以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本実施の形態の土砂災害予測装置50の構成の一例を示すブロック図である。土砂災害予測装置50は、装置全体を制御する制御部51、入力部52、接峰面特定部53、接谷面特定部54、境界領域特定部55、危険領域特定部56、記憶部57、出力部58、流路特定部59、流域面積算出部60、危険度算出部61、不安定度算出部62、傾斜値算出部63、及び表示データ生成部64などを備える。
入力部52は、土砂災害を予測する対象流域のDEM(Digital Elevation Model:数値標高モデル)を取得する。DEMには、例えば、1mグリッド毎の標高データが含まれる。
記憶部57は、入力部52で取得したDEM、土砂災害予測装置50の各部で行う処理に用いるデータ、及び処理によって得られたデータなどを記憶する。
出力部58は、表示データ生成部64で生成したデータを表示装置(不図示)に出力する。
図2は対象流域の一例を示す模式図である。流域は、例えば、地形量の集積単位であり、本明細書では、土砂災害を予測する領域の単位とすることができる。図2の例では、異なる濃淡により、13個の流域を図示している。流域と流域との境界は流域界という。また、各流域には、流路(流線ともいう)を図示している。流路は、水が流れる仮想の流線であり、流域のある地点の最大傾斜を結ぶ線であり、等ポテンシャル線に直交する線で、合流はするが交差はしない。流路は、標高データを用いて求めることができる。流路の詳細については後述する。
接峰面特定部53は、標高データに基づいて対象流域の接峰面を特定する。接峰面は、土砂の侵食前の地表を想定した仮想面である。接峰面と実際(現在)の地形面とに高さの差がある部分は、近過去から現在までに侵食された土砂の程度を表すと考えられる。
接峰面の特定は、以下のようにして行うことができる。まず、対象流域にグリッド領域(窓領域ともいう)を設定する。また、対象流域の全グリッドに対応させて、データ格納することができるメモリを準備しておく。
図3はグリッド領域の一例を示す説明図である。図3の例は、6mグリッドの例を図示している。すなわち、縦横1m間隔のグリッドを、縦横それぞれに6個並べたものである。図3は斜め方向から見た図を示しているが、グリッドは、正方形をなすように構成することができる。なお、グリッドの間隔は、1mに限定されるものではない。
(処理1)グリッド領域の中心のグリッド(図3では、黒丸で示すグリッド)にグリッド領域内の各グリッドの標高値の平均値である平均標高を代入する。グリッド領域を1グリッドずつ移動して対象流域全体で同様の計算を行う。
(処理2)次に、対象流域の一のグリッドの元の標高値と、当該一のグリッドに代入した平均標高とを比較し、平均標高の方が元の標高値よりも低い場合、当該グリッドに元の標高値を代入する。この処理を対象流域のすべてのグリッドについて行う。
上述の処理1及び処理2を、所定回数(例えば、50回など)繰り返す。なお、所定回数は50回に限定されるものではなく、標高の変化が少なくなれば、処理1及び処理2を終了してもよい。最終的にグリッドに代入された標高値により接峰面を特定することができる。この処理では、周囲と比較して標高の高いグリッドの標高は元の標高がそのまま保存され、周囲と比較して標高の低いグリッドの標高は増加することになる。
接谷面特定部54は、標高データに基づいて当該対象流域の接谷面を特定する。接谷面は、土砂の侵食が進んだ状態の仮想面を表す。実際(現在)の地形面と接谷面とに高さの差がある部分は、近未来に侵食される可能性がある土砂の程度を表すと考えられる。
接谷面の特定は、以下のようにして行うことができる。まず、対象流域にグリッド領域を設定する。また、対象流域の全グリッドに対応させて、データ格納することができるメモリを準備しておく。
(処理3)グリッド領域の中心のグリッド(図3では、黒丸で示すグリッド)にグリッド領域内の各グリッドの標高値の平均値である平均標高を代入する。グリッド領域を1グリッドずつ移動して対象流域全体で同様の計算を行う。
(処理4)次に、対象流域の一のグリッドの元の標高値と、当該一のグリッドに代入した平均標高とを比較し、平均標高の方が元の標高値よりも高い場合、当該グリッドに元の標高値を代入する。この処理を対象流域のすべてのグリッドについて行う。
上述の処理3及び処理4を、所定回数(例えば、50回など)繰り返す。なお、所定回数は50回に限定されるものではなく、標高の変化が少なくなれば、処理3及び処理4を終了してもよい。最終的にグリッドに代入された標高値により接谷面を特定することができる。この処理では、周囲と比較して標高の低いグリッドの標高は元の標高がそのまま保存され、周囲と比較して標高の高いグリッドの標高は減少することになる。
境界領域特定部55は、第1境界領域特定部としての機能を有する。境界領域特定部55は、接峰面特定部53が特定した接峰面と当該対象流域の地形面との差が所定値より大きい領域と、特定した接峰面と当該対象流域の地形面との差が当該所定値よりも小さい領域との境界領域である第1境界領域を特定する。対象流域の地形面とは、標高データによって特定される地表面である。
所定値は、接峰面と地形面とが略同じであると考えられる領域を特定することができるものであれば、適宜設定することができる。すなわち、第1境界領域は、接峰面と地形面との差が離れている領域と、接峰面と地形面との差が略同じであると考えられる領域との境界領域である。所定値は、例えば、1mとすることができるが、これに限定されるものではない。
境界領域特定部55は、第2境界領域特定部としての機能を有する。境界領域特定部55は、当該対象流域の地形面と特定した接谷面との差が所定値より大きい領域と、当該対象流域の地形面と特定した接谷面との差が当該所定値より小さい領域との境界領域である第2境界領域を特定する。すなわち、第2境界領域は、地形面と接谷面との差が離れている領域と、地形面と接谷面との差が略同じであると考えられる領域との境界領域である。
図4は接峰面、接谷面、地形面、第1境界領域及び第2境界領域の一例を示す模式図である。図4では、地形面を実線で表し、接峰面を一点鎖線で表し、接谷面を二点鎖線で表している。また、第1境界領域及び第2境界領域を破線で表している。図4では、対象流域の一部を図示している。また、図4において、図の上側が対象流域の上流側であり、図の下側が対象流域の下流側であるとする。
対象流域の上流側では、地形面と接峰面とが略同じ高さになっている。また、対象流域の下流側では、地形面と接谷面とが略同じ高さになっている。第1境界領域又はその近傍で、地形面と接峰面との高さの差が所定値より大きくなり、下流側に向かって、高さの差が大きくなる。見方を変えれば、上流側から第2境界領域又はその近傍に向かって、地形面と接谷面との高さの差が減少し、第2境界領域又はその近傍で地形面と接谷面とが略同じ高さになる。
流路特定部59は、対象流域内の流路(流線ともいう)を特定する。流路は、水が流れる仮想の流線であり、流域のある地点の最大傾斜を結ぶ線であり、等ポテンシャル線に直交する線で、合流はするが交差はしない。流路は、標高データを用いて求めることができる。流路の始点は、流域界とすることができ、流路の終点は、対象流域での標高で判断することができ、例えば、予め定めた標高に達した地点を終点とすることができる。
境界領域特定部55は、第1地点特定部としての機能を有し、流路特定部59が特定した流路と第1境界領域とが交差する第1地点を特定する。また、境界領域特定部55は、第2地点特定部としての機能を有し、当該流路と第2境界領域とが交差する第2地点を特定する。すなわち、第1地点は、流路上の第1境界領域であり、第2地点は、流路上の第2境界領域である。
