JP7184726B2 - 静電チャックの製造方法、および、複合部材の製造方法 - Google Patents

静電チャックの製造方法、および、複合部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複合部材の製造方法に関する。
従来から、熱膨張率が異なる複数の部材を接合部材によって接合する複合部材が知られている。例えば、特許文献1には、アルミナから形成されている部材と金属部材をシリコーンシートによって接合した複合部材が開示されている。
特開2017-112298号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術によっても、部材間の接合強度を確保しつつ、加工性を向上する技術については、なお、改善の余地があった。具体的には、特許文献1に記載のシリコーンシートは、部材を接合するための粘着力を有するように半硬化状態となっている。このため、シリコーンシートに、例えば、貫通孔を形成するなどの加工を行うとき、シリコーンシートが変形し、加工しにくい。一方、硬化済みのシリコーンシートでは、加工はしやすいが、粘着力が低くなるため、部材間の接合強度が低下する。
本発明は、複合部材の製造方法において、部材間の接合強度を確保しつつ、加工性を向上する技術を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、貫通孔および有底孔の少なくとも1つの孔を有する第1部材と、前記孔と連通する貫通孔を有し、エラストマーにより形成されたシート部材と、前記シート部材を介して前記第1部材と接合される第2部材と、を有する複合部材の製造方法を提供する。複合部材の製造方法は、前記孔を有する前記第1部材と、前記シート部材と、前記第2部材を準備する準備工程と、前記シート部材に前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記シート部材の一方の面をプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、前記貫通孔形成工程および前記第1プラズマ処理工程の後、前記第1部材の前記孔と、前記シート部材の前記貫通孔とが連通し、かつ、前記第1部材と前記シート部材の一方の面とが接触するように、前記第1部材と前記シート部材とを接合する第1接合工程と、前記第2部材と前記シート部材とを接合する第2接合工程と、を備える。
この構成によれば、貫通孔形成工程において、エラストマーで形成されているシート部材に貫通孔を形成するため、半硬化状態のシート状の接合部材に貫通孔を形成する場合と比較して、貫通孔を容易に形成することができる。また、シート部材をプラズマ処理することによって、第1部材と接合するための粘着力をシート部材に発生させることができるため、シート部材と第1部材との接合強度を確保しつつ、加工性を向上することができる。また、第1接合工程において、エラストマーで形成されたシート部材が第1部材と接触するため、半硬化状態のシート状の接合部材を第1部材に接触させる場合と比較して、第1部材との接触によるシート部材の変形が抑制される。これにより、複合部材が静電チャックなどの発熱部材である場合、シート部材の厚みのばらつきによる均熱性の低下を抑制することができる。
(2)上記形態の複合部材の製造方法において、前記シート部材は、シリコーン系材料によって形成されており、前記複合部材の製造方法は、さらに、前記第1接合工程の前に、前記第1部材のうち、前記シート部材と接合される面に対して、プラズマを用いて、シラン化合物のコーティング層を形成するコーティング工程を備えてもよい。この構成によれば、コーティング工程において、第1部材には、プラズマによって、シリコーン系材料との親和性が高いシラン化合物のコーティング層が形成される。プラズマを用いてコーティング層を形成すると、プラズマ中の高エネルギー分子により、第1部材に付着している油汚れなどの接合阻害物質が分解および除去されるとともに、ち密なコーティング層が形成される。これにより、シート部材と第1部材との接合強度を向上することができる。
(3)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、前記第1部材として、前記シート部材と接合される面の算術平均粗さRaが0.4μm以下の前記第1部材を準備してもよい。この構成によれば、第1部材のシート部材と接合する面は比較的平坦であるため、半硬化状態のシート状の接合部材よりも硬いシート部材との接合面積は、凹凸が大きい場合に比べ大きくなる。凹凸が大きい場合、比較的硬いシート部材は、第1部材の凹凸に追随できないため、凹部の奥において接合できず、実質的な接合面積が小さくなるためである。これにより、第1部材のシート部材と接合する面の凹凸が小さいと、実質的な接合面積が大きくなるため、シート部材と第1部材との接合強度をさらに向上することができる。また、シート部材と第1部材とが接合する面内におけるシート部材と第1部材との間の隙間のばらつきが、凹凸が大きい場合に比べ小さくなるため、複合部材が発熱部材である場合、第1部材と第2部材との間での伝熱の面内ばらつきが小さくなる。これにより、均熱性の低下を抑制することができる。
(4)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、前記シート部材として、プラズマ処理されると変色する前記シート部材を準備し、前記複合部材の製造方法は、さらに、前記第1プラズマ処理工程の後であって前記第1接合工程の前に、前記シート部材の変色の状態を確認する確認工程を備えてもよい。この構成によれば、シート部材は、プラズマ処理によって変色するため、確認工程において、シート部材の変色の状態を確認することで、プラズマ処理が行われた部分を容易に見つけることができる。これにより、シート部材の一方の面にまんべんなくプラズマ処理を施すことができるため、第1接合工程において、シート部材と第1部材とを均一に接合することができる。また、シート部材と第1部材とを均一に接合することができるため、複合部材が発熱部材である場合、第1部材との第2部材との間での伝熱の面内ばらつきが小さくなる。これにより、均熱性の低下を抑制することができる。
(5)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、前記シート部材として、粘度が2000Pa・s以上の前記シート部材を準備してもよい。この構成によれば、シート部材は、2000Pa・s以上の粘度を有しているため、貫通孔形成工程での貫通孔の形成や第1接合工程での第1部材との接触によって、変形しにくい。また、例えば、シート部材の表面を保護するカバーフィルムがシート部材に設けられている場合、カバーフィルムをシート部材から剥離するときにシート部材が変形しにくくなる。これらにより、変形によるシート部材の厚みのばらつきを抑制することができるため、第1接合工程において、シート部材と第1部材とを均一に接合することができる。また、シート部材と第1部材とを均一に接合することができるため、複合部材が発熱部材である場合、均熱性の低下を抑制することができる。
(6)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、前記シート部材として、傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離が20mm以上の前記シート部材を準備してもよい。この構成によれば、シート部材の表面は、傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離が20mm以上となるべたつきを有している。すなわち、シート部材の粘着力は、比較的弱い。これにより、例えば、シート部材の表面を保護するカバーフィルムがシート部材に設けられている場合、カバーフィルムをシート部材から容易に剥離することができるため、フィルムを剥離するときのシート部材の変形を抑制することができる。したがって、第1接合工程において、シート部材と第1部材とを均一に接合することができる。また、シート部材と第1部材とを均一に接合することができるため、複合部材が発熱部材である場合、均熱性の低下を抑制することができる。
(7)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、前記第1部材として、発熱体が設けられているセラミック部材と、前記セラミック部材の一方の面側に形成されている断熱層と、を有する前記第1部材を準備し、前記第1接合工程において、前記第1部材の前記断熱層の面と前記シート部材の一方の面とが接触するように、前記第1部材と前記シート部材とを接合してもよい。この構成によれば、発熱体が設けられている複合部材の使用時に、発熱体によって発生する熱が断熱層によってシート部材に伝わりにくくなる。これにより、シート部材が熱によって劣化することを抑制することができる。また、シート部材が第1部材で発生する熱によって劣化しにくくなるため、複合部材を高温条件下で使用することができる。
(8)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、前記第1部材と前記第2部材に接合しているときの室温におけるせん断歪みε(%)が下記の式を満たす前記シート部材を準備してもよい。
Figure 0007184726000001
ただし、dは、前記シート部材の半径(mm)、Trは、室温(℃)、Tcは前記第1部材と前記第2部材との接合温度(℃)、α1は、前記第1部材の熱膨張係数(1/℃)、α2は、前記第2部材の熱膨張係数(1/℃)、tは、前記シート部材の厚み(mm)である。この構成によれば、シート部材のせん断歪みが上記の式を満たしているため、複合部材の温度が第1部材および第2部材とシート部材とを接合するときの温度から室温まで低下しても、第1部材および第2部材からシート部材が剥離することを抑制することができる。これにより、複合部材の破損を抑制することができる。
