本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態による電波品質推定装置の概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による電波品質推定装置1は、受付手段11と、記憶手段12と、電力推定手段13と、品質推定手段14とを備える。
受付手段11は、実測された発射源からの電波の受信電力RSSIと、受信電力RSSIを検出した位置を示す位置情報PS_MES=[xr,yr,hr]と、発射源からの電波の周波数fとを相互に対応付けた測定データD=[f/[xr,yr,hr]/RSSI]を受け付け、その受け付けた測定データD=[f/[xr,yr,hr]/RSSI]を記憶手段12に記憶する。
端末装置は、例えば、ドローンである。また、周波数fは、複数の端末装置が共用する共用周波数である。
受付手段11は、電波品質を推定する電波の周波数fANA、電波品質を推定する位置を示す位置情報PS_ANA、発射源の位置を示す位置情報PS_SRC=[xt,yt,ht]および電波の伝搬環境を示す環境情報INFOCIRを受け付ける。環境情報INFOCIRは、市街地、郊外および開放地等の電波が伝搬する環境を示す情報と、発射源Sの送信電力Ptと、建物の高さおよび位置を示す情報と、発射源Sと建物の壁面との水平距離である距離xWとを含む。
そして、受付手段11は、その受け付けた周波数fANA、位置情報PS_ANA、位置情報PS_SRCおよび環境情報INFOCIRを電力推定手段13へ出力する。また、受付手段11は、その受け付けた周波数fANAおよび位置情報PS_ANAを品質推定手段14へ出力する。
記憶手段12は、受付手段11から受けた測定データD=[f/[xr,yr,hr]/RSSI]を記憶する。即ち、記憶手段12は、周波数f、位置情報[xr,yr,hr]および受信電力RSSIを相互に対応付けて記憶する。
そして、記憶手段12は、品質推定手段14からの周波数fANAおよび位置情報PS_ANAに対応する受信電力RSSIの読出要求に応じて、周波数fANAおよび位置情報PS_ANAに対応する受信電力RSSIを品質推定手段14へ出力する。
電力推定手段13は、環境情報INFOCIRと、電波の伝搬モデルとを対応付けて保持する。電力推定手段13は、周波数fANA、位置情報PS_ANA、位置情報PS_SRCおよび環境情報INFOCIRを受付手段11から受ける。そして、電力推定手段13は、その受けた環境情報INFOCIRに対応する電波の伝搬モデル、周波数fANA、位置情報PS_ANAおよび位置情報PS_SRCに基づいて、後述する方法によって、周波数fANAを有する電波の位置情報PS_ANAにおける受信電力RSSI_ESTを推定する。そうすると、電力推定手段13は、その推定した受信電力RSSI_ESTを品質推定手段14へ出力する。
品質推定手段14は、周波数fANAおよび位置情報PS_ANAを受付手段11から受ける。そして、品質推定手段14は、周波数fANAおよび位置情報PS_ANAに対応する受信電力RSSIを記憶手段12から読み出し、その読み出した受信電力RSSIを、測定された受信電力RSSI_MESとする。
そうすると、品質推定手段14は、受信電力RSSI_ESTと受信電力RSSI_MESとの和(RSSI_EST+RSSI_MES)に対する受信電力RSSI_ESTの比RSSI_Ratio=RSSI_EST/(RSSI_EST+RSSI_MES)を演算し、その演算した比RSSI_Ratioを電波品質として推定する。このように、品質推定手段14は、測定された受信電力RSSI_MESと推定された受信電力RSSI_ESTとの和に対する推定された受信電力RSSI_ESTの比RSSI_Ratioを電波品質として推定する。
電力推定手段13による受信電力RSSI_ESTの推定方法について説明する。図2は、受信電力の推定方法を説明するための図である。
図2を参照して、電波の発射源Sは、地面からの高さhtに配置されており、端末装置2は、地面からの高さhrに配置されている。
非特許文献8は、受信電力の推定においては、発射源S(送信点)と端末装置2(受信点)との推定距離が発射源Sおよび端末装置2の高さに比べて十分大きいと仮定し、水平距離に反比例した電界強度を与えている。
しかし、この前提が必ずしも成立しないので、この発明の実施の形態においては、直接波E1を式(1)から求め、大地での反射波E2を式(2)から求める。なお、発射源S(送信点)の座標を(0,0,ht)とし、端末装置2(受信点)の座標を(xr,yr,hr)とする。
式(1),(2)において、E0は、定数であり、kは、位相定数2π/λ(λは、電波の波長である。)である。
また、式(1),(2)において、φ1は、発射源S(送信点)から端末装置2(受信点)を見たときの水平角であり、θ1は、発射源S(送信点)から端末装置2(受信点)を見たときの仰角であり、θ2は、発射源S(送信点)のアンテナから反射点を見たときの俯角であり、θGは、大地反射波の入射角である。ここで、θG=π/2-θ2の関係がある。
更に、式(1),(2)において、gT(θ)は、送信アンテナのE面指向性係数に絶対利得を乗じた関数であり、gR(θ,φ)は、受信アンテナのE面とH面に関する同様の関数である。
更に、式(1)におけるd1は、発射源Sから端末装置2(受信点)への直接波の経路長であり、次式(3)によって表される。
更に、式(2)におけるd2は、発射源Sからの電波の大地反射波の経路長であり、次式(4)によって表される。
更に、式(2)において、RV(θ)は、TM入射時の大地反射係数であり、次式(5)によって表される。
反射面の起伏の標準偏差は、波長に比べて小さいと考えられるので、粗面反射係数を適用しない。
式(5)において、θGtは、屈折角であり、ε^r(“^”がεの上に配置されていることを表す)は、大地の複素比誘電率であり、角周波数ω、比誘電率εrおよび導電率σを用いて次式(6)によって表される。なお、スネルの法則によって屈折角θGtを求めることができる。
式(6)において、ε0は、空気の誘電率である。
図3は、アンテナの指向性の測定結果を示す図である。図3において、アンテナの指向性は、次の測定条件を用いて測定された。
送信アンテナとして、ロッドアンテナを用いた。また、周波数は、1270MHzであり、偏波は、垂直偏波であり、受信アンテナは、Omni-LOG 70600(非特許文献9参照)である。
上述したgT(θ)およびgR(θ,φ)は、図3に示す特性から求めることができる。
図4は、直接波、大地反射波および壁面反射波の経路を示す図である。図4を参照して、x軸方向における発射源S(送信点T)と壁面3との距離は、xWである。端末装置2の高さhrがhr<20mである場合、発射源S(送信点T)からの電波が壁面3で反射することが想定される。従って、発射源S(送信点T)からの直接波および大地反射波は、経路4を伝搬して端末装置2へ到達し、壁面3での壁面反射波は、経路5を伝搬して端末装置2へ到達する。
