以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドについて図1~図3を参照して説明する。なお、図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドのノズル面側から見た平面図である。図2は、図1のA-A′線断面図である。図3は、図1のB-B′線断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)は、流路基板として流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、保護基板30、ケース部材40及びコンプライアンス基板49等の複数の部材を備える。
流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には振動板50が形成されている。振動板50は、二酸化シリコン層や酸化ジルコニウム層から選択される単一層又は積層であってもよい。
流路形成基板10には、個別流路200を構成する圧力室12が、複数の隔壁によって区画されて複数設けられている。複数の圧力室12は、インクを吐出する複数のノズル21が並設される方向に沿って所定のピッチで並設されている。以降、この方向を、ノズル21の並設方向、又は圧力室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、流路形成基板10には、圧力室12が第1の方向Xに並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。この圧力室12の列が複数列設された列設方向を、以降、第2の方向Yと称する。なお、本実施形態では、流路形成基板10の第1の方向Xに並設された圧力室12の間の部分を隔壁と称する。この隔壁は、第2の方向Yに沿って形成されている。すなわち、隔壁は、流路形成基板10の第2の方向Yにおける圧力室12に重なる部分のことをいう。
また、本実施形態では、2列の圧力室12において、一方の列の圧力室12を第1圧力室12Aと称し、他方の列の圧力室12を第2圧力室12Bと称する。第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとは、第1の方向Xからの平面視において、互いに重ならない位置に配置されている。また、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとは、第1の方向Xにずらした、いわゆる千鳥配置となっている。本実施形態では、第1圧力室12Aが第1の方向Xに並設された列と、第2圧力室12Bが第1の方向Xに並設された列とは、第1の方向Xに互いに半ピッチずれた位置に配置されている。なお、第1圧力室12Aの一部と第2圧力室12Bの一部とが、第1の方向Xからの平面視において、互いに重なる位置に配置されていてもよい。
また、本実施形態では、第1の方向X及び第2の方向Yの両方に直交する方向を第3の方向Zと称し、詳しくは後述するノズルプレート20に対するケース部材40側をZ1側、ケース部材40に対するノズルプレート20側をZ2側と称する。なお、第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zは、互いにそれぞれ直交する方向としたが、特にこれに限定されず、直交以外の角度で交差する方向であってもよい。
なお、本実施形態では、流路形成基板10に圧力室12のみを設けるようにしたが、圧力室12に供給されるインクに流路抵抗を付与するように圧力室12よりも流路を横断する断面積を絞った流路抵抗付与部を設けるようにしてもよい。
このような流路形成基板10の第3の方向Zの一方面側であるZ1側には、上述のように振動板50が形成され、この振動板50上には、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とが成膜及びリソグラフィー法によって積層されて圧電アクチュエーター300を構成している。本実施形態では、圧電アクチュエーター300が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせるエネルギー発生素子となっている。ここで、圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分を言う。一般的には、圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を圧力室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電アクチュエーター300の共通電極とし、第2電極80を圧電アクチュエーター300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述した例では、振動板50、第1電極60が、振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、振動板50を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
また、このような各圧電アクチュエーター300の第2電極80には、リード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電アクチュエーター300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
また、流路形成基板10の圧電アクチュエーター300側の面には、保護基板30が接合されている。
保護基板30の圧電アクチュエーター300に対向する領域には、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電アクチュエーター保持部31が設けられている。圧電アクチュエーター保持部31は、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。また、圧電アクチュエーター保持部31は、本実施形態では、第1の方向Xに並設された複数の圧電アクチュエーター300の列毎にそれぞれ独立して設けられている。すなわち、圧電アクチュエーター保持部31は、第1の方向Xに並設された複数の圧電アクチュエーター300の列を一体的に覆う大きさで形成されている。もちろん、圧電アクチュエーター保持部31は、特にこれに限定されず、圧電アクチュエーター300を個別に覆うものであってもよく、第1の方向Xで並設された2以上の圧電アクチュエーター300で構成される群毎に覆うものであってもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30には、保護基板30を第3の方向Zに貫通する貫通孔32が設けられている。そして、各圧電アクチュエーター300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔32内に露出するよう延設されており、貫通孔32内でフレキシブルケーブル120と電気的に接続されている。フレキシブルケーブル120は、可撓性を有する配線基板であって、本実施形態では、半導体素子である駆動回路121が実装されている。なお、フレキシブルケーブル120を介さずに、リード電極90と駆動回路121とを電気的に接続してもよい。また、保護基板30に流路を設けてもよい。
また、保護基板30のZ1側には、ケース部材40が固定されている。ケース部材40は、保護基板30の流路形成基板10とは反対面側が接合されると共に、後述する連通板15にも接合して設けられている。
このようなケース部材40には、第1共通液室101の一部を構成する第1液室部41と、第2共通液室102の一部を構成する第2液室部42とが設けられている。第1液室部41と第2液室部42とは、第2の方向Yにおいて、2列の圧力室12を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。
第1液室部41及び第2液室部42のそれぞれは、ケース部材40のZ2側の面に開口する凹形状を有し、第1の方向Xに並設された複数の圧力室12に亘って連続して設けられている。
また、ケース部材40のZ1側の面には、第1液室部41及び第2液室部42のそれぞれに連通する2つの導入口43が設けられている。
さらに、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して、フレキシブルケーブル120が挿通される接続口45が設けられている。
一方、流路形成基板10の保護基板30とは反対面側であるZ2側には、連通板15とノズルプレート20とコンプライアンス基板49とが設けられている。
連通板15は、本実施形態では、第1連通板151と第2連通板152とが第3の方向Zに積層されて構成されている。第1連通板151は、流路形成基板10側、すなわち、第3の方向ZのZ1側に設けられており、第2連通板152は、ノズルプレート20側、すなわち、第3の方向ZのZ2側に設けられている。
このような連通板15を構成する第1連通板151及び第2連通板152は、ステンレス鋼等の金属、ガラス、セラミック材料等によって製造することができる。なお、連通板15は、流路形成基板10と熱膨張率が略同一の材料を用いるのが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
連通板15には、詳しくは後述するが、第1共通液室101及び第2共通液室102のそれぞれの一部を構成する第1連通部16及び第2連通部17が設けられている。また、連通板15には、詳しくは後述するが、第1共通液室101と圧力室12とを連通する流路と、圧力室12とノズル21とを連通する流路と、ノズル21と第2共通液室102とを連通する流路と、が設けられている。連通板15に設けられたこれらの流路は、個別流路200の一部を構成する。
ノズルプレート20には、外部に連通すると共に圧力室12に連通するノズル21が複数形成されている。本実施形態では、図1に示すように、複数のノズル21を第1の方向Xに並設した第1ノズル列22Aと、複数のノズル21を第1の方向Xに並設した第2ノズル列22Bと、を第2の方向Yに並設し、第1ノズル列22Aと第2ノズル列22Bとを第2の方向Yで同じ位置とならないように第1の方向Xにずらした、いわゆる千鳥配置となっている。本実施形態では、第1ノズル列22Aのノズル21を第1ノズル21Aと称し、第2ノズル列22Bのノズル21を第2ノズル21Bと称する。第1ノズル列22Aの第1ノズル21Aは、第1圧力室12Aに連通する。また、第2ノズル列22Bの第2ノズル21Bは、第2圧力室12Bに連通する。なお、第1ノズル列22Aと第2ノズル列22Bとが、第1の方向Xの一直線上に並んでもよい。
また、連通板15は、第1共通液室101の一部を構成する第1連通部16と、第2共通液室102の一部を構成する第2連通部17と、を有する。
第1連通部16は、第3の方向Zにおいて、ケース部材40の第1液室部41に重なる位置に設けられており、連通板15のZ1側及びZ2側の両面に開口して設けられている。第1連通部16は、Z1側において第1液室部41と連通することで第1共通液室101を構成する。すなわち、第1共通液室101は、ケース部材40の第1液室部41と連通板15の第1連通部16とによって構成されている。また、第1連通部16は、Z2側において圧力室12に第3の方向Zで重なる位置まで第2の方向Yに延設されている。
また、第1共通液室101を構成する第1連通部16は、第3の方向Zにおいて圧力室12側であるZ1側に設けられた第1幅狭部16aと、ノズル21側に設けられた第1幅広部16bと、を具備する。
