JP7196921B2 - 非破壊検査装置、非破壊検査システム及び非破壊検査方法 - Google Patents
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Description
従来の磁気を用いたコンクリート内部の鉄筋やPC鋼材の破断判定を非破壊で行う技術として、漏洩磁束法による検査装置が提案されている。
従来の磁気非破壊検査システムでは、計測対象物に磁気回路を形成した状態での磁気計測は、磁気回路生成用磁石が作り出す大きな磁場に計測対象物の破断部位に生じる小さな磁場変化が埋もれてしまうために判定が困難であるとして、「着磁」と「計測」を分離した2ステップ工程による計測対象物の残留磁束を利用する方法が採用されている。
例えば特許文献1には、「着磁」と「計測」の2ステップによる方法として、永久磁石よる着磁後、磁石を撤去し、長手方向に離間配置された一対のセンサーを鉄筋長手方向に走査し、2センサーの計測値の差分より微分値を求めて判定する技術が記載されている。
それに対して計測対象物である鉄筋やPC鋼材等に磁気回路を形成した状態であれば、従来の残留磁束を利用する従来の方法に比べて、計測対象物の破断部位に大きな磁場変化を発生させることができる為、計測対象物のかぶり(埋没深さ)が深い場合でも、破断部位に生じる磁場変化を捉え易いという効果がある。
例えば特許文献2には、計測対象物に磁気回路を形成した状態での磁気計測方法として、極性の異なる1対の磁石を対向して配置し、対磁石の磁場が均衡によりゼロになる位置に磁気センサーを設ける技術が記載されている。同技術では、被検出物(鉄筋)に磁気回路を形成した状態で、鉄筋長手方向に移動させながら検査を行って鉄筋破断判定をする。破断がある側の磁力が小さくなり均衡が崩れることを判定原理とする。特許文献2に記載の技術では、磁石に対して磁気センサーを設ける位置が限定されてしまう。
特許文献2に記載されるような磁石から計測対象物に磁場を印加している時に磁気センサーにより磁場を計測する場合には、磁気センサーと磁石とは一体にされる。磁気センサーに対する磁石の位置を一定に保つことにより計測精度を安定させることができる。
しかしながら、特許文献2に記載されるように磁気センサーの両側に磁石が必要になり、磁気センサーとその両側の磁石を一体にしたユニットはその分、大型重量化する。
また、磁気センサーの両側に磁石が配置されていると、磁石が必ず端に配置されるため、構造物の内側角部などの隅を計測できない場合が生じる。
また、特許文献2にも記載されるように、N極を計測対象物側に向けた磁石と、S極を計測対象物側に向けた磁石とを磁気センサーの両側に配置し、一方の磁石、磁気センサー、他方の磁石の配列方向に沿って他方の磁石を先頭に移動して計測する場合を考える。この場合に、移動方向の先頭の他方の磁石によって着磁された影響の残る計測対象物の部位に対して、移動後に逆極性の磁場を後続の一方の磁石で印加して計測することとなる。まだ計測していない部位が先に他方の磁石によって着磁されることによって弊害が生じ得る。移動計測の開始位置等で他方の磁石によって先に着磁されない場合もまた発生する。他方の磁石によって先に着磁されたり、先に着磁されなかったりすることで計測結果に影響が生じ得る。
磁場印加ユニットと、磁気センサーとが第一方向に配列し、同配列に第二方向に隣接し第一方向に延在した計測対象物に対し、前記磁場印加ユニットからN極性又はS極性である第一極性の磁場を印加して、第一方向に沿って前記磁場印加ユニットから離れるに従い磁場が第一極性の範囲で減衰する磁場分布を形成した状態の同計測対象物からの磁場を前記磁気センサーで検知する構成を有し、
第一方向に沿って前記磁場印加ユニットからの距離が異なる複数の位置で前記磁気センサーにより磁場を計測し、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布が得られるようにされ、
前記磁場印加ユニットは、少なくともひとつの永久磁石を含み、当該永久磁石の第一極性と反対極性の極と前記磁気センサーとの距離が、当該永久磁石の第一極性の極と前記磁気センサーとの距離より大きい非破壊検査装置である。
