JP7151333B2 - 流体分離用炭素膜モジュール - Google Patents

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Description

本発明は、流体分離用炭素膜モジュールに関するものである。
各種混合ガスや混合液体から特定の成分を選択的に分離・精製する手法として、膜分離法は、蒸留等の他の流体分離法と比較して省エネルギーな手法であるため、注目されている。例えば、天然ガスの精製プラントでは、従来、アミンなどの溶液と排ガスを接触させ溶液中に吸収・除去するアミン吸着法と呼ばれる方法により天然ガス中に含まれる二酸化炭素を分離し、メタンガスを精製していたが、近年ではこれを膜分離法に置き換える検討がなされてきている。
天然ガスには、メタンガス以外にも炭化水素系の不純物が存在する。そのため、膜分離法において用いられる分離膜モジュールは、長期に渡って有機化合物に曝されるため、有機化合物曝露に対する耐久性が求められている。
このような用途への適用を目指し、炭素を材料とするガス分離膜(以下、単に炭素膜という場合がある)が検討されている(例えば、特許文献1)。炭素膜は有機化合物に対する耐久性が高く、上記のような用途に適している。しかし、炭素膜を用いた場合でも、炭素膜を分離モジュールに固定する役割を担うポッティング樹脂が有機化合物により侵されるために、分離性能が低下することがある。具体的には、長期間有機化合物に曝されることで、ポッティング樹脂が膨潤、変形したり、モジュールや膜から剥離したりする等の不具合が生じる場合がある。
有機化合物を含む気体を分離する分離膜モジュールに用いられるポッティング樹脂としては、エポキシ樹脂を用いることが検討されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
特表2003-513777号公報 国際公開第2010/114010号
しかしながら、引用文献2においては、フィルム状に成形したエポキシ樹脂の物性を評価しているにとどまっており、実際当該樹脂を用いてに分離膜モジュールのポッティングを行った例は記載されていない。また、用いられている分離膜は樹脂膜であって、炭素膜ではない。実際に本発明者らが特許文献2に記載のポッティング樹脂を炭素膜モジュールに適用したところ、ガスリークが発生することが判明した。
本発明は、長期的に有機化合物に曝される環境下、特に天然ガスの分離用途において十分な耐久性を発揮し得る流体分離用炭素膜モジュールを提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の炭素原子比率を有する炭素膜を特定のエポキシ樹脂を用いてポッティングすることにより、有機化合物に対して高い耐久性を有する流体分離用炭素膜モジュールを作製できることが見出された。すなわち、本発明は、複数本の流体分離用炭素膜がポッティング樹脂により固定されてなる流体分離用炭素膜モジュールであって、流体分離用炭素膜の炭素原子比率が63原子%以上90原子%以下であり、ポッティング樹脂が、(a)ビスフェノール型エポキシ化合物と、(b)脂環式アミンおよび芳香族アミンから選択される硬化剤とを含む組成物を硬化させてなる樹脂である流体分離用炭素膜モジュールである。
本発明により、有機化合物の多い環境下においても高い耐久性を有する流体分離用炭素膜モジュールを提供することができる。
<流体分離用炭素膜モジュール>
〔流体分離用炭素膜〕
本発明の流体分離用炭素膜モジュール(以下、単に「炭素膜モジュール」ということがある)においては、炭素原子比率が63原子%以上90原子%以下である炭素膜を用いる。炭素原子比率63原子%未満である炭素膜は、メカニズムは明確ではないが、後述するポッティング樹脂と炭素膜との界面が有機化合物に侵され、リークが発生して安定した分離性能を発揮することが困難となる。炭素原子比率は高いほど有機化合物に対する耐性に優れる傾向にあるため、65原子%以上が好ましく、67原子%以上がより好ましい。一方、炭素原子比率が90原子%を超える炭素膜は靭性が低く、後述するポッティング樹脂が硬化する過程での変形に追随できないため、製造段階での欠陥や剥離の発生頻度が大きくなる。さらに、炭素原子比率85原子%以下である炭素膜は表面に酸素等を含む極性基を多量に含む傾向にあるため、本発明のポッティング樹脂との接着性が高くなるため好ましく、80原子%以下であるとより好ましい。炭素原子比率は、X線光電子分光分析(XPS)によって算出される全原子に対する炭素原子の比率を意味する。本発明においては、炭素膜表面に有機高分子等炭素以外の物質がコートされたものを用いることもできるが、その場合、炭素原子比率の測定は、コート層を剥離した後の炭素部分をXPSにより測定した数値とする。
炭素膜は、外表面における全原子に対する酸素原子の比率(酸素原子比率)が0.1~25原子%のものを用いることが好ましい。ここでいう酸素原子比率は、炭素膜外表面のX線光電子分光分析(XPS)により測定される値である。外表面の酸素原子比率が前記範囲にあると、本発明のポッティング樹脂と外表面との親和性が高まるため、接着強度に優れた炭素膜モジュールを提供することができる。酸素原子比率は、高温環境にさらされた際の耐久性を確保する観点から18原子%以下であることがより好ましく、炭素膜とポッティング樹脂との接着性を確保する観点から0.5原子%以上であることがより好ましい。
