JP7178735B2 - 採糸装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ミノガ科に属する蛾の幼虫、すなわちミノムシに由来する絹糸を採取する装置(以下、本明細書では、しばしば「採糸装置」と表記する)、またその採糸装置を用いた純度の高いミノムシ由来の絹糸を採糸する方法に関する。
昆虫の繭を構成する糸や哺乳動物の毛は、古来より動物繊維として衣類等に利用されてきた。特にカイコガ(Bombyx mori)の幼虫であるカイコ由来の絹糸(本明細書では、しばしば「カイコ絹糸」と表記する)は、吸放湿性や保湿性、及び保温性に優れ、また独特の光沢と滑らかな肌触りを有することから、現在でも高級天然素材として珍重されている。
しかし、自然界には、カイコ絹糸に匹敵する、又はそれ以上の特性をもつ動物繊維が存在する。近年、そのような優れた特性をもつ動物繊維を新たな天然素材として活用するために、その探索や研究が進められている。
その一つとして注目されているのがクモ由来の糸(本明細書では、しばしば「クモ糸」と表記する)である。クモ糸は、柔軟性や伸縮性、及びポリスチレンの5~6倍に及ぶ高い弾性力を有しており、手術用縫合糸等の医療素材、及び防災ロープ・防護服などの特殊素材として期待されている(非特許文献1及び2)。しかし、クモ糸は、クモの大量飼育やクモから大量の糸を採取することが困難なため量産ができず、また生産コストも高いという問題があった。現在、この問題は遺伝子組換え技術を用いて、カイコや大腸菌にクモ糸を生産させることで解決が試みられている(特許文献1及び非特許文献2)。ただし、クモ糸の生産に使用するカイコや大腸菌は遺伝子組換え体であることから、所定の設備を備えた施設内でしか飼育や培養ができず、維持管理の負担が大きいという問題を伴う。また、大腸菌内で発現させたクモ糸タンパク質は液状のため、繊維に変換させる必要があり、その分、工程数が多くなるという問題もある。さらに、遺伝子組換えカイコが吐糸するクモ糸は、現段階ではカイコ絹糸に数%混在している状態に過ぎず、クモ糸の特性を100%活用できる100%クモ糸として得ることができないという問題がある。
ところで、ミノムシ(Basket worm, alias "bag worm")という昆虫が存在する。ミノムシは、チョウ目(Lepidoptera)ミノガ科(Psychidae)に属する蛾の幼虫の総称で、通常は葉片や枝片を糸で絡めた紡錘形又は円筒形の巣(Bag nest)(図1A)の中に潜み、摂食の際にも巣ごと移動する等、全幼虫期を巣と共に生活することが知られている。冬季、落葉した樹の枝先にミノムシの巣が吊り下がる光景は、冬の風物詩となる等、人々にとっても古くから馴染み深い昆虫である。
このミノムシ由来の糸(本明細書では、しばしば「ミノムシ絹糸」と表記する)は、カイコ絹糸やクモ糸よりも力学的に優れた特性をもつ。例えば、弾性率に関してチャミノガ(Eumeta minuscula)のミノムシ絹糸は、カイコ絹糸の3.5倍、ジョロウグモ(Nephila clavata)のクモ糸の2.5倍にも及び、非常に強い強度を誇る(非特許文献1及び3)。また、ミノムシ絹糸の単繊維における断面積は、カイコ絹糸の単繊維のそれの1/7ほどしかないため、木目細かく、滑らかな肌触りを有し、薄くて軽い布を作製することが可能である。しかも、ミノムシ絹糸は、カイコ絹糸と同等か、それ以上の光沢と艶やかさを備える。
飼育面においてもミノムシは、カイコよりも優れた点を有する。例えば、カイコは、原則としてクワ(クワ属(Morus)に属する種で、例えば、ヤマグワ(M. bombycis)、カラヤマグワ(M. alba)、及びログワ(M. Ihou)等を含む)の生葉のみを食餌とするため、飼育地域や飼育時期は、クワ葉の供給地やクワの開葉期に左右される。一方、ミノムシは広食性で、餌葉に対する特異性が低く、多くの種類が様々な樹種の葉を食餌とすることができる。したがって、餌葉の入手が容易であり、飼育地域を選ばない。また、種類によっては、常緑樹の葉も餌葉にできるため、落葉樹のクワと異なり年間を通して餌葉の供給が可能となる。その上、ミノムシはカイコよりもサイズが小さいので、飼育スペースがカイコと同等以下で足り、大量飼育も容易である。したがって、カイコと比較して飼育コストを大幅に抑制することができる。
また、生産性においてもミノムシは、カイコよりも優れた点を有する。例えば、カイコは営繭時のみに大量に吐糸し、営繭は全幼虫で同時期に行われる。そのため採糸時期が重なり、労働期が集中してしまうという問題がある。一方、ミノムシは、幼虫期を通して営巣時や移動時に吐糸を繰り返し行っている。そのため採糸時期を人為的に調整することで、労働期を分散できるという利点がある。また、ミノムシ絹糸は野生型のミノムシからの直接採取が可能であり、クモ糸の生産のように遺伝子組換え体の作製や維持管理を必要としない。
以上のようにミノムシ絹糸は、従来の動物繊維を超える特性を有し、また生産上も有利な点が多いため極めて有望な新規天然素材となり得る。