(9)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、室温における伸びΔ(%)が下記の式を満たす前記シート部材を準備してもよい。
Figure 0007184726000002
ただし、tは、前記シート部材の厚み(mm)、dは、前記シート部材の半径(mm)、Trは、室温(℃)、Tcは前記第1部材と前記第2部材との接合温度(℃)、α1は、前記第1部材の熱膨張係数(1/℃)、α2は、前記第2部材の熱膨張係数(1/℃)である。この構成によれば、シート部材の室温における伸びが上記の式を満たしているため、複合部材の温度が第1部材および第2部材とシート部材とを接合するときの温度から室温まで低下しても、第1部材および第2部材からシート部材が剥離することを抑制することができる。これにより、複合部材の破損を抑制することができる。
(10)上記形態の複合部材の製造方法は、前記第2接合工程の前に、前記シート部材の他方の面をプラズマ処理する第2プラズマ処理工程を備えてもよい。これにより、シート部材に、貫通孔を容易に形成しつつ、第2部材と接合するための粘着力を発生させることができる。したがって、シート部材と第2部材との接合強度を確保することができる。
(11)上記形態の複合部材の製造方法において、前記準備工程において、前記シート部材として、第1シート部材と第2シート部材を準備し、前記貫通孔形成工程において、前記第1シート部材に前記貫通孔としての第1貫通孔を形成するとともに、前記第2シート部材に前記貫通孔としての第2貫通孔を形成し、前記第1プラズマ処理工程において、前記シート部材の一方の面としての前記第1シート部材の一方の面をプラズマ処理するとともに、前記第2シート部材の一方の面をプラズマ処理し、前記第1接合工程において、前記第1部材と前記第1シート部材とを接合し、前記第2接合工程において、前記第1部材と前記第2シート部材の一方の面とが接触するように、前記第2部材と前記第2シート部材とを接合し、前記複合部材の製造方法は、さらに、前記第1シート部材の前記第1貫通孔と前記第2シート部材の前記第2貫通孔とが連通し、かつ、前記第1シート部材の他方の面と前記第2シート部材の他方の面とが接触するように、前記第1シート部材と前記第2シート部材とを接合する第3接合工程を備えていてもよい。この構成によれば、第1部材と第2部材を接合するシート部材は、2つのシート部材から形成されている。2つのシート部材は、いずれもエラストマーで形成されており、貫通孔を容易に形成することができるとともに、プラズマ処理することによって、第1部材または第2部材との接合のための粘着力を発生させることができる。これにより、接合強度を確保しつつ、加工性を向上することができる。また、第1部材または第2部材との接触において、変形が抑制される。これにより、複合部材が静電チャックなどの発熱部材である場合、シート部材の厚みのばらつきによる均熱性の低下を抑制することができる。
第1実施形態の静電チャックの外観を示す斜視図である。 第1実施形態の静電チャックの断面図である。 第1実施形態の静電チャックの製造方法を説明する第1模式図である。 第1実施形態の静電チャックの製造方法を説明する第2模式図である。 第1シート部材の温度変化による変形を説明するための説明図である。 第1シート部材の加工性に関する評価試験の結果を説明する図である。 接合体の評価試験結果を示す第1図である。 接合体の評価試験結果を示す第2図である。 比較例の複合部材の製造方法を説明する第1図である。 比較例の複合部材の製造方法を説明する第2図である。 第2実施形態の静電チャックの断面図である。 第2実施形態の静電チャックの製造方法を説明する模式図である。 第3実施形態の静電チャックの断面図である。 第3実施形態の静電チャックの製造方法を説明する第1模式図である。 第3実施形態の静電チャックの製造方法を説明する第2模式図である。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の静電チャック1の外観を示す斜視図である。第1実施形態の複合部材としての静電チャック1は、例えば、ウェハWなどの対象物を静電引力により吸着することで保持しつつ加熱する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内で使用される。静電チャック1は、セラミック部材10と、金属部材20と、第1シート部材30を備える。セラミック部材10と、金属部材20と、第1シート部材30のそれぞれは、特許請求の範囲に記載の「第1部材」と、「第2部材」と、「シート部材」のそれぞれに該当する。静電チャック1では、z軸方向(上下方向)に、セラミック部材10、第1シート部材30、金属部材20の順に積層されている。なお、後述する静電チャック1の製造方法は、セラミック部材10と金属部材20とを接合した複合部材に限定されず、熱膨張率差が異なるものを接合する必要がある分野に適用できる。例えば、サーマルインターフェースマテリアルを介した放熱部材(ヒートシンク)と、半導体デバイスならびに半導体デバイス用パッケージとを接合した複合部材や、半導体デバイス用封止材における光デバイス用封止材とパッケージとを接合した複合部材、アンダーフィル材料を介した半導体デバイスと半導体デバイス用パッケージとを接合した複合部材などにも適用することができる。
セラミック部材10は、略円形形状の板状部材であり、例えば、アルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックにより形成されている。セラミック部材10の直径は、例えば、50mm~500mm程度、通常は、200mm~350mm程度であり、厚さは、例えば、1mm~10mm程度である。
図2は、第1実施形態の静電チャック1の断面図である。セラミック部材10の内部には、チャック電極11と、ヒータ電極12が配置されている。チャック電極11は、例えば、タングステンやモリブデンなどの導電性材料により形成されている。チャック電極11に図示しない電源から電圧が印加されると静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミック部材10の載置面13に吸着固定される。ヒータ電極12は、チャック電極11と同様に、例えば、タングステンやモリブデンなどの導電性材料により形成されている。ヒータ電極12には、図示しない電源に接続する電極端子14が接続されている。ヒータ電極12に電源からの電圧が印加されると熱が発生し、この熱によって載置面13に載置されているウェハWが加熱される。ヒータ電極11は、特許請求の範囲に記載の「発熱体」に該当する。セラミック部材10には、電極端子14が挿入される電極孔15と、図示しないリフトピンが挿通されるリフトピン孔16が形成されている。セラミック部材10の載置面13とは反対側の裏面は、後述する第1シート部材30を介して金属部材20と接合される。電極孔15とリフトピン孔16のそれぞれは、特許請求の範囲の「有底孔」と「貫通孔」のそれぞれに該当する。
本実施形態では、セラミック部材10の載置面13と反対側の裏面には、シラン化合物のコーティング層17が設けられている。コーティング層17は、ヘキサメチルジシラザンやポリシラザンなどのシラザン類、もしくは、シリル化剤により形成されている。本実施形態では、コーティング層17は、プラズマ中に噴霧することでプラズマイオン化されたヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、クロロトリメチルシランなどの各種シリル化剤をセラミック部材10の裏面に打ち付けるプラズマコーティングによって形成される。本実施形態では、コーティング層17の表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下となっている。
金属部材20は、例えば、合金番号A6061PとされるAl-Mg-Si系のアルミニウム合金により形成される板状部材であって、セラミック部材10より径が大きい略円形形状の部材である。金属部材20の直径は、例えば、220mm~550mm程度、通常は220mm~350mmであり、厚さは、例えば、20mm~40mm程度である。
金属部材20の内部には、複数の冷媒流路21と、z軸方向に金属部材20を貫通する貫通孔22、23が形成されている。xy平面に沿うように形成される冷媒流路21に冷媒、例えば、フッ素系不活性液体や水などが流されると、金属部材20が冷却される。金属部材20が冷却されると、第1シート部材30を介した金属部材20とセラミック部材10との間の伝熱によりセラミック部材10が冷却され、セラミック部材10の載置面13に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。貫通孔22には、電極端子14が挿通され、貫通孔23には、リフトピンが挿通される。本実施形態では、金属部材20のセラミック部材10側の表面には、セラミック部材10の裏面と同様に、シラン化合物のコーティング層24が形成される。本実施形態では、コーティング層24の表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下となっている。
第1シート部材30は、セラミック部材10と同じ大きさの略円形形状のシート状の部材である。本実施形態では、第1シート部材30は、付加硬化型のシリコーン系材料により形成される。これにより、第1シート部材30が硬化するとき揮発性の副生成物が発生しないため、気泡が生じにくく、セラミック部材10と金属部材20との間での熱の伝達が均一になり、ウェハWの温度分布を均一にすることができる。第1シート部材30の表面31は、金属部材20に接合され、第1シート部材30の表面32は、セラミック部材10に接合される。第1シート部材30には、z軸方向に第1シート部材30を貫通する貫通孔33、34が形成される。貫通孔33には、電極端子14が挿通され、貫通孔34には、リフトピンが挿通される。
