[本願発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施形態を列記して説明する。本発明の一態様に係るPONシステムは、局側装置と宅側装置とを有するPONシステムであって、宅側装置に接続されると共に、第1のサービスに係る端末、及び、該第1のサービスとは異なる第2のサービスに係る端末が接続されたゲートウェイ端末を介して、MACアドレス及びVLAN IDの少なくともいずれか一方を含む信号を受信する受信部と、受信部によって受信された信号の内容に基づき、該信号の送信元からの信号の振り分け先を決定する決定部と、を備え、決定部は、受信部によって受信された信号に、ゲートウェイ端末を示すMACアドレスと第1のサービスに係る端末に関連付けられたVLAN IDとが含まれている場合には、振り分け先を第1のサービスに係るルートに決定し、受信部によって受信された信号に、VLAN IDが含まれていない場合には、受信部によって受信された信号に含まれているMACアドレスに関わらず、振り分け先を第2のサービスに係るルートに決定する。
本発明の一態様に係るPONシステムによれば、宅側装置に接続されたゲートウェイ端末に第1のサービスに係る端末及び第2のサービスに係る端末が接続されている構成、すなわち、宅側装置の1つの物理ポートに対してゲートウェイ端末を介して互い異なるサービスの複数の端末が接続されている構成において、受信された信号に含まれるMACアドレス及びVLAN IDに基づいて信号の振り分け先が決定される。具体的には、信号にゲートウェイ端末を示すMACアドレスと第1のサービスに係る端末に関連付けられたVLAN IDとが含まれている場合には振り分け先が第1のサービスに係るルートに決定される。このように、例えばMACアドレスが必ずゲートウェイ端末のMACアドレスになる端末であって予めVLAN IDに紐づけられる端末(例えば電話機)については、MACアドレス及びVLAN IDに基づき、信号の送信元が当該端末であることが特定できるため、MACアドレス及びVLAN IDに基づいて信号の送信元を適切に判別し、当該端末からの信号を当該端末に係るサービスのルートに適切に振り分けることができる。また、MACアドレス及びVLAN IDを考慮することによって、予めVLAN IDに関連付けている端末以外の端末(悪意のある端末)が接続されていないことを適切に判別することができ、宅側装置~第1のサービスに係る端末間の紐づけ(第1のサービスに係る端末の位置固定)を確実に行なうことができる。さらに、本発明の一態様に係るPONシステムでは、信号にVLAN IDが含まれていない場合には、MACアドレスに関わらず振り分け先が第2のサービスに係るルートに決定される。例えば、PC等のデータ通信サービスに係る端末から送信された信号については、ゲートウェイ端末の種類によって、該信号に含まれるMACアドレスがゲートウェイ端末のMACアドレスになること、及び、該信号に含まれるMACアドレスが送信元であるPC等の端末のMACアドレスになることの双方が考えられる。このため、このような信号については、MACアドレスに基づきルートを決定することができないおそれがある。この点、このような信号を送信し得る端末についてはVLAN IDに関連付けず(すなわち、該端末から送信された信号にはVLAN IDが含まれない構成とし)、MACアドレスを考慮せずにVLAN IDが含まれないことをもって振り分け先を決定する(例えばデータ通信サービスに係るルートとする)ことにより、PC等の端末から送信された信号のように送信元のMACアドレスが一意に定まらない信号についても、当該端末に係るサービスのルートに適切に振り分けることができる。以上のように、本発明の一態様に係るPONシステムによれば、宅側装置の1つの物理ポートに互いに異なるサービスに係る端末が接続されている場合において、信号の振り分けを適切に行うことができる。
決定部は、受信部によって受信された信号に、第1のサービスに係る端末に関連付けられていないVLAN IDが含まれている場合には、該信号の送信元からの信号の転送を中止してもよい。これにより、宅側装置~第1のサービスに係る端末間で紐づけを行いたい端末(例えば位置固定をしたい電話機)を用いる場合において、悪意のある端末が接続された場合、VLAN IDを管理するゲートウェイ端末が故障した場合等において、信号の転送を中止することができる。すなわち、端末の位置固定が適切に行われていない可能性がある場合において信号が転送されることを防止することができる。
