JP7160490B2 - 複数層クレープ加工ベルトを使用して作製された紙製品 - Google Patents

複数層クレープ加工ベルトを使用して作製された紙製品 Download PDF

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Description

本出願は、本願に引用してその全体を援用する、2014年9月25日に出願された米国仮特許出願第62/055,261号に基づく。
本出願は、製紙プロセスにおいてセルロースウェブをクレープ加工するために使用され得る複数層ベルトに関する。本発明はまた、製紙プロセスにおけるクレープ加工に複数層ベルトを使用して、紙製品を作製する方法に関する。さらに、本発明は、卓越した特性を有する紙製品に関する。
ティッシュおよびタオル等の紙製品を作製するためのプロセスは周知である。そのようなプロセスにおいて、まず、製紙完成紙料から水性初期段階ウェブが形成される。初期段階ウェブ(nascent web)は、例えば、通常はプレス布の形態のポリマー材料から作製されたベルト構造を使用して脱水される。いくつかの製紙プロセスにおいて、脱水後、形状または三次元テクスチャがウェブに付与され、そのためウェブは構造化シートと呼ばれる。ウェブに形状を付与する1つの様式は、ウェブがまだ半固形の成型可能な状態にある間のクレープ加工操作の使用を含む。クレープ加工操作は、ベルトまたは構造化布等のクレープ加工構造を使用し、クレープ加工操作は、クレープ加工ニップにおいて圧力下で行われ、ウェブは、ニップのクレープ加工構造における開口内に押し込まれる。クレープ加工操作の後、クレープ加工構造における開口内にウェブをさらに引き込むために、真空もまた使用され得る。成形操作が完了した後、ウェブは、周知の機器、例えばヤンキー(Yankee)乾燥機を使用して、いかなる残留水も実質的に除去するために乾燥される。
当技術において、様々な構成の構造化布およびベルトが知られている。製紙プロセスにおけるクレープ加工に使用され得るベルトおよび構造化布の具体例は、本願に引用してその全体を援用する、米国特許第8,152,957号および米国特許出願公開第2010/0186913号に見出すことができる。
構造化布またはベルトは、クレープ加工操作における使用に実用可能とする多くの特性を有する。特に、ポリマー材料から作製された構造化織布、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)は、強靭であり、寸法的に安定であり、織目および織構造を構成する糸の間の空間よる三次元テクスチャを有する。したがって、布は、製紙プロセス中の製紙機械上での操作の応力および歪みに耐えることができる、強靭かつ柔軟なクレープ加工構造を提供することができる。しかしながら、構造化布は、全てのクレープ加工操作に理想的に適しているわけではない。成形中にウェブが引き込まれる構造化布における開口は、織糸の間の空間として形成される。より具体的には、開口は、機械方向(MD)および幅方向(CD)の両方において、特定の所望のパターンで織糸の「節(knuckle)」または交差部が存在するため、三次元で形成される。したがって、構造化布に構築され得る開口の種類は、本質的に制限されている。さらに、事実上、糸で構成される織構造である布の性質そのものが、形成され得る開口の最大サイズおよび可能な形状を制限する。またさらに、特定の構成の開口を有する任意の布を設計および製造することは、費用および時間を要するプロセスである。したがって、構造化織布は、強度、耐久性および柔軟性の点で、製紙プロセスにおけるクレープ加工に構造的に十分好適であるが、構造化織布を使用した場合、達成され得る製紙ウェブの成形の種類に制限がある。その結果、クレープ加工操作を使用して作製される紙製品のより高いキャリパ(caliper)およびより高い柔らかさを同時に達成することは困難である。
構造化織布の代替として、押出しポリマーベルト構造が、クレープ加工操作におけるウェブ成形表面として使用され得る。構造化布とは異なり、異なるサイズおよび異なる形状の開口が、例えばレーザ穴開けまたは機械的打抜きにより、ポリマー構造に形成され得る。しかしながら、開口の形成におけるポリマーベルト構造からの材料の除去は、ベルトの強度、耐久性、およびMD延伸への耐性を低減する効果を有する。したがって、ベルトをまだ製紙プロセスに使用可能としながらポリマーベルトに形成され得る開口のサイズおよび/または密度には、実用上の制限がある。さらに、ベルト構造を形成するために潜在的に使用され得るほぼあらゆる一体型ポリマー材料(すなわち一層の押出しポリマー材料)も、織構造と比較した一体型材料の性質に起因して、典型的な構造化布より強度および延伸耐性が低くなる。
製紙操作において押出しポリマー層を有するポリマーベルト構造を使用する試みがなされている。例えば、米国特許第4,446,187号は、ベルトを強化するために少なくとも織布に取り付けられたポリウレタン箔またはフィルムを含むベルト構造を開示している。しかしながら、このベルト構造は、製紙機械の成形、プレス、および/または乾燥部での脱水操作における使用のために構成されている。したがって、このベルト構造は、ウェブ構造化、例えばクレープ加工操作におけるウェブ構造化を行うのに十分なサイズの開口を有さない。
製紙プロセスにおいて使用される任意のクレープ加工ベルトまたは布に対するさらなる制約は、紙製品を作製するために使用されるセルロース繊維が、製紙プロセス中のクレープ加工ベルトまたは布を通過することを実質的に防止する、クレープ加工ベルトまたは繊維の要件である。クレープ加工ベルトまたは布を完全に通過する繊維は、製紙プロセスに対して有害な効果を有する。例えば、真空ボックスからの真空がウェブをクレープ加工構造の開口内に引き込むために使用された際に、ウェブから相当な量の繊維がクレープ加工ベルトまたは布を完全に通過して引き出された場合、繊維は、最終的に真空ボックスの外側枠上に蓄積する。その結果、紙製品のキャリパは、真空ボックスとクレープ加工構造との間の封止部からの空気漏れにより、実質的に減少する。また、紙製品特性に不要な変動をもたらす蓄積された繊維を、真空ボックスの外側枠から清掃除去する必要もある。清掃操作は、製紙機械の費用を要するダウンタイムおよび生産量の損失をもたらす。一般に、製紙プロセス中、クレープ加工ベルトまたは布を完全に通過する繊維が1パーセント未満となるべきであることが好ましい。
米国特許第8,152,957号明細書 米国特許出願公開第2010/0186913号明細書 米国特許第4,446,187号明細書 米国特許第7,118,647号明細書 米国特許第8,394,239号明細書
一態様において、本発明は、セルロースシートをクレープ加工する方法を提供する。方法は、水性製紙完成紙料から初期段階ウェブを調製するステップと、複数層クレープ加工ベルト上で初期段階ウェブを堆積およびクレープ加工するステップとを含む。クレープ加工ベルトは、(i)複数の開口を有するポリマー材料から作製された第1の層と、(ii)第1の層の表面に取り付けられた第2の層とを含み、初期段階ウェブは、第1の層上に堆積される。初期段階ウェブが複数の開口内に引き込まれるが、第2の層内には引き込まれないように、クレープ加工ベルトに真空が印加される。
本発明の別の態様によれば、水性製紙完成紙料から初期段階ウェブを調製するステップと、複数層ベルト上で初期段階ウェブをクレープ加工するステップとを含む方法により、クレープ加工されたウェブが作製される。複数層ベルトは、(i)複数の開口を有するポリマー材料から作製された第1の層と、(ii)第1の層に取り付けられた第2の層とを含み、初期段階ウェブは、第1の層の表面上に堆積される。方法はまた、カレンダー処理プロセスなしで、クレープ加工されたウェブを乾燥および引き出すステップを含む。初期段階ウェブは、複数のドーム構造を有するクレープ加工されたウェブを提供するように、複数層ベルトの第1の層における複数の開口内に引き込まれるが、第2の層内には引き込まれない。
さらなる態様によれば、本発明は、上側および下側を有するセルロース繊維の吸収性シートを提供する。吸収性シートは、シートの上側から突出した複数の中空ドーム領域を含み、中空ドーム領域のそれぞれは、中空ドーム領域の縁部上の少なくとも1つの第1の点から、中空ドーム領域の反対側の縁部上の第2の点までの距離が、少なくとも約0.5mmであるような形状である。吸収性シートはまた、シートの中空ドーム領域を相互接続するネットワークを形成する接続領域を含む。吸収性シートは、少なくとも約140ミル/8シートのキャリパを有する。
さらなる態様によれば、本発明は、上側および下側を有するセルロース繊維の吸収性シートを提供する。吸収性シートは、シートの上側から突出した複数の中空ドーム領域を含み、中空ドーム領域のそれぞれは、少なくとも約1.0mmの体積を画定する。吸収性シートはまた、シートの中空ドーム領域を相互接続するネットワークを形成する接続領域を含む。
さらに別の態様によれば、本発明は、上側および下側を有するセルロース繊維の吸収性シートを提供する。吸収性シートは、シートの上側から突出した複数の中空ドーム領域を含み、中空ドーム領域のそれぞれは、少なくとも約0.5mmの体積を画定する。吸収性シートはまた、シートの中空ドーム領域を相互接続するネットワークを形成する接続領域を含む。吸収性シートは、少なくとも約130ミル/8シートのキャリパを有する。
さらなる態様によれば、本発明は、上側および下側を有するセルロース繊維の吸収性シートを提供する。吸収性シートは、シートの上側から突出した複数の中空ドーム領域と、シートの中空ドーム領域を相互接続するネットワークを形成する接続領域とを含む。吸収性シートは、少なくとも約145ミル/8シートのキャリパを有し、吸収性シートは、約3500g/3インチ未満のGM引張強度を有する。
本発明のさらに別の態様によれば、上側および下側を有するセルロース繊維の吸収性シートが提供される。吸収性シートは、シートの上側から突出した複数の中空ドーム領域と、シートの中空ドーム領域を相互接続するネットワークを形成する接続領域とを含む。中空ドーム領域の機械方向(MD)における先頭側の繊維密度は、中空ドーム領域のMD方向における末尾側の繊維密度よりも実質的に低い。
本発明と併せて使用され得る製紙機械構成の概略図である。 図1に示される製紙機械の湿式プレス転写およびベルトクレープ加工部を示す概略図である。 本発明の一実施形態による複数層クレープ加工ベルトの一部の断面図である。 図3Aに示される部分の上面図である。 本発明の別の実施形態による複数層クレープ加工ベルトの一部の断面図である。 図4Aに示される部分の上面図である。 本発明の実施形態による吸収性セルロースシートのベルト側の顕微鏡写真(50倍)の上面図である。 本発明の実施形態による吸収性セルロースシートのベルト側の顕微鏡写真(50倍)の上面図である。 本発明の実施形態による吸収性セルロースシートのベルト側の顕微鏡写真(50倍)の上面図である。 図5Aに示される吸収性セルロースシートの他方側の顕微鏡写真(50倍)の下面図である。 図5Bに示される吸収性セルロースシートの他方側の顕微鏡写真(50倍)の下面図である。 図5Cに示される吸収性セルロースシートの他方側の顕微鏡写真(50倍)の下面図である。 図5Aに示される吸収性セルロースシートにおけるドーム構造の顕微鏡写真(100倍)の上面図である。 図5Aに示される吸収性セルロースシートにおけるドーム構造の顕微鏡写真(100倍)の下面図である。 図5Bに示される吸収性セルロースシートにおけるドーム構造の顕微鏡写真(100倍)の上面図である。 図5Bに示される吸収性セルロースシートにおけるドーム構造の顕微鏡写真(100倍)の下面図である。 図5Cに示される吸収性セルロースシートにおけるドーム構造の顕微鏡写真(100倍)の上面図である。 図5Cに示される吸収性セルロースシートにおけるドーム構造の顕微鏡写真(100倍)の下面図である。 本発明の実施形態による吸収性セルロースシートのドーム構造の顕微鏡写真(40倍)の断面図である。 本発明の実施形態による吸収性セルロースシートのドーム構造の顕微鏡写真(40倍)の断面図である。 本発明の実施形態による吸収性セルロースシートのドーム構造の顕微鏡写真(40倍)の断面図である。 本発明による紙製品におけるドーム領域のサイズの測定を示す図である。 本発明による紙製品のドーム領域における繊維密度分布を示す図である。 本発明による紙製品のドーム領域における繊維密度分布をグレースケールで示す図である。 紙製品の感覚的柔らかさとGM引張強度との間の関係を示すプロットである。 本発明による紙製品のキャリパとGM引張強度との間の関係を示すプロットである。 本発明による紙製品のキャリパと、本発明による複数層ベルト構造構成における開口の体積との間の関係を示すプロットである。 本発明による紙製品のキャリパと、本発明による複数層ベルト構造構成における開口の体積との間の関係を示すプロットである。 本発明による紙製品のキャリパと、本発明による複数層ベルト構造構成における開口の直径との間の関係を示すプロットである。
一態様において、本発明は、製紙プロセスの一部としてウェブをクレープ加工するために使用され得る複数層構造を有するベルトを使用する製紙プロセスに関する。本発明は、さらに、卓越した特性を有する紙製品に関し、紙製品は、複数層クレープ加工ベルトを使用して形成され得る。
「紙製品」という用語は、本明細書において使用される場合、主構成成分としてセルロースを有する製紙繊維を組み込んだ任意の製品を包含する。これは、例えば、ペーパータオル、トイレットペーパー、化粧紙等として市販されている製品を含む。製紙繊維は、バージンパルプもしくはリサイクル(二次)セルロース繊維、またはセルロース繊維を含む繊維ミックスを含む。木質繊維は、例えば、北部および南部針葉樹クラフト繊維等の針葉樹繊維、ならびにユーカリ、カエデ、カバノキ、アスペン等の広葉樹繊維を含む、落葉樹および針葉樹から得られるものを含む。本発明のウェブを作製するために好適な繊維の例は、非木質繊維、例えば綿繊維または綿誘導体、マニラ麻、ケナフ麻、サバイグラス、亜麻、アフリカハネガヤ、わら、ジュート麻、バガス、トウワタの絹綿状繊維、およびパイナップル葉繊維を含む。「完成紙料」および同様の用語は、紙製品を作製するための、製紙繊維、および任意選択で湿潤強度樹脂、剥離剤(debonder)等を含む水性組成物を指す。