ところが、ミノムシ絹糸を実用化するには、いくつかの大きな問題を解決しなければならない。その一つは、ミノムシ絹糸のソースとなる巣の特徴に由来する問題である。ミノムシの巣の表面には、必ず葉片や枝片等が付着しており、ミノムシ絹糸を製品化するには、これらの夾雑物を完全に除去する必要がある。しかし、除去作業には、膨大な手間とコストを要するため、結果的に生産コストが高くなってしまう。また、既存の技術で夾雑物を完全に除去することは困難であり、最終生産物にも僅かな小葉片等が混在する他、夾雑物由来の色素で絹糸が薄茶色に染まる等、低品質なものになる。
したがって、ミノムシ絹糸を新規生物素材として実用化させるためには、夾雑物を含まない純粋なミノムシ絹糸を簡便、かつ容易に生産する方法の開発が必要であった。
WO2012/165477
大崎茂芳, 2002, 繊維学会誌(繊維と工業), 58: 74-78 Kuwana Y, et al., 2014, PLoS One, DOI: 10.1371/journal.pone.0105325 Gosline J. M. et al., 1999, 202, 3295-3303
本発明は、ミノムシから純粋なミノムシ絹糸を容易かつ簡便に、そして少ない工程で採取することのできる採糸方法、及びその採糸方法を実行するための採糸装置を開発し、提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者は様々な研究を重ねる過程で、所定の内径を有する管にミノムシを入れたときに、ミノムシは管内でも吐糸し、その吐糸された絹糸が糸玉状(本明細書では、しばしば「絹糸塊」と表記する)になるという事実を見出した。通常、ミノムシは、枝等からの落下防止のために、図1Cで示すように脚掛かりとなる糸をジグザグ状に吐糸して(矢頭)、爪を糸に掛けながら移動する(矢印)。ミノムシは管内でも脚掛かりとなる糸を吐糸し続けるが、所定の径を有する管内では壁面に糸を付着させることができず、結果的に絹糸塊となってしまうのかもしれない。この絹糸塊は、葉片や枝片等の不純物を一切含まない純粋なミノムシ絹糸のみで構成され、しかも相当量を得ることができる。また、絹糸塊は、管内壁に付着していないことから、剥離工程等を必要とせず、管を反転させるだけで容易に回収することができる。本発明は、上記新たな知見に基づくもので、以下を提供する。
(1)ミノムシから絹糸を採糸する装置であって、ミノムシを収容する容器、及びその容器内へのミノムシの出し入れを行う入出孔を備え、前記容器は、その内部空間における最大短軸断面の幅が収容するミノムシの最大胴幅に対して1.2倍以上3.1倍未満の範囲内となるように構成されている前記装置。
(2)前記容器は最底部に排出孔を有し、前記排出孔は最小幅が収容するミノムシの糞の最大幅よりも長く、かつ最大幅が収容するミノムシ頭部の最大幅よりも短くなるように構成されている、(1)に記載の装置。
(3)前記容器は内部空間の長軸が水平面に対して60度~90度の勾配を有するように構成されている、(1)又は(2)に記載の装置。
(4)前記容器の内部空間における形状が管状、球状、楕円球状、又はそれらの組み合わせである、(1)~(3)のいずれかに記載の装置。
(5)前記容器の内部空間における短軸断面の形状が円形、楕円形、多角形、又はそれらの組み合わせである、(1)~(4)のいずれかに記載の装置。
(6)前記容器内壁が滑面である、(1)~(5)のいずれかに記載の装置。
(7)前記容器内部を構成する素材が人工素材である、(1)~(6)のいずれかに記載の装置。
(8)前記容器がミノムシを封入可能な封入部を備える、(1)~(7)のいずれかに記載の装置。
(9)ミノムシから絹糸を採糸する方法であって、巣を保持しない生きたミノムシを(1)~(8)のいずれかに記載の装置の容器内に収容する収容工程、容器内でミノムシに絹糸を吐糸させる吐糸工程、及び絹糸を容器から回収する回収工程を含む前記方法。
(10)前記収容工程後及び吐糸工程前に容器内にミノムシを封入する封入工程、及び 前記吐糸工程後及び回収工程前に封入を解除する解除工程をさらに含む、(8)に係る(9)に記載の方法。
(11)前記ミノムシが終齢である、(9)又は(10)に記載の方法。
(12)ミノムシの絹糸塊を製造する方法であって、巣を保持しない生きたミノムシを(1)~(8)のいずれかに記載の装置の容器内に収容する収容工程、容器内でミノムシに絹糸を吐糸させて絹糸塊を作製する吐糸工程、及び容器から絹糸塊を回収する回収工程を含む前記製造方法。
(13)前記収容工程後及び吐糸工程前に容器内にミノムシを封入する封入工程、及び 前記吐糸工程後及び回収工程前に封入を解除する解除工程をさらに含む、(12)に記載の製造方法。
(14)前記ミノムシが終齢である、(12)又は(13)に記載の製造方法。
本発明の採糸装置によれば、本発明の採糸方法を実現することができる。
本発明の採糸方法によれば、ミノムシ由来の純粋な絹糸をミノムシから容易かつ簡便に、そして少ない工程で採取することができる。特に本発明の採糸方法は、装置内で吐糸された絹糸を絹糸塊の状態で回収することができる。
