以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。尚、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
[転落検知システム100]
図1に示すように、本発明の実施形態に係る転落検知システム100は、転落検知装置10と、検知センサ20とを備えている。検知センサ20は、本発明の検出部の一例である。転落検知装置10と検知センサ20とは、有線LAN又は無線LANなどのネットワークを介して互いに通信可能に接続されている。
図2に示すように、検知センサ20は、例えば駅のプラットホームPF1の線路側の側壁に設置され、プラットホームPF1に対向するプラットホームPF2に向けてレーザ光LB(レーザビーム)を水平方向に出射して、所定角度の範囲に含まれる空間を走査する。また検知センサ20は、プラットホームPF1と、プラットホームPF1側に停止する車両200との隙間に転落して宙吊り状態となった転落者を検知できるように、線路から所定の高さの位置に設置される。また図1に示すように、検知センサ20は、プラットホームPF1の長手方向に沿って複数並んで設置される。図1では、2個の検知センサ20-1,20-2を例示している。以下では、2個の検知センサ20-1,20-2を区別しない場合は、「検知センサ20」と称す。
尚、プラットホームPF2側に車両200が停止する場合には、検知センサ20は、プラットホームPF2にも設置される。プラットホームPF1側の検知センサ20と、プラットホームPF2側の検知センサ20とは、線路に対して対称となる位置に設置されてもよいし、非対称となる位置に設置されてもよい。また図1では、4両の車両200を例示している。駅の利用客は、A方向に走行する車両200が駅に停止すると、プラットホームPF1を利用して乗降する。また駅の利用客は、B方向に走行する車両(不図示)が駅に停止すると、プラットホームPF2を利用して乗降する。
転落検知装置10は、駅ごとに例えば駅務室に設置されてもよいし、各駅を集中管理する管理センタに設置されてもよい。転落検知装置10は、検知センサ20から取得する検出データに基づいて、駅のプラットホームと駅に停止中の車両200との隙間に転落した転落者を検知する。転落検知装置10は、転落者を検知した場合、駅係員、車両200の乗務員などに、転落者を検知したことを報知する。
以下、転落検知装置10及び検知センサ20の具体的な構成について説明する。
[検知センサ20]
検知センサ20は、所定角度θ(図1参照)の範囲をレーザ光により走査して、走査角度と当該走査角度に対応する対象物までの距離とを検出する。尚、前記走査角度は、基準角度(例えば0度)に対するレーザ光の出射角度である。例えば、検知センサ20は、レーザ光を出射してから、当該レーザ光が対象物で反射されて検知センサ20の受光部(不図示)に戻ってくるまでの往復時間を計測することにより対象物までの距離を検出する。前記対象物には、車両200、プラットホーム等の構造物、プラットホームからの転落者及び落下物、線路に侵入した人及び動物、雪、草木などが含まれる。尚、車両200は、車輪、車体、連結部、駆動部、制御部など外部に露出した複数の構成部材で構成されている。検知センサ20は、車両200の前記各構成部材の側面にレーザ光を照射して、前記各構成部材までの距離を検出する。検知センサ20は、例えば、公知の二次元を走査する2Dレーザセンサを用いることができる。また、本発明の検知センサ20は、駅のプラットホームに既設の検知センサを用いることもできる。
検知センサ20は、例えば0度~190度の範囲において所定角度(例えば0.1667度)ごとにレーザ光を出射する。また、検知センサ20は、例えば、所定角度θの範囲に鉄道の車両2両分が含まれ、対向するプラットホームPF2までの距離を検出できる性能を有する。すなわち、図1に示すように、各検知センサ20は、所定角度θの範囲の走査エリアSAをレーザ光により走査する。尚、例えば車両200が10両の場合、検知センサ20はプラットホームPF1に5個設置される。複数の検知センサ20は、プラットホームPF1,PF2の下の線路上を隙間なく走査する。
検知センサ20-1は、所定の周期(例えば25Hz)で走査角度と当該走査角度に対応する距離とを検出し、検出した走査角度と距離とを含む検出データd1を転落検知装置10に送信する。同様に、検知センサ20-2は、所定の周期(例えば25Hz)で走査角度と当該走査角度に対応する距離とを検出し、検出した走査角度と距離とを含む検出データd2を転落検知装置10に送信する。
図3は、検知センサ20の走査角度と当該走査角度に対応するレーザ光の状態を模式的に示す図である。図3では、一例として、プラットホームPF1,PF2の一部が湾曲している場合を示している。また図3では、車両200が駅に存在していないときのレーザ光の状態を示している。図4には、車両200が駅に存在しないときに検知センサ20により検出された各走査角度に対応する距離の一例を示している。
例えば図3に示すように、検知センサ20は、走査角度D1~D10それぞれに対応するレーザ光LB1~LB10により、所定の周期で走査エリアSAを走査する。ここでは説明の便宜上、検知センサ20は、所定の時間に5回走査を行い、各走査において走査角度D1~D10のそれぞれに対応する10箇所の距離を算出するものとする。それぞれの走査が行われるタイミングを、走査時間ta1~ta5と表す(図4参照)。
走査エリアSAのうち走査角度D1に対応するレーザ光LB1の走査エリアには対象物が存在しないため、検知センサ20は、走査エリアSAの最大距離L10を検出する。同様に、走査エリアSAのうち走査角度D2,D9,D10のそれぞれに対応するレーザ光LB2,LB9,LB10の走査エリアには対象物が存在しないため、検知センサ20は、走査エリアSAの最大距離L20,L90,L100を検出する。
