以下に添付図面を参照して、この発明にかかるガイドベーンロッキング解除治具の好適な実施の形態を詳細に説明する。
<実施の形態1>
(ガイドベーンロッキング解除治具の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具の構成について説明する。図1および図2は、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具の構成を示す説明図である。図1においては、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具の外観を示している。図2においては、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具の断面を示している。
図1および図2において、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100は、操作部材110と、支持部材120と、固定部材130と、を備えている。操作部材110は、軸部111と、操作部112と、アダプタ201と、を備えている。軸部111は、軸体形状をなす。具体的に、この実施の形態1における軸部111は、円柱形状をなす。軸部111は、外周面にネジ山が形成されている。
操作部112は、軸部111における長さ方向の一端に設けられている。操作部112は、軸部111の軸心方向に直交する面内における寸法(外径寸法)が、軸部111の外径寸法よりも大きい。操作部112は、たとえば、軸部111とともに成型することによって、軸部111と一体に設けることができる。
操作部112は、たとえば、JIS規格などの所定の規格にしたがった寸法および形状の六角ボルトの頭部と同一形状をなす。操作部112の形状を、所定の規格にしたがった六角ボルトの頭部と同一形状とすることにより、六角ボルトを操作するレンチやスパナなどの汎用的な工具を操作部112にかけ、当該操作部112を軸心周りに回転させることによって軸部111(すなわち操作部材110)を回転させることができる。
アダプタ201は、軸部111における操作部112とは反対側の他端に設けられている。アダプタ201は、略円柱形状をなし、軸心方向における一端側の面に、当該一端側の面から軸心方向に沿って凹む凹部201aを備えている。凹部201aの内周面には、軸部111に形成されたネジ山に螺合するネジ山が形成されている。
アダプタ201は、ガイドベーンロッキング解除治具100を用いたロックの解除対象とするベルクランクに設けられたロック機構におけるロックピンの硬度よりも低い硬度の材料を用いて形成されている(図5~図10を参照)。具体的には、アダプタ201は、たとえば、シリコン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、MCナイロン(登録商標)などのPP(ポリプロピレン)樹脂やPE(ポリエチレン)樹脂など、各種の樹脂材料を用いて形成することができる。
アダプタ201は、外表面を覆う被膜202を備えている。被膜202は、少なくとも、略円柱形状をなすアダプタ201における曲面(外周面)を覆うように設けられている。被膜202は、吸収した外光のエネルギーを放出することによって発光する蓄光材料や蛍光材料のうちの少なくとも一方の材料を含む材料を用いて形成されている。具体的には、たとえば、蓄光顔料を分散させた透明樹脂材料を、略円柱形状をなすアダプタ201外表面に塗布することによって被膜202を形成することができる。
具体的には、たとえば、蓄光顔料を分散させた透明樹脂材料を、略円柱形状をなすアダプタ201外表面に塗布することによって被膜202を形成することができる。あるいは、具体的には、たとえば、蓄光顔料を分散させた透明樹脂材料を、略円柱形状に成型することによってアダプタ201自体を発光させるようにしてもよい。
支持部材120は、ステンレスや鋼などの金属材料によって形成されたブロック形状をなし、軸心方向における両端が開放された貫通孔121を備えている。支持部材120において、貫通孔121の内周面には、軸部111に形成されたネジ山に螺合するネジ山が形成されている。操作部材110は、軸部111に形成されたネジ山を、貫通孔121の内周面に形成されたネジ山に螺合することによって、支持部材120に支持されている。
固定部材130は、基台131と、固着具132と、を備えている。基台131は、略平板形状をなし、支持部材120に固定されている。基台131は、支持部材120と別体であってもよく、一体であってもよい。基台131と支持部材120とを別体とする場合、支持部材120は、たとえば、溶接などによって固定部材130に固定することができる。基台131と支持部材120とを一体とする場合、支持部材120は、たとえば、成型によって固定部材130と一体に構成することができる。
基台131は、複数の穿孔131aを備えている。複数の穿孔131aは、それぞれ、基台131を板厚方向に貫通している。複数の穿孔131aは、支持部材120における貫通孔121の中心部を中心とする同一円周上において、等間隔に設けることが好ましい。
具体的には、たとえば、図2に示すように、2つの穿孔131aを備えた基台131においては、支持部材120を間にして対向する位置に、2つの穿孔131aを設けることができる。また、たとえば、3つの穿孔131aを備えた基台131においては、各穿孔131aと支持部材120における貫通孔121の中心部とを結ぶ線分のうち、隣り合う穿孔131aと貫通孔121の中心部とを結ぶ線分とがなす角度が120度になるように、3つの穿孔131aを設けることができる。
複数の固着具132は、穿孔131aごとに対応して設けられており、それぞれが各穿孔131aを貫通する状態で基台131に取り付けられる。固着具132は、たとえば、ボルトやネジによって実現することができる。ガイドベーンロッキング解除治具100は、ガイドベーンが備える羽根の角度を固定するロック機構によるロックを解除する際に用いる(図5~図10を参照)。
(水力発電設備の概略構成)
図3は、水力発電設備の一例を示す説明図である。図3においては、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100の適用対象とする水力発電設備の概略構成の一例を示している。
図3に示すように、水力発電設備300は、水力発電所に設置されており、ダム301、取水設備302、導水設備303、電気設備304などを備えている。ダム301は、貯水池301aに水を貯水し、必要な水量を確保する。貯水池301aには、貯水池301aの水位を計測する水位計測器(図示を省略する)が設置されている。水位計測器は、計測した貯水池301aの水位に関する情報を、図示を省略する制御装置に出力する。水位計測器によって貯水池301aの水位を計測することにより、当該水位から貯水池301aにおける貯水量を換算することができる。