前記情報処理装置は、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布を含む計測データに基づき当該計測データに係る計測対象物の異常を判定する非破壊検査システムである。
前記情報処理装置は、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布を含む計測データの表示用画像を生成する非破壊検査システムである。
磁場印加ユニットと、磁気センサーとが第一方向に配列し、同配列に第二方向に隣接し第一方向に延在した前記計測対象物に対し、
前記磁場印加ユニットからN極性又はS極性である第一極性の磁場を印加して、第一方向に沿って前記磁場印加ユニットから離れるに従い磁場が第一極性の範囲で減衰する磁場分布を形成した状態で、
第一方向に沿って前記磁場印加ユニットからの距離が異なる複数の位置で前記磁気センサーにより磁場を計測し、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布に基づき、前記計測対象物の異常を判断するようになっており、
前記磁場印加ユニットは、少なくともひとつの永久磁石を含み、当該永久磁石の第一極性と反対極性の極と前記磁気センサーとの距離が、当該永久磁石の第一極性の極と前記磁気センサーとの距離より大きい非破壊検査方法である。
図1に示すように本実施形態の非破壊検査システム10は非破壊検査装置1とクラウドコンピューター9と可搬型コンピューター4とを備える。非破壊検査装置1は、センサーユニット2と、磁場印加ユニット3とを備える。センサーユニット2は磁気計測するためのブロックで、複数の磁気センサー21を搭載している。磁気センサー21は計測対象物方向からの1軸方向の磁場成分を検知する1軸センサーでもよいが、磁気センサー周囲の3次元磁場分布を得ることができる3軸センサーであることがより好ましい。磁気センサー21として3軸センサーを適用する場合、互いに直交する3軸方向の磁場成分を検知可能な3軸センサーが好ましいが、同3軸方向にセンサー軸がそれぞれ配置された3つの1軸センサーの複合により構成されていてもよい。
磁気センサー21には半導体センサーであるホール素子や磁気抵抗センサーであるMRセンサー、MIセンサー、TMRセンサー(トンネル型磁気抵抗センサー)などが知られているが、より高感度なTMRセンサー(トンネル型磁気抵抗センサー)を適用することが好ましい。TMRセンサー(トンネル型磁気抵抗センサー)は磁気によって抵抗値が変化する素子で、抵抗ブリッジ回路組むことで磁気を電圧に変換して出力することができる。
本実施形態においては、磁場印加ユニット3は計測対象物である磁性体、例えばコンクリート構造物等の非磁性体に内包される鋼材等の計測対象物にN極性またはS極性のどちらかの磁場を印加して、計測対象物に磁気流路を形成する。センサーユニット2は磁気流路が形成されている状態で計測対象物から漏れだしてくる磁気を磁気センサー21で計測する。これを磁気ストリーム法と呼ぶ。
クラウドコンピューター9はWebサーバーであって、センサーユニット2からアップロードされた計測データを直ちに処理して、可搬型コンピューター4のブラウザアプリで表示することができる。
図2A,Bに示すように筐体26の中には磁気センサー21(21M,21R)を一つ又は複数搭載したセンサアレイが計測面26Mに近接して配置されている。本実施形態ではセンサアレイが構成されている場合を主に説明する。前出の第一方向をX軸、第二方向をZ軸、第三方向をY軸として図中に直交3軸XYZを記載する。
図2A,Bに示すように磁場印加ユニット3と、磁気センサー21とが第一方向Xに配列する。図2Bに示すようにY方向に複数の磁気センサー21が配列する。図2A及び図3に示すようにZ方向に2つの磁気センサー21M,21Rが配列する。計測面26Mは、筐体26の外表面の一つであって磁気センサー21が近接配置された側である。筐体26内の反対側のスペースには、操作部25のほか上記A/D部22、モバイル通信ユニット23、CPU24等を搭載した回路基板等が配置される。磁場印加ユニット3のS極又はN極である端面が計測面26MとZ軸座標上の略同位置に配置されて、磁場印加ユニット3とセンサーユニット2とが一体に固定される。