走査エリアSAのうち走査角度D3に対応するレーザ光LB3の走査エリアには対象物としてのプラットホームPF2が存在するため、検知センサ20は、検知センサ20からプラットホームPF2までの距離L30を検出する。同様に、走査エリアSAのうち走査角度D4~D8に対応するレーザ光LB4~LB8の走査エリアにはプラットホームPF2が存在するため、検知センサ20は、検知センサ20からプラットホームPF2までのそれぞれの距離L40,L50,L60,L70,L80を検出する。
走査時間ta1~ta5において走査エリアSAに対象物が存在しない場合、検知センサ20は、各走査時間ta1~ta5において、各走査角度D1~D10に対応する同一の距離L10~L100を検出する(図4参照)。
図5は、車両200がプラットホームPF1側に入線しているときの検知センサ20のレーザ光LB1~LB10の状態を模式的に示す図である。図6には、車両200が入線しているときに検知センサ20により検出された各走査角度D1~D10に対応する距離の一例を示している。尚、図5には、車両200が入線中のある時点である走査時間tb1におけるレーザ光LB1~LB10の状態を模式的に示している。
走査時間tb1では、走査エリアSAのうち走査角度D1,D2のそれぞれに対応するレーザ光LB1,LB2の走査エリアに車両200が進入する。このため、走査角度D1,D2では、検知センサ20から車両200までの距離が、距離L10,L20(図4参照)より短くなる。検知センサ20は、走査角度D1,D2に対応する距離として、検知センサ20から車両200までの距離L11,L21を検出する。
また走査時間tb1では、走査エリアSAのうち走査角度D3~D8のそれぞれに対応するレーザ光LB3~LB8の走査エリアに車両200が存在せずプラットホームPF2が存在するため、走査角度D3~D8では、検知センサ20は、検知センサ20からプラットホームPF2までのそれぞれの距離L40,L50,L60,L70,L80を検出する。
また走査時間tb1では、走査エリアSAのうち走査角度D9,D10のそれぞれに対応するレーザ光LB9,LB10の走査エリアに対象物が存在しないため、走査角度D9,D10では、検知センサ20は、走査エリアSAの最大距離L90,L100を検出する。
図7には、車両200が図5に示す位置からさらに移動した状態を示しており、入線中の走査時間tb2におけるレーザ光LB1~LB10の状態を模式的に示している。走査時間tb2では、走査エリアSAのうち走査角度D1~D4のそれぞれに対応するレーザ光LB1~LB4の走査エリアに車両200が進入する。このため、走査角度D1,D2では、検知センサ20から車両200までの距離が、距離L11,L21(図6参照)よりさらに短くなり、走査角度D3,D4では、検知センサ20から車両200までの距離が、距離L30,L40(図4参照)より短くなる。検知センサ20は、走査角度D1~D4に対応する距離として、検知センサ20から車両200までの距離L12,L22,L32,L42を検出する。尚、図6において、同じ記号は、距離が変化していないことを表し、異なる記号は、距離が変化していることを表している。
走査時間tb2では、走査角度D5~D10のそれぞれに対応するレーザ光LB5~LB10の走査エリアは図5に示す状態から変化しないため、検知センサ20は、走査角度D5~D10に対応する距離として、検知センサ20から車両200までの距離L50,L60,L70,L80,L90,L100を検出する。
図8には、車両200が図7に示す位置からさらに移動して駅に停止した状態を示している。図9には、車両200が停止して2両分が走査エリアSAに含まれる場合(図8参照)に、検知センサ20により検出された各走査角度D1~D10に対応する距離の一例を示している。車両200が走査時間tc1~tc5の期間、駅に停止している場合、各走査角度D1~D10のそれぞれにおいて、前記距離は一定となる。
図10には、停止していた車両200が動き出して駅から出線する場合に、検知センサ20により検出された各走査角度D1~D10に対応する距離の一例を示している。車両200が動き出して走査エリアSAから退出していくと、レーザ光LB1~LB10のそれぞれに対応する距離がこの順に長くなる。走査時間td5において、車両200全体が走査エリアSAから退出すると、レーザ光LB1~LB10のそれぞれに対応する距離は、車両200が駅に存在しない場合(図4参照)の距離L10~L100と同一になる。
このように、検知センサ20は、所定角度θの範囲の走査エリアSAの空間を、所定の周期で、走査角度D1~D10ごとに各レーザ光LB1~LB10により走査して距離を検出する。検知センサ20は、走査エリアSAを1回走査する度に、各走査角度D1~D10と各走査角度D1~D10に対応する距離とを含む検出データを転落検知装置10に送信する。図1に示すように、検知センサ20-1は、検出データd1を転落検知装置10に送信し、検知センサ20-2は、検出データd2を転落検知装置10に送信する。
[転落検知装置10]
図1に示すように、転落検知装置10は、制御部11、記憶部12、タイマ13、及び報知部14などを備えるコンピュータである。尚、転落検知装置10は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、転落検知装置10で実行される各種の処理は、一又は複数のプロセッサーによって分散して実行されてもよい。タイマ13は、時間を計測する。報知部14は、転落者を検知した場合など異常が発生した場合に、制御部11の指示に基づいて、駅係員、車両200の乗務員などに、転落者を検知したことを報知する。
記憶部12は、各種の情報を記憶するフラッシュメモリーなどの不揮発性の記憶部である。例えば、記憶部12には、制御部11に後述の転落検知処理(図16参照)を実行させるための転落検知プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記転落検知プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、転落検知装置10に電気的に接続されるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。また、記憶部12には、検知センサ20-1,20-2から受信する検出データd1,d2などが記憶される。検出データd1は、以下に示す検出データ121a~121dを含む。
