[プリンターの全体構成]
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。まず、本発明に係る液体供給ユニット乃至は液体噴射装置が適用されるインクジェット式プリンターについて説明する。図1は、実施形態に係るインクジェット式プリンター1の外観を示す斜視図、図2は、図1のII-II線方向の断面図、図3は、アウターカバー102を取り外した状態の、プリンター1の正面図である。なお、図1~図3、後出の図において、前後、左右、上下の方向表示を付しているが、これは説明の便宜のためであり、何ら方向の限定を企図したものではない。
プリンター1(液体噴射装置)は、各種サイズの紙シートや樹脂シート、或いは布生地などの各種ワークWに、インクジェット方式で印字、印画などの印刷処理を行うプリンターであって、とりわけ大サイズ且つ長尺のワークに対する印刷処理に好適なプリンターである。プリンター1は、キャスター付きのベースフレーム101と、このベースフレーム101に載置され、前記印刷処理を実行する装置本体11とを含む。
装置本体11は、ワーク搬送路12、搬送ローラー13、ピンチローラーユニット14及びキャリッジ2を含む。ワーク搬送路12は、印刷処理の施されるワークWを、後方側から装置本体11へ搬入し、前方側から搬出するための、前後方向に延びる搬送路である。搬送ローラー13は、左右方向に延び、ワーク搬送路12のワークWを間欠送りする駆動力を発生するローラーである。ピンチローラーユニット14は、搬送ローラー13に対して上方から対向するように配置され、搬送ローラー13と搬送ニップを形成するピンチローラーを備えている。ピンチローラーユニット14は、左右方向に所定間隔を置いて複数個配置されている。
キャリッジ2は、ワークWに対して印刷処理を行うユニットが搭載され、ベースフレーム101上において左右方向に往復移動が可能な移動体である。ベースフレーム101の後方側には、キャリッジ2の前記往復移動をガイドするガイドレールを備えたキャリッジガイド15が、左右方向に延在するように立設されている。キャリッジガイド15には、タイミングベルト16が左右方向に周回移動が可能に組み付けられている。キャリッジ2は、タイミングベルト16に対する固定部を有し、タイミングベルト16の正転又は逆転の前記周回移動に伴って、前記ガイドレールに案内されつつ、左右方向に移動する。
前記印刷処理は、搬送ローラー13及びピンチローラーユニット14がワークWを間欠送りし、ワークWの停止中にキャリッジ2が左右方向に移動して当該ワークWを印画走査(ワークWへのインクの噴射)するという態様で実行される。なお、ワーク搬送路12において、キャリッジ2の通過経路の下方には、ワークWを吸引する機能が付設されたプラテン121(図2)が配置されている。前記印刷処理時には、ワークWがプラテン121に吸着された状態で、キャリッジ2が印画走査を実行する。
装置本体11は、アウターカバー102によって覆われている。アウターカバー102の右方側の領域には、サイドステーション103が配置されている。サイドステーション103の内部には、印刷処理用のインク(所定の液体)を貯留するインクカートリッジIC(図5)を保持する、不動のインクカートリッジ棚17が収容されている。
サイドステーション103の前方部分は、キャリッジ2の退避空間となるキャリッジ退避エリア104である。図3に示すように、ベースフレーム101には、ワーク搬送路12に応じた間隔を左右方向に置いて、左フレーム105及び右フレーム106が立設されている。作業領域で区分すると、これら左右フレーム105、106間の領域が、前記印刷処理が実行可能な印刷エリアP(処理エリア)とされている。キャリッジガイド15は、印刷エリアPよりも長い左右幅を有しており、キャリッジ2は印刷エリアPの右外側まで移動可能である。キャリッジガイド15の右端側、つまり印刷エリアPの右隣の領域は、メンテナンスエリアMである。前記印刷処理が実行されないとき、キャリッジ2はメンテナンスエリアM(キャリッジ退避エリア104)に退避する。また、後述する加圧パージ処理も、このキャリッジ退避エリア104において実行される。
ベースフレーム101の後方側には、印刷処理対象のワークWの巻回体である送り出しロールWaを収容する送り出し部107が備えられている。また、ベースフレーム101の前方側には、印刷処理後のワークWの巻回体である巻き取りロールWbを収容する巻き取り部108が備えられている。巻き取り部108は、巻き取りロールWbの巻回軸を回転駆動する図略の駆動源を備え、テンションローラー109で所定の張力をワークWに付与しつつ、当該ワークWを巻き取る。
[キャリッジの構成]
図4は、キャリッジ2の全体斜視図である。キャリッジ2には、ワークWに対してインク(液体)を噴射するヘッドユニット21(液体噴射ヘッド)と、インクカートリッジIC(図5)からヘッドユニット21へインクを供給する液体供給ユニット3とが搭載されている。図4では、2台のヘッドユニット21と、8台の液体供給ユニット3とがキャリッジ2に搭載されている例を示している。すなわち、1台のヘッドユニット21当たり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各インクを供給するために、4台の液体供給ユニット3が装備されている。なお、各液体供給ユニット3に異なる色のインクが充填され、2つのヘッドユニット21から最大8色のインクが噴射される態様でもよい。
キャリッジ2は、ヘッドユニット21及びヘッドユニット21を保持するキャリッジフレーム20を備える。キャリッジフレーム20は、最も下方に位置する下段フレーム201と、下段フレーム201の上方に間隔を置いて配置された上段フレーム202と、上段フレーム202の上面に組み付けられたラック203と、上段フレーム202の後方面に取り付けられた背面フレーム204とを含む。下段フレーム201と上段フレーム202とは、上下方向に延びる連結支柱205によって連結されている。背面フレーム204には、図略のボールねじ機構が搭載されており、そのボールねじで駆動されるナット部が、下段フレーム201に取り付けられている。また、背面フレーム204には、上下方向に延びるガイド支柱206が備えられている。前記ボールねじ機構の駆動により、下段フレーム201及び上段フレーム202の連結体は、ガイド支柱206でガイドされつつ、上下方向へ移動することができる。つまり、キャリッジ2の本体部分は、背面フレーム204に対して上下方向に移動可能である。さらに、背面フレーム204には、後述する上流管33の上流端331が取り付けられる背面プレート207が立設されている。
下段フレーム201には、ヘッドユニット21が搭載されている。キャリッジ2の本体部分は上記の通り上下方向に移動可能であるので、ワークWに対するヘッドユニット21の上下方向の高さ位置が調整可能である。上段フレーム202には、液体供給ユニット3が搭載されている。8台の液体供給ユニット3は、ラック203内において左右方向に整列された態様で、上段フレーム202に支持されている。背面フレーム204には、キャリッジガイド15の前記ガイドレールでガイドされる被ガイド部や、タイミングベルト16への固定部等が具備されている。
図5は、一つの液体供給ユニット3及びヘッドユニット21を示す斜視図である。液体供給ユニット3は、タンク部31及びポンプ部32を備えた本体部30と、本体部30のインク供給方向(液体供給方向)の上流側に配置される上流管33(第1供給路の一部)と、本体部30の下流側に配置される下流管34(第2供給路の一部)と、ヘッドユニット21側から液体供給ユニット3側へインクを戻す経路となる戻し管35(戻し経路)と、モニター管36と、バイパス管32P(バイパス供給路)とを備える。
タンク部31は、負圧環境下でヘッドユニット21に供給されるインクを一時的に貯留する空間を形成する領域である。ポンプ部32は、前記負圧環境の形成のための減圧処理の際、ヘッドユニット21(インク吐出部22)の清浄化のための加圧パージ処理の際、並びにヘッドユニット21と液体供給ユニット3との間でインクを循環させる循環処理の際に稼働されるポンプ9(ポンプ機構;図7~図9)を収容する領域である。
上流管33は、タンク部31(第2室42)とインクカートリッジIC(液体収容容器)とを連通する供給管である。上流管33の上流端331は、インクカートリッジICから延出されたチューブ330の終端部に接続され、下流端332はタンク部31の入口部分に接続されている。チューブ330には、上流管33の開閉の役目を果たす供給弁33V(第1弁体)が取り付けられている。供給弁33Vが開とされると、インクカートリッジICからタンク部31へインクが供給され得る状態となり、供給弁33Vが閉とされると、前記供給が不能な状態となる。
下流管34は、タンク部31(第2室42)とヘッドユニット21とを連通する供給管である。下流管34の上流端341は、後述する逆流防止機構部38を介してタンク部31の出口部分に接続され、下流端342はヘッドユニット21に接続されている。戻し管35は、ヘッドユニット21とタンク部31(第2室42)とを連通する管である。戻し管35の上流端351はヘッドユニット21に、下流端352はタンク部31に各々接続されている。戻し管35の開閉するためのクリップ35V(第2弁体)が、当該戻し管35に装着されている。図5では、クリップ35Vが戻し管35を圧潰して当該戻し管35が閉とされている状態を示している。モニター管36は、タンク部31内のインクレベルを表示する管である。バイパス管32Pは、タンク部31の前記負圧環境(第2室42)を経由せずに、インクを下流管34に送るための管路である。バイパス管32Pは、ポンプ部32の上流側に配置されたバイパス上流管BP1と、下流側に配置されたバイパス下流管BP2とを含む。
ヘッドユニット21は、インク吐出部22、制御ユニット部23、エンドチューブ24及び回収チューブ25を含む。インク吐出部22は、インク滴をワークWに向けて吐出するノズル部分である。インク吐出部22におけるインク滴の吐出方式としては、ピエゾ素子を用いたピエゾ方式、加熱素子を用いたサーマル方式などを適用することができる。制御ユニット部23は、インク吐出部22が備える前記ピエゾ素子又は前記加熱素子を制御する制御基板を備え、インク吐出部22からのインク滴の吐出動作を制御する。
エンドチューブ24は、下流管34の下流端342とインク吐出部22とを繋ぐチューブである。下流端342はキャップ式ソケットであり、エンドチューブ24の上端嵌合部にワンタッチ装着が可能である。回収チューブ25は、インク吐出部22と戻し管35の上流端351とを繋ぐチューブである。なお、回収チューブ25は、初期使用時に液体供給ユニット3に封入されている保存液を排出するためにも用いられる。初期使用時、下流管34の下流端342がエンドチューブ24の上端嵌合部に装着され、回収チューブ25には別途チューブが接続され、前記保存液の貯留空間を開放することにより、前記保存液を排出する動作が実行される。
図6(A)及び(B)は、ヘッドユニット21の前後方向の断面を模式的に示す図であって、図6(A)はクリップ35Vが閉とされている状態(印刷モード)、図6(B)はクリップ35Vが開とされている状態(循環モード)を各々示している。インク吐出部22は、インクをワークWに向けて吐出する複数のインク吐出孔22H(液体吐出口)を備える。ヘッドユニット21の内部には、インク吐出孔22Hへ個別にインクを供給する個別通路26と、これら個別通路26にインクを供給する共通通路27とが備えられている。
共通通路27は、水平方向に延びるインク通路である。各個別通路26の上流端は、共通通路27に連通している。下流管34は、その下流端342がエンドチューブ24を介して、共通通路27の上流側に連通している。戻し管35は、その上流端351が回収チューブ25を介して、共通通路27の下流側に連通している。換言すると、共通通路27の上流側は下流管34を通して、共通通路27の下流側は戻し管35を通して、各々タンク部31(第2室42)と連通している。
