JP7151910B2 - 金属材加工設備の異音観測システム - Google Patents

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Description

本発明は、金属材の加工が行われる設備において発生する異常音響成分(以下、「異音」とも称す。)を観測するシステムに関する。
金属材の加工工程は、典型的には、圧延工程およびそれに付帯する工程を含む。加工工程が行われる設備(以下、「加工設備」とも称す。)では、操業中に種々の異音が発生する。異音は、通常操業時に発生しない周波数成分、周波数分布および音量を有する音響成分である。
異音は、様々な原因により生じる。例えば、金属材が上下方向に反ったり、金属材が左右方向(すなわち、金属材の搬送ラインの作業側または駆動側)に曲がったりすると、金属材が周囲の機械設備に接触する。金属材の上下方向の反りは、金属材の上面における温度と下面における温度との間に差がある場合に起こる。上側の圧延ロールの表面状態と下側の圧延ロールのそれとの間に差があり、圧下率およびそれによる伸び率の差が金属材の上下面において生じる場合にも、上下方向の反りが起こる。
金属材の左右方向の湾曲は、例えば、次のように生じる。すなわち、加工炉における昇温ばらつきになどより、金属材の左右の温度が異なると、金属材の変形抵抗差により左右の圧延荷重に差が生じる。加えて、圧延機の弾性変形(ミル延び)に左右差が生じる。そうすると、圧延機の出側において、金属材の左右方向で板厚差(ウェッジ)が生じる。ウェッジが生じると、金属材の右側の伸び率と左側のそれとの間に差が生じる。故に、金属材が左右方向に曲がる。
異音の別の発生原因としては、ミル振動が挙げられる。ミル振動は、圧延機の弾性変形や圧延ロールと金属材の間の摩擦状態が変化することにより生じる。電動機、駆動軸、ロールなどの回転体の一部が損傷するなどして偏心することは、異音のまた別の発生原因である。
操業中に異音が発生する状態を放置することは、大きなトラブルにつながる可能性がある。そのため、異音の発生原因は、適宜特定され、適切に対処される必要がある。ただし、従来、加工設備で発生する異音の特定および対処は、専ら人的に行われてきた。すなわち、運転室や搬送ライン際において作業者が異音の発生を認めると、異音の大まかな到来方位と、過去の経験に基づいて発生原因を推定し、対策を講じていた。
しかしながら、人間の耳で認識することのできる異音の到来方位は正確でない。そのため、例えば、圧延機の左側と右側のどちらで異音が発生したかを人間の耳で特定することは極めて困難である。加えて、作業者の認識能力や経験が低い場合は、異音の発生を聞き逃す可能性がある。更に、作業者が行う作業は、異音の認識だけに限られない。そのため、作業者の認識能力等が高いとしても、常時異音に注意を払いつつ異音が発生した場合にはそれに対応するのには無理がある。故に、異音の発生を聞き逃し、それへの対策が講じられない可能性があった。
異音の発生が予想される加工装置に予めマイクや振動センサーを設置し、これらの検出機器からの信号を解析すれば、異音の発生源を自動的に特定できる可能性がある。しかしながら、加工設備には様々な装置が含まれ、異音の発生が予想される装置も多数に上る。そのため、これらの装置の全てに検出機器を取り付けることは経済的な側面から限界がある。加えて、検出機器からの信号を処理するためには、長い接続ケーブルを多数施設する必要がある。無線による接続が考えられるが、加工設備の一部の装置は、モーター、ドライブ装置といった電磁ノイズの発生源がある。したがって、現実には、検出機器の数をある程度絞る必要があり、検出機器が設置されなかった装置については異音の発生そのものを検出できていない可能性があった。
異音の発生を検出する従来技術として、特許文献1および2に開示された技術が例示される。これらの従来技術では、マトリクス状に配列された多数の指向性マイクを有するマイク装置が用いられる。そして、このマイク装置の配設位置の情報に基づいて、ある指向性マイクで集音された音場の、集音エリア内での位置が特定される。しかしながら、位置分解能を上げるためには、指向性のより強いマイクをより多く配列する必要がある。そのため、これらの従来技術では、位置分解能の向上に限度がある。
特許文献3には、監視対象に位置特定信号を発信する装置を取り付ける技術が開示されている。しかしながら、被加工物である金属材に発信装置を取り付けることは現実的ではなく、熱間圧延される金属材に発信装置を適用することは困難を極める。
特許文献4には、単一のマイクアレイを用いて音響波動の方向を特定する装置が開示されている。しかしながら、この装置では、マイクアレイから音響波動の発生源までの方位は分かるものの、マイクアレイから発生源までの距離を特定することは困難である。
日本特開昭64-46672号公報 日本特許第4443247号明細書 日本特開平10-132651号公報 日本特開平11-64089号公報
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、金属材の加工設備において発生する異音の発生源の位置を自動的かつ高精度に特定することのできる技術を提供することを目的とする。
第1の発明は、金属材の加工設備で発生する異音を観測するための異音観測システムである。
前記異音観測システムは、
音響を検出する少なくとも2台のマイクアレイと、
前記少なくとも2台のマイクアレイが検出した音響信号を処理する音響信号処理を行う処理装置と、
を備える。
前記少なくとも2台のマイクアレイは、
前記加工設備の位置を含む第1空間に向けられた第1マイクアレイと、
前記加工設備の位置において前記第1空間と一部の空間を共有する第2空間に向けられた第2マイクアレイと、
を含む。
