JP7133259B1 - 簡易識別用レーザ刻印 - Google Patents

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Abstract

【課題】対象物に設けた所定の面粗さを有する下地パターンの中に、一定方向に揃い目視では確認できない幅に形成された平行溝を有する識別パターンを形成することで一見すると目立たないものの特定方向からは目視可能な簡易識別用レーザ刻印を提供する。【解決手段】本発明による簡易識別用レーザ刻印は、金属素材の表面に、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含んで形成された第1のパターンと、レーザ刻印により、前記第1のパターンの中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含んで形成された第2のパターンとを有し、前記第2のパターンは特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、簡易識別用レーザ刻印に関し、特に対象物に設けた所定の面粗さを有する下地パターンの中に、一定方向に揃い目視では確認できない幅に形成された平行溝を有する識別パターンを形成することで一見すると目立たないものの特定方向からは目視可能な簡易識別用レーザ刻印に関する。
レーザ加工機により加工の対象となる対象物に直接レーザを照射して文字やパターンを形成するレーザ加工方法が広く利用されている。その多くは目視で確認可能なサイズのものとして加工される。一方レーザ加工ではレーザの照射範囲を絞ることにより金属材料などの固い材料でも非常に細かい加工が可能である。そこでこの特徴を活かして対象物に目視では確認できない大きさのマークを書き込んで対象物の真贋判定、偽造防止や認証に利用する技術も実用化されている。
特許文献1には、レーザ照射の刻印により形成される背景パターンとなる標示部と表示部にレーザ照射の上書きにより背景パターンより深く刻印される識別マークと、識別マークとは異なる部位に背景パターンより深く刻印されて形成される隠しマークとを備える標示部材が開示されている。
特許文献1に記載の発明によれば、隠しマークは一見して無意味なマークであり、第3者には情報として認識されないものであることから偽造が難しく、正規のユーザは、隠しマークを確認することで標示部材が正規なものかどうかを判断することが可能となる。また、隠しマークの位置に加えレーザ刻印の深さも変えることができるため、拡大鏡で拡大しても深さ方向の情報までは読み取れないので、特許文献1に記載の標示部材は、容易に偽造はできない。しかし、この隠しマークはカメラ画像によるパターンでの認識形態であることから、特許文献1に記載の標示部材は、カメラで撮影して画像を取得しないと真贋の判別ができない。
最終的には、こうした隠しマークのような、目視では確認できないマークで真贋を判定するにしても、いちいちカメラで撮影したりすることなく、例えば紙幣に作り込まれた透かしパターンのように目視で簡単に識別が可能な識別マークがあれば、手間をかけずに簡易的な真贋の判断が可能となる。しかし、透過性のない金属材料などに、偽造が容易でない上に簡易的に目視で確認のできる識別用レーザ刻印技術は確立されていない。
特許第6755564号公報
本発明は、上記従来の識別用レーザ刻印における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、対象物に設けた所定の面粗さを有する下地パターンの中に、一定方向に揃い目視では確認できない幅に形成された平行溝を有する識別パターンを形成することで一見すると目立たないものの特定方向からは目視可能な簡易識別用レーザ刻印を提供することにある。
上記目的を達成するためになされた本発明による簡易識別用レーザ刻印は、金属素材の表面に、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含んで形成された第1のパターンと、レーザ刻印により、前記第1のパターンの中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含んで形成された第2のパターンとを有し、前記第2のパターンは特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであり、前記第2のパターンの前記平行溝の底部は、前記平行溝が位置する前記第1のパターンのエリアの面粗さと同等な面粗さを有することを特徴とする。
記第1のパターンに含まれる粗面はレーザ刻印、エッチング、ブラスト処理、研磨処理を含む表面加工処理により形成されることが好ましい。
前記第1のパターンの中に、前記第2のパターンの平行溝と深さ、幅、方向の少なくともいずれかが異なり目視では確認できない幅に形成された平行溝を含む第3のパターンをさらに有し、前記第3のパターンは前記第2のパターンとは異なる特定方向から見たとき又は前記第2のパターンとは異なる特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであることが好ましい。
