以下、本開示の実施形態に係る回転電極、殺菌処理装置及び殺菌処理システムについて、図面を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は、本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(1)殺菌処理システムの全体構成
図1を参照して殺菌処理装置1の全体構成を説明する。
図1に示すように、殺菌処理装置1は、液体食品に電圧を印加することで、液体食品を殺菌処理する装置である。液体食品は、食品を液状又はゲル状にしたものである。液体食品は、粘着性を有していてもよい。食品は、生鮮食品(生で食べられる食品)を含むが、生鮮食品に限定されない。液体食品の例としては、例えば野菜ジュース及び牛乳である。
殺菌処理装置1は、2つの回転電極2A,2Bと、電極格納容器3と、冷却水連結部4A~4Dと、モータ5A,5B(第1駆動源、第2駆動源)と、絶縁ベルト6A,6Bと、接触部材7A,7Bと、ポンプ27(第1ポンプ)とを備える。
回転電極2A,2Bはそれぞれ、他方の回転電極2B,2Aとの間に印加される電圧によって液体食品を殺菌処理する殺菌処理電極である。回転電極2A,2Bは、回転電極本体21と冷却流路22とを有する。以下の説明では、回転電極2Aの回転電極本体21及び冷却流路22を回転電極本体21A及び冷却流路22Aと記載し、回転電極2Bの回転電極本体21及び冷却流路22を回転電極本体21B及び冷却流路22Bと記載する場合がある。
回転電極本体21は、回転可能に支持され、駆動源(モータ5A,5B)によって回転可能である。回転電極本体21は、導電性を有する部材(例えば金属、具体的にはステンレス)によって形成されている。すなわち、回転電極本体21は、導電性を有する。回転電極本体21は、例えば回転対称な形状である。回転電極本体21の中心軸が回転軸になっている。回転電極本体21の内部には、冷却流路22が設けられている。冷却流路22は、冷媒(例えば冷却水)が流れる部分であり、回転電極本体21の内部において、回転電極本体21の回転軸に沿って真っ直ぐに延びている。冷却流路22の両端はそれぞれ、回転電極本体21の両側の端面の中央において開口している。
回転電極2A,2Bはそれぞれ、回転電極本体21に設けられる一対の回転軸部材23,24を更に有する。以下の説明では、回転電極2Aの一対の回転軸部材23,24を回転軸部材23A,24Aと記載し、回転電極2Bの一対の回転軸部材23,24を回転軸部材23B,24Bと記載する場合がある。
一対の回転軸部材23,24は、導電性を有する部材(例えば金属、具体的にはステンレス)によって形成されている。すなわち、一対の回転軸部材23,24は、導電性を有する。回転軸部材23,24は、円筒状である。回転軸部材23,24の内部には、軸側冷却流路231,241が設けられている。軸側冷却流路231,241は、回転軸部材23,24の長手方向(筒軸方向)に沿って貫通している。
一対の回転軸部材23,24はそれぞれ、回転電極本体21の両端面の各々の中心に設けられている。一対の回転軸部材23,24は、回転電極本体21の両端面において、回転電極本体21の回転軸に沿って外側に突出している。すなわち、一対の回転軸部材23,24は、回転電極本体21の両端面において回転電極本体21と同心状に設けられている。一対の回転軸部材23,24の軸側冷却流路231,241はそれぞれ、回転電極本体21の冷却流路22の両端開口と繋がっている。すなわち、回転電極本体21の冷却流路22と、一対の回転軸部材23,24の各々の軸側冷却流路231,241とは、一本の冷却流路を構成している。
電極格納容器3は、2つの回転電極本体21を回転可能に格納する部材である。電極格納容器3は、絶縁性を有する部材(例えば樹脂、具体的にはジュラコン)によって形成されている。電極格納容器3は、例えば直方体形であり、内部に2つの回転電極本体21を収容する内部格納部30を有する。
また、電極格納容器3は、4つの貫通孔33~36と、導入部31と、排出部32とを有する。貫通孔33,34は、一方の回転電極2Aの一対の回転軸部材23A,24Aを貫通させる貫通孔である。貫通孔35,36は、他方の回転電極2Bの一対の回転軸部材23B,24Bを貫通させる貫通孔である。貫通孔33,35は、電極格納容器3の側面3aに設けられており、貫通孔34,36は、電極格納容器3において側面3bに設けられている。側面3bは、電極格納容器3において側面3a側とは反対側の側面である。
回転電極2Aにおいて、回転電極本体21Aは、電極格納容器3の内部(内部格納部30)に回転可能に格納されており、一対の回転軸部材23A,24Aは、貫通孔33,34を回転可能に貫通して、電極格納容器3の内部から外部に突出している。回転電極2Bにおいて、回転電極本体21Bは、電極格納容器3の内部(内部格納部30)に回転可能に格納されており、一対の回転軸部材23B,24Bは、貫通孔35,36を回転可能に貫通して、電極格納容器3の内部から外部に突出している。すなわち、各回転電極2A,2Bは、貫通孔33~36によって回転可能に支持されており、回転軸部材23A,24A,23B,24Bを回転させることで、電極格納容器3内の回転電極本体21A,21Bを回転させることが可能である。電極格納容器3内において、2つの回転電極本体21A,21B(の回転軸)は、互いに平行に配置されており、また、2つの回転電極本体21A,21Bは、互いに近接(例えば2つの回転電極2A,2Bの各々の外周面の間の隙間4mm)して配置されている。
導入部31は、液体食品を電極格納容器3の外部から内部に導入する部分である。導入部31は、電極格納容器3の内部(内部格納部30)と外部とを貫通する貫通孔である。排出部32は、液体食品を電極格納容器3の内部から外部に排出する部分である。排出部32は、電極格納容器3の内部(内部格納部30)と外部とを貫通する貫通孔である。導入部31及び排出部32は、電極格納容器3の複数の側面のうち、2つの回転電極2A,2Bが並ぶ方向の両側の側面3c,3dに設けられている。これにより、導入部31に導入された液体食品は、電極格納容器3の内部において、一方の回転電極本体21A側から2つの回転電極本体21A,21Bの間を通って他方の回転電極本体21B側に流れて排出部32から外部に排出される。導入部31及及び排出部32にはそれぞれ、液体食品が流れるホースが接続可能な接続部11(例えばニップル)が接続されている。
冷却水連結部4A~4Dはそれぞれ、回転軸部材23A,24A,23B,34Bの端部に回転可能に連結されている。冷却水連結部4A~4Dはそれぞれ、連結された回転軸部材23A,24A,23B,24Bの軸側冷却流路231,241への冷却水(冷媒)の供給、又は軸側冷却流路231,241からの冷却水の排出を行う。各冷却水連結部4A~4Dは、床又は地面などに固定部品9で固定されている。
