本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態による無線通信システムの概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態による無線通信システム10は、通信推定装置1と、複数の端末装置2,6と、基地局3,4と、複数のセンサ5と、複数のロボット7と、有線ケーブル8とを備える。
複数の端末装置2,6、基地局3,4、複数のセンサ5および複数のロボット7は、無線通信空間に配置される。図1において、波源Sは、既に周波数帯域が割り当てられている1次利用者であり、例えば、レーダおよび放送局等からなる。複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7は、2次利用者である。端末装置2は、例えば、スマートフォン等の携帯端末である。端末装置6は、例えば、テレメトリングを行う端末装置であり、より具体的には、遠隔地にある計測器などのデータを通信回線を使って収集する。センサ5は、例えば、固定センサである。
通信推定装置1は、有線ケーブル8を介して基地局3に接続される。通信推定装置1は、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の各々におけるサンプルデータDSPL_i(一定時間におけるサンプルデータ)を有線ケーブル8を介して基地局3から受信する。
サンプルデータDSPL_iは、端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)の識別情報IDiと、J(Jは、2以上の整数)個の受信情報INFOR_1~INFOR_Jと、J個の送信情報INFOT_1~INFOT_Jとを含む。
受信情報INFOR_j(jは、2≦j≦Jを満たす整数)は、送信元の識別情報IDSRC_jと、受信時刻tRi_jと、受信信号SRi_jと、受信信号SRi_jの受信電力RSSIi_jと、受信信号SRi_jの周波数fRi_jと、識別情報IDiを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)の位置情報[xi,yi]とを含む。
送信情報INFOT_jは、送信先の識別情報IDDES_jと、送信時刻tTi_jと、送信信号STi_jと、送信信号STi_jの周波数fTi_jと、識別情報IDiを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)の位置情報[xi,yi]とを含む。
従って、サンプルデータDSPL_iは、DSPL_i=[IDi/{IDSRCi_1/tRi_1/SRi_1/RSSIi_1/[xi,yi]/fRi_1},{IDSRCi_2/tRi_2/SRi_2/RSSIi_2/[xi,yi]/fRi_2},・・・,{IDSRCi_J/tRi_J/SRi_J/RSSIi_J/[xi,yi]/fRi_J}/{IDDESi_1/tTi_1/STi_1/[xi,yi]/fTi_1},{IDDESi_2/tTi_2/STi_2/[xi,yi]/fTi_2},・・・,{IDDESi_J/tTi_J/STi_J/[xi,yi]/fTi_J}]からなる。
基地局3は、端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)からサンプルデータDSPL_iを受信し、その受信したサンプルデータDSPL_iを通信推定装置1へ送信する。また、基地局3は、サンプルデータDSPL_iを基地局4から受信し、その受信したサンプルデータDSPL_iを通信推定装置1へ送信する。
基地局4は、端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)からサンプルデータDSPL_iを受信し、その受信したサンプルデータDSPL_iを基地局4へ送信する。
通信推定装置1は、サンプルデータDSPL_iに基づいて、後述する方法によって、1次利用者(波源Sおよび基地局3,4の少なくとも1つ。以下、同じ。)と、2次利用者(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の少なくとも1つ。以下、同じ。)との通信方式または変調方式を推定する。
図2は、図1に示す通信推定装置1の概略図である。図2を参照して、通信推定装置1は、受信手段11と、記憶手段12と、通信推定手段13とを含む。
受信手段11は、サンプルデータDSPL_iを基地局3から受信し、その受信したサンプルデータDSPL_iを記憶手段12に格納する。
記憶手段12は、サンプルデータDSPL_iを記憶する。また、記憶手段12は、通信システムと、周波数帯と、通信方式と、変調方式と、システム帯域幅と、チャネル帯域幅と、許容SINR(Signal to Interference Plus Noise Ratio)とを相互に対応付けたデータベースDB1を予め記憶している。
通信推定手段13は、記憶手段12に記憶されたサンプルデータDSPL_iを読み出し、その読み出したサンプルデータDSPL_iに基づいて、後述する方法によって1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式を推定する。
図3は、周波数と電力との関係を示す図である。図3を参照して、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の各々は、開始周波数fSTARTと終了周波数fENDとを有する帯域幅Wdで周波数スキャンを行い、帯域幅Wdにおける周波数fと受信電力RSSIとの関係を記録する。そして、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の各々は、帯域幅Wdにおける周波数fと受信電力RSSIとの関係に基づいて、1次利用者と2次利用者との間で共用する共用周波数を決定する。そうすると、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の各々は、その決定した共用周波数を周波数fRi_jとし、周波数fRi_jにおいて電波を受信して、上述した送信元の識別情報IDSRC_j、受信時刻tRi_j、受信信号SRi_jおよび受信信号SRi_jの受信電力RSSIi_jを検出し、受信情報INFOR_jを生成する。
また、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の各々は、共用周波数である周波数fTi_jにおいて信号を送信すると、送信先の識別情報IDDES_j、送信時刻tTi_jおよび送信信号STi_jを検出して送信情報INFOT_jを生成する。
そして、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の各々は、受信情報INFOR_jと送信情報INFOT_jとを含むサンプルデータDSPL_iを生成し、その生成したサンプルデータDSPL_iを基地局3(または基地局4)へ送信する。また、基地局3は、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の少なくとも1つからサンプルデータDSPL_iを受信し、その受信したサンプルデータDSPL_iを有線ケーブル8を介して通信推定装置1へ送信する。更に、基地局4は、複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の少なくとも1つからサンプルデータDSPL_iを受信し、その受信したサンプルデータDSPL_iを基地局3および有線ケーブル8を介して通信推定装置1へ送信する。
[通信方式または変調方式の推定]
(基本方式)
基本方式を用いた通信方式または変調方式の推定方法について説明する。推定の対象となる通信方式は、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)、周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)、セルラー方式およびテレビジョン放送である。テレビジョン放送は、FPU(Field Pickup Unit、無線中継伝送装置)によって伝送される。従って、この明細書においては、テレビジョン放送を「FPU」と表記することもある。また、推定の対象となる変調方式は、AM(Amplitude Modulation)変調、ASK(Amplitude shift Keying)変調、FM(Frequency Modulation)変調、FSK(Frequency shift Keying)変調、PSK(Phase shift Keying)変調、CDMA(Code Division Multiple Access)変調およびOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調である。
図4は、通信方式および変調方式の推定方法を説明するための図である。図4を参照して、端末装置の識別情報(ID)と、J個の受信情報INFOR_1~INFOR_JおよびJ個の送信情報INFOT_1~INFOT_Jとは、相互に対応付けられている。
通信推定手段13は、I個のサンプルデータDSPL_1~サンプルデータDSPL_Iを記憶手段12から読み出し、その読み出したI個のサンプルデータDSPL_1~サンプルデータDSPL_Iに基づいて、図4に示すように、J個の受信情報INFOR_1~INFOR_JおよびJ個の送信情報INFOT_1~INFOT_JをI個の端末装置の識別情報(ID)の各々に対応付ける。
(i)TDDの推定
そして、通信推定手段13は、識別情報ID1を有する端末装置について、次の項目を実行する。
(1-1)J個の送信元の識別情報IDSRC1_1~IDSRC1_Jのうち、相互に異なり、かつ、1次利用者を表す送信元の識別情報が2個以上有るか否かを判定する。
(1-2)J個の送信先の識別情報IDDES1_1~IDDES1_Jのうち、相互に異なり、かつ、1次利用者を表す送信先の識別情報が2個以上有るか否かを判定する。
(1-3)項目(1-1)の判定結果が肯定的であるときの2個以上の送信元の識別情報が、項目(1-2)の判定結果が肯定的であるときの2個以上の送信先の識別情報とそれぞれ一致するか否かを判定する。
(1-4)項目(1-3)の判定結果が肯定的であるときの相互に一致する送信元および送信先が使用する2つの周波数fRj_1,fTj_1が一致するか否かを判定する。
通信推定手段13は、項目(1-1)~項目(1-4)の全ての判定が肯定的であるとき、端末装置ID1および2以上の1次利用者の通信方式がTDDであると推定する。
TDDにおいては、同一チャネルで2以上の利用者が居ることが前提であり、波源も2個以上観測されることになる。一方、項目(1-1)~項目(1-4)の全ての判定が肯定的であるとき、同一周波数で端末装置ID1と無線通信を行っている1次利用者が2以上存在すると判定されることになるので、項目(1-1)~項目(1-4)の全ての判定が肯定的であるとき、通信方式がTDDであると推定することにしたものである。
そして、通信推定手段13は、項目(1-1)~項目(1-4)の少なくとも1つの判定が否定的であるとき、端末装置ID1、および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の通信方式は、TDDでないと推定する。
(ii)OFDM,AM変調,ASK変調の推定
通信推定手段13は、J個の受信電力RSSI1_1~RSSI1_Jに基づいて、受信電力の変動幅ΔRSSI1を求める。そして、通信推定手段13は、変動幅ΔRSSI1が、端末装置IDiが予め保持している自信号の電力の2倍以上であるとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をOFDM変調、AM変調およびASK変調のいずれかであると推定する。
一方、通信推定手段13は、変動幅ΔRSSI1が、端末装置IDiが予め保持している自信号の電力の2倍以上でないとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をOFDM変調、AM変調およびASK変調のいずれでもないと推定する。
通信推定手段13は、変動幅ΔRSSI1が、端末装置IDiが予め保持している自信号の電力の2倍以上であると判定したとき、受信信号SR1_1~SR1_Jの時間応答SR1_1(t)~SR1_J(t)を生成し、その生成した時間応答SR1_1(t)~SR1_J(t)に基づいて自己相関を演算する。そして、通信推定手段13は、自己相関が周期的に表れる2つのピークからなるとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をOFDM変調であると推定し、自己相関が周期的に表れる2つのピークではないとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をAM変調またはASK変調であると推定する。
