以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の清掃用物品の一実施形態が示されている。同図に示すように、清掃用物品1は、柱状の清掃部10と、清掃部10の内部に位置する筒状の把手挿入部20とを有している。同図に示す清掃用物品1は、把手挿入部20に挿入可能な形状を有する把手30を更に備えていてもよい。
図1に示すように、把手挿入部20は、清掃部10の内部に位置しており、清掃部10の延びる方向である長手方向Xに沿って延びる扁平な部材である。図2に示すように、把手挿入部20は、一対の基材シート21,21が対向して筒状に形成されている。なお、以下の説明では、図2に示す一対の基材シート21のそれぞれを個別に指し示すときには、上側に位置する基材シート21を「第1基材シート21A」ともいい、下側に位置する基材シート21を、「第2基材シート21B」ともいう。各基材シート21A,21Bを区別しない場合には、基材シート21と総称する。
図2に示すように、各基材シート21A,21Bは略矩形状であり、これらの長手方向は清掃用物品1の長手方向Xと一致している。基材シート21の長手方向Xの長さは、把手30の挿入操作のしやすさ等の観点から、清掃部10よりも長いことが好ましい。つまり、把手挿入部20は、該挿入部20を構成する基材シート21を清掃部10の長手方向Xの長さよりも長く形成することによって、基材シート21の長手方向Xの端部が清掃部10の少なくとも一方の長手方向Xの端部から延出した延出部を有していることが好ましい。基材シート21の長手方向Xの端部は、清掃部10の少なくとも一方の長手方向Xの端部から好ましくは1mm以上40mm以下、更に好ましくは1mm以上30mm以下延出して、延出部を形成している。基材シート21の幅は、清掃部10の幅と略同じになっているか、又はそれよりも狭くなっている。
また、1枚の基材シート21に着目したときに、該基材シート21の幅は全て同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、清掃部10の存在する領域では、基材シート21の幅を清掃部10の幅と略同じ又は該幅よりも狭いものとし、また延出部では、その幅(延出部における基材シート21の幅)を清掃部10の存在する領域に位置する基材シート21の幅よりも狭くすることができる。把手30の挿入操作のしやすさ等の観点から、一方の基材シート21に形成された延出部は他方の基材シート21に接合されておらず、離間可能となっていることが好ましい。また同様の観点から、延出部を該シート21の厚み方向に沿って見たときに、延出部の長手方向端部が長手方向中央部に向けて折り返されて、延出部の最延端の角がアール形状となるように形成されていることも好ましい。
基材シート21における長手方向Xの端部には、把手30からの脱落を防止する観点から、把手30に設けられた鉤部(図示せず)と係合するための切れ込み部23が設けられていることが好ましい。また、基材シート21における長手方向Xの端部は、前記延出部の強度を保つ観点から、それぞれ長手方向中央部に向けて折り返されて対向面どうしが接合された折り返し部が設けられていることも好ましい。切れ込み部23や折り返し部は、例えば延出部に設けることができる。切れ込み部23及び折り返し部は、一方の基材シート21にのみ形成されていてもよく、両方の基材シート21A,21Bに形成されていてもよく、また、基材シート21の長手方向Xの一端にのみ形成されていてもよく、基材シート21の長手方向Xの両端に形成されていてもよい。
第1及び第2基材シート21A,21Bは、把手30を挿入できる程度の幅を備えている。各基材シート21A,21Bは、熱融着や、ホットメルト接着剤、超音波シール等の接合手段で接合されており(図示せず)、各基材シート21A,21Bで画成された空間によって筒状の把手挿入部20が形成されている。基材シート21の形成材料としては、従来の清掃用物品に用いられている不織布等の繊維シートを用いることができ、例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布、サーマルボンド不織布等を用いることができる。
基材シート21の坪量は、強度等の観点から、8g/m2以上であることが好ましく、15g/m2以上であることがより好ましく、20g/m2以上であることが更に好ましく、また200g/m2以下であることが好ましく、150g/m2以下であることがより好ましく、また120g/m2以下であることが更に好ましい。具体的には、基材シート21の坪量は、20g/m2以上120g/m2以下であることが好ましく、25g/m2以上100g/m2以下であることがより好ましく、30g/m2以上90g/m2以下であることが更に好ましい。
清掃部10の説明に戻ると、図1に示すように、清掃部10は、複数の繊維からなる柱状の部材である。図1には、略円柱状をした清掃部10が示されているが、清掃部10の形状はこれに限られず、例えば略楕円柱状であってもよい。同図に示す清掃部10は、第1繊維11と、第1繊維11と弾性率が異なる第2繊維12とから構成されている。以下の説明では、説明の便宜上、弾性率が高い繊維を第1繊維11とし、第1繊維よりも弾性率が低い繊維を第2繊維12とする。
清掃部10は、第1繊維11及び第2繊維12を開繊することによって柱状となっている。開繊する前の第1繊維11及び第2繊維12は図2に示すような配置となっている。図2に示すように、各基材シート21の面のうち、把手挿入部20に臨む面と反対側の面(同図中、第1基材シート21Aの上面及び第2基材シート21Bの下面)には、第1繊維11の繊維束11A(以下、これを「第1繊維束11A」ともいう。)及び第2繊維12の繊維束12A(以下、これを「第2繊維束12A」ともいう。)が同一の層となるように所定の厚みをもって、且つ、各繊維束を構成する繊維どうしが実質的に混ざり合うことなくランダムに配置された繊維束となっている(以下、この繊維束を「混在繊維束10M」ともいう。)。「実質的に混ざり合うことなく」とは、第1繊維11がその繊維束として存在している領域と、第2繊維12がその繊維束として存在している領域とが分離しており、各繊維束が判別可能である状態を指すが、必ずしも厳密ではなく、一方の繊維の繊維束中に、他方の繊維が本数基準で30%以下存在していてもよい。
また、混在繊維束10Mを構成する各繊維は、清掃部10の幅方向に延びるように引き揃えられている。上述のように、各繊維束11A,12Aが各基材シート21A,21Bに配置されることによって、清掃部10が形成されている。開繊については、後述の製造方法にて詳述する。
図2に示すように、清掃部10は、各繊維束11A,12Aの延びる方向の中央領域(同図中、幅方向Yの中央部)に、把手挿入部20の延びる方向に沿って連続的に延びる接合部13を有している。接合部13は、第1及び第2繊維束11A,12Aと基材シート21とを、それらの幅方向Yの中央領域で連続的に接合するように形成されている。接合部13は、基材シート21の平面方向において把手挿入部20と重なるように形成されている。