図5は接峰面、接谷面及び地形面の流路に沿った高さ方向の断面の一例を示す模式図である。図5では、地形面を実線で表し、接峰面を一点鎖線で表し、接谷面を二点鎖線で表している。図5において、接峰面と地形面とが交わる箇所が第1境界領域であり、前述の第1地点(図の地点A)である。また、接谷面と地形面とが交わる箇所が第2境界領域であり、前述の第2地点(図の地点B)である。
図5において、接峰面と地形面との高さの差がある領域(第2境界領域を含む)は、近過去から現在までの間に土砂が侵食された侵食土砂部分である。接谷面と地形面との高さの差がある領域(第1境界領域を含む)は、近未来に侵食される可能性のある不安定土砂部分である。また、第1境界領域と第2境界領域との間の領域は、土砂が侵食された領域であって、かつ不安定土砂が存在する領域ということができる。図5は、不安定土砂の断面構造を表現している。
第1境界領域は、高さ方向に沿ってお互いに離れていた接峰面と地形面とが略同じになる領域であるから、土砂が侵食された領域の上流側(上流端)であり、近未来に侵食される可能性がある不安定土砂が存在する領域である。また、第2境界領域は、高さ方向に沿ってお互いに離れていた地形面と接谷面とが略同じになる領域であるから、不安定土砂が存在する領域の下流側(下流端)であり、不安定土砂の崩壊の端緒となり得る領域である。
第1境界領域から上流側の所定領域(例えば、地形面の傾斜が緩やかなになる領域)までの領域は、土砂の侵食はないが、不安定土砂が存在する領域である。また、第2境界領域から下流側の所定領域(例えば、地形面の傾斜が緩やかなになる領域)までの領域は、上流側の不安定土砂が地すべり又は崩壊した場合に、当該不安定土砂が流れ込む領域であるといえる。
危険領域特定部56は、第1境界領域及び第2境界領域に基づいて当該対象流域の危険領域を特定する。危険領域は、第1境界領域と第境界領域との間の領域、第1境界領域から上流側の所定領域(例えば、地形面の傾斜が緩やかなになる領域)までの領域、又は第2境界領域から下流側の所定領域(例えば、地形面の傾斜が緩やかなになる領域)までの領域を含めることができる。
上述の構成により、近未来に移動(地すべり、崩壊など)すると推定される不安定土砂が存在する位置を特定することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。
また、危険領域特定部56は、第1境界領域と第2境界領域との間の領域を危険領域として特定することができる。第1境界領域と第2境界領域との間の領域は、土砂が侵食された領域であって、かつ不安定土砂が存在する領域であるので、土砂の移動(地すべり、崩壊など)が発生する可能性が比較的高い領域である。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
図6は侵食土砂に基づく表示態様及び不安定土砂に基づく表示態様の一例を示す説明図である。表示データ生成部64は、侵食土砂データ生成部としての機能を有し、対象流域内を、接峰面と地形面との高さの差ΔH1に応じて異なる表示態様で表示するための侵食土砂データを生成する。接峰面と地形面との高さの差ΔH1は、土砂の侵食高さということができる。
異なる表示態様は、例えば、図6に示すように、侵食高さΔH1を所定の色(例えば、黒色)で表現し、侵食高さΔH1に応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、侵食高さの高い濃い黒色の領域から徐々に薄い灰色となる領域が、土砂が侵食された領域であって、不安定土砂が存在する領域であることになる。生成された侵食土砂データを地形データに適用することにより、土砂災害の発生が予測される危険領域を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。なお、濃淡の変化は、連続的に表してもよく、濃淡の大小を複数の区分に分類して段階的に表してもよい。
また、表示データ生成部64は、不安定土砂データ生成部としての機能を有し、対象流域内を、地形面と接谷面との高さの差ΔH2に応じて異なる表示態様で表示するための不安定土砂データを生成する。地形面と接谷面との高さの差ΔH2は、不安定土砂高さということができる。
異なる表示態様は、例えば、図6に示すように、不安定土砂高さΔH2を所定の色(例えば、赤色)で表現し、不安定土砂高さに応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、不安定土砂高さの高い濃い赤色の領域から徐々に薄い赤色となる領域が、土砂が侵食された領域であって、不安定土砂が存在する領域であることになる。また、濃い赤色の領域は、土砂は侵食されていないが不安定土砂が残存している領域であると考えられる。生成された侵食土砂データを地形データに適用することにより、土砂災害の発生が予測される危険領域を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。なお、濃淡の変化は、連続的に表してもよく、濃淡の大小を複数の区分に分類して段階的に表してもよい。
図7は侵食土砂データに基づく侵食土砂図の一例を示す模式図である。図7に示す侵食土砂図は、侵食土砂データに基づいて生成され表示されたものであり、不安定土砂データは用いていない。図7に示すように、濃度が濃い領域から徐々に薄くなる領域は、土砂災害の発生が予測される領域ということができる。
図8は不安定土砂データに基づく不安定土砂図の一例を示す模式図である。図8に示す不安定土砂図は、不安定土砂データに基づいて生成され表示されたものであり、侵食土砂データは用いていない。図8に示すように、濃度が濃い領域から徐々に薄くなる領域は、土砂災害の発生が予測される領域ということができる。
図9は土砂災害予測基本図の一例を示す模式図である。土砂災害予測基本図は、前述の侵食土砂図と不安定土砂図とを重ねた図である。すなわち、土砂災害予測基本図は、侵食土砂データ及び不安定土砂データに基づき生成され表示されたものである。なお、濃淡の変化は、連続的に表してもよく、濃淡の大小を複数の区分に分類して段階的に表してもよい。土砂災害の発生位置の特定には、対象流域の状況などに応じて、侵食土砂図、不安定土砂図又は土砂災害予測基本図の少なくとも一つを用いることができる。
図10は図9の符号Sで囲まれた領域を拡大した拡大図の一例を示す模式図である。図10において、模様を付した領域が危険領域(第1境界領域と第2境界領域との間の領域)を表す。
次に、危険領域の危険度合いを定量化する方法について説明する。
図11は危険領域の不安定度の算出方法の一例を示す模式図である。不安定度算出部62は、第1地点(地点A)と第2地点(地点B)との高さの差、及び第1地点から第2地点までの流路長さに基づいて、土砂の不安定度を算出する。
具体的には、地点Aの標高をDEM(A)とし、地点Bの標高をDEM(B)とする。高さ方向に垂直な平面上での地点Aから地点Bまでの流路長をΔFLとする。地点Aにおける不安定度UNS(A)は、UNS(A)=(DEM(A)-DEM(B))/ΔFLという式で求めることができる。すなわち、不安定度は、流路に沿って存在する、土砂が侵食された領域であって、かつ不安定土砂が存在する領域がどの程度不安定な状態にあるかを定量的に表すものである。