図5は、自己相関の概念図である。図5を参照して、変調方式がOFDM変調であるとき、自己相関は、2つのピークが周期T1で現れる。これは、OFDMの場合、サイクリックエクステンション(ガード期間)が含まれるので、相関値に周期性が現れるからである。従って、図5に示すように、自己相関が周期的に表れる2つのピークからなるとき、変調方式をOFDM変調であると推定することにしたものである。
(iii)CDMA,FM変調,FSK変調の推定
通信推定手段13は、サンプルデータの先頭の受信電力RSSI1_1の周波数fR1_1が周波数偏移するとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をCDMA変調、FM変調およびFSK変調のいずれかであると推定する。
一方、通信推定手段13は、先頭の受信電力RSSI1_1の周波数fR1_1が周波数偏移しないとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をCDMA変調、FM変調およびFSK変調のいずれでもないと推定する。
通信推定手段13は、先頭の受信電力RSSI1_1の周波数fR1_1が周波数偏移すると判定したとき、上述した方法によって受信信号SR1_1~SR1_Jの自己相関を演算する。そして、通信推定手段13は、自己相関が周期的に表れる1つのピークからなるとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をCDMA変調であると推定し、自己相関が周期的に表れる1つのピークではないとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をFM変調またはFSK変調であると推定する。
図6は、自己相関の別の概念図である。図6を参照して、変調方式がCDMA変調であるとき、自己相関は、1つのピークが周期T2で現れる。これは、CDMA変調の場合、同一の拡散コードが使用されている間、そのコードによる相関が現れるからである。従って、図6に示すように、自己相関が周期的に表れる1つのピークからなるとき、変調方式をCDMA変調であると推定することにしたものである。
(iv)CDMA,PSK変調の推定
通信推定手段13は、変動幅ΔRSSI1が閾値ΔRSSI_th以下であるとき、即ち、受信電力RSSI1_1~RSSI1_Jの変動が殆ど無いとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をCDMA変調またはPSK変調であると推定する。
一方、通信推定手段13は、変動幅ΔRSSI1が閾値ΔRSSI_thよりも大きいとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をCDMA変調およびPSK変調のいずれでもないと推定する。
通信推定手段13は、変動幅ΔRSSI1が閾値ΔRSSI_th以下であると判定したとき、自己相関が、周期的に表れる1つのピークからなるか否かを更に判定する。そして、通信推定手段13は、自己相関が、周期的に表れる1つのピークからなるとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をCDMA変調であると推定し、自己相関が、周期的に表れる1つのピークではないとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の変調方式をPSK変調であると推定する。
(v)セルラー方式またはテレビジョン放送の推定
通信推定手段13は、上述した(i)~(iv)における推定結果がTDD、AM変調、ASK変調、FM変調、FSK変調、PSK変調、CDMA変調およびOFDM変調のいずれでもないとき、端末装置ID1および端末装置ID1と無線通信を行っている相手方の通信方式をセルラー方式またはテレビジョン放送であると推定する。
なお、通信推定手段13は、上述した(i)~(v)における方法によって、端末装置ID2~IDI、および端末装置ID2~IDIと無線通信を行っている相手方の通信方式または変調方式を推定する。
(テーブル方式)
テーブルを用いた通信方式または変調方式の推定方法について説明する。通信推定手段13は、テーブル方式においては、データベースDB1を参照して通信方式または変調方式を推定する。
図7は、データベースDB1の概略図である。図7を参照して、データベースDB1は、通信システムと、周波数帯と、通信方式と、変調方式と、システム帯域幅と、チャネル帯域幅と、許容SINRとを含む。通信システム、周波数帯、通信方式、変調方式、システム帯域幅、チャネル帯域幅および許容SINRは、相互に対応付けられる。
通信システムは、例えば、無線システムA、無線システムB、無線システムC、無線システムD、無線システムE、無線システムFおよび無線システムGからなる。無線システムAから無線システムGは、例えば、FPU、アマチュア無線および防災無線等である。
700MHzの周波数帯、FDDの通信方式(複信方式)、CDMAの変調方式、10MHzのシステム帯域幅、20kHzのチャネル帯域幅および10dBの許容SINRは、無線システムAに対応付けられる。
1.2GHzの周波数帯、TDDの通信方式(複信方式)、OFDMの変調方式、20MHzのシステム帯域幅、50kHzのチャネル帯域幅および12dBの許容SINRは、無線システムBに対応付けられる。
200MHzの周波数帯、TDDの通信方式(複信方式)、ASKの変調方式、5MHzのシステム帯域幅、100kHzのチャネル帯域幅および9dBの許容SINRは、無線システムCに対応付けられる。
1.7GHzの周波数帯、FDDの通信方式(複信方式)、AMの変調方式、1MHzのシステム帯域幅、10kHzのチャネル帯域幅および0dBの許容SINRは、無線システムDに対応付けられる。
2.3GHzの周波数帯、FDDの通信方式(複信方式)、FMの変調方式、500kHzのシステム帯域幅、15kHzのチャネル帯域幅および15dBの許容SINRは、無線システムEに対応付けられる。
3.3GHzの周波数帯、TDDの通信方式(複信方式)、FSKの変調方式、2MHzのシステム帯域幅、5kHzのチャネル帯域幅および40dBの許容SINRは、無線システムFに対応付けられる。
800MHzの周波数帯、TDDの通信方式(複信方式)、PSKの変調方式、10MHzのシステム帯域幅、10kHzのチャネル帯域幅および20dBの許容SINRは、無線システムGに対応付けられる。
通信推定手段18は、サンプルデータDSPL_iに基づいて周波数帯およびシステム帯域幅を検出する。各サンプルデータDSPL_iは、J個の受信情報INFOR_1~INFOR_Jからなるので、J個の受信情報INFOR_1~INFOR_JのJ個の周波数fRi_1~fRi_Jに基づいて周波数帯およびシステム帯域幅を検出することができる。
通信推定手段13は、周波数帯およびシステム帯域幅を検出すると、その検出した周波数帯およびシステム帯域幅に対応する通信方式または変調方式を検出することによって通信方式または変調方式を推定する。例えば、通信推定手段13は、サンプルデータDSPL_iに基づいて、1.2GHzの周波数帯および20MHzのシステム帯域幅を検出した場合、1.2GHzの周波数帯および20MHzのシステム帯域幅に対応するTDDおよびOFDMを検出することによって、通信方式がTDDであり、変調方式がOFDMであると推定する。通信推定手段13は、他の周波数帯およびシステム帯域幅が検出された場合、同様にして通信方式または変調方式を推定する。
この発明の実施の形態においては、上述した基本方式による通信方式または変調方式の推定方法とテーブル方式による通信方式または変調方式の推定方法とを組み合わせてもよい。この場合、テーブル方式による通信方式または変調方式の推定方法を実行した後に基本方式による通信方式または変調方式の推定方法を実行してもよく、基本方式による通信方式または変調方式の推定方法を実行した後にテーブル方式による通信方式または変調方式の推定方法を実行してもよい。
図8は、図1に示す通信推定装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図8を参照して、通信推定装置1の動作が開始されると、受信手段11は、複数の端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)から複数のサンプルデータDSPL_iを受信し、その受信した複数のサンプルデータDSPL_iを記憶手段12に格納する。即ち、通信推定装置1は、サンプルデータDSPL_iを収集する(ステップS1)。
そして、通信推定手段13は、記憶手段12に記憶されたサンプルデータDSPL_iを読み出し、その読み出したサンプルデータDSPL_iに基づいて受信電力の電力変動および先頭電力の周波数偏移を検出する(ステップS2)。
そして、通信推定手段13は、電力変動の変動幅を検出し(ステップS3)、受信信号の自己相関を演算する(ステップS4)。
その後、通信推定手段13は、波源が複数であるか否かを判定する(ステップS5)。
ステップS5において、波源が複数であると判定されたとき、通信推定手段13は、通信方式がTDDであると推定する(ステップS6)。
一方、ステップS5において、波源が複数でないと判定されたとき、またはステップS6の後、通信推定手段13は、電力変動の変動幅が、端末装置IDiにおける自信号の電力の2倍以上であるか否かを判定する(ステップS7)。
ステップS7において、電力変動の変動幅が、端末装置IDiにおける自信号の電力の2倍以上であると判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がOFDM変調またはAM変調またはASK変調であると推定する(ステップS8)。
一方、ステップS7において、電力変動の変動幅が、端末装置IDiにおける自信号の電力の2倍以上でないと判定されたとき、またはステップS8の後、通信推定手段13は、先頭電力が周波数偏移するか否かを判定する(ステップS9)。
ステップS9において、先頭電力が周波数偏移すると判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がCDMA変調またはFM変調またはFSK変調であると推定する(ステップS10)。
一方、ステップS9において、先頭電力が周波数偏移しないと判定されたとき、またはステップS10の後、通信推定手段13は、電力変動の変動幅が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS11)。
ステップS11において、電力変動の変動幅が閾値以下であると判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がCDMA変調またはPSK変調であると推定する(ステップS12)。
一方、ステップS11において、電力変動の変動幅が閾値以下でないと判定されたとき、通信推定手段13は、通信方式がセルラー方式またはテレビジョン放送であると推定する(ステップS13)。
そして、ステップS12またはステップS13の後、一連の動作が終了する。
図9は、図8のステップS8の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図9を参照して、図8のステップS7において、電力変動の変動幅が端末装置IDiにおける自信号の電力の2倍以上であると判定されたとき、通信推定手段13は、自己相関が周期的に現れる2つのピークからなるか否かを判定する(ステップS81)。
ステップS81において、自己相関が周期的に現れる2つのピークからなると判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がOFDM変調であると推定する(ステップS82)。
一方、ステップS81において、自己相関が周期的に現れる2つのピークからならないと判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がAM変調またはASK変調であると推定する(ステップS83)。そして、ステップS82またはステップS83の後、一連の動作は、図8のステップS9へ移行する。
図10は、図8のステップS10の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、図8のステップS9において、先頭電力が周波数偏移すると判定されたとき、通信推定手段13は、自己相関が周期的に現れる1つのピークからなるか否かを判定する(ステップS101)。
ステップS101において、自己相関が周期的に現れる1つのピークからなると判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がCDMA変調であると推定する(ステップS102)。