壁面反射波E3は、次式(7)によって表される。
式(7)において、φ3は、送信点Tから壁面反射点を見込んだ水平角であり、θ3は、送信点Tから壁面反射点を見込んだ俯角である。
また、d3は、壁面反射波の経路長(図4に示す経路5の長さ)であり、次式(8)によって表される。
式(7)のRH(φ)は、TE入射時の反射係数であり、次式(9)によって表される。
式(9)において、φtは、屈折角であり、スネルの法則によって求めることができる。また、式(9)において、ε^Wr(“^”がεの上に配置されていることを表す)は、壁面の複素比誘電率であり、角周波数ω、壁面の比誘電率εWrおよび導電率σWを用いて次式(10)によって表される。
電界強度の2乗と波動インピーダンスとから受信電力RSSIを求めることができる。即ち、端末装置2の高さhrがhr≧20mである場合、端末装置2(受信点R)における受信電力PR,hr≧20は、上述した式(1),(2)を用いて、次式(11)によって表される。
また、端末装置2の高さhrがhr<20mである場合、端末装置2(受信点R)における受信電力PR,hr<20は、上述した式(1),(2),(7)を用いて、次式(12)によって表される。
式(11),(12)において、φ’1は、φ’1=π-φ1である。また、式(11),(12)におけるP0は、フリスの伝達公式と整合が取れるように、送信電力をPtとして次式(13)によって決定される。
式(11)において、右辺の電界強度の2乗を表す項において、第1項は、直接波を表し、第2項は、大地反射波を表す。従って、式(11)は、直接波および大地反射波(=1回反射波)を用いて受信電力PR,hr≧20を求める電波の伝搬モデルを表す。
また、式(12)において、右辺の電界強度の2乗を表す項において、第1項は、直接波を表し、第2項は、大地反射波を表し、第3項は、壁面反射波を表す。従って、式(12)は、直接波、大地反射波(=1回反射波)および壁面反射波を用いて受信電力PR,hr<20を求める電波の伝搬モデルを表す。
式(11)または式(12)を用いて受信電力RSSIを計算するときに必要な反射係数を求めるための電気定数を表1に示す。
表1における想定媒質としての「低湿大地」は、非特許文献5に記載されており、想定媒質としての「コンクリート」は、非特許文献10に記載されている。
この発明の実施の形態においては、表1に示す比誘電率および導電率を用いて反射係数を算出した。
図5は、反射係数と入射角との関係を示す図である。図5において、縦軸は、反射係数を表し、横軸は、入射角を表す。また、実線は、壁面へのTE入射における反射係数と入射角との関係を示し、破線は、大地へのTM入射における反射係数と入射角との関係を示す。なお、図5に示す反射係数は、表1に示す電気定数を用いて計算された計算値である。
図5を参照して、TE入射(壁面)においては、反射係数は、入射角の増加に伴って徐々に大きくなる。一方、TM入射(大地)においては、反射係数は、入射角が約70度までの範囲においては、入射角の増加に伴って徐々に低下し、約70度の入射角において最小になる。そして、入射角が約70度よりも大きくなると、反射係数は、入射角の増加に伴って指数関数的に大きくなる。
電力推定手段13は、式(11)に示す電波の伝搬モデルMDL1と、式(12)に示す電波の伝搬モデルMDL2とを受信電力を推定する位置[xr,yr,hr]の高さhrに対応付けて保持する。より具体的には、電力推定手段13は、20m以上の高さhrに対応付けて電波の伝搬モデルMDL1を保持し、20mよりも低い高さhrに対応付けて電波の伝搬モデルMDL2を保持する。
また、電力推定手段13は、図5に示すTM入射(大地)における反射係数と入射角との関係RLT1と、TE入射(壁面)における反射係数と入射角との関係RET2とを保持する。
そして、電力推定手段13は、電波の周波数fと、送信電力Ptと、発射源Sの位置[xt,yt,zt]と、受信電力を推定する位置[xr,yr,hr]と、発射源Sの位置[xt,yt,zt]と壁面との水平方向の距離xWとを受けると、大地における反射点の位置[xRV,yRV,hRV]と、壁面における反射点の位置[xRH,yRH,hRH]とを算出する。なお、電力推定手段13は、大地の反射面に対して受信点Rの対称な鏡像を作成し、送信点Tと受信点Rの鏡像とを直線で結んだときの直線と反射面との交点を反射点の位置[xRV,yRV,hRV]として算出する。また、電力推定手段13は、同様にして、反射点の位置[xRH,yRH,hRH]を算出する。
その後、電力推定手段13は、距離xW、位置[xt,yt,ht]、位置[xr,yr,hr]、位置[xRV,yRV,hRV]および位置[xRH,yRH,hRH]を用いて、上述した水平角φ1、仰角θ1、俯角θ2、入射角θG、入射角φW、水平角φ3および俯角θ3を算出する。また、電力推定手段13は、位置[xt,yt,ht]および位置[xr,yr,hr]を用いて、式(3),(4),(8)によってそれぞれ経路長d1,d2,d3を算出する。更に、電力推定手段13は、φ’1=π-φ1によってφ’1を算出し、スネルの法則によって屈折角φGt,φtを求める。更に、電力推定手段13は、入射角θG、屈折角φGtおよび式(5),(6)に基づいて反射係数RV(θG)を算出し、入射角φW、屈折角φtおよび式(9),(10)に基づいて反射係数RH(φW)を算出する。更に、電力推定手段13は、周波数fに基づいて電波の波長λを算出し、その算出した波長λと送信電力Ptとを式(13)に代入して定数P0を算出する。なお、波長λは、光速c/周波数fによって算出される。
そうすると、電力推定手段13は、位置[xr,yr,hr]の高さhrがhr≧20mであるとき、定数P0、仰角θ1、水平角φ’1、反射係数RV(θG)、俯角θ2、および経路長d1,d2を式(11)に代入してPR,hr≧20を算出し、その算出したPR,hr≧20を位置[xr,yr,zr]における受信電力RSSI_ESTとして推定する。
また、電力推定手段13は、位置[xr,yr,hr]の高さhrがhr<20mであるとき、定数P0、仰角θ1、水平角φ’1、水平角φ3、反射係数RV(θG)、反射係数RH(θW)、俯角θ2、俯角θ3および経路長d1,d2,d3を式(12)に代入してPR,hr<20を算出し、その算出したPR,hr<20を位置[xr,yr,hr]における受信電力RSSI_ESTとして推定する。
即ち、電力推定手段13は、位置[xr,yr,hr]の高さhrがhr≧20mであるとき、電波の伝搬モデルMDL1に基づいて位置[xr,yr,hr]における受信電力RSSI_ESTを推定し、位置[xr,yr,hr]の高さhrがhr<20mであるとき、電波の伝搬モデルMDL2に基づいて位置[xr,yr,hr]における受信電力RSSI_ESTを推定する。
