特許法第30条第2項適用 平成30年11月28日~令和1年11月25日 東芝コンシューママーケティング株式会社等に販売 平成31年4月5日~令和1年11月25日 東芝コンシューママーケティング株式会社等に販売 平成31年4月25日~令和1年11月25日 https://www.toshiba-lifestyle.co.jp/living/air_conditioners/pickup/f_series/air_conditioning.htmlに掲載 平成31年4月5日~令和1年10月1日 https://www.toshiba-lifestyle.co.jp/support/catalog/に掲載 令和1年10月1日~令和1年11月25日 https://www.toshiba-lifestyle.co.jp/support/catalog/に掲載
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る室内機の概略の断面図を示している。実際の空気調和機は、室内機に室外機が接続されて動作するが、ここでは室内機のみを示す。室内機10は、筐体20、熱交換器30、フィルター40、フィルター掃除機構50、横流ファン60、上ルーバー70、下ルーバー80、板状構造体90等から構成されている。なお、上ルーバー70および下ルーバー80が本発明における風向板に相当する。
室内機10は、上下方向の寸法に対して左右方向の寸法が長い横長状をなす筐体20の内部に、熱交換器30、フィルター40、フィルター掃除機構50、横流ファン60等を備えて構成されている。また、筐体20の上部手前には、室内の空気を筐体内に吸い込むための空気吸込み口20aが設けられている。また、筐体20の下部には、筐体内に吸い込まれた空気が熱交換機30を介して温度調整され、横流ファン60により室内に吹き出すための空気吹出し口100が形成されている。空気吹出し口100は、上ルーバー70、下ルーバー80により開閉可能に構成されている。これにより、筐体20の傾斜面と上ルーバー70との間には上側流路が形成され、上ルーバー70と下ルーバー80の間には、下側流路が形成される。そして、板状構造体90は、上側流路の風を拡散させて、後述するような「ジェット気流」を生成するために設けられる、例えば合成樹脂から成る板状部材である。この筐体20は、図示しない室内の壁面に取り付けられる。なお、図1では、右側が壁面側であり、左側が室内側である。
筐体20の内部には、空気吸込み口20aから空気吹出し口100にわたって通風路が形成されている。この通風路に、熱交換器30及び横流ファン60が配置されている。横流ファン60は、図1の長手方向、つまり左右方向に沿う回転軸60aを中心として回転可能に設けられている。室内機10は、通風路内において横流ファン60を回転させることにより、室内の空気を空気吸込み口20aから吸い込み、空気吹出し口100から吹き出すように送風する。空気吸込み口20aから吸い込まれた空気は、通風路内を流れる過程で熱交換器30によって熱交換され、周知の暖房運転時では温風として、周知の冷房運転時では冷風として空気吹出し口100から室内に吹き出される。
上ルーバー70と下ルーバー80は、空気吹出し口100に開閉可能に設けられる。上ルーバー70は上側流路を開閉し、下ルーバー80は下側流路を開閉する。空気吹出し口100から吹出される風を拡散させる板状構造体90は、上ルーバー70の近くの筐体20内に収納可能に取り付けられる。上ルーバー70、下ルーバー80、および板状構造体90は、回動軸を有し、後述するモータにより開閉制御される。フィルター掃除機構50は、板状構造体90および熱交換器30よりも前方であって、筐体20の内側に配置され、利用者のボタン操作に応じて、フィルター40に付着したゴミ等の付着物をクリーニングする。即ち、筐体20に流入する空気は、フィルター40を通ることで、空気中のホコリやカビ胞子などの微粒子がフィルター上に捕捉される。このフィルター40をフィルター掃除機構50で定期的に掃除することで、人がホコリやカビ胞子の増大に伴う気流のにおいに気づかなかったとしても、フィルター40を清潔に保つことができる。
