JP7149864B2 - ゼオライト吸着材の再利用方法および再生吸着材 - Google Patents
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Description
本発明は、ゼオライト吸着材の再利用方法に関し、特に、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する圧力スイング吸着装置に使用されるゼオライト吸着材を再利用する方法に関する。また、本発明は、使用済みゼオライト吸着材の焼成物からなる再生吸着材に関する。
近年、石油を原料として製造された油類やアルコール等の大量消費による化石燃料資源枯渇への危惧や大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境問題の観点から、石油以外の原料で各種有機物質を製造する手法が検討されてきた。例えば、トウモロコシ等の可食原料から糖発酵法によってバイオエタノールを製造する方法が注目されている。しかし、このような可食原料を用いた糖発酵法は、限られた農地面積を食料以外の生産に用いることから、食料価格の高騰を招く等の問題があった。
このような問題点を解決するために、従来、廃棄されていたような非可食原料を用いて、従来石油から製造されていた各種有機物質を製造する方法が各種検討されている。例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、水素を含む合成ガスを、微生物発酵によって酢酸およびエタノールに変換することが行われている。このような合成ガスから微生物発酵によりエタノールを製造する方法においては、合成ガスやその原料ガス中に汚染物質や不純物質が存在する場合、微生物発酵が阻害されて、有機物質を効率的に得ることができない等の問題があった。このような問題を解決するために、原料ガスを精製して、合成ガスを得ることが行われてきた。
しかし、汚染物質や不純物質を精製により除去した合成ガスを用いた場合であっても、合成ガス中のガス組成によっては、依然として、有機物質を効率的に得ることができないという問題があった。そこで、特許文献1では、水素と、一酸化炭素および/または窒素とを主成分とし、二酸化炭素と、場合によっては1種類以上の他の不純物とで汚染された合成ガスの精製方法において、ゼオライトを吸着材として用いた圧力スイング吸着法によって合成ガス中の二酸化炭素を除去することが提案されている。
本発明者は、特許文献1に記載の方法によって、合成ガスの精製を長期間に渡って行った結果、吸着材であるゼオライトの性能が低下して、十分な精製効果が得られなくなった。そこで、本発明者は、吸着材であるゼオライトを新品(未使用)のゼオライトに交換したが、使用開始から一定期間は精製能力が安定せずに、合成ガス中のガス組成が一定に保たれないという新たな問題を知見した。
したがって、本発明の目的は、圧力スイング吸着装置を用いて精製した合成ガスの組成を一定に保つために、使用済み吸着材を再生して、精製能力が安定的に発揮できる吸着材の再利用方法を提供することである。
本発明者は、使用済みゼオライト吸着材を新品(未使用)のゼオライト吸着材に交換せずに、使用済みゼオライト吸着材を特定の状態に再生した後、この再生したゼオライト吸着材を用いることで、精製能力が安定的に発揮され、上記課題を解決できることを見出した。即ち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]ガス化炉から排出される、主成分として水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスを含む合成ガスが供給されて、合成ガス中の二酸化炭素ガスを吸着し、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する圧力スイング吸着装置に使用されるゼオライト吸着材を再生する方法であって、
圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収する工程、
前記ゼオライト吸着材を、酸素雰囲気下で焼成して、ゼオライト吸着材を再生する工程、及び
前記再生したゼオライト吸着材を、圧力スイング吸着装置の吸着材として再度使用する工程、
を備え、
前記使用済みのゼオライト吸着材を、未使用のゼオライト吸着材に対して、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で-15.0~-1.0%となるまで焼成する、ゼオライト吸着材の再利用方法。
圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収する工程、
前記ゼオライト吸着材を、酸素雰囲気下で焼成して、ゼオライト吸着材を再生する工程、及び
前記再生したゼオライト吸着材を、圧力スイング吸着装置の吸着材として再度使用する工程、
を備え、
前記使用済みのゼオライト吸着材を、未使用のゼオライト吸着材に対して、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で-15.0~-1.0%となるまで焼成する、ゼオライト吸着材の再利用方法。
[2]前記使用済みのゼオライト吸着材は、ゼオライト結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着しており、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で、未使用のゼオライトに対して-15.0%以上である[1]に記載の方法。
[3]前記ガス化炉から排出される合成ガスがタール成分を含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]前記ゼオライトがLSX型ゼオライトである、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]使用済みゼオライト吸着材の焼成物からなる再生吸着材であって、
ゼオライト結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着しており、
窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で、未使用のゼオライトに対して-15.0~-1.0%である、再生吸着材。
ゼオライト結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着しており、
窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で、未使用のゼオライトに対して-15.0~-1.0%である、再生吸着材。
[6]前記ゼオライトがLSX型ゼオライトである、[5]に記載の再生吸着材。
[7]一酸化炭素を含む合成ガスから微生物発酵により有機物質を製造する方法であって、
[5]または[6]に記載の再生吸着材を用いて、前記合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する合成ガス精製工程と、
前記合成ガス精製工程により得られた合成ガスを微生物発酵槽に供給し、前記微生物発酵により有機物質含有液を得る微生物発酵工程と、
前記有機物質含有液を、0.01~1000kPaの条件下、室温以上~500℃に加熱して、微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離する分離工程と、
前記分離工程により得られた気体成分を凝縮させて液化する液化工程と、
前記液化工程により得られた液化物から有機物質を精製する精製工程と、
を備える、有機物質の製造方法。
[5]または[6]に記載の再生吸着材を用いて、前記合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する合成ガス精製工程と、
前記合成ガス精製工程により得られた合成ガスを微生物発酵槽に供給し、前記微生物発酵により有機物質含有液を得る微生物発酵工程と、