前記処理装置は、前記音響信号処理において、
前記第1マイクアレイが検出した前記音響信号から第1異音部を抽出し、
前記第2マイクアレイが検出した前記音響信号から第2異音部を抽出し、
前記第1異音部に基づいて、前記第1マイクアレイに対する異音発生源の相対方位を示す第1相対方位を推定し、
前記第2異音部に基づいて、前記第2マイクアレイに対する前記相対方位を示す第2相対方位を推定し、
前記第1および第2マイクアレイの基準座標面上の位置と、前記第1および第2相対方位と、に基づいて、前記異音発生源の当該座標面上の位置を推定する。
第2の発明は、第1の発明において更に次の特徴を有する。
前記少なくとも2台のマイクアレイは、更に、前記加工設備の位置において前記第1および第2空間の少なくとも一方と一部の空間を共有する第3空間に向けられた第3マイクアレイを備える。
前記処理装置は、前記音響信号処理において、更に、
前記第3マイクアレイが検出した前記音響信号から第3異音部を抽出し、
前記第3異音部に基づいて、前記第3マイクアレイに対する前記相対方位を示す第3相対方位を推定する。
前記処理装置は、前記異音発生源の位置の推定を、前記第1、第2および第3マイクアレイのうちの2台のマイクアレイの組み合わせに基づいて行う。
第3の発明は、第1または2の発明において更に次の特徴を有する。
前記処理装置が、前記音響信号処理において、更に、前記異音発生源の位置が推定された場合、前記少なくとも2台のマイクアレイのうちの任意のマイクアレイから前記異音発生源までの前記座標面上における距離と、前記異音発生源からの異音が前記任意のマイクアレイにおいて検出された時刻と、に基づいて、前記異音発生源での異音の発生時刻を推定する。
第4の発明は、第3の発明において更に次の特徴を有する。
前記異音観測システムは、前記加工設備の稼働状況を表示する表示装置を更に備える。
前記処理装置は、更に、
前記加工設備において加工される前記金属材の情報を取得する情報取得処理と、
前記異音発生源の推定位置と、前記異音発生源での異音の推定発生時刻とを含む異音発生情報を、前記金属材の情報に関連付ける関連付け処理と、
前記異音発生情報が関連付けられた前記金属材の情報を、前記表示装置に出力する表示処理と、
を行う。
第5の発明は、第3または4の発明において更に次の特徴を有する。
前記異音観測システムは、前記加工設備の稼働状況を記録する記憶装置を更に備える。
前記処理装置は、更に、
前記加工設備において加工される前記金属材の情報を取得する情報取得処理と、
前記異音発生源の推定位置と、前記異音発生源での異音の推定発生時刻とを含む異音発生情報を、前記金属材の情報に関連付ける関連付け処理と、
前記異音発生情報が関連付けられた前記金属材の情報を、前記記憶装置に記録する記録処理と、
を行う。
第6の発明は、第3~5の発明の何れか1つにおいて更に次の特徴を有する。
前記異音観測システムは、前記加工設備を構成する加工装置を制御する制御装置を更に備える。
前記処理装置は、更に、
前記異音発生源の推定位置と、前記異音発生源での異音の推定発生時刻とを含む異音発生情報に基づいて、前記加工装置の少なくとも一部を緊急的に作動するための緊急制御指令を前記制御装置に出力する緊急制御処理を行う。
第1の発明によれば、音響信号処理が行われる。音響信号処理によれば、第1マイクアレイが検出した音響信号から第1異音部が抽出され、この第1異音部に基づいて第1マイクアレイに対する異音発生源の第1相対方位が計算される。また、第2マイクアレイが検出した音響信号から第2異音部が抽出され、この第2異音部に基づいて第2マイクアレイに対する異音発生源の第2相対方位が計算される。そして、第1および第2マイクアレイの基準座標面上の位置と、第1および第2相対方位と、に基づいて、異音発生源の基準座標面上の位置が推定される。したがって、音響信号処理によれば、異音発生源の位置を自動的かつ高精度に特定することが可能となる。
第2の発明によれば、第1、第2および第3マイクアレイのうちの2台のマイクアレイの組み合わせに基づいて、異音発生源の位置を自動的かつ高精度に特定することが可能となる。
第3の発明によれば、異音発生源の位置が推定された場合、当該異音発生源での異音の発生時刻が推定される。したがって、異音の発生時刻を自動的かつ高精度に特定することが可能となる。
第4の発明によれば、異音発生情報が付された金属材の情報が表示装置に表示される。したがって、表示装置を見た作業者に異音発生情報が付された金属材の情報を提供することが可能となる。このことは、加工設備における作業者の負担削減に繋がる。
第5の発明によれば、異音発生情報が付された金属材の情報が記憶装置に記録される。したがって、金属材の加工後において異音発生情報から遡ってこれに関係のある金属材を特定することが可能となる。金属材情報に付された異音発生情報を、製品の品質情報として活用することもできる。
第6の発明によれば、異音発生情報に基づいて緊急制御指令が制御装置に出力される。緊急制御指令は、加工装置の少なくとも一部を緊急的に作動するための制御指令である。したがって、異音の発生が大きなトラブルに発展するのを未然に回避することが可能となる。
実施の形態に係る異音観測システムの加工設備への第1適用例を示す上面模式図である。 実施の形態に係る異音観測システムの加工設備への第2適用例を示す上面模式図である。 実施の形態に係る異音観測システムの全体構成例を示す図である。 マイクアレイの構成例を示す模式図である。 処理装置の機能構成例を示す図である。 相対方位の一例を示す図である。 設置条件(第2設置条件)を説明する図である。 異音発生情報が関連付けられた金属材情報の一覧の例を示す図である。 表示装置に表示された画像例を示す模式図である。 表示装置に表示された画像例を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態に係る異音観測システムについて図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。また、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
