JP7141084B2 - 複合体、及び複合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複合体、及び複合体の製造方法に関する。
チタン及びチタン合金は生体適合性に優れることから、インプラント等に使用されている。このような用途において、チタン及びチタン合金の骨組織への結合性を向上させる検討が行われている。例えば、特許文献1には、チタン又はチタン合金を原材料とする基材と、アパタイト及び有機構造体を含む表面層を有するインプラント材料が提案されている。
一方、非特許文献1では、アパタイト自体をポリマーで修飾して細菌の付着を抑制することが検討されている。具体的には、ヒドロキシアパタイト上に、バクテリア等の付着を抑制するためのポリマーコーティングを形成する方法が開示されている。
特開2005-329060号公報
金属を含むインプラント等が生体内に安定して定着するためには、骨芽細胞等の細胞が生着することも必要であることから骨芽細胞等の生着を促進することが求められている。また、バクテリア等の付着を抑制する作用を高めると、骨芽細胞等の細胞の生着も阻害されることが懸念される。このため、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の生着の促進を両立し得る材料があれば有用であるとも考えられる。
本発明は、骨芽細胞等の生着を促進することが可能な、又はバクテリアの付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着促進と、を両立することが可能な複合体、及び複合体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材と、当該基材の表面の少なくとも一部を覆う有機層とを備え、上記有機層が、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する、複合体を提供する。
上記複合体は、有機層に含まれる高分子がホスフェート基を有することで、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材と強固に結合することができ、また、生体内におけるカルシウムイオン等を吸着し、骨芽細胞の複合体への生着を促進することができる。上記高分子がさらにオキシアルキレン基を有することで、バクテリア等の付着抑制効果を有することができる。
上記高分子が下記一般式(1)で表される構造単位を有してもよい。上記高分子が下記一般式(1)に示すような特定の官能基を有するポリメタクリレート構造を有することによって、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着強化とをより高水準で両立することができる。
Figure 0007141084000001
上述の複合体は、ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられてもよい。ステント、インプラント、人工関節、人工骨及び整形外科用固定具等は、生体内に留置することから、炎症等の発生を抑制し、且つ生体への定着性を向上させることが望まれる。上述の複合体は、骨芽細胞等の細胞の生着促進、又はバクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着促進とが両立されることから、炎症等が抑制され、生体への定着性が向上したものとなり、ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具として用いることができる。
本発明の一側面は、金属を含む基材と、上記基材の表面の少なくとも一部を覆う有機層とを備え、上記有機層が、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有し、ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられる、複合体を提供する。
上記複合体は、有機層に含まれる高分子がホスフェート基を有することで、金属を含む基材と強固に結合することができ、また、生体内におけるカルシウムイオン等を吸着し、骨芽細胞の複合体への生着を促進することができる。上記高分子がさらにオキシアルキレン基を有することで、バクテリア等の付着抑制効果を有することができる。
上記高分子が下記一般式(1)で表される構造単位を有してもよい。上記高分子が下記一般式(1)に示すような特定の官能基を有するポリメタクリルレート構造を有することによって、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着強化とをより高水準で両立することができる。
Figure 0007141084000002
本発明の一側面は、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材の表面を酸処理する第一工程と、酸処理した基材の表面の少なくとも一部にオキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する有機層を形成する第二工程と、を備える、複合体の製造方法を提供する。
上記複合体の製造方法によれば、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材と強く結合した有機層を形成することができる。また、有機層を構成する上記高分子がオキシアルキレン基及びホスフェート基を有することで、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着促進とを両立することが可能な複合体を製造することができる。