図2は、室内機10の前面パネルを開いた状態を示す図である。図1で示した構成以外に、空気吹出し口100の上ルーバーの上側には、左右風向ルーバー110が設けられている。また、自動運転ボタン120が空清ユニット130の中央付近に設けられている。また、空清ユニット130の下側にはフィルターをクリーニングした際の付着物を収納するダストボックス140が設けられている。図2では、板状構造体90は、筐体の奥側に収納された状態(閉じられた状態、換言すると上側流路を塞いでいない状態)を示している。
図3は、実施形態に係る板状構造体90の詳細な構成を示す図である。板状構造体90は、小さな貫通孔がたくさん空いた板状のパーツである。図3(a)に示すように、板状構造体90は、胴体部90aと取り付け側部90bとで構成されている。胴体部90aの長手方向は、図2の空気吹出し口100の横方向の長さとほぼ同じ長さ(例えば、約670mm程度)を有し、短手方向は空気吹出し口100の上側流路の縦方向の最大開口幅よりも短い長さ(例えば、約25mm程度)を有している。また胴体部90aの厚さは、十分な強度を備えるように所定の厚さ(例えば、約4.5mm)を有している。取り付け側部90bは、板状構造体90の長手方向の取付側であり、胴体部90aより少し太い幅を有している。取り付け側部90bの端部(例えば、右側)には、モータの駆動軸が挿入される孔が形成されている。
図3(b)に示すように、板状構造体90の胴体90aには、ジェット気流を吹出すことが可能なように多数の貫通孔90cが設けられている。実施形態では、長手方向に3列の貫通孔90cが千鳥状に配列(整列)されて設けられている。この多数の貫通孔90cにより板状構造体90を通過する気流を、細かく分散させることができる。すなわち、板状構造体90で空気吹出し口100の上側流路を塞いだとしても、細かなジェット気流の吹出しが可能となる。また、図3(c)に示すように、各貫通孔90cの孔は、表側および裏側の外側の孔径90eが中央(内側)の孔径90dより大きい孔となっている。例えば、表裏側の孔径は3~5mmに形成され、中央側の孔径は表裏側の孔径の50%~90%程度の大きさに形成されている。言い換えると、胴体90aの表側および裏側は円錐形状の貫通孔90cが形成されている。このように、気流の入口側と出口側(吹出し側)の孔径90eを中央(内側)の孔径90dより大きくすることで、空気吹出し口100から吹出す気流をより拡散させることができる。なお、貫通孔90cの形状は、丸孔のほか、角孔やスリット状の孔でも構わない。また、貫通孔90cの配列は、3列に限られず、さらに千鳥状の配列にも限られない。
図4は、実施形態に係る板状構造体90の取り付け形状を示す図である。図4(a)は、上ルーバー70、下ルーバー80、および板状構造体90を開けた状態の正面図である。図4(b)は、上ルーバー70、下ルーバー80、および板状構造体90を開いた状態(換言すると上側流路を塞いだ状態)の横側から見た図である。正面中央部には、温冷熱センサー150、明るさサーチセンサー160が設けられている。図4から明らかなように、板状構造体90が開いた状態では、空気吹出し口100の上側流路を板状構造体90によって塞がれ、多数の貫通孔から細かなジェット気流が吹出される使用状態が形成される。
図5は、実施形態に係る板状構造体90によるジェット気流の吹出し原理を示す図である。板状構造体90が作動すると、図5(b)のように、空気吹出し口100の上側流路を塞ぐ形になり、貫通孔90cを通して出る風がジェット状の気流に変化する。即ち、図5(a)に示すように、横流ファン60によって吹出された気流は、上ルーバー70から板状構造体90に向けて吹出されると、多数の小さな貫通孔90cを通過することで、細かな「ジェット気流」が生成される。そして、多数の小さな貫通孔90cを通過することで、気流の流速は早くなる。その結果、周囲の空気を巻き込む性質が発揮されて、ジェット内の空気をかき混ぜる性質(作用)が発生する。一方、下ルーバー80側には板状構造体90が設けられていないので、通常の風(冷風又は温風)が吹出される。