取水設備302は、貯水池301aに連通し、開閉可能な取水ゲート(図示を省略する)が設けられた取水口302aを備えている。取水設備302は、取水ゲートを開くことによって、取水口302aを介して、貯水池301aに貯水された水から発電に使用する水を取水する。
導水設備303は、導水路303a、水圧管路303b、余水路(図示を省略する)などを備えている。導水設備303は、導水路303aにおいて水量を安定させた後、水圧管路303bを介して、電気設備304が備える水車に水を流れ落とす。余水路は、貯水池301aにおいて一定量より多くなった余剰の水を放流する。
電気設備304は、水力発電所の建屋304a内に設けられている。電気設備304は、水車304bを備えており、水圧管路303bを流れ落ちる際の落差によって得られるエネルギーによって水車304bを回転させ、水車304bの回転エネルギーを発電機において電気に変換することによって発電する。
水圧管路303bを流れ落ちる水は、入口弁304cを介して水車304bに流入する。発電により生じた電気は送電設備(図示を省略する)に出力される。水車304bを通過した水は、放水路305を介して、水力発電設備300(水力発電所)の下流側の河川306などに導かれる。
制御装置は、たとえば、水力発電所の建屋304a内に設けられ、取水ゲートや入口弁304cなどの開閉制御をおこなうことによって、電気設備304における運転や運転の停止をおこなう。また、水力発電所の制御装置は、たとえば、貯水池301aに設置された水位計測器によって計測される貯水池301aの水位に基づいて、貯水池301aにおける貯水量を算出し、貯水池301aの水位すなわち貯水量が適正な範囲内に収まるように制御する。具体的に、制御装置は、たとえば、貯水池301aの水位が上がった場合には取水ゲートを開放して発電をおこない、貯水池301aの水位が下がった場合には取水ゲートを閉塞して発電を停止する。
(水車304bの概略構成)
つぎに、水車304bの概略構成について説明する。図4は、水車304bの概略構成の一例を示す説明図である。図4においては、水車304bの一例として、立軸(縦軸、竪軸)型のフランシス水車を示している。
図4に示すように、水車304bは、ケーシング401、水車ランナ402、ガイドベーン403、吸出管404を備えている。ケーシング401は、渦巻き形状をなす中空の管状部材によって実現される。水車ランナ402は、回転中心に対して略放射状に配置された複数のランナベーンを備えている。
水車ランナ402は、ケーシング401に流入した水が複数のランナベーンのそれぞれに当たることによる力によって回転する。水車ランナ402は、水の流れる力を、回転する力に変換する。水車ランナ402は、回転中心において水車軸405と連結されている。水車軸405は、図示を省略する発電機に連結されており、水車ランナ402の回転を発電機に伝達する。
吸出管404は、管形状をなし、水車ランナ402の中心部に接続されている。吸出管404は、断面を徐々に大きくすることによって、水の流速を減少させつつ整流し、水の速度エネルギーを効率よく回収することができる。水車ランナ402を回転させた水は、吸出管404から放水路305に導かれ、放水路305を介して水力発電所の下流側の河川306などに導かれる。
ガイドベーン403は、ケーシング401内において、水車ランナ402の外周側(流水入口側)に複数配置されている。ガイドベーン403は、ケーシング401内に流入する水の流入方向に干渉する板ないし羽根体形状をなし、それぞれ、水車ランナ402の回転中心に対して略放射状に配置されている。
ガイドベーン403は、それぞれ、ケーシング401内において、回動可能に軸支されており、回転中心から外周方向に向かって延出している。ガイドベーン403は、ケーシング401内に流入した水を水車ランナ402へ導くとともに、軸心周りに回動して角度を変えることによって、水車ランナ402に流入する水の量と方向を調節することができる。
ガイドベーン403には、クランク機構406を介して、環形状をなすガイドリング407が連結されている。クランク機構406は、クランクケーシング408を備えている。クランクケーシング408は、略円筒形状をなし、内側にクランク機構406を収容する。ガイドリング407は、クランクケーシング408の上側に設置されている。
クランク機構406、ガイドリング407、クランクケーシング408は、ガイドベーン操作機構409の一部を構成する。ガイドベーン操作機構409は、ガイドベーン403を全開にした状態で固定(ロック)するロック機構図(図5~図10を参照)を備えている。ロック機構は、発電停止中に、ガイドベーン403を全開にした状態で固定(ロック)する。
(ガイドベーン操作機構409およびロック機構の構成)
つぎに、ガイドベーン操作機構409およびロック機構の構成について説明する。図5~図10は、ガイドベーン操作機構409およびロック機構の構成を示す説明図である。
図5においては、ロック機構を備えたガイドベーン操作機構409の外観を示している。図5に示すように、ガイドベーン操作機構409は、一対のガイドベーン操作ロッド501を備えている。ガイドリング407には、一対のガイドベーン操作ロッド501の一端が連結されている。
一対のガイドベーン操作ロッド501は、それぞれ、ガイドリング407を間にして対向する位置において、ガイドリング407に連結されている。一対のガイドベーン操作ロッド501の他端は、クランクケーシング408の外側に配置されたベルクランク502に対して、水車軸405の軸心方向と平行な軸心周りに回動可能に連結されている。
ベルクランク502は、ベルクランク軸503と、ベルクランクケーシング504と、を備えている。ベルクランク軸503は、軸体形状をなし、位置が固定されている。ベルクランク軸503は、水車軸405の軸心方向と平行な方向を軸心方向として設置されている。ベルクランクケーシング504は、ベルクランク軸503を中心として回動可能に設けられている。
ベルクランクケーシング504において、ベルクランク軸503を間にしてクランクケーシング408とは反対側には、ガイドベーンサーボロッド505の一端が連結されている。ガイドベーンサーボロッド505の他端は、ガイドベーンサーボモータ506に連結されている。ガイドベーンサーボロッド505は、長さ方向に沿ってスライド可能に設けられている。ガイドベーンサーボロッド505は、ガイドベーンサーボモータ506によって駆動されることによってスライドする。
