JP7130537B2 - 嫌気処理システム - Google Patents
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Description
一方、油脂含有排水の生物処理においては、油脂のような水難溶性物質は微生物で分解され難く、反応が進行しにくい。また、反応の過程で生成する高級脂肪酸等の遊離脂肪酸は、微生物の代謝を阻害することが知られている。したがって、油脂含有排水の生物処理においては、排水中の油脂を低減させることが必要となる。
すなわち、本発明は、以下の嫌気処理システムである。
本発明の嫌気処理システムによれば、油脂含有排水に対して、紫外線を照射することで、油脂の分解・可溶化を促進することができる。また、分解・可溶化した油脂は、微生物の作用によってバイオガスを生成する際のバイオガス炭素源として利用することが可能となるという効果も奏する。
この特徴によれば、油脂含有排水に対する紫外線照射を嫌気処理槽内で行うことができる。これにより、嫌気処理槽内での油脂の分解・可溶化を可能とし、別途油脂分離装置を設ける必要がなくなる。また、嫌気処理槽から油脂を移送する必要がなくなるため、配管の閉塞も抑制することが可能となる。
この特徴によれば、照射部の運転を油脂の蓄積状態に応じた制御とすることができ、紫外線の照射による嫌気処理槽内の微生物への影響を最小限に抑え、かつ油脂の分解・可溶化を行うことが可能となる。
この特徴によれば、紫外線照射領域と嫌気処理領域を区画することで、紫外線の照射による嫌気処理槽内の微生物への影響を最小限に抑え、かつ油脂の分解・可溶化を行うことが可能となる。
この特徴によれば、嫌気処理前に油脂含有排水に紫外線を照射することで、油脂の分解・可溶化を進行させた状態で嫌気処理を行うことが可能となる。また、嫌気処理槽内での紫外線の照射量を低減させることができるため、嫌気処理槽内の微生物への影響を最小限に抑えることが可能となる。
図1は、本発明の第1の実施態様の嫌気処理システムの概略説明図である。
本発明に係る嫌気処理システム1aは、図1に示すように、油脂含有排水WOを導入して嫌気処理を行う嫌気処理槽2と、紫外線を照射する照射部3を備えるものである。また、嫌気処理槽2に対して油脂含有排水WOを導入するための導入配管であるラインL1と、嫌気処理槽2から排出される処理水W1を系外に排出するための排出配管であるラインL2を有している。なお、図1の矢印は水の流れを示すものである。
嫌気処理槽2でメタン発酵を行う場合、嫌気処理槽2内部に収容する酸生成菌により、油脂含有排水WO中の糖、蛋白質及び油分などの固体や高分子有機物を分解して、単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸を生成する酸生成工程と、嫌気処理槽2内部に収容するメタン生成菌により、油脂含有排水WO中の単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸等からメタンを生成するメタン生成工程により、メタン発酵が進行する。
なお、本実施態様における嫌気処理槽2は、嫌気処理を行う反応槽であればよい。したがって、嫌気処理槽2は、酸生成工程とメタン生成工程を1つの槽内で行う反応槽であってもよく、酸生成工程とメタン生成工程を別々の槽で行う複数の反応槽からなるものであってもよい。さらに、酸生成工程またはメタン生成工程のいずれか1つを行う反応槽であってもよい。
なお、本実施態様において、嫌気処理として酸生成菌及びメタン生成菌によるメタン発酵について説明したが、これに限定されるものではなく、他の微生物による嫌気処理を行うものとしてもよい。
本実施態様においては、図1に示すように、嫌気処理槽2内に照射部3を設置した場合について説明する。
また、照射部3を嫌気処理槽2の天井側に設ける場合、嫌気処理槽2の天井側から水面に向けて紫外線を効率的に照射するように、例えば、枠体などのように、紫外線の照射方向を制限するための構造を設けるものとしてもよい。
また、特に嫌気処理としてメタン発酵を行う場合、嫌気処理槽2内で分解・可溶化された油脂成分を、そのままメタンの炭素源としても利用することが可能となる。これにより、嫌気処理の効率を向上させることとともに、有用なバイオガスであるメタンガスの回収効率も向上させることができるという効果を奏する。
