JP7156114B2 - クランク軸の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、クランク軸の製造方法に関する。
例えば自動車に搭載されるレシプロエンジンは、燃料の燃焼によるピストンの往復運動を回転運動に変換するため、クランク軸を備える。クランク軸は、クランクジャーナルと、クランクピンと、クランクアームと、を有する。クランクジャーナルは、クランク軸の主軸部であり、軸心周りに回転する。クランクピンは、クランクジャーナルに対して偏心して配置され、コネクティングロッドを介してピストンに接続される。クランクアームは、クランクジャーナルとクランクピンとを連結する。
クランク軸は、例えば、型鍛造によって製造することができる。クランク軸を型鍛造によって製造する場合、まず、加熱されたビレットを予備成形して荒地を得る。次に、荒打ち及び仕上げ打ちを行って荒地から仕上げ鍛造品を成形し、この仕上げ鍛造品に対してバリ抜きを実施する。その後、バリなしの仕上げ鍛造品の必要箇所を圧下し、仕上げ鍛造品を最終製品の寸法及び形状に整形する。
クランク軸の製造プロセスに関して、従来、様々な提案がなされている。例えば、特許文献1は、仕上げ打ち工程においてクランクピンに孔部を形成する方法を提案する。特許文献1において、荒地(予備成形品)は、仕上げ打ちに用いられる金型のキャビティよりも小さくなるように成形される。そのため、仕上げ打ち工程において予備成形品が金型内に配置された時点では、予備成形品と金型との間にクリアランスが存在する。しかしながら、予備成形品のクランクピンにパンチが挿入されることにより、このクリアランスに材料が充填される。特許文献1によれば、パンチの挿入によってクランクピンに孔部が形成されるため、クランク軸の軽量化を図ることができる。また、金型の閉塞空間内に材料を充填させて鍛造を行うため、クランク軸の寸法精度を向上させることができる。
特許文献2は、クランクアームに設けられたカウンターウエイトを矯正する方法を提案する。特許文献2では、バリなしの仕上げ鍛造品に対し、ツイスト工程でひねりを加え、リストライク工程で曲がり矯正を施す。その後、クランクピンを挟んで隣り合うカウンターウエイトの間に中間治具を挿入し、これらのカウンターウエイトを両側から加圧治具で加圧拘束することにより、カウンターウエイトの形状を矯正する。
特許文献3は、クランク軸本体のクランクアームにカウンターウエイトを接合する方法を提案する。特許文献3では、クランク軸本体及びカウンターウエイトがそれぞれ冷間鍛造で成形される。カウンターウエイトは、クランクアームに対し、溶接及び塑性締結で接合される。特許文献3によれば、溶接による接合部が破壊された場合であっても、塑性締結による接合部によってカウンターウエイトがクランクアームから分離するのを防ぐことができる。
国際公開第2010/110133号 特開2006-247730号公報 特開2012-97888号公報
特許文献3では、カウンターウエイトがクランクアームと別個に成形される。これに対し、特許文献1及び2では、カウンターウエイトはクランクアームと一体として成形される。この場合、仕上げ打ち工程では、クランクアーム及びカウンターウエイトの縦軸を境に二分割する金型が用いられる。この金型から仕上げ鍛造品を取り出しやすくするため、カウンターウエイトの表面には抜け勾配が与えられる。
カウンターウエイトの表面に抜け勾配が与えられることにより、カウンターウエイトの厚みは幅方向の中央部で増加する。すなわち、型鍛造時の抜け勾配に起因してカウンターウエイトが増量する。カウンターウエイトの増量に伴い、クランク軸も増量する。クランク軸の増量は、レシプロエンジンが搭載される自動車の燃費向上及び軽量化の観点から好ましくない。このため、カウンターウエイトには軽量化が求められている。
カウンターウエイトは、クランク軸の回転バランスを保つ錘である。よって、カウンターウエイトには、軽量化と同時に、所望のモーメントを確保することも要求される。
本開示は、カウンターウエイトを軽量化しつつ、カウンターウエイトのモーメントを確保することができるクランク軸の製造方法を提供することを課題とする。
