本発明は、少なくとも部分的には、Treg細胞の機能、活性、または増殖を調整するためにYes関連タンパク質(YAP)シグナリングを標的とすることによるがんの処置方法の開発に基づく。以下に詳述するように、YAPシグナリングの阻害は腫瘍の成長を抑制した。さらに、本明細書において述べるように、YAPシグナリングの阻害は、それを細胞ベースの抗腫瘍ワクチンと併用した場合に、同ワクチンの有効性を改良した。
本発明の一局面によれば、がんを持つ対象が処置される。対象には、YAP阻害剤および免疫治療剤が投与される。本発明の別の一局面によれば、YAP阻害剤と免疫治療剤とを含む治療組成物が提供される。本発明の別の一局面によれば、対象におけるがんを処置するためのキットが提供される。本キットは、YAP阻害剤と免疫治療剤とを含む。本明細書を読むことで当業者に明白になるであろうこれらのおよび他の態様は、当技術分野に、がんを処置するための新しいツールを提供する。
Tregの機能、活性、または増殖の増加は、場合によっては、望ましくない免疫抑制をもたらし、それにより、免疫細胞が媒介するがん細胞の阻害を防止することになりうる。本明細書において規定するとおり、対象における調節性T細胞(Treg)の機能、活性、または増殖を低減する方法は、YAPシグナリング調整薬を含む組成物、例えば薬学的に有効な組成物を対象に投与し、それにより、対象におけるTregの機能、活性、または増殖を低減することによって実行される。本方法は、場合によっては、Tregの機能、活性、または増殖が増加している、またはそのような増加を起こすリスクがあると、対象を同定する工程を、さらに含む。例えば、Tregの機能または活性は、免疫応答の抑制、すなわち本来であればがん細胞などに対する免疫応答を開始するであろう免疫細胞の抑制を含む。一局面において、Tregの機能または活性、例えば免疫応答抑制は、1%~100%低減され、例えばTregの機能または活性は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%低減される。同様に、Tregの増殖は、1%~100%低減され、例えばTregの増殖は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%低減される。阻害剤は、場合によっては、対象におけるTreg集団に投与される。好ましくは、Tregの発生が阻害される。
対象は、好ましくは、そのような処置を必要とする哺乳動物、例えばTreg機能が増加している対象またはその素因を有する対象である。哺乳動物は任意の哺乳動物、例えばヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ならびに家畜または食糧消費用に飼育される動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、およびヤギである。好ましい一態様において、哺乳動物はヒトである。
一局面において、YAPシグナリング調整薬は、YAP拮抗薬、例えばYAPの機能または活性を阻害する作用物質を含む。例えばYAP拮抗薬はYAP阻害剤を含む。あるいは、YAP拮抗薬には下流YAP標的分子の拮抗薬が包含される。適切なYAP拮抗薬には、抗体またはそのフラグメント、結合タンパク質、ポリペプチド、およびそれらの任意の組み合わせが包含される。YAP拮抗薬は、場合によっては、核酸分子を含む。適切な核酸分子には、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、低分子ヘアピンRNAまたは短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、もしくはアンチセンスRNA、またはそれらの任意の一部分が包含される。もう一つの局面において、YAP拮抗薬は、最適化されたモノクローナル抗YAP抗体を含む。もう一つの局面において、YAP拮抗薬はベルテポルフィンを含む。もう一つの局面において、YAP拮抗薬はスタチンを含む。もう一つの局面において、YAP拮抗薬はシンバスタチンを含む。もう一つの局面において、例示的YAP拮抗薬には、β-アドレナリン作動性受容体作動薬であるドブタミン、ラトランクリンA、ラトランクリンB、サイトカラシンD、アクチン阻害剤、細胞骨格に作用する薬物、ブレビスタチチン(Blebbistatitin)、ボツリヌス毒素C3、およびRHOキナーゼ標的薬(例えばY27632)が包含される。
拮抗薬は場合によっては低分子を含む。低分子とは、質量が2000ダルトン未満の化合物である。低分子の分子質量は、好ましくは1000ダルトン未満、より好ましくは600ダルトン未満であり、例えばそれらの化合物は、500ダルトン未満、400ダルトン未満、300ダルトン未満、200ダルトン未満、または100ダルトン未満である。
低分子は有機物または無機物である。例示的有機低分子には、脂肪族炭化水素、アルコール、アルデヒド、ケトン、有機酸、エステル、単糖および二糖、芳香族炭化水素、アミノ酸、および脂質が包含されるが、それらに限定されるわけではない。例示的無機低分子は、微量ミネラル、イオン、遊離基、および代謝産物を含む。あるいは、低分子は、酵素の結合ポケットを満たすために、フラグメント、または小部分、またはより長いアミノ酸鎖からなるように、合成的に工作することができる。典型的には低分子は1キロダルトン未満である。
拮抗薬(または作動薬)の有効量は、0.001mg/kg~250mg/kg体重、例えば0.001mg/kg、0.05mg/kg、0.01mg/kg、0.05mg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg、75mg/kg、100mg/kg、125mg/kg、150mg/kg、175mg/kg、200mg/kg、225mg/kg、または250mg/kg体重である。最終的には、主治医または主治獣医が適当な量および投薬レジメンを決断する。
拮抗薬(または作動薬)は、場合によっては、少なくとも1日1回、少なくとも週1回、または少なくとも月1回、投与される。拮抗薬(または作動薬)は、1日、1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、または1年にわたって投与される。拮抗薬(または作動薬)は、場合によっては、毎日、例えば24時間ごとに投与される。あるいは、拮抗薬(または作動薬)は連続敵に投与されるか、1日に数回、例えば1時間ごと、2時間ごと、3時間ごと、4時間ごと、5時間ごと、6時間ごと、7時間ごと、8時間ごと、9時間ごと、10時間ごと、11時間ごと、または12時間ごとに投与される。
一局面において、作用物質は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、全身投与、皮下投与、吸入投与されるか、または本明細書に記載するもしくは当業者に公知の他の任意の方法によって投与される。
任意で、対象は腫瘍を有し、投与後はその腫瘍のサイズが阻害または低減される。例えば腫瘍サイズは、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%、サイズ減少する。
また、対象におけるがんを処置しまたは防止する方法であって、がんを患っている対象またはがんを患うリスクがある対象を同定する工程、および前記対象に、有効量の、YAPシグナリング調整薬を含む組成物を投与する工程を含み、それによって対象におけるがんを処置しまたは防止する方法も提供される。例えば、YAPシグナリング調整薬は、YAP拮抗薬、例えばYAPの機能または活性を阻害する作用物質を含む。例えばYAP拮抗薬はYAP阻害剤を含む。YAP阻害剤には、抗体(例えば抗YAPポリクローナルおよび/またはモノクローナル抗体)、およびRNAiオリゴヌクレオチド(例えばYAP発現を阻害するためのsiRNA、shRNA、およびdsRNAオリゴヌクレオチド)を含まれうる。あるいは、YAP拮抗薬には下流YAP標的分子の拮抗薬が包含される。
例示的ながんは、癌、肉腫、腫瘍、固形腫瘍、血液がん、白血病、リンパ腫、皮膚がん、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がん、精巣がん、結腸直腸がん、胃がん、腸がん、膀胱がん、肺がん、非小細胞肺がん、膵がん、腎細胞癌、腎がん、肝がん、肝臓癌、脳がん、頭頸部がん、網膜がん、神経膠腫、脂肪腫、咽頭がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、子宮内膜がん、骨髄腫、および食道がんからなる群より選択される。本明細書に記載する方法を使って処置される適切ながんタイプの一つはメラノーマである。
本方法は、場合によっては、細胞ベースの抗腫瘍ワクチンを投与する工程をさらに含む。一局面において本方法は、追加の抗がん剤を投与する工程をさらに含む。適切な追加の抗がん剤は、抗がんワクチン、例えば細胞ベースの抗腫瘍ワクチン、免疫治療、放射線、光線力学的治療(PDT)、局部または局所温熱治療、および化学治療剤からなる群より選択される。適切な免疫治療には、抗体、サイトカイン、および免疫チェックポイント阻害剤が包含される。任意で、化学治療剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗微小管剤、トポイソメラーゼ阻害剤、細胞傷害性抗生物質、および抗体薬物コンジュゲートからなる群より選択される。
本明細書に記載する組成物は、経口投与、静脈内投与、外用投与、非経口投与、腹腔内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、病巣内投与、頭蓋内投与、鼻内投与、眼内投与、心臓内投与、硝子体内投与、骨内投与、脳内投与、動脈内投与、関節内投与、皮内投与、経皮投与、経粘膜投与、舌下投与、腸内投与、唇下投与、吹送投与、坐剤投与、吸入投与、または皮下投与によって投与される。
Tregが媒介する免疫抑制は、好ましくは、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%、低減される。別の一例では、がんが腫瘍を含み、投与後はその腫瘍のサイズが阻害または低減される。例えば腫瘍サイズは、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%、サイズ減少する。
自己免疫障害または炎症性疾患を処置しまたは防止する方法であって、自己免疫障害または炎症性疾患を患っている対象または自己免疫障害もしくは炎症性疾患を発症するリスクがある対象を同定する工程、および前記対象に、有効量の、YAPシグナリング調整薬を含む組成物を投与する工程を含み、それによって対象における自己免疫障害または炎症性疾患を処置しまたは防止する方法も提供される。例えば、YAPシグナリング調整薬はYAP作動薬を含む。好ましくは免疫寛容が増加する。例示的YAP作動薬には、リゾホスファチジン酸(LPA)、スフィンゴシン-1-ホスフェート(S1P)、トロンビン、ニューレグリン1(NRG1)、受容体チロシンキナーゼERBB4のリガンド(例えばDLG4がコードするシナプス後肥厚部タンパク質(PSD-95)、ニューレグリン2β、エピレギュリン、ベータセルリン、ヘパリン結合性EGF様成長因子、およびシグナル伝達性転写因子5A(STAT5A))、および上皮成長因子受容体(EGFR)のリガンド(例えばアンフィレギュリン(AREG))が包含される。
対象における免疫寛容を増加させる方法は、有効量の、YAP作動薬を含む組成物を対象に投与して、Tregの機能、活性、または増殖を増加させ、それによって、対象における免疫寛容を増加させることによって実行される。任意で、作動薬は、対象への養子細胞治療の実施に先だって、またはそれと同時に、またはその後に、移植/移植片拒絶または移植片対宿主病を処置するために投与される。
定義
特に言明した場合または文脈から自明である場合を除き、本明細書において使用する用語「約」は、当技術分野における普通公差の範囲内、例えば平均の2標準偏差以内と理解される。「約」は、言明した値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解することができる。文脈からそうでないことが明らかである場合を除き、本明細書に掲載する数値はすべて、用語「約」によって修飾される。
本明細書に記載する抗体およびそのフラグメントには、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab'およびF(ab')2フラグメント、Fv、scFvが包含されるが、それらに限定されるわけではない。抗体のフラグメントは、その各抗体の免疫学的活性を保持する。いくつかの態様において、抗体のフラグメントは、1500個以下、1250個以下、1000個以下、900個以下、800個以下、700個以下、600個以下、500個以下、400個以下、300個以下、200個以下のアミノ酸を含有する。例えば、タンパク質阻害剤またはペプチド阻害剤は、1500個以下、1250個以下、1000個以下、900個以下、800個以下、700個以下、600個以下、500個以下、400個以下、300個以下、200個以下、100個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、30個以下、25個以下、20個以下、10個以下のアミノ酸を含有する。例えば、本発明の核酸阻害剤は、400個以下、300個以下、200個以下、150個以下、100個以下、90個以下、80個以下、70個以下、60個以下、50個以下、40個以下、35個以下、30個以下、28個以下、26個以下、24個以下、22個以下、20個以下、18個以下、16個以下、14個以下、12個以下、10個以下のヌクレオチドを含有する。
本明細書において使用する用語「抗体」(Ab)には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、および抗体フラグメントが包含される。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書では、「抗体」と可換的に使用される。
「単離された抗体」とは、その自然環境の構成要素から分離されかつ/または回収されたものをいう。その自然環境の夾雑構成要素は、抗体の診断的使用または治療的使用を妨害するかもしれない材料であり、これには、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が包含されうる。好ましい態様では、抗体が、(1)Lowry法で決定して抗体の95重量%超、最も好ましくは99重量%超まで精製されるか、(2)スピニングカップシークエネーターを利用して少なくとも15残基のN末端アミノ酸配列または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで精製されるか、または(3)還元条件下もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEで、クーマシーブルーを使って、または好ましくは銀染色を使って、均一になるまで精製される。単離された抗体には、組換え細胞内にあるインサイチューの抗体が包含される。というのも、その抗体の自然環境の構成要素が、少なくとも1つは存在しないことになるからである。ただし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されるであろう。
本明細書において使用する用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、可能な自然突然変異が微量に存在しうることを除けば、同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に向けられる。さらにまた、異なる決定基(エピトープ)に向けられた異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられる。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、他の抗体による汚染がないように合成されうる点でも有利である。「モノクローナル」という修飾語が、何らかの特定方法による抗体の生産を要求していると解釈してはならない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature, 256:495(1975)が初めて記載したハイブリドーマ方法論によって調製することも、細菌細胞、真核動物細胞または真核植物細胞中で組換えDNA法を使って作製することもできる(例えば米国特許第4,816,567号参照)。「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al., Nature, 352:624-628(1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597(1991)に記載の技法を使って、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
「拮抗薬抗体」という用語は最も広義に使用され、これには、それが特異的に結合するエピトープ、ポリペプチド、または細胞の生物学的活性を部分的にまたは完全に、遮断し、阻害し、または中和する抗体が包含される。拮抗薬抗体を同定するための方法は、候補拮抗薬抗体によって特異的に結合されるポリペプチドまたは細胞を候補拮抗薬抗体と接触させる工程、および前記ポリペプチドまたは細胞に通常付随する1つまたは複数の生物学的活性の検出可能な変更を測定する工程を含みうる。
「作用物質」とは、任意の小化合物、抗体、核酸分子、もしくはポリペプチド、またはそれらのフラグメントを意味する。
「抗新生物作用物質」という用語は、本明細書では、ヒトにおける新生物、特に悪性(がん性)病変、例えば癌、肉腫、リンパ腫、または白血病の発生または進行を阻害する機能特性を有する作用物質を指すために使用される。多くの場合、転移の阻害は抗新生物作用物質の特性である。
「変化」とは、標準的な当技術分野公知の方法、例えば本明細書に記載する方法によって検出される、遺伝子またはポリペプチドの発現レベルまたは活性の変更(増加または減少)を意味する。本明細書にいう変化には、発現レベルの少なくとも1%の変更、例えば発現レベルの少なくとも2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の変更が包含される。例えば変化には、発現レベルの少なくとも5%~10%の変更、好ましくは発現レベルの25%の変更、より好ましくは40%の変更、最も好ましくは50%またはそれ以上の変更が包含される。
