JP7122927B2 - コンピュータにより実行される方法、装置、システム、コンピュータプログラム、及び、記録媒体 - Google Patents

コンピュータにより実行される方法、装置、システム、コンピュータプログラム、及び、記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、コンピュータにより実行される方法、装置、システム、コンピュータプログラム、及び、記録媒体に関する。
従来、歯科補綴物を作製するための、種々の技術が検討されている。例えば、歯科補綴物は、NC(Numerical Control machining)加工機を含む歯科用CAD/CAMシステムによって、作製される。
一従来例では、歯科用CAD/CAMシステムは、スキャナ、CAD装置、CAM装置及びNC加工機を備える。スキャナは、模型又は口腔内の構造を計測する。これにより、3次元形状データが取得される。CAD装置は、3次元形状データから、補綴物を設計する。これにより、補綴物データが作成される。CAM装置は、補綴物データに基づいて、NCデータを計算する。NC加工機は、NCデータに基づいて、材料を加工する。これにより、歯科補綴物が得られる。
一例では、スキャナ、CAD装置、CAM装置及びNC加工機は、それぞれ独立した機器であり、これら独立した機器が、協働して歯科用CAD/CAMシステムを構成している。別例では、1つの機器が、スキャナ、CAD装置、CAM装置及びNC加工機の機能うちの複数の機能を有している。スキャナには、接触式の計測を行うものと、非接触式の計測を行うものとがある。
近年、色分布が一様ではない材料が加工に供されることがある。引用文献1には、そのような材料から補綴物を作製することが記載されている。引用文献1では、材料の色分布が一様ではない場合であっても適正な補綴物を作製できるという効果が謳われている。
特開2011-078453号公報
複数の層を含む材料から、複数の層を含む補綴物を作製することを考える。その場合において、適切な表面色調を有する補綴物を作製することは、審美性を確保する観点から有利である。しかし、従来技術には、複数の層を含み適切な表面色調を有する補綴物を得る観点から、改善の余地がある。
本発明は、複数の層を含み適切な表面色調を有する補綴物を得るのに役立つ技術を提供することを目的とする。
本発明は以下の発明に関する。
[1]コンピュータにより実行される方法であって、
加工に供されるミルブランク部を表すデータであってエナメル層を表す外層と前記外層の内側に存在する内層とを有するデータをワークデータと定義し、前記ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義したとき、
前記補綴物形状データの内側表面と、前記外層と前記内層との境界と、前記補綴物形状データの外側表面と、がこの順に並ぶように、前記ワークデータと前記補綴物形状データの相対位置が調整された調整状態において、
前記内側表面と前記境界との間の距離である内側距離を計算することと、
前記外側表面と前記境界との間の距離である外側距離を計算することと、
前記ワークデータと前記補綴物形状データとの重複部分を仮想補綴物と定義し、前記仮想補綴物の表面の色調を仮想色調と定義したとき、前記仮想色調を、前記内側距離と、前記外側距離と、前記外層の色調データと、前記内層の色調データと、に基づいて計算することと、を含む、方法。
[2]前記仮想色調を表示することを含む、前記[1]に記載の方法。
[3]前記内側距離と前記外側距離との合計を総距離と定義したとき、
前記総距離に対する前記外側距離の比率が大きいほど、前記外層の色調データの少なくとも一要素を、前記仮想色調に強く反映させる、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記内側距離と前記外側距離との合計を総距離と定義したとき、
前記総距離に対する前記内側距離の比率が大きいほど、前記内層の色調データの少なくとも一要素を、前記仮想色調に強く反映させる、前記[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]前記外側表面は、唇に面する部分を表す唇側部を含む、前記[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]歯牙を表すデータを歯牙データと定義したとき、
前記内側表面は、前記歯牙データとの間に隙間が生じるように形成されている、前記[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]前記内側表面は、凹面を有し、
前記ワークデータは、前記ミルブランク部を切削するための加工機におけるスピンドルが延びる方向を表すZ軸を有し、
前記調整状態は、切削可能条件が成立するように、前記相対位置が調整された状態であり、
前記切削可能条件は、前記Z軸に平行に延び前記凹面と交差する全ての直線が、前記凹面と1回だけ交差するという条件である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]前記ミルブランク部の加工に用いられる加工データを出力することを含み、