上記高分子が下記一般式(1)で表される構造単位を有してもよい。上記高分子が下記一般式(1)に示すような特定の官能基を有するポリメタクリルレート構造を有することによって、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着強化とをより高水準で両立することが可能な複合体を製造することができる。
Figure 0007141084000003
本発明の一側面は、複合体の製造方法であって、金属を含む基材の表面を酸処理する第一工程と、酸処理した基材の表面の少なくとも一部にオキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する有機層を形成する第二工程と、を備え、上記複合体が、ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられる、複合体の製造方法を提供する。
上記複合体の製造方法によれば、金属を含む基材と強く結合した有機層を基材上に形成することができ、インプラント等に有用な複合体を製造することができる。また、有機層を構成する上記高分子がオキシアルキレン基及びホスフェート基を有することで、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着促進とを両立することが可能な複合体を製造することができる。
上記高分子が下記一般式(1)で表される構造単位を有してもよい。上記高分子を下記一般式(1)に示すような特定の官能基を有するポリメタクリルレート構造を有することによって、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着強化とをより高水準で両立することができる。
Figure 0007141084000004
上記第二工程では、酸処理した基材の表面に、上記高分子を含む溶液を接触させることで上記有機層を形成してもよい。高分子を含む溶液を接触させる方法とすることで、有機層をより容易に形成することができる。
上記第一工程と上記第二工程との間に、酸処理した基材の表面をオゾン処理する工程を備えてもよい。オゾン処理を行うことで、有機層をより強固に基材に結合させることができる。
本発明によれば、骨芽細胞等の細胞の生着促進、又はバクテリアの付着抑制と、骨芽細胞等の細胞の生着促進と、を両立することが可能な複合体、及び複合体の製造方法を提供することができる。
図1は、複合体の一例を示す模式図である。 図2は、実施例1の複合体表面についてのXPSスペクトルである。 図3は、ランダム共重合体がTi合金ペレット上に結合された状態を示す模式図である。 図4は、Ti合金ペレット上への有機層形成の時間依存性を示すグラフである。 図5は、実施例1で調製された複合体表面の蛍光顕微鏡写真である。 図6は、実施例1及び比較例2のバクテリア付着性試験の結果を示すグラフである。 図7は、実施例1及び比較例2のバクテリア付着性試験の結果を示すSEM画像である。 図8は、実施例1及び比較例2の細胞付着性試験の結果を示すグラフである。 図9は、実施例1及び比較例2の細胞付着性試験の結果を示す蛍光顕微鏡写真である。 図10は、複合体上に析出したカルシウム濃度を示すグラフである。 図11は、複合体上に吸着したタンパク質に含まれる窒素濃度を示すフラフである。
以下、場合により図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
<複合体>
複合体の第一実施形態は、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材と、上記基材の表面の少なくとも一部を覆う有機層とを備える。上記有機層は、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する含む高分子を含有する。図1は、複合体の一例を示す模式図である。複合体100は、基材10と、有機層20とを備える。複合体は、例えば、生体用に用いられる材料であってよく、医療用に用いられる材料であってもよい。
基材10は、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材である。チタン合金は、ASTM及びJIS等に登録されている生体用チタン材料を用いることができる。チタン合金は、例えば、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)等との合金であってよい。チタン合金としては、Ti-6Al-4V、Ti-6Al-4V ELI、Ti-6Al-2Nb-1Ta、Ti-15Zr-4Nb-4Ta、Ti-6Al-7Nb、Ti-3Al-2.5V、Ti-13Nb-13Zr、Ti-15Mo-5Zr-3Al、Ti-12Mo-6Zr-2Fe、及びTi-15Mo等が挙げられる。
有機層20は、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する。有機層20は、上記高分子のみからなってもよく、上記高分子の他に、例えば、コラーゲン等のタンパク質、アパタイト等を含んでもよい。有機層20の厚さは、例えば、5~50000nmであってよく、20~30000nmであってよく、又は100~20000nmであってよい。有機層20は、基材10の少なくとも一部を覆っていてよく、全面を覆っていてもよい。
上記高分子は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。共重合体としては、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト重合体であってよい。上記高分子は、オキシアルキレン基及びホスフェート基以外の官能基を有してもよい。