Z方向に配列する2つの磁気センサー21M,21Rは、計測面26Mに近い側がメインセンサー21M、遠い側がリファレンスセンサー21Rである。
図4は本発明の測定原理に係る磁気流路を形成している状態を模したものである。
計測対象物8は磁性材料である鉄筋鋼棒またはPC鋼材を想定し、中央部にギャップ1cm程度の破断が生じている状態を想定する(周りの非磁性体(コンクリート)を不図示とする。以下同じ)。
磁場印加ユニット3からN極性の磁場が計測対象物8に印加され、磁性体である計測対象物8内を磁気が流れる。磁性体を流れる磁気は少しずつ外部に放出されてゆき、徐々に減衰する。磁気センサー21はこの計測対象物8に沿って走査可能な構成となっており、計測対象物8の長手方向の漏洩磁束を捉えることができる構成となっている。磁場印加ユニット3から計測対象物8に印加する磁場はN極性、S極性のいずれでも構わない。すなわち、本実施形態の非破壊検査装置1は、磁場印加ユニット3と磁気センサー21との配列に第二方向Zに隣接し第一方向Xに延在した計測対象物8に対し、磁場印加ユニット3からN極性又はS極性である第一極性の磁場を印加して、第一方向Xに沿って磁場印加ユニット3から離れるに従い磁場が第一極性の範囲で減衰する磁場分布を形成した状態の同計測対象物8からの磁場を磁気センサー21で検知する構成を有する。そして、第一方向Xに沿って磁場印加ユニット3からの距離が異なる複数の位置で磁気センサー21により磁場を計測し、磁場印加ユニット3からの距離に応じた第一方向Xに沿った磁場分布が得られるようにされている。本実施形態では、第一方向Xの一端部に磁場印加ユニット3が固定される筐体26上において磁気センサー21を第一方向Xに走査するセンサー走査機構27が構成されていることで、磁場印加ユニット3からの距離に応じた第一方向Xに沿った磁場分布が得られるようにされている。
ここで、計測対象物8に破断がなければ、磁場印加ユニット3から離れるに従って徐々に漏洩磁力が弱まってゆくが、図4に示すように計測対象物8に破断があると破断部位で磁気の流れが断ち切られるため、破断部手前で多くの磁気が放出され、破断部以降の計測対象物8に流れる磁気が減る。非破壊検査装置1によって、破断の有無による計測対象物8の漏洩磁束の分布の違いを捉えることができる。
図5は、図4に示すように計測対象物の中央部に破断がある場合(破断モデル)と、これに対し計測対象物8に破断が無い健全の場合(健全モデル)との2条件に対して、磁気センサー21により計測対象物8からZ方向に一定距離離れた走査ライン上の鉛直方向軸(Z軸)方向の磁場分布をとらえたものである。また、別途計測したX-Z平面上における磁場の2次元分布図(カラーヒートマップをグレースケールに変換したもの)を、健全モデルにつき図6に、破断モデルにつき図7に示す。図6及び図7において、より白い部分が強い磁場部分を示しており、磁気センサー21の計測位置を黒い正方形で示す。
前述したように、計測対象物8に破断がない場合、計測対象物8の図4中左側に配置された磁場印加ユニット3によって印加された磁力が、計測対象物8の内部をX方向に流れる中で少しずつ減衰しながら外部に放出される(図5の実線グラフ及び図6参照)。
それに対して、計測対象物8の中央部に破断がある場合、磁場印加ユニット3によって印加された磁力は、破断部位までは計測対象物8の内部を流れる中で少しずつ減衰しながら外部に放出されるが、破断部で計測対象物8に流れる流路が断ち切られるため、破断部以降に磁力がほとんど流れず、破断部を境に急減衰した波形(図5の破線グラフ及び図7参照)となる。また、逆に破断部の手前で多くの磁気が放出されるため、破断より手前側の、図では左側の領域の破断ありの計測値が破断なしの計測値を上回ることも破断による特徴である。以上の破断の有無による磁場分布の傾向は、図6及び図7中の磁気センサー21の計測位置(黒い正方形)の磁場分布でも成立する。磁気センサー21の計測位置(黒い正方形)の磁場分布を、X方向に沿って磁石から離れるように観察すると、図6の健全モデルでは、ほぼ一定の減少率で減衰するが、図7の破断モデルにあっては破断部前で磁場が強まっており、逆に、破断部を過ぎると急減衰している。したがって、計測対象物8からZ方向に離れた磁気センサー21により図5に示したような磁場分布を計測できることがわかる。
