JP7146187B2 - 菌体外多糖生産性乳酸菌およびその利用 - Google Patents

菌体外多糖生産性乳酸菌およびその利用 Download PDF

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Description

NPMD NITE P-02581 NPMD NITE P-02582
本発明は、菌体外多糖を生産する乳酸菌に関する。また、そのような乳酸菌の、食品への利用に関する。
乳酸菌は歴史的な共生関係や豊富な食経験から、「地球上て?最も安全な細菌」て?あるといえる。実際に、乳酸菌に含まれる多くの細菌は、アメリカ食品医薬品局の定める GenerallyRecognizedAs Safe(GRAS)や欧州食品安全機関の定めるQualifiedPresumption of Safety に批准し、その安全性か?担保されている。特に耐塩性および耐アルコール性等のストレス耐性を有し、糖質資化能に特徴がある乳酸菌は、様々な発酵食品への利用が検討されてきている(特許文献1)。
乳酸菌の中には、菌体外多糖(exopolysaccharide; EPS)を産生するものが知られている。EPS産生性の乳酸菌種としては、Streptococcus thermophilusやLactobacillus bulgaricusが知られている。EPSは、ヨーグルトにおいて粘性を付与し、分離を防いだり、粘り気のある独特の食感を与えたりする等の効果のほか、保水性、浸透圧耐性により、乳酸菌を環境ストレスから保護し、食品中での生存や腸管への到達に寄与していると考えられている。EPSに関しては、免疫賦活化、ビフィズス菌の生育促進、ウイルス感染防御活性を高める等の生理活性にも注目されている(非特許文献1、非特許文献2、特許文献2、特許文献3)。
一方、発酵食品の一つであるパンには、環境および原料に由来する微生物により発酵させた伝統的なパン種であるサワー種を用いたものがあり、イーストのみで発酵し、製造したパンでは得られない風味や味を有するものとして知られている。このサワー種を用いたパンの工業的な調製と利用が検討され、またサワー種が、製造されるパン類の食感および冷凍耐性にも寄与しうることが見出されている(特許文献4)。またパンの製造においては、液種や中種などの酵母の発酵生成物をあらかじめ作製する方法が知られている。中種生地の作製用澱粉として平均粒径150μm未満~200μm未満の微粉砕全粒穀粉を用いることにより、風味良好なパン類を得ることが検討されている(特許文献5)。
特開2007-236344号公報 特開2016-178911号公報 特開2007-259729号公報 特開2014-168496号公報 特開2017-006031号公報
Japanese Journal of Lactic Acid Bacteria Vol 24, No.1 P10-17, 2013 生物工学 93巻 3号 p.154
乳酸菌が産生するEPSの構造は、菌株によって異なっており、菌株によって食品に添加した場合の効果が異なると考えられる。また、サワー種に関しては、含まれる微生物の寄与が明らかになっていなかった。
本発明者らは、発酵食品用の乳酸菌を自然界より分離するにあたり、今まで研究されていなかった白神山地に生息する植物(ブナの枯葉、腐葉土)より乳酸菌を採取することを試みた。その結果、EPS高生産性の、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)の新規な株を単離し、さらにその利用について鋭意検討した結果、当該株の発酵物培養液を用いた発酵食品における品質改善効果を見出した。本乳酸菌から生成されたEPS組成の特徴より、うどんの粘りや弾力の改善、パンの口どけや歯切れの改善などの効果を見出した。
本発明は、以下を提供する。
[1] ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4192B株(寄託番号NITE P-02581);
ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4192B株と科学的性質が同一である菌株;または
ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも98%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
[2] ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4314a株(寄託番号NITE P-02582);
ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4314a株と科学的性質が同一である菌株;または
ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも98%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
[3] 菌体外多糖生産性である乳酸菌を含む、穀類粉を含有する食品の改良剤。
[4] 菌体外多糖生産性乳酸菌が、1または2の菌株である、3に記載の剤。
[5] 麺または麺皮の食感の改善のためのものである、3または4に記載の剤。
[6] パンの食感または風味の改善のためのものである、3または4に記載の剤。
[7] 菌体外多糖生産性乳酸菌、および穀類粉を含む、食品組成物。
[8] 麺、麺皮またはパンである、7に記載の食品組成物。
[9] 下記の工程を含む、穀類粉を含む食品組成物の製造方法:
穀類粉および水を含む原料に、菌体外多糖生産性乳酸菌を添加して発酵させ、発酵物を得る工程、
得られた発酵物と穀類粉を混合し、生地を得る工程。
[10] 麺、または麺皮の製造方法であり、下記の工程を含む、9に記載の製造方法:
得られた発酵物と穀類粉を混合し、麺または麺皮の生地を得る工程。
[11] パンの製造方法であり、下記の工程を含む、9に記載の製造方法:
得られた発酵物と穀類粉と酵母を混合し、中種生地を調製する工程。
[12] 菌体外多糖生産性であるラクトコッカス・ラクティスを含む、食品組成物。
Lactococcus lactis subsp. lactis class I KLC 4192Bの生産する菌体外多糖の糖構成 Lactococcus lactis subsp. lactis class I KLC 4314aの生産する菌体外多糖の糖構成 菌体外多糖生産性である乳酸菌の発酵物を用いたうどんの評価結果 菌体外多糖生産性である乳酸菌の発酵物を用いたうどんの破断応力 中種を使用しないパン(左)と菌体外多糖生産性である乳酸菌を用いた中種を使用したパン(左)の写真 乳酸菌無添加のフランスパン(左)と菌体外多糖生産性である乳酸菌を添加したフランスパン(右)の写真 乳酸菌無添加のフランスパンをスライスしたもの(上)と菌体外多糖生産性である乳酸菌を添加したフランスパンをスライスしたもの(下)の写真 Lactococcus lactis subsp. lactis class I KLC 4192Bの16S rRNA遺伝子の配列 Lactococcus lactis subsp. lactis class I KLC 4314aの16S rRNA遺伝子の配列
部および%は、質量に基づく値である。「x~y」で表される数値範囲は、両端の値xおよびyを含む。食品は、固形のものみならず、飲料およびスープのような液状の経口摂取物も含む。また、そのまま摂取される形態のもの(例えば、調理済みの各種の食品、サプリメント、ドリンク剤)のみならず、原料として使用されるもの、液種、中種のような食品製造工程における中間生産物、食品添加物も含む。さらに、ヒトのみならず、非ヒト動物(ペット、家畜等)のためのものも含む。発酵物というとき、形態は特に限定されず、液状であってもよく、固体状であってもよい。
