[第1の実施形態]
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)の電源を構成する電池システムに対して本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。以下に説明する実施形態の構成は、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)等の乗用車やハイブリッド鉄道車両といった産業用車両の電源を構成する蓄電装置の蓄電器制御回路にも適用できる。
以下の実施形態では、電池としてリチウムイオン電池を採用した車両制御システムを例に挙げて説明するが、車両制御システムに電池としてニッケル水素電池、鉛電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタ等を採用することもできる。また、以下の実施形態では単電池を直列に接続して組電池を構成しているが、単電池を並列接続したものを直列接続して組電池を構成してもよいし、直列接続した単電池を並列接続して組電池を構成してもよい。
図1は、本実施形態に係る電池システム100とその周辺の構成を含む車両制御システムの構成図である。電池システム100は、リレー300、310を介してインバータ400に接続され、リレー320、330を介して充電器420に接続されている。電池システム100は、組電池110と、単電池管理部120と、電流検知部130と、電圧検知部140と、組電池制御部(電池制御装置)150と、記憶部180とを備えている。
組電池110は、複数の単電池111によって構成される。単電池管理部120は、単電池111の状態を管理する。電流検知部130は、電池システム100に流れる電流を検知する。電圧検知部140は、組電池110の総電圧を検知する。組電池制御部150は、組電池110を制御するものであり、例えば組電池110の状態を管理する。
組電池制御部150は、単電池管理部120から単電池111の電圧及び温度を受信し、電流検知部130から電池システム100に流れる電流値を受信し、電圧検知部140から組電池110の総電圧値を受信する。組電池制御部150は、受信情報に基づいて組電池110の状態を検知する。組電池制御部150による組電池110の状態の検知結果は、単電池管理部120及び車両制御部200に送信される。
組電池110は、電気エネルギーの蓄積及び放出(直流電力の充放電)が可能な複数の単電池111によって構成されている。組電池110の単電池111は、所定の単位数毎にグループ分けされている。グループ分けされた各単電池111は、電気的に直列に接続されて単電池群112a、112bを構成している。単電池群112a、112bの単電池111の個数が同数でもよいし、単電池群112a、112bの単電池111の個数が異なっていてもよい。
単電池管理部120は、組電池110の単電池111の状態を管理する。単電池管理部120は、単電池群112毎に単電池制御部121を備えている。図1では、単電池管理部120には、単電池群112aに対応して単電池制御部121aが設けられ、単電池群112bに対応して単電池制御部121bが設けられている。各単電池制御部121a、121bは、それぞれ対応する単電池群112a、112bの単電池111の状態を管理すると共に単電池111の状態を制御する。
本実施形態では、説明を簡略化するために、4個の単電池111が電気的に直列接続されて各単電池群112a、112bが構成され、単電池群112a、112bが電気的に直列接続されて、合計8個の単電池111を備えた組電池110が構成されている場合を例にして説明する。
組電池制御部150と単電池管理部120は、フォトカプラに代表される絶縁素子170および信号通信手段160、162を介して信号を送受信する。絶縁素子170を設けるのは、組電池制御部150と単電池管理部120の動作電源が異なるためである。すなわち、単電池管理部120は組電池110からの電力によって動作するのに対して、組電池制御部150は車載補機用のバッテリ(例えば14V系バッテリ)からの電力によって動作する。絶縁素子170は、単電池管理部120の回路基板に実装されてもよいし、組電池制御部150の回路基板に実装されてもよい。システム構成によっては、絶縁素子170を省略することもできる。
組電池制御部150と単電池制御部121a、121bとの間の通信について説明する。単電池制御部121a及び単電池制御部121bが互いに接続され、電位が高い単電池群112aを管理する単電池制御部121a側から信号が受信され、電位の低い単電池群112bを管理する単電池制御部121b側から信号が送信されるようになっている。組電池制御部150から出力された信号が絶縁素子170および信号通信手段160を介して単電池制御部121aに送信される。単電池制御部121aから出力された信号は信号通信手段161を介して単電池制御部121bに送信される。単電池制御部121bから出力された信号は絶縁素子170および信号通信手段162を介して組電池制御部150に送信される。本実施形態では、単電池制御部121aと単電池制御部121bの間に絶縁素子170が設けられていないが、単電池制御部121aと単電池制御部121bが絶縁素子170を介して信号を送受信することもできる。
記憶部180は、組電池110の内部抵抗特性、満充電時の容量、分極特性、劣化特性、個体差情報、充電率(State Of Charge、SOC)特性と開放電圧(Open Circuit Voltage、OCV)特性の他、後述するセンサ温度及び電池の内部温度等の各種情報を記憶する。なお、本実施形態では、組電池制御部150及び単電池管理部120とは別体に記憶部180が設けられる構成にしたが、組電池制御部150又は単電池管理部120に記憶部180が設けられてもよい。
車両制御部200は、組電池制御部150から受信した情報を用いて、電池システム100にリレー300、310を介して接続されるインバータ400を制御する。また、車両制御部200は、組電池制御部150から受信した情報を用いて、電池システム100にリレー320、330を介して接続される充電器420を制御する。車両走行中には電池システム100がインバータ400に接続され、組電池110が蓄えているエネルギーを用いてモータジェネレータ410が駆動される。充電の際には電池システム100が充電器420に接続され、家庭用の電源又は電気スタンドからの電力供給によって組電池110が充電される。