「改善する」とは、疾患の発生または進行を減少させ、抑制し、減弱し、削減し、停止させ、または安定させることを意味する。改善するとは、例えば、対象において起こる改良、または対象のうちの少なくとも少数において起こる改良、例えば少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%において起こる改良、またはこれらの値のうちの任意の2つの間の範囲内で起こる改良と一致する、検出可能な改良または検出可能な変更を指す。そのような改良または変更は、作用物質で処置されなかった対象(ここで、無処置の対象は、同じまたは類似する傷害/状態、疾患、または症状を有するか、それを発生させやすい)との比較において、処置された対象において観察されうる。傷害/状態、疾患、症状またはアッセイパラメータの改善は、例えば対象による自己評価によって、臨床家の評価によって、または例えば生活の質評価、疾患または状態の進行の減速、疾患または状態の重症度の低減、または生体分子、細胞のレベルまたは活性に関する適切なアッセイなどといった、適当なアッセイもしくは測定を行うことによって、対象における障害の検出によって、および/または限定するわけではないが写真、ビデオ、デジタルイメージングおよび生理機能検査などのモダリティによって、主観的または客観的に決定されうる。改善は、一過性であるか、長期間にわたるか、または永続的であることができ、あるいは、作用物質が対象に投与されるか、作用物質が本明細書または言及する参考文献に記載のアッセイまたは他の方法において使用されている間、またはその後の関連する時点において、例えば下記の時間枠内で、または作用物質の投与もしくは使用の約12時間後~24または48時間後から、対象がそのような処置を受けてから約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、28日後まで、または1、3、6、9ヶ月以上後まで、さまざまであってよい。
分子「への結合」とは、当該分子に対する物理化学的アフィニティーを有することを意味する。
「を含む(comprising)」という移行語は、「包含する(including)」「含有する(containing)」または「を特徴とする(characterized by)」と同義であって、包含的(inclusive)、すなわち非限定的(open-ended)であり、具陳されていない追加の要素または方法工程を除外しない。対照的に、「からなる(consisting of)」という移行語は、請求項において特定されていない要素、工程、または成分をいずれも除外する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句は、請求項の範囲を、特定された材料または工程、および本願発明の「基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。
「対照」または「リファレンス」とは比較の基準を意味する。本明細書にいう「対照試料または対照被験体と比較して変更された」とは、正常試料、無処理試料、または対照試料からの試料とは統計的に異なるレベルを有することと理解される。対照試料には、例えば培養細胞、1匹または複数匹の実験動物、または1人もしくは複数人のヒト対象が包含される。対照試料を選択し試験するための方法は、当業者の能力内にある。分析物は、細胞または生物によって特徴的に発現または生産される天然物(例えば抗体、タンパク質)、またはレポーターコンストラクトによって生産される物質(例えばβ-ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ)であることができる。検出に使用する方法に依存して、変更の量および測定は変動しうる。統計的有意性の決定は当業者の能力内にあり、例えば陽性結果を構成する平均値からの標準偏差の数である。
「検出」とは、検出しようとする分析物の存在、非存在または量を特定することを指す。
本明細書において使用する用語「診断する」は、病態または症状を分類し、病態の重症度(例えばグレードまたはステージ)を決定し、病態の進行をモニタリングし、病態のアウトカムを予測し、かつ/または回復の見込みを決定することを指す。
製剤または製剤構成要素の「有効量」および「治療有効量」という用語は、単独で、または組み合わせされて、所望の効果を与えるのに十分な、製剤または構成要素の量を意味する。例えば「有効量」とは、無処置患者との比較で、単独で、または組み合わせされて、疾患、例えばがんの症状を改善するのに必要な、化合物の量を意味する。疾患の治療的処置を目的として本発明を実施するために使用される活性化合物の有効量は、投与法、対象の年齢、体重および全身の健康状態に依存して変動する。最終的には主治医または主治獣医が、適当な量および投薬レジメンを決断することになる。そのような量を「有効」量という。
「フラグメント」とはポリペプチド分子または核酸分子の一部分を意味する。この部分は、好ましくは、リファレンス核酸分子またはリファレンスポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含有する。フラグメントは、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、または1000個のヌクレオチドまたはアミノ酸を含有しうる。
「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」という用語は、当該材料がその天然状態で見いだされる場合に通常それに付随している構成要素を、さまざまな程度に含まない材料を指す。「単離する」とは、元の供給源または元の環境からの分離の程度を意味する。「精製する」とは、単離よりも高い分離の程度を意味する。
「マーカー」とは、疾患または障害に関連する発現レベルまたは活性の変化を有する任意のタンパク質またはポリヌクレオチドを意味する。
「調整する」は、変化させる(増加させるまたは減少させる)ことを意味する。そのような変化は、標準的な当技術分野公知の方法、例えば本明細書に記載する方法によって検出される。例えば症状の調整、または分子のレベルもしくは生物学的活性の調整とは、例えば、検出可能に増加または減少した症状または活性を指す。そのような増加または減少は、作用物質で処置されなかった対象(ここで、無処置の対象は、同じまたは類似する疾患、状態、症状を有するか、それを発生させやすい)との比較において、処置された対象において観察されうる。そのような増加または減少は、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、1000%以上、またはこれらの値のいずれか2つの間の任意の範囲内でありうる。調整は、例えば対象による自己評価によって、臨床家の評価によって、または例えば生活の質評価、対象内での分子、細胞もしくは細胞移動のレベルもしくは活性に関する適切なアッセイなどといった適当なアッセイもしくは測定を行うことによって、および/または限定するわけではないが写真、ビデオ、デジタルイメージングおよび生理機能検査などのモダリティによって、主観的または客観的に決定されうる。調整は一過性であるか、長期間にわたるか、または永続的であることができ、あるいは、作用物質が対象に投与されるか、作用物質が本明細書または言及する参考文献に記載のアッセイまたは他の方法において使用されている間、またはその後の関連する時点において、例えば下記の時間枠内で、または作用物質の投与もしくは使用の約12時間後~24または48時間後から、対象がそのような処置を受けてから約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、28日後まで、または1、3、6、9ヶ月以上後まで、さまざまであってよい。
「がん」(新生物、過剰増殖性障害、異形成、悪性腫瘍、および/または悪性新生物ともいう)とは、身体の他の部分に侵入または伝播する可能性がある異常な細胞生育を伴う一群の疾患を意味する。腫瘍のすべてががん性であるわけではなく、良性腫瘍は身体の他の部分に伝播しない。ヒトを冒す公知のがんは100種類以上ある。
「自己免疫」という用語は、自分自身の細胞および組織に対する生物の一連の免疫応答を指す。「自己免疫疾患」は、正常でない免疫応答が引き起こす任意の疾患である。自己免疫疾患の例には、アジソン病、強直性脊柱炎、セリアック病、チャーグ・ストラウス症候群、皮膚筋炎(DM)、1型真性糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、特発性血小板減少性紫斑病、多発性筋炎(PM)、関節リウマチ(RA)、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、および全身性エリテマトーデス(SLE)が包含されるが、それらに限定されるわけではない。
「炎症」という用語は、刺激物、損傷した細胞、または病原体などといった有害な刺激に対する生物の組織による一連の生物学的応答を指す。炎症は、免疫系細胞ならびに分子状媒介因子(例えばサイトカイン)および循環系(血管)が関与する防御応答である。炎症の主な役割は、細胞傷害の最初の原因を排除し、壊死細胞および損傷組織を片付け、組織の修復を開始させることである。
「正常量」という用語は、疾患または障害と診断されていないことがわかっている個体における複合体の正常な量を指す。試験試料中の分子の量を測定し、それを、カットオフ点および異常値を規定するために参照限界値(reference limits)、識別限界値、またはリスク規定閾(risk defining thresholds)などの技法を利用して、「正常対照レベル」と比較することができる(例えば膵炎の場合)。「正常対照レベル」とは、前立腺がんを患っていないことがわかっている対照において典型的に見いだされる1つまたは複数のタンパク質(もしくは核酸)または複合タンパク質指数(または複合核酸指数)のレベルを意味する。そのような正常対照レベルおよびカットオフ点は、分子が単独で使用されるか、他のタンパク質と組み合わせて指数とする定式において使用されるかに基づいて、変動しうる。あるいは、正常対照レベルは、以前に試験された対象のうち、臨床上適切な期間にわたって疾患または障害に転化しなかった対象からのタンパク質パターンのデータベースであることができる。
決定されたレベルは、対照レベルまたはカットオフレベルまたは閾レベルと同じである場合も、対照レベルまたはカットオフレベルまたは閾レベルとの比較で増加または減少している場合もある。いくつかの局面において、対照対象は、同じ種、性別、民族性、年齢群、喫煙状況、ボディマス指数(BMI)、現行の治療レジメン状況、病歴、またはそれらの組み合わせの対応対照であるが、対照は問題の疾患を患っていないか、その疾患のリスクがない点で、診断される対象とは異なる。
対照レベルとの比較で、決定されたレベルは、増加したレベルでありうる。レベル(例えば発現レベル、生物学的活性レベルなど)に関して本明細書において使用する「増加した」という用語は、対照レベルを上回る任意の%増加を指す。増加したレベルは、対照レベルとの比較で、少なくともまたは約1%の増加、少なくともまたは約5%の増加、少なくともまたは約10%の増加、少なくともまたは約15%の増加、少なくともまたは約20%の増加、少なくともまたは約25%の増加、少なくともまたは約30%の増加、少なくともまたは約35%の増加、少なくともまたは約40%の増加、少なくともまたは約45%の増加、少なくともまたは約50%の増加、少なくともまたは約55%の増加、少なくともまたは約60%の増加、少なくともまたは約65%の増加、少なくともまたは約70%の増加、少なくともまたは約75%の増加、少なくともまたは約80%の増加、少なくともまたは約85%の増加、少なくともまたは約90%の増加、または少なくとももしくは約95%の増加でありうる。
対照レベルとの比較で、決定されたレベルは、減少したレベルでありうる。レベル(例えば発現レベル、生物学的活性レベルなど)に関して本明細書において使用する用語「減少した」は、対照レベルを下回る任意の%減少を指す。減少したレベルは、対照レベルとの比較で、少なくともまたは約1%の減少、少なくともまたは約5%の減少、少なくともまたは約10%の減少、少なくともまたは約15%の減少、少なくともまたは約20%の減少、少なくともまたは約25%の減少、少なくともまたは約30%の減少、少なくともまたは約35%の減少、少なくともまたは約40%の減少、少なくともまたは約45%の減少、少なくともまたは約50%の減少、少なくともまたは約55%の減少、少なくともまたは約60%の減少、少なくともまたは約65%の減少、少なくともまたは約70%の減少、少なくともまたは約75%の減少、少なくともまたは約80%の減少、少なくともまたは約85%の減少、少なくともまたは約90%の減少、または少なくとももしくは約95%の減少でありうる。
「薬学的に許容される担体」という語句は当技術分野において認識されており、これには、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに適した薬学的に許容される材料、組成物または媒体が包含される。担体には、対象作用物質をある臓器または身体の一部分から別の臓器または身体の別の一部分へと運搬または輸送するのに関与する、液状または固形充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料が包含される。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者にとって害にならないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの例には、以下に挙げるものが含まれる:糖類、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよびバレイショデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオ脂および坐剤ワックス;油、例えばラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝作用物質、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および薬学的製剤に使用される他の非毒性適合物質。
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」とは、翻訳後修飾(例えばグリコシル化またはリン酸化)を問わず、2つ以上の天然アミノ酸または非天然アミノ酸の任意の鎖を意味し、本明細書に記載するとおり、天然または非天然ポリペプチドまたはペプチドの全部または一部を構成する。
「精製された」または「生物学的に純粋な」核酸またはタンパク質は、どの不純物もタンパク質の生物学的特性に実質的に影響を及ぼさず、他の有害な結果も引き起こさないように、他の材料の含有量が十分に少ない。すなわち、本発明の核酸またはペプチドは、それが細胞性材料、ウイルス性材料、または組換えDNA技法によって生産された場合には培養培地、化学合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学薬品を、実質的に含まないのであれば、精製されている。純度および均一性は、典型的には、分析化学の技法、例えばポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーなどを使って決定される。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲルにおいて本質的に1本のバンドを与えることを意味しうる。リン酸化またはグリコシル化などの修飾を受けうるタンパク質の場合、異なる修飾は、別々に精製されうる異なる単離されたタンパク質を与えうる。
「実質的に純粋な」とは、自然界でそれに付随している構成要素から分離されたヌクレオチドまたはポリペプチドを意味する。典型的には、ヌクレオチドおよびポリペプチドは、それらが、自然界でそれらに付随しているタンパク質および天然有機分子を、重量で、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、さらには99%含まなければ、実質的に純粋である。
本明細書に掲載する範囲は、当該範囲内のすべての値の省略表現であると理解される。例えば1~50という範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50、および前述の整数の間にあるすべての小数値、例えば1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、および1.9などからなる群からの任意の数字、数字の組み合わせ、または部分範囲を包含すると理解される。部分範囲については、範囲のどちらか一方の端点から伸びる「入れ子状部分範囲(nested sub-range)」が、特に考えられる。例えば、1~50という例示的範囲の入れ子状部分範囲は、一方向では1~10、1~20、1~30、および1~40を含み、他方向では50~40、50~30、50~20、および50~10を含みうる。
「低減する」とは、少なくとも1%、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の負の変化を意味する。
「リファレンス」とは、標準状態または対照状態を意味する。
「リファレンス配列」は、配列比較または遺伝子発現比較の基準として使用される所定の配列である。リファレンス配列は、指定された配列のサブセットまたは指定された配列全体、例えば、完全長cDNA配列もしくは完全長遺伝子配列のセグメント、または完全cDNA配列もしくは完全遺伝子配列でありうる。ポリペプチドの場合、リファレンスポリペプチド配列の長さは、一般に、少なくとも約16アミノ酸、好ましくは少なくとも約20アミノ酸、より好ましくは少なくとも約25アミノ酸、さらに好ましくは約35アミノ酸、約50アミノ酸、または約100アミノ酸であるだろう。核酸の場合、リファレンス核酸配列の長さは、一般に、少なくとも約40ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75ヌクレオチド、さらに好ましくは約100ヌクレオチドまたは約300もしくは約500ヌクレオチドであるか、その前後またはそれらの間の任意の整数であるだろう。
本明細書において、「作用物質を得る」などという場合の「を得る」は、当該作用物質を合成すること、購入すること、または他の方法で獲得することを包含する。
本明細書において使用する用語「対象」は、表示した障害を患いやすい、動物界のあらゆる構成員を包含する。いくつかの局面において、対象は哺乳動物であり、これは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えばウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、またはネコを包含するが、それらに限定されるわけではない。対象は好ましくは処置を必要とする哺乳動物、例えばある疾患と診断されたか、その疾患の素因を持つと診断された対象である。哺乳動物は任意の哺乳動物、例えばヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ならびに家畜または食糧消費用に飼育される動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、およびヤギである。好ましい一態様において、哺乳動物はヒトである。
「実質的に同一」とは、リファレンスアミノ酸配列(例えば本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか一つ)またはリファレンス核酸配列(例えば本明細書に記載の核酸配列のいずれか一つ)に対して少なくとも50%の同一性を呈するポリペプチド分子または核酸分子を意味する。好ましくは、そのような配列は、比較に使用する配列に対してアミノ酸レベルまたは核酸レベルで、少なくとも60%、より好ましくは80%または85%、より好ましくは90%、95%、さらには99%同一である。