加工機において前記ミルブランク部を加工するのに用いられる加工座標系の原点を加工原点と定義し、前記ワークデータを表すのに用いられる第1座標系の原点をワークデータ原点と定義したとき、
前記ワークデータ原点は、前記加工原点を表し、
前記仮想補綴物は、前記第1座標系で表されおり、
前記加工データは、前記仮想補綴物が反映されており、かつ、前記ワークデータ原点を表す情報を含んでいる、前記[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]前記補綴物は、前記ミルブランク部を加工して被加工体を形成し、前記被加工体を焼成してサイズを1/X倍に変化させることによって得られるものであり、
前記ワークデータ及び前記補綴物形状データが表される座標系において、
前記ワークデータは、加工前かつ焼成前の実サイズの前記ミルブランク部の1/Y倍のサイズで表され、
前記補綴物形状データは、実サイズの前記補綴物のZ倍のサイズで表される、前記[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
ここで、Xは、1を除く正の値であり、Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値であり、X=Y×Zである。
[10]前記ミルブランク部の加工に用いられる加工データを出力することを含み、
前記加工データは、前記被加工体を表すデータであって前記仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む、前記[9]に記載の方法。
[11]前記補綴物形状データが前記ワークデータからはみ出している場合において、警告を行うことを含む、前記[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載の方法を実行するための装置であって、
前記コンピュータを含む、装置。
[13]前記ワークデータ及び前記補綴物形状データが表される座標系において、
前記ワークデータは、加工前かつ焼成前の実サイズの前記ミルブランク部の1/Y倍のサイズで表され、
前記補綴物形状データは、実サイズの前記補綴物のZ倍のサイズで表され、
前記コンピュータは、Y及びZを調整できるように構成されている、前記[12]に記載の装置。
ここで、Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値である。
[14]前記コンピュータは、前記ミルブランク部を加工して被加工体を形成するのに用いられる加工データを出力し、
前記加工データは、前記被加工体を表すデータであって前記仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む、前記[13]に記載の装置。
[15]前記[12]~[14]のいずれかに記載の装置と、加工機と、を備えたシステムであって、
前記加工機は、前記仮想補綴物が反映された加工データに基づいて、前記ミルブランク部を加工する、システム。
[16]コンピュータによる実行時において、前記[1]~[11]のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラム。
[17]前記ワークデータ及び前記補綴物形状データが表される座標系において、
前記ワークデータは、加工前かつ焼成前の実サイズの前記ミルブランク部の1/Y倍のサイズで表され、
前記補綴物形状データは、実サイズの前記補綴物のZ倍のサイズで表され、
前記コンピュータを、Y及びZを調整できるようにする、前記[16]に記載のコンピュータプログラム。
ここで、Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値である。
[18]前記コンピュータに、前記ミルブランク部を加工して被加工体を形成するのに用いられる加工データの出力を実行させ、
前記加工データは、前記被加工体を表すデータであって前記仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む、前記[17]に記載のコンピュータプログラム。
[19]前記[16]~[18]のいずれのコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体。
本発明は、複数の層を含み適切な表面色調を有する補綴物を得るのに役立つ。