本明細書において使用される場合、製紙プロセスにおいて最終製品まで乾燥される初期繊維および液体混合物は、「ウェブ」および/または「初期段階ウェブ」と呼ばれる。製紙プロセスからの乾燥した一重製品は、「ベースシート」と呼ばれる。さらに、製紙プロセスの製品は、「吸収性シート」と呼ぶことができる。これに関して、吸収性シートは、単層ベースシートと同じであってもよい。代替として、吸収性シートは、多重構造の場合のように、複数のベースシートを含んでもよい。さらに、吸収性シートは、最初のベースシート形成プロセスにおいて乾燥された後に、エンボス加工等の追加的処理に供されていてもよい。
本明細書において本発明を説明する際、「機械方向(MD)」および「幅方向(CD)」という用語は、当技術におけるそれらの十分理解されている意味に従って使用される。すなわち、ベルトまたは他のクレープ加工構造のMDは、製紙プロセスにおいてベルトまたは他のクレープ加工構造が移動する方向を指し、一方CDは、ベルトまたはクレープ加工構造のMDに交差する方向を指す。同様に、紙製品に言及する際、紙製品のMDは、製紙プロセスにおいて製品が移動した製品上の方向を指し、CDは、製品のMDに交差する紙製品上の方向を指す。
[製紙機械]
本発明のベルトを利用し、本発明の製品を作製するプロセスは、半固形ウェブを形成するために繊維の無作為な分布を有する製紙完成紙料を圧縮脱水すること、および所望の特性を有する紙製品を達成するために繊維を再分布させてウェブを成形するように、ウェブをベルトでクレープ加工することを含んでもよい。製紙プロセスのこれらのステップは、多くの異なる構成を有する製紙機械上で行うことができる。そのような製紙機械の2つの例を、ここで説明する。
図1は、製紙機械200の第1の例を示す。製紙機械200は、クレープ加工操作が行われるプレス部100を含む、3つの布ループを有する機械である。プレス部100の上流には形成部202があり、これは、製紙機械200の場合、当技術においてクレセント形成機(crescent former)と呼ばれる。形成部202は、ロール208および210により支持された形成ワイヤ206上に完成紙料を堆積させ、それによりまず製紙ウェブを形成するヘッドボックス204を含む。また、形成部202はまた、ウェブ116がまた製紙フェルト102上に直接形成されるように、製紙フェルト102を支持する形成ロール212を含む。フェルト走行路214は、シュープレス部216に延在し、そこで湿ったウェブがバッキングロール108上に堆積され、ウェブ116は、バッキングロール108への転写と同時に湿式プレスされる。
製紙機械200の構成の代替例は、クレセント形成部202の代わりに、ツインワイヤ形成部を含む。そのような構成において、ツインワイヤ形成部の下流側のそのような製紙機械の構成要素の残りは、製紙機械200のそれと同様の様式で構成および配置され得る。ツインワイヤ形成部を有する製紙機械の例は、上述の米国特許出願公開第2010/0186913号に見出すことができる。製紙機械において使用され得る代替の形成部のさらなる例は、C-ラップ(C-wrap)ツインワイヤ形成機、S-ラップ(S-wrap)ツインワイヤ形成機、またはサクションブレスト(suction breast)ロール形成機を含む。当業者には、これらの、またはさらなる代替の形成部がいかにして製紙機械に統合され得るかが認識される。
ウェブ116は、ベルトクレープ加工ニップ120においてクレープ加工ベルト112上に転写され、次いで、以下でより詳細に説明されるように、真空ボックス114により真空引きされる。このクレープ加工操作の後、ウェブ116は、クレープ加工用接着剤を使用して、別のプレスニップ216においてヤンキー乾燥機218上に堆積される。ヤンキー乾燥機218への転写は、例えば、ウェブ116とヤンキー表面との間の約4%から約40%の加圧接触エリアで、約250ポンド毎リニアインチ(PLI)から約350PLI(約43.8kN/メートルから約61.3kN/メートル)の圧力で行われてもよい。ニップ216での転写は、例えば約25%から約70%のウェブ稠度で行われてもよい。「稠度(consistency)」とは、本明細書において使用される場合、例えば完全乾燥基準で計算された初期段階ウェブの固形物のパーセンテージを指すことに留意されたい。約25%から約70%の稠度では、クレープ加工ベルト112からウェブを完全に除去するのに十分しっかりとウェブ116をヤンキー乾燥機218の表面に接着させることが困難な場合がある。ウェブ116とヤンキー乾燥機218の表面との間の接着を増強するために、ヤンキー乾燥機218の表面に接着剤が塗布されてもよい。接着剤は、システムの高速操作、および高噴射速度での衝突空気乾燥を可能とし、またその後のヤンキー乾燥機218からのウェブ116の剥離を可能とすることができる。そのような接着剤の例は、ポリ(ビニルアルコール)/ポリアミド接着剤組成物であり、この接着剤の例示的塗布率は、約40mg/m(シート)未満の塗布率である。しかしながら、当業者には、ウェブ116からヤンキー乾燥機218への転写を容易化するために使用され得る広範な代替の接着剤、さらには接着剤の量が認識される。
ウェブ116は、加熱されたシリンダであるヤンキー乾燥機218上で、ヤンキー乾燥機218の周囲のヤンキーフード内での高噴射速度での衝突空気により乾燥される。ヤンキー乾燥機218が回転すると、ウェブ116は位置220で乾燥機218から剥離される。次いで、ウェブ116は、その後巻取りリール(図示せず)上に巻き取られてもよい。リールは、ウェブ116にさらなるクレープ加工を付与するために、定常状態でヤンキー乾燥機218より速く操作されてもよい。任意選択で、クレープ加工用ドクターブレード222を使用して、従来の様式でウェブ116を乾式クレープ加工(dry-crepe)してもよい。いずれの場合でも、清掃用ドクターを装着して断続的に噛ませ、堆積物を管理するために使用してもよい。
図2は、クレープ加工が行われるプレス部100の詳細を示す。プレス部100は、製紙フェルト102、サクションロール104、プレスシュー106、およびバッキングロール108を含む。バッキングロール108は、任意選択で、例えば蒸気により加熱されてもよい。プレス部100はまた、クレープ加工ロール110、クレープ加工ベルト112、および真空ボックス114を含む。クレープ加工ベルト112は、以下で詳細に説明される本発明の複数層ベルトとして構成されてもよい。
クレープ加工ニップ120において、ウェブ116は、クレープ加工ベルト112の上面側に転写される。クレープ加工ニップ120は、バッキングロール108とクレープ加工ベルト112との間に画定され、クレープ加工ベルト112は、クレープ加工ロール110の表面172により、バッキングロール108に対して押し付けられる。クレープ加工ニップ120でのこの転写において、ウェブ116のセルロース繊維は、以下で詳細に説明されるように、再配置および配向される。ウェブ116がクレープ加工ベルト112上に転写された後、少なくとも部分的に微細なひだを引き出すために、真空ボックス114を使用してウェブ116に吸引力が印加され得る。印加された吸引力はまた、クレープ加工ベルト112における開口内へのウェブ116の引き込みを補助し、それによりウェブ116がさらに成形され得る。ウェブ116のこの成形のさらなる詳細を、以下で説明する。
クレープ加工ニップ120は、概して、例えば約1/8インチから約2インチ(約3.18mmから約50.8mm)、より具体的には約0.5インチから約2インチ(約12.7mmから約50.8mm)のいずれかのベルトクレープ加工ニップ距離または幅にわたり延在する。クレープ加工ニップ120におけるニップ圧力は、クレープ加工ロール110とバッキングロール108との間の投入量に起因する。クレープ加工圧力は、概して、約20から約100PLI(約3.5kN/メートルから約17.5kN/メートル)、より具体的には約40PLIから約70PLI(約7kN/メートルから約12.25kN/メートル)である。クレープ加工ニップ120における10PLI(1.75kN/メートル)または20PLI(3.5kN/メートル)の最小圧力が必要であることが多いが、当業者には、商用機械において、最大圧力は可能な限り高くてもよく、使用されている具体的な機械類によってのみ制限されることが理解される。したがって、実用的である場合、および速度差分が維持され得る限り、100PLI(17.5kN/メートル)、500PLI(87.5kN/メートル)、もしくは1000PLI(175kN/メートル)を超える、またはそれ以上の圧力が使用されてもよい。
いくつかの実施形態において、ウェブ116の繊維間特性を再構築することが望ましくなり得、一方、他の場合において、ウェブ116の面内のみの特性に影響することが望ましくなり得る。クレープ加工ニップのパラメーターは、様々な方向におけるウェブ116内の繊維の分布に影響し得、これは、z方向(すなわちウェブ116の嵩高さ)ならびにMDおよびCDにおける変化の誘発を含む。いずれの場合においても、クレープ加工ベルト112は、ウェブ116がバッキングロール108からはがれて移動するよりも遅く移動し、大きな速度変化が生じることから、クレープ加工ベルト112からの転写は大きく影響を受ける。これに関して、クレープ加工の程度は、多くの場合クレープ加工比率と呼ばれ、この比率は以下のように計算される。
[数1]
クレープ加工比率(%)=S/S-1
式中、Sは、バッキングロール108の速度であり、Sは、クレープ加工ベルト112の速度である。典型的には、ウェブ116は、約5%から約60%の比率でクレープ加工される。実際に、100%に近い、またはさらにそれを超える高い程度のクレープ加工が使用され得る。
繰り返すが、図1に描かれた製紙機械は、本明細書に記載の本発明と共に使用され得る可能な構成の単なる一例にすぎないことが留意されるべきである。さらなる例は、上述の米国特許出願公開第2010/0186913号に記載されているものを含む。
[複数層クレープ加工ベルト]
本発明は、1つには、上述のもの等の製紙機械におけるクレープ加工操作に使用され得る複数層ベルトに関する。本明細書における開示から明らかとなるように、複数層ベルトの構造は、クレープ加工操作に特に好適である多くの有利な特徴を提供する。しかしながら、ベルトは本明細書において構造的に説明されているため、ベルト構造は、クレープ加工操作以外の用途に、例えば厳密に製紙ウェブに形状を提供する成型プロセスに使用されてもよいことが留意されるべきである。
クレープ加工ベルトは、製紙機械において満足のいくように機能するために、上述のもの等の多様な特性を有さなければならない。一方では、クレープ加工ベルトは、操作中にクレープ加工ベルトに印加される張力、圧縮力、および摩擦力に耐えることができることが重要である。したがって、クレープ加工ベルトは、特にMDにおいて強靭でなければならず、または、より具体的には高い弾性率(寸法安定性)を有さなければならない。他方では、クレープ加工ベルトは、長期間高速で滑らかに(例えば平坦に)走行するために、柔軟で丈夫でなければならない。クレープ加工ベルトが過度に脆く形成されている場合、操作中の亀裂または他の破砕を生じやすくなる。強靭でありながら柔軟であるという組合せは、クレープ加工ベルトを形成するために使用され得る潜在的材料を制限する。すなわち、クレープ加工ベルト構造は、強度および柔軟性の組合せを達成する能力を有さなければならない。
強靭かつ柔軟であることに加え、クレープ加工ベルトは、理想的には、ベルトの抄紙表面上の多様な開口サイズおよび形状の形成を可能にするべきである。クレープ加工ベルトにおける開口は、以下で詳細に説明されるように、最終的な紙構造においてキャリパを生成するドームを形成する。より具体的には、いかなる特定の理論にも束縛されないが、クレープ加工ベルトを使用して生成された製品のキャリパは、ベルトにおける開口のサイズに正比例すると考えられる。クレープ加工ベルトにおける開口がより大きいほど、より多量の繊維が最終製品において最終的に見出されるドーム構造として形成され得、ドーム構造は、製品にさらなるキャリパを提供する。本発明を使用して生成され得るキャリパを示す例は、以下で説明される。クレープ加工ベルトにおける開口はまた、クレープ加工されているウェブ上に、ひいては形成される紙製品上に特定の形状およびパターンを付与するために使用され得る。異なるサイズ、密度、分布、および深さの開口を使用することにより、ベルトの上部層は、異なる視覚的パターン、嵩高さ、および他の物理的特性を有する紙製品を生成するために使用され得る。つまり、クレープ加工ベルトの形成における使用のための任意の潜在的材料または材料の組合せの重要な特徴は、クレープ加工操作においてウェブを支持するために使用される材料の表面に多様な開口を形成することができる能力である。
押出しポリマー材料を、多様な開口を有するクレープ加工ベルトとして形成することができ、したがって、押出しポリマー材料は、クレープ加工ベルトの形成における使用のための可能な材料である。特に、例えばレーザ穴開けまたは切断を含む様々な技術により、押出しポリマーベルト構造に正確な形状の開口を形成することができる。他の全ての考慮点が同じであるとすると、所与の一体型ポリマーベルトに形成され得る開口の種類およびサイズの主な制限因子は、開口を形成するために除去され得るベルト材料の総量が限定されることである。開口を形成するために過度に多くのベルト材料が除去された場合、一体型ポリマーベルトの構造は、製紙プロセスにおけるクレープ加工操作の歪みに耐えるには不十分となる。すなわち、過度に大きい開口が提供されたポリマーベルトは、製紙プロセスにおけるその使用の早期において破断する。