第1幅狭部16aは、第1連通板151の第2連通板152側に開口して設けられており、第1幅広部16bは、第2連通板152に第3の方向Zに貫通して設けられている。
また、第1幅狭部16aと第1幅広部16bとは、第1の方向Xにおいて同じ幅で設けられており、第2の方向Yにおいて第1幅広部16bの方が第1幅狭部16aよりも広い幅で形成されている。また、第1幅広部16bは、第1幅狭部16aよりもノズル21側に拡幅して設けられている。つまり、第1幅広部16bの第2の方向Yのノズル21とは反対側の端部は、第1幅狭部16aと同じ位置に設けられており、第1幅広部16bの第2の方向Yのノズル21側の端部は、第1幅狭部16aよりも外側に配置されている。これにより、第3の方向Zにおいて第1共通液室101のノズル21側の開口である第1幅広部16bの開口は、圧力室12側の開口である第1幅狭部16aの開口よりもノズル21側に拡幅されている。また、第1連通部16のノズル21側の側壁には、第1幅狭部16aと第1幅広部16bとによって段差である第1段差16cが設けられている。
第2連通部17は、第3の方向Zにおいて、ケース部材40の第2液室部42に重なる位置に設けられており、連通板15のZ1側及びZ2側の両面に開口して設けられている。第2連通部17は、Z1側において第2液室部42と連通することで第2共通液室102を構成する。すなわち、第2共通液室102は、ケース部材40の第2液室部42と連通板15の第2連通部17とによって構成されている。また、第2連通部17は、Z2側において圧力室12に第3の方向Zで重なる位置まで第2の方向Yに延設されている。
第2共通液室102を構成する第2連通部17は、第3の方向Zにおいて圧力室12側であるZ1側に設けられた第2幅狭部17aと、ノズル21側に設けられた第2幅広部17bと、を具備する。
第2幅狭部17aは、第1連通板151の第2連通板152側に開口して設けられ、第2幅広部17bは、第2連通板152を第3の方向Zに貫通して設けられている。
また、第2幅狭部17aと第2幅広部17bとは、第1の方向Xにおいて同じ幅で設けられており、第2の方向Yにおいて第2幅広部17bの方が第2幅狭部17aよりも広い幅で形成されている。また、第2幅広部17bは、第2幅狭部17aよりもノズル21側に拡幅して設けられている。つまり、第2幅広部17bの第2の方向Yのノズル21とは反対側の端部は、第2幅狭部17aと同じ位置に設けられており、第2幅広部17bの第2の方向Yのノズル21側の端部は、第2幅狭部17aよりも外側に配置されている。これにより、第3の方向Zにおいて第2共通液室102のノズル21側の開口である第2幅広部17bの開口は、圧力室12側の開口である第2幅狭部17aの開口よりもノズル21側に拡幅されている。また、第2連通部17のノズル21側の側壁には、第2幅狭部17aと第2幅広部17bとによって段差である第2段差17cが設けられている。
連通板15の第1連通部16及び第2連通部17が開口するZ2側の面には、コンプライアンス部494を有するコンプライアンス基板49が設けられている。このコンプライアンス基板49が、第1共通液室101及び第2共通液室102のノズル面20a側の開口、すなわち、第1幅広部16b及び第2幅広部17bを封止している。
このようなコンプライアンス基板49は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜491と、金属等の硬質の材料からなる固定基板492と、を具備する。固定基板492の第1共通液室101及び第2共通液室102に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部493となっているため、第1共通液室101及び第2共通液室102の壁面の一部は可撓性を有する封止膜491のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部494となっている。本実施形態では、第1共通液室101に設けられたコンプライアンス部494を第1コンプライアンス部494Aと称し、第2共通液室102に設けられたコンプライアンス部494を第2コンプライアンス部494Bと称する。このように第1共通液室101と第2共通液室102とのそれぞれの壁面の一部にコンプライアンス部494を設けることで、第1共通液室101及び第2共通液室102内のインクの圧力変動をコンプライアンス部494が変形することによって吸収することができる。
また、本実施形態では、第1共通液室101を構成する第1連通部16の第1幅広部16bの開口面積は、第1幅狭部16aの開口面積よりも大きい。したがって、第1幅狭部16aをノズル21側に開口させて第1コンプライアンス部494Aを設けた場合に比べて、第1幅広部16bの比較的広い開口面積に対して第1コンプライアンス部494Aを設けることができ、第1コンプライアンス部494Aの面積を大きくすることができる。
同様に、第2共通液室102を構成する第2連通部17の第2幅広部17bの開口面積は、第2幅狭部17aの開口面積よりも大きい。したがって、第2幅狭部17aをノズル21側に開口させて第2コンプライアンス部494Bを設けた場合に比べて、第2幅広部17bの比較的広い開口面積に対して第2コンプライアンス部494Bを設けることができ、第2コンプライアンス部494Bの面積を大きくすることができる。
また、本実施形態では、第1共通液室101及び第2共通液室102をノズル21が開口するZ2側に開口するように設けることで、ノズルプレート20とコンプライアンス部494とは、ノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zにおいて圧力室12及びノズル21を有する個別流路200に対して同じ側であるZ2側に配置されている。このように、コンプライアンス部494を個別流路200に対してノズル21と同じ側に配置することで、ノズル21が設けられていない領域にコンプライアンス部494を設けることができ、コンプライアンス部494を比較的広い面積で設けることができる。また、コンプライアンス部494とノズル21とを個別流路200に対して同じ側に配置することで、コンプライアンス部494を個別流路200に近い位置に配置して、個別流路200内のインクの圧力変動をコンプライアンス部494によって効果的に吸収させることができる。
また、本実施形態の2つのコンプライアンス部494は、図1に示すように、1つのコンプライアンス基板49に設けられている。もちろん、コンプライアンス基板49は、これに限定されず、コンプライアンス部494毎に独立したコンプライアンス基板49を設けるようにしてもよい。
また、流路基板を構成する流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、コンプライアンス基板49等には、第1共通液室101又は第2共通液室102に連通する個別流路200が設けられている。本実施形態では、第1の方向Xに並設された複数の個別流路200は、第1共通液室101に連通し、第1ノズル21A及び第1圧力室12Aを有する第1個別流路200Aと、第2共通液室102に連通し、第2ノズル21B及び第2圧力室12Bを有する第2個別流路200Bとを具備する。そして、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとが、第1の方向Xに交互に配置されている。
第1個別流路200Aは、第1供給路18Aと第1圧力室12Aと第1連通路19Aと第1ノズル21Aとを具備する。
第1供給路18Aは、第1圧力室12Aと第1共通液室101とを連通するものであり、Z2側の一端が第1共通液室101を構成する第1連通部16の第1幅狭部16aに連通し、Z1側の他端が第1圧力室12Aの第2の方向Yの一端側に連通するように第3の方向Zに沿って設けられている。
第1圧力室12Aは、上述のように流路形成基板10に設けられたものであり、第1圧力室12AのZ1側の開口は振動板50によって封止され、第1圧力室12AのZ2側の開口の一部は連通板15によって覆われている。
第1連通路19Aは、第1圧力室12Aと第1ノズル21Aとを連通するものであり、Z1側の一端が第1圧力室12Aの第2の方向Yの他端側に連通し、Z2側の他端がノズルプレート20に設けられた第1ノズル21Aと連通するようにノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zに延設されている。
第1ノズル21Aは、第1連通路19AのZ2側の他端に連通すると共に、ノズルプレート20のZ2側のノズル面20aに開口することで外部と連通して設けられている。
また、第1連通路19Aは、第1ノズル21A側の開口が、第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側となるように形成されている。ここで、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口が、第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側となるように形成されているとは、第3の方向Zから平面視した際に、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口が、第1連通路19Aの第1圧力室12A側の開口よりも第2の方向Yにおいて第2圧力室12B側にずれた位置に配置されていることを言う。ちなみに、第3の方向Zから平面視した際に、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口と、第1圧力室12A側の開口との一部が重なっていてもよいが、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口と第1圧力室12A側の開口との何れか一方が、他方に完全に重なったものは含まれない。
本実施形態では、第1連通路19Aは、一端が第1圧力室12Aに連通して第1連通板151を第3の方向Zに貫通して設けられた第1流路201と、第1流路201の他端に連通して、第1連通板151と第2連通板152との間に第2の方向Yに沿って延設された第2流路202と、第2流路202に連通して第2連通板152を第3の方向Zに貫通して設けられた第3流路203と、を具備する。すなわち、第1連通路19Aが、ノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zに延設されているとは、第3の方向Zに直交する方向、すなわち、ノズル面20aの面内方向に沿って設けられた流路である第2流路202が途中に設けられているものも含む。
第2流路202は、本実施形態では、第2連通板152に凹部を形成し、第2連通板152の凹部の開口を第1連通板151で覆うことで形成されている。もちろん、第2流路202は特にこれに限定されず、第1連通板151に凹部を形成するようにしてもよく、第1連通板151及び第2連通板152の両方に凹部を形成するようにしてもよい。
このように第1連通路19Aの途中に第2の方向Yに延設された第2流路202を設けることで、第3流路203を第2の方向Yにおいて第2圧力室12B側に移動させることができる。そして、第3流路203を第2圧力室12B側に移動することで、第1共通液室101を構成する第1連通部16のノズル21側を、第2の方向Yにおいてノズル21側に拡幅することができる。すなわち、第1連通路19Aを途中で屈曲して設けることで、第1連通部16のノズル21側に第2の方向Yにおいてノズル21に向かって拡幅された第1幅広部16bを設けることができる。