前記有機物質含有液を、0.01~1000kPaの条件下、室温以上~500℃に加熱して、微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離する分離工程と、
前記分離工程により得られた気体成分を凝縮させて液化する液化工程と、
前記液化工程により得られた液化物から有機物質を精製する精製工程と、
を備える、有機物質の製造方法。
[8]前記液化工程において生じる凝縮熱を、有機物質含有液から有機物質を精製する際の熱源として再利用する、[7]に記載の方法。
[9]前記合成ガスが、炭素源をガス化させることによって得られたものである、[7]または[8]に記載の方法。
[10]前記炭素源が廃棄物である、[9]に記載の方法。
[11]前記有機物質が、炭素数1~6のアルコールを含む、[7]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12][7]~[11]のいずれかに記載の方法により得られた有機物質。
本発明によれば、圧力スイング吸着装置を用いて精製した合成ガスの組成を一定に保つために、精製能力が安定的に発揮できる吸着材の再利用方法を提供することができる。本発明の方法より得られた再生吸着材を用いることで、合成ガスを安定して精製することができる。
また、本発明によれば、再生吸着材を用いて合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減することで、合成ガスの微生物発酵が効率的に行われ、その結果、効率的かつ経済的に有機物質を得ることができる。
以下、本発明を実施する好ましい形態の一例について説明する。ただし、下記の実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。本明細書において、ガス中の各成分の存在割合は、特に断りがない限り、質量ではなく体積を基準とした割合とする。したがって、特に断りがない限り、百分率%は体積%を表し、ppmは体積ppmを表す。
<ゼオライト吸着材の再利用方法>
本発明は、圧力スイング吸着装置に使用されるゼオライト吸着材を再利用する方法であって、回収工程と、再生工程と、再使用工程とを含むものである(図1参照)。圧力スイング吸着装置は、下記で詳述する本発明の有機物質の製造方法における合成ガス精製工程において使用されるものであり、供給された合成ガス中の二酸化炭素ガスを吸着し、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減するためのものである。以下、本発明による再利用方法における各工程について詳述する。
本発明は、圧力スイング吸着装置に使用されるゼオライト吸着材を再利用する方法であって、回収工程と、再生工程と、再使用工程とを含むものである(図1参照)。圧力スイング吸着装置は、下記で詳述する本発明の有機物質の製造方法における合成ガス精製工程において使用されるものであり、供給された合成ガス中の二酸化炭素ガスを吸着し、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減するためのものである。以下、本発明による再利用方法における各工程について詳述する。
(回収工程)
本発明による再利用方法における回収工程は、圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収する工程である(図1参照)。まずは、圧力スイング吸着装置で使用するゼオライト吸着材について説明する。
本発明による再利用方法における回収工程は、圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収する工程である(図1参照)。まずは、圧力スイング吸着装置で使用するゼオライト吸着材について説明する。
ゼオライト吸着材としては、合成ガス中に含まれる二酸化炭素ガスを吸着できるものであればよく、フォージャサイト型ゼオライトであるX型ゼオライトやY型ゼオライトが挙げられ、X型ゼオライトが好ましい。ゼオライト吸着材中のX型ゼオライトの含有量は50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。ゼオライト以外の成分としてはゼオライトを結合させるために用いるバインダーが挙げられる。バインダーとしては、アルミナ、シリカ-アルミナ、チタニア-アルミナ、ジルコニア-アルミナ、ボリア-アルミナなど、多孔質でかつ非晶質のものを好適に用いることができる。なかでも、ゼオライトを結合する力が強く、また比表面積が高いことから、アルミナ、シリカ-アルミナ及びボリア-アルミナが好ましい。これらは触媒の強度を向上させる役割がある。
X型又はY型ゼオライトのSi/Al(モル)比は、好ましくは0.6~4.0であり、より好ましくは1.2~3.0である。また、ゼオライトに含まれるカチオンは、リチウム、ナトリウム、またはプロトンが好ましく、リチウムがより好ましい。本発明においては、二酸化炭素の吸脱着性能を考慮して、Si/Alが0.9~1.1の範囲内、好ましくは1~1.05の範囲内のLSX型ゼオライトを主成分として使用することが好ましい。
LSX型ゼオライトを主成分とするゼオライト吸着材の形状は特に限定されないが、例えば、粒子状でもよいし、凝集体の状態であってもよい。例えば、LSXゼオライトと凝集化バインダーとを混合し、続いてこの混合物は押出成形またはビーズ形成などによって凝集体にして用いてもよい。ゼオライトの凝集化に使用されるバインダーとしては、クレイ、シリカ、アルミナ、金属酸化物、およびそれらの混合物が挙げられる。
さらに、ゼオライトは、シリカ/アルミナ、シリカ/マグネシア、シリカ/ジルコニア、シリカ/トリア、シリカ/酸化ベリリウム、およびシリカ/二酸化チタンなどの材料、ならびにシリカ/アルミナ/トリア、シリカ/アルミナ/ジルコニアなどの三元組成物、ならびにバインダーとして存在するクレイと凝集させてもよい。
圧力スイング吸着装置中のゼオライト吸着材は、合成ガス中の二酸化炭素ガスを吸着し、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を一定値以下とするものである。圧力スイング吸着装置に供給される合成ガスは、後述するように、原料ガスから様々な汚染物質、ばいじん粒子、不純物、好ましくない量の化合物等の特定の物質を除去ないし低減したものであるが、微量のタール成分、特に炭素化合物や硫黄化合物が含まれており、ゼオライト吸着材にはこれらのタール成分も吸着される。本発明においては、上記のような炭素化合物や硫黄化合物が吸着した使用済みのゼオライト吸着材であっても、未使用のゼオライト吸着材に対して一定の表面積比となるように使用済みゼオライト吸着材を焼成すれば、未使用のゼオライト吸着材と同等の吸着性能が得られることを見出したものである。
上記したように、圧力スイング吸着装置の稼働に伴い、ゼオライト結晶構造中の細孔には、二酸化炭素のみならず炭素化合物や硫黄化合物が付着するため、徐々に二酸化炭素の吸着性能が低下する。二酸化炭素吸着性能が低下した時点で、圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収する。圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収する時期は特に限定されないが、使用期間やゼオライト吸着材の窒素ガスを用いたBET法による表面積測定結果を指標とすることができる。具体的には、使用済みのゼオライト吸着材の比表面積が未使用のゼオライト吸着材に対して、比表面積換算で-15%以下であると、ゼオライトの二酸化炭素に対する吸着性能が低下し、合成ガス中の二酸化炭素濃度を十分に低減できない恐れがある。そこで、本発明においては、ゼオライト吸着材の吸着性能の低下を防ぐために、使用済みのゼオライト吸着材の比表面積が未使用のゼオライト吸着材に対して、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で-15%以上であることを指標として、ゼオライト吸着材を回収することが好ましい。なお、本発明において比表面積は、窒素ガス吸着―BET多点法を用いた。具体的には、液体窒素温度(77K)における窒素ガス吸着等温線からBETプロットを作成し、そのBETプロットの直線近似部分からBET法比表面積を算出した。前処理条件は300℃減圧脱気とした。また、未使用のゼオライト吸着材とは、圧力スイング吸着装置に装着される前のゼオライト吸着材を意味し、吸着材として一度も使用していないゼオライト吸着材、および後記するような方法により使用済みゼオライト吸着材を再生し、圧力スイング吸着装置に再度使用する前の状態のものも含む趣旨である。