本発明によるクレープ加工ベルトは、ベルト構造全体の異なる層におけるベルトに異なる特性を提供することにより、ポリマークレープ加工ベルトの所望の態様の全てを提供する。具体的には、複数層ベルトは、多様な形状およびサイズを有する開口が層に形成されるのを可能にするポリマー材料から作製された上部層を含む。一方、複数層ベルトの下部層は、ベルトに強度および耐久性を提供する材料から形成される。下部層に強度および耐久性を提供することによって、上部層はベルトの強度および耐久性に寄与する必要がないため、上部ポリマー層に、別様にポリマーベルトに提供され得るものよりも大きい開口を提供することができる。
本発明による複数層クレープ加工ベルトは、少なくとも2つの層を含む。本明細書において使用される場合、「層」は、ベルト構造における別の連続的な別個の層から物理的に分離した、ベルト構造の連続した別個の部分である。以下で議論されるように、本発明による複数層ベルトにおける2つの層の例は、接着剤で布層に結合されたポリマー層である。特に、本明細書において定義されるような層は、それに実質的に埋設された別の構造を有する構造を含み得る。例えば、米国特許第7,118,647号は、感光性樹脂から作製された層が、樹脂内に埋設された強化要素を有する製紙ベルト構造を説明している。強化要素を有するこの感光性樹脂は、本発明の観点からの層である。しかしながら、同時に、強化要素を有する感光性樹脂は、互いに物理的に分離した、ベルト構造の2つの連続した別個の部分ではないため、強化要素を有する感光性樹脂は、本出願において使用されるような「複数層」構造を構成しない。
次に、本発明による複数層ベルトの上部層および下部層の詳細を説明する。本明細書において、クレープ加工ベルトの「上部」または「シート」または「ヤンキー」側は、クレープ加工操作のためにウェブが堆積されるベルトの側を指す。したがって、「上部層」は、クレープ加工操作においてセルロースウェブが成形される表面を形成する複数層ベルトの部分である。クレープ加工ベルトの「下部」または「空気」(「機械」)側は、本明細書において使用される場合、ベルトの反対側、すなわち、クレープ加工ロールおよび真空ボックス等の処理機器に面し、それらに接触する側を指す。したがって、「下部層」は、下部(空気)側表面を提供する。
[上部層]
本発明による複数層ベルトの上部層の機能の1つは、開口が形成され得る構造に、層の一方側から他方側まで層を通過する開口、および製紙プロセスにおいてウェブにドーム形状を付与する開口を提供することである。上部層は、それ自体がベルト構造にいかなる強度および耐久性も付与する必要はないが、これは、以下で説明されるように、これらの特性が主に下部層により提供されるためである。さらに、上部層の開口は、製紙プロセスにおいて繊維が上部層を通過して引き出されることを防止するように構成される必要はないが、これもまた、同じく以下で説明されるように、下部層により達成されるためである。
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の複数層ベルトの上部層は、押し出された柔軟な熱可塑性材料から作製される。これに関して、材料が本明細書に記載の上部層に摩擦(例えば抄紙ウェブとベルトとの間)、圧縮性、および引張強度等の特性を概して付与する限り、上部層を形成するために使用され得る熱可塑性材料の種類に特定の制限はない。また、本明細書における開示から当業者に明らかなように、本明細書において具体的に議論される熱可塑性物質と実質的に同様の特性を提供する、数多くの可能な柔軟熱可塑性材料が使用され得る。また、「熱可塑性材料」という用語は、本明細書において使用される場合、熱可塑性エラストマー、例えばゴム材料を含むことを意図することが留意されるべきである。さらに、熱可塑性材料は、繊維形態の熱可塑性材料(例えばポリエステル短繊維)または非塑性添加剤、例えば複合材料において見られるものを含んでもよいことが留意されるべきである。
熱可塑性上部層は、任意の好適な技術、例えば成型、押出、熱成形等によって作製され得る。特に、熱可塑性上部層は、複数のセクションから、例えば、米国特許第8,394,239号(この開示は、本願に引用してその全体を援用する)に記載のように螺旋様に隣り合わせて互いに接合して、作製されてもよい。さらに、熱可塑性上部層は、任意の特定の必要とされる長さに作製されてもよく、任意の特定の製紙機械構成に必要な経路長に調整されてもよい。
具体的な実施形態において、複数層ベルトの上部層を形成するために使用される材料は、ポリウレタンである。一般に、熱可塑性ポリウレタンは、(1)ジイソシアネートを短鎖ジオール(すなわち鎖延長剤)と、および(2)ジイソシアネートを長鎖二官能性ジオール(すなわちポリオール)と反応させることにより製造される。反応化合物の構造および/または分子量を変化させることにより生成され得る事実上無制限の数の可能な組合せによって、膨大な種類のポリウレタン配合物が可能である。また、結果として、ポリウレタンは、極めて広範な特性を有するように作製され得る熱可塑性材料である。本発明による複数層クレープ加工ベルトにおける上部層としての使用にポリウレタンを考慮した場合、ポリウレタンの硬度、およびそれに対応してポリウレタンの表面の摩擦係数を調節することができることが非常に有利である。表1は、本発明のいくつかの実施形態における複数層ベルトの上部層を形成するために使用されるポリウレタンの例の特性を示す。
Figure 0007160490000001
表1に示される範囲内の特性を有するポリウレタンは、本明細書に記載のような複数層ベルトにおける上部層として使用される場合効果的である。当業者に理解されるように、表1に示される特性の値は概数であり、したがって、示された範囲外に幾分逸脱し得るが、それでも本明細書に記載の特性を有する複数層ベルトを提供し得る。これらの特性を有する特定のポリウレタンの例は、San Diego Plastics,inc.(National City、California)により、MP750、MP850、MP950、およびMP160の商品名で販売されている。
ポリウレタンの代替として、本発明の他の実施形態において上部層を形成するために使用され得る特定の熱可塑性物質の例は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington、Delaware)により、HYTREL(登録商標)の名称で販売されている。HYTREL(登録商標)は、本明細書に記載の複数層クレープ加工ベルトの上部層の形成に実用され得る摩擦、圧縮性、および引張特性を有するポリエステル熱可塑性エラストマーである。
上述のポリウレタン等の熱可塑性物質は、熱可塑性物質に異なるサイズおよび構成の開口を形成することができる能力を考慮すると、本発明の複数層ベルトの上部層の形成に有利な材料である。上部層を形成するために使用される熱可塑性物質における開口は、様々な技術を使用して容易に形成され得る。そのような技術の例は、レーザ彫刻、穴開け、切断または機械的打抜きを含む。当業者に理解されるように、そのような技術は、大型および一貫したサイズの開口部を形成するために使用され得る。実際に、ほとんどの任意の構成(寸法、形状、側壁角度等)の開口が、そのような技術を使用して、熱可塑性上部層に形成され得る。
上部層に形成され得る開口の異なる構成を考慮すると、開口は同一である必要はないことに留意することが重要である。すなわち、上部層に形成された開口のいくつかは、上部層に形成された他の開口と異なる構成を有してもよい。実際に、製紙プロセスにおいて異なる機能を提供するために、上部層に異なる開口が提供されてもよい。例えば、上部層における開口のいくつかは、クレープ加工操作中に製紙ウェブにドーム構造の形成を提供するようなサイズおよび形状であってもよい(以下で詳細に説明される)。同時に、上部層における他の開口は、エンボス加工操作で達成されるパターンと同等のパターンを製紙ウェブに提供するために、はるかにより大きいサイズおよび様々な形状であってもよい。しかしながら、パターンは、シートの嵩高さおよび他の所望の特性の喪失等の、エンボス加工の望ましくない効果を生じることなく達成される。
クレープ加工操作において製紙ウェブにドーム構造を形成するための開口のサイズを考慮すると、本発明の複数層ベルトの上部層は、構造化織布および一体型ポリマーベルト構造等の代替の構造よりはるかに大きいサイズを許容する。開口のサイズは、上部層により提供される、複数層ベルトの表面の平面内での開口の断面積に関して定量化され得る。いくつかの実施形態において、複数層ベルトの上部層における開口は、少なくとも約1.0mmの成形(上部)表面上の平均断面積を有する。より具体的には、開口は、約1.0mmから約15mm、またはさらにより具体的には約1.5mmから約8.0mm、またはさらにより具体的には約2.1mmから約7.1mmの平均断面積を有する。当業者に容易に理解されるように、本発明による複数層ベルトの断面積を有する開口を有する一体型ベルトを形成することは、不可能または実現困難とはいかないまでも、極めて困難である。例えば、これらのサイズの開口は、ベルトが製紙ベルトクレープ加工プロセスの厳しさおよび応力に耐えるのに十分丈夫ではない可能性があるほどに、一体型ベルトを形成する材料を大量に除去することを必要とする。同じく当業者に容易に理解されるように、構造化織布には、これらのサイズの開口と同等のものを提供することはまずできないが、これは、そのような開口と同等ものを提供しながらも、製紙プロセスにおいて機能し得るのに十分な構造的完全性を提供するように布の糸を織ることができない(離間またはサイズ)ためである。
また、開口のサイズは、体積に関して定量化され得る。本明細書において、開口の体積は、ベルトの厚さを通して開口が占有する空間を指す。本発明による複数層ベルトの上部層における開口は、少なくとも約0.2mmの体積を有してもよい。より具体的には、開口の体積は、約0.5mmから約23mm、または、より具体的には、開口の体積は、0.5mmから約11mmの範囲であってもよい。当業者に理解されるように、開口の形成において除去されるベルト材料の量(質量)に起因して、そのような体積を有する相当数の開口を有する使用可能な一体型熱可塑性ベルトを生成することは、不可能または実現困難とはいかないまでも、極めて困難である。すなわち、上述のように、本明細書に記載の体積を有する相当数の開口を有する一体型ベルトは、製紙プロセスの一部である応力に耐えるのに十分丈夫ではない。同じく当業者に理解されるように、本明細書に記載のクレープ加工ベルトにおける明確に画定された開口と比較して、構造化布では、「開口」の体積は、織構造の性質に起因して、構造化布を通して明確に画定されない。いずれにしても、構造化織布は、本発明による複数層ベルトにおける開口の体積と同等のものを提供することはできない。
本発明による複数層ベルトの他の固有の特性は、上部層により提供されるベルトの上部表面により提供される接触エリアのパーセンテージを含む。上部表面の接触エリアのパーセンテージは、開口ではないベルトの表面のパーセンテージを指す。接触層のパーセンテージは、構造化織布または一体型ベルトよりも本発明の複数層ベルトにおいてより大きい開口が形成され得るという事実に関連する。すなわち、開口は、事実上ベルトの上部表面の接触エリアを低減し、また複数層ベルトはより大きい開口を有し得るため、接触エリアのパーセンテージは低減される。本発明の実施形態において、複数層ベルトの上部表面は、約10%から約65%の接触エリアを提供する。より具体的な実施形態において、上部表面は、約15%から約50%の接触エリアを提供し、さらにより具体的な実施形態において、上部表面は、約20%から約33%の接触エリアを提供する。繰り返すが、当業者には、接触エリアのこれらの範囲の上限は、商業的製紙操作のための構造化織布または一体型ベルトにおいてはまず該当し得ないことが認識される。
開口密度は、本発明の複数層ベルトの上部層により提供される上部表面における開口の相対サイズおよび数のさらに別の尺度である。ここで、上部表面の開口密度は、単位面積当たりの開口の数、例えばcm当たりの開口の数を指す。本発明の実施形態において、上部層により提供される上部表面は、約10/cmから約80/cmの開口密度を有する。より具体的な実施形態において、上部層により提供される上部表面は、約20/cmから約60/cmの開口密度を有し、さらにより具体的な実施形態において、上部表面は、約25/cmから約35/cmの開口密度を有する。本明細書に記載のように、ベルトの開口は、クレープ加工操作中にウェブにドーム構造を形成する。本発明の複数層ベルトは、一体型ベルトに形成され得るものよりも高い開口密度、および構造化織布で同等に達成され得るものよりも高い開口密度を提供することができる。したがって、複数層ベルトを使用して、クレープ加工操作中に一体型ベルトまたは構造化織布より多くのドーム構造をウェブに形成することができ、したがって、構造化布または一体化ベルトが成し得るよりも多数のドーム構造を有する紙製品を製造する製紙プロセスにおいて、複数層ベルトを使用することができる。
製紙プロセスに影響する複数層ベルトの上部層により形成されるクレープ加工表面の2つの他の態様は、上部表面の摩擦および硬度である。理論に束縛されないが、より柔らかいクレープ加工構造(ベルトまたは布)は、クレープ加工ニップの内側のより良好な圧力均一性を提供すると考えられる。さらに、クレープ加工ベルトの表面上の摩擦は、クレープ加工ニップにおけるクレープ加工ベルトへのウェブの転写中のウェブの滑りを最小限にする。ウェブの滑りが小さいほど、クレープ加工ベルト上の磨耗がより小さくなり、クレープ加工構造がより高い、およびより低い坪量範囲の両方において良好に機能することが可能となる。また、クレープ加工ベルトは、ウェブを実質的に損傷することなくウェブの滑りを防止し得ることが留意されるべきである。これに関して、クレープ加工操作中、織布の表面上の節がウェブを破壊するように作用し得るため、クレープ加工ベルトは、織布構造よりも有利である。したがって、複数層ベルト構造は、ウェブ破壊がクレープ加工プロセスにおいて有害となり得る低い坪量範囲においてより良好な結果を提供し得る。低い坪量範囲において機能し得るこの能力は、例えば、化粧紙製品を形成する場合に有利となり得る。