ベルクランク502は、ガイドベーンサーボモータ506によって駆動されるガイドベーンサーボロッド505のスライドに連動して、ベルクランク軸503を中心としてベルクランクケーシング504を回動させる。ベルクランクケーシング504が回動すると、一対のガイドベーン操作ロッド501の他端位置が変位し、この変位にともなって、ガイドベーン操作ロッド501の一端側が変位する。これにより、ガイドベーン操作ロッド501に連結されたガイドリング407が、水車軸405を中心として回動する。
ベルクランクケーシング504において、ベルクランク軸503よりもクランクケーシング408側には、ロック機構を構成するロック孔507が設けられている。ロック機構は、ガイドベーン403を全開にした状態で、ガイドベーン操作機構409の動作をロックする。
図6においては、ガイドベーン操作機構409およびロック機構を図5における矢印B方向から見た状態を示している。図6に示すように、クランクケーシング408の内側に収容されたクランク機構406は、ガイドベーンスピンドル601と、ガイドベーンアーム602と、弱点ピン603と、メガネリンク604と、偏芯ピン605と、を備えている。ガイドベーンスピンドル601は、軸体形状をなし、ガイドベーン403の回転中心と同一軸心上に配置されている。
ガイドベーンスピンドル601には、ガイドベーンアーム602の一端が、ガイドベーンスピンドル601の軸心方向と平行な軸心周りに回動可能に連結されている。ガイドベーンアーム602の他端には、弱点ピン603を介してメガネリンク604の一端が連結されている。
メガネリンク604は、弱点ピン603を中心として、ガイドベーンスピンドル601の軸心方向と平行な軸心周りに回動可能な状態で、ガイドベーンアーム602の他端に連結されている。メガネリンク604の他端は、偏芯ピン605を介してガイドリング407に連結されている。メガネリンク604は、偏芯ピン605を中心として回動可能に連結されている。
これにより、ガイドベーン操作機構409により水車軸405を中心としてガイドリング407を回動させると、この回転をクランク機構406を介してガイドベーン403に伝達し、ガイドベーン403を回動させて角度(開度)を調整することができる。そして、ガイドベーン403の角度(開度)を調整することにより、発電機の起動や停止、および、運転出力の調整をおこなうことができる。
図7においては、ガイドベーン操作機構409およびロック機構の図6におけるD-D断面を示している。図8においては、ガイドベーン操作機構409およびロック機構を図5における矢印C方向から見た状態を示している。図7および図8に示すように、ロック機構701は、ロックシリンダ702と、ロッキングピストン703と、ロック孔507と、を備えている。
ロックシリンダ702は、ベルクランクケーシング504の下側に配置され、内側に略円柱形状の空間を備える。ロックシリンダ702内の空間には、圧縮スプリングが収容されている。ロックシリンダ702の上端面には、ロックシリンダ702の内側と外側とを連通する孔が形成されている。
ロッキングピストン703は、ロックシリンダ702内に収容され、軸体形状をなす。ロッキングピストン703は、圧縮スプリング704によって、一端側(上端側)がロックシリンダ702の上端面に設けられた孔から突出する方向に付勢されている。ロッキングピストン703は、軸心方向に沿って移動可能に設けられている。
ロック孔507は、ベルクランクケーシング504に設けられており、ベルクランクケーシング504の厚さ方向に沿ってベルクランクケーシング504を貫通している。ロック孔507の内径寸法は、ロッキングピストン703の外径寸法と同等以上とされている。ロックピンは、ガイドベーン403を全開位置に位置づけた状態において、ロック孔507を介してベルクランク502の上方から視認することができる。
ロック機構701は、圧縮スプリング704の付勢力によって付勢されるロッキングピストン703を、ロック孔507に挿入することによってガイドベーン操作機構409をロックすることができる。ロック機構701によるガイドベーン操作機構409のロックは、ロック孔507に挿入されているロッキングピストン703を、ロッキングピストン703の先端側からロックシリンダ702内へ押し込むことによって解除することができる。
図9においては、ロッキングピストン703がロック孔507内に挿入されて、ガイドベーン操作機構409がロックされている状態を示している。図10においては、ロッキングピストン703がロック孔507の外に位置づけられ、ガイドベーン操作機構409がロックされていない状態を示している。
(ガイドベーンロッキング解除治具100の使用方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100の使用方法について説明する。
図11および図12は、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100の使用方法を示す説明図である。ガイドベーンロッキング解除治具100は、図11に示すように、ガイドベーン操作機構409におけるベルクランク502に固定して使用する。具体的には、まず、ベルクランクケーシング504の天面において、鉛直方向において貫通孔121とロック孔507とが重複する位置に、ガイドベーンロッキング解除治具100を載置する。
ロック機構701によるガイドベーン403のロックがされている状態は、ロッキングピストン703がロック孔507に挿入されている状態であるため、鉛直方向において貫通孔121とロック孔507とが重複する位置にガイドベーンロッキング解除治具100を載置することにより、ロッキングピストン703の上方に操作部材110を位置づけることができる。
つぎに、各穿孔131aに固着具132であるネジを貫通させた状態で、当該ネジをベルクランクケーシング504の天面に螺合させる。これにより、ガイドベーンロッキング解除治具100をベルクランクケーシング504の天面に固定することができる。この場合、ベルクランクケーシング504の天面にガイドベーンロッキング解除治具100を載置した状態で、各穿孔131aの位置をマーキングし、マーキングした位置にネジ穴をあらかじめ形成しておいてもよい。
つぎに、アダプタ201がロッキングピストン703に近づく方向に、操作部材110を回転させる。操作部材110は、アダプタ201がロッキングピストン703に当接した後も、さらに同一方向に回転させる。これにより、ロッキングピストン703が操作部材110によって付勢され、ロッキングピストン703が圧縮スプリング704の付勢力に抗してロックシリンダ702内に収容される方向に移動する。
上記のように、アダプタ201は、ロッキングピストン703の硬度よりも低い硬度の材料を用いて形成されているため、圧縮スプリング704によって付勢されているロッキングピストン703にアダプタ201を当接させてロックシリンダ702内に押し込んでも、ロッキングピストン703が損傷することを確実に防止することができる。