本発明に係るミルブランク部の実施形態の一例を示す概略図である。 本発明に係るミルブランク部を仮想第一切断面で割断した際の断面図(概略図)である。 本発明に係るミルブランク部を仮想第二切断面で割断した際の断面図(概略図)である。 本発明に係るミルブランク部の実施形態の一例を示す概略図である。 本発明に係るミルブランク部を仮想第一切断面で割断した際の断面図(概略図)である。 本発明に係るミルブランク部を仮想第二切断面で割断した際の断面図(概略図)である。 本発明に係る方法の実施形態の一例を説明するためのフローチャートである。 本発明に係る方法の実施形態の一例を説明するためのブロック図である。 本発明に係るプラットホームデータの実施形態の一例を示す図である。 本発明に係るプラットホームデータの実施形態の一例を示す図である。 本発明に係るプラットホームデータの実施形態の一例を示す図である。 本発明に係る歯牙データ及び補綴物形状データの実施形態の一例を示す図である。 本発明に係る補綴物形状データ及びワークデータの実施形態の一例を示す図である。 本発明に係る補綴物形状データ及びワークデータの実施形態の一例を示す図である。 本発明に係る補綴物形状データの内周面の実施形態の一例を示す概略図である。 本発明に係る補綴物形状データの外周面の実施形態の一例を示す概略図である。 外層と内層との間の境界を説明するための説明図である。 外側距離及び内側距離を説明するための説明図である。 実際に作成したペレットのc*をプロットしたグラフである。 切削可能条件が満たされている様を説明するための説明図である。 切削可能条件が満たされていない様を説明するための説明図である。 参考実施形態を説明するためのブロック図である。
以下、本発明のミルブランクを例示する。ただし、ミルブランクは、以下の例に限定されない。
以下に例示するミルブランクは、2層以上の積層構造を有するミルブランク部を有する歯科用のミルブランクである。該積層構造において、エナメル層(1)の内側にボディ層(3)が存在し、ボディ層(3)が底面及び側面を有する。具体的には、以下に例示するミルブランクは、側面が底面に対して垂直な部分を有する。ただし、そのような部分はなくてもよい。
[ミルブランク部]
ミルブランク部は、エナメル層(1)及びボディ層(3)を含む2層以上の積層構造を有する。該ミルブランク部の一例を図1に示す。
ボディ層(3)は、ミルブランクにおいて支台歯の色調が浮き出ないように色調遮蔽性を有する層であり、エナメル層の内側に形成されている。ボディ層(3)が底面及び側面を有し、かつ側面が底面に対して垂直な部分を有する形状であることにより、天然歯とより近い構造(象牙質)となるため、天然歯と同様の色調が得られる。ミルブランクにおいてボディ層(3)の、側面が底面に対して垂直な部分は、象牙質により近づけるために、所望の高さを有する。なお、ボディ層(3)の底面は、エナメル層(1)や後述する中間層(2)に覆われてもよく、ミルブランク部の表面に露出されてもよい。
ボディ層(3)の好適な形状について以下説明する。
ボディ層(3)において、底面に平行な少なくとも1つの断面が、円弧、楕円弧、放物線及び懸垂線からなる群より選択された少なくとも2つを組み合わせた輪郭を有する形状であることが好ましい。該輪郭は、円弧、楕円弧、放物線及び懸垂線からなる群より選択された曲線以外に、直線を組み合わせたものであってもよいが、円弧、楕円弧、放物線及び懸垂線からなる群より選択された曲線のみを組み合わせたものであることがより好ましい。前記形状としては、円、楕円など、図2に記載のものが例示される。なお、前記断面としては、例えば、図1における仮想第一切断面(4)で割断した際の断面が含まれる。
ボディ層(3)において、底面に垂直な少なくとも1つの断面が、砲弾形の形状であるのが好ましい。砲弾形の形状とは、例えば、図1の仮想第二切断面(5)でミルブランクを切断した場合に、四角形の一つの辺が外側に湾曲した形状を表し、図3に記載のもの(図3の斜線部)が例示される(図3におけるA~Dは、図2におけるA~Dにそれぞれ対応する)。ボディ層(3)が上記の形状を有することによって天然歯の構造により近づけることができる。なお、前記断面としては、例えば、図1における仮想第二切断面(5)で割断した際の断面が含まれる。
ミルブランクは、該ミルブランク部が、エナメル層(1)及びボディ層(3)の間に、中間層(2)を1層以上有することが好ましい。中間層(2)を1層以上有することによって、ボディ層の色調が表面に浮き出ることを防ぐことができる。該ミルブランク部の一例を図4に示す。
中間層(2)は、ボディ層(3)の側面の少なくとも一部を覆っており、好ましくは、ボディ層(3)の側面の全部を覆っている態様である。また、中間層(2)は、ボディ層(3)の底面の全部又は一部を覆っていてもよい。
中間層(2)の好適な形状について以下説明する。
中間層(2)は、底面及び側面を有し、かつ側面が底面に対して垂直な部分を有する形状であることが好ましい。これにより、天然歯と同等の構造(象牙質)を有するため、天然歯と同様の色調が得られる。
中間層(2)において、底面に平行な少なくとも1つの断面が、円弧、楕円弧、放物線及び懸垂線からなる群より選択された少なくとも2つを組み合わせた輪郭を有する形状であることが好ましい。該輪郭は、円弧、楕円弧、放物線及び懸垂線からなる群より選択された曲線以外に、直線を組み合わせたものであってもよいが、円弧、楕円弧、放物線及び懸垂線からなる群より選択された曲線のみを組み合わせたものであることがより好ましい。前記形状としては、円、楕円など、図5に記載のものが例示される。なお、前記断面としては、例えば、図4における仮想第一切断面(4)で割断した際の断面が含まれる。