A:オオミノガのミノムシ(オオミノガミノムシ)の巣の外観図である。B:オオミノガミノムシの巣を長軸方向に切り開いて二分したときの巣の内部を示す図である。中央にいる虫がオオミノガの幼虫、すなわちオオミノガミノムシである。C:オオミノガミノムシの移動時における吐糸行動を示す図である。ミノムシが絹糸を吐糸しながら進む様子(矢頭)、吐糸した絹糸に爪を掛けている様子(矢印)がわかる。 本発明の採糸装置における容器内部空間の形状例を示す概念図である。 本発明の採糸装置における容器の内部空間の最大短軸断面(302)、及びその幅(305~307)を示す概念図である。 本発明の採糸装置を用いてミノムシ絹糸を採糸している状況とその結果を示す図である。Aは本発明の採糸装置にミノムシを収容したときの一例である。Bは容器内で吐糸しながら絹糸塊を形成するミノムシを示している。Cは、容器から回収した絹糸塊とミノムシを示す。図中、矢印は絹糸塊を示す。 本発明の採糸装置の容器における排出孔の効果を示す結果である。A及びBは、排出孔を備えた容器、C及びDは、対照用の排出孔のない容器で検証したときの結果である。A及びCは容器内の絹糸塊の状態を、B及びDは容器から回収した絹糸塊を、示している。 本発明の採糸装置の容器内部空間における最大短軸断面の幅と絹糸塊の形成結果を示す図である。Aは最大胴幅7mmのミノムシに対して、内部空間の最大短軸断面の幅が9mmの容器を用いたときの結果であり、Bは最大胴幅7mmのミノムシに対して、内部空間の最大短軸断面の幅が120mmの容器を用いたときの結果である。Aで示す矢印は、容器内で形成された絹糸塊を示す。 本発明の採糸装置における容器の勾配実験を示す図である。図中、各数値は容器の勾配角度を示す。
1.採糸装置
1-1.概要
本発明の第1の態様は、ミノムシから絹糸を採糸する装置(採糸装置)である。本発明の採糸装置は、ミノムシから簡便かつ容易に不純物の混入しない純粋なミノムシ絹糸を採取することができる。
1-2.定義
本明細書で頻用する以下の用語について、以下の通り定義する。
「ミノムシ」とは、前述のようにチョウ目(Lepidoptera)ミノガ科(Psychidae)に属する蛾の幼虫の総称をいう。ミノガ科の蛾は世界中に分布するが、いずれの幼虫(ミノムシ)も全幼虫期を通して、自ら吐糸した絹糸で葉片や枝片等の自然素材を綴り、それらを纏った巣の中で生活している。巣は全身を包むことのできる袋状で、紡錘形、円筒形、円錐形等の形態をなす。ミノムシは、通常、この巣の中に潜伏しており、摂食時や移動時も常に巣と共に行動し、蛹化も原則として巣の中で行われる。
本明細書で使用するミノムシは、ミノガ科に属する蛾の幼虫であって、前記巣を作製する種である限り、種類、齢及び雌雄は問わない。例えば、ミノガ科には、Acanthopsyche、Anatolopsyche、Bacotia、Bambalina、Canephora、Chalioides、Dahlica、Diplodoma、Eumeta、Eumasia、Kozhantshikovia、Mahasena、Nipponopsyche、Paranarychia、Proutia、Psyche、Pteroma、Siederia、Striglocyrbasia、Taleporia、Theriodopteryx、Trigonodoma等の属が存在するが、本明細書で使用するミノムシは、いずれの属に属する種であってもよい。ミノガの種類の具体例として、オオミノガ(Eumeta japonica)、チャミノガ(Eumeta minuscula)、及びシバミノガ(Nipponopsyche fuscescens)が挙げられる。幼虫の齢は、初齢から終齢に至るまで、いずれの齢であってもよい。ただし、より太く長いミノムシ絹糸を得る目的であれば、大型のミノムシである方が好ましい。例えば、同種であれば終齢幼虫ほど好ましく、雌雄であれば大型となる雌が好ましい。またミノガ科内では大型種ほど好ましい。したがって、オオミノガ及びチャミノガは、本発明で使用するミノムシとして好適な種である。
本明細書で「絹糸」とは、昆虫由来の糸であって、昆虫の幼虫や成虫が営巣、移動、固定、営繭、餌捕獲等の目的で吐糸するタンパク質製の糸をいう。本明細書で単に絹糸と記載した場合には、特に断りがない限りミノムシ絹糸を意味する。
本明細書で「ミノムシ絹糸」とは、ミノムシ由来の絹糸をいう。
1-3.構成
本発明の採糸装置は、容器及び入出孔を備える。また、必要に応じて固定部や封入部を備えていてもよい。
本明細書において「容器」とは、ミノムシを収容するための器であって、内部空間を備える。容器は、1採糸装置あたりに1個でよいが、複数個備えていてもよい。
本明細書において「収容する」とは、容器の内部空間に対象物であるミノムシ全体を入れることをいう。
