JP7191526B2 - 変圧器の加速劣化試験装置および試験方法 - Google Patents
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Description
しかし、実際には使用環境や機器の個体差などにより劣化状態は機器ごとに異なる。そのため、劣化の有無に拘わらず検査・取替を行う上記一律周期の保全方式にあっては、無駄な検査が行われることでメンテナンスコストの増大を招く課題がある。従って、設備毎に機器個々の状態を把握しそれに基づいた検査・取替を行う保全(CBM:状態基準保全)が望ましい。
また、加速劣化試験のため変圧器(一次側)に高電圧(例えば22kV等)を印加させるには、試験装置を設置する部署に、特別高圧(66kV等)の受電設備を用意する必要があり、試験設備容量が大きくなる(コストアップを招く)という課題があることが明らかになった。
本発明の他の目的は、変圧器に対して直接、電圧や電流を印加することで、計測したデータの正確性を高めることができる変圧器の加速劣化試験方法を提供することにある。
変電所もしくは配電設備から供給される交流電圧を試験対象の変圧器の一次側へ供給するための電力供給経路と、該電力供給経路の途中に設けられた可変電圧変換手段と、
前記可変電圧変換手段と前記試験対象の変圧器の一次側端子との間に設けられた第1断路器と、
前記試験対象の変圧器の二次側巻線の端子間を短絡可能な第2断路器と、
前記可変電圧変換手段と前記試験対象の変圧器の二次側端子との間に設けられた第3断路器と、を備え、
前記第3断路器がオフされた状態で、前記第1断路器および第2断路器がオン状態にされることにより、通常使用状態よりも大きな電流が流されることで前記試験対象の変圧器を加速劣化させることが可能に構成したものである。
また、第1断路器および第2断路器を非導通状態にしかつ第3断路器を導通状態にして、試験対象の変圧器に逆電圧を印加させることで当該変圧器の一次側に高電圧を誘起させることができるため、特別高圧の受電設備を用意することなく変圧器に高電圧を印加して耐圧試験を実施することができる。さらに、変圧器に対して直接、電圧や電流を印加する構成であるため、計測したデータの正確性を高めることができる。
前記可変電圧変換手段と前記試験対象の変圧器の二次側端子との間には、前記第3断路器と直列をなすように第2遮断器が設けられ、該第2遮断器の遮断電流値は前記第1遮断器の遮断電流値よりも低い値に設定されているように構成する。
かかる構成によれば、変圧器の二次側に設けた第2断路器を導通させて大電流通電試験を実施可能にするために第1遮断器の遮断電流の値を高い値に設定したまま高電圧印加試験を実施している際に、過電流が発生したとしても第2遮断器によって過電流を遮断することが可能となる。また、電力供給経路の途中には可変電圧変換手段と直列に第1遮断器を設けているため、試験対象の変圧器や部品を過大電流から保護することができる。
かかる構成によれば、連続的に調整可能な電圧調整器と段階的に調整可能な調整用変圧器(銅損供給変圧器)とを備えるため、変圧器に供給する電圧値を任意かつ容易に設定することができる。
前記温度計測器の計測温度を読み取って温度値をデジタル信号に変換する計測温度読み取り手段と、
前記計測温度読み取り手段からの信号に応じて前記可変電圧変換手段を制御する制御手段と、を備えるようにする。
かかる構成によれば、変圧器がもともと備えている温度計測器(温度メータ)による計測結果を使用して、変圧器内の絶縁油が所定の温度となるように変圧器に流す電流を自動的あるいは手動で制御することが可能となる。
前記第3断路器を非導通状態にしかつ前記第1断路器および前記第2断路器を導通状態にして、前記試験対象の変圧器の二次側を短絡状態にすることで通常使用状態よりも大きな電流を連続して流し続けるとともに、
所定期間を経過するごとに、前記第1断路器および前記第2断路器を非導通状態にしかつ前記第3断路器を導通状態にして、前記試験対象の変圧器に逆電圧を印加させることで当該変圧器の一次側に高電圧を誘起させて耐圧試験を実施するようにする。
図1に示すように、本実施形態の加速劣化試験装置10は、変電所から供給される66kVのような特別高圧の交流電圧を6.6kVのような高圧の交流電圧に変換する特別高圧用変圧器21や、落雷や短絡などの事故発生時に回路を切り離して安全を保つために電流を遮断する大容量の遮断器22および負荷側における短絡等に起因する過電流を個別に遮断する遮断器23A,23B……を備えた配電設備20からの電力を、遮断器23Aおよび給電用ケーブル24を介して受けるように構成されている。
加速劣化試験装置10は、給電用ケーブル24の途中に設けられた断路器11A、該断路器11Aと加速劣化試験の対象となる供試体変圧器12の一次側との間に設けられた遮断器13A、可変電圧変換手段14および断路器11Bと、供試体変圧器12の二次側に設けられた短絡用の断路器11Cを有する。
特に限定されるものでないが、本実施形態では、可変電圧変換手段14は、連続的に変換電圧を変化させることができる電圧調整器14Aとタップの選択で段階的に変換電圧を切り替えることができる銅損供給変圧器14Bとによって構成されている。また、断路器11Aと遮断器13Aとの間には、断路器11Eを介して力率補償用のコンデンサ15が接続されている。