本開示に係るクランク軸の製造方法は、工程a)と、工程b)と、を備える。工程a)では、型鍛造で成形され、バリが除去された仕上げ鍛造品を準備する。仕上げ鍛造品は、クランクジャーナルと、クランクピンと、クランクアームと、カウンターウエイトと、を有する。クランクピンは、クランクジャーナルに対して偏心する。クランクアームは、クランクジャーナルとクランクピンとを連結する。カウンターウエイトは、クランクアームと一体に成形されている。工程b)では、平面視で剣状の突起部を表面に有する工具を、カウンターウエイトの長手方向で仕上げ鍛造品の中心軸側から仕上げ鍛造品の外側に向かって移動させながら、突起部を先端から順にカウンターウエイトに押し当てることにより、カウンターウエイトの幅方向で外側に向かってカウンターウエイトの材料を流動させる。
本開示に係るクランク軸の製造方法によれば、カウンターウエイトを軽量化しつつ、カウンターウエイトのモーメントを確保することができる。
図1は、実施形態に係るクランク軸の製造方法において工程a)で準備される仕上げ鍛造品の側面図である。 図2は、図1に示す仕上げ鍛造品に含まれるクランクウェブの正面図である。 図3は、図2に示すクランクウェブの底面図である。 図4は、実施形態に係るクランク軸の製造方法において工程b)で使用される加工装置の模式図である。 図5は、図4に示す加工装置に含まれる金型の下面図である。 図6は、図4に示す加工装置に含まれる工具の上面図、側面図、及び背面図である。 図7Aは、工程b)における加工装置の動作を説明するための模式図である。 図7Bは、工程b)における加工装置の動作を説明するための別の模式図である。 図7Cは、図7Bに示す状態の加工装置における工具の動作を示す模式図である。 図7Dは、図7Bに示す状態の加工装置における工具の動作を示す別の模式図である。 図7Eは、工程b)における加工装置の動作を説明するための、さらに別の模式図である。 図8Aは、工程b)においてカウンターウエイトが加工される様子を説明するための模式図である。 図8Bは、工程b)においてカウンターウエイトが加工される様子を説明するための別の模式図である。 図9は、工程b)の後のクランクウェブの背面図である。 図10は、図9に示すクランクウェブの底面図である。 図11は、工具のストロークとカウンターウエイトの重心の位置との関係を示すグラフである。
実施形態に係るクランク軸の製造方法は、工程a)と、工程b)と、を備える。工程a)では、型鍛造で成形され、バリが除去された仕上げ鍛造品を準備する。仕上げ鍛造品は、クランクジャーナルと、クランクピンと、クランクアームと、カウンターウエイトと、を有する。クランクピンは、クランクジャーナルに対して偏心する。クランクアームは、クランクジャーナルとクランクピンとを連結する。カウンターウエイトは、クランクアームと一体に成形されている。工程b)では、平面視で剣状の突起部を表面に有する工具を、カウンターウエイトの長手方向で仕上げ鍛造品の中心軸側から仕上げ鍛造品の外側に向かって移動させながら、突起部を先端から順にカウンターウエイトに押し当てることにより、カウンターウエイトの幅方向で外側に向かってカウンターウエイトの材料を流動させる(第1の構成)。
第1の構成によれば、工程b)で用いられる工具の表面には、平面視剣状の突起部が設けられている。この突起部は、カウンターウエイトに押し当てられ、カウンターウエイトの材料を幅方向の外側に流動させる。これにより、カウンターウエイトの重心が幅方向の中央部側から両端部側に移動してクランク軸の回転軸から遠ざかり、回転軸周りにおけるカウンターウエイトのモーメントが大きくなる。すなわち、第1の構成に係る製造方法で製造されたクランク軸では、一般的な型鍛造で製造されたクランク軸と比較して、モーメントが同程度であればカウンターウエイトの重量が小さい。したがって、第1の構成によれば、カウンターウエイトを軽量化しつつ、カウンターウエイトのモーメントを確保することができる。
突起部は、先端部と、本体部と、を有することができる。先端部の幅及び高さは、工具の移動方向で後方に向かって拡大する。本体部は、当該移動方向で先端部の後端に接続される。本体部は、一定の幅及び高さを有する(第2の構成)。
第2の構成によれば、工程b)において工具を移動させたとき、まず、突起部の先端部がカウンターウエイトに押し当てられる。先端部は、幅及び高さが後方に向かって漸次拡大するテーパ状をなす。この先端部により、カウンターウエイトの材料を幅方向の両外側に向かって円滑に案内することができる。