本実施形態では、第1シート部材30には、酸化モリブデン(IV)の微粒子が含まれている。酸化モリブデン(IV)の微粒子を含む第1シート部材30は、プラズマが照射されると照射された部分が変色するため、プラズマが照射された部分とされていない部分とを目視で判別することができる。なお、本実施形態では、第1シート部材30は、酸化モリブデン(IV)の微粒子を含むとしたが、これに限定されない。酸化モリブデン(IV)の微粒子の代わりに、無機系材料の微粒子として、Mo、W、Sn、V、Ce、TeおよびBiの金属酸化物の微粒子が含まれていてもよい。無機系材料としてより好ましいのは、酸化モリブデン(VI)、酸化タングステン(VI)、酸化スズ(IV)、酸化バナジウム(II)、酸化バナジウム(III)、酸化バナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、酸化セリウム(IV)、酸化テルル(IV)、酸化ビスマス(III)、炭酸酸化ビスマス(III)、および、酸化硫酸バナジウム(IV)であり、第1シート部材30の原料となるペースト材料に分散、配合しやすく、かつ、ペースト材料の硬化反応に影響を与えないものが好ましい。また、酸化モリブデン(IV)の微粒子の代わりに、有機系材料として、アゾ系色素、メチン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、キサンテン系色素、および、トリフェニルメタン系色素などが含まれていてもよい。有機系材料としてより好ましいのは、ペースト材料の硬化反応を阻害するおそれがある窒素原子を含まない色素であり、具体的には、メチン系色素、アントラキノン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素の内、窒素原子を含まない色素が挙げられる。
また、第1シート部材30には、カーボンブラックが含まれている。これにより、第1シート部材30は、耐熱性が向上するとともに、高温で生じるラジカル成分を捕捉し失活させることができるため、ラジカルによる分解の連鎖反応を抑制できる。なお、カーボンブラックの他に、酸化鉄、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェンの少なくとも1つが含まれていてもよい。本実施形態での第1シート部材30の特性の詳細は、後述する。
図3は、第1実施形態の静電チャック1の製造方法を説明する第1模式図である。図4は、第1実施形態の静電チャック1の製造方法を説明する第2模式図である。ここでは、静電チャック1の製造方法について説明する。
最初に、準備工程として、セラミック部材10と、金属部材20と、第1シート部材30を準備する(図3(a)参照)。準備されるセラミック部材10には、電極孔15とリフトピン孔16が形成されており、内部に、チャック電極11と、ヒータ電極12が配置されている。金属部材20には、2つの貫通孔22、23が形成されており、内部に、冷媒流路21が形成されている。
準備工程において準備される第1シート部材30の製造方法、および、特性について説明する。本実施形態では、第1シート部材30は、信越化学製付加硬化型シリコーン接着剤KE-1854に、酸化モリブデン(IV)の微粒子と、カーボンブラックを混合したペースト材料を用いて、製造する。具体的には、最初に、付加硬化型シリコーン接着剤KE-1854と、酸化モリブデン(IV)の微粒子と、カーボンブラックをプラネタリーミキサーによって混練し、ペースト材料を作製する。次に、ペースト材料をバーコーターにて0.5mmの厚さで平滑なカバーフィルム上に塗布し、露出している側をカバーフィルムで覆った後、120℃で2時間加熱し、硬化することで、厚さ0.5mmの硬化済みの第1シート部材30を作製する。このとき、第1シート部材30の表面31および表面32には、それぞれの面を保護するポリエチレンテレフタレート(PET)製のカバーフィルム35、36の表面形状が転写されるため、表面31および表面32は、比較的平滑な形状となる。なお、第1シート部材30の厚みは、熱伝導率や熱応力の緩和を考慮し、適宜、設計することが可能である。また、第1シート部材30の製造方法において、付加硬化型シリコーン接着剤KE-1854と酸化モリブデン(IV)の微粒子とカーボンブラックを混練する方法は、プラネタリーミキサーに限定されず、例えば、ロールミルなどの公知の混錬機、撹拌機、混合機を用いてもよい。
準備工程の後、貫通孔形成工程として、準備工程において製造した第1シート部材30に貫通孔33、34を形成する(図3(b)参照)。本実施形態では、貫通孔形成工程の後に、次のプラズマ処理工程の前に、コーティング工程として、金属部材20のセラミック部材10側の表面に、プラズマを用いて、シラン化合物のコーティング層24を形成する。
貫通孔形成工程の後、プラズマ処理工程として、第1シート部材30の表面31にプラズマ処理を行う(図3(c)参照)。具体的には、貫通孔33、34が形成された第1シート部材30の表面31からカバーフィルム35を剥がしたのち、表面31上で大気圧プラズマ装置100を走査し(図3(c)の白抜き矢印F11参照)、表面31に大気圧プラズマ処理を行う。これにより、第1シート部材30の表面31に極性基(Si-O、Si-OH、Si-O-Si、C-OH、C-O-C、C=O、O=C-Oなど)が増加すると考えられる。なお、これらの極性基の有無や量は、公知のX線光電子分光法(XPS)により測定可能である。なお、本実施形態では、プラズマ処理の方法として、大気圧プラズマ処理を用いるとしたが、これに限定されない。真空プラズマ処理、コロナ処理、アーク放電処理、火炎処理などであってもよい。このうち、大気圧プラズマ処理や真空プラズマ処理がより好ましく、特に好ましいのが、大気圧プラズマ処理である。これは、真空装置を不要であるため簡便にできることや、大気に含まれる酸素がプラズマ処理される面に付着することによって、処理面の極性が高まりやすく、高い接合性が得られるためである。また、真空状態を作る必要がないため、設備や生産時間の効率も良いためである。
本実施形態では、プラズマ処理工程の後、確認工程として、第1シート部材30の表面31の全域で第1シート部材30が変色したか否か確認する。第1シート部材30の表面31の全域で変色していない場合、第1シート部材30の表面31の全域が変色するようにプラズマを再照射し、表面31の全域を変色させる(図3(d)参照)。
プラズマ処理工程の後、金属接合工程として、金属部材20と第1シート部材30とを接合する。このとき、金属部材20の貫通孔22と第1シート部材30の貫通孔33、および、金属部材20の貫通孔23と第1シート部材30の貫通孔34とが連通し、かつ、金属部材20のコーティング層24と第1シート部材30の表面31とが接触するようにして、金属部材20と第1シート部材30とを接合する(図3(e)参照)。本実施形態では、金属部材20と第1シート部材30とを接合するとき、真空中で接合することで、接合面における気泡を除去する。これにより、金属部材20と第1シート部材30とは、より強固に接合する。
本実施形態では、金属接合工程の後、次のプラズマ処理工程の前に、コーティング工程として、セラミック部材10の金属部材20側の裏面に、プラズマを用いて、シラン化合物のコーティング層17を形成する。
コーティング工程の後、プラズマ処理工程として、第1シート部材30の表面32にプラズマ処理を行う(図4(a)参照)。具体的には、金属接合工程において金属部材20に接合された第1シート部材30の表面32からカバーフィルム36を剥がしたのち、プラズマ処理工程と同様に、表面32上で大気圧プラズマ装置100を走査し(図4(a)の白抜き矢印F12参照)、表面32に大気圧プラズマ処理を行う。これにより、第1シート部材30の表面32に、表面31と同様に、極性基(Si-O、Si-OH、Si-O-Si、C-OH、C-O-C、C=O、O=C-Oなど)が増加すると考えられる。
本実施形態では、プラズマ処理工程の後、確認工程として、第1シート部材30の表面32の全域で変色したか否かを確認する。第1シート部材30の表面32の全域で変色していない場合は、プラズマ処理工程を繰り返し、第1シート部材30の表面32の全域が変色するようにプラズマを再照射し、表面32の全域を変色させる。
確認工程の後、セラミック接合工程として、セラミック部材10と第1シート部材30とを接合する。具体的には、セラミック部材10の電極孔15と第1シート部材30の貫通孔33、および、セラミック部材10のリフトピン孔16と第1シート部材30の貫通孔34とが連通し、かつ、セラミック部材10のコーティング層17と第1シート部材30の表面32とが接触するようにして、セラミック部材10と第1シート部材30とを接合する(図4(b)の白抜き矢印F13参照)。これにより、静電チャック1が完成する(図4(c)参照)。
次に、本実施形態の第1シート部材30の特性を説明する。本実施形態では、第1シート部材30の室温における伸びΔ(%)は、100%以上である。第1シート部材30は、表面31が金属部材20に接合されつつ、表面32がセラミック部材10に接合されている。このため、セラミック部材10と金属部材20のそれぞれが温度変化により変形すると、第1シート部材30は、セラミック部材10と金属部材20の変形に追従して変形する。ここで、第1シート部材30が、変形によって破断することなく使用できるために、第1シート部材30に少なくとも必要となる室温における伸びΔ(%)の計算方法を説明する。
図5は、温度変化による第1シート部材30の変形を説明するための説明図である。図5(a)は、静電チャック1の初期状態、すなわち、応力がない状態を概略的に示す図であり、例えば、セラミック部材10と金属部材20とを接合温度において接合したときの状態を示す図である。図5(b)は、接合温度から温度が変化した場合の静電チャック1の変形の一例を示す図であり、図5(c)は、図5(b)のA1部の拡大図である。図5(a)および図5(b)は、静電チャック1のxz断面の一部を模式的に示している。
