本発明は、アンジオポエチン様タンパク質8(ANGPTL8)に結合する抗体およびその抗原結合断片を提供する。本発明の一態様は、ANGPTL8に結合し/と相互作用し、それによりそのような結合および/または相互作用が哺乳動物でのトリグリセリドレベルを低下させるヒト抗体およびその抗原結合断片を提供する。
したがって、第1の態様では、本発明は、ANGPTL8、特にヒトANGPTL8(ジェンバンク受託番号NP_061157.3のアミノ酸22~198=配列番号340のアミノ酸1~177)に特異的に結合し、その少なくとも1つの活性を中和し、阻害し、遮断し、抑止し、低減し、または妨害する完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)およびその抗原結合断片を提供する。本発明の抗体またはその抗原結合断片が中和し、阻害し、遮断し、抑止し、低減しまたは妨害することが可能であるANGPTL8の活性は、ANGPTL8によるLPL活性の阻害を含むがこれに限定されない。
一実施形態では、本発明は、ANGPTL8に特異的に結合し、ANGPTL8に関連する少なくとも1つの活性を中和するまたは阻害するモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片が以下の特徴:
a)完全ヒトモノクローナル抗体である;
b)配列番号337により定義されるヒトANGPTL8のN末端領域での線形エピトープに特異的に結合する;
c)配列番号337により定義されるヒトANGPTL8のN末端領域での線形エピトープに結合しない;
d)配列番号338のヒトANGPTL3ペプチドのN末端コイルドコイル領域にも、配列番号339のヒトANGPTL4ペプチドのN末端コイルドコイル領域にも結合しない;
e)表面プラズモン共鳴により測定した場合、25℃、約150pM未満のKDでヒトANGPTL8に結合し、25℃、約90pM未満のKDでサルANGPTL8に結合する;
f)約10mg/kgの用量で皮下に投与された場合、哺乳動物においてトリグリセリドレベルを約68%(最大)低下させる;
g)約5mg/kgから約25mg/kgの範囲に及ぶ用量で皮下に投与された場合、約7日から21日の範囲に及ぶ期間、哺乳動物においてトリグリセリドレベルを低下させる;
h)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、266、274、282、290、298、306、314および330からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む;
i)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、および322からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む;または
j)参照抗体と交差競合し、参照抗体が表1のHCVRおよびLCVRアミノ酸配列のいずれかからなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列を含む;
のうちの1つまたはそれ以上を示す。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、hANGPTL8の標的活性(例えば、ANGPTL8のLPL阻害活性)に直接関与しているhANGPTL8のエピトープに結合することにより、hANGPTL8の活性を中和する、阻害する、遮断する、抑止する、低減するまたは妨害することが可能である。別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、トリグリセリドクリアランスを改善する。
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片は、hANGPTL8の標的活性に直接関与していないhANGPTL8のエピトープに結合することにより、hANGPTL8の活性を中和する、阻害する、遮断する、抑止する、低減するまたは妨害することが可能であるが、それに結合する抗体または断片は、立体的オーバーラップによりまたは抗体-抗原接触表面とは異なる部位でのアロリスティック効果によりhANGPTL8の標的活性を阻害する、遮断する、抑止する、低減するまたは妨害する場合もある。
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原断片は、hANGPTL8の標的活性(例えば、LPL活性を阻害するなど)に直接関与していないhANGPTL8のエピトープに結合する(すなわち、非遮断抗体)が、抗体またはその断片は、抗体もその断片も非存在下でのトリグリセリドレベルの低下と比べて、in vivoでのトリグリセリドレベルの低下をもたらす。
一実施形態では、本発明は、配列番号340の残基1~39(配列番号337としても示される)でのN末端領域内に位置しているエピトープに結合する単離された抗hANGPTL8抗体またはその抗原結合断片を特色とする。
別の実施形態では、本発明は、配列番号340の残基1~39(配列番号337としても示される)でのヒトANGPTL8のN末端領域内に位置しているエピトープに結合するが、hANGPTL3(配列番号338)のN末端コイルドコイル領域にも、hANGPTL4(配列番号339)のN末端コイルドコイル領域にも結合しない単離された抗体または抗体の抗原結合断片を提供する。
一実施形態では、本発明は、配列番号340のアミノ酸残基1~39(配列番号337としても示される)により定義されるヒトANGPTL8の領域の外側、すなわち、配列番号340のアミノ酸残基40~177に位置しているエピトープに結合し、hANGPTL8の少なくとも1つの活性を中和する、阻害する、抑止する、低減するまたは妨害する単離された抗hANGPTL8抗体またはその抗原結合断片を特色とする。
一実施形態では、本発明は、ヒトANGPTL8(配列番号340のアミノ酸残基1~177;ジェンバンク受託番号NP_061157.3のアミノ酸残基22~198も参照)に結合するが、ヒトANGPTL3(配列番号342のアミノ酸配列、配列番号343で示される核酸配列によりコードされる)、またはヒトANGPTL4(配列番号344のアミノ酸配列、配列番号345で示される核酸配列によりコードされる)のような関係するタンパク質とは交差反応しない単離された抗hANGPTL8抗体またはその抗原結合断片を特色とする。
本発明の抗体は完全長(例えば、IgG1またはIgG4抗体)が可能である、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2またはscFv断片)のみを含んでいてもよく、機能性に影響を及ぼす、例えば、宿主における持続性を増加するまたは残留エフェクター機能を取り除くように改変してもよい(Reddyら、2000年、J.Immunol.164:1925~1933頁)。ある特定の実施形態では、抗体は二重特異性でもよい。
本発明の例示的抗ANGPTL8抗体は本明細書の表1および2に収載されている。表1は、例示的抗ANGPTL8抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子を示している。表2は、例示的抗ANGPTL8抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2およびLCDR3の核酸配列識別子を示している。
本発明は、表1に収載されるHCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含むHCVRを含む抗体、もしくはその抗原結合断片を提供する。
本発明は、表1に収載されるLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含むLCVRを含む抗体、もしくはその抗原結合断片も提供する。
本発明は、表1に収載されるLCVRアミノ酸配列のいずれかと対になった表1に収載されるHCVRアミノ酸配列のいずれかを含むHCVRとLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む抗体、またはその抗原結合断片も提供する。
一実施形態では、本発明は、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/250、266/250、274/250、282/250、290/250、306/250、314/322、および330/322からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
一実施形態では、本発明は、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号66/74、162/170、194/202および314/322からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
一実施形態では、本発明は、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号162/170のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
一実施形態では、本発明は、ANGPTL8に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその抗原結合断片は、(a)表1に示される重鎖可変領域(HCVR)配列のいずれか1つ内に含有される3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2およびHCDR3);および(b)表1に示される軽鎖可変領域(LCVR)配列のいずれか1つ内に含有される3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)を含む。
一実施形態では、本発明は、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体または抗原結合断片は
(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、268、276、284、292、300、308、316および332からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、270、278、286、294、302、310、318、および334からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、272、280、288、296、304、312、320および336からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252および324からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、および326からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256および328からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン
を含む。
本発明は、表1に収載されるHCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。
本発明は、表1に収載されるHCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。
本発明は、表1に収載されるHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。
本発明は、表1に収載されるLCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)を含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。
本発明は、表1に収載されるLCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)を含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。
本発明は、表1に収載されるLCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)を含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。
本発明は、表1に収載されるLCDR3アミノ酸配列のいずれかと対になった表1に収載されるHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含むHCDR3とLCDR3のアミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。ある特定の実施形態に従えば、本発明は、表1に収載される例示的抗ANGPTL8抗体のいずれか内に含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は配列番号72/80(例えば、H4H15321P)、168/176(例えば、H4H15341P)、200/208(例えば、H4H15345P)、および320/328(例えば、H4H15367P2)からなる群から選択される。一実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は配列番号168/176(例えば、H4H15341P)である。
本発明は、表1に収載される例示的抗ANGPTL8抗体のいずれか内に含有される6つのCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む抗体またはその抗原結合断片も提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号68-70-72-76-78-80(例えば、H4H15321P);164-166-168-172-174-176(例えば、H4H15341P);196-198-200-204-206-208(例えば、H4H15345P);316-318-320-324-326-328(例えば、H4H15367P2)からなる群から選択される。一実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号164-166-168-172-174-176(例えば、H4H15341P)である。
関係する実施形態では、本発明は、表1に収載される例示的抗ANGPTL8抗体のいずれかにより定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有される6つのCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む抗体またはその抗原結合断片を提供する。例えば、本発明は、配列番号66/74(例えば、H4H15321P)、162/170(例えば、H4H15341P);194/202(例えば、H4H15345P);314/322(例えば、H415367P2)からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含有されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む抗体またはその抗原結合断片を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は当技術分野では周知であり、本明細書で開示される特定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するのに使用することが可能である。CDRの境界を同定するのに使用することが可能な例示的慣行は、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義を含む。一般的に言えば、Kabat定義は配列可変性に基づいており、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づいており、AbM定義はKabatとChothiaアプローチの折衷案である。例えば、Kabat、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991);Al-Lazikaniら、J.Mol.Biol.273:927~948頁(1997);およびMartinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268~9272頁(1989)を参照されたい。抗体内のCDR配列を同定するのに公開のデータベースも利用可能である。
本発明は改変グリコシル化パターンを有する抗ANGPTL8抗体を含む。一部の実施形態では、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を高めるため、望ましくないグリコシル化部位を取り除く改変、またはオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠く抗体は有用になる場合がある(Shieldら、(2002)JBC 277:26733頁参照)。他の適用では、補体依存性細胞傷害(CDC)を改変するためにガラクトシル化に改変を加えることが可能である。
本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗体またはその抗原結合断片とANGPTL8への特異的結合に関して競合する抗体およびその抗原結合断片も提供し、HCVRおよびLCVRはそれぞれ表1に収載されるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、本発明は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/250、266/250、274/250、282/250、290/250、306/250、314/322、および330/322からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体とANGPTL8への結合に関して競合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
本発明は、HCVRのCDRおよびLCVRのCDRを含む参照抗体またはその抗原結合断片とANGPTL8上の同じエピトープに結合する抗体およびその抗原結合断片も提供し、HCVRおよびLCVRはそれぞれ表1に収載されるHCVRおよびLCVR配列から選択されるアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、本発明は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/250、266/250、274/250、282/250、290/250、306/250、314/322、および330/322からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体とANGPTL8上の同じエピトープに結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供する。
一実施形態では、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体は、組換え的に産生されたヒトモノクローナル抗体である。
一実施形態では、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体は、表1に見出されるアミノ酸配列から選択されるHCVRおよび/またはLCVR配列を有する組換え的に産生されたヒトモノクローナル抗体である。
一実施形態では、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/250、266/250、274/250、282/250、290/250、306/250、314/322、および330/322からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を有する組換え的に産生されたヒトモノクローナル抗体である。
一実施形態では、本発明は、ANGPTL8活性を中和する完全ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供し、抗体またはその断片は以下の特徴:(i)配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、266、274、282、290、298、306、314および330からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCVRを含む;(ii)配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、および322からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCVRを含む;(iii)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、272、280、288、296、304、312、320および336からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を有するHCDR3ドメイン;ならびに配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256および328からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を有するLCDR3ドメインを含む;(iv)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、268、276、284、292、300、308、316および332からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を有するHCDR1ドメイン;6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、270、278、286、294、302、310、318、および334からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を有するHCDR2ドメイン;配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252および324からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を有するLCDR1ドメイン;ならびに配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、および326からなる群から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を有するLCDR2ドメインを含む;(v)配列番号337により定義されるヒトANGPTL8のN末端領域に特異的に結合する;vi)配列番号337により定義されるヒトANGPTL8のN末端領域に特異的に結合しない;vii)配列番号338のヒトANGPTL3ペプチドのN末端コイルドコイル領域にも、配列番号339のヒトANGPTL4ペプチドのN末端コイルドコイル領域にも結合しない;viii)表面プラズモン共鳴により測定した場合、25℃、約150pM未満のKDでヒトANGPTL8に結合し、25℃、約90pM未満のKDでサルANGPTL8に結合する;ix)約10mg/kgの用量で皮下に投与された場合、哺乳動物においてトリグリセリドレベルを約68%(最大)低下させる;x)約5mg/kgから約25mg/kgの範囲に及ぶ用量で皮下に投与された場合、約7日から21日の範囲に及ぶ期間、哺乳動物においてトリグリセリドレベルを低下させる;xi)参照抗体と交差競合し、参照抗体が表1のHCVRおよびLCVRアミノ酸配列のいずれかからなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列を含む;のうちの1つまたはそれ以上を示す。