図2は、本発明の第2の実施態様の嫌気処理システム1bの概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1bは、図2に示すように、第1の実施態様の嫌気処理システム1aに加えて、油脂を検知する検知部4を備えるものである。また、第1の実施態様における照射部3に、紫外線照射装置31の運転制御を行う運転制御部32をさらに設け、検知部4の検知結果に応じた紫外線照射装置31の運転制御を可能とするものである。なお、図2中の一点鎖線の矢印は、制御可能に接続されていることを示している。
なお、本実施態様における嫌気処理システム1bの構成のうち、第1の実施態様の嫌気処理システム1aの構成と同じものについては、説明を省略する。
計測器41は、嫌気処理槽2内の水面に対する計測を行うように設けられている。また、判断部42は、計測器41の計測結果から、嫌気処理槽2内の水面に蓄積物(油脂)があることを判断するものである。
超音波センサを用いた場合、図2に示すように、センサから本来の水面までの距離H1がセンサから蓄積した油脂までの距離H2へ変動することを検知するように設けるものとする。この際、嫌気処理槽2内の水面に対して非接触で計測が可能である。また、超音波センサを用いる場合、嫌気処理槽2の天井側から水面に向かって測定するものを設けるだけでは嫌気処理槽2内の水面変動による影響を受ける。したがって、嫌気処理槽2内の水中にも超音波センサを設け、センサから水面までの距離H3を計測する。そして、判断部42においてそれぞれの超音波センサによる計測距離の和の変動、すなわち油脂の蓄積がない場合の値(距離H1+距離H3)と、油脂の蓄積がある場合の値(距離H2+距離H3)の変動に基づく判断を行い、油脂を検知するものとしてもよい。特に、超音波センサは嫌気処理槽2内の水質(色、油脂の分散等)による計測への影響が少ないため、2カ所(嫌気処理槽2の天井側及び水中)に設け、油脂を検知することが好ましい。
また、光センサを用いた場合、嫌気処理槽2の上下方向に光を通し、蓄積した油脂による光の遮断を検知するように設けるものとする。この際、水面変動の影響を受けない計測が可能であるとともに、操作が容易であるという利点がある。
また、カメラを用いた場合、嫌気処理槽2内の水面における画像の変化を検知するように設けるものとする。この際、嫌気処理槽2内の水面に係る2次元データを取得可能であり、油脂の蓄積状態の詳細に係る情報が得られるという利点がある。
なお、運転制御部32による運転制御の内容については特に限定されない。紫外線照射装置31の運転のオンオフ操作であってもよく、紫外線照射装置31による紫外線の照射強度、照射波長を制御するものであってもよい。
嫌気処理槽2において、油脂含有排水WO中の油脂に対しては、油脂分解能を有する油脂分解菌が収容されることで油脂分解が進行する。しかし、油脂分解菌による油脂分解及び油脂分解菌の増殖自体が遅いことから、分解し切れない余剰油脂SOが生じることがある。
余剰油脂SOのうち、固形成分として析出したものは、水よりも比重が小さいため、嫌気処理槽2内を浮上する。また、余剰油脂SOは、嫌気処理槽2内での生物処理に伴って発生する気体(ガス)が付着することで、さらに浮力が増して、嫌気処理槽2内を浮上し、嫌気処理槽2の上部(水面)に蓄積する。このように嫌気処理槽2の上部に蓄積した余剰油脂SOには、油脂分解菌などの微生物が接触できず、油脂分解が進まなくなる。
図3は、本発明の第3の実施態様の嫌気処理システム1cの概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1cは、図3に示すように、第1の実施態様の嫌気処理システム1aに加えて、紫外線が照射される紫外線照射領域A1と、嫌気処理が行われる嫌気処理領域A2の間に、仕切り領域5を備えるものである。
なお、本実施態様における嫌気処理システム1cの構成のうち、第1の実施態様の嫌気処理システム1aの構成と同じものについては、説明を省略する。
また、本実施態様における仕切り領域5は、仕切り領域5を境として微生物に対する紫外線の影響を低減させることができればよい。したがって、仕切り板51aは紫外線を完全に遮蔽、反射又は吸収するものでなくてもよい。
ここで、紫外線照射領域A1では、紫外線による油脂の分解・可溶化が進行し、嫌気処理領域A2は、微生物が紫外線の影響を受けることなく嫌気処理を進行することができる。
なお、仕切り板51aに油脂が付着した場合であっても、紫外線照射領域A1側においては紫外線照射による油脂の分解・可溶化が進行し、嫌気処理領域A2側においては嫌気処理槽2内に存在する油脂分解菌による油脂の分解が進行するため、清掃等のメンテナンス頻度を少なくすることが可能である。
