JP7138921B2 - 手術用器具 - Google Patents

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Description

本発明は、筋肉の腱を、その停止部が付着している骨の部分とともに該骨から分離するために使用される手術用器具に関する。
従来、人工股関節手術として、人工股関節置換術(total hip arthroplasty)及び人工骨頭置換術(femoral head prosthetic replacement)が知られている。人工股関節置換術は、股関節の損傷した部分を骨盤側の骨も併せて除去し、人工関節に置換する手術である。人工骨頭置換術は、大腿骨頭のみを人工骨頭に置換する術式である。
これらの術式において、術中に短外旋筋(梨状筋、内閉鎖筋、上・下双子筋、大腿方形筋及び外閉鎖筋からなる)の腱が切り離される場合と温存される場合とがある。温存される方が、内閉鎖筋に萎縮変化が生じ難く、好ましいことが知られている(非特許文献1、2参照)。
また、手術中に切り離した短外旋筋腱を再縫合することにより術後の脱臼率を低下させることも行われている。この場合、縫合部が離開してしまい、脱臼が生じることが指摘されている。そこで、縫合部の離開を防止して脱臼率を低下させるために、手術の開始時に短外旋筋腱を、その停止部が付着している骨の部分とともに大腿骨から分離し、手術終了時に、その骨片付きの短外旋筋腱を大腿骨に再縫合することが行われている。
この方法によれば、骨片が縫合糸のアンカーの機能を果たして短外旋筋腱の縫合強度を高め、術後に縫合部が離開する確率を低減できることが確認されている。
Yong Sik Kim、他5名、「Modified Posterior Approach to Total Hip Arthroplasty to Enhance Joint Stability」、 HYPERLINK "https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2505149/" Clin Orthop Relat Res. 2008 Feb; 466(2): 294-299. Stahelin T、他4名、「Failure of capsular enhanced short external rotator repair after total hip replacement」、 Clin Orthop Relat Res. 2004;420:199-204.
しかしながら、上記の骨片付き短外旋筋腱を再縫合する術式によれば、短外旋筋腱をその停止部が付着している骨部分とともに大腿骨から分離する際に、骨ノミを巧みに使用する必要があるので、かかる術式を採用するには、高度に熟練した手業が必要とされる。
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、筋肉の腱を、その停止部が付着している骨の部分とともに該骨から容易に分離することを可能にする手術用器具を提供することにある。
第1発明に係る手術用器具は、腱を、該腱の停止部が付着している骨の部分である骨付着部分とともに該骨から分離する手術用器具であって、前端側が開放され、前記骨の前記骨側付着部分の周囲に打ち込まれる部分円筒状の内側機能部と、前記内側機能部の周りで、周方向に所定の角度範囲内で往復回転されることにより、又は該内側機能部の中心軸線方向に往復駆動されることにより、前記骨側付着部分の周囲に切込みを形成する外側機能部とを備えることを特徴とする。
第1発明によれば、腱を、その停止部が付着している骨側付着部分とともに骨から分離する際には、まず、骨の骨側付着部分の周りに内側機能部が腱と干渉しないように打ち込まれる。
次に、外側機能部が、周方向に所定の角度範囲内で往復回転されることにより、又は該内側機能部の中心軸線方向に往復駆動されることにより、骨側付着部分の周囲に切込みが形成される。
この後、内側機能部及び外側機能部を引き抜くことにより、骨側付着部分の骨片と共に腱の停止部が骨から分離される。したがって、第1発明によれば、容易に、腱を骨片付きで骨から分離することができる。
本発明における好ましい態様においては、前記内側機能部は、前端部が、前記骨の前記骨側付着部分の周りに打ち込まれる打込刃を構成し、該打込刃よりも後端側が、該打込刃が周りに打ち込まれる該骨側付着部分に付着している前記腱の停止部との干渉を回避して該腱を保護する腱保護部を構成しており、前記外側機能部は、前端部が、前記骨の前記骨側付着部分の周りに打ち込まれた前記打込刃の周りにおける前記往復回転又は前記往復駆動により前記骨に切込みを形成する切込刃を構成している。