中間層(2)において、底面に垂直な少なくとも1つの断面が、砲弾形の形状であるのが好ましい。砲弾形の形状の中間層(2)としては、図6に記載のものが例示される(図6におけるA~Dは、図5におけるA~Dにそれぞれ対応する)。中間層(2)が上記の形状を有することによって天然歯の構造により近づけることができる。なお、前記断面としては、例えば、図4における仮想第二切断面(5)で割断した際の断面が含まれる。
中間層(2)の形状は、ボディ層(3)と同じでも異なってもよいが、支台歯を遮蔽する観点から、同じであることが好ましい。
ミルブランク部の形状は、治具を取り付けられる限り特に限定されず、中間層(2)を有する実施形態及び中間層(2)を有しない実施形態のいずれにおいても、例えば、角柱状とすることができ、製造上の観点から四角柱状が好ましい。
各層における色調及び透光性の好適な態様について以下に説明する。なお、色調を示す尺度としては、例えば、L*a*b*表色系における色度のL*、a*、b*などを用いることができる。透光性を示す尺度としては、例えば、L*a*b*表色系におけるΔL*などを用いることができる。これらは、以下のようにして測定できる。
色調は、以下のようにして測定できる。各層を構成する材料によって、直径14mm、厚さ1.2mmの円板(その両面は#600研磨)を作製する。その円板について、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計CM-3610Aを用いて、D65光源、測定モードSCI、測定径/照明径=φ8mm/φ11mm、白背景の条件にて、L*a*b*表色系(JIS Z 8781-4:2013 測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*色空間)における色度を測定する。
透光性は、以下のようにして測定できる。各層を構成する材料によって、直径14mm、厚さ1.2mmの円板(その両面は#2000研磨)を作製する。その円板について、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計CM-3610Aを用いてD65光源にて測定した、L*a*b*表色系(JIS Z 8781-4:2013)における明度(色空間)のL*値を用いて、次のように算出する。試料の背景を白色にして測定したL*値を第1のL*値とし、第1のL*値を測定した同一の試料について、試料の背景を黒色にして測定したL*値を第2のL*値とし、第1のL*値から第2のL*値を控除した値(ΔL*)を、透光性を示す数値とする。
ボディ層(3)においては、L*a*b*表色系における色度がL*=64~77、a*=-1~4、b*=11~27であることが好ましい。
ボディ層(3)の透光性ΔL*は、2~13が好ましく、2~10がより好ましく、3~7がさらに好ましい。透光性が前記範囲を満たすことにより色調遮蔽性を向上させ、天然歯と同等の色調を得ることができる。
エナメル層(1)おいては、L*a*b*表色系における色度がL*=62~72、a*=-2~2、b*=5~19であることが好ましい。
エナメル層(1)の透光性ΔL*は、7~20が好ましく、4~18がより好ましく、8~16がさらに好ましい。透光性が前記範囲を満たすことにより審美性に優れたミルブランク部とすることができる。
中間層(2)においては、L*a*b*表色系における色度がL*=63~76、a*=-1~4、b*=10~26であることが好ましい。
中間層(2)の透光性ΔL*は、4~18が好ましく、5~17がより好ましく、6~11がさらに好ましい。透光性が前記範囲を満たすことによりボディ層(3)の色調を程よく浮き上がらせることができる。
ミルブランク部は、該積層構造において隣接した各層の色調及び/又は透光性が互いに異なることが天然歯の外観に近づける観点から好ましい。例えば、図1に示されるような、中間層(2)を有しない実施形態では、透光性について、ボディ層(3)の透光性ΔL*<エナメル層(1)の透光性ΔL*の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。前記実施形態では、エナメル層(1)の透光性ΔL*とボディ層(3)の透光性ΔL*の差は、1~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~7がさらに好ましい。前記実施形態では、エナメル層(1)のL*値、a*値及びb*値<ボディ層(3)のL*値、a*値及びb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。
