以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態における行動計画装置および制御演算装置について説明する。なお、以下では自車両を単に「車両」と称し、自車両周辺の歩行者、自転車、および他車両などを総称して「障害物」と称する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における行動計画装置102および制御演算装置103を搭載した車両100の構成の一例を示す図である。図1では、行動計画装置102および制御演算装置103を合わせて自動運転システム101としている。
ドライバー(すなわち運転者)が車両100を操作するために設置されているステアリングホイール1は、ステアリング軸2に結合されている。ステアリング軸2は、ラックアンドピニオン機構4のピニオン軸13が連接されている。ラックアンドピニオン機構4のラック軸14は、ピニオン軸13の回転に応じて往復移動自在であり、その左右両端にはタイロッド5を介してフロントナックル6が接続されている。フロントナックル6は、総舵輪としての前輪15を回転自在に支持すると共に、車体フレームに転舵自在に支持されている。
ドライバーがステアリングホイール1を操作して発生したトルクはステアリング軸2を回転させ、ラックアンドピニオン機構4が、ステアリング軸2の回転に応じてラック軸14を左右方向へ移動させる。ラック軸14の移動により、フロントナックル6が図示しないキングピン軸を中心に回動し、それにより前輪15が左右方向へ転蛇する。よって、ドライバーは、車両100が前進・後進する際にステアリングホイール1を操作することで、車両100の横移動量を変化させることができる。
車両100には、車両100の走行状態を認識するための内界センサ20として、車速センサ21、車両の慣性を計測するIMU(Inertial Measurement Unit)センサ22、操舵角センサ23、および操舵トルクセンサ24などが設置されている。
車速センサ21は、車両100の車輪に取り付けられ、車輪の回転速度を検出するパルスセンサを備え、パルスセンサの出力を車速値に変換して出力する。
IMUセンサ22は、車両100の屋根もしくは室内に設置され、車両座標系における車両100の加速度および角速度を検出する。IMUセンサ22には、例えばMEMS(Micro Electric Mechanical System)や、光ファイバージャイロ(Fiber Optic Gyroscope)などが組み込まれたものもある。ここで、車両座標系とは、車両100のシャシーまたはボディに固定された座標系である。通常、車両座標系では、車両100の重心を原点とし、車両100の長手方向の前方をx軸、車両100の左手方向をy軸、およびx軸を起点としてy軸方向に回転する右ねじが進む方向をz軸と定義される。
操舵角センサ23は、ステアリング軸2の回転角度を計測するセンサであり、例えばロータリーエンコーダなどにより構成される。
操舵トルクセンサ24は、ステアリング軸2の回転トルクを計測するセンサであり、例えばひずみゲージなどにより構成される。
また、車両100には、車両100の周辺の状況を認識するための外界センサとして、カメラ25、レーダ26、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ27、およびLiDAR(Light Detection and Ranging)29などが設置されている。
カメラ25は、車両100の前方、側方、および後方を撮影できる位置に設置されており、撮影した画像から、例えば車両100前方の車線、区画線、および障害物の情報など、車両100前方の環境を示す情報を取得する。
レーダ26は、車両100の前方へレーダ照射を行い、その反射波を検出することで、車両100前方に存在する障害物の相対距離および相対速度を測定し、その測定結果を出力する。
GNSSセンサ27には、図示しないGNSSアンテナが接続されている。GNSSセンサ27は、衛星軌道上を周回する測位衛星からの測位信号をGNSSアンテナで受信し、受信した測位信号を解析して、GNSSアンテナの位相中心の位置の情報(緯度、経度、高度、および方位など)を出力する。測位衛星としては、米国のGPS(Global Positioning System)、ロシアのGLONASS(Global Navigation Satellite System)、欧州のGalileo、日本のQZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、中国のBeidou、およびインドのNavIC(Navigation Indian Constellation)などがある。GNSSセンサ27はそれらのいずれを用いるものでもよい。
LiDAR29は、車両100の屋根などに設置される。LiDAR29は、レーザを車両100の周辺に照射し、周辺の物体に反射して戻ってくるまでの時間差を検出することにより、車両座標系における物体の位置を検出する。近年では、車両100の四隅に設置されることで、より広範囲、高密度に物体を検出することも可能である。
ナビゲーション装置28は、内部に地図情報S15を保持しており、地図情報S15と、GNSSセンサ27などで取得した車両100の位置情報と、ドライバーが設定した目的地情報とに基づいて、目的地に到達可能な走行ルートを演算し、ナビゲーション情報を出力する機能を有している。ナビゲーション装置28は更に、車両100の周辺が交差点エリアであることを認識して出力する機能、および目的地に到達するために必要な車線変更の指示やタイミングを演算して出力する機能を有する。
情報取得部30は、カメラ25、レーダ26、およびLiDAR29などの外界センサに接続され、これらによって取得された情報を融合処理することにより、車両100周辺の障害物情報を含む情報を検出し、自動運転システム101に出力する。情報取得部30は、ナビゲーション装置28にも接続され、GNSSセンサ27をもとに車両100の位置を検出する。情報取得部30については、後に図2を用いて詳細に説明する。
自動運転システム101は、行動計画装置102と、制御演算装置103とを備える。行動計画装置102は、情報取得部30からの情報と内界センサ20からの情報とに基づいて、車両100の行動を決定し、行動決定結果S9を制御演算装置103に出力する。制御演算装置103は、行動計画装置102からの行動決定結果S9に従って、車両100を制御するための目標値を演算する。ここで目標値とは、例えば目標操舵角と目標操舵トルクとを総称した目標操舵量S11、および目標加減速量S12などである。
また、車両100には、車両100の横方向の運動を実現するための電動モータ3、車両100の前後方向の運動を制御するための車両駆動装置7、およびブレーキ11などのアクチュエータが設置されている。