第2の態様では、本発明は、抗ANGPTL8抗体またはその部分をコードする核酸分子も提供する。例えば、本発明は、表1に収載されるHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し;ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、表1に収載されるLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、表1に収載されるHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるHCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、表1に収載されるHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるHCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、表1に収載されるHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるHCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、表1に収載されるLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるLCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、表1に収載されるLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるLCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、表1に収載されるLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供する。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるLCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。
本発明は、HCVRをコードする核酸分子も提供し、HCVRは3つのCDR(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)のセットを含み、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは表1に収載される例示的抗ANGPTL8抗体のいずれかにより定義される通りである。
本発明は、LCVRをコードする核酸分子も提供し、LCVRは3つのCDR(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含み、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは表1に収載される例示的抗ANGPTL8抗体のいずれかにより定義される通りである。
本発明は、HCVRとLCVRの両方をコードする核酸分子も提供し、HCVRは表1に収載されるHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRは表1に収載されるLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸分子は表2に収載されるHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列、および表2に収載されるLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%配列同一性を有するその実質的に類似する配列を含む。本発明の本態様に従ったある特定の実施形態では、核酸分子はHCVRおよびLCVRをコードし、HCVRおよびLCVRは両方とも表1に収載される同じ抗ANGPTL8抗体に由来する。
本発明は、抗ANGPTL8抗体の重または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組換え発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上記核酸分子、すなわち、表1に示されるHCVR、LCVR、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む組換え発現ベクターを含む。そのようなベクターが導入されている宿主細胞、ならびに、抗体または抗体断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養し、そのようにして産生された抗体および抗体断片を回収することにより抗体またはその部分を産生する方法も本発明の範囲内に含まれる。
一実施形態では、ANGPTL8に特異的に結合しおよび/またはこれに関連する少なくとも1つの活性を阻害する単離された抗体は、表2に見出される核酸配列から選択される核酸配列によりコードされるHCVRおよび/またはLCVRを有する組換え産生されたヒトモノクローナル抗体である。
一実施形態では、本発明は、ヒトANGPTL8に特異的に結合する抗体またはその断片をコードする単離された核酸分子を提供し、抗体またはその抗原結合断片は、(a)表1に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、および(b)表1に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む。
一実施形態では、本発明は、ヒトANGPTL8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を提供し、抗体または抗原結合断片は、表1に示されるアミノ酸配列からなる群から選択されるHCVRおよび表1に示されるアミノ酸配列からなる群から選択されるLCVRを含む。
第3の態様では、本発明は、ANGPTL8に特異的に結合する組換えヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
一実施形態では、本発明は、表1に見出される抗ANGPTL8抗体のいずれかの抗体またはその抗原結合断片から選択されるヒトANGPTL8に特異的な少なくとも1つの抗体および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
関係する態様では、本発明は、抗ANGPTL8抗体と第2の治療薬の組合せである組成物を特色とする。一実施形態では、第2の治療薬は、抗ANGPTL8抗体と有利に組み合わされる任意の薬剤である。
一実施形態では、第2の治療薬は、高グリセリド血症のような高グリセリドレベルを特徴とする疾患または状態に患っている患者においてトリグリセリドを低下させるまたは少なくとも1つの症状を低減させることができる薬剤でもよい。
ある特定の実施形態では、第2の治療薬は、本発明の抗体または抗体の抗原結合断片に関連するいかなる起こりうる副作用(複数可)も、そのような副作用(複数可)が万一起こった場合には、相殺するまたは低減する一助となる薬剤でもよい。
第2の治療薬は、小分子薬物、タンパク質/ポリペプチド、抗体、アンチセンス分子、またはsiRNAのような核酸分子でもよい。第2の治療薬は合成でも天然に由来するものでもよい。
本発明の抗体および薬学的に許容される組成物は他の組合せ療法で用いることが可能である、すなわち、抗体および薬学的に許容される組成物は、1つまたはそれ以上の他の所望の治療薬または医療処置と同時に、それに先立って、またはそれに続いて投与することが可能であることも認識される。組み合わせレジメンにおいて用いる療法(治療薬または処置)の特定の組合せは、所望の治療薬および/または処置の適合性ならびに達成される所望の治療効果を考慮することになる。用いる療法は同じ障害について所望の効果を達成することができる(例えば、抗体は同じ障害を処置するのに使用される別の薬剤と同時に投与してもよい)、または異なる効果を達成することができる(例えば、任意の有害作用の制御)ことも認識される。本明細書で使用される場合、特定の疾患、または状態を処置するまたは予防するために通常投与される追加の治療薬は、処置を受けている疾患、または状態に適している。
関係する実施形態では、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片と、(1)セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなどのような3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイムA(HMG-CoA)還元酵素阻害剤;(2)コレステロール取込みおよび/または胆汁酸再吸収の阻害剤;(3)ナイアシン、リポタンパク質異化作用を増加する;(4)フィブレートまたは両親媒性カルボン酸、TGレベル、低密度リポタンパク質(LDL)レベルを低下させ、高密度リポタンパク質(HDL)レベルを改善する;ならびに(5)22-ヒドロキシコレステロールのようなコレステロール除去において役割を果たすLXR転写因子の活性化因子、またはエゼチミブプラスシンバスタチンのような一定の組合せ;胆汁樹脂と一緒のスタチン(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、ナイアシンプラススタチン(例えば、ロバスタチンと一緒のナイアシン)の一定の組合せ;またはオメガ-3-脂肪酸エチルエステルのような他の脂質低下薬(例えば、オマコール)との組合せ、のような第2の治療薬の組合せである組成物を特色とする。
さらに、第2の治療薬は、ANGPTL8の1つまたはそれ以上の他の阻害剤ならびにANGPTL3、ANGPTL4、ANGPTL5、ANGPTL6、アポリポタンパク質C-III(APOC3)およびプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)のような他の分子の阻害剤が可能であり、これら他の分子は、脂質代謝、特に、コレステロールおよび/またはトリグリセリド恒常性に関与している。これらの分子の阻害剤は、これらの分子に特異的に結合しその活性を遮断する小分子、アンチセンス分子および抗体を含む。
一実施形態では、本発明の抗ANGPTL8抗体を使用して糖尿病(例えば、2型糖尿病)のような疾患を処置する場合、これらの抗体は、現在利用可能である糖尿病についての以下の処置の1つまたはそれ以上と組み合わせて使用することができる。これらは、以下のもの:インスリン、インスリン類似体(下参照)、ビグアナイド(メトホルミン)、スルホニル尿素(例えば、グリブリド、グリピジド)、PPARガンマアゴニスト(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)、アルファグルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アゴニスト(例えば、BYETTA(登録商標)(エキセナチド)、TRULICITY(商標)(デュラグルチド)、VICTOZA(登録商標)(リラグルチド)、Lyxumia(登録商標)(リキシセナチド)、Tanzeum(商標)(アルビグルチド))、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)阻害剤(例えば、サキサグリプチン(ONGLYZA(登録商標))、シタグリプチン(JANUVIA(登録商標))、およびビルダグリプチン(GALVUS(登録商標))、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、INVOKANA(商標)(カナグリフロジン)、FORXIGA(登録商標)(ダパグリフロジン)、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン)、SYMLIN(登録商標)(プラムリンチド)、グルカゴン受容体アンタゴニスト(例えば、米国特許第8545847号に記載されている)、およびグルカゴンアンタゴニストを含む。
ある特定の関係する実施形態では、組成物は、非スルホニル尿素分泌促進物質、速効性(例えば、リスプロ、アスパルト、グルリジン)および持効性(例えば、デテミルインスリン、デグルデクインスリン、またはグラルギンインスリン)を含むインスリン類似体、エキセンディン-4ポリペプチド、ベータ3アドレノセプターアゴニスト、コレステロール取込みおよび/または胆汁酸再吸収の阻害剤、LDL-コレステロールアンタゴニスト、コレステリルエステル輸送タンパク質アンタゴニスト(例えば、トルセトラピブ、アナセトラピブ、ダルセトラピブ、またはエバセトラピブ)、エンドセリン受容体アンタゴニスト、成長ホルモンアンタゴニスト、インスリン感受性改善薬、アミリン模倣物またはアゴニスト、カンナビノイド受容体アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、メラノコルチン、メラニン凝集ホルモン受容体アゴニスト、SNRI、線維芽細胞成長因子21(FGF21)模倣物(例えば、米国特許出願公開第20110002845号および米国特許出願公開第20080261236号参照)、線維芽細胞成長因子受容体1c(FGFR1c)アゴニスト(例えば、米国特許出願公開第20110150901号参照)、アミノグアニジン、およびタンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤のようなしかしこれらに限定されない高度糖化最終産物形成の阻害剤からなる群から選択される第2の薬剤を含んでいてもよい。
関係する実施形態では、第2の治療薬は、必要ならば、基礎状態に伴う症状を寛解するおよび/または低減するように、鎮痛剤、Cox-2阻害剤のような非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS)を含む抗炎症剤などのような1つまたはそれ以上の他の治療薬でもよい。
第4の態様では、本発明は、それを必要とする患者においてANGPTL8に関連する少なくとも1つの活性を中和する、阻害する、遮断する、抑止する、低減するまたは妨害するための方法であって、表1に見出される本発明の抗体のいずれか1つもしくはそれ以上、またはこれらの抗体のいずれか1つもしくはそれ以上を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、ANGPTL8に関連する少なくとも1つの活性が低減または減少する、方法を提供する。
一実施形態では、本発明は、本発明の1つまたはそれ以上の抗hANGPTL8抗体またはその抗原結合断片を含む治療有効量の医薬組成物、および、場合により、上記の1つまたはそれ以上の追加の治療薬をそれを必要とする対象に投与することを含む治療法を提供する。
第5の態様では、本発明は、ANGPTL8の高発現および/または活性に一部関連する疾患または状態を処置するための方法であって、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニストを投与し、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニストがANGPTL8に特異的な抗体またはその抗原結合断片であることを含む方法を提供する。一実施形態では、ANGPTL8に特異的な抗体またはその抗原結合断片は、表1由来のアミノ酸配列からなる群から選択されるHCVRおよび表1由来のアミノ酸配列からなる群から選択されるLCVRを含む。
一実施形態では、本発明の方法により処置可能である疾患または障害は、ANGPTL8活性を除去する、阻害する、低減する、または他の方法で妨害することにより、改善される、寛解する、阻害されるもしくは予防される任意の疾患もしくは状態であり、または抗hANGPTL8抗体処置なしの重症度もしくは発生頻度(例えば、ANGPTL8媒介疾患または障害)と比べた場合、疾患に関連する少なくとも1つの症状は重症度もしくは発生頻度が低減される。本発明の方法により処置可能である疾患または障害の例は、高脂血症、高リポ蛋白血症およびアテローム脂質異常症、糖尿病脂質異常症を含む脂質異常症、TG>1000mg/dLの重症高トリグリセリド血症および関連急性膵臓炎を含む高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、複合型脂質異常症(肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、等)、リポジストロフィー、脂肪萎縮症などのような脂質代謝に関わる疾患または障害を含むがこれらに限定されず、これらの疾患または障害は、例えば、減少したLPL活性および/またはLPL欠乏、変化したApoC2、ApoE欠乏、増加したApoB、超低密度リポタンパク質(VLDL)の増加した産生および/または減少した除去、ある特定の薬物処置(例えば、グルココルチコイド処置誘発脂質異常症)、任意の遺伝的素因、食事、生活様式などにより引き起こされる。
本発明の方法は、トリグリセリド血症(triglyceridemia)、高トリグリセリド血症、高脂血症、高リポ蛋白血症、ならびに/またはアテローム性動脈硬化、動脈瘤、高血圧、狭心症、脳卒中、脳血管疾患、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患などのような循環器疾患もしくは障害を含むがこれらに限定されない脂質異常症;急性膵炎;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);糖尿病のような血糖障害;肥満などに関連するまたはから生じる疾患または障害も予防するまたは処置することも可能である。
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの抗体、またはその抗原結合断片は、メタボリックシンドローム関連脂質異常症、肥満を処置するため、または体重増加を予防するため、または正常な体重を維持するために使用してもよい。
一実施形態では、本発明は、血中トリグリセリドレベルを低下させるための、または、高血中トリグリセリドレベルに関連するもしくは一部これを特徴とする状態または疾患、もしくはその状態または疾患に関連する少なくとも1つの症状または合併症を処置するための方法であって、表1由来のヒトANGPTL8に特異的な1つまたはそれ以上の抗体を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、それにより、血中トリグリセリドレベルが低下する、またはその状態または疾患が治療される、またはその状態または疾患に関連する少なくとも1つの症状または合併症が寛解するかもしくは重症度が低減される、方法を提供する。
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの抗体、またはその抗原結合断片を単独でまたは第2もしくは第3の治療薬と組み合わせて使用して、高トリグリセリド血症、もしく高トリグリセリド血症に関連する少なくとも1つの症状を処置することができる、または、これを使用して、例えば、高トリグリセリド血症、例えば、家族性高トリグリセリド血症もしくは家族性異常βリポ蛋白血症を発症する遺伝的素因のある患者において、高トリグリセリド血症に罹るリスクのある患者を処置することができる。
他の状態は患者を高レベルのトリグリセリドに罹りやすくする場合がある。例えば、βブロッカー、経口避妊薬、利尿剤、ステロイドのようなある特定の薬物、またはタモキシフェンの使用によりトリグリセリドレベルが上昇する場合があり、したがって、アテローム性動脈硬化、脳卒中、心臓発作、および他の心臓状態のような高レベルのトリグリセリドに関連する状態、もしくは合併症を発症する患者の可能性が高まる場合がある。
さらに、ある特定の他の状態が、肥満、管理不良の糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患、または飲酒を含む高レベルのトリグリセリドをもたらす場合がある。
一実施形態では、抗体を使用して、高血中トリグリセリドレベルを一部特徴とする疾患もしくは障害の発病を予防する、または、そのような疾患もしくは障害を発症する可能性を妨げる、または、疾患もしくは障害の重症度、もしくは疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を軽減することができる。本発明の抗体は単独で、またはこれに限定されないが、高トリグリセリド血症のような高血中トリグリセリドレベルを一部特徴とする疾患もしくは状態に罹っている患者を処置するための標準治療であることが知られている他の薬剤もしくは方法と一緒の補助療法として使用してもよいことが想定されている。そのような標準療法は、血中トリグリセリド、もしくは脂質を低下させるのに、または体重減少に有用である流体投与、または、他の任意の医薬品の投与を含んでいてもよい。
一実施形態では、本明細書に記載される抗体の使用は、正常レベルのトリグリセリドを達成し、それによって高トリグリセリドレベルを特徴とする疾患の1つもしくはそれ以上の症状またはその疾患に関連する長期の合併症を寛解する、もしくは予防する効果的な手段となる可能性がある。
一実施形態では、本発明の抗体は、高レベルのトリグリセリドを一部特徴とする任意の疾患または障害を処置するのに使用するための薬物の製造において使用することができる。
本発明の抗体は、深刻な状況での短期療法として使用してもよく、または
慢性療法として長期使用のために本発明の抗体を想定してもよい。
一態様では、本発明は、対象において体重減少を達成するための方法であって、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニストはANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはその抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物であるANGPTL8阻害剤を、対象に投与することを含み、ANGPTL8の少なくとも1つの活性が低減または減少する、方法を提供する。
用語、阻害剤およびアンタゴニストは本明細書では互換的に使用される。
別の態様では、本発明は、対象において体脂肪量の減少を達成するための方法であって、ANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはその抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物であるANGPTL8阻害剤/アンタゴニストを、対象に投与することを含み、ANGPTL8の少なくとも1つの活性が低減または減少する、方法を提供する。
さらに別の態様では、本発明は対象においてエネルギー消費を増加させるための方法であって、ANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはその抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物であるANGPTL8阻害剤/アンタゴニストを、対象に投与することを含み、ANGPTL8の少なくとも1つの活性が低減または減少する、方法を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、対象においてHDL-Cを増加させるための方法であって、ANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはその抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物であるANGPTL8阻害剤/アンタゴニストを、対象に投与することを含み、ANGPTL8の少なくとも1つの活性が低減または減少する、方法を提供する。一実施形態では、前記対象での循環トリグリセリド(TG)は、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニストの前記投与の1日後、少なくとも50%低減される。
本発明に従った方法の追加の実施形態では、ANGPTL8に特異的な抗体またはその抗原結合断片は、配列番号162/170または314/322に示される重鎖可変領域/軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列対を含む。
本発明に従った方法の追加の実施形態では、ANGPTL8に特異的な抗体またはその抗原結合断片は、それぞれ配列番号164/166/168/172/174/176または316/318/320/324/326/328のアミノ酸配列を有するHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3ドメインを含む。
