JP7189526B2 - 嚥下機能判定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、被験者の嚥下機能に関する判定を行う嚥下機能判定装置に関する。
近年、肺炎での死亡者が増加しており、厚生労働省の発表によると、平成23年以降の死因の3位は肺炎である。そして、肺炎のうちの約7割を誤嚥性肺炎が占める。誤嚥性肺炎は、老人等の体力の弱った人が、食物をうまく飲み込めず、食物が、食道ではなく、(気管を通って)肺に入ることで、肺の炎症を引き起こす病気である。この誤嚥性肺炎を防ぐためには、嚥下の能力を向上させることが重要であり、そのためには、嚥下の機能を定量的に評価する必要がある。
嚥下機能を評価する試みとして、頸部(首)に電極を装着し、嚥下に伴う頸部周辺の筋肉の伸縮を生体インピーダンスで計測する技術(インピーダンス咽頭図(Impedance Pharyngoraphy)(IPG))を用いた嚥下機能の評価法がある。このIPGを用いた嚥下機能の評価法については、岡山大学の研究グループから、論文(例えば、非特許文献1及び2)が発表されている。これらの論文では、繰り返し採取した被験者自身のIPG波形を平均化した波形と、複数の健常者から繰り返し採取したIPG波形を平均化した波形(基準IPG波形)との類似度を求めて、この類似度という尺度を用いて嚥下機能を評価し得ることが述べられている。
ここで、嚥下機能の劣化は、喉の筋肉の萎縮が原因の一つとされており、喉の筋肉が委縮した被験者のIPG波形は、健常者のIPG波形と異なる。このため、上記非特許文献1に示されるような、被験者のIPG波形を平均化した波形と、健常者のIPG波形を平均化した波形(基準IPG波形)との類似度に基づいて、被験者の嚥下機能を評価することは可能である。
楠原俊昌、他5名、「インピーダンス咽頭図(IPG)を用いた加齢による嚥下機能減退の定量的評価法」、岡山大学医学部保健学科紀要、岡山大学医学部保健学科、2004年12月15日、第15巻、第1号、p.1-7 山本尚武、他5名、「嚥下活動の計測のための頸部電気インピーダンス」、電気学会論文誌A、一般社団法人電気学会、平成10年、第118巻、第3号、p.210-217
しかしながら、被験者のIPG波形が、健常者のIPG波形と異なる場合でも、嚥下に関する筋肉(特に、首の筋肉)が十分に発達している被検者については、嚥下機能に問題が無い場合がある。ここで、上記従来の嚥下機能の評価方法では、基準IPG波形と被験者のIPG波形との類似度のみに基づいて、被験者の嚥下機能を評価しているので、被験者のIPG波形が、健常者のIPG波形と異なっている場合には、被験者の嚥下に関する筋肉(特に、首の筋肉)の発達度合いが十分に考慮されることなく、被験者の嚥下機能に問題があると判定してしまう。
本発明は、上記課題を解決するものであり、被験者の嚥下に関する筋肉の状態を考慮して、被験者の嚥下機能を正確に判定することが可能な嚥下機能判定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の嚥下機能判定装置は、被験者の首の筋肉のインピーダンスを取得するインピーダンス取得手段と、前記インピーダンス取得手段により取得したインピーダンスに基づく、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータを用いて、前記被験者の嚥下機能に関する判定を行う嚥下機能判定手段とを備える。
この嚥下機能判定装置において、前記被験者の首の筋肉に所定の高周波数の交流電流を流した時に前記インピーダンス取得手段により取得した高周波インピーダンスと、前記被験者の首の筋肉に所定の低周波数の交流電流を流した時に前記インピーダンス取得手段により取得した低周波インピーダンスとの比である第1の筋肉状態パラメータ、又は前記インピーダンス取得手段により取得したインピーダンスにおける抵抗成分とリアクタンス成分との比である第2の筋肉状態パラメータを算出する筋肉状態パラメータ算出手段をさらに備え、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータには、前記筋肉状態パラメータ算出手段により算出した、前記第1の筋肉状態パラメータ又は前記第2の筋肉状態パラメータが含まれるようにしてもよい。
この嚥下機能判定装置において、前記インピーダンス取得手段により取得したインピーダンスに基づいて、嚥下活動中における前記被験者の首の筋肉のインピーダンスの波形である被験者IPG波形を求めるIPG波形取得手段をさらに備え、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータには、同一被験者による前記被験者IPG波形の再現性に関する指標が含まれるようにしてもよい。
この嚥下機能判定装置において、前記インピーダンス取得手段により取得したインピーダンスに基づいて、嚥下活動中における前記被験者の首の筋肉のインピーダンスの波形である被験者IPG波形を求めるIPG波形取得手段をさらに備え、前記嚥下機能判定手段は、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータと、基準となるIPG波形と前記被験者IPG波形との類似性に関する指標と、を用いて前記被験者の嚥下機能に関する判定を行うようにしてもよい。
この嚥下機能判定装置において、前記嚥下機能判定手段は、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータと、基準となるIPG波形と前記被験者IPG波形との類似性に関する指標と、を用いて前記被験者の嚥下機能に関する判定を行うようにしてもよい。