第1及び第2繊維束11A,12Aについて着目すると、第1繊維束11Aを構成する第1繊維11及び第2繊維束12Aを構成する第2繊維12は、これらの一方の繊維端が接合部13の位置においていずれも固定端となっている。つまり、各繊維11,12の一端が接合部13の位置によって固定され、固定端となっている。これに対して、各繊維11,12の他端は接合等されていないので、自由端となっている。清掃部10を横断面視したときに、清掃部10を構成する第1繊維11及び第2繊維12は、いずれも接合部13から放射状に延びるようになっている。このような構成となっていることによって、各構成繊維は清掃時に自由に動くことができるので、曲面や凹凸を有する清掃対象面を清掃した場合でも、清掃用物品1が清掃対象面に追従し易くなり、その結果、ごみの捕集性を高めることができる。
上述のとおり、各繊維束11A,12Aがランダムに配置されていることに起因して、清掃部10の外周面には、図1に示すように、第1繊維11の自由端によって主に構成される第1領域41と、第2繊維12の自由端によって主に構成される第2領域42とがそれぞれ一定の面積をもって存在するようになる。
図1に示す第1領域41には、第1繊維11が主に存在している。第1領域41に第2繊維12が存在していることは妨げられないが、繊維ほこりの捕集性を高める観点から、第2繊維12の存在量は極力少ないことが好ましい。これに対して、同図に示す第2領域42には、第2繊維12が主に存在している。この領域には、第1繊維11が存在していることは妨げられないが、微粒子の捕集性を高める観点から、第1繊維11の存在量は極力少ないことが好ましい。
清掃部10の外周面において、各領域41,42は、それぞれ独立して、例えばアイランド状(海島状)に不連続に存在していてもよく、同一の領域が連続して存在していてもよく、これらの組み合わせであってもよい。第1領域41及び第2領域42は両者が明確に区別されていることを要せず、両者間には、両者の遷移領域が存在していてもよい。このような例として、清掃部10の外周面を見たときに、一方の領域が水玉模様、絵柄模様、格子模様、波状模様、鋸歯状模様又はこれらの組み合わせで連続又は不連続に形成されており、これらの領域以外に他方の領域が連続又は不連続に形成されている態様が挙げられる。このように、各領域41,42が清掃部10の外周面にランダムに配置されていることによって、清掃対象面に当接する清掃部10の外周面がどの領域であっても、微粒子の高い捕集性に加えて、塊状になった繊維ほこり及び微細ほこりの高い捕集性を兼ね備えることができる。
第1領域41及び第2領域42の清掃部10の外周面における配置態様の具体例としては、例えば以下の態様が挙げられる。海島状の態様として、不定形の第1領域41の海に、それぞれ大きさが異なる第2領域42の島が水玉模様、絵柄模様又はこれらの組み合わせで形成された態様や、不定形の第1領域41の海に、面積やピッチがそれぞれ異なる第2領域42の島が格子模様に形成された態様が挙げられる。また、同一の領域が連続して存在する態様としては、例えば振幅や位相が異なる波状模様又は鋸歯状模様を有する各領域をそれぞれ組み合わせて配置した態様が挙げられる。上述した第1領域41及び第2領域42の配置態様は、それぞれ逆の領域に置き換えた場合でも、本発明の効果は十分に奏される。
第1繊維11及び第2繊維12の存在位置が上述の構成となっていることによって、例えば弾性率が高い繊維が存在する領域(図1中、第1繊維11が主に存在する第1領域41)では、弾性率が低い前記繊維が存在する領域(同図中、第2繊維12が主に存在する第2領域42)よりも、第1繊維11によって塊状の繊維ほこりを突き刺すように絡め取って効果的に捕集できるようになっている。一方、弾性率が低い繊維が存在する領域では、弾性率が高い繊維が存在する領域よりも、微粒子ダストを該繊維に吸着して効果的に捕集できるようになっている。このこととは対照的に、清掃部10の全域において第1繊維11及び第2繊維12が均一に混在している場合には、巨視的には単一の弾性率を有する繊維からなる繊維束とみなすことができるので、繊維の弾性率の違いに起因した繊維ほこりの捕集と微粒子の捕集との両立が容易でない。
清掃部10の外周面において、第1繊維11及び第2繊維12をそれぞれ一定の面積を有するように配置させて、微粒子ダスト及び塊状になった繊維ほこりの高い捕集性を両立させる観点から、各繊維の繊維束11A,12Aの繊維本数は、それぞれ独立して、好ましくは100本以上、より好ましくは200本以上、更に好ましくは400本以上であり、また好ましくは200000本以下、より好ましくは180000本以下、更に好ましくは150000本以下である。具体的には、各繊維の繊維束11A,12Aの繊維本数は、それぞれ独立して、好ましくは100本以上200000本以下、より好ましくは200本以上100000本以下、更に好ましくは400本以上10000本以下である。各繊維束の繊維本数は、単位長さ当たりの繊維束の質量から繊維の繊度を除することによって算出することができる。例えば、繊度3.3dtex(3.3g/10000m)である繊維の繊維束を0.1g/0.1mとして用いた場合には、その繊維束の繊維本数は、[単位長さ当たりの繊維束の質量(0.1g/0.1m)]/[繊維の繊度(3.3g/10000m)]=約3030本と算出することができる。
第1繊維束11Aの質量と第2繊維束12Aの質量との比は、第1繊維束11A:第2繊維束12Aとして、15:85以上85:15以下であることが好ましく、30:70以上70:30以下であることがより好ましい。第1繊維束と第2繊維束との質量比がこのような範囲となっていることによって、微細ダスト及び塊状になった繊維ほこりの捕集性を一層高めることができる。
塊状になった繊維ほこり等の柔軟性のあるごみを突き刺すように捕集する性能を更に向上させる観点から、上述のとおり、第1繊維11及び第2繊維12はそれぞれ弾性率が異なっていることが好ましい。例えば、第1繊維11を構成する繊維は、第2繊維12を構成する繊維よりも弾性率の高いものとすることができる。このような繊維としては、例えば熱可塑性樹脂を含む繊維等が挙げられる。熱可塑性樹脂を含む繊維としては、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、PE及びPETの複合繊維、PE及びPPの複合繊維、芯がPET又はPPであり且つ鞘がPEである芯鞘構造を有する複合繊維等が挙げられる。弾性率は、JIS L 1013又はJIS L 1015に規定される初期引張抵抗度とすることができ、例えば日本化学繊維協会「わが国化学繊維性能表」で示す初期引張抵抗度(見掛ヤング率)を参照することもできる。