危険度算出部61は、不安定度算出部62が算出した不安定度に基づいて危険領域の危険度を算出する。これにより、土砂災害の発生可能性を定量化することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。
図12は危険領域の危険度の算出方法の他の例を示す説明図である。図12に示すように、危険領域の危険度は、不安定度UNS(A)だけでなく、傾斜値SLP、流域面積の変化量ΔADA、流路の合流数Nなどを用いて算出することができる。以下、それぞれの算出方法について説明する。
傾斜値算出部63は、特定した流路のうち危険領域の流路の所要地点での標高の傾斜値を算出する。標高の傾斜値は、地表面の傾斜の大小を表す数値である。所要地点は、例えば、第2地点(地点B)、第1地点(地点A)、あるいは第1地点と第2地点との間の所要の地点とすることができる。例えば、地点Bの傾斜値SLP(B)は、地点Bの標高値と、地点Bの周囲の8点のグリッド(地点Bからの水平方向の距離は1m又はルート2(√2)mである)の標高値とに基づいて算出することができる。
具体的には、高さ方向をzとし、地点Bの周囲8点のグリッドのうち、グリッドの縦横の一方の方向(例えば、x方向とする)における傾斜値dz/dx、及びグリッドの縦横の他方の方向(例えば、y方向とする)における傾斜値dz/dyにより、地点Bの傾斜値SLP(B)を求めることができる。
傾斜値dz/dxは、式(1)により算出することができ、傾斜値dz/dyは、式(2)により算出することができる。d(x)、d(y)は、それぞれx方向及びy方向のグリッドの大きさであり、例えば、1mとすることができる。また、地点Bの標高値をZ(i,j)とし、x方向のグリッドを、(i-1)、(i)、(i+1)で表し、y方向のグリッドを、(j-1)、(j)、(j+1)で表す。地点Bの傾斜値SLP(B)は、式(3)により算出することができる。
なお、地点Bから地点Aの方に向かって存在する不安定土砂が移動しはじめるには、地点Bの傾斜が大きい方が可能性は高いと考えられ、また一旦土砂が移動しはじめると地点Bより上流側の不安定土砂は、下流側の支えが消失して順次移動を始めるので、所要地点としては、地点Bを用いることが望ましいが、これに限定されない。例えば、地点Aでの標高の傾斜値でもよく、また、地点Aと地点Bとの間の地点での標高の傾斜値でもよく、あるいは、地点Aと地点Bとの間の平均傾斜でもよい。平均傾斜は、地点Bを通過する流路(流線)上、地点Aまでの傾斜値の平均値とすることができる。
危険度算出部61は、傾斜値算出部63が算出した傾斜値に基づいて危険領域の危険度を算出する。これにより、傾斜が大きい領域にある地点をより危険度が大きいと判断することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。
図13は標高と流域面積との関係を示す説明図である。図13の上段の図は、流路の始点から終点までの地形面の標高の推移を示す。流路の途中に、接峰面と接谷面、及び地点Aと地点Bが図示されている。下段の図は、流路の始点から終点までの流域面積の推移を示す。
流域面積算出部60は、流路特定部59が特定した流路に基づいて流域面積を算出する。ある地点での流域面積は、当該地点よりも上流側の流路に沿った流域の面積である。具体的には、当該地点よりも上流側の流路に沿ったグリッドの数にグリッドの面積(例えば、1平方メートル)を乗算して流域面積を求めることができる。
流域面積算出部60は、変化地点特定部としての機能を有し、算出した流域面積に基づいて流域面積が不連続に変化する変化地点を特定する。例えば、予め閾値を設定しておき、流路の下流側から上流側に向かって(上流側から下流側でもよい)流域面積を探索し、流域面積の変化が閾値より大きい地点を変化地点とすることができる。図13の例では、地点Aの上流側の地点C(変化地点)において、流域面積の変化量ΔADAが閾値よりも大きくなっている。なお、流域面積の大きな変化は、流路の合流が要因と考えられる。
危険度算出部61は、流域面積算出部60が特定した変化地点での流域面積の変化量ΔADAに基づいて危険領域の危険度を算出する。流域面積の変化量が大きいほど、多くの雨水が流れるので、土砂災害の発生の可能性が高くなる。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
また、危険度算出部61は、流域面積算出部60が特定した変化地点のうち、第1地点(地点A)の上流に存在する変化地点(地点C)での流域面積の変化量ΔADに基づいて危険領域の危険度を算出する。第1地点の上流に変化地点が存在すると、多くの雨水により不安定土砂が流される可能性が高くなる。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
なお、変化地点は、地点Aの上流側に限定されるものではなく、地点Aと地点Bとの間の地点でもよく、地点Bから下流側に向かって、地点Aと地点Bとの間の区間の長さと同程度の範囲内の領域内の地点でもよい。
また、流域面積算出部60は、合流地点特定部としての機能を有し、特定した流路に基づいて流路の合流地点を特定する。
危険度算出部61は、第1地点(地点A)の上流に存在する合流地点での流路の合流数に基づいて危険領域の危険度を算出する。流路の合流数が多いほど、多くの雨水により不安定土砂が流される可能性が高くなる。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
また、危険度算出部61は、前述の不安定度、傾斜値、流域面積の変化量、及び合流数それぞれに重み係数を乗算して危険領域の危険度を算出する。例えば、図12に示すように、危険領域の危険度E=不安定度UNS(A)+K1・傾斜値SLP+K2・流域面積の変化量ΔADA+K3・流路の合流数N、という式で危険度Eを算出することができる。ここで、K1、K2、K3は重み付け係数である。また、K1、K2、K3の全部又は一部を0とすることができる。これにより、対象流域の状況に応じて、危険度Eの算出に用いる各項を選択することができ、危険度Eの算出を最適化することができる。
図14は危険領域の危険度の表示方法の一例を示す模式図である。図14において、模様を付した領域が危険領域(第1境界領域と第2境界領域との間の領域)を表す。図10の例との違いは、危険度の高低(大小)に応じて危険領域の表示態様を変えている。図14の例では、便宜上、危険度の高低を4段階に分けて図示している。なお、危険領域内で算出される危険度の高低に応じて表示される表示態様は図14の例に限定されない。また、区分数も4に限定されるものではない。表示態様は、危険度の高低を段階的に表示してもよく、連続的に変化するように表示してもよい。
表示データ生成部64は、危険土砂データ生成部としての機能を有し、危険領域内を、危険度算出部61が算出した危険度の大小に応じて異なる表示態様で表示するための危険土砂データを生成する。
不安定土砂に基づく危険度を用いることにより、土砂災害の発生可能性を定量化することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。また、定量化した発生可能性(危険度)を、危険度の大小に応じて表示態様を変えて表示することができるので、土砂災害の発生が予測される危険領域を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