図5に示したような磁場分布曲線は、図1のクラウドコンピューター9上で計測データに基づき表示用画像を生成する処理が実行されることで構成され、可搬型コンピューター4やその他のPCのブラウザーで表示される。ユーザーは磁場分布曲線を参照して破断の有無を確認することができる。
また、クラウドコンピューター9は、取得した磁場分布の異変部を計測対象物8の異常部として判定し、判定結果を可搬型コンピューター4やその他のPCのブラウザーに提供する。ユーザーは、可搬型コンピューター4やその他のPCのブラウザーで、磁場分布曲線やコンピューターによる判定結果を参照することができる。
実際の計測対象のひとつであるコンクリート製の橋桁には計測対象であるPC鋼材などの主鉄筋のほかに、補強のためにコンクリート表面近くにスターラップと呼ばれる補助鉄筋が存在する。
その場合、コンクリート表面すなわち計測面26Mに近い側に補助鉄筋があり、遠い側に破断判定の対象である主鉄筋(8)が存在する。このような場合、磁気センサー21は補助鉄筋から放出された磁気と主鉄筋(8)から放出された磁気が混合した磁場を検出する。主鉄筋の破断有無を良好に判定するためには、補助鉄筋由来の磁場を捉えず排除して、主鉄筋由来の磁場成分のみを抽出したいという要望がある。
そのため、メインセンサー21Mの計測値のほか、メインセンサー21Mとは別に計測対象物8からの距離を異ならせて配置したリファレンスセンサー21Rの計測値を用いる。
リファレンスセンサー21Rを用いた信号処理の基本原理そのものは広く知られている。補助鉄筋はコンクリートの浅い部分に存在するため、メインセンサー21M及びリファレンスセンサー21Rに近い。そのため、メインセンサー21Mと補助鉄筋までの距離とリファレンスセンサー21Rと補助鉄筋の距離の比率が大きく異なるため、距離比率に応じてよりリファレンスセンサー21Rの値が小さくなる。それに対して、主鉄筋はコンクリートの深い部分に存在するため、メインセンサー21M及びリファレンスセンサー21Rとの距離は遠い。そのため、メインセンサー21Mと主鉄筋までの距離とリファレンスセンサー21Rと主鉄筋の距離の比率が大きく異ならず、距離比率に応じてよりリファレンスセンサー21Rの値が小さくなるがその差はわずかである。よって、メインセンサー21Mとリファレンスセンサー21Rの値の差異の大部分は、補助鉄筋由来の成分とみなすことができ、減算等の処理を行うことで、補助鉄筋由の成分を抽出することができ、更には補助鉄筋由来成分が分かれば、減算等の処理により主鉄筋由来の成分を抽出することができる。実際には完ぺきに主鉄筋由来の成分のみを抽出することは難しいが、補助鉄筋由来の成分を少なくし、主鉄筋由来の成分の割合を多くした推定値、すなわち、X座標における非磁性体の表面から所定深さにある計測対象物8からの磁場の推定値を算出することができ、判定精度の向上を図ることができる。
以上の計算処理がクラウドコンピューター9により実行される。
空間に滞在する磁力線は磁性体がなければ乱されることはないが、磁気が流れやすい磁性体に向かってゆくという特徴がある。釘やクリップのような金属磁性体が磁石に引き付けられるのはそのためである。磁気センサーは周囲の磁気を集めることはできないため、磁気センサーの存在する点、即ち3次元空間上の特定位置の磁束密度を計測できるが、3次元空間上の特定領域の磁力の総量を検出することはできない。それに対して、磁性体は前述したように、近傍の磁力線を集めることができる。このとき磁性体の形状が円柱状であれば、周囲のベクトルの異なる磁力をその長手方向に磁気が流れるように集めることができる。磁気を集めることで、例えば磁気センサーが検出する点の磁力が小さすぎて検出できない場合でも、周囲の磁力をその点に向かうように集めることができれば、磁気センサーが検出可能な磁力にすることができる。
