JP7198038B2 - 辛みの低減されたタマネギを生産する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、辛みの低減されたタマネギの生産方法及びそれにより生産されるタマネギ、タマネギを含む加工食品を製造する方法及びそれにより製造される加工食品、並びに、タマネギの辛みを低減する方法に関する。
近年、子供にも食べやすい野菜を提供することや健康志向の消費者による生野菜摂取の風潮が拡まってきており、その要求に応えることが野菜の品種改良の一つの流れとなっている。しかしながら、ネギ属植物、特にタマネギは特有の辛みのために、生食が困難な野菜とされる。
タマネギの辛み成分でありかつ催涙成分であるlachrymatory factor(LF)は、生タマネギ組織の切断や破砕に伴って進む下記の反応機構で生成されることが明らかにされている(非特許文献1)。
Figure 0007198038000001
すなわち、調理や加工に伴って、タマネギの細胞破砕が引き起こされると、基質であるtrans-1-propenyl cysteine sulfoxide(PRENCSO)がアリイナーゼによる分解を受け、一分子のPRENCSOからスルフェン酸(1-propenyl sulfenic acid)、ピルビン酸、アンモニアがそれぞれ一分子ずつ生成される。次に、生成されたスルフェン酸が催涙因子合成酵素(LFS)の働きによって、辛み成分でもある催涙因子(LF、propanethial-S-oxide)となる。
辛みの弱いタマネギとして、日本国内で「新タマネギ」と呼ばれている極早生品種がある。極早生品種のタマネギは、水分量が多く、乾物量が少ないことが特徴である。この特徴のためにPRENCSO濃度が低くなり、生成する辛み成分(催涙因子)量が少なくなる。しかし、極早生品種タマネギは、辛みは弱いものの、辛みが全くないという訳ではなく、生食する場合には水さらしを必要とする。そのため、水さらしという調理の手間がかかるだけでなく、水さらしにより栄養成分が流出してしまうことが問題となっている。またこの品種は貯蔵性が悪く、限られた時期にしか提供できないという問題もある。
一方、特許文献1は、タマネギ細胞中のアリイナーゼ遺伝子の発現が抑制された、辛み及び催涙性が極めて弱い、又は全く感じられないタマネギを開示する。
特許第5671657号公報
Imai S et al.; An onion enzyme that makes the eyes water. Nature, 419, 685 (2002).
特許文献1に記載の、アリイナーゼ遺伝子の発現が抑制された、辛み及び催涙性が極めて弱い、又は全く感じられないタマネギは、生のまま食べても辛みが感じられないという点で優れている。
しかし、一般的に市場に流通しているタマネギの大部分は辛みを有するタマネギである。辛みを有する一般的なタマネギにおいて、収穫後にタマネギを破壊することなく辛みを低減する技術は従来提供されていない。
本発明者らは驚くべきことに、辛みを有する一般的なタマネギを、収穫後出荷前に庫内温度が30℃以上の貯蔵庫内で貯蔵したときに、タマネギの辛みが顕著に低減されることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の発明を包含する。
(1)辛みの低減されたタマネギを生産する方法であって、
庫内温度が30℃以上の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する高温貯蔵工程
を含む方法。
(2)高温貯蔵工程における庫内温度が30℃以上50℃未満である、(1)に記載の方法。
(3)高温貯蔵工程における貯蔵期間が7日間以上である、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)高温貯蔵工程における庫内温度よりも低い温度でタマネギを貯蔵する低温貯蔵工程を更に含む、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)低温貯蔵工程が、高温貯蔵工程よりも後に行われる、(4)に記載の方法。