オキシアルキレン基は、例えば、-(C2sO)で表される。ここで、sは、1~6であってよく、又は1~3であってよい。ここで、mは、複合体のバクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞の生着促進とをより高度に両立する観点から、1~70であってよく、1~50であってよく、5~50であってよく、10~50であってよく、又は20~40であってよい。ここで、Rは、水素、メチル基及びエチル基のいずれかを示す。ここで、アルキレン基は、直鎖状であってもよく、又は分岐を有していてもよい。オキシアルキレン基としては、例えば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、及びオキシへキシレン基であってよい。
ホスフェート基は、例えば、-R-PO(OR、-(RO)-PO(OR、又は-R-OPO(ORで表される。ここで、rは、1~10であってよく、2~6であってよく、又は4~6であってよい。ここで、Rは、直接結合、アルキレン基、及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種であってよい。Rがアルキレン基である場合、アルキレン基の炭素数は、例えば、1~20であってよく、1~15であってよく、1~10であってよく、1~4であってよく、又は1~2であってよい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。ここで、Rは、水素原子、アルキル基、及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種であってよく、複数存在するRは同一であっても、異なってもよい。Rがアルキル基である場合、例えば、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、又は環状アルキル基であってよく、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基であってよい。R又はRがアリール基である場合、アリール基は、例えば、フェニル基であってよい。
上記高分子において、オキシアルキレン基のモル数と、ホスフェート基のモル数との比([オキシアルキレン基のモル数]/[ホスフェート基のモル数])は、例えば、0.2~1.0であってよく、0.4~0.8であってよく、又は0.4~0.6であってよい。オキシアルキレン基のモル数と、ホスフェート基のモル数との比が上記の数値範囲内であることによって、バクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞の生着促進とをそれぞれより高水準で両立することができる。上記高分子が共重合体の場合、共重合体を合成する際のモノマーの組成比を調整することで、オキシアルキレン基のモル数と、ホスフェート基のモル数との比を調整できる。すなわち、オキシアルキレン基のモル数と、ホスフェート基のモル数との比は、共重合体におけるオキシアルキレン基を有する構造単位及びホスフェート基を有する構造単位の構成単位の比である。ここで、構造単位とは、重合体を得るための原料である重合性化合物に由来する構造を意味する。
上記高分子は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ乳酸、ポリエステル、又はポリスチレンに由来するものであってよい。上記高分子は、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ乳酸、ポリエステル、及びポリスチレン等を主鎖骨格として有するものであってよい。
上記高分子の重量平均分子量は、例えば、10000~1000000であってよく、10000~500000であってよく、15000~300000であってよく、又は30000~150000であってよい。上記高分子の重量平均分子量が上記数値範囲内であることで、有機層が適度な強度を有し、基材の表面上に安定して有機層を維持することができる。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される値を意味し、ポリスチレン換算値で表す。
上記高分子は、例えば、下記一般式(1)で示される高分子であってよい。下記一般式(1)は、オキシアルキレン基を有するメタクリレート及びホスフェート基を有するメタクリレートの共重合により得られるランダム共重合体の構造を示している。上記高分子が、下記一般式(1)に示すような特定の官能基を有するポリメタクリルレート構造を有することによって、上記高分子を容易に調製することが可能であり、且つバクテリア等の付着抑制と、骨芽細胞の生着促進とをそれぞれより高水準で両立することができる。
Figure 0007141084000005
上記複合体においては、有機層に含まれる高分子がホスフェート基を有することで、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材と有機層とが強く結合している。また、上記高分子がオキシアルキレン基を有することで、バクテリア等の付着抑制効果を有するとともに、上記高分子がホスフェート基を有することで、生体内におけるカルシウムイオン等を吸着することができる。このような作用によって、骨芽細胞等の細胞が複合体へ速やかに、又は強固に結合する、或いは、速やか且つ強固に結合することが可能となり、骨芽細胞等の細胞の生着が促進される。したがって、上記複合体は、例えば、ステント、インプラント、人工関節、人工骨及び整形外科用固定具等のいずれかに用いられてもよい。すなわち、上記複合体は、生体用複合体、又は医療用複合体であってよい。