また、表示データ生成部64により、対象流域の危険領域内を、危険度算出部61で算出した危険度の大小に応じて異なる表示態様で表示する地図情報を生成することができる。地図情報は、例えば、図14に示すような地図、又は地図を生成する前の地図データを含む。具体的には、対象領域の地図に危険領域を重畳し、危険領域を危険度に応じて区分した図をさらに重畳したような地図である。このような地図により、土砂災害の発生が予測される危険領域を視認しやすく表現することができる。
図15は土石流災害の前後における地形変化部の一例を示す模式図である。図中、矢印で示す箇所が地形変化部(抜粋)に対応する領域である。図15は、図7に例示した侵食土砂図に地形変化部を重ねて図示したものである。地形変化部は、災害の前後の二時期において侵食高さの差により算出することができる。図15から、本実施の形態の土砂災害予測装置50により特定した危険領域が地形変化部と一致していることが分かる。
表示データ生成部64は、傾斜量データ生成部としての機能を有し、危険領域内を、傾斜値算出部63が算出した傾斜値の大小に応じて異なる表示態様で表示するための傾斜量データを生成することができる。
図16は傾斜量データに基づく傾斜量図の一例を示す模式図である。図16に示すように、例えば、傾斜値(傾斜量)が大きいほど濃度を濃く表示することができる。なお、図16に示す表示態様は一例であって、傾斜量の大小が分かれば、図16に示す表示態様に限定されない。
図17は土砂災害予測基本図の他の例を示す模式図である。図17に示す土砂災害予測基本図は、図7に例示した侵食土砂図に図16に例示した傾斜量を重ね合わせた図である。すなわち、図17の土砂災害予測基本図は、侵食土砂データ及び傾斜量データに基づき生成され表示されたものである。なお、濃淡の変化は、連続的に表してもよく、濃淡の大小を複数の区分に分類して段階的に表してもよい。土砂災害の発生位置の特定には、対象流域の状況などに応じて、図17に示す土砂災害予測基本図を用いることもできる。なお、図示していないが、図9に例示した土砂災害予測基本図に図16に例示した傾斜量を重ね合わせ図を土砂災害予測基本図としてもよい。
図18は本実施の形態の土砂災害予測装置50の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下では、便宜上処理の主体を制御部51として説明する。制御部51は、標高データを取得し(S11)、対象流域の接峰面及び接谷面を特定する(S12)。接峰面及び接谷面の特定処理は後述する。制御部51は、第1境界領域及び第2境界領域を特定し(S13)、特定した第1境界領域及び第2境界領域に基づいて危険領域を特定する(S14)。
制御部51は、対象流域の流路網を特定し(S15)、特定した流路、第1境界領域及び第2境界領域に基づいて、第1地点及び第2地点を特定して、危険領域の不安定度を算出する(S16)。制御部51は、危険領域の傾斜値を算出し(S17)、流域面積が不連続に変化する変化地点における流域面積の変化量を算出する(S18)。
制御部51は、流路の合流地点における合流数を算出し(S19)、算出した不安定度、傾斜値、流域面積の変化量及び流路の合流数に重み付け係数を付して、危険領域の危険度を算出する(S20)。
制御部51は、侵食土砂データを生成し(S21)、不安定土砂データを生成し(S22)、危険土砂データを生成し(S23)、処理を終了する。
図19は本実施の形態の土砂災害予測装置50による接峰面特定の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部51は、対象流域を設定し(S31)、対象流域上にグリッド領域を設定する(S32)。制御部51は、グリッド領域の中心グリッドにグリッド領域内の各グリッドの標高値の平均標高を代入する(S33)。
制御部51は、対象流域のすべてのグリッドについて、上述の処理が終了したか否かを判定し(S34)、すべてのグリッドについて処理を終了していない場合(S34でNO)、グリッド領域を1グリッド移動し(S35)、ステップS33以降の処理を続ける。対象流域のすべてのグリッドについて処理を終了した場合(S34でYES)、制御部51は、グリッドの元の標高値と当該グリッドの平均標高とを比較する(S36)。
制御部51は、平均標高が元の標高値より小さいか(低いか)否かを判定し(S37)、平均標高が元の標高値より小さい場合(S37でYES)、当該グリッドに元の標高値を代入する(S38)。平均標高が元の標高値より小さくない場合(S37でNO)、制御部51は、ステップS38の処理を行うことなく、当該グリッドに平均標高を代入したままにして、後述のステップS39の処理を行う。
制御部51は、すべてのグリッドについて処理を終了したか否かを判定し(S39)、すべてのグリッドについて処理が終了していない場合(S39でNO)、1グリッド移動し(S40)、ステップS36以降の処理を続ける。すべてのグリッドについて処理が終了した場合(S39でYES)、制御部51は、接峰面を特定する(S41)。なお、後述のステップS42で繰り返し回数が規定値に到達していない場合、ステップS41で特定した接峰面は、最終的なものではなく暫定的なものである。
制御部51は、繰り返し回数が規定値であるか否かを判定し(S42)、繰り返し回数が規定値に到達していない場合(S42でNO)、繰り返し回数を1回増やして、ステップS32以降の処理を繰り返す。繰り返し回数が規定値に到達した場合(S42でYES)、制御部51は、処理を終了する。
図20は本実施の形態の土砂災害予測装置50による接谷面特定の処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部51は、対象流域を設定し(S51)、対象流域上にグリッド領域を設定する(S52)。制御部51は、グリッド領域の中心グリッドにグリッド領域内の各グリッドの標高値の平均標高を代入する(S53)。
制御部51は、対象流域のすべてのグリッドについて、上述の処理が終了したか否かを判定し(S54)、すべてのグリッドについて処理を終了していない場合(S54でNO)、グリッド領域を1グリッド移動し(S55)、ステップS53以降の処理を続ける。対象流域のすべてのグリッドについて処理を終了した場合(S54でYES)、制御部51は、グリッドの元の標高値と当該グリッドの平均標高とを比較する(S56)。
制御部51は、平均標高が元の標高値より大きいか(高いか)否かを判定し(S57)、平均標高が元の標高値より大きい場合(S57でYES)、当該グリッドに元の標高値を代入する(S58)。平均標高が元の標高値より大きくない場合(S57でNO)、制御部51は、ステップS58の処理を行うことなく、当該グリッドに平均標高を代入したままにして、後述のステップS59の処理を行う。
制御部51は、すべてのグリッドについて処理を終了したか否かを判定し(S59)、すべてのグリッドについて処理が終了していない場合(S59でNO)、1グリッド移動し(S60)、ステップS56以降の処理を続ける。すべてのグリッドについて処理が終了した場合(S59でYES)、制御部51は、接谷面を特定する(S61)。なお、後述のステップS62で繰り返し回数が規定値に到達していない場合、ステップS61で特定した接谷面は、最終的なものではなく暫定的なものである。
制御部51は、繰り返し回数が規定値であるか否かを判定し(S62)、繰り返し回数が規定値に到達していない場合(S62でNO)、繰り返し回数を1回増やして、ステップS52以降の処理を繰り返す。繰り返し回数が規定値に到達した場合(S62でYES)、制御部51は、処理を終了する。
次に、侵食土砂量の傾斜量を用いた土砂災害予測について説明する。