(6)低温貯蔵工程における温度が0℃以上10℃以下である、(4)又は(5)に記載の方法。
(7)低温貯蔵工程における貯蔵期間が30日間以上である、(4)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)タマネギを含む加工食品を製造する方法であって、
(1)~(7)のいずれかに記載の方法により生産された辛みの低減されたタマネギを用いて加工食品を製造することを含む方法。
(9)(1)~(7)のいずれかに記載の方法により生産された、辛みの低減されたタマネギ。
(10)(9)に記載のタマネギを含む加工食品。
(11)タマネギの辛みを低減する方法であって、
庫内温度が30℃以上の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する高温貯蔵工程
を含む方法。
(12)高温貯蔵工程における庫内温度が30℃以上50℃未満である、(11)に記載の方法。
(13)高温貯蔵工程における貯蔵期間が7日間以上である、(11)又は(12)に記載の方法。
本発明によれば、辛みの有するタマネギを、簡便且つ非破壊的に処理することにより、タマネギの辛みを低減することができる。
図1Aは、実験1において、収穫乾燥直後のタマネギを30℃で4カ月間貯蔵した際のタマネギ断面を経時的に示す写真である。 図1Bは、実験1において、収穫乾燥直後のタマネギを33℃で4カ月間貯蔵した際のタマネギ断面を経時的に示す写真である。 図1Cは、実験1において、収穫乾燥直後のタマネギを35℃で4カ月間貯蔵した際のタマネギ断面を経時的に示す写真である。 図1Dは、実験1において、収穫乾燥直後のタマネギを37℃で4カ月間貯蔵した際のタマネギ断面を経時的に示す写真である。 図2は、収穫乾燥直後のタマネギを一定温度で貯蔵したときの、パネラーによる辛み評価の経時変化を示す。 図3は、通常の低温貯蔵タマネギを高温で貯蔵したときの、パネラーによる辛み評価の経時変化を示すグラフである。 図4は、通常の低温貯蔵タマネギを高温で一定期間貯蔵したときの、パネラーによる辛み評価の経時変化を示す。 図5は、収穫乾燥直後のタマネギを高温で一定期間貯蔵し、その後、前記温度よりも低い温度で貯蔵したときの、パネラーによる辛み評価の経時変化を示す。 図6は、通常の低温貯蔵タマネギを高温で一定期間貯蔵した後、更に前記温度よりも低い温度で貯蔵したときの、パネラーによる辛み評価の経時変化を示す。 図7は、高温貯蔵後に低温貯蔵を行ったタマネギの凍結乾燥粉末、及び、低温貯蔵のみを行ったタマネギの凍結乾燥粉末のそれぞれに水を添加したときの、PRENCSO量の経時変化(アリイナーゼ活性を反映する)を示すグラフである。 図8は、通常の低温貯蔵タマネギを40℃で12日間貯蔵した際のタマネギ断面を経時的に示す写真である。 図9は、通常の低温貯蔵タマネギを40℃で12日間貯蔵したときの、パネラーによる辛み評価の経時変化を示す。 図10は、実験9において、収穫乾燥直後の佐賀県産タマネギを0℃、33℃、35℃又は37℃で貯蔵したときの、パネラーによる辛み評価の経時変化を示す。
本発明を実施するための形態について具体的に説明する。
本発明において「タマネギ」としては、細胞破砕時に辛みが感じられる一般的なタマネギが使用でき、例えば、既存の一般的な春播き栽培タマネギ(例えば、スーパー北もみじ、北もみじ2000、北もみじ、札幌黄、ポールスター、ツキヒカリ、北見黄、月光22号、オホーツク等)、秋播き栽培タマネギ(例えば、大阪丸、泉南甲高、泉州中甲黄、さつき、もみじ等)が挙げられる。本発明は、特定の品種に依らず、各種のタマネギの辛みを低減するために利用することができる。
タマネギとは少なくともタマネギ球(鱗茎部)を含むものであればよい。タマネギ球は外皮で覆われたものであってもよいし、外皮が除去されたものであってもよい。本明細書では、タマネギの、タマネギ球を含む部分を、単に「タマネギ」と称する場合がある。
<1.辛みの低減されたタマネギを生産する方法>
本発明は第一に、辛みの低減されたタマネギを生産する方法であって、
庫内温度が30℃以上の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する高温貯蔵工程
を含む方法に関する。