図8A,B及び図9に示すように計測対象物8から分散放出される磁気を個々の磁気センサー21に集める磁気集結部材5が設けられる。これにより、実質的に磁気センサー21の磁気検出感度をアップさせることができる。
尚、磁気集結部材5は、磁気集結部材5そのものが磁気を帯びてしまわないように、パーマロイやSS400材のような軟磁性体であることが望ましい。
磁場を計測対象物8に印加して、計測対象物8から漏洩する磁気を検出する磁気非破壊検査装置において、搭載する磁気センサー21は磁場を印加する磁場印加ユニット(永久磁石)3からの直接磁気に出来る限り曝されないことが望ましい。磁気センサー21が磁場印加ユニット(永久磁石)3からの直接磁気に曝されると、計測対象物8から生じる磁気に、磁場印加ユニット(永久磁石)3からの直接磁気が重畳されるため、計測値が大きな値となって表示レンジが拡大し、図5に示したような波形グラフが見づらくなってしまう。
図10は磁場印加ユニット(永久磁石)3のN極とS極が比較的近い距離にある一般的な磁石を用いた場合の磁界分布を示す。一般的な磁石の場合、N極面から放射された磁力は、磁性体である計測対象物8に向かうと同時に、一定割合の磁力が磁場印加ユニット(永久磁石)3のS極にもリターンループして戻ってしまう。このN極からS極へのループ磁場の強い領域に磁気センサー21が含まれていると、磁場印加ユニット(永久磁石)3に近い領域の計測値には、計測対象物8からの磁気に加えて、磁場印加ユニット(永久磁石)3のリターンループの磁気成分が多量に含まれてしまい、計測値から計測対象物8からの磁場成分を抽出することが難しくなる。
図11は磁場印加ユニット(永久磁石)3のN極とS極が比較的遠い距離にある長尺磁石を用いた場合の磁場分布を示す。長尺磁石の場合、N極面から放射された磁力は、遠いS極よりも近い計測対象物8に向かう成分が多くなる。S極にリターンループして戻る成分が少ないため、図11のようにN極からS極へのループ磁場の強い領域には磁気センサー21が含まれない。そのため、磁場印加ユニット(永久磁石)3に近い領域の計測値にも、計測対象物8からの磁気に加えられる磁場印加ユニット(永久磁石)3のリターンループの磁気成分は少なくなるため、計測値から計測対象物8からの磁場成分を抽出することが容易になる。
N極からS極へのループ磁場の最も強い位置は、N極までの距離と、S極までの距離が等距離の位置である。したがって、計測対象物8に印加する極性の反対極性であるS極と磁気センサー21との距離が、N極と磁気センサー21との距離より大きい配置することが好ましい。そして、その距離の不均衡をより大きくすることが好ましい。
非破壊検査装置1のセンサーユニット2には図2A,B、図3で示したように、複数の磁気センサー21(メインセンサー21M、リファレンスセンサー21R)が備わっている。
ここでは磁気センサー21としてTMRセンサーを適用する。TMRセンサーは印加磁場の強さに応じて抵抗が変化する特徴を持つ。図12に示すように磁気センサー21の抵抗変化を、抵抗/電圧変換してアナログ電圧に変え、アナログ電圧をA/D変換してデジタルデータを生成する。このようにして、メインセンサー21Mによる各計測位置の計測値群であるメインデータと、リファレンスセンサー21Rによる各計測位置の計測値群であるリファレンスデータを作成する。メインデータ及びリファレンスデータのそれぞれは、XY平面上に2次元に配列した各計測位置に計測値をそれぞれ持っている2次元分布データである。メインデータとリファレンスデータは、非破壊検査装置1からクラウドコンピューター9に送信される。クラウドコンピューター9はメインデータとリファレンスデータに基づき、比率や差分を補正演算して計測対象物8に由来する磁場データを抽出した演算再構築データを算出する。クラウドコンピューター9は演算再構築データに基づき表示用画像の一形態としての磁場マップを生成し出力する。磁場マップは可搬型コンピューター4等で表示され、ユーザーによる結果判断に使われる。また、クラウドコンピューター9は、取得した演算再構築データにもとづきX方向の磁場分布の異変部を計測対象物8の異常部として判定し、判定結果を可搬型コンピューター4やその他のPCのブラウザーに提供する。ユーザーは、可搬型コンピューター4やその他のPCのブラウザーで、磁場分布曲線や判定結果を参照することができる。