PONシステムでは、第1のサービスは、PONシステムを利用した電話サービスであり、第2のサービスは、データ通信サービスであり、ゲートウェイ端末は、第1のサービスに係る端末である電話機に接続可能な電話差込口と、第2のサービスに係る端末であるデータ通信用の端末に接続可能なLAN差込口とを有する電話アダプタであってもよい。これにより、宅側装置の1つの物理ポートに対し電話アダプタを介して、電話サービスに係る端末及びPC等のデータ通信サービスに係る端末が接続されている構成において、これらのサービスを共存させて、信号の振り分けを適切に行うことができる。
PONシステムにおいて、電話サービスに係る信号は、データ通信サービスに係る信号よりも優先的に転送されてもよい。これにより、ユーザにとって優先度が高いと考えられる電話サービスを適切に提供することができる。
本発明の一態様に係る制御方法は、局側装置と宅側装置とを有するPONシステムにおける制御方法であって、宅側装置に接続されると共に、第1のサービスに係る端末、及び、該第1のサービスとは異なる第2のサービスに係る端末が接続されたゲートウェイ端末を介して、MACアドレス及びVLAN IDの少なくともいずれか一方を含む信号を受信し、受信した信号に、ゲートウェイ端末を示すMACアドレスと第1のサービスに係る端末に関連付けられたVLAN IDとが含まれている場合には、受信した信号の送信元からの信号の振り分け先を第1のサービスに係るルートに決定し、受信した信号に、VLAN IDが含まれていない場合には、受信した信号に含まれているMACアドレスに関わらず、受信した信号の送信元からの信号の振り分け先を第2のサービスに係るルートに決定する。このような制御方法によれば、宅側装置の1つの物理ポートに互いに異なるサービスに係る端末が接続されている場合において、信号の振り分けを適切に行うことができる。
本発明の一態様に係る局側装置は、PONシステムに含まれる局側装置であって、第1のサービスに係る端末、及び、該第1のサービスとは異なる第2のサービスに係る端末が接続されたゲートウェイ端末から、MACアドレス及びVLAN IDの少なくともいずれか一方を含む信号を、宅側装置を介して受信する受信部と、受信部によって受信された信号の内容に基づき、該信号の送信元からの信号の振り分け先を決定する決定部と、を備え、決定部は、受信部によって受信された信号に、ゲートウェイ端末を示すMACアドレスと第1のサービスに係る端末に関連付けられたVLAN IDとが含まれている場合には、振り分け先を第1のサービスに係るルートに決定し、受信部によって受信された信号に、VLAN IDが含まれていない場合には、受信部によって受信された信号に含まれているMACアドレスに関わらず、振り分け先を第2のサービスに係るルートに決定する。このような局側装置によれば、宅側装置の1つの物理ポートに互いに異なるサービスに係る端末が接続されている場合において、信号の振り分けを適切に行うことができる。
本発明の一態様に係る宅側装置は、PONシステムに含まれる宅側装置であって、第1のサービスに係る端末、及び、該第1のサービスとは異なる第2のサービスに係る端末が接続されたゲートウェイ端末から、MACアドレス及びVLAN IDの少なくともいずれか一方を含む信号を受信し局側装置に転送する第1転送部と、局側装置における信号の振り分け先の決定結果に基づき信号を転送する第2転送部と、備え、第2転送部は、局側装置において、第1転送部によって転送された信号にゲートウェイ端末を示すMACアドレスと第1のサービスに係る端末に関連付けられたVLAN IDとが含まれているとして振り分け先が第1のサービスに係るルートに決定された場合には、第1転送部によって転送された信号の送信元からの信号を第1のサービスに係るルートに転送し、局側装置において、第1転送部によって転送された信号に、VLAN IDが含まれていないとして振り分け先が第2のサービスに係るルートに決定された場合には、第1転送部によって転送された信号の送信元からの信号を第2のサービスに係るルートに転送する。このような宅側装置によれば、宅側装置の1つの物理ポートに互いに異なるサービスに係る端末が接続されている場合において、信号の振り分けを適切に行うことができる。