充電器420は、家庭又は電気スタンドに代表される外部電源から組電池110への充電に用いられる。本実施形態では、充電器420が車両制御部200からの指令に基づいて充電電圧や充電電流等を制御するが、組電池制御部150からの指令に基づいて充電電圧や充電電流等を制御してもよい。また、充電器420は、車両の構成、充電器420の性能、使用目的、外部電源の設置条件等に応じて車両内部に設置されてもよいし、車両外部に設置されてもよい。
電池システム100を搭載した車両が始動する場合には、車両制御部200の管理下で、電池システム100がインバータ400に接続される。走行時には組電池110が蓄えているエネルギーを用いてモータジェネレータ410が駆動され、回生時にはモータジェネレータ410の発電電力によって組電池110が充電される。また、車両が家庭用又は電気スタンド等の外部電源に接続された場合には、車両制御部200の管理下で、電池システム100が充電器420に接続されて、組電池110が所定の条件になるまで充電される。組電池110に蓄えられたエネルギーは、次回の車両走行に利用されるか、車両内外の電装品等の駆動に利用される。さらに組電池110に蓄えられたエネルギーは、必要に応じて外部電源に放出されてもよい。
図2は、単電池制御部121の構成図である。単電池制御部121は、電圧測定回路122と、制御回路123と、信号入出力回路124と、温度測定部(温度センサ部)125とを備えている。電圧測定回路122は、各単電池111の端子間電圧を測定する。制御回路123は、電圧測定回路122及び温度測定部125から測定結果を受け取り、信号入出力回路124を介して組電池制御部150に送信する。なお、図2には記載していないが、単電池制御部121には、自己放電や消費電流のバラツキ等に伴い発生する単電池111間の電圧やSOCのバラツキを均等化する回路構成が設けられている。
温度測定部125は、温度センサ(不図示)によって単電池群112の表面温度又は環境温度であるセンサ温度を測定する。温度測定部125は、単電池群112全体として1つのセンサ温度を測定し、測定したセンサ温度を単電池群112の各単電池111の代表値として使用する。温度測定部125が測定したセンサ温度は、単電池111、単電池群112、又は組電池110の状態を検知するための各種演算に用いられる。なお、本実施形態では単電池制御部121に1つの温度測定部125が設けられているが、単電池制御部121には単電池111毎に温度測定するように単電池111毎に温度測定部125が設けられていてもよい。
また、図2には、温度測定部125が簡易的に示されている。温度測定部125は、測定対象に設置された温度センサを有し、温度センサから電圧として出力されたセンサ温度を測定して、制御回路123及び信号入出力回路124を介して単電池制御部121の外部にセンサ温度を出力する。単電池制御部121には、この一連の流れを実現する機能が温度測定部125として実装されている。なお、温度情報(電圧)の測定には、電圧測定回路122を用いることもできる。
図3は、組電池制御部150の構成図である。組電池制御部150は車両走行中の組電池の電流値、電圧値、温度に基づいて組電池110の状態や入出力可能な電力を決定する。組電池制御部150は、内部温度設定部500を備えている。組電池制御部150は、電池の劣化率(State Of Health、SOH)、SOC、OCVの演算部分や、許容電力の演算部分等によって構成される。内部温度設定部500は、連続内部温度演算部510と、初期内部温度演算部520と、許容電力演算部530と、状態判定部540とを有している。連続内部温度演算部510は電池システム100の運転中に電池の内部温度を演算し、初期内部温度演算部520は電池システム100の起動時に電池の内部温度を演算する。許容電力演算部530は、電池の内部温度に基づいて電池の許容電力を演算する。
状態判定部540は、電池の内部温度演算時に電池システム100が起動動作中(第2の切り替わり期間)a、連続運転中b、終了動作中(第1の切り替わり期間)cのいずれの状態かを判定する。この場合、状態判定部540は、今回の内部温度演算時(以下、今回演算時)の停止信号FLと前回の内部温度演算時(以下、前回演算時)の停止信号FL
1-zを比較する。電池システム100の起動動作中aは、イグニションキーオンによって電池システム100が停止中から起動するまでの動作を示す。電池システム100の連続運転中bは、イグニションキーがオン状態のままで電池システム100が運転を継続していることを示す。電池システム100の終了動作中cは、イグニションキーオフによって電池システム100が運転中から停止するまでの動作を示す。本実施形態の停止信号は、電池システム100の運転中にFL=1、電池システム100の停止直前にFL=0となるフラグ信号とする。電池システム100の起動動作中a、連続運転中b、終了動作中cは、次式(2)、次式(3)、次式(4)によって判定される。
状態判定部540に起動動作中aと判定された場合、初期内部温度演算部520が動作して、初期内部温度演算部520によってシステム再起動時の電池の内部温度Tin(ton)が演算される。初期内部温度演算部520から連続内部温度演算部510に内部温度Tin(ton)が出力され、連続内部温度演算部510は入力された内部温度Tin(ton)をそのまま外部に出力する。電池システム100に連続運転中bと判定された場合、連続内部温度演算部510が動作して、連続内部温度演算部510によってシステム運転中の電池の内部温度が演算される。電池システム100に終了動作中cと判定された場合、連続内部温度演算部510によって、終了時刻toff、終了時刻のセンサ温度Tsen(toff)、終了時刻の電池の内部温度Tin(toff)が記憶部180に書き込まれる。
図4は、連続内部温度演算部510の構成図である。連続内部温度演算部510は、電池内部の発熱量を演算し、センサ温度を用いて電池の内部温度を演算する。連続内部温度演算部510は、SOC、電流、センサ温度、電池の内部温度の前回演算値を入力として今回(現在)の内部温度を演算する。なお、センサ温度は、電池の表面温度や電池パック周辺の環境温度でもよい。また、センサ温度は、エンジンやインバータ等の電池を加熱するような熱源の温度でもよい。連続内部温度演算部510は、微小時間内部温度演算部(内部温度演算部)511と発熱量演算部512とを有している。