一態様では、本発明は、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニスト、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニストはANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片であるか、または抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することにより、肥満に関連する状態または疾患、またはその状態または疾患に関連する少なくとも1つの症状または合併症を処置するための方法であって、それにより、その状態または疾患が治療される、またはその状態または疾患に関連する少なくとも1つの症状または合併症の頻度または重症度が軽減されるかもしくは低減される、方法を提供する。
追加の実施形態では、本発明に従った方法は第2の治療薬の投与をさらに含む。さらなる実施形態では、第2の治療薬は、アンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)、アンジオポエチン様タンパク質4(ANGPTL4)、アンジオポエチン様タンパク質5(ANGPTL5)、アンジオポエチン様タンパク質6(ANGPTL6)およびヒトプロタンパク質転換スブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)に特異的に結合する単離された抗体またはその抗原結合断片からなる群から選択される。第2の治療薬は、インスリン、インスリン類似体、ビグアナイド(メトホルミン)、スルホニル尿素(例えば、グリブリド、グリピジド)、PPARガンマアゴニスト(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)、アルファグルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アゴニスト(例えば、BYETTA(登録商標)(エキセナチド)、TRULICITY(商標)(デュラグルチド)、VICTOZA(登録商標)(リラグルチド)、LYXUMIA(登録商標)(リキシセナチド)、TANZEUM(商標)(アルビグルチド)、または前述のもののいずれかの類似体、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)阻害剤(例えば、サキサグリプチン(ONGLYZA(登録商標))、シタグリプチン(JANUVIA(登録商標))、およびビルダグリプチン(GALVUS(登録商標))、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、INVOKANA(商標)(カナグリフロジン)、FORXIGA(登録商標)(ダパグリフロジン)、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン)、SYMLIN(登録商標)(プラムリンチド)、グルカゴン受容体アンタゴニスト、非スルホニル尿素分泌促進物質、インスリン類似体(例えば、速効性リスプロ、アスパルト、グルリジンおよび持効性デテミルインスリン、デグルデクインスリン、またはグラルギンインスリン)、エキセンディン-4ポリペプチド、ベータ3アドレノセプターアゴニスト、コレステロール取込みおよび/または胆汁酸再吸収の阻害剤、LDL-コレステロールアンタゴニスト、コレステリルエステル輸送タンパク質アンタゴニスト(例えば、トルセトラピブ、アナセトラピブ、ダルセトラピブ、またはエバセトラピブ)、エンドセリン受容体アンタゴニスト、成長ホルモンアンタゴニスト、インスリン感受性改善薬、アミリン模倣物またはアゴニスト、カンナビノイド受容体アンタゴニスト、メラノコルチン、メラニン凝集ホルモン受容体アゴニスト、SNRI、線維芽細胞成長因子21(FGF21)模倣物、線維芽細胞成長因子受容体1c(FGFR1c)アゴニスト、高度糖化最終産物形成の阻害剤(例えば、アミノグアニジン)、およびタンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤らなる群から限定せずに選択することが可能である。
一態様では、本発明は、対象において体重減少を達成する、対象において体脂肪量の減少を達成する、対象においてエネルギー消費を増加する、対象においてHDL-Cを増加する、または肥満に関連する状態または疾患を処置する際の、ANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはその抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物であるANGPTL8阻害剤/アンタゴニストの使用を提供する。
別の態様では、本発明は、対象において体重減少を達成する、対象において体脂肪量の減少を達成する、対象においてエネルギー消費を増加する、対象においてHDL-Cを増加する、または肥満に関連する状態または疾患を処置するための薬物の製造での、ANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片であるか、またはその抗体もしくはその抗原結合断片を含む医薬組成物であるANGPTL8阻害剤/アンタゴニストの使用を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、対象において体重減少を達成する、対象において体脂肪量の減少を達成する、対象においてエネルギー消費を増加する、対象においてHDL-Cを増加する、または肥満に関連する状態または疾患を処置するための医薬組成物を提供し、医薬組成物はANGPTL8阻害剤/アンタゴニストを含み、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニストはANGPTL8に特異的な抗体もしくはその抗原結合断片である。
他の実施形態は、次の詳細な説明をよく調べることから明らかになる。
本発明を説明する前に、本発明は記載される特定の方法および実験条件に限定されず、したがって、方法および条件は変動する場合があることは理解されるべきである。本明細書で使用される用語法は特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定的であることを意図していないことも理解されるべきである。なぜならば、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
他の方法で定義されていなければ、本明細書で使用される専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「約(about)」は、特定の列挙される数値に関連して使用される場合、その値は列挙された値から1%以下で変動することがあることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、表現「約100」は99および101およびその間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4、等)を含む。
本明細書に記載される方法および材料に類似するまたは等価であるいかなる方法および材料も本発明の実行または試験において使用することが可能であるが、ここでは好ましい方法および材料を記載する。本明細書において言及するすべての特許、出願および非特許出版物は参照によりその全体を本明細書に組み込む。
定義
「アンジオポエチン様タンパク質8」またはANGPTL8は、タンパク質のアンジオポエチンファミリーのメンバーであり、TD26、RIFL、リパシン、C19orf80およびベータトロフィンと呼ばれることもある。「ANGPTL8」とは、本明細書で使用される場合、配列番号340のアミノ酸残基1~177に示されるアミノ酸配列を含むヒトANGPTL8のことである。完全長ヒトANGPTL8アミノ酸配列は、シグナル配列を含み、ジェンバンク受託番号NP_061157.3にも見出すことが可能であり、ヒトANGPTL8をコードする完全長核酸配列は公知である(Ejarque、ら、2017年 Transl Res 184:35~44頁)。ヒトANGPTL8のN末端コイルドコイルドメインは配列番号340のアミノ酸残基1~39にまたがり、配列番号337としても表される。本明細書でのタンパク質、ポリペプチドおよびタンパク質断片への言及はすべて、非ヒト種由来であると明確に指定されていなければ、それぞれのタンパク質、ポリペプチドまたはタンパク質断片のヒトバージョンのことである。したがって、表現「ANGPTL8」は、非ヒト種由来である、例えば、「マウスANGPTL8」、「サルANGPTL8」、等と指定されていなければ、ヒトANGPTL8を意味する。
用語「ヒトアンジオポエチン様タンパク質3」または「hANGPTL3」は、本明細書で使用される場合、配列番号343に示される核酸配列を有するANGPTL3および配列番号342のアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片のことである。ヒトANGPTL3のN末端コイルドコイルドメインは配列番号338として表される。
用語「ヒトアンジオポエチン様タンパク質4または「hGPTL4」は、本明細書で使用される場合、配列番号345に示される核酸配列を有するANGPTL4および配列番号344のアミノ酸配列、またはその生物学的に活性な断片のことである。ヒトANGPTL4のN末端コイルドコイルドメインは配列番号339として表される。
本発明の特定の実施形態、抗体または抗体断片は、第2のANGPTL8アンタゴニストのような治療部分(「免疫コンジュゲートする」)、または一部高トリグリセリドレベルにより引き起こされる疾患または状態を処置するのに有用である他の任意の治療部分にコンジュゲートしていてもよい。
本明細書で使用される場合、表現「抗ANGPTL8抗体」は、単一特異性を有する一価抗体、ならびにANGPTL8に結合する第1のアームおよび第2(標的)の抗原に結合する第2のアームを含む二重特異性抗体の両方を含み、抗ANGPTL8アームは本明細書の表1に示されるHCVR/LCVRまたはCDR配列のいずれかを含む。
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、特定の抗原(例えば、ANGPTL8)に特異的に結合するまたはこれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」は、ジスルフィド結合により相互連結している2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖である、4つのポリペプチドを含む免疫グロブリン分子、ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と名付けられるより保存されている領域で分散されている相補性決定領域(CDR)と名付けられる超可変領域にさらに細区分することが可能である。それぞれのVHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成されており、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順番、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4に配置されている。本発明の異なる実施形態では、抗ANGPTL8抗体(またはその抗原結合部分)のFRはヒト生殖系列配列と同一でもよく、または天然にもしくは人工的に改変されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つまたはそれ以上のCDRの並列解析に基づいて定義することができる。
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。用語抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などは、本明細書で使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成的または遺伝的に操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、タンパク質消化または抗体可変および場合により定常ドメインをコードするDNAの操作および発現に関わる組換え遺伝子操作技法のような任意の適切な標準技法を使用して完全抗体分子から導き出してもよい。そのようなDNAは公知でありおよび/または、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能である、もしくは合成することが可能である。DNAは、例えば、1つもしくはそれ以上の可変および/もしくは定常ドメインを適切な立体配置に並べるため、またはコドンを導入し、システイン残基を作り出し、アミノ酸を改変し、付加しもしくは欠失する等のために、化学的にまたは分子生物学技法を使用することにより塩基配列決定し操作してもよい。
抗原結合断片の非限定的例は:(i)Fab断片;(ii)F(ab’)2断片;(iii)Fd断片;(iv)Fv断片;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAb断片;および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドのような単離された相補性決定領域(CDR))、または拘束されたFR3-CDR3-FR4ペプチドを模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位を含む。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディ、等)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインのような他の操作された分子も、本明細書で使用される表現「抗原結合断片」内に包含される。
抗体の抗原結合断片は典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むことになる。可変ドメインはいかなるサイズでもまたはアミノ酸組成でもよく、一般的には少なくとも1つのCDRを含み、これは1つまたはそれ以上のフレームワーク配列に隣接しているまたはこれのインフレームにある。VLドメインに関連するVHドメインを有する抗原結合断片では、VHおよびVLドメインは互いに対していかなる適切な配置にも位置していることができる。例えば、可変領域は二量体でありVH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含有していてもよい。代わりに、抗体の抗原結合断片は、単量体VHまたはVLドメインを含有していてもよい。
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合している少なくとも1つの可変ドメインを含有することができる。本発明の抗体の抗原結合断片内に見出すことができる可変および定常ドメインの非限定的例示的立体配置は:(i)VH-CH1;(ii)VH-CH2;(iii)VH-CH3;(iv)VH-CH1-CH2;(v)VH-CH1-CH2-CH3;(vi)VH-CH2-CH3;(vii)VH-CL;(viii)VL-CH1;(ix)VL-CH2;(x)VL-CH3;(xi)VL-CH1-CH2;(xii)VL-CH1-CH2-CH3;(xiii)VL-CH2-CH3;および(xiv)VL-CLを含む。可変および定常ドメインのいかなる立体配置でも、上に収載される例示的立体配置のいずれかを含むが、可変および定常ドメインは互いに直接連結していてもよく、または完全もしくは部分的ヒンジもしくはリンカー領域により連結されていてもよい。ヒンジ領域は少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸からなっていてもよく、このアミノ酸が、単一ポリペプチド分子の隣接する可変および/または定常ドメイン間に柔軟なまたはセミフレキシブルな連鎖をもたらす。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いにおよび/または1つもしくはそれ以上の単量体VHもしくはVLドメイン(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)の非共有会合で、上に収載される可変および定常ドメイン立体配置のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでいてもよい。
完全抗体分子の場合と同様に、抗原結合断片は単一特異性でも多特異性(例えば、二重特異性)でもよい。抗体の多特異性抗原結合断片は典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、それぞれの可変ドメインは別々の抗原にまたは同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的二重特異性抗体フォーマットを含む、いかなる多特異性抗体フォーマットでも、当技術分野で利用可能な常用の技法を使用して本発明の抗体の抗原結合断片という状況で使用するのに適用させてもよい。
用語「ヒト抗体」とは、本明細書で使用する場合、天然には存在しないヒト抗体を含むことが意図されている。この用語は、非ヒト哺乳動物において、または非ヒト哺乳動物の細胞において組換え的に産生される抗体を含む。この用語はヒト対象から単離されたまたはヒト対象において産生される抗体を含むことを意図していない。
本発明の抗体は、一部の実施形態では、組換えヒト抗体でもよい。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書で使用する場合、宿主細胞にトランスフェクトされる組換え発現ベクターを使用して発現される抗体(下でさらに説明される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体(下でさらに説明される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylorら、(1992)Nucl.Acids Res.20:6287~6295頁参照)またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライスすることを含む他の任意の手段により製造される、発現される、創造されるもしくは単離される抗体のような組換え手段により製造される、発現される、創造されるもしくは単離されるあらゆるヒト抗体を含むことが意図されている。ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体にin vitro変異誘発(または、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物が使用される場合は、in vivo体細胞変異誘発)を行い、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に関係しているが、in vivoではヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない場合がある配列である。
ヒト抗体は、ヒンジ不均一性に関連している2つの形態で存在することが可能である。1つの形態では、免疫グロブリン分子はおおよそ150~160kDaの安定な4鎖構築物を含み、そこでは二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合により1つに結合されている。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して連結されておらず、共有結合軽および重鎖で構成されている約75~80kDaの分子(半抗体)が形成される。これらの形態は、親和性精製後でも分離するのが極めて困難であった。
種々の無傷のIgGアイソタイプ中での第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造的違いに起因するがこれに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域での単一アミノ酸置換は第2の形態の出現(Angalら、(1993)Molecular Immunology 30:105頁)をヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルまで著しく低減することが可能である。本発明は、所望の抗体形態の収率を改善するために、例えば、生産において望ましい場合があるヒンジ、CH2またはCH3領域での1つまたはそれ以上の突然変異を有する抗体を包含する。
本発明の抗体は単離された抗体であってもよい。「単離された抗体」は、本明細書で使用される場合、同定され、その天然環境の少なくとも1つの成分から分離されおよび/または回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するもしくは天然に産生される組織もしくは細胞から分離されているまたは取り除かれている抗体は、本発明のための「単離された抗体」である。単離された抗体は組換え細胞内にインサイチュでの抗体も含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製または単離工程を受けている抗体である。ある特定の実施形態に従えば、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質が実質的になくてもよい。
本明細書に開示される抗ANGPTL8抗体は、重および軽鎖可変ドメインのフレームワークおよび/またはCDR領域に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換、挿入および/または欠失を含んでいてもよい。そのような突然変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公開されている抗体配列データベースから入手可能な配列と比較することにより容易に確かめることが可能である。入手した後は、1つまたはそれ以上の突然変異を含有する抗体および抗原結合断片は、改善された結合特異性、増加した結合親和性、改善されたまたは増強された拮抗性のまたはアゴニスティックな生物学的特性(場合によっては)、低下した免疫原性、等のような1つまたはそれ以上の所望の特性について容易に試験することが可能である。この一般的な様式で得られた抗体および抗原結合断片は本発明内に包含される。
本発明は、1つまたはそれ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗ANGPTL8抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと比べて、例えば、10またはそれよりも少ない、8またはそれよりも少ない、6またはそれよりも少ない、4またはそれよりも少ない、等の保存的アミノ酸置換のあるHCVR、LCVR、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗ANGPTL8抗体を含む。
「遮断抗体」または「中和抗体」は、本明細書で使用される場合(または、「ANGPTL8活性を中和する抗体」)、ANGPTL8との結合および/または相互作用により、ANGPTL8の少なくとも1つの生物活性を阻害する抗体を指すことが意図されている。例えば、本発明の抗体はANGPTL8のリポタンパク質リパーゼ阻害活性を阻害することができる、または本発明の抗体は、ANGPTL8のLPL阻害活性の阻害を通じて以外の機構を通じて血漿トリグリセリドを減らすことができる。ANGPTL8の生物活性のこのような阻害は、当技術分野で公知のいくつかの標準in vitroまたはin vivoアッセイの1つまたはそれ以上によりANGPTL8生物活性の1つまたはそれ以上の指標を測定することにより評価することが可能である。代わりの活性は、本発明の抗体に関連するトリグリセリド低下活性である。
用語「表面プラズモン共鳴」または「SPR」は、本明細書で使用される場合、例えば、BIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden and Piscataway、N.J.)、またはMASS-1システム(Sierra Sensors、Hamburg、Germany and Greenville、RI)を使用して、バイオセンサーマトリックス内でのタンパク質濃度の変化の検出によりリアルタイム生体分子相互作用の分析を可能にする光学的現象のことである。