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係るPONシステムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、本実施形態に係るPONシステム1のシステム構成図である。PONシステム1は、FTTHサービスの提供において、光信号を複数に分岐して一心の光ファイバを複数ユーザで共有するネットワークシステムである。図1に示されるように、PONシステム1は、OLT10(局側装置)と、複数のONU50(宅側装置)と、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバー60及びTFTP(Trivial File Transfer Protocol)サーバー70を含むプロビジョニングサーバー80とを備える。OLT10及び複数のONU50は、FTTHネットワークNWを介して互いに接続されている。
DHCPサーバー60は、OLT10からDHCP情報要求を受信し、ONU50に設定されるIPアドレスを割り当てるサーバーである。TFTPサーバー70は、OLT10からコンフィグファイル要求を受信し、OLT10に対してコンフィグファイルを転送するサーバーである。コンフィグファイルの詳細については後述する。
OLT10及び複数のONU50の詳細について、図2及び図3も参照しながら説明する。図2は、OLT10~電話アダプタ10に接続された各端末間の接続構成を模式的に示す図である。図3は、OLT10及びONU50の機能ブロック図である。
図2に示されるように、ONU50の1つの物理ポートには、電話アダプタ100(ゲートウェイ端末)が接続されている。電話アダプタ100は、例えばターミナルアダプタである。なお、電話アダプタ100は、ターミナルアダプタのようにルーティング機能を有した構成でなくてもよく、ルーティング機能を有さないスイッチであってもよい。電話アダプタ100は、電話機に接続可能なモジュラージャック101(電話差込口)と、データ通信用の端末に接続可能なLAN差込口102,103とを有している。なお、電話アダプタ100は、さらに複数のモジュラージャック及び/又はLAN差込口を有していてもよい。モジュラージャック101には、電話機110が接続されている。電話アダプタ100は、モジュラージャック101に入力されたアナログ信号をデジタル変換する機能を有している。LAN差込口102には、データ通信用の端末の一例としてPC120が接続されている。LAN差込口103には、データ通信用の端末の一例としてフェムトセル130が接続されている。フェムトセル130とは、半径数メートルから数十メートルの無線通信エリアを構築する超小型基地局である。このように、ONU50の1つの物理ポートに接続された電話アダプタ100には、互いに異なるサービスに係る複数の端末が接続されている。すなわち、電話アダプタ100には、PONシステムを利用した電話サービス(第1のサービス)に係る端末である電話機110と、データ通信サービス(第2のサービス)に係る端末であるPC120及びフェムトセル130とが接続されている。
図3に示されるように、OLT10は、その機能として、取得部11と、記憶部12と、受信部13と、決定部14とを備えている。また、ONU50は、その機能として、第1転送部51と、第2転送部52とを備えている。なお、ここでのOLT10及びONU50の機能とは、電話アダプタ100からの信号の振り分けに係る機能を意味しており、その他のOLT10及びONU50の一般的な機能を含んでいない。すなわち、図3に示される機能ブロックには、OLT10及びONU50についての電話アダプタ100からの信号の振り分けに係る機能を示している。
OLT10の取得部11は、DHCPサーバー60及びTFTPサーバー70から、電話アダプタ100からの信号の振り分けに必要となる情報を取得する。取得部11は、OLT10においてONU50の認証(登録)が完了したことを契機として、DHCPサーバー60にDHCP情報要求を送信し、DHCPサーバー60からONU50のIPアドレスを取得する。また、取得部11は、OLT10においてONU50の認証(登録)が完了したことを契機として、TFTPサーバー70にコンフィグファイル要求を送信し、TFTPサーバー70からコンフィグファイルをダウンロードする。コンフィグファイルには、対象のONU50に接続された電話アダプタ100の配下の端末についての設定情報(予め設定された情報)が規定されている。具体的には、コンフィグファイルには、電話サービスに係る端末(例えば電話機110)の設定情報と、データ通信サービスに係る端末(例えばPC120及びフェムトセル130)の設定情報とが規定されている。