また、特に二酸化炭素分離膜として使用する場合には、炭素膜の断面における、全原子に対する窒素原子の比率(窒素原子比率)が、0.1~30原子%のものを用いることが好ましい。ここでいう窒素原子比率は、炭素膜断面のXPSにより測定される値である。断面の窒素元素比率が高いほど、二酸化炭素分離膜として二酸化炭素と炭素膜との親和性が高まる傾向にあり、二酸化炭素の透過性が向上する。また窒素原子比率は、低いほど高温環境にさらされた際の炭素膜としての耐久性に優れるため好ましい。これらの観点から窒素原子比率は、1~25原子%であることがより好ましく、3~18原子%であることがさらに好ましい。
炭素膜は、分離前の混合流体から分離対象とする流体を分離する機能を有する緻密層と、緻密層の内側または外側に形成され、被分離流体または分離流体の通路として機能する流体通過部とを有する繊維状の分離膜であることが好ましい。繊維状の分離膜は、モジュール化する際に単位体積あたりに高効率に充填することが可能であり、モジュール単位の膜面積を大きく取ることができる。緻密層の厚みは特に限定されず、薄いほど物質透過抵抗を減少させることが可能になり、厚いほど外力による破損に対して強くなる。一般的には、緻密層の厚みは1nm以上であることが好ましく、100μm以下であることが好ましい。緻密層の厚みは、10nm以上、50μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上、20μm以下であることが更に好ましい。
炭素膜として、中空部を有する中空炭素膜を用いることは、好ましい態様の一つである。中空炭素膜を用いた場合、中空部がガス通過部として機能し、ガスの通過抵抗を低減することが可能である。中空炭素膜の場合、炭素膜の断面積Bに対する中空部の断面積Aの面積比率(中空面積比率:A/B)は0.001~0.7であることが好ましい。中空面積比率が大きいほど炭素膜の内部をガスが流れる際の圧力損失が低下して流体の透過度が向上する。このことから中空面積比率は0.01以上がより好ましく、0.05以上がさらに好ましい。一方、中空面積比率が小さいほど繊維状の炭素膜における断面方向の圧縮強度が大きくなることから、特に高圧での使用に際して好ましい態様である。そのため、中空面積比率は0.6以下がより好ましい。なお、ここで中空断面を持つ炭素膜の断面積Bは中空部の断面積Aを含んだ断面積である。また、耐圧性と透過度を両立させるために中空部は複数有していてもよく、その場合は中空部の断面積の総和を中空部の断面積Aとする。
また、炭素膜として、多孔質構造を有する多孔部の外周に緻密層が形成された繊維状の炭素膜(すなわち、多孔質構造を有する芯部と緻密層である鞘部とからなる芯鞘構造を有する芯鞘繊維状炭素膜)を用いることも好ましい態様の一つである。この場合、多孔部が流体通過部として機能する。流体透過性の観点から、このような多孔部の多孔質構造は三次元網目構造であることが好ましい。三次元網目構造とは、それぞれ三次元的に連続する枝部と細孔部(空隙部)からなる構造であり、液体窒素中で充分に冷却した試料をピンセット等により割断した断面を走査型電子顕微鏡で表面観察した際に、枝部と空隙部がそれぞれ連続していることにより確認できる構造である。三次元網目構造を有することで枝部が構造体全体を支えあう効果が生じて応力を全体に分散させるため、圧縮や曲げなどの外力に対して大きな耐性を有し、圧縮強度および圧縮比強度を向上させることができる。
三次元網目構造の中でも、骨格の枝部と細孔部(空隙部)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った共連続多孔構造であることは特に好ましい。共連続多孔構造を有することは、上記同様に割断した断面を走査型電子顕微鏡で表面観察した際に、炭素骨格の枝部と空隙部がそれぞれ連続しつつ絡み合っていることにより確認できる。共連続多孔構造の構造周期は50~10,000nmであることが好ましい。構造周期が50nm以上であると、多孔部(流体通過部)に流体を流す際の圧力損失が低減し、透過前後の圧力差が大きくなるため流体の透過性が向上する。この観点から、共連続多孔構造の構造周期は100nm以上がより好ましく、300nm以上がさらに好ましい。一方、構造周期が10,000nm以下であると、繊維直径に対して十分に多数の共連続多孔構造を構成する枝部が存在することから、繊維断面方向に加わる力に対して強くなり、炭素膜としての耐圧性を向上させることができる。また、圧力損失が低下し、より省エネルギーで分離・精製を行うことができる。
共連続多孔構造の構造周期は、炭素膜にX線を入射し、小角散乱にて得られた散乱強度のピークトップの位置における散乱角度2θより、下式で算出されるものである。
Figure 0007151333000001
L:構造周期、λ:入射X線の波長
ただし共連続多孔構造の構造周期が大きくて小角散乱が観測できない場合がある。その場合はX線コンピュータ断層撮影(X線CT)によって構造周期を得る。具体的には、X線CTによって撮影した三次元画像をフーリエ変換した後に、その二次元スペクトルの円環平均を取り、一次元スペクトルを得る。その一次元スペクトルにおけるピークトップの位置に対応する特性波長を求め、その逆数より構造周期を算出する。なお上記の構造周期の解析に際して、後述する緻密層については構造周期が上記の範囲外となるため解析に影響はなく、上記式で算出される構造周期をもって共連続多孔構造の構造周期とする。