ちなみに、第1コンプライアンス部494Aの面積を広くするために、第1共通液室101のZ2側の面の開口を、第2の方向Yにおいて第2圧力室12Bとは反対側に拡幅することも考えられるが、第1共通液室101を第2圧力室12Bとは反対側に拡幅すると連通板15が第2の方向Yに大型化してしまう。本実施形態では、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口を、第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側となるように形成することで、第1共通液室101のZ2側の開口を第2圧力室12B側に広げることができるため、連通板15が第2の方向Yに大型化するのを抑制して、第1コンプライアンス部494Aの面積を広げることができる。ちなみに、上述したように流路形成基板10のZ2側の面において、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとの間には、フレキシブルケーブル120と圧電アクチュエーター300から引き出されたリード電極90とを実装するためのスペースが必要である。このため、フレキシブルケーブル120と圧電アクチュエーター300とを実装するスペースの下に、本実施形態の第1連通路19Aを設けることで、流路形成基板10及び連通板15が第2の方向Yに大型化するのを抑制することができると共に、第1共通液室101を第2の方向Yに拡幅して、第1コンプライアンス部494Aを比較的広い面積で設けることができる。
また、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口を第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側に配置することで、ノズルプレート20を小型化することができる。すなわち、第1連通路19Aを第3の方向Zに沿った直線上に設けた場合、ノズルプレート20は、第1連通路19Aの開口を覆う必要があるため、ノズルプレート20を第1共通液室101側に広い面積で設ける必要があるが、本実施形態では、第1連通路19Aの開口は、第2圧力室12B側に位置するため、ノズルプレート20は第1連通路19Aの開口を覆う面積で設ければよく、ノズルプレート20を小型化することができる。
なお、ノズルプレート20の第1共通液室101側の端部は、第1連通路19Aの第1圧力室12A側の開口の第1共通液室101側の縁部よりもノズル21側に位置することが好ましい。これにより、さらにノズルプレート20の小型化を図ることができる。
また、ノズル21の並設方向である第1の方向Xから平面視した際に、ノズル面20aの面内方向である第2の方向Yにおける第1個別流路200Aの第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口と第1共通液室101との間隔d1は、第1連通路19Aの第1圧力室12A側の開口と第1共通液室101との間隔d2以下であることが好ましい。すなわち、第2の方向Yにおいて第3流路203と第1幅広部16bとの間隔d1は、第1流路201と第1幅狭部16aとの間隔d2以下であることが好ましい。なお、第1流路201と第1幅狭部16aとの間隔d2は、第1圧力室12Aの第2の方向Yの長さによって規定されるものであるが、第1連通路19Aの途中に第2流路202を設けることで、第1圧力室12Aの長さに関わらず、第3流路203と第1幅広部16bとを近接する位置まで設けることができる。そして、第3流路203と第1幅広部16bとは、コンプライアンス基板49と連通板15との接着に必要な分だけ残すように近接させることができるため、第2の方向Yにおいて第3流路203と第1幅広部16bとの間隔d1は、第1流路201と第1幅狭部16aとの間隔d2以下とすることができ、これにより、第1幅広部16bを比較的大きく拡幅して比較的広い面積の第1コンプライアンス部494Aを設けることができる。
第2個別流路200Bは、第2供給路18Bと第2圧力室12Bと第2連通路19Bと第2ノズル21Bとを具備する。
第2供給路18Bは、第2圧力室12Bと第2共通液室102とを連通するものであり、Z2側の一端が第2共通液室102を構成する第2連通部17の第2幅狭部17aに連通し、Z1側の他端が第2圧力室12Bの第2の方向Yの一端側に連通するように第3の方向Zに沿って設けられている。
第2圧力室12Bは、上述のように流路形成基板10に設けられたものであり、第2圧力室12BのZ1側の開口は振動板50によって封止され、第2圧力室12BのZ2側の開口の一部は連通板15によって覆われている。
第2連通路19Bは、第2圧力室12Bと第2ノズル21Bとを連通するものであり、Z1側の一端が第2圧力室12Bの第2の方向Yの他端側に連通し、Z2側の他端がノズルプレート20に設けられた第2ノズル21Bと連通するようにノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zに延設されている。
第2ノズル21Bは、第2連通路19BのZ2側の他端に連通すると共に、ノズルプレート20のZ2側のノズル面20aに開口することで外部と連通して設けられている。
また、第2連通路19Bは、第2ノズル21B側の開口が、第2圧力室12B側の開口よりも第1圧力室12A側となるように形成されている。ここで、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口が、第2圧力室12B側の開口よりも第1圧力室12A側となるように形成されているとは、第3の方向Zから平面視した際に、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口が、第2連通路19Bの第2圧力室12B側の開口よりも第2の方向Yにおいて第1圧力室12A側にずれた位置に配置されていることを言う。ちなみに、第3の方向Zから平面視した際に、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口と、第2圧力室12B側の開口との一部が重なっていてもよいが、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口と第2圧力室12B側の開口との何れか一方が、他方に完全に重なったものは含まれない。
本実施形態では、第2連通路19Bは、一端が第2圧力室12Bに連通して第1連通板151を第3の方向Zに貫通して設けられた第4流路204と、第4流路204の他端に連通して、第1連通板151と第2連通板152との間に第2の方向Yに沿って延設された第5流路205と、第5流路205に連通して第2連通板152を第3の方向Zに貫通して設けられた第6流路206と、を具備する。すなわち、第2連通路19Bが、ノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zに延設されているとは、第3の方向Zに直交する方向、すなわち、ノズル面20aの面内方向に沿って設けられた流路が途中に設けられているものも含む。
第5流路205は、本実施形態では、第2連通板152に凹部を形成し、第2連通板152の凹部の開口を第1連通板151で覆うことで形成されている。もちろん、第5流路205は特にこれに限定されず、第1連通板151に凹部を形成するようにしてもよく、第1連通板151及び第2連通板152の両方に凹部を形成するようにしてもよい。
このように第2連通路19Bの途中に第2の方向Yに延設された第5流路205を設けることで、第6流路206を第2の方向Yにおいて第1圧力室12A側に移動させることができる。そして、第6流路206を第1圧力室12A側に移動することで、第2共通液室102を構成する第2連通部17のノズル21側を、第2の方向Yにおいてノズル21側に拡幅することができる。すなわち、第2連通路19Bを途中で屈曲して設けることで、第2連通部17のノズル21側に第2の方向Yにおいてノズル21に向かって拡幅された第2幅広部17bを設けることができる。
ちなみに、第2コンプライアンス部494Bの面積を広くするために、第2共通液室102のZ2側の面の開口を、第2の方向Yにおいて第1圧力室12Aとは反対側に拡幅することも考えられるが、第2共通液室102を第1圧力室12Aとは反対側に拡幅すると連通板15が第2の方向Yに大型化してしまう。本実施形態では、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口を、第2圧力室12B側の開口よりも第1圧力室12A側となるように形成することで、第2共通液室102のZ2側の開口を第1圧力室12A側に広げることができるため、連通板15が第2の方向Yに大型化するのを抑制して、第2コンプライアンス部494Bの面積を広げることができる。ちなみに、上述したように流路形成基板10のZ2側の面において、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとの間には、フレキシブルケーブル120と圧電アクチュエーター300から引き出されたリード電極90とを実装するためのスペースが必要なため、このフレキシブルケーブル120と圧電アクチュエーター300とを実装するスペースの下に、本実施形態の第2連通路19Bを設けることで、流路形成基板10及び連通板15が第2の方向Yに大型化するのを抑制することができると共に、第2共通液室102を第2の方向Yに拡幅して、第2コンプライアンス部494Bを比較的広い面積で設けることができる。
また、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口を第2圧力室12B側の開口よりも第1圧力室12A側に配置することで、ノズルプレート20を小型化することができる。すなわち、第2連通路19Bを第3の方向Zに沿った直線上に設けた場合、ノズルプレート20は、第2連通路19Bの開口を覆う必要があるため、ノズルプレート20を第2共通液室102側に広い面積で設ける必要があるが、本実施形態では、第2連通路19Bの開口は、第1圧力室12A側に位置するため、ノズルプレート20は第2連通路19Bの開口を覆う面積で設ければよく、ノズルプレート20を小型化することができる。
また、ノズル21の並設方向である第1の方向Xから平面視した際に、ノズル面20aの面内方向である第2の方向Yにおける第2個別流路200Bの第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口と第2共通液室102との間隔d3は、第2連通路19Bの第2圧力室12B側の開口と第2共通液室102との間隔d4以下であることが好ましい。すなわち、第2の方向Yにおいて第6流路206と第2幅広部17bとの間隔d3は、第4流路204と第2幅狭部17aとの間隔d4以下であることが好ましい。なお、第4流路204と第2幅狭部17aとの間隔d4は、第2圧力室12Bの第2の方向Yの長さによって規定されるものであるが、第2連通路19Bの途中に第5流路205を設けることで、第2圧力室12Bの長さに関わらず、第6流路206と第2幅広部17bとを近接する位置まで設けることができる。そして、第6流路206と第2幅広部17bとは、コンプライアンス基板49と連通板15との接着に必要な分だけ残すように近接させることができるため、第2の方向Yにおいて第6流路206と第2幅広部17bとの間隔d3は、第4流路204と第2幅狭部17aとの間隔d4以下とすることができ、これにより、第2幅広部17bを比較的大きく拡幅して比較的広い面積の第2コンプライアンス部494Bを設けることができる。