図4は、記憶部12に記憶される検出データ121aの一例を示す図である。図4に示す検出データ121aは、車両200が駅に存在していない場合に検知センサ20により検出された各走査角度D1~D10のそれぞれに対応する距離の一例を示している。
図6は、記憶部12に記憶される検出データ121bの一例を示す図である。図6に示す検出データ121bは、車両200が駅に入線している場合に検知センサ20により検出された各走査角度D1~D10のそれぞれに対応する距離の一例を示している。
図9は、記憶部12に記憶される検出データ121cの一例を示す図である。図9に示す検出データ121cは、車両200が駅に停止している場合に検知センサ20により検出された各走査角度D1~D10のそれぞれに対応する距離の一例を示している。
図10は、記憶部12に記憶される検出データ121dの一例を示す図である。図10に示す検出データ121dは、駅から車両200が出線している場合に検知センサ20により検出された各走査角度D1~D10のそれぞれに対応する距離の一例を示している。
検出データ121a~121dは、例えば1つの検知センサ20-1において検出される検出結果を示している。記憶部12には、検知センサ20ごとに検出データが記憶される。
制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより転落検知装置10を制御する。
具体的には、図1に示すように、制御部11は、検出データ取得部111、合計距離算出部112(本発明の合計距離算出部の一例)、変化量算出部113(本発明の変化量算出部に相当)、車両状態判定部114(本発明の判定部の一例)、検知エリア設定部115(本発明の検知エリア設定部の一例)、転落検知部116(本発明の転落検知部の一例)、通知部117(本発明の通知部の一例)などの各処理部を含む。制御部11は、前記CPUで前記制御プログラムに従った各処理を実行することによって前記各処理部として機能する。また、制御部11に含まれる一部又は全部の処理部が電子回路で構成されていてもよい。尚、前記転落検知プログラムは、複数のプロセッサーを前記各処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
検出データ取得部111は、検知センサ20から送信される検出データを受信して、当該検出データに含まれる走査角度と距離とを取得する。例えば、検出データ取得部111は、車両200が駅に存在していない場合の走査時間ta1において検知センサ20が走査エリアSAを走査した場合(図3参照)に検知センサ20から送信される、各走査角度D1~D10と各走査角度D1~D10に対応する距離L10~L100とを含む検出データを受信して、走査角度D1~D10と距離L10~L100とを取得する。
また検出データ取得部111は、取得した走査角度D1~D10と距離L10~L100とを記憶部12に記憶する(図4参照)。検出データ取得部111は、検知センサ20から送信される検出データを受信する度に、当該検出データに含まれる走査角度と距離とを取得して、順次、記憶部12に記憶していく。尚、図4、図6、図9及び図10では、説明の便宜上、車両200の走行状態、すなわち、車両200が駅に存在しない状態、車両200が駅に入線している状態、車両200が駅に停止した状態、及び車両200が駅から出線している状態のそれぞれに応じて、検出データ121a~121dを区別して表しているが、検出データ取得部111は、検知センサ20から検出データを受信した順に時系列で走査角度と距離とを記憶部12に記憶していく。
合計距離算出部112は、所定角度θの範囲に含まれる複数の走査角度に対応する複数の距離を合算した合計距離を算出する。すなわち、合計距離算出部112は、検知センサ20が走査エリアSAを走査する度に、走査角度のそれぞれに対応する各距離を合算した合計距離を算出する。
例えば図4に示すように、合計距離算出部112は、所定角度θの範囲に含まれる走査角度D1~D10に対応する距離L10~L100を合算した合計距離を算出する。ここでは、走査時間ta1~ta5のそれぞれにおいて、距離L10~L100のそれぞれは走査エリアSAにおいて最大値となるため、前記合計距離を「Lmax」と表す。走査時間ta1~ta5のそれぞれの前記合計距離は同一となる。
また例えば図6に示すように、合計距離算出部112は、走査時間tb1~tb5のそれぞれにおいて、走査角度D1~D10に対応する距離を合算した合計距離を算出する。ここでは、走査時間tb1~tb5のそれぞれに対応する合計距離を「L1」,「L2」,「L3」,「L4」,「Lmin」と表す。尚、走査時間tb5において、距離L15~L105のそれぞれは走査エリアSAにおいて最小値となるため、前記合計距離を「Lmin」と表している。車両200が入線している場合の合計距離は、L1>L2>L3>L4>Lminの関係を満たす。
また例えば図9に示すように、合計距離算出部112は、走査時間tc1~tc5のそれぞれにおいて、走査角度D1~D10に対応する距離を合算した合計距離を算出する。ここでは、走査時間tc1~tc5のそれぞれにおいて、距離L10~L100のそれぞれは走査エリアSAにおいて最小値となるため、前記合計距離を「Lmin」と表す。走査時間tc1~tc5のそれぞれの前記合計距離は同一となる。
また例えば図10に示すように、合計距離算出部112は、走査時間td1~td5のそれぞれにおいて、走査角度D1~D10に対応する距離を合算した合計距離を算出する。ここでは、走査時間td1~td5のそれぞれに対応する合計距離を「L6」,「L7」,「L8」,「L9」,「Lmax」と表す。尚、走査時間td5において車両200が走査エリアSAから退出すると、距離L10~L100のそれぞれは走査エリアSAにおいて最大値となるため、前記合計距離を「Lmax」と表している。車両200が出線している場合の合計距離は、L6<L7<L8<L9<Lmaxの関係を満たす。