電力推定手段13が電波の伝搬モデルMDL1または電波の伝搬モデルMDL2に基づいて受信電力RSSI_ESTを推定することは、電力推定手段13が電波の伝搬環境に適合した伝搬モデルを用いて受信電力RSSI_ESTを推定することに相当する。電波の伝搬モデルMDL1は、建物の高さ(=20m)以上の領域における電波の伝搬モデルであり、電波の伝搬モデルMDL2は、建物の高さ(=20m)よりも低い領域における電波の伝搬モデルであるからである。
また、電力推定手段13が電波の伝搬モデルMDL1または電波の伝搬モデルMDL2に基づいて受信電力RSSI_ESTを推定することは、発射源Sの配置位置の高さと建物の高さとの比較結果に応じて異なる伝搬モデルに基づいて受信電力を推定することに相当する。電力推定手段13は、発射源Sの配置位置の高さが建物の高さ以上である場合、伝搬モデルMDL1を用いて受信電力RSSI_ESTを推定し、発射源Sの配置位置の高さが建物の高さよりも低い場合、伝搬モデルMDL2を用いて受信電力RSSI_ESTを推定し、伝搬モデルMDL1,MDL2は、それぞれ式(11),(12)に示すように相互に異なる伝搬モデルであるからである。
図6は、電波の受信電力を測定する環境を説明するための図である。なお、図6においては、上空から見た電波の伝搬環境を示す。
図6を参照して、建物6,7が存在し、建物6は、建物7よりも低く、例えば、20mの高さを有する。建物7は、壁面7Hを有し、20mよりも高い高さを有する。建物6,7に近接する地面には、樹木8が植えられている。領域REGは、グランドであり、舗装路面から10cm程度盛り上がっている。
図6の紙面において、右方向が東方向であり、左方向が西方向であり、上方向が北方向であり、下方向が南方向である。従って、x軸は、東西方向に平行に配置され、x軸の正方向が東方向である。また、y軸は、南北方向に平行に配置され、y軸の正方向は、北方向である。
送信点Tは、建物6の屋上において、位置[0,0,20]に配置されている。また、受信点Rの位置は、[xr,yr,hr]によって表される。
送信点Tから発射された電波の直接波および大地反射波は、太線の矢印で示す経路に沿って送信点Tから受信点Rに到達する。
また、送信点Tから発射された電波の壁面反射波は、破線の矢印で示す経路に沿って送信点Tから受信点Rに到達する。即ち、壁面反射波は、建物7の壁面7Hで反射して受信点Rに到達する。
そして、受信機を搭載したドローンを用いて、高さ5m、10mおよび30mにおいて、送信点Tから発射された電波の受信電力RSSI_MESを測定した。ドローンは、定速で西から東へ3往復飛行し、その間、計継続的に受信電力RSSI_MESを測定して記録する。受信点Rの位置[xr,yr,hr]の範囲は、東西方向xrが2~100mの範囲であり、南北方向yrが-37~-52mの範囲である。また、受信電力の測定間隔は、東西方向が1.6m程度であり、南北方向が3m程度である。
点線9は、ドローンが5mの高さで飛行経路12を飛行したときの大地反射点の軌跡を示し、実線10は、ドローンが10mの高さで飛行経路12を飛行したときの大地反射点の軌跡を示し、実線11は、ドローンが30mの高さで飛行経路12を飛行したときの大地反射点の軌跡を示す。
従って、大地反射点の位置は、受信点Rの高さhrが高くなるに従って、南北方向において送信点Tに近くなり、東西方向における大地反射点の軌跡の長さは、受信点Rの高さhrが高くなるに従って短くなる。
図7は、図1に示す記憶手段12における受信電力RSSI_MESの記憶方式を示す図である。
図7を参照して、記憶手段12は、対応表TBLを保持する。対応表TBLは、周波数fと、位置[xr,yr,hr]と、受信電力RSSI_MESとを含む。周波数f、位置[xr,yr,hr]および受信電力RSSI_MESは、相互に対応付けられる。
周波数fは、複数の端末装置2が共用する共用周波数である。位置[xr,yr,hr]は、発射源S(送信点T)から発射された電波の受信電力を測定する位置である。受信電力RSSI_MESは、図6に示す方法で測定された受信電力である。
位置[xr1_1,yr1_1,hr1_1],[xr2_1,yr2_1,hr2_1],・・・,[xrn_1,yrn_1,hrn_1]および受信電力RSSI1_1,RSSI2_1,・・・,RSSIn_1は、周波数f1に対応付けられ、位置[xr1_2,yr1_2,hr1_2],[xr2_2,yr2_2,hr2_2],・・・,[xrn_2,yrn_2,hrn_2]および受信電力RSSI1_2,RSSI2_2,・・・,RSSIn_2は、周波数f2に対応付けられ、以下、同様にした、位置[xr1_m,yr1_m,hr1_m],[xr2_m,yr2_m,hr2_m],・・・,[xrn_m,yrn_m,hrn_m]および受信電力RSSI1_m,RSSI2_m,・・・,RSSIn_mは、周波数fmに対応付けられる。ここで、nおよびmの各々は、正の整数であり、nは、周波数f1~fmの各々における受信電力RSSI_MESの測定個数を表し、mは、共用周波数の個数を表す。
なお、図7においては、受信電力RSSI_MESの測定個数nは、周波数f1~fmの各々において同じであるが、この発明の実施の形態においては、受信電力RSSI_MESの測定個数nは、周波数f1~fmにおいて相互に異なっていてもよい。
記憶手段12は、受付手段11から測定データD=[f/[xr,yr,hr]/RSSI]を受けると、測定データDの周波数f、位置[xr,yr,hr]および受信電力RSSIをそれぞれ対応表TBLの周波数f、位置[xr,yr,hr]および受信電力RSSI_MESの欄に格納して記憶する。
品質推定手段14は、電波品質を推定する電波の周波数fANAおよび電波品質を推定する位置の位置情報PS_ANAを受付手段11から受けると、記憶手段12に記憶された対応表TBLを参照して、周波数fANAおよび位置情報PS_ANAに対応する受信電力RSSIi_j(iは、1≦i≦nを満たす整数、jは、1≦j≦mを満たす整数)を受信電力RSSI_MESとして読み出す。
また、品質推定手段14は、受信電力RSSI_ESTを電力推定手段13から受ける。そして、品質推定手段14は、受信電力の比RSSI_Ratio=RSSI_EST/(RSSI_EST+RSSI_MES)を演算し、その演算した、受信電力の比RSSI_Ratioを電波品質として推定する。
RSSI_EST/(RSSI_EST+RSSI_MES)を変形すると、1/(1+RSSI_MES/RSSI_EST)となる。RSSI_MES/RSSI_EST=aとすると、受信電力の比RSSI_Ratioは、RSSI_Ratio=1/(1+a)となる。
図8は、受信電力の比RSSI_Ratioとaとの関係を示す図である。図8において、縦軸は、受信電力の比RSSI_Ratioを表し、横軸は、a(=RSSI_MES/RSSI_EST)を表す。曲線k1は、受信電力の比RSSI_Ratioとaとの関係を示す。