電動モータ3は、一般的にはモータとギアとで構成され、ステアリング軸2にトルクを与えることで、ステアリング軸2を自在に回転させることができる。つまり、電動モータは、ドライバーのステアリングホイール1の操作と独立して、前輪15を自在に転舵させることができる。
操舵制御装置12は、操舵角センサ23、および操舵トルクセンサ24などの出力と、自動運転システム101からの目標操舵量S11とに基づいて、車両100のステアリングを目標操舵量S11に追従させるために電動モータ3へ供給すべき電流値を演算し、算出した電流値に相当する電流を電動モータ3に出力する。
車両駆動装置7は、車両100を前後方向に駆動するためのアクチュエータである。車両駆動装置7は、例えばエンジンやモータなどの駆動源で得られた駆動力を、図示しないトランシミッションとシャフト8とを介して、前輪15および後輪16を回転させる。これにより、車両駆動装置7は、車両100の駆動力を自在に制御することが可能である。
一方、ブレーキ制御装置10は、車両100を制動するためのアクチュエータであり、車両100の前輪15および後輪16それぞれに設置されたブレーキ11のブレーキ量を制御する。一般的なブレーキ11は、前輪15および後輪16と共に回転するディスクロータに、油圧を用いてパッドを押し付けることによって、制動力を発生させる。
加減速制御装置9は、自動運転システム101からの目標加減速量S12に、車両100の加速度を追従させるために必要な車両100の駆動力および制動力を演算し、それらの演算結果を車両駆動装置7およびブレーキ制御装置10へ出力する。
内界センサ20、外界センサ、および上記で説明した複数の装置は、車両100内のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)などを用いてネットワークを構成しているとする。装置は、ネットワークを介してそれぞれの情報を取得することが可能である。また、内界センサ20および外界センサは、ネットワークを介して相互にデータの送受信が可能である。
図2は、実施の形態1における行動計画装置102および制御演算装置103の一例を示すブロック図である。図2は、情報取得部30と、内界センサ20と、行動計画装置102と、制御演算装置103と、操舵制御装置12と、加減速制御装置9とにより構成されるブロック図である。行動計画装置102は、情報取得部30からの情報と内界センサ20からの情報とに基づいて、車両100の行動を決定し、行動決定結果S9として出力する。制御演算装置103は、情報取得部30からの情報と、内界センサからの情報と、行動計画装置102からの行動決定結果S9とに基づいて、車両100を制御するための目標値を演算する。ここで目標値とは、目標操舵量S11および目標加減速量S12である。
情報取得部30は、経路検出部31と、障害物検出部32と、道路情報検出部33と、車両位置検出部34とを備える。
経路検出部31は、車両100の走行基準である参照経路S1と、車両100が走行できる領域である走行可能領域S2とを出力する。参照経路S1は、カメラから得られる画像データなどを用いて区画線を検出することで認識される、レーンの中心線である。参照経路S1は、レーンの中心線以外にも、外部から与えられた経路としても用いられる。例えば、駐車場において、自動駐車用の経路が外部から与えられる場合には、その経路が参照経路S1として用いられる。参照経路S1は、多項式やスプライン曲線などで表現される。
走行可能領域S2は、カメラ25、レーダ26、およびLiDAR29などから得られた情報を融合処理することにより算出される。走行可能領域S2は、例えば左右の区画線がある道路において、障害物が無い場合は左右区画線で囲まれる道路の領域として出力される。障害物が有る場合は、左右区画線で囲まれる領域から、障害物の領域だけ除外した領域として出力される。
障害物検出部32は、平面座標系障害物情報S3を出力する。平面座標系障害物情報S3は、カメラ25から得られる画像データやレーダ26、LiDAR29の情報を融合することにより得られる。平面座標系障害物情報S3は、障害物の位置と速度、および障害物の種別である。障害物の種別は、車両、歩行者、自転車、およびバイクなどで分類された種別である。また、平面座標系障害物情報S3のうち、障害物の位置および速度は、後に説明する平面座標系で表されたものである。但し、平面座標系に限定されない。
道路情報検出部33は、道路情報S4を出力する。道路情報S4は、カメラ25から得られる画像データ、レーダ26、およびLiDAR29の情報を融合することにより検出される、交差点などでの信号機C1とその点灯状態である。道路情報S4は、これに限らず、信号機C1手前の停止線C3などである。
車両位置検出部34は、GNSSセンサ27に基づいて、車両100の位置を検出し、車両位置情報S5として出力する。GNSSセンサ27からの車両100の位置は、一般的には地理座標系で表される。地理座標系は、通常は地球を楕円体とみなし、その表面上における水平位置を表す経緯度と垂直位置を表す高度との組み合わせで表現される。地理座標系上の任意の点を基準点として、NED(North-East-Down)座標系への変換や、ガウス・クリューゲル投影による平面座標系への変換が可能である。NED座標系は、地理座標系で表現される任意の点を原点として、北方向、東方向、鉛直上向き方向に座標系を取った座標系である。平面座標系は、原点から互いに直交する2軸を有するXY座標系である。平面座標系は、道路境界を識別するための区画線、車両100、および障害物の位置などを表現するために使用される。平面座標系は、例えば車両100の重心を原点として、車両100の長手方向を第1軸、左手方向を第2軸とする。この場合は、車両座標系と一致する。また、別の例では、地図上の任意の点を原点として、東方向を第1軸、北方向を第2軸とすることもできる。車両位置検出部34は、地理座標系で表される車両100の位置を平面座標系に変換し、車両位置情報S5として出力する機能を有する。
内界センサ20は、車速センサ21とIMUセンサ22とを備える。内界センサは車両100に設置され、車速センサとIMUセンサ22とに基づいて車両100の状態量を検出し、センサ情報S6として出力する。車速センサ21およびIMUセンサ22は、図1を用いて説明したため、ここでは説明を省略する。
行動計画装置102は、平面座標系移動予測部104と、シーン判定部105と、行動決定部106とを備える。