本発明の複数層ベルトの上部層の形成における使用のための材料を考慮すると、上述のように、ポリウレタンが適切な材料である。ポリウレタンは、特に一体型クレープ加工ベルトを形成するために使用され得る材料と比較すると、クレープ加工ベルトにおける使用のための比較的柔らかい材料である。同時に、ポリウレタンは、比較的高い摩擦を有する表面を提供し得る。ポリウレタンは、その配合に依存して、約0.5から約2の範囲の摩擦係数を有することが知られている。本発明の例示的実施形態において、複数層ベルトのポリウレタン製上部表面は、約0.6の摩擦係数を有する。特に、同じく上部層の形成に適切な材料として上述されたHYTREL(登録商標)熱可塑性物質は、約0.5の摩擦係数を有する。したがって、本発明の複数層ベルトは、「柔らかい」シートによるクレープ加工操作を達成する、柔らかく高摩擦の上部表面を提供し得る。
上部層の上部表面の摩擦、および上部表面の他の表面現象は、上部表面へのコーティングの塗布により変化され得る。これに関して、コーティングは、上部表面の摩擦を増加または減少させるために、上部表面に追加され得る。追加的に、または代替として、コーティングは、上部表面の剥離特性を変化させるために上部表面に追加され得る。そのようなコーティングの例は、複数層クレープ加工ベルトが使用される特定の製紙プロセスに依存して、疎水性および親水性組成物の両方を含む。これらのコーティングは、製紙プロセス中にベルト上に噴霧されてもよく、または、コーティングは、複数層ベルトの上部表面に取り付けられた永久的コーティングとして形成されてもよい。
[下部層]
複数層クレープ加工ベルトの下部層は、強度、MD延伸およびクリープ耐性、CD安定性、および耐久性をベルトに提供するように機能する。上述のように、ポリウレタン等の柔軟ポリマー材料は、ベルトの上部層のための魅力的な選択肢を提供する。しかしながら、ポリウレタンは、単独では、ベルトに所望の特性を提供することのない比較的弱い材料である。均質な一体型ポリウレタンベルトは、製紙プロセス中にベルトに付与される応力および歪みに耐えることができない。しかしながら、ポリウレタン上部層を第2の層と接合することにより、第2の層が必要な強度、延伸耐性等をベルトに提供し得る。本質的に、上部層から分離した別個の下部層を使用することにより、上部層に使用することができる材料の可能な幅が広がる。
上部層の場合のように、下部層もまた、層の厚さを貫通する複数の開口を含む。下部層における各開口は、上部層における少なくとも1つの開口と整列し、したがって、開口は、複数層ベルトの厚さを通して、すなわち上部層および下部層を通して提供される。しかしながら、下部層における開口は、上部層における開口より小さい。すなわち、下部層における開口は、上部層と下部層との間の界面に隣接する上部層の複数の開口の断面積より小さい、上部層と下部層との間の界面に隣接する断面積を有する。したがって、下部層における開口は、例えば、ベルトおよび製紙ウェブが真空に曝露された際に、セルロース繊維が複数層ベルト構造を完全に通過して引き出されることを防止し得る。上で概略的に議論されたように、ベルトを通して引き出された繊維は、製紙機械において経時的に繊維が堆積する、例えば真空ボックスの外側枠上に蓄積することから、製紙プロセスに有害である。繊維の堆積は、繊維堆積物を清掃除去するために機械の休止時間を必要とする。したがって、下部層における開口は、繊維がベルトを通して引き出されることを実質的に防止するように構成され得る。しかしながら、下部層は、クレープ加工表面を提供しない、したがってクレープ加工操作中にウェブを成形するように機能しないため、繊維が引き出されることを防止するように下部層における開口を構成することは、ベルトのクレープ加工操作に実質的に影響しない。
本発明のいくつかの実施形態において、複数層クレープ加工ベルトの下部層として、織布が提供される。上述のように、構造化織布は、クレープ加工操作の力に耐える強度および耐久性を有する。したがって、構造化織布は、製紙プロセスにおけるクレープ加工構造として単独で使用されている。したがって、構造化織布は、本発明による複数層クレープ加工ベルトに必要な強度、耐久性、および他の特性を提供し得る。
複数層クレープ加工ベルトの具体的な実施形態において、下部層に提供された織布は、クレープ加工構造として単独で使用される構造化織布と同様の特性を有する。そのような布は、事実上、布構造を構成する糸の間に形成された複数の「開口」を有する織構造を有する。これに関して、布における開口の結果は、布を通る空気流を許容する空気透過率として定量化され得る。本発明に関して、布の透過率は、上部層における開口と併せて、ベルトを通して空気が引き出されるのを許容する。そのような空気流は、上述のように、製紙機械における真空ボックスにおいて、ベルトを通して引き出され得る。織布層の別の態様は、繊維が真空ボックスにおいて複数層ベルトを完全に通過して引き出されることを防止する能力である。一般に、製紙プロセス中、クレープ加工ベルトまたは布を完全に通過する繊維が1パーセント未満となるべきであることが好ましい。
布の透過率は、当技術における周知の機器および試験に従って、例えばFrazier Precision instrument Company(Hagerstown、Maryland)によるFrazier(登録商標)差圧空気透過率測定機器で測定される。本発明による複数層ベルトの実施形態において、布下部層の透過率は、少なくとも約350CFMである。より具体的な実施形態において、布下部層の透過率は、約350CFMから約1200CFMであり、さらにより具体的な実施形態において、布下部層の透過率は、約400から約900CFMの間である。さらなる実施形態において、布下部層の透過率は、約500から約600CFMである。
表2は、本発明による複数層クレープ加工ベルトにおける下部層を形成するために使用され得る構造化布の具体例を示す。表2において特定される布は全て、Albany international Corporation(Rochester、NH)により製造されている。
Figure 0007160490000002
下部層としてJ5076布を用いた複数層ベルトの具体例を、以下で例示する。J5076は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で作製されている。
織布の代替として、本発明の他の実施形態において、複数層クレープ加工ベルトの下部層は、押出し熱可塑性材料から形成され得る。しかしながら、上述の上部層を形成するために使用される柔軟熱可塑性材料とは異なり、下部層を形成するために使用される熱可塑性材料は、複数層クレープ加工ベルトに強度、延伸耐性、耐久性等を付与するために提供される。下部層を形成するために使用され得る熱可塑性材料の例は、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、およびコポリアミドを含む。下部層を形成するために使用され得るポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、およびコポリアミドの具体例は、上述の米国特許出願公開第2010/0186913号において見出すことができる。
本発明の具体的な実施形態において、複数層ベルトの押出し下部層を形成するために、PETが使用され得る。PETは、周知の丈夫で柔軟なポリエステルである。他の実施形態において、複数層ベルトの押出し下部層を形成するために、HYTREL(登録商標)(上述されている)が使用され得る。当業者には、下部層を形成するために使用され得る類似の代替材料が認識される。
下部層に押出しポリマー材料を使用する場合、開口は、上部層に提供される開口と同様の様式で、例えばレーザ穴開け、切断、または機械的穿孔によりポリマー材料を通して提供され得る。下部層における開口の少なくともいくつかは、上部層における開口と整列し、それにより、織布下部層が複数層ベルト構造を通した空気流を許容するのと同様の様式で、複数層ベルト構造を通した空気流を許容する。しかしながら、下部層における開口は、上部層における開口と同じサイズである必要はない。実際に、繊維が通過して引き出されるのを布下部層に類似した様式で低減するために、押出しポリマー下部層における開口は、上部層における開口より実質的に小さくてもよい。一般に、下部層における開口のサイズは、ベルトを通したある特定量の空気流を許容するように調節され得る。さらに、下部層における複数の開口は、上部層における開口と整列していてもよい。上部層における開口面積に比べてより大きい下部層における全開口面積を提供するために、複数の開口が下部層に提供された場合、真空ボックスにおいてより多くの空気流をベルトを通して引き出すことができる。同時に、より小さい断面積を有する複数の開口を使用することにより、下部層における単一のより大きい開口に比べて、繊維の引出し量が低減される。本発明の具体的な実施形態において、第2の層における開口は、第1の層との界面に隣接して、350平方ミクロンの最大断面積を有する。
この線に沿って、押出しポリマー上部層および押出しポリマー下部層を有する本発明の実施形態において、ベルトの特性は、下部層により提供される下部表面における開口の断面積に対する、上部層により提供される上部表面における開口の断面積の比率である。本発明の実施形態において、上部および下部開口の断面積のこの比率は、約1から約48の範囲である。より具体的な実施形態において、比率は、約4から約8の範囲である。さらにより具体的な実施形態において、比率は、約5である。
上述の織布および押出しポリマー層の代替例において、下部層を形成するために使用され得る他の材料が存在する。例えば、本発明の一実施形態において、下部層は、金属材料、特に金属スクリーン様構造から形成され得る。金属スクリーンは、上述の織布および押出しポリマー層と同様の様式で、複数層ベルトに強度および柔軟性の特性を提供する。さらに、金属スクリーンは、上述の織布および押出しポリマー材料と同様の様式で、セルロース繊維がベルト構造を通して引き出されることを防止するように機能する。下部層を形成するために使用され得るさらなる代替の材料は、超強力繊維材料、例えばパラアラミド合成繊維から形成された材料である。超強力繊維は、互いに織り合わせられていないことにより上述の布と異なり得るが、それでも強力および柔軟な下部層を形成することができる。当業者には、本明細書に記載の複数層ベルトの下部層の特性を提供することができる、さらなる代替の材料が認識される。
[複数層構造]
本発明による複数層ベルトは、上述の上部層および下部層を接続することにより形成される。本明細書における開示から理解されるように、層の間の接続は、様々な異なる技術を使用して達成され得るが、そのいくつかを以下でより十分に説明する。
図3Aは、本発明の一実施形態による複数層クレープ加工ベルト400の一部の断面図である。ベルト400は、ポリマー上部層402および布下部層404を含む。ポリマー上部層402は、製紙プロセスのクレープ加工操作の間その上でウェブがクレープ加工される、ベルト400の上部表面408を提供する。上述のように、ポリマー上部層402に開口406が形成される。開口406は、上部表面408から布下部層404に面する表面まで、ポリマー上部層402の厚さを通して延在することに留意されたい。織布下部層404は、ある特定の透過率を有するため、ベルト400の織布下部層404側に真空を印加することができ、したがって、開口406および織布下部層404を通して空気流を引き出すことができる。ベルト400を使用したクレープ加工操作中、ウェブからのセルロース繊維は、ポリマー上部層402における開口406内に引き込まれ、この結果、(以下でより十分に説明されるように)ウェブにドーム構造が形成される。開口406内にウェブを引き込むために、追加的に真空が印加されてもよい。
図3Bは、図3Aに示される開口406を有する部分を見下ろしたベルト400の上面図である。図3Aおよび3Bから明らかなように、織布下部層404は、真空がベルト400を通して引かれることを可能にするが、織布下部層404はまた、上部層における開口406を効果的に閉鎖する。すなわち、織布下部層404は、事実上、押出しポリマー上部層402と織布下部層404との間の界面に隣接して、より小さい断面積を有する複数の開口を提供する。したがって、織布下部層404は、セルロース繊維がベルト400を通過することを実質的に防止し得る。上述のように、織布下部層404はまた、ベルト400に強度、耐久性、および安定性を付与する。
図4Aは、押出しポリマー上部層502および押出しポリマー下部層504を含む、本発明の一実施形態による複数層クレープ加工ベルト500の一部の断面図である。ポリマー上部層502は、その上で製紙ウェブがクレープ加工される上部表面508を提供する。この実施形態において、ポリマー上部層502における開口506は、下部層における3つの開口510と整列している。図4B(図4Aに関連する)に示されるベルト部分500の上面図から明らかなように、ポリマー下部層504における開口510は、ポリマー上部層502における開口506より実質的に小さい断面を有する。すなわち、ポリマー下部層504は、ポリマー上部層502とポリマー下部層504との間の界面に隣接して、より小さい断面積を有する複数の開口510を含む。これにより、押出しポリマー下部層504は、上述の織布下部層と同様の様式で、繊維がベルト構造を通して引き出されることを実質的に防止するように機能し得る。上述のように、代替の実施形態において、押出しポリマー下部層504における単一の開口が、押出しポリマー上部層502における開口506と整列していてもよいことが留意されるべきである。実際に、ポリマー上部層502における各開口に対して、ポリマー下部層504に任意の数の開口が形成されてもよい。