本明細書において使用する用語「試料」は、インビトロ評価のために得られる生物学的試料を指す。本明細書に開示する方法に関して、試料または患者試料は、好ましくは、任意の体液または組織を含みうる。いくつかの態様において、体液は、対象から得られる血液、血漿、血清、リンパ液、母乳、唾液、粘液、精液、膣分泌物、細胞抽出物、炎症液、脳脊髄液、糞便、硝子体液、または尿を包含するが、それらに限定されるわけではない。いくつかの局面において、試料は、血液試料、血漿試料、血清試料、および尿試料のうちの少なくとも2つの複合パネルである。例示的局面において、試料は、血液またはその画分(例えば血漿、血清、白血球フェレーシスによって得られる画分)を含む。好ましい試料は全血、血清、血漿、または尿である。試料は、組織または体液の部分精製画分であることもできる。
リファレンス試料は、当該疾患または状態を有さないドナーからの、または当該疾患もしくは状態を有する対象の正常組織からの、「正常」試料であることができる。リファレンス試料は、無処置のドナーからの試料、または活性作用物質で処理されていない細胞培養(例えば無処理または媒体のみの投与)からの試料であることもできる。リファレンス試料は、細胞または対象を試験対象である作用物質または治療的介入と接触させる前の「ゼロ時点」において、または前向き研究の開始時において、採取することもできる。
「特異的に結合」とは、本発明のポリペプチドを認識し結合するが、本発明のポリペプチドを自然に含んでいる試料、例えば生物学的試料中の他の分子を認識し結合することは実質的にない、化合物または抗体を意味する。
ある特別な疾患、状態、または症候群を「患っているまたは患っていると疑われる」対象は、有資格者が、当該対象は前記疾患、状態、または症候群を患っていると診断するか、またはそう疑うのに十分な数のリスク因子を有するか、十分な数または組み合わせの前記疾患、状態、または症候群の徴候または症状を呈する。免疫抑制の増加と関連する状態を患っているまたは患っていると疑われる対象の同定方法は、当業者の能力内である。ある特別な疾患、状態、または症状を患っている対象と、患っていると疑われる対象とは、必ずしも2つの相異なる群ではない。
本明細書において、ある特別な疾患または状態「に罹りやすい(susceptible to)」または「を起こしやすい(prone to)」または「の素因がある(predisposed to)」または「を発症するリスクがある(at risk of developing)」とは、遺伝因子、環境因子、健康因子および/または他のリスク因子に基づいて、ある疾患または状態を発症する可能性が一般集団より高い個体を指す。疾患を発症する確率の増加は、約10%、20%、50%、100%、150%、200%、またはそれ以上の増加でありうる。
「実質的に同一」とは、リファレンスアミノ酸配列(例えば本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか一つ)またはリファレンス核酸配列(例えば本明細書に記載の核酸配列のいずれか一つ)に対して少なくとも50%の同一性を呈するポリペプチド分子または核酸分子を意味する。好ましくは、そのような配列は、比較に使用する配列に対してアミノ酸レベルまたは核酸レベルで、少なくとも60%、より好ましくは80%または85%、より好ましくは90%、95%、さらには99%同一である。
本明細書において使用する「処置する」、「処置すること」、「処置」などの用語は、症状の重症度および/または頻度の低減を達成し、症状および/またはその根本原因を排除し、かつ/または損傷の改善または矯正を促進するために、ある有害な状態、障害、または疾患に冒された、臨床症状のある個体に、作用物質または製剤を投与することを指す。障害または状態の処置は、その障害もしくは状態またはそれらに関連する症状が完全に排除されることを必要としない(ただしそのような完全な排除が否定されるわけでもない)ことは、理解されるであろう。
「防止する」、「防止すること」、「防止」、「予防的処置」などの用語は、ある特定の有害な状態、障害、または疾患を発症するリスクがある、またはある特定の有害な状態、障害、または疾患に罹りやすい、またはある特定の有害な状態、障害、または疾患の素因を有する、臨床症状のない個体に、作用物質または製剤を投与することを指し、それゆえに、症状の発生および/またはそれらの根本原因の防止に関する。
場合により、本発明の組成物は経口投与または全身投与される。他の投与様式には、直腸、外用、眼内、バッカル、膣内、槽内、脳室内、気管内、鼻腔、経皮、インプラント内/上、または非経口の各経路が包含される。「非経口」という用語は、皮下、髄腔内、静脈内、筋肉内、腹腔内、または注入を包含する。静脈内経路または筋肉内経路は、長期的な治療および予防にはあまり適さない。ただしそれらは緊急時には好ましいだろう。本発明の組成物を含む組成物は、血液などの生理学的流体に加えることができる。予防的処置には、患者および投与計画にとっての利便性ゆえに、経口投与が好ましい場合がある。より急性の疾病、または胃腸不耐性、腸閉塞、もしくは重篤な疾患に付随する他の状態ゆえに腸内投与に耐えることができない患者における治療にとっては、非経口モダリティ(皮下または静脈内)が好ましいだろう。肺血管疾患(例えば肺高血圧)には吸入治療が最も適当でありうる。
薬学的組成物は、迅速に分裂する細胞、例えばがん細胞における細胞周期を停止させるのに使用するためのキットまたは薬学的システムに組み込むことができる。本発明のこの局面によるキットまたは薬学的システムは、バイアル、チューブ、アンプル、瓶、シリンジ、またはバッグなどの1つまたは複数の容器手段がそこに固く閉じ込められている担体手段、例えば箱(box)、カートン(carton)、チューブを含む。本発明のキットまたは薬学的システムは、キットの使用に関する附属説明書も含みうる。
特に言明した場合または文脈から自明である場合を除き、本明細書において使用する用語「または」は包含的であると理解される。特に言明した場合または文脈から自明である場合を除き、本明細書において使用する用語「ある」、「一つの」および「前記」(「a」、「an」および「the」)は、単数または複数であると理解される。
特に言明した場合または文脈から自明である場合を除き、本明細書において使用する用語「約」は、当技術分野における普通公差の範囲内、例えば平均の2標準偏差以内と理解される。「約」は、言明した値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解することができる。文脈からそうでないことが明らかである場合を除き、本明細書に掲載する数値はすべて、用語「約」によって修飾される。
本明細書において、可変部(variable)の任意の定義における化学基の一覧の記載は、任意の単一基または列挙した基の組み合わせとしての当該可変部の定義を包含する。本明細書におけるある可変部または局面に関する一態様の記載は、任意の単一態様または他の任意の態様もしくはその一部分との組み合わせとしての当該態様を包含する。
「治療有効量」とは、有益なまたは所望の結果(臨床結果を含む)を達成するのに十分な量をいう。有効量は1回または複数回で投与することができる。
ここに提供する組成物または方法はいずれも、ここに提供する他の組成物および方法のいずれかのうちの1つまたは複数と組み合わせることができる。
[本発明1001]
YAP阻害剤と免疫治療剤とを対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを処置する方法。
[本発明1002]
YAP阻害剤がベルテポルフィンである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
YAP阻害剤がスタチン薬である、本発明1001の方法。
[本発明1004]
YAP阻害剤がシンバスタチンである、本発明1001の方法。
[本発明1005]
免疫治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、本発明1001の方法。
[本発明1006]
免疫治療剤が抗PD-1抗体である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
免疫治療剤が抗腫瘍ワクチンである、本発明1001の方法。
[本発明1008]
免疫治療剤がGVAX抗腫瘍ワクチンである、本発明1001の方法。
[本発明1009]
免疫治療剤が、GVAX肺がん(GVAX lung)、GVAX膵がん(GVAX pancreas)、GVAX白血病(GVAX leukemia)、GVAX乳がん(GVAX breast)、GVAX肉腫(GVAX sarcoma)、GVAXメラノーマ(GVAX melanoma)、およびGVAX腎細胞癌(GVAX renal cell carcinoma)からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記阻害剤および前記剤が互いに1ヶ月以内に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記阻害剤および前記剤が互いに1週間以内に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記阻害剤および前記剤が互いに2日以内に投与される、本発明1001の方法。
[本発明1013]
YAP阻害剤と免疫治療剤とを含む、治療組成物。
[本発明1014]
YAP阻害剤がベルテポルフィンである、本発明1013の治療組成物。
[本発明1015]
YAP阻害剤がスタチン薬である、本発明1013の治療組成物。
[本発明1016]
YAP阻害剤がシンバスタチンである、本発明1013の治療組成物。
[本発明1017]
免疫治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、本発明1013の治療組成物。
[本発明1018]
免疫治療剤が抗PD-1抗体である、本発明1013の治療組成物。
[本発明1019]
免疫治療剤が抗腫瘍ワクチンである、本発明1013の治療組成物。
[本発明1020]
免疫治療剤がGVAX抗腫瘍ワクチンである、本発明1013の治療組成物。
[本発明1021]
免疫治療剤が、GVAX肺がん、GVAX膵がん、GVAX白血病、GVAX乳がん、GVAX肉腫、GVAXメラノーマ、およびGVAX腎細胞癌からなる群より選択される、本発明1013の治療組成物。
[本発明1022]
免疫治療剤がペプチドワクチンである、本発明1013の治療組成物。
[本発明1023]
YAP阻害剤が、YAPの一部分またはTEADの一部分を含むペプチド阻害剤である、本発明1013の治療組成物。
[本発明1024]
YAP阻害剤と免疫治療剤とを含む、対象におけるがんを処置するためのキット。
[本発明1025]
YAP阻害剤がベルテポルフィンである、本発明1024のキット。
[本発明1026]
YAP阻害剤がスタチン薬である、本発明1024のキット。
[本発明1027]
YAP阻害剤がシンバスタチンである、本発明1024のキット。
[本発明1028]
免疫治療剤が免疫チェックポイント阻害剤である、本発明1024のキット。
[本発明1029]
免疫治療剤が抗PD-1抗体である、本発明1024のキット。
[本発明1030]
免疫治療剤が抗腫瘍ワクチンである、本発明1024のキット。
[本発明1031]
免疫治療剤がGVAX抗腫瘍ワクチンである、本発明1024のキット。
[本発明1032]
免疫治療剤が、GVAX肺がん、GVAX膵がん、GVAX白血病、GVAX乳がん、GVAX肉腫、GVAXメラノーマ、およびGVAX腎細胞癌からなる群より選択される、本発明1024のキット。
[本発明1033]
免疫治療剤がペプチドワクチンである、本発明1024のキット。
[本発明1034]
YAP阻害剤が、YAPの一部分またはTEADの一部分を含むペプチド阻害剤である、本発明1024のキット。
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様の以下の説明および特許請求の範囲から、明白になるであろう。別段の定義がある場合を除き、本明細書において使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野における通常の技能を有する者に共通して理解されているものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験では、本明細書に記載するものと類似するまたは等価な方法および材料を使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及する公開された外国特許および特許出願はすべて、参照により、本明細書に組み入れられる。本明細書において言及するアクセッション番号によって示されるGenbankおよびNCBI提出物は、参照により、本明細書に組み入れられる。本明細書において言及する他の公表済み参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により、本明細書に組み入れられる。矛盾が生じた場合は、定義を含めて本明細書が優先される。さらにまた、材料、方法および実施例は、例示に過ぎず、限定を意図していない。
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、Treg細胞の機能、活性、または増殖を調整するためにYes関連タンパク質(YAP)シグナリングを標的とすることによって、がんを処置する方法の開発に基づく。以下に詳述するように、YAPシグナリングの阻害は腫瘍の成長を抑制した。さらにまた、本明細書において述べるように、YAPシグナリングの阻害は、それを細胞ベースの抗腫瘍ワクチンと併用した場合に、同ワクチンの有効性を改良した。
調節性T細胞(Treg)は、免疫細胞の自己寛容およびホメオスタシスの維持に決定的な役割を果たしている。同時にTregは、腫瘍に対する効果的免疫応答の発生にとっての障壁でもある。Foxp3はTreg中で発現するカノニカルな転写因子であり、それらの機能にとって必要である。しかし、Foxp3発現およびTreg機能に影響を及ぼす経路および微小環境要因は、完全には理解されていない。Hippo経路の下流コアクチベーターであるYes関連タンパク質(YAP)はTregサブセットにおいて高発現し、サイトカインTGFβに応答してアップレギュレートされる。YAP-/- Tregは、インビトロおよびインビボでの抑制活性が損なわれており、CD4+ T細胞もしくはTregにおけるYAPの欠失またはYAP阻害は、抗腫瘍免疫の強化をもたらす。このようにYAPはTreg促進シグナルのフィードフォワードループ増幅を増強する。YAPの喪失は優れた抗腫瘍免疫を与えうる。
発生中のT細胞は、造血幹細胞からの分化に際して、その系統ポテンシャル(lineage potential)の漸進的制約を受ける。胸腺におけるCD4/CD8系統選択後に、CD4系統細胞になる細胞は、転写因子Foxp3のアップレギュレーションを特色とする調節性T細胞(Treg)運命をとるか、またはナイーブCD4 T細胞表現型を呈するようになる。後者の集団は、一連の機能的に専門化したTヘルパー(Th)系統に分化する能力ゆえに、広く公知である。あるいは、ナイーブCD4+ T細胞は末梢組織で活性化されて調節性T細胞形質(Foxp3発現を含む)を呈するようになることができる。
調節性T細胞(Treg)は、自己免疫疾患を引き起こしうる正常でないまたは過剰な免疫応答を抑制することによって、免疫学的自己寛容および免疫ホメオスタシスの促進に決定的な役割を果たしている(Sakaguchi, S., et al., Cell, 2008. 133:775-87)。しかしそれらは、効果的な抗腫瘍免疫および慢性感染に対する殺菌免疫にとって、大きな障壁にもなる(Whiteside, T.L., Semin Cancer Biol, 2012. 22:327-34)。シグネチャーであるフォークヘッドファミリー転写因子Foxp3は、Tregの特徴的抑制機能を担う遺伝子発現プロファイルのかなめである。Foxp3をコードする遺伝子中の突然変異がScurfyマウスおよびヒトIPEX患者において同様の自己免疫障害につながることは、その重要性を明白に証明している(Bennett, C.L., et al., Nat Genet, 2001. 27:20-1; Brunkow, M.E., et al., Nat Genet, 2001. 27:68-73)。大まかにいって、Tregは、それが発生する組織によって決定される2つの異なるサブタイプに分類されている。胸腺由来のTreg、すなわち「ナチュラル」Treg(tTreg)は、循環Foxp3+ Tregの大部分を占め、自己免疫の防止にとって極めて重要である。末梢組織(pTreg)またはエクスビボ(iTreg)で誘導されるTregは、末梢においてナイーブT細胞から生じて、Foxp3発現および抑制機能を獲得する。これはTGF-β/IL-2シグナリング経路の活性化によって起こる(Josefowicz, S.Z., et al., Annu Rev Immunol, 2012. 30:531-64)。TGF-βはインビトロおよびインビボでFoxp3発現の強力な誘導物質であり、シグナリング分子のSMADファミリーのメンバーは、TGF-βが開始するシグナリング事象および下流遺伝子活性化の決定的な推進因子および調節因子としての機能を果たす(Zheng, Y., et al., Nature, 2010. 463:808-12)。
TGF-βシグナリングは、Foxp3発現およびTreg機能の維持にとって決定的に重要であるとも報告されている(Marie, J.C., et al., J Exp Med, 2005. 201: 1061-7; Liu, Y., et al., Nat Immunol, 2008. 9:632-40)。同様に、SMAD2およびSMAD3も、Tregの最適な安定性にとって必要であるように見える(Takimoto, T., et al., J Immunol, 2010. 185:842-55)。TregにおけるTGF-β/SMADシグナリングの増大または増幅のための機序は、さまざまな微小環境的ニッチにおいて、これらの細胞の抑制機能を安定させまたは強化することができる(Wu C., et al., Immunity, 2014. 41:270-82)。このキー抗炎症性サイトカインは、Tregの発生および機能の一因になることに加えて、他の免疫細胞への直接的抑制効果を有することも公知である。
YAP(Yes関連タンパク質)は、臓器サイズを発生的に調節する転写コアクチベーターである。YAPは、いくつかのがんタイプ、例えば肺がん、結腸直腸がん、卵巣がん、肝臓がんおよび前立腺がんにおいて、上昇していることが多く、そこでは、YAPが強力な腫瘍プロモーターとして作用し、その活性化は腫瘍進行における頻発事象である。Hippo経路は、YAPの核局在化、活性、および腫瘍形成能の主要調節因子であると考えられる。YAPおよびそのキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)対応物Yorkie(YKI)は、TEADおよびSMADなどといったさまざまな転写因子の活性を調節することによって、組織の成長および細胞の生存を促進する。