(再生工程)
本発明による再利用方法における再生工程は、圧力スイング吸着装置から回収した使用済みゼオライト吸着材を、酸素雰囲気下で焼成して、ゼオライト吸着材を再生するものである(図1参照)。上記したように、圧力スイング吸着装置で使用されたゼオライト吸着材は、二酸化炭素以外にも、その結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着しており、ゼオライト吸着材の細孔容積が、未使用のゼオライト吸着材よりも減少している。本発明においては、圧力スイング吸着装置から回収した使用済みゼオライト吸着材を、未使用のゼオライト吸着材に対して、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で-15.0~-1.0%、好ましくは-10.0~-2.0%、より好ましくは-5.0~-2.0%となるまで焼成する。
本発明による再利用方法における再生工程は、圧力スイング吸着装置から回収した使用済みゼオライト吸着材を、酸素雰囲気下で焼成して、ゼオライト吸着材を再生するものである(図1参照)。上記したように、圧力スイング吸着装置で使用されたゼオライト吸着材は、二酸化炭素以外にも、その結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着しており、ゼオライト吸着材の細孔容積が、未使用のゼオライト吸着材よりも減少している。本発明においては、圧力スイング吸着装置から回収した使用済みゼオライト吸着材を、未使用のゼオライト吸着材に対して、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で-15.0~-1.0%、好ましくは-10.0~-2.0%、より好ましくは-5.0~-2.0%となるまで焼成する。
使用済みゼオライト吸着材の焼成は、300℃~600℃の温度で行うことが好ましい。特に、ゼオライト吸着材が主成分としてLSX型ゼオライトを含む場合、焼成温度は350℃~550℃が好ましく、より好ましくは400~500℃である。焼成温度が300℃以上であれば、ゼオライト吸着材に付着した炭素化合物や硫黄化合物を焼成により低減させることができる。また、焼成温度が600℃以下であれば、ゼオライト吸着材に付着した硫黄化合物を適度に残存させることができる。再生工程においては、気流の温度、気流の流量、酸素濃度などを適宜調節して、焼成時のゼオライト吸着材の温度を制御することができる。
再生工程においては、使用済みゼオライト吸着材中の炭素化合物が酸素と接触して焼成する。このため、酸素含有ガスは、炭素の焼成による過度の温度上昇を避けるために、酸素(あるいは空気)を徐々に導入して、酸素濃度を徐々に増加させることが好ましい。再生工程における最終の酸素濃度は高濃度であっても構わないが、経済性の面から30%以下、好ましくは0.1~21%である。21%までであれば空気が使えるのでより経済的である。酸素以外の成分としては、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが好ましい。また、特に含酸素ガスとして空気を使用する場合、乾燥空気や脱水処理を施した空気を用いることが好ましい。
焼成時間は、ゼオライト吸着材中の炭素化合物の付着量を十分に低下させて、再生できていれば、特に限定されない。例えば、使用済みゼオライト吸着材が、未使用のゼオライト吸着材に対して比表面積換算で-15.0%以上まで焼成することが好ましく、-10.0%以上まで焼成することがより好ましく、-5.0%以上まで焼成することがさらに好ましい。焼成温度がより低温でかつ短時間であるほど熱履歴を抑制し、繰り返しのサイクル寿命を長くすることができるため、より経済的である。ゼオライト吸着材の再生度合いは、焼成中に吸着材の温度が上昇しないこと、あるいは排出気流中に二酸化炭素が検出されないこと、を確認することによって判断することができる。
(再使用工程)
本発明による再利用方法における再使用工程は、再生工程で焼成されたゼオライト吸着材を圧力スイング吸着装置の吸着材として再度使用する工程である(図1参照)。焼成されたゼオライト吸着材を圧力スイング吸着装置の吸着材として再度使用することで、ゼオライト吸着剤の交換前と同様の吸着性能を安定的に発揮することができる。そのため、下記の合成ガス精製工程にて精製された合成ガスは、ガス組成が適切に調整されており、続く微生物発酵工程で合成ガスの微生物発酵が効率的に行われ、その結果、効率的かつ経済的に有機物質を得ることができる。
本発明による再利用方法における再使用工程は、再生工程で焼成されたゼオライト吸着材を圧力スイング吸着装置の吸着材として再度使用する工程である(図1参照)。焼成されたゼオライト吸着材を圧力スイング吸着装置の吸着材として再度使用することで、ゼオライト吸着剤の交換前と同様の吸着性能を安定的に発揮することができる。そのため、下記の合成ガス精製工程にて精製された合成ガスは、ガス組成が適切に調整されており、続く微生物発酵工程で合成ガスの微生物発酵が効率的に行われ、その結果、効率的かつ経済的に有機物質を得ることができる。
<再生吸着材>
本発明による再生吸着材は、使用済みゼオライト吸着材の焼成物からなり、ゼオライト結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着している。再生吸着材は、未使用のゼオライト吸着剤に対して比表面積換算で-15.0~-1.0%であり、好ましくは-10.0~-2.0%であり、より好ましくは-5.0~-2.0%である。再生吸着材の比表面積が上記範囲内であれば、使用により低下した吸着性能を回復させ、さらに新品(未使用品)の吸着剤に比べて安定した吸着性能を発揮することができるため、合成ガス中の二酸化炭素ガスを吸着し、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する圧力スイング吸着装置に好適に使用することができる。
本発明による再生吸着材は、使用済みゼオライト吸着材の焼成物からなり、ゼオライト結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着している。再生吸着材は、未使用のゼオライト吸着剤に対して比表面積換算で-15.0~-1.0%であり、好ましくは-10.0~-2.0%であり、より好ましくは-5.0~-2.0%である。再生吸着材の比表面積が上記範囲内であれば、使用により低下した吸着性能を回復させ、さらに新品(未使用品)の吸着剤に比べて安定した吸着性能を発揮することができるため、合成ガス中の二酸化炭素ガスを吸着し、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する圧力スイング吸着装置に好適に使用することができる。
本発明による再生吸着材は、上記のゼオライト吸着材の再利用方法における再生工程に記載の方法によって製造することができる。
<有機物質の製造方法>
本発明による有機物質の製造方法は、上記の再生吸着材を用いて精製した合成ガスから微生物発酵により有機物質を製造するものであり、合成ガス精製工程と、微生物発酵工程と、分離工程と、液化工程と、有機物質精製工程とを含むものである。以下、本発明による有機物質の製造方法の一例について、詳述する。
本発明による有機物質の製造方法は、上記の再生吸着材を用いて精製した合成ガスから微生物発酵により有機物質を製造するものであり、合成ガス精製工程と、微生物発酵工程と、分離工程と、液化工程と、有機物質精製工程とを含むものである。以下、本発明による有機物質の製造方法の一例について、詳述する。