図6(A)に示すように、クリップ35Vにより戻し管35が閉とされている状態で、下流管34からインクがヘッドユニット21に供給されると、当該インクは、共通通路27及び各個別通路26を経て、インク吐出孔22Hから吐出される。一方、図6(B)に示すように、クリップ35Vが開放され戻し管35が開とされている状態で、下流管34からインクがヘッドユニット21に供給されると、当該インクは、専ら戻し管35を通ってタンク部31に戻ることになる。この場合、戻し管35が負圧化されると、インク吐出孔22Hからインクが漏出することはない。
[液体供給システムの概要]
本実施形態では、インクカートリッジICがヘッドユニット21の上方に配置され、水頭差によってインクがヘッドユニット21に供給される装置構成とされている。インクを水頭差供給する場合、常圧での供給を行うとヘッドユニット21のインク吐出部22から常時インクが吐出してしまう。このため、インクの供給経路中に負圧環境を作る負圧形成部を介在させ、インク吐出部22を適度な負圧とする必要がある。液体供給ユニット3のタンク部31は、上記の負圧形成部として機能する。
図7は、本実施形態のキャリッジ2において採用されている液体供給システムを概略的に示すブロック図である。インクカートリッジICは、インク吐出部22よりも高さhだけ高い位置に配置されている。この高さhが水頭差となり、当該水頭差によって、インクカートリッジICのインクがヘッドユニット21に供給される。液体供給ユニット3は、インクカートリッジICとヘッドユニット21との間のインク供給経路の途中に組み入れられている。液体供給ユニット3のタンク部31は、前記水頭差を受けて大気圧よりも高い圧力となる第1室41(上流室/第1供給路の一部)と、第1室41に対してインク供給方向の下流側に配置され、負圧に設定される第2室42(圧力室)とを備える。第1室41は、負圧操作が与えられない部屋であって、大気圧に加えて前記水頭差による圧力Pが加わる部屋となる。この圧力Pは、水の密度(インクは密度において水と同等に扱える)をρ、重力加速度をg、水頭差をhとするとき、P=ρgh[Pa]で表される。第1室41は、上流管33を介してインクカートリッジICと連通している。第2室42は、下流管34を介してインク吐出部22と連通している。
第1室41と第2室42とを区画する壁部には、押圧部材5に連結された開閉バルブ6(開閉部材)が配置されている。また、第2室42を区画する壁部の一部は、大気圧検知フィルム7(可撓性フィルム部材)によって構成されている。第2室42内が所定の閾値を超える負圧になると、大気圧検知フィルム7が大気圧を検知して変位する。この変位力が押圧部材5に与えられ、連結されている開閉バルブ6が閉姿勢から開姿勢に姿勢変更し、第1室41と第2室42とが連通状態とされる。通常の印刷処理時におけるインク供給ルートは、上流管33、第1室41、第2室42及び下流管34を通過するルートである。これに加え、第2室42を経由せずに第1室41と下流管34とを短絡させるバイパス管32Pが具備されている。バイパス管32Pの上流端は、第1室41を介して上流管33と接続され、下流端は下流管34に合流している(合流部a)。バイパス管32Pには、正逆回転が可能なポンプ9が配置されている。
図7は、当該液体供給システムが印刷処理を行う印刷モードが実行されている状態を示す図でもある。この印刷モードでは、上流管33の供給弁33Vは開とされる一方、戻し管35のクリップ35Vは閉とされる。また、前記印刷モードにおいて、第1室41及び第2室42にはインクが所定量充填され、第2室42が所定の負圧とされる。第1室41の圧力は、上述の通り水頭差により大気圧+ρgh[Pa]であり、いつでもインクカートリッジICから水頭差によってインクが供給され得る状態である。印刷モードの基本設定として、第2室42を負圧とするため開閉バルブ6は閉姿勢とされ、第1室41と第2室42とは隔離された状態とされる。ポンプ9は停止状態とされる。ポンプ9はチューブポンプであり、当該ポンプ9の停止時にはバイパス管32Pは閉止状態となる。このため、下流管34及びインク吐出部22も、負圧に維持された状態となる。
第2室42へのインク充填をスムースに行わせるため、第2室42には空気抜き機構部37が付設されている。イニシャルの使用時やメンテナンス後などにおいて、第2室42に所定量のインクを初期充填する必要がある。空気抜き機構部37は、負圧環境に設定される第2室42を一時的に大気と連通させて(第2室42の空気を抜いて)、前記初期充填を促進させる。また、第2室42に収容されたインクが、高熱化によって気泡を発生する場合がある。空気抜き機構部37は、前記気泡に基づく空気を第2室42から除去する際にも用いられる。
ヘッドユニット21が作動し、インク吐出部22がインク滴を吐出すると、第2室42内のインクが消費され、これに伴い第2室42の負圧の程度が進行してゆく。つまり、インク吐出部22は、インク滴の吐出の度に、大気と隔離された状態にある第2室42からインクを吸い取る動作を行い、第2室42の負圧度を高めて行く。そして、第2室42内のインクの減少に伴い、当該第2室42が所定の閾値を超える負圧となると、上記の通り大気圧検知フィルム7が大気圧を検知して変位する。この変位力によって、押圧部材5を通して開閉バルブ6が閉姿勢から開姿勢に姿勢変更し、第1室41と第2室42とが連通状態となる。従って、両室の圧力差によって、第1室41から第2室42へインクが流入する。
第2室42へのインクの流入に伴い、当該第2室42の負圧度は徐々に緩和され、大気圧に近づいてゆく。同時に、大気圧検知フィルム7から押圧部材5へ与えられる変位力も徐々に小さくなってゆく。そして、第2室42が前記所定の閾値を下回る負圧となると、開閉バルブ6は閉姿勢に復帰し、第1室41と第2室42とは再び隔離された状態となる。この際、第1室41から第2室42へ流入した分だけ、水頭差によってインクカートリッジICから第1室41へインクが補充される。印刷モードでは、このような動作が繰り返されることになる。
本実施形態の液体供給システムは、上記の印刷モードの他、循環モード、加圧パージモード及び減圧モードが実行可能とされている。循環モードは、戻し管35を用いてインクを循環させ、ヘッドユニット21内のインク通路(個別通路26、共通通路27)に抱き込まれている空気を除去するモードである。加圧パージモードは、インク吐出部22におけるインク詰まりを解除若しくは予防するため、高圧のインクをインク吐出部22に供給し、吐出させるモードである。減圧モードは、イニシャルの使用時やメンテナンス後などに、常圧状態の第2室42を前記所定の負圧に設定するためのモードである。
図8は、循環モードが実行されている状態を示すブロック図である。この循環モードでは、供給弁33Vは閉とされて上流管33が閉じられた状態とされる一方、クリップ35Vは開とされて戻し管35は開いた状態とされる。また、バイパス管32Pに配置されたポンプ9が正転駆動される。図6に示した通り、戻し管35の上流端351は、ヘッドユニット21内の共通通路27の下流端に連通されている。一方、戻し管35の下流端352は、第1室41に連通されている。また、戻し管35の下流端352は、直接的に連通する第1室41と、開閉バルブ6とを介して、第2室42とも連通している。
循環モードにおいてポンプ9が正転駆動されると、インクは、バイパス下流管BP2、合流部aよりも下流側の下流管34、ヘッドユニット21内の共通通路27、戻し管35及びバイパス上流管BP1からなる循環経路を通して循環するようになる。この際、供給弁33Vが閉とされているので、ポンプ9のインク吸引動作によって戻し管35及び共通通路27は負圧となる。従って、インク吐出孔22Hからインクが漏洩することはない。循環モードの実行により、ヘッドユニット21側に入り込んだ空気を、液体供給ユニット3(第1室41)へ回収することが可能となる。これにより、空気が個別通路26やインク吐出孔22Hに滞留させないようにすることができ、インクの吐出不良を抑止することができる。なお、第1室41に回収された空気は、開閉バルブ6を通して第2室42に移行させることができる。そして、空気抜き機構部37によって、当該空気は外部へ放出される。
図9(A)は、加圧パージモードが実行されている状態を示す図である。加圧パージモードでは、ポンプ9は正転駆動される。クリップ35Vは閉とされる。ポンプ9の正転駆動によって、インクは、第2室42を迂回して、上流管33から第1室41及びバイパス管32Pを経て、下流管34へ直接向かうことになる。つまり、ポンプ9で加圧されたインクが、インク吐出部22に供給される。これにより、インク吐出部22からインクが強制吐出され、インク吐出部22が清浄化される。なお、加圧パージモードと同様の動作が、初期使用時において液体供給ユニット3に封入されている保存液を排出する際にも実行される。
加圧パージモードの実行の際、加圧されたインクが下流管34を通して第2室42へ逆流することを防止するために、逆流防止機構部38が備えられている。逆流防止機構部38は、下流管34とバイパス管32Pの下流端との合流部aよりも上流側において、下流管34に配置されている。逆流防止機構部38により、下流管34の合流部aよりも上流側が閉止されるので、バイパス管32Pにおいて生成される高圧インクは、全てインク吐出部22に向かう。従って、第2室42を区画している大気圧検知フィルム7の破損が防止される。
図9(B)は減圧モードが実行されている状態を示す図である。減圧モードでは、ポンプ9は逆転駆動される。クリップ35Vは閉とされる。ポンプ9が逆転駆動されると、下流管34及びバイパス管32Pを通して、インク吐出部22及び第2室42が減圧される。インク吐出部22及び第2室42は、この減圧モードによって所定の負圧、つまり、水頭差供給を行う場合にあっても、インク吐出部22からインク滴が漏れ落ちない負圧に設定される。なお、インク吐出部22を過度の負圧にすると、インク吐出部22におけるピエゾ素子等の駆動によるインク吐出が阻害されることがある。従って、インク吐出部22及び第2室42は、例えば-0.2~-0.7kPa程度の弱い負圧とすることが望ましい。
[液体供給ユニットの全体構造]
続いて、上述した液体供給システムの各モードの実行を可能とする、本実施形態に係る液体供給ユニット3の構造について詳述する。図10(A)、(B)は、液体供給ユニット3の斜視図であって、図10(A)は第1室41側から見た斜視図、図10(B)は第2室42側から見た斜視図である。図11は、第1室41側の封止フィルム7Aを取り外した状態、図12(A)~(C)は、第2室42側の大気圧検知フィルム7を取り外した状態の、液体供給ユニット3の斜視図を各々示す。図13は、液体供給ユニット3の分解斜視図である。
図7~図9に基づき予備的に説明した通り、液体供給ユニット3は、タンク部31及びポンプ部32を有する本体部30、上流管33、下流管34、戻し管35、バイパス管32P、空気抜き機構部37、逆流防止機構部38、押圧部材5、開閉バルブ6及び大気圧検知フィルム7を備える。この他、液体供給ユニット3は、第2室42のインク液面をモニターするためのモニター管36と、第1室41を区画する壁面の一部を構成する封止フィルム7Aとを備えている。
本体部30は、前後方向に延びる平板からなるベース基材300(図11)を備える。ベース基材300の前方側が、タンク部31の基板となるタンク部ベース板310(壁部)、後方側が、ポンプ部32においてハウジング構造を形成するポンプ部ハウジング320である。タンク部ベース板310の左面側に第1室41が配置され、右面側に第2室42が配置されている。第1室41及び第2室42は、インクを貯留可能な空間である。タンク部ベース板310には、第1室41と第2室42とを連通させる連通口43が穿孔されている。この連通口43に、上述の開閉バルブ6が配置されている。
図11に示されているように、第1室41は、大略的に左方からの平面視でU字型の形状を有する幅狭の空間からなる。この第1室41は、タンク部ベース板310から左方に突設された第1区画壁411によって区画されている。第1区画壁411は、所定距離を置いて対向する、一対の壁片によって構成されている。第1室41の上流端である流入部412は、後述するフィルター室44に連通している。上流管33からタンク部31に供給されるインクは、フィルター室44を経由し、流入部412から第1室41内へ入る。