ベルト400および500の押出しポリマー層における開口406、506、および510は、開口406、506、および510の壁がベルト400および500の表面に垂直に延在するような開口である。しかしながら、他の実施形態において、開口406、506、および510の壁は、ベルトの表面に対して異なる角度で提供されてもよい。開口406、506、および510の角度は、開口がレーザ穴開け、切断、または機械的穿孔等の技術により形成される際に選択および形成され得る。具体例において、側壁は、約60°から約90°、より具体的には約75°から約85°の角度を有する。しかしながら、代替の構成において、側壁角度は、約90°より大きくてもよい。本明細書において言及される側壁角度は、図3Aにおいて角度αにより示されるように測定されることに留意されたい。
本発明による複数層ベルトの層は、複数層クレープ加工ベルトが製紙プロセスにおいて使用され得るのに十分丈夫な層間の接続を提供する任意の様式で互いに接合され得る。いくつかの実施形態において、層は、化学的手段により、例えば接着剤を使用して互いに接合される。層を接合するために使用され得る接着剤構造の具体例は、両面テープである。他の実施形態において、層は、機械的手段により、例えば面ファスナ(hook-and-loop fastener)を使用して互いに接合されてもよい。さらに他の実施形態において、複数層ベルトの層は、熱溶着およびレーザ融合等の技術により接合されてもよい。当業者には、複数層ベルトを形成するために本明細書に記載の層を接合するのに使用され得る数多くのラミネーション技術が理解される。
図3A、3B、4A、および4Bに示される複数層ベルトの実施形態は、2つの別個の層を含むが、他の実施形態において、図に示される上部層と下部層との間に追加的な層が提供されてもよい。例えば、ベルトを通して空気を通過させながら、繊維がベルト構造を通して引き出されることを防止する、さらなるバリアを提供するために、上述の上部層と下部層との間に追加的な層が位置付けられてもよい。他の実施形態において、上部層および下部層を互いに接続するために使用される手段は、さらなる層として構築されてもよい。例えば、接着剤層が、上部層と下部層との間に提供される第3の層であってもよい。
本発明による複数層ベルトの全厚は、複数層ベルトが使用される特定の製紙機械および製紙プロセス用に調節されてもよい。いくつかの実施形態において、ベルトの全厚は、約0.5から約2.0cmである。織布下部層を含む本発明の実施形態において、複数層ベルトの全厚の大部分は、押出しポリマー上部層により提供される。押出しポリマー上部層および下部層を含む本発明の実施形態において、2つの層のそれぞれの厚さは、所望通りに選択され得る。
上述のように、複数層ベルト構造の利点は、層の1つによりベルトの強度、延伸耐性、寸法安定性、および耐久性が提供され得る一方で、他の層がこれらのパラメーターに大きく寄与する必要はないということである。本発明による複数層ベルト材料の耐久性を、他の潜在的ベルト形成材料の耐久性と比較した。この試験において、ベルト材料の耐久性を、材料の引裂強度に関して定量化した。当業者により理解されるように、良好な引張強度および良好な弾性特性の両方の組合せが、高い引裂強度を有する材料をもたらす。上述の上部層および下部層ベルト材料の7つの試料の引裂強度を試験した。クレープ加工操作に使用した構造化布の引裂強度もまた試験した。これらの試験のために、ISO34-1(ゴム、加硫または熱可塑性物質の引裂強度-第1部:トラウザ形、アングル形およびクレセント形)に一部基づいて、手順を開発した。instron Corp.(Norwood、Massachusetts)によるinstron(登録商標)5966 Dual Column Tabletop Universal Testing System、および同じくinstron Corp.(Norwood、Massachusetts)によるBlueHill 3 Softwareを使用した。全ての引裂試験は、1インチの引裂伸長に対して2インチ/分(4インチ/分の速度を使用するISO 34-1とは異なる)で行い、平均負荷をポンドで記録した。
試料ならびにそのそれぞれのMDおよびCD引裂強度の詳細を、表3に示す。試料に対する「ブランク」の指定は、試料に開口が提供されていなかったことを示し、「試作品」は、試料がまだ無限のベルト構造として作製されておらず、単に試験片としてのベルト材料であったことを意味することに留意されたい。布AおよびBは、製紙プロセスにおけるクレープ加工用に構成された織構造であった。
Figure 0007160490000003
表3に示される結果から分かるように、布およびHYTREL(登録商標)材料は、PETポリマー材料よりはるかに高い引裂強度を有していた。上述のように、織繊維または押出しHYTREL(登録商標)材料層は、本発明による複数層ベルトの層の1つを形成するために使用され得る。複数層ベルト構造の全体的な引裂強度は、必然的に、少なくとも層のいずれにも劣らないほど強い。したがって、織布層または押出しHYTREL(登録商標)層を含む複数層ベルトには、他の層を形成するために使用される材料とは無関係に、良好な引裂強度が付与される。
上述のように、本発明の実施形態は、押出しポリウレタン上部層および織布下部層を含んでもよい。そのような組合せのMD引裂強度を評価し、クレープ加工操作において使用された構造化織布のMD引裂強度とも比較した。上述の試験の場合と同じ試験手順を使用した。この試験において、試料1は、1.2mmの開口を有する押出しポリウレタンの0.5mm厚の上部層を有する二層ベルト構造であった。下部層は、Albany international製のJ5076織布であったが、その詳細は上記に見出すことができる。試料2は、1.2mmの開口を有する押出しポリウレタンの1.0mm厚の上部層、および下部層としてJ5076布を有する二層ベルト構造であった。J5076布単独の引裂強度もまた、試料3として評価した。これらの試験の結果を、表4に示す。
Figure 0007160490000004
表4における結果から分かるように、押出しポリウレタン上部層および織布下部層を有する複数層ベルト構造は、優れた引裂強度を有していた。織布単独の引裂強度を考慮すると、ベルト構造の引裂強度の大部分は、織布により生成されたものであることが分かる。押出しポリウレタンは、複数層ベルト構造の比例的に低い引裂強度を提供した。それにもかかわらず、押出しポリウレタン層単独は十分な強度、延伸耐性、および耐久性を有さないものの、引裂強度に関しては、表4の結果により示されるように、押出しポリウレタン層および織布層を用いた複数層構造が使用された場合、十分丈夫なベルト構造が形成され得る。
表5は、本発明に従って構築された複数層ベルトの8つの例の特性を示す。ベルト1および2は、その構造に2つのポリマー層を有していた。ベルト3から8は、ポリウレタン(PUR)から形成された上部層、およびAlbany international製のPET布であるJ5076布(上述)から形成された下部層を有していた。表5は、各ベルトの上部層(すなわち「シート側」)における開口の特性、例えば断面積、開口の体積、および開口の側壁の角度を記載している。表5はまた、下部層(すなわち「空気側」)における開口の特性を記載している。
Figure 0007160490000005
[プロセス]
本発明の別の態様は、紙製品を作製するためのプロセスに関する。プロセスは、クレープ加工操作のために本明細書に記載の複数層ベルトを利用し得る。そのようなプロセスにおいて、上述の一般型の製紙機械のいずれかが使用され得る。当然ながら、当業者には、本明細書に記載の本発明のプロセスを実行するために利用され得る製紙機械の数多くの変形例および代替構成が認識される。さらに、当業者には、任意の製紙プロセスの一部である周知の変数およびパラメーターが容易に決定され、本発明の方法と併せて使用され得ること、例えば、製紙プロセスにおけるウェブの形成のための特定の種類の完成紙料が、製品の所望の特性に基づいて選択され得ることが認識される。
本発明によるいくつかのプロセスにおいて、ウェブは、クレープ加工ベルトに堆積したときに約15から約25パーセントの間の稠度(すなわち固形分)を有する。本発明による他のプロセスにおいて、ベルトクレープ加工は、クレープ加工ニップにおいて圧力下で行われ、ウェブは、約30から約60パーセントの稠度を有する。そのようなプロセスにおいて、製紙機械は、例えば、図1に示され、また上で説明された構成を有してもよい。そのようなプロセスの詳細は、上述の米国特許出願公開第2010/0186913号に見出すことができる。このプロセスにおいて、ウェブ稠度、ベルトクレープ加工ニップにおいて生じる速度差分、クレープ加工ニップにおいて使用される圧力、ならびにベルトおよびニップの幾何構造が、ウェブが構造変化を受けるのに十分なしなやかさを保っている間に繊維を再配置するように作用する。理論に束縛されることを意図しないが、クレープ加工ベルトの形成表面速度が遅いほど、クレープ加工ベルトにおける開口内にウェブが実質的に成型され、繊維がクレープ加工比率に比例して再整列されると考えられている。CDの方位に移動する繊維もあれば、MDリボンに折り曲げられる繊維もある。このクレープ加工操作の結果、高いキャリパのシートが形成され得る。本明細書に記載の複数層ベルトは、これらのプロセスに適切である。特に、上述のように、複数層ベルトは、開口が広範なサイズを有するように構成されてもよく、したがって、これらのプロセスと共に効果的に使用され得る。
本発明によるプロセスのさらなる態様は、複数層クレープ加工ベルトへの真空の印加である。上述のように、製紙プロセスにおいてウェブがクレープ加工ベルト上に堆積された時に真空が印加され得る。真空は、クレープ加工ベルトにおける開口内、すなわち、本発明による複数層ベルトの上部層における開口内にウェブを引き込むように作用する。特に、真空を使用する、および使用しないプロセスの両方において、ウェブは、複数層ベルト構造の上部層における複数の開口内に引き込まれるが、ウェブは、複数層ベルト構造の下部層には引き込まれない。本発明の実施形態のいくつかにおいて、印加される真空は、約5インチHgから約30インチHgである。上で詳細に説明されたように、複数層ベルトの下部層は、繊維がベルト構造を通して引き出されることを防止するための篩として機能する。この下部層の篩としての機能性は、真空を形成する構造、すなわち真空ボックスに繊維が引き出されることが防止されるため、真空が印加される場合特に重要である。
[紙製品]
本発明の他の態様は、以前に知られていた製紙機械、および当技術において知られているプロセスを使用して製造することができない新規紙製品である。特に、本明細書に記載の複数層ベルトによって、既知の製紙機械および製紙プロセスを用いて作製された紙製品において以前に見出されていなかった優れた特性および特徴を示す紙製品が形成され得る。
本明細書において言及される紙製品は、全てのグレードの製品を包含することが留意されるべきである。すなわち、本発明のいくつかの実施形態は、概して約27lbs/連未満の坪量および約180ミル/8シート未満のキャリパを有する、ティッシュグレードの製品に関する。本発明の他の実施形態は、概して約35lbs/連超の坪量および約225ミル/8シート超のキャリパを有する、タオルグレードの製品に関する。
図5A、5B、および5Cは、本発明による複数層ベルトを使用して作製されたベースシートの一部の顕微鏡写真(10倍)の上面図を示す。これらの図において、ベルトに対して、すなわち上部層により形成された上部表面に対して形成されたシートの側が示されている。図5Aに示されるベースシート600Aは、上述のベルト2を用いて作製され、図5Bに示されるベースシート600Bは、上述のベルト3を用いて作製され、図5Cに示されるベースシート600Cは、上述のベルト7を用いて作製された。ベルトは、図1に示される概略構成を有する製紙機械を用いてベースシート600A、600B、および600Cを形成するクレープ加工操作において使用された。ベースシート600A、600B、および600Cは、規則的反復パターンで配置された複数の繊維に富むドーム領域602A、602B、および602Cを含む。これらのドーム領域602A、602B、および602Cは、各シートを作製するために使用された複数層ベルトの上部表面における開口のパターンに対応する。ドーム領域602A、602B、および602Cは互いに離間しており、連結されたネットワークを形成し、より少ないテクスチャを有する複数の周囲エリア604A、604B、および604Cにより相互接続されている。
図6A、6B、および6Cは、それぞれ図5A、5B、および5Cに示されるベースシート600A、600B、および600Cの裏側を示す。図7A(1)、7A(2)、7B(1)、7B(2)、7C(1)、および7C(2)は、それぞれベースシート600A、600B、および600Cのそれぞれのドーム領域の拡大図(100倍)を示す。様々な図において、微細なひだがドーム領域602A、602B、および602C上に畝を形成し、シートのドーム側の反対側に溝またはわだちを形成していることが分かる。他の顕微鏡写真において、ドーム領域における坪量は、点ごとに著しく変動し得ることが明らかである。図では、ベースシート600A、600B、および600Cの領域における繊維配向もまた観察され得る。定性的に言えば、ドーム領域602A、602B、および602Cにおいて相当な量の繊維が成形されていることが観察され得る。これは、複数層ベルトにおいて見られるより大きい開口サイズに起因して、ドーム領域602A、602B、および602Cが他のクレープ加工構造を用いて作製されたベースシートにおいて見られるドーム領域より大きいことを考慮すると、特に注目に値する。