図11は、時間の経過に対する合計距離の変化を示すグラフである。図11では、例えば、車両200が駅に入線、停止、及び出線する場合に走査エリアSAにおいて算出される合計距離を示している。時間「0」~「T10」では合計距離「Lmax」は変化せず、時間「T10」~「T20」では合計距離は徐々に小さくなり、時間「T20」~「T30」では合計距離「Lmin」は変化せず、時間「T30」~「T40」では合計距離は徐々に大きくなり、時間「T40」以降では合計距離「Lmax」は変化しない特性となる。このグラフから、時間「0」~「T10」及び「T40」以降は、走査エリアSAに車両200が存在しない状態であることが分かる。また、車両200が入線する場合、車両200の速度が徐々に低下するため、合計距離は徐々に小さくなるように変化する。このため、時間「T10」~「T20」は、車両200が駅に入線している状態であることが分かる。また、車両200が駅に停止した場合、合計距離が最小となり、かつ合計距離が最小となる期間が所定期間継続する。このため、時間「T20」~「T30」は、車両200が駅に停止した状態であることが分かる。また、車両200が出線する場合、車両200の速度は徐々に上昇するため、合計距離は徐々に大きくなるように変化する。このため、時間「T30」~「T40」は、駅から車両200が出線している状態であることが分かる。
変化量算出部113は、所定の走査タイミングである第1走査タイミングの走査により合計距離算出部112により算出される第1合計距離と前記第1走査タイミングの次の第2走査タイミングの走査により合計距離算出部112により算出される第2合計距離との差の絶対値である変化量を算出する。
例えば、変化量算出部113は、走査時間tb1(図6参照)の走査により合計距離算出部112により算出される合計距離「L1」と、走査時間tb2の走査により合計距離算出部112により算出される合計距離「L2」との変化量「|L1-L2|」を算出する。図12には、走査時間tb1~tb5の走査により合計距離算出部112により算出される合計距離に基づいて算出される変化量121eを示している。また図13には、走査時間tc1~tc5(図9参照)の走査により合計距離算出部112により算出される合計距離に基づいて算出される変化量121fを示している。図13では、合計距離算出部112により算出される合計距離に変化がないため、変化量算出部113は、変化量「0」を算出する。ここでは、一例として走査時間tb1~tb5,tc1~tc5において算出される変化量121e,121fを示したが、変化量算出部113は、走査時間ta1~ta5,td1~td5においても同様に変化量を算出する。変化量算出部113は、算出した変化量121e,121fを記憶部12に記憶する。
車両状態判定部114は、検知センサ20により検出される走査角度D1~D10と距離とに基づいて、車両200の走行状態を判定する。具体的には、車両状態判定部114は、走査角度D1~D10と距離とに基づいて、車両200が駅に存在しない状態、車両200が駅に入線している状態、車両200が駅に停止した状態、及び車両200が駅から出線している状態の何れの状態であるかを判定する。
例えば、車両状態判定部114は、合計距離算出部112により算出される合計距離が第1閾値を超える場合に、車両200が走査エリアSA又は駅に存在しない状態(図3参照)であると判定する。第1閾値は、例えば、走査エリアSAに車両200が含まれない場合に算出される合計距離より小さく、かつ当該合計距離に近い値に設定される。例えば前記合計距離が図4に示す結果となる場合(図11の時間「0」~「T10」参照)、車両状態判定部114は、走査時間ta1~ta5の期間において、走査エリアSAに車両200が存在していないと判定する。また、プラットホームPF1に設置された全ての検知センサ20において、合計距離が第1閾値を超える場合に、車両状態判定部114は、車両200が駅に存在していないと判定する。
また例えば、車両状態判定部114は、合計距離算出部112により算出される合計距離が第1閾値以下であって、かつ、変化量算出部113により算出される変化量が第2閾値を超える場合に、車両200が駅に入線又は出線している状態(図5及び図7参照)であると判定する。第2閾値は、例えば「0」より大きい値、又は、車両200が停止する直前の走行状態であるときの変化量より大きい値に設定される。例えば前記合計距離が図6又は図10に示す結果となる場合(図11の時間「T10」~「T20」,「T30」~「T40」参照)、車両状態判定部114は、車両200が駅に入線又は出線している状態であると判定する。尚、プラットホームPF1に設置された全ての検知センサ20のうち、少なくとも、車両200を最初に検知する検知センサ(図1では検知センサ20-1)において、前記条件を満たす場合に、車両状態判定部114は、車両200が駅に入線している状態であると判定してもよい。また、前記全ての検知センサ20のうち、少なくとも、何れか1つの検知センサ20において、前記条件を満たす場合に、車両状態判定部114は、車両200が駅から出線している状態であると判定してもよい。
また車両状態判定部114は、前記合計距離の変化率、すなわち図11に示すグラフにおける曲線の傾きが所定値より大きい場合に、車両200が駅に入線又は出線している状態であると判定してもよい。また車両状態判定部114は、曲線の傾きが所定値より大きく、かつ前記傾きが負となる場合に、車両200が駅に入線している状態であると判定し、曲線の傾きが所定値より大きく、かつ前記傾きが正となる場合に、車両200が駅に出線している状態であると判定してもよい。
また例えば、合計距離算出部112により算出される合計距離が第1閾値以下であって、かつ、変化量算出部113により算出される変化量が第2閾値以下である状態が所定期間継続した場合に、車両状態判定部114は、車両200が駅に停止した(図8参照)と判定する。例えば前記合計距離が図9に示す結果となる場合(図11の時間「T20」~「T30」参照)、車両状態判定部114は、走査時間tc1~tc5の期間において、車両200が駅に停止していると判定する。尚、プラットホームPF1に設置された全ての検知センサ20において前記条件を満たす場合に、車両状態判定部114は、車両200が駅に停止したと判定してもよい。