第1シート部材30に対する応力がない状態では、第1シート部材30は、半径dの略円形形状で厚みtの板状部材である(図5(a)参照)。その後、セラミック部材10や金属部材20の温度が変化すると、第1シート部材30が変形する。例えば、図示しないウェハを高温で処理する際などにセラミック部材10の温度が上昇することにより、セラミック部材10は膨張し、半径がd1になる(図5(b)参照)。一方、金属部材20は冷却されることにより収縮し、半径がd2になる(図5(b)参照)。第1シート部材30は、表面31が金属部材20と接合され、表面32がセラミック部材10と接合されているため、セラミック部材10側の面が半径d1になり、金属部材20側の面が半径d2になる(図5(b)参照)。これらのことから、本実施形態において、セラミック部材10と金属部材20を接合している第1シート部材30の室温における伸びΔ(-)は、図5(c)に示す直角三角形の斜辺Hの長さhから第1シート部材30の厚みtを引いた値を、第1シート部材30の厚みtで割った値となる。具体的には、第1シート部材30に少なくとも必要となる室温における伸びΔ(%)は、以下の式(1)を用いて算出される。
Figure 0007184726000003
・・・(1)
ただし、tは、第1シート部材30の厚み(mm)、dは、第1シート部材30の半径(mm)、Trは、室温(℃)、Tcはセラミック部材10と金属部材20との接合温度(℃)、α1は、セラミック部材10の熱膨張係数(1/℃)、α2は、金属部材20の熱膨張係数(1/℃)である。本実施形態では、式(1)を用いて算出される室温における第1シート部材30の伸びΔ(%)は、100%以上となる。
また、本実施形態では、第1シート部材30のヤング率は、10MPa以下である。第1シート部材30のショアA硬度は70以下であり、剛性率は4MPa以下である。第1シート部材30は、上述した室温における伸びΔ(%)の特性に加えてこれらの特性を有しているため、セラミック部材10と金属部材20の熱膨張係数の違いによって静電チャック1において発生する熱応力を十分に緩和できる。これにより、例えば、直径300mmを超えるサイズであっても、セラミック部材10と金属部材20との剥離が抑制され、静電チャック1の平面度を維持することができる。
本実施形態では、第1シート部材30の粘度は、2000Pa・s以上である。第1シート部材30の粘度η(Pa・s)は、以下の式(2)を用いて算出される。
Figure 0007184726000004
・・・(2)
第1シート部材30の粘度の測定は、室温(23℃)の環境下において、次のように行われる。最初に、測定部分の直径が8mmの平行平板の一方に、第1シート部材30を貼り、動的粘弾性測定装置(ARESレオメータ)にセットする。次に、上方から徐々に他方の平行平板を下ろし、10gの荷重になったところで平行平板の移動を停止する。その後、所定の歪み(0.1)、および、所定の角速度ω(=6.28rad/s)にて、周期的に一方の平行平板を回転することで、貯蔵剛性率G1(Pa)と損失剛性率G2(Pa)を測定する。測定した貯蔵剛性率G1(Pa)と損失剛性率G2(Pa)を上記の式(2)に代入し、第1シート部材30の粘度η(Pa・s)を算出する。
図6は、第1シート部材30の加工性に関する評価試験の結果を説明する図である。第1シート部材30を用いて静電チャック1を製造するとき、本実施形態の第1シート部材30では、プラズマ処理工程の前に、カバーフィルム35、36が剥離される。また、貫通孔形成工程において、2つの貫通孔33、34が形成される。図6は、これらの加工を行ったときの第1シート部材30の状態について、異なる粘度ごとにその結果をまとめたものである。
図6に示すように、第1シート部材30の粘度が1000Pa・sの場合、カバーフィルム35、36を剥離することが全くできなかった。また、貫通孔33、34を形成するとき、第1シート部材30は、変形によってへこむため、貫通孔33、34を形成することはできなかった。
第1シート部材30の粘度が2000Pa・sの場合、一部で伸びは確認されたものの大部分でカバーフィルム35、36を剥離することができた。また、貫通孔33、34を形成するときの第1シート部材30の変形は小さいため、貫通孔33、34を形成することができ、厚みばらつきは増加しなかった。また、第1シート部材30の粘度が5000Pa・sの場合、第1シート部材30からカバーフィルム35、36を剥離することができた。このとき、カバーフィルム35、36の剥離によって第1シート部材30が伸びることはなかった。また、貫通孔33、34を形成するときの第1シート部材30の変形は小さいため、貫通孔33、34を形成することができ、厚みばらつきは増加しなかった。第1シート部材30の粘度が11000Pa・sの場合、第1シート部材30からカバーフィルム35、36を容易に剥離することができた。このとき、カバーフィルム35、36の剥離によって第1シート部材30が伸びることはなかった。また、貫通孔33、34を形成するときに第1シート部材30に凹みなどの変形は生じず、貫通孔33、34を形成することができた。
このように、第1シート部材30の粘度を2000Pa・s以上とすることで、第1シート部材30は、変形しにくくなり、カバーフィルム35、36の剥離性が向上することが明らかとなった。また、第1シート部材30の粘度を5000Pa・s以上とすることで、第1シート部材30は、さらに変形しにくくなるため、カバーフィルム35、36の剥離性がさらに向上することが明らかとなった。このように、第1シート部材30の粘度を2000Pa・s以上とすることで、カバーフィルム35、36を剥離するとき、カバーフィルム35、36の引っ張りによって第1シート部材30の厚みにばらつきが発生することが抑制される。これにより、セラミック部材10と金属部材20のそれぞれと均一に接合することができる。
また、本実施形態の第1シート部材30の表面31、32の粘着力は、傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離によって評価される。傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離は、次の方法によって測定される。具体的には、テスター産業株式会社製ローリングボールタックテスター(ゲート数:1か所、傾斜面:6.5インチ、角度:21度30分、寸法:210mm×70mm×80mm)を用いて、第1シート部材30の表面31、32上に、直径7/16インチのスチールボールを転がす。その転がった距離を、第1シート部材30のボールの転がり距離とした。なお、スチールボールは、表面をアセトンで拭いたものを用いた。第1シート部材30の傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離は、20mm以上となっている。すなわち、第1シート部材30の表面のべたつきは、比較的弱くなっている。これにより、カバーフィルム35、36を第1シート部材30から剥離しやすくなるため、カバーフィルム35、36を剥離するときに第1シート部材30が伸びて厚みがばらつきにくくなる。したがって、第1シート部材30は、セラミック部材10と金属部材20とを均一に接合することができる。
本実施形態では、セラミック部材10と金属部材20を接合している第1シート部材30のせん断歪みは、40%以上となっている。第1シート部材30のせん断歪みは、上述した静電チャック1の製造方法において、セラミック接合工程の後に測定する。第1シート部材30は、図5で説明したように、セラミック部材10と金属部材20のそれぞれが温度変化により変形すると、それらの変形に追従して変形するため、歪みが生じる。セラミック部材10と金属部材20とが図5で説明したように変形する場合、セラミック部材10と金属部材20を接合している第1シート部材30のせん断歪みε(%)は、図5(c)に示す直角三角形から、式(3)で表すことができる。
ε=端部のずれ/第1シート部材30の厚さ×100=|d1-d2|/t×100
・・・(3)
式(3)より、セラミック部材10と金属部材20に接合している第1シート部材30のせん断歪みε(%)は、以下の式(4)によって算出される。
Figure 0007184726000005
・・・(4)
ただし、dは、第1シート部材30の半径(mm)、Trは、室温(℃)、Tcはセラミック部材10と金属部材20との接合温度(℃)、α1は、セラミック部材10の熱膨張係数(1/℃)、α2は、金属部材20の熱膨張係数(1/℃)、tは、第1シート部材30の厚み(mm)である。ここで、室温は、例えば、22±5℃(17~27℃)である。また、セラミック部材10と金属部材20との接合温度Tc(℃)は、セラミック部材10を構成する材料、および、金属部材20を構成する材料により決まる。本実施形態では、セラミック部材10と金属部材20に接合している第1シート部材30のせん断歪みε(%)が40%以上となることで、セラミック部材10と金属部材20の熱膨張係数の違いによって静電チャック1において発生する熱応力を十分に緩和できる。
上述したように、本実施形態の第1シート部材30は、下記の特性を満たしている。静電チャック1の製造方法では、セラミック部材10と金属部材20を接合しているときのせん断歪みを除く特性については、準備工程において測定することが可能である。また、せん断歪みについては、セラミック接合工程の後に測定することが可能である。
室温における伸び:100%以上
ヤング率:10MPa以下
ショアA硬度:70以下
剛性率:4MPa以下
粘度:2000Pa・s以上
表面の粘着力(傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離):20mm以上