また、図4に示されるような、エナメル層(1)及びボディ層(3)に加えて、中間層(2)を有する実施形態では、透光性について、ボディ層(3)の透光性ΔL*<中間層(2)の透光性ΔL*<エナメル層(1)の透光性ΔL*の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。前記実施形態では、エナメル層(1)の透光性ΔL*と中間層(2)の透光性ΔL*の差は、1~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~7がさらに好ましい。中間層(2)の透光性ΔL*とボディ層(3)の透光性ΔL*の差は、1~9が好ましく、2~8がより好ましく、3~7がさらに好ましい。前記実施形態では、エナメル層(1)のL*値、a*値及びb*値<ボディ層(3)のL*値、a*値及びb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。さらに、前記実施形態では、エナメル層(1)のL*値、a*値及びb*値<中間層(2)のL*値、a*値及びb*値の関係を満たすものが、天然歯の外観に近づける観点から好ましい。
ミルブランク部は、ジルコニア、ガラスなどのセラミックスから構成されていてもよく、レジンから構成されていてもよいが、強度、耐久性の点からジルコニアであることが好ましく、加工のしやすさの点からジルコニア仮焼体がより好ましい。
前記ジルコニア仮焼体は、焼結された後に前述した各層の好適な色調、透光性を満たす目的で顔料や添加剤を含むことが好ましい。
前記顔料としては、歯科用組成物に用いられる公知の顔料(無機顔料、複合顔料、蛍光顔料等)を用いることができる。無機顔料としては、例えば、酸化ニッケル、酸化鉄赤、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物等が挙げられる。また、複合顔料としては、例えば、Zr-V、Fe(Fe,Cr)24、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)24・ZrSiO4、(Co,Zn)Al24等が挙げられる。蛍光顔料としては、例えば、Y2SiO5:Ce、Y2SiO5:Tb、(Y,Gd,Eu)BO3、Y23:Eu、YAG:Ce、ZnGa24:Zn、BaMgAl1017:Eu等が挙げられる。
前記ジルコニア仮焼体は、歯科用製品として繰り返しの咀嚼運動に耐えるだけの耐チッピング性、及び耐クラック性や、曲げ強さを必要とする点で、安定化剤を含むことが好ましい。すなわち、焼成前のジルコニアに安定化剤を含ませることが好ましい。これにより、歯科用製品の基材となる、焼成後のジルコニア焼結体が、部分安定化ジルコニア及び完全安定化ジルコニアの少なくとも一方をマトリックス相として有することができる。前記ジルコニア焼結体において、ジルコニアの主たる結晶相は正方晶及び立方晶の少なくとも一方であり、正方晶及び立方晶の両方を含有してもよい。また、前記ジルコニア焼結体は単斜晶を実質的に含有しないものが好ましい。実質的に単斜晶を含有しないとは、ジルコニア焼結体における単斜晶の含有量が5.0質量%未満であり、好ましくは1.0質量%未満である。なお、安定化剤を添加して部分的に安定化させたジルコニアは、部分安定化ジルコニア(PSZ;Partially Stabilized Zirconia)と呼ばれ、完全に安定化させたジルコニアは完全安定化ジルコニアと呼ばれている。
前記安定化剤としては、酸化イットリウム(Y23)(以下、「イットリア」という。)、酸化チタン(TiO2)、酸化カルシウム(カルシア;CaO)、酸化マグネシウム(マグネシア;MgO)、酸化セリウム(セリア;CeO2)、酸化アルミニウム(アルミナ;Al23)、酸化スカンジウム(Sc23)、酸化ランタン(La23)、酸化エルビウム(Er23)、酸化プラセオジム(Pr611)、酸化サマリウム(Sm23)、酸化ユウロピウム(Eu23)及び酸化ツリウム(Tm23)からなる群から選ばれた酸化物の少なくとも1種であることが好ましい。特に、高い透光性と強度向上の点から、安定化剤としてイットリアが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
安定化剤がイットリアを含有する場合、イットリアの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~8モル%が好ましく、3~6モル%がより好ましい。この含有量であれば、単斜晶への相転移を抑制すると共に、ジルコニア焼結体の透明性を高めることができる。
安定化剤として酸化チタンを含有する場合、酸化チタンの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化カルシウムを含有する場合、酸化カルシウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~15モル%が好ましく、2.1~12モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化マグネシウムを含有する場合、酸化マグネシウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~12モル%が好ましく、2.1~10モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化セリウムを含有する場合、酸化セリウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、2~18