1.異音観測システムの適用例
1-1.第1適用例
図1は、実施の形態に係る異音観測システムの加工設備への第1適用例を示す上面模式図である。図1には、サイドガイドSGが描かれている。サイドガイドSGは、加工設備において加工される金属材MTLの搬送方向DDを安定化させる装置である。サイドガイドSGは、例えば、粗圧延機の入側および出側に設置される。別の例では、サイドガイドSGは、仕上げ圧延機のスタンド間に設置される。更に別の例では、サイドガイドSGは、巻取り機の入側に設置される。サイドガイドSGは、加工設備を構成する「加工装置」の一例である。加工装置の他の例としては、粗圧延機、仕上げ圧延機、スキンパス圧延機および巻取り機が挙げられる。
図1には、また、マイクアレイ10Aおよび10Bが描かれている。これらのマイクアレイの構成例については後述される。これらのマイクアレイは、金属材MTLに対して同じ側(すなわち、作業側または駆動側)に設置されている。これらのマイクアレイは、異音観測システムを構成する。マイクアレイ10Aの集音面は、空間SPAに向けられている。空間SPAは、加工設備の位置を少なくとも含む。マイクアレイ10Bの集音面は、空間SPBに向けられている。空間SPAも、加工設備の位置を少なくとも含む。空間SPAの一部は、空間SPBの一部と重複する。図1に示す例において、重複空間L12は、サイドガイドSGを含む搬送ラインの一部の空間である。
1-2.第2適用例
図2は、実施の形態に係る異音観測システムの加工設備への第2適用例を示す上面模式図である。第2適用例では、マイクアレイ10A、10B、10Cおよび10Dが異音観測システムを構成する。マイクアレイ10Aおよび10Bの設置箇所は、第1適用例と共通する。マイクアレイ10Cおよび10Dは、金属材MTLに対して同じ側に(すなわち、作業側または駆動側)に設置されている。マイクアレイ10Cの集音面は、空間SPCに向けられている。マイクアレイ10Dの集音面は、空間SPDに向けられている。空間SPCはおよびSPDも、加工設備の位置を少なくとも含む。空間SPA~SPDのうちの任意の2つが重複する空間は、何れも、サイドガイドSGを含む搬送ラインの一部の空間を含んでいる。
以下、マイクアレイ10A~10Dを区別する場合を除き、これらのマイクアレイを「マイクアレイ10」と総称する。
2.異音観測システムの構成例
図3は、異音観測システムの全体構成例を示す図である。図3に示される例では、異音観測システム100が、マイクアレイ10と、制御装置20と、加工装置30と、処理装置40と、表示装置50と、記憶装置60と、を備えている。
2-1.マイクアレイ
マイクアレイ10は、集音面が向けられている空間の音響を検出する。マイクアレイ10は、加工設備の周囲に少なくとも2台設置される。マイクアレイ10の設置例については既に説明したとおりである。マイクアレイ10のそれぞれは、ケーブルを介して処理装置40に接続されている。マイクアレイ10からの信号量は多いため、マイクアレイ10と処理装置40の間は伝送を高速で行う必要がある。ただし、一般的に、高速伝送に長いケーブルを用いることが難しい。そのため、処理装置40の一部の機能を有するサブ処理装置をマイクアレイ10ごとに設け、サブ処理装置とマイクアレイ10を短いケーブルを介して接続することが望ましい。この場合、サブ処理装置のそれぞれが、長いケーブルを介して処理装置40に接続される。
マイクアレイ10のそれぞれは、アンプおよびアナログ-デジタル変換器(何れも図示しない)を備えている。折り返し雑音(Aliasing)が生じることのないよう、アナログ-デジタル変換のサンプリング周期は、検出しようとする異音の周波数成分を勘案して決められる上限周波数の2倍以上の周期に設定される。「検出しようとする異音の周波数成分」の範囲は、例えば、10Hz~100kHzである。近年開発されたMEMSマイクは、100kHzを超える周波数の音響信号を捉えることができるので、マイクアレイ10に好ましく適用できる。
図4は、マイクアレイ10の構成例を示す模式図である。図4に示される例では、マイクアレイ10が、水平方向に配列された5基のマイク11~15を備えている。マイク11~15と同様のマイク群が、鉛直方向に複数配列されていてもよい。
マイクアレイ10において隣り合う2基のマイクの間隔dは、特に限定されない。例えば、間隔dは、上述した上限周波数における波長λの1/2以下に設定される。間隔dがこの波長よりも長いと、後述する抽出処理において信号を走査するのに多くの時間を要し、または、異音の方位の推定精度が低下する場合がある。水平方向の両端の2基のマイク(すなわち、マイク11および15)の間の距離Lも特に限定されない。ただし、マイクアレイ10で検出される音量は、距離Lの2乗に反比例する。そのため、距離Lは、異音の信号ノイズ比、マイク感度および周囲環境音を勘案して決められる下限値以下に設定されることが望ましい。
2-2.制御装置
制御装置20は、加工設備での操業を管理する。制御装置20は、プロセッサ、メモリおよび入出力インタフェースを備えるコンピュータである。制御装置20は、加工設備の稼働状況の情報(以下、「稼働状況情報」とも称す。)、加工設備で加工される金属材の情報(以下、「金属材情報」とも称す。)、および、当該金属材の加工条件の情報(以下、「加工条件情報」とも称す。)を有している。