用語「KD」は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことが意図されている。
用語「エピトープ」とは、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用をする抗原決定基のことである。単一抗原は1つよりも多いエピトープを有していてもよい。したがって、抗体が異なれば結合する抗原上の領域も異なる場合があり、生物学的効果も異なる場合がある。エピトープは高次構造的であっても線形であってもよい。高次構造的エピトープは、線形ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸により作成される。線形エピトープはポリペプチド鎖において隣接するアミノ酸残基により作成されるエピトープである。ある特定の状況では、エピトープは抗原上で糖類の部分、ホスホリル基、またはスルホニル基を含む場合がある。
用語「実質的な同一性」または「実質的に同一な」は、核酸またはその断片に言及する場合、適切なヌクレオチド挿入または欠失と一緒に、別の核酸(またはその相補鎖)と最適に整列させた場合、下に記載されるFASTA、BLASTまたはGapのような配列同一性の任意のよく知られたアルゴリズムにより測定した場合、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、さらに好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、または99%でヌクレオチド配列同一性が存在することを示している。参照核酸分子に実質的同一性を有する核酸分子は、ある特定の例では、参照核酸分子がコードするポリペプチドと同じまたは実質的に類似するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
ポリペプチドに適用される場合、用語「実質的な類似性」または「実質的に類似する」は、2つのペプチド配列が、デフォルトギャップ重み付けを使用するプログラムGAPまたはBESTFITによりのように最適に整列させた場合、少なくとも95%配列同一性、さらに好ましくは少なくとも98%または99%配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する化学的特性(例えば、電荷または疎水性)のある側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基で置き換えられる置換である。一般に、保存的アミノ酸置換はタンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つまたはそれ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なっている場合には、パーセント配列同一性または類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。このような調整を行うための手段は当業者には周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307~331頁を参照されたい。前記文献は参照により本明細書に組み込まれる。類似する化学的特性のある側鎖を有するアミノ酸の群の例は、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン;(2)脂肪族-ヒドロキシル基側鎖:セリンおよびスレオニン;(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン;(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン;(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン;(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)硫黄含有側鎖:システインおよびメチオニンを含む。好ましい保存的アミノ酸置換群は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。代わりに、保存的置換は、Gonnetら、(1992)Science 256:1443~1445頁に開示されているPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化であり、前記文献は参照により本明細書に組み込まれる。「中程度に保存的な」置換はPAM250対数尤度マトリックスにおいて負ではない値を有する任意の変化である。
ポリペプチドについての配列類似性は典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して類似の配列を適合させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる生物の種由来のまたは野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の相同ポリペプチドのような密接な関係があるポリペプチド間の配列相同性または配列同一性を決定するためにデフォルトパラメータを用いて使用することが可能なGAPおよびBESTFITのようなプログラムを含有する。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、デフォルトまたは推奨されるパラメータを用いてFASTAを使用しても比較することが可能であり;GCGバージョン6.1.FASTAのプログラム(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、クエリーとサーチ配列の間の最良のオーバーラップの領域のアライメントおよびパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)、上記)。本発明の配列を異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトパラメータを使用する、コンピュータープログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403~410頁および(1997)Nucleic Acids Res.25:3389~402頁を参照されたい。前記文献はそれぞれ参照により本明細書に組み込む。
語句「治療有効量」は、それが投与される目的の所望の効果を生じる量を意味する。正確な量は、処置の目的に依拠し、公知の技法を使用して当業者が確認可能である(例えば、Lloyd(1999)The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding参照)。
用語「処置する」または「処置」は、本明細書で使用される場合、有益なまたは所望の臨床結果を得るためにアプローチのことである。本発明の一実施形態では、有益なまたは所望の臨床結果は、血中トリグリセリドレベルの改善、または高グリセリド血症を含むがこれに限定されない高レベルのトリグリセリドに関連するもしくはこれから生じるいずれか1つもしくはそれ以上の状態、疾患、もしくは症状の改善、等を含むがこれらに限定されない。
pH依存性結合
本発明はpH依存性結合特性を有する抗ANGPTL8抗体を含む。例えば、本発明の抗ANGPTL8抗体は、中性pHと比べた場合、酸性pHではANGPTL8への結合の低減を示す場合がある。代わりに、本発明の抗ANGPTL8抗体は、中性pHと比べた場合、酸性pHではANGPTL8への結合の増強を示す場合がある。表現「酸性pH」は、約6.2未満のpH値、例えば、約6.0、5.95、5,9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0またはそれ未満を含む。本明細書で使用される場合、表現「中性pH」は約7.0から約7.4のpHを意味する。表現「中性pH」は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、および7.4のpH値を含む。
ある特定の例では、「中性pHと比べた場合の酸性pHでのANGPTL8への結合の低減」は、中性pHでANGPTL8に結合する抗体のKD値に対する酸性pHでANGPTL8に結合する抗体のKD値の比(または逆も同様)の点から表される。例えば、抗体またはその抗原結合断片が約3.0またはそれ以上の酸性/中性KD比を示す場合は、抗体またはその抗原結合断片は、本発明のために「中性pHと比べた場合の酸性pHでのANGPTL8への結合の低減」を示すと見なすことができる。ある特定の例示的実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合断片についての酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0またはそれ以上が可能である。
pH依存性結合特性を有する抗体は、例えば、中性pHと比べた場合の酸性pHでの特定の抗原への結合の低減(または増強)を求めて抗体の集団をスクリーニングすることにより、得ることができる。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの改変によりpH依存性結合特性を有する抗体が得られる場合がある。例えば、抗原結合ドメインの1つまたはそれ以上のアミノ酸(例えば、CDR内で)をヒスチジン残基で置き換えることにより、中性pHと比べた酸性pHでの抗原結合が低減している抗体を得ることができる。
Fcバリアントを含む抗ANGPTL8抗体
本発明のある特定の実施形態に従えば、1つまたはそれ以上の突然変異を含むFcドメインを含む抗ANGPTL8抗体が提供され、この突然変異は、例えば、中性pHと比べた場合、酸性pHでFcRn受容体への抗体結合を増強するまたは減少させる。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域に突然変異を含む抗ANGPTL8抗体を含み、ここでは突然変異(複数可)は酸性環境では(例えば、pHが約5.5から約6.0の範囲に及ぶエンドソームでは)FcRnに対するFcドメインの親和性を増加する。そのような突然変異は、動物に投与されると、抗体の血清半減期を増加させる場合がある。そのようなFc改変の非限定的例は、例えば、250位(例えば、EまたはQ);250位および428位(例えば、LまたはF);252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での改変;または428位および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)ならびに/もしくは434位(例えば、A、W、H、FまたはY[N434A、N434W、N434H、N434FまたはN434Y])での改変;または250位および/もしくは428位での改変;または307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位での改変を含む。一実施形態では、改変は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)改変;428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)改変;433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)改変;252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)改変;250Qおよび428L改変(例えば、T250QおよびM428L)、ならびに307および/または308改変(例えば、308Fまたは308P)を含む。さらに別の実施形態では、改変は265A(例えば、D265A)および/または297A(例えば、N297A)改変を含む。
例えば、本発明は、250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);257Iおよび311I(例えば、P257IおよびQ311I);257Iおよび434H(例えば、P257IおよびN434H);376Vおよび434H(例えば、D376VおよびN434H);307A、380Aおよび434A(例えば、T307A、E380AおよびN434A);ならびに433Kおよび434F(例えば、H433KおよびN434F)からなる群から選択される突然変異の1つまたはそれ以上の対またはグループを含むFcドメインを含む抗ANGPTL8抗体を含む。前述のFcドメイン突然変異、および本明細書で開示される抗体可変ドメイン内の他の突然変異の考えられるあらゆる組合せは、本発明の範囲内に想定されている。
本発明はキメラ重鎖定常(CH)領域を含む抗ANGPTL8抗体も含み、キメラCH領域は1つよりも多い免疫グロブリンアイソタイプのCH領域由来のセグメントを含む。例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4分子由来のCH3ドメインの一部またはすべてと組み合わされた、ヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4分子由来のCH2ドメインの一部またはすべてを含むキメラCH領域を含んでいてもよい。ある特定の実施形態に従えば、本発明の抗体は、キメラヒンジ領域を有するキメラCH領域を含む。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4ヒンジ領域由来の「下部ヒンジ」配列(EU番号付けに従って228位から236位までのアミノ酸残基)と組み合わせた、ヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4ヒンジ領域由来の「上部ヒンジ」アミノ酸配列(EU番号付けに従って216位から227位までのアミノ酸残基)を含んでいてもよい。ある特定の実施形態に従えば、キメラヒンジ領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4上部ヒンジ由来のアミノ酸残基およびヒトIgG2下部ヒンジ由来のアミノ酸残基を含む。本明細書に記載されるキメラCH領域を含む抗体は、ある特定の実施形態では、抗体の治療または薬物動態特性に悪影響を与えずに改変されたFcエフェクター機能を示すことができる(例えば、2013年2月1日提出の米国特許仮出願第61/759,578号参照、前記特許文献の開示はこれにより参照によりその全体を組み込む)。
抗体の生物学的特性
本発明は、ANGPTL8に高親和性で結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。例えば、本発明は、本明細書の実施例3および4に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイにおいて、例えば、マウスIgG2a Fc C末端融合物との組換えANGPTL8タンパク質を使用して、25℃で、または37℃で表面プラズモン共鳴(SPR)により測定した場合、ヒトまたはサルANGPTL8に約150nM未満のKDで結合する抗ANGPTL8抗体を含む。ある特定の実施形態に従えば、例えば、本明細書の実施例3および4に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴により測定した場合、約90nM未満、または約50nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約500pM未満、約300pM未満、約150pM未満、もしくは約90pM未満のKDで、25℃または37℃でヒトまたはサルANGPTL8に結合する抗ANGPTL8抗体を提供する。
本発明は、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、25℃または37℃で表面プラズモン共鳴により測定した場合、約100分よりも大きな解離半減期(t1/2)でヒトANGPTL8のN末端領域由来の配列番号337のペプチドに結合する抗体およびその抗原結合断片も含む。ある特定の実施形態に従えば、例えば、本明細書の実施例3に定義されるアッセイフォーマット、または実質的に類似するアッセイを使用して、表面プラズモン共鳴により測定した場合、約110分より大きなもしくはこれに等しい、約120分よりも大きな、約130分よりも大きな、約200分よりも大きな、約300分よりも大きな、約400分よりも大きな、約500分よりも大きな、またはそれよりも長いt1/2でヒトANGPTL8のN末端領域由来のペプチドに25℃で結合する抗ANGPTL8抗体を提供する。
本発明は、約0.1mg/kg、または約1mg/kg、または約10mg/kg、または約25mg/kg、または約50mg/kg、または約100mg/kgの用量で皮下に投与された場合、哺乳動物においてトリグリセリドを約20%、または30約%、または約40%、または約50%、または約60%、またはそれよりも多く低下させる抗体およびその抗原結合断片も含む。血漿トリグリセリドを低下させることに対する本発明の抗体の効果は、投与後少なくとも7日から投与後約3週間、または4週間、またはそれよりも長く持続することができる。
本発明の抗体は、配列番号2、18、34、50、66、82、98、114、130、146、162、178、194、210、226、242、258、266、274、282、290、298、306、314および330からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR);ならびに
配列番号10、26、42、58、74、90、106、122、138、154、170、186、202、218、234、250、および322からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む;または参照抗体と交差競合してもよく、参照抗体は、表1のHCVRおよびLCVRアミノ酸配列のいずれかからなる群から選択される重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)アミノ酸配列を含む。
本発明の抗体は、配列番号2/10、18/26、34/42、50/58、66/74、82/90、98/106、114/122、130/138、146/154、162/170、178/186、194/202、210/218、226/234、242/250、258/250、266/250、274/250、282/250、290/250、306/250、314/322、および330/322からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含んでいてもよい。
本発明の抗体は、
(a)配列番号4、20、36、52、68、84、100、116、132、148、164、180、196、212、228、244、260、268、276、284、292、300、308、316および332からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン;
(b)6、22、38、54、70、86、102、118、134、150、166、182、198、214、230、246、262、270、278、286、294、302、310、318、および334からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン;
(c)配列番号8、24、40、56、72、88、104、120、136、152、168、184、200、216、232、248、264、272、280、288、296、304、312、320および336からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン;
(d)配列番号12、28、44、60、76、92、108、124、140、156、172、188、204、220、236、252および324からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン;
(e)配列番号14、30、46、62、78、94、110、126、142、158、174、190、206、222、238、254、および326からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン;ならびに
(f)配列番号16、32、48、64、80、96、112、128、144、160、176、192、208、224、240、256および328からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン
を含んでいてもよい。
本発明の抗体は、前述の生物学的特性の1つもしくはそれ以上、またはその任意の組合せを有することができる。本発明の抗体の生物学的特性の前述の一覧表は網羅的であることを意図していない。本発明の抗体の他の生物学的特性は、本明細書の作業実施例を含む本開示の概説から当業者には明らかになる。
エピトープマッピングおよび関係する技術
本発明の抗体が結合するエピトープは、ANGPTL8タンパク質の3つまたはそれ以上の(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれよりも多い)アミノ酸の単一近接配列からなるものでもよい。代わりに、エピトープは、ANGPTL8の複数の非近接アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなるものでもよい。
当業者には公知の種々の技法を使用して、抗体がポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたはそれ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを判定することが可能である。例示的技法は、例えば、Antibodies、Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harb.、NY)に記載されるアッセイのような常用クロスブロッキングアッセイ、アラニンスキャニング変異解析、ペプチドブロット分析(Reineke、2004年、Methods Mol Biol 248:443~463頁)、およびペプチド切断分析を含む。さらに、エピトープ切除、エピトープ抽出および抗原の化学的改変のような方法を用いることが可能である(Tomer、2000年、Protein Science 9:487~496頁)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するのに使用することが可能な別の方法は、質量分析により検出される水素/重水素交換である。一般的には、水素/重水素交換法は、目的のタンパク質を重水素標識し、続いて抗体を重水素標識タンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体により保護されている残基(重水素標識されたままである)を除くすべての残基で水素-重水素交換を起こさせる。抗体の解離後、標的タンパク質はプロテアーゼ切断および質量分析を受け、それによって抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252~259頁;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A~265A頁を参照されたい。
本発明は、本明細書に記載される特定の例示的抗体(例えば、本明細書の表1に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと同じエピトープに結合する抗ANGPTL8抗体をさらに含む。同様に、本発明は、本明細書に記載される特定の例示的抗体(例えば、本明細書の表1に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかとANGPTL8への結合に関して競合する抗ANGPTL8抗体も含む。