また車両状態判定部114は、前記合計距離の変化率、すなわち図11に示すグラフにおける曲線の傾きが所定値以下の場合に、車両200が駅に停止したと判定してもよい。
検知エリア設定部115は、車両状態判定部114により車両200が駅に停止したと判定された場合に、車両200が停止中に検知センサ20により検出される走査角度と距離とに基づいて、検知エリアDA1を設定する。尚、検知エリア設定部115は、車両状態判定部114により、車両200が駅に停止したと判定されたとき又は車両200が駅に停止したと判定された後に検知センサ20により検出される走査角度と距離とに基づいて、検知エリアDA1を設定してもよい。検知エリアDA1は、転落者を検知するための監視エリアとなる。例えば、走査時間tc2(図9参照)において車両状態判定部114により車両200が停止したと判定された場合、検知エリア設定部115は、走査時間tc2において検知センサ20により検出された走査角度D1~D10と距離L1~L10とにより規定される範囲(最大範囲)を検知エリアDA1に設定する。図14は、検知エリアDA1の一例を示す図である。尚、車両200の停止位置は車両200により異なる場合があるため、例えば車両200が図14に示す位置とは異なる図15に示す位置に停止した場合、検知エリア設定部115は、当該停止位置に応じた検知エリアDA2を設定する。
尚、線路上のプラットホームPF1の側壁側(待機場)に保線員が待機している場合がある。この場合、検知エリア設定部115は、車両200、プラットホームPF1,PF1、及び保線員に対してレーザ光で走査することにより検知エリアDA1を設定する。
また検知エリア設定部115は、検知エリアDA1を設定した後に、検知エリアDA1全体において検出された走査角度D1~D10のそれぞれに対応する複数の距離のうち所定数を超える距離が変化した場合に、検知エリアDA1を解除する。例えば、停止中の車両200が駅から出線するために動き出すと、検知センサ20により検出される走査角度D1~D10に対応する全ての距離が全体的に変化するため、検知エリア設定部115は、検知エリアDA1を解除する。
転落検知部116は、検知エリア設定部115により設定された検知エリアDA1において、検知センサ20により検出される走査角度と距離とに基づいて転落者を検知する。検知エリア設定部115により検知エリアDA1が解除された場合は、転落検知部116は、転落者を検知する転落検知処理を行わない。すなわち、転落検知部116は、検知エリアDA1が設定されている間だけ、前記転落検知処理を実行する。転落検知部116は、転落者を検知すると検知信号を通知部117に送信する。
例えば、駅の利用者がプラットホームから線路側に転落した場合、利用者は検知エリアDA1に進入する。この場合、検知エリアDA1において、走査角度D1~D10のうち何れかの走査角度において、検知センサ20により検出される距離が短くなる方向に変化する。そこで、転落検知部116は、検知エリアDA1において、走査角度D1~D10のうち何れかの走査角度において、検知センサ20により検出される距離が変化した場合に、転落者ありと判定して検知信号を通知部117に送信する。また、転落検知部116は、複数の検知センサ20のそれぞれに対応して設定された複数の検知エリアDA1のうち何れかの検知エリアDA1において、検知センサ20により検出される距離が変化した場合に、転落者ありと判定して検知信号を通知部117に送信する。この場合、転落検知部116は、何れの検知エリアDA1において前記距離が変化したかを示す識別情報を、前記検知信号に含めてもよい。前記識別情報は、転落者の位置を示す情報となる。
ここで、検知エリアDA1が設定された後に、プラットホームPF1から傘、ペットボトル、携帯電話などの落下物が検知エリアDA1に落下した場合、検知センサ20により検出される距離が変化する。この場合、転落検知部116は、転落者ありと誤検知してしまう恐れがある。尚、落下物の場合、前記距離の変化は一瞬であり、落下物が検知エリアDA1を通り抜けた後は、前記距離は検知エリアDA1の範囲に戻る。そこで、転落検知部116は、前記距離が変化した状態が所定期間継続する場合に、転落者ありと判定してもよい。また、転落検知部116は、落下物の大きさ(面積)を判別して、当該大きさが所定の大きさ(面積)を超える場合に、転落者ありと判定してもよい。落下物の大きさは、距離が変化したレーザ光LBに対応する走査角度と検出される距離とに基づいて算出してもよい。前記距離が変化した状態が所定期間継続しない場合、又は、落下物が所定の大きさより小さい場合は、転落検知部116は、転落者ありと判定しない。これにより、前記落下物、外部環境(雪、雨など)などに起因する誤検知を防ぐことができる。
また一般的に、駅に停止中の車両200は、利用客の乗降、外部環境(風などの天候)などにより揺れる場合がある。この場合、検知センサ20により検出される距離が変化すると、検知エリア設定部115により検知エリアDA1が解除される。このように、車両200が出線のために動き出していない状態で前記距離が変化した場合に検知エリアDA1が解除されてしまうと、適切に転落者を検知することできない。また、前記距離の変化を、転落者による距離の変化と誤検知してしまう恐れもある。
そこで、検知エリア設定部115は、検知センサ20により検出される距離の変化量が所定値より小さい場合は、検知エリアDA1を解除せずに維持する。また、検知エリア設定部115は、車両状態判定部114により車両200が駅に停止したと判定された場合に検知センサ20により検出された走査角度と距離とにより規定される走査範囲を仮の検知エリアに設定し、仮の検知エリアから所定距離を減算して求められる範囲を、検知エリアDA1に設定してもよい。また、検知エリア設定部115は、前記走査範囲から所定角度だけ狭めて求められる範囲を検知エリアDA1に設定してもよい。前記所定距離及び前記所定角度は、利用客の乗降、外部環境(風などの天候)などに起因する揺れ幅に基づいて設定される。例えば、検知エリア設定部115は、前記走査エリアから数cm、検知センサ20側を検知エリアDA1に設定する。また例えば、検知エリア設定部115は、前記走査エリアの両端部から数度、検知センサ20の中心軸側を検知エリアDA1に設定する。