微小時間内部温度演算部511は、電池システム100の連続運転中に電池の熱的なモデルに基づいて電池の内部温度を微小時間間隔で繰り返し演算する。微小時間内部温度演算部511は、前回演算時に演算された電池の内部温度と、今回演算時に測定されたセンサ温度と、発熱量演算部512から出力される電池の発熱量と、前回演算時から今回演算時までの演算間隔とから電池の内部温度を演算する。前回演算時が電池システム100の運転中であれば、前回演算時の電池の内部温度は連続内部温度演算部510によって演算された内部温度である。前回演算時が電池システム100の起動直後であれば、前回演算時の電池の内部温度は初期内部温度演算部520によって演算された内部温度である。微小時間内部温度演算部511の演算間隔は予め定めた時間間隔である。電池システム100の連続運転中には、この演算間隔で微小時間内部温度演算部511によって電池の内部温度の演算が繰り返される。今回演算時の内部温度T
in(t)は、演算間隔である時間間隔をΔt
0、前回演算時をt-Δt
0、今回演算時をt、内部温度の前回演算値をT
in(t-Δt
0)、t-Δt
0からtまでの演算範囲のセンサ温度をT
sen、cal(t)、t-Δt
0からtまでの発熱量をQ
gen(t)とすると、次式(5)の関数fによって表現される。なお、第1の実施形態では、センサ温度T
sen、cal(t)は今回演算時のセンサ温度T
sen(t)である。T
sen、cal(t)は、必ずしもT
sen(t)である必要はなく、次式(6)に示すように前回演算時から演算間隔Δt
0が経過するまでの間のセンサ温度の取得回数をnとした平均温度でもよい。
関数fは、例えば熱回路網法によって定義される。熱回路網法とは、モデル化対象の伝熱系を複数の質点間の熱量の移動によって表現する手法である。熱移動量は2点間の温度差と熱抵抗によって定まり、熱移動及び熱量は系全体で質点の温度上昇に用いる熱量と保存される。関数fは、式(1)のような、前回演算時の電池の内部温度、電池の発熱量、センサ温度に応じて、目標温度と目標温度に近づく時定数が定まる演算方法でも良い。また、前回演算時の電池の内部温度、電池の発熱量、センサ温度に応じて、今回演算時の電池の内部温度がマップ探索されるようなロジックでも良い。
電池の内部温度は、必ずしも電池内の1点のみが演算されるのではなく、関数fに用いられる電池内外の演算対象の温度も演算されてもよい。例えば、熱回路モデルにおいては、関数fには電池内部の中心の質点の他に、電池の表面の質点や電池外部の構成要素の質点があり、それらの温度も熱回路モデルによって演算される。
発熱量演算部512は、電池の充放電による発熱量Q
genを演算する。発熱量Q
genは、電池の直流抵抗をRとし電流値をIとすると、例えば次式(7)によって演算される。直流抵抗Rは、電池の温度T
in、SOC、充放電継続時間に依存することが知られている。また、発熱量Q
genは、閉回路電圧(Closed Circuit Voltage、CCV)とOCVを用いて、次式(8)によって演算されてもよい。
図5は、初期内部温度演算部520の構成図である。初期内部温度演算部520は、電池システム100の起動時刻に測定されたセンサ温度Tsen(ton)を単電池管理部120の温度測定部125から取得する。また、初期内部温度演算部520は、前回の電池システム100の終了時刻の内部温度Tin(toff)及びセンサ温度Tsen(toff)を記憶部180から読み出す。そして、初期内部温度演算部520は、センサ温度Tsen(ton)、内部温度Tin(toff)、センサ温度Tsen(toff)に基づいて電池システム100の起動時の内部温度Tin(ton)を演算する。
初期内部温度演算部520は、停止期間を判定する停止期間判定部521と、停止期間中のセンサ温度を仮定するセンサ温度仮定部522と、電池システム100の起動時の電池の内部温度、すなわち停止後の電池の内部温度を演算する停止期間内部温度演算部(内部温度演算部)523とを備えている。
停止期間判定部521は、電池システム100の前回の終了時刻t
offから今回の起動時刻t
onまでの停止期間を閾値時間t
thと比較して、電池システム100が長期間停止後の起動動作中a
lか短期間停止後の起動動作中a
sかを判定する。停止期間が次式(9)の条件を満たす場合には、停止期間判定部521によって電池システム100が長期間停止後の起動動作中a
lであると判定される。停止期間が次式(10)の条件を満たす場合には、停止期間判定部521によって電池システム100が短期間停止後の起動動作中a
sであると判定される。閾値時間t
thは、電池の内部温度と表面温度が均一になったと見なせる時間であり、電池と車両の設計や車両の外部環境に依存して設定され、通常は1日未満の時間である。
センサ温度仮定部522は、バッテリー休止時に実測値として取得できないセンサ温度Tsen(toff≦t≦ton)を仮定する。センサ温度仮定部522は、電池システム100の起動時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(ton)と記憶部180から取得した前回の電池システム100の終了時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(toff)を比較し、電池の安全を確保する内部温度Tin(Ton)が演算可能なセンサ温度(仮定値)を仮定する。
ここで、許容電力の上限値と電池の内部温度の関係について説明する。図6は、リチウムイオン電池の許容電力の上限値の電池温度依存性を示す図である。許容電力の上限値は電池の保護のために設定された電力上限値である。0度を下回るような低温領域では、一般に電池の内部温度に対して正の相関があることが既知である。電池システム100は、許容電力の上限値以下で制御することが求められている。このため、電池の内部温度(演算値)T
inは、実際の内部温度(真値)T
in、realよりも高温にならないように、内部温度T
in、realよりも低温側に安全マージンを確保して算出される。これにより、許容電力の上限値よりも大きな電力で充放電することが防止されている。センサ温度は、電池表面センサや環境温度センサの温度、すなわち電池内部の熱が放出される先の温度であり、センサ温度が小さくなるほど電池内部の熱放出量は大きい。そこで、センサ温度仮定部522は、電池システム100の停止期間中の電池から外部への熱量の排出量を大きく見積もって、停止期間中のセンサ温度を仮定している。この場合、次式(11)に示すように、電池システム100の終了時刻に測定されたセンサ温度T
sen(t