電話サービスに係る端末の設定情報とは、例えば、端末が接続されている電話アダプタ100のMACアドレス、電話アダプタ100において電話機110用に割り振られるVLAN ID(Virtual LAN IDentifier)、及び、優先制御等の通信情報である。VLAN IDとは、物理的な一つのLANを複数の仮想的なLANに分割するVLANにおいて各VLANを識別するための番号である。本実施形態の構成では、電話アダプタ100において、電話機110用にのみVLAN IDが割り振られており、その他の構成に対してはVLAN IDが割り振られていない。また、本実施形態の構成では、優先制御等の通信情報において、電話サービスに係る信号がデータ通信サービスに係る信号よりも優先的に転送されるように規定されている。データ通信サービスに係る端末の設定情報とは、例えば、通信速度等の通信情報、及び、電話アダプタ100以外のMACアドレスの信号をデータ通信サービスに係るルート(以下、「データ通信サービスフロー」と記載する場合がある)に転送することを規定した情報である。
記憶部12は、取得部11によって取得された情報を記憶する。記憶部12は、ONU50の情報を規定したONUテーブルと、電話アダプタ100の情報を規定した電話アダプタテーブルとを記憶している。ONUテーブルでは、ONU50のMACアドレス、IPアドレス、及び上述したコンフィグファイルの情報が紐づけて規定されている。電話アダプタテーブルでは、上述したコンフィグファイルの情報、すなわち、電話サービスに係る端末の設定情報(端末が接続されている電話アダプタ100のMACアドレス、電話アダプタ100において電話機110用に割り振られているVLAN ID、及び優先制御等の通信情報)と、データ通信サービスに係る端末の設定情報(通信速度等の通信情報、及び、電話アダプタ100以外のMACアドレスの信号をデータ通信サービスフローに転送することを規定した情報)とが紐づけて規定されている。なお、コンフィグファイルについては、必ずしも取得部11によって取得されるものでなくてもよく、何らかの手段によってOLT10に設定されるものであればよい。
受信部13は、ONU50を介して、電話アダプタ100から、MACアドレス認証要求(信号)を受信する。MACアドレス認証要求には、送信元を示すMACアドレスが含まれている。また、送信元に関してVLAN IDが設定されている場合に限り、MACアドレス認証要求には、VLAN IDが含まれている。
決定部14は、受信部13によって受信されたMACアドレス認証要求の内容に基づき、MACアドレス認証要求の送信元からの信号の振り分け先を決定する。MACアドレス認証要求の送信元とは、例えば電話サービスの場合には電話機110(又は電話機110に接続された電話アダプタ100)であり、データ通信サービスの場合にはPC120又はフェムトセル130である。
決定部14は、受信部13によって受信されたMACアドレス認証要求に、電話アダプタ100を示すMACアドレスと電話機110に関連付けられたVLAN IDとが含まれている場合には、当該MACアドレス認証要求の送信元を電話機110(又は電話機110に接続された電話アダプタ100)であると特定し、当該送信元からの信号の振り分け先を電話サービスに係るルート(以下、「電話サービスフロー」と記載する場合がある)に決定する。また、決定部14は、受信部13によって受信されたMACアドレス認証要求に、VLAN IDが含まれていない場合には、受信部13によって受信されたMACアドレス認証要求に含まれているMACアドレスに関わらず、該MACアドレス認証要求の送信元からの信号の振り分け先をデータ通信サービスフローに決定する。例えば、PC120がMACアドレス認証要求の送信元である場合においては、電話アダプタ100の種類によって、MACアドレス認証要求に含まれるMACアドレスが電話アダプタ100のMACアドレスである場合とPC120のMACアドレスである場合とがあり得る。