当技術分野では公知であり本明細書で例証される常用の方法を使用することにより、抗体が参照抗ANGPTL8抗体と同じエピトープに結合する、または結合に関してこれと競合するかどうかは容易に判定することが可能である。例えば、試験抗体が本発明の参照抗ANGPTL8抗体と同じエピトープに結合するかどうかを判定するため、参照抗体をANGPTL8タンパク質に結合させておく。次に、ANGPTL8分子に試験抗体が結合する能力を評価する。試験抗体が、参照抗ANGPTL8抗体を用いた飽和結合に続いてANGPTL8に結合することができる場合、試験抗体は参照抗ANGPTL8抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることが可能である。一方、試験抗体が、参照抗ANGPTL8抗体を用いた飽和結合に続いてANGPTL8分子に結合することができない場合、試験抗体は、本発明の参照抗ANGPTL8抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する可能性がある。次に、追加の常用実験(例えば、ペプチド突然変異および結合分析)を実行して、試験抗体の観察された結合の欠如が実際に参照抗体と同じエピトープに結合するせいなのかどうか、または立体的ブロッキング(または別の現象)が観察される結合の欠如の原因なのかどうかを確かめることが可能である。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリーまたは当技術分野で入手可能な他の任意の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施することが可能である。本発明のある特定の実施形態に従えば、2つの抗体は、例えば、1、5、10、20または100倍の過剰な1つの抗体が、競合的結合アッセイ(例えば、Junghansら、Cancer Res.1990年:50:1495~1502頁参照)で測定した場合、少なくとも50%、しかし、好ましくは、75%、90%または99%ももう一方の抗体の結合を阻害するならば、同じ(または重複する)エピトープに結合する。代わりに、2つの抗体は、1つの抗体の結合を低減するまたは除去する抗原中の本質的にすべてのアミノ酸突然変異がもう一方の抗体の結合を低減するまたは除去するならば、同じエピトープに結合すると見なされる。2つの抗体は、1つの抗体の結合を低減するまたは除去するアミノ酸突然変異のサブセットのみがもう一方の抗体の結合を低減するまたは除去するならば、「重複するエピトープ」を有すると見なされる。
抗体が参照抗ANGPTL8抗体と結合に関して競合する(または結合に関して交差競合する)かどうかを判定するため、上記の結合方法は2つの方向性で実施され:第1の方向性では、参照抗体は飽和条件下でANGPTL8タンパク質に結合させておき、続いてANGPTL8分子への試験抗体の結合を評価する。第2の方向性では、試験抗体は飽和条件下でANGPTL8分子に結合させておき、続いてANGPTL8分子への参照抗体の結合を評価する。両方の方向性では、第1の(飽和)抗体のみがANGPTL8分子に結合することができるならば、試験抗体と参照抗体はANGPTL8への結合に関して競合すると結論付けられる。当業者であれば認識することになるように、参照抗体と結合に関して競合する抗体は必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合しない場合があるが、重複するまたは隣接するエピトープに結合することにより参照抗体の結合を立体的にブロックする場合もある。
ヒト抗体の製造
本発明の抗ANGPTL8抗体は、完全ヒト(天然に存在しない)抗体が可能である。完全ヒトモノクローナル抗体を含む、モノクローナル抗体を産生するための方法は当技術分野では公知である。そのようないかなる公知の方法も、ヒトANGPTL8に特異的に結合するヒト抗体を作成する本発明の状況で使用することが可能である。
VELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、米国特許第6,596,541号、Regeneron Pharmaceuticals、VELOCIMMUNE(登録商標)参照)またはモノクローナル抗体を産生するための他の任意の公知の方法を使用して、ヒト可変領域とマウス定常領域を有するアレルゲンに対する高親和性キメラ抗体は最初単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に応答してヒト可変領域とマウス定常領域を含む抗体を産生するように、内在性マウス定常領域遺伝子座に作動可能に連結されたヒト重および軽鎖可変領域を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスの作成を含む。抗体の重および軽鎖の可変領域をコードするDNAが単離され、ヒト重および軽鎖定常領域をコードするDNAに作動可能に連結される。次に、DNAは完全ヒト抗体を発現することができる細胞で発現される。
一般に、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに目的の抗原を負荷し、リンパ細胞(B細胞のような)は抗体を発現するマウスから回収される。リンパ細胞は骨髄腫細胞株と融合させて不死ハイブリドーマ細胞株を製造してもよく、そのようなハイブリドーマ細胞株はスクリーニングされて選択され、目的の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を同定する。重鎖および軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、重鎖および軽鎖の望ましいアイソタイプの定常領域に連結してもよい。そのような抗体タンパク質は、CHO細胞のような細胞において産生してもよい。代わりに、抗原特異的キメラ抗体または軽および重鎖の可変領域をコードするDNAを抗原特異的リンパ細胞から直接単離してもよい。
下の実験の部に記載されるように、高親和性キメラ抗体は、ヒト可変領域とマウス定常領域を有するまま単離されるが、親和性、選択性、エピトープ、等を含む、望ましい特性について特徴付けられ選択される。次に、マウス定常領域は、所望のヒト定常領域で置き換えられて本発明の完全ヒト抗体、例えば、野生型または改変IgG1もしくはIgG4を産生する。選択された定常領域は特定の使用に応じて変動する場合があるが、高親和性抗原結合および標的特異性特性は可変領域に存在する。
一般に、本発明の抗体は極めて高い親和性を有し、固相上に固定化されたまたは液相中の抗原への結合により測定した場合、典型的には、約10-12から約10-9MまでのKDを有する。
生物学的な均等物
本発明の抗ANGPTL8抗体および抗体断片は、記載されている抗体のアミノ酸配列とは異なるがヒトANGPTL8に結合する能力を保持しているアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。そのような変異抗体および抗体断片は、親配列と比べた場合、アミノ酸の1つまたはそれ以上の付加、欠失、または置換を含むが、記載されている抗体の生物活性と本質的に等しい生物活性を示す。同様に、本発明の抗ANGPTL8抗体コードDNA配列は、開示されている配列と比べた場合、ヌクレオチドの1つまたはそれ以上の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗ANGPTL8抗体または抗体断片に本質的に生物学的同等性の抗ANGPTL8抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。そのような変異アミノ酸およびDNA配列の例は上で考察されている。
2つの抗原結合タンパク質、または抗体は、例えば、単回用量でまたは多回用量で、類似する実験条件下で同じモル用量で投与される場合、その吸収速度および程度が有意差を示さない製剤学的な均等物または製剤学的な代替物であるならば、生物学的に同等だと見なされる。一部の抗体は、その吸収の程度は等しいが、その吸収速度は等しくなくても、等価物または製剤学的代替物と見なされるが、吸収速度のそのような違いは意図的でありラベリングに反映され、例えば、連用に効果的な身体薬物濃度の達成に不可欠ではなく、研究されている特定の製剤にとり医学的には取るに足りないと見なされるので生物学的に同等であると見なしてもよい。
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、その安全性、純度、および効力に臨床的に意味のある差がなければ、生物学的に同等である。
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、患者での切り替えのない継続治療と比べた場合、免疫原性の臨床的に重大な変化または有効性の減少を含む、副作用のリスクの予想される増加なしで、患者で参照製品と生物由来製品を1回またはそれ以上切り替えることが可能ならば、生物学的に同等である。
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、その両方が使用条件(単数または複数)について共通の作用機序(単数または複数)により作用するならば、そのような機序が知られている限り、生物学的に同等である。
生物学的同等性はin vivoおよびin vitro方法により実証してもよい。生物学的同等性の尺度は、例えば、(a)ヒトまたは他の哺乳動物でのin vivo試験、そこでは抗体またはその代謝物の濃度が血液、血漿、血清、または他の生体液において時間の関数として測定される;(b)ヒトin vivo生物学的利用能データと相関しておりこれを適度に予想するin vitro試験;(c)ヒトまたは他の哺乳動物でのin vivo試験、そこでは抗体(またはその標的)の適切な急性薬理効果が時間の関数として測定される;および(d)抗体の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的同等性を確立するよく管理された臨床試験を含む。
本発明の抗ANGPTL8抗体の生物学的に同等のバリアントを、例えば、生物活性に必要ではない残基もしくは配列の種々の置換をするまたは末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することにより構築してもよい。例えば、生物活性にとり不可欠ではないシステイン残基は欠失させるまたは他のアミノ酸と交換して、再生による不必要なまたは不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防ぐことが可能である。他の状況では、生物学的に同等の抗体は、抗体のグリコシル化特性を改変する、アミノ酸変化、例えば、グリコシル化を除去するまたは取り除く突然変異を含む抗ANGPTL8抗体バリアントを含んでもよい。
多特異性抗体
本発明の抗体は単一特異性でも多特異性(例えば、二重特異性)でもよい。多特異性抗体は1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的な、または1つよりも多い標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有していてもよい。例えば、Tuttら、1991年、J.Immunol.147:60~69頁;Kuferら、2004年、Trends Biotechnol.22:238~244頁を参照されたい。本発明の抗ANGPTL8抗体は別の機能分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結するまたはこれと共発現することが可能である。例えば、抗体またはその断片は、別の抗体または抗体断片のような1つまたはそれ以上の他の分子実体に機能的に連結させて(例えば、化学カップリング、遺伝子融合、非共有会合によりまたは他の方法で)、第2の結合特異性を有する二重特異性または多特異性抗体を産生することが可能である。
本発明は、免疫グロブリンの1つのアームがヒトANGPTL8に結合し、免疫グロブリンのもう一方のアームが第2の抗原に特異的な二重特異性抗体を含む。ANGPTL8結合アームは、本明細書の表1に示されるHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれかを含むことが可能である。
本発明の状況で使用可能である例示的二重特異性抗体フォーマットは、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメインおよび第2のIg CH3ドメインの使用を含み、第1と第2のIg CH3ドメインは少なくとも1つのアミノ酸が互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸差は、アミノ酸差のない二重特異性抗体と比べた場合、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を低減させる。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインはプロテインAに結合し第2のIg CH3ドメインは、H95R改変(IMGTエクソン番号付けによれば;EU番号付けによればH435R)のようなプロテインA結合を低減するまたは消失させる突然変異を含有する。第2のCH3はY96F改変(IMGTによれば;EUによればY436F)をさらに含んでいてもよい。第2のCH3内に見出され得るさらなる改変は、IgG1抗体の場合は、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによれば;EUによればD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I));IgG2抗体の場合は、N44S、K52N、およびV82I(IMGTによれば;EUによればN384S、K392N、およびV422I);ならびにIgG4抗体の場合は、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによれば;EUによればQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)を含む。上記の二重特異性抗体フォーマットの変動は本発明の範囲内に想定されている。
本発明の状況で使用可能な他の例示的二重特異性フォーマットは、限定せずに、例えば、scFvベースのまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合物、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブイントゥーホール(knobs-into-hole)、共通の軽鎖(例えば、ノブイントゥーホールを有する共通の軽鎖、等)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Duobody)、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、およびMab2二重特異性フォーマットを含む(例えば、Kleinら、2012年、mAbs 4:6、1~11頁、および前述のフォーマットの概説については本明細書で引用される参考文献参照)。二重特異性抗体はペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築することも可能であり、例えば、直交性化学反応性のある非天然アミノ酸を使用して部位特異的抗体オリゴヌクレオチドコンジュゲートを作成し、次にこれは自己組織化して限定された組成、結合価および幾何形状を有する多量体複合体になる(例えば、Kazaneら、J.Am.Chem.Soc.[Epub:Dec.4、2012年]参照)。
治療製剤および投与
本発明は、本発明の抗ANGPTL8抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、改善された移動、送達、耐久性などを提供する適切な担体、賦形剤、および他の薬剤と一緒に処方される。多数の適切な製剤が全ての薬剤師に知られている処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、PAに見出すことが可能である。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies、Carlsbad、CAのような)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油および油中水乳濁液、乳濁液カーボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカーボワックスを含有する半固体混合物を含む。Powellら、「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238~311頁も参照されたい。
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢およびサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変動してもよい。好ましい用量は典型的には、体重または体表面積に従って計算される。成人患者では、通常は、約0.01~約20mg/kg体重、さらに好ましくは、約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mg/kg体重の単回用量で本発明の抗体を静脈内に投与するのが有利であり得る。状態の重症度に応じて、処置の回数および期間は調整することが可能である。抗ANGPTL8抗体を投与するための効果的投与量およびスケジュールは、経験的に決定してもよく;例えば、患者進行は定期評価によりモニターすることが可能であり、それに従って用量は調整される。さらに、投与量の種間スケーリングは、当技術分野の周知の方法を使用して実施することが可能である(例えば、Mordentiら、1991年、Pharmaceut.Res.8:1351頁)。
種々の送達方式、例えば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセルへのカプセル封入、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシス(例えば、Wuら、1987年、J.Biol.Chem.262:4429~4432頁参照)が知られており、これを使用すれば本発明の医薬組成物を投与することが可能である。導入方法は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜内、および経口経路を含むがこれらに限定されない。組成物はいかなる便利な経路によっても、例えば、注入またはボーラス注入により、上皮または皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸粘膜、等)を通じた吸収により投与してもよく、他の生物活性剤と一緒に投与してもよい。投与は全身的でも局所的でも可能である。
本発明の医薬組成物は、標準的針と注射器を用いて皮下にまたは静脈内に送達することが可能である。さらに、皮下送達に関しては、ペン型送達装置は本発明の医薬組成物を送達するのにすぐに用途がある。そのようなペン型送達装置は再利用可能であるまたは使い捨て可能である。再利用可能なペン型送達装置は一般に、医薬組成物を含有する取り換え可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の医薬組成物が全て投与されカートリッジが空になった後は、空のカートリッジはすぐに破棄し、医薬組成物を含有する新しいカートリッジで置き換えることが可能である。次に、ペン型送達装置は再利用可能である。使い捨て可能なペン型送達装置では、取り換え可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨て可能な送達装置は、装置内のリザーバーに保持された医薬組成物で予め満たされる。リザーバーの医薬組成物が空になった後は、全装置は破棄される。
多数の再利用可能ペンおよび自動注入送達装置は、本発明の医薬組成物の皮下送達に用途がある。例は、ごく少数の例を挙げれば、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford、Inc.、Woodstock、UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems、Bergdorf、Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、Indianapolis、IN)、NOVOPEN(商標)I、IIおよびIII(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk、Copenhagen、Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis、Frankfurt、Germany)を含むがこれらに限定されない。本発明の医薬組成物の皮下送達に用途のある使い捨て可能ペン型送達装置の例は、ごく少数の例を挙げれば、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis)、the FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、およびthe KWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、the SURECLICKTM Autoinjector(Amgen、Thousand Oaks、CA)、the PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart、Germany)、the EPIPEN(Dey、L.P.)、ならびにthe HUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs、Abbott Park IL)を含むがこれらに限定されない。
ある特定の状況では、医薬組成物は徐放方式で送達することが可能である。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer、上記;Sefton、1987年、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201頁参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することが可能である;Medical Applications of Controlled Release、Langer and Wise(編)、1974年、CRC Pres.、Boca Raton、Floridaを参照されたい。さらに別の実施形態では、徐放方式は組成物標的の近くに置くことが可能であり、したがって全身用量の一部のみで済む(例えば、Goodson、1984年、in Medical Applications of Controlled Release、上記、第2巻、115~138頁参照)。他の徐放方式はLanger、1990年、Science 249:1527~1533頁による概論で考察されている。
注射可能調製物は、静脈内、皮下、皮内および筋肉内注射、点滴注入、等用の剤形を含んでいてもよい。これらの注射可能調製物は公知の方法により製造してもよい。例えば、注射可能調製物は、例えば、上記の抗体またはその塩を注射のために習慣的に使用される無菌水性媒体または油性媒体に溶解する、懸濁するまたは乳化することにより製造してもよい。注射用の水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコースおよび他の補助剤を含有する等張液、等があり、これらの媒体は、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水添ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加体)]、等のような適切な可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油、等が用いられ、これらの媒体は、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、等のような可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このようにして製造される注射液は適切なアンプルに充填されるのが好ましい。