金属素材の表面に、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含んで形成された第1のパターンと、レーザ刻印により、前記第1のパターンの中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含んで形成された第2のパターンとを有し、前記第2のパターンは特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであり、少なくとも前記第2のパターンの平行溝を形成する対向する側壁部の面粗さが互いに異なることが好ましい。
上記目的を達成するためになされた本発明による簡易識別用レーザ刻印の生成方法は、金属素材の表面に、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含む第1のパターンを形成する段階と、レーザ刻印により、前記第1のパターンの中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含む第2のパターンを形成する段階とを有し、前記第2のパターンは特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであり、前記第2のパターンの前記平行溝の底部は、前記平行溝が位置する前記第1のパターンのエリアの面粗さと同等な面粗さを有することを特徴とする。
前記第1のパターンに含まれる粗面はレーザ刻印により形成され、前記第1のパターンに含まれる粗面は、レーザの加工速度、レーザ出力、レーザの加工回数を含むレーザ加工条件を、加工の対象とする前記金属素材の金属材質に合わせて変更して加工した粗面の状態を制御することが好ましい。
本発明に係る簡易識別用レーザ刻印によれば、識別マークは、対象物の表面に所定の面粗さを有する粗面を含んで形成された下地パターンの中に、一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含んで形成されるため、正面から見ると下地パターンに紛れて識別できないが、平行溝が一定方向に揃っていることから、特定方向からみたり、特定方向から光を当てたりすると平行溝底部のエッジが確認でき、目視で容易に確認が可能な識別マークを実現することが可能である。そのため対象物の真贋判定が容易にでき、また平行溝の加工も深さや加工面粗さなどの制御により識別マークの見え方が変わってくるため、偽造防止にも有効である。
また、本発明に係る簡易識別用レーザ刻印によれば、識別マークの平行溝は向きや深さを変えることにより、目視で確認できる方向が変わるため、種類の異なる複数種の平行溝を組み合わせることで見る向きにより様々な識別マークが目視確認できるようになることから、より偽造がしにくい識別マークを実現可能である。このように見る向きにより様々なパターンや文字情報を表現できるため、偽造防止や認証としての応用に限らず、装飾品やメッセージの表現などにも広く活用が可能である。
本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の金属素材表面への形成例を概略的に示す図である。 本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の詳細を説明する図で、図2(a)は、図1のA部の拡大図であり、図2(b)は、図2(a)に示す切断線X-Xに沿う金属素材表面近傍の簡易識別用レーザ刻印の粗面形状を模式的に示す図である。 本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印を、金属素材を傾けることで目視確認を行う方法を説明するための図である。 本発明の他の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の金属素材表面への形成例を概略的に示す図である。 本発明の他の実施形態による簡易識別用レーザ刻印を、金属素材を異なる方向に傾けることで目視確認を行う方法を説明するための図である。 本発明の他の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の生成方法を説明するためのフローチャートである。
次に、本発明に係る簡易識別用レーザ刻印を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の金属素材表面への形成例を概略的に示す図である。
図1を参照すると、本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印2は、対象物となる金属素材1の表面に形成され、下地パターンに相当する第1のパターン10と、第1のパターン10の中に形成される識別パターンに相当する第2のパターン20とを備える。