図21は侵食土砂量の傾斜量の一例を示す模式図である。図21では、便宜上、地形面が傾斜しておらず、海水面に対して平行であるとする。侵食土砂量Esは、接峰面と地形面との高さの差(ΔH1)で示され、土砂の侵食高さと同義である。傾斜値算出部63は、傾斜量算出部としての機能を有し、接峰面と地形面との高さの差で示す侵食土砂量の傾斜量Laを算出する。侵食土砂量の傾斜量Laは、所要の算出地点での侵食土砂量Esと、当該算出地点の周囲の複数の地点での侵食土砂量Esとに基づいて、侵食土砂量の傾斜の大小を表す量(数値)である。具体的には、Z=Esとして、前述の式(1)~式(3)を用いて算出することができる。
図21の例では、地形面と接谷面とが一致する領域と、地形面と接峰面とが一致する領域との間で侵食土砂量の傾斜量Laが最も大きくなっている。なお、図21は便宜上、簡略化して図示したものであり、実際の地形面では、侵食土砂量の傾斜量Laが極大(最大ではない)となる領域が複数表れることもある。また、図21の例では、2次元で表現されているが、実際の地形面は、紙面に対して垂直な方向にも広がっているので、侵食土砂量の傾斜量Laの大小の変化は3次元で表現できる。
図22は侵食土砂量の傾斜量及び標高の傾斜量の一例を示す模式図である。図22では、標高値Zが、地形面に沿って変化している。図22では、便宜上、図5及び図6と同様な地形面を図示している。傾斜値算出部63は、標高傾斜量算出部としての機能を有し、対象流域内の標高の傾斜量Zsを算出する。標高の傾斜量(傾斜値)Zsは、所要の算出地点での標高と、当該算出地点の周囲の複数の地点での標高とに基づいて、地表面の傾斜の大小を表す量(数値)である。具体的には、前述の式(1)~式(3)を用いて算出することができる。
図22の例では、地形面と接谷面とが一致する領域と、地形面と接峰面とが一致する領域との間で地形面の傾斜が増加している例を図示しているので、当該間で標高傾斜量Zsが最も大きくなっている。標高傾斜量Zsと侵食土砂量の傾斜量Laとの差はわずかであるが、一般的には、標高傾斜量Zs>侵食土砂量の傾斜量Laとなる。侵食土砂量の傾斜量Laのピークは、標高傾斜量Zsのピークよりも谷側(図22において左側)に現れる。なお、図22は便宜上、簡略化して図示したものであり、実際の地形面では、標高傾斜量Zsが極大(最大ではない)となる領域が複数表れることもある。侵食土砂量の傾斜量Laのピークの位置、標高傾斜量Zsのピークの位置は、図22の例に限定されない。なお、接峰面、地形面、接谷面は一例であって、図22の例に限定されない。また、図22の例では、2次元で表現されているが、実際の地形面は、紙面に対して垂直な方向にも広がっているので、標高傾斜量Zsの大小の変化は3次元で表現できる。
また、図22に示すように、侵食土砂量の傾斜量Laと標高傾斜量Zsとを重ね合わせることもできる。この場合、例えば、α×La+β×Zsの如く、重み係数α、βを用いて重み付けすることもできる。なお、βは0であってもよい。
次に、侵食土砂量の傾斜量、標高傾斜量の表示例について説明する。
図23は侵食土砂データに基づく侵食土砂量の一例を示す模式図である。図23に示す侵食土砂量は、図7と同様に、侵食土砂データに基づいて生成され表示されたものであり、不安定土砂データは用いていない。図23で示す場所は、図7で示す場所と異なる。図23に示すように、濃度が濃い領域から徐々に薄くなる領域は、土砂災害の発生が予測される領域ということができる。
図24は侵食土砂傾斜量データに基づく侵食土砂量の傾斜量の一例を示す模式図である。図24は図23と同じ場所を示す。表示データ生成部64は、侵食土砂傾斜量データ生成部としての機能を有し、所要の対象流域内を、傾斜値算出部63で算出した侵食土砂量の傾斜量の大小に応じて異なる表示態様で表示するための侵食土砂傾斜量データを生成することができる。異なる表示態様は、例えば、図24に示すように、侵食土砂量の傾斜量を所定の色(例えば、黒色)で表現し、傾斜量の大小に応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、侵食土砂量の傾斜量の大きい濃い黒色の領域が傾斜量の大きい領域であり、当該濃い黒色の領域が、例えば、崖や断層などの段差が大きい部分である可能性が高いことが読み取れる。生成された侵食土砂傾斜量データを地形データに適用することにより、崖や断層などの段差が大きい領域などの土砂災害の発生が予測される場所を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
図25は侵食土砂傾斜量データに標高傾斜量データをして侵食土砂量の傾斜量と標高傾斜量との重ね合わせの一例を示す模式図である。表示データ生成部64は、標高傾斜量データ生成部としての機能を有し、傾斜値算出部63で算出した標高の傾斜量の大小に応じて異なる表示態様で表示するための標高傾斜量データを生成することができる。異なる表示態様は、例えば、標高傾斜量を所定の色(例えば、黒色)で表現し、標高傾斜量の大小に応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、濃淡の変化に応じて、地表面の傾斜の度合いが視覚的に把握できるので、実際の地形がどうなっているのか(例えば、平坦なのか、急な斜面なのか等)を視覚的に、かつ容易に把握することができる。
表示データ生成部64は、標高傾斜量データを重畳した侵食土砂傾斜量データを生成する。標高傾斜量データが重畳された侵食土砂傾斜量データを地形データに適用することにより、実際の地形の様子を容易に把握できるとともに、崖や断層などの段差が大きい領域などの土砂災害の発生が予測される場所を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
図26は侵食土砂量の傾斜量と流域界との重ね合わせの一例を示す模式図である。表示データ生成部64は、流路特定部59で特定した流路を重畳した侵食土砂傾斜量データを生成することができる。流路(直線又は曲線)が重畳された侵食土砂傾斜量データを地形データに適用することにより、多くの雨水の影響による土砂災害の可能性がある領域を容易に把握できるとともに、崖や断層などの段差が大きい領域などの土砂災害の発生が予測される場所を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
図27は崩壊後の侵食土砂量の一例を示す模式図である。図27は、図23で示す場所と同じ場所であり、図中、囲まれた領域及びその付近で実際に崩壊が発生した後の標高データに基づいて、侵食土砂量を算出して表示したものである。図23~図26で示す、実際の崩壊前の表示態様に基づくと、土砂災害の発生が予測される場所がいくつか確認できるが、実際に、予測された場所の一つ又は幾つかの地点で崩壊が発生したことが確認できる。
図28は崩壊後の侵食土砂量の傾斜量の一例を示す模式図であり、図29は崩壊後の侵食土砂量の傾斜量と標高傾斜量との重ね合わせの一例を示す模式図であり、図30は崩壊後の侵食土砂量の傾斜量と流域界との重ね合わせの一例を示す模式図である。図24~図26で示す、実際の崩壊前の表示態様と対比すると、土砂災害の発生が予測できた幾つかの場所の一つ又は幾つかの地点で崩壊が発生したことが確認でき、本実施の形態の土砂災害予測装置50の有用性が確認できる。
図31は本実施の形態の土砂災害予測装置50の処理手順の他の例を示すフローチャートである。制御部51は、標高データを取得し(S71)、対象流域の接峰面及び接谷面を特定する(S72)。制御部51は、侵食土砂量を算出し(S73)、侵食土砂量の傾斜量Laを算出する(S74)。