上記の経口または非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に合うように適合させた単位用量で剤形に製造されるのが有利である。単位用量でのそのような剤形は、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射液(アンプル)、坐薬、等を含む。含有する前述の抗体の量は一般に、単位用量での剤形あたり約5から約500mgであり;特に、注射の形態では、その他の剤形には前述の抗体が約5から約100mgでおよび約10から約250mgで含有されるのが好ましい。
免疫コンジュゲート
本発明は、血中トリグリセリドまたは脂質レベルを低減することができる薬剤のような治療部分にコンジュゲートされたヒト抗ANGPTL8モノクローナル抗体(免疫コンジュゲート)を包含する。抗ANGPTL8抗体にコンジュゲートしてもよい治療部分のタイプは、処置する状態および達成される所望の治療効果を考慮に入れることになる。例えば、高トリグリセリド血症、または血中トリグリセリドを低下させる、および/もしくは正常な血中トリグリセリドレベルを維持するのが望ましい他の任意の状態を処置するためには、薬剤をANGPTL8抗体にコンジュゲートしてもよい。代わりに、所望の治療効果が高トリグリセリド血症、または高い、もしくは制御されていない血中トリグリセリドレベルから生じる他の任意の状態に関連する続発症または症状を処置することである場合、その状態の続発症または症状を処置するのに適した薬剤をコンジュゲートするのが有利である可能性がある。免疫コンジュゲートを形成するための適切な薬剤の例は当技術分野では公知であり、例えば、国際特許第05/103081号を参照されたい。
抗体の治療的使用
本抗体は、例えば、高トリグリセリド血症に罹っている患者において血中トリグリセリドレベルを低下させるのに、およびANGPTL8の活性を阻害するのが有益である広範囲の状態および障害の処置にも有用である。したがって、抗体は、例えば、現行の処置に関連する望ましくない副作用の1つまたはそれ以上を低減するおよび/または除去しつつ、内分泌系、中枢神経系、末梢神経系、心臓血管系、肺系、および胃腸管系の疾患もしくは状態または関連する症状もしくは続発症を予防する、処置する、または軽減する用途がある可能性がある。
例えば、本発明の抗体を使用して、高脂血症、高リポ蛋白血症およびアテローム生成脂質異常症、糖尿病性脂質異常症を含む脂質異常症、TG>1000mg/dLの重篤な高トリグリセリド血症および関連する急性膵炎を含む高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、カイロミクロン血症、混合型脂質異常症(肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病、等)、リポジストロフィー、脂肪萎縮症などのような脂質代謝を含む疾患または障害を含むがこれらに限定されない疾患または障害を処置することができ、これらの疾患または障害は、例えば、減少したLPL活性および/もしくはLPL欠損、変化したApoC2、ApoE欠損、増加したApoB、超低密度リポタンパク質(VLDL)の増加した産生および/もしくは減少した除去、ある特定の薬物処置(例えば、グルココルチコイド処置誘発脂質異常症)、任意の遺伝的素因、食事、生活様式などにより引き起こされる。
本発明の方法は、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、高血圧、狭心症、脳卒中、脳血管疾患、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢血管疾患などのような循環器疾患もしく障害を含むがこれらに限定されないトリグリセリド血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高リポ蛋白質血症、ならびに/または脂質異常症;急性膵炎;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH);糖尿病(例えば、II型糖尿病)のような血糖障害;肥満などに関連するまたはこれから生じる疾患または障害を予防するまたは処置することも可能である。
本発明の方法は肥満に関連する疾患または障害を予防するまたは処置することも可能である。ある特定の実施形態では、本発明の方法を使用すれば、ANGPTL8阻害剤/アンタゴニストを投与することにより、対象において体重の低下を達成する、体脂肪量の低減を達成する、エネルギー消費を増加する、褐色脂肪特異的遺伝子の発現を誘発する、および/またはHDL-Cを増加することが可能である。
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの抗体、またはその抗原結合断片は、脂質異常症、肥満に関連するメタボリックシンドロームを処置するために、または体重増加を予防するために、または正常な体重を維持するために使用してもよい。
一実施形態では、本発明は、血中トリグリセリドレベルを低下させるための、または部分的に高血中トリグリセリドレベルに関連する、もしくはこれを特徴とする状態または疾患、もしくは状態または疾患に関連する少なくとも1つの症状または合併症を処置するための方法であって、表1由来のヒトANGPTL8に特異的な1つまたはそれ以上の抗体を含む医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、それにより、血中トリグリセリドレベルを低下させる、またはその状態または疾患が治療される、またはその状態または疾患に関連する少なくとも1つの症状または合併症が軽減されるかもしくは重症度が低減される、方法を提供する。
一実施形態では、本発明の少なくとも1つの抗体、またはその抗原結合断片は、単独でまたは高トリグリセリド血症、もしくは高トリグリセリド血症に関連する少なくとも1つの症状を処置する第2もしくは第3の治療剤と組み合わせて使用してもよく、または、例えば、高トリグリセリド血症、例えば、家族性高トリグリセリド血症もしくは家族性異常βリポ蛋白血症を発症する遺伝的素因を有する患者において、高トリグリセリド血症に罹るリスクのある患者を処置するために使用してもよい。
他の状態は患者を高レベルのトリグリセリドになりやすくする場合がある。例えば、ベータブロッカー、経口避妊薬、利尿剤、ステロイドのようなある特定の薬物、またはタモキシフェンの使用により、トリグリセリドのレベルが上昇する場合があり、したがって、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、心臓発作、および他の心臓状態のような、高レベルのトリグリセリドに関連する状態もしくは合併症を発症する可能性が患者で高まる場合がある。
さらに、肥満、管理が不十分な糖尿病、甲状腺機能低下症、腎疾患、またはアルコール摂取を含むある特定の他の状態は高レベルのトリグリセリドをもたらす場合がある。
一実施形態では、抗体を使用して、高血中トリグリセリドレベルを一部特徴とする疾患もしくは障害の発病を予防する、またはそのような疾患もしくは障害を発症する可能性を予防する、またはその疾患もしくは障害の重症度、もしくはその疾患もしくは障害に関連する少なくとも1つの症状を緩和してもよい。本発明の抗体は、これに限定されないが、単独でまたは高トリグリセリド血症のような高血中トリグリセリドレベルを一部特徴とする疾患もしくは状態に罹っている患者を処置するための標準的な治療であることが知られている他の薬剤もしくは方法と一緒に補助療法として使用してもよいことが想定されている。そのような標準療法は、流体投与、または血中トリグリセリド、もしくは脂質を低下させるのに、もしくは体重減少に有用である他の任意の医薬品の投与を含んでいてもよい。
一実施形態では、本明細書に記載される抗体の使用は、正常レベルのトリグリセリドを達成し、それにより高トリグリセリドレベルを特徴とする疾患の1つまたはそれ以上の症状、または疾患に関連する長期合併症を軽減する、または予防する効果的な手段である可能性がある。
本発明の抗体は、急性状況に(短期使用のため)、またはもっと長期の(慢性)使用のために使用してもよいことが想定されている。
併用療法
併用療法は、本発明の抗ANGPTL8抗体および本発明の抗体と、または本発明の抗体の生物学的に活性な断片と組み合わせるのが有利である任意の追加の治療薬を含んでいてもよい。
例えば、本発明の抗体は、高トリグリセリド血症のような高トリグリセリドレベルを一部特徴とする疾患または状態を処置するのに使用するために企図されている場合、第2の治療薬は、高血中トリグリセリドレベルを特徴とする疾患もしくは状態に罹っている患者において、トリグリセリドレベルのさらなる低下を助けるのに、または少なくとも1つの症状を低減するのに用いてもよい。そのような第2の薬剤は、例えば、別のANGPTL8アンタゴニスト(例えば、別の異なる抗ANGPTL8抗体またはANGPTL8の小分子阻害剤)から選択してもよく、またはトリグリセリド血症、もしくは高血中トリグリセリドレベルに関連する、もしくはから生じる他の疾患もしくは状態を処置するのに有用な他の治療部分、もしくは高いおよび/もしくは制御されていない血中トリグリセリドレベルに関連する任意の長期合併症を処置するのに有用な薬剤を含んでいてもよい。
関係する実施形態では、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片と、(1)セリバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなどのような3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-補酵素A(HMG-CoA)レダクターゼ阻害剤;(2)コレステロール取込みおよび/または胆汁酸再吸収の阻害剤;(3)ニコチン酸、これはリポ蛋白質異化作用を増加する;(4)フィブラートまたは両親媒性カルボン酸、これは低密度リポ蛋白質(LDL)レベルを低下させ、高密度リポ蛋白質(HDL)およびTGレベルを改善し、非致死性心臓発作の数を低減する;ならびに(5)22-ヒドロキシコレステロールのようなコレステロール除去において役割を果たすLXR転写因子の活性化因子のような第2の治療薬の組合せ、またはエゼチミブとシンバスタチンのような固定された組合せ;スタチンと胆汁樹脂(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム)、ナイアシンとスタチン(例えば、ナイアシンとロバスタチン);もしくはオメガ-3-脂肪酸エチルエステル(例えば、オマコール)のような他の脂質低下薬との固定された組合せである組成物を特色とする。
さらに、第2の治療薬は、グルカゴンの1つまたはそれ以上の他の阻害剤/アンタゴニストまたはグルカゴン受容体の阻害剤/アンタゴニスト、ならびにANGPTL8の他の阻害剤のような他の分子の阻害剤、ならびにANGPTL3、ANGPTL4、ANGPTL5、ANGPTL6、アポリポ蛋白質C-III(APOC3とも呼ばれる;例えば、米国特許第8530439号、米国特許第7750141号、米国特許第7598227号に記載されるAPOC3の阻害剤およびvolanesorsen、ISIS-APOCIIIRxとも呼ばれる参照)およびプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)のような他の分子の阻害剤が可能であり、これらの分子は脂質代謝、特に、コレステロールおよび/またはトリグリセリド恒常性に関与している。これらの分子の阻害剤は、小分子、アンチセンス分子およびこれらの分子に特異的に結合しその活性を遮断する抗体を含む。
一実施形態では、本発明の抗ANGPTL3抗体を使用して糖尿病(例えば、2型糖尿病)のような疾患を処置する場合、これらの抗体は現在利用可能な糖尿病についての以下の処置の1つまたはそれ以上と組み合わせて使用してもよい。これらの処置は以下の:インスリン、インスリン類似体(下参照)、ビグアナイド(メトホルミン)、スルホニル尿素(例えば、グリブリド、グリピジド)、PPARガンマアゴニスト(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)、アルファグルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ボグリボース)、グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)受容体アゴニスト(例えば、BYETTA(登録商標)(エキセナチド)、TRULICITY(商標)(デュラグルチド)、VICTOZA(登録商標)(リラグルチド)、LYXUMIA(登録商標)(リキシセナチド)、TANZEUM(商標)(アルビグルチド)、または前述のもののいずれかの類似体)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-4)阻害剤(例えば、サキサグリプチン(ONGLYZA(登録商標))、シタグリプチン(JANUVIA(登録商標))、およびビルダグリプチン(GALVUS(登録商標))、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、INVOKANA(商標)(カナグリフロジン)、FORXIGA(登録商標)(ダパグリフロジン)、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン)、(SYMLIN(登録商標)(プラムリンチド)、グルカゴン受容体アンタゴニスト(例えば、米国特許第8545847号に記載されている)、およびグルカゴンアンタゴニストを含む。
ある特定の関係する実施形態では、組成物は、非スルホニル尿素分泌促進物質、速効型(例えば、リスプロ、アスパルト、グルリジン)および持効型(例えば、デテミルインスリン、デグルデクインスリン、またはグラルギンインスリン)を含むインスリン類似体、エキセンディン-4ポリペプチド、ベータ3アドレナリン受容体アゴニスト、コレステロール取込みおよび/または胆汁酸再吸収の阻害剤、LDL-コレステロールアンタゴニスト、コレステリルエステル輸送タンパク質アンタゴニスト(例えば、トルセトラピブ、アナセトラピブ、ダルセトラピブ、またはエバセトラピブ)、エンドセリン受容体アンタゴニスト、成長ホルモンアンタゴニスト、インスリン感受性改善薬、アミリン模倣物もしくはアゴニスト、カンナビノイド受容体アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、メラノコルチン、メラニン凝集ホルモン受容体アゴニスト、SNRI、線維芽細胞成長因子21(FGF21)模倣物(例えば、米国特許出願公開第20110002845号および米国特許出願公開第20080261236号参照)、線維芽細胞成長因子受容体1c(FGFR1c)アゴニスト(例えば、米国特許出願公開第20110150901号参照)、アミノグアニジンおよびタンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤のようなしかしこれらに限定されない高度糖化最終産物形成の阻害剤からなる群から選択される第2の薬剤を含んでいてもよい。
関係のある実施形態では、第2の治療薬は、必要であれば、根底にある状態に伴う症状を軽減するおよび/または低減するように、鎮痛剤、Cox-2阻害剤のような非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)を含む抗炎症薬などのような1つまたはそれ以上の他の治療薬でもよい。
追加の治療活性成分(複数可)は、本発明の抗ANGPTL8抗体の投与に先立って、これと同時に、またはこの後で投与してもよい。本開示のために、そのような投与レジメンは、第2の治療活性成分「と組み合わせた」抗ANGPTL8抗体の投与と見なされる。
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態に従えば、抗ANGPTL8抗体の多回用量(または、抗ANGPTL8抗体と本明細書で言及される追加の治療活性薬剤のいずれかの組合せを含む医薬組成物)は、既定の時間経過にわたり対象に投与してもよい。本発明のこの態様に従った方法は、本発明の抗ANGPTL8抗体の多回用量を対象に順次投与することを含む。本明細書で使用される場合、「順次投与する」とは、抗ANGPTL8抗体のそれぞれの用量が異なる時点で、例えば、既定の間隔(例えば、時間、日、週または月)が開けられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本発明は、抗ANGPTL8抗体の最初の単回用量、続いて抗ANGPTL8抗体の1つまたはそれ以上の第2の用量、場合により、続いて抗ANGPTL8抗体の1つまたはそれ以上の第3の用量を患者に順次投与することを含む方法を含む。
用語「最初の用量」、「第2の用量」、および「第3の用量」とは、本発明の抗ANGPTL8抗体の投与の時間的順序のことである。したがって、「最初の用量」は処置レジメンの開始時に投与される用量であり(「ベースライン用量」とも呼ばれる)、「第2の用量」は最初の用量の後で投与される用量であり、「第3の用量」は第2の用量の後で投与される用量である。最初、第2、および第3の用量はすべて同量の抗ANGPTL8抗体を含有していてもよいが、一般には投与回数の点で互いに異なっていてもよい。しかし、ある特定の実施形態では、最初、第2、および/または第3の用量に含有される抗ANGPTL8抗体の量は一連の処置中互いに異なる(必要に応じて上または下に調整される)。ある特定の実施形態では、処置レジメンの開始時に2つまたはそれ以上(例えば、2、3、4または5)の用量が「負荷投与量」として投与され、続いて回数を少なくしてその後の用量(例えば、「維持量」)として投与される。
本発明のある特定の例示的実施形態では、それぞれの第2および/第3の用量は直前の用量の1から26(1、1と2分の1、2、2と2分の1、3、3と2分の1、4、4と2分の1、5、5と2分の1、6、6と2分の1、7、7と2分の1、8、8と2分の1、9、9と2分の1、10、10と2分の1、11、11と2分の1、12、12と2分の1、13、13と2分の1、14、14と2分の1、15、15と2分の1、16、16と2分の1、17、17と2分の1、18、18と2分の1、19、19と2分の1、20、20と2分の1、21、21と2分の1、22、22と2分の1、23、23と2分の1、24、24と2分の1、25、25と2分の1、26、26と2分の1またはそれ以上)週間後に投与される。用語「直前の用量」とは、本明細書で使用される場合、一連の複数回投与において、介在する用量なしで、順にすぐ次の用量の投与に先立って患者に投与される抗ANGPTL8抗体の用量を意味する。
本発明のこの態様に従った方法は、抗ANGPTL8抗体の任意の数の第2および/または第3の用量を患者に投与することを含んでもよい。例えば、ある特定の実施形態では、単回の第2の用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)の第2の用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単回の第3の用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)の第3の用量が患者に投与される。投与レジメンは、特定の対象の生存期間にわたって無期限に、またはそのような処置がもはや治療的に必要でなくなるもしくは有利になるまで実行してもよい。
複数の第2の用量を含む実施形態では、それぞれの第2の用量はその他の第2の用量と同じ頻度で投与してもよい。例えば、それぞれの第2の用量は、直前の用量の1から2週間または1から2カ月後に患者に投与してもよい。同様に、複数の第3の用量を含む実施形態では、それぞれの第3の用量はその他の第3の用量と同じ頻度で投与してもよい。例えば、それぞれの第3の用量は、直前の用量の2から12週間後に患者に投与してもよい。本発明のある特定の実施形態では、第2および/または第3の用量が患者に投与される頻度は処置レジメンの経過にわたって変動することが可能である。投与頻度は、臨床試験に続く個々の患者の必要に応じて医師が処置の経過中に調整してもよい。
抗体の診断使用
本発明の抗ANGPTL8抗体を使用して、例えば、診断目的で、サンプルにおいてANGPTL8を検出するおよび/または測定してもよい。例えば、抗ANGPTL8抗体、またはその断片を使用して、ANGPTL8の異常な発現(例えば、過剰発現、過小発現、発現の欠如、等)を特徴とする状態または疾患を診断してもよい。ANGPTL8についての例示的診断アッセイは、例えば、患者から得たサンプルを本発明の抗ANGPTL8抗体に接触させることを含んでいてもよく、抗ANGPTL8抗体は検出可能な標識もしくはレポーター分子で標識されている、または患者サンプルからANGPTL8タンパク質を選択的に単離する捕捉リガンドとして使用する。代わりに、非標識抗ANGPTL8抗体は、それ自体が検出できるほどに標識されている第2の抗体と組み合わせて診断用途に使用することが可能である。検出可能な標識またはレポーター分子は、3H、14C、32P、35S、もしくは125Iのような放射性同位元素;フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミンのような蛍光もしくは化学発光部分;またはアルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼのような酵素が可能である。
サンプル中のANGPTL8を検出するまたは測定するのに使用可能な特定の例示的アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、および蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を含む。
本発明に従ったANGPTL8診断アッセイにおいて使用可能なサンプルは、患者から入手可能な任意の組織または流体サンプルを含み、このサンプルは正常なまたは病的状態下で検出可能量のANGPTL8タンパク質、またはその断片を含有する。一般に、健康な患者(例えば、異常なANGPTL8レベルまたは活性に関連する疾患または状態に悩まされていない患者)から得られた特定のサンプル中のANGPTL8のレベルが測定され、最初にANGPTL8のベースライン、または標準レベルを確立することになる。次に、ANGPTL8のこのベースラインレベルは、ANGPTL8関係疾患もしくは状態、またはそのような疾患もしくは状態に関連する症状を有すると疑われる個人から得られたサンプルにおいて測定されたANGPTL8のレベルと比較することが可能である。
本方法を説明する前に、本発明が記載される特定の方法、および実験条件に限定されてはおらず、したがってそのような方法および条件は変動し得ることは理解されるべきである。本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することだけを目的としており、限定的であることを意図していないことも理解されるべきである。なぜならば、本発明の範囲が限定されるのは添付の特許請求の範囲のみによるからである。使用される数字(例えば、量、温度、等)に関しては正確さを保証するように努力を重ねてきたが、一部の実験誤差および逸脱は説明されるはずである。他の方法で示されなければ、割合は重量割合であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
他の方法で定義されてなければ、本明細書で使用される専門用語および科学用語はすべて本発明が属する分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「約(about)」は特定の列挙される数値に関して使用される場合、値が列挙された値から1%以下で変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、表現「約100」は99および101ならびにその間のすべての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4、等)を含む。
本明細書に記載される方法および材料に類似するまたはこれと等価のいかなる方法および材料も本発明の実行または試験において使用可能であるが、ここでは好ましい方法および材料が記載される。本明細書で言及される出版物はすべて参照によりその全体を本明細書に組み込む。
抗ANGPTL8抗体の産生