「(容器の)内部空間」とは、容器内部に備えられたミノムシを収容するための空間をいう。収納されたミノムシは、この内部空間内で吐糸行動を行う。内部空間の形状は、後述する条件を満たし、かつミノムシの動きを著しく制限する等の過度の負荷を与えなければ特に限定はしない。例えば、管状、球状、楕円球状、又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。管状、又は楕円球状が好適である。管状の場合、図2Aに示すように短軸断面(201)が全体にわたりほぼ同一な内部の並行管状形、図2Bに示すような短軸断面(201)が端部に向かって徐々に小さくなる錐体形状、又は図2Cに示すようなその組み合わせであってもよい。管状の場合、短軸断面の形状は、円形、楕円形、多角形(四角形、六角形等を含む)、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよい。また、管状の全体形状は特に限定しない。例えば、試験管のような直線的形状、円弧のような曲線形状、またJ字又は図2Dに示すU字のような直線と曲線が組み合わさった形状のいずれであってもよい。
容器の内部空間は、最大短軸断面の幅が所定の範囲内となるように構成されている。
本明細書において「短軸断面」とは、内部空間の長軸に直交する短軸を含む断面をいう。「最大短軸断面」とは、内部空間の短軸断面のなかで最も面積の大きい断面をいう。例えば、内部空間が図3Aで示す回転楕円形のような楕円球状(300)の場合、長軸(301)中央に直交する短軸断面(302)が最大短軸断面に相当する。また、内部空間が図3Bで示す球状(303)の場合には、長軸(301)中央に直交する短軸断面(302)、すなわち直径を含む面が最大短軸断面に相当する。さらに、内部空間が図3Cで示す並行角柱形状(304)であれば、長軸(301)に直交するいずれの短軸断面(302)も最大短軸断面となる。
本明細書において「最大短軸断面の幅」とは、最大短軸断面を構成する面における全ての幅をいう。例えば図3Aや図3Bで示すように最大短軸断面の形状が円の場合には直径(305)が、また図3Cで示すように最大短軸断面の形状が四角の場合には辺(306)や対角線(307)に相当する幅が、当該幅に該当する。
最大短軸断面の幅の前記「所定の範囲内」とは、収容するミノムシの最大胴幅に対して1.2倍以上3.1倍未満、好ましくは1.3倍以上2.5倍以下(1.3倍~2.5倍)の範囲である。「ミノムシの胴幅」とは、ミノムシにおいて、頭端部から尾端部の長軸に直交する短軸を含む断面における幅であり、「ミノムシの最大胴幅」とは、その胴幅中、最大のものをいう。原則として容器内収容前、好ましくは収容直前のミノムシ個体の最大幅とする。この幅は、ミノムシの種類、齢(成長段階)、性別、個体差によって異なるため、使用するミノムシに合わせて適宜定めればよい。一般に、本発明の採糸装置に使用するミノムシの種類と齢が明らかであれば、その数値をある程度特定することができる。例えば、オオミノガの終齢ミノムシであれば、最大胴幅は平均9.0mm±2.0mmの範囲(7.0mm~11.0mm)、好ましくは平均9.0mm±1.5mmの範囲(7.5mm~10.5mm)である。また、チャミノガの終齢ミノムシであれば、最大胴幅は平均7.0mm±2.0mmの範囲(5.0mm~9.0mm)、好ましくは平均7.0mm±1.5mmの範囲(5.5mm~8.5mm)である。したがって、オオミノガの終齢ミノムシを本発明の採糸装置に使用する場合には、容器における内部空間の最大短軸断面の幅は8.4mm以上34.1mm未満(≒7.0mm×1.2倍以上11.0mm×3.1倍未満)、又は9.1mm~27.5mm(≒7.0mm×1.3倍~11.0mm×2.5倍)、好ましくは9.0mm以上32.6mm未満(≒7.5mm×1.2倍以上10.5mm×3.1倍未満)、又は9.8mm~26.3mm(≒7.5mm×1.3倍~10.5mm×2.5倍)の範囲内となるようにすればよい。例えば、最大短軸断面の形状が、前述した四角の場合、最小値である辺の長さが9.0mm以上、また最大値である対角線の長さが27.5mm以下となるようにすればよい。
一方、内部空間の長軸の長さは、収容するミノムシの全長よりも長ければ、特に限定はしない。内部空間内でミノムシがある程度の自由度を持って動くことができるように、下限はミノムシの全長よりも1.5倍以上、2.0倍以上、2.5倍以上、3.0倍以上、3.5倍以上、4.0倍以上,4.5倍以上、又は5.0倍以上あればよい。上限は限定しないが、通常は20倍以下、15倍以下、14倍以下、13倍以下、12倍以下、11倍以下、10倍以下、9倍以下、8倍以下、7倍以下、又は6倍以下で足りる。
前記容器内部を構成する素材は、ミノムシが容易に破壊したり、穿孔したりできない素材であれば、特に限定はしない。天然素材又は人工素材、その組み合わせのいずれであってもよい。天然素材には、金属(合金を含む)、鉱物(石、及び砂を含む)、動物由来素材(骨、歯、牙、角、甲羅、鱗、及び角を含む)、植物由来素材(木材、竹、実殻、紙を含む)等が挙げられる。人工素材には、合成樹脂(プラスチックを含む)、陶磁器(ホーローを含む)、ガラス、炭素繊維等が挙げられる。材料コストや製造コストの点から人工素材が好適である。