モル%が好ましく、2.1~12モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化アルミニウムを含有する場合、酸化アルミニウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化スカンジウムを含有する場合、酸化スカンジウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化ランタンを含有する場合、酸化ランタンの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、1~10モル%が好ましく、2~7モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化エルビウムを含有する場合、酸化エルビウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化プラセオジムを含有する場合、酸化プラセオジムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化サマリウムを含有する場合、酸化サマリウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化ユウロピウムを含有する場合、酸化ユウロピウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
安定化剤として酸化ツリウムを含有する場合、酸化ツリウムの含有量は、ジルコニアと安定化剤の合計100モル%において、0.1~1モル%が好ましく、0.1~0.3モル%がより好ましい。
なお、ジルコニア焼結体中の安定化剤の含有量は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)発光分光分析、蛍光X線分析等によって測定することができる。
ミルブランクの製造方法の一例について以下に説明する。
この例では、ミルブランクの製造方法は、粉末プレス法にてボディ層(3)を仮成形し、仮成形体となったボディ層(3)をエナメル層(1)で覆い本プレス成形する工程を含む。
前記粉末プレス法とは、ある層を構成する粉体(例えば、ボディ層(3)を作製する場合、ジルコニア粉末)及び、顔料や添加剤などの成分が配合された粉体を用意し、金型中でパンチを用いてプレス成形する方法を表す。
仮成形時のプレスは従来公知の条件を用いることができるが、プレス圧は、後の本プレス成形より低い条件とする必要がある。得られる成形体(ミルブランク部)の密度は2.0~4.0g/cm3であることが好ましく、該密度を達成できる限り、本プレス成形の装置や条件は限定されない。
ミルブランク部が中間層(2)を有する場合、粉末プレス法にてボディ層(3)及び中間層(2)を仮成形し、仮成形体となったボディ層(3)及び中間層(2)をエナメル層(1)で覆い本プレス成形する工程を含むことが好ましい。より好ましくは、粉末プレス法にてボディ層(3)を仮成形し、得られたボディ層(3)を中間層(2)で覆い仮成形し、仮成形体となったボディ層(3)及び中間層(2)をエナメル層(1)で覆い本プレス成形する工程を含む。
典型的には、ボディ層(3)の仮成形時のプレス圧は、中間層(2)の仮成形時より低い条件とし、かつ中間層(2)の仮成形時の圧力は後の本プレス成形より低い条件とする。
得られる成形体(ミルブランク部)の密度は2.0~4.0g/cm3であることが好ましく、該密度を達成できる限り本プレス成形の装置や条件は限定されない。
ミルブランク部において、特定の形状を有するボディ層(3)を得るために、ボディ層(3)の仮成形に該形状を有する金型を用いてプレスしてもよく、通常の金型を用いてプレスした後に仮成形体を削って該形状に整えてもよい。該形状としては、前述したように、ボディ層(3)が底面及び側面を有し、かつ側面が底面に対して垂直な部分を有し得る形状であり、ボディ層(3)において、底面に垂直な少なくとも1つの断面が砲弾形の形状であることが好ましく、ミルブランクの製造方法において、ボディ層(3)を該形状に成形する工程を含むことが好ましい。
同様に特定の形状を有する中間層(2)を得るために、中間層(2)の仮成形に該形状を有する金型を用いてプレスしてもよく、通常の金型を用いてプレスした後に仮成形体を削って該形状に整えてもよい。該形状としては、前述したように、中間層(2)が底面及び側面を有し、かつ側面が底面に対して垂直な部分を有する形状であり、中間層(2)において、底面に垂直な少なくとも1つの断面が砲弾形の形状であることが好ましく、ミルブランクの製造方法において、中間層(2)を該形状に成形する工程を含むことが好ましい。
〔ミルブランク〕
ミルブランクは前記ミルブランク部を有し、当該ミルブランク部と支持部とを有することが好ましい。当該支持部によってミルブランクを加工機(例えば、ミリング装置)に固定することができる。支持部をミルブランク部に取り付ける方法に特に制限はなく、例えば、接着剤等によりミルブランク部と支持部とを接着することができる。