抗ANGPTL8抗体は、C末端マウスIgG2aタグ(配列番号340参照)と一緒に発現される組換えヒトANGPTL8を含む免疫原を用いて、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重およびカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作マウス)を免疫することにより得られた。抗体免疫応答はANGPTL8特異的免疫アッセイによりモニターした。所望の免疫応答が達成されると、いくつかの完全ヒト抗ANGPTL8抗体は、米国特許出願公開第2007/0280945号A1に記載される抗原陽性B細胞から産生した。前記特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込む。
本実施例の方法に従って産生される例示的抗ANGPTL8抗体のある特定の生物学的特性は、下に示される実施例において詳細に説明される。
重および軽鎖可変領域アミノ酸ならびに核酸配列
表1は、本発明の選択された抗ANGPTL8抗体の重および軽鎖可変領域アミノ酸ならびにCDRのアミノ酸配列識別子を示している。対応する核酸配列識別子は表2に示されている。
表1および2に示されるように、抗体は典型的には、本明細書では以下の命名法:Fc接頭辞(例えば、「H1H」、「H1M」、「H2M」、「H4H」、等)、続いて数字識別子(例えば、「15321」、「15341」、「15350」、等)、続いて「P」または「N」接尾辞に従って呼ばれる。したがって、本命名法に従えば、抗体は本明細書では、例えば「H4H15321P」、等と呼ばれる場合がある。本明細書で使用される抗体名称のH4H接頭辞は、抗体の特定のFc領域アイソタイプを示す。例えば、「H4H」抗体はヒトIgG4 Fcを有し、「H1M」抗体はマウスIgG1 Fcを有し、「H2M」抗体はマウスIgG2 Fcを有する(すべての可変領域は、抗体名称中最初の「H」で表されるように完全ヒトである)。当業者であれば認識するように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することが可能である(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体はヒトIgG4を有する抗体に変換することが可能である、等)が、いずれにしても、可変ドメイン(CDRを含む)は、表1および2に示される数字識別子により示されるが、依然として同じであり、結合特性はFcドメインの性質とは無関係に同一であるまたは実質的に類似していると予想される。
ANGPTL8、ANGPTL3、およびANGPTL4ペプチドに結合するANGPTL8抗体についての解離速度定数(Kd)の表面プラズモン共鳴(SPR)決定
ANGPTL3[国際公開第2012/174178号A1;Leeら、(2009)JBC、284:13735~13745頁]およびANGPTL4[Desaiら、(2007)PNAS、104:11766~11771頁]のN末端コイルドコイル領域に結合する抗体がANGPTLタンパク質のLPL阻害活性を遮断することは以前に立証されていた。本実験では、ANGPTL8に対する抗体を、ANGPTL8のN末端領域由来のペプチドへの結合について試験した。
ヒトANGPTL8ペプチド(hANGPTL8ペプチド、配列番号337)に結合するANGPTL8抗体の解離速度定数は、リアルタイム表面プラズモンベースのMASS-1バイオセンサープラットホームを使用して決定した。アッセイは、ANGPTL8抗体がセンサー表面で捕捉され、ペプチドが抗体表面に注射されるフォーマットを利用した。ヒトANGPTL3(hANGPTL3ペプチド、配列番号338)およびヒトANGPTL4(hANGPTL4ペプチド、配列番号339)のN末端コイルドコイル領域由来のペプチドも対照として含まれた。ANGPTL4ペプチドに結合する対照抗体(米国特許出願公開第2011/0159015号A1からのH4H268P)および負のアイソタイプ対照抗体も含まれた。結合研究はすべて、10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05% v/v サーファクタントTween-20(HBS-ETランニングバッファー)において25℃で実施した。HCAセンサー表面は、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、#BR-1008-39)へのアミンカップリングを介して誘導体化し、この表面にはおおよそ1000RUのそれぞれのANGPTL8抗体または対照抗体が捕捉された。ペプチドストック溶液はHBS-ETランニングバッファーで500nMまで希釈し、これを抗体捕捉表面上に流速30μL/分で4分間注射し、続いてHBS-ETランニングバッファーにおいて結合ペプチドを10分間解離させた。
捕捉されたANGPTL8抗体に結合するペプチドの会合段階は1対1結合モデルに適合することはできず;したがって、解離速度定数(K
d)値のみを、Scrubber2.0cカーブフィッティングソフトウェアを使用して、リアルタイム結合センサーグラムを適合させることにより計算した。解離半減期(t1/2)は
としてK
dから計算した。
補足されたANGPTL8抗体、対照ANGPTL4抗体、およびアイソタイプ対照抗体に結合するANGPTL8、ANGPTL3、およびANGPTL4N末端領域ペプチドについての結合パラメータは表3~5に示されている。
結果
これらの実験条件下では、500nMのhANGPTL8、hANGPTL3、またはhANGPTL4ペプチドによりブランク抗hFc表面に示される最大非特異的結合シグナルは3RUであった。したがって、3RU非特異的バックグランドの3倍であるシグナル(すなわち、≧9RU)を有する結合相互作用は特異的結合相互作用と見なした。この基準に基づいて、9RU未満の抗体-ペプチド結合シグナルは非結合と見なした(表1中NB)。
この結合研究から、ANGPTL8抗体、H4H15321P、H4H15367P2、およびH4H15345PがN末端領域ANGPTL8ペプチド(配列番号337)に特異的に結合することが明らかにされた。ANGPTL8抗体のどれも、hANGPTL3(配列番号338)にもhANGPTL4(配列番号339)N末端領域ペプチドにも結合しなかった。
表面プラズモン共鳴(SPR)による完全長ヒトおよびサルANGPTL8タンパク質に結合するH4H15341Pについての動態学的結合パラメータの決定
完全長ヒトおよびカニクイザルANGPTL8タンパク質に結合するANGPTL8抗体H4H15341Pについての平衡解離定数(KD)を、リアルタイム表面プラズモン共鳴ベースのMASS-1バイオセンサープラットホームを使用して決定した。アッセイでは、ヒトまたはサルANGPTL8タンパク質が固定化されているセンサー表面上にH4H15341Pを注射した。結合研究はすべて、10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05% v/v サーファクタントTween-20(HBS-ETランニングバッファー)において25℃で実施した。HCAセンサー表面は先ずアミンカップリングヤギ抗マウスIgG2aポリクローナル抗体(Southern Biotech、#1080-01)により誘導体化し、次にその上にC末端マウスIgG2a Fcタグ(hANGPTL8-mFc;配列番号340)と一緒に発現されたヒトANGPTL8またはC末端マウスIgG2a Fcタグ(MfANGPTL8-mFc;配列番号341)と一緒に発現されたサルANGPTL8がおおよそ30RU(結合単位)捕捉された。異なる濃度のANGPTL8 mAbは先ず、HBS-ETランニングバッファー(300nM~1.23nM;3倍連続希釈)で製造し、次にANGPTL8-mFc捕捉表面上に流速30μL/分で4分間注射し、続いてHBS-ETランニングバッファーにおいて結合mAbを10分間解離させた。
動態結合(K
a)および解離(K
d)速度定数を、Scrubber2.0cカーブフィッティングソフトウェアを使用して、リアルタイム結合センサーグラムをマストランスポート限界のある1対1結合モデルに適合させることにより決定した。結合解離平衡定数(K
D)および解離半減期(t1/2)は
として動態速度定数から計算した。
25℃でhANGPTL8-mFcおよびMfANGPTL8-mFcに結合する抗ANGPTL8 mAbについての結合動態パラメータは表6に示されている。
結果
抗体H4H15341Pはセンサー表面に固定化されたヒトとサルANGPTL8タンパク質の両方に結合し、記録された解離段階中は測定可能な解離を示さなかった。結合親和性の概算を得るために、解離速度定数Kdは実験条件下の上限検出限界1.0E-05 1/sに固定した。hANGPTL8-mFcおよびMfANGPTL8-mFcに結合するH4H15341Pの平衡解離定数(KD)値はそれぞれ117pMおよび86pMまたはそれ以下であると推定した。
バイオレイヤー干渉法(BLI)によるヒトおよびサルANGPTL8結合特異性の決定
ヒトおよびサルANGPTL8タンパク質へのANGPTL8抗体の結合を
Octet HTXバイオセンサープラットホーム(ForteBio、Pall Life Sciencesの一部門)を用いたバイオレイヤー干渉法を使用して調べた。実験はすべて、10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、0.05% v/v サーファクタントTween-20および1mg/mlのBSAにおいて、反応多重ウェルプレートを1000rpmで撹拌しながら25℃で実施した。C末端マウスIgG2a Fcタグ(hANGPTL8-mFc;配列番号340)付きで産生されたヒトANGPTL8またはC末端マウスIgG2a Fcタグ(MfANGPTL8-mFc;配列番号341)付きで産生されたカニクイザルANGPTL8はおおよそ1.6nmが、10μg/mLのそれぞれのタンパク質を含有するウェルにセンサーを4分間浸すことにより抗mFc(AMC)Octetバイオセンサー上で捕捉した。同じ条件下で、同じmFcタグ付の負の対照タンパク質(hLDLR-mFC)もAMCセンサーに結合させた。次に、4つのセンサー全て、3つはタンパク質結合および1つはブランク、は100nMの異なるANGPTL8モノクローナル抗体またはアイソタイプ対照を含有するウェルに4分間浸した。4分間の結合工程後に観察された結合シグナルは表7にまとめている。
結果
本研究で試験した25のANGPTL8 mAbのうち、24の抗体が無関係な対照センサーチップ上の最大結合シグナルよりも高い結合シグナルを示した(0.03nm;この値を使用してバックグランドの何倍として結合シグナルを計算した)。24のヒトANGPTL8バインダーのうち、20はサルANGPTL8タンパク質上での陽性結合を示した。サルANGPTL8タンパク質に結合しなかった4つの抗体も、バックグランド結合シグナルの1~2倍の間の値を有する低結合シグナルをヒトANGPTL8タンパク質上で示した。ヒトANGPTL8タンパク質に結合する24の抗体では、4つの抗体(H4H15362P2、H4H15321P、H4H15330P、H4H15367P2)がバックグランドの10倍の結合シグナルを示した。別のグループの12の抗体はバックグランドの5~10倍の間の結合シグナルを示した。残りの抗体はバックグランドレベルの1~5倍の間の結合シグナルでヒトANGPTL8タンパク質に結合した。
ヒト化ANGPTL8マウスにおける循環トリグリセリドレベルに対するIgG4抗hANGPTL8抗体のin vivo効果
血清トリグリセリド(TG)レベルに対する抗hANGPTL8抗体の効果はヒト化ANGPTL8マウスにおいて決定した。マウスは実験の7日前に予め出血させて5頭のマウスの群に入れ、それぞれを抗体ごとに試験した。抗体は、研究の0日目に皮下注射により10mg/kg用量で投与した(抗hANGPTL8および無関係な特異性を有するアイソタイプ適合(hIgG4)対照)。マウスは抗体注射後連続日で出血させ(非断食)、TGレベルをADVIA(登録商標)1800血清化学アナライザー(Siemens)により血清中で決定した。平均はすべての試験抗体について時点ごとに計算した。結果は、血清TG濃度の(平均±SEM)として表されるが、表8~13に示されている。循環抗hANGPTL8抗体(血清Ab)のレベルも標準ELISAアッセイを使用して決定した。手短に言えば、プレートをヤギ抗ヒトFc抗体(Sigma-Aldrich)で被覆して血清Abを捕捉した。次に、血清をプレートに添加し、捕捉抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG抗体(Sigma-Aldrich)を使用して化学発光により検出した。結果は、(平均±SEM)として表されるが、表14~19に示されている。対照:アイソタイプ適合対照Abを受けたマウス。
結果
循環TGレベルに対するhANGPTL8への25のmAbの効果はヒト化ANGPTL8マウスにおいて試験した。抗体H4H15341Pは、投与後循環TGの有意な低下(最大68%平均)をもたらした(対照mAbと比べて)。
ヒト化ANGPTL8マウスにおけるhANGPTL8抗体H4H15341Pの用量応答
血清トリグリセリド(TG)に対するhANGPTL8 mAb、H4H15341P、の異なる用量の効果をヒト化ANGPTL8マウスにおいて評価した。マウスは実験の7日前に予め出血させて5頭のマウスの群に入れ、それぞれを用量ごとに試験した。H4H15341Pは、研究の0日目に単回用量皮下注射により1、5、10および25mg/kgでならびに無関係な特異性を有するアイソタイプ適合(hIgG4)対照を10mg/kgで投与した。マウスは抗体注射後2、7,14および21日目に出血させ(非断食)、TGレベルをADVIA(登録商標)1800血清化学アナライザー(Siemens)により血清中で決定した。平均は時点ごとに計算した。結果は、血清TG濃度の(平均±SEM)として表されるが、図1Aに示されている。
循環抗ヒト抗体(血清Ab)のレベルは標準ELISAアッセイを使用して決定した。手短に言えば、プレートをヤギ抗ヒトFc抗体(Sigma-Aldrich)で被覆して血清Abを捕捉した。次に、血清をプレートに添加し、捕捉抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG抗体(Sigma-Aldrich)を使用して化学発光により検出した。結果は、(平均±SEM)として表されるが、図2に示されている。対照Abとはアイソタイプ適合対照Abを受けたマウスのことである。
結果
循環TGおよびコレステロールレベルに対する4つの異なる用量のH4H15341P(抗hANGPTL8)の効果をヒト化ANGPTL8マウスにおいて試験した。H4H15341Pにより血清TGの用量依存的な持続する有意な低下(最大66%平均、対照mAbと比べて)がもたらされ、5mg/kgが最低の有効用量であった。全コレステロールレベルに対しては効果は観察されなかった。
ヒト化ANGPTL8マウスにおける抗hANGPTL8 mAb処置後のリポ蛋白質リパーゼ(LPL)活性の評価
LPL活性に対するhANGPTL8 mAb(H4H15341P)投与の効果をヒト化ANGPTL8マウスにおいて評価した。マウスは実験の7日前に予め出血させて5頭のマウスの群に入れ、それぞれをmAbごとに試験した。H4H15341Pおよび対照Abは、研究の0日目に単回用量皮下注射により10mg/kg用量で投与した。研究4日目、マウスに尾部静脈を介する静脈注射によりヘパリンを250U/kgで投与し、これは血管内皮表面からLPLを放出する。5分後、マウスは後眼窩から出血させ、ヘパリン後血漿を収集して分画し、LPLをヘパリン-セファロースクロマトグラフィーを使用して肝性ヘパリンから分離した。ヘパリン後血漿は、GE Akta Primeにより制御される1.0-mlヘパリン-セファロースHiTrapカラム(GE Healthcare)上に充填し、0.25MのNaCl、20%のグリセロール、1%のBSA、10mMのリン酸ナトリウム、pH6.5で平衡化した。カラムは10mlの平衡バッファーで洗浄し、30mlのNaCl勾配(20%のグリセロール、1%のBSA、10mMのリン酸ナトリウム、pH6.5中0.25~1.5M)で溶出した。得られた画分は肝性リパーゼによりプールし、LPLピークおよびリパーゼ活性はInvitrogen Enzchekリパーゼ基質(カタログ番号E33955)を使用してアッセイした。動態反応はMolecular Devices SpectraMax i3プレートリーダー上482nm励起/518nm放出で読み取った。結果は、相対的蛍光単位(RFU)(平均±SEM)として表され、図3Aおよび3Bに示されている。対照Abとはアイソタイプ適合負の対照Abを受けたマウスのことである。
結果
結果によれば、ヒト化ANGPTL8マウスにH4H15341P(抗hANGPTL8)を投与するとLPL活性は有意に増加し、肝性リパーゼ活性には何の効果もないことが明らかになった。
hANGPTL8mAb H4H15341Pを用いて処置したヒト化ANGPTL8マウスにおける脂質負荷試験
トリグリセリドクリアランスに対するmAb H4H15341Pを用いたANGPTL8阻害の効果を急性脂肪負荷により評価した。ヒト化ANGPTL8マウスは実験の8日前に予め出血させて6頭のマウスの群に入れ、それぞれをmAbごとに試験した。H4H15341Pおよびアイソタイプ適合対照Abは、研究の0日目に単回用量皮下注射により10mg/kg用量で投与した。研究4日目、マウスは、2.5μl/g体重での20%のイントラリピッド(Baxer Healthcare、IL)の静脈内投与に続いて4日間断食した。TGレベルは、引き続く時点で尾部静脈から収集した血液で評価した。結果は、TG濃度の(平均±SEM)として表され、図4に示されている。対照Abとはアイソタイプ適合負の対照Abを受けたマウスのことである。
結果
ヒト化ANGPTL8マウスにH4H15341P(抗hANGPTL8)を投与すると、対照抗体と比べて、急性脂肪負荷後のTGレベルは有意に低くなる。これらのデータから、H4H15341Pが、ANGPTL8を遮断することにより、循環からの加速されたTGクリアランスを促進することが示唆される。
アンジオポエチン様タンパク質8についてのHisense線形エピトープマッピング
HiSense線形ペプチドを使用するPepscan分析を用いて抗体H4H15341PおよびH4H15367P2についての線形エピトープを確立した。研究はPepscan Presto BV(Zuidersluisweg 2、8243RC Lelystad、The Netherlands)で行った。Pepscanデータはすべて、自社で開発されPostgreSQLストーレッジバックエンド上に築かれた商標登録されたデータベースアプリケーションであるソフトウェアパッケージPeplab(商標)に保管する。
ペプチドの合成
標的分子のエピトープを再構築するため、ペプチドのライブラリーを合成した。アミノ官能化ポリプロピレン支持体は、商標登録された親水性ポリマー製剤を移植し、続いてヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と一緒にジシクロヘキシルカルボジイミド(DDC)を使用してt-ブチルオキシカルボニル-ヘキサメチレンジアミン(BocHMDA)と反応させ、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用してBoc基を引き続き切断することにより得た。標準Fmocペプチド合成を使用して、カスタム修正されたJANUSリキッドハンドリング装置(Perkin Elmer)によりアミノ官能化ポリプロピレン支持体上でペプチドを合成した。
アレイ上へのアンジオポエチン様タンパク質8の結合
標的タンパク質を正の対照としてミニカード上に結合させた。アンジオポエチン様タンパク質8(hANGPTL8-mFc)をアレイ上に結合させるため、2つの架橋剤、m-マレイミドベンゾイル-Nヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)およびグルタルアルデヒド(GDA)を使用した。MBSでは、40μlのhANGPTL8-mFcを1μlのMBS(2mg/ml)と混合し、室温で45分間インキュベートし、次にアレイ上のリンカーモチーフCGGCGG(配列番号346)を含有する位置に適用した。GDA連結では、リン酸バッファー(pH5.0)中0.05%GDAをアレイ上に適用し、室温で4時間インキュベートし、次にリン酸バッファーpH8.0中5または20μg/mlの濃度でhANGPTL8-mFcをアレイ上のGlyのみを含有する位置に添加し、遊離のN末端への結合を可能にした。
ELISAスクリーニング
合成されたペプチドのそれぞれへの抗体の結合をPEPSCANベースのELISAで試験した。ペプチドアレイは一次抗体溶液と一緒にインキュベートした(4℃で一晩)。洗浄後、ペプチドアレイは1/1000希釈の適切な抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(ヤギ抗ヒトHRPコンジュゲート、Southern Biotech、カタログ番号2010-05)と一緒に25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸塩(ABTS)および20μl/mlの3パーセントH2O2を添加した。1時間後、発色現象を測定した。発色現象は電荷結合素子(CCD)-カメラおよび画像処理システムを用いて定量化した。
スクリーニング詳細
抗体結合は、抗体の濃度ならびにELISAバッファー中の競合タンパク質の量および性質を含む、要因の組合せに依存する。その上、プレコート条件(実験サンプルと一緒のインキュベーションに先立つペプチドアレイの特定の処理)は結合に影響を及ぼす。これらの詳細は以下の通りに要約される。
ラベル 希釈 サンプルバッファー 前条件付け
H4H15341P 1μg/ml 100% SQ 100% SQ
H4H15367P2 1μg/ml 100% SQ 100% SQ
負のアイソタイプ対照 1μg/ml 100% SQ 100% SQ
Pepscanバッファーおよび前条件付け(SQ)では、数は競合タンパク質の相対量を示す(ウマ血清と卵白アルブミンの組合せ)。
データ処理
CCDカメラから得られる値は0から3000mAUに及ぶ範囲があり、標準96ウェルプレートELISAリーダーに類似している。結果は定量化され、Peplabデータベースに保管される。時折、ウェルは気泡を含有し、偽陽性値を生じ、カードは手作業で点検し、気泡が引き起こすいかなる値も0とスコアー化される。
合成品質管理
合成されたペプチドの品質を検証するため、別々のセットの正および負の対照ペプチドを並行して合成した。これらのペプチドは抗体57.9を用いてスクリーニングした(Posthumusら、1990年 J Virol 64:3304~3309頁)。
結果
ペプチドの設計
ペプチドの以下のセット:
ヒトANGPTL8、成熟配列、NP_061157.3由来のアミノ酸22~198
1 APMGGPELAQ HEELTLLFHG TLQLGQALNG VYRTTEGRLT KARNSLGLYG 50
51 RTIELLGQEV SRGRDAAQEL RASLLETQME EDILQLQAEA TAEVLGEVAQ 100
101 AQKVLRDSVQ RLEVQLRSAW LGPAYREFEV LKAHADKQSH ILWALTGHVQ 150
151 RQRREMVAQQ HRLRQIQERL HTAALPA 177(配列番号347)
は標的配列上で合成した。
抗体は、ANGPTL8の完全配列を網羅する一連の15マーペプチドへの結合について試験し、それぞれのペプチドはその次のペプチド由来の1つのアミノ酸により相殺される。もっと細かいエピトープ分析のために一連の試験されるペプチド内にはダブルアラニン(「AA」)置換も含まれた。
SET1.模倣物:線形 タイプ:LIN
説明 アンジオポエチン様タンパク質8の標的配列に由来する長さ15のペプチドで1残基が相殺される。
配列(最初の10)
APMGGPELAQHEELT(配列番号348)
PMGGPELAQHEELTL(配列番号349)
MGGPELAQHEELTLL(配列番号350)
GGPELAQHEELTLLF(配列番号351)
GPELAQHEELTLLFH(配列番号352)
PELAQHEELTLLFHG(配列番号353)
ELAQHEELTLLFHGT(配列番号354)
LAQHEELTLLFHGTL(配列番号355)
AQHEELTLLFHGTLQ(配列番号356)
QHEELTLLFHGTLQL(配列番号357)
SET2.模倣物:線形 タイプ:LIN.AA