第1室41は、流入部412から前方へ水平方向に延び、続いて下方へ湾曲する形状を有している。第1室41の下流端には、バイパス連通室413及び戻し連通室414がY分岐状に連なっている。バイパス連通室413は、第1室41とバイパス上流管BP1とを繋ぐための区画である。バイパス連通室413の下端付近を区画する壁部に、バイパス上流管BP1の上流端が接続されている。戻し連通室414は、第1室41と戻し管35とを繋ぐための区画である。戻し連通室414の前端付近を区画する壁部に、戻し管35の下流端352が接続されている。なお、図7及び図8では、戻し連通室414を戻し管35の一部として扱っている。
戻し連通室414の上方に下モニター連通室415が、第1室41の水平部分の上方には上モニター連通室416が、各々配置されている。下モニター連通室415にはモニター管36の上流端361が、上モニター連通室416にはモニター管36の下流端362が、各々連通されている。図12も参照して、タンク部ベース板310には、下連通孔41Aと、この下連通孔41Aよりも上方に配置された上連通孔41Bとが穿孔されている。下モニター連通室415は下連通孔41Aを通して、上モニター連通室416は上連通孔41Bを通して、それぞれ第2室42と連通している。つまり、モニター管36は、第2室42の上端側と下端側とに連通しており、モニター管36内のインク液位は、第2室42内のインク液位と連動したものとなる。
本実施形態ではモニター管36は、透明な樹脂チューブからなる。従って、ユーザーは、モニター管36を視認することで、第2室42内のインク液位を知見することができる。本実施形態では、図4に示したように、キャリッジ2に複数の液体供給ユニット3が左右方向に並列配置される構成とされる。このため、たとえ右側面に位置する大気圧検知フィルム7として透明なフィルムを用いたとしても、最右部の液体供給ユニット3以外は、第2室42内のインク液位を視認させることができない。しかし、本実施形態では、液体供給ユニット3の前方側に、モニター管36が立設される態様とされている。このため、ユーザーは、キャリッジ2の前方側から、各液体供給ユニット3のモニター管36を視認することで、それぞれの第2室42内のインク液位を知見することができる。
第1室41の上下方向の中央付近には、円筒状のキャビティからなるバネ座417が左方へ突設されている。バネ座417は、後述の付勢バネ45を収容するキャビティであり、第2室42側に開口している。第1室41は、このバネ座417の外周壁をほぼ半周回するように設定されている。バネ座417の後方側にはスペーサ室418が設けられている。スペーサ室418は、第1室41の容積を可及的に小さくするために設けられている。第1室41の容積が大きくなると、貯留するインク量が多くなる。液体供給ユニット3には、キャリッジ2の移動の際に揺動力が加わるが、インクの重量が大きくなると慣性力により大気圧検知フィルム7及び封止フィルム7Aが剥離乃至は破損する懸念がある。なお、このような懸念が生じない場合は、スペーサ室418を省き、例えばバネ座417を取り囲むような態様の第1室41としても良い。
連通口43は、バネ座417の上方位置において、第1室41内に配置されている。第1室41内においてタンク部ベース板310から左方に円筒型のボス部419が突設されている。このボス部419を左右方向に貫通するように、連通口43が設けられている。第1室41は減圧処理等が行われず、大気圧に加えて水頭差による圧力P=ρghが加わる部屋である。流入部412から第1室41内にインクが流入すると、バイパス連通室413、戻し連通室414から順次インクが溜まり始める。インクの液位が連通口43を超過すると、当該連通口43を通してインクを第2室42へ供給可能な状態となる。また、ポンプ9が稼働されると、バイパス上流管BP1を通して、第1室41に貯留されたインクが吸引され、バイパス下流管BP2及び下流管34を通して、高圧化されたインクがヘッドユニット21に向けて供給される。
主に図12(A)~(C)、図13を参照して、第2室42は、右方からの平面視で円形の形状を有している。この第2室42に対して、上述の押圧部材5及び開閉バルブ6と、後述する付勢バネ45及びレバー部材46とが組み付けられている。図12(A)は、これら4つの部材が第2室42に組み付けられている状態を、図12(B)は、押圧部材5が取り外された状態を、図12(C)は、さらに開閉バルブ6及び付勢バネ45が取り外された状態を、各々示している。
第2室42は、タンク部ベース板310から右方に突設された第2区画壁421によって区画されている。第2区画壁421は、円筒型の形状を有する壁である。第2室42は、左方側に位置する第1室41と、タンク部ベース板310を挟んで対向する位置関係にある。上述のバネ座417は、円筒型の第2区画壁421で囲まれる領域の中心位置、つまり第2区画壁421と同心となる位置において、タンク部ベース板310に凹設されている。付勢バネ45は、このバネ座417の窪み内に収容されている。連通口43は、バネ座417の中心点を通る鉛直線上において、バネ座417の上に配置されている。
第2室42の上端部422側には、第2室42の空気抜きを行わせるためのレバー部材46が配置されている。下端部423(第2室42の最下部)において、第2区画壁421には供給孔42Hが穿孔されている。この供給孔42Hに、逆流防止機構部38を介して下流管34の上流端341が連通している。供給孔42Hに対応して、第2室42の下方に逆流防止機構部38が位置し、逆流防止機構部38の下方に下流管34とバイパス管32P(バイパス下流管BP2)の下流端との合流部aが位置するよう、第2室42、逆流防止機構部38及び下流管34が上下方向に配置されている。第2室42に貯留されたインクは、インク吐出部22に吸引される態様で、供給孔42H及び逆流防止機構部38を通して、下流管34に供給される。逆流防止機構部38については、後記で詳述する。
下端部423付近において、タンク部ベース板310から前後一対の支持板424が右方へ突設されている。一対の支持板424は、後述の押圧部材5を軸支する軸支部425を各々備えている。上述の下連通孔41Aは、前方の支持板424の前方に隣接する位置において、タンク部ベース板310に穿孔されている。また、上連通孔41Bは、上端部422付近において、タンク部ベース板310に穿孔されている。
第2室42の上端部422には、ボス部426と保持フレーム427とが上方へ突設されている。ボス部426は、鉛直上方に延びる筒体であり、第2室42を大気と連通させる開口であるボス孔42A(図22)を内部に備えている。保持フレーム427は、ボス部426を前後方向において挟み込むように配置された一対のフレーム片からなる。各保持フレーム427の上端には、互いに対向する方向に折曲された係止爪428が備えられている。ボス部426及び保持フレーム427は、空気抜き機構部37の一部を構成しており、後記で詳述するレバー部材46(図20)が組み付けられる。
図11を参照して、第1室41のインク供給方向の上流側には、フィルター室44が配置されている。フィルター室44は、上流管33と共に、インクカートリッジICから第1室41へインクを供給する経路を構成している。フィルター室44は、左右方向の断面形状が矩形であってインク供給方向へ角筒状に延びる空間を区画する内壁面441を有している。後記で詳述(図19)するが、フィルター室44は、インク中の異物を除去するフィルター部材442、このフィルター部材442の保持部材443、フィルター部材442を固定するコイルバネ446等を収容するための空間である。フィルター室44の天壁には、インクの流入口44H(図19(B))が穿孔されている。この流入口44Hに対応して、前記天壁には受けプラグからなる流入ポート447(図25)が立設されている。流入ポート447には、上流管33の下流端332が挿入接続されている。
図10、図13を参照して、第1室41の左面側の開口は、樹脂製の封止フィルム7Aによって封止される。封止フィルム7Aは、第1室41だけでなく、バイパス連通室413、戻し連通室414、下モニター連通室415、上モニター連通室416及びフィルター室44を覆い隠すことが可能な外形形状を有している。封止フィルム7Aの周縁部が第1区画壁411他の壁の開口端面に溶着又は接着されることで、封止フィルム7Aは各室の開口を封止する。
第2室42の右面側の開口は、可撓性を有する樹脂製のフィルム部材からなる大気圧検知フィルム7によって封止される。大気圧検知フィルム7は、第2室42の第2区画壁421の、右方からの平面視の壁形状に合致した円形の外形形状を有している。大気圧検知フィルム7は、その周縁部が第2区画壁421の開口端面に溶着又は接着され、第2室42の開口を封止する。なお、大気圧検知フィルム7は、特段テンションが付与されない状態で、溶着又は接着される。
ポンプ部32は、タンク部31の後方斜め下に隣接して配置され、ポンプ9を収容するポンプキャビティ321と、ポンプ9の偏心カム91(図25)を軸支するカム軸93(図4)が挿通されるカム軸挿通孔322とを備えている。ポンプキャビティ321は、ポンプ部ハウジング320に配置された円筒状のキャビティである。カム軸挿通孔322は、ポンプキャビティ321と同心となる位置に設けられたボス孔である。ポンプキャビティ321の右面側の開口は、ポンプカバー323(図10)によって封止されている。ポンプ部ハウジング320の後側面には2個の位置決めピン391が、下側面にはリブ392が、各々突設されている。これら位置決めピン391及びリブ392は、液体供給ユニット3をキャリッジ2へ搭載する際の位置決め部材として機能する。
本実施形態の液体供給ユニット3は、タンク部31とポンプ部32とが一体的に形成されている。すなわち、タンク部31の基板となるタンク部ベース板310と、ポンプキャビティ321を備えたポンプ部ハウジング320とが一体化され、液体供給ユニット3自身に加圧パージ用のポンプ9が搭載されている。これによりキャリッジ2の装置構成のコンパクト化、シンプル化を図ることができる。
[負圧供給機構の詳細]
続いて、第2室42内のインクの減少に応じて、第1室41から第2室42へインクが供給される負圧供給機構について詳述する。負圧供給機構は、先に図7に基づいて動作の概要を説明した押圧部材5、開閉バルブ6及び大気圧検知フィルム7を含み、さらに付勢バネ45(付勢部材)を備えている。開閉バルブ6は連通口43に配置され、連通口43を閉じる閉姿勢と、連通口43を開く開姿勢との間で姿勢変更する。付勢バネ45は、開閉バルブ6を前記閉姿勢に向かう方向に付勢する。押圧部材5は、開閉バルブ6を前記開姿勢に向かう方向に押圧可能である。大気圧検知フィルム7は、第2室42内のインクの減少に伴って発生する負圧に基づいて変位し、その変位力を押圧部材5に伝達する。
<押圧部材>
図14(A)及び図14(B)は、互いに斜視方向を異ならせた押圧部材5の斜視図であって、開閉バルブ6も付記されている。押圧部材5は、第2室42内に回動可能に配置される部材である。押圧部材5は、円形の平板からなる円板部51と、円板部51の下端側5Cから下方へ延出された一対のアーム部52と、各アーム部52の延出先端部(下端部)に設けられた支点部53と、円板部51の上端側5Dに配置された一対のリンクボス54(押圧部)と、レバー部材46と干渉する受け斜面55とを備えている。一対の支点部53は、第2室42に配置されている一対の支持板424の軸支部425(図12)で軸支される。これにより、円板部51は、支点部53の軸回りに回動可能である。
円板部51は、第2室42を区画する円筒型の第2区画壁421の内径に対して、1/2程度のサイズの直径を有する円板である。第2区画壁421と軸支部425で軸支された状態における円板部51との配置関係は、概ね同心状である。円板部51は、大気圧検知フィルム7と対向する第1面51Aと、開閉バルブ6と対向する(タンク部ベース板310と対向する)第2面51Bとを備えている。円板部51の径方向中央には、バネ嵌合突起511が第2面51B側から突出するように設けられている。このバネ嵌合突起511の第2面51B側には、コイルバネからなる付勢バネ45の右端部が嵌合される。なお、第1面51A側においては、バネ嵌合突起511の領域は円柱状の凹部となっている。
円板部51は、大気圧検知フィルム7から変位力を受ける受圧部5Aと、付勢バネ45から付勢力を受ける被付勢部5Bとを備える。受圧部5Aは、円板部51の第1面51Aの所定位置に設定される。本実施形態では受圧部5Aは、第1面51Aにおけるバネ嵌合突起511の周縁部の領域である。被付勢部5Bは、第2面51B側であって、付勢バネ45が嵌合されるバネ嵌合突起511の領域である。すなわち、被付勢部5Bは、受圧部5Aに対応する位置に設定されている。