また、検知エリア設定部115は、以下のようにして検知エリアDA1を設定してもよい。具体的には、検知エリア設定部115は、車両状態判定部114により車両200が駅に停止したと判定されてから所定期間における検知センサ20による複数回の走査に基づいて複数の前記走査範囲を取得する。そして、検知エリア設定部115は、取得した複数の前記走査範囲のうち範囲が最小となる前記走査範囲において、走査角度ごとに、当該走査角度に対応する距離から所定距離を減算するとともに、隣り合う2つの走査角度に対応する2つの距離であって前記所定距離が減算された当該2つの距離のうち小さい方の距離により規定される範囲を、検知エリアDA1に設定する。
また、車両200の停止中の揺れに応じた変化量は場所によって異なる場合がある。そこで、例えば変化量算出部113が走査角度ごとに距離の変化量を算出し、当該変化量が所定値より小さい場合に、検知エリア設定部115は、前記走査範囲において、走査角度ごとに当該変化量を減算して求められる範囲を、検知エリアDA1に設定してもよい。
通知部117は、転落検知部116から前記検知信号を受信すると、報知部14に対して転落者を検知したことを外部に報知させる。例えば、報知部14は、赤色などを点灯させるパトランプ、警報音を発するブザーなどである。尚、転落検知装置10は、転落検知部116が誤検知した場合に報知部14による報知を停止させることができる機能を備えることが好ましい。例えば、駅係員又は車両200の乗務員が報知解除ボタン(図示せず)を押下した場合に、制御部11が前記報知を停止させる。尚、制御部11は、報知解除ボタンが押下された場合に、検知エリアDA1を解除する処理を実行してもよい。
また通知部117は、前記検知信号に前記識別情報が含まれる場合、当該識別情報に基づいて、前記距離が変化した場所、すなわち転落者の位置を示す位置情報を報知部14に報知してもよい。
[転落検知処理]
以下、図16のフローチャートを用いて、転落検知装置10の制御部11によって実行される転落検知処理の手順の一例について説明する。ここでは、上述した例に基づいて、転落検知処理の手順を説明する。
尚、本発明は、転落検知処理に含まれる一又は複数のステップを実行する転落検知方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する転落検知処理に含まれる一又は複数のステップが適宜省略されてもよい。また、転落検知処理における各ステップは、同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは制御部11によって転落検知処理における各ステップが実行される場合を例に挙げて説明するが、他の実施形態では、複数のプロセッサーによって転落検知処理における各ステップが分散して実行されてもよい。
先ず、検知センサ20による走査エリアSAの走査が開始されると、検知センサ20は、走査エリアSAをレーザ光LB1~LB10により走査して、当該レーザ光LB1~LB10の走査角度D1~D10と当該走査角度D1~D10に対応する対象物までの距離とを検出する(本発明の検出ステップの一例)。次にステップS101において、制御部11(検出データ取得部111)は、検知センサ20から送信される検出データを受信して、当該検出データに含まれる走査角度D1~D10と距離とを取得する。制御部11(検出データ取得部111)は、取得した走査角度D1~D10と距離とを記憶部12に記憶する。
次にステップS102において、制御部11(合計距離算出部112)は、走査時間ごとに、走査角度D1~D10のそれぞれに対応する距離を合算した合計距離を算出する。
次にステップS103において、制御部11(変化量算出部113)は、走査角度D1~D10ごとに、時間的に前後に走査されて合計距離算出部112により算出される2つの合計距離の差の絶対値である変化量を算出する(図12及び図13参照)。
次にステップS104において、制御部11(車両状態判定部114)は、合計距離算出部112により算出された合計距離が第1閾値以下であるか否かを判定する。前記合計距離が第1閾値以下である場合(S104:YES)、処理はステップS105に移行し、前記合計距離が第1閾値を超える場合(S104:NO)、処理はステップS112に移行する。
ステップS105において、制御部11(車両状態判定部114)は、変化量算出部113により算出された変化量が第2閾値以下であるか否かを判定する。前記変化量が第2閾値以下である場合(S105:YES)、処理はステップS106に移行し、前記変化量が第2閾値を超える場合(S105:NO)、処理はステップS113に移行する。
ステップS106において、制御部11(車両状態判定部114)は、所定期間を経過したか否かを判定する。所定期間を経過した場合(S106:YES)、処理はステップS107に移行し、所定期間を経過しない場合(S106:NO)、処理はステップS101に戻る。すなわち、前記変化量が第2閾値以下である状態が所定期間継続すると、処理はステップS107に移行する。また例えば、前記所定期間を経過しない場合であって(S106:NO)、前記変化量が第2閾値を超えた場合(S105:NO)、処理はステップS114に移行する。
ステップS107において、制御部11(車両状態判定部114)は、車両200が駅に停止した(図8参照)と判定する。ステップS104~S107,S113,S114は、本発明の判定ステップの一例である。
次にステップS108において、制御部11(検出データ取得部111)は、車両200が駅に停止中に検知センサ20から送信される検出データを受信して、当該検出データに含まれる走査角度D1~D10と距離とを取得する。
次にステップS109において、制御部11(検知エリア設定部115)は、車両200が駅に停止中に検知センサ20により検出される走査角度D1~D10と距離とに基づいて、検知エリアDA1(図14参照)を設定する。ステップS108及びS109は、本発明の検知エリア設定ステップの一例である。