制御部51は、標高傾斜量Zsを算出し(S75)、対象流域の流路網を特定する(S76)。制御部51は、侵食土砂傾斜量データを生成し(S77)、標高傾斜量データを生成し(S78)、処理を終了する。図31に示す処理を行うことにより、前述の図23から図26に例示するような地図情報を生成することができる。
本実施の形態の土砂災害予測装置50は、CPU(プロセッサ)、RAM(メモリ)などを備えたコンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図18、図19、図20及び図31に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、土砂災害予測装置50を実現することができる。
なお、図示していないが、記録媒体Mに記録されたコンピュータプログラムは、持ち運びが自由なメディアに記録されたものに限定されるものではなく、インターネット又は他の通信回線を通じて伝送されるコンピュータプログラムも含めることができる。また、コンピュータには、複数のプロセッサを搭載した1台のコンピュータ、あるいは、通信ネットワークを介して接続された複数台のコンピュータで構成されるコンピュータシステムも含まれる。
上述のように、本実施の形態の土砂災害予測装置50、コンピュータプログラム及び土砂災害予測方法によれば、地震や豪雨などによる土砂災害の端緒となる斜面上の危険領域(例えば、不安定土砂が存在する領域)の位置を特定することができる。これにより、被害軽減のためのハザードマップ作成に大きく寄与することができる。また、危険度を定量的に表すことが可能になるので、災害対策に優先順位をつけることができ、災害対策の効率化を図ることができる。また、災害発生位置の特定が可能となるので、危険個所でリアルタイムモニタリングを実施することができ、早期の避難情報の提供にも大きく寄与する。なお、土砂災害予測装置50は、1台の装置で構成してもよく、複数の装置で構成して処理を分担させるようにしてもよい。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、対象流域の接峰面を取得する接峰面取得部と、前記対象流域の接谷面を取得する接谷面取得部と、取得した接峰面と前記対象流域の地形面との差が所定値より大きい領域と前記差が前記所定値よりも小さい領域との第1境界領域を特定する第1境界領域特定部と、前記対象流域の地形面と取得した接谷面との差が所定値より大きい領域と前記差が前記所定値より小さい領域との第2境界領域を特定する第2境界領域特定部と、前記第1境界領域及び前記第2境界領域に基づいて前記対象流域の危険領域を特定する危険領域特定部とを備える。
本実施の形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、対象流域の接峰面を取得する処理と、前記対象流域の接谷面を取得する処理と、取得した接峰面と前記対象流域の地形面との差が所定値より大きい領域と前記差が前記所定値よりも小さい領域との第1境界領域を特定する処理と、前記対象流域の地形面と取得した接谷面との差が所定値より大きい領域と前記差が前記所定値より小さい領域との第2境界領域を特定する処理と、前記第1境界領域及び前記第2境界領域に基づいて前記対象流域の危険領域を特定する処理とを実行させる。
本実施の形態に係る土砂災害予測方法は、対象流域の接峰面を接峰面取得部が取得し、前記対象流域の接谷面を接谷面取得部が取得し、取得された接峰面と前記対象流域の地形面との差が所定値より大きい領域と前記差が前記所定値よりも小さい領域との第1境界領域を第1境界領域特定部が特定し、前記対象流域の地形面と取得された接谷面との差が所定値より大きい領域と前記差が前記所定値より小さい領域との第2境界領域を第2境界領域特定部が特定し、前記第1境界領域及び前記第2境界領域に基づいて前記対象流域の危険領域を危険領域特定部が特定する。
接峰面取得部は、対象流域の接峰面を取得する。流域は、例えば、地形量の集積単位であり、本明細書では、土砂災害を予測する領域の単位とすることができる。流域と流域との境界は流域界という。接峰面は、土砂の侵食前の地表を想定した仮想面である。接峰面と実際(現在)の地形面とに高さの差がある部分は、近過去から現在までに侵食された土砂の程度を表すと考えられる。
接谷面取得部は、当該対象流域の接谷面を取得する。接谷面は、土砂の侵食が進んだ状態の仮想面を表す。実際(現在)の地形面と接谷面とに高さの差がある部分は、近未来に侵食される可能性がある土砂の程度を表すと考えられる。
第1境界領域特定部は、取得した接峰面と当該対象流域の地形面との差が所定値より大きい領域と、特定した接峰面と当該対象流域の地形面との差が当該所定値よりも小さい領域との境界領域である第1境界領域を特定する。所定値は、接峰面と地形面とが略同じであると考えられる領域を特定することができるものであれば、適宜設定することができる。すなわち、第1境界領域は、接峰面と地形面との差が離れている領域と、接峰面と地形面との差が略同じであると考えられる領域との境界領域である。
第2境界領域特定部は、当該対象流域の地形面と取得した接谷面との差が所定値より大きい領域と、当該対象流域の地形面と特定した接谷面との差が当該所定値より小さい領域との境界領域である第2境界領域を特定する。すなわち、第2境界領域は、地形面と接谷面との差が離れている領域と、地形面と接谷面との差が略同じであると考えられる領域との境界領域である。
危険領域特定部は、第1境界領域及び第2境界領域に基づいて当該対象流域の危険領域を特定する。第1境界領域は、高さ方向に沿ってお互いに離れていた接峰面と地形面とが略同じになる領域であるから、土砂が侵食された領域の上流側(上流端)であり、近未来に侵食される可能性がある不安定土砂が存在する領域である。また、第2境界領域は、高さ方向に沿ってお互いに離れていた地形面と接谷面とが略同じになる領域であるから、不安定土砂が存在する領域の下流側(下流端)であり、不安定土砂の崩壊の端緒となり得る領域である。なお、危険領域は、第1境界領域と第境界領域との間の領域、第1境界領域から上流側の所定領域(例えば、地形面の傾斜が緩やかになる領域まで)、又は第2境界領域から下流側の所定領域(例えば、地形面の傾斜が緩やかになる領域まで)を含めることができる。
上述の構成により、近未来に移動(地すべり、崩壊など)すると推定される不安定土砂が存在する位置を特定することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置において、前記危険領域特定部は、前記第1境界領域と前記第2境界領域との間の領域を前記危険領域として特定する。
危険領域特定部は、第1境界領域と第2境界領域との間の領域を危険領域として特定する。第1境界領域と第2境界領域との間の領域は、土砂が侵食された領域であって、かつ不安定土砂が存在する領域であるので、土砂の移動(地すべり、崩壊など)が発生する可能性が比較的高い領域である。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記対象流域内を、前記接峰面と前記地形面との高さの差に応じて異なる表示態様で表示するための侵食土砂データを生成する侵食土砂データ生成部を備える。