また、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口と、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口とを第2の方向Yに近接して設けることができるため、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとの第2の方向Yの距離を狭めることができる。
なお、ノズルプレート20の第2共通液室102側の端部は、第2連通路19Bの第2圧力室12B側の開口の第2共通液室102側の縁部よりもノズル21側に位置することが好ましい。これにより、さらにノズルプレート20の小型化を図ることができる。
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1では、流路が形成された流路基板と、流路の液体に圧力変化を生じさせるためのエネルギー発生素子である圧電アクチュエーター300と、を備え、流路は、共通液室である第1共通液室101及び第2共通液室102と第1共通液室101、第2共通液室102に連通する複数の個別流路200と、を備え、個別流路200は、外部と連通するノズル21と、圧電アクチュエーター300により圧力変化が生じる圧力室12と、ノズル21が開口するノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zに延設されてノズル21と圧力室12とを連通する連通路である第1連通路19A、第2連通路19Bと、を備え、個別流路200は、圧力室12として第1圧力室12Aを有する第1個別流路200Aと、圧力室12として第2圧力室12Bを有する第2個別流路200Bと、を有し、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとは、ノズル21の並設方向から平面視した際に、互いに重ならない位置に配置されており、第1個別流路200Aの連通路である第1連通路19Aは、ノズル21に連通する開口が、第1圧力室12Aに連通する開口よりも第2圧力室12B側に位置し、第2個別流路200Bの連通路である第2連通路19Bは、ノズル21に連通する開口が、第2圧力室12Bに連通する開口よりも第1圧力室12A側に位置し、第1共通液室101、第2共通液室102のノズル21側の開口は、圧力室12側の開口よりもノズル21側に拡幅されている。
このように、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口を第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側に配置すると共に、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口を第2圧力室12B側の開口よりも第1圧力室12A側に配置することで、第1共通液室101及び第2共通液室102のノズル21側の開口を圧力室12側の開口よりもノズル21側、すなわち、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとの間に向かって拡幅することができる。したがって、第1共通液室101及び第2共通液室102の拡幅によって流路基板が大型化するのを抑制することができる。
また、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口と、第2連通路19B側の第2ノズル21B側の開口とを第2の方向Yに近接して設けることができるため、ノズルプレート20を小型化することができ、コストを低減することができると共に、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとの第2の方向Yの距離を狭めることができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、共通液室は、第1共通液室101と第2共通液室102とを備え、第1個別流路200Aは、共通液室のうち少なくとも第1共通液室101に連通し、第2個別流路200Bは、共通液室のうち少なくとも第2共通液室102に連通し、並設方向である第1の方向Xから平面視した際に、ノズル面20aの面内方向における第1個別流路200Aの連通路である第1連通路19Aのノズル21側の開口と第1共通液室101との間隔d1は、第1連通路19Aの第1圧力室12A側の開口と第1共通液室101との間隔d2以下であり、第2個別流路200Bの連通路である第2連通路19Bのノズル21側の開口と第2共通液室102との間隔d3は、第2連通路19Bの第2圧力室12B側の開口と第2共通液室102との間隔d4以下であることが好ましい。これにより、第1共通液室101及び第2共通液室102のノズル21側をさらに拡幅することができ、比較的広い面積でコンプライアンス部494を設けることができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、共通液室は、ノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zにおいて圧力室12側に設けられた幅狭部である第1幅狭部16a、第2幅狭部17aと、ノズル面20a側に設けられてノズル21に向かって第1幅狭部16a、第2幅狭部17aよりも拡幅された幅広部である第1幅広部16b、第2幅広部17bと、を有し、共通液室のノズル21側の側壁には、第1幅狭部16a、第2幅狭部17aと第1幅広部16b、第2幅広部17bとによって段差である第1段差16c、第2段差17cが設けられている。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、ノズル21がノズルプレート20に設けられていると共に、ノズルプレート20の共通液室側の端部は、連通路の圧力室12側の開口の共通液室側の縁部よりもノズル21側に位置することが好ましい。すなわち、ノズルプレート20の第1共通液室101側の端部は、第1連通路19Aの第1圧力室12A側の開口の第1共通液室101側の縁部よりも第1ノズル21A側に位置する。また、ノズルプレート20の第2共通液室102側の端部は、第2連通路19Bの第2圧力室12B側の開口の第2共通液室102側の縁部よりも第2ノズル21B側に位置する。これにより、ノズルプレート20をさらに小型化してコストを低減することができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、ノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zにおいて共通液室の拡幅されたノズル21側の壁面に、液体であるインクの圧力を吸収可能なコンプライアンス部494が設けられている。
このように、コンプライアンス部494を個別流路200に対してノズル21と同じ側に配置することで、ノズル21が設けられていない領域にコンプライアンス部494を設けることができ、コンプライアンス部494を比較的広い面積で設けることができる。また、コンプライアンス部494を圧力室12に比較的近い場所に配置することができ、個別流路200内のインクの圧力変動をコンプライアンス部494によって効果的に吸収させることができる。
なお、本実施形態では、第1共通液室101と第2共通液室102とを設けたが、これら第1共通液室101と第2共通液室102とは、第2の方向Yの端部において連通していてもよい。すなわち、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとからは同じインクが吐出されるようにしてもよい。
また、本実施形態では、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとを第1の方向Xにずらして配置するようにしたが、特にこれに限定されず、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとを第1の方向Xの位置が同じ位置となるように配置してもよい。
さらに、第1共通液室101と第1連通路19Aとは、第3の方向Zで一部が重なる位置に配置してもよい。同様に、第2共通液室102と第2連通路19Bとは第3の方向Zで一部が重なる位置に配置してもよい。
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの断面図であって、図1のA-A′線に準じた断面図である。図5は、実施形態2の記録ヘッドの断面図であって、図1のB-B′線に準じた断面図である。また、図6は、実施形態2の流路を模式的に表したブロック図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図4及び図5に示すように、流路基板である流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、コンプライアンス基板49及びケース部材40には、第1共通液室101と、第2共通液室102と、第1共通液室101と第2共通液室102とに連通して第1共通液室101のインクを第2共通液室102に送る複数の個別流路200が設けられている。
第1共通液室101の第1連通部16は、上述した実施形態1と同様に第1幅狭部16aと第1幅広部16bとを有する。
また、第2共通液室102の第2連通部17は、上述した実施形態1と同様に第2幅狭部17aと第2幅広部17bとを有する。
また、ケース部材40には、第1液室部41に連通して第1液室部41にインクを導入する導入口43と、第2液室部42に連通して第2液室部42からのインクを排出する排出口44とが設けられている。
さらに、本実施形態の個別流路200は、第1共通液室101と第2共通液室102とに連通して、ノズル21毎に設けられたものであり、ノズル21を含むものである。このようなノズル21の並設方向である第1の方向Xにおいて隣接する3つの個別流路200は、それぞれ第1共通液室101及び第2共通液室102に連通して設けられている。すなわち、ノズル21毎に設けられた複数の個別流路200は、それぞれ第1共通液室101及び第2共通液室102のみで連通して設けられており、複数の個別流路200は、第1共通液室101及び第2共通液室102以外で互いに連通することがない。つまり、本実施形態では、1つのノズル21及び1つの圧力室12が設けられた流路を個別流路200と称し、各個別流路200同士は、第1共通液室101及び第2共通液室102のみで連通するように設けられている。
また、本実施形態では、個別流路200のうち、ノズル21よりも第1共通液室101側の流路を上流流路と称し、個別流路200のノズル21よりも第2共通液室102側の流路を下流流路と称する。
さらに、本実施形態では、第1の方向Xに並設された複数の個別流路200は、第1ノズル21Aを有する第1個別流路200Aと、第2ノズル21Bを有する第2個別流路200Bとを具備する。そして、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとが、第1の方向Xに交互に配置されている。
ここで、第1個別流路200Aは、第1供給路18Aと第1圧力室12Aと第1連通路19Aと第1ノズル21Aと第7流路207と第8流路208と第9流路209とを具備する。
第1供給路18A、第1圧力室12Aは、上述した実施形態1と同様であるため、重複する説明は省略する。
また、第1連通路19Aは、上述した実施形態1と同様に、第1流路201と第2流路202と第3流路203とを有する。