工程b)では、工具が仕上げ鍛造品から抜け出るまで工具を移動させてもよい(第3の構成)。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
[クランク軸の製造方法]
本実施形態に係るクランク軸の製造方法は、典型的には、熱間鍛造によるクランク軸の製造方法である。本実施形態に係るクランク軸の製造方法は、クランク軸の仕上げ鍛造品を準備する工程a)と、当該仕上げ鍛造品を加工する工程b)と、を備える。以下、各工程について説明する。
工程a)
本実施形態に係るクランク軸の製造方法では、まず、工程a)において、クランク軸の仕上げ鍛造品を準備する。仕上げ鍛造品は、一般的な型鍛造によって成形される。すなわち、加熱されたビレットを予備成形して荒地を得た後、この荒地の荒打ち及び仕上げ打ちを行ってバリ付きの仕上げ鍛造品を得る。その後、仕上げ鍛造品のバリ抜きを実施し、バリなしの仕上げ鍛造品を得る。
図1は、バリ抜き後の仕上げ鍛造品10を模式的に示す側面図である。仕上げ鍛造品10は、最終製品であるクランク軸とほとんど同一の寸法及び形状を有する。仕上げ鍛造品10は、複数のクランクジャーナル11と、複数のクランクピン12と、複数のクランクアーム13と、複数のカウンターウエイト14と、を有する。図1では、4気筒エンジン用のクランク軸の仕上げ鍛造品10を例示する。ただし、本実施形態に係る製造方法で製造されるクランク軸は、4気筒エンジン用のクランク軸に限られない。
複数のクランクジャーナル11は、それぞれ、仕上げ鍛造品10の中心軸X1を軸心とする概略円柱状をなす。中心軸X1は、仕上げ鍛造品10から製造されるクランク軸の回転軸となる。クランクジャーナル11は、中心軸X1に沿って配列され、クランク軸の主軸部を構成する。
複数のクランクピン12は、それぞれ概略円柱状をなし、クランクジャーナル11に対して偏心する。すなわち、複数のクランクピン12は、中心軸X1の周りに所定の位相差で配置される。本実施形態において、回転軸方向で両端に位置するクランクピン12は、中央の2つのクランクピン12と180°の位相差を有する。
クランクアーム13の各々は、回転軸方向においてクランクジャーナル11とクランクピン12との間に配置される。クランクアーム13は、クランクジャーナル11とクランクピン12とを連結する。クランクアーム13は、回転軸方向と交差する表面131,132を有する。表面131,132のうち、一方の表面131にはクランクジャーナル11が接続され、他方の表面132にはクランクピン12が接続される。本実施形態では、必要に応じ、回転軸方向に並ぶ8枚のクランクアーム13を、フロント16側からフランジ17側に向かって順に、第1~第8クランクアーム13a~13hと称して区別する。
カウンターウエイト14の各々は、クランクアーム13と一体で成形される。必要な場合、第1~第8クランクアーム13a~13hの各カウンターウエイト14を第1~第8カウンターウエイト14a~14hと称して区別する。本実施形態では、全てのクランクアーム13がカウンターウエイト14を一体で有する。ただし、カウンターウエイト14は、一部のクランクアーム13にのみ設けられていてもよい。各カウンターウエイト14の形状は、他のカウンターウエイト14と同一であってもよいが、他のカウンターウエイト14と異なっていてもよい。
カウンターウエイト14は、回転軸方向と交差する表面141,142を有する。一方の表面141は、クランクアーム13のクランクジャーナル11側の表面131と連続する。他方の表面142は、クランクアーム13のクランクピン12側の表面132と連続する。カウンターウエイト14の表面142のうち中心軸X1側の部分には、凹状の肉抜き部143が形成されている。
一体で成形されたクランクアーム13及びカウンターウエイト14は、一般に、クランクウェブ15と称される。図2は、クランクウェブ15をクランクジャーナル11側から見た図である。図3は、クランクウェブ15をカウンターウエイト14側から見た図である。