このように、送信元を特定することができない場合があるため、MACアドレスのみによって適切に信号の振り分け先を決定することは困難である。この点、MACアドレスが必ず電話アダプタ100のMACアドレスとなる電話機110についてはVLAN IDに関連付けると共に、MACアドレスが一意に特定されないデータ通信サービスに係る端末(PC120及びフェムトセル130)についてはVLAN IDに関連付けないことによって、信号にVLAN IDが含まれるか否かによって送信元が電話サービスに係る端末であるか、又は、データ通信サービスに係る端末であるかを特定することができる。すなわち、決定部14は、信号にVLAN IDが含まれていない場合には、MACアドレスを考慮せずに、該信号の送信元からの信号の振り分け先をデータ通信サービスフローに決定することができる。
また、決定部14は、受信部13によって受信された信号に、電話サービスに係る端末である電話機110に関連付けられていないVLAN IDが含まれている場合には、該信号の送信元からの信号を破棄し、信号の転送を中止する。
ONU50の第1転送部51は、電話アダプタ100から上述したMACアドレス認証要求(信号)を受信しOLT10に転送する。また、第2転送部52は、OLT10における信号の振り分け先の決定結果に基づき、信号を転送(OLT10に転送)する。具体的には、第2転送部52は、OLT10において、第1転送部51によって転送されたMACアドレス認証要求に、電話アダプタ100を示すMACアドレスと電話機110に関連付けられたVLAN IDとが含まれているとして振り分け先が電話サービスフローに決定された場合には、第1転送部51によって転送された信号の送信元からの信号を電話サービスフローに転送する。また、第2転送部52は、OLT10において、第1転送部51によって転送された信号に、VLAN IDが含まれていないとして振り分け先がデータ通信サービスフローに決定された場合には、第1転送部51によって転送された信号の送信元からの信号をデータ通信サービスフローに転送する。
次に、図4を参照して、PONシステム1における処理について説明する。ここでのPONシステム1における処理とは、新規にONU50を認証(登録)した後に該ONU50を介して電話サービスを提供する場合の処理を示している。なお、図4においては、PONシステム1の構成として説明していない構成の処理についても一部、示している。
図4に示されるように、最初にONU50の電源がONされる(ステップS1)。そして、当該ONU50の電源がONされることに伴って、電話アダプタ100の電源がONされる(ステップS2)。なお、電話アダプタ100の電源は、ONU50と同じでもよいし違ってもよい。また、電話アダプタ100の電源は、後述するステップS11の処理までにONされていればよい。
ONU50の電源がONされると、OLT10(詳細にはOLT10におけるEPONに関する機能)は、該ONU50に対してONU認証要求を送信する(ステップS3)。ONU50は、該ONU認証要求を受信すると、OLT10に対してONU認証応答を送信する(ステップS4)。これにより、ONU50の認証(登録)が完了し、OLT10とONU50とが紐づく。OLT10のEPONに関する機能は、OLT10における専用のソフトウェア(バーチャルケーブルモデム)に対してONU登録完了通知を送信する(ステップS5)。OLT10は、プロビジョニングサーバー80に含まれるDHCPサーバー60に対してDHCP情報要求を送信する(ステップS6)。DHCPサーバー60は、該DHCP情報要求を受信すると、OLT10に対してDHCP情報応答を送信する(ステップS7)。これにより、OLT10は、DHCPサーバー60からONU50のIPアドレスを取得する。つづいて、OLT10は、プロビジョニングサーバー80に含まれるTFTPサーバー70に対してコンフィグファイル要求を送信し(ステップS8)。TFTPサーバー70からコンフィグファイルをダウンロードする(ステップS9)。これにより、OLT10は、TFTPサーバー70から、ONU50の配下の、電話サービスに係る端末(電話機110)の設定情報と、データ通信サービスに係る端末(PC120及びフェムトセル130)の設定情報とを取得する。