第7流路207は、第2連通板152とノズルプレート20との間に、一端が第1連通路19Aに連通するようにノズル面20aの面内方向において第2の方向Yに沿って延設されている。第7流路207は、第2連通板152に凹部を設け、この凹部の開口をノズルプレート20で蓋をすることで形成されている。なお、第7流路207は特にこれに限定されず、ノズルプレート20に凹部を設け、凹部を第2連通板152によって蓋をするようにしてもよく、第2連通板152とノズルプレート20との両方に凹部を設けるようにしてもよい。
第8流路208は、Z2側の一端が第7流路207に連通すると共に、第2連通板152を第3の方向に貫通して設けられている。
第9流路209は、第1連通板151と第2連通板152との間に、一端が第8流路208に連通し、他端が第2共通液室102に連通するようにノズル面20aの面内方向において第2の方向Yに沿って延設されている。本実施形態の第9流路209は、第2連通板152に凹部を設け、凹部を第1連通板151によって蓋をすることで形成されている。もちろん、第9流路209は、第1連通板151に凹部を設け、第2連通板152によって蓋をすることで形成してもよく、第1連通板151と第2連通板152との両方に凹部を設けるようにしてもよい。
また、第9流路209は、第2連通部17の第2幅広部17bの側面に連通して設けられている。すなわち、第9流路209は、第2連通部17の第2幅広部17bの側面に、第2段差17cに対応する位置に連通して設けられている。
このように第1個別流路200Aは、第1共通液室101に連通する上流側から第2共通液室102に連通する下流側に向かって順に第1供給路18A、第1圧力室12A、第1連通路19A、第1ノズル21A、第7流路207、第8流路208及び第9流路209を有する。つまり、本実施形態では、図6に示すように、第1個別流路200Aは、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れに対して、上流側から下流側に向かって圧力室12と第1ノズル21Aとがこの順番に配置されている。
そして、このような第1個別流路200Aでは、第1共通液室101から第1個別流路200Aを通り第2共通液室102にインクが流れる。また、圧電アクチュエーター300を駆動することによって第1圧力室12A内のインクに圧力変化を生じさせて、第1ノズル21A内のインクの圧力を上昇させることで第1ノズル21Aから外部にインク滴が吐出される。第1共通液室101から第1個別流路200Aを通り第2共通液室102にインクが流れる時に、圧電アクチュエーター300を駆動してもよいし、第1共通液室101から第1個別流路200Aを通り第2共通液室102にインクが流れない時に、圧電アクチュエーター300を駆動してもよい。また、圧電アクチュエーター300の駆動による圧力変化により、第2共通液室102から第1共通液室101へのインクの流れが一時的に生じてもよい。
なお、本実施形態では、第1個別流路200Aのうち、第1ノズル21Aよりも上流側、すなわち、第1共通液室101に連通する第1連通路19Aと第1圧力室12Aと第1供給路18Aとを第1上流流路と称する。また、第1個別流路200Aのうち、第1ノズル21Aよりも下流側、すなわち第2共通液室102に連通する第7流路207と第8流路208と第9流路209とを第1下流流路と称する。
第2個別流路200Bは、第10流路210と第11流路211と第12流路212と第2ノズル21Bと第2連通路19Bと第2圧力室12Bと第2供給路18Bとを具備する。
第10流路210は、第1連通板151と第2連通板152との間に、一端が第1共通液室101に連通するようにノズル面20aの面内方向において第2の方向Yに沿って延設されている。本実施形態の第10流路210は、第2連通板152に凹部を設け、凹部を第1連通板151によって蓋をすることで形成されている。もちろん、第10流路210は、第1連通板151に凹部を設け、第2連通板152によって蓋をすることで形成してもよく、第1連通板151と第2連通板152との両方に凹部を設けるようにしてもよい。
このような第10流路210と第1個別流路200Aの第1圧力室12Aとは、ノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zにおいて異なる位置に配置されている。具体的には、第1圧力室12Aは、第1連通板151のZ1側に設けられ、第10流路210は、第1連通板151のZ2側に設けられており、第1圧力室12Aと第10流路210とは、第3の方向Zに異なる位置に配置されている。このため、第1圧力室12Aと第10流路210とを第1の方向Xに近接して配置しても、第1圧力室12Aを隔てる隔壁の厚さが薄くなるのを抑制して、第1圧力室12Aの隔壁が変形することで第1圧力室12A内のインクの圧力を吸収するのを抑制し、吐出特性にばらつきが生じるのを抑制することができる。また、第1圧力室12Aと第10流路210とを第3の方向Zからの平面視において少なくとも一部が重なるように配置したとしても、第1圧力室12Aと第10流路210とが第3の方向Zに異なる位置に配置されているので、第1圧力室12Aと第10流路210とが連通することがない。なお、本実施形態では、第10流路210は、第3の方向Zからの平面視において第1圧力室12Aと重ならない位置に配置されている。
また、第10流路210は、第1連通板151と第2連通板152との間に設けられているため、第1連通部16の第1幅広部16bの側面に開口して設けられている。すなわち、第1連通部16の第1幅広部16bの側面に第1段差16cに対応する位置に連通して設けられている。このため、第1段差16cに気泡が滞留したとしても、第1段差16cに滞留した気泡は、第2個別流路200Bを介して第2共通液室102側に排出することができる。したがって、第1共通液室101内に気泡が滞留するのを抑制して、第1共通液室101の気泡が成長し、圧力室12へのインクの供給不良や、気泡が予期せぬタイミングで圧力室12に流れ込むことによるインク滴の吐出不良等を抑制することができる。
第11流路211は、Z1側の一端が第10流路210に連通すると共に、第2連通板152を第3の方向に貫通して設けられている。すなわち、第11流路211は、ノズル21から第1共通液室101までの間にノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zに延びて設けられている。
第12流路212は、第2連通板152とノズルプレート20との間に、一端が第11流路211に連通するようにノズル面20aの面内方向において第2の方向Yに沿って延設されている。第12流路212は、第2連通板152に凹部を設け、この凹部の開口をノズルプレート20で蓋をすることで形成されている。なお、第12流路212は特にこれに限定されず、ノズルプレート20に凹部を設け、凹部を第2連通板152によって蓋をするようにしてもよく、第2連通板152とノズルプレート20との両方に凹部を設けるようにしてもよい。
そして、連通板15とノズルプレート20との間には、第7流路207と第12流路212とが第1の方向Xに交互に配置されている。この第7流路207と第12流路212とが第1の方向Xに交互に配置された解像度を第2の解像度と称する。そして、第7流路207と第12流路212との第2の解像度は、第1圧力室12A又は第2圧力室12Bの第1の解像度よりも大きい。例えば、第1圧力室12Aが300dpi、第2圧力室12Bが300dpiの第1の解像度で形成されていると、第7流路207と第12流路212とは、600dpiの第2の解像度で形成されることになる。したがって、第1圧力室12A及び第2圧力室12Bのそれぞれの第1の解像度を、第7流路207と第12流路212との第2の解像度よりも小さくして、第1圧力室12A及び第2圧力室12Bの第1の方向Xの開口幅を広げることができ、圧力室12の排除体積を増大させることができる。
第2連通路19Bは、上述した実施形態1と同様に、第4流路204と第5流路205と第6流路206とを有する。
第2ノズル21Bと第2連通路19Bと第2供給路18Bと第2圧力室12Bとは、上述した実施形態1と同様であるため、重複する説明は省略する。
このように第2個別流路200Bは、第1共通液室101に連通する上流側から第2共通液室102に連通する下流側に向かって順に第10流路210、第11流路211、第12流路212、第2ノズル21B、第2連通路19B、第2圧力室12B及び第2供給路18Bを具備する。つまり、本実施形態では、図6に示すように、第2個別流路200Bは、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れに対して、上流側から下流側に向かって第2ノズル21Bと第2圧力室12Bとがこの順番に配置されている。すなわち、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとでは、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れに対して圧力室12とノズル21との順番が異なるように配置されている。本実施形態では、各個別流路200に圧力室12とノズル21とが1つずつ設けられているため、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとは、圧力室12とノズル21との順番が、逆転して配置されている。
そして、このような第2個別流路200Bでは、第1共通液室101から第2個別流路200Bを通り第2共通液室102にインクが流れる。また、圧電アクチュエーター300を駆動することによって第2圧力室12B内のインクに圧力変化を生じさせて、第2ノズル21B内の圧力を上昇させることで第2ノズル21Bから外部にインク滴が吐出される。第1共通液室101から第2個別流路200Bを通り第2共通液室102にインクが流れる時に、圧電アクチュエーター300を駆動してもよいし、第1共通液室101から第2個別流路200Bを通り第2共通液室102にインクが流れない時に、圧電アクチュエーター300を駆動してもよい。また、圧電アクチュエーター300の駆動による圧力変化により、第2共通液室102から第1共通液室101へのインクの流れが一時的に生じてもよい。ちなみに、第2ノズル21Bからのインク滴の吐出は、第2ノズル21B内のインクの圧力によって決定される。第2ノズル21B内のインクの圧力は、第1共通液室101から第2共通液室102に向かって流れるインクの圧力、所謂、循環の圧力と、圧電アクチュエーター300の駆動によって第2圧力室12Bから第2ノズル21Bに向かう圧力とによって決定される。
例えば、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れに対して、第2圧力室12B内のインクの圧力変動によって第2圧力室12Bから第2ノズル21Bに向かってインクが逆流して第2ノズル21Bからインク滴が吐出されてもよい。このように、第2圧力室12Bから第2ノズル21Bに向かってインクが逆流するということは、第1共通液室101から第2共通液室102に向かう循環の圧力が小さいことになるため、循環の圧力を比較的小さくすることで、個別流路200の圧力損失を小さくすることができる。そして、個別流路200の圧力損失を小さくすることで、各個別流路200間での圧力損失の差を減少させることができるため、各ノズル21から吐出されるインク滴の吐出特性のばらつきを低減することができる。