本発明によれば、被験者の嚥下に関する筋肉のうち、主要部分を成す首の筋肉の状態に関するパラメータを用いて、被験者の嚥下機能に関する判定を行うようにした。これにより、被験者の嚥下に関する筋肉の状態を考慮して嚥下機能を判定することができるので、被験者の嚥下機能を正確に判定することができる。
本発明の一実施形態における嚥下機能判定装置の概略構成を示す図。 同嚥下機能判定装置の電気的ブロック構成図。 同嚥下機能判定装置のCPUにより実現される機能ブロック構成図。 同嚥下機能判定装置において、被験者IPG波形の類似度のみに基づいて、被験者の嚥下機能を判定する場合における、閾値の設定方法の例を説明したグラフ。 筋組織を含む人体の組織の電気的等価回路を示す図。 筋萎縮が生じた時の筋組織に占める細胞外液の増加を示す、筋組織の断面の説明図。 同嚥下機能判定装置を用いた被験者のIPGの測定処理と、同嚥下機能判定装置が行う嚥下機能判定処理のフローチャート。 同嚥下機能判定装置で測定した被験者IPG波形の平均波形又は比較波形の例を示すグラフ。 同嚥下機能判定装置における、被験者の嚥下機能の判定方法の一例を説明したグラフ。 同嚥下機能判定装置における、被験者の嚥下機能の判定方法の他の例を説明したグラフ。 喉頭侵入、咽頭残留、及び誤嚥の説明図。 同嚥下機能判定装置で動的時間伸縮法(DTW)を用いた場合における、平均波形(の時系列データ)fの各点と、比較波形(の時系列データ)gの各点との対応付けの例を示す説明図。 動的時間伸縮法を用いた、比較波形(の時系列データ)gと平均波形(の時系列データ)fとの類似度の算出方法の説明図。 体積とインピーダンスとの関係の説明図。
以下、本発明を具体化した実施形態による嚥下機能判定装置について、図面を参照して説明する。図1に示されるように、本実施形態による嚥下機能判定装置1は、測定部2と本体部3とを備えている。測定部2と本体部3との間では、赤外線、NFC(Near Field Communication)等の無線通信により、各種のデータやコマンドの送受信が行われる。なお、測定部2と本体部3との間を有線で接続してもよいし、測定部2と本体部3とを一体化した装置にしてもよい。
図1に示すように、測定部2は、被験者の首に接触させて使用される。測定部2における、首に接触する側の面には、測定時に被験者の喉の周辺に接触させられる一対の電圧測定用電極4、5と、これらの電圧測定用電極4、5の外側に位置する一対の電流印加用電極6、7とが設けられている。
また、本体部3は、嚥下機能判定装置1による判定結果等を表示するための表示部8と、被験者等のユーザからの指示入力等の各種入力操作に用いられる入力部9とを備えている。
次に、図2を参照して、上記嚥下機能判定装置1の測定部2と本体部3の電気的構成について説明する。図2に示すように、測定部2は、上記の電圧測定用電極4、5と電流印加用電極6、7とに加えて、電流印加部21と、電圧測定部22と、インタフェース部23と、電源部24とを備えている。
電流印加部21は、電流印加用電極6と電流印加用電極7との間に、所定の周波数の交流電流を印加することにより、被験者の嚥下に関する首の筋肉に電流を流す。この電流印加部21から印加される交流電流の周波数は、例えば50kHzに設定される。ただし、この交流電流の周波数は、被験者の嚥下に関係する首の筋肉に交流電流を流すことが可能な周波数であればよく、5kHz~500kHzの周波数であれば好ましい。
インタフェース部23は、本体部3との無線通信用の通信インタフェースとして機能し、電流印加部21及び電圧測定部22に接続されている。このインタフェース部23は、本体部3から受信した測定開始を指示する指令を電流印加部21と電圧測定部22に出力する一方、電圧測定部22で測定された電圧値を本体部3に送信する。
本体部3は、上記の表示部8と入力部9に加えて、CPU30と、インタフェース部31と、メモリ32と、電源部33とを備えている。CPU30は、嚥下機能判定装置1全体の制御を行う。インタフェース部31は、測定部2との無線通信用の通信インタフェースとして機能し、CPU30に接続されている。メモリ32は、各種のプログラムとデータを記憶するROMと、RAMとを含んでいる。メモリ32に記憶されているプログラムには、後述する嚥下機能判定処理用のプログラムが含まれる。電源部33は、本体部3の各部に電力を供給する。
図3は、上記の本体部3のCPU30により実現される機能ブロックを示す。CPU30内の各ブロック(インピーダンス取得回路41、筋肉状態パラメータ算出回路42、IPG波形取得回路43、類似度算出回路44、嚥下機能判定回路45)の機能は、CPU30がメモリ32に格納された、嚥下機能判定処理用のプログラムを実行することにより実現される。ただし、この構成に限られず、例えば、符号41~45のブロックの機能の少なくとも一つを、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される個別のハードウェアによって実現してもよい。インピーダンス取得回路41、筋肉状態パラメータ算出回路42、IPG波形取得回路43、及び嚥下機能判定回路45は、それぞれ、請求項におけるインピーダンス取得手段、筋肉状態パラメータ算出手段、IPG波形取得手段、及び嚥下機能判定手段に相当する。
図3におけるインピーダンス取得回路41は、被験者の(嚥下に関係する筋肉を含む)首の筋肉のインピーダンスを取得する。