これによれば、腱保護部により腱の停止部との干渉を回避して腱を保護しながら、内側機能部の打込み及び外側機能部による切込みの形成を、適切に行うことができる。
本発明において、前記打込刃は、前端が尖った数個の打込切先部を有するのが好ましい。これによれば、打込刃を当該骨の骨側付着部分の周りに、容易に打ち込むことができる。
本発明において、前記打込刃は、各打込切先部の後方両側に、後方に延びた刃部を有するのが好ましい。
これによれば、打込刃が剣の先端部により構成されたような形態を有するので、打込刃の打込みをより容易に行うことができる。
本発明において、前記切込刃は切込切先部を有し、各切込切先部は鋸状の刃を有するのが好ましい。
これによれば、骨側付着部分の周りにおける上述の切込みの形成を容易に行うことができる。
本発明において、前記外側機能部が、前記内側機能部の周りで、周方向に所定の角度範囲内で往復回転されることにより前記骨側付着部分の周囲に切込みを形成するものである場合には、前記内側機能部は、前記外側機能部の往復回転の範囲を前記所定の角度範囲内に限定して前記腱を保護する2つの腱保護壁を備えるのが好ましい。
これによれば、腱保護部に停止部が位置する腱に外側機能部が接触するのを確実に防止しながら、内側機能部に対する外側機能部の往復回転を行うことができる。
本発明において、前記内側機能部は、円柱状の外形を有する棒状部材の先端に設けられて、該棒状部材とともに内側部を構成しており、前記外側機能部は、前端側が開放した円筒状部材の先端に設けられて、該円筒状部材とともに外側部を構成しており、前記外側部は、前記内側部に対して、該内側部の周りで前記往復回転又は前記往復駆動が可能な状態で該内側部の外側に嵌合し得るように構成されていてもよい。
本発明の一実施形態に係る手術用器具により腱の停止部が付着している骨側付着部分とともに腱を骨から分離する手順を示す模式的な第1の斜視図である。 前記手順を示す第2の斜視図である。 前記手順を示す第3の斜視図である。 前記手順を示す第4の斜視図である。 前記手順を示す第5の斜視図である。 前記手順を示す第6の斜視図である。 図2A~図2Dは、それぞれ図1の手術用器具の内側部の正面図、平面図、側面図及び断面図である。 図3A~図3Eは、それぞれ図1の手術用器具の外側部の正面図、平面図、下面図、左側面図及び右側面図である。 図4Aは、図1Fの状態における手術用器具の先端部分を示す断面図であり、図4Bは、図4Aにおける腱の停止部が付着している骨片としての骨側付着部分を示す平面図である。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1A~図1Fは、本発明の一実施形態に係る手術用器具を使用する様子を示す。図1A~図1Fに示すように、この手術用器具1(図1C参照)は、対象となる筋肉2の腱3を、腱3の停止部が付着している骨4の部分である骨側付着部分5とともに骨4から分離するために使用される。
骨4としては、例えば、大腿骨が該当する。筋肉2及び腱3としては、大腿骨に接続した短外旋筋腱が該当する。なお、図1A~図1Fでは、内閉鎖筋と上・下双子筋(筋肉2)の共同腱(腱3)を大腿骨(骨4)から分離する様子が示されている。
手術用器具1は、内側部6と、内側部6を回転軸として回転し、かつ該回転軸方向に進退し得るように内側部6の外側に嵌合される外側部7(図1C参照)とを備える。内側部6は、円柱状の外形を有する棒状部材8と、棒状部材8の先端に設けられ、前端側が開放された部分円筒状の内側機能部9とで構成される。
外側部7は、前端側が開放された円筒状部材10と、円筒状部材10の前端に設けられ、前端側が開放された部分円筒状の外側機能部11とで構成される。したがって、外側機能部11は、内側機能部9の周りで周方向に所定の角度範囲内で往復回転しかつ回転軸線方向に進退し得るように内側機能部9の外側に嵌合される。
図2A~図2Dは、手術用器具1の内側部6を示す。図2A~図2Dから理解されるように、内側機能部9の横断面は、ほぼ、第1中心角θ1を有する円弧状の形状を有する。内側機能部9は、前端部が、骨4の骨側付着部分5の周りに打ち込まれる打込刃12を構成する。打込刃12は、前端が剣先状に尖った数個、例えば3個の打込切先部13を有する。
また、打込刃12は、各打込切先部13の後方両側に刃部14を有する。隣り合う打込刃12の刃部14と刃部14との間に間隔dを有する(図2C参照)。内側機能部9は、打込刃12よりも後端側が、打込刃12の打込みに際して骨側付着部分5に付着している腱3の停止部15との干渉を回避して停止部15を保護する腱保護部16を構成している。