稼働状況情報としては、加工装置30の稼働状態を示す情報が例示される。金属材情報としては、金属材の識別番号、材種区分および寸法区分の情報が例示される。金属材情報としては、金属材の搬送ライン上の位置の情報も例示される。この位置情報は、搬送ライン上の要所に設置された検出機器からの信号、各種モーターが有するドライブ装置からの信号に基づいて取得される。加工条件情報としては、各種圧延機の出側における目標板厚、および、加工工程における金属材の速度条件が例示される。
制御装置20は、稼働状況情報および金属材情報を、処理装置40および記憶装置60に送る。制御装置20は、また、金属材情報および加工条件情報に基づいて、加工装置30の制御指令を生成する。制御指令としては、加工装置30の各種アクチュエータに入力される制御量の情報が例示される。制御装置20は、制御指令を加工装置30および記憶装置60に送る。また、制御装置20は、処理装置40から緊急制御指令を受け取った場合は、これを加工装置30に送る。緊急制御指令は、加工設備の緊急時に生成される制御指令である。
2-3.加工装置
加工装置30は、搬送ライン上で金属材を加工する。加工装置30としては、図1および2で説明したサイドガイドSG、粗圧延機、仕上げ圧延機、スキンパス圧延機および巻取り機が例示される。
2-4.処理装置
処理装置40は、加工設備での異音の発生を検出する。処理装置40は、制御装置20同様、プロセッサ、メモリおよび入出力インタフェースを備えるコンピュータである。
処理装置40は、制御装置20から受け取った情報に基づいて、異音の発生を検出する必要があるか否かを判定する。異音の発生を検出する必要があると判定した場合、処理装置40は、マイクアレイ10が検出した音響情報に基づいて、異音の発生を検出する。処理装置40は、異音の発生を検出した場合、異音発生情報を生成する。異音発生情報としては、異音発生源(Allophone source)の推定位置および異音発生の推定時刻の情報が例示される。処理装置40は、制御装置20から受け取った金属材情報に基づいて、生成した異音発生情報を金属材情報に関連付ける。一連の処理の詳細は後述される。
処理装置40は、また、異音発生情報が関連付けられた金属材情報を、表示装置50に表示するための処理(すなわち、表示処理)を行う。処理装置40は、更に、異音発生情報が関連付けられた金属材情報を、記憶装置60に記録するための処理(すなわち、記録処理)を行う。処理装置40は、また更に、異音発生源の推定位置の情報に基づいて、加工装置30を緊急制御するための処理(すなわち、緊急制御処理)を行う。これらの処理の詳細も後述される。
2-5.表示装置
表示装置50は、例えば、作業者(現場作業者)が駐在する運転室に設けられる。別の例では、表示装置50は、管理者(遠隔作業者)が駐在する管理室に設けられる。表示装置50には、稼働状況情報が表示される。この表示は、記憶装置60に格納された情報に基づいて行われる。表示装置50には、また、加工設備の要所に設置されたカメラから出力された映像データが表示される。作業者および管理者は、表示装置50を介して加工設備の稼働状況、加工装置30の可動部の状態などを監視する。
2-6.記憶装置
記憶装置60には、加工装置30の配置および外形の情報が格納される。記憶装置60には、加工装置30の可動部の状態の情報も格納される。可動部の状態の情報は、稼働状況情報に含まれる。記憶装置60には、マイクアレイ10が検出した音響情報も格納される。記憶装置60は、この音響情報を処理装置40から受け取ってもよいし、マイクアレイ10から直接受け取ってもよい。記憶装置60には、また、異音発生情報付きの金属材情報も格納される。
3.処理装置の構成例
図5は、処理装置40の機能構成例を示す図である。図5に示される例では、処理装置40が、情報取得部41と、音響信号処理部42と、表示処理部43と、記録処理部44と、緊急制御処理部45と、を備えている。これらの機能部は、処理装置40プロセッサがメモリに格納された各種プログラムを実行することにより実現される。
これらの機能部の一部は、上述したサブ処理装置において実現されてもよい。例えば、情報取得部41と、音響信号処理部42の一部とは、サブ処理装置において実現されてもよい。具体的には、情報取得部41の音響信号処理に関連する処理、および、後述する抽出処理部42Aおよび方位推定処理部42Bにより行われる処理が、サブ処理装置において行われてもよい。
3-1.情報取得部
情報取得部41は、稼働状況情報および金属材情報を取得する処理を行う(情報取得処理)。情報取得部41は、マイクアレイ10が検出した音響情報も取得する。情報取得部41は、稼働状況情報および金属材情報に基づいて、異音の発生を検出する必要があるか否かを判定する。例えば、情報取得部41は、加工設備が稼働している場合、異音の発生を検出する必要があると判定する。情報取得部41は、異音の発生を検出する必要があると判定したら、金属材情報および音響情報を、音響信号処理部42に送る。
3-2.音響信号処理部
音響信号処理部42は、音響情報に含まれる音響信号を処理する。図5に示される例では、音響信号処理部42が、抽出処理部42Aと、方位推定処理部42Bと、位置推定処理部42Cと、時刻推定処理部42Dと、関連付け処理部42Eと、を備えている。
3-2-1.抽出処理部
抽出処理部42Aは、音響信号から異音部を抽出する処理(抽出処理)を行う。具体的に、抽出処理部42Aは、まず、音響信号に対してデジタルフィルター処理、短時間フーリエ変換またはウェーブレット変換を行い、上述した上限周波数以下の周波数成分(の信号波形)を抽出する。ここでは、抽出される周波数成分の数をF個(F≧1)とする。