複合体の第二実施形態は、金属を含む基材と、上記基材の表面の少なくとも一部を覆う有機層とを備える。上記有機層が、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する。そして、当該複合体は、ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられる。
第二実施形態において、基材は、金属を含む基材である。金属としては、例えば、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)等であってよく、これらの合金であってもよい。
第二実施形態に係る複合体と、第一実施形態に係る複合体とで重複する説明は省略する。第一実施形態に係る複合体と、第二実施形態に係る複合体とで、共通する部分については互いの説明内容を相互に適用することができる。
<複合体の製造方法>
複合体の製造方法の第一実施形態は、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材の表面を酸処理する第一工程と、酸処理した基材の表面の少なくとも一部にオキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する有機層を形成する第二工程と、を備える。
上述の複合体は、例えば、本実施形態に係る複合体の製造方法によって製造することができる。したがって、複合体の製造方法には、上述の複合体についての説明内容を適用することができる。また逆に、以下の複合体の製造方法についての説明内容は、上述の複合体に適用することもできる。
第一工程は、基材の表面を酸処理する工程である。第一工程において、チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材の表面に存在する金属酸化物(例えば、酸化チタン)の少なくとも一部を除去する。第一工程で使用する酸は、例えば、塩酸、硫酸、及び硝酸等の無機酸であってよく、濃硫酸であってよい。酸処理の時間は、例えば、1時間以上、2時間以上又は3時間以上であってよく、5時間以下であってよい。酸処理を行う温度は、例えば、25℃以上、50℃以上又は75℃以上であってよく、100℃以下又は90℃以下であってよい。
第一工程において上記酸処理の前に、基材を水及び有機溶剤等で洗浄してもよい。基材表面に有機物等が付着していた場合、当該有機物等を除去することにより、酸処理の効率を上げることができる。水としては、蒸留水、及びイオン交換水等を用いることができる。有機溶剤としては、イソプロパノール等の低級アルコール、及びアセトン等を用いることができる。洗浄は、基材を水及び有機溶剤等に浸漬して行ってよく、超音波洗浄等で行ってもよい。洗浄後、酸処理の前に洗浄に用いた水及び有機溶剤等を除去するために、基材表面を乾燥してもよく、例えば、窒素雰囲気下で風乾等することで乾燥してもよい。
第二工程は、酸処理された基材酸処理された表面の少なくとも一部に上記高分子を含有する有機層を形成する工程である。有機層の形成方法は、例えば、上記高分子を溶融させて上記表面に塗布して形成してもよく、上記高分子を含む溶液を上記表面に接触させて、溶媒を除去することで形成してもよい。第二工程は、例えば、酸処理した上記基材の上記表面に、上記高分子を含む溶液に接触させることで上記有機層を形成してもよい。上記高分子を含む溶液における溶媒は、例えば、水及びエタノール等であってよい。
第二工程において、上記高分子を含む溶液を基材表面に接触させて有機層を形成させる場合、一定の温度で有機層の形成を行ってもよく、温度を変化させて有機層の形成を行ってもよい。第二工程は、例えば、酸処理した上記基材の上記表面に、上記高分子を含む溶液に接触させ、低温(例えば、25℃以下)で3~5時間維持した後、25℃超で3~5時間維持することで上記有機層を形成してもよい。有機層の形成は、より具体的には、例えば、10℃で3時間、及び75℃で3時間の条件で行ってもよい。有機層を形成した後は、溶媒を除去するために、水等で洗浄して、窒素雰囲気下で乾燥させてもよい。
上記高分子は、オキシアルキレン基を有する重合性化合物及びホスフェート基を有する重合性化合物を含む組成物の重合、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する重合性化合物を含む組成物の重合等によって得ることができる。重合方法は、各種ラジカル重合等の重合方法から適宜選択することができる。重合方法は、例えば、塊状重合法、溶液重合法、及び懸濁重合法等であってよい。重合開始剤としては、4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、及びベンゾフェノン等の光重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。重合温度及び重合時間等の重合条件は、重合性組成物に含まれる単量体成分の種類、重合開始剤の種類、及び重合方法等によって、適宜選択することができる。
上記重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、スチレン、及び乳酸等、並びにこれらの変性体等を用いることができる。
オキシアルキレン基を有する重合性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等があげられる。