〔ポッティング樹脂〕
本発明の炭素膜モジュールは、前述の炭素膜が複数本ポッティング樹脂により固定されてなる。(本明細書においては、複数本の炭素膜がポッティング樹脂により固定されて一体化された構造を含むものを「炭素膜モジュール」と表記し、さらにケーシング等に収納されたもの等もこれに含まれるものとする。また、本発明におけるポッティング樹脂は後述するように熱硬化性のエポキシ樹脂であるが、慣例に従い、流動性を有する硬化前樹脂および硬化樹脂の両者とも「ポッティング樹脂」あるいは「エポキシ樹脂」と記述する。)ポッティングによる固定部分は、炭素膜の一端のみでも両端でも構わないが、両端を固定することが好ましい。一般的には、複数の炭素膜を並列に束ね、その両端を2箇所でポッティング樹脂により固定することが好ましいが、炭素膜をU字型に折り曲げた状態で炭素膜の両端を1箇所でポッティング樹脂により固定することもできる。
本発明で用いるポッティング樹脂は、(a)ビスフェノール型エポキシ化合物と、(b)脂環式アミンおよび芳香族アミンから選択される硬化剤とを硬化させてなる樹脂(エポキシ樹脂)である。(a)ビスフェノール型エポキシ化合物は芳香環を有しており、(b)脂環式アミン、芳香族アミンはそれぞれ脂肪族環、芳香環を有しているために硬化させた際に剛直な構造となり、有機化合物に対する高い耐性が得られると考えられる。なお、脂環式アミンおよび芳香族アミンから選択される硬化剤、とは、脂環式アミンおよび芳香族アミンの両者を硬化剤として用いる態様も含むものとする。
(a)ビスフェノール型エポキシ化合物のエポキシ当量は150以上400以下であることが好ましい。エポキシ当量が150以上であると架橋密度が大きくなりより耐薬品性が得られるため好ましく、180以上であるとより好ましく、200以上であるとさらに好ましい。一方、エポキシ当量が400以下であると、靭性が高くなり、モジュール作製の際の割れを抑制できるため好ましく、300以下であるとより好ましく、250以下であるとさらに好ましい。
ビスフェノール型エポキシ化合物は特に限定されないが、ビスフェノールF型、またはビスフェノールA型が、液状で取り扱い易く好ましい。
脂環式アミンとしては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンなどが挙げられる。その中で特にシクロヘキシル基を有する脂環式アミンはより剛直な構造となり、高い耐薬品性が得られるため好ましい。このような脂環式アミンとしては、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタンが挙げられる。さらにビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンは炭素の六員環の対称性が高い構造を有しているために繰り返し単位のパッキング性が高く、特に耐性が向上するため好ましい。
芳香族アミンとしては、ビス(4-アミノフェニル)メタン、m-キシリレンジアミン、キシリレンジアミン誘導体、キシリレンジアミン三量体、m-フェニレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられるが、その中でもビス(4-アミノフェニル)メタンは炭素の六員環の対称性が高い構造を有しているために繰り返し単位のパッキング性が高く、特に耐性が向上するため好ましい。
なお、本発明において、脂環式アミン、芳香族アミンは、アミノ基及び環状構造からなる基本骨格を有する化合物の総称であり、他にエポキシ硬化時の重合反応に直接関与しない側鎖等を有する化合物も含むものとする。
本発明で用いるポッティング樹脂は、本発明の目的に影響しない範囲において、脂肪族鎖状アミンを含むことも可能である。脂肪族鎖状アミンを含むことで、本発明のポッティング樹脂の架橋密度を調整して、硬化前の粘度や硬化時間、さらには硬化後の耐熱性、靭性を所望の範囲に設計することが可能である。
ポッティング樹脂は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、任意の添加剤を含むことができる。例えば、ポッティング樹脂硬化時の炭素膜間への流動性調整や混合時の取扱い性向上のために、フィラー、界面活性剤、シランカップリング剤等を添加することも可能である。また、ゴム成分やゴム粒子を添加することで、硬化成形したポッティング樹脂の靭性向上を行うことも効果的である。さらに、シリカ、タルク、ゼオライト、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加することで、硬化発熱の抑制、強度向上、増粘等が可能である。
本発明の炭素膜モジュールにおいて、被分離流体は特に限定されず、液体でも気体でも構わないが、気体分離用に特に好適に用いることができ、特に有機化合物耐性の高さを生かした環境での用途に適している。具体的な用途としては、発電所、高炉などの排気ガスからの二酸化炭素分離・貯蔵システムや、石炭ガス化複合発電におけるガス化した燃料ガス中からの硫黄成分除去、天然ガス田からの噴出ガス精製などを例示することができ、特に天然ガスの原ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離に好適に用いることができる。