off)と電池システム100の起動時刻に測定されたセンサ温度T
sen(t
on)のうち、低い方のセンサ温度が電池システム100の停止期間中に続いたと仮定される。
停止期間内部温度演算部523は、電池システム100の起動時刻の内部温度を演算する。停止期間内部温度演算部523は、起動動作中の判定結果、停止期間中のセンサ温度(仮定値)Tsen(toff≦t≦ton)、起動時刻のセンサ温度Tsen(ton)、前回演算時(終了時刻)の内部温度Tin(toff)、終了時刻toffを入力として、起動時刻の内部温度Tin(ton)を演算する。停止期間内部温度演算部523の演算結果は、起動動作中の判定結果(as又はal)によって異なる。
先ず、電池システム100が、短期間停止後の起動動作中a
sと判定された場合について説明する。この場合、電池の内部温度は十分に表面温度又は環境温度と均一になっていないため、内部温度演算によって電池の内部温度が求められる。電池システム100の停止時に電池に電流が流れることはないため、発熱量演算部512によって演算される停止期間中の発熱量は0である。式(5)と同様な内部温度演算を用いた場合、前回演算時t-Δtから今回演算時tまでの停止期間をΔt、前回演算時の内部温度T
in(t-Δt)、停止期間中のセンサ温度をT
sen(t)、停止期間中の発熱量をQ
gen(t)とすると、各変数が次式(12)のように定まる。よって、電池システム100の起動時刻の内部温度T
in(t
on)は、次式(13)によって演算される。
次に、電池システム100が、長期間停止後の起動動作中a
lと判定された場合について説明する。図7は、長期間停止後の電池の内部温度とセンサ温度の関係を示す図である。この場合、電池システム100の長期間停止によって電池の内部温度と表面温度又は環境温度が熱平衡に達して、電池の内部温度を表面温度又は環境温度に等しいと見做すことができる。図7に示すように、T
sen(t
off)<T
sen(t
on)である場合には、電池の内部温度演算に低いセンサ温度T
sen(t
off)が用いられる。このため、内部温度(演算値)T
in(t
on)は、実際の内部温度(真値)T
in、real(t
on)に対して安全マージンを取り過ぎて電池の許容電力が過剰に制限される。そこで、電池システム100が長期間停止後の起動動作中a
lと判定された場合には、次式(14)に示すように、初期内部温度演算部520によって電池の内部温度T
in(t
on)として起動時刻のセンサ温度T
sen(t
on)が出力される。
なお、組電池制御部150の各部は、プロセッサを用いてソフトウェアによって実現されてもよいし、集積回路等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。プロセッサを用いる場合には、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを読み出して実行することによって各種処理が実施される。プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等が使用される。また、メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、NVRAM(Non Volatile RAM)等の一つ又は複数の記録媒体によって構成されている。
図8は、本実施形態に係る電池の内部温度の演算処理のフローチャートである。先ず、組電池制御部150によって電池システム100が運転中か否かが判定される(ステップS01)。実際の車両では、イグニションキーのオンオフによって電池システム100の運転中か停止中かが判定される。電池システム100が運転中の場合(ステップS01でYES)には、組電池制御部150によって記憶部180から前回の電池システム100の終了時刻、終了時刻のセンサ温度、終了時刻の電池の内部温度等が読み出される(ステップS02)。ここでは、組電池制御部150によって、内部温度演算以外に用いられる一般的な電池制御パラメータとして、SOC、SOH等も読み出される。
次に、上記した式(2)、(3)に従って、状態判定部540によって電池システム100が起動動作中aか否かが判定される(ステップS03)。電池システム100が起動動作中aではないと判定された場合には(ステップS03でNO)、電池システム100が連続運転中bであると判定され、連続内部温度演算部510によって電池の内部温度が算出される(ステップS04)。電池システム100が起動動作中aであると判定された場合には(ステップS03でYES)、初期内部温度演算部520が起動して、式(9)、(10)に従って、停止期間判定部521によって電池システム100が長期間停止後の起動動作中alか否かが判定される(ステップS05)。
電池システム100が長期間停止後の起動動作中alではないと判定された場合(ステップS05でNO)、停止期間判定部521によって電池システム100が短期間停止後の起動動作中asであると判定される。この場合、式(12)、(13)に従って、初期内部温度演算部520によって電池の真の内部温度よりも低温側に安全マージンを持った内部温度が算出される(ステップS06)。電池システム100が長期間停止後の起動動作中alと判定された場合(ステップS05でYES)、式(14)に従って、初期内部温度演算部520によって起動時刻のセンサ温度が起動時の電池の内部温度として算出される(ステップS07)。
ステップS04、ステップS06、ステップS07のいずれかが終了した場合に、状態判定部540によって電池システム100が終了動作中cか否かが判定される(ステップS08)。イグニションキーがオンからオフに切り替わると電池システム100が終了動作中cであると判定され、イグニションキーがオンのまま維持されると電池システム100が連続運転中bであると判定される。電池システム100が終了動作中cではないと判定された場合には(ステップS08でNO)、電池システム100が連続運転中であるとしてステップS03からステップS08までの処理が繰り返される。電池システム100が終了動作中cであると判定された場合には(ステップS08でYES)、イグニションキーのオフ時点のデータによって、記憶部180に記憶された終了時刻、終了時刻のセンサ温度、終了時刻の電池の内部温度が上書きされる(ステップS09)。