平面座標系移動予測部104は、障害物検出部32からの平面座標系障害物情報S3に基づいて、障害物の移動予測を行い、その結果を平面座標系障害物移動情報S7として出力する。すなわち、平面座標系移動予測部104は、車両100に設置された外界センサにより検出される周辺の障害物を平面座標系で表した平面座標系障害物情報S3に基づいて、障害物の移動予測を行い、平面座標系障害物移動情報S7として出力する。平面座標系移動予測部104は、障害物検出部32からの障害物の速度を用いて、その速度方向に対し等速直線運動を行うと仮定して、障害物の移動予測を行う。等速直線運動と仮定することで、平面座標系移動予測部104での予測計算を簡単にでき、計算量を少なくすることができる。なお、平面座標系移動予測部104は、行動計画装置102の動作周期と同じ周期で障害物の移動予測を行うが、この周期が十分に小さい場合は、各周期での障害物の位置のみで移動予測を行うことができる。この場合、障害物検出部32からの平面座標系障害物情報S3は、障害物の位置である。
シーン判定部105は、平面座標系移動予測部104からの平面座標系障害物移動情報S7と、道路情報検出部33からの道路情報S4と、内界センサ20からのセンサ情報S6とを用いて、障害物の状況と道路状況と車両100の走行状況とを判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力する。シーン判定部105については、後に図3および表1を用いて詳細に説明する。シーン判定部105は、平面座標系障害物移動情報S7を用いて、障害物の状況を判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力してもよい。また、シーン判定部105は、平面座標系障害物移動情報S7と道路情報S4とを用いて、障害物の状況と道路状況とを判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力してもよい。但し、道路情報S4やセンサ情報S6も用いることで、広範囲にわたって状況を判定できる。
シーン判定部105は、車両100の走行状況を判定するには、車両100の位置を検出する必要があり、内界センサ20によって検出できるが、代わりにGNSSセンサ27によって検出されてもよい。この場合、車両100の位置は、車両位置検出部34からの車両位置情報S5として出力される。なお、GNSSセンサ27は外界センサの1つである。また、道路状況も外界センサにより検出できる。よって、障害物の状況、道路状況、および車両100の走行状況は、いずれも外界センサによって検出できる。
行動決定部106は、シーン判定部105からのシーン情報S8に基づいて、車両100の行動を決定し、行動決定結果S9を出力する。行動決定部106については、後に表2、3、および図4を用いて詳細に説明する。
制御演算装置103は、動作計画部107と制御演算部108とを備える。
動作計画部107は、行動決定部106からの行動決定結果S9、経路検出部31からの参照経路S1と走行可能領域S2、車両位置検出部34からの車両位置情報S5、および内界センサ20からのセンサ情報S6を用いて、車両が走行すべき目標経路と目標車速とを生成して出力する。なお、ここでは目標経路と目標車速とを合わせて目標軌道S10と称する。
制御演算部108は、動作計画部107からの目標軌道S10、経路検出部31からの参照経路S1と走行可能領域S2、および障害物検出部32からの障害物情報を用いて、目標軌道S10に車両100が追従するよう、目標操舵角と目標加減速量S12とを演算して出力する。
制御演算装置103は、目標軌道S10を生成せず、行動決定部106からの行動決定結果S9から目標操舵量S11と目標加減速量S12とを直接演算する場合には、必ずしも動作計画部107を備えなくてもよい。制御演算装置103は、行動決定部106からの行動決定結果S9、経路検出部31からの参照経路S1と走行可能領域S2、および障害物検出部32からの障害物情報に基づいて、モデル予測制御などによって目標操舵量S11と目標加減速量S12とを演算してもよい。なお、制御演算装置103の動作については、後に図5を用いて詳細に説明する。
操舵制御装置12および加減速制御装置9は、図1を用いて説明したため、ここでは説明を省略する。
次に、シーン判定部105について、図3および表1を用いて説明する。図3は、実施の形態1における平面座標系でのシーンの一例を示す模式図である。また、表1は、実施の形態1におけるシーン判定部105からのシーン情報S8の一例を示す説明図である。シーン情報S8は、数値を含む変数として表現されてもよいし、シーンAおよびシーンBなどのようにシンボリックに表現されてもよい。以下では、シーン判定部105がシーン情報S8を数値を含む変数として表現する方法について説明する。
図3に示すように、車両100周辺の判定領域A1内に、先行障害物B1(先行車両)、交差障害物B2(交差車両)、停止障害物B3(停止車両)、信号機C1、横断歩道C2、および停止線C3が存在しているとする。ここで判定領域A1は、シーン判定部105が障害物の状況、道路状況、および車両100の走行状況を判定する範囲のことである。つまり、シーン判定部105は、判定領域A1内のこれらの状況を判定する。判定領域A1は、予め地図などの情報をもとに予め設定された複数の点(図3の場合、長方形の四隅の点)によって構成される。また、車両100が置かれた状況を数値的に表現するために、表1に示す変数を用意される。例えば、図3において判定領域A1内に交差障害物B2が存在するため、acrоbs_inlane=1である。これは、平面座標系障害物移動情報S7に基づいて、車両100に対する障害物の相対速度のベクトル方向が車両100に近づく方向か否かで判定できる。また、信号機C1がどの色の信号を示しているかは、道路情報S4、すなわちカメラ25で取得した画像を処理することで判定できる。なお、シーン判定部105は、判定領域A1内の障害物の状況、道路状況、および車両100の走行状況を判定するが、これに限定されず、判定領域A1外にある障害物であっても、将来判定領域A1内に入ると予測される障害物の状況を判定してもよい。また、状況を判定する項目は、表1に示す項目に限定されない。
次に、行動決定部106について、表2、3、および図4を用いて説明する。表2は、実施の形態1における行動決定部106からの行動決定結果S9の一例を示す説明図である。また、図4は、実施の形態1における行動決定部106での有限状態機械(以下、「FSM(Finite State Machine)」と称する)の一例を示す模式図である。また、表3は、実施の形態1における行動決定部106でのモード遷移の一例を示す説明図である。