次に、本実施形態における上記インピーダンスの測定方法について説明する。CPU30のインピーダンス取得回路41は、被験者の首の筋肉のインピーダンス測定時に、電圧測定部22で測定された交流アナログ信号の形式の測定電圧値を、本体部3から受信すると、この電圧値のアナログ信号に対して、サンプリング処理を行って、デジタル信号に変換する。そして、インピーダンス取得回路41は、上記のデジタル信号形式の測定電圧に対して、離散フーリエ変換(DFT(Discrete Fourier Transform)処理を行うことにより、インピーダンスの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xとを求める。
より具体的に説明すると、CPU30は、上記の首の筋肉のインピーダンス測定前に、電流印加部21からの電流が、測定部2内の参照抵抗に流れるように、電流経路を切り替えた上で、この参照抵抗に電流印加部21からの電流を流して、この時の電圧測定部22による(アナログ信号形式の)測定電圧にサンプリング処理を行って、デジタル信号に変換する。そして、CPU30は、この参照抵抗に電流を流した時の(デジタル信号形式の)測定電圧に対して、DFT処理を行って、処理結果Srefを得る。この処理結果Srefは、実部と虚部とを有する複素数である。
CPU30は、上記のDFT処理結果Srefを、メモリ32に記憶しておく。そして、CPU30(のインピーダンス取得回路41)は、被験者の首の筋肉のインピーダンス測定時に、電流印加部21からの電流が、一対の電圧測定用電極4、5(に接する被験者の首)に流れるように、電流経路を切り替えた上で、電流印加部21からの電流を流して、この時の電圧測定部22による測定電圧にサンプリング処理を行って、デジタル信号に変換する。そして、CPU30(のインピーダンス取得回路41)は、この(デジタル信号形式の)測定電圧に対して、DFT処理を行って、処理結果Sobjを得る。この処理結果Sobjは、実部と虚部とを有する複素数である。
ここで、上記の参照抵抗への電流印加時に電流印加部21から印加される電流と、被験者の首の筋肉のインピーダンス測定時に電流印加部21から印加される電流とは、同じ値に設定されている。このことを利用し、CPU30(のインピーダンス取得回路41)は、上記のSobjと、メモリ32に記憶しておいたSrefとの比を変数とする項を含む算出式を用いて、被験者の首の筋肉のインピーダンスZを求める。
obj及びSrefは、上述したように複素数なので、インピーダンスZも、複素数となる。そして、この(被験者の首の筋肉の)インピーダンスZの実数部分と虚数部分が、それぞれ、インピーダンスの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xである。インピーダンス取得回路41は、上記のようにして、被験者の首の筋肉のインピーダンスZの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xとを求める。
また、CPU30のインピーダンス取得回路41は、上記の被験者の首の筋肉のインピーダンスZの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xとを用いて、下記の式(1)により、被験者の首の筋肉のインピーダンスの絶対値|Z|を算出する。
Figure 0007189526000001
筋肉状態パラメータ算出回路42は、インピーダンス取得回路41により取得した(首の筋肉のインピーダンスZにおける)、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xとの比の絶対値|X/R|(請求項における「第2の筋肉状態パラメータ」に相当)を算出する。IPG波形取得回路43は、インピーダンス取得回路41により取得したインピーダンスの絶対値|Z|に基づいて、嚥下活動中における被験者の首の筋肉のインピーダンスの波形(正確に言うと、インピーダンスの絶対値|Z|の波形)である被験者IPG波形を求める。類似度算出回路44は、IPG波形取得回路43により3回繰り返して求めた被験者IPG波形に基づいて、同一被験者による被験者IPG波形の類似度S(請求項における「同一被験者による被験者IPG波形の再現性に関する指標」に相当)を算出する。
嚥下機能判定回路45は、インピーダンス取得回路41により取得したインピーダンスに基づく、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータを用いて、被験者の嚥下機能に関する判定を行う。嚥下機能判定回路45は、類似度算出回路44により算出した、首の筋肉の状態に関するパラメータの一種である被験者IPG波形の類似度Sのみに基づいて、被験者の嚥下機能に関する判定を行うようにしてもよい。具体的には、被験者IPG波形の類似度Sが閾値より大きい場合は、当該被験者の嚥下機能が正常である(健常)と判定し、逆に、被験者IPG波形の類似度Sが閾値より小さい場合は、当該被験者の嚥下機能が正常でない(障害あり)と判定する。この閾値には、例えば、予め嚥下機能が健常であることが分かっている複数の被験者と、予め嚥下機能に障害があることが分かっている複数の被験者とにおける、被験者IPG波形の類似度Sの集計データが用いられて、設定されてもよい。この閾値の設定の仕方について、図4を参照して説明する。図4には、予め嚥下機能が健常であると分かっている複数の被験者A、B、C、D及びEと、予め嚥下機能に障害があると分かっている複数の被験者F、G、H、I及びJとにおける、被験者毎の被験者IPG波形の類似度Sが示されている。また、図4には、各被験者について、被験者IPG波形の類似度Sによって嚥下機能が正常であるか否かを判断するという観点から導出された判別線が示されている。図4に示される集計データを用いた例では、図4中の判別線が示す(通る)類似度Sの値が閾値として設定される。