セラミック部材10と金属部材20を接合しているときのせん断歪み:40%以上
次に、本実施形態の静電チャック1について、プラズマ処理された第1シート部材30の効果を説明する評価試験の内容およびその評価試験の結果を説明する。本評価試験は、2つの部材を接合させた接合体における接合性を評価した試験であって、2つの部材の少なくとも1つは、シリコーンにより形成されている部材である。
図7は、接合体の評価試験結果を示す第1図である。図8は、接合体の評価試験結果を示す第2図である。本評価試験では、図7および図8に示すように、15個の接合体をサンプルとして作製した。サンプル1~15のそれぞれは、被着体Aと、被着体Bとから構成されている。被着体Aは、カーボンブラックを含むシリコーンシート(以下、「炭素含有シリコーンシート」という)、または、カーボンブラックを含まないシリコーンシート(以下、「炭素なしシリコーンシート」という)のいずれかである。被着体Bは、アルミ板、アルミナセラミック、炭素含有シリコーンシート、または、炭素なしシリコーンシートのいずれかである。
本評価試験では、サンプル1~10、12~14(サンプル11、15は、図8に示すように、大気圧プラズマ処理なし)を製造するときの大気圧プラズマ処理は、以下の条件で行った。
装置:日本プラズマトリート製大気圧プラズマ装置(ユニットは、プラズマジェットノズルRD1004と、ジェネレーターFG5001からなる。)
ドライエアー流量:50NL/分
放電電圧:20kV
処理対象とヘッドとの距離:10mm
掃引速度:10m/分
また、サンプル5におけるコーティング層の形成は、日本プラズマトリート製PAD10を用いて形成した。具体的には、空気10に対し窒素1の割合で混合したガスを流速30mL/分でキャリアガスとして使用し、コーティング剤を大気圧プラズマ中に噴霧し、その大気圧プラズマに被着体Bをさらすことでコーティング層を形成した。コーティング剤として、ヘキサメチルジシラザンを用いた。
被着体Aと被着体Bとを接合するとき、被着体Aと被着体Bとを接触させたのち、真空パックし、室温にて10分間放置した。その後、サンプル1~15について、被着体Aと被着体Bとの接合状態を評価した。図7および図8の「評価結果」に示す「◎」、「○」、「△」、および、「×」は、以下の評価結果を示す。
◎:端部を手で引っ張っても剥離せず接合しており、無理に剥離すると被着体Aが破断した。その後、被着体Aを金属製の平板で擦り取ろうとしても、接合面全体において被着体Aが削れるだけで接合界面から剥離できなかった。
○:端部を手で引っ張っても剥離せず接合しており、無理に剥離すると被着体Aが破断した。その後、被着体Aを金属製の平板で擦り取ろうとしたところ、部分的に接合界面から剥離した。
△:端部を手で引っ張っても剥離せず接合していたが、部分的にばらつきがあり、部分的には、接合界面で剥離した。
×:まったく接合しておらず容易に剥がれた。
サンプル1からサンプル4は、大気圧プラズマ処理が施された炭素含有シリコーンシート(被着体A)と、大気圧プラズマ処理が施されたアルミ板(被着体B)との接合体であり、それぞれでアルミ板の表面の算術平均粗さRaが異なっている。サンプル1~サンプル4は、いずれについても、炭素含有シリコーンシートとアルミ板とは接合されている。このうち、アルミ板の表面の算術平均粗さRaが0.4以下のサンプル1、2は、表面の算術平均粗さRaが0.4より大きいサンプル3、4に比べ、強固に接合されることが確認された。アルミ板の表面の算術平均粗さRaが小さく比較的凹凸が小さい場合、比較的硬い炭素含有シリコーンシートは、アルミ板の凹凸に追随できるため、凹部の奥でもアルミ板と接合することができる。これにより、炭素含有シリコーンシートとアルミ板との実質的な接合面積が十分に確保できるため、強固に接合されたと考えられる。
サンプル2とサンプル5とでは、アルミ板にコーティング層(HMDS)が形成されていることが異なっている。コーティング層が形成されているサンプル5は、コーティング層が形成されていないサンプル2に比べ、炭素含有シリコーンシートとアルミ板とが強固に接合されることが確認された。
サンプル6およびサンプル7は、サンプル1~4において、被着体Bをアルミナセラミックに変更したサンプルである。被着体Bがアルミナセラミックの場合でも、大気圧プラズマ処理が施された炭素含有シリコーンシートは、接合することが確認された。
サンプル8は、サンプル2において、被着体Aを炭素なしシリコーンシートに変更したサンプルである。また、サンプル9は、サンプル7において、被着体Aを炭素なしシリコーンシートに変更したサンプルである。サンプル8およびサンプル9のいずれについても、大気圧プラズマ処理が施された炭素なしシリコーンシートと、アルミ板またはアルミナセラミックとは、接合することが確認された。
サンプル10は、サンプル2と異なり、大気圧プラズマ処理が施されていない炭素含有シリコーンシートと、大気圧プラズマ処理が施されているアルミ板との接合体である。サンプル10では、炭素含有シリコーンシートとアルミ板の接合は確認できなかった。また、サンプル11は、炭素含有シリコーンシートおよびアルミ板のそれぞれに、大気圧プラズマ処理を施さなかった場合の接合体であるが、サンプル11でも、炭素含有シリコーンシートとアルミ板の接合は確認できなかった。
サンプル12は、大気圧プラズマ処理が施された2枚の炭素含有シリコーンシートどうしを接合した接合体である。サンプル12では、炭素含有シリコーンシートどうしの接合が確認された。
サンプル13は、大気圧プラズマ処理が施された炭素含有シリコーンシートと、大気圧プラズマ処理が施されていない炭素含有シリコーンシートとの接合した接合体である。また、サンプル14は、大気圧プラズマ処理が施された炭素なしシリコーンシートと、大気圧プラズマ処理が施されていない炭素含有シリコーンシートとの接合した接合体である。サンプル13とサンプル14は、シリコーンシートどうしの接合が確認された。
一方、サンプル12と異なり、大気圧プラズマ処理が施されていない2枚の炭素含有シリコーンシートどうしを接合した接合体であるサンプル15の場合、シリコーンシートどうしの接合は確認されなかった。
図9は、比較例の複合部材の製造方法を説明する第1図である。図10は、比較例の複合部材の製造方法を説明する第2図である。図9および図10は、比較例の複合部材で用いられるシート部材90からカバーフィルム91、92を剥離するときのシート部材90の状態を示している。比較例のシート部材90は、例えば、セラミック部材と金属部材とを接合するための半硬化状態のシリコンゴムシートであって、表面の粘着力が大きい。
比較例の複合部材の製造方法において、シート部材90には、表面を保護するためのカバーフィルム91、92が設けられている(図9(a)参照)。比較例のシート部材90は、表面の粘着力によってカバーフィルム91、92と強く接着されているため、シート部材90から、図9(b)に示すように、白抜き矢印F1の方向にカバーフィルム91を剥離するとき、シート部材90のP1部が剥離されるカバーフィルム91にくっついたままとなる。このため、図9(c)に示すように、シート部材90がよれるおそれがあり、シート部材90が不良となって使用できなくなるおそれがある。
また、比較例の複合部材の製造方法において、貫通孔93が形成されているシート部材90(図10(a)および図10(b)参照)から、カバーフィルム91を剥離する場合がある(図10(c)の白抜き矢印F2参照)。このとき、シート部材90のうち貫通孔93を形成するP2部が剥離されるカバーフィルム91にくっついたままとなるおそれがあり、カバーフィルム91をこれ以上剥離することができなくなる。
以上説明した、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、貫通孔形成工程において、シリコーン系材料により形成されている第1シート部材30に貫通孔33、34を形成するため、半硬化状態のシート状の接合部材に貫通孔を形成する場合と比較して、貫通孔33、34を容易に形成することができる。また、第1シート部材30をプラズマ処理することによって、セラミック部材10および金属部材20と接合するための粘着力を第1シート部材30に発生させることができる。これにより、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30との接合強度を確保しつつ、加工性を向上することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、金属接合工程において、シリコーン系材料により形成されている第1シート部材30がセラミック部材10や金属部材20と接触するため、半硬化状態のシート状の接合部材を他の部材に接触させる場合と比較して、セラミック部材10や金属部材20との接触による第1シート部材30の変形が抑制される。これにより、第1シート部材30の厚みのばらつきによる均熱性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、金属接合工程の前に、金属部材20の第1シート部材30と接合される表面に対して、プラズマを用いて、シラン化合物のコーティング層24を形成する。また、セラミック接合工程の前に、セラミック部材10の第1シート部材30と接合される表面に対して、プラズマを用いて、シラン化合物のコーティング層17を形成する。このように、セラミック部材10と金属部材20には、プラズマによって、シリコーン系材料との親和性が高いシラン化合物のコーティング層17、24が形成される。プラズマを用いてコーティング層17、24を形成すると、プラズマ中の高エネルギー分子により、第1部材に付着している油汚れなどの接合阻害物質が分解および除去されるとともに、ち密なコーティング層24が形成される。