図8を参照して、受信電力の比RSSI_Ratioは、aの増加に伴って減少する(曲線k1参照)。受信電力RSSI_ESTが受信電力RSSI_MESに一致する場合(即ち、a=1である場合)、受信電力の比RSSI_Ratioは、0.5となり、推定された電波品質は、最も良い。
推定された受信電力RSSI_ESTが測定された受信電力RSSI_MESよりも小さくなると、aは、1よりも大きくなり、受信電力の比RSSI_Ratioは、0.5よりも小さくなる。
また、推定された受信電力RSSI_ESTが測定された受信電力RSSI_MESよりも大きくなると、aは、1よりも小さくなり、受信電力の比RSSI_Ratioは、0.5よりも大きくなる。
従って、推定された電波品質は、受信電力の比RSSI_Ratioが0.5からずれに従って低下する。
このように、この発明の実施の形態によれば、上空における電波品質を容易に推定できる。
なお、図8においては、RSSI_MES/RSSI_EST=aとしたが、この発明の実施の形態においては、RSSI_EST/RSSI_MES=aとしてもよい。この場合、受信電力の比RSSI_Ratio=a/(1+a)となる。そして、受信電力の比RSSI_Ratioを表す曲線は、図8に示す曲線k1を縦軸および横軸の両軸に対称に反転させた曲線になり、受信電力RSSI_ESTが受信電力RSSI_MESに一致する場合(即ち、a=1である場合)、受信電力の比RSSI_Ratioは、0.5となり、推定された電波品質は、最も良い。また、受信電力RSSI_ESTが受信電力RSSI_MESと異なる場合、受信電力の比RSSI_Ratioは、0.5からずれ、電波品質は、低下する。
従って、RSSI_MES/RSSI_EST=aである場合、およびRSSI_EST/RSSI_MES=aである場合の両方において、受信電力の比RSSI_Ratioによって電波品質を推定できる。
図9は、図1に示す電波品質推定装置1の動作を説明するためのフローチャートである。なお、図9においては、受付手段11は、測定データDを受け付け、その受け付けた測定データDを記憶手段12に記憶していることを前提として電波品質推定装置1の動作を説明する。
図9を参照して、電波品質推定装置1の動作が開始されると、受付手段11は、電波品質を推定する電波の周波数fANA(=f1~fm)、発射源Sの位置を示す位置情報PS_SRC=[xt,yt,ht]、環境情報INFOCIRおよび受信電力の推定位置を示す位置情報PS_ANA=[xri_j,yri_j,hri_j]を受け付ける(ステップS1)。
そして、受付手段11は、その受け付けた周波数fANA(=f1~fm)、位置情報PS_ANA=[xri_j,yri_j,hri_j]、位置情報PS_SRC=[xt,yt,ht]および環境情報INFOCIRを電力推定手段13へ出力し、その受け付けた周波数fANA(=f1~fm)および位置情報PS_ANA=[xri_j,yri_j,hri_j]を品質推定手段14へ出力する。
電力推定手段13は、周波数fANA(=f1~fm)、位置情報PS_ANA=[xri_j,yri_j,hri_j]、位置情報PS_SRC=[xt,yt,ht]および環境情報INFOCIRを受付手段11から受ける。また、品質推定手段14は、周波数fANA(=f1~fm)および位置情報PS_ANA=[xri_j,yri_j,hri_j]を受付手段11から受ける。
そして、電力推定手段13は、j=1を設定し(ステップS2)、i=1を設定する(ステップS3)。その後、電力推定手段13は、環境情報INFOCIRに基づいて、電波の伝搬環境に適合した電波の伝搬モデルを選択し、その選択した電波の伝搬モデルに基づいて、周波数fjを有する電波の位置[xri_j,yri_j,hri_j]における受信電力RSSI_ESTi_jを推定する(ステップS4)。そして、電力推定手段13は、その推定した受信電力RSSI_ESTi_jを品質推定手段14へ出力する。
品質推定手段14は、受信電力RSSI_ESTi_jを電力推定手段13から受ける。そして、品質推定手段14は、周波数fjおよび位置情報PS_ANAに基づいて、周波数fjおよび位置[xri_j,yri_j,hri_j]に対応する受信電力RSSI_MESi_j(測定された受信電力)を記憶手段12から読み出す(ステップS5)。
その後、品質推定手段14は、受信電力の比RSSI_Ratioi_j=RSSI_ESTi_j/(RSSI_ESTi_j+RSSI_MESi_j)を演算し(ステップS6)、その演算した受信電力の比RSSI_Ratioi_jを電波品質として推定する(ステップS7)。
そして、電力推定手段13は、i=nであるか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8において、i=nでないと判定されたとき、電力推定手段13は、i=i+1を設定する(ステップS9)。その後、一連の動作は、ステップS4へ移行し、ステップS8において、i=nであると判定されるまで、ステップS4~ステップS9が繰り返し実行される。
そして、ステップS8において、i=nであると判定されると、電力推定手段13は、j=mであるか否かを更に判定する(ステップS10)。
ステップS10において、j=mでないと判定されたとき、電力推定手段13は、j=j+1を設定する(ステップS11)。その後、一連の動作は、ステップS3へ移行し、ステップS10において、j=mであると判定されるまで、ステップS3~ステップS11が繰り返し実行される。
そして、ステップS10において、j=mであると判定されると、電力推定手段13は、電波品質の推定が完了したことを示す信号SCOMPを生成して品質推定手段14へ出力する。
品質推定手段14は、信号SCOMPを電力推定手段13から受けると、電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを出力する(ステップS12)。これによって、電波品質推定装置1の動作が終了する。
図10は、図9のステップS4の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、図9のステップS3の後、電力推定手段13は、電波の伝搬モデルにおけるパラメータを算出する(ステップS41)。そして、電力推定手段13は、環境情報INFOCIRから建物の高さを検出し、位置[xt,yt,ht]から高さhtを検出する。そうすると、電力推定手段13は、その検出した高さhtが建物の高さ以上であるか否かを判定する(ステップS42)。即ち、電力推定手段13は、発射源Sの配置位置の高さhtが建物の高さ以上であるか否かを判定する。
ステップS42において、高さhtが建物の高さ以上であると判定されたとき、電力推定手段13は、電波の伝搬モデルMDL1に基づいて位置[xri_j,yri_j,hri_j]における電波の受信電力RSSI_ESTi_jを推定する(ステップS43)。