[菌体外多糖生産性乳酸菌、新規株]
本発明により、菌体外多糖(EPS)を生産する、乳酸菌の新規な株が提供される。
(乳酸菌)
本発明で「乳酸菌」というときは、特に記載した場合を除き、多量に乳酸を生産(炭水化物を発酵し、生成する酸の50%以上)すると共に、炭水化物を含む培地によく繁殖し、グラム陽性で、運動性がなく、胞子をつくらない菌群であって、食品の発酵のために用いることができるものをいう。本発明でいう乳酸菌は、具体的にはラクトコッカス (Lactococcus) 属に属する微生物、ラクトバチルス(Lactobacillus) 属に属する微生物、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する微生物、ペディオコッカス (Pediococcus)属に得する微生物、エンテロコッカス(Enterococcus) 属に属する微生物、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する微生物、ワイセラ(Weissella) 属に属する微生物、ストレプトコッカス(Streptococcus) 属に属する微生物、メリソコッカス(Melissococcus) 属に属する微生物、カルノバクテリウム(Carnobacterium) 属に属する微生物、およびテトラゲノコッカス(Tetragenococcus)属に属する微生物を含む。
乳酸菌のより具体的な例は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・コンフュサス(Lactobacillus confusus)、ラクトバチルス・メールファメンタス(Lactobacillus malefermentans)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp. paracasei)、ペディオコッカス・アシドラクティチ(Pediococcus acidlactici)等が挙げられる。
本発明の特定の態様においては、EPS生産性である乳酸菌が用いられる。このような乳酸菌の例としては、ラクトコッカス・ラクティスに属するもの、およびラクトバチルス・ブルガリカスに属するものが挙げられる。EPS生産性である乳酸菌のより具体的な例は、ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ クレモリスに属するもの、ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ サーモフィラスに属するもの(前掲特許文献1および2)、ラクトバチルス・ブルガリカス 1073R-1(前掲非特許文献1)等が挙げられる。
(寄託、同定等)
本発明により提供される新規な乳酸菌の株は、ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)に属し、より詳細には、Class I に属する。本発明により提供される乳酸菌の株、KLC 4192B株は、本発明者らが、秋田県山本郡八峰町八森の世界自然遺産「白神山地」緩衝地域より、所管官庁の許可を得て採取した温帯落葉広葉樹林帯のブナの枯葉から新規に分離した乳酸菌であり、秋田県総合食品研究センター(所長 高橋 仁)により、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)へ、2017年11月22日付で受託番号NITE P-02581として寄託されている。また、同様に本発明により提供される乳酸菌の株、KLC 4314a株は、本発明者らが、同様に白神山地の腐葉土から単離したものであり、秋田県総合食品研究センター(所長 高橋 仁)により、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)へ、2017年11月22日付で受託番号NITE P-02582として寄託されている。
本明細書の配列表には、配列番号:1として、本発明者らが得たKLC 4192B株の16S rRNA遺伝子(16S rDNAということもある)の部分配列を示した。また、配列番号:2として、本発明者らが得たKLC 4314aの16S rRNA遺伝子の部分配列を示した。
Lactococcus lactis には、subsp. lactis、subsp. cremoris、およびsubsp. hordniaeの大きくは3つのサブスピーシーズがあり、最も一般的で食品に使用されているグループがsubsp. lactisである。なお、カスピ海ヨーグルトには、subsp. cremorisが使われている(前掲特許文献2)。このうち、subsp. lactisと subsp. cremorisの16S rRNA遺伝子の塩基配列は同一性が非常に高いために、この塩基配列の同一性のほか、糖質資化性、γ-アミノ酪酸(GABA)生産能、40℃での生育性などによって判断する必要がある。一般に、subsp. lactisは、GABA生産能があり、40℃で生育可能であり、ラクトースの資化性がやや劣る。これに対し、subsp. cremorisは、GABA生産能がなく、40℃では生育できず、ラクトースを資化することが知られている。また、subsp. cremorisが自然環境中から報告された例はなく、subsp. cremorisは人間によって育種されたものと考えられている。
本発明者らは、KLC 4192B株およびKLC 4314a株の分類学上の位置は、以下の理由より、Lactococcus lactis subsp. lactis class Iであると決定した。
(i) 16S rRNA遺伝子塩基配列が、 Lactococcus lactis subsp. lactis Iと100.0%の同一性を示した。他に予想される菌種・菌属はLactococcus lactis subsp. cremorisであり、これとは、KLC 4192B株99.935 %、およびKLC 4314a株は99.739 %の同一性を示した。
(ii) API 50CH/CHL(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて、50種類の炭水化物資化能を調べ、菌種を検索したところ、添付文書に記載の基準株Lactococcus lactis subsp. lactis I の資化性と両者とも96.4%一致した。
(iii) subsp.lactisは40℃で生育できるが、subsp. cremorisは生育できない。本菌株は40℃で生育した。
なお、発現形質として、lactisはGABA生成能を有するが、cremorisはGABA生成能がないことが現象として知られていた。この理由は、lactisはgad B遺伝子(グルタミン酸を脱炭酸してGABAを生成する酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)をコードする遺伝子)を有する一方で、cremorisはこの正常なgad B遺伝子において40bpの欠損があり、そのためGABA生成能を失っているからであるが、gad B遺伝子の40bpの欠損を指標とすることで、lactisとcremorisの簡便かつ確実な同定ができるとの報告がある(M. Nomura, et al., Appl. Environ. Microbiol., 68, 2209(2002)、M.Nomura, et al., J. Appl. Microbiol., 101, 396 (2006))。本発明者らは、この情報をに基づき、KLC 4192B株、および、KLC 4134a株の両方のgad B遺伝子配列を調べた結果、2株共に20bpが欠損していることが分かった。