前記容器内壁、すなわち容器内部の壁面は滑面であることが好ましい。壁面に凹凸が多いと、容器内に収納したミノムシが、その凹凸部を足掛かりに脱出したり、吐糸した絹糸を壁面に付着させて目的の絹糸塊を得られない場合があるからである。滑面は、容器内部の素材自体に基づくものであってもよいし、容器内部の素材表面に塗料を塗布して生じさせてもよい。例えば、金属、ガラス、プラスチック等であれば、加工によって素材自体が滑面に仕上がる。また、また、木質材料や繊維のように滑面仕上げが困難な素材であっても、その表面をニス等の塗料で被覆することで滑面性を付与できる。
容器の一例として、試験管、及びコニカルチューブ等が挙げられる。
本明細書において「入出孔」とは、容器内部へのミノムシの出し入れをするための孔である。入出孔は、一容器あたり1つあればよいが、複数あっても構わない。例えば、容器がU字管状でその両端部に入出孔が供えられた場合が挙げられる。入出孔を複数設ける場合、ミノムシ投入用の孔と取り出し用の孔は共通していてもよいし、別々であってもよい。入出孔の幅は、容器に収容するミノムシの最大胴幅よりも大きくなければならない。通常はミノムシの最大胴幅に対して1.2倍以上3.1倍未満の範囲である。入出孔の形状は容器形状に準ずる形状であればよく、特に限定はしない。円形、又は円形に近い(略円形の)楕円形が好ましい。
前記容器は、排出孔を設置できる。容器における「排出孔」とは、容器内に収納したミノムシが排泄した糞を容器外に排出するための孔である。排出孔の目的は、原則として糞の容器外への排出であるが、幼虫が糞と再接触できないような構成であれば同様の効果を得られることから、糞は必ずしも容器から排出されなくてもよい。一般に、摂食行動を行っている活動期のミノムシを本発明の採糸装置に使用した場合、しばしば容器内で脱糞する。この糞が容器内部に残っていた場合には、ミノムシは糞を巣材として糸に絡め始めるため、回収した絹糸塊が糞にまみれ、純粋な絹糸塊を取得することができない。そのため、活動期のミノムシを使用する場合には、容器が排出孔を備えていることが好ましい。
排出孔は、容器内に排泄された糞が重力により自然排出されるように、容器内部の最底部に配置するようにする。「最底部」とは、容器内部において最も低位置をいう。このとき容器内部は、排出孔に向かって収束するように、具体的には容器内に入れた水が排出孔から完全に自然排水されるように、構成されていることが好ましい。孔の形状は、特に限定はしない。円形、楕円形、多角形(四角形、六角形等を含む)、又はそれらの組み合わせのいずれであってもよいが、排出孔の目的が糞の排出であることや、糞が球形に近い形状であること、穿孔の容易性を鑑みれば、円形又は円形に近い(略円形の)楕円形が好ましい。排出孔の大きさについて、孔の最小幅は、容器に収容するミノムシの排泄する糞の最大幅よりも長ければよい。一方、孔の最大幅は、ミノムシの脱出を防ぐため容器に収容するミノムシ頭部の最大幅よりも短くなるようする。排出孔の幅は、ミノムシの種類、齢(成長段階)、性別、個体差によって異なる。そのため、使用するミノムシに合わせて、排出孔の幅を適宜定めればよい。一般に、本発明の採糸装置に使用するミノムシの種類と齢が明らかであれば、それらの数値をある程度特定することができる。例えば、オオミノガの終齢ミノムシであれば、糞の最大幅は平均3.0mm±0.5mmの範囲(2.5mm~3.5mm)であり、頭部最大幅は平均5.5mm±1.0mmの範囲(4.5mm~6.5mm)である。また、チャミノガの終齢ミノムシであれば、糞の最大幅は平均2.5mm±0.5mmの範囲(2.0mm~3.0mm)、であり、頭部最大幅は平均4.5mm±1.0mmの範囲(3.5mm~5.5mm)である。通常は、糞の最大幅の1.2倍以上、1.3倍以上、又は1.4倍以上、好ましくは1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、又は2.0倍以上、そして頭部最大幅の0.9倍以下、0.8倍以下、好ましくは0.7倍以下、0.6倍以下である。
容器の外部形状は、特に限定はしない。外部形状が内部空間と全く異なっていてもよいし、内部空間に準じた形状であってもよい。外部形状が内部空間と全く異なる例として、外部形状が四角柱形で内部空間がその中に納まる円柱形の場合が挙げられる。通常は内部空間に準じた形状であればよい。
採糸装置において、容器の角度は特に限定はしない。例えば、容器の内部空間の長軸が水平であっても、また水平面に対して垂直(90度)であってもよい。ただし、採糸装置の設置スペース、ミノムシの管理の容易性、糞の排出容易性、又は容器からのミノムシの逃亡を鑑みた場合、採糸装置における容器の角度は、内部空間の長軸が水平面に対して60度~90度、70~90度、80~90度、又は85~90度の勾配を有するように構成されていることが好ましい。90度が最も好適である。