ここで、被験者IPG波形の類似度Sは、被験者の嚥下動作の安定性を表わすものであるから、被験者の首の筋肉の発達度合いと相関する指標である。被験者の嚥下に関する筋肉のうち、主要部分を成す首の筋肉が十分に発達している場合(首の筋肉の萎縮が小さい場合)には、被験者の嚥下動作は安定したものとなる。そのため、類似度Sが高くなるにつれて被験者の首の筋肉の発達が大きくなる傾向がある。その一方で、被験者の嚥下に関する筋肉のうち、主要部分を成す首の筋肉が十分に発達してない場合(首の筋肉の萎縮が大きい場合)には、被験者の嚥下動作にばらつきが生じる。そのため、類似度が低くなるにつれて被験者の首の筋肉の発達度合いが小さい(首の筋肉が萎縮している)傾向がある。
また、嚥下機能判定回路45は、筋肉状態パラメータ算出回路42により算出した、首の筋肉の状態に関するパラメータである抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)のみに基づいて、被験者の嚥下機能に関する判定を行うようにしてもよい。具体的には、筋肉状態パラメータ算出回路42により算出した抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)が閾値より大きい場合は、当該被験者の嚥下機能が正常である(健常)と判定し、逆に、筋肉状態パラメータ算出回路42により算出した抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)が閾値より小さい場合は、当該被験者の嚥下機能が正常でない(障害あり)と判定する。
上記の|X/R|は、被験者の首の筋肉の状態を表す指標(請求項における「被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータ」)であり、この値が小さい程、筋肉が衰えていると考えられる。この理由について、図5及び図6を参照して説明する。
図5に示すように、筋組織を含む人体の組織の電気的等価回路は、細胞内液抵抗Ri及び細胞膜容量Cmから成る直列部と、細胞外液抵抗Reとの並列回路により表される。ここで、図6に示すように、筋組織は細胞内液を細胞膜で覆った筋細胞(筋線維)と、筋細胞の外側に存在する細胞外液とを有する。細胞内液及び細胞外液は抵抗として機能する。また、細胞膜は脂質二重層で形成されるため容量性を有することから、直流電流に近い低周波数の電流の場合は電気的に絶縁体となり、細胞内液に電流は流れない。しかし、周波数を高くしていくと細胞膜を通して細胞内液にも電流が流れる。よって、図5では、細胞膜をコンデンサ、細胞内液及び細胞外液を抵抗とみなして、筋組織を含む人体の組織をモデル化した。
そして、加齢や疾病により筋肉が劣化した(筋細胞が萎縮した)場合には、筋組織における細胞外液の割合が増加し、抵抗成分Rが大きくなる一方で、筋細胞は萎縮して小さくなるため、又は萎縮が進行して細胞の一部が消失して数が減るため、細胞膜の容量成分の影響は小さくなって、リアクタンス成分Xが小さくなる。従って、上記の|X/R|の値が小さい程、筋肉が衰えていると考えられるのである。
また、嚥下機能判定回路45は、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータである被験者IPG波形の類似度Sと、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータである抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)とに基づいて、被験者の嚥下機能に関する判定を行うようにしてもよい。この判定方法については、図7のフローチャートを参照して後述する。
本体部3のCPU30は、上記の嚥下機能判定回路45による判定結果を、表示部8に表示することにより、被験者等のユーザに、上記の判定結果を報知する。
次に、図7のフローチャートを参照して、この嚥下機能判定装置1を用いた被験者のIPGの測定処理と、このIPGの測定時に嚥下機能判定装置1が行う嚥下機能判定処理について説明する。被験者が、図1に示すように、電圧測定用電極4、5及び電流印加用電極6、7を有する測定部2を首に装着して(図7のS1)、安静状態にした上で(S2)、入力部9を用いてIPG測定の開始を指示すると(S3)、CPU30は、1回目の被験者のIPGの測定(1回目の被験者IPG波形の取得)を開始する。そして、被験者が水を飲むと(S4)、CPU30のIPG波形取得回路43は、インピーダンス取得回路41により取得したインピーダンスに基づいて、被験者の水の嚥下活動中における首の筋肉のインピーダンスの絶対値|Z|の波形(1回目の被験者IPG波形)を求める。ただし、この被験者IPG波形は、上記のように、元々は、インピーダンスの絶対値|Z|の波形であるが、インピーダンスの平均値が0となるようにレベルシフトした波形である。そして、被験者が、嚥下活動後、再び安静状態になった後に(S5)、上記S2乃至S5の処理を、さらに2回繰り返すと(3回のIPG測定を完了すると)、嚥下機能判定装置1のCPU30は、図7における嚥下機能判定の処理を行う。
嚥下機能判定装置1のCPU30(の筋肉状態パラメータ算出回路42)は、上記の3回のIPG測定で取得した抵抗成分Rの平均値とリアクタンス成分Xの平均値とを計算した上で(S6)、これらの平均値に基づいて、|X/R|を算出する(S7)。すなわち、筋肉状態パラメータ算出回路42は、リアクタンス成分Xの平均値を抵抗成分Rの平均値で除することにより、|X/R|を求める。