第2のパターン20は特殊な加工方法により、金属素材1を正面から見たときには第1のパターン10に紛れて目視では確認できないが、特定の方向から見たり特定の方向から光を照射したりしたときに目視で見えるように形成されるので、特定の方向と、目視で確認できる第2のパターン20の組み合わせにより、金属素材1を目視により簡易的に真贋判定したり認証に使用したりすることを可能とする。
真贋判定や認証を厳密に行う場合は、特許文献1のように目視では確認できない隠しマークなどを埋め込むような方法が求められるが、このような方法ではカメラなどで隠しマークを拡大画像として取得して判定をする必要があり、真贋判定や認証に手間がかかる。簡易識別用レーザ刻印2は、最終的にはこうした厳密な方法で判定するにしても、目視で簡易的に判定を行い、予め模造品を除外することを可能とする。そのため、隠しマークなどの厳密な判定に使用するマークと組み合わせて使用することが好ましい。厳密な判定に使用するマークは第1のパターン10の中に埋め込んでもよいし、第1のパターン10とは別に設けてもよい。また厳密な判定が必要でないものについては、簡易識別用レーザ刻印2のみを設けて、真贋判定や認証を簡易的に行うようにしてもよい。
第1のパターン10は、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含み、図1の実施形態では第1の粗面11と、第1の粗面11とは異なる粗面である第2の粗面12とを含んで形成される。図1では第1の粗面11は、第2の粗面12よりも荒れた状態であり、光を乱反射しやすく目視では白っぽく見え、第2の粗面12は、第1の粗面11より平滑性があり光の乱反射が抑えられるため正面からの目視では黒っぽく見えることを示している。
図1では、第1の粗面11と第2の粗面12は同じ大きさの正方形に形成されて交互に配列される結果、第1のパターン10は全体として市松模様を形成するように示すが、これは一実施形態にすぎず、第1のパターン10はこれに限らない。第1の粗面11と第2の粗面12は正方形である必要はなく、また同じ大きさ、同じ形状である必要もない。そこで例えば全体として長方形の第1のパターン10の中に、ランダムな大きさでランダムな形状の第2の粗面12がランダムな位置に配置され、第2の粗面12以外の残りの部分を第1の粗面11としてもよく、逆にランダムに配置した第1の粗面11以外の部分を第2の粗面12としてもよい。
第1のパターン10の全体的な形状も長方形である必要はなく、円形でも、楕円形でも、或はロゴマークのような特殊な形状でも構わない。また上記では第1のパターン10は第1の粗面11と第2の粗面12の2種類の粗面で構成する実施形態を説明したが、第1のパターン10は全体が1種類の粗面だけで形成されてもよく、逆に3種類以上の粗面の組み合わせで形成してもよい。ただし、第1のパターン10としては、面粗さの異なる2種類以上の粗面であり、且つ一つ一つの粗面の占める大きさが、第2のパターン20に対して十分小さい粗面の組み合わせで形成した方が、1種類の粗面だけで形成するよりも第2のパターン20が目立ちにくくなるため前者のような構成が好ましい。図1では第1のパターン10は金属素材1の一部のエリアに形成するように示したが、第1のパターン10は金属素材1の表面の全面に形成してもよい。
簡易識別用レーザ刻印2を形成する対象物となる金属素材1は特に制約はない。図1では角に丸みを設けた四角形のプレートとして示したが、形状はこれに限らない。簡易識別用レーザ刻印2は目視により簡易的な真贋判定や認証など幅広く応用が可能であり、対象物の形状や材質は様々なものに適用できる。そこで例えば一実施形態では金属素材1はアルミニウムであり、他の実施形態ではチタン合金であるが、これに限らず他の金属でも構わない。但し第2のパターン20は後述するように微細な加工により形成するため、加工後の対象物にさびなどが発生すると、第2のパターン20が識別できなくなるおそれがあるため、金属素材1は空気中で安定性の高いものが望ましい。また金属素材1がアルミニウムの場合、表層に陽極酸化などにより有色の表面処理を施してもよい。さらに金属素材1の材質により、強固で安定しためっき膜が形成可能な場合は、めっき処理を施してもよい。
こうした金属素材1の表面に第1のパターン10として粗面を形成するにはレーザ刻印、エッチング処理、ブラスト処理、研磨処理などの様々な加工方法が適用可能である。第1のパターン10を1種類の粗面だけで形成する場合は、上記のいずれの加工方法でもよいが、複数の粗面を細かく作り分けた第1のパターン10を形成しようとすると、エッチング処理やブラスト処理では複数のマスクを形成する必要があり、加工の工数も増えるため実用的ではない。それに対し、レーザ刻印は場所によりレーザ照射の条件を変えることで複数の粗面の組み合わさった第1のパターン10でも容易に加工することが可能である。そこで一実施形態では、第1のパターン10、特に2種類以上の粗面を含む第1のパターン10はレーザ刻印により形成する。