デジタルフィルター処理では、周波数成分の周波数スペクトルの重なりが十分小さくなるようにバンドパスフィルターの特性周波数が選択され、当該特性周波数に適合するパラメーターが設定される。短時間フーリエ変換では、音響信号にガウス関数などで表される窓関数を乗じて当該音響信号の一部分を抽出し、フーリエ変換により周波数スペクトルに変換する。このとき、窓関数を時間方向に走査することで、周波数スペクトルの時間変化を計算し、当該周波数スペクトルの一部分として所望の周波数成分を抽出する。ウェーブレット変換は、連続ウェーブレット変換でもよいし、離散ウェーブレット変換でもよい。2個以上の周波数成分を抽出する場合、連続ウェーブレット変換では周波数スペクトルの重なりが十分に小さくなるようにウェーブレットのスケーリング係数が設定される。
抽出処理部42Aは、例えば、各周波数成分について、信号強度(音量)が通常操業時の範囲から逸脱しているか否かを判定する。別の例では、抽出処理部42Aは、周波数成分間の信号強度の比率(すなわち、信号強度比または音量比)が通常操業時の範囲から逸脱しているか否かを判定する。通常範囲から逸脱する周波数成分がある場合、または、通常範囲から逸脱する周波数成分の組み合わせがある場合、抽出処理部42Aは、これを異音と判断し、時間軸における異音部を切り出して方位推定処理部42Bに送る。
3-2-2.方位推定処理部
方位推定処理部42Bは、方位推定処理部42Bから受け取った異音部の情報に基づいて、マイクアレイ10に対する異音発生源の相対方位をそれぞれ推定する処理(方位推定処理)を行う。相対方位の推定方法としては、位相検波に基づく方法、相互相関係数に基づく方法、および、相関マトリックスの固有値解析に基づく方法が例示される。
位相検波に基づく方法では、例えば、マイクアレイ10の各マイクで検出された異音部の同一周波数成分の間の位相差に基づいて、その周波数における異音の到来方位が推定される。具体的には、まず、各マイクで検出された異音部の各周波数成分をその振幅の実効値(すなわち、各サンプリング点の振幅の二乗平均の平方根)で除して、振幅強度が揃えられる。以下、振幅強度が揃えられた周波数成分を、「正規化成分」とも称す。
1台のマイクアレイ10のうちの水平方向に並ぶ任意の2基のマイク(説明の便宜上、以下、“マイクi”および“マイクj”とする)に着目する。位相検波に基づく方法では、この2基のマイクで検出された異音部における同じ周波数の正規化成分同士が乗算され(すなわち、各サンプリング点についてマイクiの振幅とマイクjのそれが乗算される)、更に、その平均値(直流成分)xが計算される。位相差δijは、正弦関数の加法定理より、余弦関数の逆関数を用いた次式(1)により計算される。
Figure 0007151910000001
到来方位θは、位相差δijを次式(2)に代入することにより計算される。
Figure 0007151910000002
式(2)において、λは波長であり、音速cと、位相差δijを算出したときの周波数fとを用いて表される(すなわち、λ=c/f)。dijは、マイクiとマイクjの間の距離である。θは、マイクアレイ10の中心を通り当該マイクアレイ10の集音面に対して垂直な線(法線)NLと、当該中心と異音発生源を結ぶ線分SLとのなす角度である。
図6に、到来方位θ、法線NLおよび線分SLの一例を示す。図6に示される例では、法線NLとしてのNL10AおよびNL10Bと、線分SLとしてのSL10AおよびSL10Bと、が描かれている。また、到来方位θとして、マイクアレイ10Aに対する異音発生源ASの相対方位θ10Aと、マイクアレイ10Bに対する異音発生源ASの相対方位θ10Bと、が描かれている。なお、図6では、マイクアレイ10Aの中心位置が基準座標系の座標点(x,y)で表され、マイクアレイ10Bのそれが座標点(x,y)で表されている。また、異音発生源ASの位置が座標点(xab,yab)で表されている。
相互相関係数に基づく方法では、上述した2基のマイク(すなわち、マイクiおよびj)で検出された異音部における同じ周波数成分に着目する。この方法では、一方の周波数成分を時間軸方向に時間差Δtだけずらしたときの相互相関係数rijが、次式(3)により計算される。
Figure 0007151910000003
式(3)において、sijはマイクiおよびjで検出された異音部の各周波数成分の共分散である。sは、マイクiで検出された異音部の各周波数成分の標準偏差であり、sはマイクjにおけるそれである。nはデータ(i,j)の総数であり、ikおよびjkは各周波数成分の数値であり、i-およびj-は平均値である。
相互相関係数rijは、時間差Δtを変化させながら計算される。相互相関係数rijが最大となるときの時間差Δtと、周波数fとの積を示す次式(4)から位相差δijが計算される。到来方位θは、上述した式(2)にこの位相差δijを代入して変形した式(5)により計算される。
Figure 0007151910000004

Figure 0007151910000005
相関マトリックスの固有値解析に基づく方法は、到来方位θを高い分解能で推定することができる。この方法としては、MUSIC法、Root MUSIC法、ESPRIT法などが例示される。以下、MUSIC法について説明する。
MUSIC法では、1台のマイクアレイ10について、上述した2基のマイクの全ての組み合わせに着目する。MUSIC法では、まず、これらの組み合わせのそれぞれについて相互相関係数rijが計算され、この相互相関係数rijが基づいて相関マトリックスR=[rij]が作成される(iおよびjは、組み合わせられた2基のマイクである)。続いて、相関マトリックスRの固有値λ、固有ベクトルe、および、そのエルミート共役e*が計算される。