本発明者らは、驚くべきことに、庫内温度が30℃以上の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵した場合に、タマネギの辛みが低減されることを見出した。本発明のこの方法は、タマネギ球を破壊することなく収穫時と同じ外見を保持しながらタマネギの辛みを低減することができ、辛みの低減されたタマネギを生産することが可能となる。
本明細書において「辛みの低減されたタマネギ」とは、高温貯蔵工程開始前のタマネギの辛みと比較して、辛みが低減されたタマネギを指す。
本実施形態において、高温貯蔵工程は、貯蔵の途中で、貯蔵庫の扉を開けて庫内温度が一時的に上下動したり、タマネギを貯蔵庫から一時的に取り出したりすることで一時的に中断されてもよい。
高温貯蔵工程における庫内温度は、好ましくは30℃以上50℃未満であり、より好ましくは、30℃以上40℃以下、より好ましくは、30℃以上37℃以下である。タマネギを、50℃未満の庫内温度で貯蔵することにより、生タマネギの新鮮さを保持しつつ、辛みを低減することができる。高温貯蔵工程における庫内温度は、一定の温度に保持される必要はなく、温度変化があってもよい。
高温貯蔵工程による貯蔵期間は、タマネギの辛みが貯蔵開始前と比較して低減するまでの期間であればよく、特に限定されないが、十分な辛みの低減のためには、好ましくは7日間以上であり、より好ましくは14日間以上であり、より好ましくは30日間以上であり、より好ましくは45日間以上である。高温貯蔵工程による貯蔵期間の上限は特に限定されないが、生タマネギの新鮮さを保持する観点から、好ましくは120日間以下、より好ましくは90日間以下、より好ましくは75日間以下である。
本発明の、辛みの低減されたタマネギを生産する方法の好ましい実施形態は、
高温貯蔵工程における庫内温度よりも低い温度、好ましくは高温貯蔵工程における庫内温度より低い庫内温度の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する低温貯蔵工程
を更に含む。
すなわち、高温貯蔵工程に加えて、低温貯蔵工程を組み合わせることが可能である。
タマネギは収穫後から出荷前まで低温で貯蔵されることが一般的であり、貯蔵期間は長い場合は半年以上に及ぶ。この貯蔵期間の任意のタイミングで、上記の高温貯蔵工程を行うことにより、辛みの低減されたタマネギを生産することができるため、本発明のタマネギの生産方法は商業的な実施が容易である。
低温貯蔵工程は、高温貯蔵工程の後の工程として行うことが好ましい。高温貯蔵工程の後に、低温貯蔵工程を行うことにより、タマネギの辛みが更に低減され、この状態が安定に長期間維持され易く好ましい。
低温貯蔵工程は、貯蔵の途中で、貯蔵庫の扉を開けて庫内温度が一時的に上下動したり、タマネギを貯蔵庫から一時的に取り出したりすることで一時的に中断される場合もある。
低温貯蔵工程における温度は、高温貯蔵工程における温度よりも低い温度であればよいが、好ましくは、0℃以上10℃以下であり、より好ましくは0℃以上5℃以下である。タマネギを、0℃以上10℃以下、好ましくは0℃以上5℃以下、の温度で貯蔵することにより、生タマネギの新鮮さを保持することができる。特に、高温貯蔵工程後に0℃以上10℃以下、好ましくは0℃以上5℃以下、の温度で低温貯蔵工程を行う場合には、タマネギの出荷まで低温貯蔵を続けることができるため、辛みが更に低減され新鮮さが保持されたタマネギを出荷することが可能である。低温貯蔵工程における温度は、一定の温度に保持される必要はなく、温度変化があってもよい。
高温貯蔵工程後の低温貯蔵工程による貯蔵期間は、タマネギの辛みが更に低減するまでの期間であればよく、特に限定されないが、十分な辛みの低減のためには、好ましくは30日間以上であり、より好ましくは45日間以上である。低温貯蔵工程による貯蔵期間の上限は特に限定されないが、好ましくは120日間以下、より好ましくは90日間以下、より好ましくは75日間以下である。
<2.タマネギを含む加工食品を製造する方法>
本発明は第二に、タマネギを含む加工食品を製造する方法であって、
前記の、辛みの低減されたタマネギを生産する方法により生産された辛みの低減されたタマネギを用いて加工食品を製造することを含む方法に関する。