一方、ステップS101において、自己相関が周期的に現れる1つのピークからならないと判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がFM変調またはFSK変調であると推定する(ステップS103)。そして、ステップS102またはステップS103の後、一連の動作は、図8のステップS11へ移行する。
図11は、図8のステップS12の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図11を参照して、図8のステップS11において、電力変動の変動幅が閾値以下であると判定されたとき、通信推定手段13は、自己相関が周期的に現れる1つのピークからなるか否かを判定する(ステップS121)。
ステップS121において、自己相関が周期的に現れる1つのピークからなると判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がCDMA変調であると推定する(ステップS122)。
一方、ステップS121において、自己相関が周期的に現れる1つのピークからならないと判定されたとき、通信推定手段13は、変調方式がPSK変調であると推定する(ステップS123)。そして、ステップS122またはステップS123の後、一連の動作は、図8の“終了”へ移行する。
図12は、図1に示す通信推定装置1の別の動作を説明するためのフローチャートである。なお、図12においては、通信方式または変調方式の推定結果を「EST1」または「EST2」と表す。
図12を参照して、通信推定装置1の動作が開始されると、通信推定手段13は、上述した図8のステップS1~ステップS13を順次実行する(ステップS21)。そして、通信推定手段13は、推定した通信方式または変調方式を推定結果EST1として保持する(ステップS22)。
その後、通信推定手段13は、サンプルデータDSPL_iを記憶手段12Aから読み出し、その読み出したサンプルデータDSPL_iに基づいて周波数帯およびシステム帯域幅を検出する(ステップS23)。
引き続いて、通信推定手段13は、データベースDB1を記憶手段12Aから読み出し、その読み出したデータベースDB1を参照して、検出した周波数帯およびシステム帯域幅に対応する通信方式または変調方式を検出し、その検出した通信方式または変調方式を推定結果EST2とする(ステップS24)。
そうすると、通信推定手段13は、推定結果EST1が推定結果EST2に一致するか否かを判定する(ステップS25)。
ステップS25において、推定結果EST1が推定結果EST2に一致しないと判定されたとき、一連の動作は、ステップS21へ移行する。その後、ステップS25において、推定結果EST1が推定結果EST2に一致すると判定されるまで、ステップS21~ステップS25が繰り返し実行される。
そして、ステップS25において、推定結果EST1が推定結果EST2に一致すると判定されたとき、通信推定手段13は、一致した推定結果を最終的な推定結果とする(ステップS26)。これによって、一連の動作が終了する。
なお、図12に示すフローチャートにおいては、ステップS21に代えて、ステップS23~ステップS24を実行し、ステップS23~ステップS24に代えて、ステップS21を実行してもよい。この場合、ステップS24における推定結果が推定結果EST1となり、ステップS21における推定結果が推定結果EST2になる。
[応用例]
(i)波源位置の推定
上述した通信方式または変調方式の推定結果の応用例として波源位置の推定について説明する。
図13は、波源位置を推定する機能を有する通信推定装置1Aの概略図である。図13を参照して、通信推定装置1Aは、図2に示す通信推定装置1に推定手段14を追加したものであり、その他は、通信推定装置1と同じである。
通信推定装置1Aにおいては、通信推定手段13は、通信方式の推定結果がTDDであるとき、通信方式または変調方式の推定結果がTDDであることを示す信号STDDを生成して推定手段14へ出力し、通信方式または変調方式の推定結果がAM変調またはASK変調であるとき、通信方式または変調方式の推定結果がAM変調またはASK変調であることを示す信号SAを生成して推定手段14へ出力し、通信方式または変調方式の推定結果がFM変調またはFSK変調であるとき、通信方式または変調方式の推定結果がFM変調またはFSK変調であることを示す信号SFを生成して推定手段14へ出力する。
また、通信推定手段13は、通信方式または変調方式の推定結果がOFDM変調であるとき、通信方式または変調方式の推定結果がOFDM変調であることを示す信号SOFを生成して推定手段14へ出力し、通信方式または変調方式の推定結果がCDMA変調であるとき、通信方式または変調方式の推定結果がCDMA変調であることを示す信号SCDを生成して推定手段14へ出力し、通信方式または変調方式の推定結果がPSK変調であるとき、通信方式または変調方式の推定結果がPSK変調であることを示す信号SPを生成して推定手段14へ出力し、通信方式または変調方式の推定結果がセルラシステムまたはテレビジョン方法であるとき、通信方式または変調方式の推定結果がセルラシステムまたはテレビジョン方法であることを示す信号STCを生成して推定手段14へ出力する。
(TDD)
推定手段14は、通信方式または変調方式の推定結果がTDDであるとき、信号STDDを通信推定手段13から受ける。そして、推定手段14は、記憶手段12からサンプルデータDSPL_iを読み出し、信号STDDに応じて、送信元が基地局であることを示す識別情報IDSRC_jに対応付けられた受信電力RSSIi_jおよび位置情報[xi,yi]をサンプルデータDSPL_iから検出する。この場合、TDDにおいては、複数の波源(=複数の基地局)が存在するため、推定手段14は、複数の受信電力RSSIi_jおよび複数の位置情報[xi,yi]をサンプルデータDSPL_iから検出する。
そして、推定手段14は、その検出した複数の受信電力RSSIi_jおよび複数の位置情報[xi,yi]を式(1)に代入して重心[xG,yG]を算出し、その算出した重心[xG,yG]を波源位置(基地局の位置)として推定する。
式(1)において、wiは、i番目の端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)のウェイトを表し、i番目の端末装置における受信電力RSSIiからなる。
そして、推定手段14は、式(1)によって演算した重心(xG,yG)を波源位置として推定する。即ち、推定手段14は、受信電力RSSIiによって重み付けされた複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の重心[xG,yG]を波源位置として推定する。
(CDMA)
推定手段14は、通信方式または変調方式の推定結果がCDMA変調であるとき、信号SCDを通信推定手段13から受け、その受けた信号SCDに応じて、送信元の識別情報IDSRC_jを参照してフォワードリンク(=ダウンリンク)の送信元の識別情報IDSRC_jに対応付けられた複数の受信電力RSSIi_jおよび複数の位置情報[xi,yi]をサンプルデータDSPL_iから検出する。
そして、推定手段14は、その検出した複数の受信電力RSSIi_jおよび複数の位置情報[xi,yi]を式(1)に代入して重心[xG,yG]を算出し、その算出した重心[xG,yG]を波源位置(フォワードリンクの送信元の位置)として推定する。なお、推定手段14は、波源位置の推定においては、リバースリンク(=アップリンク)の受信電力RSSIi_jを用いない。
(FM変調)
推定手段14は、通信方式または変調方式の推定結果がFM変調であるとき、信号SFを通信推定手段13から受け、その受けた信号SFに応じて、周波数偏移している複数の受信信号SRi_jに対応する複数の受信電力RSSIi_jおよび複数の位置情報[xi,yi]をサンプルデータDSPL_iから検出する。なお、周波数偏移している受信信号SRi_jに対応する受信電力RSSIi_jは、変調信号による周波数偏移の範囲を含む帯域幅を有するフィルタを用いて検出された受信電力である。
そして、推定手段14は、その検出した複数の受信電力RSSIi_jおよび複数の位置情報[xi,yi]を式(1)に代入して重心[xG,yG]を算出し、その算出した重心[xG,yG]を波源位置として推定する。
なお、通信方式または変調方式の推定結果がTDD、CDMAおよびFM変調以外であるとき、推定手段14は、受信電力RSSIiを峻別することなくサンプルデータDSPL_iから複数の受信電力RSSIi_jを検出し、その検出した複数の受信電力RSSIi_jに対応する複数の位置情報[xi,yi]を検出する。そして、推定手段14は、その検出した複数の受信電力RSSIi_jおよび複数の位置情報[xi,yi]を式(1)に代入して重心[xG,yG]を算出し、その算出した重心[xG,yG]を波源位置(基地局の位置)として推定する。
推定手段14は、上述した方法によって波源位置を推定し、その推定した波源位置に誤差がある場合、仮想端末装置を追加し、信頼度RELがしきい値Rth以下である端末装置2を波源位置の推定に用いる実端末装置から削除して波源位置を推定する。
推定手段14は、仮想端末装置を追加する場合、仮想端末装置を任意の位置に追加してもよく、受信電力の等高線上に配置してもよい。波源位置を推定するときの複数の実端末装置および複数の仮想端末装置は、x-y平面上に配置されるので、仮想端末装置を任意の位置または等高線上に配置しても、推定手段14は、仮想端末装置の位置を検出できる。また、推定手段14は、仮想端末装置を任意の位置に追加した場合、受信電力の等高線と仮想端末装置との距離Lc-Vを演算し、その演算した距離Lc-Vと等高線上の電力値PWとに基づいて、PW-10Lc-v/3.16またはPW+10Lc-v/3.16によって仮想端末装置における受信電力を算出する。ここで、3.16は、電波の自由空間伝搬モデルを用いたときの電力値が10dBだけ変化する距離である。なお、この発明の実施の形態においては、電波の自由空間伝搬モデル以外の電波の伝搬モデルを用いたときに電力値が一定値だけ変化するときの距離を求め、その求めた距離を用いて仮想端末装置における受信電力を算出してもよい。また、距離Lc-Vは、仮想端末装置の位置から等高線に下した垂線の距離として演算される。
フェージングの影響を受けている端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)は、波源位置の推定精度を低下させる要因になる。そこで、この発明の実施の形態においては、受信電力の信頼度RELを算出し、その算出した信頼度RELがしきい値Rth以下である端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)を波源位置の推定に用いる端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)から削除する。
推定手段14は、端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)が受信電力の等高線上に配置されている場合、受信電力の等高線上の電力値PW(電力値PW1,PW2のいずれか)と、各端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)における受信電力Piとの差ΔPiを演算する。また、推定手段14は、端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)が受信電力の等高線上に配置されていない場合、受信電力の等高線上の電力値PW(電力値PW1,PW2のいずれか)に基づいて電波の自由空間伝搬モデルを用いて決定された電力値(PW-10Lc-v/3.16またはPW+10Lc-v/3.16)と、各端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)における受信電力Piとの差ΔPiを演算する。そして、推定手段14は、差ΔPiがしきい値Pthよりも大きいか否かを判定することによって信頼度RELiがしきい値Rth以下であるか否かを判定する。より具体的には、推定手段14は、差ΔPiがしきい値ΔPthよりも大きいとき、信頼度RELiがしきい値Rth以下であると判定し、差ΔPiがしきい値ΔPth以下であるとき、信頼度RELiがしきい値Rthよりも大きいと判定する。
なお、しきい値Pthは、例えば、10dBである。また、PW-10Lc-v/3.16[dBm]は、受信電力の等高線CTR_SYN(電力値PWの等高線)から距離Lc-vだけ波源から遠くなる方向に離れた位置に存在する仮想端末装置2vjの受信電力Pjvである。また、PW+10Lc-v/3.16[dBm]は、等高線CTR_SYN(電力値がPW1またはPW2の等高線)から距離Lc-vだけ波源に近づいた位置に存在する仮想端末装置2vjの受信電力Pjvである。