図9は、実際の電動車両の動作を想定した温度変化の概念図であり、電池システム100が認識できない温度変化の真値を示している。図9において、実線は電池の内部温度(真値)Tin、real(t)であり、点線は電池の表面温度(真値)Tsur、real(t)であり、半濁線は環境温度(真値)Tamb、real(t)である。時刻t0では、電池の停止期間が長く電池の内部温度が表面温度と一致している。この時刻t0に電池システム100が起動して、時刻t0から時刻toffまで電池が使用されることで、充放電による加熱によって電池の内部温度Tin、real(t)、表面温度Tsur、real(t)、環境温度Tamb、real(t)が上昇する。その後、時刻toffから時刻tonまでは電池システム100が停止して、電池の内部温度Tin、real(t)と表面温度Tsur、real(t)が低下し、環境温度Tamb、real(t)は僅かに上昇する。電池の内部温度Tin、real(t)が十分冷える前に、時刻tonにおいて電池システム100が再起動して電池の充放電が再開されている。
このような電池の温度変化の真値に対して、電池システム100が認識可能な温度変化を示したものが図10である。図10では、実線は電池の内部温度(演算値)Tin(t)であり、点線は電池の表面温度(実測値)Tsur(t)、半濁線は環境温度(実測値)Tamb(t)である。電池の表面温度は表面温度センサによって測定され、電池外部の環境温度は環境温度センサによって測定される。電池システム100は、toff<t<tonの期間では表面温度Tsur(t)及び環境温度Tamb(t)を認識することができない。電池の内部温度Tin(t)は式(5)によって演算されるため、前回演算時のセンサ温度(表面温度又は環境温度)が必要になる。
以下に、各時刻における組電池制御部150の動作を説明する。t=t0の時点では、式(9)に従って停止期間判定部521によって電池システム100が長期間停止後の起動動作中alと判定される。この場合、式(14)に従って初期内部温度演算部520(図3参照)によって内部温度Tin(t0)としてセンサ温度Tsen(t0)が出力される。連続内部温度演算部510では初期内部温度演算部520から入力されたセンサ温度Tsen(t0)が、そのまま電池の内部温度として出力される。結果的に、内部温度設定部500からはセンサ温度Tsen(t0)が出力される。
t0<t<toffとton<tの間は、式(3)に従って状態判定部540によって電池システム100が連続運転中bと判定される。この場合、初期内部温度演算部520は動作せず、式(5)に従って連続内部温度演算部510によって電池の内部温度が演算される。結果的に、内部温度設定部500からは式(5)によって定義された電池の内部温度Tin(t)が出力される。
t=toffの時点では、式(4)に従って状態判定部540によって電池システム100が終了動作中cと判定される。この場合、内部温度演算は実行されずに、電池システム100の終了動作時のデータが記憶される。組電池制御部150によって終了時刻toff、終了時刻のセンサ温度Tsen(toff)、終了時刻の内部温度Tin(toff)、終了時刻の停止信号が記憶部180に記憶される。加えて、内部温度設定部500によって、内部温度演算以外に用いられる一般的な電池制御パラメータとして、SOC及びSOH等も記憶部180に記憶される。
t=tonの時点では、式(10)に従って状態判定部540によって電池システム100が短期間停止後の起動動作中asと判定される。この場合、式(12)、(13)に従って初期内部温度演算部520によって起動時刻ton電池の内部温度Tin(ton)が演算される。連続内部温度演算部510では初期内部温度演算部520から入力された内部温度Tin(ton)がそのまま出力される。結果的に、内部温度設定部500からは式(13)によって定義された電池の内部温度Tin(ton)が出力される。
図11は、第1の実施形態に係る内部温度の演算処理の説明図である。図示左側は、電池システム100の終了時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(toff)よりも電池システム100の起動時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(ton)が大きな場合を示している。図示右側は、電池システム100の終了時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(toff)が電池システム100の起動時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(ton)よりも大きな場合を示している。電池システム100は、温度測定部125からセンサ温度Tsen(toff)及びTsen(ton)を取得し、連続内部温度演算部510の内部温度演算によって内部温度Tin(toff)を取得する。toff<t<tonでは、温度測定部125からセンサ温度Tsen(t)を取得できないため、式(11)に示すように停止期間の前後のセンサ温度のうち低い温度が続いたと仮定して電池の内部温度が演算される。図示左側ではTsen(toff)が停止期間中のセンサ温度と仮定されて電池の内部温度演算に使用され、図示右側ではTsen(ton)が停止期間中のセンサ温度と仮定されて電池の内部温度演算に使用される。
停止期間内で最も低いセンサ温度が選択されることで、電池内部から電池外部に放出された熱量が大きいとして、電池システム100の起動時刻tonの電池の内部温度の演算結果を低くすることができる。よって、電池システム100の起動時刻tonに演算された電池の内部温度(演算値)Tin(ton)を実際の内部温度(真値)Tin、real(ton)よりも低くすることができる。ここで、起動時刻tonで電池の内部温度Tin(ton)がセンサ温度Tsen(ton)よりも低くなる場合には、内部温度Tin(ton)がセンサ温度Tsen(ton)に置き換えられる。これによって、起動時刻tonの内部温度Tin(ton)は、Tsen(ton)≦Tin(ton)≦Tin、real(ton)となり、電池の表面温度の実測値以上かつ内部温度の真値以下となるように算出される。
図12は、電池の内部温度と許容電力の上限値の関係を示す図である。上記したようにTsen(ton)≦Tin(ton)≦Tin、real(ton)の場合、リチウムイオン電池の低温領域では電池温度が低くなるほど許容電力Plimが小さくなるので、Plim(Tsen(ton))≦Plim(Tin(ton))≦Plim(Tin、real(ton))となる。すなわち、センサ温度(実測値)Tsen(ton)を基準に許容電力が決定されるよりも許容電力の利得が得られ、かつ内部温度(真値)Tin、real(ton)で定まる許容電力よりも低く、十分な安全マージンを確保した許容電力を設定することができる。