侵食土砂データ生成部は、対象流域内を、接峰面と地形面との高さの差に応じて異なる表示態様で表示するための侵食土砂データを生成する。接峰面と地形面との高さの差は、土砂の侵食高さということができる。異なる表示態様は、例えば、侵食高さを所定の色(例えば、黒色)で表現し、侵食高さに応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、侵食高さの高い濃い黒色の領域から徐々に薄い灰色となる領域が、土砂が侵食された領域であって、不安定土砂が存在する領域であることになる。生成された侵食土砂データを地形データに適用することにより、土砂災害の発生が予測される危険領域を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記対象流域内を、前記地形面と前記接谷面との高さの差に応じて異なる表示態様で表示するための不安定土砂データを生成する不安定土砂データ生成部を備える。
不安定土砂データ生成部は、対象流域内を、地形面と接谷面との高さの差に応じて異なる表示態様で表示するための不安定土砂データを生成する。地形面と接谷面との高さの差は、不安定土砂高さということができる。異なる表示態様は、例えば、不安定土砂高さを所定の色(例えば、赤色)で表現し、不安定土砂高さに応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、不安定土砂高さの高い濃い赤色の領域から徐々に薄い赤色となる領域が、土砂が侵食された領域であって、不安定土砂が存在する領域であることになる。また、濃い赤色の領域は、土砂は侵食されていないが不安定土砂が残存している領域であると考えられる。生成された侵食土砂データを地形データに適用することにより、土砂災害の発生が予測される危険領域を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記危険領域の危険度を算出する危険度算出部と、前記危険領域内を、前記危険度算出部で算出した危険度の大小に応じて異なる表示態様で表示するための危険土砂データを生成する危険土砂データ生成部とを備える。
危険度算出部は、危険領域の危険度を算出する。危険土砂データ生成部は、危険領域内を、算出した危険度の大小に応じて異なる表示態様で表示するための危険土砂データを生成する。不安定土砂に基づく危険度を用いることにより、土砂災害の発生可能性を定量化することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。また、定量化した発生可能性(危険度)を、危険度の大小に応じて表示態様を変えて表示することができるので、土砂災害の発生が予測される危険領域を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記対象流域内の流路を特定する流路特定部と、該流路特定部が特定した流路と前記第1境界領域とが交差する第1地点を特定する第1地点特定部と、前記流路と前記第2境界領域とが交差する第2地点を特定する第2地点特定部と、前記第1地点と前記第2地点との高さの差、及び前記第1地点から前記第2地点までの流路長さに基づいて、土砂の不安定度を算出する不安定度算出部とを備え、前記危険度算出部は、前記不安定度算出部が算出した不安定度に基づいて前記危険領域の危険度を算出する。
流路特定部は、対象流域内の流路(流線ともいう)を特定する。流路は、水が流れる仮想の流線であり、流域のある地点の最大傾斜を結ぶ線であり、等ポテンシャル線に直交する線で、合流はするが交差はしない。流路は、標高データを用いて求めることができる。流路の始点は、流域界とすることができ、流路の終点は、対象流域での標高で判断することができ、例えば、予め定めた標高に達した地点を終点とすることができる。
第1地点特定部は、特定した流路と第1境界領域とが交差する第1地点を特定する。第2地点特定部は、当該流路と第2境界領域とが交差する第2地点を特定する。すなわち、第1地点は、流路上の第1境界領域であり、第2地点は、流路上の第2境界領域である。
不安定度算出部は、第1地点と第2地点との高さの差、及び第1地点から第2地点までの流路長さに基づいて、土砂の不安定度を算出する。すなわち、不安定度は、流路に沿って存在する、土砂が侵食された領域であって、かつ不安定土砂が存在する領域がどの程度不安定な状態にあるかを定量的に表すものである。
危険度算出部は、算出した不安定度に基づいて危険領域の危険度を算出する。これにより、土砂災害の発生可能性を定量化することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記流路特定部が特定した流路のうち前記危険領域の流路の所要地点での標高の傾斜値を算出する傾斜値算出部を備え、前記危険度算出部は、前記傾斜値算出部で算出した傾斜値に基づいて前記危険領域の危険度を算出する。
傾斜値算出部は、特定した流路のうち危険領域の流路の所要地点での標高の傾斜値を算出する。所要地点は、例えば、第2地点、第1地点、あるいは第1地点と第2地点との間の所要の地点とすることができる。第2地点から第1地点に向かって存在する不安定土砂が移動しはじめるには、第2地点の傾斜が大きい方が可能性は高いと考えられるので、所要地点としては、第2地点を用いることが望ましいが、これに限定されない。標高の傾斜値は、所要地点での標高と、当該所要地点の周囲の複数の地点での標高とに基づいて、地表面の傾斜の大小を表す数値である。
危険度算出部は、算出した傾斜値に基づいて危険領域の危険度を算出する。これにより、傾斜が大きい領域にある地点をより危険度が大きいと判断することができ、土砂災害を精度よく予測することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記危険領域内を、前記傾斜値算出部で算出した傾斜値の大小に応じて異なる表示態様で表示するための傾斜量データを生成する傾斜量データ生成部を備える。
傾斜量データ生成部は、危険領域内を、傾斜値算出部で算出した傾斜値の大小に応じて異なる表示態様で表示するための傾斜量データを生成する。例えば、傾斜値(傾斜量)が大きいほど濃度を濃く表示することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記流路特定部が特定した流路に基づいて流域面積を算出する流域面積算出部と、該流域面積算出部が算出した流域面積に基づいて流域面積が不連続に変化する変化地点を特定する変化地点特定部とを備え、前記危険度算出部は、前記変化地点特定部で特定した変化地点での流域面積の変化量に基づいて前記危険領域の危険度を算出する。
流域面積算出部は、特定した流路に基づいて流域面積を算出する。ある地点での流域面積は、当該地点よりも上流側の流路に沿った流域の面積である。
変化地点特定部は、算出した流域面積に基づいて流域面積が不連続に変化する変化地点を特定する。例えば、予め閾値を設定しておき、流路の下流側から上流側に向かって(上流側から下流側でもよい)流域面積を探索し、流域面積の変化が閾値より大きい地点を変化地点とすることができる。なお、流域面積の大きな変化は、流路の合流が要因と考えられる。
危険度算出部は、特定した変化地点での流域面積の変化量に基づいて危険領域の危険度を算出する。流域面積の変化量が大きいほど、多くの雨水が流れるので、土砂災害の発生の可能性が高くなる。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置において、前記危険度算出部は、前記変化地点特定部で特定した変化地点のうち、前記第1地点の上流に存在する変化地点での流域面積の変化量に基づいて前記危険領域の危険度を算出する。