表2は、行動決定部106が出力する行動決定結果S9の具体的な内容を示すものである。有効性は、行動決定部106で決定された結果が有効かどうかを示している。これは、行動決定部106が対応できないシーン(例えば、想定外の事故現場付近などの自動運転仕様外のシーン、および情報取得部30の検出精度や信頼度が低下するシーン)において、行動計画装置102を用いて車両100を制御するか否かを図示しない自動運転装置で判断するためのものである。有効性が有効の場合、行動計画装置102を用いて車両100を制御する。有効性が無効の場合、シーン判定部105からのシーン情報S8が適切でないことを意味するため、自動運転を停止するなどの処理を行う。目標行動は、車両100が現時点あるいは将来にわたり実行すべき行動である。目標行動は、例えば現在走行している経路をそのまま走行する、あるいは経路を変更するなどである。目標経路番号は、経路変更が必要な場合に、その目標となる経路に割り振られたIDおよび番号などを示す。IDおよび番号は、車両100が走行している区画を基準にローカルで割り当てられる。あるいは、地図情報S15から自動的に割り当てられる。参照経路情報は、参照経路S1に関する情報である。参照経路情報は、具体的には参照経路S1を表現するために点群を用いた場合にはその座標値、あるいは参照経路S1を多項式やスプライン曲線などで表現した場合にはそのパラメータなどを示す。上限速度は、車両の法定速度に基づく速度である。下限速度は、車両100の最低限必要な速度である。目標停車位置Tは、停止線C3などで車両100が停車すべき位置である。目標停車距離は、車両100の現在の位置から目標停車位置Tまでの距離である。表2に示すこれらの項目に対しては、例えば数値的に表現される。この場合、例えば有効性に対しては、有効の場合は1、無効の場合は0として割り当てる。行動決定部106は、図5に示す項目のうち、少なくとも1つを行動決定結果S9として出力する。
行動決定部106からの行動決定結果S9を用い、制御演算装置103は車両100の行動を決定する。例えば、表2に示す車両100の行動は、動作計画部107における制約条件の設定に使用される。車両100の行動として、経路追従が設定された場合には、動作計画部107では走行中の区画線内で走行を維持するよう目標軌道S10を生成する。また、目標行動として、経路変更が設定された場合には、区画線を跨ぐ必要があるため、動作計画部107ではこの区画線を制約条件から除外し、経路変更先の経路まで走行可能領域S2を広げて目標軌道S10を生成する。
行動決定部106からの行動決定結果S9は、表2に示すものに限定されない。行動決定結果S9の項目は、制御演算装置103に合わせて設定されるのが望ましい。例えば、制御演算装置103が上下限の加速度や、ステアリング角度などを要求する場合は、これらも行動決定結果S9の項目に含めてもよい。また、制御演算装置103が持つ機能、例えばレーンを維持する制御であるLKS(Lane Keeping System)機能、前方車との車間と相対速度とを適切に制御するACC(Adaptive Cruise Control)機能、および前方車に追従する機能であるTJA(Traffic Jam Assist)機能に関する情報を行動決定結果S9の項目に含めてもよい。
図4および表3は、行動決定部106が行動決定結果S9を出力するための手法に関する説明図である。具体的には、行動決定部106は、FSMを用いて行動を決定する。FSMでは、まず有限個のモードとそれらの遷移条件とを決定する。モードとそれらの遷移条件は、自動運転を行うシーンに基づいて設計されるのが望ましいが、ここでは一例として、図4に示すFSMを想定する。なお、FSMとして図4に示すものに限定されない。図4に示すように、モードとして経路追従(以下、「LF(Lane Following)」と称する)、減速・停車(以下、「ST(Stop)」と称する)、経路変更(以下、「LC(Lane Change)と称する)、および緊急停車(以下、「ES(Emergency Stop)と称する)の4モードが設定されるとする。LFは、同一経路上を走行するモードである。STは、停止線C3や交差障害物B2の手前で停止するなど、停車する際に選択されるモードである。LCは、隣接経路Nに経路変更するモードである。ESは、車両100周辺に障害物が存在する場合に、緊急停車するモードである。
図4および表3に示すように、シーン判定部105からのシーン情報S8を用いることで、モード間の遷移が可能なよう設計される。表3において、現在モードは、現在の車両100のモードを表しており、自動運転開始時などはLFを初期モード、すなわちLFから始まることを想定している。遷移先モードは、現在モードと遷移条件とに基づいて、次に遷移するモードである。遷移番号は、現在モードから遷移先モードへの遷移を番号で表されたものであり、ここでは(1)~(10)まで付与される。表3の(1)~(10)は、それぞれ図4の(1)~(10)と対応する。遷移条件は、各遷移における条件であり、表1と対応する。遷移式は、遷移条件を条件式で表したものである。遷移番号(1)のように、遷移式が複数の場合もある。代表出力は、表2に示す項目のうち、遷移時に車両100の挙動が変化するような項目である。
例として、遷移番号(1)について説明する。車両100がLFのモードで経路上を走行する際、前方に信号機C1と停止線C3とがあり、信号機C1が赤信号を示したとする。この場合、シーン判定部105は、tgtpоs_inlane=1(判定領域A1内に停止線C3が存在する)、およびsig_state=2(信号機C1が赤信号を示している)であることを行動決定部106へ出力する。行動決定部106は、遷移式「tgtpоs_inlane==1 && sig_state==2」を満足するとして、遷移番号(1)の遷移を実行する。すなわち、行動決定部106は、車両100のモードを現在モードであるLFからSTに遷移する。この際、行動決定部106は、目標停車位置Tを停止線C3手前に設定し、かつ目標停車距離を演算して、行動決定結果S9として出力する。このようにして出力された行動決定結果S9を受けて、制御演算装置103内の動作計画部107は、停止線C3手前で停車するための目標軌道S10を生成する。そして、制御演算部108は、車両100がこの目標軌道S10に追従するよう、目標操舵量S11および目標加減速量S12を演算する。これにより、車両100が停車する。
ここでは、遷移番号(1)についてのみ説明したが、その他の遷移番号についても同様の方法で遷移先が決定され、車両100の行動が決定される。なお、表3に示す遷移条件を複数同時に満たすケースが考えられる。一例として、現在のモードがLFで、acrоbs_inlane=1(判定領域A1内に交差障害物B2が存在する)、かつreq_lc=1(ナビゲーション装置から経路変更指示が来た)となる場合である。この場合、遷移先モードはSTとLCの2通り考えられ、どちらが選択されるか不明となる。そこで、このように遷移先モードの候補が複数ある場合は、予め定めた優先順位に従って遷移先モードが決定される。例えば、判定領域A1内に交差障害物B2が存在する場合や、判定領域A1内に対向障害物B4が存在する場合には、車両100と障害物との衝突を避けるために優先的に車両100に対し停車を促すような遷移先モードが選択される。