ホスフェート基を有する重合性化合物としては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート(別名:リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル)、リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-ホスホノエチル、(メタ)アタクリル酸2-(メトキシホスホニル)エチル、リン酸(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)フェニル等の(メタ)アクリレート誘導体、N-[2-(ホスホノオキシ)エチル](メタ)アクリルアミド、2-((メタ)アクリロイルアミノ)エチルホスホン酸等の(メタ)アクリルアミド誘導体、リン酸(4-ビニルフェニル)、リン酸メチル(4-ビニルフェニル)等のスチレン誘導体などが挙げられる。
オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する重合性化合物としては、例えば、ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記複合体の製造方法においては、第一工程と第二工程との間に、酸処理した上記基材の上記表面を、オゾン処理、紫外線処理、コロナ処理、及びプラズマ処理等する工程を備えてもよく、紫外線処理及びオゾン処理等する工程を備えてもよい。オゾン処理、紫外線処理、コロナ処理、及びプラズマ処理等は、それぞれ単独であってよく、組み合わせてもよい。第一工程と第二工程との間に、酸処理した上記基材の上記表面に対して、上記のような活性化処理を行うことによって、第二工程において有機層の形成をより容易にできる。
オゾン処理、紫外線処理、コロナ処理、及びプラズマ処理等は、酸処理された上記基材上の上記表面の一部又は全部に対して行ってもよい。オゾン処理、紫外線処理、コロナ処理、及びプラズマ処理等は、例えば、窒素雰囲気下で行ってよい。
複合体の製造方法の第二実施形態は、金属を含む基材の表面を酸処理する第一工程と、酸処理した基材の表面の少なくとも一部にオキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する有機層を形成する第二工程と、を備える。上記複合体は、ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられる。すなわち、上記複合体は、生体用複合体、又は医療用複合体であってよい。
第二実施形態に係る複合体の製造方法と、第一実施形態に係る複合体の製造方法とで重複する説明は省略する。第一実施形態に係る複合体の製造方法と、第二実施形態に係る複合体の製造方法とで、共通する部分については第一実施形態に係る複合体の製造方法の説明内容を相互に適用することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、実施例、及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
<<複合体の製造>>
(実施例1)
[ポリ(PEGMA-Phosmer)(ランダム共重合体)の重合]
0.5mMのポリ(エチレングリコール)メチルエーテル メタクリレート(Sigma-Aldrich社製、商品名:PEGMA、分子量:500Da)及び0.5mMのエチレングリコールメタクリレートホスフェート(DAP株式会社製、商品名:Phosmer)を10mLの水に溶解し、窒素雰囲気下で30分間バブリングして酸素を除いた。この水溶液に、少量のメタノールに溶解した0.0128mmolの4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(和光純薬工業株式会社製、水溶系アゾ開始剤、商品名:V-501)を加えて、重合を開始した。
70℃の条件下で11時間、重合反応させることで、ランダム共重合体(以下、ポリ(PEGMA-Phosmer)と記すこともある。)を合成した。H-NMR及び13C-NMRを用いて、得られたランダム共重合体がオキシエチレン基及びエチルホスフェート基を有していることを確認した。得られたランダム共重合体の[オキシアルキレン基のモル数]/[ホスフェート基のモル数]は1.0であった。また、得られたランダム共重合体の重量平均分子量は35000(分子量分布は1.89)であった。
[基材上への有機層の形成(ランダム共重合体のTi合金ペレットへの固定化)]
Ti合金ペレット(0.5cm×0.5cm×1.0mm、東京チタン株式会社製、商品名:Ti-6Al-4V)をイソプロパノール、アセトン、及び水の各溶液中で、30分間ずつ超音波洗浄した。超音波洗浄したTi合金ペレットを風乾した。その後、75℃で1時間濃硫酸中に2時間浸漬して、Ti合金ペレット表面の金属酸化層を除去(酸エッチング)した。酸エッチングによって金属酸化層を除去した後、Ti合金ペレットを蒸留水で超音波洗浄(各5分間で3回洗浄)して、窒素の気流によって乾燥させた。
さらに、Ti合金ペレットの両面を各30分間ずつ、UV処理及びO処理した。UV処理及びO処理の直後に、Ti合金ペレットを上記で得られたランダム共重合体の水溶液(10mg/mL)に、75℃で5時間、浸漬することで、Ti合金ペレット上にランダム共重合体からなる有機層を形成した。その後、Ti合金ペレットを水で洗浄し、窒素の気流で乾燥させることで、複合体を得た。X線光電子分光法(XPS、株式会社島津製作所製、商品名:AXIS-ultra)を用いて、得られた複合体表面の元素分析を行った。元素分析は、C(1s)、O(1s)、P(2p)、及びTi(2p)ピークの解析に基づいて行った。図2は、XPSスペクトルを示す。