上記S7の処理が完了すると、嚥下機能判定装置1のCPU30(の類似度算出回路44)は、上記S1~S5のIPG測定処理において、IPG波形取得回路43により3回繰り返して求めた被験者IPG波形に基づいて、同一被験者による被験者IPG波形の類似度Sを算出する(S8)。具体的には、CPU30(の類似度算出回路44)は、3回分の被験者IPG波形を平均化した波形(以下、「平均波形」という)fと、3回分の被験者IPG波形のうちの一つのIPG波形(以下、「比較波形」という)gとの類似度Sを、下記の式(2)により求める。ただし、上記の平均波形fと比較波形gは、いずれも、図8に示すような、インピーダンスの平均値が0となるようにレベルシフトしたIPG波形である。
Figure 0007189526000002
上記式(2)におけるfとg(1≦i≦j)は、それぞれ、j個の時系列データから構成されるfとgの第i番目の値を表す。
上記の比較波形gには、例えば、3回分の被験者IPG波形のうち、上記の平均波形との差が最も大きいものが用いられる。ただし、比較波形gとして、3回分の被験者IPG波形のうち、上記の平均波形との差が2番目に最も大きい波形を用いてもよいし、上記の平均波形との差が最も小さい波形を用いてもよい。
上記式(2)で算出される類似度Sの値は、比較波形gが平均波形fに似ている程、大きくなる。類似度Sの値は、比較波形gと平均波形fとが同じ波形の時には1になり、比較波形gと平均波形fとが逆相の波形の時には-1になる。従って、-1≦S≦1となる。被験者の嚥下に関する筋肉のうち、主要部分を成す首の筋肉が衰えている場合には、被験者の嚥下動作にばらつきが生じるために、(比較波形gと平均波形fとの)類似度Sの値は、小さくなる。
次に、CPU30の嚥下機能判定回路45は、図9に示すように、上記S7で算出した|X/R|とS8で求めた類似度Sを、グラフの縦軸と横軸にとった場合における、判別式y=wx+aを用いて、被験者の嚥下機能が正常か否かを判別するための|X/R|の閾値yを算出する(S9)。なお、上記の判別式において、yは、上記の嚥下機能が正常か否かを判別するための|X/R|の閾値であり、w及びaは、判別用の係数であり、xは、類似度Sである。なお、上記の係数w及びaは、予め得られた嚥下動作(嚥下機能)が正常時と異常時の|X/R|と類似度Sのデータから決定した係数である。
CPU30の嚥下機能判定回路45は、上記S7で求めた|X/R|が、上記S8で求めた類似度Sを上記の判別式に代入して求めた閾値y以上の場合には(S10でYES)、被験者の嚥下機能が正常であると判定する(S11)。これに対して、上記S7で求めた|X/R|が、上記の閾値y未満の場合には(S10でNO)、CPU30の嚥下機能判定回路45は、被験者の嚥下機能が異常であると判定する(S12)。
上記のように、本実施形態の嚥下機能判定装置1によれば、被験者の嚥下に関する筋肉のうち、主要部分を成す首の筋肉の状態に関するパラメータを用いて、被験者の嚥下機能に関する判定(嚥下機能が正常であるか否かの判定)を行うようにした。これにより、被験者の嚥下に関する筋肉の状態を考慮して、嚥下機能を判定することができるので、被験者の嚥下機能を正確に判定することができる。
また、本実施形態の嚥下機能判定装置1によれば、上記の被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータには、被験者IPG波形の類似度Sが含まれるようにした。上述したように、被験者IPG波形の類似度Sは、被験者の嚥下動作の安定性を表わすものであり、被験者の首の筋肉の発達度合いと相関する指標である。そのため、このように被験者IPG波形の類似度Sに基づいて被験者の嚥下機能を判定することにより、被験者の嚥下に関する筋肉の状態を考慮して、嚥下機能を判定することができるので、被験者の嚥下機能を正確に判定することができる。
また、本実施形態の嚥下機能判定装置1によれば、首の筋肉の状態に関するパラメータには、抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)が含まれるようにした。上述したように、被抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)は、筋組織の状態を表すものであり、被験者の首の筋肉の発達度合いと相関する指標である。そのため、このように抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)に基づいて被験者の嚥下機能を判定することにより、被験者の嚥下に関する筋肉の状態を考慮して、嚥下機能を判定することができるので、被験者の嚥下機能を正確に判定することができる。
また、本実施形態の嚥下機能判定装置1によれば、上記の首の筋肉の状態に関するパラメータには、上記の抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)に加えて、同一被験者による被験者IPG波形の再現性に関する指標である類似度Sが含まれるようにした。この場合には、筋組織の状態と、被験者の嚥下動作の安定性との双方を考慮して、嚥下機能を判定することができるので、被験者の嚥下機能を、より正確に判定することができる。
変形例:
なお、本発明は、上記の各実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。次に、本発明の変形例について説明する。
変形例1:
上記の実施形態では、1つの判別式(判別線)y=wx+aを用いて、被験者の嚥下機能が正常か異常かを判定した。けれども、本発明における嚥下機能の判定(嚥下機能に関する判定)は、これに限られず、例えば、図10に示すように、y=w1x+a1と、y=w2x+a2の2つの判別式(判別線)を用いて、被験者の嚥下機能が、正常か、軽度異常(咽頭残留又は喉頭侵入の疑いあり)か、重度異常(誤嚥の疑いあり)かを、判定するようにしてもよい。
ここで、図11を参照して、上記の喉頭侵入、咽頭残留、及び誤嚥について、説明する。被験者が、水等の食物を飲み込んだ時に、嚥下動作が正常に行われた場合には、図11の矢印Aに示すように、食物は、被験者の食道を通って、胃に送られる。ところが、被験者の嚥下に関する筋肉(特に、首の筋肉)が衰えている場合には、図11の矢印B及びCに示すように、食物は、被験者の気管(声帯)の方向に向かう場合がある。このように、食物が気管の方向に向かう場合のうち、図11の矢印Bに示すように、嚥下動作中に食物が喉頭蓋の底に侵入してしまうことを、喉頭侵入と言い、被験者が食物を飲み込んだ後も、食物が咽頭(主に、喉頭蓋の底)に残留することを、咽頭残留と言う。また、図11の矢印Cに示すように、食物が、被験者の気管内に侵入してしまうことを、誤嚥と言う。
変形例2:
また、上記の実施形態では、相関係数(標本相関係数)の公式を利用して、IPG波形(平均波形fと比較波形g)の類似度Sを求めた。けれども、類似度(請求項における「同一被験者による被験者IPG波形の再現性に関する指標」)の求め方は、上記の方法に限られず、例えば、IPG測定処理において取得したIPG波形(例えば、平均波形fと比較波形g)の時系列データに対して、高速フーリエ変換処理を行って、周波数スペクトルを求め、この周波数スペクトルの類似度を、IPG波形間の類似度として用いてもよい。
また、複数のIPG波形(の時系列データ)間の類似度を、以下のように、動的時間伸縮法(DTW(Dynamic Time Warping)を利用して求めてもよい。ここで、動的時間伸縮法は、複数の時系列データにおける、同じ時間の時系列データにはずれがあるが、これらの時系列データの波形の周期や、データの動きが似通っている場合に、これらの類似度を大きくするように工夫した類似度の算出方法である。この動的時間伸縮法では、ある時系列データにおける1点のデータを、他の時系列データにおける複数点のデータに対応付けることができるため、2つの時系列データの変動に時間的なばらつきがあったり、2つの時系列データにおける計測データの数が異なる場合でも、求めた類似度を、人間の直感に合致したものにすることができる。
上記の動的時間伸縮法(DTW)を、上記の比較波形g(の時系列データ)と平均波形f(の時系列データ)との類似度の算出に用いた場合には、図12に示すように、比較波形gにおける1点のデータを、平均波形fにおける複数点のデータに対応付けることも、平均波形fにおける1点のデータを、比較波形gにおける複数点のデータに対応付けることも、可能である。
図13は、上記の動的時間伸縮法を用いた、比較波形g(の時系列データ)と平均波形f(の時系列データ)との類似度の算出方法を示す。動的時間伸縮法では、2つの時系列データの比較したい2点間の距離(比較波形gのある点におけるデータ値と、平均波形fのある点におけるデータ値との差)を計算する。例えば、図13に示すような距離行列60の(2,2)の要素についての2点間の距離の計算では、平均波形f(の時系列データ)の2つ目の点(f[2])のデータ値3と、比較波形g(の時系列データ)の2つ目の点(g[2])のデータ値2との差(|3-2|=1)を計算する。そして、計算した2点間の距離((2,2)の要素の場合は、1)を、左側、左下、下にある(距離行列60の)要素の値のうち、一番小さい値((2,2)の要素の場合は、左側(2,1)、左下(1,1)、下(1,2)要素の値のうち、一番小さい値である0)に加算して、この加算結果の値((2,2)の要素の場合は、1)を、その時点(要素)におけるDTW距離にする。
そして、上記のような平均波形fの各点と比較波形gの各点との間のDTW距離、すなわち、距離行列60の各要素(i,j)におけるDTW距離を求める処理を、図13に示すような距離行列60の(1,1)の要素(最初の要素)から、一番右上の要素(最後の要素)(図13の例では、(8,8)の要素)まで、繰り返す。
上記の処理により得られた最後の(一番右上の)要素(図13の例では、(8,8)の要素)におけるDTW距離が、比較波形g(の時系列データ)と平均波形f(の時系列データ)との類似度を表す。従って、図13の例では、これらの波形(の時系列データ)の類似度は、7である。なお、動的時間伸縮法(DTW)により求めた類似度の値は、その値が大きい程、比較される2つの時系列データが似ていないので、動的時間伸縮法により求めた類似度は、非類似度と言った方が正確である。また、図13に示すように、距離行列60の最後の(一番右上の)要素から、左側、左下、下にある要素の値のうち、一番小さい値の要素に破線を引いていくと、比較波形g(の時系列データ)における各点と、平均波形f(の時系列データ)における各点との対応関係を示す、ワーピングパス61を得ることができる。
変形例3:
上記の実施形態では、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータ(以下、「筋肉状態パラメータ」と略す)として、抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)を用いた場合の例を示した。けれども、被験者の嚥下機能の判定に用いる筋肉状態パラメータは、これに限られず、例えば、被験者の首の筋肉に所定の高周波数の交流電流を流した時に取得した高周波インピーダンスと、被験者の首の筋肉に所定の低周波数の交流電流を流した時に取得した低周波インピーダンスとの比(Z高周波数/Z低周波数)であってもよい。