受圧部5Aが大気圧検知フィルム7から変位力を受けない場合、円板部51は、直立に近い状態となる。但し、付勢バネ45の右端が被付勢部5Bに当接しており、その付勢力により大気圧検知フィルム7の内面に第1面51Aが接する状態となる。一方、受圧部5Aが大気圧検知フィルム7から付勢バネ45の付勢力以上の変位力を受けると、円板部51は、支点部53の軸回りに左方へ回動し、直立状態から左方へ傾いた状態となる。
一対のアーム部52は、円板部51の下端側5Cに前後方向に互いに離間して配置されている。一対のアーム部52の各上端部521は、円板部51の下端側5Cよりも上方に延び、バネ嵌合突起511の両側部下方に各々位置している。一対のアーム部52の先端部522は、下端側5Cからそれぞれ下方へ直線状に延出している。先端部522からは、各々支点部53が前後方向に突設されている。詳しくは、前側の先端部522の前側面から支点部53が前方に、後側の先端部523の後側面から支点部53が後方にというように、互いに離間する方向に突設されている。支点部53は、支持板424の軸支部425に嵌め込まれる。アーム部52の先端部522に支点部53を設けることは、押圧部材5の支点部53回りの回動時に、円板部51の上端側5Dの揺動幅を大きくすることに貢献する。
一対の支点部53は、前後方向に延びる回動軸5AX上に並んでいる。前側の支点部53と、後側の支点部53とは、所定の間隔Dを置いて配置されている。つまり、一対の支点部53は、円板部51の平面方向の中央領域に相当する部分を挟んで互いに離間して配置されている。間隔Dは、例えば円板部51の直径の40%~90%程度のサイズに設定することができる。これにより、一対の支点部53が作る回動支点は、円板部51の中央領域を挟む程度に離間した幅広の回動支点となる。このため、前記回動支点回りに回動する円板部51は、回動軸5AXと直交する軸回りに捻転し難くなる。従って、円板部51の回動動作を安定化させることができる。
一対のリンクボス54は、円板部51の上端側5D付近において、第2面51Bから左方に向けて突設されている。詳しくは、円板部51には、上端側5Dを開口縁とし径方向内側へ延びる切り欠き部512が設けられており、切り欠き部512の空間に臨む前後の側端縁から、矩形の平板からなるリンクボス54が各々立設されている。各リンクボス54は、リンク孔541を備えている。このリンク孔541は、押圧部材5と開閉バルブ6とのリンク結合に用いられる。このリンク結合により、押圧部材5の回動動作に開閉バルブ6の開閉動作が連動するようになる。
換言すると、リンクボス54が、支点部53の軸回りに回動する押圧部材5の回動動作に応じて、開閉バルブ6を左右方向に移動するよう押圧する押圧部となる。一対のリンクボス54は、下端側5Cに配置された一対の支点部53に対して、所定距離だけ離間した上端側5Dに配置されている。つまり、押圧部となるリンクボス54は、回動支点を作る支点部53に対して、円板部51において対極位置に配置される。このため、押圧部材5の回動時におけるリンクボス54の移動量、及び該リンクボス54にリンク結合された開閉バルブ6の移動量を大きくすることができる。
受圧部5A又は被付勢部5B(力点)と支点部53(支点)との関係において、リンクボス54(作用点)は、支点部53に対して受圧部5A及び被付勢部5Bよりも遠い位置に配置されている。換言すると、リンクボス54は、受圧部5A及び被付勢部5Bを間に挟んで支点部53と対向するように、円板部51の上端側5Dに配置されている。このような配置とすることで、受圧部5A又は被付勢部5Bが受けた移動力を、これらに対する離間分だけ増幅して、リンクボス54に与えることができる。
<開閉バルブ>
続いて、開閉バルブ6について説明する。開閉バルブ6は、第1室41と第2室42とを連通させる連通口43に配置される。そして、開閉バルブ6は、押圧部材5の支点部53回りの回動動作に従動して連通口43内で左右方向に移動することで、連通口43を開閉する。前記回動動作への従動のため、開閉バルブ6は円板部51のリンクボス54とリンク結合されている。
図15(A)は、開閉バルブ6の斜視図、図15(B)は、開閉バルブ6の分解斜視図である。図16(A)は、図10(A)のXIV-XIV線断面図、図16(B)は、図16(A)のA1部の拡大図である。開閉バルブ6は、バルブホルダー61と、このバルブホルダー61によって保持されるアンブレラバルブ66との組立体からなる。連通口43は、タンク部ベース板310及びボス部419を貫通する円筒型の孔であって、大径部43Aと、該大径部43Aより内径が小さい小径部43Bと、両者の径差に基づく段部43Cとを有している。
バルブホルダー61は、連通口43に組み付けられた状態において、第1室41側(左側)に位置する第1端部611と、第2室42側(右側)に位置する第2端部612とを備える、半筒形の部材である。バルブホルダー61は、第1端部611側の筒部62と、第2端部612側の平板部63と、筒部62と平板部63との間に位置する中間部64と、平板部63に配設されたリンクピン65とを含む。アンブレラバルブ66は、バルブホルダー61の第1端部611側において保持されている。
筒部62は、バルブホルダー61において最も外径の大きい筒状部分である。筒部62は、筒部62の外周面であるガイド面62Sと、筒部62の一部が周方向に切り欠かれてなる流路切り欠き621と、筒部62の内周側に環状に凹設された保持溝622と、を含む。筒部62は、連通口43の大径部43Aに収容され、開閉バルブ6が左右方向に移動する際に、ガイド面62Sが大径部43Aの内面でガイドされる。流路切り欠き621は、開閉バルブ6が開姿勢の時にインクが流れる流路となる。保持溝622は、アンブレラバルブ66の係止球部663を係止するための溝である。
中間部64は、筒部62よりも外径が小さい筒状部分である。中間部64には、流路切り欠き621に連なる開放部分である開放部641と、アンブレラバルブ66のピン部662を収容するピン収容部642とを含む。中間部64は、連通口43の小径部43Bに収容され、その外周面も小径部43Bの内面でガイドされる。筒部62と中間部64との境界部には、両者の外径差に基づく段差によって形成された環状当接部62Aが存在する。環状当接部62Aは、連通口43の段部43Cと対向し、当接する。
平板部63は、開閉バルブ6が連通口43に組み付けられた状態において、連通口43から右方に突出する部分である。平板部63は、左右方向に延びる表裏一対の平面を有している。リンクピン65は、前記一対の平面から各々突設されている。このリンクピン65は、図14(B)に示すように、押圧部材5のリンクボス54に備えられているリンク孔541に嵌合される。この嵌合により、押圧部材5と開閉バルブ6とはリンク結合され、押圧部材5の支点部53回りの回動運動を、開閉バルブ6の直線運動に変換することができる。
アンブレラバルブ66は、ゴム製の物品であって、傘部661、傘部661から右方に延出するピン部662、及びピン部662に一体的に設けられた係止球部663を備えている。傘部661は、連通口43の大径部43Aの内径よりも大きい傘直径を有している。傘部661の内側(右面側)の周縁部は、シール面67である。シール面67は、連通口43の周囲の壁面であってボス部419の突出端面であるシール壁面43Sと当接することによって、連通口43を封止状態とすることが可能である(閉姿勢)。反面、シール面67がシール壁面43Sから離間すると、前記封止状態は解除される(開姿勢)。なお、傘部661は、右面側に所定の圧力が加わると、その傘形状が反転する(図29)。
ピン部662は、左右方向に延びる棒状部分であり、傘部661の支柱となる部分である。ピン部662は、バルブホルダー61の筒部62及び中間部64のピン収容部642に入り込む。つまり、傘部661はバルブホルダー61の第1端部611に当接する一方で、ピン部662はバルブホルダー61の内側筒部内に嵌り込むことが可能である。係止球部663は、ピン部662の左端寄りの部分が球状に膨設されてなり、保持溝622に嵌り込む部分である。係止球部663が保持溝622に嵌合されることで、アンブレラバルブ66は、左右方向の移動が規制された状態でバルブホルダー61に保持される。すなわち、アンブレラバルブ66は、バルブホルダー61と一体的に左右方向へ移動する。
<付勢バネ>
付勢バネ45は、円板部51の第2面51Bとタンク部ベース板310との間に介在され、第2面51Bを支持(付勢)するコイルバネである。詳しくは、図16(B)に示されているように、付勢バネ45の右端側は円板部51のバネ嵌合突起511に嵌め込まれ、左端側はタンク部ベース板310に凹設されているバネ座417に収容されている。円板部51の受圧部5Aが、付勢バネ45の右方向の付勢力に抗する左方向の変位力を受けたとき、円板部51は支点部53の軸回りに、左方へ回動することになる。前記変位力を受けない場合は、前記付勢力によって円板部51は直立した姿勢を維持することになる。
<開閉バルブの動作>
続いて、開閉バルブ6の開閉動作について説明する。図16は、開閉バルブ6が閉姿勢の状態を示している。この状態は、大気圧検知フィルム7が押圧部材5(円板部51)を回動させるほど変位力を発生していない状態、すなわち、付勢バネ45のバネ圧(付勢力)と第2室42の内圧との合計が、大気圧よりも勝っている状態である。第2室42は負圧ではあるが、付勢バネ45は、前記負圧による大気圧検知フィルム7の変位力に打ち勝つ付勢力で、円板部51の被付勢部5Bを右方へ付勢している。このため、円板部51は、支点部53の軸回りに回動せず、上述の直立した姿勢を維持する。
この場合、リンクボス54において押圧部材5とリンク結合されている開閉バルブ6は、最も右方側に位置する閉姿勢を取る。すなわち、付勢バネ45の付勢力によって、リンクボス54を介してバルブホルダー61が右方に牽引されている状態となる。このため、バルブホルダー61の環状当接部62Aが連通口43の段部43Cに突き当たると共に、アンブレラバルブ66のシール面67がシール壁面43Sに当接した状態となる。従って、連通口43がアンブレラバルブ66によって封止される。付勢バネ45は、円板部51を右方に付勢することで、間接的に開閉バルブ6を閉姿勢に向かう方向に付勢していると言うことができる。
図17(A)は、図16(A)に対応する図であって、開閉バルブ6が開姿勢の状態を示す断面図、図17(B)は、図17(A)のA2部の拡大図である。図16の状態から、インク吐出部22がインク滴の吐出動作を継続してゆくと、密閉空間である第2室42は、インクの減少に伴い、徐々に負圧度が高まってゆく。やがて、第2室42が所定の閾値を超える負圧となると、大気圧検知フィルム7は付勢バネ45の付勢力に抗する押圧力を円板部51の受圧部5Aへ与えるようになる。すなわち、付勢バネ45のバネ圧と第2室42の内圧との合計が、大気圧に劣る状態となる。
この場合、円板部51は、付勢バネ45の付勢力に抗して支点部53の軸回りに左方へ回動する。そして、この回動によって、リンクボス54は開閉バルブ6を左方に向かわせる押圧力PFを発生し、開閉バルブ6を開姿勢に姿勢変更させる。つまり、リンクボス54のリンク孔541からバルブホルダー61のリンクピン65に押圧力が伝達され、ガイド面62Sが連通口43の内面でガイドされつつ、バルブホルダー61が左方へ直線移動する。この移動に伴ってアンブレラバルブ66も左方へ移動し、そのシール面67がシール壁面43Sから離間する。つまり、シール面67とシール壁面43Sとの間にギャップGが形成された状態となる。従って、アンブレラバルブ66による連通口43の封止が解除される。
開閉バルブ6が開姿勢となると、図17(B)に矢印Fで示すように、大気圧+ρghの圧力の第1室41と負圧度が進行した第2室42との圧力差により、第1室41から第2室42へインクが流入する。具体的には、アンブレラバルブ66のシール面67とシール壁面43SとのギャップGと、バルブホルダー61の筒部62に用意された流路切り欠き621と、中間部64に用意された開放部641とからなる流路を通して、インクは第2室42へ流入する。