図2に示すように、複合体に対するXPSスペクトル(図2のmodifiedで示されるスペクトル)と、上記ランダム共重合体の溶液に浸漬する前のTi合金ペレットに対するXPSスペクトル(図2のrawで示されるスペクトル)とを比較すると、複合体に対するXPSスペクトルにP(2p)のピーク(133.5eV付近)が観察された。これにより、複合体が有機層を備えることが確認された。また、上記複合体では、Ti合金に含まれないC=Oのピークが観測されることも確認した。このことからも、複合体が有機層を備えることが確認された。ランダム共重合体がTi合金ペレット上に固定された複合体(有機層を備える複合体)の模式図を図3に示す。
(比較例1)
エチレングリコールメタクリレートホスフェートを用いずに、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル メタクリレートの単独重合を得たこと以外は、実施例1と同様にして重合体(以下、ポリ(PEGMA)と記すこともある。)を合成した。有機層として、ポリ(PEGMA)からなる層を形成することで、複合体を調製した。
(比較例2)
有機層を設けず、実施例1と同様にして、UV処理及びO処理まで行ったTi合金ペレットを、比較例2の評価サンプルとした。
<<複合体の評価>>
[複合体調製における有機層形成の時間依存性]
UV処理及びO処理まで行ったTi合金ペレットを、実施例1又は比較例1で調製した重合体の水溶液に浸漬する時間を変化させて、複合体調製時における有機層形成の時間依存性を評価した。図4に結果を示す。なお、比較のために、重合体を含まない水に上記Ti合金ペレットを浸漬させた結果も図4中に示す。
図4は、X線光電子分光法(XPS)で観測したC=O/Tiのピーク強度比の上記浸漬時間の依存性を示している。C=O/Tiのピーク強度比からTi合金ペレットの有機層による被覆率を決定した。図4に示す結果から、実施例1において調製したポリ(PEGMA-Phosmer)は3時間程度でTi合金ペレットの表面のほぼ90%程度に吸着したことが確認された。また、12時間後には、Ti合金ペレット表面の全面にポリ(PEGMA-Phosmer)が吸着し、Ti合金ペレットの全面が有機層に被覆されることが確認された。
一方、比較例1で調製したポリ(PEGMA)の場合、Ti合金ペレット表面への吸着が、実施例1で調製したポリ(PEGMA-Phosmer)に比べてはるかに少ないことが確認された。以上の結果から、高分子がホスフェート基を有することにより、Ti合金ペレットの表面への吸着が促進されていることが確認された。図5に、蛍光分子によって有機層を構成する高分子を修飾して、蛍光顕微鏡で観察した結果を示す(左半分の領域が有機層を形成した領域を示し、右半分が有機層を形成していない領域を示す。)。図5に示す結果から、Ti合金ペレットの表面上に均一に有機層が形成されていることが確認された。
[複合体のバクテリア付着性試験]
バクテリア付着性試験を行い、複合体のバクテリア付着を抑制する性能を評価した。バクテリアとして、大腸菌(E.Coli)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)及びストレプトコッカス・ミュータンス菌(S.mutans)を用いた。大腸菌は、LBブロス培地を用いて、細菌密度が約108CFU/mLになるまで37℃の水浴中で100rpmの条件下、振盪しながら培養した。ストレプトコッカス・ミュータンス菌は、ポリペプトン含有栄養培地(ポリペプトン:5g/L、牛肉エキス:3g/L、NaCl:5g/L)を用いて、細菌密度が約108CFU/mLになるまで37℃の水浴中で100rpmの条件下、振盪しながら培養した。また表皮ブドウ球菌は、ブロス培地(BD237500、Sigma-Aldrich)を用いて、細菌密度が約108CFU/mLになるまで37℃の水浴中で100rpmの条件下、振盪しながら培養した。大腸菌ORN178、表皮ブドウ球菌(表皮ブドウ球菌)JCM2414、及びストレプトコッカス・ミュータンス(ミュータンス菌)ATCC25175は、理化学研究所バイオリソースセンターから購入したものを用いた。
実施例1で調製した複合体を70%エタノールと脱イオン水とで洗浄して減菌処理した。その後、複合体を24ウェル培養プレートに入れた。次に、大腸菌のPBS懸濁液を調製して、各ウェルに0.5mLずつ添加した。PBSは、137mMの塩化ナトリウム(NaCl)、2.7mMの塩化カリウム(KCl)、10mMのリン酸ナトリウム(NaHPO)及び1.8mMのリン酸カリウム(KHPO)を含み、pH7.4に調整されたものを使用した。その後、37℃、2.5時間の条件下で、バクテリアを培養することで、複合体へのバクテリア付着性試験を行った。バクテリアの培養にかける時間を6時間及び24時間に増やして、上記と同様にバクテリア付着性試験を行った。なお、6時間及び24時間かけてバクテリアの培養を行う際には、2.5時間が経過した時点で培地1mLを更に添加して試験を継続した。大腸菌に代えて、表皮ブドウ球菌及びストレプトコッカス・ミュータンス菌のそれぞれを用いて、複合体のバクテリア付着性試験を行った。試験結果の評価は、SEM観察により行った。
<SEM観察>
バクテリア付着性試験後の複合体をPBSで穏やかに洗浄して、複合体に付着していないバクテリアを除去した。複合体の表面に付着したバクテリアを2.5%のグルタルアルデヒド水溶液を用いて、37℃、24時間かけて複合体に固定化させる処理を行った。この固定化処理の後、複合体を、PBSバッファーで2回洗浄した後、不要なグルタルアルデヒドを除去した。グルタルアルデヒドの除去は、10%エタノール水溶液に5分間、30%エタノール水溶液に5分間、50%エタノール水溶液に5分間、60%グルタルアルデヒド水溶液に5分間、70%グルタルアルデヒドに5分間、80%グルタルアルデヒド水溶液に5分間、90%グルタルアルデヒド水溶液に10分間、100%エタノール(水なし)に10分間、及び再度100%エタノールに10分間浸漬することによって行った。