収容したミノムシが入出孔から脱出し、逃亡しないように、容器は必要に応じてミノムシを内部空間に封入可能なように構成されていてもよい。本明細書において「封入」とは、容器の内部空間に封じ込めることをいう。ただし、内部空間はあくまでも通気状態にあり、密閉して封じ込めることではない。封入可能にするには容器に設けられた孔のうち、ミノムシの頭部最大幅以上の幅を有する孔に封入部を設置すればよい。容器においてミノムシの頭部最大幅よりも必ず大きい孔は、原則として入出孔であることから、入出孔に封入部を設置すれば封入可能となる。
本明細書において「封入部」とは、ミノムシの頭部最大幅以上の幅を有する孔の幅をミノムシの頭部最大幅よりも短くする、又は孔を塞ぐ部をいう。具体的には、例えば、蓋が挙げられる。封入部の条件を満たす限り、蓋の形状は特に限定はしない。スクリューキャップ、ゴム栓等のような様々な形状の蓋を利用できる。蓋には孔があってもよい。その他、入出孔の幅をミノムシの頭部最大幅よりも任意に短くできる可変式にしてもよい。
本明細書において「固定部」とは、採糸装置の容器を固定する部である。容器単体で自立可能であり、必要な勾配等を維持することができれば、固定部は必要ないことから、採糸装置においては、選択的な構成要素である。固定部の形状や大きさは、特に制限はしない。また、固定部は、複数の容器を固定できるように構成されていてもよい。固定部の具体例として、容器が試験管の場合、試験管立て等が挙げられる。
2.採糸方法
2-1.概要
本発明の第2の態様は採糸方法である。本発明の採糸方法は、第1態様の採糸装置を用いて、ミノムシから純粋なミノムシ絹糸を取得する方法である。本発明の絹糸方法によれば、ミノムシ絹糸を簡便、かつ容易に、そして純粋な絹糸塊の状態で採糸することができる。
2-2.方法
本発明の採糸方法は、収容工程、吐糸工程、及び回収工程を必須工程として、また封入工程及び解除工程を選択工程として包含する。以下、各工程について説明する。
(1)収容工程
「収容工程」とは、ミノムシを第1態様の採糸装置の容器内に収容する工程である。
本工程で使用するミノムシは、巣を保持しない生きた個体である。通常、ミノムシは巣と共に行動するため、巣から取り出して使用すればよい。本発明で使用するミノムシは摂食を行う活動期の個体であっても、休眠期の個体であってもよい。ただし、休眠期の個体は、活動条件下に置く必要がある。
本明細書で「活動条件」とは、ミノムシが移動や摂食等の日常的な動きを伴う活動が行える条件をいう。条件として、気温、気圧、湿度、明暗、酸素量等が挙げられるが、本発明において最も重要な条件は気温である。昆虫は変温動物のため、気温の低下と共に活動を停止して休眠状態に入る。したがって、本発明における活動条件のうち好適な気温の下限は、ミノムシが休眠に入らない温度である。種類によって具体的な温度は異なるが、概ね10℃以上、好ましくは12℃以上、より好ましくは13℃以上、さらに好ましくは14℃以上、一層好ましくは15℃以上あればよい。一方、気温の上限は、ミノムシが生存可能な温度の上限である。一般的には40℃以下、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下、さらに好ましくは27℃以下、一層好ましくは25℃以下あればよい。気圧、湿度、明暗、酸素濃度等については、例として、温帯地域の平地における条件と同程度であればよい。例えば、気圧は1気圧前後、湿度は30~70%、明暗は24時間のうち明条件6時間~18時間、そして大気中の酸素濃度は15~25%の範囲が挙げられる。
さらに、本発明で使用するミノムシは野外で採集した個体であっても、また人工飼育下で累代下個体であってもよいが、いずれも飢餓状態でない個体が好ましく、使用前に十分量の食餌を与えた個体がより好ましい。吐糸させる個体が飢餓状態でなければ、十分な食餌を与えられたミノムシは、活動条件下で1時間~4日間、3時間~3日間、又は6時間~2日間の期間、線状路上を移動しながら連続して吐糸し続ける。
収容は、採糸装置の容器に設けた入出孔より行う。巣から取り出されたミノムシは、ストレス環境下に曝露されることになるため、収容は、ミノムシを巣から取り出した後、速やかに行うことが好ましい。その際、ミノムシに負荷を与えないか、最小限となるようにする。ここでいう負荷とは、ストレス以外の過度の負担であり、例えば、ミノムシを摘まんだり、転がしたりする接触負荷、低温や高温に曝露する温度負荷をいう。
原則として、1容器にはミノムシを1個体入れるようにする。
(2)封入工程
「封入工程」とは、容器内にミノムシを封入する工程である。本工程は、前記収納工程後で、後述する吐糸工程前に行われる。本工程は、選択工程であり、第1態様の採糸装置が封入部を備えている場合に実行できる。本工程は、前記収容工程で容器内に収容したミノムシが容器から脱出しないようにすることを目的とする。
本工程は、後述する解除工程の前提となる工程であり、通常は解除工程と共に1組で実行される。ただし、封入工程単独で行われてもよい。
封入は、封入部で出入孔を塞ぐことで達成される。封入の方法は、備えられた封入部の構成に従って行えばよい。例えば、封入部がスクリューキャップの場合、出入孔に相当する容器の口をスクリューキャップでねじ込んで蓋をすればよい。