第2室42へのインク流入が進行すると、第2室42の負圧度は徐々に緩和されてゆく。やがて、付勢バネ45のバネ圧と第2室42の内圧との合計が、大気圧よりも優勢になると、付勢バネ45の付勢力によって円板部51は右方に押し戻されてゆく。すなわち、第2室42が所定の閾値を下回る負圧となると、円板部51は、付勢バネ45の付勢力に押圧されて支点部53の軸回りに右方へ回動する。これにより開閉バルブ6も、リンクボス54に牽引されて右方に直線移動する。いずれ、バルブホルダー61の環状当接部62Aが連通口43の段部43Cに突き当たり、アンブレラバルブ66のシール面67がシール壁面43Sに当接する。従って、開閉バルブ6は閉姿勢に復帰する。
<負圧供給機構の作用効果>
以上の構成を有する本実施形態の負圧供給機構の作用効果について、図18(A)及び(B)の模式図を用いて説明する。図18(A)は、押圧部材5(円板部51)が直立姿勢であって開閉バルブ6が閉姿勢の状態を、図18(B)は、押圧部材5が回動した傾斜姿勢であって開閉バルブ6が開姿勢の状態を、各々示している。
まず、押圧部材5は支点部53という回動支点を有し、第2室42内に配設された支持板424で軸支されている。このため、受圧部5Aが大気圧検知フィルム7の変位力を受けると支点部53の軸回りに回動する。つまり、大気圧検知フィルム7の変位という不安定な移動力を、支点部53の軸回りの回動という安定的な移動力に変換させることができる。このため、大気圧検知フィルム7の変位力を、リンクボス54(押圧部)を通して効率良く開閉バルブ6に伝達させることができる。例えば、開閉バルブ6の押圧部材が大気圧検知フィルム7に貼付される等、前記押圧部材が回動支点を持たない場合、その挙動は不安定となり、開閉バルブ6への押圧力伝達が不安定となる。しかし、本実施形態によれば、押圧部材5は安定的な押圧力を発生できるので、開閉バルブ6を所期のタイミングで閉姿勢と開姿勢との間で姿勢変更させることができ、ヘッドユニット21への安定的なインク供給を行わせることができる。
さらに、支点部53は、押圧部材5の下端側5Cに配置される一方で、リンクボス54は、支点部53に対して所定距離だけ離間した、押圧部材5の上端側5Dに配置されている。つまり、図18(A)に示すように、支点部53による軸支点を支点P1、開閉バルブ6へ移動力を入力するリンクボス54を作用点P2とすると、作用点P2は押圧部材5において支点P1に対して対極位置に配置されている。押圧部材5に回動力を与える力点P3は、本実施形態では受圧部5A及び被付勢部5Bの配置位置であり、この力点P3は支点P1と作用点P2との間に位置している。
このため、押圧部材5の回動時におけるリンクボス54の移動量を大きくすることができ、ひいては開閉バルブ6の左右方向の直線移動量を大きくすることができる。図18(B)に示すように、作用点P2(受圧部5A)に大気圧検知フィルム7の押圧力が加わり、押圧部材5が支点部53の軸回りに角度θ1だけ回動したとする。この場合、受圧部5Aの位置における押圧部材5の実際の移動量はd1であるが、リンクボス54(リンクピン65)の位置における移動量は、支点P1に対する作用点P2と力点P3との距離差分だけd1よりも増幅された移動量d2となる。
図16及び図17にて説明した通り、開閉バルブ6は、押し付け力に依存して連通口43を開閉する部材ではなく、連通口43内を左右方向に移動することによって連通口43を開閉する部材である。また、開閉バルブ6の左方への移動量が大きくなるほど、ギャップGが大きくなってインクの流入抵抗が低減する。第2室42内のインクが急激に消費されたときには、大気圧検知フィルム7から大きな押圧力が与えられることから、移動量d1も比較的大きくなる。そして、この移動量d1に対して増幅された移動量d2で、開閉バルブ6を左方へ移動させ得る。従って、急激にインクが消費された場合には、開閉バルブ6を大きく移動させ、比較的多量のインクを第2室42へ流入させることができる。
これに対し、第2室42内のインクが緩やかに消費されたときには、大気圧検知フィルム7から与えられる押圧力は小さくなることから、移動量d1は比較的小さくなる。このような小さい移動量d1であっても、リンクボス54の位置では増幅された移動量d2となることから、開閉バルブ6を相応に左方へ移動させ得る。従って、緩やかにインクが消費された場合でも、感度良くタイムリーに開閉バルブ6を移動させることが可能となる。このように、ヘッドユニット21からのインクの大量吐出時及び少量吐出時の双方において、液体供給ユニット3からヘッドユニット21への安定的なインク供給を確保することができる。
さらに、別視点の利点として、開閉バルブ6は、押圧部材5とリンク結合されていることによる利点を挙げることができる。詳しくは、開閉バルブ6の右端付近に配設されたリンクピン65と、リンクボス54のリンク孔541とでリンク結合が形成されている。そして、付勢バネ45は、円板部51の被付勢部5Bを押圧することで、開閉バルブ6を閉姿勢に向かう方向に付勢している。このため、押圧部材5(円板部51)は支点部53の軸回りに回動するので、図18(B)に示すように回転角θ1だけ左方へ傾く。しかし、前記リンク結合により、円板部51の傾き動作に追従して開閉バルブ6が傾くことはない。つまり、開閉バルブ6は回転角θ1に応じた回転角θ2だけ、リンクピン65回りに回動し、水平姿勢を維持できる。従って、開閉バルブ6を連通口43内において、左右方向へ直線的に移動させることができ、開閉バルブ6を閉姿勢と開姿勢との間で安定的に動作させることができる。
[フィルター室の詳細]
続いて、フィルター室44の構成について詳述する。図19(A)は、フィルター室44の分解斜視図、図19(B)は、フィルター室44の前後方向の断面図である。既述の通り、フィルター室44は、角筒状の空間を区画する内壁面441を有し、その空間内にはフィルター部材442、保持部材443及びコイルバネ446が収容されている。
フィルター部材442は、インク中に含まれる異物を除去する濾過部材である。ここでの異物は、例えば毛埃やインク液の凝集体などである。本実施形態では、インクは、第1室41から、開閉バルブ6が配置された連通口43を経て、第2室42へ流入する。そして、開閉バルブ6が連通口43を封止することで、第2室42内における押圧部材5の負圧動作が実現される。このような環境に、異物を含んだインクが供給されると、前記負圧動作が阻害され得る。とりわけ、開閉バルブ6に異物が噛み込んでしまうと、当該開閉バルブ6の左右方向の移動に支障が生じ、第2室42が負圧に維持できない問題が生じる。また、第2室42の下流側のヘッドユニット21に前記異物が入り込んでしまうと、その除去が困難であると共に、インクの吐出動作が阻害されてしまう。フィルター部材442は、このような異物の混入に起因する動作不良を未然に防止するために配置されている。
フィルター部材442としては、上記の異物をトラップできる一方でインク液を通過させ得る限りにおいて、各種の濾過部材を用いることができる。例えば、織布、不織布フィルター、スポンジフィルター、メッシュフィルター等を、フィルター部材442として用いることができる。本実施形態では、平面視で四角形のシート状の部材からなるフィルター部材442が用いられている。フィルター部材442のサイズは、フィルター室44の内壁面441の左右方向の断面サイズと略同一サイズに設定されている。
フィルター室44は、インク供給方向の上流側の上流端441Aと、下流側の下流端441Bとを備える。フィルター室44の上流端441A側の天壁には、流入口44Hが穿孔されている。流入口44Hの直上には流入ポート447(図25)が立設され、当該流入ポート447には、上流管33の下流端332が挿入接続される。従って、インクカートリッジICから供給されるインクは、流入口44Hからフィルター室44の上流端441A側に流入する。下流端441Bは、第1室41の上流端である流入部412に連通している。
フィルター部材442は、本実施形態では下流端441B付近に配置されている。上述の通り、開閉バルブ6への異物の噛み込みが問題であるので、フィルター部材442は開閉バルブ6よりも上流側に配置されていれば良い。すなわち、フィルター部材442は、インクカートリッジICと第1室41との間のインク供給路のいずれかの位置、或いは、第1室41内において開閉バルブ6よりも上流側の位置に配置されていれば良い。かかる配置により、異物は、連通口43乃至は第2室42へ至る前にフィルター部材442によってトラップされる。従って、異物が開閉バルブ6に噛み込んだり、或いは異物が第2室42からヘッドユニット21に至ったりする問題を未然に防止でき、異物の混入に起因する液体供給ユニット3の動作不良が生じないようにすることができる。
フィルター部材442の保持構造について説明する。図19(B)に示されているように、フィルター部材442は、保持部材443に対してコイルバネ446で押し付けられる態様で保持(固定)されている。保持部材443には、フィルター部材442の周縁部が固定されている。フィルター部材442の周縁部を除く中央領域をインクが通過し、その際に異物をトラップする(図中の矢印参照)。
保持部材443は、フィルター室44内において下流端441B付近に配置され、インクの流路となる開口444Aを備えたフレーム部材444と、当該フレーム部材444にて支持されるリング状のシール部材445とを備えている。フレーム部材444は硬質樹脂の成型品を、シール部材445は軟質樹脂又はゴム等の成型品を用いることができる。シール部材445は、フレーム部材444の後側面に具備されている座部に嵌め込まれている。フィルター部材442は、シール部材445の後面側に当接している。フレーム部材444の前側面は、内壁面441の下流端441Bに形成されている段部441Cに係合されている。
コイルバネ446は、フィルター部材442の周縁部をシール部材445の後面側に押し付けている。コイルバネ446は、インク供給方向(前後方向)にコイル軸が沿うように、フィルター室44内に収容されている。詳しくは、コイルバネ446の後端446Aが、内壁面441の上流端441Aにおいて係止され、前端446Bがフィルター部材442の周縁部をシール部材445に向けて押し付けるように、コイルバネ446はフィルター室44に組み付けられている。
上記のフィルター室44の構造によれば、リング状のシール部材445を保持するフレーム部材444の開口444Aを、フィルター部材442が塞ぐ態様となる。このため、インク中の異物を確実にフィルター部材442によってトラップさせることができる。また、フィルター部材442と保持部材443との固定を、接着剤等を用いることなく、コイルバネ446の押し付け力により達成することができる。液体供給ユニット3の動作時、フィルター部材442は液体中に曝され、保持部材443への固定部となる周縁部もインクに浸かる。このインクは、前記接着剤等の溶剤となり得る。このため、接着剤等を用いてフィルター部材442を固定すると、フィルター部材442が保持部材443から剥がれたり、接着剤等がインク中に溶け出して異物となったりする。このような不具合は、コイルバネ446の押し付け力を用いる本実施形態によれば解消することができる。また、インクのフィルタリングを行わせる専用室としてのフィルター室44を設けることで、フィルター部材442の液体供給ユニット3への組み付け性を良好とすると共に、フィルター機能を確実に発揮させることができる。
[第2室の空気抜き機構部]
次に、第2室42に付設されている空気抜き機構部37について、既出の図12(A)に加え、図20~図22を参照して説明する。図20(A)及び(B)は、空気抜き機構部37の構成部材であるレバー部材46の斜視図、図20(C)は、レバー部材46の分解斜視図である。図21(A)及び(B)は、押圧部材5、開閉バルブ6及びレバー部材46の位置関係を示す斜視図である。図22(A)及び(B)は、図16(A)と同じ断面であって、レバー部材46の空気抜き動作説明するための断面図である。既述の通り、空気抜き機構部37は、イニシャルの使用時やメンテナンス後などにおける、第2室42へのインクの初期充填の際の空気抜きや、インクから発生する気泡の脱気の際などに使用される。