冷却水連結部4A~4Dの内部には、冷却水が流れる冷却流路41が設けられている。冷却流路41は、冷却水連結部4A~4Dの内部を真っ直ぐに延びて貫通している。冷却水連結部4A~4Dの冷却流路41の一端は、連結された回転軸部材23A,24A,23B,24Bの軸側冷却流路231,241と繋ながっている。また、冷却水連結部4A~4Dは、冷却水が流れるホース13,14が接続可能な接続部42(例えばニップル)を備える。接続部42は、冷却水連結部4A~4Dの外面において、冷却流路41の他端に連結するように設けられている。
本実施形態では、2つの回転電極2A,2Bの冷却流路22A,22Bには、例えば、互いに同じ側から冷却水が供給され、互いに同じ側から冷却水が排出される。このため、同じ側の2つの冷却水連結部(例えば4A,4C)の接続部42から冷却水が供給される。そして、同じ側の2つの冷却水連結部(例えば4B,4D)の接続部42から冷却水が排水される。
接触部材7A,7Bは、高電圧発生装置101の出力電圧を回転電極2A,2Bの間に印加させるための部材である。接触部材7A,7Bはそれぞれ、回転電極2A,2Bに電気的に接触するように配置される。高電圧発生装置101は、例えば電界強度40~50kV/cmの高電圧が出力可能な装置である。接触部材7A,7Bは、導電性を有する部材(例えば金属)によって、例えば弾性片状に形成されている。一方の接触部材7Aは、一方の回転電極2Aの一方の回転軸部材(例えば24A)に接触しており、他方の接触部材7Bは、他方の回転電極2Bの一方の回転軸部材(例えば24B)に接触している。一方の接触部材7Aに高電圧発生装置101の出力電圧が印加され、他方の接触部材7Bは接地される。これにより、高電圧発生装置101の出力電圧が、2つの回転電極2A,2Bの回転電極本体21A,21Bの間に印加され、この印加電圧によって2つの回転電極本体21A,21Bの間を流れる液体食品が殺菌される。
モータ5A,5Bはそれぞれ、回転電極2A,2Bを回転させる駆動源である。モータ5A,5Bは、回転軸部材51を有する。モータ5Aの回転軸部材51と回転電極2Aの一方の回転軸部材(例えば23A)との間には、絶縁ベルト6Aが渡されている。より詳細には、モータ5Aの回転軸部材51及び回転電極2Aの回転軸部材23Aにはそれぞれ、プーリー52A,23Aaが設けられており、プーリー52A,23Aa間に、絶縁ベルト6Aが渡されている。モータ5Bの回転軸部材51と回転電極2Bの一方の回転軸部材(例えば23B)との間には、絶縁ベルト6Bが渡されている。より詳細には、モータ5Bの回転軸部材51及び回転電極2Bの回転軸部材23Bにはそれぞれ、プーリー52B,23Baが設けられており、プーリー52B,23Ba間に、絶縁ベルト6Bが渡されている。モータ5A,5Bが回転軸部材51を回転させることで、その回転力が絶縁ベルト6A,6Bを回転させて、回転電極2A,2Bの回転軸部材23A,23Bが回転する。この結果、モータ5A,5Bによって回転電極2A,2Bの回転電極本体21A,21Bが回転する。本実施形態では、モータ5A,5Bによって、各回転電極2A,2Bは、互いに逆方向に回転するが、互いに同じ方向に回転してもよい。
絶縁ベルト6A,6Bは、モータ5A,5Bの回転軸部材51と回転電極2A,2Bの回転軸部材(例えば23A,23B)との間(より詳細にはプーリー52A,52Bとプーリー23Aa,23Baとの間)に渡されて、モータ5A,5Bの回転軸部材51の回転を回転電極2A,2Bの回転軸部材23A,23Bに伝達する部材である。絶縁ベルト6A,6Bは、無端ベルトである。絶縁ベルト6A,6Bは、絶縁性を有する部材(例えばゴム)で形成されている。
ポンプ27は、冷却水を2つの回転電極2A,2Bの冷却流路22A,22Bに供給する。より詳細には、ポンプ27の吐出部は、ホース13を介して2つの冷却水連結部4A,4Cの接続部42に接続されている。ポンプ27から吐出された冷却水は、2つの冷却水連結部4A,4Cの接続部42から冷却水連結部4A,4Cを通って回転電極2A,2Bの冷却流路22A,22Bに供給される。
(2)動作説明
この殺菌処理装置1は、2つのモータ5A,5Bが回転駆動することで、2つの回転電極2A,2Bが回転する。また、ポンプ27によって2つの冷却水連結部4A,4Cに冷却水が供給されることで、2つの回転電極2A,2Bの各々の冷却流路22A,22B内に冷却水が流れて回転電極本体21A,21Bが冷却される。また、高電圧発生装置101によって接触部材7Aに高電圧が印加される。これにより、2つの回転電極本体21A,21Bの間に高電圧が印加される。この状態で、導入部31に液体食品が導入される。これにより、液体食品が導入部31から電極格納容器3の内部格納部30内を流れて2つの回転電極本体21A,21Bの間を通って排出部32から外部に排出される。その際、液体食品は、2つの回転電極本体21A,21Bの間を流れるときに、2つの回転電極本体21A,21Bの間の印加電圧に晒されることで殺菌される。そして、殺菌された液体食品は、排出部32から外部に排出される。
この殺菌処理装置1では、回転電極本体21A,21Bが回転するため、回転電極本体21A,21Bの間に印加される電圧が回転電極本体21A,21Bの一定箇所に印加され続けることを抑制できる。これにより、印加電圧による回転電極本体21A,21Bの消耗を抑制できる。この摩耗の抑制によって、回転電極本体21A,21Bの摩耗箇所に液状食品に含まれる固形物が蓄積することも抑制できる。また、回転電極2A,2Bの回転によって、2つの回転電極2A,2Bの間に高電圧が印加されても、液体食品内に含まれる固形物が帯電して2つの回転電極2A,2B間に吸着することを抑制できる。
また、回転電極本体21A,21Bは、内部の冷却流路22A,22Bを流れる冷却水によって内部に発生するジュール熱を吸収する。このため、回転電極本体21A,21Bの温度上昇を抑制できる。これにより、液体食品が回転電極本体21A,21Bで殺菌されるときに加熱されることを抑制できる。また、2つの回転電極2A,2B間に高電圧が印加される場合でも、回転電極2A,2Bの発熱を抑制して回転電極2A,2Bを長時間連続して使用することができる。
(3)回転電極の詳細
図2を参照して、回転電極2Aの構造について詳しく説明する。回転電極2Bの構造は、回転電極2Aの構造と同じであるため、回転電極2Bの構造の説明は省略する。
上述のように、回転電極2Aは、回転電極本体21Aと一対の回転軸部材23A,24Aとを備える。回転電極本体21は、基部211と、一対の連結部212とを有する。
基部211は、殺菌処理電極として機能する部分であり、例えば円板状である。一対の連結部212は、一対の回転軸部材23,24が連結される部分であり、例えば円筒状である。一対の連結部212は、基部211の両側の主面の中央において、基部211の両側から突出するように設けられている。つまり、基部211の直径は、連結部212の直径よりも大きい。一対の連結部212は、基部211に同心状に設けられている。回転電極2Aの冷却流路22は、基部211及び一対の連結部212に渡って延びている。