本発明のこの形態では、前記の生産方法で生産された辛みの低減されたタマネギを、必要に応じてカットし、単独で又は他の野菜や調味料と組み合わせて調理して加工食品を製造すればよく、具体的な態様は製造する加工食品に応じて適宜決定すればよい。
<3.タマネギ及びタマネギを含む加工食品>
本発明は第三に、前記の、辛みの低減されたタマネギを生産する方法により生産された、辛みの低減されたタマネギに関する。
本発明は第四に、前記タマネギを含む加工食品に関する。
<4.タマネギの辛みを低減する方法>
本発明は第五に、
タマネギの辛みを低減する方法であって、
庫内温度が30℃以上の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する高温貯蔵工程
を含む方法に関する。
高温貯蔵工程の具体的な実施形態は、前記の、辛みの低減されたタマネギを生産する方法における高温貯蔵工程と同様である。
タマネギの辛みを低減する方法は、好ましくは、高温貯蔵工程における温度よりも低い温度でタマネギを貯蔵する低温貯蔵工程を更に含む。
低温貯蔵工程の具体的な実施形態もまた、前記の、辛みの低減されたタマネギを生産する方法における低温貯蔵工程と同様である。
<実験1>
収穫乾燥した2014年産の北海道産タマネギ北もみじ2000の鱗茎部を、30℃に設定した恒温貯蔵庫内で4カ月間貯蔵した。また、収穫乾燥した2016年産の北海道産タマネギ北もみじ2000の鱗茎部を、33℃、35℃又は37℃に設定した恒温貯蔵庫内で4カ月間貯蔵した。以下の説明では「タマネギの鱗茎部」を「タマネギ」と言う。30℃、33℃、35℃又は37℃での貯蔵開始時(0カ月)、貯蔵開始から1カ月後、2カ月後、3カ月後、及び4カ月後にサンプリングし、タマネギを2分割して断面を観察した。
30℃貯蔵タマネギの断面の写真を図1Aに示す。33℃貯蔵タマネギの断面の写真を図1Bに示す。35℃貯蔵タマネギの断面の写真を図1Cに示す。37℃貯蔵タマネギの断面の写真を図1Dに示す。
30℃、33℃、35℃又は37℃で4カ月間貯蔵した場合、タマネギに対するダメージはほとんど認められなかった。
<実験2>
収穫乾燥した、2014年、2015年又は2016年産のタマネギ(北もみじ2000)を、0℃、15℃、30℃、33℃、35℃又は37℃に設定した恒温貯蔵庫内で図2に示す期間(1~8カ月間)貯蔵した。
図2に示す各時点で各条件のタマネギを2~4つサンプリングし、パネラーが、タマネギを生のまま食べ辛みを評価した。
辛みは5段階で評価した。
5:強い辛み
4:やや弱い辛み
3:辛みはある
2:かなり弱い辛み
1:辛みなし
結果を図2に示す。図2の各欄の下段のカッコ内に各時点での2~4つのタマネギの辛み評価値を示し、上段に辛み評価値の平均値を示す。
タマネギを30℃、33℃、35℃又は37℃で貯蔵すると、経時的に辛みが低減した。貯蔵温度が高いほど辛みの低減は速い傾向があった。一方、0℃又は15℃で貯蔵した場合、タマネギの辛みは維持された。
<実験3>
2014年産のタマネギ(北もみじ2000)を、一般的な貯蔵温度である0℃に設定した恒温貯蔵庫内で4カ月貯蔵した後、30℃に設定した恒温貯蔵庫内で3カ月間貯蔵した。
2014年産のタマネギ(北もみじ2000)を、一般的な貯蔵温度である5℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月貯蔵した後、33℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月間貯蔵した。
2014年産のタマネギ(北もみじ2000)を、一般的な貯蔵温度である5℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月貯蔵した後、37℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月間貯蔵した。
図3に示す各時点で各条件のタマネギを2~4つサンプリングし、パネラーが、タマネギを生のまま食べ辛みを評価した。評価方法は実験2に記載の通りである。