以上のように、第1の実施形態では、終了時刻に測定されたセンサ温度Tsen(toff)と起動時刻に測定されたセンサ温度Tsen(ton)のいずれかを、停止期間内で最低のセンサ温度と仮定して電池の内部温度Tin(ton)を演算している。よって、センサ温度Tsen(t)以上かつ実際の電池の実際の内部温度Tin、real(ton)以下の範囲に電池の内部温度Tin(ton)を収めることができる。センサ温度を用いて許容電力を設定する場合と比較して許容電力の利得を確保しつつ、許容電力の上限値に対して十分に安全マージンを確保して電池の内部温度を演算することができる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、初期内部温度演算部520は、電池システム100の停止期間の前後2点のセンサ温度の実測値から停止期間中のセンサ温度を設定していた。このため、電池システム100の停止期間中のセンサ温度が、停止時刻及び起動時刻のセンサ温度の実測値よりも低くなることまでは想定されていない。そこで、第2の実施形態では、初期内部温度演算部520aは、電池システム100の停止期間の前後2点ずつ計4点のセンサ温度の実測値から停止期間中のセンサ温度の増加傾向及び減少傾向を予測する。なお、停止期間の前後1点ずつセンサ温度の実測値を取得すると共に、実測値の取得時点のセンサ温度の温度変化率(温度の時間微分値)を取得してもよい。
図13及び図14に示すように、第2の実施形態では、初期内部温度演算部520aのセンサ温度仮定部522a以外については第1の実施形態と同様である。センサ温度仮定部522aは、前回の終了時刻のセンサ温度Tsen(toff)、終了時刻よりも前のセンサ温度Tsen(toff’)、今回の起動時刻のセンサ温度Tsen(ton)、起動時刻よりも後のセンサ温度Tsen(ton’)に基づいて停止期間中のセンサ温度を仮定する。ここでtoff-toff’はセンサ温度の時間変化を観測するのに十分な最小の時間間隔であり、通常は数分程度である。また、ton’-tonはセンサ温度の時間変化を観測するのに十分な最小の時間間隔であり、電池システム100の起動後に車両が発進待機状態になるまでの時間である。センサ温度Tsen(toff)及びセンサ温度Tsen(toff’)は記憶部180から読み出されて、センサ温度Tsen(ton)はt=ton’までセンサ温度仮定部522aに一時的に保存される。
図15は、第2の実施形態に係るセンサ温度履歴の予測結果を示す図である。センサ温度仮定部522aは、センサ温度T
sen(t
off)、T
sen(t
off’)、T
sen(t
on)、センサ温度T
sen(t
on’)の大小関係を比較して、次式(15)から次式(20)を用いて、電池システム100の停止期間中の温度履歴を予測する。停止期間中の温度履歴は、停止期間中のセンサ温度が単調に増減するパターン(I)、停止期間の途中でセンサ温度が最大になるパターン(II)、停止期間の途中でセンサ温度が最小になるパターン(III)の3パターンで予測される。
センサ温度仮定部522aは、温度履歴の各予測結果に対するセンサ温度の仮定値を出力する。予測結果がパターン(I)、(II)の場合には、第1の実施形態と同様に、電池システム100の停止期間の前後に測定されたセンサ温度Tsen(toff)とセンサ温度Tsen(ton)のうち、低い方のセンサ温度(実測値)が停止期間中に続いたと仮定される。予測結果がパターン(III)の場合には、電池システム100の停止期間中に最も低いセンサ温度(仮定値)Tsen、minが続いたと仮定される。
図16に示すように、最も低いセンサ温度T
sen、minは、座標点(t
off’、T
sen(t
off’))、(t
off、T
sen(t
off))を通る直線と座標点(t
on、T
sen(t
on))、(t
on’、T
sen(t
on’))を通る直線の交点として算出される。センサ温度仮定部522aによってセンサ温度履歴の予測結果に応じて次式(21)、(22)が使い分けられて、電池システム100の停止期間中のセンサ温度(仮定値)T
sen(t
off≦t≦t
on)が仮定される。図16にはパターン(III)の一例が示されており、センサ温度min(T
sen(t
off)、T
sen(t
on))とセンサ温度T
sen、minがT
sen、min<min(T
sen(t
off)、T
sen(t
on))の関係になる。
なお、センサ温度仮定部522aは、停止期間前の2点のセンサ温度と停止期間後の2点のセンサ温度によって停止期間中のセンサ温度を仮定しているが、この構成に限定されない。センサ温度仮定部522aは、停止期間前の2点以上のセンサ温度と停止期間後の2点以上のセンサ温度によって停止期間中のセンサ温度を仮定してもよい。また、センサ温度Tsen、minは、必ずしも2つの線分の交点から算出する構成に限定されない。例えば、センサ温度Tsen、minは、4つの座標点(toff’、Tsen(toff’))、(toff、Tsen(toff))、(ton、Tsen(ton))、(ton’、Tsen(ton’))を通る温度の時間依存関数T(t)の最小値として算出されてもよい。一般的な数学の定理として、T(t)に与えられた座標点の数と同じ数だけ、関数の未知数を指定することができる。例えば、第2の実施形態では、4つの座標点が与えられているため、4つまでの関数の未知数を得ることができる。ここで、関数T(t)は、多項式T(t)=C0+C1x+C2x2+C3x3等が考えられる。多項式からセンサ温度Tsen、minの算出に必要な多項式の最小の次数は二次であるため、少なくとも3つの座標点(toff’、Tsen(toff’))、(toff、Tsen(toff))、(ton、Tsen(ton))があればセンサ温度Tsen、minを算出できる。