上記のようにして、バクテリア中の水をエタノールに置換した後に、37℃のインキュベーター中で一晩乾燥させた。複合体の表面に付着したバクテリアの数をSEMによって観察した。結果を図6及び図7に示す。図6及び図7には、比較のために、比較例2のTi合金ペレットを用いて同様のバクテリア付着性試験を行った結果を併記した。
図6は、バクテリア付着性試験の結果を示すグラフである。図7は、バクテリア付着性試験後の複合体表面を示すSEM観察画像である。図6に示す結果から、比較例2のTi合金ペレットの表面には、大腸菌が付着して、時間の経過とともに大腸菌の付着面積の割合が増加することが確認された。また表皮ブドウ球菌及びストレプトコッカス・ミュータンス菌に対しても同様の傾向が確認された。一方、実施例1で調製した複合体では、大腸菌、表皮ブドウ球菌及びストレプトコッカス・ミュータンス菌のいずれのバクテリアも付着が非常に少ないことが確認された。
実施例1で調製した複合体には大腸菌の付着がほぼなく、表皮ブドウ球菌及びストレプトコッカス・ミュータンス菌の付着量をみても、比較例2のTi合金ペレットと比較して約10分の1程度となっており、バクテリアの付着が抑制されていることが確認された。
[複合体の細胞付着性試験(in vitrо)]
細胞付着性試験を行い、複合体の細胞生着を促進する性能を評価した。細胞として、MC3T3-E1細胞(マウス由来の骨芽細胞)を用いた。MC3T3-E1細胞は、5%COに調製した培地を用いて、37℃の条件下で24時間、48時間、又は72時間、培養した。具体的には、10%の組織培養用牛胎児血清(FBS)及び2%のペニシリン-ストレプトマイシン溶液を補充した培地(Gibco製、商品名:MEMα)を使用した。MC3T3-E1細胞は、東京医科歯科大学から提供されたものを用いた。
実施例1及び比較例2で調製した複合体を、70%エタノールと脱イオン水とで洗浄して減菌処理した。その後、複合体を48穴プレートに入れて、各ウェルに培養した細胞を1×10細胞/ウェルとなるように播種し、5%COの調整培地を加えて、37℃、加湿雰囲気下で1日間かけて、細胞培養を行った。細胞培養にかける時間を2日間及び3日間として、同じ実験を行った。試験結果の評価は、蛍光顕微鏡観察によって行った。
<細胞の染色>
細胞接着性試験後の複合体をPBSで穏やかに洗浄して、複合体に付着できていない細胞を除去した。複合体に付着した細胞を4%のホルムアルデヒドで10分間かけて複合体に固定した。その後、PBSで各5分間、3回の洗浄を行った。次に、細胞を0.2%のオクチルフェノールエトキシレート(ダウ・ケミカル日本株式社製、商品名:Triton X-100)で10分間かけて透過処理した。次に、PBSで各5分間、3回の洗浄を行った。透過処理後の細胞を、PBS中の2%のウシ血清アルブミン(BSA)で30分間の条件下で細胞培養を行い、非特異的なタンパク質-タンパク質相互作用をブロックした。さらに、PBSで各5分間、3回の洗浄を行った。
次に、アクチン染色のために、細胞を蛍光ファロイジン(Cytoskeleton社製、商品名:Acti-stain TM 488)を加えて、1時間培養することで、細胞骨格アクチンを可視化した。その後、PBSで各5分間、3回の洗浄を行った。フィブロネクチン(Fn)免疫染色では、細胞を一次抗体(ab2413、Abcam社製、PBS(-)バッファー(希釈剤)で、1:200に希釈)と共に1時間培養した後、PBSで各5分間、3回の洗浄を行った。次いで、二次抗体(ab150077、Abcam社製、PBS(-)バッファー(希釈剤)で、1:1000に希釈)で45分間染色して、PBSで各5分間の3回洗浄を行った。4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を用いて細胞核を染色した。複合体上における全細胞形態及びFn分布を、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM、Olympus株式会社製、商品名:FluoView FV1200)によって観察した。結果を図8及び図9に示す。
図8は細胞付着性試験の結果である。図8は、複合体への細胞の付着量を単位面積当たりに換算した細胞付着量(×10/mm)と、細胞の培養時間との関係を示している。図8に示す結果から、細胞の培養時間が増加するにつれて、複合体への細胞付着量が増加していることが確認された。実施例1の複合体では、比較例2のTi合金ペレットと比較して、細胞の付着が促進されていることが確認できた。
図9は、細胞付着性試験の結果の一部を示す蛍光顕微鏡写真である。図9の(A)は、細胞の培養時間が1日間の結果を示しており、図9の(B)は、細胞の培養時間が2日間の結果を示しており、また図9の(C)は、細胞の時間が3日間の結果を示している。実施例1の複合体を用いた場合、図9の(A)に示す結果から、細胞がより多くの細胞骨格を発達させていることが確認できる。実施例1の複合体を用いた場合、図9の(B)に示す結果から、細胞はその細胞の周縁部により多くのラメラ構造を形成しており、紡錘形線維芽細胞様形状で伸長していることが確認された。実施例1の複合体を用いた場合、図9の(C)に示す結果から、細胞は完全に伸長しており、多数の糸状仮足及びラメリポディアを有するポリトナール形状で広がりを示し、細胞間接触も観察された。一方、比較例2のTi合金ペレットではこのような傾向はみられなかった。図9に示す結果からも、実施例1で調製した複合体では、比較例2のTi合金ペレットと比較して、細胞の付着が促進されていることが確認できた。