(KLC 4192B株の科学的性質)
KLC 4192B株の科学的性質を以下にまとめた。
(1)菌体の形状:主に二連球のラグビーボール型の球菌。
(2)コロニーの形状:MRS平板培地上に、直径2~4mmのツヤのある白色円形のコロニーを形成する。
(3)EPSを産生する。白色で弱い曳糸性を示すEPSである。
(4)グラム染色性:陽性
(5)カタラーゼ活性:陰性
(6)胞子形成能:陰性
(7)運動性:陰性
(8)ガス発生:陰性
(9)培養温度40℃で生育可能(Lactococcus lactis subsp. cremorisは生育できない)
(10)下表の糖資化性を有する。
Figure 0007146187000001
本発明で乳酸菌に関し、「EPS生産性(である)」または「EPSを産生する」というときは、特に記載した場合を除き、生産に適する条件とした場合に、例えばMRS培地(10%グルコース含有)で30℃、72時間培養した場合に、EPSが検出できることをいう。EPSの検出は、公知の方法により行うことができるが、例えば培養物を遠心し、得られたペレットを洗浄し、洗浄後のペレットを5%水酸化ナトリウム溶液に懸濁し、加温処理を行った後、遠心分離して得られた上清中に等量のエタノールを加えて生じた析出物について、含まれる糖を高速・高分離能イオンクロマトグラフにより分析することにより行ってもよい。
本発明者らの検討によると、KLC 4192B株の生産するEPSの構成糖は、ガラクトース:グルコース=1:2である。
本発明者らの検討によると、KLC 4192B株は、下記の性質をさらに有する。
(11)GABA生産能:陰性
GABA生産能は、gad B遺伝子の全部または一部(例えば10bp以上、好ましくは20bp以上)の欠損によっても判断できる。
本発明者らの検討によると、KLC 4192B株は、下記の(12)および(13)の性質をさらに有する。
(12)食塩存在下で好ましい生育をする
(13)アルコール存在下で好ましい生育をする
本発明で乳酸菌に関し、「食塩存在下で好ましい生育をする」というときは、特に記載した場合を除き、少なくとも1%、好ましくは3%、より好ましくは5%、さらに好ましくは6%のNaClを含む培地で培養した場合に、増殖が見られることをいう。本発明で乳酸菌に関し、「アルコール存在下で好ましい生育をする」というときは、特に記載した場合を除き、少なくとも1%、好ましくは2.5%、より好ましくは5%、さらに好ましくは6%のアルコールを含む培地で培養した場合に、増殖が見られることをいう。なお、「存在下で好ましい生育をする」は、「耐性である」と言い換えることもできる。培地および培養条件は、試験する乳酸菌に適したものを用いることができるが、例えば、M17 培地を用いることができ、培養条件は72時間、30℃で、静置培養とすることができる。乳酸菌の増殖は、600nmにおける濁度(OD値)により、確認できる。なお、「アルコール耐性」というときの「アルコール」は、酵母等の食品発酵のために利用される微生物が生産し、かつ食品として許容されるアルコール、すなわちエタノールを指す。
(KLC 4314a株の科学的性質)
KLC 4314a株の科学的性質を以下にまとめた。
(1)菌体の形状:主に二連球のラグビーボール型の球菌。
(2)コロニーの形状:MRS平板培地上に、直径2~4mmのツヤのある白色円形のコロニーを形成する。
(3)EPSを産生する。白色で弱い曳糸性を示すEPSである。
(4)グラム染色性:陽性
(5)カタラーゼ活性:陰性
(6)胞子形成能:陰性
(7)運動性:陰性
(8)ガス発生:陰性
(9)培養温度40℃で生育可能(Lactococcus lactis subsp. cremorisは生育できない)
(10)下表の糖資化性を有する。
Figure 0007146187000002
本発明者らの検討によると、KLC 4314a株の生産するEPSの構成糖は、ガラクトース:グルコース=9:2である。
本発明者らの検討によると、KLC 4314a株は、下記の性質をさらに有する。
(11)GABA生産能:陰性
GABA生産能は、gad B遺伝子の全部または一部(例えば10bp以上、好ましくは20bp以上)の欠損によっても判断できる。
本発明者らの検討によると、KLC 4314a株は、下記の(12)および(13)の性質をさらに有する。
(12)食塩存在下で好ましい生育をする
(13)アルコール存在下で好ましい生育をする
(均等物)
本願は、KLC 4192B株およびKLC 4314a株のみならず、それぞれに均等な乳酸菌、具体的には下記の乳酸菌も提供する:
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4192B株と科学的性質が同一である菌株;または
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号1の塩基配列と高い同一性を有するヌクレオチド配列(塩基配列ということもある)からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4314a株と科学的性質が同一である菌株;または
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号2のヌクレオチド配列と高い同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
本発明に関し、「KLC 4192B株と科学的性質が同一である菌株」というときは、特に記載した場合を除き、上述したKLC 4192B株に関する(1)~(9)を有し、かつ(10)上表に示した糖資化性を有することをいう。
KLC 4192B株と科学的性質が同一である菌株は、下記の性質をさらに有することが好ましい。
(11)GABA生産能:陰性
KLC 4192B株の科学的性質が同一である菌株は、下記の(12)および(13)の性質をさらに有することがより好ましい。
(12)食塩存在下で好ましい生育をする
(13)アルコール存在下で好ましい生育をする
本発明に関し、「4314a株と科学的性質が同一である菌株」というときは、特に記載した場合を除き、上述したKLC 4314a株に関する(1)~(9)を有することをいう。
本発明に関し、16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列に関して、高い同一性とは、ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ クレモリスではなく、ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスであると推定できるほどの同一性をいう。具体的には、配列番頭:1または配列番号:2の配列との同一性が、98%以上であることをいい、好ましくは99.00%以上であり、より好ましくは99.50%以上であり、さらに好ましくは99.67%以上であり、さらに好ましくは99.80%以上であり、さらに好ましくは99.93%以上である。
ヌクレオチド配列(塩基配列、または単に配列ということもある。)に関し、同一性とは、特に記載した場合を除き、2つの配列を最適の態様で整列させた場合に、2つの配列間で共有する一致したヌクレオチドの個数の百分率を意味する。同一性%は、(一致した位置の数/位置の全数)×100で算出でき、市販されているアルゴリズムを用いて計算することができる。また、このような計算は、当業者には周知のアルゴリズムまたはプログラム(例えば、BLASTN、BLASTP、BLASTX、ClustalW)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。