<流体分離用炭素膜の製造方法>
本発明に好適に用いられる炭素膜の製造方法は特に限定されないが、一例として、炭化可能樹脂と消失樹脂とを相溶させて樹脂混合物とする工程(工程1)と、相溶した状態の樹脂混合物を相分離させ、固定化する工程(工程2)と、加熱焼成により炭化する工程(工程3)とを有する製造方法により製造することができる。
〔工程1〕
工程1は、炭化可能樹脂10~90重量%と、消失樹脂90~10重量%と相溶させ、樹脂混合物とする工程である。
ここで炭化可能樹脂とは、焼成により炭化し、枝部(炭素部)として残存する樹脂であり、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の双方を用いることができる。熱可塑性樹脂の場合、加熱や高エネルギー線照射などの簡便なプロセスで不融化処理を実施可能な樹脂を選択することが好ましい。また、熱硬化性樹脂の場合、不融化処理が不要の場合が多く、こちらも好適な材料として挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステルが挙げられ、熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグニン樹脂、ウレタン樹脂などを列挙することができる。これらは単独で用いても、混合された状態で用いても構わないが、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂それぞれで混合することも成形加工の容易さから好ましい。
それらの中でも炭化収率と成形性、経済性の観点から熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、全芳香族ポリエステルがより好ましく用いられる。
また消失樹脂とは、後述する工程2に引き続いて、不融化処理と同時もしくは不融化処理後、または焼成と同時のいずれかの段階で除去することのできる樹脂である。消失樹脂を除去する方法については特に限定されず、薬品を用いて解重合するなどして化学的に除去する方法、消失樹脂を溶解する溶媒を添加して溶解除去する方法、加熱して熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法などが好ましく用いられる。これらの手法は単独で、もしくは組み合わせて使用することができ、組み合わせて実施する場合にはそれぞれを同時に実施しても別々に実施してもよい。
化学的に除去する方法としては、酸またはアルカリを用いて加水分解する方法が経済性や取り扱い性の観点から好ましい。酸またはアルカリによる加水分解を受けやすい樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
消失樹脂を溶解する溶媒を添加して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂に対して、連続して溶媒を供給して消失樹脂を溶解、除去する方法や、バッチ式で混合して消失樹脂を溶解、除去する方法などが好ましい例として挙げられる。
溶媒を添加して除去する方法に適した消失樹脂の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネートなどが挙げられる。中でも溶媒への溶解性から非晶性の樹脂であることがより好ましく、その例としてはポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネートが挙げられる。
熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂をバッチ式で加熱して熱分解する方法や、連続して混合された炭化可能樹脂と消失樹脂を加熱源中へ連続的に供給しつつ加熱して熱分解する方法が挙げられる。
消失樹脂は、これらのなかでも、後述する工程3において、炭化可能樹脂を焼成により炭化する際に熱分解により消失する樹脂であることが好ましく、後述する炭化可能樹脂の不融化処理の際に大きな化学変化を起さず、かつ焼成後の炭化収率が10%未満となる熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような消失樹脂の具体的な例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリカーボネートなどを列挙することができ、これらは、単独で用いても、混合された状態で用いても構わない。
工程1においては、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶させ、樹脂混合物(ポリマーアロイ)とする。ここでいう「相溶させ」とは、温度および/または溶媒の条件を適切に選択することにより、光学顕微鏡で炭化可能樹脂と消失樹脂の相分離構造が観察されない状態を作り出すことをいう。
炭化可能樹脂と消失樹脂は、樹脂同士のみの混合により相溶させてもよいし、さらに溶媒を加えることにより相溶させてもよい。
複数の樹脂が相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系などが挙げられる。また特に炭化可能樹脂と消失樹脂の少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発されるものも好ましい例として挙げられる。