回転電極2Aの冷却流路22Aは、冷媒貯留部218と、一対の空洞部219とで構成されている。
冷媒貯留部218は、基部211の内部に設けられている。冷媒貯留部218は、冷却流路22を流れる冷媒を基部211の内部に一時的に貯める部分である。冷媒貯留部218は、基部211の内部の全体に広がるように形成されている。本実施形態では、冷媒貯留部218は、基部211の形状(円板状)に合わせて円板状に形成されている。一対の空洞部219は、一対の連結部212の内部に設けられている。空洞部219は、例えば円筒状である。一対の空洞部219の各々の端部は、冷媒貯留部218の両側に繋がっている。円板形の冷媒貯留部218の直径は、円筒状の空洞部219の直径よりも大きい。
冷却流路22を流れる冷媒は、冷媒貯留部218の内部に流入して冷媒貯留部218内を一時的に貯まってから冷媒貯留部218から流出する。このように、基部211の内部に冷媒貯留部218が設けられることで、冷媒によって基部211全体を効果的に冷却できる。
連結部212の先端面の中央には、回転軸部材23A,24Aの端部が挿入可能な挿入孔213が設けられている。挿入孔213は、回転電極本体21内の冷却流路22と繋がっている。
また、挿入孔213の内周面には、周方向に沿って環状の凹溝が設けられており、この凹溝には、冷却水の漏れを防止するための環状の防水弾性部材(Oリング)215が設けられている。
また、連結部212の外周面には、挿入孔213に挿入された回転軸部材23,24を固定するための止めねじ216がねじ込まれるねじ孔が設けられている。このねじ孔は、連結部212の外周面から挿入孔213まで達して挿入孔213と繋がっている。つまり、回転軸部材23,24の端部が連結部212の挿入孔213に挿入された状態で、止めねじ216がねじ孔にねじ込まれて、止めねじ216の先端部が回転軸部材23,24に押し付けられる。これにより、回転軸部材23,24が連結部212の挿入孔213から抜けないように連結部212に固定される。その際、挿入孔213と回転軸部材23,24との間に防水弾性部材215が挟まることで、挿入孔213と回転軸部材23,24との隙間から冷却水が外部に漏れることが防止される。また、止めねじ216の頭部の裏面と連結部212の凹部の底面との間には、防水弾性部材217(例えばOリング)が挟み込まれている。これにより、止めねじ216がねじ込まれるねじ孔から冷却水が漏れることが防止される。
(4)電極格納容器の詳細
次に図2及び図3を参照して、電極格納容器3の構造について詳しく説明する。
電極格納容器3は、上述のように、回転電極本体21A,21Bを格納する内部格納部30を有する。より詳細には、内部格納部30は、第1格納部301と、第2格納部302と、1つ以上(例えば1つ)の連結路303とを有する。第1格納部301は、回転電極本体21Aを格納する格納部であり、回転電極本体21Aの形状と同形で一回り大きい形状をしている。第2格納部302は、回転電極本体21Bを格納する格納部であり、回転電極本体21Bの形状と同形で一回り大きい形状をしている。
より詳細には、第1格納部301は、基部格納部301aと、一対の連結部格納部301b,301cとを有する。基部格納部301aは、基部211を格納する部分であり、基部211と同形で一回り大きい形状をしている。連結部格納部301b,301cはそれぞれ、一対の連結部212の各々を格納する部分であり、連結部212と同形で一回り大きい形状をしている。一対の連結部格納部301b,301cは、基部格納部301aの両側に連結している。第2格納部302は、第1格納部301と同じ構造であり、基部格納部302aと、一対の連結部格納部302b,302cとを有する。第1格納部301と第2格納部302は、互いの中心軸が平行になるように横に並んで配置されている。
連結路303は、第1格納部301と第2格納部302とを繋げる部分である。より詳細には、連結路303は、基部格納部301a,302aの間を貫通して基部格納部301a,302aを繋げる。連結路303は、基部格納部301aの基部格納部302a側の端部と、基部格納部302aの基部格納部301a側の端部との間を貫通している。連結路303が複数備えられる場合は、複数の連結路303は、第1格納部301及び第2格納部302の各々の中心軸に沿って(すなわち図2の紙面上の上下方向に)互いに間隔を空けて設けられる。
電極格納容器3は、上述のように、4つの貫通孔33~36と、導入部31と、排出部32と、2つの接続部11とを有する。
貫通孔33は、電極格納容器3の側面3aと連結部格納部301bの端面との間を貫通している。貫通孔34は、電極格納容器3の側面3bと連結部格納部301cの端面との間を貫通している。貫通孔35は、電極格納容器3の側面3aと連結部格納部302bの端面との間を貫通している。貫通孔36は、電極格納容器3の側面3bと連結部格納部302cの端面との間を貫通している。
電極格納容器3の側面3aにおける貫通孔33,35の外周には、その貫通孔33,35を貫通する回転軸部材23A,23Bを回転可能に支持する軸受け61A,61C(例えばボールベアリング)が設けられている。電極格納容器3の側面3bにおける貫通孔34,36の外周には、その貫通孔34,36を貫通する回転軸部材24A,24Bを回転可能に支持する軸受け61B,61D(例えばボールベアリング)が設けられている。
また、貫通孔33~36の内周面には、周方向に沿って環状の凹溝が設けられており、その凹溝には、液体食品の漏れを防止するための環状の防水弾性部材62(Oリング)が設けられている。
導入部31は、電極格納容器3の側面3cと基部格納部301aの外周面との間を貫通するように設けられている。排出部32は、電極格納容器3の側面3dと基部格納部302aの外周面との間を貫通するように設けられている。導入部31は、電極格納容器3の側面3aの上部に配置されており、排出部32は、電極格納容器3の側面3dの下部に配置されている(図3参照)。導入部31及び排出部32にはそれぞれ、接続部11が設けられている。
回転電極本体21Aが第1格納部301に格納された状態では、基部211及び一対の連結部212はそれぞれ、基部格納部301a及び一対の連結部格納部301b,301cの内部に配置される。この状態で、回転電極本体21Aの外表面と第1格納部301の内表面との間には、液体食品が流れる隙間S1が確保される。また、一対の回転軸部材23A,24Aはそれぞれ、貫通孔33、34を貫通して外部に突出する。このとき、回転軸部材23A、24Aは、軸受け61A,61Bで回転可能に支持される。また、貫通孔33,34と回転軸部材23A,24Aとの間に防水弾性部材62が挟まることで、貫通孔33,34と回転軸部材23A,24Aとの隙間から液体食品が外部に漏れることが防止される。
回転電極本体21Bが第2格納部302に格納された状態も、回転電極本体21Aが第1格納部301に格納された状態と同じである。回転電極本体21A,21Bがそれぞれ第1格納部301及び第2格納部302に格納された状態で、回転電極本体21A,21Bの各々の外周面の間の隙間の幅D1は、例えば4mm程度である。