これにより、第1シート部材30とセラミック部材10および金属部材20との接合強度を向上することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、セラミック部材10および金属部材20のそれぞれのコーティング層17、24の表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下となっている。このように、コーティング層17、24の表面は比較的平坦であるため、比較的硬い第1シート部材30とセラミック部材10および金属部材20のそれぞれとの接合面積は、実質的に大きくなる。表面の算術平均粗さRaが小さいと、表面の算術平均粗さRaが大きい場合に比べ、第1シート部材30がセラミック部材10および金属部材20のそれぞれの表面の粗さに追随して変形することができるためである。これにより、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30との接合強度をさらに向上することができる。また、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とが接合する面内において、セラミック部材10または金属部材20と第1シート部材30との間の隙間のばらつきが、表面の算術平均粗さRaが大きい場合に比べ小さくなるため、発熱するセラミック部材10と金属部材20との間での伝熱の面内ばらつきが小さくなる。これにより、均熱性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、第1シート部材30には、酸化モリブデン(IV)の微粒子が含まれており、プラズマが照射されると変色するため、プラズマ処理工程の後、確認工程として、第1シート部材30の表面31、32の全域で変色したか否かを確認する。これにより、第1シート部材30において、プラズマ処理が行われた部分を容易に見つけることができる。したがって、第1シート部材30の表面31、32にまんべんなくプラズマ処理を施すことができるため、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とを均一に接合することができる。また、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とを均一に接合することができるため、セラミック部材10と金属部材20との間での伝熱の面内ばらつきが小さくなる。これにより、均熱性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、準備工程において準備され第1シート部材30は、2000Pa・s以上の粘度を有しているため、貫通孔形成工程での貫通孔33、34の形成や、金属接合工程での金属部材20との接触、セラミック接合工程でのセラミック部材10との接触などによって、変形しにくい。また、第1シート部材30の表面を保護するカバーフィルム35、36を第1シート部材30から剥離するときに第1シート部材30が変形しにくくなる。これらにより、変形による第1シート部材30の厚みのばらつきを抑制することができるため、金属接合工程やセラミック接合工程において、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とを均一に接合することができる。また、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とを均一に接合することができるため、均熱性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、準備工程において準備される第1シート部材30は、傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離が20mm以上となるべたつきを有する。すなわち、第1シート部材30の粘着力は、比較的弱い。これにより、第1シート部材30の表面を保護するカバーフィルム35、36を第1シート部材30から剥離するとき、カバーフィルム35、36を第1シート部材30から容易に剥離することができるため、カバーフィルム35、36を剥離するときの第1シート部材30の変形を抑制することができる。したがって、金属接合工程やセラミック接合工程において、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とを均一に接合することができる。また、セラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とを均一に接合することができるため、均熱性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、準備工程において準備される第1シート部材30は、セラミック部材10と金属部材20を接合しているときのせん断歪みが、40%以上となっている。これにより、例えば、静電チャック1の温度がセラミック部材10と金属部材20との接合温度から室温まで低下しても、セラミック部材10や金属部材20から第1シート部材30が剥離することを抑制することができる。したがって、静電チャック1の破損を抑制することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、準備工程において準備される第1シート部材30は、室温における伸びが100%以上となっている。これにより、静電チャック1の温度がセラミック部材10および金属部材20と第1シート部材30とを接合するときの温度から室温まで低下しても、セラミック部材10および金属部材20から第1シート部材30が剥離することを抑制することができる。これにより、静電チャック1の破損を抑制することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、プラズマ処理工程として、第1シート部材30の表面32にプラズマ処理を行う。これにより、第1シート部材30に、貫通孔33、34を容易に形成しつつ、セラミック部材10や金属部材20と接合するための粘着力を発生させることができる。したがって、静電チャック1における接合強度を確保することができる。
また、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、静電チャック1は、セラミック部材10と金属部材20とを1枚の第1シート部材30によって接合している。複数の異なる接合部材によってセラミック部材10と金属部材20とを接合する場合、異なる接合部材間で熱膨張率は完全には一致しないため、静電チャックの使用時に温度が変化した場合、接合界面に熱応力が発生し、異なる接合部材間の界面で剥離が発生するおそれがある。しかしながら、本実施形態のように、1枚の第1シート部材30によって接合することで、熱応力による剥離のおそれがなくなるため好ましい。
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態の静電チャック2の断面図である。第2実施形態の静電チャック2は、第1実施形態の静電チャック1(図2)と比較すると、セラミック部材10と第1シート部材30との間に断熱層18が配置されている。
断熱層18は、例えば、ポリイミドから形成されており、セラミック部材10の載置面13とは反対側の裏面と第1シート部材30の表面32との間に配置されている。断熱層18は、ヒータ電極12への通電によってセラミック部材10に発生する熱が、第1シート部材30に伝わることを抑制する。
図12は、第2実施形態の静電チャック2の製造方法を説明する模式図である。ここで、静電チャック2の製造方法を説明する。最初に、準備工程として、セラミック部材10と、断熱層18と、金属部材20と、第1シート部材30を準備する。このとき、断熱層18は、セラミック部材10の裏面に、例えば、耐熱性が高い無機系接着剤によって接合される(図12(a)の白抜き矢印F21参照)。
第1実施形態と同様に、第1シート部材30に貫通孔33、34を形成し(貫通孔形成工程)、第1シート部材30の表面31に大気圧プラズマ処理を行った(プラズマ処理工程)のち、第1シート部材30と金属部材20を接合する(金属接合工程)。その後、プラズマ処理工程として、金属部材20に接合している第1シート部材30の表面32にプラズマ処理を行ったのち、セラミック接合工程として、第1シート部材30の表面32と、断熱層18のセラミック部材10とは反対側の面19とを接合する(図12(b)の白抜き矢印F22参照)。これにより、静電チャック3が完成する(図12(c)参照)。
以上説明した、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、セラミック接合工程において、金属部材20に接合している第1シート部材30と、セラミック部材10に接合している断熱層18とを接合する。これにより、静電チャック2の使用時に、ヒータ電極12によって発生する熱が断熱層18によって第1シート部材30に伝わりにくくなる。したがって、第1シート部材30が熱によって劣化することを抑制することができる。また、第1シート部材30がセラミック部材10で発生する熱によって劣化しにくくなるため、静電チャック2を高温条件下で使用することができる。
<第3実施形態>
図13は、第3実施形態の静電チャック3の断面図である。第3実施形態の静電チャック3は、第1実施形態の静電チャック1(図2)と比較すると、第1シート部材30と第2シート部材40の2つのシート部材を用いて、セラミック部材10と金属部材20とを接合している点が、第1実施形態と異なる。
第2シート部材40は、第1シート部材30と同様に、セラミック部材10と同じ大きさの略円形形状のシート状の部材であって、酸化モリブデン(IV)の微粒子およびカーボンブラックを含む付加硬化型のシリコーン系材料により形成されている。第2シート部材40は、金属部材20と第1シート部材30との間に配置されており、一方の表面41は、金属部材20に接合され、他方の表面42は、第1シート部材30の表面31に接合されている。第2シート部材40には、第1シート部材30の「第1貫通孔」としての貫通孔33、34のそれぞれに連通する「第2貫通孔」としての貫通孔43、44が形成されている。