到来する異音が複数あるときは、これらの異音の総数をnとする。MUSIC法では、各マイクの固有値λが大きい順に並べられ、新たに添字mが振られる(λ:m=1~N)。また、大きい方からn個のλに添字pを振り(p=1~n)、残りのλに添え字qを振る(q=n+1~N)。ある閾値以上のλを有効な異音としてカウントし、添字pを振るλを自動的に決定してもよい。
到来方位θは、次のように計算される。先ず、変数θが-π/2≦θ≦π/2の範囲で走査され、次式(6)により表される相対位相ベクトルν(θ)と、式(7)により表される評価値y(θ)と、が計算される。
Figure 0007151910000006

Figure 0007151910000007
式(6)においてjは虚数単位である。評価値y(θ)が極小値(≒0)を示すときの変数θを、θとして記録する。このθが各信号の到来方位θを表す。
方位推定処理部42Bは、到来方位θの推定精度を向上させるために、重み付け平均処理を行ってもよい。例えば、異音部における複数の周波数成分の振幅が有意な信号であった場合(すなわち、ノイズレベルを超える信号の場合)、これらの周波数成分のそれぞれに対して上述した推定方法を適用する。そうすると、周波数成分ごとに到来方位θが得られる。重み付け平均処理では、周波数成分の振幅に応じた係数をそれぞれの到来方位θに乗じ、これらの平均値θaveが計算される。
方位推定処理部42Bは、計算された到来方位θを位置推定処理部42Cに送る。ここで、方位推定処理部42Bは、入射角条件および設置条件が満たされる場合に、到来方位θを位置推定処理部42Cに送ることが望ましい。以下、これらの2つの条件について説明する。
入射角条件に関し、図4で説明したマイクアレイ10の構成例によれば、-π/2≦θ≦π/2の範囲の集音が可能である。つまり、-π/2≦θ≦π/2の範囲で到来方位を推定することができる。ただし、θがある範囲を超えると到来方位の推定精度が急低下する。10%程度の推定精度の低下を許容した場合、θの範囲は-70°≦θ≦70°となる。入射角条件は、到来方位θがこの許容範囲であることを意味する。
設置条件に関し、図1および2で説明したマイクアレイ10の設置例によれば、任意の2台のマイクアレイ10(説明の便宜上、以下、“マイクアレイp”および“マイクアレイq”とする)の集音面が向いている空間には重なり合う部分が存在する。ただし、重なり合う部分が存在しない場合には、発生位置の異なる異音の到来方位θが計算されている可能性が高い。重なり合う部分が搬送ライン上に存在しない場合も、これと同じことが言える。マイクアレイpの集音面と、マイクアレイqのそれとのなす角度が大き過ぎる場合も、これと同じことが言える。
故に、設置条件は、次の2つの個別条件を含む。
第1設置条件:マイクアレイpおよびqの集音面が向いている空間に重なり合う部分が存在し、かつ、当該重なり合う部分が搬送ライン上に存在する
第2設置条件:マイクアレイpおよびqについて、各法線NLと基準線とのなす角度φおよびφが-45°≦|φ-φ|≦45°を満たす
なお、マイクアレイ10の位置および集音面の指向方向は既知であることから、設置条件が満たされているか否かの判定は、到来方位θの計算の前提条件としてもよい。この場合は、まず、設置条件に基づいて2台のマイクアレイ10の絞り込みが行われる。続いて、絞り込まれた2台のマイクアレイ10について到来方位θが計算される。そして、計算された到来方位θについて入射角条件が満たされるか否かが判定される。
図7に、角度φおよび法線NLの一例を示す。図7に示される例では、法線NLとしてのNL10AおよびNL10Cが描かれている。法線NL10Aは、図6に示したものと同じである。また、図7には、角度φおよびφとして、角度φ10Aおよびφ10Cが描かれている。角度φ10Aは、マイクアレイ10Aの中心を通りX軸に平行な基準線BL10Aと、法線NL10Aのなす角度である。角度φ10Cは、マイクアレイ10Cの中心を通りX軸に平行な基準線BL10Cと、法線NL10Cのなす角度である。なお、図7では、マイクアレイ10Aの中心位置が座標点(x,y)で表され、マイクアレイ10Cのそれが座標点(x,y)で表されている。また、異音発生源ASの位置が座標点(xac,yac)で表されている。
3-2-3.位置推定処理部
位置推定処理部42Cは、方位推定処理部42Bから受け取った到来方位θの情報と、マイクアレイ10の位置の情報と、に基づいて、異音発生源ASの位置を推定する処理(位置推定処理)を行う。具体的に、位置推定処理部42Cは、まず、到来方位θが計算されたマイクアレイ10のうちから任意の2台を選ぶ(すなわち、マイクアレイpおよびq)。この選択に際しては、上述した入射角条件および設置条件が用いられる。
マイクアレイpおよびqについて少なくとも第1設置条件が満たされる場合、位置推定処理部42Cは、次式(8)および(9)により異音発生源の基準座標系における位置(xpq,ypq)を計算する。
Figure 0007151910000008

Figure 0007151910000009
式(8)および(9)において、(x ,y )および(x ,y )は、マイクアレイpおよびqの基準座標系における位置である。典型的に、(x ,y )はマイクアレイpの中央のマイクの位置であり、(x ,y )はマイクアレイqのそれの位置である。
位置推定処理部42Cは、到来方位θが計算されたマイクアレイ10のうち、2台を組み合わせる全ての組み合わせに対して位置(xpq,ypq)を計算する。例えば、到来方位θが計算されたマイクアレイ10の総数がu台ある場合、2台の組み合わせはu×(u-1)通りある。位置推定処理部42Cは、u×(u-1)個の位置(xpq,ypq)の重み付き平均を、次式(10)および(11)により計算する。
Figure 0007151910000010

Figure 0007151910000011
式(10)および(11)において、wpqは重み付け係数である。