本発明において、繊維の弾性率の指標である初期引張抵抗度は、その単位がcN/dtex又はN/mm2で表されるものである。この値が大きいほど繊維の剛性が高く、塊状になった繊維ほこり等の柔軟性のあるごみを突き刺すように捕集することが可能となる。第1繊維11が第2繊維12よりも弾性率の異なるものとするためには、例えば第1繊維11の原料を第2繊維12の原料よりも弾性率が高いものを用いたり、各繊維の原料を同じものを用いたときに第1繊維11の繊度と、第2繊維12の繊度とを異なるものとすることができる。
第1繊維11の弾性率が第2繊維12の弾性率よりも高いものとしたときに、第2繊維12の弾性率に対する第1繊維11の弾性率の比は、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることが更に好ましく、また、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることが更に好ましい。具体的には、第2繊維12の弾性率に対する第1繊維11の弾性率の比が1.2以上10以下であることが好ましく、1.5以上8以下であることがより好ましく、2以上5以下であることが更に好ましい。
第1繊維11の弾性率が第2繊維12の弾性率よりも高いものとしたときに、第1繊維11の弾性率は、10cN/dtex以上であることが好ましく、13cN/dtex以上であることがより好ましく、18cN/dtex以上であることが更に好ましく、また、350cN/dtex以下であることが好ましく、220cN/dtex以下であることがより好ましく、120cN/dtex以下であることが更に好ましい。具体的には、第1繊維11の弾性率は、10cN/dtex以上350cN/dtex以下であることが好ましく、13cN/dtex以上220cN/dtex以下であることがより好ましく、18cN/dtex以上120cN/dtex以下であることが更に好ましい。
同様に、第2繊維12の弾性率は、6cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/dtex以上であることがより好ましく、10cN/dtex以上であることが更に好ましく、また、160cN/dtex以下であることが好ましく、120cN/dtex以下であることがより好ましく、100cN/dtex以下であることが更に好ましい。具体的には、第2繊維12の弾性率は、6cN/dtex以上160cN/dtex以下であることが好ましく、8cN/dtex以上120cN/dtex以下であることがより好ましく、10cN/dtex以上100cN/dtex以下であることが更に好ましい。
構成繊維の製造時における弾性率の調整が容易であるとともに、塊状になった繊維ほこり等の柔軟性のあるごみを効果的に絡め取って除去する観点から、第1繊維の繊度と第2繊維の繊度とが、各繊維の繊度をdtex(デシテックス)で表して、それぞれ異なるようにすることが好ましい。
第1繊維11の繊度が第2繊維12の繊度よりも高いものとしたときに、第2繊維12の繊度に対する第1繊維11の繊度の比が、各繊維の繊度をdtex(デシテックス)で表して、1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2以上であることが更に好ましく、また、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、5以下であることが更に好ましい。具体的には、第2繊維12の繊度に対する第1繊維11の繊度の比が1.2以上10以下であることが好ましく、1.5以上8以下であることがより好ましく、2以上5以下であることが更に好ましい。
同様の観点から、第1繊維11の繊度は、第1繊維11の繊度が第2繊維12の繊度よりも高いものとしたときに、4.4dtex以上であることが好ましく、6.6dtex以上であることがより好ましく、8.8dtex以上であることが更に好ましく、また、50dtex以下であることが好ましく、30dtex以下であることがより好ましく、20dtex以下であることが更に好ましい。具体的には、第1繊維11の繊度は、4.4dtex以上50dtex以下であることが好ましく、6.6dtex以上30dtex以下であることがより好ましく、8.8dtex以上20dtex以下であることが更に好ましい。第1繊維11の繊度がこのような範囲にあることによって、塊状になった繊維ほこり等が第1繊維11に一層突き刺ささりやすくなり、一層容易に除去される。
また同様の観点から、第2繊維12の繊度は、第1繊維11の繊度が第2繊維12の繊度よりも高いものとしたときに、0.11dtex以上であることが好ましく、1.1dtex以上であることがより好ましく、2.2dtex以上であることが更に好ましく、また、11dtex以下であることが好ましく、6.6dtex以下であることがより好ましく、3.3dtex以下であることが更に好ましい。具体的には、第1繊維11の繊度は、0.11dtex以上11dtex以下であることが好ましく、1.1dtex以上6.6dtex以下であることがより好ましく、2.2dtex以上6.6dtex以下であることが更に好ましい。第2繊維12の繊度がこのような範囲にあることによって、微粒子が一層容易に除去される。
塊状の繊維ほこり等の柔軟性のあるごみを絡め取って除去性を高める観点から、第1繊維11及び第2繊維12はいずれも捲縮していることが好ましい。捲縮した繊維としては、二次元又は三次元に捲縮したものを用いることができる。捲縮繊維としては、例えば上述の芯鞘繊維や、収縮率の異なる2種類の熱可塑性樹脂を成分とする偏心芯鞘型複合繊維、又はサイド・バイ・サイド型複合繊維を採用することができる。捲縮繊維の構成成分としては、上述の樹脂が挙げられる。その他の例としては、特開平9-296325号公報等に記載のものが挙げられる。
繊維の捲縮の度合いは、例えばJIS L 0208に規定される捲縮率及び捲縮数として評価することができる。捲縮率は、繊維を引き伸ばしたときの長さAと、元の繊維の長さBとの差の、繊維を伸ばしたときの長さAに対する百分率で定義され、「(A-B)/A×100(%)」といった式から算出される。元の繊維の長さBとは、繊維が自然状態において、繊維の両端部を直線で結んだ長さをいう。自然状態とは、繊維の一方の端部を水平な板に固定し、繊維の自重で下方に垂らした状態をいう。繊維を引き伸ばしたときの長さAとは、繊維の捲縮がなくなるまで伸ばしたときの最小荷重時の長さをいう。
繊維ほこりの絡め取り性を向上させる観点から、各繊維11,12における捲縮率は、それぞれ独立して、5%以上50%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることが更に好ましい。また、捲縮数は、それぞれ独立して、1cmあたり2個以上10個以下であることが好ましい。このような捲縮率及び捲縮数とするためには、例えば、繊維の製造工程において施す捲縮処理や、加熱処理の温度を適宜調節することによって行うことができる。