また、内側機能部9には、腱保護部16の部分円筒状の形状における軸線方向に平行な両側の端縁部分から外方に向かって立設された2つの腱保護壁17が設けられる。この2つの腱保護壁17は、それぞれの後端が接続されており、該接続部分を含む全体として、図2Bの平面図のように、U字状の壁を構成する。
図2Dの断面図で示されるように、腱保護部16及び腱保護壁17は、内側部6の棒状部材8に前端側から嵌合して溶接された嵌合部材18により一体的に形成される。したがって、内側機能部9の横断面形状である部分円筒形状の内径は、腱保護部16の主要部においては、その前端側の打込刃12の部分よりも若干小さい。
内側部6の後端部には、棒状部材8の本体に後端側から嵌合して溶接されたノックキャップ19が設けられる。ノックキャップ19は、内側部6を骨4に打ち込むときに、ハンマー等20(図1A参照)により与える打撃を受ける部分である。
図3A~図3Eは、手術用器具1の外側部7を示す。図3A~図3Eに示されるように、外側部7の外側機能部11の横断面は、第1中心角θ1よりも小さい第2中心角θ2を有する円弧状の形状を有する。
外側機能部11は、前端部が、骨4の骨側付着部分5の周りに切込みを形成するための切込刃21を構成している。外側機能部11は、円筒状部材10とは別の切込刃21の形成に適した部材によって構成される。切込刃21は、先端が鈍角の内角を成して尖った数個の切込切先部22を有し、各切込切先部22は鋸状の刃23を有する(図3Cの拡大表示部を参照)。
内側機能部9及び外側機能部11は、第1中心角θ1を第2中心角θ2が逸脱しない範囲で内側機能部9に対する外側機能部11の往復回転が行われるように該往復回転の範囲を規制する規制部を備える。この規制部は、本実施形態では、上述の腱保護壁17と、外側機能部11の部分円筒状の形状における中心軸線方向にほぼ平行な端縁部分24とで構成される。
この規制部は、腱保護部16により保護されている腱3に外側機能部11が接触することなく内側部6に対して外側部7を往復回転させ得るように内側部6に対する外側部7の回転位置を制限する。
外側部7の後端部には、外側部7を内側部6の外側に嵌合させ、内側部6を軸として往復回転させるために術者が把持するグリップ25が設けられる。
手術用器具1を用いて、術者が、腱3の停止部15が付着している骨4の骨側付着部分5とともに腱3を骨4から分離する際には、まず、術者は、図1Aのように、骨4の骨側付着部分5の周りに打込刃12が位置するように、内側部6を骨4に対して位置付ける。そして、内側部6の後端部にハンマー等20で打撃を与え、内側部6を骨4に打ち込む。
これにより、図1Bのように、打込刃12が骨4内に打ち込まれ、腱3の停止部15が内側機能部9の腱保護部16内に位置する。なお、腱3の他の部分は、内側機能部9の側壁の開放している部分を経て筋肉2に繋がっている。
次に、図1Cのように、外側部7を内側部6の外側に嵌合させる。このとき、外側機能部11の部分円筒状の形状における軸線方向に平行な両側の端縁部分24が2つの腱保護壁17の外側に位置するように内側部6に対する外側部7の位置が調整される。すなわち、腱保護部16に停止部15が収容されている腱3に外側機能部11が接触することが阻止される。
次に、図1Dのように、外側部7を、グリップ25により骨4に押し当てながら内側部6に対して往復回転させる。すなわち、外側部7は、外側機能部11の一方の端縁部分24が一方の腱保護壁17に当接する回転位置と、外側機能部11の他方の端縁部分24が他方の腱保護壁17に当接する回転位置との間で往復回転される。したがって、この間、腱3に対して外側機能部11が接触することが、腱保護壁17により防止される。
この外側部7の往復回転により、図1Eのように、外側部7の切込刃21によって骨4の骨側付着部分5の周りに切込みが形成される。この後、図1Fのように、内側部6及び外側部7を引き抜くことにより、骨側付着部分5の骨片とともに、これに停止部15が定着している腱3を、骨4から分離することができる。
図4A及び図4Bは、図1Fの状態における手術用器具1の先端部分の断面を示しており、図4Bは、図4A中の腱3の停止部15が付着している骨側付着部分5を示している。骨側付着部分5の周りに切込みが形成され、腱3が骨4から分離される際には、図4Aに示すように、腱3及びその停止部15が腱保護部16及び腱保護壁17により保護されながら、切込みの形成及び骨4からの分離が行われることがわかる。
また、図4Bに示されるように、骨5から分離された骨片としての骨側付着部分5は、ほぼ円状に形成された切込みに沿って骨4から分離されるので、ほぼ円盤状の形状を有する。