食品が接続部11から導入部31を通って第1格納部301に導入される。導入された液体食品は、第1格納部301と回転電極本体21Aとの間の隙間S1を流れて、連結路303を通って第2格納部302に流れる。このとき(すなわち液体食品が連結路303を流れるとき)、液体食品は、2つの回転電極本体21A,21B(より詳細には2つの回転電極本体21A,21Bの各々の基部211)の間に印加された電圧によって殺菌される。そして、第2格納部302に流れた液体食品は、第2格納部302と回転電極本体21Bとの間の隙間S2を流れて、排出部32を通って接続部11から外部に排出される。
この電極格納容器3では、導入部31から第1格納部301に導入された液体食品は、回転電極本体21Aの回転によって連結路303の方に流れるように押し流される(図3参照)。また、連結路303から第2格納部302に流れた液体食品は、回転電極本体21Bの回転によって排出部32の方に流れるように押し流される(図3参照)。これにより、効率良く、液体食品が導入部31から第1格納部301に流れて第2格納部302から排出部32に流れて外部に排出される。
電極格納容器3は、複数のブロック(第1ブロック70、第2ブロック71及び第3ブロック72)に分割されて構成されている。
第1ブロック70は、第1格納部301の基部格納部301a及び一方の連結部格納部301bと、第2格納部302の基部格納部302a及び一方の連結部格納部302bとを含む部分であり、電極格納容器3の中央部分を構成する。第1ブロック70の一方の主面70tには、第1嵌合孔70a及び第2嵌合孔70bが設けられている。第1嵌合孔70aは、円筒状であり、第1格納部301の基部格納部301aと繋がっており、回転電極本体21Aを第1格納部301に格納するときの回転電極本体21Aの通り道として機能する。第2嵌合孔70bは、第2格納部302の基部格納部302aと繋がっており、回転電極本体21Bを第2格納部302に格納するときの回転電極本体21Bの通り道として機能する。
また、第1ブロック70の他方の主面70sには、2つの連結部格納部301b,302bの側面が開口しており、その開口の外周には、環状の凹溝が設けられており、その凹溝には、環状の防水弾性部材70e,70f(例えばOリング)が設けられている。
第2ブロック71は、2つの貫通孔34,36と、第1格納部301の他方の連結部格納部301cと、第2格納部302の他方の連結部格納部302cと、軸受け61B,61Dとを含む部分であり、電極格納容器3の一端部を構成する。第2ブロック71は、第2ブロック本体711と、2つの嵌合ブロック712,713と、2つの軸受けブロック714,715とを有する。
第2ブロック本体711は、2つの貫通孔34,36を含む部分であり、例えば平板状である。第2ブロック本体711の外側の主面には、段付き孔711a,711bが設けられている。段付き孔711a,711bは、軸受けブロック714,715の後述の嵌合凸部714b,715bが嵌り合う部分である。
嵌合ブロック712は、第1格納部301の連結部格納部301cを含む部分であり、円環状である。また、嵌合ブロック712は、第1ブロック70の第1嵌合孔70aに嵌り合う部分である。嵌合ブロック713は、第2格納部302の連結部格納部302cを含む部分であり、円環状である。また、嵌合ブロック713は、第1ブロック70の第2嵌合孔70bに嵌り合う部分である。2つの嵌合ブロック712,713はそれぞれ、第2ブロック本体711の内側の主面71aにねじで固定されている。嵌合ブロック712,713における外周面と内側主面との間の角部には、周方向に沿って環状の凹溝が設けられており、この凹溝には、液体食品の漏れを防止するための環状の防水弾性部材70c,70d(Oリング)が設けられている。この防水弾性部材70cによって、第2ブロック本体711の内側主面71aと第1ブロック70の外側主面70tとの間から第1格納部301内の液体食品が外部に漏れることが防止される。また、この防水弾性部材70dによって、第2ブロック本体711の内側主面71aと第1ブロック70の外側主面70tとの間から第2格納部302内の液体食品が外部に漏れることが防止される。
2つの軸受けブロック714,715はそれぞれ、軸受け61B,61Dを含む部分であり、例えば円板状である。軸受けブロック714,715はそれぞれ、円板状の軸受けブロック本体714a,715aと、嵌合凸部714b,715bとを有する。軸受けブロック本体714a,715aは、例えば円板状である。軸受けブロック本体714a,715aの外側主面には、凹部が設けられており、凹部に軸受け61B,61Dが嵌め込まれている。軸受けブロック714,715の内側主面には、嵌合凸部714b,715bが設けられている。嵌合凸部714b,715bは、第2ブロック本体711の外側主面の段付き孔711a,711bに嵌り合う部分である。
軸受けブロック714,715は、ねじで、第2ブロック本体711の外側主面に固定される。この状態で、軸受けブロック714,715の嵌合凸部714b,715bは、第2ブロック本体711の段付き孔711a,711bに嵌り合う。この状態で、嵌合凸部714b,715bの先端面の縁部と、段付き孔711a,711bの奥側(内側)の底面の周縁との間に隙間(凹溝)が形成され、その隙間に環状の防水弾性部材62(例えばOリング)が配置される。
第2ブロック71は、ねじで、第1ブロック70の外側主面70tに固定される。この状態で、第2ブロック71の嵌合ブロック712は、第1ブロック70の第1嵌合孔70aに嵌り合い、第2ブロック71の嵌合ブロック713は、第1ブロック70の第2嵌合孔70bに嵌り合う。この状態で、防水弾性部材70cによって、第2ブロック71の内側主面71aと第1ブロック70の外側主面70tとの間から第1格納部301内の液体食品が外部に漏れることが防止される。また、この防水弾性部材70dによって、第2ブロック71の内側主面71aと第1ブロック70の外側主面70tとの間から第2格納部302内の液体食品が外部に漏れることが防止される。
第3ブロック72は、2つの貫通孔33,35と、軸受け61A,61Cとを含む部分であり、電極格納容器3の他端部を構成する。第3ブロック72は、第2ブロック71において2つの嵌合ブロック712,713を省略した構造である。第3ブロック72は、第3ブロック本体721と、2つの軸受けブロック722,723とを有する。
第3ブロック本体721は、2つの貫通孔33,35を含む部分であり、例えば平板状である。第3ブロック本体721の外側主面には、段付き孔721a,721bが設けられている。段付き孔721a,721bは、軸受けブロック722,723の後述の嵌合凸部722b,723bが嵌り合う部分である。