第1繊維11及び第2繊維12の構成材料としては、熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステルや、ポリアミドから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。これらの樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ごみの捕集をより簡便に視認可能とする観点から、清掃部10における第1繊維11の色と第2繊維12の色とが相違していることが好ましい。また同様の観点から、第1繊維及び第2繊維がそれぞれ着色されていることも好ましい。繊維の着色は、該繊維の明度が高くなるように行うことがより好ましい。各繊維11,12の色を異なるものとするためには、例えば、繊維の製造工程において、一方の繊維にのみ着色料を添加したり、異なる色を有する着色料を各繊維にそれぞれ添加したり、同種の着色料の含有量を各繊維で変化させることによって行うことができる。また、このような構成を有していることによって、清掃部10の外周部で色のコントラストが生じ、清掃用物品1の意匠性が高まるという利点もある。
第1繊維束11A及び第2繊維束12Aの各坪量は、第1領域41における繊維ほこりの捕集性及び第2領域42における微粒子の捕集性を高める観点から、それぞれ独立して、50g/m2以上であることが好ましく、80g/m2以上であることがより好ましく、100g/m2以上であることが更に好ましく、また600g/m2以下であることが好ましく、500g/m2以下であることがより好ましく、また300g/m2以下であることが更に好ましい。具体的には、第1繊維束11A及び第2繊維束12Aの坪量は、それぞれ独立して、50g/m2以上600g/m2以下であることが好ましく、80g/m2以上500g/m2以下であることがより好ましく、100g/m2以上300g/m2以下であることが更に好ましい。
各繊維束と各基材シートとの接合性を高めるとともに、清掃対象物への追従性が高い清掃用物品を製造する観点から、第1及び第2繊維束11A,12Aと基材シート21とは、例えば図3(a)に示すように、接合部13に加えて、第1及び第2繊維束11A,12Aと基材シート21とを接合する点状接合部列15を形成して接合されていることが好ましい。同図に示すように、点状接合部列15は、接合部13から幅方向Yへ向けて所定の距離を隔てた側方に位置しており、接合部13の延びる方向と同じ方向に延びている。つまり、点状接合部列15は、接合部13を挟むように一対形成されている。点状接合部列15は、複数の点状接合部15Aが連なって構成されており、各点状接合部15Aは互いに離間した非連続のものである。
図3(b)に示すように、基材シート21上に配されている第1繊維11及び第2繊維12のうち少なくとも一方は、これらの繊維の自由端と固定端との間で、点状接合部列15において基材シート21と更に接合される部分が生じる。同図に示すように、点状接合部列15の点状接合部15Aにおいて、第1繊維11及び第2繊維12のうち少なくとも一方が基材シート21と接合され、該繊維の自由端と固定端との間で、基材シート21と一体となるように接合されている。これに加えて、点状接合部列15の点状接合部15Aにおいて、各基材シート21A,21Bが接合されている。一方、点状接合部15Aが形成されていない部分は、図3(c)に示すように、基材シート21上に配されている第1繊維11及び第2繊維12はいずれも、繊維の自由端と、該繊維の固定端としての接合部13とを有しており、接合部13において、各繊維11,12と一方の基材シート21とが接合されている。
点状接合部列15における点状接合部15Aの形状は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に制限はなく、例えば円形、楕円形、矩形等の幾何学形状であってもよい。また、点状接合部15Aの長手方向Xの間隔は、等間隔であってもよく、等間隔でなくてもよい。
把手30を簡便に挿入する観点から、点状接合部列15における点状接合部15Aの長手方向Xの間隔L1(図3参照)は、5mm以上40mm以下であることが好ましい。また、点状接合部15Aの個数は、基材シート21の長手方向Xの長さによって適宜調整することができるが、2個以上100個以下であることが好ましい。
同様の観点から、接合部13と点状接合部列15との幅方向Yにおける間隔W1(図3参照)は、基材シート21の幅方向の長さによって適宜調整することができるが、それぞれ独立して、5mm以上90mm以下であることが好ましく、5mm以上45mm以下であることが更に好ましい。
また同様の観点から、隣り合う点状接合部列15,15の間隔W2(図3参照)は、基材シート21の幅方向の長さによって適宜調整することができるが、10mm以上180mm以下であることが好ましく、10mm以上90mm以下であることが更に好ましい。各基材シート21A,21Bが各点状接合部列15,15によって接合されるようになるので、間隔W2は把手挿入部20の幅となる。
把手30は、人手によって把持可能な把持部31と、把手挿入部20に挿入可能な形状を有する挿入部(図示せず)とを有していれば、その形状に特に制限はない。把手30における挿入部として、例えば特開2007-236690号公報に示すような二股に分岐した部材であってもよく、分岐していない一体形状の扁平板状の部材であってもよく、筒状又は柱状の部材であってもよい。
挿入部の形状が上述のいずれの場合であっても、把手30からの清掃用物品1の意図しない脱落を防ぐ観点から、把手30には、基材シート21に形成された切れ込み部23と係合可能な鉤部(図示せず)が設けられていることが好ましい。また、同様の観点から、把手30における挿入部の幅は、把手挿入部20における幅と略同じ長さであることが好ましい。
把手30の形成材料としては、成形性や可撓性の観点から、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。把手30が可撓性を有する材料から形成されていることによって、曲面や凹凸を有する清掃対象面を清掃した場合に、清掃用物品1が清掃対象面に追従し易くなり、埃の除去効率が高まるという利点もある。
以上は、本発明の清掃用物品に関する説明であったところ、以下に本発明の清掃用物品の好適な製造方法を図4を参照して説明する。清掃用物品の製造方法は、図4に示す製造装置100を用いて、第1繊維の繊維束及び第2繊維の繊維束を構成する各繊維の延びる方向と直交する方向に沿って各繊維束を配置して繊維束並列体とし、該繊維束並列体を、その構成繊維の延びる方向に沿って搬送する工程と、繊維束並列体を構成する繊維を延伸して繊維束延伸体を形成する工程と、繊維束延伸体を構成する各繊維を捲縮させて繊維束捲縮体を形成する工程と、繊維束捲縮体と基材シートとを重ね合わせて接合し、開繊させる工程とを備える。