図4は、本実施態様における嫌気処理システムにおける仕切り領域の他の態様を示す概略説明図である。例えば、図4(A)に示すように、仕切り領域5として、嫌気処理槽2を左右に分けるとともに、水中に設けられた部分の途中から傾斜するように形成された仕切り板51bと、嫌気性処理槽2の壁面から上方に傾斜して設けられる仕切り板51cを備えるものとし、仕切り板51b及び仕切り板51cの傾斜面により浮上した油脂を仕切り板51bの片側に集積するようにするものとしてもよい。このとき、油脂が集積する側に照射部3を設けるものとする。これにより、図4(A)中の左側が紫外線照射領域A1となり、右側が嫌気処理領域A2となる。また、図4(B)に示すように、紫外線照射装置31を水中に設ける場合、仕切り領域5として、紫外線照射装置31に近接して嫌気処理槽2の水中に仕切り板51dを設けたものとしてもよい。これにより、仕切り板51dの周辺が紫外線照射領域A1となり、それ以外が嫌気処理領域A2となる。
図5は、本発明の第4の実施態様の嫌気処理システム1dの概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1dは、図5に示すように、第3の実施態様の嫌気処理システム1cにおける仕切り領域5として、仕切り板51a~51dに代えて油脂吸着層52を備えるものである。また、照射部3は、油脂吸着層52の近傍に設けるものとする。
なお、本実施態様における嫌気処理システム1dの構成のうち、第3の実施態様の嫌気処理システム1cの構成と同じものについては、説明を省略する。
なお、本実施態様においては油脂吸着層52に対して紫外線を照射するものであるが、油脂吸着層52には直接紫外線が照射される範囲と、紫外線が照射されないか、あるいは紫外線の照射量が弱い範囲が存在するため、油脂吸着層52に保持された全ての微生物に対して紫外線照射による影響があるものではないと考えられる。また、照射部3から照射される紫外線の波長を特定の波長とすることで、微生物に対する影響を低減させるものとしてもよい。
図6は、本発明の第5の実施態様の嫌気処理システム1eの概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1eは、図6に示すように、嫌気処理槽2内の縦方向の距離を延伸した構造とすることで、仕切り領域5として、紫外線の照射強度が異なる空間領域53を形成するものである。これにより、第3の実施態様の嫌気処理システム1cや第4の実施態様における嫌気処理システム1dにおける仕切り板51a~51dや油脂吸着層52などのように、仕切り領域5を形成するための構造物を設ける必要がなくなる。また、照射部3は、嫌気処理槽2の天井側に設けるものとする。
なお、本実施態様における嫌気処理システム1eの構成のうち、第3の実施態様の嫌気処理システム1cの構成と同じものについては、説明を省略する。
図7は、本発明の第6の実施態様の嫌気処理システム1fの概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1fは、図7に示すように、第3の実施態様の嫌気処理システム1cにおける仕切り領域5として、嫌気処理槽2に設けられた循環流路54により形成される領域からなる。また、照射部3は、嫌気処理槽2の天井側に設けるものとする。
なお、本実施態様における嫌気処理システム1fの構成のうち、第3の実施態様の嫌気処理システム1cの構成と同じものについては、説明を省略する。
図8は、本発明の第7の実施態様の嫌気処理システム1gの概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1gは、図8に示すように、第1の実施態様の嫌気処理システム1aにおける照射部3を、嫌気処理槽2に油脂含有排水WOを導入する導入配管であるラインL1上に設けるものである。
なお、本実施態様における嫌気処理システム1gの構成のうち、第1の実施態様の嫌気処理システム1aの構成と同じものについては、説明を省略する。
なお、本実施態様においては、図8に示すように、ラインL1上のみに照射部3を設けるものに限定されない。例えば、ラインL1上及び嫌気処理槽2内の両方に照射部3を設けるものとしてもよい。これにより、油脂含有排水WO中の油脂の分解・可溶化を一層促進させることが可能となる。