軸受けブロック722,723はそれぞれ、軸受け61A,61Cを含む部分であり、例えば円板状である。軸受けブロック722,723は、円板状の軸受けブロック本体722a,723aと、嵌合凸部722b,723bとを有する。軸受けブロック本体722a,723aは、例えば円板状である。軸受けブロック本体722a,723aの外側主面には、凹部が設けられており、凹部に軸受け61A,61Cが嵌め込まれている。軸受けブロック722,723の内側主面には、嵌合凸部722b,723bが設けられている。嵌合凸部722b,723bは、第3ブロック本体721の外側主面の段付き孔721a,721bに嵌り合う部分である。
軸受けブロック722,723の嵌合凸部722b,723bは、第3ブロック本体721の段付き孔721a,721bに嵌り合った状態では、嵌合凸部722b,723bの先端面の縁部と、段付き孔721a,721bの底面の周縁との間に隙間(凹溝)が形成され、その隙間に環状の防水弾性部材62(例えばOリング)が配置される。
第3ブロック72は、ねじで、第1ブロック70の他方の主面70sに固定される。この状態では、第3ブロック72と第1ブロック70との間に防水弾性部材70e,70fが挟まれる。これにより、防水弾性部材70eによって、第1ブロック70の他方の主面70sと第3ブロック72の内側主面72aとの間の隙間から第1格納部301内の液体食品が漏れることが防止される。また、防水弾性部材70fによって、第1ブロック70の他方の主面70sと第3ブロック72の内側主面72aとの間の隙間から第2格納部302内の液体食品が漏れることが防止される。
(5)冷却水連結部の詳細
図4及び図5を参照して、冷却水連結部4Aの構造について詳しく説明する。冷却水連結部4B~4Dの構造は、冷却水連結部4Aの構造と同じであるため、冷却水連結部4B~4Dの構造の説明は省略する。
冷却水連結部4Aは、筒状(例えば円筒状)である。冷却水連結部4Aの内部には、上述のように、冷却流路41が設けられている。冷却水連結部4Aの一方の主面4aには、凹部が設けられており、この凹部には、軸受け43が嵌め込まれている。軸受け43は、冷却水連結部4Aに連結される回転軸部材23Aの端部を回転可能に支持する。上記の凹部の底面には、回転軸部材23Aが挿入される挿入孔44が設けられている。挿入孔44は、冷却水連結部4A内の冷却流路41の一端(開口)と繋がっている。挿入孔44の内周面には、周方向に沿って環状の凹溝が設けられており、この凹溝には、冷却水の漏れを防止するための環状の防水弾性部材45(例えばOリング)が設けられている。冷却水連結部4Aの他方の主面4bには、上述のように、接続部42が接続されている。接続部42は、冷却水連結部4A内の冷却流路41の他端(開口)と繋がっている。
この冷却水連結部4Aでは、回転軸部材23Aの端部が冷却水連結部4Aの挿入孔44に挿入された状態では、回転軸部材23Aは、軸受け43によって回転可能に支持される。また、挿入孔44と回転軸部材23Aとの間に防水弾性部材45が挟まることで、挿入孔44と回転軸部材23Aとの隙間から冷却水が外部に漏れることが防止される。
冷却水連結部4Aは、複数のブロック(ブロック本体400と軸受けブロック401)に分割されて構成されている。
ブロック本体400は、冷却流路41と挿入孔44の一部44aとを含む部分であり、筒状(例えば円筒状)である。ブロック本体400の一方の主面には、段付き孔400aが設けられている。段付き孔400aは、軸受けブロック401の後述の嵌合凸部401bが嵌り合う部分である。段付き孔400aの奥側(内側)の底面には、挿入孔44の一部44aが繋がっている。ブロック本体400の他方の主面4bには、接続部42が設けられている。
軸受けブロック401は、軸受け43と挿入孔44の残部44bとを含む部分であり、例えば円板状である。
軸受けブロック401は、円板状の軸受けブロック本体401aと、嵌合凸部401bとを有する。軸受けブロック本体401aは、例えば円板状である。軸受けブロック本体401aの外側主面には、凹部が設けられており、凹部に軸受け43が嵌め込まれている。軸受けブロック401の内側主面には、嵌合凸部401bが設けられている。2段の嵌合凸部401bは、ブロック本体400の外側主面の段付き孔400aに嵌り合う部分である。
軸受けブロック401の嵌合凸部401bがブロック本体400の段付き孔400aに嵌り合った状態では、嵌合凸部401bの先端面の縁部と、段付き孔400aの底面の周縁との間に隙間(凹溝)が形成され、その隙間に環状の防水弾性部材45(例えばOリング)が配置される。
軸受けブロック401は、ブロック本体400の一方の主面にねじで固定される。この状態で、ブロック本体400の挿入孔44の一部44aと軸受けブロック401の挿入孔44の残部44bとが繋がって挿入孔44を構成する。また、嵌合凸部401bの先端面の縁部と、段付き孔400aの奥側(内側)の底面の周縁との間に隙間(凹溝)が形成され、その隙間に環状の防水弾性部材45(例えばOリング)が配置される。
(6)殺菌処理システム
図6を参照して、本実施形態に係る殺菌処理システム100について説明する。
殺菌処理システム100は、上述した殺菌処理装置1と、高電圧発生装置101(電圧発生装置)と、恒温槽102(貯留槽)と、ポンプ103(第2ポンプ)と、第1チラー104及び第2チラー105とを備える。
高電圧発生装置101は、殺菌処理装置1の2つの回転電極2A,2Bの間に高電圧(例えば40~50kV/cm)を印加する。高電圧発生装置101は、接触部材7A(図1参照)を介して回転軸部材24Aに高電圧を印加する。これにより、2つの回転電極2A,2Bの間(より詳細には2つの回転電極本体21A,21Bの間)に高電圧が印加される。
高電圧発生装置101は、2つの回転電極2A,2Bの間に間欠的に電圧を印加する。より詳細には、高電圧発生装置101は、2つの回転電極2A,2Bの間にパルス状の電圧を周期的に印加する。回転電極2A,2Bは回転されるが、この回転電極2A,2Bの回転と上記の間欠的な電圧印加とによって、回転電極2A,2Bの一定箇所に電圧が印加され続けることを抑制できる。なお、高電圧発生装置101は、2つの回転電極2A,2Bの間に連続的に電圧を印加してもよい。
恒温槽102は、液体食品である処理液を貯留する装置である。また、恒温槽102は、冷却水によって処理液を低温(例えば0℃)に保って冷却する。
ポンプ103は、恒温槽102内の処理液を殺菌処理装置1の導入部31に供給する。
第1チラー104は、冷却水(例えば不凍液)で処理液を冷却する装置である。第1チラー104は、水槽と金属管とを有する。水槽には、冷却水が貯められており、金属管が浸されている。金属管は、比熱の高い金属によって形成されており、螺旋状に加工されている。処理液が金属管を流れることで、水槽内の冷却水によって処理液が冷却される。第2チラー105も第1チラー104と同様の構成であり、冷却水によって処理液を冷却する。