空気抜き機構部37は、第2室42の上端部422に突設された既述のボス部426に加え、レバー部材46、シールリング46C及びストッパー47を含む。ボス部426は、図12(A)に示すように、第2室42を区画する第2区画壁421の最上端から突設されており、第2室42を大気と連通させる開口、つまり空気抜き孔である断面円形のボス孔42Aを有する。ボス孔42Aを、第2室42の最上方位置に設けることで、第2室42の脱気を確実に行わせることができる。ボス部426は、上端部422の直上に位置する大径部426Aと、大径部426Aの上方に連設された小径部426Bとを有している。ボス孔42Aの内径は、大径部426Aの方が小径部426Bよりも大きい。
レバー部材46は、図20(C)に示すように、ボス孔42Aに一部が挿通される棒状部材461と、その下方に連設された押圧片464とを備えたショベル型の形状を有している。レバー部材46は、ボス孔42Aを封止する封止姿勢と、ボス孔42Aを開放する開放姿勢との間で姿勢変更する一種の弁部材である。本実施形態では、レバー部材46の姿勢変更動作と、押圧部材5を介して開閉バルブ6の姿勢変更動作とが連動するように構成されている。具体的には、レバー部材46が前記封止姿勢の状態では、開閉バルブ6が前記閉姿勢となることを許容し、レバー部材46が前記開放姿勢の状態のとき、開閉バルブ6を前記閉姿勢から前記開姿勢に姿勢変更させる。
レバー部材46の棒状部材461は、ボス孔42Aの孔径よりも小さい外径を有する円柱体であり、上端部462と下端部463とを有する。上端部462は、ユーザーから下方へレバー部材46を押下する操作押圧力を受ける入力部となる。下端部463は、押圧片464に繋がっている。押圧片464は、図21(A)、(B)に示すように、上端部462に与えられた操作押圧力を押圧部材5の受け斜面55に伝達する伝達部として機能する。下端部463のやや上方位置には、棒状部材461の周方向に複数の小突起が環状に配列されてなる間欠突起部463Aが設けられている。
押圧片464は、棒状部材461の軸線に対して傾斜した押圧斜面465と、最下端において前後方向に延びる下端縁466とを有する。押圧斜面465は、下端縁466を起点として上方に延出する斜面である。押圧斜面465及び下端縁466は、レバー部材46が前記操作押圧力を受けたとき、押圧部材5の前後一対の受け斜面55と干渉する部分となる。一対の受け斜面55の間隔よりも長いサイズに、押圧斜面465の前後幅が設定されている。押圧斜面465及び下端縁466が受け斜面55に当接し、前記操作押圧力を押圧部材5へ伝達することで、押圧部材5は支点部53の軸回りに左方へ回動し、開閉バルブ6を閉姿勢から開姿勢に姿勢変更させる。
棒状部材461の上端部462の近傍には、上下方向に間隔を置いて並ぶ上係合溝467A及び下係合溝467Bが形成されている。上係合溝467Aには上ワッシャー46Aが、下係合溝467Bには下ワッシャー46Bが、各々嵌め込まれる。また、下端部463の近傍にはシール溝468が設けられている。下端部463の外径は棒状部材461の他の部分の外径よりも大きく設定されており、この下端部463と間欠突起部463Aとの間がシール溝468とされている。また、棒状部材461の前後方向の全長に亘って、凹溝からなる空気抜き縦溝461Aが設けられている。この空気抜き縦溝461Aと、間欠突起部463Aの谷部との周方向位置は一致している。
棒状部材461には、シールリング46Cとストッパー47とが装着される。シールリング46Cは、棒状部材461よりもやや大きい内径を有するOリングである。シールリング46Cは、棒状部材461に挿通され、シール溝468に嵌め込まれる。シールリング46Cの外周面は、シール溝468に装着された状態で、ボス部426の大径部426Aの内周面ISと摺接する。ストッパー47は、略長方形のプレート部材であり、棒状部材461が挿通される回動孔47Hを備えている。ストッパー47の装着位置は、上端部462の近傍であって、上係合溝467Aと下係合溝467Bとの間である。上下ワッシャー46A、46Bは、ストッパー47を挟み込み、当該ストッパー47の軸方向の移動を規制するように、上下係合溝467A、467Bに各々嵌め込まれている。
ストッパー47は、上下ワッシャー46A、46Bに挟まれた状態で、棒状部材461の軸回りに回動可能である。レバー部材46の上下動に応じて、保持フレーム427の一対の係止爪428の上面428A又は下面428B(図22)と当接することが予定されている部材である。前記上下動の際、ストッパー47は長手方向が左右方向となるように回動され、一対の係止爪428の間隙を通過する。ストッパー47には、ピン孔471と係止凹部472とが形成されている。少なくとも、ストッパー47が上面428Aと当接する際、図12(A)に示すように、ピン孔471と係止凹部472に割ピン型のピン部材48が嵌め込まれ、ストッパー47の回り止め及び抜け止め、つまりストッパー47の固定が図られる。ストッパー47、ピン部材48及び一対の係止爪428は、レバー部材46の姿勢を固定する固定機構として機能する。
続いて、レバー部材46の動作について説明する。図22(A)は、レバー部材46が動作前の状態を、図22(B)は、レバー部材46の動作によって第2室42の空気抜きが実行されている状態を各々示す断面図である。図22(A)は、レバー部材46の上端部462が操作押圧力を受けていない状態、つまりレバー部材46がボス孔42Aを封止する封止姿勢を示している。一方、図22(B)は、上端部462が下方に押下され操作押圧力が加えられている状態、つまりレバー部材46がボス孔42Aを開放する開放姿勢を示している。
前記封止姿勢は、ストッパー47が係止爪428の上面428Aに当接された状態で、ピン部材48が両者を固定することによって形成されている。この固定によって、レバー部材46は上方に持ち上げられた状態となっている。この状態は、棒状部材461の間欠突起部463A及び下端部463が、ボス部426の大径部426A内に収容される状態を形成する。つまり、シールリング46Cの外周面が、大径部426Aの内周面ISと当接する状態である。従って、ボス孔42Aは封止された状態となる。レバー部材46の押圧片464(押圧斜面465及び下端縁466)は、押圧部材5の受け斜面55に対して離間した状態であり、何ら押圧部材5に力を与えていない。従って、開閉バルブ6は閉姿勢を維持している。
一方、レバー部材46が操作押圧力を受けて下降し、前記開放姿勢を取ると、間欠突起部463A及び下端部463も下降することに伴い、シールリング46Cが内周面ISから離間する。これにより、間欠突起部463Aの谷部と、棒状部材461の空気抜き縦溝461Aとで形成される空気通路と、第2室42内の空間とが連通する状態となる。つまり、ボス孔42Aは開放された状態となり、第2室42と外気とが連通した状態となる。従って、第2室42に滞留している空気を、ボス孔42Aを通して外部へ排気することが可能な状態が形成される。
また、レバー部材46が前記開放姿勢を取ると、操作押圧力が押圧部材5へ伝達されるようになる。図22(B)に示すように、押圧斜面465及び下端縁466が受け斜面55を押圧する。受け斜面55が押圧されると、押圧部材5(円板部51)は支点部53の軸回りに左方へ回動する。既述の通り、押圧部材5が左方へ回動すると、リンクボス54を介して開閉バルブ6を左方へ押圧し、開閉バルブ6を閉姿勢から開姿勢に姿勢変更させることになる。これにより、連通口43の封止が解除され、第1室41と第2室42とが連通された状態となる。
上記開放姿勢は、ストッパー47が係止爪428の下面428Bに押し当てられることによって形成されている。すなわち、前記開放姿勢を取る際には、ストッパー47が押し下げられ、係止爪428の下方に潜り込む状態となる。そして、押圧片464の受け斜面55の押圧によって、付勢バネ45の付勢力に抗して押圧部材5が回動されるため、押圧片464には付勢バネ45の付勢力が加わることになる。つまり、レバー部材46には上方に持ち上げられる付勢力が作用する。当該付勢力によって、ストッパー47が係止爪428の下面428Bに押し当てられ、前記開放姿勢が維持されるものである。
このように、レバー部材46が前記開放姿勢を取ると、第2室42に対する流体の入口(連通口43)と、流体の出口(ボス孔42A)とが確保された状態となる。従って、イニシャルの使用時において、第2室42の空気をボス孔42Aから抜きつつ、連通口43を通して第1室41から第2室42へインクを充填する動作を、水頭差供給を利用してスムースに実行させることができる。また、インクから気泡が発生する等して、第2室42の空気量が増加した場合(第2室42内のインク液位が低下するのでモニター管36で確認できる)、レバー部材46を前記開放姿勢とすることで、容易に第2室42の空気抜きを行うことができる。
上記実施形態では、大気圧検知フィルム7から変位力を受ける受圧部5Aと、受圧部5Aが受けた変位力によって開閉バルブ6を押圧するリンクボス54とを備えた押圧部材5を利用して、レバー部材46が前記開放姿勢を取ることに連動させて、開閉バルブ6を開姿勢に姿勢変更させている。つまり、レバー部材46のワンタッチ操作で、第2室42に対する流体の入口及び出口を確保できる構成である。従って、ユーザーは第2室42の空気抜き動作を容易に実行することができる。また、空気抜き機構部37がタンク部31の上面に配置されているので、図4に示したように、複数の液体供給ユニット3がキャリッジ2に搭載されたままの状態でも、ユーザーはキャリッジ2の前方側からアクセスして、各液体供給ユニット3に対する空気抜き動作を行うことができる。
[空気抜き動作の手順]
続いて、空気抜き機構部37における空気抜き動作例を、図23及び図24に基づき説明する。図23(A)は、図22(A)の状態に対応する空気抜き機構部37の斜視図、図23(B)及び図24(A)は、レバー部材46の操作を示す斜視図、図24(B)は、図22(B)の状態に対応する空気抜き機構部37の斜視図である。
図22(A)、図23(A)の封止姿勢では、上述の通り、ストッパー47が係止爪428の上面428Aに当接された状態で、両者がピン部材48で固定されている。ストッパー47は、その長手方向が前後方向を向くように回動され、前端側が前側の係止爪428上に、後端側が後側の係止爪428上に各々重なり合っている。ストッパー47のピン孔471及び係止凹部472は、前記回動によって前端側に位置している。前側の係止爪428には、ピン孔471に対応した位置に切り欠き部が設けられている。割ピン型のピン部材48の鉛直部481がピン孔471に挿通され、下端側が外方へ湾曲した係合部482が係止凹部472嵌め込まれることで、ストッパー47が係止爪428に固定されている。この状態では、レバー部材46は上方に吊り上げられた状態となり、シールリング46Cがボス孔42Aの内周面ISに当接してシール効果を発揮すると共に、押圧斜面465と受け斜面55とは離間している。
第2室42の空気抜き動作を行う際には、図23(B)に示すように、先ず作業者は、ピン部材48をストッパー47から引き抜く。これにより、ストッパー47は棒状部材461の軸回りに回動可能な状態となる。続いて作業者は、図24(A)に示すように、ストッパー47を、その長手方向が左右方向を向くように90°だけ回動させる。この回動により、ストッパー47は、前後一対の係止爪428の間隙を上下方向に通過可能な状態となる。かかる状態で、作業者は上端部462を押下し、レバー部材46を押し下げる。この押し下げは、ストッパー47の上面が係止爪428の下面428Bよりも下方に至るまで行われる。
その後、図24(B)に示すように、作業者は、ストッパー47を、その長手方向が前記方向を向くように90°だけ回動させる。これにより、ストッパー47の前端側が前側の係止爪428の下に、後端側が後側の係止爪428の下に各々重なり合うようになる。この状態では、図22(B)に示すように、レバー部材46は下方に押し下げられた状態となり、シールリング46Cがボス孔42Aの内周面ISから離間してシール効果が消失する開放姿勢となる。また、上端部462に与えられた操作押圧力が、押圧片464から受け斜面55に伝達され、付勢バネ45の付勢力に抗して押圧部材5を回動させる。このときの付勢バネ45の反発力で、ストッパー47が係止爪428の下面428Bに押し当てられることで、開放姿勢用のレバー部材46の固定状態が形成される。