上記に示すように、行動決定部106は、車両100周辺の障害物だけでなく、信号機C1などの道路情報S4を考慮して車両100の行動を決定するため、車両100周辺の様々な状況を考慮して行動を決定することができ、自動運転の適用範囲を広げることができる。なお、行動決定部106がFSMを用いる方法について説明したが、自動運転の想定シーンや仕様に基づいて設計されるのが望ましい。よって、表2、3、および図4を用いて説明したFSMの設計に限定されない。また、車両100の行動を決定する方法として、FSMに限定されない。例えば、状態遷移図を用いる方法、ニューラルネットワークなどで事前に学習して使用する方法、および最適化手法などを用いる方法など、様々な方法を用いることができる。また、シーン判定部105が数値を出力する場合について説明したが、シンボリック表現で出力する場合も、同様にFSMなどを用いることができる。
次に、制御演算装置103の動作について、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態1における動作計画部からの目標軌道S10の一例を示す模式図である。図5は、停止障害物B3を回避する場合に、動作計画部107が出力する目標軌道S10の具体的な説明図である。行動決定部106は、停止障害物B3を左区画線L1および右区画線L2で囲まれる走行可能領域S2内で避けるという行動を決定したと仮定する。動作計画部107は、行動決定部106からの行動決定結果S9に基づいて、車両100の運動モデルを用いて車両100と障害物との動きをより正確に予測する。そして、動作計画部107は、走行可能領域S2内で安全な回避経路を目標軌道S10として生成し、制御演算部108に出力する。また、図5には示していないが、信号機C1が赤信号のために停車する場合、動作計画部107は、行動決定結果S9の1つである目標停車位置Tで正確に停車できるような目標軌道S10を生成し、制御演算部108に出力する。
以上で説明した実施の形態1によれば、障害物移動情報と道路情報S4とに基づいて、車両100が置かれた状況を判定する。このため、障害物だけでなく道路情報S4も考慮した、車両100の行動を適切に決定でき、自動運転の精度を向上できる。
実施の形態2.
図6は、実施の形態2における行動計画装置102および制御演算装置103の一例を示すブロック図である。図6は、情報取得部30と、内界センサ20と、行動計画装置102と、制御演算装置103と、操舵制御装置12と、加減速制御装置9とにより構成されるブロック図である。図6は、行動計画装置102が経路座標変換部109を更に備える点、および平面座標系移動予測部104の代わりに経路座標系移動予測部110を備える点で、図2とは異なる。経路座標変換部109、経路座標系移動予測部110、およびシーン判定部111以外は、図2に示すものと同じであるため、説明を省略する。
経路座標変換部109は、経路検出部31からの参照経路S1と走行可能領域S2、および障害物検出部32からの平面座標系障害物情報S3に基づいて、平面座標系障害物情報S3を経路座標系に変換し、経路座標系障害物情報S13として出力する。経路座標変換部109が平面座標系障害物情報S3を変換する際、走行可能領域S2も用いることで、行動決定部106は走行可能領域S2も考慮した車両100の行動を決定できる。但し、経路座標変換部109への入力として、走行可能領域S2は必ずしも必要ではない。少なくとも、経路座標変換部109は、車両に設置された外界センサにより検出される周辺の障害物を平面座標系で表した平面座標系障害物情報S3と、参照経路S1とに基づいて、平面座標系障害物情報S3を参照経路S1を基準とした経路座標系に変換し、経路座標系障害物情報S13として出力する。経路座標系については、後に図10を用いて詳細に説明する。
経路座標系移動予測部110は、経路座標変換部109からの経路座標系障害物情報S13に基づいて、経路座標系で障害物の移動予測を行い、経路座標系障害物移動情報S14として出力する。経路座標系移動予測部110は、障害物検出部32からの障害物の速度を用いて、その速度方向に対し等速直線運動を行うと仮定して、障害物の移動予測を行う。等速直線運動と仮定することで、経路座標系移動予測部110での予測計算を簡単にでき、計算量を少なくすることができる。なお、経路座標系移動予測部110は、行動計画装置102の動作周期と同じ周期で障害物の移動予測を行うが、この周期が十分に小さい場合は、各周期での障害物の位置のみで移動予測を行うことができる。この場合、障害物検出部32からの障害物情報は、障害物の位置である。
シーン判定部111は、経路座標系移動予測部110からの経路座標系障害物移動情報S14と、道路情報検出部33からの道路情報S4と、内界センサ20からのセンサ情報S6とを用いて、障害物の状況と道路状況と車両100の走行状況とを判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力する。シーン判定部111は、経路座標系障害物移動情報S14を用いて、障害物の状況を判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力してもよい。また、シーン判定部111は、経路座標系障害物移動情報S14と道路情報S4とを用いて、障害物の状況と道路状況とを判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力してもよい。但し、道路情報S4やセンサ情報S6も用いることで、広範囲にわたって状況を判定できる。シーン判定部111は、平面座標系障害物移動情報S7の代わりに経路座標系障害物移動情報S14を用いる点で、図2に示すシーン判定部105とは異なるが、機能は同じであるため、説明を省略する。
図6に示す行動計画装置102および制御演算装置103は、自動運転システム101として、図1に示す車両100に搭載される。
次に、経路座標系について図7を用いて説明する。図7(a)および(b)は、実施の形態2における平面座標系と経路座標系での車両100の一例を示す模式図である。図7(a)は平面座標系での模式図であり、図7(b)は経路座標系での模式図である。経路座標系は、参照経路S1の長さ方向Lを第1軸、第1軸に直交する方向Wを第2軸とするLW座標系である。経路座標系は、通常は平面座標系から変換可能である。