一方、ステップS42において、高さhtが建物の高さ以上でないと判定されたとき、電力推定手段13は、電波の伝搬モデルMDL2に基づいて位置[xri_j,yri_j,hri_j]における電波の受信電力RSSI_ESTi_jを推定する(ステップS44)。そして、ステップS43またはステップS44の後、一連の動作は、図9のステップS5へ移行する。
図11は、図10のステップS41の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、図9のステップS3の後、電力推定手段13は、距離xW、位置[xt,yt,ht]、位置[xri_j,yri_j,hri_j]、位置[xRV,yRV,hRV]および位置[xRH,yRH,hRH]を用いて、水平角φ1,φ3、仰角θ1、俯角θ2,θ3および入射角θG,φWを算出する(ステップS411)。この場合、電力推定手段13は、環境情報INFOCIRから距離xW、位置[xRV,yRV,hRV]および位置[xRH,yRH,hRH]を検出し、その検出した距離xW、位置[xRV,yRV,hRV]および位置[xRH,yRH,hRH]を用いて水平角φ1,φ3、仰角θ1、俯角θ2,θ3および入射角θG,φWを算出する。
ステップS411の後、電力推定手段13は、位置[xt,yt,ht]および位置[xri_j,yri_j,hri_j]を用いて、式(3),(4),(8)によってそれぞれ経路長d1,d2,d3を算出する(ステップS412)。
そして、電力推定手段13は、ステップS411において算出した水平角φ1を用いてφ’1=π-φ1によって水平角φ’1を算出する(ステップS413)。
その後、電力推定手段13は、フレネルの法則によって屈折角φGt,φtを求める(ステップS414)。
引き続いて、電力推定手段13は、入射角θGおよび屈折角φGtを用いて式(5),(6)によって反射係数RV(θG)を算出し、入射角φWおよび屈折角φtを用いて式(9),(10)によって反射係数RH(φW)を算出する(ステップS415)。
そして、電力推定手段13は、環境情報INFOCIRから発射源Sの送信電力Ptを検出し、周波数fjに基づいて電波の波長λjを算出し、その算出した波長λjと、送信電力Ptとを用いて式(13)によって定数P0を算出する(ステップS416)。その後、一連の動作は、図10のステップS42へ移行する。
図12は、図10のステップS43の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図12を参照して、図10のステップS42において、高さhtが建物の高さ以上であると判定されたとき、電力推定手段13は、定数P0、仰角θ1、水平角φ’1、俯角θ2、反射係数RV(θG)および経路長d1,d2を式(11)に代入して受信電力PR,hr≧20を算出する(ステップS431)。
そして、電力推定手段13は、その算出した受信電力PR,hr≧20を位置[xri_j,yri_j,hri_j]における受信電力RSSI_ESTi_jとして推定する(ステップS432)。その後、一連の動作は、図9のステップS5へ移行する。
図13は、図10のステップS44の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図13を参照して、図10のステップS42において、高さhtが建物の高さ以上でないと判定されたとき、電力推定手段13は、定数P0、仰角θ1、水平角φ’1,φ3、俯角θ2,θ3、反射係数RV(θG),RH(φW)および経路長d1,d2,d3を式(12)に代入して受信電力PR,hr<20を算出する(ステップS441)。
そして、電力推定手段13は、その算出した受信電力PR,hr<20を位置[xri_j,yri_j,hri_j]における受信電力RSSI_ESTi_jとして推定する(ステップS442)。その後、一連の動作は、図9のステップS5へ移行する。
図9に示すフローチャート(図10から図13に示すフローチャートを含む)によれば、電力推定手段13は、入力された周波数f1~fmの各々について位置[xr1_j,yr1_j,hr1_j]~[xrn_j,yrn_j,hrn_j]の全てについて電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを推定する。
そして、電波品質を推定する位置[xri_j,yri_j,hri_j]のx座標xri_j、y座標yri_jおよび高さhri_jの全てを変化させて電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを推定した場合、3次元空間の任意の位置における電波品質を推定できる。
また、電波品質を推定する位置[xri_j,yri_j,hri_j]の高さhri_jを一定に保持してx座標xri_jおよびy座標yri_jを変化させて電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを推定した場合、一定の高さにおける電波品質を推定できる。
更に、電波品質を推定する位置[xri_j,yri_j,hri_j]のx座標xri_jおよびy座標yri_jを一定に保持して高さhri_jのみを変化させて電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを推定した場合、大地の一定の位置において高さ方向の電波品質を推定できる。
更に、電波品質を推定する位置[xri_j,yri_j,hri_j]のx座標xri_jを一定に保持してy座標yri_jおよび高さhri_jを変化させて電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを推定した場合、x軸に垂直な面における電波品質を推定できる。
更に、電波品質を推定する位置[xri_j,yri_j,hri_j]のy座標yri_jを一定に保持してx座標xri_jおよび高さhri_jを変化させて電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを推定した場合、y軸に垂直な面における電波品質を推定できる。
このように、位置[xri_j,yri_j,hri_j]のx座標xri_j、y座標yri_jおよび高さhri_jの少なくとも1つを変化させて電波品質RSSI_Ratio1_1~RSSI_Ration_mを推定することによって所望の位置における電波品質を推定できる。
発射源Sを配置する場所として、市街地、郊外および開放地を想定した場合、図9に示すフローチャート(図10から図13に示すフローチャートを含む)によれば、電力推定手段13は、市街地では、発射源Sの配置位置の高さhtと建物の高さとの比較結果に応じて電波の伝搬モデルMDL1または電波の伝搬モデルMDL2に基づいて位置[xri_j,yri_j,hri_j]における受信電力RSSI_ESTi_jを推定することになり、郊外では、電波の伝搬モデルMDL1に基づいて位置[xri_j,yri_j,hri_j]における受信電力RSSI_ESTi_jを推定することが多くなり、開放地では、殆ど、電波の伝搬モデルMDL1に基づいて位置[xri_j,yri_j,hri_j]における受信電力RSSI_ESTi_jを推定することになる。