このような乳酸菌は、KLC 4192B株またはKLC 4314a株から、育種または遺伝子操作等の手法により得ることができる。また天然源からラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスを単離し、EPS生産性のものを選択することにより、得ることができる。
[食品への利用]
(食品改良剤)
EPS生産性である乳酸菌を含む、穀類粉を含有する食品の改良剤を提供する。
有効成分であるEPS生産性である乳酸菌は、上述の乳酸菌のいずれか、すなわち下記のいずれかであることが好ましい。
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4192B株(寄託番号NITE P-02581);
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4192B株と科学的性質が同一である菌株;または
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも98%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4314a株(寄託番号NITE P-02582);
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4314a株と科学的性質が同一である菌株;または
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも98%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
有効成分としての乳酸菌は、有効成分として機能しうる限り、種々の処理を経たものであってもよいが、EPSを含む発酵物であることが好ましく、穀類粉と混合が容易である等の観点からは、液状の発酵物であることが好ましい。
EPS生産性である乳酸菌を含む剤は、本発明者らの検討によると、穀類粉を含む食品、例えば麺、麺皮、パンに用いることにより、食品の食感や風味を改善することができる。
穀類粉は、穀類から得られる粉または粒状物をいい、穀類の例としては、小麦、小麦以外のイネ科穀物(例えば、ライ麦、大麦、米、トウモロコシ、ひえ、テフ)が挙げられる。本発明の剤は、特に小麦粉を用いた食品に好適に適用することができる。小麦粉としては、穀物としての小麦から、外皮および胚芽を実質的に除いた胚乳部分を挽いて作られた粉である通常の小麦粉のほか、小麦全粒粉(小麦の表皮、胚芽、胚乳をすべて粉にしたもの)、グラハム粉(小麦を胚乳と、表皮および胚芽とに分けてから、胚乳は普通の小麦粉と同じ細かさに挽き、表皮と胚芽は粗挽きにして両方を混ぜ合わせたもの)であってもよい。通常の小麦粉の例として、強力粉(タンパク質の割合が12%以上のもの)、中力粉(タンパク質の割合が、強力粉と薄力粉の中間のもの)、薄力粉(タンパク質の割合が8.5%以下のもの)、浮き粉(小麦粉の生地からグルテンを分離した残りの澱粉分)、セモリナ粉が挙げられる。本発明が適用される食品は、穀類粉以外の粉類、例えば、豆類(例えば、大豆、ひよこ豆、えんどう豆)、雑穀(例えば、そば、アマランサス)、芋・根類(例えば、片栗、くず、タピオカ、馬鈴薯)から製造された粉または粒状物を含んでいてもよい。
(麺、麺皮への利用)
本発明の剤は、麺または麺皮に用いることにより、対照に比較して、硬さ、ねばり、弾力、およびつるみからなる群より選択されるいずれかの項目において、より優れたものとすることができる。これらの項目についての評価は、訓練されたパネラーによる官能試験により行うことができる。また、本発明の剤は、麺または麺皮に用いることにより、対照に比較して、破断応力を増すことができる。破断応力の評価は、公知の方法により行うことができる。これらの評価における比較のための対照は、発酵物を一切用いないもの、または本発明の剤の代わりに乳酸菌を添加せずに発酵工程を経た液種を用いたものとすることができる。
本発明の剤が用いられる麺の種類は特に制限されないが、上述した項目において特に優れていることが期待される麺が好ましく、このような麺の例には、うどん、そば、中華麺、パスタ類が含まれる。より具体的な例は、讃岐うどん、稲庭うどん、伊勢うどん用麺、十割蕎麦、二八蕎麦、ラーメン用麺、冷やしラーメン用麺、ざる中華用麺、つけ麺用麺、油そば用麺、冷やし中華用麺、焼きそば(炒麺・炸麺)用麺、ちゃんぽん用麺、皿うどん用麺、沖縄そば用麺、焼きラーメン用麺、黄そば用麺、バリそば用麺、ローメン用麺、担担麺用麺、ジャージャー麺用麺、担仔麺用麺、バミー用麺、ラクサ用麺、サイミン用麺、スパゲッティ、スパゲッティーニ、タリアテッレ、リングイネ、マカロニ、ラザニア、ニョッキである。
本発明の剤が用いられる麺皮の種類は特に制限されないが、上述した項目において特に優れていることが期待される麺皮が好ましく、このような麺皮の例には、餃子の皮、焼売の皮、春巻きの皮、および生春巻きの皮が含まれる。
麺または麺皮に使用する場合の具体的な使用方法、使用量は、後述する製造方法の項で詳述する。
(パンへの利用)
本発明の剤は、パンに用いることにより、対照に比較して、口どけ、歯切れ、風味、もちもち感、および柔らかさからなる群より選択されるいずれかの項目において、より優れたものとすることができる。これらの項目についての評価は、訓練されたパネラーによる官能試験により行うことができる。また、本発明の剤は、パンに用いることにより、対照に比較して、、焼成後の高さまたはボリュームを増すことができる。焼成後の高さまたはボリュームの評価は、公知の方法により行うことができる。これらの評価における比較のための対照は、乳酸発酵物を一切用いないもの、または本発明の剤の代わりに乳酸菌を添加せずに発酵工程を経た液種を用いたものとすることができる。
本発明でいうパンとは、特に記載した場合を除き、デンプンおよびグルテン類を含む穀類粉に水分を加え、混捏した生地を膨張させ、熱調理(焼成、油揚、蒸し加熱等)したものをいう。酵母を用いて発酵により膨張させた発酵パン、酵母以外の化学剤(例えば、ベーキングパウダー)等の作用により膨張させた無発酵パンを含む。本発明の剤が用いられるパンの種類は特に制限されないが、上述した項目において特に優れていることが期待されるパンが好ましく、このようなパンの例は、白パン、ワンローフ食パン、角形食パン、山形食パン、ホテルブレッド(バターや生クリームなどを比較的多く使った高級パン、特に山形の食パン)、ナッツ、レーズン、食物繊維、胚芽などを配合したバラエティー食パン、フランスパン、ソフトフランスパン、バターロール、ロールインバターロール、ミルクハース、クレッセントロール、カイザーロール、グラハムロール、ライ麦パン、ヴィエノワ、クロワッサン、スイートロール、デニッシュペストリー、ブリオッシュ、グリッシーニ、プレッツエル、パネトーネ、デニッシュ、コーヒーケーキ、シナモンロール、シュトーレン、ホットクロスバンズ、スイートバンズなどのバンズ類、イングリッシュマフィンなどのマフィン類、アンパン、ジャムパン、クリームパン、コロネ、メロンパンなどの菓子パンに適用することができる。食事パン(白パン、食パン、バターロール、クロワッサン、フランスパン)に適する。
本発明の剤は、製パン性の高い小麦粉を使用する場合のみならず、国産小麦を原料とした小麦粉を使用したパンに適用するのにも適している。国産小麦の例として、きたほなみ、ゆめちから、さとのそら、春よ恋、シロガネコムギ、チクゴイズミ、農林61号、ミナミノカオリ、イワイノダイチ、あやひかり、ちくしW2号、せときらら、ゆめかおり、ハナマンテン、ネバリゴシ等が挙げられる。また本発明の剤は、野生酵母を使用したパンに適用するのにも適している。野生酵母の例として、白神こだま酵母が挙げられる。白神こだま酵母は、白神山地のブナ原生林の腐葉土の中から単離されたものである。