この殺菌処理システム100では、高電圧発生装置101によって殺菌処理装置1の2つの回転電極2A,2Bの間に高電圧が印加される。そして、殺菌処理装置1のモータ5A,5Bによって2つの回転電極2A,2Bが回転させられる。この状態で、恒温槽102内の処理液は、ポンプ103によって殺菌処理装置1に供給されて2つの回転電極2A,2Bの間の印加電圧で殺菌処理されて殺菌処理装置1から排出される。排出された処理液は、第1チラー104に送られて冷却され、さらに第2チラー105に送られて冷却されて、恒温槽102に戻される。この処理液の循環が繰り返される。殺菌処理装置1では、高電圧によって殺菌処理が行われるため、ジュール熱が発生し易いことを考慮して2つのチラー(第1チラー104及び第2チラー105)で処理液が冷却される。
また、第1チラー104で冷却された冷却水は、第1チラー104から殺菌処理装置1に送られる。そして、殺菌処理装置1に送られた冷却水は、殺菌処理装置1で2つの回転電極2A,2Bの冷却流路22A,22Bに流されて、2つの回転電極2A,2Bの冷却に用いられる。そして、殺菌処理装置1で用いられた冷却水は、恒温槽102に送られて処理液の冷却に用いられる。そして、恒温槽102で用いられた冷却水は、第1チラー104に戻される。このように冷却水が循環する。
(7)評価実験
図6の殺菌処理システム100(すなわち本実施形態の殺菌処理装置1を含む殺菌処理システム)を動作させて評価実験を行った。また、比較例の殺菌処理装置を図6の殺菌処理システム100と同じ殺菌処理システムの下で動作させて評価実験を行った。以下、動作条件、比較例の殺菌処理装置、及び各評価実験の結果について説明する。
(8)動作条件
図6の殺菌処理システム100を下記の動作条件で動作させた。
モータ5A,5Bの回転数は、1秒当たりの高電圧(2つの回転電極2A,2B間に印加される電圧)の印加回数を考慮して設定される。本実施形態では、例えば、1秒あたり200回高電圧を印加する。このため、回転電極2A,2Bの外表面の或る箇所に高電圧が印加された後、5ms(ミリセカンド)の間に上記の箇所からずれた別の箇所に高電圧が印加されるように、モータ5A,5Bの回転が調整される。つまり、本実施形態では、2つの回転電極2A,2Bの間に印加する電圧は、間欠的に印加される。そして、回転電極2A,2Bの外表面において同じ箇所に電圧(高電圧)が連続して印加されないように、モータ5A,5Bの回転速度が調整されている。
上記を踏まえて、殺菌処理装置1の回転電極2A,2Bを20rpm(回転毎分)とした。この回転数で回転させることで、1秒間に200回(以下200pps(パルス毎秒))高電圧を印加した場合においても、同様の部分に高電圧が印加されることを防ぐことが可能である。
恒温槽102の温度が冷却水により0℃程度になるように設定した。殺菌処理装置1において処理液を流す速さを2L(リットル)/min(分)とし、処理液を1.5L(リットル)循環させるようにした。
高電圧発生装置101において、高電圧の印加条件は電界強度40~50kV/cm、高電圧の印加間隔150pps、200pps、パルス幅2μsとした。実験の際はこれらの印加条件で60分間殺菌処理を行った。
(9)比較例の殺菌処理装置
比較例の殺菌処理装置は、殺菌処理装置1と比べて、2つの電極が回転しない点と、2つの電極が平行平板電極である点とが異なる以外は実質同じ構成である。なお、比較例の殺菌処理装置では、高電圧発生装置101の高電圧の印加条件は、電界強度40kV/cm、高電圧の印加間隔191pps、パルス幅2μsである。この印加条件で60分間殺菌処理を行った。
(10)実験結果
図7は、本実施形態の殺菌処理装置1の2つの回転電極2A,2Bに印加した電圧波形を示す。2つの回転電極2A,2Bの電極間には、16kV、18kV、20kVを加えており、回転電極2A,2Bの間隔が4mmで一定としているため、電界強度は40kV/cm、45kV/cm、50kV/cmの電界強度が加わっている。2つの回転電極2A,2Bの間の高電圧の印加間隔は、電界強度40kV/cm及び45kV/cmの時は200ppsとし、50kV/cmの時は150ppsとした。図7において、波形A1は、40kV/cmで200ppsの電圧波形であり、波形A2は、45kV/cmで200ppsの電圧波形であり、波形A3は、50kV/cmで150ppsの電圧波形である。
図8A及び図8Bは、回転電極2A,2Bを用いた際の処理開始直後の電圧波形B1と殺菌処理後の電圧波形B2を示している。図8Aは電界強度40kV/cmを示し、図8Bは電界強度50kV/cmを示している。図8A及び図8Bから殺菌処理前後で、波形に大きな歪みが発生していない。通常、回転電極2A,2B間に何らかの変化があれば波形が歪むため、本実施形態の殺菌処理装置1では、回転電極2A,2Bにおける温度上昇や電極の消耗等の変化はほとんど発生していない事が分かる。
図9は、比較例の殺菌処理装置を使用した際の処理開始直後の電圧波形C1と印加開始5分後の電圧波形C2である。電界強度50kV/cmを5分間加えたところ、電極の発熱により、電圧の低下が見られた。これにより、比較例の殺菌処理装置では、平行平板電極における温度上昇や電極の消耗が発生している事が分かる。なお、比較実験の際に60分間印加した電圧波形は、印加開始5分後の電圧である。
高電圧を60分間印加することで、図6の殺菌処理システム100の処理液、第1チラー104及び第2チラー105の温度がどの程度上昇しているかを調査した。図10は、第1チラー104の水槽内の温度を測定した結果を示す。図11は、第2チラー105の水槽内の温度を測定した結果を示す。図12は、処理液内の温度を測定した結果を示す。
図10~図12において、グラフD1は、40kV/cmで200ppsの場合の温度の測定結果(本実施形態)である。グラフD2は、45kV/cmで200ppsの場合の温度の測定結果(本実施形態)である。グラフD3は、50kV/cmで150ppsの場合の温度の測定結果(本実施形態)である。グラフD4は、40kV/cmで191ppsの場合の温度の測定結果(比較例)である。
図10および図11のチラー(第1チラー104及び第2チラー105)の温度上昇に関して、本実施形態の回転電極2A,2Bを用いた場合(D1~D3)は、ほとんど温度が上昇していないのに対し、比較例の殺菌処理装置の電極(平行平板電極)を用いた場合(D4)は、時間経過とともに温度が上昇している傾向が観測された。図12の処理液内の温度上昇に関しては、印加開始から10分間は、本実施形態の回転電極(D1~D3)及び比較例の電極(平行平板電極)(D4)ともに時間経過の増加に伴い、温度も線形的に増加していた。しかし、10分以降は、回転電極を用いた場合(D1~D3)、処理液内の温度がほとんど変化しない結果となった。
図13は、殺菌処理を行った時の殺菌処理時間と生存率の関係を示す。グラフD1は、40kV/cmで200ppsの場合の温度の測定結果(本実施形態)である。グラフD2は、45kV/cmで200ppsの場合の温度の測定結果(本実施形態)である。グラフD3は、50kV/cmで150ppsの場合の温度の測定結果(本実施形態)である。グラフD4は、40kV/cmで191ppsの場合の温度の測定結果(比較例)である。