意外なことに、本明細書に記載するとおり、TregはYAPを高発現している。これら重要な免疫制御の細胞媒介因子におけるYAPの役割を特徴づける。YAPが存在しない場合、Tregはインビトロでもインビボでも免疫活性化を抑制することができない。結果として、CD4およびFoxp3限定的なYAPの遺伝子欠失は、炎症誘発性サイトカインの生産量の上昇を伴って、植え込まれた腫瘍に対して著しく耐性なマウスを与えた。YAPの化学的ターゲティングも、複数の免疫治療レジメンの抗腫瘍効力を強化した。
これらの知見は、YAPおよびその下流標的遺伝子が、Foxp3発現およびTregが強いる寛容の維持に、重要な役割を果たすことを示唆しており、これらの因子が治療的操作のための有望な標的であることを明確に示している。
がんを処置するための方法および製品
本発明者らは、がんを処置するための方法および製品を開発した。本方法は、免疫寛容を破綻させ、対象が頑強な抗腫瘍免疫応答を開始することを可能にする。腫瘍成長の強い抑制を生じさせるために、作用物質を併用する。
作用物質は、当技術分野において公知の任意の適切な手段によって投与することができる。作用物質は、適当であれば、全身性に投与することができる。使用しうる投与方法には、筋肉内、静脈内、脊髄内、経口、舌下、頭蓋内、腹腔内、吸入、経皮、皮下および腫瘍内が包含されるが、それらに限定されるわけではない。
使用しうるYAP阻害剤には、ベルテポルフィンならびに薬理学的に許容される塩および活性誘導体などといった、当技術分野において公知のものがいずれも包含される。WO2013188138A(9H-フルオレン-9-オン,オキシムファーマコフォア、例えば2,7-ビス(ピペリジン-1-イル-スルホニル)-9H-フルオレン-9-オンオキシム); Zhang et al., ACS Med. Chem. Lett., 2014, 5(9), pp 993-998(環状ペプチド阻害剤)も参照されたい。任意のYAP阻害剤を、そして特にTEADまたはTazへのその結合の阻害剤を使用しうる。シンバスタチンなどのスタチンも同様にYAP阻害剤として使用しうる。
YAPに対する抗体をYAP阻害剤として使用しうる。Santa Cruz Biotechnologyから購入することができるYAP抗体の例には、以下の抗体が包含される: YAP(B-8)(カタログ番号sc-398182)、YAP(G-6)(カタログ番号sc-376830)、YAP(H-9)(カタログ番号sc-271134)、YAP(C-20)(カタログ番号sc-17141)、YAP(S-20)(カタログ番号sc-17140)、YAP(H-125)(カタログ番号sc-15407)、およびYAP(63.7)(カタログ番号sc-101199)。Cell Signaling Technologyから購入することができるYAP抗体の例には、以下の抗体が包含される: YAP(D8H1X)XPウサギmAB(カタログ番号14074)、YAP抗体(カタログ番号4912)、およびホスホ-YAP(Ser127)抗体(カタログ番号4911)。ThermoFisher Scientific から購入することができるYAP抗体の例には、以下の抗体が包含される: YAP抗体(カタログ番号PA5-17609)、YAP1抗体(1A12)(カタログ番号MA5-17200)、YAP抗体(カタログ番号PA5-17609)、YAP抗体(カタログ番号PA1-46189)、YAP1抗体(カタログ番号PA5-19677)、YAP1抗体(カタログ番号PA5-13504)、ホスホ-YAP pSer127抗体(カタログ番号PA5-17481)、およびホスホ-YAP1 pSer127抗体(カタログ番号PA5-35481)。Abcamから購入することができるYAP抗体の例には、以下の抗体が包含される:抗YAP1抗体(カタログ番号ab56701)、抗YAP1抗体(EP1674Y)(カタログ番号ab52771)、抗YAP1(ホスホS127)抗体(EP1675Y)(カタログ番号ab76252)、抗YAP1(ホスホY357)抗体(カタログ番号ab62751)および抗YAP1抗体(カタログ番号ab81183)。
免疫治療剤は、免疫系を介して働く任意の薬剤である。これらには抗体およびワクチンが包含される。特異的T細胞またはB細胞応答の系性を刺激する薬剤にはワクチンが包含される。抗体は、標的抗原に結合し、標的抗原および/またはそれらを発現する細胞を分解するために、免疫系の他のメンバー、例えば補体を動員することによって機能しうる。二重特異性T細胞エンゲージ分子(engaging molecule)は、T細胞を標的抗原に動員する。サイトカインは免疫系のパーツを活性化しまたは阻害することができる。本発明と有利に併用することができる具体的免疫治療剤には、肺がん、膵臓がん、白血病、乳がん、肉腫、メラノーマおよび腎がん用の、免疫チェックポイント阻害剤、抗PD1抗体、抗CTLA4抗体、抗腫瘍ワクチン、GVAXワクチンが包含される。他のワクチンおよび抗体、例えば腫瘍抗原ペプチドワクチンおよび腫瘍抗原に対する抗体も使用することができる。
対象に投与される2種類以上の作用物質は、同時に投与しうるが、その必要があるわけではない。同時に投与される場合、それらは混合物として投与してもよいし、混合物として投与しなくてもよい。2種類以上の作用物質は、互いに2日以内、互いに1週間以内、または互いに1ヶ月以内に、別々に投与してもよい。
組成物は、2つ以上の作用物質、YAP阻害剤および免疫治療剤を、混合して含みうる。それらは、製造者、薬剤師、臨床家によって、一つに混合されうる。第2の作用物質が投与される前に第1の作用物質が身体から完全に取り除かれてしまうことがないように十分に近い期間内に投与された場合には、組成物が体内で形成されうる。2つ以上の作用物質を前後に並べて融合分子またはコンジュゲート分子として作製してもよい。
キットは、複数の作用物質を搬送し、貯蔵し、販売するために梱包される。作用物質はキット内で別々に封入してもよいし、作用物質を混合してもよい。他の構成要素、例えば混合容器または混合器具、希釈剤、担体、賦形剤、送達デバイス、例えばシリンジ、吸入器、または噴霧器などを、キットに含めることができる。キットは、製剤および処方情報、安全性および融合作用情報、ならびに廃棄情報も含みうる。
本発明の方法および組成物によって処置されうるがんには、肺がん、膵がん、乳がん、大腸がん、甲状腺がん、直腸がん、神経膠腫、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、メラノーマ、腎がん、胃がん、腸がん(intestinal cancer)、食道がん、神経芽細胞腫がん、子宮内膜がん、胆管癌、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、脂肪腫、皮膚がん、肝臓がん、膀胱がん、網膜がん、精巣がん、口腔がん、舌がん、腸がん(bowel)、および星状細胞腫が包含されるが、それらに限定されるわけではない。骨髄腫を処置しうる。白血病およびリンパ腫などの血液がんも処置しうる。
哺乳動物におけるHippo経路は、Yes関連タンパク質(Yap)のリン酸化ならびにその細胞質へのトランスロケーションおよびE3ユビキチンリガーゼによる分解に収束する複数のシグナリングネットワークからなる。哺乳動物のSTE20様プロテインキナーゼ(Mst1/2)およびラージ腫瘍サプレッサーホモログ(large tumor suppressor homolog)(Lats1/2)キナーゼは、Yapを修飾する上流セリン/スレオニンキナーゼであり、これらのキナーゼはCRB、アクチン細胞骨格媒介Gタンパク質共役受容体、および接着接合(adhesion junction)によって調節される。Hippo経路は、その細胞での役割から示されるとおり、多くの異なるがんにおいて調節不全を起こすことが多く、腫瘍形成および上皮間葉転換(EMT)を促進することができる[15]。Hippo経路が遮断されると、それは、YAPの過剰リン酸化ならびにその核トランスロケーション/PDZ結合モチーフを持つコアクチベーター(Taz)との会合につながる。この複合体はさらにTEAドメイン含有配列特異的転写因子(TEAD)と会合し、それらは全体として、標的遺伝子発現を調節する。多くの固形腫瘍では、しばしば、YAPおよびTAZが核に著しく局在化して、細胞増殖および細胞死に関係する遺伝子の異常発現をもたらす。このように、腫瘍を制御には、活性なHippo経路の維持が重要である。
免疫細胞におけるHippo経路の役割についてはほとんどわかっていない。CD8+ T細胞の活性化がYap発現につながり、CD8+ T細胞の最終分化を調節することは公知である[16]。これと整合して、本発明者らは、Yap発現がCD4+ T細胞において誘導性であり、Treg抑制機能に関与することを見いだした。これは、T細胞由来Yapの非存在下における抗腫瘍免疫応答の強化および攻撃的腫瘍成長の効果的な制御につながる。
Yap阻害剤はインビトロで腫瘍細胞成長に対して直接的に負に働く効果を有するが、薬物VPは溶解度の問題を生じがちであり、この問題は、バイオアベイラビリティを制限し、インビボでの腫瘍成長に有意な影響を及ぼすVPの能力を制限することがある[17]。これは、メラノーマ進行中のマウスのVP処置が腫瘍成長の経過を変化させなかったという、本発明者らの発見によって裏付けられる(図4)。しかし、炎症性サイトカイン生産量の上昇(図3C)によって証明されるYapターゲティングの免疫調整的局面は、他の作用物質の抗腫瘍効果を劇的に強化するようであり、コンビナトリアル免疫治療戦略としてのかなりの価値が示唆される。
調節性T細胞(Treg)
調節性T細胞(Treg)は、免疫系を調整し、自己抗原に対する寛容を維持し、自己免疫疾患を抑止するT細胞の亜集団である。これらの細胞は一般に、エフェクターT細胞の誘導および増殖を抑制しまたはダウンレギュレートする。Treg17細胞と呼ばれる新たな調節性T細胞が最近同定された。マウスモデルにより、Tregの調整は、自己免疫疾患およびがんを処置することができ、臓器移植を容易にしうることが示唆されている。
T調節性細胞は、他の細胞の免疫応答を抑制する免疫系の構成要素である。これは、過剰な反応を防止するために免疫系に組み込まれた重要なチェックである。調節性T細胞は多くの形態で現れ、最もよく理解されているのはCD4、CD25、およびFoxp3を発現するもの(CD4+CD25+調節性T細胞)である。これらの「Treg」はヘルパーT細胞とは異なる。もう一つの調節性T細胞サブセットはTreg17細胞である。調節性T細胞は、免疫応答が侵入生物の排除に成功した後の免疫応答のシャットダウンに関与し、自己免疫の防止にも関与している。
CD4+ Foxp3+調節性T細胞は、インビトロで生成した「サプレッサー」T細胞集団と区別するために、「天然(naturally-occurring)」調節性T細胞と呼ばれている。さらなる調節性T細胞には、Tr1、Th3、CD8+CD28-、およびQa-1拘束性T細胞が包含される。自己寛容および免疫ホメオスタシスへのこれらの集団の寄与は、あまり明確にはなっていない。FOXP3はマウスCD4+CD25+ T細胞の良いマーカーとして使用することができるが、最近の研究では、CD4+CD25- T細胞におけるFOXP3発現の証拠も示されている。ヒトでは、活性化されたばかりの通常型T細胞によってもFoxP3が発現されるので、FoxP3はヒトT-regを特異的に同定するわけではない。
T細胞はすべて、骨髄に由来する前駆細胞から生じ、それら前駆細胞は胸腺においてそれぞれの系統に振り向けられる。T細胞はすべてが、CD4-CD8-TCR-細胞として、DN(二重陰性)段階から始まり、個々の細胞はそのT細胞受容体遺伝子を再編成することでユニークな機能的分子を形成させることになる。次に、それらの細胞は、自己MHCとの相互作用が最小レベルになるように、胸腺皮質中の細胞に対する試験を受ける。細胞がこれらのシグナルを受け取ると、それらは増殖し、CD4およびCD8の両方を発現して、二重陽性細胞になる。Tregの選択は胸腺の髄質またはハッサル小体中の放射線抵抗性造血系由来MHCクラスII発現細胞上で起こる。DP(二重陽性)段階では、それらは胸腺内での細胞との相互作用によって選択され、Foxp3の転写を開始してTreg細胞になるが、それらは、機能的Tregとなる単一陽性段階までは、Foxp3の発現を開始しないだろう。Tregは、NKT細胞またはγδT細胞の制限されたTCR発現を有さず、TregのTCR多様性はエフェクターT細胞より大きくて、自己ペプチドに偏っている。
Treg選択の過程は、自己ペプチドMHC複合体との相互作用のアフィニティーによって決定される。極めて強いシグナルを受け取ったT細胞はアポトーシス死を起こすだろう。弱いシグナルを受け取った細胞は生き残り、選択されてエフェクター細胞になる。T細胞が中くらいのシグナルを受け取れば、それは調節性細胞になるだろう。T細胞活性化過程の確率論的性質ゆえに、所与のTCRを持つすべてのT細胞集団が、結局は、TeffとTregとの混合物となり、その相対的比率は自己ペプチド-MHCに対するT細胞のアフィニティーによって決まる。特異的抗原分泌間質で選択されたTCRトランスジェニック細胞を持つマウスモデルでさえ、欠失または転換は完全ではない。
胸腺におけるFoxp3+ Treg生成はTeff細胞と比較すると数日遅延して起こり、産後3週間付近までは、胸腺または末梢において、成人レベルに到達しない。Treg細胞はCD28共刺激を必要とし、B7.2発現はほとんど髄質に制約され、その発生はFoxp3+細胞の発生と並行するようである。これらの2つはリンクすることが示唆されているが、これらの過程の間の決定的なリンクはまだ示されていない。TGF-β非感受性TGFβRII-DNマウスからの胸腺Tregは機能的であるから、胸腺において、TGF-βはTreg機能に必要ではない。
免疫系は、自己と非自己とを識別することができなければならない。自己/非自己識別に失敗すれば、免疫系は身体の細胞および組織を破壊し、結果として、自己免疫疾患を引き起こす。調節性T細胞は、免疫系の活性化を能動的に抑制し、病的自己反応性、すなわち自己免疫疾患を防止する。調節性T細胞が免疫系内で果たす決定的な役割は、調節性T細胞における遺伝的欠損に起因する重篤な自己免疫症候群(IPEX症候群)によって証明される。
調節性T細胞がそのサプレッサー活性/調節活性を発揮する分子機序は、まだ決定的には特徴づけられておらず、精力的な研究の対象である。インビトロ実験では、抑制される細胞との細胞-細胞接触の必要に関して、相反する結果が得られている。免疫抑制サイトカインであるTGF-ベータおよびインターロイキン10(IL-10)も調節性T細胞機能に関係づけられている。
誘導性調節性T(iTreg)細胞(CD4+ CD25+ Foxp3+)は寛容に関与する抑制性細胞である。iTreg細胞はT細胞増殖および実験的自己免疫疾患を抑制することが示されている。これらの細胞にはTreg17細胞が包含される。誘導性Treg細胞は、胸腺外で、成熟CD4+通常型T細胞から発生し、それが、ナチュラル調節性T(nTreg)細胞とiTreg細胞との決定的相違である。iTreg細胞とnTreg細胞は類似する機能を共有しているが、iTreg細胞は、「nTreg細胞を、一つには、調節性応答内でのTCR多様性を拡大することによって補う、必須の非冗長性調節性サブセット」であることが、最近示されている。マウスモデルにおけるiTreg細胞プールの急性の枯渇は、炎症および体重減少をもたらした。寛容の維持におけるnTreg細胞とiTreg細胞の寄与は未知であるが、どちらも重要である。nTreg細胞とiTreg細胞との間にはエピジェネティックな差異が観察されており、前者の方が安定なFoxp3発現および広範な脱メチル化を有している。
CD4+調節性T細胞は、ヒトでもマウスモデルでも、固形腫瘍に関連することが多い。乳がん、結腸直腸がんおよび卵巣がんでは調節性T細胞数の増加が、予後不良と関連する。CD70+非ホジキンリンパ腫B細胞は、腫瘍内CD4+CD25- T細胞におけるFoxp3発現および調節機能を誘導する。最近の研究は、脳虚血が、交感神経系からのシグナルによって、骨髄CD4(+)CD25(+)FoxP3(+)調節性T細胞を増加させうることを示している。
他のT細胞と同様に調節性T細胞は胸腺において発生する。最新の研究は、調節性T細胞がフォークヘッドファミリー転写因子FOXP3(フォークヘッドボックスp3)の発現によって規定されることを示唆している。FOXP3の発現は、調節性T細胞の発生にとって必要であり、この細胞の運命を指定する遺伝的プログラムを制御していると思われる。Foxp3発現調節性T細胞の大部分は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII拘束性CD4発現(CD4+)集団内に見いだされ、高レベルのインターロイキン2受容体アルファ鎖(CD25)を発現する。Foxp3発現CD4+CD25+に加えて、MHCクラスI拘束性CD8+ Foxp3発現調節性T細胞の小さな集団も存在するようである。これらのFoxp3発現CD8+ T細胞は、健常個体において機能的であるとは思われないが、自己免疫疾患状態ではT細胞受容体刺激によって誘導されて、IL-17媒介免疫応答を抑制する。通常型T細胞とは異なり、調節性T細胞はIL-2を産生せず、それゆえにベースラインではアネルギー性である。
Treg細胞の同定とモニタリングには、いくつかの異なる方法が使用される。当初は、CD25およびCD4表面マーカーの高発現が使用された(CD4+CD25+細胞)。CD25は、病原体に対する免疫応答中などといった免疫活性化の状況において、非調節性T細胞でも発現するので、これには問題がある。CD4発現およびCD25発現によって規定した場合、調節性T細胞はマウスおよびヒトにおける成熟CD4+ T細胞亜集団の約5~10%を構成し、一方、Tregの約1~2%は全血中に測定されうる。Foxp3タンパク質の細胞発現を追加して測定することにより、Treg細胞のより特異的な分析が可能になった(CD4+CD25+Foxp3+細胞)。しかし、Foxp3は活性化ヒトエフェクターT細胞でも一過性に発現するので、ヒトではマーカーとしてCD4、CD25およびFoxp3を使って正しいTreg分析を行うことは困難である。そこで、別のマーカー、すなわち表面タンパク質CD127の非存在または低レベル発現を、CD4およびCD25の存在と組み合わせて使用する人々もいる。いくつかの追加マーカーが記述されており、例えば調節性T細胞には高レベルのCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連分子-4)およびGITR(グルココルチコイド誘導性TNF受容体)も発現しているが、この発現の機能上の意義はまだ明確でない。すべてのFoxp3発現調節性T細胞上でユニークかつ特異的に発現している細胞表面マーカーを同定することには、強い関心が持たれている。しかし今までのところ、そのような分子は同定されていない。