このように、この発明の実施の形態においては、推定手段14は、複数の端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)の位置情報(xi,yi)および受信電力Piに基づいて推定した波源位置に誤差がある場合、仮想端末装置2vjの追加と、受信電力の信頼度RELがしきい値Rth以下である端末装置2の削除とを行い、端末装置2および仮想端末装置2vjの位置情報(xi,yi),(xjv,yjv)および受信電力Pi,Pjvに基づいて式(1)によって演算した重心(xG,yG)を波源位置と推定する推定処理を収束条件が満たされるまで繰り返し行う。
そして、推定手段14は、収束条件を満たすまで波源位置の推定を繰り返し行う。
収束条件は、次のとおりでる。
(Cd1)端末装置2および仮想端末装置2vjを含む全ての端末装置の位置の平均(xA,yA)がしきい値ΔxA,ΔyA以下であるとき、収束したと判定する。この場合、xAがしきい値ΔxA以下であり、かつ、yAがしきい値ΔyA以下である場合、収束したと判定する。しきい値ΔxAは、例えば、10mであり、しきい値ΔyAは、例えば、10mである。
(Cd2)判定回数が5回~10回のように一定回数に達したときに収束したと判定する。
(Cd3)2回目以降の判定において、k-1(kは2以上の整数)回目の判定時において推定された波源位置と、k回目の判定時において推定された波源位置との誤差ΔGがしきい値Gth以下であるときに収束したと判定する。
収束条件(Cd1)が用いられる場合、位置の平均(xA,yA)は、次式によって算出される。
式(2)において、SNrは、端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)を表し、SNdは、仮想端末装置2vjを表す。
図14は、波源位置を推定する動作を説明するためのフローチャートである。図14を参照して、波源位置を推定する動作が開始されると、通信推定装置1Aの推定手段14は、1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式の推定結果EST(信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCD、信号SPおよび信号STCのいずれか)を通信推定手段13から受ける(ステップS31)。
そして、推定手段14は、推定結果ESTがTDD、CDMA変調およびFM変調のいずれかであるか否かを判定する(ステップS32)。
ステップS32において、推定結果ESTがTDD、CDMA変調およびFM変調のいずれかであると判定されたとき、推定手段14は、推定結果ESTに基づいて、サンプルデータDSPL_iから複数の実端末装置の複数の受信電力のうちの誤差を抑制した複数の受信電力を検出するとともに、その検出した複数の受信電力に対応する複数の位置情報を検出する(ステップS33)。
一方、ステップS32において、推定結果ESTがTDD、CDMA変調およびFM変調のいずれでもないと判定されたとき、推定手段14は、受信電力を峻別することなく、サンプルデータDSPL_iから複数の実端末装置の複数の受信電力および複数の位置情報を検出する(ステップS34)。
そして、ステップS33またはステップS34の後、推定手段14は、複数の位置情報(x1,y1)~(xN,yN)および複数の受信電力RSSI1~RSSINを式(1)に代入して重心(xG,yG)を演算し、その演算した重心(xG,yG)を波源位置として推定する(ステップS35)。
そして、推定手段14は、複数の位置情報(x1,y1)~(xN,yN)および端末装置2の総数Nを式(2)に代入して位置の平均(xA,yA)を演算する(ステップS36)。
そうすると、推定手段14は、xA<ΔxA、かつ、yA<ΔyAであるか否かを判定する(ステップS37)。
ステップS37において、xA<ΔxA、かつ、yA<ΔyAでないと判定されたとき、推定手段14は、予め保持した電力分布推定結果に基づいてJ個の仮想端末装置2v1~2vJを追加する(ステップS38)。
引き続いて、推定手段14は、受信電力の信頼度RELが低い端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7)を波源位置の推定に用いる端末装置から削除する(ステップS39)。
その後、一連の動作は、ステップS35へ移行し、ステップS37において、xA<ΔxA、かつ、yA<ΔyAであると判定されるまで、ステップS35~ステップS39が繰り返し実行される。
そして、ステップS37において、xA<ΔxA、かつ、yA<ΔyAであると判定されると、波源位置を推定する動作が終了する。
図14に示すフローチャートにおいては、ステップS33からステップS35へ移行した場合、ステップS35において、推定手段14は、誤差を抑制した複数の受信電力を用いて波源位置[xG,yG]を推定する。従って、正確に波源位置[xG,yG]を推定できる。
誤差を抑制した複数の受信電力を用いて波源位置を推定した場合でも、実端末装置の分布に偏りがあれば、その推定した波源位置[xG,yG]に誤差があることになる。
従って、ステップS35,S36が実行された後、ステップS37において、その推定した波源位置[xG,yG]に誤差があると判定されたとき(xA<ΔxA、かつ、yA<ΔyAでないと判定されたとき)、上述したステップS38,S39が順次実行された後、ステップS35へ移行する。
そして、ステップS35において、推定手段14は、複数の実端末装置の複数の位置情報および誤差を抑制した複数の受信電力と、仮想端末装置の複数の位置情報および複数の受信電力とを用いて波源位置を推定する。従って、波源位置を精度良く推定できる。
なお、ステップS34からステップS35へ移行した場合、推定手段14は、受信電力を峻別することなくサンプルデータDSPL_iから検出した複数の受信電力および複数の位置情報を用いて波源位置を推定する(ステップS35参照)。
図15は、図14のステップS33の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図15を参照して、図14のステップS32において、推定結果ESTがTDD、CDMA変調およびFM変調のいずれかであると判定されたとき、推定手段14は、通信推定手段13から信号STDDを受けたか否かを判定することによって推定結果ESTがTDDであるか否かを判定する(ステップS331)。この場合、推定手段14は、通信推定手段13から信号STDDを受けているとき、推定結果ESTがTDDであると判定し、通信推定手段13から信号STDDを受けていないとき、推定結果ESTがTDDではないと判定する。
ステップS331において、推定結果ESTがTDDであると判定されたとき、推定手段14は、他の通信装置を制御および/または管理する通信装置から送信された複数の電波の複数の受信電力と、その複数の受信電力に対応する複数の位置情報とをサンプルデータDSPL_iから検出する(ステップS332)。
一方、ステップS331において、推定結果ESTがTDDでないと判定されたとき、推定手段14は、通信推定手段13から信号SCDを受けたか否かを判定することによって推定結果ESTがCDMA変調であるか否かを判定する(ステップS333)。この場合、推定手段14は、通信推定手段13から信号SCDを受けているとき、推定結果ESTがCDMA変調であると判定し、通信推定手段13から信号SCDを受けていないとき、推定結果ESTがCDMAではないと判定する。
ステップS333において、推定結果ESTがCDMA変調であると判定されたとき、推定手段14は、フォワードリンクにおける複数の電波の複数の受信電力と、その複数の受信電力に対応する複数の位置情報とをサンプルデータDSPL_iから検出する(ステップS334)。
一方、ステップS333において、推定結果ESTがCDMA変調でないと判定されたとき、推定手段14は、変調信号による周波数偏移を含む帯域幅を有するフィルタで検出された複数の電波の複数の受信電力と、その複数の受信電力に対応する複数の位置情報とをサンプルデータDSPL_iから検出する(ステップS335)。
そして、ステップS332、ステップS334およびステップS335のいずれかの後、図14のステップS35へ移行する。
なお、ステップS333において、推定結果ESTがCDMA変調でないと判定されたとき、推定結果ESTがFM変調であるか否かを判定しないのは、図15のフローチャートは、図14のステップS32において推定結果ESTがTDD、CDMA変調およびFM変調のいずれかであると判定されたことを前提としており、ステップS331において推定結果ESTがTDDでないと判定されており、かつ、ステップS333において推定結果ESTがCDMAでないと判定されているので、推定結果ESTがFM変調であることが明らかであるからである。
図16は、波源位置を推定する別の動作を説明するためのフローチャートである。図16に示すフローチャートは、図14に示すフローチャートのステップS37をステップS37Aに変え、ステップS33A,S33Bを追加したものであり、その他は、図14に示すフローチャートと同じである。
図16を参照して、波源位置を推定する動作が開始されると、上述したステップS311~ステップS34が順次実行される。そして、ステップS33またはステップS34の後、推定手段14は、k=1を設定する(ステップS33A)。そして、上述したステップS35が実行された後、推定手段14は、k=Kであるか否かを判定する(ステップS37A)。ここで、kは、波源位置の推定回数を示し、Kは、波源位置の最大推定回数を示す。
ステップS37Aにおいて、k=Kでないと判定されたとき、推定手段14は、k=k+1を設定する(ステップS33B)。そして、上述したステップS38,S39が順次実行される。ステップS39の後、一連の動作は、ステップS35へ移行する。その後、ステップS37Aにおいて、k=Kであると判定されるまで、ステップS35,S37A,S33B,S38,S39が繰り返し実行される。そして、ステップS37Aにおいて、k=Kであると判定されると、波源位置を推定する動作が終了する。
図17は、波源位置を推定する更に別の動作を説明するためのフローチャートである。図17に示すフローチャートは、図16に示すフローチャートのステップS37AをステップS41~ステップS43に変えたものであり、その他は、図16に示すフローチャートと同じである。
図17を参照して、波源位置を推定する動作が開始されると、上述したステップS31~S34,S33A,S35が順次実行される。そして、ステップS35の後、推定手段14は、kが2以上であるか否かを判定する(ステップS41)。
ステップS41において、kが2以上であると判定されたとき、推定手段14は、k-1回目の判定時に推定された波源位置とk回目の判定時に推定された波源位置との誤差ΔGを演算する(ステップS42)。
そして、推定手段14は、誤差ΔGがしきい値Gth以下であるか否かを判定する(ステップS43)。
ステップS43において、誤差ΔGがしきい値Gth以下でないと判定されたとき、またはステップS41において、kが2以上でないと判定されたとき、上述したステップS33B,S38,S39が順次実行される。そして、ステップS39の後、一連の動作は、ステップS35へ移行する。その後、ステップS43において、誤差ΔGがしきい値Gth以下であると判定されるまで、ステップS35,S41~S43,S33B,S38,S39が繰り返し実行される。そして、ステップS43において、誤差ΔGがしきい値Gth以下であると判定されると、波源位置を推定する動作が終了する。
(ii)通信範囲の推定
上述した通信方式または変調方式の推定結果の応用例として通信範囲の推定について説明する。
図18は、通信範囲を推定する機能を有する通信推定装置の概略図である。図18を参照して、通信推定装置1Bは、図13に示す通信推定装置1Aの推定手段14を推定手段14Aに変えたものであり、その他は、通信推定装置1Aと同じである。
推定手段14Aは、通信推定装置1Aの推定手段14による波源位置の推定方法と同じ方法によって波源位置[xG,yG]を推定する。そして、推定手段14Aは、その推定した波源位置[xG,yG]を用いて1次利用者の通信範囲を推定する。
より具体的には、推定手段14Aは、1次利用者から送信された電波の受信電力がある値(設定値)以下となる最大半径を1次利用者の通信範囲として推定する。この場合、推定手段14Aは、複数のサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうち、設定値以下となる受信電力RSSIi_lowを検出し、その検出した受信電力RSSIi_lowを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の少なくとも1つ)の位置と、1次利用者の位置(=[xG,yG])との距離を演算し、その演算した距離の最大値を1次利用者の通信範囲として推定する。設定値は、許容干渉電力および干渉マージン等を考慮して設定される。