まずは、本発明による有機物質の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。図2は本発明による有機物質の製造方法の一例を示す工程フロー図である。本発明による有機物質の製造方法は、一酸化炭素を含む合成ガスを微生物発酵槽に供給し微生物発酵により有機物質含有液を得る微生物発酵工程と、前記有機物質含有液を、微生物を含む液体ないし固体成分と有機物質を含む気体成分とに分離する分離工程と、前記気体成分を凝縮させて液化する液化工程と、液化工程で得られた液体物から有機物質を精製する精製工程と、を必須の工程として含むが、必要に応じて、原料ガス生成工程、合成ガス調製工程、排水処理工程等を含んでもよい。以下、各工程について説明する。
<原料ガス生成工程>
原料ガス生成工程は、ガス化部において、炭素源をガス化させることによって原料ガスを生成する工程である(図2参照)。原料ガス生成工程では、ガス化炉を用いてもよい。ガス化炉は、炭素源を燃焼(不完全燃焼)させる炉であり、例えば、シャフト炉、キルン炉、流動床炉、ガス化改質炉等が挙げられる。ガス化炉は、廃棄物を部分燃焼させることにより、高い炉床負荷、優れた運転操作性が可能となるため、流動床炉式であることが好ましい。廃棄物を低温(約450~600℃)かつ低酸素雰囲気の流動床炉中でガス化することで、ガス(一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタン等)および炭素分を多く含むチャーに分解する。さらに廃棄物に含まれる不燃物が炉底から、衛生的でかつ酸化度の低い状態で分離されるため、不燃物中の鉄やアルミニウム等といった有価物を選択回収することが可能である。従って、このような廃棄物のガス化は、効率の良い資源リサイクルが可能である。
原料ガス生成工程は、ガス化部において、炭素源をガス化させることによって原料ガスを生成する工程である(図2参照)。原料ガス生成工程では、ガス化炉を用いてもよい。ガス化炉は、炭素源を燃焼(不完全燃焼)させる炉であり、例えば、シャフト炉、キルン炉、流動床炉、ガス化改質炉等が挙げられる。ガス化炉は、廃棄物を部分燃焼させることにより、高い炉床負荷、優れた運転操作性が可能となるため、流動床炉式であることが好ましい。廃棄物を低温(約450~600℃)かつ低酸素雰囲気の流動床炉中でガス化することで、ガス(一酸化炭素、二酸化炭素、水素、メタン等)および炭素分を多く含むチャーに分解する。さらに廃棄物に含まれる不燃物が炉底から、衛生的でかつ酸化度の低い状態で分離されるため、不燃物中の鉄やアルミニウム等といった有価物を選択回収することが可能である。従って、このような廃棄物のガス化は、効率の良い資源リサイクルが可能である。
原料ガス生成工程における上記ガス化の温度は、通常100℃以上1500℃以下、好ましくは200℃以上1200℃以下である。
原料ガス生成工程におけるガス化の反応時間は、通常2秒以上、好ましくは5秒以上である。
原料ガス生成工程において使用される炭素源は、特に限定されず、例えば、製鉄所のコークス炉、高炉(高炉ガス)、転炉や石炭火力発電所に用いる石炭、焼却炉(特にガス化炉)に導入される一般廃棄物および産業廃棄物、各種産業によって副生した二酸化炭素等、リサイクルを目的として種々の炭素含有材料も好適に利用することができる。
より詳しくは、炭素源には、プラスチック廃棄物、生ゴミ、都市固形廃棄物(MSW)、産業固形廃棄物、廃棄タイヤ、バイオマス廃棄物、布団や紙等の家庭ごみ、建築部材等の廃棄物や、石炭、石油、石油由来化合物、天然ガス、シェールガス等が挙げられ、その中でも各種廃棄物が好ましく、分別コストの観点から、未分別の都市固形廃棄物がより好ましい。
炭素源をガス化して得られる原料ガスは、一酸化炭素および水素を必須成分として含むが、二酸化炭素、酸素、窒素をさらに含んでもよい。その他の成分として、原料ガスは、スス、タール、窒素化合物、硫黄化合物、リン系化合物、芳香族系化合物等の成分をさらに含んでもよい。
原料ガスは、上記原料ガス生成工程において、炭素源を燃焼(不完全燃焼)させる熱処理(通称:ガス化)を行うことにより、即ち、炭素源を部分酸化させることにより、一酸化炭素を、特に制限はないが、0.1体積%以上、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上含むガスとして生成してもよい。
<合成ガス精製工程>
合成ガス精製工程は、原料ガスから、様々な汚染物質、ばいじん粒子、不純物、好ましくない量の化合物等の特定の物質を除去ないし低減する工程である(図2参照)。原料ガスが廃棄物由来である場合には、通常、原料ガスは、一酸化炭素を0.1体積%以上80体積%以下、二酸化炭素を0.1体積%以上40体積%以下、水素を0.1体積%以上80体積%以下含み、さらに窒素化合物を1ppm以上、硫黄化合物を1ppm以上、リン化合物を0.1ppm以上、および/または芳香族系化合物を10ppm以上含む傾向にある。また、その他の環境汚染物質、ばいじん粒子、不純物等の物質が含まれる場合もある。そのため、微生物発酵槽へ合成ガスを供給するにあたっては、原料ガスから、微生物の安定培養に好ましくない物質や、好ましくない量の化合物等を低減ないし除去し、原料ガスに含まれる各成分の含有量が微生物の安定培養に好適な範囲となるようにしておくことが好ましい。
合成ガス精製工程は、原料ガスから、様々な汚染物質、ばいじん粒子、不純物、好ましくない量の化合物等の特定の物質を除去ないし低減する工程である(図2参照)。原料ガスが廃棄物由来である場合には、通常、原料ガスは、一酸化炭素を0.1体積%以上80体積%以下、二酸化炭素を0.1体積%以上40体積%以下、水素を0.1体積%以上80体積%以下含み、さらに窒素化合物を1ppm以上、硫黄化合物を1ppm以上、リン化合物を0.1ppm以上、および/または芳香族系化合物を10ppm以上含む傾向にある。また、その他の環境汚染物質、ばいじん粒子、不純物等の物質が含まれる場合もある。そのため、微生物発酵槽へ合成ガスを供給するにあたっては、原料ガスから、微生物の安定培養に好ましくない物質や、好ましくない量の化合物等を低減ないし除去し、原料ガスに含まれる各成分の含有量が微生物の安定培養に好適な範囲となるようにしておくことが好ましい。
特に、合成ガス精製工程では、上記の再生吸着材を充填した圧力スイング吸着装置を用いて、合成ガス中の二酸化炭素ガスを再生吸着材(ゼオライト)に吸着させ、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する。さらに、合成ガスには、従来公知の他の処理工程を行って、不純物の除去やガス組成の調整を行ってもよい。他の処理工程としては、例えば、ガスチラー(水分分離装置)、低温分離方式(深冷方式)の分離装置、サイクロン、バグフィルターのような微粒子(スス)分離装置、スクラバー(水溶性不純物分離装置)、脱硫装置(硫化物分離装置)、膜分離方式の分離装置、脱酸素装置、圧力スイング吸着方式の分離装置(PSA)、温度スイング吸着方式の分離装置(TSA)、圧力温度スイング吸着方式の分離装置(PTSA)、活性炭を用いた分離装置、銅触媒またはパラジウム触媒を用いた分離装置等のうちの1種または2種以上を用いて処理することができる。
本発明の有機物質の製造方法において使用する合成ガスは、少なくとも一酸化炭素を必須成分として含み、水素、二酸化炭素、窒素をさらに含んでもよい。
本発明において使用する合成ガスは、炭素源をガス化させることによって原料ガスを生成し(原料ガス生成工程)、次いで、原料ガスから一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素の各成分の濃度調整とともに、上記したような物質や化合物を低減ないし除去する工程を経ることで得られたガスを、合成ガスとして用いてもよい。
合成ガス中の一酸化炭素濃度は、合成ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素の合計濃度に対して、通常20体積%以上80体積%以下であり、好ましくは25体積%以上50体積%以下であり、より好ましくは35体積%以上45体積%以下である。