レーザ刻印はレーザによる加工条件を変えることにより様々な加工面を作り出すことができる。レーザ加工条件としては加工速度、レーザ出力、加工回数などが挙げられる。同じレーザ出力であっても、加工速度が速いと荒れた加工面となりやすく、加工速度が遅いと加工面の粗さは抑制されやすい。また加工を繰り返すと加工表面の凹凸は減少していく。そこで金属素材1の材質に合わせてレーザによる加工条件を適切に選定して所望の面粗さの粗面を形成する。また、レーザの加工条件により、粗面を形成する際、金属素材1の表面を除去する加工深さは任意に設定可能であることから、金属素材1の表面に陽極酸化やメッキ処理などを施した場合、加工深さは陽極酸化やメッキ処理などを施した層内にとどめるか下地の金属素材1まで到達する深さとするかを選択可能であるので、加工面の粗さに加え、陽極酸化層やメッキ処理層の残し具合による色調の変化も第1のパターン10に含めることも可能である。
第1のパターン10の形成後、第1のパターン10の中に上書きする形で第2のパターン20を形成する。図1の簡易識別用レーザ刻印2では、第1の粗面11と第2の粗面12との市松模様の中に第2のパターン20として「ABC」の文字を形成した状態を示す。第2のパターン20の詳細については次の図2を参照して説明する。
図2は、本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の詳細を説明する図で、図2(a)は、図1のA部の拡大図であり、図2(b)は、図2(a)に示す切断線X-Xに沿う金属素材表面近傍の簡易識別用レーザ刻印の粗面形状を模式的に示す図である。
図2(a)を参照すると、第2のパターン20は、レーザ刻印により、第1のパターン10(第1の粗面11、第2の粗面12)の中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った平行溝21を含んで形成される。平行溝21は個々の溝は数μm~数十μmの幅であり、目視では1本1本を確認できないレベルの幅に形成される。図1のA部は第2のパターン20の文字「A」の左下の部分であるが、平行溝21は、破線で示す文字「A」の仮想の外形線の中に納まり、平行溝21の集まりを囲むように線を描くと文字「A」がイメージできるように形成される。
第1のパターン10を形成する第1の粗面11、第2の粗面12のそれぞれの正方形は、第2のパターン20の1文字である「A」よりも小さいので、第2のパターン20は第1の粗面11及び第2の粗面12のいずれにも掛かるように形成される。これにより第2のパターン20は背景となる第1のパターン10に紛れて正面から見たときに目視ではより判別しにくくなる。
図2(b)を参照すると、切断線X-Xに沿う金属素材1の表面近傍には第1の粗面11、第2の粗面12、及び第2のパターン20を形成する複数の平行溝21が示される。図2(a)では白っぽく示される第1の粗面11の部分は、凹凸が激しく面荒れした状態であるが、図2(a)では黒っぽく示される第2の粗面12の部分は比較的凹凸が少ない。平行溝21はそれぞれの粗面(11、12)に所定の間隔で設けられる。また平行溝21の底面部分である底部はそれぞれの平行溝21が位置する粗面(11、12)に合わせ、第1の粗面11の部分では面荒れした状態に形成され、第2の粗面12の部分では比較的平坦に形成される。このように平行溝21の底部の面粗さを、平行溝21が位置する第1のパターン10の粗面に合わせることで、正面から簡易識別用レーザ刻印2を見たときに、平行溝21が背景に紛れて第2のパターン20が目視で認識し辛くなる。
図1、2では第2のパターン20は文字「ABC」としたが、これに限らない。第2のパターン20は任意の文字でよく、字数も3に限らない。更には第2のパターン20は文字である必要はなく、ロゴマークやシンボル的なマークでもよく、全体として一つの絵となるように形成してもよい。いずれの場合も一定方向に揃った平行溝21を含んで形成されるため、特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに平行溝21の底部のエッジ部が強調され、目視可能であるという特性を有する。
図3は、本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印を、金属素材を傾けることで目視確認を行う方法を説明するための図である。図3(a)は図1と同様、簡易識別用レーザ刻印を形成した金属素材1を正面から見た図であり、図3(b)は図3(a)の金属素材1を縦方向に傾けてみた図である。
図3を参照すると、正面から見た場合、第1のパターン10である市松模様の中に形成した第2のパターン20である文字「ABC」は、背景となる第1のパターン10に紛れて目視ではほとんど識別できない。これは図2を参照して説明したように、第2のパターン20は目視ではほとんど確認できない幅で形成された平行溝21の集まりで形成されている上に、それぞれの平行溝21の底部の面粗さが、平行溝21が位置する第1のパターン10の粗面と同等の面粗さで形成されるためである。