Foxp3をコードする遺伝子中の遺伝子突然変異が、これらの突然変異が引き起こす遺伝性疾患に基づいて、ヒトおよびマウスの両方で同定されている。この疾患は、調節性T細胞が正常な免疫系機能の維持に決定的な役割を果たすことの最も際だった証拠になる。Foxp3に突然変異を持つヒトは、X連鎖免疫調節異常・多発性内分泌障害・腸症(IPEX)症候群として公知の重篤で迅速に死に至る自己免疫障害を患う。
IPEX症候群は、生後一年間での破壊的な全身性自己免疫の発生を特徴とし、その結果、水様性下痢、湿疹性皮膚炎、および最も一般的にはインスリン依存性真性糖尿病と見られる内分泌障害の三主徴が一般に観察される。大半の個体は、クームズ試験陽性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性好中球減少症、および尿細管性腎症などといった他の自己免疫現象を有する。罹患男性の大部分は、代謝異常または敗血症のいずれかにより、生後1年以内に死亡する。類似する疾患が、「scurfy」として公知の自発性Foxp3ミュータントマウスでも観察される。
調節性T細胞(Treg)は、自己免疫疾患を引き起こしうる正常でないまたは過剰な免疫応答を抑制することによって、免疫学的自己寛容および免疫ホメオスタシスの維持に決定的な役割を果たしている(Sakaguchi, S., et al., Cell, 2008. 133:775-87)。しかしそれらは、効果的な抗腫瘍免疫および慢性感染に対する殺菌免疫にとって、大きな障壁にもなる(Whiteside, T.L., Semin Cancer Biol, 2012. 22:327-34)。シグネチャーであるフォークヘッドファミリー転写因子Foxp3は、Tregの特徴的な抑制機能を担う遺伝子発現プロファイルのかなめである。Foxp3をコードする遺伝子中の突然変異がScurfyマウスおよびヒトIPEX患者において同様の自己免疫障害につながることは、その重要性を明白に証明している(Bennett, C.L., et al., Nat Genet, 2001. 27:20-1; Brunkow, M.E., et al., Nat Genet, 2001. 27:68-73)。
大まかにいって、Tregは、それが発生する組織によって決定される2つの異なるサブタイプに分類されている。胸腺由来のTreg、すなわち「ナチュラル」Treg(tTreg)は、循環Foxp3+ Tregの大部分を占め、自己免疫の防止にとって極めて重要である。末梢組織(pTreg)またはエクスビボ(iTreg)で誘導されるTregは、末梢においてナイーブT細胞から生じて、Foxp3発現および抑制機能を獲得する。これはTGF-β/IL-2シグナリング経路の活性化によって起こる(Josefowicz, S.Z., et al., Annu Rev Immunol, 2012. 30:531-64)。TGF-βはインビトロおよびインビボでFoxp3発現の強力な誘導物質であり、シグナリング分子のSMADファミリーのメンバーは、TGF-βが開始するシグナリング事象および下流遺伝子活性化の決定的な推進因子および調節因子としての機能を果たす(Zheng, Y., et al., Nature, 2010. 463:808-12)。
TGF-βシグナリングは、Foxp3発現およびTreg機能の維持にとって決定的に重要であるとも報告されている(Marie, J.C., et al., J Exp Med, 2005. 201: 1061-7; Liu, Y., et al., Nat Immunol, 2008. 9:632-40)。同様に、SMAD2およびSMAD3も、Tregの最適な安定性にとって必要であるように見える(Takimoto, T., et al., J Immunol, 2010. 185:842-55)。TregにおけるTGF-β/SMADシグナリングの増大または増幅のための機序は、さまざまな微小環境的ニッチにおいて、これらの細胞の抑制機能を安定させまたは強化することができる(Wu C., et al., 免疫、2014. 41:270-82)。この周知の抗炎症性サイトカインは、Tregの発生および機能の一因になることに加えて、他の免疫細胞への直接的抑制効果を有することも公知である。
Foxp3
FOXP3(フォークヘッドボックスP3)は、スカルフィンとしても公知であり、免疫系応答に関与するタンパク質である。FOXタンパク質ファミリーのメンバーであるFOXP3は、調節性T細胞の発生および機能においてマスター調節因子(転写因子)として機能するようである。調節性T細胞は一般に免疫応答を低下させる。がんでは、過剰な調節性T細胞活性によって、免疫系によるがん細胞の破壊が妨げられる場合がある。自己免疫疾患では、調節性T細胞の欠損が、他の自己免疫細胞によるその身体自身の組織への攻撃を可能にしうる。
正確な制御機序はまだ確立されていないが、FOXタンパク質は、転写調節因子のフォークヘッド/ウィングドヘリックス(winged-helix)ファミリーに属し、転写中の類似するDNA結合相互作用によって制御を行うと推定される。調節性T細胞モデル系において、FOXP3転写因子は、調節性T細胞機能に関与する遺伝子のプロモーターを占拠し、T細胞受容体の刺激に続くキー遺伝子の転写を抑止しうる。
ヒトFOXP3遺伝子は、11のコードエクソンを含有する。エクソン-イントロン境界は、マウス遺伝子およびヒト遺伝子のコード領域間で同一である。ゲノム配列分析により、FOXP3遺伝子は、X染色体のpアーム(具体的にはXp11.23)にマッピングされる。
ナチュラルT調節性細胞(nTreg、T細胞の一系統)および適応/誘導性T調節性細胞(a/iTreg)の特異的マーカーとしてのFoxp3の発見は、かつてはCD25またはCD45RBなどの非特異的マーカーによって同定されていた調節性T細胞(Treg)の集団に、分子的拠り所を与える。
動物研究において、Foxp3を発現するTregは、免疫寛容、特に自己寛容の伝達において、決定的に重要である。動物研究では、Foxp3陽性T細胞の誘導または投与が、糖尿病、多発性硬化症、喘息、炎症性腸疾患、甲状腺炎および腎疾患などのモデルにおける(自己免疫)疾患重症度の著しい低減につながった。ヒト治験では、それより弱い結果が得られている。
Tヘルパー17(Th17)細胞は炎症誘発性であり、a/iTregと類似する環境下で産生される。Th17細胞がTGF-βおよびIL-6(またはIL-21)の影響下で産生されるのに対し、a/iTregは、TGF-βのみの影響下で産生されるので、炎症促進シナリオと調節促進(pro-regulatory)シナリオとの間の差異は、単一のインターロイキンの存在である。決定的シグナリング分子としては、IL-6またはIL-21が、免疫学研究室によって議論されている。マウス研究はIL-6を示すが、ヒト研究はIL-21を示している。
ヒト疾患では、調節性T細胞、特にFoxp3を発現するものの数の変化が、いくつかの疾患状態で見いだされる。例えば、腫瘍を持つ患者は、Foxp3陽性T細胞が局所的相対的に過剰であり、それが、がん性細胞の形成を抑制する身体の能力を阻害する。逆に、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患を持つ患者はFoxp3陽性細胞の相対的機能障害を有する。Foxp3遺伝子は、X連鎖型IPEX症候群(X連鎖免疫調節異常・多発性内分泌障害・腸症)でも突然変異している。これらの突然変異がFOXP3のフォークヘッドドメイン中にあったことは、これらの突然変異が、決定的に重要なDNA相互作用を撹乱しうることを示している。
マウスでは、Foxp3突然変異(フォークヘッドドメインを欠くタンパク質をもたらすフレームシフト突然変異)が、誕生の16~25日後に半接合体雄において致死をもたらすX連鎖劣性マウスミュータント「Scurfy」の原因である。これらのマウスはCD4+ Tリンパ球の過剰増殖、大規模な多臓器浸潤、および数多くのサイトカインの上昇を有する。この表現型は、CTLA-4、TGF-βの発現を欠くもの、ヒト疾患IPEX、またはマウスにおけるFoxp3遺伝子の欠失(「scurfyマウス」)と似ている。scurfyマウスに観察される病態は、CD4+ T細胞活性を適正に調節できないことに起因すると思われる。Foxp3遺伝子を過剰発現させるマウスでは、観察されるT細胞数が少ない。胸腺発生は正常に見えるが、残存するT細胞は、増殖性および細胞溶解応答に乏しく、インターロイキン-2生産量も低い。組織学的分析により、末梢リンパ臓器、特にリンパ節は、適正な数の細胞を欠くことが示される。
調節性T細胞分化におけるFoxP3の役割に加えて、FoxP3はがん発生にも重要な役割を果たすことを、複数系統の証拠が示している。乳がん、前立腺がん、および卵巣がん患者に由来する腫瘍標本では、FoxP3発現のダウンレギュレーションが報告されており、これは、FoxP3が潜在的腫瘍サプレッサー遺伝子であることを示している。FoxP3の発現は、膵がん、メラノーマ、肝臓がん、膀胱がん、甲状腺がん、子宮頸がんを含むさらなるがんタイプに由来する腫瘍標本でも検出された。しかしこれらの報告では、対応する正常組織が分析されなかったので、これらの腫瘍においてFoxP3が腫瘍形成促進分子であるか抗腫瘍形成分子であるかは、まだ不明である。
FoxP3はがん発生において腫瘍抑制転写因子としての機能を果たすことが、2系統の機能的証拠によって強く裏付けられた。第1に、FoxP3は、乳がん細胞および前立腺がん細胞において、HER2、Skp2、SATB1およびMYCがん遺伝子の発現を抑止し、腫瘍サプレッサー遺伝子P21およびLATS2の発現を誘導する。第2に、メラノーマ、神経膠腫、乳がん、前立腺がんおよび卵巣がん細胞株におけるFoxP3の過剰発現は、インビトロおよびインビボで、著しい成長阻害効果を誘導する。ただしこの仮説については今後の研究においてさらに調査する必要がある。
Hippoシグナリング経路
Hippoシグナリング経路は、Salvador/Warts/Hippo(SWH)経路としても公知であり、細胞の増殖およびアポトーシスの調節によって、動物における臓器サイズを制御している。この経路は、そのキーシグナリング構成要素の一つ、すなわちプロテインキナーゼHippo(Hpo)からその名がとられている。この遺伝子中の突然変異は、組織の過剰成長、すなわち「ヒポポタマス(hippopotamus)」様表現型につながる。
発生生物学における基本的問題は、特定サイズに達した後に臓器がどのようにして成長を停止することを知るかである。臓器成長は、細胞レベルで起こる数種類のプロセスに依拠しており、それには細胞分裂およびプログラム細胞死(すなわちアポトーシス)が含まれる。Hippoシグナリング経路は、細胞増殖の制限およびアポトーシスの促進に関与する。多くのがんは野放しの細胞分裂を特徴とするので、このシグナリング経路は、ヒトがんの研究において、ますます重要になっている。
Hippoシグナリング経路は高度に保存されているようである。Hippo経路構成要素の大半はモザイク遺伝子スクリーニング(mosaic genetic screen)を使ってショウジョウバエ(fruit fly)(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))において同定されたが、その後、これらの構成要素のオルソログ(異なる種において類似の機能を果たす遺伝子)が、哺乳動物において見いだされた。したがって、ショウジョウバエ(Drosophila)中のこの経路の記述は、哺乳動物においてがん遺伝子または腫瘍サプレッサーとして機能する数多くの遺伝子を同定するのに役立ってきた。
Hippo経路は、HpoがプロテインキナーゼWarts(Wts)をリン酸化するコア・キナーゼカスケードからなる。Hpo(哺乳動物におけるMST1/2)は、Ste-20プロテインキナーゼファミリーのメンバーである。この高度に保存されたセリン/スレオニンキナーゼのグループは、細胞増殖、アポトーシス、およびさまざまなストレス応答を含むいくつかの細胞プロセスを調節する。ひとたびリン酸化されると、Wts(哺乳動物におけるLATSl/2)は活性になる。Misshapen(Msn、哺乳動物におけるMAP4K4/6/7)およびHappyhour(Hppy、哺乳動物におけるMAP4K1/2/3/5)は並行してHpoに作用することでWtsを活性化する。Wtsは核DBF-2関連キナーゼである。これらのキナーゼは、細胞周期進行、生育、および発生の公知の調節因子である。2種類のタンパク質、すなわちSalvador(Sav)および腫瘍サプレッサーとしてのMob(Mats)が、Wtsの活性化を容易にすることが知られている。Sav(哺乳動物におけるWW45)は、WWドメイン含有タンパク質であり、これは、このタンパク質が、トリプトファンと不変のプロリンとが高度に保存されたアミノ酸の配列を含有することを意味する。HpoはSavに結合して、Savをリン酸化することができ、これは、足場タンパク質として機能しうる。なぜなら、このHpo-Sav相互作用はWtsのリン酸化を促進するからである。HpoはMats(哺乳動物におけるMOBKL1A/B)もリン酸化し、活性化することができ、これにより、Matsは、Wtsと会合してWtsのキナーゼ活性を強くすることが可能になる。次に、活性型Wtsは、転写コアクチベーターYorkie(Yki)のリン酸化および不活化に移ることができる。Ykiは単独ではDNAに結合することができない。Ykiは、その活性状態において、転写因子Scalloped(Sd)に結合し、Yki-Sd複合体は核に局在化することになる。これにより、臓器成長を促進する数種類の遺伝子、例えば細胞周期進行を促進するサイクリンE、およびその名が示すとおりアポトーシスを防止するdiap1(ショウジョウバエ・アポトーシス阻害タンパク質1(Drosophila inhibitor of apopotosis protein-1)の発現が可能になる。Ykiは、細胞数に特異的に影響を及ぼす正の成長調節因子であるバンタムマイクロRNA(bantam microRNA)の発現も活性化する。こうして、WtsによるYkiの不活化は、これらの成長促進性調節因子の転写抑止によって、成長を阻害する。Wtsは、Ykiのセリン168をリン酸化することによって、Ykiと14-3-3タンパク質との会合を促進し、それが、Ykiを細胞質に引き留めて、核へのその輸送を防止するのに役立つ。哺乳動物では、Yes関連タンパク質(YAP)およびPDZ結合モチーフを持つ転写コアクチベーター(TAZ)の2つが、Ykiオルソログである。YAPとTAZは、活性化されると、p73、Runx2およびいくつかのTEADを含む、数種類の転写因子に結合することができる。YAPは、インビボおよびインビトロでマウスおよびヒト上皮細胞におけるHoxa1およびHoxc13の発現を調節する。
コアHpo/Wtsキナーゼカスケードの上流調節因子には、膜貫通タンパク質Fatおよびいくつかの膜結合型タンパク質が包含される。非定型カドヘリンとして、Fat(哺乳動物におけるFAT1-4)は、細胞外リガンドがまだ明確には同定されていないものの、受容体として機能しうる。Fatは、組織パターン形成中に、もう一つの非定型カドヘリンDachsous(Ds)に結合することが公知であるが、組織成長の調節においてDsがどんな役割を有するかは不明である。それでもなお、FatはHpo経路の上流調節因子と認識されている。Fatは、頂端タンパク質Expanded(Ex;哺乳動物におけるFRMD6/Willin)を介して、Hpoを活性化する。Exは、他の2つの頂端局在タンパク質Kibra(哺乳動物におけるKIBRA)およびMerlin(Mer;哺乳動物におけるNF2)と相互作用することで、Kibra-Ex-Mer(KEM)複合体を形成する。ExおよびMerはFERMドメイン含有タンパク質であり、一方、Kibraは、Savと同様に、WWドメイン含有タンパク質である。KEM複合体はHpoキナーゼカスケードと物理的に相互作用し、それによって、コア・キナーゼカスケードを活性化のために形質膜に局在させる。また、Fatは、Ex/Hpoとは独立して、非通常型ミオシンDachsの阻害によって、Wtsを調節する。通常、Dachsは、Wtsに結合し、その分解を促進することができる。
ショウジョウバエでは、Hippoシグナリング経路が、Salvador(Sav)、Warts(Wts)およびHippo(Hpo)プロテインキナーゼが関与するキナーゼカスケードを伴っている。Hippoシグナリング経路に関与する遺伝子の多くは腫瘍サプレッサーと認識されており、一方、Yki/YAP/TAZはがん遺伝子と同定されている。事実、YAPは、乳がん、結腸直腸がん、および肝がんを含むいくつかのヒトがんでは上昇することが見いだされている。これは、細胞がコンフルエンスに達した後は増殖が停止する培養正常細胞の基本的な成長制御特性である接触阻害の克服における、最近明確にされたYAPの役割によって説明しうる。この特性は、通例、がん性細胞では失われ、がん性細胞が無制御に増殖することを可能にする。事実、YAP過剰発現は接触阻害を拮抗する。ヒトがんでは、腫瘍サプレッサー遺伝子と認識されている経路構成要素の多くが突然変異している。例えば、乳がんではFat4中の突然変異が見いだされており、一方、家族性および孤発性シュワン細胞種ではNF2が突然変異している。さらに、いくつかのヒトがん細胞株は、WW45タンパク質およびMOBK1Bタンパク質の突然変異を惹起する。
心臓は哺乳動物の発生中に形成される最初の臓器である。適正なサイズを持つ機能的な心臓は寿命全体にわたって不可欠である。傷害または疾患による心筋細胞の喪失は、ヒトの罹病および死亡の主要原因である心不全につながる。残念なことに、成人心臓の再生能は限られている。Hippo経路は、細胞増殖を阻害し、アポトーシスを促進し、幹細胞/前駆細胞運命を調節し、そして状況によっては、細胞サイズを制限することにより、臓器サイズ制御における進化的に保存された役割を果たす、最近同定されたシグナリングカスケードである。興味深いことに、心筋細胞の増殖および心臓サイズの調節におけるこの経路の重要な役割が、研究によって示されている。Hippo経路の不活化、またはその下流エフェクターであるYes関連タンパク質転写コアクチベーターの活性化は、心再生を改良する。Hippo経路のいくつかの公知上流シグナル、例えば機械的ストレス、Gタンパク質共役受容体シグナリング、および酸化ストレスは、心臓生理に決定的な役割を果たすことが公知である。加えて、Yes関連タンパク質は、複数の転写機序によって、心筋細胞運命を調節することが示されている。
Yes関連タンパク質(YAP)
YAP1(Yes関連タンパク質1)は、YAPまたはYAP65としても公知であり、最初は、YesおよびSrcタンパク質チロシンキナーゼのSH3ドメインと会合するその能力によって同定された。YAP1は、さまざまなヒトがんにおいて増幅される強力ながん遺伝子であり、これは、Hippo腫瘍サプレッサー経路の2つの主要エフェクターのうちの一方である。