このように、レバー部材46が封止姿勢又は開放姿勢のいずれの姿勢にあっても、係止爪428を利用して、それらの姿勢を簡易に維持させることができる。例えば、初期使用時に液体を第2室42に充填する際には、当該第2室42の空気抜きが必要となるため、レバー部材46を開放姿勢に維持する必要がある。この場合、作業者は、レバー部材46の上端部462を押下すると共に、係止爪428の下面428Bにストッパー47を潜り込ませる操作を行えば良い。従って、当該作業者は、上端部462を押下し続ける必要が無いので、その作業性を向上させることができる。また、液体供給ユニット3の通常使用時には、レバー部材46を封止姿勢とする必要がある。この場合には、係止爪428の上面428Aにストッパー47を重ね、ピン部材48で固定するだけで良く、簡易な操作で済む。
[逆流防止機構部]
次に、図9(A)に基づき説明した加圧パージモードの実行の際に、ポンプ9にて加圧されたインクが第2室42へ逆流することを防止する逆流防止機構部38の構成について説明する。図25は、逆流防止機構部38の断面を含む、液体供給ユニット3の前後方向の断面図、図26は、逆流防止機構部38の分解斜視図、図27(A)~(C)は、逆流防止機構部38の斜視図である。図28(A)及び(B)は、図25のA3部分の拡大図であって、図28(A)は印刷モードにおける逆流防止機構部38の状態を、図28(B)は、加圧パージモードにおける逆流防止機構部38の状態を各々示す断面図である。
逆流防止機構部38は、バルブ管路81、分岐ヘッド部82、球体83、シール部材84、コイルスプリング85及びOリング86を含む。バルブ管路81は、第2室42の下端部423と一体の部材であり、他の部品はバルブ管路81に対して組み付けられている。図27(A)及び図27(B)は、バルブ管路81を除く逆流防止機構部38の斜視図、図27(C)は、分岐ヘッド部82の下方視の斜視図である。
バルブ管路81は、第2室42の下端部423(最下端部)に穿孔されている供給孔42Hから鉛直下方に延び出す管路であって、第2区画壁421に一体化された部分である。バルブ管路81は、第2室42と下流管34とを繋ぐインク流路を提供するものであって、第2室42からインク吐出部22に至るインク供給路の一部を構成している。分岐ヘッド部82を係止するために、バルブ管路81の外周面には係止片811が、内周面には嵌合環状突起812が、各々突設されている。
分岐ヘッド部82は、図7~図9に基づき先述した合流部aを形成する部材である。分岐ヘッド部82は、第1入口ポート821、第2入口ポート822、出口ポート823、胴部824、係止窓825、切り欠き部826及び嵌合爪827を含む。第1入口ポート821は、第2室42に接続されるポートであって、本実施形態ではバルブ管路81を経由して、第2室42と連通している。第2入口ポート822は、バイパス管32P(バイパス下流管BP2)の下流端が接続されるポートである。出口ポート823は、下流管34の上流端341が接続されるポートである。
分岐ヘッド部82は、バルブ管路81の下端側から鉛直下方に延び出す鉛直部82Aと、鉛直部82Aの中間に水平方向から合流する態様の水平部82Bとを備えるT字管である。鉛直部82Aの上端が第1入口ポート821、下端側が出口ポート823である。水平部82Bの先端が第2入口ポート822である。上述の印刷モードでは、インクは、第1入口ポート821を通して下流管34に供給される。一方、加圧パージモードでは、第2入口ポート822を通して下流管34に供給される。
胴部824は、下方を向く第1入口ポート821の外側に、互いに対向するように配置された一対の円弧片からなる。バルブ管路81は、一対の胴部824と第1入口ポート821との間の隙間に入り込む。係止窓825は、一対の胴部824に設けられた開口であり、バルブ管路81の係止片811が係合する開口である。切り欠き部826は、筒状の第1入口ポート821の周壁の一部が切り欠かれた部分であり、インクの流路を確保するための部分である。嵌合爪827は、第1入口ポート821の上端から上方に突設されたフック形状を有する部分であり、バルブ管路81の嵌合環状突起812と係合する。つまり、分岐ヘッド部82は、バルブ管路81の内周において係止片811と係止窓825との係合により、外周において嵌合環状突起812と嵌合爪827との係合により、バルブ管路81に固定される。第1入口ポート821の上端縁828は、次述の球体83を受け止める球受部となる。
球体83は、バルブ管路81内に、インク供給方向へ移動可能に収容され、弁の働きをする。球体83の外径は、バルブ管路81の内径よりも小さく、さらにコイルスプリング85の内径よりも小さい。球体83を形成する素材としては、種々の材料を用いることができるが、好ましくはインクの比重に対して2倍以下の比重を有する材料、特にインクの比重に対して1.1倍~1.5倍の範囲の材料で形成することが望ましい。この範囲の材料であれば、球体83の比重がインクの比重よりも大きいので、バルブ管路81内において球体83を自重で容易に下降させ得る一方で、球体83の比重がインクの比重に近い関係となるので、加圧パージ時のバルブ管路81内における球体83の上昇を速やかに行わせることができる。
一般に、インクジェット式プリンターに用いられるインクは、水溶性液体であって、比重=1若しくはその近傍の比重を有する。従って、球体83の材料としては、比重<2の材料を選択することが望ましい。また、前記材料は、インクと常時接触しても劣化しない耐薬品性、耐摩耗性の性質を備えていることが望ましい。これらの観点から、球体83の材料としては、ポリアセタール(比重=1.42)、ポリブチレンテレフタレート(比重=1.31~1.38)、ポリ塩化ビニル(比重=1.35~1.45)、ポリエチレンテレフタレート(比重=1.34~1.39)を用いることが特に好ましい。
シール部材84は、図28(A)及び(B)に示されているように、球体83の上方であって、バルブ管路81の上端側に設けられた座部813に着座するリング形状を有するシール部品である。シール部材84のリング内径(貫通孔)は、球体83の外径よりも小径に設定されている。図28(A)に示すように、シール部材84から球体83が下方へ離間したときには、バルブ管路81は開となる。一方、図28(B)に示すように、シール部材84に球体83が接したときには、バルブ管路81は閉となる。
コイルスプリング85は、その上端部がシール部材84に当接し、下端部が分岐ヘッド部82の第1入口ポート821の上端縁828に当接するように、バルブ管路81に内装される圧縮バネである。コイルスプリング85は、シール部材84を座部813に向けて付勢しており、これによりシール部材84は座部813に常時圧接されている。また、コイルスプリング85の内側には球体83が収容されており、コイルスプリング85は球体83のインク供給方向への移動をガイドする役目も果たす。従って、バルブ管路81内における球体83の遊動が規制され、シール部材84に対する球体83の離接により成立する弁構造を安定化させることができる。
Oリング86は、バルブ管路81と分岐ヘッド部82との突き合わせ部をシールしている。Oリング86は、第1入口ポート821の外周面に嵌め込まれ、第1入口ポート821の突設基部829に当接している。
図25には、ポンプ部32に収容されたポンプ9が示されている。ポンプ9は、バイパス管32Pに配置され、当該バイパス管32Pを流通するインクを加圧する。ポンプ9は、偏心カム91及びしごきチューブ92を備えたチューブポンプである。偏心カム91の軸孔91Aには、当該偏心カム91の回動軸となるカム軸93(図4)が挿通される。この偏心カム91には、図略の駆動ギアから回転駆動力が与えられる。しごきチューブ92は、偏心カム91の周面に配置され、偏心カム91のカム軸93回りの回転によってしごかれ、チューブ内の液体(インク)を一端側から他端側へ送り出す。本実施形態では、しごきチューブ92は、バイパス管32Pと一体のチューブである。すなわち、しごきチューブ92の一端側は第1室41のバイパス連通室413に連通するバイパス上流管BP1、他端側が分岐ヘッド部82の第2入口ポート822に連通するバイパス下流管BP2、中央部分が偏心カム91の周面に配置されるしごき部とされている。
既述の通り、ポンプ9は、図7に示した印刷モードでは停止状態とされる。この場合、偏心カム91がしごきチューブ92を圧潰して停止した状態となるので、バイパス管32Pを通るインク供給路は閉止されることになる。一方、図8に示した循環モード及び図9(A)に示した加圧パージモードでは、ポンプ9は正転駆動される。図25において、偏心カム91の正転方向は、反時計方向である。このようなポンプ9の正転駆動によって、インクは、第1室41からバイパス上流管BP1を通して吸引され、バイパス下流管BP2から合流部aである逆流防止機構部38へ向かうことになる。なお、ポンプ9が逆転駆動されると、図9(B)に示した通り、バイパス管32P及び分岐ヘッド部82を通して、第2室42及び下流管34が負圧化する。
続いて、逆流防止機構部38の動作について説明する。印刷モードではインクは、第2室42から、逆流防止機構部38及び下流管34を通る供給ルートでヘッドユニット21に供給される。このような印刷モードにおいては、図28(A)に示す通り、球体83はシール部材84から下方へ離間し、分岐ヘッド部82の上端縁828(球受部)に着床した状態となる。これは、球体83の比重がインクの比重よりも大きく、球体83が自重で下降することに依る。また、第2室42から下流管34へ至る供給ルートが印刷モードでは負圧に維持され、ヘッドユニット21のインク吐出部22がインク滴を吐出する度に、前記供給ルート内に存在するインクを吸引することも、球体83の上端縁828への着床状態の維持に寄与する。
球体83がシール部材84から離間した状態となることから、供給孔42Hは開放された状態となる。また、球体83が着床する第1入口ポート821の上端縁828には切り欠き部826が具備されているので、インクの通路は確保されている。従って、第2室42内のインクは、図中に矢印F1で示すように、第2室42から分岐ヘッド部82へ通り抜け、下流管34へ向かうことができる。
図28(B)は、加圧パージモードにおける逆流防止機構部38の状態を示す断面図である。加圧パージモードでは、ポンプ9の正転駆動によって、バイパス管32Pを通して加圧されたインクが、分岐ヘッド部82の第2入口ポート822(合流部a)に供給される。このため、バイパス管32Pと、合流部aよりも下流側に位置する下流管34との内部には、加圧されたインクが存在することになる。この場合、インクは100kPaを超過するような高圧に加圧される。このような高圧が仮に第2室42に加わった場合、第2室42の一部を区画している大気圧検知フィルム7は、破裂したり、第2区画壁421に対する取り付け部が剥がれたりすることがある。
しかし、本実施形態では、合流部aに加わる加圧力によって、球体83は上昇する(インク供給方向の上流側へ移動する)ように押圧され、球体83がシール部材84に接するようになる。すなわち、前記押圧によって、球体83が上方へ浮き上がった状態となり、シール部材84のリング内に嵌り込む。コイルスプリング85により座部813へ押し付けられているシール部材84に球体83が接することで、供給孔42Hは塞がれた状態となる。すなわち、印刷モードにおけるインク供給経路のうち、合流部aよりも上流側に位置するインク供給経路及び第2室42が加圧インクによる加圧から遮断される。従って、大気圧検知フィルム7の破損等を未然に防止することができる。
また、本実施形態では、ヘッドユニット21へ空気を抱き込んだインクが供給され難くなるという利点もある。インク中に溶け込んでいる空気や、液体供給ユニット3へのインク液の充填時に混入した空気が、インクに抱き込まれた状態でヘッドユニット21に進入し、個別通路26や共通通路27(図6)に一旦入り込んでしまうと、当該空気がなかなか抜けず、加圧パージを実行しても排除されない場合がある。この場合、インク吐出孔22Hからのインクの吐出が阻害される。しかし、本実施形態では、上方から下方へ向けて、第2室42、逆流防止機構部38及び下流管34の順で配置されている。このため、第2室42に貯留されたインクから発生する空気若しくは第2室42内に混入した空気は、下方の逆流防止機構部38及び下流管34に向かうことはない。従って、ヘッドユニット21へ空気を抱き込んだインクが向かわないようにすることができ、ヘッドユニット21の吐出不良を未然に防止することができる。