従って、図9に示すフローチャート(図10から図13に示すフローチャートを含む)に従えば、発射源Sが市街地、郊外および開放地のいずれに設置されていても、電波の伝搬モデルMDL1および電波の伝搬モデルMDL2のいずれかに基づいて位置[xri_j,yri_j,hri_j]における受信電力RSSI_ESTi_jを推定できる。
なお、図10のステップS42においては、高さhtが建物の高さ以上であるか否かを判定すると説明したが、発射源Sが市街地に配置される場合、高さが異なる複数の建物が存在する。従って、発射源Sが市街地に配置される場合、図10のステップS42においては、高さhtが建物の高さの平均以上であるか否かを判定するようにしてもよい。
図6において説明した電波の伝搬環境において測定した受信電力と推定した受信電力との比較について説明する。この比較結果の例として、図6に示す飛行経路のうち、最も北側(図6の紙面における上側)の1往路(yr=-37m)と、最も南側(図6の紙面における下側)の1復路(yr=-52m)との比較結果を示す。
図14は、北側往路(yr=-37m)における受信電力の比較を示す図である。また、図15は、南側復路(yr=-52m)における受信電力の比較を示す図である。
図14および図15において、縦軸は、受信電力RSSIを表し、横軸は、x軸方向の距離xrを表す。また、曲線は、推定された受電電力を示し、点は、測定された受信電力を示す。更に、電波品質を推定する位置の高さhrは、5m、10m、20mおよび30mである。
図14を参照して、高さhrが20m以上である場合、xr<20m~40mの領域において、推定された受信電力RSSI_ESTと測定された受信電力RSSI_MESとの差は、最大で14dB程度である。それ以外の領域においては、受信電力RSSI_ESTと受信電力RSSI_MESとの差異は、5dB未満に収まっており、良い一致が見られる。
図15を参照して、高さhrが20m以上である場合、xr<20m~40mの領域において、受信電力RSSI_ESTと受信電力RSSI_MESとの差異は、残っているが、東側(図15の紙面における右側)に移動している。また、高さhr=10mの測定値(受信電力RSSI_MES)は、ほぼ全般的に推定値(受信電力RSSI_EST)よりも低く、その差は、最大で10dB強である。更に、高さhr=5mの測定値(受信電力RSSI_MES)は、40m<xr<70mの領域を中心に推定値(受信電力RSSI_EST)よりも高めでバラツキも大きい。
このように、南側復路(yr=-52m)において測定値(受信電力RSSI_MES)と推定値(受信電力RSSI_EST)との差異が大きい要因として、南側復路(yr=-52m)の大地が傾斜面であることが想定される。
図14および図15に示す測定値(受信電力RSSI_MES)と推定値(受信電力RSSI_EST)との差異は、最大で14dB程度であり、概ね、5dB未満である。
従って、測定値(受信電力RSSI_MES)が推定値(受信電力RSSI_EST)から5dBずれているとすると、図8に示すaは、0.91~1.10の範囲となり、受信電力の比RSSI_Ratioは、0.476~0.524となる。
そこで、上述した方法によって求めた受信電力の比RSSI_Ratioが0.475~0.525の範囲内であれば、電波品質が良好であると判定し、受信電力の比RSSI_Ratioが0.475~0.525の範囲外であれば、電波品質が良好でないと判定するようにしてもよい。この場合、0.475~0.525は、基準値Stdを構成する。
なお、電力推定手段13は、発射源Sの配置位置の高さhtが建物の高さよりも低い場合、上述した電波の伝搬モデルMDL2に代えて、奥村-秦モデルを用いて水平方向の任意の位置における受信電力RSSI_ESTを推定してもよい。
電力推定手段13は、奥村-秦モデルを用いて受信電力RSSI_ESTを推定する場合、奥村-秦モデルにおける複数の電波伝搬モデルを地形データと対応付けて保持しており、標高地図または航空写真を外部から受ける。そして、電力推定手段13は、標高地図または航空写真に基づいて抽出した地形データに最も近い電波伝搬モデルを複数の電波伝搬モデルから選択し、その選択した電波伝搬モデルを用いて受信電力RSSI_ESTを推定する。
図16は、奥村-秦モデルにおける電界強度と距離との関係を示す図である。図16において、縦軸は、電界強度を表し、横軸は、距離を表す。また、曲線k2は、開放地における電界強度と距離との関係を示し、曲線k3は、郊外における電界強度と距離との関係を示し、曲線k4は、中小都市における電界強度と距離との関係を示し、曲線k5は、大都市における電界強度と距離との関係を示す。
図16に示す曲線k2~k5は、次式(14)によって表される。
式(14)において、A,Bは、曲線k2~k5に共通であり、a(hm)およびCは、エリア毎に異なる。また、LCHは、電界強度であり、dは、距離であり、hmは、端末装置2のアンテナ高さである。
式(14)のA,Bは、次式(15)によって表される。
式(15)において、fは、伝搬する電波の周波数であり、htは、発射源Sのアンテナ高さである。
電波の伝搬環境が開放地である場合(曲線k2)、a(hm)およびCは、次式(16)によって表される。
電波の伝搬環境が郊外である場合(曲線k3)、a(hm)およびCは、次式(17)によって表される。
電波の伝搬環境が中小都市である場合(曲線k4)、a(hm)およびCは、次式(18)によって表される。
電波の伝搬環境が大都市である場合(曲線k5)、a(hm)およびCは、次式(19)によって表される。
式(19)に示すように、大都市においては、周波数によってa(hm)が異なる。
電力推定手段13は、式(14)~式(19)を保持しており、地形データが開放地に最も近いとき、式(14),(15),(16)によって曲線k2に示す電波伝搬特性を演算し、その演算した電波の伝搬モデルに基づいて位置[xr,yr,hr]における受信電力RSSI_ESTを推定する。
また、電力推定手段13は、地形データが郊外に最も近いとき、式(14),(15),(17)によって曲線k3に示す電波の伝搬モデルを演算し、その演算した電波の伝搬モデルに基づいて位置[xr,yr,hr]における受信電力RSSI_ESTを推定する。
更に、電力推定手段13は、地形データが中小都市に最も近いとき、式(14),(15),(18)によって曲線k4に示す電波の伝搬モデルを演算し、その演算した電波伝搬特性に基づいて位置[xr,yr,hr]における受信電力RSSI_ESTを推定する。