しかし図3(b)のように、金属素材1を矢印R1で示される縦方向、即ちこの場合は水平方向に形成された平行溝21の延長方向と平行な方向を回動軸として回動する方向に金属素材1を傾けると、平行溝21の底部のエッジ部が強調され、目視可能となる。また、平行溝21の底部のエッジ部がきれいな直角状に形成されず、丸みを帯びたり部分的に傾きを持つように形成されたりする場合は、平行溝21の底部のエッジ部に光が当たるように斜め下方向から光を当てると、エッジ部が強調され正面から見ても第2のパターン20が目視で確認できるようになる。
図3を参照して説明した目視確認方法は、あくまでも第2のパターン20が図2に示すような水平方向に延長される平行溝21を含む場合である。第2のパターン20の平行溝21の延長方向が異なる場合は、矢印R1で示される縦方向ではなく平行溝21の延長方向と平行な方向を回動軸として回動する方向に金属素材1を傾ける必要がある。逆に意図的に平行溝21の延長方向を水平方向から特定方向に傾けることにより、目視確認のために金属素材1を傾ける方向が変化するため、これを利用して金属素材1を傾ける方向とその時に確認できる第2のパターン20の内容の組み合わせを簡易的な真贋判定や認証に利用してもよい。
また平行溝21の幅が狭くて深い溝として形成すると、底部のエッジ部が確認できる範囲が非常に狭くなり、また光も底部まで入りにくくなるため、平行溝21の幅を狭くする場合は、平行溝21の深さを深くしすぎないように調整し、平行溝21の深さを深くする場合は平行溝21の幅を小さくしすぎないように調整することで、金属素材1を傾ける範囲を調節するようにしてもよい。一実施形態では、平行溝21の深さは数μm~十数μmである。逆にこのような特性を利用して延長方向は同一であるが幅と深さの組み合わせの異なる複数種の平行溝21を組み合わせて金属素材1を傾ける角度により異なる第2のパターン20が確認できるように形成してもよい。
平行溝21には平行溝21を形成する対向する2つの側壁部が存在する。金属素材1を傾けることにより一方の側壁部が見え、反対方向に傾けることにより他方の側壁部が見えるが、レーザ加工の加工条件を調整することでこうした側壁部の面粗さを制御することもできる。
そこで一実施形態では、平行溝21を形成する対向する側壁部の面粗さが互いに異なるように平行溝21を形成する。これにより平行溝21の延長方向と平行な方向を回動軸として回動するにしても回動する向きにより2つの側壁部の面粗さの違いにより見え方が変わってくる。即ち側壁部の面粗さが大きい場合は光を乱反射しやすく側壁部が明るく見えやすいのに対し、側壁部の面粗さが小さい場合は光の乱反射が起こりにくく暗く見えやすい。このような特性を利用して簡易的な真贋判定や認証に利用してもよい。
図4は、本発明の他の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の金属素材表面への形成例を概略的に示す図である。
図4を参照すると、金属素材1に形成される簡易識別用レーザ刻印2が、第1の粗面11と第2の粗面12で構成される市松模様からなる第1のパターン10の中に、文字「ABC」で表される第2のパターン20が形成される。この点に関しては図1の実施形態と変わらない。また第2のパターン20が水平方向に延長する平行溝21で形成されることも図2を参照して説明したとおりである。図4の実施形態では、これにさらに第3のパターン30が形成されている点で図1の実施形態とは相違する。第3のパターン30は1例として「EFG」という文字である。
拡大図は省略するが、第3のパターン30は、第2のパターン20を形成する水平方向に延長する平行溝21とは異なる方向に延長する平行溝21により形成される。例えば第3のパターン30を形成する平行溝21は垂直方向に延長する。第2のパターン20と第3のパターン30の平行溝21の違いはこれに限らず、第3のパターン30を形成する平行溝21は第2のパターン20の平行溝21と深さ、幅、方向の少なくともいずれかが異なるように形成する。
深さ、又は幅が互いに異なる平行溝21は、金属素材1を傾けるときに視認しやすい角度の違いとして表れ、方向が互いに異なる平行溝21は、金属素材1を視認しやすく傾ける方向の違いとして表れる。このため、金属素材1をある方向にある角度で傾けた時に第2のパターン20が目視で視認され、金属素材1をこれと異なる方向又は角度に傾けた時に第3のパターン30が目視で視認されるようになり、より複雑な簡易識別用レーザ刻印2が実現される。簡易識別用レーザ刻印2が複雑になるほど模造がしにくく、また簡易識別用レーザ刻印2を用いた簡易の真贋判定や認証の確度が高くなる。
図1の実施形態で説明したように、図4の実施形態でも第1のパターン10は市松模様に限らず様々な模様で形成可能である。さらに第1のパターン10の粗面は2種類に限らず、1種類でも3種類以上の組み合わせでも構わない。図4では第1のパターン10の中のほぼ同じ場所に第2のパターン20と第3のパターン30を形成する実施形態を示したが、第2のパターン20と第3のパターン30を形成する場所は分けても構わない。また、第1のパターン10を複数種の粗面の組み合わせで形成するとき、第2のパターン20の位置する部分の粗面と、第3のパターン30の位置する部分の粗面とが異なるように形成してもよい。