YAP1遺伝子のクローニングは、WWドメインとして公知であるモジュール状タンパク質ドメインの同定を容易にした。YAP1遺伝子産物の2つのスプライスアイソフォームが最初に同定され、YAP1-1およびYAP1-2と名付けられた。これらの差異は、WWドメインをコードする余分な38アミノ酸の存在にあった。YAP1のモジュール状構造は、WWドメインとは別に、プロリンリッチ領域を、まさしくアミノ末端に含有し、その後に、TID(TEAD転写因子相互作用ドメイン)が続いている。次に、YAP1-1アイソフォーム中に存在する単一のWWドメインおよびYAP1-2アイソフォーム中に存在する2つのWWドメインに続いて、SH3-BM(Srcホモロジー3結合モチーフ)がある。SH3-BMの後に、TAD(転写活性化ドメイン)およびPDZドメイン結合モチーフ(PDZ-BM)が続く。
YAP1は転写コアクチベーターであり、その増殖および発がん活性は、それが、細胞生育を促進し、アポトーシスを阻害する遺伝子をアップレギュレートするTEAD転写因子ファミリーと会合することによって駆動される。YAP1の機能的パートナーは、RUNX、SMAD、p73、ErbB4、TP53BP、LATS1/2、PTPN14、AMOT、およびZO1/2など、他にもいくつか同定されている。YAP1およびその近縁パラログTAZ(WWTR1)は、Hippo腫瘍サプレッサー経路の主要エフェクターである。この経路が活性化されると、YAP1およびTAZはセリン残基がリン酸化され、14-3-3タンパク質によって細胞質に隔離される。Hippo経路が活性化されていない場合、YAP1/TAZは核に進入し、遺伝子発現を調節する。Birc2、Birc5、結合組織増殖因子(CTGF)、アンフィレギュリン(AREG)、Cyr61、Hoxa1およびHoxc13など、いくつかの遺伝子がYAP1によって調節される。
YAP1がん遺伝子は新しいがん薬物の開発に標的として役立つ。YAP1-TEAD複合体を撹乱しまたはWWドメインの結合機能を遮断する小化合物が同定されている。これらの低分子は、増幅されたまたは過剰発現したYAPがん遺伝子を内包するがん患者のための治療薬を開発するためのリード化合物になる。眼の大奇形を持ち、難聴、口唇裂、知的障害、および腎疾患などといった眼以外の特徴を伴うまたは伴わない2つの家族に、ヘテロ接合性機能喪失型突然変異が同定されている。
がんを処置するためのTregにおけるYAPシグナリングの役割
Tregは、潜在的な致死的自己指向性(自己免疫)応答または通常は無害な常在微生物に対して開始される過剰応答(IBD)を制限するために不可欠である(Sakaguchi, S., et al., Cell, 2008. 133:775-87)。しかしがん患者では、腫瘍内でも、患者全体にわたって全身性にも、Tregが著しく富化している場合がある(Miller, A.M., et al., J Immunol, 2006. 177:7398-405)。この状況では、これらの細胞の抑制機能が腫瘍指向性免疫の有効性を弱め、効果的な抗がん免疫治療の開発にとって大きな支障になる(Klages, K., et al., Cancer Res, 2010. 70:7788-99)。本明細書に記載する発明以前は、Tregが機能する正確な機序と、これらの重要な細胞が多様な微小環境要因とどのように協調するかの把握とが不完全であった。
現在、Tregの生成、維持および機能の正確な機序を同定するための努力が、がんとの関連において行われている。驚いたことに、以下に詳述するとおり、臓器サイズの発生的調節において決定的に重要な転写因子であるYAPは、Tregの生成および機能において重要な因子であることが発見された。T細胞におけるYAPの欠失は、Th1発生およびTh17発生の両方を多少強化するが、最も印象的には、制限的TGF-β条件下でのiTregの生成およびTregの抑制機能を減少させる。本明細書において述べるように、Tregがインビボで免疫を抑制できないことは、Treg特異的YAP欠失を持つマウスでは免疫原性の低い腫瘍でさえ成長できないことによって、劇的に証明された。中程度のYAP阻害活性を持つ薬剤による腫瘍成長の減少はわずかであったが、その薬物を、単独では比較的効果が小さい腫瘍ワクチンと併用したところ、抗腫瘍活性に強い相乗作用が観察された。
TGF-βおよびSMADシグナリングへの上述のような依存があるので、Tregが、下流シグナリング事象を、そしてその結果としてこの経路によってトリガーされる遺伝子調節を、最適化し、または増幅するための機序を使用することは、理にかなっている。そのような機序の文書化された例には、潜在性TGF-βのその活性型への酵素的変換(Worthington, J.J., et al., Immunity, 2015. 42:903-15)ならびにガレクチンおよびCD44によるSMAD活性化のトリガリング(Wu, C., et al., Immunity, 2014. 41:270-82)がある。
スタチン
スタチン(すなわちHMG-CoAレダクターゼ阻害剤)は、コレステロールの生産に中心的役割を果たす酵素HMG-CoAレダクターゼを阻害する一群のコレステロール降下薬である。スタチンは、メバロン酸経路に最初に関与する酵素HMG-CoAレダクターゼを競合的に阻害することによって作用する。スタチンは構造が分子レベルでHMG-CoAに似ているので、酵素の活性部位にフィットして、本来の基質(HMG-CoA)と競合する。この競合は、最終的にはコレステロールを生産するこのカスケードにおける次の分子であるメバロン酸をHMG-CoAレダクターゼが生産することのできる速度を低減する。スタチンは、がんのリスクの低減と関連付けられている。スタチンは、食道がん、結腸直腸がん、胃がん、肝細胞癌、そしておそらくは前立腺がんのリスクを低減しうる。
がん
がんは、身体の他の部分に侵入または伝播する潜在能力を持つ異常な細胞生育を伴う大きな疾患ファミリーである。がんは、新生物のサブセットを形成する。新生物または腫瘍は、調節を受けない成長を起こす一群の細胞であって、腫瘤またはしこりを形成することが多いが、散在性に分布することもある。がんの6つの特徴が提唱されている。すなわち、成長シグナリングの自給自足、抗成長シグナルに対する非感受性、アポトーシスの回避、無限の複製能を可能にすること、血管新生の誘導および持続、ならびに組織の転移浸潤の活性化である。正常細胞から、識別可能な腫瘤を形成することができる細胞、ないしあからさまながんへの進行は、悪性進行として公知の複数の段階を必要とする。
例えば、本明細書に記載の方法は、さまざまなタイプの悪性疾患および/または腫瘍、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫(MM)、乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がん、メラノーマ、結腸直腸がん、膵がん、肺がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫、および膠芽腫の処置において有用である。固形腫瘍には、例えば乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膵腫瘍、前立腺腫瘍、メラノーマ腫瘍、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、肝腫瘍、および腎臓腫瘍が包含される。
がん性または新生物性もしくは過剰増殖性の細胞は自律的生育能を有する。これは、迅速に増殖する細胞生育を特徴とする異常な状況または状態である。過剰増殖性および新生物性の疾患状態は、病理的、すなわち疾患状態を特徴づけるまたは疾患状態を構成すると類別される場合もあるし、非病理的、すなわち正常からの逸脱ではあるが疾患状態とは関連していないと類別される場合もある。この用語は、組織学的タイプまたは侵襲性のステージとは関係なく、あらゆるタイプのがん性成長または腫瘍形成プロセス、転移性組織、または悪性形質転換した細胞、組織もしくは臓器を包含するものとする。がん、または新生物には、さまざまな臓器系の悪性疾患、例えば肺、乳房、甲状腺、リンパ系、胃腸、および尿生殖路を冒す悪性疾患、ならびに大半の大腸がん、腎細胞癌、前立腺がんおよび/または精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸のがんおよび食道のがんなどといった悪性疾患を含む腺癌が包含される。
造血性新生物障害には、造血系由来の過形成/新生物細胞、例えば骨髄球系統、リンパ球系統もしくは赤血球系統またはその前駆細胞から生じるものが関与する疾患が包含される。典型的には、これらの疾患は、低分化型急性白血病、例えば赤芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病から生じる。さらなる骨髄障害には、急性前骨髄性白血病(APML)、急性骨髄性白血病(AML)および慢性骨髄性白血病(CML)が包含されるが、それらに限定されるわけではなく;リンパ系悪性疾患には、B系統ALLおよびT系統ALLを含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、ヘアリー細胞白血病(HLL)およびワルデンストレーム・マクログロブリン血症(WM)が包含されるが、それらに限定されるわけではない。悪性リンパ腫のさらなる形態は、非ホジキンリンパ腫およびその異型、末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、大型顆粒リンパ球性白血病(LGF)、ホジキン病およびリード・シュテルンベルグ(Reed-Sternberg)病が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
疾患を処置する方法
がん細胞-間質細胞ネットワークに関連する疾患、障害または状態を処置する方法が、ここに提供される。本明細書に記載する組成物は、がん細胞由来の形質膜でコーティングされたナノ粒子に免疫系を曝露することによって、がん細胞に対する免疫応答を刺激し、活性化するために使用される。さらにまた、がん細胞由来の形質膜でコーティングされたナノ粒子に免疫系を事前に曝露することは、当該タイプのがんに対するワクチン接種として作用する。
本発明の組成物は、送達剤としてのナノ粒子を含む。組成物は、治療薬、薬物、薬学的組成物、同位体、およびそれらの任意の組み合わせを送達するために使用される。
本発明の組成物は、例えば、限定するわけではないが経口投与、静脈内投与、外用投与、非経口投与、腹腔内投与、筋肉内投与、髄腔内投与、病巣内投与、頭蓋内投与、鼻内投与、眼内投与、心臓内投与、硝子体内投与、骨内投与、脳内投与、動脈内投与、関節内投与、皮内投与、経皮投与、経粘膜投与、舌下投与、腸内投与、唇下投与、吹送投与、坐剤投与、吸入投与、または皮下投与などといった、さまざまな経路で対象に投与される。
本発明の組成物は、例えば、限定するわけではないが丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、散剤、塩、結晶、液剤、血清、シロップ剤、溶液剤、乳剤、懸濁剤、ゲル剤、クリーム剤、ペースト剤、フィルム剤、貼付剤、および蒸気などといった、さまざまな形態で対象に投与される。
免疫治療
いくつかの態様において、本発明は、免疫治療に基づいてがんを処置する方法を提供する。免疫治療は、免疫応答を誘導し、強化し、または抑制することによる疾患の処置である。免疫応答を引き出しまたは増幅するように設計された免疫治療は活性化免疫治療として分類され、一方、低減または抑制する免疫治療は抑制免疫治療として分類される。
がん免疫治療(免疫腫瘍学)は、免疫系を使ったがんの処置である。免疫治療は、細胞、抗体およびサイトカインという3つのグループに大別される。これらは、がん細胞が、免疫系によって検出されうるわずかに相違する分子をその表面に有することが多いという事実を活用する。これらの分子は、がん抗原として公知であり、通常はタンパク質であるが、糖質などの分子も包含する。免疫治療は、これらの抗原を標的として使用することによって腫瘍細胞を攻撃するように、免疫系を刺激するために使用される。
抗体治療は、広範囲にわたるがんを処置する、最も成功した免疫治療である。抗体は、細胞表面上の標的抗原に結合する、免疫系によって生産されるタンパク質である。正常生理学では、免疫系は病原体と戦うために抗体を使用する。各抗体は、1種類または数種類のタンパク質に特異的である。がん抗原に結合するものを使ってがんを処置する。細胞表面受容体、例えばCD20、CD274、およびCD279が、抗体治療の一般的な標的である。ひとたびがん抗原に結合すると、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を誘導し、補体系を活性化し、または受容体がそのリガンドと相互作用することを防止することができ、それらはすべて細胞死につながりうる。がんを処置するために、アレムツズマブ、イピリムマブ、ニボルマブ、オファツムマブ、およびリツキシマブを含む複数の抗体が承認されている。
細胞治療は、がんワクチンとしても公知であり、通常は、血液または腫瘍から免疫細胞を取り出すことが必要になる。腫瘍に特異的な免疫細胞を活性化し、培養し、患者に戻すと、免疫細胞はがんを攻撃する。この方法で使用することができる細胞タイプは、ナチュラルキラー細胞、リンホカイン活性化キラー細胞、細胞傷害性T細胞および樹状細胞である。
インターロイキン-2およびインターフェロン-αは、サイトカイン、すなわち免疫系の挙動を調節し協調させるタンパク質の例である。これらは、抗腫瘍活性を強化する能力を有し、それゆえにがん処置として使用することができる。インターフェロン-αは、ヘアリー細胞白血病、AIDS関連カポジ肉腫、濾胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病および悪性メラノーマの処置に使用される。インターロイキン-2は、悪性メラノーマおよび腎細胞がんの処置に使用される。
免疫治療は、疾患を処置するために免疫チェックポイントを標的にすることも伴いうる。免疫チェックポイントは、シグナル(共刺激分子)をオンにするかシグナルをオフにする免疫系の分子である。多くのがんは、T細胞シグナルを阻害することによって、自身を免疫系から保護している。阻害性チェックポイント分子は、進行メラノーマにまず適応となった2つのチェックポイント阻害剤の有効性ゆえに、がん免疫治療の新しい標的として考慮されることが増えている。
免疫治療の標的となる刺激性チェックポイント分子には、次に挙げるものが包含されるが、それらに限定されるわけではない: CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、OX40、ICOS、およびGITR。4つの刺激性チェックポイント分子は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーのメンバーである: CD27、CD40、OX40、GITR、およびCD137。他の2つの刺激性チェックポイント分子は、B7-CD28スーパーファミリーに属する: CD28そのものおよびICOS。CD27はナイーブT細胞の抗原特異的拡大を支え、T細胞メモリーの生成にとって極めて重要である。CD27はB細胞のメモリーマーカーでもある。CD27の活性は、リンパ球および樹状細胞におけるそのリガンドCD70の一時的利用可能性によって支配されている。CD27共刺激は、Th17エフェクター細胞機能を抑制することが公知である。CD28は、ほとんどすべてのヒトCD4+ T細胞と、すべてのCD8 T細胞の半分前後に、構成的に発現している。その2つのリガンド、すなわち樹状細胞上に発現するCD80およびCD86との結合は、T細胞拡大を促す。CD28は、ヒト初回投与試験において重篤な炎症反応を引き起こしたTGN1412「スーパー作動薬」の標的であった。CD40は、抗原提示細胞を含むさまざまな免疫系細胞上に見いだされ、CD40L(CD154としても公知であり、活性化CD4+ T細胞の表面に一過性に発現する)をそのリガンドとする。CD40シグナリングは、樹状細胞の成熟を引き起こし、それによってT細胞の活性化および分化をトリガーすることが公知である。CD122はインターロイキン-2受容体ベータサブユニットであり、CD8+エフェクターT細胞の増殖を増加させることが公知である。4-1BBとも呼ばれるCD137がCD137リガンドによって結合された場合、その結果はT細胞増殖である。CD137媒介シグナリングは、T細胞、特にCD8+ T細胞を活性化誘導細胞死から保護することも公知である。OX40(CD134とも呼ばれる)はOX40LまたはCD252をそのリガンドとする。CD27と同様に、OX40はエフェクターT細胞およびメモリーT細胞の拡大を促進するが、T調節性細胞の分化および活性を抑制するその能力でも、またそのサイトカイン生産調節でも注目されている。薬物標的としてのOX40の価値は主として、T細胞受容体結合後に一過性に発現されるので、炎症性病巣内で最も新しく抗原活性化されたT細胞上でのみアップレギュレートされるという事実にある。抗OX40モノクローナル抗体は、進行がんにおいて臨床的有用性を有することが示されている。GITR(グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子)は、Treg拡大を含むT細胞拡大を促す。GITRのリガンドは主に抗原提示細胞上に発現する。GITRに対する抗体は、Treg系統の安定性の喪失によって、抗腫瘍応答を促進することが示されている。ICOS(誘導性T細胞共刺激-CD278とも呼ばれる)は活性化T細胞上に発現する。そのリガンドはICOSLであり、主にB細胞上および樹状細胞上に発現する。この分子はT細胞エフェクター機能において重要であると思われる。