(TDD)
推定手段14Aは、推定結果ESTがTDDであるとき、記憶手段12に記憶された複数のサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうちから、マスター局(基地局)からの電波の受信電力RSSIi_Mを検出し、その検出した受信電力RSSIi_Mのうち、設定値以下となる受信電力RSSIi_M_lowを検出する。そして、推定手段14Aは、受信電力RSSIi_M_lowを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のうちの少なくとも1つ)の位置と、波源位置[xG,yG]との距離を演算し、その演算した距離の最大値を1次利用者の通信範囲として推定する。
このように、推定手段14Aは、通信方式または変調方式の推定結果ESTがTDDであるとき、マスター局(基地局)から送信された電波の受信電力RSSIi_Mに基づいて1次利用者の通信範囲を推定する。なお、マスター局(基地局)は、他の通信装置を制御および/または管理する通信装置に相当する。
TDDの場合、複数の波源が存在する。また、スペクトルアナライザーによる電力測定においては、電波の送信と受信のフェーズが電力のデューティ比として現れるため、電力測定に誤差が発生する。
しかし、通信方式または変調方式の推定結果がTDDであるとき、マスター局(基地局)からの受信電力RSSIi_Mを用いて基地局の通信範囲(=1次利用者の通信範囲)を推定するので、誤差を抑制した受信電力RSSIi_Mを用いて基地局の通信範囲(=1次利用者の通信範囲)を推定できる。従って、基地局の通信範囲(=1次利用者の通信範囲)を正確に推定できる。
(CDMA)
推定手段14Aは、推定結果ESTがCDMA変調であるとき、記憶手段12に記憶された複数のサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうちから、フォワードリンクの送信元からの受信電力RSSIi_Fを検出し、その検出した受信電力RSSIi_Fのうち、設定値以下となる受信電力RSSIi_F_lowを検出する。そして、推定手段14Aは、受信電力RSSIi_F_lowを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のうちの少なくとも1つ)の位置と、波源位置[xG,yG]との距離を演算し、その演算した距離の最大値を1次利用者の通信範囲として推定する。この場合、推定手段14Aは、リバースリンク(=アップリンク)の受信電力RSSIi_jを用いない。
このように、推定手段14Aは、通信方式または変調方式の推定結果がCDMA変調であるとき、リバースリンク(=アップリンク)の受信電力RSSIi_jを用いずに、フォワードリンクの送信元からの受信電力RSSIi_Fに基づいて1次利用者の通信範囲を推定する。
CDMA変調の場合、フォワードリンクの送信電力が定電力であるので、フォワードリンクにおける受信電力RSSIi_Fを用いることによって1次利用者の通信範囲を正確に推定できる。
(FM変調)
推定手段14Aは、推定結果ESTがFM変調であるとき、記憶手段12に記憶された複数のサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうちから、変調信号による周波数偏移の範囲を含む帯域幅を有するフィルタを用いて検出された受信電力RSSIi_BWを検出し、その検出した受信電力RSSIi_BWのうち、設定値以下となる受信電力RSSIi_BW_lowを検出する。そして、推定手段14Aは、受信電力RSSIi_BW_lowを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のうちの少なくとも1つ)の位置と、波源位置[xG,yG]との距離を演算し、その演算した距離の最大値を1次利用者の通信範囲として推定する。
このように、推定手段14は、通信方式または変調方式の推定結果がFM変調であるとき、変調信号による周波数偏移の範囲を含む帯域幅を有するフィルタを用いて検出された受信電力RSSIi_BWを用いて1次利用者の通信範囲を推定するので、1次利用者の通信範囲を正確に推定できる。
受信電力を検出するときのフィルタが周波数偏移に対して狭い帯域幅を有するとき、受信電力は、変調信号に応じて変化する。
しかし、変調信号による周波数偏移の範囲を含む帯域幅を有するフィルタを用いて受信電力RSSIi_BWを検出した場合、受信電力RSSIi_BWは、変調信号に応じて変化しない。従って、1次利用者の通信範囲を正確に推定できる。
なお、通信方式または変調方式の推定結果がTDD、CDMAおよびFM変調以外であるとき、推定手段14Aは、受信電力RSSIiを峻別することなくサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIi_jのうち、設定値以下となる受信電力RSSIi_j_lowを検出する。そして、推定手段14Aは、受信電力RSSIi_j_lowを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のうちの少なくとも1つ)の位置と、波源位置[xG,yG]との距離を演算し、その演算した距離の最大値を1次利用者の通信範囲として推定する。
また、推定手段14Aは、2次利用者から送信された電波の受信電力が設定値になる距離を求め、2次利用者の位置を中心とし、その求めた距離を半径とする範囲を2次利用者の通信範囲と推定する。
図19は、1次利用者および2次利用者の通信範囲を推定する動作を説明するためのフローチャートである。
図19を参照して、通信範囲を推定する動作が開始されると、推定手段14Aは、1次利用者および2次利用者の通信方式の推定結果(信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCD、信号SPおよび信号STCのいずれか)を通信推定手段13から受ける(ステップS51)。
そして、推定手段14Aは、推定結果ESTがTDDであるか否かを判定する(ステップS52)。
ステップS52において、推定結果ESTがTDDであると判定されたとき、推定手段14Aは、記憶手段12に記憶されたサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうち、マスター局からの電波の受信電力RSSIi_Mを選択する(ステップS53)。
一方、ステップS52において、推定結果ESTがTDDでないと判定されたとき、推定手段14Aは、推定結果ESTがCDMA変調であるか否かを判定する(ステップS54)。
ステップS54において、推定結果ESTがCDMA変調であると判定されたとき、推定手段14Aは、記憶手段12に記憶されたサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうち、フォワードリンクにおける受信電力RSSIi_Fを選択する(ステップS55)。
一方、ステップS54において、推定結果ESTがCDMA変調でないと判定されたとき、推定手段14Aは、推定結果ESTがFM変調であるか否かを判定する(ステップS56)。
ステップS56において、推定結果ESTがFM変調であると判定されたとき、推定手段14Aは、記憶手段12に記憶されたサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうち、周波数偏移の範囲を含む帯域幅を有するフィルタを用いて検出された受信電力RSSIi_BWを選択する(ステップS57)。
そして、ステップS56において、推定結果ESTがFM変調でないと判定されたとき、またはステップS53、ステップS55およびステップS57のいずれかの後、推定手段14Aは、式(1)によって、複数の2次利用者における受信電力によって重み付けられた複数の2次利用者の位置の重心[xG,yG]を演算し、その演算した位置の重心[xG,yG]を1次利用者の位置と推定する(ステップS58)。
その後、推定手段14Aは、1次利用者から送信された電波の受信電力に基づいて1次利用者の通信範囲を推定する(ステップS59)。より具体的には、推定手段14Aは、1次利用者から送信された電波の受信電力が設定値以下となる最大半径を1次利用者の通信範囲として推定する。この場合、推定手段14Aは、複数のサンプルデータDSPL_iに含まれる複数の受信電力RSSIiのうち、設定値以下となる受信電力RSSIi_lowを検出し、その検出した受信電力RSSIi_lowを有する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の少なくとも1つ)の位置と、1次利用者の位置(=[xG,yG])との距離を演算し、その演算した距離の最大値を1次利用者の通信範囲として推定する。
ステップS59の後、推定手段14Aは、2次利用者から送信された電波の受信電力が設定値になる距離を求め、2次利用者の位置を中心とし、その求めた距離を半径とする範囲を2次利用者の通信範囲と推定する(ステップS60)。これによって通信範囲を推定する動作が終了する。
[共用条件の設定]
上述した通信方式または変調方式の推定結果の応用例として、1次利用者と2次利用者とが周波数を共用するときの共用条件の設定について説明する。
図20は、共用条件を設定する機能を有する通信推定装置の概略図である。図20を参照して、通信推定装置1Cは、図18に示す通信推定装置1Bに補正手段15、判定手段16、設定手段17および送信手段18を追加したものであり、その他は、通信推定装置1Bと同じである。
なお、通信推定装置1Cにおいては、通信推定手段13は、推定結果EST(信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCD、信号SPおよび信号STCのいずれか)を推定手段14Aおよび補正手段15へ出力する。また、記憶手段12は、後述するデータベースDB2、1次利用者の補正通信範囲および2次利用者の補正通信範囲を更に記憶する。
補正手段15は、1次利用者の通信範囲および2次利用者の通信範囲を記憶手段12から読み出す。また、補正手段15は、データベースDB2を記憶手段12から読み出す。更に、補正手段15は、1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式の推定結果ESTを通信推定手段13から受ける。
そして、補正手段15は、データベースDB2を参照して、1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式の推定結果に対応する許容干渉量を検出し、その検出した許容干渉量に基づいて、後述する方法によって、1次利用者の通信範囲および2次利用者の通信範囲を補正する。そうすると、補正手段15は、その補正した1次利用者の補正通信範囲および2次利用者の補正通信範囲を記憶手段12に格納する。
[通信範囲の補正]
図21は、別のデータベースの概念図である。図21を参照して、データベースDB2は、1次利用者の通信方式または変調方式と、2次利用者の通信方式または変調方式と、許容干渉量AAIFpq,AAIFqp(p=1~7,q=1~7)とを含む。
許容干渉量AAIFpq,AAIFqpの各々は、1次利用者の通信方式または変調方式と2次利用者の通信方式または変調方式との組み合わせに対応付けられる。例えば、許容干渉量AAIF11は、1次利用者の通信方式または変調方式がTDDであり、2次利用者の通信方式または変調方式がTDDである場合の許容干渉量であり、AAIF12は、1次利用者の通信方式おまたは変調方式がAM変調またはASK変調であり、2次利用者の通信方式または変調方式がTDDである場合の許容干渉量である。その他の許容干渉量AAIF13~AAIF77についても同様である。
p≠qであるとき、許容干渉量AAIFpqは、許容干渉量AAIFqpと同じである。即ち、許容干渉量AAIF11~AAIF77は、7行×7列の行列に配置されているので、対角成分AAIF11,AAIF22,AAIF33,AAIF44,AAIF55,AAIF66,AAIF77に対して対称の位置に配置された非対角成分は、相互に同じである。
許容干渉量AAIF11~AAIF77の各々は、1次利用者の通信方式または変調方式と2次利用者の通信方式または変調方式との組み合わせを用いてシミュレーションした許容干渉量からなる。
補正手段15は、1次利用者の通信方式または変調方式と2次利用者の通信方式または変調方式との推定結果(信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCDおよび信号STCのいずれか)を通信推定手段13から受けると、記憶手段12から読み出したデータベースDB2を参照して、推定結果に対応する許容干渉量AAIFpq(AAIF11~AAIF77のいずれか)を検出する。