0℃又は5℃の貯蔵中はタマネギの辛みは低減しないのに対して、30℃、33℃、37℃での貯蔵によりタマネギの辛みが顕著に低減することが確認された。また、貯蔵温度が高いほどタマネギの辛みの低減が早いことも確認された。
<実験4>
2016年産のタマネギ(北もみじ2000)を、一般的な貯蔵温度である低温(0℃又は5℃)に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月、4カ月又は6カ月貯蔵し、その後、30℃、35℃又は37℃に設定した恒温貯蔵庫内で図4に示す期間貯蔵した。図4において、前半の白色で示す期間は低温(0℃又は5℃)での貯蔵期間を示し、後半の灰色に網掛けして示す期間は30℃、35℃又は37℃の高温で貯蔵した期間を示す。各試験区での低温の温度及びその後の高温の温度は図4の「貯蔵温度」の欄に示す。
図4に示す各時点で各条件のタマネギを4つサンプリングし、パネラーが、タマネギを生のまま食べ辛みを評価した。評価方法は実験2に記載の通りである。
結果を図4に示す。図4の各欄の下段のカッコ内に各時点での4つのタマネギの辛み評価値を示し、上段に辛み評価値の平均値を示す。
0℃で2カ月、4カ月又は6カ月、あるいは5℃で2カ月、異なる温度で、異なる期間貯蔵したタマネギのいずれもが、その後、30℃、35℃又は37℃の高温で貯蔵することにより経時的に辛みが低減した。
これらのことから、一般的な低温貯蔵タマネギを任意のタイミングで高温貯蔵に供して、辛みを低減できることが確認された。
<実験5>
2015年又は2016年産のタマネギ(北もみじ2000)を、第1の温度(30℃、33℃、35℃又は37℃)に設定した恒温貯蔵庫内で図5に示す第1の期間貯蔵し、その後、第1の温度よりも低い第2の温度(0℃又は30℃)に設定した恒温貯蔵庫内で図5に示す第2の期間貯蔵した。図5において、前半の灰色に網掛けして示す期間は第1の温度での第1の貯蔵期間を示し、後半の白色で示す期間は第2の温度での第2の貯蔵期間を示す。各試験区での第1の温度及び第2の温度は図5の「貯蔵温度」の欄に示す。
図5に示す各時点で各条件のタマネギを2~4つサンプリングし、パネラーが、タマネギを生のまま食べ辛みを評価した。評価方法は実験2に記載の通りである。
結果を図5に示す。図5の各欄の下段のカッコ内に各時点での2~4つのタマネギの辛み評価値を示し、上段に辛み評価値の平均値を示す。
タマネギを第1の温度(30℃、33℃、35℃又は37℃)で貯蔵した後、第1の温度よりも低い第2の温度として0℃で貯蔵した場合、経時的に辛みが低減した。一部の試験区では辛みが全く無くなる(辛み評価点1)場合があった。また、第1の温度(33℃又は37℃)で貯蔵した後、第1の温度よりも低い第2の温度として30℃で貯蔵した場合でも辛みが更に低減又は安定的に持続した。このことから、高温貯蔵時の温度を変化させた場合でも、辛みが低減又は安定的に持続することが確認された。
<実験6>
2015年産のタマネギ(北もみじ2000)を、一般的な低温貯蔵温度である5℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月間貯蔵し、その後、第1の温度(30℃、33℃又は37℃)に設定した恒温貯蔵庫内で図6に示す第1の期間貯蔵し、その後、第1の温度よりも低い第2の温度(0℃又は30℃)に設定した恒温貯蔵庫内で図6に示す第2の期間貯蔵した。図6において、前半の白色で示す期間は低温での貯蔵期間を示し、その後の、灰色に網掛けして示す期間は第1の温度での第1の貯蔵期間を示し、後半の白色で示す期間は第2の温度での第2の貯蔵期間を示す。各試験区での低温、第1の温度及び第2の温度は図6の「貯蔵温度」の欄に示す。
図6に示す各時点で各条件のタマネギを3~4つサンプリングし、パネラーが、タマネギを生のまま食べ辛みを評価した。評価方法は実験2に記載の通りである。
結果を図6に示す。図6の各欄の下段のカッコ内に各時点での3~4つのタマネギの辛み評価値を示し、上段に辛み評価値の平均値を示す。