また、上記温度検出器16の測定信号は制御装置32へ供給され、制御装置32は内部の絶縁油の温度が例えば100℃を維持するように可変電圧変換手段14を制御する。この際に、変圧器がもともと備えている温度計測器(温度メータ)による計測結果を使用して、変圧器内の絶縁油が所定の温度となるように変圧器に流す電流を自動的あるいは手動で制御するように構成することができる。手動による場合は、図1の制御装置32は不要となる。
また、加速劣化試験装置10は変圧器の巻線に大電流を流して油の温度を上昇させて絶縁紙を加速劣化させるため、変圧器全体を加熱して絶縁紙を加速劣化させる特許文献1に記載されている発明に比べて、計測データの正確性を高めることができるとともに、変圧器全体を加熱する大型の加熱装置も不要となる。
本実施形態の加速劣化試験においては、以下に説明するように、巻線に定格以上の大電流を流して供試体変圧器12内の絶縁油を加熱する大電流通電試験と、供試体変圧器12に高電圧を印加する高電圧印加試験とを実施する。
本発明者らが試作した加速劣化試験装置10では、供試体変圧器12として定格容量が6780kVAで、一次側と二次側の変圧比が22kV/1.2kVの変圧器を使用した。このような仕様の変圧器は、通常状態で二次側に流れる電流は数100Aであるが、冬季における加速劣化試験装置10の大電流通電試験では、二次側におよそ3800Aの電流を流すことで油温を100℃に維持することができた。
遮断器13Aとしては、作動する電流値(動作電流値)を切り替えることができる遮断器を使用してもよく、その場合には、大電流通電試験を開始する前に、動作電流値を高い値に切り替えておく。
なお、高電圧印加試験(ステップS4)を実施する上記所定期間は2カ月に限定されず、1週間あるいは数日でも良い。また、所定期間を加速試験の加速度合い(絶縁油の温度)に反比例するように決定しても良い。
上記のような手順によれば、試験対象の供試体変圧器の二次側を短絡させることで、変圧器内部の巻線に大電流を流して変圧器内の絶縁油を加熱して温度を上昇させて加速劣化させることができるため、変圧器の温度を上昇させる大型の加熱装置を設けることなく加速劣化試験を行うことができる。そして、試験によって得られたデータを用いて、例えば解析モデルの有効性を短期間に評価することができる。
さらに、上記実施例では、逆バイアスによる高電圧印加試験方法を変圧器の劣化加速試験装置に適用した場合について説明したが、本発明における逆バイアス高電圧印加試験方法は通常の変圧器耐圧試験装置にも利用することができる。
11 断路器
12 供試体変圧器
13 遮断器
14 可変電圧変換手段
15 力率補償用コンデンサ
16 温度検出器
17 外気温センサ
18 電流計測器
20 配電設備
21 特別高圧用変圧器
22、23 遮断器
31 分析装置
32 制御装置
Claims (5)
- 変電所もしくは配電設備から供給される交流電圧を試験対象の変圧器の一次側へ供給するための電力供給経路と、該電力供給経路の途中に設けられた可変電圧変換手段と、
前記可変電圧変換手段と前記試験対象の変圧器の一次側端子との間に設けられた第1断路器と、
前記試験対象の変圧器の二次側巻線の端子間を短絡可能な第2断路器と、
前記可変電圧変換手段と前記試験対象の変圧器の二次側端子との間に設けられた第3断路器と、を備え、
前記第3断路器がオフされた状態で、前記第1断路器および第2断路器がオン状態にされることにより、通常使用状態よりも大きな電流が流されることで前記試験対象の変圧器を加速劣化させることが可能に構成されていることを特徴とする変圧器の加速劣化試験装置。 - 前記電力供給経路の途中には前記可変電圧変換手段と直列に第1遮断器が設けられ、
前記可変電圧変換手段と前記試験対象の変圧器の二次側端子との間には、前記第3断路器と直列をなすように第2遮断器が設けられ、該第2遮断器の遮断電流値は前記第1遮断器の遮断電流値よりも低い値に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の変圧器の加速劣化試験装置。 - 前記可変電圧変換手段は、変換電圧を連続的に調整可能な電圧調整器と、変換電圧を段階的に調整可能な調整用変圧器とから構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の変圧器の加速劣化試験装置。
- 前記試験対象の変圧器の内部の油の温度を検出し表示する温度計測器と、
前記温度計測器の計測温度を読み取って温度値をデジタル信号に変換する計測温度読み取り手段と、
前記計測温度読み取り手段からの信号に応じて前記可変電圧変換手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の変圧器の加速劣化試験装置。 - 請求項1~3のいずれかに記載の変圧器の加速劣化試験装置を用いた変圧器の加速劣化試験方法であって、
前記第3断路器を非導通状態にしかつ前記第1断路器および前記第2断路器を導通状態にして、前記試験対象の変圧器の二次側を短絡状態にすることで通常使用状態よりも大きな電流を連続して流し続けるとともに、
所定期間を経過するごとに、前記第1断路器および前記第2断路器を非導通状態にしかつ前記第3断路器を導通状態にして、前記試験対象の変圧器に逆電圧を印加させることで当該変圧器の一次側に高電圧を誘起させて耐圧試験を実施することを特徴とする変圧器の加速劣化試験方法。
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