(3)吐糸工程
「吐糸工程」とは、容器内でミノムシに絹糸を吐糸させる工程である。本工程は、本発明においてミノムシ絹糸を生産する上で最も重要な工程である。ただし、採糸装置を活動条件下に設置しさえすればよく、他に特段の作業を要しない。容器内にミノムシを収容すれば、ミノムシは自ら容器内で吐糸をし続け、吐糸されたミノムシ絹糸は、自然に絹糸塊を形成する。本工程の時間、すなわちミノムシに吐糸させる時間は、特に限定はしない。容器内に絹糸塊が形成されるまで行えばよい。6時間以上、12時間以上、18時間以上、24時間以上、48時間以上、又は72時間以上行えばよい。上限はミノムシが吐糸を停止するまででよいが、通常は168時間以下、150時間以下、144時間以下、120時間以下、100時間以下、又は96時間以下で足りる。
(4)解除工程
「解除工程」とは、封入を解除する工程である。本工程は、前記吐糸工程後で、後述する回収工程前に行われる。本工程は、封入工程が実行されたことが前提となる選択工程であり、第1態様の採糸装置が封入部を備えている場合に実行できる。本工程は、前記吐糸工程でミノムシの吐糸により容器内に発生した絹糸塊を容器から回収しやすくすることを目的とする。
「解除」とは、封入を解くことをいう。すなわち、本方法では、封入部から入出孔を解き放つことをいう。例えば、封入部がスクリューキャップであれば、キャップを容器から取り外せばよい。
本工程により入出孔が開口することから、容器内に生じた絹糸塊を後述する回収工程で容易に回収できる。
(5)回収工程
「回収工程」とは、容器から回収する工程である。絹糸の回収は、原則として入出孔から行う。ただし、ピンセット等を用いて排出孔や封入部に設けられた孔から回収してもよい。容器内で生産される絹糸は絹糸塊の形状を成し、通常、入出孔の幅よりも小さいことから、入出孔から回収する場合には、入出孔を下方に向けるのみで容易に回収することができる。このとき、必要であれば、ピンセットや掻き出し棒等を用いてもよい。収容工程で容器内に収容したミノムシは、本工程で絹糸と共に回収してもよい。再利用可能である。したがって、必要であれば、引き続き容器内に収納して再度吐糸させることもできる。ただし、本方法に一度使用したミノムシは、絶食状態で吐糸し続けて疲弊していることから、一旦回収して餌葉を与えた後に使用することが好ましい。
3.絹糸塊製造方法
3-1.概要
本発明の第3の態様は絹糸塊製造方法である。本発明の製造方法によれば、第1態様の採糸装置を用いて、ミノムシ絹糸で構成される絹糸塊を製造することができる。本発明の製造方法によれば、純粋なミノムシ絹糸で構成される絹糸塊を簡便、かつ容易に、製造することができる。
3-2.方法
本発明の製造方法は、収容工程、吐糸工程、及び回収工程を必須工程として、また封入工程及び解除工程を選択工程として包含する。これらの工程の詳細については、第2態様に記載の採糸方法における各工程に準ずる。したがって、各工程の具体的な説明については、省略する。
<実施例1:採糸装置による絹糸塊の製造(1)>
(目的)
本発明の採糸装置を用いて、夾雑物を含まない、純粋なミノムシ絹糸で構成される絹糸塊を容易かつ簡便に採取できることを検証する。
(方法)
ミノムシには、11月に野外で採集したオミノガの終齢幼虫を使用した。それぞれの個体の最大胴幅は9.0mm~10.0mm、全長30.0mm~32.0mmの範囲であった。
採糸装置の容器には10mLのポリプロピレン製コニカルチューブ(IWAKI社)を用いた。この容器の内部空間における最大短軸断面の幅(内径)は14.5mm、長さ97.0mmである。この場合、チューブ開口部が容器入出孔に相当する。また、固定部として試験管立てを用いた。
ハサミを用いてミノムシを巣から取り出した後、直ちに前記採糸装置の容器内に収容した(図4A)。続いて、ミノムシの脱出を防ぐためサランラップ(登録商標)(Asahi KASEI社)を丸めて作製した蓋を封入部として、チューブ開口部に詰めた。そのまま、25℃下で放置した。
(結果)
その結果、図4Bに示すように、ミノムシは12時間後に全てのチューブ内で絹糸塊(矢印)を形成した。図4Cは、収容から120時間後にチューブから取り出した絹糸塊(矢印)とミノムシ(矢頭)を示す。純白で夾雑物を含まない、純粋なミノムシ絹糸からなる絹糸塊を取得することができた。
<実施例2:採糸装置による絹糸塊の製造(2)>
(目的)
排出孔を備えた本発明の採糸装置を用いて、活動期のミノムシから夾雑物を含まない絹糸塊を採取できることを検証する。
(方法と結果)
ミノムシには、6月に野外で採集したチャミノガの亜終齢~終齢幼虫を10頭使用した。それぞれの個体の最大胴幅は6.0mm~8.0mm、及び全長24.0mm~30.0mmの範囲であった。
検証用の採糸装置の容器には、ポリプロピレン製の10mL用ピペッターチップ(Eppendorf社)を用いた。この容器の内部空間における最大短軸断面の幅(直径)は13.5mmである。また、ピペッターチップの場合、ピペッター接続口が容器入出孔に相当する。一方、チューブ最底部(チップ先端部)を切断して直径3.5mmの排出孔を空けた。対照用の採糸装置における容器として、排出孔を備えない10mLのガラス製丸底チューブ(As one社)を用いた。また固定部として試験管立てを用いた。