u×(u-1)個の位置(xpq,ypq)の重み付き平均により計算された位置(xest,yest)は、異音発生源ASの推定位置に相当する。位置推定処理部42Cは、推定位置(xest,yest)の情報を、時刻推定処理部42D、表示処理部43、記録処理部44および緊急制御処理部45に送る。推定位置(xest,yest)の情報は、異音発生情報を構成する。
3-2-4.時刻推定処理部
時刻推定処理部42Dは、位置推定処理部42Cから受け取った位置(xest,yest)の情報と、任意の1台のマイクアレイ10(説明の便宜上、“マイクアレイp”とする)の位置の情報と、に基づいて、異音が発生した時刻を推定する処理(時刻推定処理)を行う。具体的に、時刻推定処理部42Dは、異音発生の推定時刻testを次式(12)により計算する。
Figure 0007151910000012
式(12)において、Lは、位置(xest,yest)から位置(x ,y )までの距離である。
時刻推定処理部42Dは、推定時刻testの情報を表示処理部43、記録処理部44および緊急制御処理部45に送る。時刻testの情報は、異音発生情報を構成する。
3-2-5.関連付け処理部
関連付け処理部42Eは、位置推定処理部42Cから受け取った推定位置(xest,yest)の情報と、時刻推定処理部42Dから受け取った推定時刻testの情報と、を関連付ける。また、関連付け処理部42Eは、これらの異音発生情報を、情報取得部41から受け取った金属材情報に関連付ける。異音発生情報が金属材情報に関連付けられることで、推定時刻testにおいて推定位置(xest,yest)に存在していた金属材が特定される。推定位置(xest,yest)が加工装置30の位置であれば、当該加工装置30が異音発生源ASであることが特定され、更には、当該加工装置30で加工されていた金属材も特定される。
図8は、異音発生情報が関連付けられた金属材情報の一覧の例を示す図である。図8に示される例では、異音発生情報が推定位置および推定時刻の情報から構成されている。推定位置の情報は座標点(x,y)で表され、推定時刻の情報は時間(X:Y)で表されている。推定時刻の情報に、異音が発生した日付の情報が追加されていてもよい。金属材情報は、識別番号、材種区分および寸法区分の情報から構成されている。
関連付け処理部42Eは、異音発生情報が付された金属材情報を、表示処理部43、記録処理部44および緊急制御処理部45に送る。金属材情報の送信は、関連付け処理の都度行われることが望ましい。
3-3.表示処理部
表示処理部43は、関連付け処理部42Eから受け取った異音発生情報付きの金属材情報を、表示装置50に表示するための処理を行う。この表示処理では、異音発生情報に含まれる推定位置(xest,yest)の情報に基づいて、この推定位置(xest,yest)の周辺の加工装置30の外形情報が記憶装置60から読み出される。続いて、金属材の外形を示す模式図と、異音発生源ASを示す図形(または記号)を、読み出された加工装置30の外形に重ねた画像が生成される。そして、生成された画像の情報が表示装置50に送られる。
表示装置50に送信される画像の情報には、付属情報が追加されてもよい。追加情報としては、推定時刻testの情報、表示装置50に表示される金属材情報、推定位置(xest,yest)に存在する加工装置30の可動部の状態の情報が例示される。異音発生情報、稼働状況情報などに基づいて、異音の発生の原因を特定する処理が別途行われている場合は、当該原因の情報が付属情報に含まれる。異音の発生の深刻度を診断する処理が別途行われている場合は、当該診断の結果の情報(例えば、要注意、操業の一時停止など)が付属情報に含まれる。
図9および10は、表示装置50に表示された画像例を示す模式図である。図9に示される例では、表示装置50上に二次元画像が表示される。図10に示される例では、表示装置50上に3次元画像が表示される。これらの例では、推定時刻testにおいて推定位置(xest,yest)に存在していた金属材が中心に据えられる。推定位置(xest,yest)には異音発生源を示す図形が描かれる。また、これらの例では、金属材情報としての識別番号MTL_IDと、推定時刻testの情報としての時間(X:Y)と、が表示されている。
3-4.記録処理部
記録処理部44は、関連付け処理部42Eから受け取った異音発生情報付きの金属材情報を、記憶装置60に記録するための処理を行う。この記録処理では、金属材情報に付属情報が追加されてもよい。この付属情報としては、表示処理において説明した付属情報と同じものが例示される。
3-5.緊急制御処理部
緊急制御処理部45は、位置推定処理部42Cから受け取った推定位置(xest,yest)の情報と、位置推定処理部42Dから受け取った推定時刻testの情報と、に基づいて、緊急制御指令を生成する。緊急制御指令は、異音に関連する不具合の発生を回避するために生成される。緊急制御指令としては、搬送ラインにおいて推定位置(xest,yest)よりも下流側に設置されたサイドガイドSGを緊急的に開放するための制御指令が例示される。緊急制御指令としては、搬送ラインにおいて推定位置(xest,yest)よりも下流側に設置された圧延機のロールギャップを的に緊急的に拡大させるための制御指令も例示される。
4.効果
以上説明した実施の形態に係る異音観測システムによれば、音響信号処理部42により抽出、方位推定および位置推定処理が行われるので、推定位置(xest,yest)の情報を自動的かつ高精度に生成することが可能となる。したがって、異音発生源ASの位置を自動的かつ高精度に特定することが可能となる。
また、音響信号処理部42(時刻推定処理部42D)により時刻推定処理が行われるので、推定時刻testの情報も自動的かつ高精度に生成することが可能となる。したがって、異音が発生した時刻も自動的かつ高精度に特定することが可能となる。