図8A、8B、および8Cは、本発明の実施形態に従って作製されたベースシート900A、900B、および900Cにおけるドーム領域の断面図であり、断面は、ベースシートのMDに沿った断面である。
図8Aに示されるベースシート900Aは、上述のベルト3を用いて作製され、図8Bに示されるベースシート900Bは、上述のベルト6を用いて作製され、図8Cに示されるベースシート900Cは、上述のベルト7を用いて作製された。図8Aおよび8Cのそれぞれにおいて、ベースシートが生成される方向に関して先頭側縁部が図の右側に示され、末尾側縁部は図の左側に示されている。図8Bにおいて、先頭側縁部は、図の左側に示され、末尾側縁部は、図の右側に示されている。図は、ここでも、シートのドーム領域において相当な量の繊維が見られることを実証している。また、ドーム領域の先頭側および末尾側縁部の角度が留意されるべきである。先頭側縁部は、比較的急な末尾側縁部よりはるかに浅い角度を示している。
図5Aから5C、6Aから6C、7A(1)から7C(3)、および8Aから8Cに示されるドーム領域602A、602B、および602Cは、シートの一方の側から見た場合に実質的に円形の形状を有することが留意されるべきである。しかしながら、本明細書における開示により示されるように、本発明による紙製品におけるドーム構造の形状は、開口を形成するために使用されるクレープ加工構造、すなわちクレープ加工ベルトまたは構造化布における開口の対応する形状を変更することにより、任意の他の形状に変更され得る。
上述のように、複数層ベルト構成を使用する利点の1つは、ベルトの耐久性を実質的に低減することなく、また実質的な量の繊維が製紙プロセス中にベルトを通して引き出されることを防止しながら、クレープ加工表面を提供するベルトの上部層に大きい開口を形成することができる能力である。実際に、複数層ベルト構造により、布のポケットまたは一体型ベルトにおける開口では不可能な開口が形成され得る。その結果、図5Aから5C、6Aから6C、7A(1)から7C(3)、および8Aから8Cに示されるもの等の、複数層ベルトを用いて形成された製品におけるドーム領域は、一体型ベルトおよび構造化布等の他のクレープ加工構造を用いて形成された紙製品におけるドーム領域よりはるかに大きいサイズで形成される。
本発明による紙製品のドーム領域のサイズを定量化するために、ドームの縁部上の1つの点から、ドームの反対側の縁部上の別の点までの距離を測定することができる。そのような測定の一例が、図9中の線AおよびBにより示されている。この測定は、例えば、顕微鏡下の目盛りの隣で紙製品のドームを観察することにより行うことができる。(この技術において使用され得る顕微鏡の一例は、株式会社キーエンス(大阪、日本)製のキーエンスVHX-1000デジタルマイクロスコープである。)本発明による紙製品の実施形態において、中空ドーム領域の縁部上の少なくとも1つの点から、中空ドーム領域の反対側の縁部上の点までの距離は、少なくとも約0.5mmである。より具体的な実施形態において、測定距離は、約1.0mmから約4.0mmであり、さらにより具体的な実施形態において、測定距離は、約1.5mmから約3.0mmである。具体的な実施形態において、中空ドーム領域の縁部上の少なくとも1つの点から、中空ドーム領域の反対側の縁部上の点までの距離は、約2.5mmである。ここでも、当業者に理解されるように、これらのサイズのドームは、一体型ベルトおよび構造化布等の当技術において知られている他のクレープ加工構造では形成することができなかった。
本発明による紙製品におけるドーム領域を特性決定する別の様式は、ドーム構造の体積である。これに関して、本明細書におけるドーム領域の「体積」への言及は、ドーム領域である紙製品の部分、およびドーム領域により画定される中空領域の体積を示す。当業者には、この体積は、様々な技術を使用して測定され得ることが理解される。1つのそのような技術の例は、紙製品における複数の層の体積を測定するためにデジタル顕微鏡を使用する。次いで、ドーム領域を構成する領域における層の合計を計算し、それによりドーム領域の全体積を計算することができる。
本発明の実施形態において、ドーム領域は、少なくとも約0.1mmの体積を有し、時折、ドーム領域は、少なくとも約1.0mmの体積を有する。具体的な実施形態において、ドーム領域は、約1.0mmから約10.0mmの体積を有する。本発明による紙製品の他の具体例は、約0.1mmから約3.5mm、より具体的には約0.2mmから約1.4mmの体積のドーム領域を有する。ここでもまた、これらのサイズのドーム領域は、一体型ベルトおよび構造化布等の当技術において知られたクレープ加工構造を使用して生成することができなかったことが留意されるべきである。
本発明による紙製品において形成された大きいドーム領域は、紙製品のキャリパに大きく影響する。以下に示される実験結果において実証されるように、より大きいドーム領域は、より大きいキャリパを有する紙製品をもたらし、これは製紙プロセスにおいて極めて望ましい。図5Aから5C、6Aから6C、7A(1)から7C(3)、および8Aから8Cに示される具体的なベースシートは、少なくとも約140ミル/8シートのキャリパを有し、これは比較的高い量のキャリパである。さらに、上で示されたように、ベースシートにおけるドーム領域は、実質的な量の繊維を含有していた。そのようなキャリパは、少なくとも、本発明による紙製品におけるキャリパの対応する量を形成するために必要な量よりも実質的に多くの繊維を使用せずに、従来のクレープ加工構造およびクレープ加工プロセスを使用して達成することはできなかったと考えられる。具体例において、ドームにわたる距離およびドームの体積の両方に関して、上述のドームサイズを有する紙製品は、少なくとも約130ミル/8シート、約140ミル/8シート、約145ミル/8シート、またはさらに約245ミル/8シートのキャリパを有する。そのような紙製品の具体例は、以下で説明される。また、従来のクレープ加工構造およびクレープ加工プロセスを使用してキャリパが生成されたとしても、繊維分布は、本発明による紙製品における繊維分布とは異なり、例えば、従来通り作製された紙製品のドーム領域においては、はるかに少ない量の繊維が見られる。
本発明による紙製品のドーム構造のさらに別の新規な態様は、ドーム構造の異なる部分において見られる繊維密度を含む。本発明のこれらの態様を理解するために、シンクロトロンまたは実験機器から得られる三次元X線マイクロコンピューター断層撮影(XR-μCT)表示の基本解像度と同様の解像度で、本発明の紙製品等の紙製品における局所的繊維密度の概算を提供する技術が使用され得る。そのような実験機器の例は、XRadia, inc.(Pleasanton、CA)によるMicroXCT-200である。具体的には、後述の技術により、紙製品の中央表面において垂直(法線方向)繊維密度が決定され得る。繊維密度は、エンボス、クレープ加工、乾燥機能等に起因して、面外方向において変動し得ることに留意されたい。
繊維密度決定技術により、XR-μCTデータセットが、放射投影X線画像を二次元グレーレベル画像のスタックからなる三次元データセットに変換するためにラドン変換またはジョン変換された後に受信される。例えば、European Synchrotron Radiation Facility(Grenoble、France)におけるシンクロトロンから受信した紙製品データは、2000スライスからなり、それぞれ8ビットグレーレベル値で2000×約800ピクセルの寸法を有する。グレーレベル値は、質量の減衰を表し、比較的均一な分子量の材料の場合、質量または構成の三次元分布を厳密に近似する。紙製品は、主にセルロース繊維からなるため、一定のX線減衰係数、ひいてはグレーレベルと質量との間の直接的関係の仮定が有効である。
ラドンまたはジョン変換から生成されたXR-μCTデータセットは、有限グレーレベル値としての空隙、および0から255の範囲内のより高いグレーレベル値の質量を示す。スライス画像はまた、曝露中に紙製品試料が移動する場合に、または回転もしくはz位置決めステージの不正確な動きから発生する視認され得るアーチファクトを示す。これらのアーチファクトは、様々な方位の質量から投影される線として現れる。紙製品試料が、紙製品試料の主平面に垂直な軸上でX線ビーム内で回転する場合、これはまた「リンギング(ringing)」アーチファクトおよびより高いグレーレベルの中央の「ピン」を含有し得るが、これは、紙製品試料内に存在しない質量を示すため、対応されなければならない。特に、これは、シンクロトロンから受信したXR-μCTデータセットの場合に該当し得る。
分割プロセスは、紙製品試料に含有される材料の異なる相の分離を指す。これは単に、固体セルロース繊維と空気(空隙)とを区別することである。代表的な断層撮影データセットを得るために、米国国立衛生研究所で開発されたパブリックドメインの画像処理プログラムである、ImageJと呼ばれるオープンソフトウェアを使用して、以下の分割プロセスを用いることができる。まず、スライスを2回の「スペックル除去」フィルタリングプロセスに供するが、各ピクセルは、3×3の周囲隣接物に対する中央値で置き換えられる。これにより、ごま塩ノイズ(高い値および低い値)、特に上述のアーチファクトが除去され、セルロース繊維の縁部の線広がり関数を増加させる効果は無視できる。次に、空隙がゼロの値(黒)に切り取られるようにより低い値(黒)を閾値化することによってグレーレベルヒストグラムが調節され、質量のグレーレベル値は、残りのグレーレベルヒストグラムにわたって広がる。閾値を過度に高い値に設定しないように注意され得るが、さもなくば繊維縁部の質量が空隙に変換され、繊維が断面積を失っているように見える。繊維質量と空隙との間を明確に区別するデータセットが生成されるように、全てのスライスが同様に処理される。
紙製品試料の相対密度は、まず試料の上方および下方境界を近似する表面を生成し、次いでその2つの間の中央表面を計算することにより、前処理されたXR-μCTデータセットから計算され得る。次いで、中央表面内の各位置で決定される表面法線ベクトルを使用して、1×1ピクセルを表面法線ベクトルに沿った上方表面と下方表面との間の距離(ピクセル単位)と乗じた円柱内の体積当たりの質量が決定される。全ての計算は、MathWorks, inc.(Natick、Massachusetts)によるMATLAB(登録商標)を使用して行うことができる。具体的な手順は、次に説明されるように、表面決定、表面法線および三次元厚さ、三次元密度、ならびに三次元密度表示を含む。
表面決定では、XR-μCTデータセットにおけるスライスは、X-Z投影であり、X-Y平面が試料の主平面であり、MDまたはCDにより形成されるのと同じ平面である。したがって、Z軸はX-Y平面に垂直であり、各スライスは、Y方向における単位ステップを表す。各スライス内の各X位置において、グレーレベル値が制限閾値(典型的には20)を超える最高および最低Z位置が特定される。したがって、各スライスは、スライス内に示される最大(上方)および最小(下方)位置を接続する曲線を生成する。
Z軸に沿って質量が検出され得ないそれらの領域、すなわち、材料内に貫通穴が存在する領域は、連続中央表面を形成する上で問題を呈し得る。これを克服するために、周縁部で2ピクセルだけ穴を拡張する(穴のサイズを増加させる)ことにより穴が充填され得、調節されている表面に依存して、最大、最小または中央の有限Z値を有する周囲位置に対して平均値が決定され得る。次いで穴は、不連続が生じないように、また空隙により表面平滑化が悪影響を受けないように、平均Z位置値で充填され得る。
次いで、ロバストな三次元平滑化スプライン関数(three-dimensional smoothing spline function)が各表面に適用され得る。この関数を実行するためのアルゴリズムは、D.ガルシア(D.Garcia)、Computational Statistics & Data Analysis、54:1167-1178(2010)により説明されており、その開示は、本願に引用してその全体を援用する。平滑化パラメーターは、より高い、またはより低い程度まで個々の繊維の詳細を示すある範囲の表面平滑性を提供する、一連のファイルを生成するように変更され得る。
三次元表面法線は、MATLAB(登録商標)関数「surfnorm」を使用して、平滑化された中央表面内の各頂点において計算され得る。このアルゴリズムは、x、y、およびz行列の立体適合(cubic fit)に基づく。法線を形成するために、斜めのベクトルが演算され、交差され得る。各頂点を通過し、上方および下方の平滑化表面で終端する、表面法線に平行な線分を使用して、中央表面に垂直な方向における紙製品試料の厚さを決定することができる。
三次元相対繊維密度は、2つの寸法が1ピクセルであり、第3の寸法が頂点を通る2つの外部平滑化表面から延びる線分の長さである正四角柱を仮定することにより、中央表面に垂直な経路に沿って決定される。その体積内に含有される質量は、断層撮影データセットからのグレーレベル値により示されるような有限質量を有するボクセルとして決定される。したがって、頂点における最大相対密度は、線分に沿ったボクセルの全てが255のグレーレベル値を有する場合、1に等しい。セルロース繊維のセル壁に対する最大値は、1.50g/cmとみなされる。
三次元繊維密度の便利な表現は、試料の面外変形の程度を示すために円滑化中央表面を使用して四次元で繊維密度をマッピングし、三次元密度をマップ内の各場所での値を有するスペクトルプロットとして示すことにより形成することができる。これらのマップは、最大値が1である相対密度として示すことができ、または、示されたように最大が1.50g/cmであるセルロースの密度に正規化され得る。そのような繊維密度マップの一例を、図10に示す。
