮支持体9全体の酸素透過度は1062cc/m・day・atmであり、酸素バリア層に該当しない。
<実施例10>
実施例5で得られた積層体5中のUCフィルム5の配向膜が配置されていない側の表面上に、乾燥後の塗膜の膜厚が0.5μmになるように塗布量を調節しながら、配向膜形成用組成物を塗布した。得られたフィルムに対して、100℃で2分間乾燥処理を施して、UCフィルム5の両主面に配向膜(酸素バリア層に該当)が配置された積層体10を得た。
<比較例1>
特許文献1の実施例1と同様の手順に従って、延伸フィルムであるUCフィルムC1を作製した。
<比較例2>
実施例1と同様に仮支持体の上に塗膜を形成した後、得られた塗膜を140℃に保持し、アイソトロピック化した状態(無配向)で、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線を塗膜に照射(300mJ/cm)して、無配向状態を固定化した以外は実施例1と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルムC2とを含む積層体C2を得た。なお、UCフィルムC2は、液晶化合物が無配向状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
<比較例3>
実施例5と同様に仮支持体の上に塗膜を形成した後、得られた塗膜を140℃に保持し、アイソトロピック化した状態(無配向)で、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて紫外線を塗膜に照射(300mJ/cm)して、無配向状態を固定化した以外は実施例5と同様の手順に従って、仮支持体と、UCフィルムC3とを含む積層体C3を得た。なお、UCフィルムC3は、液晶化合物が無配向状態で固定化されてなるマトリックスを含む。
<評価:アップコンバージョン発光特性の測定>
実施例1~10で得られた積層体1~10、比較例1~3で得られた積層体C1~C3に対して、レーザークリエイト社製の光源(532nm、CWレーザー、260mW/cm(空気中))からレーザー光を照射し、得られる発光を分光器(QEPRO、オーシャンオプティクス社製)で測定した。入射光源(532nm)が直接分光器に入らないように、分光器の直前にノッチフィルター(エドモンドオプティクスジャパン社製#86-120)を配置した。励起光の532nmより短波長域のアクセプターから得られるUC発光と、長波長域のドナーのりん光発光のピーク値の比を調べることで発光効率を検証した。得られる比が大きいほど、発光効率が高いことを意味する。
表1中、「PVA」は、ポリビニルアルコールを意味する。
表1中、「延伸」欄は、延伸処理を実施した場合を「あり」、延伸処理を実施していない場合を「なし」とする。
表1中、「酸素バリア層」欄は、UCフィルムの主面の一方に酸素バリア層が配置されている場合を「片面」、UCフィルムの2つの主面の両方に酸素バリア層が配置されている場合を「両面」とし、「-」は酸素バリア層が配置されていないことを表す。
表1中の「短波発光波長ピーク強度」はUC発光由来のピーク強度を表し、「長波発光波長ピーク強度」はドナーの臨港発光由来のピーク強度を表す。
Figure 0007200394000026
上記表に示すように、本発明のUCフィルムは、より優れた発光効率を示すことが確認された。
なかでも、実施例1と実施例5との比較より、ディスコティック液晶化合物を用いた場合、より優れた効果が得られることが確認された。
実施例1と2との比較より、オーダーパラメータがより高い場合、より優れた効果が得られることが確認された。
実施例5、9および10の比較より、積層体が酸素バリア層を含む場合、より優れた効果が得られることが確認された。

Claims (7)

  1. アクセプターと、ドナーと、マトリックスとを含み、
    前記マトリックスが、液晶化合物が配向した状態で固定化してなるマトリックスであり、
    前記液晶化合物が配向した状態が、ホモジニアス配向である、フォトンアップコンバージョンフィルム。
  2. 前記液晶化合物が配向した状態が、前記液晶化合物が一軸配向している状態である、請求項1に記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
  3. 前記液晶化合物が、円盤状液晶化合物を含む、請求項1または2に記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
  4. 前記アクセプターが、縮合芳香族環構造を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
  5. 前記アクセプターが、アントラセン構造を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョンフィルム。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョンフィルムと、
    前記フォトンアップコンバージョンフィルムの少なくとも一方の主面上に配置された、酸素透過度1000cc/m・day・atm以下の酸素バリア層と、を有する積層体。
  7. 請求項1~のいずれか1項に記載のフォトンアップコンバージョンフィルムと、
    前記フォトンアップコンバージョンフィルムの両主面上に配置された、酸素透過度1000cc/m・day・atm以下の酸素バリア層と、を有する積層体。
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