また、ロッキングピストン703の硬度よりも低い硬度の材料を用いてアダプタ201を形成することにより、操作部材110を、金属材料などの硬度や強度の高い材料を用いて形成することができる。これによって、操作部材110の耐久性を確保することができる。
作業者は、ロックシリンダ702とベルクランク502との隙間(図12における符号1200を参照)を目視しながら、アダプタ201が隙間1200内に位置づけられるまで、操作部材110を同一方向に回転させる。アダプタ201の外表面には被膜202が設けられているため、アダプタ201が隙間1200内に位置づけられると、被膜202に含まれる蓄光材料(あるいは、蛍光材料)の発光を隙間1200において確認できる。これにより、アダプタ201が隙間1200内に位置づけられたこと、すなわち、ロッキングピストン703がロック孔507から抜け、ロック機構701によるロックが解除されたことを、目視によって容易かつ確実に確認することができる。
その後、ガイドベーン操作機構409によりガイドベーン403を開閉してギャップ測定などの諸測定をおこなう。ガイドベーン403の角度を全開位置から閉まる方向に変化させると、ロッキングピストン703の天面がベルクランクケーシング504の底面に対向する状態となる。この状態では、圧縮スプリング704によって付勢されるロッキングピストン703はベルクランクケーシング504の底面に当接するため、諸測定の最中に不用意にロック機構701によるロックがかかることがない。
操作部材110は、ロック機構701によるロックが解除され、ロッキングピストン703がベルクランクケーシング504の底面に当接した状態において、当該ロックを解除する方向とは反対方向に回転させる。具体的には、操作部材110は、アダプタ201の底面が、ロック孔507におけるロッキングピストン703の最高到達位置よりも上側に位置するまで、ロックを解除する方向とは反対方向に回転させる。これにより、次回の定期点検においてガイドベーン403をロックする際に、ロッキングピストン703が操作部材110に当接してガイドベーンロッキング解除治具100が破損することを回避できる。
あるいは、ガイドベーンロッキング解除治具100は、ロック機構701によるロックを解除した後、取り外すようにしてもよい。この場合、ロック機構701によるロックを解除する際に、再度、上記と同様の手順によりガイドベーンロッキング解除治具100をベルクランク502に固定する。
このように、ロック機構701によるロックを解除する都度、ガイドベーンロッキング解除治具100をベルクランク502に固定する運用をおこなう場合、同一のガイドベーンロッキング解除治具100を用いて(使い回して)、複数箇所に設置されたガイドベーン操作機構409のロックを解除することができる。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100は、軸体形状をなし外周面にネジ山が形成された軸部111と、当該軸部111における長さ方向の一端に設けられた操作部112とを備えた操作部材110と、軸心方向における両端が開放された貫通孔121を備え、当該貫通孔121の内周面に軸部111に形成されたネジ山に螺合するネジ山が形成された支持部材120と、貫通孔121の貫通方向と平行な複数の穿孔131aを備えて支持部材120に固定された基台131と、当該穿孔131aをそれぞれ貫通する複数の固着具132と、を備えた固定部材130と、を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100によれば、ガイドベーン操作機構409におけるベルクランク502に設けられてロック機構701におけるロッキングピストン703が挿入されるロック孔507に貫通孔121を重ね合わせた状態で、ベルクランク502に設置した基台131の穿孔131aに挿入した固着具132をベルクランク502に締め込むことにより、ベルクランク502のサイズや形状にかかわらず、ガイドベーンロッキング解除治具100をベルクランク502に固定することができる。
そして、ガイドベーンロッキング解除治具100をベルクランク502に固定した状態で、操作部材110を軸心周りに回転させて支持部材120に対する操作部材110の螺合量を調整することにより、操作部材110をロッキングピストン703に当接させ、当該操作部材110によってロック機構701におけるロックを解除する方向にロッキングピストン703を移動させることができる。
支持部材120に対する操作部材110の螺合量は無段階に調整することができるので、ロッキングピストン703を収容するロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200が微少であっても、ロック機構701によるガイドベーン操作機構409のロックを確実に解除し、ロッキングピストン703の戻りを抑えた状態で、かつ、ロッキングピストン703の戻りを抑える操作部材110がガイドベーン操作機構409の動作に干渉しない状態を維持することができる。
これにより、水力発電設備300ごとに専用の治具を用意することなく、同一あるいは同種のガイドベーンロッキング解除治具100を用いて、複数箇所に設置されたガイドベーン操作機構409のロックを解除することができる。
そして、これによって、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100の取り付け方法や操作方法を習得するだけで、複数箇所に設置されたガイドベーン操作機構409のロックを解除することができるので、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業効率の向上を図ることができる。
このように、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100によれば、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業者の負担軽減を図るとともに、当該作業にかかる作業効率の向上を図ることができる。
また、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100は、操作部材110が、軸部111における操作部112とは反対側の他端に設けられて、ロックの解除対象とするベルクランク502に設けられたロック機構701におけるロッキングピストン703の硬度よりも低い硬度の材料を用いて形成されたアダプタ201を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100によれば、アダプタ201をロッキングピストン703に当接させることにより、金属材料などの硬度や強度の高い材料を用いて操作部材110を形成することによって操作部材110の耐久性を確保するとともに、ロッキングピストン703の損傷を確実に防止することができる。これによって、ガイドベーンロッキング解除治具100を長期にわたって良好に使用することができる。