つづいて、OLT10は、ONU50に対してONU50のIPアドレスを送信しONU設定を行う(ステップS10)。これにより、ONU50のIPアドレスとMACアドレスとが紐づけて設定され、ONU50においてオンラインデータ通信が可能になる。ここまでの設定によって、電話サービスフロー及びデータ通信サービスフローの設定、EPON論理リンクの生成、MACアドレス/VLAN認証の設定が完了する。
そして、例えば電話サービスが利用される場合には、最初に、電話アダプタ100からONU50にMACアドレス認証要求が送信され(ステップS11)、該MACアドレス認証要求がONU50からOLT10に転送される(ステップS12)。OLT10は、マックドレス認証要求に含まれるMACアドレス及びVLANの情報に基づいて、MACアドレス認証要求の送信元からの信号の振り分け先を決定する(ステップS13)。いま、電話サービスに係る電話アダプタ100からのMACアドレス認証要求には、電話アダプタ100のMACアドレスと、電話機110に関連付けられたVLAN ID(設定済みの、適切なVLAN ID)とが含まれているとする。この場合、OLT10は、電話アダプタ100が送信元である信号の振り分け先を電話サービスフローに決定する。OLT10からONU50にMACアドレス認証応答が送信され(ステップS14)、該MACアドレス認証応答がONU50から電話アダプタ10に転送される(ステップS15)。
電話アダプタ10は、MACアドレス認証応答を受信すると、電話用サーバーにDHCP要求又はPPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)による接続要求を行い、電話サービスフローの経路を生成する(ステップS16)。そして、電話アダプタ10は、電話用サーバーからIPアドレスが付与(設定)される(ステップS17)。さらに、電話アダプタ10は電話用サーバー(詳細にはSIP(Session Initiation Protocol)サーバー)に電話設定情報要求を行い(ステップS18)、電話用サーバーから通話可能通知(ステップS19)を受信する。ここまでの処理が完了すると、電話アダプタ10に接続された電話機110は通話が可能となり、ONU50,OLT10,及び電話用サーバーを介して、通話相手と通話を行う(ステップS20~S22)。
次に、図5を参照して、OLTにおいて行われる、振り分け先決定処理(上述したステップS13)の詳細について説明する。図5は、OLTにおける振り分け先決定処理を示すフローチャートである。
図5に示されるように、OLT10は、ONU50を介して、電話アダプタ100から、MACアドレス認証要求(信号)を受信する(ステップS131)。つづいて、OLT10は、MACアドレス認証要求にVLAN IDが含まれているか否かを判定する(ステップS132)。ステップS132においてVLAN IDが含まれていないと判定した場合には、OLT10は、MACアドレス認証要求の送信元からの信号の振り分け先をデータ通信サービスフローに決定する(ステップS133)。
ステップS132においてVLAN IDが含まれていると判定した場合には、OLT10は、MACアドレス認証要求に、電話アダプタ100を示すMACアドレスと電話機110(すなわち電話アダプタ100)に関連付けられたVLAN IDとが含まれているか否かを判定する(ステップS134)。ステップS134において、MACアドレス認証要求に、電話アダプタ100を示すMACアドレスと電話機110(すなわち電話アダプタ100)に関連付けられたVLAN IDとが含まれていない(例えば異なるVLAN IDが含まれている)と判定した場合には、OLT10は、送信元が悪意のある端末等であるとして、当該送信元からの信号の転送の中心を決定する(ステップS135)。一方で、ステップS134において、MACアドレス認証要求に、電話アダプタ100を示すMACアドレスと電話機110(すなわち電話アダプタ100)に関連付けられたVLAN IDとが含まれていると判定した場合には、OLT10は、MACアドレス認証要求の送信元からの信号の振り分け先を電話サービスフローに決定する(ステップS136)。以上が振り分け先決定処理である。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