免疫治療の標的となる阻害性チェックポイント分子には、以下に挙げるものがあるが、それらに限定されるわけではない: A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM-3、およびVISTA。A2AR(アデノシンA2A受容体)は、がん治療において重要なチェックポイントとみなされている。なぜなら、A2a受容体の活性化につながる免疫微小環境中のアデノシンは負の免疫フィードバックループであり、腫瘍微小環境は比較的高濃度のアデノシンを有するからである。B7-H3(CD276とも呼ばれる)は、共阻害性(co-inhibitory)とみなされている。B7-H4(VTCN1とも呼ばれる)は、腫瘍細胞および腫瘍関連マクロファージによって発現され、腫瘍エスケープにおいて役割を果たす。BTLA(Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエータ(attenuator)-CD272とも呼ばれる)はHVEM(ヘルペスウイルス侵入媒介因子)をそのリガンドとする。BTLAの表面発現は、ナイーブ細胞表現型からエフェクター細胞表現型へのヒトCD8+ T細胞の分化中に、徐々にダウンレギュレートされるが、腫瘍特異的ヒトCD8+ T細胞は高レベルのBTLAを発現する。Treg細胞上のCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4-CD152とも呼ばれる)の発現は、T細胞増殖を制御する役割を果たす。IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)は、免疫阻害特性を持つトリプトファン異化酵素である。もう一つの重要な分子はTDO、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼである。IDOはT細胞およびNK細胞を抑制し、Tregおよび骨髄由来サプレッサー細胞を生成させて活性化し、腫瘍血管新生を促進することが公知である。KIR(キラー細胞免疫グロブリン様受容体)は、ナチュラルキラー細胞上のMHCクラスI分子の受容体である。LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)は、Tregを介して、そしてまたCD8+ T細胞に対する効果によって直接的に、免疫応答を抑制するように働く。PD-1(プログラム死1(PD-1)受容体)は2つのリガンドPD-L1およびPD-L2を有する。PD-1を標的とすることの利点は、それが腫瘍微小環境における免疫機能を回復できることにある。TIM-3(T細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)は、活性化されたヒトCD4+ T細胞上に発現し、Th1サイトカインおよびTh17サイトカインを調節する。TIM-3は、そのリガンドであるガレクチン9と相互作用した時に細胞死をトリガーすることにより、Th1/Tc1機能の負の調節因子として作用する。VISTA(T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー)は、主として、造血細胞上に発現するので、腫瘍内の白血球でのVISTAの一貫した発現は、VISTA遮断が広範な固形腫瘍にわたって有効であることを可能にしうる。
併用治療
本発明の組成物は、薬学的複合製剤において、または併用治療としての投与レジメンにおいて、抗過剰増殖特性を持つ第2化合物または過剰増殖性障害(例えばがん)を処置するために有用な第2化合物と組み合わせることができる。薬学的複合製剤または投与レジメンの第2化合物は、好ましくは、互いに有害な影響を及ぼさないように、本発明の化合物にとって相補的な活性を有する。そのような分子は、意図した目的にとって有効な量で組み合わせされて、適切に存在する。
併用治療は同時レジメンまたは逐次的レジメンとして実施することができる。逐次的に実施する場合は、その組み合わせを、2回以上の投与で実施することができる。併用投与には、別々の製剤または単一の薬学的製剤を使用する共投与、およびいずれかの順序での連続投与(この場合、好ましくは、両方(またはすべての)活性作用物質がそれらの生物学的活性を同時に発揮する期間が存在する)が包含される。上記共投与される作用物質のいずれについても、適切な投薬量は、現在使用されているものであり、新しく同定された作用物質と他の化学治療剤または処置との複合作用(相乗作用)ゆえに、それより低くなりうる。
併用治療は「相乗作用」を与えることがあり、「相乗的」であると判明することがある。例えば、複数の活性成分を一緒に使用した場合に達成される効果は、それらの化合物を個別に使用した場合に得られる効果の和よりも大きい。相乗効果は、活性成分が、(1)同時処方され、単位投薬製剤に入れて同時に投与または送達されるか、(2)別々の製剤として交互にまたは並行して送達される場合に、または(3)他の何らかのレジメンによって、獲得されうる。交互治療で送達される場合、相乗効果は、化合物が例えば別々のシリンジでの異なる注射によって逐次的に投与または送達される場合に獲得されうる。一般に、交互治療中は、各活性成分の有効投薬量が逐次的に、例えば連続して投与されるのに対して、併用治療では、2つ以上の活性成分の有効投薬量が一緒に投与される。
一例として、作用物質は、異常増殖性細胞塊を除去するための手術と組み合わせて投与されうる。本明細書にいう「手術と組み合わせて」とは、作用物質が外科手術前、外科手術中、または外科手術後に投与されうることを意味する。上皮性腫瘍状態を処置するための外科的方法には、右半もしくは左半結腸切除術、S状結腸切除術、結腸亜全摘術、結腸全摘除術、または胃切除術などの腹腔内手術、根治的乳房切除術または乳房部分切除術、前立腺切除術および子宮摘出術が包含される。これらの態様では、持続注入によって、または単回ボーラスで、作用物質を投与しうる。手術中または手術直後の投与には、薬学的に許容される担体中の作用物質の薬学的調製物による腫瘍切除部位の洗浄、浸漬、または灌流が包含されうる。いくつかの態様では、転移性病巣の形成および発生を阻害するために、手術時および手術後に作用物質が投与される。作用物質の投与は、腫瘍塊を除去するための外科手術後、数時間、数日、数週間、または場合により数ヶ月間にわたって、継続しうる。
対象には、作用物質を非外科的抗増殖(例えば抗がん)薬治療と組み合わせて投与することもできる。ある態様では、作用物質を、ワクチン(例えば抗がんワクチン)治療と共に投与しうる。ある態様では、作用物質を、細胞増殖抑制化合物などの抗がん化合物と組み合わせて投与しうる。細胞増殖抑制化合物は、細胞の生育および/または増殖を抑制する化合物(例えば核酸、タンパク質)である。いくつかの態様において、細胞増殖抑制化合物は腫瘍の悪性細胞に向けられる。さらに別の態様において、細胞増殖抑制化合物は、血管平滑筋細胞または線維芽細胞の生育および/または増殖を阻害するものである。
本発明の作用物質と組み合わせて使用される適切な抗増殖薬または細胞増殖抑制化合物には抗がん薬が包含される。抗がん薬は周知であり、これには以下に挙げるものが包含される:アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、メシル酸ビスナフィド、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナルナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジコン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキセート、塩酸エフロールニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロマート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、ファドロゾール塩酸塩、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、ホスキドン、ホストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモホシン、インターフェロン・アルファ-2a、インターフェロン・アルファ-2b、インターフェロン・アルファ-n1、インターフェロン・アルファ-n3、インターフェロン・ベータ-Ia、インターフェロン・ガンマ-Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸ロソキサントロン、マソプロコール、メイタンシン、塩酸メクロルエタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトマルシン、マイトマイシン、ミトスペル、ミトタン、塩酸ミトキサントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペグアスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルホスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、ピューロマイシン、塩酸ピューロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、タキソール、タキソテール、テコガラン ナトリウム、テガフル、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、塩酸トポテカン塩酸、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキセート、グルクロン酸トリメトレキセート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、ビンフルニン、硫酸ビングリシネート(Vinglycinate Sulfate)、硫酸ビンロイロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン(Vinzolidine Sulfate)、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシン。
本発明の方法によれば、他の抗がん化合物または抗がん治療の前に、またはそれと同時に、またはその後に、本発明の作用物質を投与することができる。投与スケジュールは異なる作用物質を交互に投与することを伴いうる。別の態様では、他の治療法による処置前および処置中、または他の治療法による処置中および処置後、または他の治療法による処置前および処置後に、作用物質を送達しうる。場合によっては、他の抗増殖処置を実施する24時間より前に、作用物質を投与する。別の態様では、2種類以上の抗増殖治療を対象に実施する。例えば、対象には、手術および少なくとも1つの他の抗増殖化合物の両方と組み合わせて、本発明の作用物質を投与しうる。あるいは、2種類以上の抗がん薬と組み合わせて、本作用物質を投与しうる。
薬学的組成物
一定の態様において、本発明は、本発明において使用される作用物質を含む薬学的組成物を提供する。作用物質は適切に製剤化して、そのような送達のために認識されている任意の手段によって、対象または細胞の環境に導入することができる。
そのような組成物は、典型的には、作用物質および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用する「薬学的に許容される担体」という言葉には、薬学的投与に適合する食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌作用物質、等張性および吸収遅延性作用物質などが包含される。補助活性化合物も組成物に組み入れることができる。
薬学的組成物は、意図したその投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(外用)、経粘膜、および直腸投与が含まれる。非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液剤または懸濁剤は、次の構成要素を含むことができる:滅菌された希釈剤、例えば注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗細菌作用物質、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、および張性を調節するための作用物質、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調節することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラス製もしくはプラスチック製の多用量型バイアルに封入することができる。
注射用途に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液剤(水溶性の場合)または分散剤、および滅菌注射用溶液剤または滅菌注射用分散剤を即時調製するための滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合も、組成物は滅菌状態でなければならず、シリンジを容易に通過しうる程度の流動性を有するべきである。薬学的組成物は製造条件下および貯蔵条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用、分散剤の場合は必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗細菌および抗真菌作用物質、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物には、等張作用物質、例えば糖類、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムを含めることが好ましいだろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによって、もたらすことができる。
滅菌注射用溶液剤は、所要量の活性化合物を、必要に応じて上に挙げた成分のうちの1つまたは組み合わせと共に、選択した溶媒に組み入れ、次に濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散剤は、基本分散媒と、上に挙げたものからの必要な他の成分とを含有する滅菌媒体に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより、活性成分と任意の所望の追加成分との粉末が、事前に滅菌濾過したその溶液から得られる。
経口組成物は一般に不活性希釈剤または可食担体を含む。経口治療剤投与のためには、活性化合物を賦形剤と共に組み込み、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物は、洗口液として使用するために、液状担体を使って調製することもできる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバント材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分または類似の性質を持つ化合物のいずれかを含有することができる:結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンまたはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、またはトウモロコシデンプン;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステロート(Sterotes);流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロースもしくはサッカリン;または香味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジフレーバー。
本発明の組成物は、ナノ粒子製剤として製剤化することもできる。本発明の化合物は、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、パルス放出および/または制御放出適用のために投与することができる。本発明の薬学的組成物は、単位体積あたり0.01~99重量%の活性材料を含有しうる。吸入による投与の場合は、化合物が、エアロゾルスプレーの形態で、適切な噴射剤(例えば二酸化炭素などのガス)を含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーから送達される。そのような方法には、米国特許第6,468,798号に記載のものが包含される。
全身性投与は、経粘膜手段または経皮手段によることもできる。経粘膜投与または経皮投与のためには、浸透させようとする障壁にとって適当な浸透剤を製剤に使用する。そのような浸透剤は当技術分野において一般に公知であり、例えば経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が、これに包含される。経粘膜投与は鼻噴霧剤または坐剤の使用によって達成することができる。経皮投与のためには、活性化合物を、当技術分野において一般に公知である軟膏、膏薬、ゲル剤、またはクリーム剤中に処方する。化合物は(例えばカカオ脂および他のグリセリドなどといった従来の坐剤基材を使って)直腸送達用の坐剤の形態で、または停留浣腸剤の形態で、調製することもできる。
ある態様では、活性化合物が、身体からの迅速な排除から当該化合物を保護する担体、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などを使って、調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤は標準的技法を使って調製することができる。材料はAlza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を使って感染細胞にターゲティングされるリポソームを含む)も薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているように、調製することができる。
そのような化合物の毒性と治療効力は、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な容量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な容量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手法によって、決定することができる。毒性効果と治療効果の間の用量比は治療係数であり、これは比LD50/ED50として表すことができる。高い治療係数を呈する化合物が好ましい。毒性副作用を呈する化合物を使用することはできるが、非感染細胞の潜在的損傷を最小限に抑え、よって副作用を低減するために、そのような化合物を罹患組織部位にターゲティングする送達システムが設計されるように注意すべきである。
細胞培養アッセイおよび動物研究から得たデータは、ヒトにおける使用に適した投薬量の範囲を策定する際に使用することができる。そのような化合物の投薬量は、毒性がほとんどまたは全くない、ED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投薬量は、例えば使用する剤形および利用する投与経路に依存して、この範囲内で変動しうる。本発明の方法において使用される化合物については、まず細胞培養アッセイから治療有効量を推定することができる。次に、細胞培養で決定されたIC50(すなわち症状の50%阻害(half-maximal inhibition)を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲が達成されるように、動物モデルにおいて、用量を策定することができる。そのような情報を使って、ヒトにおける有用な用量を、より正確に決定することができる。血清中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーなどを使って測定しうる。
本明細書において定義するとおり、作用物質の治療有効量(すなわち有効投薬量)は、選択した作用物質に依存する。例えば、およそ1pg~1000mgの範囲内の作用物質の単回投与量を投与することができ、いくつかの態様では、10、30、100、もしくは1000pg、または10、30、100、もしくは1000ng、または10、30、100、もしくは1000μg、または10、30、100、もしくは1000mgを投与しうる。いくつかの態様では、1~5gの組成物を投与することができる。