合成ガス中の水素濃度は、合成ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素の合計濃度に対して、通常10体積%以上80体積%以下であり、好ましくは30体積%以上55体積%以下であり、より好ましくは40体積%以上50体積%以下である。
合成ガス中の二酸化炭素濃度は、合成ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素の合計濃度に対して、通常0.1体積%以上40体積%以下、好ましくは0.3体積%以上30体積%以下であり、より好ましくは0.5体積%以上10体積%以下、特に好ましくは1体積%以上6体積%以下である。
合成ガス中の窒素濃度は、合成ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素の合計濃度に対して、通常40体積%以下であり、好ましくは1体積%以上20体積%以下であり、より好ましくは5体積%以上15体積%以下である。
一酸化炭素、二酸化炭素、水素および窒素の濃度は、原料ガス生成工程において炭素源のC-H-N元素組成を変更することや、燃焼温度や燃焼時供給ガスの酸素濃度等の燃焼条件を適宜変更することで、所定の範囲とすることができる。例えば、一酸化炭素や水素濃度を変更したい場合は、廃プラ等のC-H比率が高い炭素源に変更し、窒素濃度を低下させたい場合は原料ガス生成工程において酸素濃度の高いガスを供給する方法等がある。
本発明において使用される合成ガスは、上記した成分以外にも、特に制限はないが、硫黄化合物、リン化合物、窒素化合物等を含んでいてもよい。これらの化合物のそれぞれの含有量は、好ましくは0.05ppm以上、より好ましくは0.1ppm以上、さらに好ましくは0.5ppm以上であり、また、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下、さらにより好ましくは60ppm以下、特に好ましくは40ppm以下である。硫黄化合物、リン化合物、窒素化合物等を下限値以上の含有量とすることにより、微生物が好適に培養できるという利点があり、また上限値以下の含有量とすることにより、微生物が消費しなかった各種栄養源によって培地が汚染されないという利点がある。
硫黄化合物としては、通常、二酸化硫黄、CS2,COS、H2Sが挙げられ、中でもH2Sと二酸化硫黄が微生物の栄養源として消費しやすい点で好ましい。そのため、合成ガス中にH2Sと二酸化硫黄の和が上記範囲で含まれていることがより好ましい。
リン化合物としては、リン酸が微生物の栄養源として消費しやすい点が好ましい。そのため、合成ガス中にリン酸が上記範囲で含まれていることがより好ましい。
窒素化合物としては、一酸化窒素、二酸化窒素、アクリルニトリル、アセトニトリル、HCN等が挙げられ、HCNが微生物の栄養源として消費しやすい点で好ましい。そのため合成ガス中に、HCNが上記範囲で含まれていることがより好ましい。
リン化合物としては、リン酸が微生物の栄養源として消費しやすい点が好ましい。そのため、合成ガス中にリン酸が上記範囲で含まれていることがより好ましい。
窒素化合物としては、一酸化窒素、二酸化窒素、アクリルニトリル、アセトニトリル、HCN等が挙げられ、HCNが微生物の栄養源として消費しやすい点で好ましい。そのため合成ガス中に、HCNが上記範囲で含まれていることがより好ましい。
また、合成ガスは、芳香族化合物を0.01ppm以上90ppm以下含んでもよく、好ましくは0.03ppm以上、より好ましくは0.05ppm以上、さらに好ましくは0.1ppm以上であり、かつ、好ましくは70ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。下限値以上の含有量とすることにより、微生物が好適に培養できる傾向にあり、又、上限値以下の含有量とすることにより、微生物が消費しなかった各種栄養源によって培地が汚染されにくい傾向にある。
<微生物発酵工程>
微生物発酵工程は、微生物発酵槽において、上記した合成ガスを微生物発酵させて、有機物質を製造する工程である(図2参照)。微生物発酵槽は、連続発酵装置とすることが好ましい。一般に、微生物発酵槽は任意の形状のものを用いることができ、撹拌型、エアリフト型、気泡塔型、ループ型、オープンボンド型、フォトバイオ型が挙げられるが、本発明においては、微生物発酵槽が、主槽部と還流部とを有する公知のループリアクターを好適に用いることができる。この場合、前記の液状の培地を、主槽部と還流部の間で循環させる循環工程をさらに備えるのが好ましい。
微生物発酵工程は、微生物発酵槽において、上記した合成ガスを微生物発酵させて、有機物質を製造する工程である(図2参照)。微生物発酵槽は、連続発酵装置とすることが好ましい。一般に、微生物発酵槽は任意の形状のものを用いることができ、撹拌型、エアリフト型、気泡塔型、ループ型、オープンボンド型、フォトバイオ型が挙げられるが、本発明においては、微生物発酵槽が、主槽部と還流部とを有する公知のループリアクターを好適に用いることができる。この場合、前記の液状の培地を、主槽部と還流部の間で循環させる循環工程をさらに備えるのが好ましい。
微生物発酵槽に供給する合成ガスは、上記した合成ガスの成分条件を充足する限り、原料ガス生成工程を経て得られたガスをそのまま合成ガスとして用いてもよいし、原料ガスから不純物等を低減ないし除去したガスに、別の所定のガスを追加してから合成ガスを用いてもよい。別の所定ガスとして、例えば二酸化硫黄等の硫黄化合物、リン化合物、および窒素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を加えて合成ガスとしてもよい。
微生物発酵槽には、合成ガスと微生物培養液とが連続的に供給されてもよいが、合成ガスと微生物培養液とを同時に供給する必要はなく、予め微生物培養液を供給した微生物発酵槽に合成ガスを供給してもよい。ある種の嫌気性微生物は、発酵作用によって、合成ガス等の基質ガスから、エタノール等の有価物である有機物質を生成することが知られており、この種のガス資化性微生物は、液状の培地で培養される。例えば、液状の培地とガス資化性細菌とを供給して収容しておき、この状態で液状の培地を撹拌しつつ、微生物発酵槽内に合成ガスを供給してもよい。これにより、液状の培地中でガス資化性細菌を培養して、その発酵作用により合成ガスから有機物質を生成することができる。
微生物発酵槽において、培地等の温度(培養温度)は、任意の温度を採用してよいが、好ましくは30~45℃程度、より好ましくは33~42℃程度、さらに好ましくは36.5~37.5℃程度とすることができる。また、培養時間は、好ましくは連続培養で12時間以上、より好ましくは7日以上、特に好ましくは30日以上、最も好ましくは60日以上であり、上限は特に設定されないが設備の定修等の観点から720日以下が好ましく、より好ましくは365日以下である。なお、培養時間とは、種菌を培養槽に添加してから、培養槽内の培養液を全量排出するまでの時間を意味するものとする。
微生物培養液に含まれる微生物(種)は、一酸化炭素を主たる原料として合成ガスを微生物発酵させることによって所望の有機物質を製造できるものであれば、特に限定されない(図2参照)。例えば、微生物(種)は、ガス資化性細菌の発酵作用によって、合成ガスから有機物質を生成するものであること、特にアセチルCOAの代謝経路を有する微生物であることが好ましい。ガス資化性細菌のなかでも、クロストリジウム(Clostridium)属がより好ましく、クロストリジウム・オートエタノゲナムが特に好ましいが、これに限定されるものではない。以下、さらに例示する。
ガス資化性細菌は、真性細菌および古細菌の双方を含む。真性細菌としては、例えば、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、ムーレラ(Moorella)属細菌、アセトバクテリウム(Acetobacterium)属細菌、カルボキシドセラ(Carboxydocella)属細菌、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属細菌、ユーバクテリウム(Eubacterium)属細菌、ブチリバクテリウム(Butyribacterium)属細菌、オリゴトロファ(Oligotropha)属細菌、ブラディリゾビウム(Bradyrhizobium)属細菌、好気性水素酸化細菌であるラルソトニア(Ralsotonia)属細菌等が挙げられる。