まず、図4に示すように、第1繊維の繊維束及び第2繊維の繊維束を構成する各繊維の延びる方向と直交する方向に沿って各繊維束を配置して繊維束並列体とし、該繊維束並列体を、その構成繊維の延びる方向に沿って搬送する(搬送工程)。本工程では、あらかじめ製造しておいた長繊維状樹脂からなる各繊維の繊維束11A,12Aを各繊維束の収納容器11P,12Pから取り出し、これらの繊維束11A,12Aを繊維の延びる方向と直交する方向に沿って配置して、複数の繊維束からなる繊維束並列体1Pとする。この繊維束並列体1Pを、各繊維の延びる方向と搬送方向MDとを略一致させて、下流の工程へ搬送する。なお、各繊維束の収納容器11P,12Pは、それぞれ独立して、単独で又は複数個備えて、各繊維束11A,12Aを繰り出してもよい。
繊維束並列体1Pにおける各繊維の繊維束11A,12Aの各繊維の延びる方向と直交する方向での配置順序は、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、清掃部10全体に満遍なく第1領域41及び第2領域42を形成させてダスト及びほこりの捕集性能を高める観点から、各繊維束はその繊維がランダムになるように配置しておくことが好ましい。また、繊維束並列体1Pの幅(搬送方向MDと直交する方向)は、目的とする清掃用物品における清掃部10の長手方向Xの長さと略同一としておくことが、製造効率の観点から好ましい。
上述のとおり、各繊維の繊維束11A,12Aは、繊維束並列体1Pとする前にあらかじめ製造しておくことが製造効率の観点から好ましい。各繊維の繊維束の製造方法は、公知の方法を採用することができ、例えば溶融した原料樹脂をノズルから吐出して長繊維状の樹脂とすることができる。各繊維の繊度は、例えばノズルの径を変えたり、原料樹脂の吐出量を変えたりすることによって調整することができる。
次いで、繊維束並列体1Pを構成する繊維を延伸して繊維束延伸体1Eを形成する(延伸工程)。上述の工程を経て搬送された繊維束並列体1Pは、製造装置100における延伸装置110内に搬送される。延伸装置110内に搬送された繊維束並列体1Pは、該並列体1Pを構成する長繊維状樹脂からなる各繊維が所定の太さとなるように延伸され、繊維束延伸体1Eとなる。延伸装置110の内部には、各構成繊維を延伸するための延伸ロール(図示せず)が複数配されており、該延伸ロールによって、繊維の搬送速度が搬送方向上流よりも搬送方向下流で速くなるように各繊維を搬送して、繊維の延びる方向に沿う張力を該繊維に負荷することによって各繊維を延伸することができるようになっている。
本工程は、一回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。本工程を複数回行う場合は、例えば延伸装置を搬送方向に沿って複数設けて、対象となる繊維を複数回延伸させるか、又は1つの延伸装置に繊維束並列体1Pを複数回通過させて繊維を複数回延伸させることができる。構成繊維を延伸させやすくする観点から、延伸装置110の内部には加熱装置が更に設けられていることが好ましい。繊維を延伸させる場合の加熱温度は、原料となる樹脂の融点等に応じて適宜調整することができる。
続いて、繊維束延伸体1Eを構成する各繊維を捲縮させて繊維束捲縮体1Cを形成する(捲縮工程)。本工程では、長繊維状樹脂からなる繊維束延伸体1Eを、該延伸体1Eに付与されている張力を解除しつつ、捲縮装置120内へ導入して各繊維に捲縮加工を施して、繊維束延伸体1Eを構成する各繊維を捲縮させて繊維束捲縮体1Cを形成する。捲縮装置120には、捲縮加工装置及び加熱装置(ともに図示せず)が備えられており、構成繊維に捲縮を発現できるようになっている。繊維を捲縮させる場合の温度は、原料となる樹脂の融点等に応じて適宜調整することができる。同図中、繊維束捲縮体1Cは、第1繊維の繊維束と第2繊維の繊維束とが交互に配置されているが、この態様に限られない。清掃用物品の製造効率を高めるとともに、清掃用物品におけるごみの高い捕集性を発現させる観点から、繊維束捲縮体1Cにおける第1繊維の繊維束と第2繊維の繊維束とを構成する繊維どうしが実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されていることが好ましい。
製造効率の観点から、繊維束捲縮体1Cの形成後に、清掃用物品の製造を中断することもできる。この場合、形成された繊維束捲縮体1Cは、例えば繊維束捲縮体1Cを保管するための保管容器に入れて一旦保管し、その後、清掃用物品の製造を再開する際に、繊維束捲縮体1Cを保管容器から搬送方向MDに繰り出して使用することができる。
第1繊維の繊維束及び第2繊維の繊維束は、その構成繊維を延伸及び捲縮する前の単位長さ当たりの繊維束の質量と、繊維の延伸条件と、捲縮条件とを予め定めておくことによって、繊維束に存在する繊維の本数及び繊維束の坪量を決定することができる。例えば、繊度6.6dtex(6.6g/10000m)である繊維の繊維束を、延伸及び捲縮前の単位長さ当たりの質量として0.2g/0.1mで用いた場合には、その繊維束の繊維本数は、[単位長さ当たりの繊維束の質量(0.2g/0.1m)]/[繊維の繊度(6.6g/10000m)]=約3030本と算出することができる。また、この繊維束を3.3dtexの繊度となるような延伸条件及び捲縮条件で加工したときの繊維束の質量は、延伸及び捲縮した後の繊維の繊度(6.6g/20000m)=(3.3g/10000m)から設定することができる。このように算出された繊維束の質量(g)から開繊前の繊維束を平面視したときの面積(m2)を除することによって、第1繊維の繊維束11A及び第2繊維の繊維束12Aに存在する繊維本数及び坪量を決定し、これらに基づいて、繊維束捲縮体1Cにおける各繊維束11A,12Aの配合比が所望の範囲となるように決定することができる。このように、第1繊維の繊維束11A及び第2繊維の繊維束12Aを組み合わせることによって、繊維束捲縮体1Cとしての混在繊維束10Mが構成される。
最後に、繊維束捲縮体1Cと基材シート21とを重ね合わせて接合し、開繊させる(接合開繊工程)。本工程は、製造効率の観点から、例えば以下の方法で行うことができる。
まず同図に示すように、原反ロール21Rから繰り出された基材シート21を形成するための原反シート21P(以下、単に「原反シート21P」ともいう。)の一方の面に、捲縮工程を経た長繊維状樹脂からなる繊維束捲縮体1Cを重ね合わせて積層体1Lとし、該積層体1Lを接合する。製造効率の観点から、原反シートの長手方向と、繊維束捲縮体1Cの構成繊維の延びる方向と、搬送方向MDとはそれぞれ一致していることが好ましい。また、原反シートの幅は、目的とする清掃用物品の長手方向の長さと略同一の幅としておくことが好ましい。繊維束捲縮体1Cは、その搬送過程において、必要に応じて、搬送方向MDと交差する方向に一定の幅となるように拡幅させて、その後、原反シートと重ね合わせてもよい。