ミルブランクは歯科用途に使用され、例えば、歯科用CAD/CAMシステムでの切削加工による、インレー、アンレー、ベニア、クラウン、ブリッジ、支台歯、歯科用ポスト、義歯、義歯床、インプラント部材(フィクスチャー、アバットメント)等の歯科用補綴物の作製などに好適に用いることができる。
[コンピュータで実行される方法]
現実の歯は、エナメル層を有する。エナメル層は、歯の表面を構成する。現実の歯は、さらに、エナメル層よりも内側の層を有する。歯の表面には、エナメル層の色調のみならず、内側の層の色調も現れる。このように、歯の表面の色調は、外側の層のみならず、内側の層にも依存する。
外側の層と内側の層を有するミルブランク部から、外側の層と内側の層を有する補綴物を作製することを考える。その場合、現実の歯と同様に、補綴物の表面の色調は、外側の層のみならず、内側の層にも依存する。
外側の層と内側の層を有する補綴物を表すデータ(補綴物データ)を作成することを考える。補綴物データの表面の色調は、外側の層のみならず内側の層も考慮すると、精度よく計算できる。精度のよい計算が可能であることは、補綴物の表面色調を精度よく推定できることを意味する。
そのような精度のよい推定は、適切な表面色調を有する補綴物を得るのに役立つ。以下、そのような推定をコンピュータによって行うための方法を、図7~22を参照しながら説明する。
図7は、そのような方法の一例を示すフローチャートである。図7のフローチャートの方法は、図8のブロック図に基づいて実行できる。
図8に示すシステム(100)は、設計装置(40)と、装置(50)と、加工機(60)と、を備える。設計装置(40)は、例えば、CAD装置である。加工機(60)は、例えば、ミリング装置である。装置(50)は、コンピュータ(51)と、ディスプレイ(52)と、を備える。コンピュータ(51)は、プロセッサと、メモリと、を含む。
設計装置(40)と、装置(50)と、加工機(60)とは、1つの施設に配置されていてもよく、互いに異なる施設に配置されてもよい。設計装置(40)と、装置(50)と、加工機(60)とが、一体の機械を構成していてもよい。設計装置(40)と、装置(50)と、加工機(60)とは、互いに異なる国に配置されていてもかまわない。設計装置(40)と、装置(50)と、加工機(60)とは、一事業者によって所有されていてもよく、互いに異なる事業者によって所有されていてもよい。これらは、後述の参照実施形態の学習器(200)及び加工機(60)についても同様である。
方法は、コンピュータプログラムによって実行され得る。コンピュータプログラムは、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体によって記録され得る。
方法は、図7のフローチャートに従って実行される。
ステップS1において、患者の口腔内の情報が取得される。
この例では、患者の口腔内の情報は、口腔内の構造の形状情報と、該構造の色調情報と、を含む。典型的には、この構造は、歯牙を含む。典型的には、形状情報は、構造のサイズ情報を含んでいる。形状情報によって、作製するべき補綴物の形状を決定することが可能となり、その補綴物の母材であるミルブランク部のサイズを決定することが可能となる。色調情報によって、作製するべき補綴物の色調を決定することが可能となり、ミルブランク部の色調を決定することが可能となる。
患者の口腔内の情報は、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士などの人間による目視によって、視覚情報として取得することができる。患者の口腔内の情報は、スキャナなどの計測機器によって、計測情報として取得することもできる。患者の口腔内の情報は、カメラによって、画像情報として取得することもできる。
取得された患者の口腔内の情報は、データとして記録される。以下では、口腔内の構造を表すデータを、プラットホームデータ(11)と称することがある。この例では、プラットホームデータ(11)は、形状データと、色調データを含む。典型的には、形状データは、サイズデータを含んでいる。
ステップS2において、ワークデータ(31)が作成される。
ワークデータ(31)は、加工に供されるミルブランク部を表すデータである。ワークデータ(31)は、エナメル層(1)を表す外層(32)と外層(32)の内側に存在する内層(33)とを有する。ワークデータ(31)の各層間には境界が形成されている。典型的には、ワークデータ(31)は、3次元すなわち立体的なデータである。
この例では、ワークデータ(31)は、図1のミルブランク部を表すデータである。つまり、外層(32)はエナメル層(1)を表し、内層(33)はボディ層(3)を表す。外層(32)と内層(33)との間には、境界(35)が形成されている。ワークデータ(31)は、支持部を表す支持部データ(39)と関連づけられていてもよい。
ワークデータ(31)は、第1座標系で作成される。第1座標系として、直交座標系、回転座標系などの任意の座標系を用いることができる。第1座標系の原点は、例えば、ワークデータ(31)の中心点である。