一方、古細菌としては、例えば、Methanobacterium属細菌、Methanobrevibacter属細菌、Methanocalculus属、Methanococcus属細菌、Methanosarcina属細菌、Methanosphaera属細菌、Methanothermobacter属細菌、Methanothrix属細菌、Methanoculleus属細菌、Methanofollis属細菌、Methanogenium属細菌、Methanospirillium属細菌、Methanosaeta属細菌、Thermococcus属細菌、Thermofilum属細菌、Arcaheoglobus属細菌等が挙げられる。これらの中でも、古細菌としては、Methanosarcina属細菌、Methanococcus属細菌、Methanothermobacter属細菌、Methanothrix属細菌、Thermococcus属細菌、Thermofilum属細菌、Archaeoglobus属細菌が好ましい。
さらに、一酸化炭素および二酸化炭素の資化性に優れることから、古細菌としては、Methanosarcina属細菌、Methanothermobactor属細菌、またはMethanococcus属細菌が好ましく、Methanosarcina属細菌、またはMethanococcus属細菌が特に好ましい。なお、Methanosarcina属細菌の具体例として、例えば、Methanosarcina barkeri、Methanosarcina mazei、Methanosarcina acetivorans等が挙げられる。
以上のようなガス資化性細菌の中から、目的とする有機物質の生成能の高い細菌が選択されて用いられる。例えば、エタノール生成能の高いガス資化性細菌としては、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ユングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・アセチクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、アセトバクテリウム・ウッディイ(Acetobacterium woodii)等が挙げられ、これらのなかでもクロストリジウム・オートエタノゲナムが特に好ましい。
上記した微生物(種)を培養する際に用いる培地は、菌に応じた適切な組成であれば特に限定されないが、主成分の水と、この水に溶解または分散された栄養分(例えば、ビタミン、リン酸等)とを含有する液体である。このような培地の組成は、ガス資化性細菌が良好に成育し得るように調製される。例えば、微生物にクロストリジウム属を用いる場合の培地は、米国特許出願公開2017/260552号の「0097」~「0099」等を参考にすることができる。
微生物発酵工程により得られた有機物質含有液は、微生物やその死骸、微生物由来のタンパク質等を含む懸濁液として得ることができる。懸濁液中のタンパク質濃度は、微生物の種類により異なるが、通常は30~1000mg/Lである。なお、有機物質含有液中のタンパク質濃度は、ケルダール法により測定することができる。
<分離工程>
微生物発酵工程により得られた有機物質含有液は、次いで分離工程に付される。本発明においては、有機物質含有液を、0.01~1000kPa(絶対圧)の条件下、室温~500℃に加熱して、微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離する(図2参照)。従来の方法では、微生物発酵工程により得られた有機物質含有液を蒸留し、所望とする有機物質を分離精製していたが、有機物質含有液には微生物や微生物由来のタンパク質等が含まれるため、有機物質含有液をそのまま蒸留すると蒸留装置内で発泡が生じ連続的な運転が妨げられる場合があった。また、発泡性液体の精製方法として膜式エバポレーターを使用することが知られているが、膜式エバポレーターは濃縮効率が低く、固体成分を含む液体の精製には適していない。本発明においては、微生物発酵工程により得られた有機物質含有液から蒸留操作等により所望の有機物質を分離精製する前に、有機物質含有液を加熱し、微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離し、分離された有機物質を含む気体成分のみから、所望とする有機物質を分離精製するものである。分離工程を実施することにより、有機物質の分離精製時の蒸留操作において、蒸留装置内で発泡が生じなくなるため、連続的に蒸留操作を行うことができる。また、有機物質含有液中の有機物質濃度よりも、有機物質を含む気体成分中に含まれる有機物質濃度の方が高くなるため、後述する精製工程において、効率的に有機物質の分離精製を行うことができる。
微生物発酵工程により得られた有機物質含有液は、次いで分離工程に付される。本発明においては、有機物質含有液を、0.01~1000kPa(絶対圧)の条件下、室温~500℃に加熱して、微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離する(図2参照)。従来の方法では、微生物発酵工程により得られた有機物質含有液を蒸留し、所望とする有機物質を分離精製していたが、有機物質含有液には微生物や微生物由来のタンパク質等が含まれるため、有機物質含有液をそのまま蒸留すると蒸留装置内で発泡が生じ連続的な運転が妨げられる場合があった。また、発泡性液体の精製方法として膜式エバポレーターを使用することが知られているが、膜式エバポレーターは濃縮効率が低く、固体成分を含む液体の精製には適していない。本発明においては、微生物発酵工程により得られた有機物質含有液から蒸留操作等により所望の有機物質を分離精製する前に、有機物質含有液を加熱し、微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離し、分離された有機物質を含む気体成分のみから、所望とする有機物質を分離精製するものである。分離工程を実施することにより、有機物質の分離精製時の蒸留操作において、蒸留装置内で発泡が生じなくなるため、連続的に蒸留操作を行うことができる。また、有機物質含有液中の有機物質濃度よりも、有機物質を含む気体成分中に含まれる有機物質濃度の方が高くなるため、後述する精製工程において、効率的に有機物質の分離精製を行うことができる。
本発明においては、微生物やその死骸、微生物由来のタンパク質等が含まれる液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに効率的に分離する観点から、好ましくは10~200kPaの条件下、より好ましくは50~150kPaの条件下、さらに好ましくは常圧下で、好ましくは50~200℃の温度、より好ましくは80℃~180℃の温度、さらに好ましくは100~150℃の温度で有機物質含有液の加熱を行う。
分離工程における加熱時間は、気体成分を得ることができる時間であれば特に制限はないが、効率性または経済性の観点から、通常は5秒~2時間、好ましくは5秒~1時間、より好ましくは5秒~30分である。
上記した分離工程は、熱エネルギーにより、有機物質含有液を液体ないし固体成分(微生物やその死骸、微生物由来のタンパク質等)と気体成分(有機物質)とに効率的に分離できる装置であれば特に制限なく使用することができ、例えば、回転乾燥機、流動層乾燥機、真空型乾燥機、伝導加熱型乾燥機等の乾燥装置を用いることができるが、特に固体成分濃度が低い有機物質含有液から液体ないし固体成分と気体成分とに分離する際の効率の観点からは伝導加熱型乾燥機を用いることが好ましい。伝導加熱型乾燥機の例としては、ドラム型乾燥機やディスク型乾燥機等が挙げられる。
<液化工程>
液化工程は、上記分離工程で得られた有機物質を含む気体成分を、凝縮により液化する工程である(図2参照)。液化工程で用いられる装置は、特に限定されないが、熱交換器、特にコンデンサー(凝縮器)を用いることが好ましい。凝縮器の例としては、水冷式、空冷式、蒸発式等が挙げられ、それらのなかでも水冷式が好ましい。凝縮器は一段でもよいし、複数段からなるものでもよい。