ミノムシは、ハサミを用いて巣から取り出した後、直ちに前記検証用及び対照用の採糸装置の容器内にそれぞれ5頭ずつ収容した。続いて、ミノムシの脱出を防ぐため、開口部をポリエチレンフィルムで覆い、弛みのないよう輪ゴムで留めて各容器の入出孔を封じた。ただし、密閉はせず、容器内の通気性は確保される状態にした。そのまま、25℃下で72時間放置した。ミノムシは、全ての容器内で糞を排泄したが、検証用採糸装置の排出孔を備えた容器(図5A)では糞が容器外に自然排出されるため、図5Bに示すように、実施例1と同様に純白で夾雑物を含まない、純粋なミノムシ絹糸からなる絹糸塊を取得することができた。一方、対照用採糸装置では、糞が排出されずに容器内に残存するため、図5Cに示すように、ミノムシは吐糸した絹糸に糞を絡めることが多かった。その結果、採取された絹糸塊は図5Dに示すように、いずれも糞で汚れたものとなっていた。したがって、本発明の採糸装置に活動期のミノムシを使用する場合には、排出孔を備えた容器を使用することが好ましいことが示唆された。また、本発明の絹糸装置を用いれば、ミノムシの種類を問わず、純粋なミノムシ絹糸からなる絹糸塊を容易かつ簡便に製造し、回収できることが明らかとなった。
<実施例3:採糸装置の容器内径と絹糸塊形成の関係>
(目的)
採糸装置の容器内部空間における最大短軸断面の幅と収容するミノムシの最大胴幅の比率と絹糸塊の形成との関係について検証する。
(方法)
ミノムシには、6月に野外で採集した全長30mm、最大胴幅7mmのチャミノガの終齢幼虫を使用した。
採糸装置における容器内部空間の最大短軸断面の幅(直径)は、9mm(2.5mL用ポリプロピレン製ピペッターチップ、φ9mm×高さ115mm:Eppendolf社)、12.0mm(6mLガラス製試験管、φ12mm×高さ75mm:As one社)、15.0mm(15mLガラス製試験管、φ15mm×高さ85mm:As one社)、22.0mm(50mLガラス製試験管、φ22mm×高さ200mm:As one社)、30.0mm(50mLポリプロピレン製コニカルチューブ、φ30mm×高さ118mm:As one社)、120mm(ポリエチレン製蓋付円筒状プラスチック容器),φ120mm×高さ60mm)とした。
基本的な採糸方法は、実施例1及び2に準じた。
(結果)
最大胴幅7mmのミノムシに対して、容器内部空間の最大短軸断面の幅が9mm~15mmのときにはミノムシは容器内で絹糸塊を形成した(図6A)。しかし、最大短軸断面の幅が最大胴幅の3倍を超える22.0mm以上になると、容器内での自由度が高くるためか、容器内壁にも盛んに吐糸し始めるようになった。それ故、結果的に絹糸塊の形成率が著しく低下した(図示せず)。さらに最大短軸断面の幅が120mmnになると絹糸塊を全く形成しなくなり、容器内壁にミノムシ絹糸を付着させながら無秩序に吐糸するようになった(図6B)。この結果から、ミノムシの最大胴幅よりも容器内部空間の最大短軸断面の幅が過度に大きくなると、絹糸塊が形成されなくなるため、容器内部空間の最大短軸断面の幅は、ミノムシの最大胴幅の1.2倍以上3.1倍未満、好ましくは、1.3倍以上2.5倍以下の範囲が適当であることが明らかとなった。
<実施例4:採糸装置における容器の勾配と絹糸塊形成の関係>
(目的)
採糸装置の容器及びその内部空間の勾配と絹糸塊の形成との関係について検証する。
(方法)
ミノムシには、6月に野外で採集したチャミノガの終齢幼虫を使用した。いずれの個体も最大胴幅は約24mm、全長約7mmであった。
採糸装置の容器には実施例1と同様に10mL用ポリプロピレン製ピペッターチップ(Eppendorf社)を用いた。各チューブの最底部には、排出孔として直径3.5mmの孔を空けた。10本のチューブを各2本ずつ水平面に対して5種の勾配角度(0度、25度、45度、60度、90度)となるように試験管立てに設置した(図7)。
基本的な採糸方法は、実施例1及び2に準じた。封入部として、ミノムシを容器内に投入後、入出孔であるチューブ開口部をポリエチレン製のフィルムで覆い、輪ゴムで緩みの無いように留めて、これを封入部とした。投入後、活動条件下で3日間観察した。
(結果)
その結果、いずれの勾配角度でもミノムシはチューブ内でほぼ球状の絹糸塊を形成した。この結果から、本発明の採糸装置でミノムシの絹糸塊を形成する場合、容器の勾配角は特に影響しないことが明らかとなった。

Claims (3)

  1. 夾雑物を含まないミノムシの吐糸絹糸塊。
  2. 前記吐糸絹糸塊が白色である、請求項1記載のミノムシの吐糸絹糸塊。
  3. 前記吐糸絹糸塊が略球状である、請求項1又は2に記載のミノムシの吐糸絹糸塊。
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