本発明の剤をパンに使用する場合の具体的な使用方法、使用量は、後述する製造方法の項で詳述する。
(その他の食品)
本発明の剤は、上述の麺、麺皮、およびパンのほか、穀類粉を使用した他の食品、例えば、お好み焼き、たこ焼き、大判焼き、たい焼き、まんじゅう、スポンジケーキ、カステラ、ピザ、ホットケーキ、ドーナツ、あんまん、肉まん、カレーまん、ピザまん、小麦粉を使用した菓子類、からあげ粉、てんぷら粉等においても好適に使用することができる。
[製造方法]
本発明は、下記の工程を含む、穀類粉を含む食品組成物の製造方法を提供する:
穀類粉および水を含む原料に、EPS生産性乳酸菌を添加して発酵させ、発酵物を得る工程(乳酸菌発酵工程)、
得られた発酵物と穀類粉を混合し、生地を得る工程(生地調製工程)。
有効成分であるEPS生産性である乳酸菌は、上述の乳酸菌のいずれか、すなわち下記のいずれかであることが好ましい。
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4192B株(寄託番号NITE P-02581);
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4192B株と科学的性質が同一である菌株;または
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも98%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4314a株(寄託番号NITE P-02582);
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、KLC 4314a株と科学的性質が同一である菌株;または
・ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも98%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
(麺、麺皮の製造方法)
本発明の製造方法が、麺、または麺皮の製造方法である場合、上述の乳酸菌発酵工程のほか、下記の生地調製工程を含む:
得られた発酵物と穀類粉を混合し、麺または麺皮の生地を得る工程。
発酵工程において、乳酸菌の培地ともいうべき原料組成物は、穀類粉、および水を含むほか、食品として許容され、かつ乳酸菌の発酵のために有用な成分、例えば炭素源や窒素源を含んでいてもよい。炭素源としては、グルコース、ショ糖、サトウキビ廃糖蜜、ビート廃糖蜜、およびサトウキビ抽出液からなる群より選択されるいずれかを用いることができる。窒素源として、例えば、酵母エキス、ペプトン、コーンスティプリカー(CSL)、およびカゼイン等の含窒素有機物からなる群より選択されるいずれかを用いることができる。さらに、リン酸成分、カリウム成分、マグネシウム成分を添加してもよく、ビオチン、パントテン酸、チアミン、イノシトール、ピリドキシン等のビタミン類、亜鉛、銅、鉄、マンガン等のミネラル類を添加してもよい。このような成分を含む場合には、得られる麺または麺皮において、特に硬さと粘りを増すことができる。
原料培地の組成は、適宜とすることができるが、例えば、原料培地1kg中、穀類粉の含有量は50~400gであり、好ましくは100~350gであり、より好ましくは150~300gである。原料培地1kg中、炭素源の含有量は3~25gとすることができ、好ましくは4~20gであり、より好ましくは5~15gである。原料培地1kg中、窒素源の含有量は3~25gとすることができ、好ましくは4~20gであり、より好ましくは5~15gである。
乳酸菌の添加は、前培養により得た前培養物を原料へ添加することにより行うことができる。前培養物は、例えば乳酸菌スターターを適切な培地に添加し、適切な条件で培養し、得られた培養物から適切な方法で培養液を除いて菌体を得て、菌体に除いた培養液と等量の蒸留水を添加することにより得ることができる。原料培地に添加する乳酸菌の量は、適宜とすることができるが、例えば、原料培地1重量部に対し、1/20~1/5重量部の前培養物を添加することができる。原料培地1重量部に対し、1/17~1/6重量部の前培養物を添加することが好ましく、1/15~1/7重量部の前培養物を添加することがより好ましい。
発酵条件は、使用菌株にもよるが、例えば25~42℃、好ましくは28~40℃で、例えば12~48時間、好ましくは18~36時間行うことができる。発酵は、乳酸菌が嫌気性であることを考慮して、静置または弱い攪拌を行いながら、実施することができる。発酵はまた、pHが3.0~4.5、好ましくは3.3~4.0の範囲となるまで行うことができる。
発酵工程により得られた乳酸菌培養物は、通常、EPSを含む液状の発酵物であり、液種として、続く生地調製工程において、穀類粉と混合される。穀類粉と液種との混合比は、麺または麺皮の生地として十分な硬さの生地を得ることができる限り適宜とすることができるが、例えば、穀類粉100重量部に対する液種の使用量は、混合適量であればよい。混合適量とは、混合される穀類粉全体にいきわたる量であって、均一に混合しやすく、かつ分離しにくい量をいう。具体的には、20~80重量部であり、30~75重量部であることが好ましく、40~70重量部であることがより好ましい。穀類粉には液種以外に、麺または麺帯の生地の製造のための成分を添加してもよく、このような添加物の例としては、食塩、穀類粉以外の原料(例えば、卵、油脂等)、食品添加物等が挙げられる。混合のための条件、およびそのための機器・設備は、従来の者を使用することができる。
(パンの製造方法)
本発明は、特定のEPS生産性の乳酸菌を用いるパンの製造方法を提供するが、EPS生産性の乳酸菌の特定を活かすことができる限りパン類の製造方法には特に限定はなく、ストレート法、中種法、イースト、液種法のいずれであってもよい。
本発明の製造方法の特に好ましい態様においては、パンの製造方法は、上述の乳酸菌発酵工程のほか、下記の中種調製工程を含む:
得られた発酵物と穀類粉と酵母を混合し、中種生地を調製する工程。
乳酸発酵工程において、原料組成物は、穀類粉、および水を含むほか、食品として許容され、かつ乳酸菌の発酵のために有用な成分、例えば炭素源や窒素源を含んでいてもよい。炭素源としては、グルコース、ショ糖、サトウキビ廃糖蜜、ビート廃糖蜜、およびサトウキビ抽出液からなる群より選択されるいずれかを用いることができる。さらに、リン酸成分、カリウム成分、マグネシウム成分を添加してもよく、ビオチン、パントテン酸、チアミン、イノシトール、ピリドキシン等のビタミン類、亜鉛、銅、鉄、マンガン等のミネラル類を添加してもよい。
原料の組成は、適宜とすることができるが、例えば、穀類粉100gに対し、水の配合量は混合適量であればよく、具体的には50~80gであり、好ましくは55~75gであり、より好ましくは60~70gである。水量が少ない場合は、混合物が固形状の塊となり、均一混合するのにかなりの労力が必要となる一方で、水量が多い場合は混合物が液状となり、均一混合しやすいが、静置すると、粉が沈殿して水相と沈殿とに分離してしまい、いずれの場合も取り扱いが容易ではない。他方、混合適量の水であれば、発酵には実質的な影響がなく、同じように発酵が進行する。穀類粉100gに対し、炭素源の配合量は3~25gとすることができ、好ましくは4~20gであり、より好ましくは5~15gである。