また、この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100は、アダプタ201が、外表面に、吸収した外光のエネルギーを放出することによって発光する蓄光材料または蛍光材料を含む被膜202を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100によれば、アダプタ201の外表面に蓄光材料または蛍光材料を含む被膜202が、吸収した外光のエネルギーを放出することによって発光するため、ロッキングピストン703を収容するロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200が微少であっても、当該隙間1200における発光の有無を確認することによって、当該隙間1200にアダプタ201が位置づけられてガイドベーン操作機構409のロックが解除されたことを目視によって容易に確認することができる。これにより、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
<実施の形態2>
(ガイドベーンロッキング解除治具100の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2のガイドベーンロッキング解除治具の構成について説明する。実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
図13は、この発明にかかる実施の形態2のガイドベーンロッキング解除治具の構成を示す説明図である。図13においては、この発明にかかる実施の形態2のガイドベーンロッキング解除治具の断面を示している。図13において、この発明にかかる実施の形態2のガイドベーンロッキング解除治具1300は、指示機構1310を備えている。指示機構1310は、スケール1311と、指示部材1312と、を備えている。
スケール1311は、基体と、目盛りと、によって構成される。基体は、長尺形状をなし、長さ方向の一端が固定部材130における基台131に固定されている。基体は、支持部材120における軸部111の軸心方向と平行に、基台131から離反する方向に延出している。
目盛りは、基体の長さ方向に沿って設けられている。目盛りは、たとえば、メートルを基本単位の一つとし、十進法を用いて長さを示すメートル法などの所定の単位系にしたがって、所定間隔ごとに設けられている。あるいは、目盛りは、メートル法などの所定の単位系にしたがった目盛りではなく、「○○発電所 ロック解除位置」などのコメントとともに設けられたマークによって実現されるものであってもよい。
指示部材1312は、棒形状あるいは長尺形状をなし、一端が軸部111に連結されている。支持部材120は、軸部111を中心として回動可能に連結されていることが好ましい。指示部材1312は、軸部111の半径方向に沿って軸部111から突出しており、他端において、基体における目盛りを指示する。支持部材120を軸部111に対して回動可能に連結することにより、操作部材110の回転量にかかわらず、常に、指示部材1312によって基体における目盛りを指示することができる。
このようなガイドベーンロッキング解除治具1300は、上述した実施の形態1のガイドベーンロッキング解除治具100と同様に使用することにより、支持部材120に対する操作部材110の移動量を、目視によって確認することができる。具体的には、作業者は、たとえば、操作部材110を回転させる前の状態において指示部材1312が指示する目盛りを記憶あるいは記録しておき、以降は指示部材1312が指示する目盛りを目視することによって、支持部材120に対する操作部材110の移動量を目視によって確認することができる。
また、目盛りを、コメントおよびマークによって実現する場合、作業者は、指示部材1312がマークの位置を指示するまで、一気に操作部材110を回転させることができる。これにより、ロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200を逐次目視することなくガイドベーン操作機構409のロックを解除することができ、一層の作業効率の向上を図ることができる。
なお、上述した実施の形態1および実施の形態2においては、レンチやスパナなどの汎用的な工具を操作部112にかけ、当該操作部112を軸心周りに回転させることによって操作部材110を回動させるようにしたが、操作部材110は工具を用いて回動させるものに限らない。操作部材110は、たとえば、頭部に代えて、あるいは、頭部に加えて、操作部材110における軸部111の一端側に、当該軸部111の外周面から当該軸部111の半径方向に突出する、図示を省略するハンドル(把持部)を備えた構成であってもよい。
この場合、ハンドルは、たとえば、成人が片手で握ることができる程度の太さおよび長さの棒状部材によって実現することができる。このような、ハンドルは、1つに限るものではなく、複数設けられていてもよい。複数のハンドルを設ける場合、各ハンドルは、軸部111の軸心を中心とする同一円周上において等間隔に設けることが好ましい。
具体的には、たとえば、2本のハンドルを設ける場合、軸部111の軸心に対して相反する方向に突出するように、2本のハンドルを設けることができる。また、たとえば、3本のハンドルを設ける場合、軸部111と各ハンドルとの連結位置と軸部111の軸部111の軸心とを結ぶ線分のうち、隣り合う連結位置と軸部111の軸心とを結ぶ線分とがなす角度が120度になるように、3本のハンドルを設けることができる。
あるいは、ハンドルは、軸部111を軸心を中心とするリング状部材によって実現してもよい。リング状のハンドルとすることにより、ハンドルを把持する位置が制限されることなく、軸部111の周囲のいずれの方向からもハンドルを把持することができるので、ハンドルの操作にかかる作業者の自由度を高めることができる。
このようなハンドルを備えたガイドベーンロッキング解除治具1300によれば、工具を用いることなく、ハンドルを把持して操作部材110を回転させることができる。これにより、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
<実施の形態3>
(ガイドベーンロッキング解除治具の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具の構成について説明する。実施の形態3においては、上述した実施の形態1や実施の形態2と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