危険度算出部は、特定した変化地点のうち、第1地点の上流に存在する変化地点での流域面積の変化量に基づいて危険領域の危険度を算出する。第1地点の上流に変化地点が存在すると、多くの雨水により不安定土砂が流される可能性が高くなる。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記流路特定部が特定した流路に基づいて流路の合流地点を特定する合流地点特定部を備え、前記危険度算出部は、前記第1地点の上流に存在する前記合流地点での流路の合流数に基づいて前記危険領域の危険度を算出する。
合流地点特定部は、特定した流路に基づいて流路の合流地点を特定する。危険度算出部は、第1地点の上流に存在する合流地点での流路の合流数に基づいて危険領域の危険度を算出する。流路の合流数が多いほど、多くの雨水により不安定土砂が流される可能性が高くなる。これにより、土砂災害を精度よく予測することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置において、前記危険度算出部は、前記不安定度、前記傾斜値、前記流域面積の変化量、又は前記合流数それぞれに重み係数を乗算して前記危険領域の危険度を算出する。
危険度算出部は、不安定度、傾斜値、流域面積の変化量、及び合流数それぞれに重み係数を乗算して危険領域の危険度を算出する。例えば、危険度=不安定度+K1・傾斜値+K2・流域面積の変化量+K3・合流数、という式で危険度を算出することができる。K1、K2、K3は重み付け係数である。また、K1、K2、K3の全部又は一部を0とすることができる。これにより、対象流域の状況に応じて、危険度の算出を最適化することができる。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記接峰面と前記地形面との高さの差で示す侵食土砂量の傾斜量を算出する傾斜量算出部と、前記対象流域内を、前記傾斜量算出部で算出した侵食土砂量の傾斜量の大小に応じて異なる表示態様で表示するための侵食土砂傾斜量データを生成する侵食土砂傾斜量データ生成部とを備える。
傾斜量算出部は、接峰面と地形面との高さの差で示す侵食土砂量の傾斜量を算出する。侵食土砂量は、接峰面と地形面との高さの差で示され、土砂の侵食高さと同義である。侵食土砂量の傾斜量は、算出地点での侵食土砂量と、当該算出地点の周囲の複数の地点での侵食土砂量とに基づいて、侵食土砂量の傾斜の大小を表す量(数値)である。
侵食土砂傾斜量データ生成部は、対象流域内を、傾斜量算出部で算出した侵食土砂量の傾斜量の大小に応じて異なる表示態様で表示するための侵食土砂傾斜量データを生成する。異なる表示態様は、例えば、侵食土砂量の傾斜量を所定の色(例えば、黒色)で表現し、傾斜量の大小に応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、侵食土砂量の傾斜量の大きい濃い黒色の領域が傾斜量の大きい領域であり、当該濃い黒色の領域が、例えば、崖や断層などの段差が大きい部分である可能性が高いことが読み取れる。生成された侵食土砂傾斜量データを地形データに適用することにより、崖や断層などの段差が大きい領域などの土砂災害の発生が予測される場所を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記対象流域内の標高の傾斜量を算出する標高傾斜量算出部と、前記標高傾斜量算出部で算出した標高の傾斜量の大小に応じて異なる表示態様で表示するための標高傾斜量データを生成する標高傾斜量データ生成部とを備え、前記侵食土砂傾斜量データ生成部は、前記標高傾斜量データを重畳した侵食土砂傾斜量データを生成する。
標高傾斜量算出部は、対象流域内の標高の傾斜量を算出する。標高の傾斜量(傾斜値)は、算出地点での標高と、当該算出地点の周囲の複数の地点での標高とに基づいて、地表面の傾斜の大小を表す量(数値)である。
標高傾斜量データ生成部は、標高傾斜量算出部で算出した標高の傾斜量の大小に応じて異なる表示態様で表示するための標高傾斜量データを生成する。異なる表示態様は、例えば、標高傾斜量を所定の色(例えば、黒色)で表現し、標高傾斜量の大小に応じて濃淡を変化(グラデーション)させるような表示態様とすることができる。この場合、濃淡の変化に応じて、地表面の傾斜の度合いが視覚的に把握できるので、実際の地形がどうなっているのか(例えば、平坦なのか、急な斜面なのか等)を視覚的に、かつ容易に把握することができる。
侵食土砂傾斜量データ生成部は、標高傾斜量データを重畳した侵食土砂傾斜量データを生成する。標高傾斜量データが重畳された侵食土砂傾斜量データを地形データに適用することにより、実際の地形の様子を容易に把握できるとともに、崖や断層などの段差が大きい領域などの土砂災害の発生が予測される場所を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
本実施の形態に係る土砂災害予測装置は、前記対象流域内の流路を特定する流路特定部を備え、前記侵食土砂傾斜量データ生成部は、前記流路特定部で特定した流路を重畳した侵食土砂傾斜量データを生成する。
流路特定部は、対象流域内の流路(流線ともいう)を特定する。流路は、水が流れる仮想の流線であり、流域のある地点の最大傾斜を結ぶ線であり、等ポテンシャル線に直交する線で、合流はするが交差はしない。流路は、標高データを用いて求めることができる。流路の始点は、流域界とすることができ、流路の終点は、対象流域での標高で判断することができ、例えば、予め定めた標高に達した地点を終点とすることができる。
侵食土砂傾斜量データ生成部は、流路特定部で特定した流路を重畳した侵食土砂傾斜量データを生成する。流路(直線又は曲線)が重畳された侵食土砂傾斜量データを地形データに適用することにより、多くの雨水の影響による土砂災害の可能性がある領域を容易に把握できるとともに、崖や断層などの段差が大きい領域などの土砂災害の発生が予測される場所を視認しやすく表現することができ、ハザードマップ作成に大きく寄与する。
本実施の形態に係る地図情報は、本実施の形態に係る土砂災害予測装置によって生成され、前述の土砂災害予測装置によって生成され、前記対象流域内を、前記侵食土砂データに基づく侵食土砂領域と前記不安定土砂データに基づく不安定土砂領域とを重畳させて表示する(図9参照)。
本実施の形態に係る地図情報は、標高の傾斜値を示す傾斜量データに基づく傾斜量図をさらに重畳させて表示する。
本実施の形態に係る地図情報は、本実施の形態に係る土砂災害予測装置によって生成され、前記対象流域の前記危険領域内を、前記危険度算出部で算出した危険度の大小に応じて異なる表示態様で表示する(図14参照)。
本実施の形態に係る地図情報は、本実施の形態に係る土砂災害予測装置によって生成され、前記対象流域内を、前記傾斜量算出部で算出した侵食土砂量の傾斜量の大小に応じて異なる表示態様で表示する(図24参照)。
上述の実施の形態では、土砂災害予測装置50は、接峰面特定部53及び接谷面特定部54を備え、標高データに基づいて接峰面及び接谷面を特定し、特定した接峰面及び接谷面を取得して使用する構成であるが、これに限定されない。例えば、土砂災害予測装置50と異なる外部の装置(不図示)が生成した接峰面及び接谷面を、入力部52を介して取得するようにしてもよい。この場合には、入力部52は、接峰面取得部及び接谷面取得部として機能する。また、入力部52が取得するDMMは、外部の装置が接峰面及び接谷面を生成した際に用いたDMMと同じものとすることができる。さらに、この場合には、土砂災害予測装置50は、接峰面特定部53及び接谷面特定部54を具備しなくてもよい。