本発明の化合物の治療有効量は当技術分野において公知の方法によって決定することができる。本発明の薬学的組成物の治療有効量は、使用する作用物質および選択した/薬学的製剤に依存することに加えて、患者の年齢および全身の生理的状態ならびに投与経路にも依存するであろう。一定の態様において、治療量は、一般に、約10~2000mg/日、好ましくは約30~1500mg/日であるだろう。例えば50~500mg/日、50~300mg/日、100~200mg/日などといった、他の範囲を使用してもよい。
投与は、1日1回、1日2回、またはそれ以上の頻度で行うことができ、疾患または障害の維持期では、毎日または1日2回ではなく例えば2日ごとに1回または3日ごとに1回などと減少させることができる。用量および投与頻度は、当業者に公知の少なくとも1つまたは複数の(好ましくは2つ以上の)急性期の臨床徴候の低減または非存在によって寛解期の維持を裏付ける、臨床徴候に依存するであろう。一定の因子、例えば限定するわけではないが、疾患または障害の重症度、過去の処置、対象の全身の健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患などが、対象を効果的に処置するために要求される投薬量およびタイミングに影響を及ぼしうることは、当業者には理解されるであろう。さらにまた、治療有効量の作用物質による対象の処置は、単一の処置を含むか、任意で、一連の処置を含むことができる。
細胞の環境中に作用物質を導入する方法が、細胞のタイプおよびその環境の構成に依存することは、理解されるであろう。適切な量の作用物質を導入しなければならず、これらの量は標準的方法を使って実験的に決定することができる。細胞の環境における個々の作用物質の例示的有効濃度は、500ミリモル濃度以下、50ミリモル濃度以下、10ミリモル濃度以下、1ミリモル濃度以下、500ナノモル濃度以下、50ナノモル濃度以下、10ナノモル濃度以下であることができ、さらには1ナノモル濃度以下の組成物も使用することができる。
薬学的組成物は、投与に関する説明書と一緒にキット、容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに例証するが、以下の実施例を限定とみなしてはならない。本願の全体を通して言及するすべての参考文献、特許、および特許出願公開の内容は、図面と共に、参照により本明細書に組み入れられる。
実施例1:方法および材料
マウス系統
C57/BL6 Yap f/fマウスはDuojia Pan博士のご厚意により寄贈された。C57/BL6 CD4-creおよびFoxp3-CreマウスはJackson Laboratoryから購入した。動物実験はすべてジョンズ・ホプキンズ動物実験指針(Johns Hopkins Animal Care and Use Policy)に従って行われた。
インビトロT細胞分化
ナイーブCD4+ T細胞(CD4+ CD25- CD62LHi)をFACS Aria高速ソーターで選別した。選別された細胞を、プレート結合型aCD3(10ug/ml)および可溶性aCD28(2ug/ml)により、24ウェルプレート中、以下の偏向条件で活性化した:Th1(IL-12(10ng/ml)、aIL-4(10ug/ml)、Th2(IL-4(10ng/ml)、aIFN-g(10ug/ml)、aIL-12(10ug/ml)、Th17(IL-6(10ng/ml)、TGF-b1(1.25ng/ml)、IL-23(10ng/ml)、IL-1b(10ng/ml)、aIFN-g(10ug/ml)、aIL-4(10ug/ml)、Treg(TGFb1(5ng/ml)、IL-2(100IU/ml)。
インビトロ抑制アッセイ
0.1×106個のWTナイーブCD4+ T細胞をCFSEで標識し、96ウェルボトムプレート中、aCD3/aCD28コンジュゲートビーズと共に、1:1の細胞対ビーズ比で培養した。連続希釈したTreg細胞(CD4+ CD25Hi)を72時間にわたって共培養し、CFSEにより、細胞増殖をフローサイトメトリーで測定した。
RNASeq分析
YAP+/+; Foxp3-Cre-YFP+野生型(WT)およびYAP flox/flox(f/f); Foxp3-cre-YFP+マウス(YAP cKO)(n=5/群)から脾臓および末梢リンパ節を収穫した。CD4+ T細胞を磁気により濃縮し、ナイーブ(CD4+ CD62L+ YFP-)細胞およびナチュラルTreg(nTreg、CD4+ CD62L+/- YFP+)細胞を各群からフロー選別した。活性化条件については、選別されたnTreg細胞をさらに、2ug/mlのプレート被覆αCD3および2ug/mlの可溶性αCD28ならびにTGF-β1(5ng/ml)およびIL-2(100U/ml)で、24時間活性化した。2×106個のナイーブまたはnTreg(刺激なしまたは刺激あり)をWTおよびYAP cKOから収穫し、1×PBSで2回洗浄し、さらなるRNA-seq分析まで、直ちに瞬間凍結しておいた。
RNA-seqライブラリーの構築
野生型もしくはYAP KO ナイーブCD4+ T細胞、または抗CD3/CD28による48時間の刺激ありもしくはなしのYFP-Foxp3+ナチュラルTreg細胞から、TRIZOLによって全RNAを単離した。RNA量はBioanalyzerでモニタリングした。TruSeq Stranded Total RNA LT Sample Prep Kit(with Ribo-Zero Gold、RS-122-2301、Illumina)を使用し、製造者のプロトコールに従って、322ngの全RNAから、鎖特異的RNA-seqライブラリーを調製した。簡単に述べると、Ribo-Zero rRNA除去ビーズと組み合わせたビオチン化標的特異的オリゴを使って、細胞質およびミトコンドリアの両方のリボソームRNA(rRNA)を枯渇させた。精製後に、高温下で二価カチオンを使って、RNAを小さな断片にフラグメント化し、それらを、逆転写酵素およびランダムプライマーを使って第1鎖cDNAに転写し、次に、DNAポリメラーゼIおよびRNase Hを使って第2鎖cDNA合成を行った。これらのcDNAフラグメントには一つの「A」塩基が付加され、次いでそれをアダプターとライゲーションさせた。生成物を12サイクルのPCRで富化した。30ul ddH2O中の最終cDNAライブラリーの濃度は、Qubit 2.0で決定したところ、24~27ng/ulに達した。
フローサイトメトリー
細胞外染色の場合は、収穫した細胞を洗浄し、U底96ウェルプレート中、下記の蛍光色素コンジュゲート抗体を含有する1%FBS含有PBSでインキュベートした。細胞内サイトカイン染色の場合は、収穫した細胞を、Golg-Plug(BD Biosciences)の存在下、PMAおよびイオノマイシン中で再刺激した。5時間のインキュベーション後に細胞を固定/透過処理し(eBioscience)、抗体と共にインキュベートした。IFN-g PE、IFN-g APC、IL-13 PE、IL-17 APC(BD Bioscience)、IL-2 APC(BD Pharmingen)、Foxp3 PE(eBioscience)。細胞増殖には、Cell Trace CFSE細胞増殖キット(Invitrogen)を製造者のマニュアルどおりに使用した。
定量リアルタイムPCR
Trizol(Invitrogen)を使ってRNAを抽出し、次に、20ul反応系/ウェルで、SuperScript III(Invitrogen)を使ってcDNA合成反応を行った。各cDNA合成反応には、NanoDrop分光測光器(ThermoScientific)による測定で、同量のRNAを使用した。各遺伝子の転写産物レベルを評価するために、SYBR Green(Pierce)および表示のプライマーを使用するリアルタイムPCR分析用に、一試料あたり同じ体積のcDNAを調製した。
B16メラノーマ成長実験
B16メラノーマ細胞を、DMEM+10%熱非働化ウシ胎児血清中でインビトロ培養し、トリプシン処理によって剥離し、洗浄してから、C57BL/6マウス(NCI)の足蹠にs.c.注射した。1~5×104個のB16メラノーマ細胞を各マウスの足蹠に注射した。場合によっては、105個のB16細胞を注射した。腫瘍が触知可能になったら(7~10日)、致死的照射(150Gy)を行った1×106個のB16 GMワクチン細胞100mlを、対側肢に皮下注射した。これらの実験はいずれも、1群あたり5~10匹のマウスを使用した。遮断抗PD-1抗体(クローンG4)を発現するハイブリドーマ細胞株は、Charles Drake博士(JHH)から入手した。腫瘍が触知可能になったら(7~10日)、ワクチンおよびベルテポルフィン(USP、カタログ番号USP-1711461)処置と合わせて、100μg/マウス/注射の抗PD-1(G4)を、週に2回、腹腔内注射した。ベルテポルフィンは2mg/マウスをPBSで200μlに希釈して投与し、2日ごとに腹腔内注射した。実験全体を通して腫瘍体積はデジタルカリパスで決定した。式:長さ(mm)×幅(mm)×高さ(mm)×0.5326×0.01によって、相対的腫瘍体積を算出した。苦痛が少ないようにマウスを安楽死させ、2,000rpmで20分間のパーコール遠心分離(40%/80%勾配)によってTILを単離した。細胞内フローサイトメトリーによってサイトカインおよびFoxp3を測定した。
実施例2:YAP発現はTCRシグナリングによって誘導され、CD4+ Tregサブセットでは高発現する
YAPは、Hippoシグナリング経路におけるその役割で知られる転写コアクチベーターである。よってYAPは、腫瘍形成および臓器サイズ決定において重要である。しかし、本明細書に記載する発明以前は、免疫細胞におけるHippo経路およびYAPの役割について、ほとんどわかっていなかった。Hippo経路とTGF-βシグナリングとの間のクロストークの報告は、前者の要素が、免疫の活性化および寛容を支配する機序において、何らかの役割を有しうるという推測につながった。
CD4+ T細胞におけるHippoシグナリングの役割を評価するために、CD4+ T細胞のさまざまなサブセットで、YAP発現をスクリーニングした。ナイーブCD4+ T細胞にはYAP mRNAがほとんどまたは全く検出されなかったが、iTreg分化の初期段階中はYAP発現がユニークに誘導された。他のTエフェクターサブセット(Th0、Th1、およびTh2)はYAP mRNAをアップ-アップレギュレート(up-upregulate)することができなかった(図1A)。興味深いことに、YAPメッセージは、Th17偏移(skewing)の初期段階では一過性に蓄積したものの、YAP転写産物レベルは、刺激12時間後までにベースラインに戻った(図5A)。相当量のYAPタンパク質発現もiTregサブセットに特有であった(図1B)。YAPはHippo経路の主要構成要素であるから、T細胞サブセットにおけるYAP上流のHippoシグナリング因子のレベルも評価した。興味深いことに、MST1/2、LATS1/2、およびNF2は、YAPとは異なり、iTreg偏移条件によってアップレギュレートされなかったことから(図5B)、YAP調節は、経路全体に関するその発生生物学と比較して、Tregでは異なることが示唆される。
実施例3:CD4+ T細胞におけるYAP発現のアブレーション(ablation)は強化されたTh17表現型と損なわれたTreg抑制をもたらす
TregサブセットではYap発現が著しくアップレギュレートされていたので、その機能的役割をさらに調べることにした。Tregを含むCD4+ T細胞の生物学におけるYAPの潜在的役割を詳細に調べるために、YAPfl/flマウスをCD4-creトランスジェニックと交配することで、T細胞特異的YAP欠失を持つマウスを作出した。これらのコンディショナルノックアウトマウスは、T細胞発生または末梢免疫細胞集団にはあからさまな欠損を伴わずに、正常に発生した(図6Aおよび図6B)。コンディショナルノックアウトYap f/f;CD4-cre(YAP cKO)および野生型(WT)マウスからナイーブCD4+ T細胞を単離し、さまざまなヘルパーCD4+ T細胞(Th)偏向条件下で72時間活性化した。Th0条件下では、YAP cKO CD4+ T細胞の方が高レベルのIL-2およびIFN-γを発現する(図2A)。また、YAP cKO CD4+ T細胞は、Th17偏向条件下で、WT CD4+ T細胞より多量のIL-17Aを発現し(図2B)、これと整合して、Yap cKO CD4+ T細胞は、WT細胞より高レベルのil17a mRNAを発現した(図2C)。Th17条件下で培養したYAP cKO由来T細胞では、Foxp3+細胞のあまり大きくない減少が、見られた(図2B)。これと、YAPがiTregにおいてアップレギュレートされるという発見とにより、YAP欠損はインビトロでiTregの生成に負の影響を及ぼすかもしれないことが示唆された。
Foxp3がRorgtに拮抗し、よってTh17分化を阻害できることは公知である[13]。それゆえに、Yapは、Foxp3誘導への効果によって、Th17分化に影響を及ぼしているのかもしれない。興味深いことに、ナイーブYAP cKO T細胞によるFoxp3誘導は、Treg偏向条件下でWT CD4+ T細胞に見られるものに匹敵した(図6C、図2D~2E)。これは、Foxp3の誘導ではなく活性が、観察されたこれらの表現型の原因でありうることを示唆している。しかし、YAP cKOマウスからのナイーブCD4+ T細胞をさまざまなTGFβ濃度の存在下で活性化したところ、これらの細胞は、野生型対照と比べて、限られたTGFβの存在下でFoxp3をアップレギュレートする能力が低いことが明らかになった(データ省略)。この欠陥は、Foxp3Cre+YAPfl/flマウス(この場合、YAP欠損は、Foxp3発現を既に「オン」にしている細胞に限定される)から単離されたナイーブCD4+ T細胞にも見られた(図2G)。総合すると、これらの知見は、YAPがTreg分化に役割を果たし、その寄与はFoxp3発現の誘導にではなく維持にとって決定的に重要でありうることを示唆している。
分化するTregがYapを発現することから、本発明者らは、Yap cKO CD4+ T細胞は、そのWT CD4+ T細胞対応物と比較して、機能的能力が低いかもしれないという仮説を設けた。これと、iTregによるYAPの発現とによれば、YAPは、Tregの抑制機能の一因であるかもしれない。インビトロ抑制アッセイでは、YAP cKO TregによるナイーブT細胞増殖の抑制は、実際に、WT Tregのそれと比較して有意に減少することが示された(図2F)。総合すると、これらの知見により、YAPは、これらの細胞の生成と機能の両方に役割を持つTreg関連因子であると意味づけられる。したがってYAPの喪失は、強化された細胞増殖および損なわれたTreg抑制につながる。
実施例4:YAP cKOマウスにおけるYAP欠損はB16メラノーマ成長の優れた抗腫瘍免疫応答および優れた免疫制御につながる
Tregは免疫ホメオスタシスの維持にとって必要であるが、それらは、効果的な抗腫瘍免疫応答の開始にとって支障になり、それらの抑制機能は、抗がん免疫治療の効力を弱める。Tregは腫瘍進行において重要な役割を果たす[14]。Yap cKO Tregによる抑制の喪失が抗腫瘍免疫応答を強化できるかどうかを調べた。これらの理由から、Treg活性を阻害することを目指す治療は、がん免疫治療の選択肢を増やす有望な治療である(Klages, K., et al., Cancer Res, 2010. 70:7788-99)。YAP非存在下での抑制機能の明らかな喪失は、抗腫瘍免疫応答を強化することができるだろう。これを検証するために、WTおよびYAP cKOマウスに、攻撃的な「非免疫原性」腫瘍であるB16メラノーマをチャレンジし、それらの腫瘍成長曲線を21日目まで追跡した。際だったことに、YAP cKOマウスは、攻撃的で免疫原性の低いB16メラノーマの皮下成長を抑え込んだ(図3A~3B)。本明細書に記載するインビトロでの知見と合致して、腫瘍浸潤CD4+T細胞でのFoxp3発現は、WTマウスとYap cKOマウスとの間で同等だった。これに対し、YAP cKOマウスからのCD4+およびCD8+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、腫瘍内免疫応答の制限が少ないことを示す有意に高レベルのIFN-γおよびTNF-αを発現する(図3C)。これらの結果は、T細胞中にYAPが存在しない場合、より頑強な抗腫瘍免疫応答が開始されることを示唆している。Treg限定的YAP欠損を持つマウスの腫瘍チャレンジも類似する結果を与えた。野生型対照が頑強な腫瘍成長を許したのに対し、Foxp3Cre+/YAPfl/flマウスは、より多くの炎症性サイトカイン生産白血球が浸潤した小さな腫瘍を維持した(図3D~3E)。これらの実験は、免疫原性の低いがんにおける、Tregが強いる内在性抗腫瘍免疫の阻害の駆動因子(driver)としての、YAPの役割を強く主張している。
最も有望な免疫治療剤の一部(すなわちPD-1およびCTLA-4拮抗薬抗体)は、腫瘍ワクチン戦略と協調して投与されるか(Curran, M.A., et al., Proc Natl Acad Sci U S A, 2010. 107:4275-80)または腫瘍ワクチン戦略と並行して投与されると(Duraiswamy, J., et al., Cancer Res, 2013. 73:3591-603)、さらに高い抗腫瘍効果を示す。がんをたたくための免疫治療的アプローチとしてのYAPターゲティングの治療的潜在力を試験した。公知のYAP阻害剤であるベルテポルフィン(VP)の、メラノーマ担持マウスへの投与は、腫瘍サイズのあまり大きくない低減をもたらした(Klages, K., et al., Cancer Res, 2010. 70:7788-99)。このYAP標的薬を実証済みの免疫治療剤である抗PD1抗体およびGVAX(照射GMCSF産生B16細胞)と併用することの価値も調べた。事実、VPと抗PD1中和抗体とによるコンビナトリアル処置は、試験したどの単剤治療よりも大きく腫瘍進行を抑制した。VPとGVAXの相乗効果はさらに劇的であり、かろうじて検出可能なサイズより大きい腫瘍の発生は防止された(図4)。ベルテポルフィンとGVAXは、B16メラノーマの成長の低減に対して相乗効果を有する。これらの知見は、YAPターゲティングを含む免疫治療アプローチの潜在力に関する強い証拠である。
これらの結果は、YAP経路に沿ったシグナリングが、Tregの生成および機能を、そして潜在的に、他の広く免疫抑制性であるTGFβ/SMAD経路の効果を、サポートすることができるという結論を裏付けている。重要なことに、これらは、この経路を標的とすることが、単独で、または他の有望な免疫治療剤(例えば免疫チェックポイント遮断抗体、抗がんワクチン)との組み合わせとして、がんにおけるTGFβおよびFoxp3+ Treg細胞の免疫抑制的属性を損なうことも示唆している。
引用文献
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等価物
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他の態様
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