また、例えば、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れに対して、第2圧力室12B内のインクの圧力変動によって第2圧力室12Bから第2ノズル21Bに向かってインクが逆流することなく第2ノズル21Bからインクが吐出されてもよい。この場合、第2圧力室12Bから第2ノズル21Bに向かうインクの流れが発生しないため、第2圧力室12Bから第2ノズル21Bに向かって気泡が逆流し難く、気泡によって第2ノズル21Bからのインク滴の吐出不良が生じ難い。
なお、本実施形態では、第2個別流路200Bのうち、第2ノズル21Bよりも上流側、すなわち、第1共通液室101に連通する第10流路210と第11流路211と第12流路212とを第2上流流路と称する。また、第2個別流路200Bのうち、第2ノズル21Bよりも下流側、すなわち第2共通液室102に連通する、第2連通路19Bと第2圧力室12Bと第2供給路18Bとを第2下流流路と称する。
このような第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとが、図6に示すように、第1の方向Xに交互に配設されている。すなわち、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れに対して、圧力室12とノズル21との位置に関係なく、圧力室12内の圧力変動によってノズル21からインク滴を吐出することができる。つまり、第1個別流路200Aのように第1圧力室12Aが上流、第1ノズル21Aが下流に配置されていても、また、第2個別流路200Bのように第2ノズル21Bが上流、第2圧力室12Bが下流に配置されていても、圧力室12内のインクの圧力変動によって第1ノズル21A及び第2ノズル21Bの両者から選択的にインク滴を吐出することができる。このため、上述のように第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れに対して、圧力室12とノズル21との順番が異なる第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとを第1の方向Xに交互に配置することで、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとで圧力室12の位置を変更、すなわち、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとを第2の方向Yに異なる位置に配置することができる。したがって、各個別流路200の圧力室12を第1の方向Xに幅広に形成することや、圧力室12を第1の方向Xに高密度に配置することができる。つまり、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとを第2の方向Yに異なる位置に配置することで、第1の方向Xに並設された第1圧力室12Aの間の隔壁を厚くすることができると共に、第1の方向Xに並設された第2圧力室12Bの隔壁を厚くすることができる。したがって、第1圧力室12A及び第2圧力室12Bを第1の方向Xに幅広に形成しても、隔壁の剛性が低下するのを抑制することができ、排除体積を向上してインク滴の吐出特性、すなわち、インク滴の重量を増大させることができると共に、隔壁の剛性が低下することによるクロストークの発生を抑制することができる。また、第1圧力室12A及び第2圧力室12Bのそれぞれを第1の方向Xに高密度に配置しても、隔壁の剛性が低下するのを抑制することができ、隔壁の剛性が低下することによるクロストークの発生を抑制することができる。
ちなみに、例えば、第2個別流路200Bを設けずに、第1個別流路200Aのみを第1の方向Xに並設した場合、第1の方向Xに第1圧力室12Aを高密度に配置すると、隣接する第1圧力室12Aの間の隔壁の厚さが薄くなり、隔壁の剛性が低下する。このように隔壁の剛性が低下すると、隔壁の変形によるクロストークが発生する。すなわち、インク滴を吐出するノズル21の両側のノズル21からインク滴を同時に吐出する場合には、隣接する第1圧力室12Aの間の隔壁には両側から同じタイミングで圧力が印加される。この場合には、隔壁の剛性にかかわらず隔壁には両側から圧力が印加されるため、隔壁は変形し難い。これに対して、インク滴を吐出するノズル21の両側のノズル21からインク滴を吐出しない場合には、隣接する第1圧力室12Aの間の隔壁には片側のみに圧力が印加される。このとき、隔壁の剛性が低いと、隔壁が変形して圧力変動が吸収され、インク滴の吐出特性が低下する。このため、複数のノズル21の何れかからインク滴を吐出させるかの条件の違いによって、インク滴の吐出特性にばらつきが生じてしまう。したがって、第1圧力室12Aのみを設けた場合には、第1圧力室12Aを第1の方向Xに幅広に形成することができず、また、第1圧力室12Aを第1の方向Xに高密度に配置することができない。
本実施形態では、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとは、第2の方向Yに異なる位置に配置されているため、第1の方向Xで隣接する第1圧力室12Aの間の隔壁の厚さを比較的厚くすると共に、第1の方向Xで隣接する第2圧力室12Bの間の隔壁の厚さを比較的厚くすることができる。このため第1圧力室12A及び第2圧力室12Bをそれぞれ第1の方向Xに幅広に形成しても、第1圧力室12Aの間の隔壁及び第2圧力室12Bの間の隔壁の剛性が低下するのを抑制することができる。したがって、流路基板が第1の方向Xに大型化するのを抑制して、第1圧力室12A及び第2圧力室12Bの容積を大きくすることができ、圧電アクチュエーター300の駆動による排除体積を大きくして、インク滴の吐出特性、特にインク滴の重量を向上することができると共に、隔壁の剛性が低下することによるクロストークの発生を抑制することができる。
また、第1の方向Xにおいて第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとの間隔を短くしても、第1圧力室12Aの間の隔壁及び第2圧力室12Bの間の隔壁の剛性が低下するのを抑制することができるため、第1圧力室12A及び第2圧力室12Bを第1の方向Xに高密度に配置することが可能である。したがって、流路基板の第1の方向Xの小型化を図ると共に圧力室12の排除体積を向上してインク滴吐出特性を向上することや、圧力室12を第1の方向Xに高密度に配置してノズル21を高密度に配置することができると共に、隔壁の剛性が低下することによるクロストークの発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、第1ノズル21Aを、一端が第1圧力室12Aに連通する第3の方向Zに沿った第1連通路19Aの他端に連通する位置に配置している。このため、第1圧力室12Aから第1ノズル21Aまでの第1連通路19Aの横断面積を比較的大きくして、第1連通路19Aの流路抵抗を小さくして、第1ノズル21Aから吐出されるインク滴の重量を大きくすることができる。
同様に、本実施形態では、第2ノズル21Bを、一端が第2圧力室12Bに連通する第3の方向Zに沿った第2連通路19Bの他端に連通する位置に配置している。このため、第2圧力室12Bから第2ノズル21Bまでの第2連通路19Bの横断面積を比較的大きくして、第2連通路19Bの流路抵抗を小さくして、第2ノズル21Bから吐出されるインク滴の重量を大きくすることができる。
すなわち、本実施形態では、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとがそれぞれ第1連通路19A及び第2連通路19Bに直接連通するように、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとを第2の方向Yで異なる位置に配置し、ノズル21を第1の方向Xに所謂、千鳥配置とすることで、第1ノズル21A及び第2ノズル21Bから吐出されるインク滴の重量を大きくすることができる。
もちろん、第1ノズル21Aを第7流路207の途中に連通するように配置し、第2ノズル21Bを第12流路212の途中に連通するように配置してもよいが、第7流路207及び第12流路212は、連通板15の第3の方向Zの厚さによって流路の横断面積、特に第3の方向Zの高さを大きくすることに制限があるため、第1連通路19A及び第2連通路19Bに比べて第7流路207及び第12流路212は、流路抵抗が大きくなり易い。したがって、第1ノズル21A及び第2ノズル21Bから吐出されるインク滴の重量が比較的小さくなる虞がある。
また、本実施形態では、個別流路200のノズル21よりも第1共通液室101側の上流流路と、ノズル21よりも第2共通液室102側の下流流路とは、同じ流路抵抗となるように設けられている。
すなわち、第1個別流路200Aの第1上流流路と第1下流流路とは、同じ流路抵抗となっている。つまり、第1上流流路を構成する第1供給路18A、第1圧力室12A及び第1連通路19Aの合計の流路抵抗と、第1下流流路を構成する第7流路207、第8流路208及び第9流路209の合計の流路抵抗とは、同じ流路抵抗となるように形成されている。ここで、第1上流流路と第1下流流路との流路抵抗とは、流路を横断する断面積、流路長、及び形状によって決定されるものである。
また、第2個別流路200Bの第2上流流路と第2下流流路とは同じ流路抵抗となっている。すなわち、第2上流流路を構成する第10流路210、第11流路211、第12流路212の合計の流路抵抗と、第2連通路19B、第2圧力室12B、第2供給路18Bの合計の流路抵抗とは、同じ流路抵抗となるように形成されている。
そして、本実施形態では、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとは、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れる方向に対して互いに反転させた形状となっている。すなわち、第1個別流路200Aの第1上流流路と第2個別流路200Bの第2下流流路とは同じ形状で且つ同じ流路抵抗となるように設けられており、第1個別流路200Aの第1下流流路と第2個別流路200Bの第2上流流路とは同じ形状で且つ同じ流路抵抗となるように設けられている。
このように、第1個別流路200Aの第1上流流路と第1下流流路とを同じ流路抵抗とし、第2個別流路200Bの第2上流流路と第2下流流路とを同じ流路抵抗とすることで、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとを、第1共通液室101から第2共通液室102に向かうインクの流れる方向に対して互いに反転させた形状としても、第1共通液室からノズル21までの第1上流流路と第2上流流路との流路抵抗を揃えることができる。したがって、第1個別流路200Aの第1ノズル21Aから吐出されるインク滴と、第2個別流路200Bの第2ノズル21Bから吐出されるインク滴との吐出特性にばらつきが生じるのを抑制することができると共に、流路の構造を簡略化することができる。
また、第1個別流路200Aの第1下流流路と第2個別流路200Bの第2下流流路との流路抵抗を揃えることで、ノズル21から吐出されるインク滴の吐出特性を揃えることができる。つまり、複数のノズル21から同時にインク滴を吐出する場合、第1共通液室101と第2共通液室102との両方から圧力室12にインクが供給されるため、第1下流流路と第2下流流路とを同じ流路抵抗とすることで、インクの供給量にばらつきが生じるのを抑制して、インク滴の吐出特性にばらつきが生じるのを抑制することができる。