図7(a)に示す車両100の代表点Qを、図7(b)に示す経路座標系に変換する。代表点Qは例えば、車両100の重心やセンサ中心などである。図7(a)に示すように、参照経路S1が与えられている場合、参照経路S1上の任意の点を開始点S(車両100の最近傍点か後方の点が望ましい)とする。開始点Sから参照経路S1に沿って、参照経路S1の長さ方向をL軸、参照経路S1と直交する軸をW軸とする。代表点Qから参照経路S1への垂線と、参照経路S1との交点を点Pとする。開始点Sから点Pの参照経路S1に沿った長さをlc、点Pから代表点Qの長さをwcとすると、代表点Qの平面座標系での座標(xc,yc)は、経路座標系の座標(lc,wc)へ変換される。また、図7(a)の平面座標系で検出された車両100の速度ベクトルV(vx,vy)を、点Pにおける参照経路S1の接線方向成分vlと、その直交方向成分vwに分解することにより、経路座標系の速度として使用することができる。図7(b)に示すように、経路座標系に変換することで、車両100が経路に沿って走行していることや、経路から遠ざかるように走行していることが容易に判定できる。平面座標系で検出された障害物に対しても、経路座標系に変換することで、同様の判定が可能である。このようにして、平面座標系の任意の点における位置および速度は、参照経路S1を用いることで経路座標系の点における位置および速度に変換することができる。このように、経路座標変換部109は、車両100および障害物の位置および速度を平面座標系から経路座標系へ変換する。
なお、参照経路S1を車線中央とした場合には、経路座標系は、車線中央座標系あるいはレーン座標系と言い換えることができる。また、区画線なども同様に経路座標変換を行うことができれば、走行可能領域S2も経路に沿った形式で表現できる。その意味で、経路座標系は、車線中央座標系およびレーン座標系よりも広義であるといえる。
次に、経路座標系を用いることで、車両100の行動をより適切に決定できる例について、図8および9を用いて説明する。図8(a)および(b)は、実施の形態2におけるカーブ走行時の車両100と障害物との位置関係の一例を示す模式図である。図8(a)は平面座標系での模式図であり、図8(b)は経路座標系での模式図である。また、図9(a)および(b)は、実施の形態2におけるカーブ走行時の車両100と道路情報S4との位置関係の一例を示す模式図である。図9(a)は平面座標系での模式図であり、図9(b)は経路座標系での模式図である。
図8は、カーブ走行時に障害物が対向してくるシーンを表している。障害物が車両100前方の参照経路S1と交差すると判定された場合に、行動決定部106は車両100を停車させるよう行動決定結果S9を出力すると仮定する。平面座標系で障害物の移動予測を行った場合、障害物は平面座標系で検出された速度ベクトルVのまま、等速直線運動を行うと仮定される。この場合、図8(a)に示すように、障害物は車両100前方の交差判定点CRで交差すると判定されてしまい、行動決定部106は車両100を停車させるよう行動決定結果S9を出力する。しかし、実際には障害物はそのまま交差判定点CRを交差せず、道路形状に沿って走行する。平面座標系で移動予測を行うと、無駄な停車が頻発し、乗り心地の悪化や乗員の不快感を招く。一方、経路座標系で移動予測を行った場合、図8(b)に示すように、障害物は参照経路S1方向に速度vlで等速直線運動を行うと仮定される。この場合、障害物は車両100前方の交差判定点CRで交差すると判定されずに済む。経路座標系で移動予測を行うことで、平面座標系で移動予測を行う場合に発生する頻繁な停車を抑制することができる。
図9は、カーブの途中で信号機C1があり、赤信号となったシーンを表している。信号機C1が赤信号の場合に、行動決定部106は車両100を停止線C3手前で停車させるよう行動決定結果S9を出力すると仮定する。更に、行動決定部106は、目標停車距離として停止線C3手前までの距離を出力すると仮定する。図9(a)に示すように、平面座標系では車両100の代表点Qから目標停車位置Tまでの距離dlxyを、dlxy=(dx2+dy2)1/2と計算される。しかし、実際の距離は点線の参照経路S1に沿った距離dlrであり、上記で計算された距離dlxyはこのdlrよりも小さな値となり、本来の目標停車位置Tよりも手前に停車してしまう可能性がある。一方、経路座標系で目標停車位置Tまでの距離を測定した場合、図9(b)に示すように、目標停車位置Tまでの距離dlrを正確に測定することができ、車両100の行動をより正確に決定することができる。以上、経路座標系を用いることで、車両100の行動をより適切に決定できる例について説明したが、図8および9のシーンに限らず、他にも様々な利点がある。
図10は、実施の形態2における経路座標系でのシーンの一例を示す模式図である。図10に示すように、車両100周辺の判定領域A1内に、先行障害物B1(先行車両)、交差障害物B2(交差車両)、停止障害物B3(停止車両)、対向障害物B4(対向車両)、信号機C1、および停止線C3が存在しているとする。また、これらの位置および速度は、経路座標変換部109により、経路座標系に変換されているものとする。なお、判定領域A1は、右区画線L2、左区画線L1、および予め定めた判定距離llの範囲で囲まれた領域として設定される。シーン判定部111は、車両100周辺の判定領域A1内に存在する障害物の状況、道路状況、および車両100の走行状況を判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として数値的に表現する。シーンを数値的に表現するための変数として、表1に示す変数を用意する。これは、実施の形態1におけるシーン判定部105が用いた変数と同じである。例えば、図10において判定領域A1内に交差障害物B2が存在するため、acrоbs_inlane=1である。これは、経路座標系における判定対象の障害物の位置をwо、W軸方向の速度をvwоとすると、wо・vwо<0を満足するか否かで判定できる。また、判定領域A1内に対向障害物B4が存在するため、оppоbs_inlane=1である。これは、経路座標系における判定対象の障害物のL軸方向の速度が負であるか否かで判定できる。
図10では、右区画線L2、左区画線L1、および隣接経路Nがあるが、これらが無い場合には仮想的に生成したものを使用してもよい。また、判定領域A1は、経路座標変換部109から出力される走行可能領域S2を用いて設定されてもよい。
本開示の実施の形態2では、シーン判定部111が、経路座標系で車両100が置かれた状況を数値化する。そして、行動決定部106が、この数値化されたシーン情報S8をもとに車両100の行動を決定する。このため、障害物の移動予測から目標操舵量S11などを直接演算する際に必要となる経路座標系から平面座標系への逆変換を不要とし、計算負荷を大きくせずに済む。
以上で説明した実施の形態2によれば、経路座標変換部109によって変換された障害物情報である経路座標系障害物情報S13を用いて障害物の移動予測を行うため、車両100の行動をより適切に決定することができ、自動運転の精度を向上できる。
実施の形態3.