(ステップS1)非破壊検査装置1を磁気センサー21が計測対象物8を内包する例えばコンクリート表面に計測面26Mを対向して近接するように設置して、磁場印加ユニット3から磁場を印加して計測対象物8に磁気流(磁気ストリーム)を形成する。
(ステップS2)ステップS1による磁気流形成状態で計測対象物8からの磁束を磁気センサー21で検知する。
(ステップS3)非破壊検査装置1の位置は変えずにセンサー走査機構27により磁気センサー21をX方向に1ステップ分だけシフト走査する。
(ステップS4)全シフト位置での走査計測が完了しているか否かを判断し、完了していなければステップS2に戻る。完了していればステップS5に進む。
(ステップS5)非破壊検査装置1は、全シフト位置で計測したデータにより走査面全体の磁場分布データを作成する。このときのデータは、磁気センサー21が1軸センサーであれば1軸方向の磁場成分が分布する面データとなり、磁気センサー21が3軸センサーであれば3軸方向の磁場成分が分布する面データとなる。
(ステップS6)クラウドコンピューター9は、取得した磁場分布データに基づき上述した演算再構築データを算出し、さらに演算再構築データに基づき磁場マップを作成し、当該磁場マップが可搬型コンピューター4等で表示される。
磁気センサー21による走査面全体より大面積の対象を検査する場合には、非破壊検査装置1を未計測の面に移動して以上のステップS1-S6を繰り返し実行する。
以上の実施形態にあっては、磁気センサー21をX方向については走査式とし、Y方向についてセンサアレイ式としたが、X方向についてもセンサアレイ式、すなわち、筐体26上において磁気センサー21が第一方向Xに配列した複数により構成されていることで、磁場印加ユニット3からの距離に応じた第一方向Xに沿った磁場分布が得られるようにセンサーユニット2を構成してもよい。
また、X方向及びY方向について走査式にセンサーユニット2を構成してもよい。
また以上の実施形態にあっては、X方向及びY方向に複数列ある2次元分布データを取得する構成としたが、X方向に1列の1次元分布データを取得する構成として実施してもよい。
また、Z方向についても磁気センサー21を2つ配列した構成とせず、Z方向については単一の磁気センサー(メインセンサー)のみとして実施してもよい。
2 センサーユニット
3 磁場印加ユニット
5 磁気集結部材
8 計測対象物
9 クラウドコンピューター
10 非破壊検査システム
21 磁気センサー
21M メインセンサー
21R リファレンスセンサー
25 操作部
26 筐体
27 センサー走査機構
Claims (15)
- 非磁性体に内包される磁性材料を計測対象物とした非破壊検査装置であって、
磁場印加ユニットと、磁気センサーとが第一方向に配列し、同配列に第二方向に隣接し第一方向に延在した前記計測対象物に対し、前記磁場印加ユニットからN極性又はS極性である第一極性の磁場を印加して、第一方向に沿って前記磁場印加ユニットから離れるに従い磁場が第一極性の範囲で減衰する磁場分布を形成した状態の同計測対象物からの磁場を前記磁気センサーで検知する構成を有し、
第一方向に沿って前記磁場印加ユニットからの距離が異なる複数の位置で前記磁気センサーにより磁場を計測し、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布が得られるようにされ、
前記磁場印加ユニットは、少なくともひとつの永久磁石を含み、当該永久磁石の第一極性と反対極性の極と前記磁気センサーとの距離が、当該永久磁石の第一極性の極と前記磁気センサーとの距離より大きい非破壊検査装置。 - 第一方向の一端部に前記磁場印加ユニットが固定される筐体上において前記磁気センサーが第一方向に配列した複数により構成されていることで、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布が得られるようにされた請求項1に記載の非破壊検査装置。