そして、補正手段15は、その検出した許容干渉量AAIFpq(AAIF11~AAIF77のいずれか)をマージンの電力量Pmarginとして決定する。
図22は、累積確率と信号強度との関係を示す図である。図22において、縦軸は、累積確率を表し、横軸は、信号強度を表す。また、曲線k1は、レイリーフェージングにおける累積確率と信号強度との関係を示し、曲線k2は、ライス係数Kが40であるときの仲上ライスフェージングにおける累積確率と信号強度との関係を示す。
図22を参照して、レイリーフェージングおよび仲上ライスフェージングにおいては、累積確率は、信号強度の増加に伴って指数関数的に大きくなる(曲線k1,k2参照)。
セルラシステムまたはテレビジョン放送の基地局は、一般的には、固定局であるが、移動局は、移動しながら通信を行う。固定局とセンサーノードとの双方が固定状態であっても、周囲の通信環境は、時間的に変化しているため、センサーノードが電力を観測しているときにフェージングの影響を受ける。また、移動局においては、更に、移動に伴うフェージングも加わる。
そこで、補正手段15は、通信方式または変調方式の推定結果がセルラシステムまたはテレビジョン放送であるとき、累積確率と信号強度との関係(図22の曲線k1または曲線k2)を記憶手段12から読み出し、その読み出した累積確率と信号強度との関係(図22の曲線k1または曲線k2)に基づいて、例えば、5%の確率で生じる事象よりも、例えば、90%の確率で生じる事象を選択する。即ち、補正手段15は、レイリーフェージングにおいては、信号強度P1よりも信号強度P2を選択し、その選択した信号強度P2をマージンの電力量Pmarginとして決定する。また、補正手段15は、仲上ライスフェージングにおいては、信号強度P3よりも信号強度P4を選択し、その選択した信号強度P4をマージンの電力量Pmarginとして決定する。
なお、90%の確率で生じる事象を選択するのは、例示であって、補正手段15は、90%以外の確率で生じる事象を選択してもよく、一般的には、基準となる確率よりも高い確率で生じる事象を選択すればよい。従って、補正手段15は、通信方式または変調方式の推定結果がセルラシステムまたはテレビジョン放送であるとき、累積確率と信号強度との関係(図22の曲線k1または曲線k2)に基づいて、基準確率よりも高い確率で生じる事象に対応する信号強度を検出し、その検出した信号強度をマージンの電力量Pmarginとして決定する。
図23は、1次利用者の通信範囲を補正する方法を説明するための図である。図23において、縦軸は、1次利用者の電力を表し、横軸は、1次利用者からの距離を表す。
図23を参照して、曲線k3は、推定によって求められた電波の伝搬特性である。曲線k3は、例えば、電波の自由空間伝搬モデル等の電波の伝搬モデルを用いて推定された電波の伝搬特性である。
距離R2は、上述した方法によって求められた半径であり、推定手段14Aによって推定された1次利用者の通信範囲である。
補正手段15は、上述した方法によってマージンの電力量Pmarginを決定すると、曲線k3に基づいて、距離R2に対応する1次利用者の電力P5を求め、その求めた電力P5にマージンの電力量Pmarginを加算して1次利用者の電力P6を求め、その求めた1次利用者の電力P6に対応する距離R1を求める。即ち、補正手段15は、電波の伝搬特性(曲線k3)を用いてマージンの電力量Pmarginに基づいて距離R2を距離R1に補正する。そして、補正手段15は、1次利用者の位置(xG,yG)を中心とし、距離R1(補正距離)を半径とする円の範囲を1次利用者の補正通信範囲とする。
図24は、2次利用者の通信範囲を補正する方法を説明するための図である。図24において、縦軸は、2次利用者の電力を表し、横軸は、2次利用者からの距離を表す。
図24を参照して、曲線k4は、周波数を共用して無線通信を行うときの通信条件から推定された電波の伝搬特性である。曲線k4は、例えば、電波の自由空間伝搬モデル等の電波の伝搬モデルを用いて推定された電波の伝搬特性である。
距離r2は、上述した方法によって求められた半径rであり、推定手段14Aによって推定された2次利用者の通信範囲である。
補正手段15は、マージンの電力量Pmarginを決定すると、曲線k4に基づいて、距離r2に対応する2次利用者の電力P8を求め、その求めた2次利用者の電力P8からマージンの電力量Pmarginを減算して2次利用者の電力P7を求め、その求めた2次利用者の電力P7に対応する距離r1を求める。即ち、補正手段15は、電波の伝搬特性(曲線k4)を用いてマージンの電力量Pmarginに基づいて距離r2を距離r1に補正する。そして、補正手段15は、2次利用者の位置(xi,yi)を中心とし、距離r1(補正距離)を半径とする円の範囲を2次利用者の補正通信範囲とする。
そして、補正手段15は、補正した1次利用者の補正通信範囲と2次利用者の補正通信範囲とを記憶手段12に記憶する。
図25は、補正した通信範囲の概念図である。図25を参照して、通信範囲REG_cm1は、推定手段14Aによって推定された1次利用者の推定通信範囲であり、通信範囲REG_cm2は、補正手段15によって補正された1次利用者の補正通信範囲である。また、通信範囲REG_cm3は、推定手段14Aによって推定された2次利用者の推定通信範囲であり、通信範囲REG_cm4は、補正手段15によって補正された2次利用者の補正通信範囲である。
このように、補正手段15は、マージンの電力量Pmarginに基づいて、1次利用者の推定通信範囲REG_cm1を狭くするように1次利用者の補正通信範囲REG_cm2に補正し、2次利用者の推定通信範囲REG_cm3を広くするように2次利用者の補正通信範囲REG_cm4に補正する。
なお、補正手段15は、通信範囲が相互に近接している1次利用者および2次利用者の全てについて、上述した方法によって、1次利用者の通信範囲と2次利用者の通信範囲とを補正する。
[干渉の有無の判定]
干渉の有無を判定する方法について説明する。図26は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉するか否かを判定する方法を説明するための図である。
図26を参照して、1次利用者の補正通信範囲は、1次利用者の位置(xG,yG)から距離R1までの範囲であり、2次利用者の補正通信範囲は、2次利用者の位置(xi,yi)から距離r1までの範囲である。
判定手段16は、記憶手段12に記憶された1次利用者の補正通信範囲の中心(xG,yG)および半径R1を検出する。また、判定手段16は、記憶手段12に記憶された2次利用者の補正通信範囲の中心(xi,yi)および半径r1を検出する。そして、判定手段16は、中心(xG,yG)と中心(xi,yi)との距離Dを演算する。
そうすると、判定手段16は、次式が成立するか否かを判定することによって、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉するか否かを判定する。
より具体的には、判定手段16は、式(3)が成立すると判定したとき、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉すると判定し、式(3)が成立しないと判定したとき、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しないと判定する。
式(3)が成立するとき、図25に示す1次利用者の補正通信範囲REG_cm2は、図25に示す2次利用者の補正通信範囲REG_cm4と接するか交差する。1次利用者の補正通信範囲REG_cm2が2次利用者の補正通信範囲REG_cm4と接した場合、1次利用者の補正通信範囲REG_cm2と2次利用者の補正通信範囲REG_cm4との接点に位置する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)は、1次利用者から送信された電波と、2次利用者から送信された電波との両方を受信可能である。
また、1次利用者の補正通信範囲REG_cm2が2次利用者の補正通信範囲REG_cm4と交差した場合、1次利用者の補正通信範囲REG_cm2と2次利用者の補正通信範囲REG_cm4との両方に存在する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)は、1次利用者から送信された電波と、2次利用者から送信された電波との両方を受信可能である。
このように、1次利用者の補正通信範囲REG_cm2が2次利用者の補正通信範囲REG_cm4と接するか交差する場合、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉する。
従って、式(3)が成立するとき、即ち、距離Dが半径R1と半径r1との和(=R1+r1)以下であるとき、判定手段16は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉すると判定する。
一方、式(3)が成立しないとき、図25に示す1次利用者の補正通信範囲REG_cm2は、図25に示す2次利用者の補正通信範囲REG_cm4と接することがなく、交差することもない(図26参照)。その結果、1次利用者の補正通信範囲REG_cm2内に存在する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)は、2次利用者から送信された電波を受信せず、2次利用者の補正通信範囲REG_cm4内に存在する端末装置(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)は、1次利用者から送信された電波を受信しない。
このように、1次利用者の補正通信範囲REG_cm2が2次利用者の補正通信範囲REG_cm4と接することがなく、交差することもない場合、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とは干渉しない。
従って、式(3)が成立しない場合、即ち、距離Dが半径R1と半径r1との和(=R1+r1)よりも大きいとき、判定手段16は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しないと判定する。
判定手段16は、全ての1次利用者および全ての2次利用者(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の全て)について、上述した方法によって、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉するか否かを判定する。
上述した干渉の有無の判定方法は、1次利用者と2次利用者とが同じ周波数帯域を共用していることを前提とした場合の判定方法である。
図27は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉の有無の判定結果を示す表の概念図である。図27を参照して、表TBL-1は、1次利用者IDと2次利用者IDとを含む。そして、“1”は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉することを表し、“0”は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しないことを表す。
従って、“0”の1次利用者IDを有する1次利用者の無線通信は、“2”の2次利用者IDを有する2次利用者(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)の無線通信と干渉し、“3”の2次利用者IDを有する2次利用者(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)の無線通信と干渉しない。
また、“1”の1次利用者IDを有する1次利用者の無線通信は、“2”の2次利用者IDを有する2次利用者(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)の無線通信と干渉せず、“3”の2次利用者IDを有する2次利用者(複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7のいずれか)の無線通信と干渉する。
判定手段16は、上述した方法によって、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉するか否かを判定し、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉の有無の判定結果を示す表TBL-1を作成し、その作成した表TBL-1を設定手段17へ出力する。この場合、表TBL-1において、1次利用者IDと2次利用者IDとの交点に記載された“1”は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉することを示す判定結果D_YESを構成し、1次利用者IDと2次利用者IDとの交点に記載された“0”は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しないことを示す判定結果D_NOを構成する。