液化工程は、上記分離工程で得られた有機物質を含む気体成分を、凝縮により液化する工程である(図2参照)。液化工程で用いられる装置は、特に限定されないが、熱交換器、特にコンデンサー(凝縮器)を用いることが好ましい。凝縮器の例としては、水冷式、空冷式、蒸発式等が挙げられ、それらのなかでも水冷式が好ましい。凝縮器は一段でもよいし、複数段からなるものでもよい。
液化工程により得られた液化物には、微生物やその死骸、微生物由来のタンパク質等の有機物質含有液に含まれていた成分が含まれていないことが好ましいといえるが、本発明においては、液化物中にタンパク質が含まれていることを排除するものではない。液化物中にタンパク質が含まれる場合であっても、その濃度は、40mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは20mg/L以下、さらに好ましくは15mg/L以下である。
凝縮器によって得られた気体成分の凝縮熱は、後述する精製工程において熱源として再利用してもよい。凝縮熱を再利用することで、効率的かつ経済的に有機物質を製造することができる。
<精製工程>
次に、液化工程で得られた液化物から、有機物質を精製する(図2参照)。微生物発酵工程で得られた有機物質含有液は、微生物等の成分が既に除去されている場合に、上記した分離工程を経ないで精製工程に供給することができる。精製工程は、液化工程において得られた有機物質含有液を、目的の有機物質の濃度を高めた留出液と、目的の有機物質の濃度を低下させた缶出液とに分離する工程である(図2参照)。精製工程に用いられる装置は、例えば、蒸留装置、浸透気化膜を含む処理装置、ゼオライト脱水膜を含む処理装置、有機物質より沸点の低い低沸点物質を除去する処理装置、有機物質より沸点の高い高沸点物質を除去する処理装置、イオン交換膜を含む処理装置等が挙げられる。これらの装置は単独でまたは2種以上を組み合わせてもよい。単位操作としては、加熱蒸留や膜分離を好適に用いてもよい。
次に、液化工程で得られた液化物から、有機物質を精製する(図2参照)。微生物発酵工程で得られた有機物質含有液は、微生物等の成分が既に除去されている場合に、上記した分離工程を経ないで精製工程に供給することができる。精製工程は、液化工程において得られた有機物質含有液を、目的の有機物質の濃度を高めた留出液と、目的の有機物質の濃度を低下させた缶出液とに分離する工程である(図2参照)。精製工程に用いられる装置は、例えば、蒸留装置、浸透気化膜を含む処理装置、ゼオライト脱水膜を含む処理装置、有機物質より沸点の低い低沸点物質を除去する処理装置、有機物質より沸点の高い高沸点物質を除去する処理装置、イオン交換膜を含む処理装置等が挙げられる。これらの装置は単独でまたは2種以上を組み合わせてもよい。単位操作としては、加熱蒸留や膜分離を好適に用いてもよい。
加熱蒸留では、蒸留装置を用いて、所望の有機物質を留出液として、高純度で得ることができる。有機物質(特に、エタノール)の蒸留時における蒸留器内の温度は、特に限定されないが、100℃以下であることが好ましく、70~95℃程度であることがより好ましい。蒸留器内の温度を前記範囲に設定することにより、必要な有機物質とその他の成分との分離、即ち、有機物質の蒸留をより確実に行うことができる。
有機物質の蒸留時における蒸留装置内の圧力は、常圧であってもよいが、好ましくは大気圧未満、より好ましくは60~95kPa(絶対圧)程度である。蒸留装置内の圧力を前記範囲に設定することにより、有機物質の分離効率を向上させること、ひいては有機物質の収率を向上させることができる。所望とする有機物質の種類にもよるが、例えば得られる有機物質がエタノールである場合の収率(蒸留後に留出液に含まれるエタノールの濃度)は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上である。
膜分離では、公知の分離膜を適宜用いることができ、例えばゼオライト膜を好適に用いることができる。
精製工程において分離された留出液に含まれる有機物質の濃度は、20質量%~99.99質量%であることが好ましく、より好ましくは60質量%~99.9質量%である。
一方、缶出液に含まれる有機物質の濃度は、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%~5質量%である。
一方、缶出液に含まれる有機物質の濃度は、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%~5質量%である。
精製工程において分離された缶出液は、窒素化合物を実質的に含まない。なお、本発明において「実質的に含まない」とは、窒素化合物の濃度が0ppmであることを意味するものではなく、精製工程で得られる缶出液が排水処理工程を必要としない程度の窒素化合物濃度であることを意味する。分離工程においては、微生物発酵工程で得られた有機物質含有液から所望とする有機物質を精製するのではなく、上記のように有機物質含有液を微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離する。その際に、窒素化合物は、微生物を含む液体ないし固体成分側に残るため、有機物質を含む気体成分中には窒素化合物がほとんど含まれていない。そのため、気体成分を液化した液化物から有機物質を精製する際に得られる缶出液には窒素化合物が実質的に含まれていないと考えられる。缶出液が窒素化合物を含む場合であっても、窒素化合物の濃度は、0.1~200ppm、好ましくは0.1~100ppm、より好ましくは0.1~50ppmである。
また、上記と同様の理由により、精製工程において分離された缶出液はリン化合物を実質的に含まない。なお、「実質的に含まない」とは、リン化合物の濃度が0ppmであることを意味するものではなく、精製工程で得られる缶出液が排水処理工程を必要としない程度のリン化合物濃度であることを意味する。缶出液がリン化合物を含む場合であっても、リン化合物の濃度は、0.1~100ppm、好ましくは0.1~50ppm、より好ましくは0.1~25ppmである。このように、本発明の方法によれば、有機物質の精製工程において排出される缶出液には、窒素化合物やリン化合物が実質的に含まれておらず、他の有機物も殆ど含まれていないと考えられるため、従来必要とされていた排水処理工程を簡素化することができる。
<排水処理工程>
精製工程において分離された缶出液は、排水処理工程に供給されてもよい(図2参照)。排水処理工程において、缶出液からさらに窒素化合物やリン化合物等の有機物を除去することができる。本工程では、缶出液を嫌気処理または好気処理することで有機物を除去してもよい。除去された有機物は、精製工程における燃料(熱源)として利用してもよい。
精製工程において分離された缶出液は、排水処理工程に供給されてもよい(図2参照)。排水処理工程において、缶出液からさらに窒素化合物やリン化合物等の有機物を除去することができる。本工程では、缶出液を嫌気処理または好気処理することで有機物を除去してもよい。除去された有機物は、精製工程における燃料(熱源)として利用してもよい。
排水処理工程における処理温度は、通常は0~90℃、好ましくは20~40℃、より好ましくは30~40℃である。
分離工程を経て得られた缶出液は、微生物等を含む液体ないし固体成分が除去されているため、微生物発酵工程から直接精製工程に供給されて得られた缶出液よりも、排水処理などの負荷が軽減される。
排水処理工程において、缶出液を処理して得られる処理液中の窒素化合物濃度は、好ましくは0.1~30ppm、より好ましくは0.1~20ppm、さらに好ましくは0.1~10ppmであり、窒素化合物が含まれないことが特に好ましい。また、処理液中のリン化合物濃度は、好ましくは0.1~10ppm、より好ましくは0.1~5ppm、さらに好ましくは0.1~1ppmであり、缶出液中にリン化合物が含まれないことが特に好ましい。
<有機物質およびその用途>