タマネギの低温(5℃)での貯蔵期間は辛みは維持されたが、その後に、第1の温度(30℃、33℃又は37℃)で貯蔵することにより経時的に辛みが低減した。また、更に第2の温度として0℃で貯蔵した場合は更に辛みが低減した。一部の試験区では辛みが全く無くなる(辛み評価点1)場合があった。また、第2の温度として30℃で貯蔵した場合でも辛みが更に低減又は安定的に持続した。
<実験1~6まとめ>
タマネギを30℃~37℃の高温で貯蔵すると経時的に辛みが低減することが確認された。
タマネギの高温貯蔵の場合、温度が高いほどタマネギの辛みの低減が速くなることが確認された。
タマネギを収穫乾燥後に一般的な低温で貯蔵した場合も、その後、高温で貯蔵すると経時的に辛みが低減することが確認された。
また、タマネギを30℃~37℃の高温で貯蔵した後、低温で貯蔵すると、タマネギの辛みは顕著に低減し、辛みが全く無くなる(辛み評価点1)場合があることが確認された。
高温貯蔵することで辛みが低減することは、実験1~6で用いた北もみじ2000に限らず他のタマネギ品種でも確認されている。具体的には、市販の佐賀県産タマネギを高温(33℃又は37℃)で貯蔵したところ、経時的に辛みが低減することが確認された。同様に市販の千葉県産新タマネギを30℃以上の高温で貯蔵したところ、経時的に辛みが低減することが確認された。
<実験7>
本実験では、タマネギを高温貯蔵した後低温貯蔵した場合の辛みの低減の原因が、アリイナーゼ活性の低下によるものであることを確認した。
2つのタマネギ(北もみじ2000)(タマネギNo.1とタマネギNo.2とする)を、33℃に設定した恒温貯蔵庫内で3カ月間貯蔵した後、0℃に設定した恒温貯蔵庫内で4カ月間貯蔵した。また、2つのタマネギ(北もみじ2000)(タマネギNo.3とタマネギNo.4とする)を、35℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月間貯蔵した後、0℃に設定した恒温貯蔵庫内で4カ月間貯蔵した。さらに、2つのタマネギ(北もみじ2000)(タマネギNo.5とタマネギNo.6とする)を、37℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月間貯蔵した後、0℃に設定した恒温貯蔵庫内で4カ月間貯蔵した。貯蔵後のタマネギNo.1~タマネギNo.6の外側から3枚目の鱗葉の辛みを、実験2に記載の手順で、評価したところ、辛み評価点は共に1であり、辛みが無いと評価された。
貯蔵後のタマネギNo.1~タマネギNo.6の外側から3枚目の鱗葉(外3)を凍結乾燥処理し、凍結乾燥物を粉砕してFDパウダーとした。タマネギNo.1、2、3、4、5、6の鱗葉(外3)から得られたFDパウダーをそれぞれ「A33M3-A0M4-1-外3」、「A33M3-A0M4-2-外3」、「A35M2-A0M4-3-外3」、「A35M2-A0M4-4-外3」、「A37M2-A0M4-5-外3」、「A37M2-A0M4-6-外3」とした。
一方、1つのタマネギ(北もみじ2000)(タマネギNo.7とする)を、0℃に設定した恒温貯蔵庫内で4カ月間貯蔵した。貯蔵後のタマネギNo.4の外側から3枚目の鱗葉の辛みを、実験2に記載の手順で評価したところ、辛み評価点は5であり、強い辛みと評価された。
貯蔵後のタマネギNo.7の外側から3枚目の鱗葉(外3)を凍結乾燥処理し、凍結乾燥物を粉砕してFDパウダーとした。タマネギNo.7の鱗葉(外3)から得られたFDパウダーを「A0M4-7-外3」とした。
上記の7種のFDパウダー中のアリイナーゼ活性を次の手順で測定した。活性測定は全て25℃の温度条件下で行った。
試験管中にFDパウダー100mgを秤量し、蒸留水3mLを添加し直ちにボルテックスミキサーで撹拌し、撹拌開始から20秒後、40秒後及び60秒後に、試験管中にメタノール:水:ギ酸=50:20:1混合液を7mL添加し直ちにボルテックスミキサーで撹拌して反応を停止した。反応停止後の反応液を30分間超音波処理してPRENCSOを上清液に抽出した。この抽出液を20,000 × g、5分間遠心分離し、その上清液をイオン交換前処理したのち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析してPRENCSO量を測定した。PRENCSO量は、生タマネギ1g(新鮮重=FW)あたりのモル数(μmole/1gFW)として表した。こうして、FDパウダー中のアリイナーゼによる酵素反応を20秒、40秒及び60秒行った場合の残存PRENCSO量を求めた。