加えられる溶媒については特に限定されず、溶解性の指標となる炭化可能樹脂と消失樹脂の溶解度パラメーター(SP値)の平均値からの差の絶対値が、5.0以内であることが好ましい。SP値の平均値からの差の絶対値は、小さいほど溶解性が高いことが知られているため、差がないことが好ましい。またSP値の平均値からの差の絶対値は、大きいほど溶解性が低くなり、炭化可能樹脂と消失樹脂との相溶状態を取ることが難しくなる。このことからSP値の平均値からの差の絶対値は、3.0以下であることが好ましく、2.0以下が最も好ましい。
相溶する系の具体的な炭化可能樹脂と消失樹脂の組み合わせ例としては、溶媒を含まない系であれば、ポリフェニレンオキシド/ポリスチレン、ポリフェニレンオキシド/スチレン-アクリロニトリル共重合体、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル/ポリカーボネートなどが挙げられる。溶媒を含む系の具体的な組合せ例としては、ポリアクリロニトリル/ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルフェノール、ポリアクリロニトリル/ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル/ポリ乳酸、ポリビニルアルコール/酢酸ビニル-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール/ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール/ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール/デンプンなどを挙げることができる。
炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する方法については限定されず、均一に混合できる限りにおいて公知の種々の混合方式を採用できる。具体例としては、攪拌翼を持つロータリー式のミキサーや、スクリューによる混練押出機などが挙げられる。
また炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際の温度(混合温度)を、炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることも好ましい。ここで軟化する温度とは、炭化可能樹脂または消失樹脂が結晶性高分子であれば融点、非晶性樹脂であればガラス転移点温度を適宜選択すればよい。混合温度を炭化可能樹脂と消失樹脂が共に軟化する温度以上とすることで、両者の粘性を下げられるため、より効率のよい攪拌、混合が可能になる。混合温度の上限についても特に限定されず、熱分解による樹脂の劣化を防止し、品質に優れた炭素膜の前駆体を得る観点から、400℃以下であることが好ましい。
また、工程1においては、炭化可能樹脂10~90重量%に対し消失樹脂90~10重量%を混合する。炭化可能樹脂と消失樹脂が前記範囲内であると、最適な細孔サイズや空隙率を任意に設計できるため好ましい。炭化可能樹脂が10重量%以上であれば、炭化後の炭素膜における力学的な強度を保つことが可能になるほか、収率が向上するため好ましい。また炭化可能な材料が90重量%以下であれば、消失樹脂が効率よく空隙を形成できるため好ましい。
また炭化可能樹脂と消失樹脂を混合する際に、溶媒を添加することも好ましい。溶媒を添加することで炭化可能樹脂と消失樹脂の粘性を下げ、成形を容易にするほか、炭化可能樹脂と消失樹脂を相溶化させやすくなる。ここでいう溶媒も特に限定されず、炭化可能樹脂、消失樹脂のうち少なくともいずれか一方を溶解、膨潤させることが可能な常温で液体であるものであればよく、炭化可能樹脂および消失樹脂をいずれも溶解するものであれば、両者の相溶性を向上させることが可能となるためより好ましい。
溶媒の添加量は、炭化可能樹脂と消失樹脂の相溶性を向上させ、粘性を下げて流動性を改善する観点から炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して20重量%以上であることが好ましい。また一方で溶媒の回収、再利用に伴うコストの観点から、炭化可能樹脂と消失樹脂の合計重量に対して90重量%以下であることが好ましい。
〔工程2〕
工程2は、工程1において相溶させた状態の樹脂混合物を紡糸し、相分離させて微細構造を形成し、固定化する工程である。前述の共連続多孔構造を有する炭素膜を得る場合、微細構造として共連続相分離構造を形成させる。
相溶させた状態の樹脂混合物を紡糸する方法は特に限定されず、後述の相分離法に合わせた紡糸法を適宜選択できる。樹脂混合物が熱可塑性樹脂の組合せであれば、樹脂の軟化温度以上に加熱してから溶融紡糸を行うことができる。また樹脂混合物に溶媒が含まれる場合には、溶液紡糸として乾式紡糸、乾湿式紡糸や湿式紡糸などを適宜選択することができる。
混合された炭化可能樹脂と消失樹脂を相分離させる方法は特に限定されず、例えば温度変化によって相分離を誘発する熱誘起相分離法、非溶媒を添加することによって相分離を誘発する非溶媒誘起相分離法が挙げられる。