以上のように、本実施形態によれば、骨ノミを巧みに使用する高度な手業を要することなく、骨4から腱3を骨片付きで容易に分離することができる。
その際に、打込刃12は、前端が剣先状に尖った打込切先部13を有し、さらに剣の先端部のように構成されているので、打込刃12を骨側付着部分5の周りに、容易に打ち込むことができる。
また、切込刃21は、先端が鈍角の内角を成して尖った数個の切込切先部22を有し、各切込切先部22は鋸状の刃23を有するので、骨側付着部分5の周りにおける切込みの形成を容易に行うことができる。
また、内側部6に対する外側部7の位置及び回転範囲を規制する規制部を腱保護壁17と、外側機能部11の端縁部分24とで構成したので、腱保護部16内に停止部15が位置する腱3に外側機能部11が接触するのを確実に防止しながら、上記の往復回転を行うことができる。
また、上述の骨側付着部分5とともに腱3を骨4から分離する手順は、人工股関節手術としての人工股関節置換術(total hip arthroplasty)及び人工骨頭置換術(femoral head prosthetic replacement)に適用することができる。
すなわち、かかる手術の開始時に内閉鎖筋腱等が、上述の図1A~図1Fのようにして、その停止部が付着している骨部分を骨片として付けたまま大腿骨から分離される。そして、手術終了時に、その骨片付き内閉鎖筋腱等が大腿骨に再縫合される。これにより、骨片が縫合糸のアンカーの機能を果たして内閉鎖筋腱等の縫合強度を高め、術後に縫合部が離開する確率を低減させ、術後の脱臼率を低下させることができる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、適宜変更して実施することができる。例えば、内側機能部9に対する外側機能部11の位置及び回転範囲を規制する規制部は、腱3に外側機能部11が接触して腱3が損傷するのを防止できるものであれば、内側機能部9及び外側機能部11以外の内側部6及び外側部7の部分に設けてもよい。このような規制部は、例えば、内側部6の棒状部材8に設けた凸部と、これと協働するように外側部7の円筒状部材10に設けたスリットとで構成することができる。
また、各部の寸法及び構成は、適用する腱及び骨の種類に応じ、本発明の範囲内において種々変更可能である。例えば、内側機能部9の横断面の円弧形状の第1中心角θ1及び外側機能部11の横断面の円弧形状の第2中心角θ2は、θ2<θ1を満たす限り、軸線方向において変化していてもよい。
また、内側機能部9の打込刃や外側機能部11の切込刃は、上記のような骨への打込みや骨に対する切込みの形成を可能とするものであれば、上記の形状に限定されることは無い。
また、上述の骨側付着部分5とともに腱3を骨4から分離する手順は、人工股関節手術に限らず、腱を骨片とともに骨から分離することが必要とされる他の手術や人体以外の手術にも適用することができる。
さらに、外側機能部11は、内側機能部9の中心軸線方向に往復駆動されることにより、骨側付着部分5の周囲に切込みを形成するものであってもよい。
1…手術用器具、2…筋肉、3…腱、4…骨、5…骨側付着部分、6…内側部、7…外側部、8…棒状部材、9…内側機能部、10…円筒状部材、11…外側機能部、12…打込刃、13…打込切先部、14…刃部、15…停止部、16…腱保護部、17…腱保護壁、18…嵌合部材、19…ノックキャップ、20…ハンマー等、21…切込刃、22…切込切先部、23…鋸状の刃、24…端縁部分、25…グリップ。

Claims (2)

  1. 腱を、該腱の停止部が付着している骨の部分である骨側付着部分とともに該骨から分離する手術用器具であって、
    前端側が開放され、前記骨の前記骨側付着部分の周囲に打ち込まれる部分円筒状の内側機能部と、
    前記内側機能部の周りで、周方向に所定の角度範囲内で往復回転されることにより、又は該内側機能部の中心軸線方向に往復駆動されることにより、前記骨側付着部分の周囲に切込みを形成する外側機能部とを備えることを特徴とする手術用器具。
  2. 前記内側機能部は、前端部が、前記骨の前記骨側付着部分の周りに打ち込まれる打込刃を構成し、該打込刃よりも後端側が、該打込刃が周りに打ち込まれた該骨側付着部分に付着している前記腱の停止部を保護する腱保護部を構成しており、
    前記外側機能部は、前端部が、前記骨の前記骨側付着部分の周りに打ち込まれた前記打込刃の周りにおける前記往復回転又は前記往復駆動により前記骨に切込みを形成する切込刃を構成していることを特徴とする請求項1に記載の手術用器具。
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