乳酸菌の添加は、前培養により得た前培養物を原料へ添加することにより行うことができる。前培養物は、例えば乳酸菌スターターを適切な培地に添加し、適切な条件で培養することにより得ることができる。原料培地に添加する乳酸菌の配合量は、適宜とすることができるが、穀類粉100gに対し、1.0~10gであり、好ましくは1.5~7.5gであり、より好ましくは2.0~5.0gである。
発酵条件は、使用菌株にもよるが、例えば25~42℃、好ましくは28~40℃で、例えば12~48時間、好ましくは18~36時間行うことができる。
発酵工程により得られた乳酸菌培養物は、通常、EPSを含む発酵物であり、元種として、さらに穀類粉と混合し、発酵種を得てもよい。発酵種を得るための穀類粉と元種との混合比は、適宜とすることができるが、例えば、穀類粉100重量部に対する元種の使用量は50~300重量部であり、100~250重量部であることが好ましく、150~200重量部であることがより好ましい。
ここでの発酵条件もまた、使用菌株にもよるが、例えば25~42℃、好ましくは28~40℃で、例えば12~48時間、好ましくは18~36時間行うことができる。
得られた元種または、元種をさらに発酵して得た発酵種は、さらに穀類粉および酵母と混合して、中種を調製することができる。酵母としては、汎用酵母、冷凍耐性酵母、ドライイースト、インスタントイースト、野生酵母、天然酵母などのいずれもが使用できる。酵母の配合量は特に制限されず、パンの種類や製パン法などに応じて必要量を配合すればよいが、例えば穀類粉100gに対して、2~8gの酵母を配合するようにするとよい。
パンの製造方法においては、生地の調製時等に、例えば、食塩、砂糖やその他の糖類、ショートニング、バター、マーガリンなどの油脂類、モルト粉末やモルトシロップ、イーストフード、バイタルグルテン、脱脂粉乳、全脂粉乳、チーズ粉末、ヨーグルト粉末、ホエー粉末などの乳製品、卵や卵製品、ビタミン類、ミネラル類等の他の添加剤を必要に応じて用いてもよい。
本発明のパンの製造方法は、上記の工程以外に、ミキシング(捏ね)、分割、成型、ホイロ(最終発酵)、熱調理工程を含むことができる。
次に、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕KLC 4192BおよびKLC 4314aの単離と同定
(単離)
秋田県山本郡八峰町八森の世界自然遺産「白神山地」緩衝地域より、所管官庁の許可を得て採取したブナの枯葉または腐葉土から、下記の手順で乳酸菌を単離した。
生理食塩水中に試料を縣濁し、縣濁液10 mlを用いて下記の組成からなるMRS培地に、アジ化ナトリウム10 ppmクロラムフェニコール10 ppm炭酸カルシウム0.8 %、寒天1.5 %を加えたMR寒天培地20 mLで混釈培養を行った。30 ℃、3~5 日間培養し、複数の乳酸菌を単離した。
Figure 0007146187000003
単離した乳酸菌群から、白~透明の、曳糸性の高いEPS産生能を有するKLC 4192BおよびKLC 4314aを選択した。
(同定)
これらの株について、常法により16S rRNA遺伝子のヌクレオチド配列を得た(配列番号:1および2)。また得られた配列情報に基づき、BLAST等のデータベースを使用し、同一性解析(Mori, K. et al.:Int. J. Syst. Bacteriol., 47巻、54-57, 1997) を行った。また、API 50 CHプレートおよびAP 50 CHL培地(日本ビオメリュー社)を用いた糖質資化性試験を、製品の添付文書に記載の方法にしたがって行った。
その結果、KLC 4192B株の分類学上の位置を、以下の理由より、Lactococcus lactis subsp. lactis class Iであると決定した。
(i) 16S rRNA遺伝子塩基配列が、 Lactococcus lactis subsp. lactis Iと100.0%の同一性を示した。他に予想される菌種・菌属はLactococcus lactis subsp. cremorisと99.935 %の同一性を示した。
(ii) API 50CH/CHL(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて、50種類の炭水化物資化能を調べ、菌種を検索したところ、添付文書に記載の基準株Lactococcus lactis subsp. lactis I の資化性と96.4%一致した。他に予想される菌種・菌属は、Lactococcus lactis subsp. lactis IIが3.3%、Lactobacillus brevis1が0.1%であった。
(iii) subsp.lactisは40℃で生育できるが、subsp. cremorisは生育できない。本菌株は40℃で生育した。
KLC 4192B株の科学的性質を以下にまとめた。
(1)菌体の形状:主に二連球のラグビーボール型の球菌。
(2)コロニーの形状:MRS平板培地上に、直径2~4mmのツヤのある白色円形のコロニーを形成する。
(3)EPSを産生する。白色で弱い曳糸性を示すEPSである。
(4)グラム染色性:陽性
(5)カタラーゼ活性:陰性
(6)胞子形成能:陰性
(7)運動性:陰性
(8)ガス発生:陰性
(9)培養温度40℃で生育可能(Lactococcus lactis subsp. cremorisは生育できない)
(10)Lactose資化性(Lactococcus lactis subsp. cremorisは + )
(11)GABA生産能:陰性
KLC 4192B株の糖資化性を、下表に示した。
Figure 0007146187000004
KLC 4314a株の分類学上の位置を、以下の理由より、Lactococcus lactis subsp. lactis class Iであると決定した。
(i) 16S rRNA遺伝子塩基配列が、 Lactococcus lactis subsp. lactis Iと100.0%の同一性を示した。他に予想される菌種・菌属はLactococcus lactis subsp. cremorisと99.739 %の同一性を示した。
(ii) API 50CH/CHL(日本ビオメリュー株式会社製)を用いて、50種類の炭水化物資化能を調べ、菌種を検索したところ、添付文書に記載の基準株Lactococcus lactis subsp. lactis I の資化性と96.4%一致した。他に予想される菌種・菌属は、Lactococcus lactis subsp. lactis IIが3.3%、Lactobacillus brevis1が0.1%であった。
(iii) subsp.lactisは40℃で生育できるが、subsp. cremorisは生育できない。本菌株は40℃で生育した。
KLC 4314a株の科学的性質を以下にまとめた。
(1)菌体の形状:主に二連球のラグビーボール型の球菌。
(2)コロニーの形状:MRS平板培地上に、直径2~4mmのツヤのある白色円形のコロニーを形成する。
(3)EPSを産生する。白色で弱い曳糸性を示すEPSである。
(4)グラム染色性:陽性
(5)カタラーゼ活性:陰性
(6)胞子形成能:陰性
(7)運動性:陰性
(8)ガス発生:陰性
(9)培養温度40℃で生育可能(Lactococcus lactis subsp. cremorisは生育できない)
(10)Lactose資化性(Lactococcus lactis subsp. cremorisは + )
(11)GABA生産能:陰性
KLC 4314a株の糖資化性を、下表に示した。
Figure 0007146187000005
また、KLB 4192B株の食塩耐性とアルコール耐性を次の方法で確認した。