上記の高周波インピーダンスと低周波インピーダンスとの比(Z高周波数/Z低周波数)が大きい程、筋肉が衰えていると考えられる。この理由について、上記図5及び図6を参照して説明する。図5に示した筋組織の回路モデルにおいて、直流電流を用いた場合には、一点鎖線で示すように、細胞外液抵抗Reを電流経路とするために、計測値にも細胞外液の情報が反映される。しかし、交流電流を用いた場合には、二点鎖線で示すように、細胞外液抵抗Reと細胞膜容量Cmと細胞内液抵抗Riを電流経路とするために、計測値にも細胞外液と細胞内液の情報が反映される。周波数が高くなるにつれ、細胞膜容量Cmの影響が低下するため、細胞内液抵抗Riの情報がより多く反映されることになる。従って、電流の周波数を高くするに伴い、求めるインピーダンスへの筋細胞の反映度合が高くなる。
インピーダンスZの定義は、図14に示すような体積V、抵抗率ρΩm、断面積A、長さLの物質のモデルを考えると、インピーダンスZ=ρ×L/Aとなる。ここで、体積VはA×Lで表されるので、体積V=A×L=ρ×L/Zで表される。上述したように、生体に交流電流を供給する場合、低周波数領域においては、脂質二重層で形成される細胞膜によるコンデンサ(細胞膜容量Cm)には電流が流れず、生体に供給される電流はそのほとんどが細胞外液を流れる。すなわち、低周波数で計測された生体電気インピーダンス値を上記の体積の式に当てはめた場合には、得られる体積の値は、細胞外液の体積の値であると言える。一方、高周波数領域においては、細胞膜によるリアクタンス成分(コンデンサ)は無視することができる。したがって、高周波数で計測された生体電気インピーダンス値を前記体積の式に当てはめた場合には、その値は細胞内液を含む全組織の体積の値であると言える。
ここで、筋萎縮と呼ばれる筋細胞が細くなる現象が生じると、図6に示す筋組織の断面モデル図から分かるように、筋組織に占める細胞内液量が減少し、細胞外液量が増加する。つまり、筋組織全体に占める筋細胞の体積の比率が低下することになる。
ここで、上記の体積の式を変形して、Z=ρ×L/Vとし、この式を用いて、上記の高周波インピーダンスと低周波インピーダンスとの比(Z高周波数/Z低周波数)を求めると、下記の式(3)になる。
高周波数/Z低周波数=(ρ高周波数×L/V高周波数)/(ρ低周波数×L/V低周波数)=(ρ高周波数×V低周波数)/(ρ低周波数×V高周波数)・・・(3)
上述したように、高周波数領域の場合にはインピーダンスは組織全体のインピーダンス値となり、低周波数領域の場合にはインピーダンスは細胞外液のインピーダンス値となるので、低周波数の場合の抵抗率と高周波数の場合の抵抗率がほぼ同じとすると、上記式(3)は、以下の式(4)で表すことができる。
高周波数/Z低周波数≒(ρ組織全体×V細胞外液)/(ρ細胞外液×V組織全体
≒V細胞外液/V組織全体・・・(4)
ただし、0<Z高周波数/Z低周波数<1
つまり、低周波数と高周波数で計測した生体電気インピーダンス値の比(Z高周波数/Z低周波数)は、対象組織全体に占める細胞外液量の比率と、ほぼ同じになることが分かる。筋萎縮が進むと、上述したように細胞外液量が増加する。このため、筋萎縮が進んだ(筋肉が衰えた)被験者の高周波インピーダンスと低周波インピーダンスとの比(Z高周波数/Z低周波数)は、1に近づく(健常者に比べて大きくなる)と考えられる。よって、上記のように、高周波インピーダンスと低周波インピーダンスとの比(Z高周波数/Z低周波数)が大きい程、筋肉が衰えていると考えられるのである。
変形例4:
上記の実施形態では、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータ(|X/R|)に加えて、同一被験者による被験者IPG波形の類似度を用いて、被験者の嚥下機能に関する判定を行った。けれども、これに限られず、例えば、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータに加えて、基準となるIPG波形と被験者IPG波形との類似度(請求項における「基準となるIPG波形と被験者IPG波形との類似性に関する指標」に相当)を用いて、被験者の嚥下機能に関する判定を行ってもよい。上記の「基準となるIPG波形」としては、例えば、複数の健常者から繰り返し採取したIPG波形を平均化した波形であって、図8に示す平均波形fと同様に、インピーダンスの平均値が0となるようにレベルシフトした波形が考えられる。
また、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータに加えて、同一被験者による被験者IPG波形の類似度と、上記の基準となるIPG波形と被験者IPG波形との類似度とを用いて、被験者の嚥下機能に関する判定を行ってもよい。
また、被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータ(例えば、抵抗成分とリアクタンス成分との比の絶対値(|X/R|)と、高周波インピーダンスと低周波インピーダンスとの比(Z高周波数/Z低周波数))のみを用いて、被験者の嚥下機能に関する判定を行ってもよい。
変形例5:
上記の実施形態では、電圧測定部22で測定した電圧値に対してDFT処理を行うことで、インピーダンスの抵抗成分Rとリアクタンス成分Xとを求めたが、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xの算出方法は、これに限られず、例えば、以下の方法で、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xを求めてもよい。すなわち、(1)まず、電流印加部内の出力電流検出回路で検出した交流電流の電流値と、電圧測定部で測定した電圧値とに基づいて、首の筋肉の(生体電気)インピーダンスの絶対値|Z|を算出する。(2)次に、上記の出力電流検出回路で検出した電流波形と、電圧測定部で測定した電圧波形から、電流に対する電圧の位相のずれ量である位相角(インピーダンス角)φを求める。(3)そして、上記のインピーダンスの絶対値|Z|と位相角φとに基づいて、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xとを算出する。
変形例6:
上記の実施形態では、嚥下機能判定装置1が、測定部2と本体部3から構成される装置である場合の例を示したが、本体部3の代わりに、PC(Personal Computer)、及びスマートフォン等のモバイル端末等の情報処理装置を用いてもよい。この構成においては、嚥下機能判定装置は、測定部と上記の情報処理装置とから構成される。
1 嚥下機能判定装置
41 インピーダンス取得回路(インピーダンス取得手段)
42 筋肉状態パラメータ算出回路(筋肉状態パラメータ算出手段)
43 IPG波形取得回路(IPG波形取得手段)
45 嚥下機能判定回路(嚥下機能判定手段)
S 類似度(同一被験者による被験者IPG波形の再現性に関する指標)

Claims (6)

  1. 被験者の首の筋肉のインピーダンスを取得するインピーダンス取得手段と、
    前記インピーダンス取得手段により取得したインピーダンスに基づく、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータを用いて、前記被験者の嚥下機能に関する判定を行う嚥下機能判定手段と
    前記インピーダンス取得手段により取得したインピーダンスに基づいて、嚥下活動中における前記被験者の首の筋肉のインピーダンスの波形である被験者IPG波形を求めるIPG波形取得手段とを備える、嚥下機能判定装置において、
    前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータには、同一被験者による前記被験者IPG波形の類似度が含まれる、嚥下機能判定装置。
  2. 前記被験者の首の筋肉に所定の高周波数の交流電流を流した時に前記インピーダンス取得手段により取得した高周波インピーダンスと、前記被験者の首の筋肉に所定の低周波数の交流電流を流した時に前記インピーダンス取得手段により取得した低周波インピーダンスとの比である第1の筋肉状態パラメータ、又は前記インピーダンス取得手段により取得したインピーダンスにおける抵抗成分とリアクタンス成分との比である第2の筋肉状態パラメータを算出する筋肉状態パラメータ算出手段をさらに備え、
    前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータには、前記筋肉状態パラメータ算出手段により算出した、前記第1の筋肉状態パラメータ又は前記第2の筋肉状態パラメータが含まれることを特徴とする請求項1に記載の嚥下機能判定装置。
  3. 前記同一被験者による前記被験者IPG波形の類似度を、動的時間伸縮法を用いて算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の嚥下機能判定装置。
  4. 前記嚥下機能判定手段は、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータと、基準となるIPG波形と前記被験者IPG波形との類似性に関する指標と、を用いて前記被験者の嚥下機能に関する判定を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の嚥下機能判定装置。
  5. 被験者の首の筋肉のインピーダンスを取得する工程と、
    前記インピーダンスを取得する工程で取得したインピーダンスに基づいて、嚥下活動中における前記被験者の首の筋肉のインピーダンスの波形である被験者IPG波形を求める工程と、
    前記インピーダンスを取得する工程で取得したインピーダンスに基づく、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータを用いて、前記被験者の嚥下機能に関する判定を行う工程とを備える嚥下機能判定方法において、
    前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータには、同一被験者による前記被験者IPG波形の類似度が含まれる、嚥下機能判定方法。
  6. 被験者の首の筋肉のインピーダンスを取得する工程と、
    前記インピーダンスを取得する工程で取得したインピーダンスに基づいて、嚥下活動中における前記被験者の首の筋肉のインピーダンスの波形である被験者IPG波形を求める工程と、
    前記インピーダンスを取得する工程で取得したインピーダンスに基づく、前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータを用いて、前記被験者の嚥下機能に関する判定を行う工程と、をコンピュータに実行させるための嚥下機能判定プログラムにおいて、
    前記被験者の首の筋肉の状態に関するパラメータには、同一被験者による前記被験者IPG波形の類似度が含まれる、嚥下機能判定プログラム。
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