これら相分離法は、単独で、もしくは組み合わせて使用することができる。組み合わせて使用する場合の具体的な方法は、例えば凝固浴を通して非溶媒誘起相分離を起こした後、加熱して熱誘起相分離を起こす方法や、凝固浴の温度を制御して非溶媒誘起相分離と熱誘起相分離を同時に起こす方法、口金から吐出された材料を冷却して熱誘起相分離を起こした後に非溶媒と接触させる方法などが挙げられる。
また、中空糸炭素膜とする場合、工程2は、工程1において相溶させた状態の樹脂混合物を中空糸状に紡糸するとともに、相分離させて微細構造を形成し、固定化する工程である。
この場合、紡糸と同時に相分離させることが好ましい。このような方法としては、例えば工程1で作製した相溶樹脂混合物または溶媒を加えた相溶樹脂溶液を二重管構造の中空糸紡糸ノズルの外管から押し出し、紡糸ノズルの内管から、空気や窒素などのガス、紡糸原液と同一の溶媒、消失樹脂が溶解した溶液、非溶媒、あるいはそれらの混合物などを押し出す方法が挙げられる。
次いで凝固浴中を通過させた後、乾燥などにより溶媒を除去することで微細構造を形成し、炭素膜の前駆体を得ることができる。ここで凝固液としては水、アルコール、飽和食塩水、およびそれらと工程1で使用する溶媒との混合溶媒などが挙げられる。なお、内管から溶媒や消失樹脂の溶液を吐出する場合、乾燥工程の前に凝固浴中に浸漬して、内管から吐出した溶媒および消失樹脂を溶出させておくこともできる。
〔消失樹脂の除去〕
工程2において得られた炭素膜の前駆体は、炭化工程(工程3)に供される前、または炭化工程と同時、またはその両方で消失樹脂の除去処理を行うことが好ましい。除去処理の方法は特に限定されない。具体的には、酸、アルカリ、酵素を用いて消失樹脂を化学的に分解、低分子量化して除去する方法や、消失樹脂を溶解する溶媒により溶解除去する方法、電子線、ガンマ線、紫外線、赤外線などの放射線や熱を用いて消失樹脂を分解除去する方法などが挙げられる。
特に熱分解によって消失樹脂を除去処理することができる場合には、予め消失樹脂の80重量%以上が消失する温度で熱処理を行うこともできるし、炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において消失樹脂を熱分解、ガス化して除去することもできる。炭化工程(工程3)もしくは後述の不融化処理において熱処理と同時に消失樹脂を熱分解、ガス化して除去すると、生産性が高くなることから好ましい。
〔不融化処理〕
工程2において得られた炭素膜の前駆体は、炭化工程(工程3)に供される前に不融化処理を行うことが好ましい。不融化処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法としては、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法、電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法、反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法などが挙げられ、中でも酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法は、プロセスが簡便であり製造コストを低く抑えることが可能である点から好ましい。これらの手法は単独もしくは組み合わせて使用してもよく、それぞれを同時に使用しても別々に使用してもよい。
酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法における加熱温度は、架橋反応を効率よく進める観点から150℃以上が好ましく、炭化可能樹脂の熱分解、燃焼等による重量ロスからの収率悪化を防ぐ観点から、350℃以下が好ましい。
また処理中の酸素濃度については特に限定されないが、18%以上の酸素濃度を持つガスを供給することが製造コストを低く抑えることが可能となるため好ましい。ガスの供給方法については特に限定されないが、空気をそのまま加熱装置内に供給する方法や、ボンベ等を用いて純酸素を加熱装置内に供給する方法などが挙げられる。
〔工程3〕
工程3は、工程2において得られた炭素膜の前駆体、あるいは必要に応じて消失樹脂の除去および/または不融化処理に供された前駆体を焼成し、炭化して炭素膜を得る工程である。
炭素膜の前駆体を充分に炭化させるために、焼成は不活性ガス雰囲気において500℃以上に加熱することにより行うことが好ましい。ここで不活性ガスとは、加熱時に化学的に不活性であるものを言い、具体的な例としては、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノン、二酸化炭素などである。中でも窒素、アルゴンを用いることが、経済的な観点から好ましい。また加熱する温度が高いと炭素膜が脆くなる傾向にあるため、1,000℃以下が好ましい。
不活性ガスの流量は、加熱装置内の酸素濃度を充分に低下させられる量であればよく、加熱装置の大きさ、原料の供給量、加熱温度などによって適宜最適な値を選択することが好ましい。流量の上限についても特に限定されないが、経済性や加熱装置内の温度変化を少なくする観点から、温度分布や加熱装置の設計に合わせて適宜設定することが好ましい。
連続的に炭化処理を行う場合の加熱方法については、一定温度に保たれた加熱装置内に、膜をローラーやコンベヤ等を用いて連続的に供給しつつ取り出す方法であると、生産性を高くすることが可能であるため好ましい。