図2を参照して、本実施形態では、説明の便宜上、クランクウェブ15において、クランクジャーナル11側の面を正面、クランクピン12側の面を背面と称する。クランクウェブ15において、クランクピン12の中心軸X2及び仕上げ鍛造品10の中心軸X1に直交する軸を縦軸Zと定義する。縦軸Zが延びる方向が長手方向であり、縦軸Z及び中心軸X1に垂直な方向が幅方向である。長手方向に関してクランクアーム13側を上、カウンターウエイト14側を下といい、幅方向の両側を左右という場合がある。
図2に示すカウンターウエイト14は、クランクアーム13から下方に向かって拡幅する。カウンターウエイト14は、例えば、正面視で概略扇状をなす。図3を参照して、カウンターウエイト14の表面141,142には、抜け勾配が与えられている。すなわち、カウンターウエイト14の表面141,142は、それぞれ、幅方向の中央から左右に向かって下降傾斜している。このため、カウンターウエイト14の厚み(回転軸方向の寸法)は、幅方向の中央部側で大きく、幅方向の両端部側で小さい。
工程b)
工程b)では、バリなしの仕上げ鍛造品10を加工する。より詳細には、表面141,142に抜け勾配が存在するカウンターウエイト14を加工する。
まず、カウンターウエイト14を加工するための装置について、図4を参照しつつ説明する。図4は、工程b)で使用される加工装置20の模式図である。
図4では、加工装置20が加工する仕上げ鍛造品10を二点鎖線で示す。図4において、仕上げ鍛造品10は、第3~第6カウンターウエイト14c~14fが手前側、残りのカウンターウエイト14が奥側に位置するように、加工装置20内に配置されている。すなわち、仕上げ鍛造品10が加工装置20内に配置された状態で、カウンターウエイト14の長手方向は加工装置20の奥行き方向と一致し、カウンターウエイト14の幅方向は上下方向と一致する。以下、説明の便宜上、図4に示す加工装置20において、手前側の面及び奥側の面を、それぞれ正面及び背面という場合がある。
加工装置20は、例えば、プレス機械である。加工装置20は、スライド21aと、ベッド21bと、金型ホルダ22a,22bと、金型23と、アクチュエータホルダ24と、複数の工具30と、を有する。
スライド21aは、金型ホルダ22aを上方から支持する。スライド21aは、図示しないガイドに沿って昇降可能に構成されている。スライド21aは、例えば、機械式、油圧式、又は液圧式等の駆動機構によって駆動することができる。ベッド21bは、金型ホルダ22bを下方から支持する。スライド21a、ベッド21b、及び金型ホルダ22a,22bの基本構成は、公知のプレス機械におけるスライド、ベッド、及び金型ホルダと同様である。そのため、本実施形態ではこれらに関する詳細な説明を省略する。
金型23は、仕上げ鍛造品10を最終製品の形状及び寸法に整形する。このため、金型23は、最終製品の形状及び寸法に対応するキャビティを有する。ただし、金型23は、キャビティの一部を開放する複数のスリット231を有する。本実施形態では、4つのスリット231が金型23に設けられている。スリット231の各々は、上下方向に延びている。各スリット231内には、工具30が配置される。
金型23は、上型23aと、下型23bと、を有する。上型23aは、金型ホルダ22aの下面に取り付けられる。下型23bは、金型ホルダ22bの上面に、アクチュエータホルダ24を介して取り付けられる。アクチュエータホルダ24は、複数のアクチュエータ241を保持している。
図5は、金型23の下面図である。図5に示すように、金型23において、複数のスリット231は、回転軸方向で各々異なる位置に設けられる。複数のスリット231のうち、回転軸方向で両端に位置するスリット231は、金型23の背面から中心軸X1側に凹の形状を有する。残りのスリット231は、金型23の正面から中心軸X1側に凹の形状を有する。スリット231の各々は、金型23の下面から上面まで延びている。
複数のアクチュエータ241は、加工装置20の奥行き方向、すなわち、クランクウェブ15の長手方向に伸縮可能である。複数のアクチュエータ241は、金型23のスリット231に対応して設けられる。アクチュエータ241の各々は、スリット231内の工具30の下端部に接続される。アクチュエータ241は、例えば、油圧シリンダ、エアシリンダ、サーボモータ及びボールスクリューを有する電動アクチュエータ等といった公知の直動アクチュエータである。