その結果、図5(b)に示すように、ジェット気流が下ルーバー80から吹出される下側の気流を引き込み、かき混ぜ作用によって風の固まりを砕くことで、人が体感しにくい風に変化することが分かった。その砕かれた柔らかい風が人体に注がれることになるので、ユーザ(利用者)は快適な空調環境を得ることができる。
図6は、板状構造体90による効果を評価したもので、室内機を動作(冷房運転)させて1分後の温度分布を示している。図6(a)は、板状構造体90が無い場合の温度分布を示し、右側は板状構造体90を設けた場合の温度分布を示している。図6(b)の板状構造体90を設けた場合の温度分布では、図6(a)の温度分布に比べ、低温部分(白い部分)が上下に広がっていることが分かる。即ち、図6(a)では、室内機から所定距離の位置において、局所的に冷風があたり、部分的に低温になり易い一方、図6(b)では、広範囲に冷風があたり、部分的に低温になり過ぎることを抑制できると言える。これにより、人が冷えすぎて不快に感じることを抑制しつつ、温度を所定の設定温度に到達させ易くすることができる。
図7は、実施形態に係る室内機10の動作を制御する制御回路の構成を示す図である。制御回路200は、制御部(室内機10を制御する機能(アプリケーション)を組み込んだマイクロプロセッサで構成される)210によって装置全体の動作が制御される。制御部210は、上下風向板モータ駆動回路220、板状構造体モータ駆動回路230、ファンモータ駆動回路240、タイマー250、リモコン装置270の受信部260等と接続されており、これらの装置を制御する。なお、図7には実施形態に関係しない他の構成要素については、省略している。
温冷熱センサー150は、室内機10が据付けられる室内の壁や床を含む構造物の輻射温度や、人体の表面温度の値を測定するセンサーであり、例えば、輻射温度計から構成される。明るさサーチセンサー160は、室内機10が据付けられる室内の明るさの値を測定するセンサーである。温度センサー170は、室内機10が据付けられる室内の温度を測定するセンサーである。湿度センサー180は、室内機10が据付けられる室内の湿度を測定するセンサーである。
自動運転時には、運転開始から所定時間したならば温冷熱センサー150による不在検知が作動する。制御部210は、温冷熱センサー150を用いて人体の表面温度(体表温度とも言う)、および輻射温度を検知すると、検知した表面温度、輻射温度に加え室温、温度、風量のパラメータを併せて、室内に居る人体の快適度を複数段階(例えば、寒いレベルから暑いレベルまで8段階)にリアルタイムで判定する。そして、制御部210は、過去の運転状況の蓄積データ等を参照して、運転モード、温度、風量等をAI制御して快適な環境を利用者に提供するよう運転する。また制御部210は、温冷熱センサー150により不在検知した場合、時間経過に応じて段階的に運転能力を下げて運転する。また制御部210は、温冷熱センサー150により人体(発熱体)を検知した場合、元の運転に切り替えて運転する。さらに、制御部210は、明るさサーチセンサー160により室内の明るさを検知し、夏は暗くなると省エネ冷房運転、冬の昼間の明るいときは省エネ暖房運転を自動で実施することができる。
上下風向板モータ駆動回路220は、上ルーバー70を開閉するモータM1、および下ルーバー80を開閉するモータM2の駆動回路である。板状構造体モータ駆動回路230は、板状構造体90を開閉するモータM3の駆動回路である。ファンモータ駆動回路240は、横流ファン60を回転するモータFMの駆動回路である。タイマー250は、各種動作の時刻を計数する時計である。受信部260は、制御部210がリモコン装置270からの赤外線信号を受信する通信装置である。なお、制御部210は、各種表示ランプ280によって室内機10の動作状況を表示している。