また、音響信号処理部42(関連付け処理部42E)により関連付け処理が行われるので、推定位置(xest,yest)、推定時刻testおよび金属材情報に基づいた各種対策を早急に講じることが可能となる。また、関連付け処理によれば、加工後において異音発生情報から遡ってこれに関係のある金属材を特定することも可能となる。金属材情報に付された異音発生情報を、製品の品質情報として活用することもできる。
また、表示処理や記録処理がこの関連付け処理と共に行われるので、関連付け処理の実行による効果を高めることも可能となる。更には、緊急制御処理が行われるので、異音の発生が大きなトラブルに発展するのを未然に回避することも可能となる。
10、10A、10B、10C、10D マイクアレイ
11、12、13、14、15 マイク
20 制御装置
30 加工装置
40 処理装置
41 情報取得部
42 音響信号処理部
42A 抽出処理部
42B 方位推定処理部
42C 位置推定処理部
42D 時刻推定処理部
42E 関連付け処理部
43 表示処理部
44 記録処理部
45 緊急制御処理部
50 表示装置
60 記憶装置
100 異音観測システム
MTL 金属材
SG サイドガイド
SPA、SPB、SPC、SPD 空間
θ、θ10A、θ10B 到来方位(相対方位)

Claims (6)

  1. 金属材の加工設備で発生する異音を観測するための異音観測システムであって、
    音響を検出する少なくとも2台のマイクアレイと、
    前記少なくとも2台のマイクアレイが検出した音響信号を処理する音響信号処理を行う処理装置と、
    を備え、
    前記少なくとも2台のマイクアレイは、
    前記加工設備の位置を含む第1空間に向けられた第1マイクアレイと、
    前記加工設備の位置において前記第1空間と一部の空間を共有する第2空間に向けられた第2マイクアレイと、
    を含み、
    前記処理装置が、前記音響信号処理において、
    前記第1マイクアレイが検出した前記音響信号から第1異音部を抽出し、
    前記第2マイクアレイが検出した前記音響信号から第2異音部を抽出し、
    前記第1異音部に基づいて、前記第1マイクアレイに対する異音発生源の相対方位を示す第1相対方位を推定し、
    前記第2異音部に基づいて、前記第2マイクアレイに対する前記相対方位を示す第2相対方位を推定し、
    前記第1および第2マイクアレイの基準座標面上の位置と、前記第1および第2相対方位と、に基づいて、前記異音発生源の当該座標面上の位置を推定する
    ことを特徴とする異音観測システム。
  2. 請求項1に記載の異音観測システムであって、
    前記少なくとも2台のマイクアレイは、更に、前記加工設備の位置において前記第1および第2空間の少なくとも一方と一部の空間を共有する第3空間に向けられた第3マイクアレイを備え、
    前記処理装置が、前記音響信号処理において、更に、
    前記第3マイクアレイが検出した前記音響信号から第3異音部を抽出し、
    前記第3異音部に基づいて、前記第3マイクアレイに対する前記相対方位を示す第3相対方位を推定し、
    前記異音発生源の位置の推定を、前記第1、第2および第3マイクアレイのうちの2台のマイクアレイの組み合わせに基づいて行う
    ことを特徴とする異音観測システム。
  3. 請求項1または2に記載の異音観測システムであって、
    前記処理装置が、前記音響信号処理において、更に、
    前記異音発生源の位置が推定された場合、前記少なくとも2台のマイクアレイのうちの任意のマイクアレイから前記異音発生源までの前記座標面上における距離と、前記異音発生源からの異音が前記任意のマイクアレイにおいて検出された時刻と、に基づいて、前記異音発生源での異音の発生時刻を推定する
    ことを特徴とする異音観測システム。
  4. 請求項3に記載の異音観測システムであって、
    前記加工設備の稼働状況を表示する表示装置を更に備え、
    前記処理装置が、更に、
    前記加工設備において加工される前記金属材の情報を取得する情報取得処理と、
    前記異音発生源の推定位置と、前記異音発生源での異音の推定発生時刻とを含む異音発生情報を、前記金属材の情報に関連付ける関連付け処理と、
    前記異音発生情報が関連付けられた前記金属材の情報を、前記表示装置に出力する表示処理と、
    を行うことを特徴とする異音観測システム。
  5. 請求項3または4に記載の異音観測システムであって、
    前記加工設備の稼働状況を記録する記憶装置を更に備え、
    前記処理装置が、更に、
    前記加工設備において加工される前記金属材の情報を取得する情報取得処理と、
    前記異音発生源の推定位置と、前記異音発生源での異音の推定発生時刻とを含む異音発生情報を、前記金属材の情報に関連付ける関連付け処理と、
    前記異音発生情報が関連付けられた前記金属材の情報を、前記記憶装置に記録する記録処理と、
    を行うことを特徴とする異音観測システム。
  6. 請求項3~5の何れか1項に記載の異音観測システムであって、
    前記加工設備を構成する加工装置を制御する制御装置を更に備え、
    前記処理装置が、更に、
    前記異音発生源の推定位置と、前記異音発生源での異音の推定発生時刻とを含む異音発生情報に基づいて、前記加工装置の少なくとも一部を緊急的に作動するための緊急制御指令を前記制御装置に出力する緊急制御処理を行う
    ことを特徴とする異音観測システム。
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