上述の技術に従って作成されたグレースケール繊維密度マップを、図11に示す。この図において、ドーム構造の下流MD側、すなわちドーム構造の「先頭側」に形成されたドーム構造の一部を囲んだボックスAが描かれている。また、ドーム構造の上流MD側、すなわちドーム構造の「末尾側」に形成されたドーム構造の一部を囲んだボックスBが描かれている。密度マップは上述の技術に従って形成されているため、より暗い影のエリアは、より高い密度を表し、より明るい影のエリアは、より低い密度を表す。密度プロファイルマップを構築するために使用されたデータから、ボックスAおよびBで囲まれたエリアの中央密度を決定し、比較することができる。
本発明による紙製品のドーム構造は、ドーム構造の異なるエリアにおいて繊維密度の実質的な相違を示すことが判明した。特に、ドーム構造の先頭側において形成された繊維密度に比べ、ドーム構造の末尾側においてより高い繊維密度が形成される。これは、図11に示される例において確認することができ、ボックスB内の末尾側に形成されたドーム構造の一部は、ボックスA内のドーム構造の先頭側に形成されたドーム構造の一部よりも明白に高い密度を有する。本発明の一実施形態によれば、ドーム構造の反対側におけるこの密度差は、説明したX線断層撮影技術を使用して決定された場合、約70%である。換言すれば、ドーム構造の先頭側は、ドーム構造の末尾側より70%低い繊維密度を有する。別の実施形態において、本発明による紙製品の密度差は、そのドーム構造の末尾側と先頭側との間で約75%の密度差を有する。
理論に束縛されないが、本明細書に記載の技術は、ドーム構造の対向する側面同士での顕著な密度差を可能にすると考えられる。特に、例えば上述の複数層ベルトにおける大きいサイズの開口による、より大きいドームの形成によって、クレープ加工操作中により多くの繊維が開口に流入し得る。この繊維の流れは、ドーム構造の先頭側においてより多くの繊維の乱れをもたらし、したがってより低い繊維密度をもたらす。また、ドーム構造の側壁の他の部分におけるより高い密度は、より高いキャリパをもたらし、さらに、側壁のより低密度の部分により、幾分柔らかい製品をもたらし得ると考えられる。
[紙製品の柔らかさおよびキャリパ]
任意の紙製品の重要な特性は、知覚される紙の柔らかさである。しかしながら、知覚される紙製品の柔らかさを改善するためには、紙製品の他の特性の品質を犠牲にする必要があることが多い。例えば、知覚される紙の柔らかさを改善するために紙製品のパラメーターを調節することは、しばしば、紙製品のキャリパを減少させる望ましくない副次的効果を有する。
知覚される紙製品の柔らかさは、紙製品の幾何平均(GM)引張係数に極めて相関し得ることが判明している。GM引張強度は、紙製品のMD引張強度およびCD引張強度の積の平方根として定義される。図12は、上述のベルト1および3から6を用いて、ならびに製紙プロセスにおけるクレープ加工操作に使用される当技術において知られた布で作製されたベースシートの、感覚的柔らかさとGM引張強度との間の相関を示す。感覚的柔らかさは、標準化された試験技術を使用して熟練した評価者により決定される、知覚される紙製品の柔らかさの尺度である。すなわち、感覚的柔らかさは、柔らかさの決定に関する経験を積んだ評価者により測定され、評価者は、紙を握り、知覚される紙の柔らかさを確定するための特定の技術に従う。感覚的柔らかさの数値が高いほど、知覚される柔らかさがより高い。図13に示されるベースシートに関連したデータにより示されるように、紙製品における明確な傾向として、紙製品のGM引張強度が減少するほど紙製品の感覚的柔らかさが増加し、その逆もまた成り立つ。
本発明による紙製品は、GM引張強度およびキャリパの優れた組合せを示す。すなわち、本発明の紙製品は、優れた柔らかさ(低GM引張強度)および嵩高さ(キャリパ)を有する。この特性の組合せを実証するために、ベルト1および3から6を使用して製品を作製し、Voith GmbH(Heidenheim、Germany)製の構造化布である44Gポリエステル布を使用して作製された紙製品と比較した。44G布は、製紙プロセスにおけるクレープ加工用の周知の布である。
ベルト1に対しては、図1に示される機械と同様の製紙機械において、表6に記載の開口条件で2回の試験を行った。北部針葉樹クラフト(NSWK)、針葉樹クラフト(SWK)、湿潤強度樹脂(WSR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびポリビニルアルコール(PVOH)は、示されたように略され得る。
Figure 0007160490000006
ベルト3に関して2回の試験を行い、ベルト4に関して2回の試験を行った。ベルト3および4に対する試験条件は表7に示され、試験は、図1に示される機械と同様の製紙機械で行った。
Figure 0007160490000007
図1に示されるものに類似した製紙機械構成においてベルト5を使用して、同様に2回の試験を行った。試験1では、100%NSWK完成紙料を均質モードで使用した。坪量は、16.8lb/rmを目標とした。空気側原料には計3.0lb/トンの剥離剤を添加し、ヤンキー側原料には剥離剤を添加しなかった。適正なヤンキー接着を確保するために、KL506 PVOHをヤンキーコーティング接着剤の一部として使用した。目標ベースシートキャリパは、可能な限り高い非カレンダーキャリパを生成し、次いでその結果を125ミル/8プライとなるまでカレンダー処理することにより達成された。550g/インチのCD湿潤引張強度は、精製と、湿潤強度樹脂およびカルボキシメチルセルロース(CMC)の添加とのバランスを取ることにより達成された。初期精製設定は45HPであり、湿潤強度樹脂およびCMCの初期使用量は、それぞれ25および5lb/トンであった。ベルト5を使用した試験2は、試験1と同じであったが、但し、100%Naheola SWKの完成紙料を使用した。
ベルト5に対する試験1および2のそれぞれにおいて、10個のカレンダーロールおよび2つの非カレンダーロールを回収した。ベルト5に関する試験の操作条件および処理パラメーターを、表8に示す。
Figure 0007160490000008
図1に示されるものに類似した製紙機械構成を用いてベルト6を使用し、4回の試験を行った。第1のセットの試験では、80%Naheola SSWK/20%Naheola SHWKを均質モードで使用した。坪量は、試験1の場合16.8lb/rm、試験2の場合21.0lb/rm、試験3の場合25.5lb/rmを目標とする。原料には剥離剤を添加しなかった。布クレープ加工およびリールクレープ加工は、20%および2%に設定し、吸引ボックスの前のシートの湿度は、標準状態(すなわち約57%)に設定した。適正なヤンキー接着を確保するために、KL506 PVOHをヤンキーコーティング接着剤の一部として使用した。目標ベースシートCD湿潤引張強度(600g/インチ)は、精製と、湿潤強度樹脂およびCMCの添加とのバランスを取ることにより達成された。初期精製設定は45HPに設定し、湿潤強度樹脂およびCMCの初期使用量は、それぞれ25および5lb/トンであった。目標CD湿潤引張強度を達成するために、精製を調節した。非カレンダーキャリパが160ミル/8プライを下回り、目標CD湿潤引張強度が精製の増強によりまだ達成されていなかった場合、より多くの湿潤強度樹脂およびCMC(2:1の比)を添加して、目標CD湿潤引張強度を達成した。乾燥引張強度は変動させた。各試験において、2つの非カレンダーロールを回収した。
ベルト6を用いた次のセットの試験は、クレープ加工速度の点を除いて、最初のセットの試験と同様であった。坪量は、25.5lb/rm、または最大ベースシートキャリパをもたらした坪量に固定した。原料には剥離剤を添加しなかった。布クレープ加工の目標値は、試験4の場合10%、試験5の場合15%、試験6の場合20%であった。リールクレープ加工は、2%に設定し、吸引ボックスの前のシート湿度は、標準状態(すなわち約57%)に設定した。適正なヤンキー接着を確保するために、PVOHをヤンキーコーティング接着剤の一部として使用した。目標ベースシートCD湿潤引張強度(600g/3”)は、精製と、湿潤強度樹脂およびCMCの添加とのバランスを取ることにより達成された。初期精製設定は45HPに設定し、湿潤強度樹脂およびCMCの初期使用量は、それぞれ25および5lb/トンであった。目標CD湿潤引張強度を達成するために、精製をまず調節した。非カレンダーキャリパが160ミル/8プライを下回り、目標CD湿潤引張強度が精製の増強によりまだ達成されていなかった場合、より多くの湿潤強度樹脂およびCMC(2:1の比)を添加して、目標CD湿潤引張強度を達成した。乾燥引張強度は変動させた。各試験において、2つの非カレンダーロールを回収した。
ベルト6を用いた次のセットの試験は、シート湿度の点を除いて、最初のセットの試験と同様であった。坪量は、25.5lb/rm、または最大ベースシートキャリパをもたらした坪量に固定した。原料には剥離剤を添加しなかった。布クレープ加工およびリールクレープ加工は、それぞれ20%および2%に設定した。吸引ボックスの前のシート湿度は、試験7の場合標準状態(すなわち約57%)、試験8の場合59%、試験9の場合61%に設定した(表3)。シート湿度は、Metso Oyj(Helsinki、Finland)によるADVANTAGE(商標)VISCONIP(商標)の負荷(すなわち、550psi、325psi、および200psi)を設定することにより、またはクレープ加工ロールの前に水の噴霧を追加することにより調節した。適正なヤンキー接着を確保するために、PVOHをヤンキーコーティング接着剤の一部として使用した。目標ベースシートCD湿潤引張強度(600g/3”)は、精製と、湿潤強度樹脂およびCMCの添加とのバランスを取ることにより達成された。初期精製設定は45HPであり、湿潤強度樹脂およびCMCの初期使用量は、それぞれ25および5lb/トンであった。目標CD湿潤引張強度を達成するために、精製をまず調節した。非カレンダーキャリパが160ミル/8プライを下回り、目標CD湿潤引張強度が精製の強化によりまだ達成されていなかった場合、より多くの湿潤強度樹脂およびCMC(2:1の比)を添加して、目標CD湿潤引張強度を達成した。乾燥引張強度は変動させた。各試験において、2つの非カレンダーロールを回収する。
ベルト6を用いた最終セットの試験において、160ミル/8プライのキャリパ、600g/インチのCD湿潤引張強度、20%のMD延伸を有する最良の1重ベースシートを生成するために、坪量、布クレープ加工、および吸引ボックスの前のシート湿度の最良の組合せを選択した。1重タオルに変換するために、10個の親ロールを回収した。
ベルト6に関する試験の操作条件および処理パラメーターを、表9に示す。
Figure 0007160490000009
ベルト1および3から6、ならびに構造化布を用いた試験からのデータを、図13に示す。結果は、複数層ベルトを使用した試験において生成された紙製品の、GM引張強度およびキャリパの優れた組合せを実証している。具体的には、結果は、ベルト3から5を用いて作製された製品が、少なくとも約245ミル/8プライのキャリパを有していたことを示している。ベルト3から6により作製された製品は、約3500g/3インチ未満のGM引張強度を有していた。ベルト3を使用して生成された製品は、約270ミル/8プライ超のキャリパ、および約3100g/3インチ未満のGM引張強度を有し、したがって、キャリパおよび柔らかさの両方の点で特に良好な製品を提供することにさらに留意されたい。また、図14に示される結果は、キャリパおよびGM引張強度の組合せの点で、布を用いて作製された製品と比較した複数層ベルトを用いて作製された紙製品の優秀さを実証している。布を使用して生成された紙製品は、ある範囲のGM引張強度を有していたが、布を用いて作製された紙製品はいずれも、約240ミル/8プライを大きく超えるキャリパを有していなかった。上で詳細に説明されたように、複数層ベルトを使用して作製された紙製品によって、構造布を使用して生成され得るものより大きいドーム構造が形成され得る。より大きいドーム構造は、一方で、紙製品により大きいキャリパを提供する。したがって、図14に示されるように、複数層ベルトを用いて作製された製品は、布を使用して作製された製品より高いキャリパを有していた。
要約すると、図13に示される結果は、複数層ベルトを用いて作製され得る本発明の紙製品が、構造化布を用いて作製されたベースシートより大きいキャリパおよびより高度の柔らかさを有していたことを実証している。当業者によって確実に理解されるように、キャリパおよび柔らかさは共に、多くの紙製品の重要な特性である。したがって、本発明による紙製品は、非常に魅力的な特性の組合せを含む。
[ベースシートおよび変換された紙特性]
さらなるベースシートおよび最終製品をベルト5および6から作製し、これらのベースシートおよび最終製品の特性を決定した。これらの試験において、上述のベルト5および6を用いた柔らかさおよびキャリパの試験において使用されたものと同じ一般操作手順を使用した。この一連の試験において、完成紙料およびカレンダー処理を変更したが、形成されたベースシートの特性を表10に示す。表10において、T1完成紙料は、100%NSWK完成紙料を指し、T2完成紙料は、80%Naheola SSWK/20%Naheola SHWK完成紙料を指すことに留意されたい。
Figure 0007160490000010
この一連の試験のさらなる態様として、表10に示されるベースシートを、最終ペーパータオル製品に変換した。この変換プロセスは、52のシート数および0.14インチのシート長さでの、THVSモードにおける米国意匠特許第648,137号(その開示は、本願に引用してその全体を援用する)に示されるエンボスパターンを使用したエンボス加工を含んでいた。4/1と記された試験では、エンボス深度は、約0.065から約0.072インチまで様々であった。表10における他の試験では、エンボス深度は0.070インチに設定した。組となるロールニップの幅は、試験の全てにおいて13mmに設定し、試験ベースシートは、0.019インチボンド幅×27ボンド/ブレードを有する穿孔ブレードを使用して作製された。変換された最終製品の特性を、表11に示す。