図14は、この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具の構成を示す説明図である。図14においては、この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具の断面を示している。図14において、この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具1400は、油圧シリンダ1410と、油圧ポンプ1420と、操作部材1430と、固定部材1440と、を備えている。
油圧シリンダ1410は、シリンダケーシング1411と、ピストン1412と、を備えている。シリンダケーシング1411は、筒形状をなし、内部に作動油が充填された空間を備えている。ピストン1412は、シリンダケーシング1411内に収容されている。
ピストン1412は、シリンダケーシング1411内の空間を、シリンダケーシング1411の軸心方向において二分している。具体的に、ピストン1412は、シリンダケーシング1411内の空間を、ピストン1412を間にして固定部材1440とは反対側の第1の空間1413と、ピストン1412よりも固定部材1440側の第2の空間1414と、に二分する。
ピストン1412は、所定方向に沿って往復動可能に設けられている。これにより、ピストン1412によって二分されるシリンダケーシング1411内の空間は、ピストン1412の位置に応じて大きさが変化する。ピストン1412の外周面は、図示を省略するO-リングによってシーリングされている。これにより、ピストン1412の外周面とシリンダケーシング1411の内周面との間の隙間(図12における符号1200を参照)を作動油が通過することがない。
油圧ポンプ1420は、ポンプシリンダ1421、プランジャピストン1422、レバーハンドル1423、吸油路1424、吐出路1425を備えている。ポンプシリンダ1421は、筒形状をなし、軸体形状のプランジャピストン1422を保持する。ポンプシリンダ1421の内周面には、プランジャピストン1422の外周面との隙間1200をシーリングする、図示を省略するO-リングなどのシーリング部材が設けられている。
レバーハンドル1423は、棒形状をなす。レバーハンドル1423の長さ方向における一端には、リンク部材1426が軸支されている。リンク部材1426は、一端側において、レバーハンドル1423との連結位置を中心として、レバーハンドル1423に対して相対的に回動可能に連結されている。リンク部材1426は、他端側において、ポンプシリンダ1421の外周面に設けられたステイ1427に連結されている。
レバーハンドル1423において、リンク部材1426との連結位置の近傍には、プランジャピストン1422が連結されている。レバーハンドル1423が、リンク部材1426との連結位置を中心として、ポンプシリンダ1421に近接する位置から、当該ポンプシリンダ1421から離間する位置に向かって回動すると、プランジャピストン1422は、ポンプシリンダ1421から引き出される方向に移動する。レバーハンドル1423が、リンク部材1426との連結位置を中心として、ポンプシリンダ1421から離間する位置から、ポンプシリンダ1421に近接する位置に向かって回動すると、プランジャピストン1422は、ポンプシリンダ1421内に収容される方向に移動する。このようにプランジャピストン1422は、レバーハンドル1423の動作に連動してポンプシリンダ1421内を往復動する。
吸油路1424および吐出路1425は、一端がポンプシリンダ1421に接続され、他端がシリンダケーシング1411に接続されている。吸油路1424の他端は第1の空間1413に接続されている。吐出路1425の他端は、第2の空間1414に接続されている。
吸油路1424とポンプシリンダ1421との接続位置には、図示を省略する吸込チェック弁が設けられている。吸込チェック弁は、シリンダケーシング1411内の作動油を、一方向にのみ流す弁であって、具体的には、吸油路1424において、作動油をシリンダケーシング1411側からポンプシリンダ1421側に向かう方向にのみ流し、逆方向(ポンプシリンダ1421側からシリンダケーシング1411側に向かう方向)の流れを阻止する。
吐出路1425とポンプシリンダ1421との接続位置には、図示を省略する吐出チェック弁が設けられている。吐出チェック弁は、シリンダケーシング1411内の作動油を、一方向にのみ流す弁であって、具体的には、吐出路1425において、作動油をポンプシリンダ1421側からシリンダケーシング1411側に向かう方向にのみ流し、逆方向(シリンダケーシング1411側からポンプシリンダ1421側に向かう方向)の流れを阻止する。
ポンプシリンダ1421には、図示を省略するリリース弁が設けられている。リリース弁は、開閉可能なバルブによって実現することができる。リリース弁は、通常時は閉められており、リリースバルブを開放することによって油圧シリンダ1410におけるピストン1412にかかる圧力を開放し、アダプタ201がロッキングピストン703に接触しない位置までピストン1412を移動させることができる。これにより、ガイドベーンロッキング解除治具1400を繰り返し使用することができる。
ガイドベーンロッキング解除治具1400は、ポンプシリンダ1421あるいはシリンダケーシング1411に所定以上の圧力がかかった際に当該圧力を逃がすリリーフ弁(安全弁、図示を省略する)を備えていてもよい。
操作部材1430は、軸体形状をなす軸部1431を備えている。軸部1431は、長さ方向における一端が、ピストン1412における固定部材1440側の面に固定されている。操作部材1430は、ポンプシリンダ1421における固定部材1440側の面を貫通しており、他端はポンプシリンダ1421の外側に位置づけられている。ポンプシリンダ1421において、操作部材1430が貫通する孔の周縁あるいは内周面には、操作部材1430の外周面との隙間1200をシーリングするO-リングなどのシーリング部材が設けられている。
操作部材1430において、ピストン1412に固定された一端とは反対側の他端には、外周面にネジ山が形成されている。これにより、アダプタ201が備える凹部201aの内周面に形成されたネジ山と、ピストン1412の他端に形成されたネジ山とを螺合させ、アダプタ201を容易かつ確実に固定することができる。