実施の形態3では、平面座標系と経路座標系との両方でシーン判定を行う方法について説明する。図11は、実施の形態3における行動計画装置102および制御演算装置103の一例を示すブロック図である。図11は、情報取得部30と、内界センサ20と、行動計画装置102と、制御演算装置103と、操舵制御装置12と、加減速制御装置9とにより構成されるブロック図である。図11は、行動計画装置102が平面座標系移動予測部104と経路座標系移動予測部110との両方を備える点で、図2および6とは異なる。シーン判定部112以外は、図2および6に示すものと同じであるため、説明を省略する。
シーン判定部112は、平面座標系移動予測部104からの平面座標系障害物移動情報S7と、経路座標系移動予測部110からの経路座標系障害物移動情報S14と、道路情報検出部33からの道路情報S4と、内界センサ20からのセンサ情報S6とを用いて、障害物の状況と道路状況と車両100の走行状況とを判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力する。シーン判定部112は、平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14とを用いて、障害物の状況を判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力してもよい。また、シーン判定部112は、平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14と道路情報S4とを用いて、障害物の状況と道路状況とを判定し、車両100が置かれた状況をシーン情報S8として出力してもよい。但し、道路情報S4やセンサ情報S6も用いることで、広範囲にわたって状況を判定できる。以下、シーン判定部112が平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14との両方を使用する方法について、図12および13を用いて説明する。なお、図11に示す行動計画装置102および制御演算装置103は、自動運転システム101として、図1に示す車両100に搭載される。
図12(a)および(b)は、実施の形態2における交差点走行時の車両100と障害物との位置関係の一例を示す模式図である。図12(a)は平面座標系での模式図であり、図12(b)は経路座標系での模式図である。また、図13(a)および(b)は、実施の形態2におけるT字路走行時の車両100と障害物との位置関係の一例を示す模式図である。図13(a)は平面座標系での模式図であり、図13(b)は経路座標系での模式図である。
図12は、交差障害物B2(他車両)が判定領域A1内の交差点に侵入するシーンを表している。判定領域A1は、予め設定された複数の点p~sによって構成される。判定領域A1内に障害物が侵入した場合に、行動決定部106は車両100を交差点の手前で停車させるよう行動決定結果S9を出力すると仮定する。平面座標系で障害物の移動予測を行った場合、図12(a)に示すように、障害物が判定領域A1内の交差点に侵入したことを正しく判定される。一方、経路座標系で障害物の移動予測を行った場合、図12(b)に示すように、点p~sが経路座標系に変換される。この際、各点から参照経路S1への垂線に基づいて経路座標系に変換されるが、点sについては垂線が2本存在し、それらの交点は点aおよびbの2点となる。これにより、経路座標系では点saおよびsbの2点の変換点候補が生じてしまう。平面座標系において、点sから点aまでの距離をw1、点sから点bまでの距離をw2とすると、w1とw2とのうち小さい方に対応する点が変換点候補となる。仮に、w1>w2とすると、点4bが変換点候補となる。この場合、点p、q、r、およびsbで囲まれた領域が判定領域A1となり、判定領域A1内に障害物が侵入されたと判定されるため、正しい判定結果となる。仮に、w1<w2とすると、点saが変換点候補となる。この場合、点p、q、r、およびsaで囲まれた領域が判定領域A1となり、判定領域A1内に障害物が侵入されたと判定されず、誤った判定結果となる。
図12(a)に示すように、判定領域A1を構成する複数の点を各々経路座標系に変換する際、変換前の点に対応する変換点の候補が複数存在する場合は、誤った判定結果となる可能性がある。この時、判定領域A1内にある参照経路S1上の2点における接線のなす角a12の最大値(以下、「参照角度」と称する)が大きくなる。図12(a)では、点aにおける接線t1と点bにおける接線t2とのなす角が参照角度となるが、これが約90度となっている。通常のカーブでは参照角度は大きくならないが、交差点では参照角度が大きくなるため、参照角度が大きい場合には、誤った判定結果となる可能性がある。加えて、図12(a)では、距離w1とw2との差が小さいため、このような場合にも、誤った判定結果となる可能性がある。そこで、シーン判定部112は、平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14とをシーンに応じて使い分ける。経路座標系に変換する前の点に対応する変換点が2つ以上存在する場合は、シーン判定部112は、平面座標系障害物移動情報S7に基づいてシーン情報S8を生成する。変換点が1つの場合は、シーン判定部112は、経路座標系障害物移動情報S14に基づいてシーン情報S8を生成する。あるいは、シーン判定部112の判定領域A1内にある参照経路S1上の2点における接線のなす角a12の最大値が所定値(例えば90度)よりも大きい場合は、シーン判定部112は、平面座標系障害物移動情報S7に基づいてシーン情報S8を生成する。なす角の最大値が所定値以下の場合は、シーン判定部112は、経路座標系障害物移動情報S14に基づいてシーン情報S8を生成する。あるいは、変換点が複数存在する場合に、変換前の点から参照経路S1に対する2つの垂線の長さの差が所定値より小さい場合は、シーン判定部112は、平面座標系障害物移動情報S7に基づいてシーン情報S8を生成する。2つの垂線の長さの差が所定値以上の場合は、シーン判定部112は、経路座標系障害物移動情報S14に基づいてシーン情報S8を生成する。