M17培地(0.5%グルコース含有)に食塩またはアルコールを添加し、食塩濃度0~8%またはアルコール濃度0~15%の培地を作製した。作製した食塩含有培地、またはアルコール含有培地に、M17培地を用いた4192B株の前培養液を1/200量接種し、72時間、30℃で、静置培養を行った。培養後の培地の600nmにおける濁度(OD値)をV-550型紫外可視分光光度計(日本分光株式会社(JASCO)製)で測定した。結果を下表に示した。なお、培養前の値は、0.005であった。
Figure 0007146187000006
4192B株は6%のNaCl存在下、または5%のアルコール存在下で生育できることが判明した。
また、KLB 4314a株の食塩耐性とアルコール耐性を次の方法で確認した。
MRS培地に食塩またはアルコールを添加し、食塩濃度0~8%またはアルコール濃度0~15%の培地を作製した。作製した食塩含有培地、またはアルコール含有培地に、MRS培地を用いた4314a株の前培養液を1/200量接種し、120時間、30℃で、静置培養を行った。培養後の培地の600nmにおける濁度(OD値)をV-550型紫外可視分光光度計(日本分光株式会社(JASCO)製)で測定した。結果を下表に示した。なお、培養前の値は、0.005であった。
Figure 0007146187000007
4314a株は5%のNaCl存在下、または5%のアルコール存在下で生育できることが判明した。
〔実施例2-1〕KLB 4192B株の産生するEPSの解析
下記の方法で、KLB 4192B株の産生するEPSを解析した。
1)KLB 4192B株をMRS培地(10%グルコース含有)で30℃、72h培養し、培養液45mlを4℃、8000rpmで10分間遠心分離した。上清を、「培養上清(1)」とした。
2)ペレットを滅菌水5mlで2回洗浄した。洗浄液は回収し、「洗浄液(2)」とした。
3)洗浄後のペレットを滅菌水4mlに懸濁し、1mlずつ分注した。
4)82℃、30分間の処理を行った後、15000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を「熱水抽出画分(3)」とした。
5)各ペレットを滅菌水1mlで1回洗浄した。
6)洗浄後のペレットを5%酢酸溶液500μlに懸濁した。
7)82℃、30分間の処理を行った後、15000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を「熱酢酸抽出画分(4)」とした。
8)ペレットを滅菌水1mlで1回洗浄した。
9)洗浄後のペレットを5%水酸化ナトリウム溶液500μlに懸濁した。
10)82℃、30分間の処理を行った後、15000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を「熱NaOH抽出画分(5)」とした。
(1)~(5)の各500μlに対して無水エタノール500μlを混和した。(1)および(5)には析出物が見られた。15000rpm、4℃で10分間遠心分離し、ペレットを回収した。ペレットについて、ダイオネクス(Dionex、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)による全糖分析を行った。培養上清(1)に含まれる糖は、グルコースであり、培地由来であると考えられた。熱アルカリ抽出画分(5)についての分析結果を、図1および下表に示した。
Figure 0007146187000008
KCL 4192B株由来のEPSを構成する糖は、ガラクトース:グルコース=1:2であった。表4の相対面積の割合より、KLB 4192B株が産生するEPSの主成分は、グルコースで構成されるホモ多糖、またはグルコースおよびガラクトースで構成されるヘテロ多糖であると推定された。
〔実施例2-2〕KLB 4314a株の産生するEPSの解析
KLB 4192B株の産生するEPSと同様に解析した。熱アルカリ抽出画分(5)についての分析結果を、図2および下表に示した。
Figure 0007146187000009
KCL 4314a株由来のEPSを構成する糖は、ガラクトース:グルコース=9:2であった。
〔実施例3〕4314a株を用いたうどんの製造および評価
(使用機器等)
・市販の乳酸菌(製品名:HOWARU(登録商標) Rhamnosus、デュポンダニスコ社製。
Lactobacillus rhamnosus HN001を含む。)
・jar培養装置10L(微生物培養装置 BMS-P,エイブル社製)
・ディスポボトル(商品名:アイボーイ、アズワン社製)
(液種の製造)
・乳酸菌を200ml MRS培地に接種し、36時間、30℃で静置培養する。
・日立大型遠心機10000rpm,15min遠心分離し、上清を捨て、沈殿を得る。
・上清と等量の蒸留水を添加し、混和する。
・下表の2種類の培養法に1/10量添加する。
Figure 0007146187000010
(1)~(3)は、jar(30C,50rpm,pH非制御)、(4)~(6)ディスポボトル(30℃、shaker 200rpm)にて21時間培養した。
また、培養終了時(21時間培養時)の生地における菌数の測定は、次のように行った:
乳酸菌数測定用にMRS寒天培地を用いて、30℃、21時間の好気または嫌気培養を行い、培地で生育したコロニー数に希釈倍数を乗じて生地1gあたりの菌数とした(cfu/g)。
結果を下表に示した。
Figure 0007146187000011
4314a株をjar培養装置により培養したものでは、(3)で培養開始直後からpHが低下した。植菌した乳酸菌による乳酸生成が推測された。
(1)、(4)の乳酸菌無添加の場合、好気培地、嫌気培地条件下ともに、開始時の菌数は少なく、培養終了時に菌数が増加していた。また、(2)、(5)の市販の乳酸菌を使用した時は、好気培地条件下においては、培養後、開始時と比べて菌数は増加した。しかし、増殖能が若干おさえられた。嫌気条件下では培養後菌数が変わらなかった。
(3)、(6)の4314a株を添加した場合では、開始時から菌数が多く、培養後でも高い菌体数を維持していた。
(うどんの製造)
各液種入り小麦粉に、水と塩を予め溶解させたものを加え、製麺用の横型真空ミキサーでミキシングして、生地を得、圧延、複合し、熟成させた。熟成後、麺生地を22℃で30分間熟成し、次いで9番手(#9)の切刃または3.2mm幅で設けられた複数の包丁カッターで麺を切り出した。得られた麺をその後、熱水中で、約13分ボイルし、直ちに水洗いして、冷水中で冷却して一食分(200g)の茹でうどんを得た。
うどんの配合および製造条件を下表に示した。
Figure 0007146187000012
(ゆで歩留まりの評価)
また、それぞれの液種を用いたうどんについて、生麺重量に対するゆで麺重量の割合を、ゆでた際の歩留まりとし、下表に示した。
Figure 0007146187000013
それぞれの液種を用いた場合でも、添加無しと同様の歩留まりを維持することができた。
(官能評価)
それぞれの液種を用いて製造したうどんの硬さ、粘り、弾力、つるみを訓練された6名で官能評価した。(1)を2点とし、1~3点の3段階評価を行った。点数が高い程、評価が高いことを表す。6名の評価の平均値を下表および図3に示した。
(硬さ)
3点:(1)より、硬い
2点:(1)と同等の硬さがある
1点:(1)より、硬さがない
(ねばり)
3点:(1)より、粘り強い
2点:(1)と同等の粘りがある
1点:(1)より、粘りがない
(弾力)
3点:(1)より、弾力がある
2点:(1)と同等の弾力がある
1点:(1)より、弾力がない
(つるみ)
3点:(1)より、つるみがある
2点:(1)と同等のつるみである
1点:(1)より、つるみがない
Figure 0007146187000014