Figure 0007160490000011
表11に示される最終ペーパータオル製品の特性のほとんどは、現在利用可能なペーパータオルの特性と同等またはそれを超える。しかしながら、留意すべきは、ペーパータオルのキャリパが、全般的に現在提供されているペーパータオルのキャリパを大幅に超えることであった。上で概略的に議論されたように、紙製品のキャリパは、柔らかさに反比例する。最終ペーパータオルの柔らかさおよび吸収性は、表11に示され、感覚的柔らかさ、GM引張強度、およびSAT容量により示されるように、他のペーパータオル製品の柔らかさより若干低かったが、それにもかかわらず、柔らかさは、製品の非常に大きいキャリパを考慮すると非常に良好であった。また、留意すべきは、最終ペーパータオル製品のGM破壊係数であった。紙製品のGM破壊係数は、製品の強度の良い指標である。表9に示される最終ペーパータオル製品は、優れたGM破壊係数を示した。
[ベルト特性に関連する紙特性]
別の一連の試験において、紙製品に対するベルト材料の様々な特性の効果を決定した。第1の一連の試験では、タオルグレード製品において生成されるキャリパに対する、本発明による複数層ベルト材料における開口の体積の効果を決定した。また、結果を、タオルグレード製品の形成における、一体型(ポリマー)ベルト構成における開口の体積の効果と比較した。上述のように、タオルグレード製品は、概して、約33lbs/連の坪量および約225ミル/8シートのキャリパを有する。これらの試験において、本発明による複数層ベルト材料を使用してベースシートを形成し、一体型ベルト材料を使用してペーパータオルグレードベースシートを形成した。複数層ベルト材料は、上部層の上部表面に、約2.0mmから約9.0mmの範囲の開口を有していた。一体型ベルト材料は、約1.0mm未満の開口を有していた。複数層ベルト材料および一体型ベルト材料における開口のサイズは、上の開示と一致し、これは、複数層ベルト構造が一体型ベルト構造より大きい開口を許容することを示すことに留意されたい。すなわち、製紙プロセスにおいて実際に使用される一体型ベルト構造においては大きい開口を形成することができないことを考慮して、複数層ベルト材料における開口をより大きくした。この一連の試験は、実験室内で、上で概説されたような処理条件により試験的な製紙機械で行った。
図14は、複数層および一体型ベルトの上部層における開口の体積に対する、生成されたタオルグレードベースシートのキャリパに関する試験の結果を示す。図から分かるように、一体型ベルト材料を使用して生成されたキャリパより高いキャリパが、複数層ベルト材料を使用して生成された。これらの結果は、ベルト構造における大きな体積の開口が、タオルグレード製品により大きいキャリパをもたらし得ることを実証している。特に、約9.0mmの開口を有する構成を有する複数層ベルト材料は、約220ミル/8シートのキャリパを生成したが、これは、一体型ベルトを使用して生成されたキャリパのどれよりも、約100ミル/8シート大きかったことが留意されるべきである。当業者によって確実に理解されるように、この複数層ベルト材料により生成された著しく大きいキャリパを使用して、極めて魅力的なタオル製品を生成することができた。
別の一連の試験において、ティッシュグレード製品において生成されるキャリパに対する、本発明による複数層ベルトにおける開口の体積の効果を決定した。また、結果を、ティッシュグレード製品の形成における、一体型(ポリマー)ベルト構成における開口の体積の効果と比較した。上述のように、ティッシュグレード製品は、概して、約27lbs/連の坪量および約140ミル/8シートのキャリパを有する。これらの試験において、本発明による複数層ベルト材料を使用して実験室内でベースシートを形成し、一体型ベルト材料を使用してティッシュペーパーグレードベースシートを実験室内で形成した。複数層ベルト材料は、上部層の上部表面に、約1.5mmから約5.5mmの範囲の開口を有する構成を有していた。一体型ベルト材料は、約1.0mm未満の開口を有する構成を有していた。複数層ベルト材料および一体型ベルト材料における開口のサイズは、上の開示と一致し、これは、複数層ベルト構造が一体型ベルト構造より大きい開口を許容することを示すことに留意されたい。この一連の試験は、実験室内で、上で概説されたような処理条件により試験的な製紙機械で行った。
これらの試験の結果を、図15に示す。図から分かるように、より大きい開口を有する複数層ベルト材料は、一体層ベルト材料を使用して作製されたティッシュグレードベースシートにおいて見られるキャリパに匹敵するキャリパを有するティッシュグレードベースシートを生成することができた。複数層ベルト材料は、タオルグレード試験(図14)に関して見られるような増加したキャリパを提供しなかったが、それでもなお、複数層ベルト材料は、ティッシュグレード製品の形成に有利となり得る。例えば、上述のように、複数層ベルト構成により提供され得るより大きい開口によって、製品におけるドーム構造内のより高い繊維密度が可能となる。さらに、複数層ベルト構造は、一体型と同等のティッシュグレードキャリパを生成する一方で、上述の全ての理由から、一体型構造より強靭で丈夫となり得る。したがって、複数層ベルト構造を用いて生成されるティッシュグレードキャリパは、一体型ベルト構造を使用して生成されるキャリパと同じ範囲内にあるとしても、複数層ベルト構造は、それでもなお、ティッシュグレード製紙プロセスにおいて使用された場合、ある特定の利点を有し得る。
さらに別の一連の試験において、異なる開口サイズを有する異なる複数層クレープ加工ベルト材料を使用して、タオルグレード製品を生成した。4つのベルト材料を試験したが、ベルト材料は、上述の様式で上部層に円形開口を有していた。ベルト材料Aは、0.5mmのPET下部層に取り付けられた1.0mmのポリウレタン上部層を有し、ベルト材料Bは、0.5mmのPET下部層に取り付けられた0.5mmのポリウレタン上部層を有し、ベルト材料Cは、0.5mmのポリウレタン上部層および布下部層を有し、ベルト材料Dは、1.0mmのポリウレタン上部層および布下部層を有していた。ベルト材料のそれぞれの種類に対して、異なるサイズの開口を有する構成を試験したが、開口は、直径約0.75mmから約2.25mmの範囲であった。この一連の試験は、実験室内で、製紙プロセスを模擬する真空シート成型を使用して行った(実際にクレープ加工操作は行わない)。
これらの試験の結果を図16に示すが、これは、上部開口(穴)直径と、ベルト材料のそれぞれに対して生成されたキャリパとの間の関係を示す。図から分かるように、各ベルト材料における開口サイズが増加するほど、ベルト材料を用いて作製された得られる紙製品のキャリパが増加した。これもまた、上の開示と一致し、少なくともタオルグレード製品に関して、複数層ベルトの上部層における開口サイズが増加すると、より大きいキャリパが生成され得ることを示している。図中のデータはまた、複数層ベルト構造の異なる厚さが、紙製品における比較的同等のキャリパを生成し得、1.0mmの上部層が時折0.5mmの上部層より若干大きいキャリパを生成することを示している。
本発明は、ある特定の具体的な例示的実施形態において説明されたが、本開示に照らして、多くの追加的変形および変化形が当業者に明らかである。したがって、本発明は、具体的に説明されたもの以外の様式でも実践され得ることを理解されたい。したがって、本発明の例示的実施形態は、全ての点において例示的であり、限定的ではないものとしてみなされるべきであり、本発明の範囲は、上記説明によってではなく、本出願により支持され得る任意の請求項およびその均等物により決定されるべきである。
本明細書に記載の装置、プロセスおよび製品は、トイレットペーパーおよびペーパータオル等の市販の紙製品の製造に使用され得る。したがって、装置、プロセスおよび製品は、紙製品産業に関連した数多くの用途を有する。

Claims (17)

  1. 上側および下側を有するセルロース繊維の吸収性シートであって、
    前記吸収性シートの前記上側から突出した複数の中空ドーム領域であって、前記中空ドーム領域のそれぞれは、中空ドーム領域の縁部上の少なくとも1つの第1の点から、前記中空ドーム領域の反対側の縁部上の第2の点までの距離が、少なくとも0.5mmであるような形状である中空ドーム領域と、
    前記吸収性シートの前記中空ドーム領域を相互接続するネットワークを形成する接続領域と
    を備え、
    前記中空ドーム領域の機械方向(MD)における先頭側の繊維密度は、前記中空ドーム領域の前記機械方向(MD)における末尾側の繊維密度よりも70%以上低く、
    単層の前記吸収性シートが少なくとも140ミル/8シートのキャリパを有することを特徴とする吸収性シート。
  2. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記中空ドーム領域の前記縁部上の前記少なくとも1つの第1の点から、前記中空ドーム領域の前記反対側の前記縁部上の前記第2の点までの前記距離が、1.0mmから4.0mmであることを特徴とする吸収性シート。
  3. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記中空ドーム領域の前記縁部上の前記少なくとも1つの第1の点から、前記中空ドーム領域の前記反対側の前記縁部上の前記第2の点までの前記距離が、1.5mmから3.0mmであることを特徴とする吸収性シート。
  4. 請求項3に記載の吸収性シートであって、前記中空ドーム領域の前記縁部上の前記少なくとも1つの第1の点から、前記中空ドーム領域の前記反対側の前記縁部上の前記第2の点までの前記距離が、2.5mmであることを特徴とする吸収性シート。
  5. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記複数の前記中空ドーム領域の前記縁部が、円形であり、前記中空ドーム領域の前記縁部上の少なくとも1つの第1の点から、前記中空ドーム領域の前記反対側の前記縁部上の第2の点までの前記距離が、円形の前記縁部の直径であることを特徴とする吸収性シート。
  6. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記中空ドーム領域の前記少なくとも1つの第1の点に隣接した前記接続領域における局所的坪量が、前記中空ドーム領域の前記第2の点に隣接した前記接続領域における局所的坪量よりも大きいことを特徴とする吸収性シート。
  7. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記複数の前記中空ドーム領域のそれぞれが、少なくとも0.1mmの体積を画定することを特徴とする吸収性シート。
  8. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記複数の前記中空ドーム領域のそれぞれが、0.1mmから3.5mmの体積を画定することを特徴とする吸収性シート。
  9. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記複数の前記中空ドーム領域のそれぞれが、0.2mmから1.4mmの体積を画定することを特徴とする吸収性シート。
  10. 請求項1に記載の吸収性シートであって、少なくとも145ミル/8シートのキャリパを有し、3500g/3インチ(460g/cm)未満のGM引張強度を有することを特徴とする吸収性シート。
  11. 請求項1に記載の吸収性シートであって、前記単層の前記吸収性シートは少なくとも245ミル/8シートのキャリパを有し、および前記吸収性シートは3100g/3インチ(406.8g/cm)未満のGM引張強度を有することを特徴とする吸収性シート。
  12. 請求項10に記載の吸収性シートであって、前記中空ドーム領域の前記少なくとも1つの第1の点に隣接した前記接続領域における局所的坪量が、前記中空ドーム領域の前記第2の点に隣接した前記接続領域における局所的坪量よりも大きいことを特徴とする吸収性シート。
  13. 上側および下側を有するセルロース繊維の吸収性シートであって、
    前記吸収性シートの前記上側から突出した複数の中空ドーム領域であって、前記中空ドーム領域のそれぞれは、少なくとも1.0mmの体積を画定する中空ドーム領域と、
    前記吸収性シートの前記中空ドーム領域を相互接続するネットワークを形成する接続領域とを備え、
    前記中空ドーム領域の機械方向(MD)における先頭側の繊維密度は、前記中空ドーム領域の前記機械方向(MD)における末尾側の繊維密度よりも少なくとも70%以上低く、
    単層の前記吸収性シートが少なくとも140ミル/8シートのキャリパを有し、前記吸収性シートは3500g/3インチ(460g/cm)未満のGM引張強度を有することを特徴とする吸収性シート。
  14. 請求項13に記載の吸収性シートであって、前記複数の中空ドーム領域のそれぞれが、1.0mmから10.0mmの体積を画定することを特徴とする吸収性シート。
  15. 請求項13に記載の吸収性シートであって、少なくとも140ミル/8シートのキャリパを有することを特徴とする吸収性シート。
  16. 請求項13に記載の吸収性シートであって、少なくとも245ミル/8シートのキャリパ、および3100g/3インチ(406.8g/cm)未満のGM引張強度を有することを特徴とする吸収性シート。
  17. 請求項13に記載の吸収性シートであって、前記中空ドーム領域の縁部上の少なくとも1つの第1の点に隣接した前記接続領域における局所的坪量が、前記中空ドーム領域の反対側の縁部上の第2の点に隣接した前記接続領域における局所的坪量よりも大きいことを特徴とする吸収性シート。
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