図13は、T字路で交差障害物B2(自転車)が横から走行してくるシーンであり、車両100は右折しようとするシーンを表している。判定領域A1は、予め設定された複数の点5~8によって構成される。障害物が将来、判定領域A1内の参照経路S1と交差すると判定された場合に、行動決定部106は車両100を停車させるよう行動決定結果S9を出力すると仮定する。平面座標系で障害物の移動予測を行った場合、図13(a)に示すように、障害物は所定の速度ベクトルVの方向でT字路を走行するが、参照経路S1と交差されないと判定されるため、車両100は停車せずに障害物と並走するという正しい行動が決定される。これにより、無駄な停車を行わずに済む。一方、経路座標系で障害物の移動予測を行った場合、図13(b)に示すように、点t~wが経路座標系に変換される。同時に、図13(a)の障害物から参照経路S1への垂線と参照経路S1との交点cを用いて、障害物の位置および速度も経路座標系に変換される。点t~wについても、各点から参照経路S1への垂線に基づいて経路座標系に変換されるが、点wについては垂線が2本存在し、それらの交点は点dおよびeの2点となる。これにより、経路座標系では点wdおよびweの2点の変換点候補が生じてしまう。平面座標系において、点wから点dまでの距離をw3、点wからeまでの距離をw4とすると、w3とw4とのうち小さい方に対応する点が変換点候補となる。仮に、w3<w4とすると、点wdが変換点候補となる。この場合、点t、u、v、およびwdで囲まれた領域が判定領域A1となり、等速直線運動を仮定した障害物が参照経路S1と交差する点(交差判定点CR)が判定領域A1内に含まれないため、障害物が判定領域A1内の参照経路S1と交差しないと判定されるため、正しい判定結果となる。仮に、w3>w4とすると、点weが変換点候補となる。この場合、点t、u、v、およびweで囲まれた領域が判定領域A1となり、等速直線運動を仮定した障害物が参照経路S1と交差する点(交差判定点CR)が判定領域A1内に含まれるため、障害物が判定領域A1内の参照経路S1と交差すると判定されてしまい、誤った判定結果となる。
図13(a)に示すように、判定領域A1を構成する複数の点を各々経路座標系に変換する際、変換前の点に対応する変換点の候補が複数存在する場合は、誤った判定結果となる可能性がある。この時、参照角度が大きくなる。図13(a)では、点dにおける接線t3と点eにおける接線t4とのなす角が参照角度となるが、これが約90度となっている。T字路でも交差点と同様、参照角度が大きくなるため、参照角度が大きい場合には、誤った判定結果となる可能性がある。加えて、図13(a)では、距離w3とw4との差が小さいため、このような場合にも、誤った判定結果となる可能性がある。そこで、シーン判定部112は、図12を用いて説明したのと同様に、平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14とを使い分ける。
シーン判定部112は、平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14とをシーンに応じて使い分けることで、図12および13に限らず、全てのシーンで適切にシーン判定を行うことができる。なお、平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14とを選択するための条件において、2点における接線のなす角の最大値との比較対象である所定値、および2つの垂線の長さの差との比較対象である所定値は、固定値ではなくシーンによって可変にしてもよい。
以上で説明した実施の形態3によれば、平面座標系障害物移動情報S7と経路座標系障害物移動情報S14とをシーンに応じて使い分けることで、車両100の行動をより適切に決定することができ、自動運転の精度を向上できる。
実施の形態4.
近年、車両100の自動運転のための、高精細かつ静的・動的な情報を配信する高精度地図の整備が各国で行われている。非特許文献1には、高精度地図がどのような情報を配信するかについて説明されている。
非特許文献1によれば、高精度地図は基盤的地図(静的情報)の上に情報更新頻度により分類された動的データが重畳されたものである。動的データは、準静的情報、準動的情報、および動的情報に分類されている。準静的情報は、更新頻度が1日以内、例えば交通規制情報、および道路工事情報などを含む。準動的情報は、更新頻度が1時間以内、例えば事故情報、および渋滞情報などを含む。動的情報は、更新頻度が1秒以内、例えば信号情報、および歩行者情報などを含む。
高精度地図は、GNSSセンサ27と同様、一般に地理座標系が使用される。高精度地図は、一般に数100km単位の広域なデータで構成されている。従って、高精度地図を用いることで、より広域の情報を事前に得ることが可能であり、広範囲の状況を考慮して車両100の行動を決定することができる。また、高精度地図は基盤的地図と動的データとが含まれているため、障害物情報も取得することができる。これにより、GNSSセンサ27と組み合わせることで、情報取得部30を簡素な構成とすることができる。加えて、行動計画装置102が出力する行動決定結果S9の精度、および制御演算装置103が出力する目標操舵量S11と目標加減速量S12との精度が向上する。
図14は、実施の形態4における行動計画装置102および制御演算装置103の一例を示すブロック図である。図14は、情報取得部30と、内界センサ20と、行動計画装置102と、制御演算装置103と、操舵制御装置12と、加減速制御装置9とにより構成されるブロック図である。図14は、経路検出部31、障害物検出部32、および道路情報検出部33の代わりに、高精度地図取得部35を備える点で、図2とは異なる。高精度地図取得部35以外は、図2に示すものと同じであるため、説明を省略する。
高精度地図取得部35は、高精度地図を取得し、参照経路S1、走行可能領域S2、地図情報S15、平面座標系障害物情報S3、および道路情報S4を出力する。これらの情報は、平面座標系での情報である。よって、高精度地図取得部35は、車両位置検出部34と同様、地理座標系で表された情報を平面座標系に変換する機能を有する。なお、平面座標系障害物情報S3は必ずしも高精度地図取得部35から出力されなくてもよく、障害物検出部32から出力されてもよい。なお、高精度地図取得部35と車両位置検出部34とが取得する情報は、地理座標系で表されたものであるとしたが、地理座標系に限定しない。また、高精度地図取得部35は、図2、6、および13に示す行動計画装置102および制御演算装置103に対しても適用可能である。
図14に示す行動計画装置102および制御演算装置103は、自動運転システム101として、図1に示す車両100に搭載される。
以上で説明した実施の形態4によれば、高精度地図を用いることで、行動計画装置102が出力する行動決定結果S9の精度、および制御演算装置103が出力する目標操舵量S11と目標加減速量S12との精度を向上させることができる。これにより、自動運転の精度を向上できる。
なお、実施の形態1~4における行動計画装置102および制御演算装置103の適用先を、車両100の自動運転として説明したが、適用先を自動運転に限るものではなく、各種の移動体に適用することができる。例えば、ビル内を点検するビル内移動ロボット、ライン点検ロボット、およびパーソナルモビリティなど、安全な動作が要求される移動体に対して適用することができる。