次にステップS110において、制御部11(車両状態判定部114)は、検知エリアDA1が変化したか否かを判定する。具体的には、制御部11(車両状態判定部114)は、検知エリアDA1を設定した後に、検知エリアDA1全体において検出された走査角度D1~D10に対応する各距離が全体的に変化したか否かを判定する。検知エリアDA1が変化した場合、すなわち各距離が全体的に変化した場合(S110:YES)、処理はステップS115に移行して、制御部11(車両状態判定部114)は、検知エリアDA1を解除する。その後、処理はステップS101に戻る。検知エリアDA1が変化しない場合、すなわち各距離が全体的に変化しない場合(S110:NO)、処理はステップS111に移行する。
ステップS111において、制御部11(転落検知部116)は、検知エリアDA1において、走査角度D1~D10のうち何れかの走査角度において、検知センサ20により検出された距離が変化したか否かを判定する。前記距離が変化した場合(S111:YES)、処理はステップS112に移行する。前記距離が変化しない場合(S111:NO)、処理はステップS108に戻る。ステップS111の処理において、検知エリアDA1における転落者の監視が行われる。
ステップS112において、制御部11(転落検知部116)は、転落者を検知する。具体的には、制御部11(転落検知部116)は、転落者ありと判定して検知信号を通知部117に送信する。制御部11(通知部117)は、前記検知信号を受信すると、報知部14に対して転落者を検知したことを外部に報知させる。図示は省略するが、例えば前記報知動作を解除すると、処理はステップS101に戻る。ステップS111及びS112は、本発明の転落検知ステップの一例である。
ステップS113では、制御部11(車両状態判定部114)は、車両200が駅に存在しないと判定する。その後、処理はステップS101に戻る。
ステップS114では、制御部11(車両状態判定部114)は、車両200が移動中であると判定する。例えば、制御部11(車両状態判定部114)は、車両200が入線中又は出線中であると判定する。その後、処理はステップS101に戻る。以上のようにして、転落検知処理が実行される。
上述のように、本実施形態に係る転落検知装置10は、車両200が駅に停止する度に、車両200の停止位置などに対応する検知エリアDA1を設定し、設定された検知エリアDA1において検知センサ20により検出される距離の変化に基づいて転落者を検知する。また転落検知装置10は、停止中の車両200が動き出すと、設定された検知エリアDA1を解除し、次に車両200が駅に停止すると、当該車両200の停止位置などに対応する新たな検知エリアDA1を設定して転落者を検知する処理を実行する。すなわち、転落検知装置10は、車両200の停止位置、車両200の種類及び構造、プラットホームPF1,PF2の形状、検知センサ20の取り付け位置の位置ずれ、線路上の草木又は障害物の状態など様々な条件に応じて、検知エリアDA1を動的に変化させて設定する。また、転落検知装置10は、検知センサ20ごとに個別に検知エリアDA1を設定する。これにより、車両200及びプラットホームPF1,PF2の様々な条件に対応し得る検知エリアDA1を車両200が停止する度に設定できるため、適切に転落者を検知することが可能となる。
また、本実施形態に係る転落検知装置10は、検知センサ20により検出される走査角度及び距離だけを用いて車両200の状態を判定して検知エリアDA1を設定し、転落者を検知する。このように、検知センサ20以外の機器、例えば車両200を撮像するカメラ、車両200を検出するセンサなどの機器を用いることなく転落者を検知することができるため、転落検知システム100の構成を簡略化することができる。
図17は、合計距離算出部112により算出される合計距離と、変化量算出部113により算出される変化量との関係を模式的に示すグラフの一例である。図17に示す例では、所定の車両に対応する合計距離の変化量を示している。図17において、走査時間ta1~ta5は車両200が駅に存在していない場合(図4参照)を示し、走査時間tb1~tb5は車両200が駅に入線している場合(図6参照)を示し、走査時間tc1~tc5は車両200が駅に停止した場合(図9参照)を示し、走査時間td1~td5は車両200が駅から出線している場合(図10参照)を示している。車両200が駅に入線、停止及び出線する一連の走行状態に対応して、図17に示す(1)~(4)のサイクルが繰り返される。合計距離の変化量は、入線時及び出線時で異なる変化特性を示す。
ここで、上述の構成は、駅において車両200が並列に配置されない場合に好適であるが、駅において車両200が並列に配置される場合には、転落者を誤検知する場合がある。例えば、図18に示すように、車両200がプラットホームPF1側に停止して検知エリアDA1が設定された後に、他の車両300がプラットホームPF2側に入線又は停止した場合、転落検知部116が、他の車両300を転落者として誤検知する恐れがある。
そこで、転落検知システム100は、前記誤検知を防ぐ構成を有することが望ましい。図19は、前記誤検知を防ぐ構成を備える転落検知システム100において、転落検知装置10の制御部11によって実行される転落検知処理の手順の一例を示すフローチャートである。尚、図19において、図16に示すフローチャートと同一の処理は同一のステップ番号を付し、以下ではその説明を省略する。
例えば図19に示すように、検知エリアDA1が設定された後に他の車両300がプラットホームPF2側に入線又は停止したことにより、検知センサ20により検出される距離が変化した場合(S111:YES)、処理はステップS116に移行する。
ステップS116において、制御部11(車両状態判定部114)は、検知エリアDA1を規定する走査角度D1~D10のうちレーザ光が反対側のプラットホームPF2に到達する走査角度、具体的には図1に示す例では走査角度D3~D8のうち何れかの走査角度において、検知センサ20により検出された距離が第3閾値以上であるか否かを判定する。第3閾値は、例えば検知センサ20から他の車両300までの距離に設定される。