市販の乳酸菌を使用した(2)、(5)は、(1)、(4)のコントロールと比較して、硬さや弾力が同等になるものの、(2)ではつるみが大きく低下した。一方、4314a株を用いた(3)、(6)は、コントロールと比較して、硬さ、ねばり、弾力が増加し、かつつるみもコントロールとほぼ同等かそれ以上であった。
(破断応力測定)
それぞれの液種を用いて製造したうどんについて、破断応力を測定するため、テクスチャーアナライザー(TA-XT plus、マイクロステイプル社)を用いて引っ張り試験を行った。楔形プランジャーNo.49を装着し、垂直に配置した1本の麺を1mm/秒の測定速度で歪率100%まで破断した際の最大荷重を測定した(n=3)。結果を下表および図4に示した。
Figure 0007146187000015
乳酸菌を添加した(2)、(3)で、コントロール(1)よりも、破断応力が増加した。また、コントロール(4)より、市販乳酸菌を使用した(5)の破断応力が低く、4314a株(6)が増加した点は、前の実験において、弾力が増加したことを裏付けている。
〔実施例4〕パンの製造および評価
(クロワッサン)
KCL 4314a株、およびKCL 4192B株をGY培地(グルコース1%、酵母エキス1%)を用い、30℃で静置培養したものを乳酸菌培養液として、下表の小麦培地に植菌し、30℃、24時間培養し、小麦種(4-1)を得た。またこれを元種として新たな小麦種に植菌し、30℃、20時間培養し、小麦種(4-2)を得た。
Figure 0007146187000016
発酵種(4-2)を用い、中種法により、クロワッサンを製造した。詳細には、小麦粉、酵母、水を用いて中種を作成し、常法にて発酵させ、更に、10%の発酵種から本捏ねに展開した。すなわち、本捏ミキシング、リタード(冷却)、バターの折込、カット成型、ホイロ、焼成といった常法によりクロワッサンを得た。
クロワッサンの口どけ、歯切れ、バター風味を訓練された6名で評価した。評価は3点満点で点数が高い程評価が高い。6名の評価の平均値を下表に示した。
(口どけ)
3点:乳酸菌無添加の場合に比べ、口どけが良い
2点:乳酸菌無添加の場合と同等の口どけ
1点:乳酸菌無添加の場合に比べ、口どけがない
(歯切れ)
3点:乳酸菌無添加の場合に比べ、歯切れが良い
2点:乳酸菌無添加の場合と同等の歯切れ
1点:乳酸菌無添加の場合に比べ、歯切れがない
(バター風味)
3点:乳酸菌無添加の場合に比べ、風味が良い
2点:乳酸菌無添加の場合と同等の風味
1点:乳酸菌無添加の場合に比べ、風味がない
Figure 0007146187000017
秋田乳酸菌4314aおよび4192Bを用いた液種を使用することで、クロワッサンの口どけと歯切れが向上した。
(白パン)
各種乳酸菌(KCL 4314a、市販EPS産生菌LB340(L.rhamnosus))をそれぞれGY培地に接種し、乳酸菌培養液を得た。
下表の配合となるよう材料を容器に入れ、攪拌・混合した。その後、30℃、48時間発酵させ小麦種を得た。
Figure 0007146187000018
下記の配合となるよう材料を加え、20%小麦種から本捏ねに展開した。すなわち、本捏ミキシング、分割、成形、ホイロ、焼成といった常法により、白パンを得た。
Figure 0007146187000019
それぞれの液種を用いた白パンの口どけ、もちもち感を訓練された6名で評価した。評価は3点満点で点数が高い程評価が高い。6名の評価の平均値を下表に示した。
(口どけ)
3点:乳酸菌無添加の場合に比べ、口どけが良い
2点:乳酸菌無添加の場合と同等の口どけ
1点:乳酸菌無添加の場合に比べ、口どけがない
(もちもち感)
3点:乳酸菌無添加の場合に比べ、もちもち感が優れる
2点:乳酸菌無添加の場合と同等のもちもち感
1点:乳酸菌無添加の場合に比べ、もちもち感がない
Figure 0007146187000020
4314a株を使用することで、白パンの口どけともちもち感が向上した。
(食塩無添加食パン)
白神こだま酵母ドライG(パイオニア企画)を使用した食塩無添加食パンを、家庭用のパン焼き機(ホームベーカリー SD-BMT1000(パナソニック株式会社製)を用い、パン焼き機に付属の説明書にしたがって調製した。配合を下表に示した。
Figure 0007146187000021
中種を用いない場合、焼成後のパンの高さは17.7cmであり、KCL 4192B株を使用した中種を用いた場合、18.2cmであった(図5)。したがって、乳酸菌を使用することにより、焼成後の保形性のよいパンが得られることを見出した。また、乳酸菌を使用することで、ふっくらとした食感の良いパンを製造することができた。
(フランスパン)
秋田県産小麦 ネバリゴシ(中力粉)を用いて常法によりフランスパンを製造し、評価した。ネバリゴシは、グルテン含有量が10%であるために、通常、製パン性やできあがったパンの風味が劣る。乳酸菌を添加しない場合をコントロールとし、乳酸菌(KCL 4192B株)を添加したフランスパンを製造し、評価した。
ネバリゴシを用いた場合、コントロールのパンは風味がよくなかったが、乳酸菌を用いることにより、口どけが良くなり、ふんわり軟らかいパンが得られた(図6Aおよび図6B)。

Claims (10)

  1. ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4192B株(寄託番号NITE P-02581);または
    ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号1のヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
  2. ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティス KLC 4314a株(寄託番号NITE P-02582);または
    ラクトコッカス・ラクティス サブスピーシーズ ラクティスに属し、配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも99.93%以上の同一性を有するヌクレオチド配列からなる16S rRNA遺伝子を有する菌株。
  3. 菌体外多糖生産性である乳酸菌を含む、穀類粉を含有する食品の改良剤であって、菌体外多糖生産性乳酸菌が、請求項1または2の菌株である、剤
  4. 麺または麺皮の食感の改善のためのものである、請求項3に記載の剤。
  5. パンの食感または風味の改善のためのものである、請求項3に記載の剤。
  6. 菌体外多糖生産性乳酸菌、および穀類粉を含む、食品組成物であって、菌体外多糖生産性乳酸菌が、請求項1または2の菌株である、食品組成物
  7. 麺、麺皮またはパンである、請求項に記載の食品組成物。
  8. 下記の工程を含む、穀類粉を含む食品組成物の製造方法:
    穀類粉および水を含む原料に、請求項1または2に記載の菌株を添加して発酵させ、発酵物を得る工程、
    得られた発酵物と穀類粉を混合し、生地を得る工程。
  9. 麺、または麺皮の製造方法であり、下記の工程を含む、請求項に記載の製造方法:
    得られた発酵物と穀類粉を混合し、麺または麺皮の生地を得る工程。
  10. パンの製造方法であり、下記の工程を含む、請求項に記載の製造方法:
    得られた発酵物と穀類粉と酵母を混合し、中種生地を調製する工程。
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今堀和友ほか監修,生化学辞典(第3版),1998年11月,p.360

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