図17は、第2の実施形態に係るパターン(III)の内部温度の演算処理の説明図である。図示左側は、電池システム100の終了時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(toff)よりも電池システム100の起動時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(ton)が大きな場合を示している。図示右側は、電池システム100の終了時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(toff)が電池システム100の起動時刻のセンサ温度(実測値)Tsen(ton)よりも大きな場合を示している。パターン(III)の状況では、第1の実施形態のセンサ温度の仮定方法は式(11)によって定義され、第2の実施形態のセンサ温度の仮定方法は式(22)によって定義される。第1の実施形態では、電池システム100停止期間中のセンサ温度が、終了時刻及び起動時刻に測定されたセンサ温度Tsen(toff)、Tsen(ton)のうち、低いセンサ温度よりもさらに低くなることまでは想定されていない。このため、起動時刻の内部温度Tin(ton)が実際の内部温度Tin、real(ton)よりも高くなる可能性がある。これに対して、第2の実施形態では、電池システム100の停止期間中の最低のセンサ温度Tsen、minが算出され、このセンサ温度Tsen、minが停止期間中に継続すると仮定される。これにより、停止期間中の電池の表面温度等の変化に多少のズレが生じても、電池の実際の内部温度Tin、real(ton)以下の内部温度Tin(ton)を演算することができる。なお、停止期間が長い場合にTin(ton)<Tsen(ton)になる場合もあるが、この場合には、内部温度Tin(ton)がセンサ温度Tsen(ton)に置き換えられる。
以上のように、第2の実施形態では、終了時刻及び終了直前に測定されたセンサ温度Tsen(toff)、Tsen(toff’)と起動時刻及び起動直後に測定されたセンサ温度Tsen(ton)、Tsen(ton’)から、停止期間内で最低のセンサ温度を仮定することができる。第2の実施形態においても、許容電力の利得を確保しつつ、許容電力の上限値に対して十分に安全マージンを確保して電池の内部温度を演算することができる。
[第3の実施形態]
第1の実施形態では、イグニションキーのオフ期間は電池システム100が停止しており、組電池制御部150がセンサ温度を取得することができず、電池の内部温度を演算することができない。そこで、第3の実施形態では、イグニションキーのオフ期間に電池システム100が停止した状態で、温度測定部125が起動する共に、組電池制御部150が定期的に起動する。組電池制御部150が起動する度に、センサ温度仮定部522によって温度測定部125からセンサ温度が取得されて、前回起動時のセンサ温度と今回起動時のセンサ温度のうち、低い方のセンサ温度が停止期間中のセンサ温度と仮定される。そして、停止期間内部温度演算部523(図5参照)によって、センサ温度仮定部522に仮定されたセンサ温度を用いて停止期間中の電池の内部温度が定期的に演算される。なお、第3の実施形態の構成は第1の実施形態の構成と同じである。
以上のように、第3の実施形態では、電池システム100の停止期間中に組電池制御部150が定期的に起動することで、組電池制御部150の起動の度に電池の内部温度の演算値を得ることができる。よって、停止期間中の電池の内部温度の履歴が取得されて、電池システム100の起動時に電池の内部温度を精度よく演算することができる。
なお、上記した第1の実施形態では、センサ温度仮定部522が電池システム100の終了時刻に測定されたセンサ温度と電池システム100の起動時刻に測定されたセンサ温度を取得する構成にしたが、この構成に限定されない。センサ温度仮定部522は、電池システム100の運転状態から停止状態への第1の切り替わり期間に測定されたセンサ温度と電池システム100の停止状態から運転状態への第2の切り替わり期間に測定されたセンサ温度を取得してもよい。例えば、センサ温度仮定部522は、終了時刻より前に測定されたセンサ温度を取得してもよいし、起動時刻よりも後に測定されたセンサ温度を取得してもよい。
また、上記した第2の実施形態では、センサ温度仮定部522aは、終了時刻のセンサ温度、終了時刻よりも前のセンサ温度、起動時刻のセンサ温度、起動時刻よりも後のセンサ温度を取得する構成にしたが、この構成に限定されない。センサ温度仮定部522aは、上記の第1の切り替わり期間に測定された2点以上のセンサ温度と上記の第2の切り替わり期間に測定された2点以上のセンサ温度を取得してもよい。例えば、センサ温度仮定部522aは、終了時刻より前に測定された2点以上のセンサ温度を取得してもよいし、起動時刻よりも後に測定された2点以上のセンサ温度を取得してもよい。
また、上記した各実施形態では、センサ温度仮定部522、522aの停止期間中のセンサ温度の仮定方法は特に限定されない。センサ温度仮定部522、522aは、上記の第1の切り替わり期間に測定されたセンサ温度と上記の第2の切り替わり期間に測定されたセンサ温度とに基づいて、第1の切り替わり期間と第2の切り替わり期間の間の停止期間内で最も低いセンサ温度を、停止期間中のセンサ温度と仮定すればよい。
また、上記した各実施形態では、停止期間内部温度演算部523が式(13)に従って電池システム100の起動時の電池の内部温度を演算する構成にしたが、この構成に限定されない。停止期間内部温度演算部523は、少なくともセンサ温度仮定部522、522aによって仮定されたセンサ温度を用いて電池システム100の起動時の電池の内部温度を演算すればよい。
以上の通り、本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)は、電池(組電池110)と電池(組電池110)の表面温度又は環境温度であるセンサ温度を測定する温度センサ部(温度測定部125)とを備えた電池システム(100)に搭載され、電池(組電池110)を制御する電池制御装置(組電池制御部150)であって、電池システム(100)の運転状態から停止状態への第1の切り替わり期間に測定されたセンサ温度と電池システム(100)の停止状態から運転状態への第2の切り替わり期間に測定されたセンサ温度とに基づいて、第1の切り替わり期間と第2の切り替わり期間の間の停止期間内で最も低いセンサ温度を、停止期間中のセンサ温度と仮定するセンサ温度仮定部(522、522a)と、少なくともセンサ温度仮定部(522、522a)によって仮定されたセンサ温度を用いて、電池システム(100)の起動時の電池(組電池110)の内部温度を演算する内部温度演算部(停止期間内部温度演算部523)と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、温度センサ部(温度測定部125)によって測定できない電池システム(100)の停止期間中であっても、第1、第2の切り替わり期間に測定されたセンサ温度から停止期間内で最も低いセンサ温度が仮定される。