実施形態では、リモコン装置270に快適運転を操作する特定(例えば、「快適」)ボタン270aと、停止ボタン270bが設けられている。この「快適」ボタン270aをユーザ(利用者)が操作すると、各センサー150~180の1つ又は複数の測定値に基づいて快適運転が開始され、その快適運転の1つとして、制御部210は板状構造体90を開けて上側流路を塞ぐ動作を実行する。これにより、図5に示した柔らかい風が人体に注がれることになるので、ユーザに快適な空調環境を提供できる。
図8は、室内機10を動作させる前の上ルーバー70、下ルーバー80、および板状構造体90の初期位置を示す図である。図9は、上ルーバー70と下ルーバー80を所定の開位置まで開けて、空気吹出し口100を形成した図である。図10は、板状構造体90を所定の開位置まで開けた状態を示す図である。図11は、上ルーバー70を板状構造体90に向けて移動した状態を示す図である。図12は、リモコン装置270の特定(「快適」)ボタン270aの操作を行った時の室内機の動作を示すフローチャートである。図13は、リモコン装置270とランプ表示の表示例を示す図である。図14は、制御部210による快適運転機能の構成を示すブロック図である。図15は、図14の動作を示すフローチャートである。
以下、図1乃至図15を参照して、実施形態に係る空調システム及び室内機の動作を説明する。
まず図8に示すように、動作開始前の初期位置では、室内機10の上ルーバー70、下ルーバー80、および板状構造体90は、共に閉じられた状態で位置する。なお、板状構造体90が閉じられた状態では、筐体内の収納部90fに収納されて、上側流路の気流の流れを妨げることがないように位置決めされている。つまり、板状構造体90は、筐体20の上ルーバー70の上面に形成されている収納部90fに、板状構造体90と上ルーバー70の羽部とが対峙した状態で収められている。
そして、リモコン装置270から電源ONの赤外線信号を室内機10の受信部260に向けて送信すると、室内機10の電源が入り、動作が開始する。制御部210は、上下風向板モータ駆動回路220を介してモータM1,M2を駆動して、図9に示すように、上ルーバー70と下ルーバー80を所定の開位置まで開けて、空気吹出し口100を形成する。このとき、板状構造体90は、まだ閉じられた状態にある。上ルーバー70と下ルーバー80を開位置まで開き終えたタイミングで、制御部210は、ファンモータ駆動回路240を介して横流ファン60を回転駆動する。
横流ファン60の回転駆動により、筐体20の空気吸込み口20aおよびフィルター40を介して筐体外部から空気が筐体内部に流入し、熱交換器30の周囲を流れる。熱交換器30は、内部を流れる冷媒により加熱もしくは冷却されているため、熱交換器30の周囲を流れる空気も加熱もしくは冷却される。この加熱もしくは冷却された空気は、筐体20および上ルーバー70と下ルーバー80により区切られた2つの流路を通って、筐体の外の任意の場所に向かって気流として流れる。従って、図9に示した動作状態は、通常の室内機10の使用形態(第1の動作モード)である。図9に示した動作状態において、制御部210は、リモコン装置270の操作に応じて上ルーバー70および下ルーバー80の角度を任意に設定できる。板状構造体90で上側流路を塞がない場合(第1の動作モード)は、気流に対する抵抗が小さくなるため、より多い空気流量を流したい場合や、ファンの消費電力を節約したい場合に有効となる。
図9に示した通常の動作状態において、ユーザがリモコン装置270の特定(「快適」)ボタン270aを操作すると、制御部210は図12に示すフローチャートに示す動作を開始する。まず制御部210は、「快適」ボタン270aの操作に応じて、受信部260を介してリモコン装置270からの赤外線信号を受信し、「快適」ボタン270aの信号か否かを判断する(S100)。制御部210は、「快適」ボタン270aの赤外線信号を受信したと判断した場合(S100のYes)、温冷熱センサー150、明るさサーチセンサー160、温度センサー170、湿度センサー180等から得られる値に基づいて、ユーザにとって快適と感じられる風を発生するように室内機10を動作させる(S110)。即ち、S110の快適運転にあっては、人体の表面温度、周りの輻射温度、室温、湿度、昼夜などを総合的に判断して、その状況に応じて快適な運転を提供するものであるので、その運転内容は室内機10の設定に任せられる。