図4に戻り、工具30の各々は、アクチュエータホルダ24から金型23を貫通して上方に延びる。金型ホルダ22aには、工具30の上端部を収容するため、複数のスリット221が設けられている。
工具30は、カウンターウエイト14を加工するための部材である。各工具30の両表面31は、カウンターウエイト14に対向する。各工具30は、下端部に接続されたアクチュエータ241が伸張することにより、仕上げ鍛造品10の外側に向かって移動する。
図6は、工具30の上面図(平面図)、側面図、及び背面図である。図6では、説明の便宜上、両表面31を工具30の上面及び底面とし、工具30が仕上げ鍛造品10の外側に向かって移動する際、表面31の前側及び後ろ側に位置する面をそれぞれ前面32及び後面33という。表面31の側方で前面32と後面33とを接続する面は、側面34である。表面31、前面32、後面33、及び側面34は、概ね平坦な面である。表面31は、円弧面35を介して前面32に接続されている。以下、工具30が仕上げ鍛造品10の外側に向かう方向を移動方向といい、移動方向における前後左右を単に前後左右と表現する場合がある。
図6に示すように、工具30は、突起部36を有する。突起部36は、カウンターウエイト14(図4)に対向する各表面31上に設けられる。
突起部36は、表面31からカウンターウエイト14(図4)側に突出する。突起部36は、表面31上において、カウンターウエイト14の幅方向の中央部に対応する位置に配置されている。突起部36は、平面視で概ね剣状をなす。突起部36は、先端部361と、本体部362と、を含む。
先端部361は、表面31の前端部に形成されている。先端部361は、円弧面35と表面31との境界から後方に向かって延びる。先端部361の幅及び高さは、後方に向かって漸次拡大する。先端部361の幅とは、工具30の平面視で、移動方向と垂直な方向における先端部361の寸法をいう。先端部361の高さは、工具30の側面視で移動方向と垂直な方向における先端部361の寸法である。先端部361は、移動方向において長さLを有する。長さLは、適宜決定することができるが、例えば、20mm~40mm程度である。
先端部361は、工具30の平面視で概略三角形状をなす。すなわち、先端部361の各側縁3611は、工具30の移動方向に対して傾斜する。各側縁3611が移動方向となす角度θは、30°~45°に設定されることが好ましい。
先端部361は、全体にわたり、概略三角形状の横断面を有する。ここでいう横断面は、表面31に垂直な平面で切断したときの断面である。先端部361の横断面が概略三角形状であるため、先端部361には、三角形の頂点部分に相当する稜線3612が形成される。稜線3612は、工具30の移動方向に沿い、本体部362に向かって上昇する。
本体部362は、先端部361の後端に接続される。本体部362は、先端部361から後方に向かって延びている。本体部362は、全体にわたり、一定の幅W及び高さHを有する。幅Wは、工具30の平面視で、移動方向と垂直な方向における本体部362の寸法である。幅Wは、実質的に、先端部361の長さL及び角度θによって定まる。高さHは、工具30の側面視で移動方向と垂直な方向における本体部362の寸法である。高さHは、例えば、3mm~6mmとすることができる。
本体部362は、全体にわたり、概略三角形状の横断面を有する。よって、本体部362には、三角形の頂点部分に相当する稜線3622が形成される。稜線3622は、先端部361の稜線3612に連続し、工具30の移動方向に延びている。本体部362の各側縁3621は、先端部361の側縁3611に連続し、工具30の移動方向に延びている。
突起部36は、稜線3612,3622を含み表面31に垂直な平面に対し、実質的に対称な形状をなす。稜線3612,3622には、R面取り加工が施されていてもよい。
次に、図7A~図7Eを参照して、加工装置20を用いてカウンターウエイト14を加工する方法について説明する。図7A~図7Eは、工程b)でカウンターウエイト14を加工する際の加工装置20の動作を説明するための模式図である。
図7Aに示すように、まず、バリなしの仕上げ鍛造品10を加工装置20内に配置する。仕上げ鍛造品10は、下型23bの型割り面上にカウンターウエイト14の縦軸Z(図2)が位置するように、下型23bのキャビティ上に載置される。このとき、カウンターウエイト14は、中心軸X1の手前又は奥に位置付けられる。各工具30は、回転軸方向において隣り合うカウンターウエイト14の間に配置されている。