図5は、本発明の他の実施形態による簡易識別用レーザ刻印を、金属素材を異なる方向に傾けることで目視確認を行う方法を説明するための図である。
図5(a)は、図4に示した実施形態の金属素材を再現したものであり、図5(b)は、図5(a)の金属素材を縦方向に傾けた時の外観、図5(c)は、金属素材を水平方向に傾けた時の外観を示す。
図5(b)を参照すると、金属素材1を縦方向である矢印R1の方向に傾けることにより、簡易識別用レーザ刻印2の中の第2のパターン20の文字「ABC」が目立つようになり、目視で確認できるようになる。これは第2のパターン20が水平方向に延長する平行溝21の集まりで形成されているため、矢印R1の方向に傾けることにより、平行溝21の底部のエッジ部が見やすくなるからである。結果的に平行溝21の集まりである「ABC」の文字が目視で確認できるようになる。
簡易識別用レーザ刻印2の中には第3のパターン30の文字「EFG」も含まれるが、第3のパターン30を形成する平行溝21の延長する方向が垂直方向であるため、金属素材1を矢印R1の方向に傾けても、第3のパターン30を形成する平行溝21の底部のエッジ部は目立たないままなので、文字「EFG」は目視で視認できない。
一方、図5(c)を参照すると、金属素材1を横方向である矢印R2の方向に傾けた状態が示される。矢印R2の方向に傾けることにより、簡易識別用レーザ刻印2の中の第3のパターン30の文字「EFG」が目立つようになり、目視で確認できるようになる。矢印R2の方向に傾けたときは、第2のパターン20を形成する平行溝21に平行な方向から見る形になるため、平行溝21の底部のエッジ部が目立たないので第2のパターン20は視認できない。
図6は、本発明の他の実施形態による簡易識別用レーザ刻印の生成方法を説明するためのフローチャートである。
図6を参照すると、段階S600で金属素材1の表面に第1のパターンを形成する。第1のパターン10は、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含む。粗面を形成するのは金属素材1にレーザ刻印、エッチング処理、ブラスト処理、研磨処理を含む表面加工処理により行う。レーザ刻印では、レーザの加工速度、レーザ出力、レーザの加工回数などの加工条件を調整することで加工面の粗度を制御する。エッチング処理ではエッチング液や処理時間、処理温度などで仕上がり面を制御する。エッチング処理の場合は、機械加工による面荒れした加工面をエッチング処理により粗度を減らすことで所定の粗面を形成するようにしてもよい。ブラスト処理の場合は吹付ける砥粒の選択や時間などにより加工面の粗度を制御する。研磨処理では、研磨に使用する砥石の粒度を選定することで加工面の粗度を制御する。
第1のパターン10は金属素材1の表面全面に形成してもよいし、金属素材1の表面の一部に形成してもよい。また金属素材1の複数箇所に設けてもよい。
第1のパターン10形成後、段階S610にて第1のパターン10の中に第2のパターン20を形成する。第2のパターン20は、少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝21を含んで形成する。このとき平行溝21の集まりを取り囲む仮想の線が文字やマークなどの特定のパターンとなるように形成することで第2のパターン20は識別パターンとして機能する。
第2のパターン20は、レーザ刻印で第1のパターン10に上書きする形で形成する。このとき第2のパターン20を形成する平行溝21の底部は平行溝21が位置する第1のパターン10の粗面に合わせるような粗面として形成する。また平行溝21を構成する対向する側面の面粗さも互いに異なるように平行溝21を形成してもよい。
識別パターンとして第2のパターン20のみを含む場合は簡易識別用レーザ刻印2の生成は段階S610にて終了するが、第3の識別パターンを含む場合は、次の段階S620にて第1のパターン10の中に第3のパターン30を形成する。第3のパターン30は第2のパターン20と同様、少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝21を含んで形成するが、第3のパターン30を形成する平行溝21は、第2のパターン20を形成する平行溝21とは深さ、幅、方向の少なくともいずれかが異なるように形成する。これにより第2のパターン20と第3のパターン30とは金属素材1を傾けて目視確認する際の傾ける方向又は角度が異なるようになる。