1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しないと判定された場合における2次利用者の無線通信の通信条件を設定する方法について説明する。
図28は、1次利用者の補正通信範囲と2次利用者の補正通信範囲とを示す図である。図28を参照して、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しない場合、1次利用者の補正通信範囲は、2次利用者の補正通信範囲に接することもなく、交差することもない。
従って、設定手段17は、判定結果D_NOを受けると、2次利用者の補正通信範囲(2次利用者の位置(xi,yi)および半径r1)と電波の伝搬特性(図24の曲線k4)とを記憶手段12から読み出す。そして、設定手段17は、電波の届く範囲が2次利用者の位置(xi,yi)から2次利用者の補正通信範囲内になるように2次利用者の送信電力Ptを決定する。また、設定手段17は、1次利用者と共用する共用周波数fcomを決定する。
そうすると、設定手段17は、2次利用者IDと送信電力Ptと共用周波数fcomとを含む通信条件CDT=[2次利用者ID/Pt/fcom]を生成し、その生成した通信条件CDT=[2次利用者ID/Pt/fcom]を送信手段18へ出力する。設定手段17は、通信条件CDTを複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の全てについて生成し、その生成した通信条件CDTを送信手段18へ出力する。
送信手段18は、通信条件CDTを設定手段17から受け、その受けた通信条件CDTを複数の端末装置2,6、複数のセンサ5および複数のロボット7の全てに送信する。
図29は、図20に示す通信推定装置1Cの動作を説明するためのフローチャートである。図29を参照して、通信推定装置1Cの動作が開始されると、補正手段15は、マージンの電力量Pmarginを決定する(ステップS61)。この場合、補正手段15は、通信推定手段13から受けた推定結果(信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCD、信号SPおよび信号STCのいずれかからなる)がセルラシステムまたはテレビジョン放送以外であるとき(即ち、信号STC以外の信号を受けたとき)、記憶手段12から読み出したデータベースDB2を参照して、推定結果(信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCD、信号SPおよび信号STCのいずれかからなる)に対応する許容干渉量AAIFpqを検出し、その検出した許容干渉量AAIFpqをマージンの電力量Pmarginとして決定する。一方、補正手段15は、通信推定手段13から受けた推定結果(信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCD、信号SPおよび信号STCのいずれかからなる)がセルラシステムまたはテレビジョン放送であるとき(即ち、信号STCを受けたとき)、累積確率と信号強度との関係(図22の曲線k1または曲線k2)に基づいて、基準確率よりも高い確率で生じる事象に対応する信号強度を検出し、その検出した信号強度をマージンの電力量Pmarginとして決定する。
そして、ステップS61の後、補正手段15は、その決定したマージンの電力量Pmarginに基づいて、上述した方法によって1次利用者の推定通信範囲を1次利用者の補正通信範囲に補正し、2次利用者の推定通信範囲を2次利用者の補正通信範囲に補正する(ステップS62)。
その後、上述したステップS4~ステップS6が順次実行され、通信制御装置1Aの動作が終了する。
その後、判定手段16は、1次利用者の補正通信範囲および2次利用者の補正通信範囲に基づいて、上述した方法によって1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉の有無を判定し(ステップS63)、その判定結果を設定手段17へ出力する。
設定手段17は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しない場合、判定結果D_NOを判定手段16から受け、その受けた判定結果D_NOに応じて、2次利用者の補正通信範囲に基づいて2次利用者の通信条件を設定する(ステップS64)。より具体的には、設定手段17は、電波の届く範囲が2次利用者の位置(xi,yi)から2次利用者の補正通信範囲内になるように2次利用者の送信電力Ptを決定する。また、設定手段17は、1次利用者と共用する共用周波数fcomを決定する。そして、設定手段17は、2次利用者の送信電力Ptと共用周波数fcomとを2次利用者の通信条件として設定する。
また、設定手段17は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉する場合、判定結果D_YESを判定手段16から受け、その受けた判定結果D_YESに応じて、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉を回避するように2次利用者の通信条件を設定する(ステップS65)。これによって、通信推定装置1Cの動作が終了する。
ステップS65においては、次の方法によって通信条件を設定する。設定手段17は、記憶手段12に記憶された1次利用者の補正通信範囲に基づいて1次利用者の中心Center1と1次利用者の補正通信範囲の半径R1とを検出し、記憶手段12に記憶された2次利用者の補正通信範囲に基づいて2次利用者の中心Center2と1次利用者の補正通信範囲の半径r1とを検出する。そして、設定手段17は、中心Center1と中心Center2との距離Dを演算し、その演算した距離Dが半径R1および半径r1よりも大きいと判定したとき、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉を回避するように2次利用者の電力を調整し、または2次利用者から送信される電波の指向性を調整する。距離Dが半径R1および半径r1よりも大きいとき、2次利用者の中心位置が1次利用者の補正通信範囲外に存在するので、2次利用者の電力または電波の指向性を調整することによって、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉を回避できるからである。
また、設定手段17は、距離Dが半径R1または半径r1よりも小さいと判定したとき、2次利用者の無線通信を停止させる。距離Dが半径R1または半径r1よりも小さいとき、2次利用者の中心位置が1次利用者の補正通信範囲内に存在するので、2次利用者の電力または電波の指向性を調整しても、2次利用者の補正通信範囲が1次利用者の補正通信範囲と一部で重なり、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉を回避できないからである。
この発明の実施の形態においては、次の方法によって1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉の有無を判定してもよい。
図30は、受信SINR(Signal to Interference Plus Noise Ratio)を算出する方法を説明するための図である。受信電力Prcvは、次式によって表される。
式(4)において、Ptransは、送信電力であり、PPLは、電波の伝搬経路におけるパスロスである。
パスロスPPLは、次式によって表される。
式(5)において、dは、1次利用者の送信機と1次利用者の受信機との距離、または2次利用者の送信機と1次利用者の受信機との距離である。また、fcは、電波の周波数である。
図30を参照して、判定手段16は、1次利用者の送信機と1次利用者の受信機との間の経路におけるパスロスPPL1と、2次利用者の送信機と1次利用者の受信機との間の経路におけるパスロスPPL2とを求める。そして、判定手段16は、1次利用者の送信電力Pt1に基づいてSINR_1=Pt1-PPL1を演算し、2次利用者の送信電力Pt2に基づいてSINR_2=Pt2-PPL2を演算する。その後、判定手段16は、ΔSINR=SINR_1-SINR_2を演算し、その演算したΔSINRが許容SINR以下であるとき、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉が無いと判定する(即ち、1次利用者と2次利用者との共用が可能であると判定する)。一方、判定手段16は、ΔSINRが許容SINRよりも大きいとき、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉が有ると判定する。
この場合、1次利用者の送信電力Pt_1は、既知であり、2次利用者の送信電力Pt_2は、サンプルデータDSPL_iの送信情報INFOT_iに含められて通信通信装置1Cへ送信されるものとする。
なお、パスロスPPLとは、送信機から放射された電波が距離や周波数によって減衰する度合いを言う。そして、送受信機間の距離が離れるに従って減衰量が大きくなり、周波数が高くなるに従って減衰量が大きくなる。
1次利用者の送信電力が20dBmであり、2次利用者の送信電力が10dBmである場合について受信SINRを算出する例について説明する。判定手段16は、2個の1次利用者の通信範囲の中心(=重心点[xG,yG])を記憶手段12に記憶された1次利用者の通信範囲から検出することによって、1次利用者の送信機および1次利用者の受信機の位置を検出する。
そして、判定手段16は、その検出した1次利用者の送信機および1次利用者の受信機の位置に基づいて1次利用者の送信機と1次利用者の受信機との距離d1を演算し、その演算した距離d1と、周波数fc(=共用周波数)とを式(5)に代入してパスロスPPL1(=80dB)を算出する。
また、判定手段16は、2次利用者の送信機の位置(送信元の端末装置IDiの位置)をサンプルデータDSPL_iから検出し、その検出した2次利用者の送信機の位置と1次利用者の受信機との距離d2を演算する。そして、判定手段16は、その演算した距離d2と周波数fc(=共用周波数)とを式(5)に代入してパスロスPPL2(=90dB)を算出する。
その後、判定手段16は、20dBmの送信電力および80dBのパスロスPPL1を式(4)に代入して、1次利用者の受信機における1次利用者の送信機からの電波のSINR_1=20-80=-60dBmを算出する。また、判定手段16は、10dBmの送信電力および90dBのパスロスPPL2を式(4)に代入して、1次利用者の受信機における2次利用者の送信機からの電波のSINR_2=10-90=-80dBmを算出する。更に、判定手段16は、ΔSINR=SINR_1-SINR_2=-60-(-80)=20dBを演算することによって1次利用者の受信機における受信SINRを算出する。
そうすると、判定手段16は、その算出した受信SINRが許容SINR以下であるとき、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉が無いと判定し、受信SINRが許容SINRよりも大きいとき、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉が有ると判定する。
そして、判定手段16は、干渉の有無の判定結果を設定手段17へ出力する。設定手段17は、干渉の有無の判定結果を判定手段16から受け、その受けた判定結果が干渉有りのとき、ΔSINRが許容SINRよりも小さくなるように2次利用者の通信条件(送信電力等)を設定する。
また、設定手段17は、通信方式または変調方式がCDMA変調であるとき、2次利用者の送信電力を1次利用者の送信電力よりも高く設定してもよい。CDMA変調は、干渉波に対して耐性の高い変調方式であり、一般的には、1次利用者と2次利用者の電力比が逆転しても通信が可能であるからである。
図31は、受信SINRを用いたときの図29のステップS63の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