ちなみに、例えば、第1個別流路200Aの第1上流流路と第1下流流路との流路抵抗が異なる場合、第1個別流路200Aを反転させて第2個別流路200Bとした際に、第1個別流路200Aの第1下流流路が第2個別流路200Bの第2上流流路となるため、第1共通液室101からノズル21までの第1上流流路と第2上流流路とで異なる流路抵抗になってしまう。このため、第1個別流路200Aの第1ノズル21Aと第2個別流路200Bの第2ノズル21Bとから吐出されるインク滴の吐出特性にばらつきが生じてしまう。また、第1上流流路と第2上流流路とを同じ流路抵抗にするためには、第2上流流路を第1下流流路とは異なる断面積、流路長、形状等で形成しなくてはならず煩雑である。
また、第1共通液室101から個別流路200を介して第2共通液室102にインクを流した状態で、ノズル21からインク滴を吐出しない非吐出時において、ノズル21の並設方向である第1の方向Xで隣接する個別流路200のノズル21内の大気圧を基準としたインクの圧力差は、-2%以上、+2%以上であることが好ましい。例えば、大気圧を1013hPaとした場合、ノズル21内の圧力は約1000hPa程度である。したがって、隣接するノズル21内のインクの圧力差は、最大で約20hPa程度である。
このように非吐出時において、第1の方向Xで隣接する第1ノズル21A内のインクの圧力と、第2ノズル21B内のインクの圧力との差を、-2%以上、+2%以下と比較的小さくすることで、第1ノズル21Aから吐出されるインク滴と第2ノズル21Bから吐出されるインク滴との吐出特性にばらつきが生じるのを抑制することができる。このように、第1ノズル21A内のインクの圧力と、第2ノズル21B内のインクの圧力との差を比較的小さくするには、第1共通液室101から第1ノズル21Aまでの流路抵抗と、第1共通液室101から第2ノズル21Bまでの流路抵抗とを、ノズル21内のインクの圧力差が-2%以上、+2%以下となるように揃える必要がある。そして、第1共通液室101から第1ノズル21Aまでの流路抵抗と、第1共通液室101から第2ノズル21Bまでの流路抵抗とをノズル21内のインクの圧力差が-2%以上、+2%以下となるように形成する場合、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとを同じ形状で且つインクの流れる方向に対して互いに反転させた形状とすることで、個別流路200の構造を簡略化して第1圧力室12A及び第2圧力室12Bを第2の方向Yで異なる位置に配置することができる。
また、第1上流流路と第1下流流路との流路抵抗、及び、第2上流流路と第2下流流路との流路抵抗や、第1の方向Xで隣接する2つのノズル21内のインクの圧力差は、上述したものに限定されるものではない。例えば、第1上流流路と第1下流流路との流路抵抗、及び、第2上流流路と第2下流流路との流路抵抗のそれぞれが異なる場合や、第1ノズル21A内のインクの圧力と第2ノズル21B内のインクの圧力とが-2%より小さい、又は、+2%よりも大きくてもよい。このような場合には、ノズル21の並設方向で隣接する個別流路200のそれぞれの圧電アクチュエーター300に印加する電圧を異ならせるようにすればよい。
例えば、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとが反転した構造の場合において、第1上流流路の流路抵抗が第1下流流路よりも大きい場合には、第1ノズル21A内のインクの圧力が小さくなり、第1ノズル21Aから吐出されるインク滴の重量は小さくなる。これに対して、第1個別流路200Aと第2個別流路200Bとが反転した構造の場合には、第2上流流路の流路抵抗が第2下流流路の流路抵抗よりも小さくなり、第2ノズル21B内のインクの圧力は小さくなる。したがって、第2ノズル21Bから吐出されるインク滴の重量は大きくなる。したがって、第1個別流路200Aに対応する圧電アクチュエーター300に印加する電圧を、第2個別流路200Bに対応する圧電アクチュエーター300に印加する電圧よりも相対的に大きくする。なお、第1個別流路200Aに対応する圧電アクチュエーター300に印加する電圧を、第2個別流路200Bに対応する圧電アクチュエーター300に印加する電圧よりも相対的に大きくするには、例えば、第1個別流路200Aに対応する圧電アクチュエーター300に印加する電圧を大きくするようにしてもよく、第2個別流路200Bに対応する圧電アクチュエーター300に印加する電圧を小さくするようにしてもよく、これらの両方を基準となる電圧に対して行うようにしてもよい。これにより、第1ノズル21A内のインクの圧力と第2ノズル21B内のインクの圧力とに比較的大きな差が生じたとしても、圧電アクチュエーター300に印加する電圧を調整することで、第1ノズル21A及び第2ノズル21Bから吐出されるインク滴の重量のばらつきを低減して、印刷品質を向上することができる。
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1では、流路が形成された流路基板と、流路の液体に圧力変化を生じさせるためのエネルギー発生素子である圧電アクチュエーター300と、を備え、流路は、共通液室である第1共通液室101及び第2共通液室102と第1共通液室101、第2共通液室102に連通する複数の個別流路200と、を備え、個別流路200は、外部と連通するノズル21と、圧電アクチュエーター300により圧力変化が生じる圧力室12と、ノズル21が開口するノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zに延設されてノズル21と圧力室12とを連通する連通路である第1連通路19A、第2連通路19Bと、を備え、個別流路200は、圧力室12として第1圧力室12Aを有する第1個別流路200Aと、圧力室12として第2圧力室12Bを有する第2個別流路200Bと、を有し、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとは、ノズル21の並設方向から平面視した際に、互いに重ならない位置に配置されており、第1個別流路200Aの連通路である第1連通路19Aは、ノズル21に連通する開口が、第1圧力室12Aに連通する開口よりも第2圧力室12B側に位置し、第2個別流路200Bの連通路である第2連通路19Bは、ノズル21に連通する開口が、第2圧力室12Bに連通する開口よりも第1圧力室12A側に位置し、第1共通液室101、第2共通液室102のノズル21側の開口は、圧力室12側の開口よりもノズル21側に拡幅されている。
このように、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口を第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側に配置すると共に、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口を第2圧力室12B側の開口よりも第1圧力室12A側に配置することで、第1共通液室101及び第2共通液室102のノズル21側の開口を圧力室12側の開口よりもノズル21側、すなわち、第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとの間に向かって拡幅することができる。したがって、第1共通液室101及び第2共通液室102の拡幅によって流路基板が大型化するのを抑制することができる。
また、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口と、第2連通路19B側の第2ノズル21B側の開口とを第2の方向Yに近接して設けることができるため、ノズルプレート20を小型化することができ、コストを低減することができると共に、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとの第2の方向Yの距離を狭めることができる。
また、本実施形態の記録ヘッド1では、共通液室は、ノズル面20aの垂線方向である第3の方向Zにおいて圧力室12側に設けられた幅狭部である第1幅狭部16a、第2幅狭部17aと、ノズル面20a側に設けられてノズル21に向かって第1幅狭部16a、第2幅狭部17aよりも拡幅された幅広部である第1幅広部16b、第2幅広部17bと、を有し、共通液室のノズル21側の側壁には、第1幅狭部16a、第2幅狭部17aと第1幅広部16b、第2幅広部17bとによって段差である第1段差16c、第2段差17cが設けられている。
そして本実施形態の記録ヘッド1では、共通液室は、第1共通液室101と第2共通液室102とを有し、個別流路200は、第1共通液室101と第2共通液室102との両方に連通して、第1共通液室101から第2共通液室102に液体であるインクを供給し、第1個別流路200Aは、幅狭部である第1幅狭部16aと連通し、第2個別流路200Bは、幅広部である第1幅広部16bの第1幅狭部16a側の側面に連通して設けられている。
これにより、第1段差16cに滞留した気泡を、第2個別流路200Bを介して第2共通液室102に排出することができ、第1共通液室101内の気泡が成長し、予期せぬタイミングで圧力室12内に入り込むのを低減して、インク滴の吐出不良を抑制することができる。
なお、本実施形態では、ノズルプレート20とコンプライアンス基板49とを別体で設けた構成としたが、特にこれに限定されない。例えば、ノズルプレート20を第1共通液室101及び第2共通液室102の開口を覆う大きさで設け、ノズルプレート20の一部にコンプライアンス部494を設けるようにしてもよい。このようなコンプライアンス部494が設けられたノズルプレート20は、ポリイミド等の樹脂フィルムや、ステンレス鋼棟の金属材料で製造することができる。
このようにノズルプレート20の一部にコンプライアンス部494を設けた場合、ノズルプレート20が第1共通液室101及び第2共通液室102の開口を覆うため、連通板15のZ2側の第1共通液室101とノズル21との間、及び、第2共通液室102とノズル21との間は、ノズルプレート20で覆われている。このため、ノズルプレート20と連通板15との接合界面に第1共通液室101及び第2共通液室102に連通する個別流路200の一部である第9流路209や第10流路210等を形成することができる。そして、ノズルプレート20と連通板15との接合界面に個別流路200の一部である第9流路209や第10流路210などを形成することで、連通板15を複数の基板を積層して製造する必要がなく、1枚の基板で製造することができる。ただし、ノズルプレート20と連通板15との間に個別流路200の一部である第9流路209及び第10流路210を形成すると、第1段差16cに滞留した気泡を、第2個別流路200Bを介して第2共通液室102側に排出し難くなる。したがって、ノズルプレート20にコンプライアンス部494を設けた場合であっても、第9流路209及び第10流路210を第1連通板151と第2連通板152との間に設けるのが好ましい。これにより第1段差16cに滞留した気泡を第2個別流路200Bによって第2共通液室102側に排出し易くして、第1共通液室101内に気泡が滞留することによる不具合を抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態では、第1共通液室101の第1連通部16に第1幅狭部16aと第1幅広部16bを設けることで、第1共通液室101のノズル21側の開口面積を圧力室12側の開口面積よりも広げるようにしたが、特にこれに限定されない。ここで、第1共通液室101と第2共通液室102との変形例を図7及び図8を参照して説明する。なお、図7は、記録ヘッドの変形例を示す断面図であって、図1のA-A′線に準じた断面図である。図8は、記録ヘッドの変形例であって、図1のB-B′線に準じた断面図である。