固定部材1440は、略平板形状をなす基台1441を備えている。基台1441は、たとえば、溶接などによって油圧シリンダ1410のシリンダケーシング1411に固定されている。固定部材1440は、軸心方向における両端が開放された貫通孔121と、当該貫通孔121の貫通方向と平行な複数の穿孔131aとを備えている。複数の穿孔131aは、それぞれ、基台131を板厚方向に貫通している。複数の固着具132は、上述した各実施の形態と同様に、穿孔131aごとに対応して複数設けられている。
(ガイドベーンロッキング解除治具1400の使用方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具1400の使用方法について説明する。この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具1400は、使用に先立って、まず、上述した各実施の形態と同様にして、ベルクランクケーシング504の天面に固定する。
つぎに、レバーハンドル1423を、ポンプシリンダ1421に近接する位置と、当該ポンプシリンダ1421から離間する位置との間において上下動させるようにして回動させる。レバーハンドル1423の回動によりポンプシリンダ1421内において、プランジャピストン1422が往復動する。プランジャピストン1422が往復動すると、第1の空間1413と第2の空間1414との間に圧力差が発生する。
これにより、プランジャピストン1422の往復動にともなって、吸油路1424を介してポンプシリンダ1421内に吸い込まれた作動油が、吐出路1425を介してシリンダケーシング1411内に流れ込む。具体的には、第2の空間1414に充填されている作動油が、プランジャピストン1422の往復動にともなって第1の空間1413に流れ込む。そして、これによって、第1の空間1413と第2の空間1414との間に圧力差が発生し、第1の空間1413の容積が大きくなるとともに第2の空間1414の容積が小さくなり、ピストン1412が固定部材1440側へ移動する。
ピストン1412には操作部材1430が連結されているため、ピストン1412が固定部材1440側へ移動すると、ピストン1412とともに操作部材1430が移動し、アダプタ201がロッキングピストン703に当接する。作業者は、ロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200を目視しながら、アダプタ201がロッキングピストン703に当接した後も、アダプタ201が隙間1200内に位置づけられるまで、レバーハンドル1423を回動させる。これにより、ロック機構701によるロックを解除することができる。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態3の形態のガイドベーンロッキング解除治具1400は、内部に作動油が充填された空間を備えたシリンダケーシング1411と、当該シリンダケーシング1411内に収容されて当該空間を二分し所定方向に沿って往復動可能なピストン1412と、を備えた油圧シリンダ1410と、シリンダケーシング1411内の空間に接続されて当該シリンダケーシング1411内の二分された空間どうしに圧力差を発生させることによりピストン1412を往復動させる油圧ポンプ1420と、ピストン1412の往復動方向を長手方向とする軸体形状をなし一端がピストン1412に連結され他端が当該シリンダケーシング1411から突出した軸部111と、当該軸部111における長さ方向の一端に設けられた操作部112とを備えた操作部材1430と、軸心方向における両端が開放された貫通孔121と、当該貫通孔121の貫通方向と平行な複数の穿孔131aとを備え、当該貫通孔121を操作部材1430が貫通する状態で油圧シリンダ1410を支持する基台131と、当該穿孔131aをそれぞれ貫通する複数の固着具132と、を備えた固定部材1440と、を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具1400によれば、ロック孔507に貫通孔121を重ね合わせた状態で、ベルクランク502に設置した基台131の穿孔131aに挿入した固着具132をベルクランク502に締め込むことにより、ベルクランク502のサイズや形状にかかわらず、ガイドベーンロッキング解除治具1400をベルクランク502に固定することができる。
そして、ガイドベーンロッキング解除治具1400をベルクランク502に固定した状態で、ピストン1412を往復動させて当該ピストン1412に連結された操作部材1430の位置を調整することにより、操作部材1430をロッキングピストン703に当接させ、当該操作部材1430によってロック機構701におけるロックを解除する方向にロッキングピストン703を移動させることができる。
支持部材120に対する操作部材1430の螺合量は無段階に調整することができるので、ロッキングピストン703を収容するロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200が微少であっても、ロック機構701によるガイドベーン操作機構409のロックを確実に解除し、ロッキングピストン703の戻りを抑えた状態で、かつ、ロッキングピストン703の戻りを抑える操作部材1430がガイドベーン操作機構409の動作に干渉しない状態を維持することができる。
これにより、水力発電設備300ごとに専用の治具を用意することなく、同一あるいは同種のガイドベーンロッキング解除治具1400を用いて、複数箇所に設置されたガイドベーン操作機構409のロックを解除することができる。
そして、これによって、この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具1400の取り付け方法や操作方法を習得するだけで、複数箇所に設置されたガイドベーン操作機構409のロックを解除することができるので、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業効率の向上を図ることができる。
また、この発明にかかる実施の形態3のガイドベーンロッキング解除治具1400によれば、油圧ポンプ1420によって動作する油圧シリンダ1410を用いて操作部材1430を動作させることにより、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
<実施の形態4>
(ガイドベーンロッキング解除治具の構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態4のガイドベーンロッキング解除治具の構成について説明する。実施の形態4においては、上述した実施の形態1~3と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
図15は、この発明にかかる実施の形態4のガイドベーンロッキング解除治具の一部を示す説明図である。図15においては、上述した実施の形態1~3のガイドベーンロッキング解除治具における操作部材の一部および当該操作部材に取り付けられたアダプタを示している。