前記検出された距離が第3閾値以上である場合(S116:YES)、前記距離の変化を前記他の車両300によるものと判定し、処理はステップS108に戻る。ステップS108において、制御部11(検出データ取得部111)は、車両200及び他の車両300が駅に停止中に検知センサ20から送信される検出データを受信して、当該検出データに含まれる走査角度D1~D10と距離とを取得する。次にステップS109において、制御部11(検知エリア設定部115)は、車両200及び他の車両300が停止中に検知センサ20により検出される走査角度D1~D10と距離とに基づいて、例えば図20に示す新たな検知エリアDA3を設定する。
前記検出された距離が第3閾値未満である場合(S116:NO)、前記距離の変化を転落者によるものと判定して、ステップS112において、制御部11(転落検知部116)は、検知信号を通知部117に送信する。
ここで、車両200がプラットホームPF1側に停止して検知エリアDA1が設定された後に、他の車両300がプラットホームPF2側を通過する場合がある。この場合、検知センサ20からプラットホームPF2まで到達する走査角度D3~D8おいて検知センサ20により検出される距離が一瞬だけ変化することになる。この場合に、転落検知部116が、他の車両300を転落者として誤検知しないように、転落検知システム100は、さらに以下の構成を備えることが望ましい。
例えば、前記他の車両300の通過により検知センサ20により検出された距離が、第3閾値以上である場合であって(S116:YES)、かつ当該距離が第3閾値以上である状態が所定期間継続しない場合には、制御部11(転落検知部116)は、前記他の車両300の通過により前記距離が変化していないものと判定して、処理はステップS110に戻る。尚、前記他の車両300の通過により検知センサ20により検出された距離が第3閾値以上である状態が所定期間継続する場合は、前記他の車両300が駅に停止したと判定して、処理はステップS108に戻る。
このように、検知センサ20が設置されるプラットホームPF1とプラットホームPF1に対向するプラットホームPF2との間に2台の車両200,300が並列して停止する場合に、制御部11(検知エリア設定部115)は、前記プラットホームPF2側に停止する車両300を含まない範囲に検知エリアDA1を設定する。
本発明に係る転落検知システムは、上述の構成に限定されない。例えば、検知センサ20は、線路からの高さが異なる上下2箇所に設置されてもよい。この場合、例えば上下2個の検知センサ20に設定される検知エリアDA1の内、何れか一方で距離の変化を検出した場合に、転落者を検知したことを外部に報知する。また、検知センサ20は、三次元を走査する3Dレーザセンサであってもよい。
転落検知システム100は、検知エリアDA1において検知センサ20により検出される距離が短くなる方向に変化した場合だけでなく、長くなる方向に変化した場合においても、検知エリアDA1内の異常(転落者など)を検出してもよい。例えば、線路上のプラットホームPF1の側壁側(待機場)に保線員が待機している状態で検知エリアDA1が設定された場合において、保線員が前記距離が長くなる方向に移動した場合に、制御部11(転落検知部116)は、検知エリアDA1内の異常を検出する。
また転落検知システム100は、車両200を検知する車両検知センサを備えてもよい。例えば、車両検知センサをプラットホームPF1の車両200の入線側と出線側とにそれぞれ設置し、転落検知装置10が、車両検知センサから受信する検知信号に基づいて車両200の入線、停止及び出線を判定してもよい。また、転落検知システム100は、車両200を撮像するカメラを備えてもよい。例えば、プラットホームPF1にカメラを設置し、転落検知装置10が、カメラから受信する撮像画像に基づいて、車両200の入線、停止及び出線を判定してもよい。
また転落検知システム100は、車両200が駅に存在しない場合に、図3に示す走査エリアSAを検知エリアDA1に設定してもよい。これにより、車両200が駅に存在しない場合に線路に転落した転落者、又は、線路に侵入した侵入者を検知することができる。尚、この場合、駅を通過する車両200(通過電車など)を検知したときに転落者として誤検知することを防ぐために、例えば、前記車両検知センサが車両200を検知している間は、前記転落検知処理を停止する構成とする。これにより、車両200が駅に存在するか否かに関わらず、転落者、侵入者などを検知することができる。
また転落検知システム100は、検知センサ20ごとに個別に検知エリアDA1を設定し、設定されたそれぞれの検知エリアDA1を個別に解除できる構成としてもよい。例えば、4両の車両200が駅に停止して検知センサ20-1の検知エリアDA1と、検知センサ20-2の検知エリアDA2とが設定された後に、先頭の2両が切り離されて駅から出線した場合、転落検知システム100は、検知センサ20-2の検知エリアDA2を解除し、検知センサ20-1の検知エリアDA1を維持する。この構成によれば、駅に停止している車両200の状況に応じて適切に検知エリアDA1を設定することができる。
また、検知センサ20は、長期間の使用により位置ずれが生じたりレーザ光の出射光量が減少したりすることにより、検知性能が低下する恐れがある。そこで、転落検知システム100は、例えば、車両200が駅に存在していない場合に検知センサ20により検出される距離の変化を監視し、当該距離の変化量が閾値を超えた場合に、検知センサ20の異常を報知する構成を備えてもよい。これにより、検知センサ20の早期の交換及びメンテナンスを実施することが可能となる。
尚、上述の実施形態では、転落検知システム100を、駅のプラットホームからの転落者を検知するシステムに適用した場合について説明したが、転落検知システム100は他の分野に適用することも可能である。例えば、検知エリアが動的に変化する場所における侵入者の検知システムなどに適用することができる。