図7Aの例では、第3~第6カウンターウエイト14c~14fが中心軸X1よりも手前に位置付けられている。このため、第3~第6カウンターウエイト14c~14fに対応する工具30も、中心軸X1の手前に配置される。残りのカウンターウエイト14は、中心軸X1よりも奥に位置付けられている。よって、残りのカウンターウエイト14に対応する工具30は、中心軸X1の奥に配置される。
加工装置20内に仕上げ鍛造品10を配置したら、スライド21aを下降させる。これにより、図7Bに示すように、上型23aが下降して下型23bに接触する。すなわち、金型23が閉じられ、仕上げ鍛造品10の必要箇所が金型23によって圧下される。このとき、各工具30の上端部は、金型ホルダ22aのスリット221内に配置される。
図7C及び図7Dは、金型23が閉じられた後における工具30の動作を示す模式図である。図7C及び図7Dでは、工具30及びその周辺構成を下方から見た状態を示す。
図7Cを参照して、各工具30は、回転軸方向において隣り合うカウンターウエイト14の肉抜き部143の間に配置されている。各工具30の表面31は、カウンターウエイト14の表面142に対向する。各工具30には、アクチュエータ241が接続されている。金型23が閉じられた時点では、アクチュエータ241は圧縮状態にある。
図7Dを参照して、圧縮状態にある各アクチュエータ241を伸張させると、仕上げ鍛造品10の外側、すなわちカウンターウエイト14の長手方向で外側に向かって工具30が移動する。第3カウンターウエイト14cと第4カウンターウエイト14dとの間の工具30、及び第5カウンターウエイト14eと第6カウンターウエイト14fとの間の工具30は、加工装置20の正面側に向かい、金型23のスリット231及び金型ホルダ22b(図7B)のスリット221内を移動する。第1カウンターウエイト14aと第2カウンターウエイト14bとの間の工具30、及び第7カウンターウエイト14gと第8カウンターウエイト14hとの間の工具30は、加工装置20の背面側に向かい、スリット221,231内を移動する。
図8A及び図8Bは、工具30によるカウンターウエイト14の加工の様子を説明するための模式図である。図8Aを参照して、工具30の移動に伴い、この工具30の突起部36が先端から順にカウンターウエイト14に押し当てられる。具体的には、工具30がカウンターウエイト14の長手方向で外側に向かって移動を開始すると、まず、突起部36の先端部361が肉抜き部143(図7C)を通り過ぎ、カウンターウエイト14の表面に押し当てられる。カウンターウエイト14の材料は、先端部361によって押し分けられ、幅方向の中央部から両端部に向かって順次流動する。これにより、カウンターウエイト14の幅方向の中央部が薄肉化される。
工具30がさらに移動すると、突起部36の本体部362が肉抜き部143(図7C)を通過し、カウンターウエイト14の表面に押し当てられる。工具30は、図8Bに示すように、仕上げ鍛造品10から抜け出るまで移動する。
工具30が仕上げ鍛造品10から抜け出た後、図7Eに示すように、スライド21aとともに金型ホルダ22aを上昇させ、上型24aを下型24bから離間させる。その後、加工装置20から仕上げ鍛造品10を取り出す。これにより、工程b)におけるカウンターウエイト14の加工、及び仕上げ鍛造品10の整形が完了する。
図9及び図10は、それぞれ、工程b)の後のクランクウェブ15の背面図及び底面図である。図9及び図10を参照して、カウンターウエイト14のクランクピン12側の表面142のうち、幅方向の中央部には、凹部144が形成されている。すなわち、工程b)の後のカウンターウエイト14では、表面142から抜け勾配がなくなり、幅方向の中央部が薄肉化されている。凹部144は、工具30の突起部36(図6)の形状に対応した形状を有する。
[実施形態の効果]