図15に示すように、この発明にかかる実施の形態4のガイドベーンロッキング解除治具が備えるアダプタ1500は、外周面に発光体1501が設けられている。発光体1501は、具体的には、たとえば、LED(Light Emitting Diode)によって実現することができる。発光体1501としてLEDを用いることにより、アダプタ1500の大型化を抑制することができる。
アダプタ1500の内部には、電池1502が設けられている。電池1502は、リチウム電池、アルカリマンガン電池、酸化銀電池、空気亜鉛電池など公知の各種の電池1502を用いることができる。電池1502の形状は、たとえば、ボタン型あるいはコイン型などと称される、小型薄型の電池1502を用いることが好ましい。発光体1501としてLEDを用いることにより、このような小型薄型の電池1502を用いて、長期にわたって発光体1501を確実に発光させることができる。
つぎに、図16を用いて、アダプタ1500が備える回路構成の概略について説明する。図16は、アダプタ1500が備える回路構成の一例を概略的に示す説明図である。図16に示すように、LEDによって実現される発光体1501は、基板1601と、基板1601の一面側に設置されたLEDチップ1602と、を備えている。
基板1601には、電極(アノード、カソード)1603が設けられており、電池1502はこれらの電極1603の間に接続されている。LEDチップ1602は、ボンディングワイヤ1604を介して各電極1603と接続されており、これにより電池1502からLEDチップ1602に電力を給電して発光させることができる。
発光体1501の発光色は、白色、黄色、赤色、緑色など、任意に設定することができる。アダプタ1500が複数の発光体1501を備える場合、発光色は、発光体1501ごとに異なっていてもよく、すべての発光体1501が同一の発光色であってもよい。具体的には、たとえば、LEDによって発光体1501を実現する場合、半導体を構成する化合物を変えることによって、LEDの発光色を白色、赤色、緑色などの任意の発光色にすることができる。
LEDチップ1602の周囲には、LEDチップ1602の発光を反射させるリフレクタ1605や封入樹脂1606が設けられている。リフレクタ1605を設けることにより、LEDチップ1602からの発光を確実にアダプタ1500の外部に放出し、ロックシリンダ702とベルクランク502との間の微少な隙間1200にアダプタ1500が位置づけられたことを容易かつ確実に目視させることができる。封入樹脂1606は、たとえば、エポキシ樹脂やシリコン樹脂などを用いることができ、蛍光体などが分散されていてもよい。LEDチップ1602の周囲に封入樹脂1606を充填することにより、LEDの長寿命化を図ることができる。
図16においては、LEDチップ1602をプリント基板1601上に半田付けによって取り付ける表面実装型のLEDについて説明したが、砲弾型のLEDチップ1602を用いてもよい。砲弾型のLEDチップ1602を用いることにより、発光された光を一定方向に集光して放出することができるので、アダプタ1500の視認性を高めることができる。
アダプタ1500は、発光体1501と電池1502とを接続し、電池1502の電力を発光体1501に供給する電気回路を備えている。電池1502や電気回路をアダプタ1500内に設けることにより、アダプタ1500の交換を容易におこなうことができる。また、電池1502の交換に際しては、軸部111からアダプタ1500を取り外して電池1502の交換作業をおこなうことができるので、作業の容易化を図ることができる。
また、アダプタ1500は、発光体1501の点灯/消灯を切り替えるスイッチを備えている。アダプタ1500は、スイッチを備えず、電池1502を取り付けた場合に常時発光し、電池1502を取り外すことによって消灯するものであってもよい。あるいは、アダプタ1500は、スイッチを備えず、アンテナ(図示を省略する)が接続された電気回路を設け、当該アンテナを介して外部装置から無線送信される制御信号を受信させ、受信した信号に基づいて発光体1501の点灯/消灯をおこなうものであってもよい。
(ガイドベーンロッキング解除治具の使用方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態4のガイドベーンロッキング解除治具の使用方法について説明する。この発明にかかる実施の形態4のガイドベーンロッキング解除治具は、使用に先立って、まず、作業者は、発光体1501を発光させる。また、作業者は、上述した各実施の形態と同様にして、ベルクランクケーシング504の天面に固定する。
つぎに、作業者は、ロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200を目視しながら、アダプタ1500がロッキングピストン703に当接した後も、アダプタ1500が隙間1200内に位置づけられるまで、アダプタ1500がロッキングピストン703に当接する方向へ操作部材を移動させる。これにより、ロック機構701によるロックを解除することができる。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態4のガイドベーンロッキング解除治具は、アダプタ1500が、外表面に設けられた発光体1501と、当該発光体1501に給電する電源である電池1502と、を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態4のガイドベーンロッキング解除治具によれば、電池1502からの給電により発光体1501を発光させることにより、ロッキングピストン703を収容するロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200が微少であっても、当該隙間1200における発光の有無を確認することによって、当該隙間1200にアダプタ1500が位置づけられてガイドベーン操作機構409のロックが解除されたことを目視によって容易に確認することができる。これにより、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。
さらに、電源からの給電により発光する発光体1501に加えて、アダプタ1500の外表面に蓄光材料または蛍光材料を含む被膜202を設けることにより、ロックシリンダ702とベルクランク502との隙間1200にアダプタ1500が位置づけられてガイドベーン操作機構409のロックが解除されたことを目視によって一層容易に確認することができる。これにより、ガイドベーン操作機構409のロックを解除する作業にかかる作業者の負担軽減を図ることができる。