第2シート部材40は、第1シート部材30と同様に、以下の特性を満たす。
室温における伸び:100%以上
ヤング率:10MPa以下
ショアA硬度:70以下
剛性率:4MPa以下
粘度:2000Pa・s以上
表面の粘着力(傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離):20mm以上
セラミック部材10と金属部材20を接合しているときのせん断歪み:40%以上
図14は、第3実施形態の静電チャック3の製造方法を説明する第1模式図である。図15は、第3実施形態の静電チャック3の製造方法を説明する第2模式図である。ここで、静電チャック3の製造方法を説明する。最初に、準備工程として、セラミック部材10と、金属部材20と、第1シート部材30と、第2シート部材40を準備する。第2シート部材40には、表面41、42を保護するためのカバーフィルム45、46が設けられている(図14(a)参照)。
準備工程の後、貫通孔形成工程として、第1シート部材30に貫通孔33、34を形成するとともに、第2シート部材40に貫通孔43、44を形成する(図14(b)参照)。なお、第1実施形態と同様に、貫通孔形成工程の後に、セラミック部材10と金属部材20に対して、シラン化合物のコーティング層17、24を形成するコーティング工程を行ってもよい。
貫通孔形成工程の後、プラズマ処理工程として、第1シート部材30の表面32にプラズマ処理を行うとともに、第2シート部材40の表面41にプラズマ処理を行う(図14(c)参照)。具体的には、貫通孔43、44が形成された第2シート部材40の表面41からカバーフィルム45を剥がしたのち、表面41上で大気圧プラズマ装置100を走査し(図14(c)の白抜き矢印F31参照)、表面41に大気圧プラズマ処理を行う。その後、第3実施形態では、第1実施形態と同様に、確認工程として、第1シート部材30の表面32と第2シート部材40の表面41の全域で変色したか否かを確認し、プラズマ処理が全面で行われていることを確認する。
確認工程の後、セラミック接合工程として、第1実施形態と同様に、セラミック部材10と第1シート部材30とを接合する。また、金属接合工程として、金属部材20と第2シート部材40とを接合する。このとき、金属部材20の貫通孔22と第2シート部材40の貫通孔43、および、金属部材20の貫通孔23と第2シート部材40の貫通孔44とが連通し、かつ、金属部材20と第2シート部材40の表面41とが接触するようにして、金属部材20と第2シート部材40とを接合する(図14(d)参照)。
金属接合工程の後、プラズマ処理工程として、金属部材20に接合している第2シート部材40の表面42に大気圧プラズマ処理を行う。これにより、第2シート部材40の表面42は、他の部材との接合のための粘着力を有することとなる。
プラズマ処理工程の後、シート接合工程として、セラミック部材10に接合している第1シート部材30と金属部材20に接合している第2シート部材40と、を接合する(図15(a)の白抜き矢印F32参照)。具体的には、第1シート部材30の貫通孔33と第2シート部材40の貫通孔43、および、第1シート部材30の貫通孔34と第2シート部材40の貫通孔44とが連通し、かつ、第1シート部材30の表面31と第2シート部材40の表面42とが接触するように、第1シート部材30と第2シート部材40を接合する。これにより、静電チャック3が完成する(図15(b)参照)。なお、第1シート部材30と第2シート部材40を接合する方法は、これに限定されないが、上述したように、大気圧プラズマ処理によって第2シート部材40の表面42に粘着力を発生させることによって、第1シート部材30と第2シート部材40とを強固に接合することができる。
以上説明した、本実施形態の複合部材の製造方法によれば、セラミック部材10と金属部材20を接合するシート部材は、2つのシート部材30、40から構成されている。2つのシート部材30、40は、いずれもシリコーン系材料により形成されており、貫通孔33、34、43、44を容易に形成することができるとともに、プラズマ処理することによって、セラミック部材10または金属部材20との接合のための粘着力を発生させることができる。これにより、接合強度を確保しつつ、加工性を向上することができる。また、セラミック部材10または金属部材20との接触において、変形が抑制されるため、シート部材30、40の厚みのばらつきによる均熱性の低下を抑制することができる。
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
[変形例1]
上述の実施形態では、第1シート部材30、または、第1シート部材30および第2シート部材40は、アルミナや窒化アルミニウムなどにより形成されているセラミック部材10と、金属により形成されている金属部材20とを接合するとした。しかしながら、シート部材が接合する部材は、これに限定されない。シート部材は、エラストマーにより形成されているため、熱膨張係数が異なっている部材どうしでも、シート部材によって熱応力が緩和することができる。
[変形例2]
上述の実施形態では、第1シート部材30および第2シート部材40は、付加硬化型のシリコーン系材料により形成されるとした。しかしながら、第1シート部材30および第2シート部材40を形成する材料はこれに限定されず、エラストマーであればよい。例えば、天然ゴム、NBRゴム、EPDMゴム、シリコーンゴムなど各種のゴムシートであってもよい。また、ペースト材料から第1シート部材30および第2シート部材40として耐熱性、耐寒性、柔軟性(応力緩和性)に優れるシリコーンゴムを作製する場合、以下のような材料が挙げられる。
KE-1830、KE-1884,KE-1820、KE-1831、KE-1833、KE-1885、KE-1056,KE-1151、KE-1842、KE-1886、KE-1854、KE-1867、KE-1031、KE-1285、KE-1861(以上、信越化学株式会社製 付加硬化型シリコーン材料)
SILASTICRBL-9694-45M、SILASTIC3-8186、(以上、ダウ・東レ株式会社製 付加硬化型シリコーン材料)
KE-347、KE-3495、KE-4895、KE-4896、KE-3497、KE-4897、KE-3494、KE-3490、KE-3497,KE-3498、KE-3466、KE-3491、KE-3417、KEー3427、KE-3428、KE-200、KE-118(以上、信越化学株式会社製 縮合硬化型シリコーン材料)
DOWSIL736、DOWSIL748、DOWSIL7091、DOWSIL HM-2510、DOWSIL EA-2626、DOWSIL 730FS、SILASTIC HV1551-55P、XIAMETER RBC-1660-65(以上、ダウ・東レ株式会社製 縮合硬化型シリコーン材料)
Silopren LSR2003、LSR2010、LSR2020、lSR2040、LSR2060、LSR2080、LSR2620、LSR2640、LSR2660、LSR2641、LSR2740、LIM8040、FSL7641、FSL7661、LSR4739、CLS3060、CLS5000、Electro242-1、Electro242-2、Silopren 2345/06(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
[変形例3]
上述の実施形態では、静電チャック1~3には、「有底孔」としての電極孔15と、「貫通孔」としてのリフトピン孔16が形成されるとした。しかしながら、静電チャック1~3に形成される「孔」は、いずれかであってもよい。
[変形例4]
上述の実施形態では、静電チャック1の製造方法において、貫通孔33、34は、プラズマ処理工程の前に、第1シート部材30に形成するとした。しかしながら、プラズマ処理工程の後に、貫通孔33、34を形成してもよい。また、準備工程において、準備されるセラミック部材10には、電極孔15とリフトピン孔16が形成されており、金属部材20には、2つの貫通孔22、23が形成されているとした。しかしながら、セラミック部材10、および、金属部材20への「孔」の形成は、第1シート部材30に貫通孔33,34を形成する貫通孔形成工程、および、第1シート部材30の表面にプラズマ処理を行うプラズマ処理工程の後に、行ってもよい。
[変形例5]
第1実施形態では、セラミック部材10および金属部材20に、シラン化合物のコーティング層が設けられ、シリコーン系材料により形成されるシート部材との接合強度を向上するとした。しかしながら、コーティング層の材料はこれに限定されない。シート部材の材料との親和性がよい材料であればよい。また、コーティング層は、セラミック部材10または金属部材20のいずれか一方に形成されていてもよいし、第2実施形態のように、コーティング層は、なくてもよい。なお、第2実施形態において、第1シート部材30との接合強度を向上するコーティング層を断熱層18や金属部材20に形成してもよい。
[変形例6]
上述の実施形態では、第1シート部材30に接合するセラミック部材10のコーティング層17の表面、および、金属部材20のコーティング層24の表面の算術平均粗さRaは、0.4μm以下となっているとした。しかしながら、コーティング層を形成しない場合、セラミック部材10のシート部材30と接合する表面、および、金属部材20のシート部材30と接合する表面の算術平均粗さRaが、0.4μm以下となっていればよい。また、表面の算術平均粗さRaが、0.4μmより大きくてもよい。
[変形例7]
上述の実施形態では、第1シート部材30および第2シート部材40を大気圧プラズマ処理したのち、表面の変色を確認する確認工程を行うとした。確認工程はなくてもよい。
[変形例8]