[複合体へのカルシウム析出、及びタンパク質吸着の観察]
口腔環境下における複合体の性能を評価するため、実施例1で調製した複合体を人工唾液溶液に浸漬して、複合体上へのカルシウム析出及びFn吸着の観察を行った。人工唾液溶液は、塩化カルシウム(CaCl、1.5mM)、リン酸カリウム(KHPO、0.9mM)、塩化カリウム(KCl、130mM)、アジ化ナトリウム(NaN、1.0mM)、及び4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES、20mM)を含むバッファーを、水酸化カリウム(KOH)を用いてpH7.0に調整したものを用いた。この溶液を毎日交換しながら14日間、37℃でインキュベートした。1日間後、2日間後、7日間後及び14日間後に、浸漬していた複合体を取出し、多量の水で洗浄した後、窒素の気流で乾燥させた。乾燥後の複合体の表面をXPSで解析した。XPSスペクトルにおいてCa(2p)のピークが観測され、Caが析出していること確認した。検出されたCaの濃度をまとめて、図10に示す。図10には、比較のため、比較例2のTi合金ペレットを用いて同様の実験を行った結果を併記した。
2日間の人工唾液溶液に浸漬した複合体をタンパク質吸着実験に使用した。タンパク質として、フィブロネクチン(Fibronectin:Fn、ヒト血漿由来、Sigma-Aldrich社製)を用い、10μg/mLのFn溶液(PBS緩衝液に溶解)を調製した。調製したFn溶液0.5mLを複合体上に添加した。37℃、1時間かけて培養した。その後、複合体をPBSで2回洗浄し、さらに水で3回洗浄し、窒素の気流で乾燥させた。乾燥後の複合体の表面をXPSで解析した。XPSスペクトルにおいてN(1s)のピークが観測され、フィブロネクチンが吸着していることを確認した。検出された窒素濃度をまとめて、図11に示す。図11には、比較のため、比較例2のTi合金ペレットを用いて同様の実験を行った結果を併記した。
図10に示す結果から、実施例1で調製した複合体の方が、比較例2のTi合金ペレットに比べて、カルシウムが早く析出していることが確認された。また、図11に示す結果から、カルシウムの析出量が多いことで、複合体上へのタンパク質の付着量も増加することが確認された。骨芽細胞に対しても同様の傾向が得られるものと考えられ、実施例1で調製された複合材は、口腔環境下で使用されるインプラントとしても有用であることが確認された。
10…基材、20…有機層、100…複合体。

Claims (7)

  1. チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材と、当該基材の表面の少なくとも一部を覆う有機層とを備え、
    前記有機層が、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有し、
    前記高分子の重量平均分子量は、10000~1000000であり、
    前記高分子が下記一般式(1)で表され、下記一般式(1)中、mは1~70である、複合体。
    Figure 0007141084000006
  2. ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられる、請求項1に記載の複合体。
  3. 金属を含む基材と、当該基材の表面の少なくとも一部を覆う有機層とを備え、
    前記有機層が、オキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有し、
    前記高分子の重量平均分子量は、10000~1000000であり、
    前記高分子が下記一般式(1)で表され、下記一般式(1)中、mは1~70であり、
    ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられる、複合体。
    Figure 0007141084000007
  4. 複合体の製造方法であって、
    チタン及びチタン合金の少なくとも一方を含む基材の表面を酸処理する第一工程と、
    酸処理した基材の表面の少なくとも一部にオキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する有機層を形成する第二工程と、を備え、
    前記高分子の重量平均分子量は、10000~1000000であり、
    前記高分子が下記一般式(1)で表され、下記一般式(1)中、mは1~70である、複合体の製造方法。
    Figure 0007141084000008
  5. 複合体の製造方法であって、
    金属を含む基材の表面を酸処理する第一工程と、
    酸処理した基材の表面の少なくとも一部にオキシアルキレン基及びホスフェート基を有する高分子を含有する有機層を形成する第二工程と、を備え、
    前記高分子の重量平均分子量は、10000~1000000であり、
    前記高分子が下記一般式(1)で表され、下記一般式(1)中、mは1~70であり、
    前記複合体が、ステント、インプラント、人工関節、人工骨又は整形外科用固定具に用いられる、複合体の製造方法。
    Figure 0007141084000009
  6. 前記第二工程では、酸処理した基材の表面に、前記高分子を含有する溶液を接触させることで前記有機層を形成する、請求項4又は5に記載の製造方法。
  7. 前記第一工程と前記第二工程との間に、酸処理した基材の表面をオゾン処理する工程を備える、請求項4~6のいずれか一項に記載の製造方法。
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