図6は、比較例に係る接続構成を示す図である。図6に示される比較例の接続構成のように、従来、ONU50xに対して互いに異なるサービスに係る複数の端末が接続される場合には、ONU50xの複数の物理ポートのそれそれに対して各サービスに係る端末が接続される。例えば、図6では、ONU50xのある物理ポートにはPC(一般的なデータ通信サービスに係る端末)が接続され、ONU50xの別の物理ポートには電話アダプタ100を介して電話機110(電話サービスに係る端末)が接続される。このような、一般的なデータ通信サービスと電話サービスとでONUの物理ポートが分かれた構成においては、例えば、OLTにIEEE802.1x認証の機能を実装すること、または、MACアドレスによる認証機能を実装することにより、各サービスに係る端末からの信号を各サービスに応じたルートに適切に振り分けることができる。
ここで、通信キャリアによっては、ONUの1つの物理ポートに互いに異なるサービスに係る端末を接続したい場合がある。すなわち、例えばONUの1つの物理ポートに電話アダプタを介して電話機(電話サービスに係る端末)及びPC(一般的なデータ通信サービスに係る端末)の双方を接続したい場合がある。このような構成においては、ONUが電話アダプタ側から信号を受信した場合に、信号の送信元の端末に関わらず、信号の送信元のMACアドレスが全て電話アダプタのMACアドレスとなること(ケース1)、または、PC等が信号の送信元である場合には送信元のMACアドレスがPC等のMACアドレスになること(ケース2)が考えられる。ケース1の場合、ONUは受信した信号をいずれのルート(サービスに応じたルート)に振り分ければよいのかを判断することができない。また、ケース2の場合、PC等のMACアドレスについてはONUが認知していないMACアドレスであるため、受信した信号を破棄してしまうことが考えられる。このように、ONUの1つの物理ポートに互いに異なるサービスに係る端末が接続された場合には、ONUにおいて適切なルートに信号を振り分けることができない。
上記課題を解決する構成として、本実施形態に係るPONシステム1は、OLT10とONU50とを有するPONシステムであって、ONU50に接続されると共に、第1のサービスに係る端末、及び、該第1のサービスとは異なる第2のサービスに係る端末が接続されたゲートウェイ端末(電話アダプタ100)を介して、MACアドレス及びVLAN IDの少なくともいずれか一方を含む信号を受信する受信部13と、受信部13によって受信された信号の内容に基づき、該信号の送信元からの信号の振り分け先を決定する決定部14と、を備え、決定部14は、受信部13によって受信された信号に、ゲートウェイ端末(電話アダプタ100)を示すMACアドレスと第1のサービスに係る端末に関連付けられたVLAN IDとが含まれている場合には、振り分け先を第1のサービスに係るルートに決定し、受信部13によって受信された信号に、VLAN IDが含まれていない場合には、受信部13によって受信された信号に含まれているMACアドレスに関わらず、振り分け先を第2のサービスに係るルートに決定する。
PONシステム1によれば、ONU50に接続されたゲートウェイ端末(電話アダプタ100)に第1のサービスに係る端末及び第2のサービスに係る端末が接続されている構成、すなわち、ONU50の1つの物理ポートに対してゲートウェイ端末(電話アダプタ100)を介して互い異なるサービスの複数の端末が接続されている構成において、受信された信号に含まれるMACアドレス及びVLAN IDに基づいて信号の振り分け先が決定される。具体的には、信号にゲートウェイ端末(電話アダプタ100)を示すMACアドレスと第1のサービスに係る端末に関連付けられたVLAN IDとが含まれている場合には振り分け先が第1のサービスに係るルートに決定される。このように、例えばMACアドレスが必ずゲートウェイ端末(電話アダプタ100)のMACアドレスになる端末であって予めVLAN IDに紐づけられる端末(例えば電話機110)については、MACアドレス及びVLAN IDに基づき、信号の送信元が当該端末であることが特定できるため、MACアドレス及びVLAN IDに基づいて信号の送信元を適切に判別し、当該端末からの信号を当該端末に係るサービスのルートに適切に振り分けることができる。