このように製造された積層体1Lは、その搬送過程において、積層体の搬送方向に沿って一定の間隔に、該搬送方向と略直交する方向に連続して延びる接合部13が接合部形成装置によって形成され、積層体1Lが接合される。接合部13は、原反シート21P及び繊維束捲縮体1Cを接合するように形成される。接合部13は、例えば、超音波シールやヒートシール等によって形成することができる。このようにして、繊維束接合体1Sを形成することができる。
次いで、一対の繊維束接合体1Sを接合して、複層接合体1Wを形成する。複層接合体1Wは、一対の繊維束接合体1Sを原反シート(基材シートに相当)どうしが相対するように重ね合わせた状態で、原反シートどうしを接合して形成させることができる。複層接合体1Wは、繊維束捲縮体1Cが外側(外層)に位置しており、原反シートが内側(内層)に位置するように形成されている。本工程では、複層接合体1Wの長手方向と、搬送方向MDとは一致していることが好ましい。
一対の繊維束接合体1Sにおける原反シートどうしの接合方法は、例えば繊維束接合体1Sにおいて、原反シートどうしが相対する側の面にホットメルト接着剤等を塗布又は散布したのち、各原反シートを貼り合わせることによって接合させることができる。上述の接着剤は、把手挿入部が形成可能な位置に塗布又は散布されることが好ましい。
また、上述の接合方法に代えて、図3に示す点状接合部列15を形成することによって、一対の繊維束接合体1Sを接合して、複層接合体1Wを形成することもできる。詳細には、図4に原反シート21Pどうしが相対するように繊維束接合体1Sどうしを積層したのち、一方の繊維束捲縮体1Cから他方の繊維束捲縮体1Cまで接合するように、原反シート21Pの幅方向に複数の点状接合部15Aを形成させる。このように形成された点状接合部15Aは、上述の接合部13の延びる方向と同方向に延びるように連なった点状接合部列15となる。点状接合部列15は、例えば超音波シールによって形成させることができる。
続いて、隣り合う接合部13の位置において複層接合体1Wを目的とする清掃用物品の寸法となるように切断して、複層切断体1Aを形成する。複層切断体1Aは、図2に示すような混在繊維束10M及び基材シート21が積層された構造を有するものとなっており、本製造方法においては、混在繊維束10Mと繊維束捲縮体1Cとは同一のものである。
これに引き続き、繊維束捲縮体1Cを開繊させて、柱状の清掃部10を形成し、清掃用物品1を得る。具体的には、複層切断体1Aを形成したあと、繊維束捲縮体1C(混在繊維束10M)にエアーを吹き付けて、該繊維束を毛羽立たせることで開繊させて、柱状の清掃部10及び筒状の把手挿入部20を有する清掃用物品とする。このように開繊することによって、清掃部10の柔軟性が高くなるとともに、清掃対象物への追従性も高くなり、その結果、ごみの捕集性を向上させることができる。
製造効率の観点から、複層接合体1Wの切断は、原反シート21Pの幅方向に沿って隣り合う接合部13の位置で切断することが好ましく、また、原反シート21Pの幅方向が清掃用物品の長手方向Xとなるような位置で切断することも好ましい。このような部位で切断することによって、清掃部10における第1繊維11及び第2繊維12は、接合部13が固定端となり、切断部位が自由端となる。
複層接合体1Wを形成している原反シート21P及び繊維束捲縮体1Cは、所定の寸法となるように切断されることによって、互いに接合された2枚の基材シート21と、第1繊維束11A及び第2繊維束12Aとからなる清掃用物品となる。つまり、原反シート21Pは、基材シート21と実質的に同一のものであり、繊維束捲縮体1Cは、第1繊維束11A及び第2繊維束12Aを含む混在繊維束10Mと実質的に同一のものである。
把手挿入部20に延出部を設ける場合には、例えば積層させる繊維束捲縮体1Cの幅よりも原反シート21Pの幅を広くした複層接合体1Wを形成して、原反シート21Pの幅方向が清掃用物品の長手方向となるような位置で切断することで、延出部を形成することができる。形成された延出部に対して、更に切断加工等を施して所望の形状となるように加工してもよい。そのほかの方法として、図3(a)に示すように、基材シート21に破断誘導線19を形成しておき、該破断誘導線19に挟まれた領域を残して該誘導線19の外方に位置する領域を切り取ることによって、延出部を形成することができる。延出部を把持して把手を挿入しやすくする観点から、延出部の幅は、隣り合う点状接合部列15,15の間隔W2よりも広いことが好ましく、また、基材シート21の最大幅よりも狭いことが好ましい。
把手挿入部20に折り返し部を設ける場合には、例えば上述した延出部を設けるように複層接合体1Wを切断して複層切断体1Aとし、然る後に、該延出部が形成された各基材シート21A,21Bの端部を長手方向X中央部に向けて折り返して、該シート21の対向面どうしを接合することによって折り返し部を形成することができる。柔軟性の観点から、折り返し部は、折り返した基材シートの対向面どうしで画成された空間を有するように、基材シート21の端部のみがその対向面と接合されていることが好ましい。つまり、折り返し部は、対向面全体が密着して接合されていないことが好ましい。
以上の工程を経て、本発明の清掃用物品が製造される。このように製造された清掃用物品1は、上述した把手30や、又は伸縮性を有する部材等を有する清掃用具に装着して、床面、壁面、梁等の建物、窓の桟、ドア、ドアノブ等の建具、戸棚、箪笥、机食卓等の家具等を清掃対象として好適に使用できる。
以上のとおり、本発明の清掃用物品は、複数の繊維からなる清掃部を有しており、また、該清掃部は清掃対象面への追従性も高くなっているので、微粒子だけでなく、塊状になった繊維ほこりなどの柔軟性のあるごみも効果的に捕集することができる。特に、室内の隅や、家具の裏側等に溜まった塊状の繊維ほこりの除去に好適に用いることができる。
本発明の清掃用物品は、上記実施形態に限定されない。例えば、清掃部10は第1繊維11及び第2繊維12の二種類の弾性率が異なる繊維からなるものとして説明したが、繊維の種類はこれらに限られず、本発明の効果が奏される限りにおいて、三種類以上の繊維を用いて清掃部を形成してもよい。
上述した本発明の実施形態に関し、更に以下の清掃用物品及びその製造方法を開示する。
<1>
複数の繊維からなる柱状の清掃部と、該清掃部の内部に位置し且つ該清掃部の延びる方向に沿って延びる筒状の把手挿入部とを有する清掃用物品であって、
前記把手挿入部は、対向した一対の基材シートが接合されて形成されており、
前記各基材シートの面のうち、前記把手挿入部に臨む面と反対側の面に、第1繊維の繊維束及び第1繊維と弾性率が異なる第2繊維の繊維束が配置されて前記清掃部が形成されており、
第1繊維及び第2繊維はいずれも自由端及び固定端を有し、