図31を参照して、図29のステップS62の後、判定手段16は、記憶手段12からサンプルデータDSPL_iを読み出し、その読み出したサンプルデータDSPL_iに基づいて、1次利用者の送信機の位置と、1次利用者の受信機の位置と、2次利用者の送信機の位置とを検出する(ステップS631)。ここでは、1次利用者同士で電波を送受信するとともに1次利用者の受信機に電波が届く範囲に2次利用者の送信機が存在する状況を想定する。従って、電波を送受信する1次利用者の2台の通信機器のうち、一方が1次利用者の送信機であり、他方が1次利用者の受信機である。また、電波を送信する端末装置が2次利用者の送信機である。判定手段16は、サンプルデータDSPL_iの2つの受信情報INFOR_j,INFOR_j’において、2つの送信元の識別情報IDSRCi_j,IDSRCi_j’が共に1次利用者である端末装置(識別情報IDiを有する端末装置)の位置情報[xi,yi]を2次利用者の送信機の位置として検出する。また、判定手段16は、2つの送信元の識別情報IDSRCi_j,IDSRCi_j’の一方の識別情報を有する1次利用者の補正通信範囲の中心位置を1次利用者の送信機の位置として検出し、2つの送信元の識別情報IDSRCi_j,IDSRCi_j’の他方の識別情報を有する1次利用者の補正通信範囲の中心位置を1次利用者の受信機の位置として検出する。
ステップS631の後、判定手段16は、1次利用者の送信機の位置と1次利用者の受信機の位置とに基づいて1次利用者の送信機と1次利用者の受信機との距離d1を算出し、2次利用者の送信機の位置と1次利用者の受信機の位置とに基づいて2次利用者の送信機と1次利用者の受信機との距離d2を算出を算出する(ステップS632)。
その後、判定手段16は、距離d1に基づいて1次利用者の送信機から1次利用者の受信機への電波の伝搬経路におけるパスロスPPL1を式(5)によって算出する(ステップS633)。また、判定手段16は、距離d2に基づいて2次利用者の送信機から1次利用者の受信機への電波の伝搬経路におけるパスロスPPL2を式(5)によって算出する(ステップS634)。
そうすると、判定手段16は、1次利用者の送信電力およびパスロスPPL1に基づいて式(4)によって1次利用者の受信機における受信電力Prcv1を算出し(ステップS635)、2次利用者の送信電力およびパスロスPPL2に基づいて式(4)によって1次利用者の受信機における受信電力Prcv2を算出する(ステップS636)。
そして、判定手段16は、SINR=Prcv1-Prcv2によって1次利用者の受信機におけるSINRprimaryを算出する(ステップS637)。
その後、判定手段16は、SINRprimaryが許容SINR以下であるか否かを判定する(ステップS638)。
ステップS638において、SINRprimaryが許容SINR以下でないと判定されたとき、判定手段16は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉が有ると判定する(ステップS639)。
一方、ステップS638において、SINRprimaryが許容SINR以下であると判定されたとき、判定手段16は、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉が無いと判定する(ステップS640)。
そして、ステップS639またはステップS640の後、判定手段16は、全ての2次利用者について干渉の有無を判定したか否かを判定する(ステップS641)。
ステップS641において、全ての2次利用者について干渉の有無を判定していないと判定されたとき、判定手段16は、別の2次利用者の送信機の位置を検出する(ステップS642)。そして、一連の動作は、ステップS632へ移行する。その後、ステップS641において、全ての2次利用者について干渉の有無を判定したと判定されるまで、ステップS632~ステップS642が繰り返し実行される。
そして、ステップS641において、全ての2次利用者について干渉の有無を判定したと判定されると、判定手段16は、全ての1次利用者について干渉の有無を判定したか否かを判定する(ステップS643)。
ステップS643において、全ての1次利用者について干渉の有無を判定していないと判定されたとき、判定手段16は、別の1次利用者の送信機および受信機の位置を検出する(ステップS644)。そして、一連の動作は、ステップS632へ移行する。その後、ステップS643において、全ての1次利用者について干渉の有無を判定したと判定されるまで、ステップS632~ステップS644が繰り返し実行される。
そして、ステップS643において、全ての1次利用者について干渉の有無を判定したと判定されると、判定手段16は、全ての1次利用者および2次利用者について干渉の有無の判定結果を作成し(ステップS645)、その作成した判定結果を設定手段17へ出力する。その後、一連の動作は、図29のステップS64へ移行する。
このように、判定手段16は、受信SINRを用いて1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉の有無を判定し、その判定結果を設定手段17へ出力する。
図32は、1次利用者および2次利用者の通信範囲の別の形状を示す図である。上記においては、1次利用者および2次利用者の通信範囲または補正通信範囲は、円形形状を有すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、1次利用者および2次利用者の通信範囲または補正通信範囲は、楕円形状であってもよく(図32の(a)参照)、四角形および五角形等の多角形であってもよく(図32の(b),(c)参照)、一般的には、任意の形状であってもよい(図33の(d)参照)。
図33は、1次利用者および2次利用者の通信範囲(または補正通信範囲)が任意の形状を有する場合における1次利用者および2次利用者の通信範囲(または補正通信範囲)を表す指標を説明するための図である。なお、図33においては、1次利用者および2次利用者の通信範囲を表す指標について説明するが、1次利用者および2次利用者の補正通信範囲を表す指標についても同様である。
図33を参照して、1次利用者の通信範囲CM_REG1および2次利用者の通信範囲CM_REG2は、任意の形状を有する。1次利用者の通信範囲CM_REG1は、中心O1を有し、2次利用者の通信範囲CM_REG2は、中心O2を有する。
そして、中心O1と中心O2とを結ぶ線分Lineの長さが距離Dとして求められる。また、線分Lineと平行であり、かつ、中心O1から中心O2へ向かう方向において中心O1から、1次利用者の通信範囲CM_REG1を規定する線までの距離d1を1次利用者の通信範囲CM_REG1を表す指標とする。
また、線分Lineと平行であり、かつ、中心O2から中心O1へ向かう方向において中心O2から、2次利用者の通信範囲CM_REG2を規定する線までの距離d2を2次利用者の通信範囲CM_REG2を表す指標とする。
そして、指標d1,d2は、それぞれ、上述した半径R1,r1に代えて用いられ、図29に示すフローチャートにおいて、2次利用者の通信条件の設定、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉の有無の判定、および2次利用者の通信条件の調停に用いられる。
なお、1次利用者の通信範囲CM_REG1および2次利用者の通信範囲CM_REG2は、相互に同じ形状を有していてもよく、相互に異なる形状を有していてもよい。
この発明の実施の形態においては、通信推定装置1の動作は、ソフトウェアによって実行されてもよい。この場合、通信推定装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備える。
ROMは、図8(図9から図11に示すフローチャートを含む)に示すフローチャートからなるプログラムProg_A、または図12に示すフローチャートからなるプログラムProg_Bを格納する。そして、CPUは、プログラムProg_A,Prog_BのいずれかをROMから読み出し、その読み出したプログラムProg_A,Prog_Bのいずれかを実行して1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式を推定する。RAMは、データベースDB1およびサンプルデータDSPL_i等を一時的に記憶する。
また、この発明の実施の形態においては、通信推定装置1Aの動作は、ソフトウェアによって実行されてもよい。この場合、通信推定装置1Aは、CPU、ROMおよびRAMを備える。
ROMは、図14(図15に示すフローチャートを含む)に示すフローチャートからなるプログラムProg_C、または図16に示すフローチャートからなるプログラムProg_D、または図17に示すフローチャートからなるプログラムProg_Eを格納する。そして、CPUは、プログラムProg_C,Prog_D,Prog_EのいずれかをROMから読み出し、その読み出したプログラムProg_C,Prog_D,Prog_Eのいずれかを実行して波源位置を推定する。RAMは、平均(xA,yA)、(ΔxA,ΔyA)、信号STDD、信号SA、信号SF、信号SOF、信号SCD、信号SP、信号STC、サンプルデータDSPL_iおよび既に推定された波源位置[xG,yG]等を一時的に記憶する。
更に、この発明の実施の形態においては、通信推定装置1Bの動作は、ソフトウェアによって実行されてもよい。この場合、通信推定装置1Bは、CPU、ROMおよびRAMを備える。
ROMは、図19に示すフローチャートからなるプログラムProg_Fを格納する。そして、CPUは、プログラムProg_FをROMから読み出し、その読み出したプログラムProg_Fを実行して1次利用者の通信範囲および2次利用者の通信範囲を推定する。RAMは、サンプルデータDSPL_i、推定された1次利用者の位置、および受信電力が設定値になる距離当を一時的に記憶する。
更に、この発明の実施の形態においては、通信推定装置1Cの動作は、ソフトウェアによって実行されてもよい。この場合、通信推定装置1Cは、CPU、ROMおよびRAMを備える。
ROMは、図29に示すフローチャートからなるプログラムProg_G、または図29に示すフローチャート(図31に示すフローチャートを含む)からなるプログラムProg_Hを格納する。そして、CPUは、プログラムProg_F,Prog_HのいずれかをROMから読み出し、その読み出したプログラムProg_F,Prog_Hのいずれかを実行して1次利用者の通信範囲および2次利用者の通信範囲をそれぞれ1次利用者の補正通信範囲および2次利用者の補正通信範囲に補正し、その補正した1次利用者の補正通信範囲および2次利用者の補正通信範囲に基づいて、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉の有無を判定するとともに、その干渉の有無の判定結果に応じて、1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信とが干渉しないように2次利用者の通信条件を設定し、または1次利用者の無線通信と2次利用者の無線通信との干渉を回避するように2次利用者の通信条件を調停する。RAMは、半径R1,r1(指標d1,d2)、受信電力RSSIi、距離Dおよび通信条件等を一時的に記憶する。
上述した実施の形態によれば、この発明の実施の形態による通信推定装置は、受信電力、受信信号、受信信号の周波数および送信元の識別情報を含む一定時間におけるサンプルデータを複数の端末装置から受信する受信手段と、受信手段によって受信された複数の端末装置の複数のサンプルデータを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された複数のサンプルデータに基づいて、1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式を推定する第1の推定処理を実行する通信推定手段とを備えていればよい。
受信電力、受信信号、受信信号の周波数および送信元の識別情報を含む一定時間におけるサンプルデータを複数の端末装置から取得すれば、複数のサンプルデータに基づいて第1の推定処理を実行することによって1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式を推定できるからである。
また、この発明の実施の形態によるプログラムは、受信手段が、受信電力、受信信号、受信信号の周波数および送信元の識別情報を含む一定時間におけるサンプルデータを複数の端末装置から受信する第1のステップと、記憶手段が、受信手段によって受信された複数の端末装置の複数のサンプルデータを記憶する第2のステップと、通信推定手段が、記憶手段に記憶された複数のサンプルデータに基づいて、1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式を推定する第1の推定処理を実行する第3のステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムであればよい。
第1から第3のステップをコンピュータに実行させれば、複数のサンプルデータに基づいて1次利用者および2次利用者の通信方式または変調方式を推定できるからである。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。