また、MACアドレス及びVLAN IDを考慮することによって、予めVLAN IDに関連付けている端末以外の端末(悪意のある端末)が接続されていないことを適切に判別することができ、ONU50~第1のサービスに係る端末間の紐づけ(第1のサービスに係る端末の位置固定)を確実に行なうことができる。さらに、PONシステム1では、信号にVLAN IDが含まれていない場合には、MACアドレスに関わらず振り分け先が第2のサービスに係るルートに決定される。例えば、PC等のデータ通信サービスに係る端末から送信された信号については、ゲートウェイ端末(電話アダプタ100)の種類によって、該信号に含まれるMACアドレスがゲートウェイ端末(電話アダプタ100)のMACアドレスになること、及び、該信号に含まれるMACアドレスが送信元であるPC等の端末のMACアドレスになることの双方が考えられる。このため、このような信号については、MACアドレスに基づきルートを決定することができないおそれがある。この点、このような信号を送信し得る端末についてはVLAN IDに関連付けず(すなわち、該端末から送信された信号にはVLAN IDが含まれない構成とし)、MACアドレスを考慮せずにVLAN IDが含まれないことをもって振り分け先を決定する(例えばデータ通信サービスに係るルートとする)ことにより、PC等の端末から送信された信号のように送信元のMACアドレスが一意に定まらない信号についても、当該端末に係るサービスのルートに適切に振り分けることができる。以上のように、本発明の一態様に係るPONシステム1によれば、ONUの1つの物理ポートに互いに異なるサービスに係る端末が接続されている場合において、信号の振り分けを適切に行うことができる。
決定部14は、受信部13によって受信された信号に、第1のサービスに係る端末に関連付けられていないVLAN IDが含まれている場合には、該信号の送信元からの信号の転送を中止する。これにより、ONU~第1のサービスに係る端末間で紐づけを行いたい端末(例えば位置固定をしたい電話機)を用いる場合において、悪意のある端末が接続された場合、VLAN IDを管理するゲートウェイ端末(電話アダプタ100)が故障した場合等において、信号の転送を中止することができる。すなわち、端末の位置固定が適切に行われていない可能性がある場合において信号が転送されることを防止することができる。
PONシステム1においては、上述した第1のサービスとはPONシステムを利用した電話サービスであり、第2のサービスとはデータ通信サービスであり、ゲートウェイ端末は、電話機110に接続可能な電話差込口と、第2のサービスに係る端末であるデータ通信用の端末に接続可能なLAN差込口とを有する電話アダプタである。これにより、ONU50の1つの物理ポートに対し電話アダプタ100を介して、電話サービスに係る端末である電話機110及びPC等のデータ通信サービスに係る端末が接続されている構成において、これらのサービスを共存させて、信号の振り分けを適切に行うことができる。すなわち、図7に示されるように、PONシステム1によれば、電話機110に係る信号については電話アダプタ100を介して電話サービスフローに転送すると共に、PC120及びフェムトセル130に係る信号については電話アダプタ100を介してデータ通信サービスフローに転送することができる。
PONシステム1では、電話サービスに係る信号は、データ通信サービスに係る信号よりも優先的に転送される。これにより、ユーザにとって優先度が高いと考えられる電話サービスを適切に提供することができる。
以上、本実施形態に係るPONシステムについて説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、ONU50に接続された電話アダプタ100に1台の電話機110が接続される構成(図2参照)を説明したが、図8に示されるように、電話アダプタ200に複数の電話機110が接続されてもよい。図8の構成では、互いにMACアドレスが異なる複数の電話アダプタ200がカスケード接続されており、各電話アダプタ200に対して複数の電話機110が接続されている。このような構成を採用する場合、複数の電話アダプタ200の複数のMACアドレスと電話機110のVLAN IDとが紐づけて管理される。同一の電話アダプタ200に接続される複数の電話機110のVLAN IDは、互いに同一であってよいし、互いに異なっていてもよい。