本実施形態に係るクランク軸の製造方法では、バリを除去した後の仕上げ鍛造品10の中心軸X1側から外側に向かって工具30を移動させながら、工具30の突起部36を先端から順にカウンターウエイト14に押し当てる。これにより、カウンターウエイト14の材料が幅方向の両外側に流動し、カウンターウエイト14の幅方向の中央部が薄肉化される。よって、カウンターウエイト14の重心がクランク軸の回転軸から遠ざかり、回転軸周りにおけるカウンターウエイト14のモーメントが大きくなる。このため、カウンターウエイト14を増量せずに所望のモーメントを確保することが可能となり、カウンターウエイト14の軽量化及びモーメント確保の双方を実現することができる。
本実施形態では、工程b)において工具30を移動させたとき、まず、突起部36の先端部361がカウンターウエイト14に押し付けられる。先端部361は、工具30の移動方向の後方に向かって徐々に拡大する幅及び高さを有するため、カウンターウエイト14の材料を幅方向の中央部側から両端部側に向かって円滑に案内することができる。
図11を参照し、カウンターウエイト14の重心の移動についてより詳細に説明する。図11は、工具30のストロークとカウンターウエイト14の重心の位置との関係を示すグラフである。ここでは、突起部36の先端がカウンターウエイト14の表面への接触を開始する位置を原点とし、突起部36の先端が原点から長手方向の外側に進んだ距離[mm]を工具30のストロークStと定義する。
図11に示すように、ストロークStが大きくなるとともに、カウンターウエイト14の重心は幅方向の外側に移動する。このため、本実施形態のように、工程b)では、工具30が仕上げ鍛造品10を抜け出るまで工具30を移動させることが好ましい。ただし、工具30が仕上げ鍛造品10を抜け出る前に停止させ、工程b)におけるカウンターウエイト14の加工を終了することもできる。
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態では、工程b)において、カウンターウエイト14のクランクピン12側の表面142のみを加工する。しかしながら、工程b)では、カウンターウエイト14のクランクジャーナル11側の表面141のみを加工してもよいし、両表面141,142を加工してもよい。工程b)においてカウンターウエイト14の両表面141,142を加工する場合、カウンターウエイト14の両側に工具30を配置し、カウンターウエイト14の表面141,142各々に工具30の突起部36を押し当てればよい。
本実施形態では、工程b)は、一般的な鍛造クランク軸の製造プロセスにおける整形工程と同時に実施されている。しかしながら、工程b)は、整形工程とは別工程であってもよい。例えば、バリなしの仕上げ鍛造品10に対して工程b)を実施した後、通常の整形工程を実施することもできる。
10:仕上げ鍛造品
11:クランクジャーナル
12:クランクピン
13:クランクアーム
30:工具
31:表面
36:突起部
361:先端部
362:本体部

Claims (3)

  1. クランク軸の製造方法であって、
    a)型鍛造で成形され、バリが除去され、クランクジャーナルと、前記クランクジャーナルに対して偏心するクランクピンと、前記クランクジャーナルと前記クランクピンとを連結するクランクアームと、前記クランクアームと一体に成形されたカウンターウエイトと、を有する仕上げ鍛造品を準備する工程と、
    b)平面視で剣状の突起部を表面に有する工具を、前記カウンターウエイトの長手方向で前記仕上げ鍛造品の中心軸側から前記仕上げ鍛造品の外側に向かって移動させながら、前記突起部を先端から順に前記カウンターウエイトに押し当てることにより、前記カウンターウエイトの幅方向で外側に向かって前記カウンターウエイトの材料を流動させる工程と、
    を備える、製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法であって、
    前記突起部は、
    前記工具の移動方向で後方に向かって幅及び高さが拡大する先端部と、
    前記移動方向で前記先端部の後端に接続され、一定の幅及び高さを有する本体部と、
    を有する、製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法であって、
    前記工程b)では、前記工具が前記仕上げ鍛造品から抜け出るまで前記工具を移動させる、製造方法。
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