本実施形態の回転電極2A,2Bを用いた際の高電圧印加条件は、電界強度40kV/cmから50kV/cmまでの範囲とし、繰り返し数150pps又は200ppsに設定した。また、比較例の殺菌処理装置の電極(平行平板電極)を用いた際の高電圧印加条件は、電界強度40kV/cm、繰り返し数191ppsに設定した。パルス幅は、本実施形態及び比較例ともに2μsとした。図13から全体的な傾向として、処理時間が増加する毎に指数関数的に菌数が減少していることが分かる。また、電極形状の違いにより殺菌率が大幅に変化することなく、回転電極でも問題なく殺菌が可能であった。
高電圧の印加により処理液の色素に変化があってはならない。そこで、処理液の色素変化の調査を行った。処理液の色素変化の測定は、紫外可視分光光度計を用いて、処理液の透過率を測定することで行った。実験で使用した処理液は青汁を用いた。図14は、比較例の平行平板電極を用いた際の色素変化の調査結果を示す。図14の測定では、電界強度40kV/cmで、繰り返し数191ppsである。図15は、本実施形態の回転電極2A,2Bを用いた際の色素変化の調査結果を示す。図15Aは、電界強度45kV/cmで、繰り返し数200ppsの場合であり、図15Bは、電界強度50kV/cmで、繰り返し数150ppsの場合である。図14及び図15において、グラフE1は、殺菌処理前の測定結果を示し、グラフE2は、殺菌処理後の測定結果を示す。
図14から印加前後で透過率に大きな違いがみられた。この結果から、青汁内に含まれる葉緑素の一部が変質し、見た目が変化した恐れがあることが分かる。変質の原因として、図12で示したように高電圧の印加により、電極が過熱され、青汁タンク内の温度が上昇したためと考えられる。これに対して、回転電極2A,2Bを用いて殺菌処理を行ったところ、図15A及び図15Bの結果から、印加前後で透過率に大きな違いがみられない事が分かる。これは、回転電極2A,2Bでは、平行平板電極とは異なり、電極で青汁が十分冷却された状態で、殺菌処理が行われていたためと考えられる。従って、本実施形態の回転電極2A,2Bを用いたパルス電界の印加では、青汁濃縮液の色素を損なうことなく殺菌可能であることが明らかとなった。
他の実験として、高電圧殺菌処理前後における青汁内に含まれる酵素(SOD)の測定を行った。本実施形態の回転電極2A,2Bを使用し、パルス電圧の印加条件は、電界強度40kV/cm、繰り返し数200ppsに設定して、殺菌処理を行った。SODの測定にはSOD Assay Kit-WSTを使用した。測定結果として,パルス電圧印加前のSOD量が5172U/mLであり、パルス電圧印加後のSOD量が5265U/mLであったため、パルス電圧印加により酵素(SOD)量の変化は見られなかった。これにより、本実施形態の回転電極2A,2Bを用いたパルス電界の印加では、青汁内に含まれるSODを損なうことなく殺菌可能であることが明らかとなった。
(11)主要な効果
本実施形態の回転電極2A,2Bは、他の電極2B,2Aとの間に印加された電圧によって液体食品を殺菌する回転電極である。回転電極2A,2Bは、回転電極本体21A,21Bと、冷却流路22A,22Bとを備える。回転電極本体21A,21Bは、回転可能に支持され、駆動源(例えばモータ5A,5B)によって回転可能である。冷却流路22A,22Bは、回転電極本体21A,21Bの内部に設けられ、冷媒が流れる。
この構成によれば、回転電極2A,2Bにおいて、発熱を抑制しつつ印加電圧による消耗を抑制できる。より詳細には、回転電極2Aにおいては、回転電極本体21Aが回転されることで、回転電極本体21Aと他の電極2Bとの間の印加電圧が回転電極本体21Aの一定箇所に印加され続けることを回避できる。これにより、他の電極2Bと回転電極本体21Aとの間の印加電圧による回転電極本体21Aの消耗を抑制できる。また、回転電極2Bにおいては、回転電極本体21Bが回転されることで、回転電極本体21Bと他の電極2Aとの間の印加電圧が回転電極本体21Bの一定箇所に印加され続けることを回避できる。これにより、他の電極2Aと回転電極本体21Bとの間の印加電圧による回転電極本体21Bの消耗を抑制できる。また、冷却流路22A,22Bを流れる冷媒(例えば冷却水)によって回転電極本体21A,21Bの発熱を抑制できる。これにより、回転電極2A,2Bで発生する熱による液体食品の劣化を抑制できる。
また、冷却流路22を流れる冷媒によって、回転電極本体21が冷却されて回転電極本体21の発熱が抑制される。このため、2つの回転電極2A,2B間に高電圧が印加される場合でも、回転電極2A,2Bの発熱を抑制して回転電極2A,2Bを長時間連続して使用することができる。
また、回転電極2A,2Bの回転によって回転電極2A,2Bの消耗が抑制される。これにより、液体食品内に含まれる固形物が回転電極2A,2Bの消耗箇所に蓄積されることを抑制できる。
また、回転電極2A,2Bの回転によって、2つの回転電極2A,2Bの間に高電圧が印加されても、液体食品内に含まれる固形物が帯電して2つの回転電極2A,2B間に吸着することを抑制できる。
このように本実施形態では、液体食品(例えば液体生鮮食品)の殺菌において殺菌処理電極(回転電極2A,2B)の消耗や液体食品の劣化を抑えることが可能となる。このため、長時間安定した殺菌処理を行うことが可能となる。また、液体食品内に固形物が含まれているものや水よりも粘度のある液体に対しても、効果的に殺菌することが可能である。
(12)変形例
上記の実施形態の変形例を説明する。
(変形例1)
上記の実施形態では、2つの電極2A,2Bの両方が回転電極であるが、2つの電極2A,2Bのうち、一方の電極のみが回転電極で、他方の電極は回転しない電極であってもよい。
(変形例2)
上記の実施形態では、2つの回転電極2A,2Bを備えるが、3つ以上の回転電極を備えてもよい。
(変形例3)
上記の実施形態において、回転電極本体21の基部211の外周面及び両側主面に複数のフィンを設けてもよい。回転電極本体21が回転したときに、上記の複数のフィンによって電極格納容器3内を流れる液体固体を効果的に送液できる。
(変形例4)
図16に示すように、本変形例の殺菌処理システム100Aは、上記の実施形態の殺菌処理システム100(図6)において、ポンプ106(第3ポンプ)を用いて、殺菌処理装置1の排出部32から排出された処理液(液体食品)の一部が殺菌処理装置1の導入部31に再導入される。すなわち、殺菌処理システム100Aは、ポンプ106を備える。また、本変形例の殺菌処理システム100Aでは、上記の実施形態の殺菌処理システム100(図6)において、殺菌処理装置1の排出部32から排出された処理液(液体食品)の一部が、チラー(第1チラー104及び第2チラー105)を介して恒温槽102に戻される代わりに、チラー(第1チラー104及び第2チラー105)を介さずに次の工程に送液される。このため、本変形例では、処理液を冷却するためのチラー(第1チラー104及び第2チラー105)が省略される。そして、恒温槽102内の冷却水は、チラーを介さずに殺菌処理装置1との間で循環される。