更に、推定手段17は、地形データが大都市に最も近いとき、式(14),(15),(19)によって曲線k5に示す電波の伝搬モデルを演算し、その演算した電波の伝搬モデルに基づいて位置[xr,yr,hr]における受信電力RSSI_ESTを推定する。
図17は、この発明の実施の形態による端末装置2の概略図である。図17を参照して、端末装置2は、電波品質推定装置1と、アンテナ21と、送受信手段22と、ホストシステム23と、GPS(Global Positioning System)受信機24とを備える。
送受信手段22は、ホストシステムから共用周波数fj(f1~fmのいずれか)を受け、その受けた共用周波数fjを有する電波をアンテナ21を介して受信し、電波を受信したときの受信電力RSSI_MESi_jを検出する。そして、送受信手段22は、その検出した受信電力RSSI_MESi_jをホストシステム23へ出力する。
また、送受信手段22は、アンテナ21を介して信号を受信し、その受信した受信信号をホストシステム23へ出力する。
更に、送受信手段22は、ホストシステム23から送信信号を受けると、その受けた送信信号をアンテナ21を介して送信する。
ホストシステム23は、共用周波数fjを送受信手段22へ出力する。また、ホストシステム23は、受信電力RSSI_MESi_jを送受信手段22から受け、端末装置2の位置を示す位置情報[xr,yr,hr]をGPS受信機24から受ける。そして、ホストシステム23は、共用周波数fj、位置[xr,yr,hr]および受信電力RSSI_MESi_jを相互に対応付けて電波品質推定装置1へ出力する。即ち、ホストシステム23は、測定データDを電波品質推定装置1へ出力する。また、ホストシステム23は、地図データを保持しており、位置[xr,yr,hr]および地図データに基づいて、端末装置2の周辺における電波の伝搬環境に関する環境情報INFOCIRを生成して電波品質推定装置1へ出力する。
ホストシステム23は、電波品質RSSI_Ratioを電波品質推定装置1から受け、その受けた電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内であるか否かを判定する。
ホストシステム23は、電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内であると判定したとき、送信信号を生成し、その生成した送信信号を送受信手段22へ出力する。
一方、ホストシステム23は、電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内でないと判定したとき、送信信号を生成しない。つまり、ホストシステム23は、送信信号の送信を停止する。
GPS受信機24は、GPSによって端末装置2の位置を示す位置情報[xr,yr,hr]を取得し、その取得した位置情報[xr,yr,hr]をホストシステム23へ出力する。
電波品質推定装置1は、測定データDをホストシステム23から受け、その受けた測定データDの共用周波数fj、位置[xr,yr,hr]および受信電力RSSI_MESi_jを対応表TBLに格納する。また、電波品質推定装置1は、環境情報INFOCIRをホストシステム23から受ける。
そして、電波品質推定装置1は、上述した方法によって電波品質RSSI_Ratioを推定し、その推定した電波品質RSSI_Ratioをホストシステム23へ出力する。
図18は、図17に示す端末装置2の動作を説明するためのフローチャートである。図18を参照して、端末装置2の動作が開始されると、端末装置2のホストシステム23は、上述した方法によって測定データDを収集し(ステップS21)、その収集した測定データDを電波品質推定装置1へ出力する。
電波品質推定装置1の受付手段11は、ホストシステム23から測定データDを受け、その受けた測定データDを記憶手段12の対応表TBLに格納する。
その後、ホストシステム23は、上述した方法によって環境情報INFOCIRを取得し(ステップS22)、その取得した環境情報INFOCIRを電波品質推定装置1へ出力する。
電波品質推定装置1の受付手段11は、ホストシステム23から環境情報INFOCIRを受け、その受けた環境情報INFOCIRを電力推定手段13へ出力する。
そして、ホストシステム23は、電波品質を推定すると判定すると(ステップS23)、GPS受信機24から受けた位置情報を、電波品質を推定する位置[xr,yr,hr]として取得し(ステップS24)、その取得した位置[xr,yr,hr]を電波品質推定装置1へ出力する。
そうすると、電波品質推定装置1は、図9に示すフローチャート(図10から図13に示すフローチャートを含む)に従って位置[xr,yr,hr]における電波品質RSSI_Ratioを推定し(ステップS25)、その推定した電波品質RSSI_Ratioをホストシステム23へ出力する。
ホストシステム23は、電波品質RSSI_Ratioを電波品質推定装置1から受ける。そして、ホストシステム23は、電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内であるか否かを判定する(ステップS26)。
ステップS26において、電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内でないと判定されたとき、一連の動作は、ステップS23へ移行する。その後、ステップS26において、電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内であると判定されるまで、ステップS23~ステップS26が繰り返し実行される。
そして、ステップS26において、電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内であると判定されると、ホストシステム23は、送受信手段22およびアンテナ21を介して無線通信を実行する(ステップS27)。
その後、ホストシステム23は、無線通信を停止するか否かを判定する(ステップS28)。
ステップS28において、無線通信を停止しないと判定されたとき、一連の動作は、ステップS23へ移行する。その後、ステップS28において、無線通信を停止すると判定されるまで、ステップS23~ステップS28が繰り返し実行される。そして、ステップS28において、無線通信を停止すると判定されると、端末装置2の動作が終了する。
このように、端末装置2は、電波品質RSSI_Ratioを推定し、その推定した電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内であるとき、無線通信を実行する(ステップS25、ステップS26の“YES”およびステップS27参照)。
従って、電波品質が良い電波を用いて無線通信を行うことができる。電波品質RSSI_Ratioが基準値Std以内であるとき、推定した受信電力RSSI_ESTが測定した受信電力RSSI_MESにほぼ一致するからである。