図9は、本発明の第8の実施態様の嫌気処理システム1hの概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1hは、図9に示すように、第1の実施態様の嫌気処理システム1aに加えて、嫌気処理槽2内に凝集剤61を添加する凝集剤添加部6と微細気泡供給部7を備えるものである。また、照射部3は、嫌気処理槽2の天井側に設けるものとする。
本実施態様における嫌気処理システム1hでは、凝集剤61を添加することで油脂含有排水WOの油脂を含むフロックFを形成させ、微細気泡供給部7よりフロックFを嫌気処理槽2内の水面に浮上させる。また、照射部3により嫌気処理槽2内の水面に浮上したフロックFに対して紫外線を照射することで、油脂の分解・可溶化を促進するものである。
なお、本実施態様における嫌気処理システム1hの構成のうち、第1の実施態様の嫌気処理システム1aの構成と同じものについては、説明を省略する。
なお、嫌気処理槽2もしくは貯留槽に凝集剤61を添加する場合、油脂含有排水WOと凝集剤61の混合のために撹拌機構を設けるものとしてもよい(不図示)。撹拌機構の具体例としては、例えば、ラインL1に設置したインラインミキサーや、貯留槽内に設けられる撹拌機等が挙げられる。
また、本実施態様における嫌気処理システム1hは、油脂含有排水WOにおける油脂成分量が比較的少なく、余剰油脂が生じない場合においても、油脂の分解・可溶化を効率的に行うことが可能となる。
これにより、嫌気処理槽2内の水面に浮上したフロックFは照射部3により分解・可溶化され、仕切り板51aにより保持されたフロックFは嫌気処理槽2内に維持されることで油脂分解菌による油脂分解が進行する。
また、本実施態様における嫌気処理システム1hにおいて、紫外線照射領域A1と嫌気処理領域A2を区画する仕切り領域5(仕切り板51a)を形成することで、フロックFを仕切り領域5に保持することを可能とする。これにより、嫌気処理槽2の水面に浮上したフロックFは照射部3により油脂の分解・可溶化が促進し、仕切り領域5に保持されたフロックFは嫌気処理槽2内の油脂分解菌による油脂の分解を進行させることができる。さらに、凝集剤61とともに油脂分解菌を添加することでフロックFと油脂分解菌を一体化させ、仕切り領域5に保持されたフロックFに対し油脂分解菌による油脂の分解をより一層促進させることが可能となる。
例えば、第2の実施態様の嫌気処理システムにおける検知部を第3~8の実施態様の嫌気処理システムに組み合わせるものとしてもよい。これにより、分解・可溶化すべき油脂が存在するときにのみ照射部を運転することができ、微生物に対する影響を最小限に抑えることができるようになる。
また、例えば、第3~6の実施態様の嫌気処理システムに示した仕切り領域を複数組み合わせるものとしてもよい。これにより、紫外線照射領域と嫌気処理領域を確実に区画し、紫外線の照射による微生物に対する影響をより一層抑制することが可能となる。
Claims (5)
- 油脂含有排水を嫌気処理する嫌気処理システムにおいて、
前記油脂含有排水に対して紫外線を照射する照射部と、
前記嫌気処理槽内の油脂を検知する検知部と、を備え、
前記検知部により油脂が検知された際に、前記照射部を運転することを特徴とする、嫌気処理システム。 - 前記照射部は、嫌気処理槽内に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の嫌気処理システム。
- 前記嫌気処理槽内には、前記照射部によって紫外線が照射される紫外線照射領域と、嫌気処理が行われる嫌気処理領域との間に、前記紫外線照射領域と前記嫌気処理領域を仕切る仕切り領域が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の嫌気処理システム。
- 前記照射部は、前記嫌気処理槽に前記油脂含有排水を導入する導入配管に対して紫外線を照射するように設けられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の嫌気処理システム。
- 油脂含有排水を嫌気処理する嫌気処理システムにおいて、
前記油脂含有排水に対して紫外線を照射する照射部を備え、
前記照射部は、嫌気処理槽内に設けられ、
前記嫌気処理槽内には、水中に設けられた部分の途中から傾斜するように形成された第1の仕切り板と、前記嫌気処理槽の壁面から上方に傾斜するように形成された第2の仕切り板を備えることを特徴とする、嫌気処理システム。
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