本変形例では、殺菌処理装置1から排出された処理液の一部を直接再び殺菌処理装置1に戻されて殺菌処理が繰り返し行われる。このため、短期間に集中して処理液に殺菌処理を行うことができ、処理液に対する殺菌効果を向上できる。また、殺菌処理装置1から排出された処理液の一部を殺菌処理装置1に直接戻すことで、図6の殺菌処理システム100において殺菌処理装置1から排出された処理液をチラー104,105及び恒温槽102を介して殺菌処理装置1に戻る循環経路を省略できる。これにより、コストを削減できる。
(13)態様
以上説明した実施形態から明らかなように、以下の態様を取り得る。
第1の態様の回転電極(2A,2B)は、他の電極(2B,2A)との間に印加された電圧によって液体食品を殺菌する回転電極である。回転電極(2A,2B)は、回転電極本体(21)と、冷却流路(22)と、を備える。回転電極本体(21)は、回転可能に支持され、駆動源(5A,5B)によって回転可能である。冷却流路(22)は、回転電極本体(21)の内部に設けられ、冷媒が流れる。
この構成によれば、回転電極(2A,2B)において、発熱を抑制しつつ印加電圧による消耗を抑制できる。より詳細には、回転電極本体(21A,21B)が回転することで、回転電極本体(21A,21B)と他の電極(2B,2A)との間の印加電圧が回転電極本体(21A,21B)の一定箇所に印加され続けることを回避できる。これにより、他の電極(2B,2A)と回転電極本体(21A,21B)との間の印加電圧による回転電極本体(21A,21B)の消耗を抑制できる。また、冷却流路(22)を流れる冷媒によって回転電極本体(21)の発熱を抑制できる。
第2の態様の回転電極(2A,2B)では、第1の態様において、冷却流路(22)は、回転電極本体(21)の内部において回転電極本体(21)の回転軸に沿って延びている。
この構成によれば、冷却流路(22)が回転電極本体(21)の回転軸に沿って延びているため、冷却流路(22)の直径を大きく形成し易い。これにより、回転電極本体(21)の冷却能力を向上させ易い。
第3の態様の回転電極(2A,2B)では、第1又は第2の態様において、冷却流路(22)は、回転電極本体(21)の内部に設けられ、冷媒を一時的に貯留可能な冷媒貯留部(218)を有する。
この構成によれば、冷媒貯留部(218)に貯留された冷媒によって回転電極本体(21)を効果的に冷却できる。
第4の態様の回転電極(2A,2B)は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、回転電極本体(21)に設けられた回転軸部材(23,24)を更に備える。
この構成によれば、回転軸部材(23,24)を回転させることで、回転電極本体(21)を容易に回転させることができる。
第5の態様の回転電極(2A,2B)では、第4の態様において、回転軸部材(23,24)の内部には、冷却流路(22)と繋がる軸側冷却流路(231,241)が設けられている。
この構成によれば、軸側冷却流路(231,241)を用いることで、簡単な構造で、回転電極本体(21)側の冷却流路(22)に冷媒を供給することができる。
第6の態様の殺菌処理装置(1)は、第1回転電極(2A)及び第2回転電極(2B)と、電極格納容器(3)と、を備える。第1回転電極(2A)及び第2回転電極(2B)は、第1~第5の態様のいずれか1つの回転電極(2A,2B)で構成され、互いの間に電圧が印加される。電極格納容器(3)は、第1回転電極(2A)及び第2回転電極(2B)を回転可能に支持した状態で格納する内部格納部(30)を有する。電極格納容器(3)は、導入部(31)と、排出部(32)と、を有する。導入部(31)は、内部格納部(30)に液体食品を導入する。排出部(32)は、内部格納部(30)を流れた液体食品を内部格納部(30)から排出する。
この構成によれば、回転電極(2A,2B)の上記の効果を有する殺菌処理装置(1)を提供できる。
第7の態様の殺菌処理装置(1)では、第6の態様において、内部格納部(30)は、第1格納部(301)と、第2格納部(302)と、連結路(303)とを有する。第1格納部(301)は、第1回転電極(2A)が格納され、導入部(31)と繋がる。第2格納部(302)は、第2回転電極(2B)が格納され、排出部(32)と繋がる。連結路(303)は、第1格納部(301)と第2格納部(302)とを繋ぐ。連結路(303)は、第1格納部(301)と第2格納部(302)との間に配置される。
この構成によれば、連結路(303)は、第1回転電極(2A)と第2回転電極(2B)との間に印加される印加電圧が存在する領域に配置される。これにより、液体食品が連結路(303)を流れることで、効果的に液体食品を印加電圧で殺菌することができる。
第8の態様の殺菌処理装置(1)では、第6又は第7の殺菌処理装置(1)において、第1回転電極(2A)は、電極格納容器(3)の外部に突出する第1回転軸部材(23A,24A)を有する。第2回転電極(2B)は、電極格納容器(3)の外部に突出する第2回転軸部材(23B,24B)を有する。殺菌処理装置(1)は、第1駆動源(5A)と、第2駆動源(5B)と、を備える。第1駆動源(5A)は、第1回転軸部材(23A,24A)を回転させる。第2駆動源(5B)は、第2回転軸部材(23B,24B)を回転させる。
この構成によれば、第1回転電極(2A)及び第2回転電極(2B)を回転させる第1駆動源(5A)及び第2駆動源(5B)を含む殺菌処理装置(1)を提供できる。
第9の態様の殺菌処理装置(1)は、第5~第8の態様のいずれか1つにおいて、第1回転電極(2A)の冷却流路(22A)及び第2回転電極(2B)の冷却流路(22B)の各々に冷媒を供給する第1ポンプ(27)を更に備える。
この構成によれば、安定して冷媒を冷却流路(22)に供給できる。
第10の態様の殺菌処理システム(100)は、第5~第9の態様のいずれか1つの殺菌処理装置(1)と、電圧発生装置(101)と、貯留槽(102)と、第2ポンプ(103)と、備える。電圧発生装置(101)は、第1回転電極(2A)と第2回転電極(2B)との間に電圧を印加する。貯留槽(102)は、液体食品を貯留する。第2ポンプ(103)は、貯留槽(102)内の液体食品を導入部(31)に流入させる。
この構成によれば、殺菌処理装置(1)の上記の効果を有する殺菌処理システム(100)を提供できる。
第11の態様の殺菌処理システム(100A)は、第10の態様において、排出部(32)から排出された液体食品の一部を導入部(31)に再導入する第3ポンプ(106)を更に備える。
この構成によれば、液体食品に対して殺菌処理装置(1)による殺菌を短期間に繰り返して行うことができる。これにより、液体食品に対する殺菌効果を向上できる。