上述の実施形態では、第1シート部材30および第2シート部材40は、下記の特性を満たすとした。
室温における伸び:100%以上
ヤング率:10MPa以下
ショアA硬度:70以下
剛性率:4MPa以下
粘度:2000Pa・s以上
表面の粘着力(傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離):20mm以上
セラミック部材10と金属部材20を接合しているときのせん断歪み:40%以上
しかしながら、第1シート部材30および第2シート部材40は、上記の特性を全て満たさなくてもよく、少なくとも1つの特性を満たせばよい。また、1つも満たしていなくてもよい。これは、セラミック部材10および金属部材20の材質、厚み、大きさ、第1シート部材30および第2シート部材40の厚み、複合部材が使用される温度など、各種の条件によって必要な特性が変化するためである。
[変形例9]
第1実施形態では、第1シート部材30と「第2部材」とは、第1シート部材30のプラズマ処理を用いて接合するとした。また、第3実施形態では、第1シート部材30と第2シート部材40とは、プラズマ処理工程として、金属部材20に接合している第2シート部材40の表面42に大気圧プラズマ処理を行い、シート接合工程として、第1シート部材30と第2シート部材40とを接合するとした。しかしながら、これらの接合において、プラズマ処理を用いなくてもよく、他の接合剤を用いて接合してもよい。
[変形例10]
第3実施形態では、プラズマ処理工程として、金属部材20に接合している第2シート部材40の表面42に大気圧プラズマ処理を行うとした。しかしながら、セラミック部材10に接合している第1シート部材30の表面31に大気圧プラズマ処理を行ってもよいし、第1シート部材30の表面31と第2シート部材40の表面42との両方に、大気圧プラズマ処理を行ってもよい。
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
1,2,3…静電チャック
10…セラミック部材
11…チャック電極
12…ヒータ電極
13…載置面
14…電極端子
15…電極孔
16…リフトピン孔
17…コーティング層
18…断熱層
19…面
20…金属部材
21…冷媒流路
22,23…貫通孔
24…コーティング層
30…第1シート部材
31,32,41,42…表面
33,34,43,44…貫通孔
35,36,45,46…カバーフィルム
40…第2シート部材
100…大気圧プラズマ装置

Claims (12)

  1. 貫通孔および有底孔の少なくとも1つの孔を有し、発熱体を含み、セラミックにより形成されている第1部材と、前記孔と連通する貫通孔を有し、エラストマーにより形成されているシート部材と、金属により形成されており、前記シート部材を介して前記第1部材と接合される第2部材と、を有する静電チャックの製造方法であって、
    前記孔を有する前記第1部材と、前記シート部材と、前記第2部材を準備する準備工程と、
    前記シート部材に前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
    前記シート部材の一方の面をプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、
    前記貫通孔形成工程および前記第1プラズマ処理工程の後、前記第1部材の前記孔と、前記シート部材の前記貫通孔とが連通し、かつ、前記第1部材と前記シート部材の一方の面とが接触するように、前記第1部材と前記シート部材とを接合する第1接合工程と、
    前記第2部材と前記シート部材とを接合する第2接合工程と、を備える、
    静電チャックの製造方法。
  2. 請求項1に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記シート部材は、シリコーン系材料によって形成されており、
    前記静電チャックの製造方法は、さらに、
    前記第1接合工程の前に、前記第1部材のうち、前記シート部材と接合される面に対して、プラズマを用いて、シラン化合物のコーティング層を形成するコーティング工程を備える、
    静電チャックの製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、前記第1部材として、前記シート部材と接合される面の算術平均粗さRaが0.4μm以下の前記第1部材を準備する、
    静電チャックの製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、前記シート部材として、プラズマ処理されると変色する前記シート部材を準備し、
    前記静電チャックの製造方法は、さらに、
    前記第1プラズマ処理工程の後であって前記第1接合工程の前に、前記シート部材の変色の状態を確認する確認工程を備える、
    静電チャックの製造方法。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、前記シート部材として、粘度が2000Pa・s以上の前記シート部材を準備する、
    静電チャックの製造方法。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、前記シート部材として、傾斜式ボールタック試験におけるボールの転がり距離が20mm以上の前記シート部材を準備する、
    静電チャックの製造方法。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、一方の面側に断熱層が形成されている前記第1部材を準備し、
    前記第1接合工程において、前記第1部材の前記断熱層の面と前記シート部材の一方の面とが接触するように、前記第1部材と前記シート部材とを接合する、
    静電チャックの製造方法。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、前記第1部材と前記第2部材に接合しているときの室温におけるせん断歪みε(%)が下記の式を満たす前記シート部材を準備する、
    静電チャックの製造方法。
    Figure 0007184726000006
    ただし、dは、前記シート部材の半径(mm)、Trは、室温(℃)、Tcは前記第1部材と前記第2部材との接合温度(℃)、α1は、前記第1部材の熱膨張係数(1/℃)、α2は、前記第2部材の熱膨張係数(1/℃)、tは、前記シート部材の厚み(mm)である。
  9. 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、室温における伸びΔ(%)が下記の式を満たす前記シート部材を準備する、
    静電チャックの製造方法。
    Figure 0007184726000007
    ただし、tは、前記シート部材の厚み(mm)、dは、前記シート部材の半径(mm)、Trは、室温(℃)、Tcは前記第1部材と前記第2部材との接合温度(℃)、α1は、前記第1部材の熱膨張係数(1/℃)、α2は、前記第2部材の熱膨張係数(1/℃)である。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法は、さらに、
    前記第2接合工程の前に、前記シート部材の他方の面をプラズマ処理する第2プラズマ処理工程を備える、
    静電チャックの製造方法。
  11. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の静電チャックの製造方法であって、
    前記準備工程において、前記シート部材として、第1シート部材と第2シート部材を準備し、
    前記貫通孔形成工程において、前記第1シート部材に前記貫通孔としての第1貫通孔を形成するとともに、前記第2シート部材に前記貫通孔としての第2貫通孔を形成し、
    前記第1プラズマ処理工程において、前記シート部材の一方の面としての前記第1シート部材の一方の面をプラズマ処理するとともに、前記第2シート部材の一方の面をプラズマ処理し、
    前記第1接合工程において、前記第1部材と前記第1シート部材とを接合し、
    前記第2接合工程において、前記第2部材と前記第2シート部材の一方の面とが接触するように、前記第2部材と前記第2シート部材とを接合し、
    前記静電チャックの製造方法は、さらに、
    前記第1シート部材の前記第1貫通孔と前記第2シート部材の前記第2貫通孔とが連通し、かつ、前記第1シート部材の他方の面と前記第2シート部材の他方の面とが接触するように、前記第1シート部材と前記第2シート部材とを接合する第3接合工程を備える、
    静電チャックの製造方法。
  12. 貫通孔および有底孔の少なくとも1つの孔を有する第1部材と、前記孔と連通する貫通孔を有し、エラストマーにより形成されたシート部材と、前記シート部材を介して前記第1部材と接合される第2部材と、を有する複合部材の製造方法であって、
    前記孔を有する前記第1部材と、プラズマ処理されると変色する前記シート部材と、前記第2部材を準備する準備工程と、
    前記シート部材に前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
    前記シート部材の一方の面をプラズマ処理する第1プラズマ処理工程と、
    前記第1プラズマ処理工程の後に、前記シート部材の変色の状態を確認する確認工程と、
    前記貫通孔形成工程および前記第1プラズマ処理工程の後、前記第1部材の前記孔と、前記シート部材の前記貫通孔とが連通し、かつ、前記第1部材と前記シート部材の一方の面とが接触するように、前記第1部材と前記シート部材とを接合する第1接合工程と、
    前記第2部材と前記シート部材とを接合する第2接合工程と、を備える、
    複合部材の製造方法。
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