- 第一方向の一端部に前記磁場印加ユニットが固定される筐体上において前記磁気センサーを第一方向に走査する走査機構が構成されていることで、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布が得られるようにされた請求項1に記載の非破壊検査装置。
- 前記磁気センサーは、第一方向に直交し、かつ、第二方向に直交する第三方向に配列する複数により構成されている請求項2又は請求項3に記載の非破壊検査装置。
- 前記磁気センサーは、第二方向に配列する複数により構成されている請求項2から請求項4のうちいずれか一に記載の非破壊検査装置。
- 前記磁気センサーは、互いに直交する3軸方向の磁場成分を検知可能な3軸センサー又は同3軸方向にセンサー軸がそれぞれ配置された3つの1軸センサーにより構成されている請求項1から請求項5のうちいずれか一に記載の非破壊検査装置。
- 前記磁気センサーは、トンネル型磁気抵抗センサー(TMRセンサー)である請求項1から請求項6のうちいずれか一に記載の非破壊検査装置。
- 計測対象物から分散放出される磁気を前記磁気センサーに集める磁気集結部材が設けられた請求項1から請求項7のうちいずれか一に記載の非破壊検査装置。
- 前記磁気集結部材は軟磁性体からなる請求項8に記載の非破壊検査装置。
- 請求項1から請求項9のうちいずれか一に記載の非破壊検査装置と、情報処理装置とを備え、
前記情報処理装置は、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布を含む計測データに基づき当該計測データに係る計測対象物の異常を判定する非破壊検査システム。 - 前記情報処理装置は、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布の異変部を、当該計測データに係る計測対象物の異常部として判定する請求項10に記載の非破壊検査システム。
- 請求項1から請求項9のうちいずれか一に記載の非破壊検査装置と、情報処理装置とを備え、
前記情報処理装置は、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布を含む計測データの表示用画像を生成する非破壊検査システム。 - 前記情報処理装置は、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布を示す分布曲線を含む表示用画像を生成する請求項12に記載の非破壊検査システム。
- 請求項5に記載の非破壊検査装置と、情報処理装置とを備え、
前記情報処理装置は、第一方向の座標が同座標で第2方向の座標が異なる2つの計測値に基づき、当該第一方向の座標における前記非磁性体の表面から所定深さにある計測対象物からの磁場の推定値を算出する非破壊検査システム。 - 非磁性体に内包される磁性材料を計測対象物とした非破壊検査方法であって、
磁場印加ユニットと、磁気センサーとが第一方向に配列し、同配列に第二方向に隣接し第一方向に延在した前記計測対象物に対し、
前記磁場印加ユニットからN極性又はS極性である第一極性の磁場を印加して、第一方向に沿って前記磁場印加ユニットから離れるに従い磁場が第一極性の範囲で減衰する磁場分布を形成した状態で、
第一方向に沿って前記磁場印加ユニットからの距離が異なる複数の位置で前記磁気センサーにより磁場を計測し、前記磁場印加ユニットからの距離に応じた第一方向に沿った磁場分布に基づき、前記計測対象物の異常を判断するようになっており、
前記磁場印加ユニットは、少なくともひとつの永久磁石を含み、当該永久磁石の第一極性と反対極性の極と前記磁気センサーとの距離が、当該永久磁石の第一極性の極と前記磁気センサーとの距離より大きい非破壊検査方法。
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