一方、酵素反応開始時(反応時間0秒)の残存PRENCSO量は次の手順で測定した。すなわち、試験管中にFDパウダー100mgを秤量し、試験管中にメタノール:水:ギ酸=50:50:1混合液を10mL添加し直ちにボルテックスミキサーで撹拌した。反応液中のPRENCSO量を上記手順で測定した。
結果を図7に示す。反応時間0秒でのPRENCSO量は、貯蔵後のタマネギのPRENCSO量に対応する。反応時間の経過に伴うPRENCSO量の低下はアリイナーゼによりPRENCSOが分解されていることを示す。PRENCSO量の低下の速度が、アリイナーゼ活性の強さを示す。
図7の結果は、高温貯蔵しその後低温貯蔵した辛みの無いタマネギ(A33M3-A0M4-1-外3、A33M3-A0M4-2-外3、A35M2-A0M4-3-外3、A35M2-A0M4-4-外3、A37M2-A0M4-5-外3、A37M2-A0M4-6-外3)は、酵素反応後の残存PRENCSO量が多く、アリイナーゼ活性が低いことを示す。低温貯蔵のみを行った辛みの強いタマネギ(A0M4-7-外3)は、酵素反応後の残存PRENCSO量が少なく、アリイナーゼ活性が強いことを示す。このことから、タマネギを高温貯蔵しその後低温貯蔵することによる辛みの低減は、タマネギ中のアリイナーゼ活性の低下が主な原因であることが示唆された。
<実験8>
タマネギの一般的な貯蔵温度である5℃で、収穫後2カ月間貯蔵した2014年産のタマネギ(北もみじ2000)を、40℃に設定した恒温貯蔵庫内で12日間貯蔵した。40℃の貯蔵開始時(0日)、貯蔵開始から7日後、9日後、12日後にサンプリングし、タマネギを2分割して断面を観察した。この断面の写真を図8に示す。
40℃で12日間貯蔵した場合、タマネギに対するダメージはほとんど認められなかった。
図8に示す各時点でのタマネギを4つサンプリングし、パネラーが、タマネギを生のまま食べ辛みを評価した。評価方法は実験2に記載の通りである。結果を図9に示す。
40℃で貯蔵することにより経時的に辛みが低減した。その時の貯蔵期間は、最短で7日間であった。
<実験9>
2018年産の佐賀県産タマネギ(ターザン)を、0℃、33℃又は35℃に設定した恒温貯蔵庫内で2カ月間、或いは、37℃に設定した恒温貯蔵庫内で1.5カ月間貯蔵した。
図10に示す各時点で各条件のタマネギを2~4つサンプリングし、パネラーが、タマネギを生のまま食べ辛みを評価した。評価方法は実験2に記載の通りである。
0℃で貯蔵したタマネギの辛みは低減しないのに対して、33℃、35℃、37℃で貯蔵したタマネギの辛みは顕著に低減することが確認された。
本発明は辛みの低減されたタマネギの生産に利用することができる。

Claims (5)

  1. タマネギの辛みを低減する方法であって、
    庫内温度が30℃以上40℃以下(ただし、30℃を除く)の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する高温貯蔵工程を含む方法。
  2. タマネギの辛みを低減する方法であって、
    庫内温度が30℃以上40℃以下の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する高温貯蔵工程、及び
    該高温貯蔵工程の後、庫内温度が0℃以上10℃以下の貯蔵庫内でタマネギを貯蔵する低温貯蔵工程を含む方法。
  3. 高温貯蔵工程における貯蔵期間が7日間以上である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 低温貯蔵工程における貯蔵期間が30日間以上である、請求項2に記載の方法。
  5. タマネギを含む加工食品を製造する方法であって、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の方法により辛みの低減されたタマネギを用いて加工食品を製造することを含む方法。
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