また、分岐ヘッド部82又は下流管34に空気が混入したとしても、気泡の浮き上がり作用によって、鉛直部82Aからバルブ管路81、供給孔42Hを通して当該空気を第2室42内へ逃がすことができる。なお、上記の空気は、空気抜き機構部37により、第2室42から排出することが可能である。従って、前記空気によって第2室42内の容積が過度に占有されないようにすることができる。
[アンブレラバルブによる二重保護機構]
上記の通り、本実施形態においては、逆流防止機構部38を設けることで、加圧パージモードにおいて加圧されたインクが第2室42に逆流することを防止している。しかし、逆流防止機構部38の何らかの不具合により、例えば球体83の動作不良により、加圧力が第2室42に作用することが起こり得る。この点に鑑み、本実施形態では二重の保護機構、開閉バルブ6に圧力を開放させる機構を具備させている。つまり、正常時には第2室42が負圧で第1室41が大気圧+ρghであるという圧力関係が逆転し、第2室42が第1室41よりも高圧になった場合に、第2室42から第1室41へ圧力を開放させる圧力解放機構を、開閉バルブ6は具備している。
上記の圧力解放機構を担うのは、開閉バルブ6のアンブレラバルブ66である。図16及び図17に基づいて説明した通り、アンブレラバルブ66は、第2室42が所定の閾値を下回る負圧である場合には、シール面67がシール壁面43Sに当接して連通口43を封止する。これにより、第1室41から第2室42へのインクの流入を禁止する。一方、第2室42が所定の閾値を超える負圧になると、押圧部材5とリンク結合されたバルブホルダー61と共にアンブレラバルブ66は左方へ移動し、シール面67がシール壁面43Sから離間して連通口43を開放する(封止の解除)。これにより、第1室41から第2室42へのインクの流入を許容する。
これに加えてアンブレラバルブ66は、加圧パージモードの際に加圧インクの圧力が第2室42加わる等の要因で、第2室42と第1室41との圧力関係が逆転した場合に、アンブレラバルブ66単体で連通口43を開放する。つまり、押圧部材5の押圧アシストを受けることなく、アンブレラバルブ66は連通口43の封止状態を解除し、第2室42の圧力を第1室41へ解放する。すなわち、アンブレラバルブ66の傘部661(シール面67)は、その右面側に所定の圧力が印加されると、その傘形状が反転する。
図29(A)は、アンブレラバルブ66が連通口43を封止している状態を、図29(B)は、アンブレラバルブ66が連通口43を開放している状態を各々示す断面図である。図29(A)の状態は、先に説明した図16(B)の状態に等しい。傘部661は、左方に向けて凸の傘形状を有している。また、バルブホルダー61は、付勢バネ45の付勢力によって最も右方に位置しており、その環状当接部62Aが連通口43の段部43Cに当止している。従って、シール面67はシール壁面43Sに接する状態となる。
図29(B)の状態は、アンブレラバルブ66の傘部661の傘形状が、第2室42側から与えられる圧力によって反転した状態を示している。つまり傘部661は、右方に向けて凸の傘形状に変形している。この反転状態は、第2室42が第1室41よりも所定値だけ高圧となった場合に形成される。本実施形態では、加圧パージによる高い正圧が第2室42に加わり、結果として大気圧+ρghの第1室41よりも第2室42が高圧となる場合を想定している。前記所定値は、傘部661の反転圧力に依存する。この反転圧力は、大気圧検知フィルム7の破裂強度乃至は大気圧検知フィルム7の第2区画壁421に対する取り付け強度よりも低い値に設定される。
第2室42が加圧された場合、押圧部材5は左方へ回動しない。つまり、押圧部材5は、開閉バルブ6を左方に押圧する押圧力を発生しない。大気圧検知フィルム7が、第2室4の高圧化によって右方に膨らむ側に変位し、受圧部5Aに変位力を与えないからである。従って、付勢バネ45の付勢力によって、バルブホルダー61は最も右方に位置する状態が維持される。
しかし、バルブホルダー61が移動せずとも、傘部661の傘形状が反転することで、シール面67はシール壁面43Sから離間し、両者間にはギャップgが生じることとなる。このため、連通口43は開放された状態となる。これにより、第2室42内の加圧インク(圧力)は、連通口43を通して第1室41側へ逃がされる(解放される)。従って、大気圧検知フィルム7自体、若しくはその取付部に、過度の力が作用しないようにすることができ、破損を防止することができる。
[各モードにおけるインクの流れ]
続いて、液体供給ユニット3の各モードにおけるインクの流れについて説明する。図30は印刷モード、図31は加圧パージモード、図32は循環モードにおける、各々インクの流れを示す斜視図である。
印刷モード(図30)では、戻し管35を用いたインクの流通は行わないため、クリップ35Vにて戻し管35が閉止状態とされる。もちろん、供給弁33V(図5)は開放状態とされる。インクカートリッジICから吐出されるインクは、図30の矢印F11で示すように、水頭差によって上流管33を通してフィルター室44に入る。このフィルター室44においてフィルター部材442を通過する際に、インクに含まれる固形の異物が除去される。その後、第1室41に進入する。
押圧部材5の動作によって開閉バルブ6が開くと、矢印F12で示すようにインクは、第1室41から連通口43を通って、第2室42へ貯留される。インク吐出部22でのインク吐出動作によって、第2室42のインクは吸引され、供給孔42H、逆流防止機構部38を順次通過して下流管34に入る。その後、矢印F13で示すようにインクは、エンドチューブ24を経て、ヘッドユニット21の共通通路27(図6)に入る。そして、個別通路26を通して、インクは各インク吐出孔22Hから吐出される(矢印F14)。
加圧パージモード(図31)においても、戻し管35を用いたインクの流通は行わないため、クリップ35Vにて戻し管35が閉止状態とされる。供給弁33Vは開放状態である。この加圧パージモードでは、ポンプ9が正転稼働され、水頭差に依らずインクが強制的にヘッドユニット21へ供給される。ポンプ9が動作すると、矢印F21で示すようにインクは、上流管33を通してフィルター室44に入り、さらに第1室41に進入する。そして、矢印F22で示すようにインクは、第2室42に向かうことなく、バイパス連通室413を経てバイパス上流管BP1に入る。
ポンプ9のしごき動作によってインクは高圧化されると共に、下流側に送り出される。すなわち、矢印F23で示すようにインクは、バイパス下流管BP2から下流管34へ送り出される。上述の通り、バイパス下流管BP2の下流管34への合流部aには逆流防止機構部38が備えられているので、インクが第2室42側へ逆流することはない。しかる後、矢印F24で示すようにインクは、エンドチューブ24を経て、ヘッドユニット21の共通通路27(図6)に入る。そして、個別通路26を通して、インクは各インク吐出孔22Hから高圧で吐出される(矢印F25)。これにより、インク吐出孔22Hを目詰まりさせている異物や、個別通路26に滞留した空気等が除去される。
循環モード(図32)では、戻し管35を用いたインクの流通を行うため、クリップ35Vの閉止状態は解除され、戻し管35が開放状態とされる。一方、インクを液体供給ユニット3とヘッドユニット21との間で循環させることから、供給弁33V(図5)は閉止状態とされる。これにより、バイパス管32P、下流管34、ヘッドユニット21の共通通路27、戻し管35、戻し連通室414及びバイパス連通室413からなる、閉じたインク循環経路が形成される。この循環モードでも、図8に基づき説明した通り、ポンプ9が正転稼働される。
ポンプ9が稼働すると、上記インク循環経路内でのインクの循環が始まる。すなわち、ポンプ9の動作によってインクは、矢印F31で示すようにバイパス連通室413からバイパス上流管BP1に引き込まれ、続いて矢印F32で示すようにバイパス下流管BP2に送り出される。その後インクは、合流部a、下流管34及びエンドチューブ24を経て、ヘッドユニット21に流れ込み(矢印F33)、当該ヘッドユニット21内の共通通路27を通過し、回収チューブ25に入る(矢印F34)。そして、矢印F35で示すようにインクは、回収チューブ25から戻し管35、戻し連通室414、合流部bを順次経て、バイパス連通室413に戻る。このとき、供給弁33Vが閉とされているので、ポンプ9でインクが引かれる戻し管35及び共通通路27は負圧となる。従って、インク循環時においてインク吐出孔22Hからインクが漏洩することはない。
循環モードを実行させると、上記の通りインク循環経路内においてインクを循環させることができる。換言すると、一旦ヘッドユニット21側に送り込まれたインクを、戻し管35を用いて液体供給ユニット3側に戻すことが可能となる。このため、空気を含んだインクが送り込まれる等してヘッドユニット21側に空気が入り込んだとしても、前記循環により液体供給ユニット3側へ当該空気をインクと共に回収することができる。液体供給ユニット3側に回収された空気(気泡)は、浮上力によって戻し連通室414から上方の第1室41へ入り、第1室41の最も上方付近に配置されている連通口43から第2室42へ移動する。作業者は、モニター管36で第2室42内の空気の滞留状況を確認しつつ、空気抜き機構部37を適時動作させることで、前記空気を第2室42から外部へ逃がすことができる。
上記の通り、循環モードの実行により、ヘッドユニット21の個別通路26やインク吐出孔22H付近に空気を滞留させないようにすることができる。ヘッドユニット21側に入り込んだ空気は、加圧パージモードによっても除去するは可能である。しかし、ヘッドユニット21内に一旦入り込んだ空気はなかなか抜けず、相当量のインクを吐出させる加圧パージの実行が必要となる場合がある。このため、ヘッドユニット21からの空気抜きのためだけにインクを大量に消費してしまうという問題がある。しかし、循環モードによれば、インクを循環させて空気を液体供給ユニット3へ回収するので、インクを消費することはない。また、循環モードでは前記インク循環経路においてインクを循環させるだけで良く、加圧パージモードのようにインクを高圧化する必要はないので、ポンプ9は低速運転で足りる。従って、大きな圧力負荷が液体供給ユニット3に加わることを回避でき、大気圧検知フィルム7や封止フィルム7Aの破損を防止することができる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を取り得る。
(1)上記実施形態では、本発明に係る液体供給ユニット3が、インクジェット式プリンター1のヘッドユニット21にインクを供給する態様を例示した。液体供給ユニット3が貯留、供給する液体はインクに限定されるものではなく、各種の液体を対象とすることができる。例えば、水、各種の溶液、薬液、工業用化学液体などを、液体供給ユニット3の貯留、供給対象とすることができる。
(2)上記実施形態では、戻し管35の下流端342を、タンク部31に設けられた戻し連通室414及びバイパス連通室413を介してバイパス管32P(バイパス上流管BP1)の上流端に接続する例を示した。これに代えて、戻し管35の下流端342をバイパス管32Pの上流端に直接繋ぐようにしても良い。
(3)上記実施形態では、タンク部31に設けられた空気抜き機構部37を利用して、回収したインク液から空気を抜く例を示した。これに代えて、戻し管35の途中に、空気抜き用のタンク部等を別途設けるようにしても良い。
(4)押圧部材5及び開閉バルブ6としては、各種の変形態様を採用することができる。押圧部材5において、支点部53と受圧部5Aとの間にリンクボス54を配置し、支点部53を支点、受圧部5Aを力点、リンクボス54を作用点として、梃子の原理を用いて開閉バルブ6を押圧させる態様としても良い。また、アンブレラバルブ66を備えた開閉バルブ6を例示したが、これに代えて、各種の移動式バルブを開閉部材として用いてもよい。さらに、上記実施形態では、押圧部材5と開閉バルブ6とが、リンクボス54とリンクピン65とでリンク結合されている例を示したが、両者はリンク結合されていなくとも良い。例えば、押圧部材5の一部と開閉バルブ6の一部とがバネ等で常時接触する状態を形成し、その接触部を通して押圧部材5が開閉バルブ6を押圧する構造としても良い。