説明 set1のペプチドであるが、10位と11位の残基がAlaで置き換えられている。どちらかの位置に天然のAlaが存在すると考えられる場合、そのAlaはGlyで置き換えられる。このセットでのペプチドの順は無作為化された。アレイ上の実際の順が示されている。
配列(最初の10)
TAEVLGEVAAGQKVL(配列番号358)
VYRTTEGRLAAARNS(配列番号359)
GVYRTTEGRAAKARN(配列番号360)
VQRLEVQLRAGWLGP(配列番号361)
LTGHVQRQRAAMVAQ(配列番号362)
VLKAHADKQAAILWA(配列番号363)
LRDSVQRLEAALRSA(配列番号364)
RREMVAQQHAARQIQ(配列番号365)
VSRGRDAAQAARASL(配列番号366)
AYREFEVLKGAADKQ(配列番号367)
スクリーニングの生のELISA結果が提供されプロットされて(箱髭図、データは示していない)それぞれのデータセットを描き平均ELISAシグナル、分布、およびそれぞれのデータセット内の外れ値を示している。実験条件(抗体の量、ブロッキング強度、等)に応じて、ELISAデータの異なる分布が得られた。
抗体H4H15367P2
高厳密性条件下で試験した場合、抗体H4H15367P2は、配列1APMGGPELAQHEELT15(配列番号348)からなる1つの線形ペプチドのみに強く結合した。このサンプルは同じ条件下で2度試験し、繰り返し同じ結果が得られた。抗体H4H15367P2はアンジオポエチン様タンパク質8にも強く結合し、これは正の対照としてアレイ上に結合させた。興味深いことに、GDAカップリングと比べるとMBSを使用して結合させた標的タンパク質とは多少弱い結合が得られた。
抗体H4H15341P
高厳密性条件下で試験した場合、抗体H4H15341Pは一連の線形ペプチドに強く結合し、これらのペプチドは共通配列150QRQRREMVAQ159(配列番号368)を含有する。set1(天然の線形エピトープ模倣物)とset2(ダブルAla突然変異体)に記録される強度プロファイルを比較すると、残基R154、E155、およびQ159が抗体結合に不可欠であることが示される。抗体H4H15341Pはアンジオポエチン様タンパク質8にも強く結合し、これは固定化とは無関係に、正の対照としてアレイ上に結合させた。
負のアイソタイプ対照
負のアイソタイプ対照はアレイ上に存在するいかなるペプチドにも結合しなかった。さらに、アンジオポエチン様タンパク質8との検出可能な結合は記録されず、アンジオポエチン様タンパク質8は正の対照としてアレイ上に結合させた。負のアイソタイプ対照は、Pepscan ELISAにおいて使用されるヤギ抗ヒト二次コンジュゲートを用いてさらに試験した。抗体はこの二次により認識可能である。
結論
本研究のために提供される3つの抗体はHiSenseペプチドアレイ上で試験した。2つの抗体に対して仮の線形ペプチドを確立することが可能であった。繰り返しインキュベートしたにもかかわらず、抗体負のアイソタイプ対照はアレイに結合しなかった。本研究で同定されたコアとなる仮のエピトープは以下に収載されている:
したがって、抗体H4H15341PおよびH4H15367P2はそれぞれCおよびN末端内で異なる線形配列を認識する。MBSカップリングを用いた抗体H4H15367P2について得られたシグナルはGDAカップリングを用いたよりも少なかったという事実は、その所在が先端のN末端であることと併せて、N末端アミンそれ自体がエピトープの一部である可能性があることを示している。さらに、抗体H4H15341Pでは、ダブルアラニン突然変異体は結合にとって決定的に重要な残基を特定する役割を果たした(薄灰色で陰影をつけた残基、上記)
抗体H4H15341Pはアンジオポエチン様タンパク質8のC末端領域を標的にし、H4H15367P2が標的にするのはN末端に他ならない。抗体負のアイソタイプ対照はアレイに結合しなかった。
モノクローナル抗体を用いたANGPTL8遮断はマウスにおいて血漿トリグリセリドクリアランス、エネルギー消費および体重減少を促進する
以下の実施例では、完全ヒトモノクローナル抗体を用いたANGPTL8遮断は、マウスにおいて血漿TGを減らし、LPL活性を増やし、体重および脂肪含量を低下させることが明らかにされている。上のデータに加えて、これらのデータは、ANGPTL8阻害が高トリグリセリド血症の処置の標的であり、脂肪含量および体重に追加の利益があることを示している。
材料および方法
抗体およびタンパク質試薬
上述のように、H4H15341Pは、Regeneron’s Velocimmune(登録商標)テクノロジープラットホーム(Macdonald、L.E.ら、2014年.PNAS USA 111:5147~5152頁;Murphy、A.Jら、2014年.PNAS USA 111:5153~5158頁)を使用して導き出したもので、サルおよびヒト由来のANGPTL8に対して高親和性を有する完全ヒトモノクローナル抗体である。H4H15341Pは、半抗体形成を最小限にするために(Labrijn、A.F.ら、2009年.Nature biotechnology 27:767~771頁)ヒンジ領域に安定化突然変異(108位でセリンからプロリンへ)のあるヒトIgG4定常領域を有する(Schreier、P.H.ら、1981年 PNAS USA 78(7):4495~4499頁)。無関係な特異性を有するアイソタイプ適合抗体を対照として使用した。
結合研究
ヒトおよびサルANGPTL8へのH4H15341Pの結合は、25℃で、
10mMのHepes pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、および0.05% v/vのサーファクタントTween-20(HBS-ET)ランニングバッファー中で表面プラズモン共鳴イメージング(SPRi)ベースのMASS-1バイオセンサーを使用して研究した。HCAセンサー表面は先ずヤギ抗マウスIgG2aポリクローナル抗体(Southern Biotech、#1080-01)とアミンカップリングし、C末端マウスIgG2a Fcタグ付で発現されたANGPTL8(hANGPTL8-mFc)またはC末端マウスIgG2a Fcタグ付で発現されたサルANGPTL8(mfANGPTL8-mFc)が約30RU捕捉された。異なる濃度のH4H15341Pは、HBS-ETランニングバッファー中で製造されるが、後にhANGPTL8-mFcまたはmfANGPTL8-mFc捕捉表面上に流速30μL/分で4分間注射し、続いてHBS-ETランニングバッファー中で10分間結合mAbを解離させた。分析物なしでのランニングバッファーの注射を実施して、結合したヤギ抗マウスIgG2aポリクローナル抗体表面からの捕捉されたmAbの自然な解離から得られるベースライン変動の引き算を可能にした。生の結合データは分析物注射の開始に整列させ、続いて参照フローセルから引き算した。処理したデータは後にScrubber(v.2.0c、BioLogic Software)を使用して解析し、対照バッファー注射を使用する第2の参照引き算を実施した。会合速度(ka)、解離速度(kd)および解離定数(KD)は、Scrubber2.0cソフトウェアを使用して、二重参照引き算結合データをマストランスポート限界付きの1対1ラングミュア結合モデルに包括的に適合させることにより計算した。
マウスでの研究
ヒト化ANGPTL8マウス(ANGPTL8hum/humマウス)は、VelociGene技術(Valenzuela、D.M.ら、2003年.Nature biotechnology 21:652~659頁)を使用して75%のC57Bl/6および25%の129S6/SvEvバックグランドで作成した。VelociGene対立遺伝子識別番号はVG7182である。すべての手順はリジェネロンファーマシューティカルズ施設動物実験委員会の承認を得たプロトコルに従って行った。H4H15341Pおよび対照抗体はマウスへの皮下(S.C.)注射のために無菌PBSで希釈した。
単回投与研究:オスANGPTL8hum/humマウスは固形食餌(5001、LabDiet)で維持し、自由摂食させた。血清化学パラメータのベースラインを確立するために、血清サンプルを非断食状態で抗体投与の7日前に収集した。研究0日目、マウスはその血清TGレベルに基づいて処置群に振り分けた。マウス(n=5/群)(適宜)はH4H15341Pまたは対照抗体の単回S.C.注射を指示用量で投与した。引き続く血清サンプルは研究継続期間にわたり非断食マウスから収集し、血清化学パラメータおよびヒトANGPTL8レベルについて分析した。ヘパリン後血漿LPL活性をH4H15341Pの単回投与(10mg/kg)の4日後に測定した。ヘパリン後血漿は、以前記載された(Wang、Y.F.ら 2013年.PNAS USA 110:16109~16114頁)通りに、ヘパリンカラム上で分画して肝性リパーゼとLPLを分離した。TGヒドロラーゼ活性は、他の場所(Basu、D.J.Manjur、およびW.Jin.2011年.The Journal of Lipid Research 52:826~832頁)に記載されている通りに、EnzCheck基質(Thermo Fisher Scientific)を使用して測定した。脂肪負荷試験は、単回用量のH4H15341P(10mg/kg)の4日後に実施した。マウスは、2.5μl/g体重での20%のイントラリピッド(Baxter Healthcare)の静脈内用途前の2時間断食させた。TGは、その後の時点で尾部から収集した血液で評価した。
多回投与研究:抗体投与の7日前に(-7日目)、ベースライン血清化学を非断食動物において測定した。-6日目、オスANGPTL8hum/humマウスは高脂肪高コレステロール(HFHC)食餌(21%脂肪、0.21%コレステロール、Research Diets)状態に置いた。研究0日目、マウスはその血清TGおよび体重に基づいて処置群に振り分けた(n=8/群)。マウスはH4H15341Pまたは対照抗体を週1回(S.C.、10mg/kg)16週間注射した。体重は毎週測定した。身体組成および代謝分析はそれぞれ15週および14週目に評価した。マウスは最後の抗体注射の1週間後屠殺し、肝臓、心臓、筋肉、精巣上体および皮下白色および褐色脂肪組織を収集した。
血清化学分析
血清TG、全コレステロール(TC)、LDL-CおよびHDL-Cレベルは、ADVIA(登録商標)1800血液化学分析機(Bayer、Leverkusen、Germany)を使用して血清中で決定した。HPLCによるリポ蛋白質分離は以前記載された(Gusarova、V.ら、2015年.J Lipid Res 56:1308~1317頁)通りに実施した。
身体組成、代謝速度および食物摂取測定
身体組成は、他の場所に記載されている(Mastaitis、J.ら、2015年.PNAS USA 112:1845~1849頁)通りにQuantum FXマイクロCT前臨床in vivo撮像システム(Caliper Life Sciences)を使用するμCTを使用して測定した。代謝ケージデータはOxymax Lab動物モニタリングシステム:CLAMS(Columbus Instruments)を使用して作成した。マウスは、センターフィード付きのケージで96時間個別にモニターした。最初の24時間で作成されたデータは、解析から取り除いた。食糧摂取は連続して測定し、光リサイクルの明および暗期ごとに消費されるカロリーに分割した。VO2およびVCO2は4-dスパンにわたり17分間隔で測定して、時間刻みでプロットした。エネルギー消費は、体重に正規化して、呼吸商および酸素消費の関数として計算した。さらに、群は分析時には異なった体重を有していたので、エネルギー消費は、組み合わせた2つの群の調整平均体重を使用してマウスあたりKcal/hrとして表した。これは、記載されている(Arch JRら、2006年.Int J Obes(Lond)30(9):1322~1331頁;Whittle AJら、2015年.Nat Commun 6:8951頁)通りに、共分散として体重を用いる共分散分析(ANCOVA)を使用して達成した。手短に言えば、動物ごとの調整エネルギー消費は、Y=y-b(x-X)として計算し、群ごとに平均±SEMとしてプロットし、式中、Yは単一動物調整エネルギー消費(Kcal/hr)、y-単一動物エネルギー消費(Kcal/hr)、x-単一動物体重(kg)、X-組み合わせた2つの処置群の調整平均体重(kg)、b-線形回帰分析により計算した動物ごとのおよび処置群ごとの体重に対してプロットされたエネルギー消費の線の傾斜度である。
グルコース測定、グルコースおよびインスリン負荷試験
血糖は、Accu-Chek血糖値測定器(Roche、Basel、Switzerland)を使用して尾先端部から測定した。経口グルコース負荷試験では、マウスは一晩(16時間)断食させ、続いて2g/kg体重でのグルコースの経口経管栄養を行った。血糖レベルは、注射0、15、30、60および120分後に評価した。インスリン負荷試験では、マウスは4時間断食させ、続いて2U/kgのヒトインスリン(Eli Lilly)の腹腔内注射を行った。血糖レベルは、注射後0、15、30、60および120分に評価した。
TG組織含有量
肝臓、心臓、腓腹筋、精巣上体ならびに皮下白色脂肪組織および褐色脂肪組織を、ANGPTL8hum/humマウスへのH4H15341Pの多回投与の終了時に収集し、脂質は記載される(Folch J.ら、1957年.J Biol Chem.226(1):497~509頁)通りに抽出した。脂質は以前概要が述べられた(Carr TP Andresen CJ、Rudel LL.1993年.Clinical biochemistry.26(1):39~42頁)通りに可溶化した。TGのレベルは酵素アッセイ(Infinity、Thermo Fisher Scientific)を使用して測定し湿組織重量に正規化した。
カニクイザルにおける研究
研究はCrown Bioscience(Taicang、Jiangsu、China)で実施した。18頭の自然発症高トリグリセリド血症サルを、その非断食血清TGレベルに基づいて選択し、3つの群に分けた。サルは個別に収容し、水は自由に利用させ、季節の果実および野菜で栄養価を高めた完全な栄養バランスを備えた食餌(Shanghai Shilin Biotechnology)を1日2度与えた。すべての動物手順は、Crown Bioscience施設動物実験委員会により承認され、実験動物ケア評価認証協会が承認した指針に従って実施した。0日目に、サルに3、7または10mg/kgでH4H15341Pを投与した。血液(4ml)は、45日目まで1から5日間隔で非断食動物からBD無菌静脈血液収集チューブ(ACCU-CHEK Active、Roche)中に収集した。すべての動物についてTGレベルがベースラインに戻った後、動物には少なくとも2週間洗い出しをさせ、その後生理食塩水での処置のために5頭の動物を選択した。血液は、H4H15341P注射群と同じスケジュールでの生理食塩水投与後連日収集した。血清TG、TC、LDL-CおよびHDL-CはADVIA(登録商標)2400(Siemens)により測定した。
データ解析
すべてのデータは平均±SEMとして示している。統計分析はGraphPad Prism 6.0ソフトウェアを利用して実施した。H4H15341Pおよび対照抗体処置マウスにおけるLPLおよびHL活性はウェルチt-検定により比較した。他のパラメータはすべて反復測定して二元配置分散分析により分析した。二元配置分散分析を用いて有意なF比が得られた場合、ボンフェローニまたはサイダックの事後検定を用いて群間で事後分析を行った。サルの研究では、-15、-7、および0日目のそれぞれのパラメータの平均をベースライン値として使用した。
結果
ANGPTL8遮断抗体のin vitro特徴付け
ヒト、マウスおよびサルANGPTL8に対するANGPTL8遮断抗体H4H15341Pの相対的親和性は表面プラズモン共鳴を使用して比較した。H4H15341PはヒトおよびサルANGPTL8に匹敵する親和性で結合する(表20ならびに図9Aおよび9B)。H4H15341PはマウスANGPTL8にもヒトまたはマウスANGPTL3またはANGPTL4にも結合しない(データは示さず)。
ANGPTL8抗体遮断はリポ蛋白質リパーゼ活性の上方調節を介して血清トリグリセリドを低下させる
血清脂質レベルに対するヒトANGPTL8抗体の効果を評価するため、ヒト化ANGPTL8マウス(ANGPTL8hum/hum)を作成した。これらのマウスはベースラインTGはわずかに増加しており、他の脂質は野生型マウスに類似していた(図10A~10D)。固形飼料給餌ANGPTL8hum/humマウスへのH4H15341Pの単回投与(10mg/kg)により、対照抗体処置と比べて循環TGは有意に低下した(図5A)が、全コレステロールレベルには影響しなかった(図5B)。血清脂質のHPLC分離により、ANGPTL8阻害がVLDL-TGを低下することが確かめられた(図5C)。TGの低下は14日間維持され、ANGPTL8の血漿レベルの顕著な増加と関連付けられた(図5E)。固形飼料給餌ANGPTL8hum/humマウスにおける循環TGに対するH4H15341Pの用量増加の効果を評価した。5、10および25mg/kgでのH4H15341Pの単回投与は、対照レベルの60%までのTGの漸減を引き起こした(図5F)。
Angptl8-/-マウスはヘパリン後血漿LPL活性の上方調節を介してTGクリアランスを増加させることが以前報告された(Wang、Y.ら、2013年.PNAS USA 110:16109~16114頁)。これと一致して、H4H15341PでのANGPTL8遮断は肝性リパーゼ活性の変化なしでヘパリン後血漿LPL活性を増加させた(図6A)。LPL血漿活性の増加はH4H15341Pを受けているANGPTL8hum/humマウスの脂質耐性を改善した(図6B)。これらのデータにより、モノクローナル抗体でのANGPTL8遮断はLPL活性の上方調節を通じて血漿TGを低下させたことが明らかにされている。
ANGPTL8抗体阻害はANGPTL8hum/humマウスにおいてエネルギー消費を増加させ脂肪含量および体重を低減する
エネルギー消費、身体組成および体重に対するANGPTL8の長期阻害の効果を高脂肪、高コレステロール(HFHC)食餌のANGPTL8hum/humマウスにおいて評価した。16週間のH4H15341Pの毎週投与(10mg/kg)は、対照抗体と比べて摂取後循環TGレベルは顕著に持続して低減された(図7A)。ANGPTL8抗体は体重の漸減も引き起こし、この低減は12週目に統計的有意性に到達した(図7B)。μCTにより決定した場合、体重の減少は体脂肪量の減少と相関していた(図7C)。徐脂肪組織量の変化は検出されなかった。
14週目の代謝ケージ分析では、H4H15341Pで処置されたマウスはO2消費およびCO2産生が増加していることが明らかになった(図11Aおよび11B)。H4H15341P処置により、体重に正規化された(図7E)または体重正規化なしで共分散として体重との共分散分析(ANCOVA)を使用して計算された(図11Cおよび11D)エネルギー消費の増加ももたらされた。抗体処置は呼吸商または食物摂取には影響を及ぼさなかったが、自動運動活性を増やす傾向があった(図7D、7F、および7G)。すべての代謝ケージデータについての生のトレースは図12A~12Eに示されている。深部体温はH4H15341P処置による変化はなしのままであった(図13A)。Angptl8-/-マウスにおけるデータ(Wang,Y.ら、2013年.PNAS USA 110:16109~16114頁;Gusarova Vら、2014年.Cell 159(3):691~696頁)と一致して、グルコース恒常性に対するH4H15341Pの効果は観察されなかった(図14A~14C)。これらのデータによれば、ANGPTL8阻害は、エネルギー消費の増加に次いで、体脂肪含量および体重を低減したことが明らかにされている。
H4H15341Pは脂質異常症のカニクイザルにおいて血清TGおよびHDL-Cを調節する
最後に、自然発症脂質異常症のカニクイザルにおける血清脂質に対するH4H15341Pの効果を評価した。6頭のサルの群には、3、7または10mg/kgで単回用量のH4H15341Pを与えた。溶媒を受けるサルの群は休薬期間の終了時に選択した。H4H15341Pは循環TGの強い維持された用量依存性の減少を生じ、その減少は抗体投与に続く1日以内に最大-65%に到達した(323±20mg/dlから114±21mg/dl;P<0.0001;n=6)(図8Aおよび8D)。興味深いことに、すべての用量がTGの同じ最大減少を生じたが、効果の持続期間は用量依存性であった(図8A)。ANGPTL8の阻害はすべての用量でHDL-Cの30%の増加ももたらした(図8Bおよび8E)。LDL-Cの変化は観察されなかった(図8Cおよび8F)。
考察
本研究では、モノクローナル抗体H4H15341Pを用いたANGPTL8遮断がLPL活性の上方調節を通じて循環TGを効率的に低減することが明らかにされ、これはAngptl8-/-動物において報告された表現型と一致している(Wang,Y.ら、2013年.PNAS USA 110:16109~16114頁;Gusarova Vら、2014年.Cell 159:691~696頁)。さらに、H4H15341Pは、HFHC食餌に置かれた場合のマウスにおいて体脂肪蓄積および体重増加を低減した。体重の減少はエネルギー消費の増加に続発した。さらに、自然発症高トリグリセリド血症カニクイザルにおけるANGPTL8遮断により、血清TGは著しく低減されHDL-Cは増加した。これらのデータにより、モノクローナル抗体を用いたANGPTL8の阻害が高トリグリセリド血症および肥満を抱えた患者にとり有益である可能性があることが示唆される。
ANGPTL8の抗体阻害は、正常リポ蛋白C57Bl/6マウスでのTGを30%低減することが最近報告されたが、30mg/kgでの3日間投与が必要であった(Fu、Z.ら、2015年.Scientific Reports 5:18502頁)。最近の研究では、マウスおよびサルにおいて≦5mg/kgの単回投与で循環TGを65%効果的に低減するANGPTL8に対する完全ヒトモノクローナル抗体の開発が記載されている。ANGPTL8阻害は、LPL活性の抑制解除を通じて血漿TGを低減した。カニクイ脂質異常症ザルにおけるANGPTL8抗体阻害は、HDL-Cも30%増やし、ANGPTL8の機能突然変異のヒト喪失で報告されている所見に一致していた(Peloso、Gina M.ら、2014年.The American Journal of Human Genetics 94:223~232頁)。
再給餌中、LPL活性はWATにおいて上方調節され、心臓および骨格筋では減少している(Goldberg、I.J.、R.H.Eckel、およびN.A.Abumrad.2008年.The Journal of Lipid Research 50:S86~S90頁)。マウスでのAngptl8の欠失はLPL活性のこれらの変化を妨害し;これらのマウスにおいて再給餌している酸化性組織ではLPL活性の摂食後減少は起こらない。その結果、TGは脂肪組織よりもむしろ酸化性組織に送達される。これらのデータにより、ANGPTL8は、食物摂取後脂肪酸を酸化性組織から白色脂肪組織に向け直す代謝スイッチとして機能することが示唆される(Wang,Y.ら、2013年.PNAS USA 110:16109~16114頁)。
H4H15341Pの多回用量を用いたANGPTL8の慢性阻害により、HFHC食餌のAngptl8hum/humマウスにおいて体重増および体脂肪蓄積は低減された。H4H15341P処置マウスにおける体重減少は、エネルギー消費の増加から生じる可能性がある。H4H15341P処置は呼吸商を変化させず、H4H15341P処置が燃料利用率を変化させないことを示している。体重および脂肪組織量の低減が以前固形飼料給餌Angptl8-/-マウスにおいて報告された(Wang、Y.ら、2013年.PNAS USA 110:16109~16114頁)。したがって、ANGPTL8は白色脂肪組織におけるTG貯蔵の重要な調節因子である。
結論として、モノクローナル抗体H4H15341Pを用いたANGPTL8阻害により、LPL活性の上方調節を通じてマウスおよびサルにおいて循環TGが低減された。HFHC食餌のANGPTL8hum/humマウスへのANGPTL8抗体の多回用量投与により体重および体脂肪含量が減少した。データによれば、モノクローナル抗体を用いたANGPTL8阻害は、高トリグリセリド血症および肥満を抱えた患者において有益であると考えられることが示される。