そして制御部210は、快適運転の一つとして、板状構造体90を開いた運転とするか否かを判断する(S120)。制御部210は、板状構造体90を開いた運転と判断した場合、後述する図10、図11に示すように、板状構造体90を開けて上側流路を塞いで、ジェット気流を発生させてマイルドな風が送風されるようにする(S130)。即ち、図11に示す運転は、新気流運転(すなわち、第2の動作モード)となる。上記S100で、「快適」ボタンの信号を受信しない場合(S100のNo)、制御部210はリモコン装置270からの指定条件で室内機10を運転する(S140)。S140で、リモコン装置270からの指定条件で室内機10を運転している間に、ユーザによって「快適」ボタン270aが押された場合(S150のYes)、上記したS110-S120-S130が実行される。
一方、S120で板状構造体90を開いた運転(すなわち、第2の動作モード)としない場合(S120のNo)、引き続き人体の表面温度、周りの輻射温度、室温、湿度、昼夜などを総合的に判断して行う快適運転を継続し、「停止」ボタン270bが押されると、その快適運転を停止する(S160)。また、S150で「快適」ボタン270aが押されない場合(S150のNo)は、リモコン装置270からの指定条件での通常運転を継続し、「停止」ボタン270bが押されると、その通常運転を停止する(S160)。なお、制御部210は、「快適」ボタン270aの信号を受信して新気流運転とした場合、図13に示すように、表示ランプ280に「新気流運転マーク」280aを表示して、ユーザに使用状態を報知する。
上記S130においては、制御部210は、板状構造体モータ駆動回路230を介してモータM3を駆動する。すると、図10に示すように、板状構造体90を所定の開位置(ほぼ垂直位置)まで開ける。この時、板状構造体90と上ルーバー70との間には隙間300が生じている。次に、制御部210は、上下風向板モータ駆動回路220を介してモータM1を駆動して、図11に示すように、上ルーバー70を上方に向けて少し回動移動させて(持ち上げて)、板状構造体90と上ルーバー70との間の隙間300が小さくなる位置に位置決めする。これにより、図5に示したような「ジェット気流」が発生できる状態(新気流運転)に設定することができる。なお、板状構造体90と上ルーバー70との間の隙間300は、全部塞ぐものであっても構わない。すなわち、上側流路を塞いだ状態において、板状構造体90と上ルーバー70との間の隙間300は、吹き出す気流の減速の程度、又は流量に応じて適宜に設定できる。従って、図11に示した新気流運転は、快適な空調環境を提供する使用形態(第2の動作モード)となる。
新気流運転においては、風量/上下および左右のルーバーの風向は自動設定にて動作することが好ましいが、風量/風向を設定できるようにしても構わない。また、新気流運転を解除したい場合は、「停止」ボタン270bを押すことで解除できるが、新気流運転が設定時間(例えば、60分)を経過すると自動的に快適運転に戻るようにしても構わない。
このように実施形態では、「快適」ボタン270aを操作に基づく快適運転の一つとして、新気流運転が実行される。すると、上側流路を遮るように貫通孔90cが設けられた板状構造体90が配置される。これにより、上側流路に流入した空気は板状構造体90の流路が小さい貫通孔90cを通って流れることになり、流速が増大したジェット状の噴流状の流れとなる。この噴流状の流れ(ジェット気流)は、貫通孔90cの面積や数を変化させることで、下流側の広がり具合や、減衰の程度を調整することができる。