第1繊維の固定端及び第2繊維の固定端はいずれも、前記基材シートの平面方向において前記把手挿入部と重なり、且つ該把手挿入部の延びる方向に沿って延びる接合部の位置において前記基材シートと接合されており、
前記清掃部の横断面視において、第1繊維及び第2繊維はいずれも前記接合部から放射状に延びており、第1繊維の繊維束と第2繊維の繊維束とは、各繊維束を構成する繊維どうしが実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されている、清掃用物品。
<2>
第1繊維の繊度と第2繊維の繊度とが異なっている、前記<1>に記載の清掃用物品。
<3>
第1繊維の繊維束の質量と第2繊維の繊維束の質量との比が15:85以上85:15以下である、前記<1>又は<2>に記載の清掃用物品。
<4>
第1繊維及び第2繊維はいずれも芯鞘構造を有する複合繊維である、前記<1>ないし<3>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<5>
前記各繊維束の繊維本数は、それぞれ独立に100本以上200000本以下である、前記<1>ないし<4>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<6>
第1繊維及び第2繊維が着色されている、前記<1>ないし<5>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<7>
第1繊維の色と第2繊維の色とが相違している、前記<1>ないし<6>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<8>
第1繊維及び第2繊維がいずれも捲縮している、前記<1>ないし<7>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<9>
第1繊維の弾性率が第2繊維の弾性率よりも高く、
第1繊維の弾性率は、10cN/dtex以上350cN/dtex以下である、前記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の清掃用物品。
。
<10>
第1繊維の弾性率が第2繊維の弾性率よりも高く、
第2繊維の弾性率は、6cN/dtex以上160cN/dtex以下である、前記<1>ないし<9>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<11>
第1繊維の繊度が第2繊維の繊度よりも高く、
第1繊維の繊度は、4.4dtex以上50dtex以下である、前記<1>ないし<10>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<12>
第1繊維の繊度が第2繊維の繊度よりも高く、
第2繊維の繊度は、0.11dtex以上11dtex以下である、前記<1>ないし<11>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<13>
第1繊維及び第2繊維は、それぞれ少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂からなる繊維である、前記<1>ないし<12>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<14>
第1繊維及び第2繊維の捲縮率は、それぞれ独立して、5%以上50%以下である、前記<1>ないし<13>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<15>
一方の前記繊維の繊維束中に、他方の前記繊維が本数基準で30%以下存在している、前記<1>ないし<14>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<16>
一方の前記領域が水玉模様、絵柄模様、格子模様、波状模様、鋸歯状模様又はこれらの組み合わせで連続又は不連続に形成されており、これらの領域以外に他方の前記領域が連続又は不連続に形成されている、前記<15>に記載の清掃用物品。
<17>
弾性率が高い前記繊維が存在する前記領域は、弾性率が低い前記繊維が存在する前記領域よりも、塊状の繊維ほこりを捕集できるようになっている、前記<15>又は<16>に記載の清掃用物品。
<18>
弾性率が低い前記繊維が存在する前記領域は、弾性率が高い前記繊維が存在する前記領域よりも、微粒子ダストを捕集できるようになっている、前記<15>ないし<17>のいずれか一に記載の清掃用物品。
<19>
第1繊維の繊維束及び第2繊維の繊維束を構成する各繊維の延びる方向と直交する方向に沿って各繊維束が配置されてなる繊維束並列体を、その構成繊維の延びる方向に沿って搬送し、
前記繊維束並列体を構成する繊維を延伸して繊維束延伸体を形成し、次いで、
前記繊維束延伸体を構成する各繊維を捲縮させて繊維束捲縮体を形成し、然る後に、
前記繊維束捲縮体と基材シートとを重ね合わせて接合し、開繊させる、清掃用物品の製造方法。
<20>
前記繊維束捲縮体は、第1繊維の繊維束と第2繊維の繊維束とを構成する繊維どうしが実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されている、前記<19>に記載の清掃用物品の製造方法。
<21>
形成した前記繊維束捲縮体を保管容器に入れて保管し、次いで、
前記繊維束捲縮体を前記保管容器から繰り出して一方向に搬送し、然る後に、
前記繊維束捲縮体と前記基材シートとを重ね合わせて接合し、開繊させる、前記<19>又は<20>に記載の清掃用物品の製造方法。
<22>
前記繊維束捲縮体を一方向に搬送しつつ、該繊維束捲縮体を搬送方向と交差する方向に拡幅し、
拡幅した前記繊維束捲縮体と前記基材シートとを重ねあわせて接合し、開繊させる、前記<19>ないし<21>のいずれか一に記載の清掃用物品の製造方法。
<23>
前記繊維束捲縮体と前記基材シートとを重ねあわせた積層体に対して、その搬送方向と略直交する方向に連続して延びる接合部を形成して、該繊維束捲縮体と該基材シートとが接合された繊維束接合体とし、然る後に、該繊維束接合体を開繊させる、前記<19>ないし<22>のいずれか一に記載の清掃用物品の製造方法。
<24>
前記繊維束捲縮体が外側に位置し、且つ前記基材シートが内側に位置するように一対の前記繊維束接合体を接合して複層接合体を形成し、然る後に、該複層接合体を開繊させる、前記<23>に記載の清掃用物品の製造方法。
<25>
構成繊維を延伸及び捲縮する前の単位長さ当たりの前記繊維束の質量と、該繊維束の延伸条件と、該繊維束の捲縮条件とを予め定めて、該繊維束に存在する繊維の本数と、該繊維束の坪量とを決定する、前記<24>に記載の清掃用物品の製造方法。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