一方、加熱装置内にてバッチ式処理を行う場合の昇温速度、降温速度の下限は特に限定されないが、昇温、降温にかかる時間を短縮することで生産性を高めることができるため、1℃/分以上の速度が好ましい。また昇温速度、降温速度の上限は特に限定されないが、加熱装置を構成する膜の耐熱衝撃特性よりも遅くすることが好ましい。
<流体分離用炭素膜モジュール>
本発明の炭素膜モジュールは、複数の炭素膜を配置し、炭素膜の一端または両端の炭素膜の間隙部分に、前述の(a)ビスフェノール型エポキシ化合物と、(b)脂環式アミンおよび芳香族アミンから選択される硬化剤とを含む組成物を充填(ポッティング)し、その後硬化することで製造することができる。ポッティングの方法は特に限定されないが、遠心力を利用して炭素膜間に浸透させる遠心ポッティング法と、流動状態のポッティング樹脂を定量ポンプやヘッドにより送液し炭素膜に浸透させる静置ポッティング法が挙げられる。
ポッティングを行う際は、0℃以上120℃以下で雰囲気温度を管理することが好ましい。0℃以上にすることで、ポッティング樹脂の硬化反応、すなわちエポキシ基とアミンの反応を高効率に進行させることができる。5℃以上とすると反応時間を短縮することができるため、より好ましい。120℃以下とすることで過剰な硬化発熱を抑制することができるため好ましく、70℃以下とすることで作業者の耐熱措置が軽微であり、作業性が向上するためより好ましい。
硬化したポッティング樹脂は、後工程で加熱することによりその強度を高めることができる。具体的には、ポッティング時の雰囲気温度より10℃以上高く、かつ80℃以上で熱処理すると強度向上の効果が十分得られるため好ましい。また、熱処理は段階的に温度を上げていくことが可能であり、例えば、80℃で一定時間熱処理した後に100℃、120℃と段階的に昇温し、複数の温度ステップで熱処理を行うと、強度向上と同時に靭性が向上するためより好ましい。
以下に本発明を実施例により説明するが、これらの記載は本発明を何ら限定するものではない。
<評価手法>
(炭素原子比率)
炭素原子比率は、XPS装置(Quantera SXM (PHI社製))を用いて、励起X線 monochromatic Al Kα1,2線(1486.6 eV)、X線径100 μm、光電子脱出角度45°(試料表面に対する検出器の傾き)として測定した。得られたデータを、スムージング 9-point smoothing、横軸補正 C1s メインピークを284.6 eV として解析し、炭素原子比率を原子%として算出した。
(共連続多孔構造の有無)
炭素膜を液体窒素中で充分に冷却後、ピンセットで割断して形成した断面の共連続多孔構造を有する多孔部を走査型電子顕微鏡で表面観察し、炭素骨格の枝部と細孔部(空隙部)がそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った構造が見られた場合、共連続多孔構造を有していると判定した。
(構造周期)
炭素膜を試料プレートに挟み、CuKα線光源から得られたX線源から散乱角度10度未満の情報が得られるように、光源、試料および二次元検出器の位置を調整した。二次元検出器から得られた画像データ(輝度情報)から、ビームストッパーの影響を受けている中心部分を除外して、ビーム中心から動径を設け、角度1°毎に360°の輝度値を合算して散乱強度分布曲線を得た。得られた曲線においてピークを持つ位置の散乱角度2θより、連続構造部分の構造周期を下記の式によって得た。
Figure 0007151333000002
L:構造周期(μm)、λ:入射X線の波長(μm)
また構造周期が1μm以上であり、X線散乱のピークが観測されない場合には、X線顕微鏡で0.3°ステップ、180°以上の範囲で連続回転像を撮影し、CT像を得た。得られたCT像に対してフーリエ変換を実施し、その二次元スペクトルの円環平均を取り、一次元スペクトルを得た。その一次元スペクトルにおけるピークトップの位置に対応する特性波長を求め、その逆数より構造周期を得た。
(ガス分離評価)
50℃雰囲気において、二酸化炭素とメタンの混合ガスにトルエン蒸気を250ppm含ませて炭素膜モジュールに導入して、二酸化炭素とメタンとの分離評価を実施した。リークが観察されないものは、最大100時間評価を実施し、開始時と終了時の分離係数の比を分離係数保持率とした。
[実施例1]
30gのポリサイエンス社製ポリアクリロニトリル(MW15万)と30gのシグマ・アルドリッチ社製ポリビニルピロリドン(MW4万)、および、溶媒として300gの和光純薬工業製ジメチルスルホキシド(DMSO)をセパラブルフラスコに投入し、加熱、攪拌および還流を行いながら均一かつ透明な溶液を調製した。
得られた溶液を、1穴口金から溶液を吐出して、凝固浴へ導き、その後ローラーを用いて引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。
得られた原糸を乾燥機にて乾燥して原糸表面の水分を乾燥させた後、真空乾燥を行い、乾燥後の原糸を得た。
その後245℃に保った電気炉中へ原糸を投入し、酸素雰囲気化で加熱することで不融化処理を行った。不融化処理を行った原糸は、黒色に変化した。
得られた不融化原糸を炭化温度620℃、保持時間30分の条件で炭化処理を行うことで、炭素膜とした。得られた炭素膜の多孔部には共連続多孔構造が形成されており、構造周期は270nmであった。また炭素原子比率は68.3%であった。