そして、図5で説明したように、下側の流路を流出した気流は、通常の空調機と気流と同様になるが、板状構造体90の貫通孔90cを調整して、上側流路から流出したジェット気流の流れを拡大させて下側の流路を流れる気流と混合させることで、下側流路から流出した気流の減衰の程度を調整することができる。すなわち、板状構造体90の貫通孔90cを調整することで、上側流路からの気流および下側流路からの気流の両方の減衰の程度を調整することができる。そして、人体に当たる恐れがある距離において、十分減衰して流速が低下するように貫通孔90cを設計配置すれば、人体に当たる際の不快感を低減させることができる。これにより、部屋の中に複数の人が居た場合でも、特定の人だけではなく、全員に通常の気流が当たることを抑制でき、不快感を覚える人の数を低減できる。また、下側流路により気流の流量を確保でき、所定の設定温度に到達させ難くなることを抑制できる。さらに、人体に気流が当たりにくくする場合と比べて、気流のにおいに気づき易くなり、フィルターの汚れに気づき易くなる。なお、第2の動作モードは、冷房運転時および暖房運転時の両方で作動させることもできるが、特に冷房運転時に不快感を覚える人が多いため、冷房運転時のみで作動させるようにしても良い。
実施形態の空調システムによれば、ユーザのリモコン装置270からの操作により、快適な風を得ることができる。特に、図11に示す新気流運転の場合は、室内機の板状構造体90で塞がれた上側流路に流入した空気は、板状構造体90に設けられた貫通孔90cを通ることでジェット気流となる。ジェット気流の流れは、広がりや減衰の程度を貫通孔90cの大きさや数により調整できるため、板状構造体90が設けられていない流路を通る気流と干渉するような広がりとすれば、横流ファン60によって発生される気流を人体に当たる前に減衰させることができる。
このように、ジェット気流の流れとすることにより、気流を周囲の空気との混合を促進して意図的に減衰させることで、人体に気流を向けた場合も、人体に気流が到達する際には、十分流速が落ちた気流にすることができる。
図14は、図12のS120で板状構造体90を開ける新気流運転と判断する制御部210の機能構成を示すブロック図である。制御部210は、測定値取得部400、パラメータ取得部410、算出部420、判定部430、モータ駆動回路440を備える。測定値取得部400は、温冷熱センサー150、明るさサーチセンサー160、湿度センサー170、湿度センサー180から、室内機10が据付けられる室内の壁や床を含む構造物の輻射温度、人体の表面温度、温度、湿度、明るさ等の測定値を取得する。パラメータ取得部410は、室内機10に設定された測定値に対する目標設定値等を取得する。算出部420は、後述する快適指数を算出する。判定部430は、室内機10の利用者が快適であるか不快であるかを判定する。判定部430は、その判定に応じて板状構造体モータ駆動回路230やファンモータ駆動回路240等を含むモータ駆動回路440を動作させる。
図15は、図14に示した新気流運転の動作を示すフローチャートである。
まず、測定値取得部400が、温冷熱センサー150で測定した室内機10が据付けられる室内の壁や床を含む構造物の輻射温度の値や、室内に居る人体の表面温度の値を取得する。同時に、明るさサーチセンサー160で測定した室内機10の周囲の明るさの値、温度センサー170で測定した室内機10の周囲の環境温度の値、湿度センサー180で測定した室内機10の周囲の環境湿度の値、それぞれを取得する(S200)。なお、温冷熱センサー150、明るさサーチセンサー160、湿度センサー170、湿度センサー180を、以後センサー群と総称する。
次に、パラメータ取得部410は、室内機10から流れる空気の加熱と冷却のどちらを行っているかを示すモード設定値、測定値に応じて快適を提供する室温の目標設定値、測定値に応じて快適を提供する気流の風量の目標設定値等のパラメータを取得する(S210)。なお、これらの設定値を、以後パラメータ群と総称する。
次に、算出部420は、測定値取得部400が取得した測定値と、パラメータ取得部410が取得したパラメータ群とに基づいて、快適指数を算出する(S220)。