〔実施例1〕
以下に示す第1繊維及び第2繊維を用いて、図1に示す清掃用物品を製造した。詳細には、第1繊維束として、繊度が8.8dtexの芯鞘繊維(芯材:PET製、鞘材:PE製、芯材:鞘材=50:50)のトウ(坪量230g/m2)を用い、芯材は、着色剤として顔料のSolvent Red 207を0.12質量%含むものとした。また、第2繊維束として、繊度が2.2dtexの芯鞘繊維(芯材:PET製、鞘材:PE製、芯材:鞘材=50:50)のトウ(坪量230g/m2)を用い、芯材は、上述の着色剤を0.35質量%含むものとした。第1繊維及び第2繊維は、吸塵薬剤として流動パラフィンを各繊維に対して5質量%塗工した。基材シートは、PE及びPETの複合繊維のサーマルボンド不織布(坪量30g/m2)とした。
第1繊維及び第2繊維の各繊維束を各構成繊維どうしが実質的に混ざり合うことなくランダムに基材シートの一方の面に配置したものを2組作製し、次いで各基材シートが相対するようにこれらを接合することで、実施例1の清掃用物品を製造した。つまり、本実施例の清掃用物品は、図2に示すように、第1繊維及び第2繊維の繊維束を外面に配置して、その後開繊して製造されたものである。各繊維は延伸処理及び捲縮処理が施されているものである。第1繊維束の質量と第2繊維束の質量との比は、第1繊維束:第2繊維束=15:85とした。このようにして得られた清掃用物品は、その構成繊維である第1繊維及び第2繊維が実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されているものであった。
〔実施例2〕
第1繊維束の質量と第2繊維束の質量との比を、第1繊維束:第2繊維束=30:70としたほかは、実施例1と同様に清掃用物品を製造した。このようにして得られた清掃用物品は、その構成繊維である第1繊維及び第2繊維が実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されているものであった。
〔実施例3〕
第1繊維束の質量と第2繊維束の質量との比を、第1繊維束:第2繊維束=50:50としたほかは、実施例1と同様に清掃用物品を製造した。このようにして得られた清掃用物品は、その構成繊維である第1繊維及び第2繊維が実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されているものであった。
〔実施例4〕
第1繊維束の質量と第2繊維束の質量との比を、第1繊維束:第2繊維束=70:30としたほかは、実施例1と同様に清掃用物品を製造した。このようにして得られた清掃用物品は、その構成繊維である第1繊維及び第2繊維が実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されているものであった。
〔実施例5〕
第1繊維束の質量と第2繊維束の質量との比を、第1繊維束:第2繊維束=85:15としたほかは、実施例1と同様に清掃用物品を製造した。このようにして得られた清掃用物品は、その構成繊維である第1繊維及び第2繊維が実質的に混ざり合うことなくランダムに配置されているものであった。
〔比較例1〕
第1繊維束の質量と第2繊維束の質量との比を、第1繊維束:第2繊維束=0:100としたほかは、実施例1と同様に清掃用物品を製造した。本比較例の清掃用物品は、各面が第2繊維束のみからなるものであった。
〔比較例2〕
第1繊維束の質量と第2繊維束の質量との比を、第1繊維束:第2繊維束=100:0としたほかは、実施例1と同様に清掃用物品を製造した。本比較例の清掃用物品は、各面が第1繊維束のみからなるものであった。
〔微粒子及び微細ダスト捕集性能の評価〕
微粒子及び微細ダスト捕集性能の評価は、以下のように行った。詳細には、ポリエチレン製の袋(生産日本社製ユニパックL-4、寸法480×340mm)に、JIS Z 8901に規定される試験用粉体8種(モデル微粒子ダスト)と、コットンリンタ(モデル繊維ほこり)とを50質量%ずつ混合したモデルダストを5g投入した。モデルダストを投入した袋の中に、実施例又は比較例の清掃用物品を投入して袋内に空気を入れ膨らませた状態で密閉する。密閉状態を保ったまま袋を両手で支え持ち、清掃用物品全体にモデルダストがふりかかるように、約50cmストロークでランダムに50回振った。その後、袋から取り出した清掃用物品を「投入後における清掃用物品」とし、この質量と、使用前(投入前)の清掃用物品の質量とから、清掃用物品の質量変化(g)を測定して、以下の式から各実施例又は比較例の微粒子及び微細ダスト捕集率(%)を算出した。ダスト捕集率は独立して2回算出し、その平均値を結果として以下の表1に示した。
清掃用物品の質量変化(g)=[投入後における清掃用物品の質量(g)]-[投入前における清掃用物品の質量(g)]
微粒子及び微細ダスト捕集率(%)=[実施例又は比較例の清掃用物品の質量変化(g)]/[比較例1における清掃用物品の質量変化(g)]×100
〔塊状の繊維ほこりの捕集性能の評価〕
塊状の繊維ほこりの捕集性能の評価は、以下のように行った。THE BUG SHOP/GLO BUG YARN(長繊維)を約5mmにカットした後に、該繊維を平均質量0.015g且つ平均直径約10mmとなるように人手でほぐして略球状の繊維塊を形成し、これを塊状のモデル繊維ほこりとした(いか、単に「モデルほこり」ともいう。)。このモデルほこりを寸法30cm×30cmの化粧板の中央域に1個静置した。
実施例又は比較例の清掃用物品に把手30を装着して、該把手を評価員が持った状態で、モデルほこり上に該清掃用物品を静置した。その後、前記化粧板に対して、約2~4N(平均約2.5N)の清拭圧力になるようコントロールして左右方向15cmストロークで5往復させて清拭した。清掃用物品にモデル繊維ほこりが付着しない場合は、評価を終了し、以後の評価を行わない。
モデルほこりが付着した清掃用物品に対して、評価員が把手30を持ったまま清掃実施後の清掃用物品を上下方向15cmストローク0.5秒/1回の条件で100回振って、モデルほこりが落下するまでの回数(回)を測定した。なお、モデルほこりが100回振った後でも落下しないときは、評価回数を100とした。繊維塊が落下するまでの回数は独立して10回測定し、その平均値を結果として以下の表1に示した。なお、繊維塊が落下するまでの回数が多いほど、塊状の繊維ほこりの捕集性能、すなわち繊維ほこりの保持性能が高いものである。
表1に示すように、各実施例の清掃用物品は、各比較例と比較して、土ほこりに相当する微粒子及び微細な繊維ほこりが混合されたモデルダストの捕集性と、塊状の繊維ほこりなどの柔軟性のある大きなごみの捕集性とが両立できていることが判る。したがって、本発明の清掃用物品は、土ほこり等の微粒子及び微細な繊維ほこりの捕集性に優れているとともに、塊状の繊維ほこりなどの柔軟性があるごみの捕集性にも優れたものである。