本発明による製造方法により得られる有機物質は、例えば、メタノール、エタノール、2,3-ブタンジオール、酢酸、乳酸、イソプレン、ブタジエン等が挙げられ、好ましくは炭素数1~6のアルコールまたはジオール類を含み、より好ましくは炭素数1~4のアルコールまたはジオール類を含み、さらに好ましくはエタノールを含む。本発明の製造方法により得られる有機物質の用途は、特に限定されない。製造された有機物質は、例えば、プラスチックや樹脂等の原料として用いることもできるし、各種溶媒、殺菌剤、または燃料として用いることもできる。高濃度のエタノールは、ガソリン等に混合する燃料エタノールとして用いることができる他、例えば、化粧品、飲料、化学物質、燃料(ジェット燃料)等の原材料、食品等の添加物として用いることができ、汎用性が極めて高い。
本発明による製造方法により得られる有機物質は、例えば、メタノール、エタノール、2,3-ブタンジオール、酢酸、乳酸、イソプレン、ブタジエン等が挙げられ、好ましくは炭素数1~6のアルコールまたはジオール類を含み、より好ましくは炭素数1~4のアルコールまたはジオール類を含み、さらに好ましくはエタノールを含む。本発明の製造方法により得られる有機物質の用途は、特に限定されない。製造された有機物質は、例えば、プラスチックや樹脂等の原料として用いることもできるし、各種溶媒、殺菌剤、または燃料として用いることもできる。高濃度のエタノールは、ガソリン等に混合する燃料エタノールとして用いることができる他、例えば、化粧品、飲料、化学物質、燃料(ジェット燃料)等の原材料、食品等の添加物として用いることができ、汎用性が極めて高い。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
圧力スイング吸着装置に、主成分としてLSX型ゼオライトを含む新品(未使用品の)のゼオライト吸着材を充填した。このゼオライト吸着材の比表面積は、窒素ガスを用いたBET法による測定の結果、877m2/gであった。
圧力スイング吸着装置に、主成分としてLSX型ゼオライトを含む新品(未使用品の)のゼオライト吸着材を充填した。このゼオライト吸着材の比表面積は、窒素ガスを用いたBET法による測定の結果、877m2/gであった。
次に、ガス化炉から排出される、主成分として水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスを含む合成ガスを準備し、合成ガスを圧力スイング吸着装置に供給し、合成ガス中の二酸化炭素ガスをゼオライト吸着材に吸着させて、合成ガスの精製を行った。長期間にわたって合成ガスの精製を行い、圧力スイング吸着装置中のゼオライト吸着材が、窒素ガスを用いたBET法による比表面積が685m2/g(未使用のゼオライト吸着材に対して比表面積換算で-21.9%)となった時点で合成ガスの供給を停止し、圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収した。
続いて回収したゼオライト吸着材を酸素雰囲気下、400℃の温度で焼成した。排出気流中に二酸化炭素が検出されなくなった後に、焼成を停止し、再生したゼオライト吸着材を得た。再生したゼオライト吸着材の比表面積は、窒素ガスを用いたBET法による測定の結果、837m2/g(未使用のゼオライト吸着材に対して比表面積換算で-4.6%)であった。
上記のようにして得られた再生ゼオライト吸着材を、圧力スイング吸着装置に充填して、吸着材として再度使用したところ、吸着性能が安定的に発揮されており、精製した合成ガスの組成が安定していた。
その後、精製した合成ガスを微生物発酵槽に供給し、微生物発酵工程、分離工程、液化工程、精製工程を経て、最終的に有機物質を効率的に得ることができた。
[比較例1]
圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収した後、再生したゼオライト吸着材の代わりに、新品(未使用品)のゼオライト吸着材を圧力スイング吸着装置に充填して使用したところ、吸着性能が安定せず、精製した合成ガスの組成が安定していなかった。そのため、その後、精製した合成ガスを微生物発酵槽に供給したが、微生物発酵の効率が低下し、最終的な有機物質の収率も低下した。
圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収した後、再生したゼオライト吸着材の代わりに、新品(未使用品)のゼオライト吸着材を圧力スイング吸着装置に充填して使用したところ、吸着性能が安定せず、精製した合成ガスの組成が安定していなかった。そのため、その後、精製した合成ガスを微生物発酵槽に供給したが、微生物発酵の効率が低下し、最終的な有機物質の収率も低下した。
Claims (12)
- ガス化炉から排出される、主成分として水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスを含む合成ガスが供給されて、合成ガス中の二酸化炭素ガスを吸着し、合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する圧力スイング吸着装置に使用されるゼオライト吸着材を再生する方法であって、
圧力スイング吸着装置から使用済みのゼオライト吸着材を回収する工程、
前記ゼオライト吸着材を、酸素雰囲気下で焼成して、ゼオライト吸着材を再生する工程、及び
前記再生したゼオライト吸着材を、圧力スイング吸着装置の吸着材として再度使用する工程、
を備え、
前記使用済みのゼオライト吸着材を、未使用のゼオライト吸着材に対して、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で-15.0~-1.0%となるまで焼成する、ゼオライト吸着材の再利用方法。 - 前記使用済みのゼオライト吸着材は、ゼオライト結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着しており、窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で、未使用のゼオライトに対して-15.0%以上である、請求項1に記載の方法。
- 前記ガス化炉から排出される合成ガスがタール成分を含む、請求項1または2に記載の方法。
- 前記ゼオライトがLSX型ゼオライトである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
- 使用済みゼオライト吸着材の焼成物からなる再生吸着材であって、
ゼオライト結晶構造中の細孔に炭素化合物及び硫黄化合物が付着しており、
窒素ガスを用いたBET法による比表面積換算で、未使用のゼオライトに対して-15.0~-1.0%である、再生吸着材。 - 前記ゼオライトがLSX型ゼオライトである、請求項5に記載の再生吸着材。
- 一酸化炭素を含む合成ガスから微生物発酵により有機物質を製造する方法であって、
請求項5または6に記載の再生吸着材を用いて、前記合成ガス中の二酸化炭素ガス濃度を低減する合成ガス精製工程と、
前記合成ガス精製工程により得られた合成ガスを微生物発酵槽に供給し、前記微生物発酵により有機物質含有液を得る微生物発酵工程と、
前記有機物質含有液を、0.01~1000kPaの条件下、室温以上~500℃に加熱して、微生物を含む液体ないし固体成分と、有機物質を含む気体成分とに分離する分離工程と、
前記分離工程により得られた気体成分を凝縮させて液化する液化工程と、
前記液化工程により得られた液化物から有機物質を精製する精製工程と、
を備える、有機物質の製造方法。 - 前記液化工程において生じる凝縮熱を、有機物質含有液から有機物質を精製する際の熱源として再利用する、請求項7に記載の方法。
- 前記合成ガスが、炭素源をガス化させることによって得られたものである、請求項7または8に記載の方法。
- 前記炭素源が廃棄物である、請求項9に記載の方法。
- 前記有機物質が、炭素数1~6のアルコールを含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項7~11のいずれか一項に記載の方法により得られた有機物質。
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