ここで快適指数について説明する。快適指数は、室内機10の利用者の快適さを示す値として、例えば、室内に居る人体の表面温度の測定値と、その測定値に応じて快適を提供する室温のパラメータとの差から算出される。また、快適指数は、室内に居る人体の表面温度の測定値、および室内機10が据付けられる室内の壁や床を含む構造物の輻射温度の測定値と、2つの測定値に応じて快適を提供する室温のパラメータとの差から算出しても構わない。また、快適指数は、室内に居る人体の表面温度の測定値、室内機10が据付けられる室内の壁や床を含む構造物の輻射温度の測定値と、および室内の明るさの測定値と、3つの測定値に応じて快適を提供する室温のパラメータとの差から算出しても構わない。さらに、パラメータは、室内の温度や湿度を加味して総合的評価された値である。つまり、パラメータは、1つの測定値だけではなく、複数の測定値から総合的評価された値であっても構わない。更に、過去から蓄積した設定値データや、利用者の利用環境等を加味して総合的評価された値であっても構わない。
次に、判定部430は、快適指数について、室内機10の利用者が快適であるか不快であるかを判定するために予め設定されている閾値(快適閾値)を超えているかどうかを判定する(S230)。
快適指数が快適閾値を超えている場合(S230のYes)、判定部430はモータ駆動回路440を介して板状構造体90が上側流路を塞いでマイルドな風を送る(第2の動作モード)ように板状構造体モータ駆動回路230を動作させる(S240)。例えば、人体の表面温度が低い場合、気流による不快感の低減を優先して、第2の動作モードで運転することができる。
一方、快適指数が快適閾値を超えていない場合(S230のNo)、モータ駆動回路440は、板状構造体90が閉じられた状態(第1の動作モード)となるように板状構造体モータ駆動回路230を動作させる(S250)。例えば、人体の表面温度が高い場合、温度を下げることを優先して、第1の動作モードで運転する。
このように、室内機10が据付けられる室内の人体の表面温度等から、利用者が快適であるか否かを判定することによって、室内機10の気流が当たって不快と感じていると判定した場合は、第2の動作モードとする。これにより、気流に対する抵抗を小さくしてファンの消費電力を節約できる。減衰させたマイルドな気流が人体に当たることで、利用者に不快感を低減させることができる。
実施形態の変形例として、板状構造体90の設置位置を変更させる機構としては、板状構造体90を回転軸で保持し、その回転軸をモータのような回転機構に接続する構造としたが、他の折り畳み機構であってもよい。また、上記の実施形態では、快適運転において、快適指数に基づいて動作モードを変更可能にしたが、これには限られない。例えば、温冷熱センサー150を人感センサーとして機能させ、人の有無の感知により、動作モードを変更することもできる。具体的には、人がいないと判断された場合には、第2の動作モードの運転を中止し、省エネモードの運転を実行する構成を採用することができる。
ところで、上記の実施形態では、2つのルーバー(上ルーバー70および下ルーバー80)により、流路が上側流路と下側流路に区画されたが、これには限られない。例えば、下側に流路を形成するルーバーを設けずに、流路の途中に1つのルーバーを設けることで当該流路を2つに分割することもできる。また、上記の実施形態では、空気吹出し口100が上側流路と下側流路との2つの流路に分割されたが、これには限られない。例えば、空気吹出し口を3つ以上の流路に分割することができる。この場合、少なくとも1つ以上の流路を開閉可能に板状構造体が配置される。すなわち、複数の流路を備え、これらの流路のうち少なくとも1つ以上の流路に、流路を塞いだ状態と塞いでいない状態とに変換可能な板状構造体を配置して、複数の流路のうち少なくとも1つ以上の流路を板状構造体により塞ぐとともに、板状構造体の有無に関わらず、残りの流路を板状構造体により塞がずに気流が通過できるモードを備えていればよい。これにより、板状構造体により塞がれた流路を通過した気流と、板状構造体により塞がれていない流路を通過した気流とを混合することができ、ジェット気流を発生させることができる。その結果、気流の流速を減衰させることができ、人が不快に感じることを抑制できる。
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。