得られた炭素膜を並列に束状にまとめて、端部をカットして面を揃えた。その後、カットした端部を下にしてホットプレート上に置き、モジュールケースに予め設けた樹脂流入孔より、静置状態でポッティング樹脂を導入した。ポッティング樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱化学株式会社製、JER828)と脂肪族環状アミン系硬化剤(和光純薬工業株式会社製、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルアミン))と脂肪族鎖状アミン系硬化剤(和光純薬工業株式会社製、ジエチレントリアミン)を質量比が100:22:12となるように混合したものを用いた。雰囲気温度は30℃とし、その後100℃で100時間熱処理を実施した。両端をともに封止部の最端部をカッターで切断し、炭素膜モジュールとした。その後、ガス分離評価を実施したところ、100時間後にもリークが発生せず、分離係数の保持率は99.1%であった。
[実施例2]
炭化温度を550℃とした以外は実施例1と同様に炭素膜を作製したところ、得られた炭素膜の多孔部には共連続多孔構造が形成されており、構造周期は280nmであった。また炭素原子比率は65.3%であった。実施例1と同様に炭素膜モジュールを作製してガス分離評価を実施したところ、100時間後にもリークが発生せず、分離係数の保持率は97.1%であった。
[実施例3]
炭化温度を900℃とした以外は実施例1と同様に炭素膜を作製したところ、得られた炭素膜の多孔部には共連続多孔構造が形成されており、構造周期は265nmであった。また炭素原子比率は84.4%であった。実施例1と同様に炭素膜モジュールを作製してガス分離評価を実施したところ、100時間後にもリークが発生せず、分離係数の保持率は94.1%であった。
[比較例1]
ポッティング樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ化合物(三菱化学株式会社製、JER828)と脂肪族鎖状アミン系硬化剤(和光純薬工業株式会社製、ジエチレントリアミン)を質量比が100:41となるように混合したものを用いたこと以外は実施例1と同様に炭素膜モジュールを作製した。ガス分離評価を実施したところ、15時間後にリークが発生した。
[比較例2]
炭化温度を1200℃とした以外は実施例1と同様に炭素膜を作製したところ、得られた炭素膜の多孔部には共連続多孔構造が形成されており、構造周期は251nmであった。また炭素原子比率は92.3%であった。ガス分離評価を実施したところ、60時間後にリークが発生した。
[比較例3]
炭化温度を400℃とした以外は、実施例1と同様に炭素膜を作製したところ、得られた炭素膜の多孔部には共連続多孔構造が形成されており、構造周期は277nmであった。また炭素原子比率は61.2%であった。実施例1と同様に炭素膜モジュールを作製してガス分離評価を実施したところ、50時間後にリークが発生した。

Claims (10)

  1. 複数本の流体分離用炭素膜がポッティング樹脂により固定されてなる流体分離用炭素膜モジュールであって、前記流体分離用炭素膜の炭素原子比率が63原子%以上90原子%以下であり、前記ポッティング樹脂が、(a)ビスフェノール型エポキシ化合物と、(b)ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンとを含む組成物を硬化させてなる樹脂である流体分離用炭素膜モジュール。
  2. 前記流体分離用炭素膜の外表面における全原子に対する酸素原子の比率が0.1~25原子%である、請求項1に記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  3. 前記流体分離用炭素膜の断面における全原子に対する窒素原子の比率が0.1~30原子%である、請求項1または2に記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  4. 前記流体分離用炭素膜が、多孔質構造を有する多孔部の外周に緻密層が形成された繊維状炭素膜である、請求項1~のいずれかに記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  5. 前記多孔質構造が三次元網目構造である、請求項に記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  6. 前記三次元網目構造が共連続多孔構造である、請求項に記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  7. 前記共連続多孔構造の構造周期が50~10,000nmである、請求項に記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  8. 気体分離用である、請求項1~のいずれかに記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  9. 二酸化炭素分離用である、請求項に記載の流体分離用炭素膜モジュール。
  10. 天然ガスの原ガスから二酸化炭素を分離する用途に用いられる、請求項に記載の流体分離用炭素膜モジュール。
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