図7及び図8に示すように、第1共通液室101の第1連通部16の第2共通液室102側の側面は、第2の方向Yにおいてノズル21側が拡幅するように傾斜して設けられている。
同様に、第2共通液室102の第2連通部17の第1共通液室101側の側面は、第2の方向Yにおいてノズル21側が拡幅するように傾斜して設けられている。
このような構成であっても、第1共通液室101及び第2共通液室102のノズル21側であるZ2側の開口面積を広げて、コンプライアンス部494を比較的広い面積で形成することができる。また、第1共通液室101の側面に段差を設けることなく、側面を傾斜させることで、段差に気泡が滞留するのを抑制することができる。もちろん、このような傾斜した側面は、第1幅広部16b及び第2幅広部17bの側面のみに適用してもよい。
また、上述した実施形態1及び2では、第1連通路19A及び第2連通路19Bの途中に水平流路である第2流路202及び第5流路205を設けて屈曲するようにしたが、特にこれに限定されるものではない。ここで、記録ヘッドの変形例を図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は、記録ヘッドの変形例を示す断面図であって図1のA-A′線に準じた断面図である。図10は、記録ヘッドの変形例を示す断面図であって図1のB-B′線に準じた断面図である。
図9に示すように、第1連通路19Aは、第3の方向Zに対して傾斜して設けられている。具体的には、第1連通路19Aは、第1圧力室12Aに連通する端部が第1共通液室101側であり、第1ノズル21Aに連通する端部が第2共通液室102側となるように、第2の方向Yに傾斜して設けられている。このように、第1連通路19Aを傾斜して設けることによっても、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口を、第1連通路19Aの第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側となるように形成することができる。すなわち、第1連通路19Aの第1ノズル21A側の開口が、第1連通路19Aの第1圧力室12A側の開口よりも第2圧力室12B側に配置されているとは、上述した各実施形態のように第1連通路19Aの途中にノズル面20aの面内方向に沿って設けられた第2流路202が設けられた構成も、また、図9に示すように、第1連通路19Aが第3の方向Zに対して傾斜して設けられた構成も含むものである。
このように、第1連通路19Aを第3の方向Zに対して傾斜させて設けることで、第1共通液室101のノズル21側であるZ2側の開口を第2共通液室102側に拡幅して、第1コンプライアンス部494Aを比較的広い面積で形成することができる。
また、図10に示すように、第2連通路19Bは、第3の方向Zに対して傾斜して設けられている。具体的には、第2連通路19Bは、第2圧力室12Bに連通する端部が第2共通液室102側であり、第2ノズル21Bに連通する端部が第1共通液室101側となるように、第2の方向Yに傾斜して設けられている。すなわち、第2連通路19Bの第2ノズル21B側の開口が、第2連通路19Bの第2圧力室12B側の開口よりも第1圧力室12A側に配置されているとは、上述した各実施形態のように第2連通路19Bの途中にノズル面20aの面内方向に沿って設けられた第5流路205が設けられた構成も、また、図10に示すように、第2連通路19Bが第3の方向Zに対して傾斜して設けられた構成も含むものである。
このように、第2連通路19Bを第3の方向Zに対して傾斜させて設けることで、第2共通液室102のノズル21側であるZ2側の開口を第1共通液室101側に拡幅して、第2コンプライアンス部494Bを比較的広い面積で形成することができる。
なお、このような図9及び図10に示す第1連通路19A及び第2連通路19Bと、図7及び図8に示す第1共通液室101及び第2共通液室102とを組み合わせるようにしてもよい。このように図9及び図10に示す第1連通路19A及び第2連通路19Bと、図7及び図8に示す第1共通液室101及び第2共通液室102を組み合わせる場合、第2流路202、第5流路205などのノズル面20aの面内方向に沿った水平流路や、第1共通液室101及び第2共通液室102に第1段差16c、第2段差17cが設けられないため、連通板15を複数の基板を積層して製造する必要がなく、1枚の基板で製造することが可能となる。
さらに、図9及び図10に示す第1連通路19A及び第2連通路19Bと、図7及び図8に示す第1共通液室101及び第2共通液室102とは、上述した実施形態2に適用することも可能である。
さらに、上述した各実施形態では、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとが、第2の方向Yに異なる位置に配置された構成を例示したが、特にこれに限定されず、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとが、第2の方向Yで同じ位置となるように、すなわち、ノズル21が第1の方向Xに沿った直線上に配置されるように設けるようにしてもよい。ちなみに、上述した実施形態2において、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとを第2の方向Yで同じ位置に設けるには、第1ノズル21Aを第7流路207の途中に連通する位置に設け、第2ノズル21Bを第12流路212の途中に連通する位置に設けるようにすればよい。もちろん、第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとが第2の方向Yで異なる位置に配置される場合であっても、第1ノズル21Aを第7流路207の途中に連通する位置に設け、第2ノズル21Bを第12流路212の途中に連通する位置に設けるようにしてもよい。
このように第1ノズル21Aと第2ノズル21Bとを第2の方向Yに比較的近い位置に配置することで、第1ノズル21A及び第2ノズル21Bのそれぞれから吐出されたインク滴により発生した乱流が互いに影響するのを抑制して、乱流によるインク滴の飛翔方向にずれを抑制することができる。また、複数のノズル21を第1の方向Xに直線上に配置することで、各ノズル21からインク滴を吐出させるタイミングをずらすように調整する必要がなく、圧電アクチュエーター300の駆動制御を簡略化することができる。
また、上述した各実施形態では、第1圧力室12Aの列と第2圧力室12Bの列とが1列ずつ、合計2列設けられた構成を例示したが、特にこれに限定されず、第1圧力室12Aが2列以上設けられていてもよく、第2圧力室12Bが2列以上設けられていてもよい。
また、流路形成基板10の第1圧力室12Aと第2圧力室12Bとの間で、圧電アクチュエーター300とフレキシブルケーブル120とを接続するようにしたが、特にこれに限定されず、圧電アクチュエーター300から引き出された配線を保護基板30上まで延設して、保護基板30上でフレキシブルケーブル120と接続するようにしてもよく、圧電アクチュエーター300とフレキシブルケーブル120とを直接接続するようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、各個別流路200にノズル21と圧力室12とが1つずつ設けられた構成を例示したが、ノズル21と圧力室12との数は特に限定されず、1つの圧力室12に対して2以上の複数のノズル21が設けられていてもよく、また、1つのノズル21に対して2以上の圧力室12が設けられていてもよい。ただし、1つの個別流路200に設けられたノズル21からは、1吐出周期で同時にインク滴が吐出されるものである。つまり、1つの個別流路200に複数のノズル21が設けられていても、複数のノズル21からは同時にインク滴を吐出するか、同時にインク滴を吐出しない非吐出かの何れかのみが行われればよい。すなわち、1つの個別流路200に複数のノズル21を設けた構成では、複数のノズル21からのインク滴の吐出、非吐出が同時に行われればよい。
また、上述した各実施形態では、流路基板は、流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、コンプライアンス基板49、ケース部材40等を有するものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、流路基板は1枚の基板であっても、また、2枚以上の複数の基板が積層されたものであってもよい。例えば、流路基板は、流路形成基板10、と、ノズルプレート20とを含んでいてもよく、連通板15と、コンプライアンス基板49と、ケース部材40とを含んでいなくてもよい。また、複数の流路形成基板10により1つの圧力室12を形成してもよいし、流路形成基板10に圧力室12と第1共通液室101と第2共通液室102とを形成してもよい。
また、上述した各実施形態では、圧力室12に圧力変化を生じさせるエネルギー発生素子として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、エネルギー発生素子として、圧力室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
ここで、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の一例について図11を参照して説明する。なお、図11は、本発明のインクジェット式記録装置の概略構成を示す図である。
図11に示すように、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iでは、複数の記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されている。記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。本実施形態では、キャリッジ3の移動方向が第2の方向Yとなっている。
また、装置本体4には、液体としてインクが貯留された貯留手段であるタンク2が設けられている。タンク2は、チューブ等の供給管2aを介して記録ヘッド1と接続されており、タンク2からのインクは供給管2aを介して記録ヘッド1に供給される。
そして、駆動モーター7の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7aを介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の被噴射媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラー8に限られずベルトやドラム等であってもよい。本実施形態では、記録シートSの搬送方向が第1の方向Xとなっている。
なお、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した実施形態2のようにタンク2と記録ヘッド1との間でインクを循環させる場合には、タンク2及び記録ヘッド1を接続する排出管を設け、記録ヘッド1からのインクを、排出管を介してタンク2に戻すようにすればよい。
なお、各実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。