停止期間中のセンサ温度を用いて電池(組電池110)の内部温度を演算することで、センサ温度以上かつ電池(組電池110)の実際の内部温度以下の範囲に電池(組電池110)の内部温度を収めることができる。よって、センサ温度を用いて許容電力を設定する場合と比較して許容電力の利得を確保しつつ、許容電力の上限値に対して十分に安全マージンを確保した許容電力を設定することができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、電池システム(100)の停止期間が閾値時間以上か否かを判定する停止期間判定部(521)を備え、内部温度演算部(停止期間内部温度演算部523)は、停止期間が閾値時間以上の場合に第2の切り替わり期間に測定されたセンサ温度を電池システム(100)の起動時の内部温度とし、停止期間が閾値時間よりも短い場合にセンサ温度仮定部(522、522a)によって仮定されたセンサ温度を用いて電池システム(100)の起動時の内部温度を演算する。
この構成によれば、電池システム(100)の停止期間が十分に長い場合には電池システム(100)の起動時の電池(組電池110)の内部温度が電池の表面温度又は環境温度と均一になる。このため、第2の切り替わり期間に測定されたセンサ温度を電池システム(100)の起動時の電池(組電池110)の内部温度と見做すことができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、内部温度演算部(停止期間内部温度演算部523)は、電池システム(100)の運転中の内部温度演算では、前回の内部温度演算によって演算された内部温度と、前回の内部温度演算時から今回の内部温度演算時までのセンサ温度と、前回の内部温度演算時から今回の内部温度演算時までの電池(組電池110)の発熱量と、前回の内部温度演算時から今回の内部温度演算時までの演算間隔とから内部温度を演算し、電池システム(100)の起動時の内部温度演算では、演算間隔を停止期間とする。
この構成によれば、電池システム(100)の運転中の内部温度演算を利用して、電池システム(100)の停止期間中の電池(組電池110)の内部温度を演算することができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、内部温度を用いて電池(組電池110)の許容電力を演算する許容電力演算部(530)を備えている。
この構成によれば、十分な利得を確保しつつ、許容電力の上限値を超えない許容電力を演算することができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、センサ温度仮定部(522)は、第1の切り替わり期間に測定されたセンサ温度と第2の切り替わり期間に測定されたセンサ温度のうち、低い方のセンサ温度を停止期間中のセンサ温度と仮定する。
この構成によれば、停止期間前に測定されたセンサ温度と停止期間後に測定されたセンサ温度のいずれかを、停止期間内で最低のセンサ温度として仮定することができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、センサ温度仮定部(522a)は、第1の切り替わり期間に測定された2点以上のセンサ温度と第2の切り替わり期間に測定された2点以上のセンサ温度とに基づいて停止期間内で最も低いセンサ温度を演算し、当該センサ温度を停止期間中のセンサ温度と仮定する。
この構成によれば、停止期間前に測定された2点以上のセンサ温度と停止期間後に測定された2点以上のセンサ温度から、停止期間内で最低のセンサ温度を仮定することができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、センサ温度仮定部(522a)は、第1の切り替わり期間に測定された2点のセンサ温度と第2の切り替わり期間に測定された1点のセンサ温度に基づいて停止期間内で最も低いセンサ温度を演算し、当該センサ温度を停止期間中のセンサ温度と仮定する。
この構成によれば、停止期間前に測定された2点のセンサ温度と停止期間後に測定された1点のセンサ温度の計3点のセンサ温度から、停止期間内で最低のセンサ温度を仮定することができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、停止期間中に温度センサ部(温度測定部125)が起動すると共に自装置(組電池制御部150)が定期的に起動しており、センサ温度仮定部(522)は、自装置(組電池制御部150)が起動する度に、温度センサ部(温度測定部125)からセンサ温度を取得して、前回起動時のセンサ温度と今回起動時のセンサ温度のうち、低い方のセンサ温度を停止期間中のセンサ温度と仮定し、内部温度演算部(停止期間内部温度演算部523)は、少なくともセンサ温度仮定部(522)によって仮定されたセンサ温度を用いて停止期間中の内部温度を演算する。
この構成によれば、電池システム(100)の停止期間中に電池制御装置(組電池制御部150)が定期的に起動することで、電池制御装置(組電池制御部150)の起動の度に電池の内部温度を演算することができる。よって、停止期間中の電池の内部温度の履歴が取得されて、電池システム(100)の起動時に電池(組電池110)の内部温度を精度よく演算することができる。
本実施形態に記載の電池制御装置(組電池制御部150)において、内部温度演算部(停止期間内部温度演算部523)は、電池システム(100)の起動時の内部温度が第2の切り替わり期間に測定したセンサ温度よりも低くなる場合には、電池システムの起動時の内部温度を第2の切り替わり期間に測定したセンサ温度に置き換える。
この構成によれば、電池(組電池110)の内部温度が誤ってセンサ温度よりも低くなることがなく、常に電池(組電池110)の内部温度をセンサ温度以上にして許容電力の利得を得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。例えば、前記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。さらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。