本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印2に含まれる識別パターンは1種類又は2種類に限る必要はなく、更に第3、第4、・・・など3種類以上の識別マークを含んでもよい。第3、第4、・・・など3種類以上の識別パターンは第4のパターン、第5のパターン、・・・のパターンとして実現される。ここで一般化して簡易識別用レーザ刻印2が含む識別パターンが、第2のパターン20、第3のパターン30、第4のパターン、第5のパターン、・・・、第nのパターン(nは整数)を含むとき、第2~第nのそれぞれのパターンを構成する平行溝21はそれぞれのパターンごとに深さ、幅、方向の少なくともいずれかが互いに異なるように形成する。第1のパターン10の中に順番に第2のパターン20以下第nのパターンまでのパターンを形成する(段階S630)と簡易識別用レーザ刻印2の生成は終了する。
本発明の実施形態による簡易識別用レーザ刻印2は、下地となる第1のパターン10の中に一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝21を含む少なくとも1種類の識別パターンを含むことにより、簡易識別用レーザ刻印2を形成した金属素材1を特定の方向又は特定の角度に傾けたときのみ目視確認可能な識別パターンを実現可能である。そこで金属素材1を傾ける特定の方向又は特定の角度と、その時に目視確認される識別パターンとの組み合わせにより簡易識別用レーザ刻印2を形成した金属素材1の簡易的な真贋判定や認証を行うことができ、また金属素材1の模造防止に有効なものとなる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
1 金属素材
2 簡易識別用レーザ刻印
10 第1のパターン
11 第1の粗面(第1のパターン)
12 第2の粗面(第1のパターン)
20 第2のパターン(識別パターン)
21 平行溝
30 第3のパターン(第2の識別パターン)

Claims (6)

  1. 金属素材の表面に、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含んで形成された第1のパターンと、
    レーザ刻印により、前記第1のパターンの中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含んで形成された第2のパターンとを有し、
    前記第2のパターンは特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであり、
    前記第2のパターンの前記平行溝の底部は、前記平行溝が位置する前記第1のパターンのエリアの面粗さと同等な面粗さを有することを特徴とする簡易識別用レーザ刻印。
  2. 前記第1のパターンに含まれる粗面はレーザ刻印、エッチング、ブラスト処理、研磨処理を含む表面加工処理により形成されることを特徴とする請求項1に記載の簡易識別用レーザ刻印。
  3. 前記第1のパターンの中に、前記第2のパターンの平行溝と深さ、幅、方向の少なくともいずれかが異なり目視では確認できない幅に形成された平行溝を含む第3のパターンをさらに有し、
    前記第3のパターンは前記第2のパターンとは異なる特定方向から見たとき又は前記第2のパターンとは異なる特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであることを特徴とする請求項1に記載の簡易識別用レーザ刻印。
  4. 金属素材の表面に、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含んで形成された第1のパターンと、
    レーザ刻印により、前記第1のパターンの中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含んで形成された第2のパターンとを有し、
    前記第2のパターンは特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであり、
    少なくとも前記第2のパターンの平行溝を形成する対向する側壁部の面粗さが互いに異なることを特徴とする簡易識別用レーザ刻印。
  5. 金属素材の表面に、少なくとも1又は複数の所定の面粗さを有する粗面を含む第1のパターンを形成する段階と、
    レーザ刻印により、前記第1のパターンの中に少なくとも所定の深さで一定方向に揃った目視では確認できない幅に形成された平行溝を含む第2のパターンを形成する段階とを有し、
    前記第2のパターンは特定方向から見たとき又は特定な方向から光を当てたときに目視可能な識別パターンであり、
    前記第2のパターンの前記平行溝の底部は、前記平行溝が位置する前記第1のパターンのエリアの面粗さと同等な面粗さを有することを特徴とする簡易識別用レーザ刻印の生成方法。
  6. 前記第1のパターンに含まれる粗面はレーザ刻印により形成され、
    前記第1のパターンに含まれる粗面は、レーザの加工速度、レーザ出力、レーザの加工回数を含むレーザ加工条件を、加工の対象とする前記金属素材の金属材質に合わせて変更して加工した粗面の状態を制御することを特徴とする請求項に記載の簡易識別用レーザ刻印の生成方法。
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