なお、図18に示すフローチャートにおいては、端末装置2が測定データDを収集すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、測定データDは、予め、電波品質推定装置1の記憶手段12に記憶されていてもよい。この場合、図18に示すステップS21は、実行されない。
図19は、この発明の実施の形態によるデータ構造を示す図である。図19を参照して、この発明の実施の形態によるデータ構造D_STRは、周波数fと、位置[xr,yr,hr]と、受信電力RSSI_MESと、受信電力RSSI_ESTとを含む。
周波数f、位置[xr,yr,hr]、受信電力RSSI_MESおよび受信電力RSSI_ESTは、相互に対応付けられる。
位置[xr1_1,yr1_1,hr1_1],[xr2_1,yr2_1,hr2_1],・・・,[xrn_1,yrn_1,hrn_1]、受信電力RSSI_MES1_1,RSSI_MES2_1,・・・,RSS_MESIn_1および受信電力RSSI_EST1_1,RSSI_EST2_1,・・・,RSSI_ESTn_1は、周波数f1に対応付けられ、位置[xr1_2,yr1_2,hr1_2],[xr2_2,yr2_2,hr2_2],・・・,[xrn_2,yrn_2,hrn_2],受信電力RSSI_MES1_2,RSSI_MES2_2,・・・,RSSI_MESn_2および受信電力RSSI_EST1_2,RSSI_EST2_2,・・・,RSSI_ESTn_2は、周波数f2に対応付けられ、以下、同様にした、位置[xr1_m,yr1_m,hr1_m],[xr2_m,yr2_m,hr2_m],・・・,[xrn_m,yrn_m,hrn_m]、受信電力RSSI_MES1_m,RSSI_MES2_m,・・・,RSSI_MESn_mおよび受信電力RSSI_EST1_m,RSSI_EST2_m,・・・,RSSI_ESTn_mは、周波数fmに対応付けられる。
周波数fおよび位置[xr,yr,hr]は、品質推定手段14が周波数fおよび位置[xr,yr,hr]に対応する受信電力RSSI_MESおよび受信電力RSSI_ESTを検出するのに用いられる。
検出された受信電力RSSI_MESおよび受信電力RSSI_ESTは、品質推定手段14が受信電力の比RSSI_Ratioを推定するのに用いられる。
この発明の実施の形態においては、電波品質推定装置1の動作は、ソフトウェアによって実行されてもよい。この場合、電波品質推定装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備える。
ROMは、図9に示すフローチャート(図10から図13に示すフローチャートを含む)からなるプログラムProg_Aを格納する。そして、CPUは、プログラムProg_AをROMから読み出し、その読み出したプログラムProg_Aを実行して電波品質RSSI_Ratioを推定する。RAMは、各種演算の結果を一時的に記憶する。
また、プログラムProg_Aは、CD,DVD等の記録媒体に記録されて流通してもよい。この場合、CPUは、装着された記録媒体からプログラムProg_Aを読み出し、その読み出したプログラムProg_Aを実行して電波品質RSSI_Ratioを推定する。従って、プログラムProg_Aを記録したCD,DVD等の記録媒体は、コンピュータ(CPU)が読み取り可能な記録媒体である。
また、この発明の実施の形態においては、端末装置2の動作は、ソフトウェアによって実行されてもよい。この場合、端末装置2は、CPU、ROMおよびRAMを備える。
ROMは、図18に示すフローチャート(図9から図13に示すフローチャートを含む))からなるプログラムProg_Bを格納する。そして、CPUは、プログラムProg_BをROMから読み出して実行して電波品質RSSI_Ratioに基づいた無線通信を実行する。
また、プログラムProg_Bは、CD,DVD等の記録媒体に記録されて流通してもよい。この場合、CPUは、装着された記録媒体からプログラムProg_Bを読み出して実行して電波品質RSSI_Ratioに基づいた無線通信を実行する。従って、プログラムProg_Bを記録したCD,DVD等の記録媒体は、コンピュータ(CPU)が読み取り可能な記録媒体である。
上記においては、発射源Sの高さhrが20m以上である場合、電波の伝搬モデルMDL1に基づいて受信電力RSSI_ESTを推定し、発射源Sの高さhrが20mよりも低い場合、電波の伝搬モデルMDL2に基づいて受信電力RSSI_ESTを推定すると説明するとしたが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、発射源Sの高さhrが建物の高さまたは平均高さ以上である場合、電波の伝搬モデルMDL1に基づいて受信電力RSSI_ESTを推定し、発射源Sの高さhrが建物の高さまたは平均高さよりも低い場合、電波の伝搬モデルMDL2に基づいて受信電力RSSI_ESTを推定するようにしてもよい。
また、上記においては、対応表TBLは、周波数fを含むと説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、共用周波数が1個である場合、対応表TBLは、周波数fを含んでいなくてもよい。即ち、対応表TBLは、位置xri,yri,hri]および受信電力RSSI_MESiが相互に対応付けられた構成からなる。この場合、図9に示すフローチャートにおいては、ステップS1,S5において「周波数f」が削除されるとともに、ステップS2,S10,S11が削除される。従って、電波品質推定装置1は、n個の位置[xr1,yr1,hr1]~[xr1,yr1,hr1]の全てについて受信電力RSSI_EST1~RSSI_ESTnを推定するとともに受信電力の比RSSI_Ratio1~RSSI_Rationを推定する。
更に、この発明の実施の形態によれば、SIR(Signal to Interference Ratio)が既知である場合、上述した方法によって推定された電波品質(=RSSI_Ratio)から無線通信のスループットを求め、その求めたスループットを評価するようにしてもよい。
更に、この発明の実施の形態においては、上述した伝搬モデルMDL1,2および奥村-秦モデルに限らず、電波の伝搬環境によって異なる伝搬モデルであれば、どのような伝搬モデルを用いてもよい。
更に、上述したように、品質推定手段14がRSSI_EST/(RSSI_EST+RSSI_MES)を演算するのは、次の理由による。
受信電力RSSI_ESTは、上述したように、発射源Sの送信電力Ptおよび位置[xt,yt,ht]を用いて電波の伝搬モデルに基づいて推定される受信電力であり、その推定された受信電力RSSI_ESTを評価したいからである。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。