この例では、ミルブランクの候補が複数存在する。このことは、ミルブランク部の候補が複数存在することを意味する。それらの候補の中から、1つの候補が選択される。この選択は、コンピュータ(51)の操作者によって、形状情報及び色調情報に基づいて行われる。具体的には、操作者は、形状情報に基づいて作製するべき補綴物のサイズを予想し、そのサイズをカバーできるのはどの候補なのかについて、検討をつける。また、操作者は、色彩情報に基づいて、上記予想上の補綴物の表面色調をその周囲の歯牙などの表面色調に調和させるのに適しているのはどの候補なのかについて、検討をつける。操作者は、これらの検討結果に基づいて、複数の候補の中から1つの候補を選択する。そのようにして選択されたミルブランク部を表すワークデータ(31)が作成される。複数のミルブランク部の候補に対応するワークデータ(31)の候補を予め準備しておき、選択したミルブランク部に対応するワークデータ(31)をその候補の中から選択してもよい。本明細書では、このようなワークデータ(31)の選択も、ワークデータ(31)の作成に該当することとする。
ただし、コンピュータ(51)は、形状情報及び色調情報に基づいてワークデータ(31)を自動的に作成するように構成されていてもよい。
この例では、図8に示すように、ワークデータ(31)の作成は、コンピュータ(51)において行われる。ただし、ワークデータ(31)の作成は、他の機器において行われてもよい。
作成されたワークデータ(31)は、記録部に記録される。具体的には、作成されたワークデータ(31)の各層の色調及び形状が、データとして記録部に記録される。記録部は、コンピュータ(51)又は上記機器の構成要素であってもよく、これらの外付け記録媒体であってもよい。
色調データは、少なくとも1つの要素を含む。要素の例は、上述のL*、a*、b*、などである。また、要素の他の例は、c*=(a*2+b*21/2で与えられる彩度である。要素の他の例は、XYZ表色系などの、L*a*b*表色系以外の要素である。
ステップS3において、補綴物形状データ(20)が作成される。
補綴物形状データ(20)は、ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表す。典型的には、補綴物形状データ(20)は、3次元すなわち立体的なデータである。
補綴物形状データ(20)は、第2座標系で作成される。第2座標系として、直交座標系、回転座標系などの任意の座標系を用いることができる。
具体的には、ステップS3の補綴物形状データ(20)は、プラットホームデータ(11)に基づいて作成される。補綴物形状データ(20)の作成について、図9~12を参照しながら説明する。
図9及び10に、プラットホームデータ(11)を示す。プラットホームデータ(11)のうちのいずれの部分を利用して補綴物を設計するのかが決定される。具体的には、複数の区画点(13)がプロットされる。図9では、説明の便宜上、これらの区画点(13)を結ぶ点線(14)を描いている。点線(14)内に拡がる領域(12)が、補綴物を設計するのに利用される。別の言い方をすると、複数の区画点(13)に囲まれた領域(12)が、補綴物を設計するのに利用される。
図11及び12の例では、領域(12)に沿って、補綴物形状データ(20)が作成される。具体的には、領域(12)を覆うように、補綴物形状データ(20)が作成される。
図9~12の例では、領域(12)は、歯牙を表すデータである。この場合、領域(12)を、歯牙データ(12)と称することができる。
典型的には、第2座標系は、プラットホームデータ(11)の座標系と、同じである。この場合、第2座標系を、プラットホーム座標系と称することができる。
この例では、図8に示す設計装置(40)あるいはその操作者に、形状情報が与えられる。そして、操作者が、設計装置(40)を用いて、形状情報に基づいて補綴物形状データ(20)を作成する。ただし、設計装置(40)は、形状情報に基づいて補綴物形状データ(20)を自動的に作成するように構成されていてもよい。変形例では、コンピュータ(51)に、形状情報が与えられる。そして、操作者がコンピュータ(51)を用いて、あるいはコンピュータ(51)が自動的に、形状情報に基づいて補綴物形状データ(20)を作成する。
図7に戻って、ステップS4において、第1座標系と第2座標系とが一元化される。
図13及び14に、一元化された座標系を示す。この座標系には、ワークデータ(31)と、補綴物形状データ(20)と、が共存している。なお、図13の例と図14の例とでは、補綴物形状データ(20)、外層(32)及び内層(33)の形状が異なる。
図14に示すように、ワークデータ(31)に相対的な補綴物形状データ(20)の位置及び姿勢は、変更可能である。図14では、第1の位置にある補綴物形状データ(20)に、符号(20A)が付されている。第2の位置にある補綴物形状データ(20)に、符号(20B)が付されている。図14は、補綴物形状データ(20)が第1の位置から第2の位置へと移動する様を表している。
この例では、座標の一元化は、コンピュータ(51)において実現される。一元化された座標におけるワークデータ(31)及び補綴物形状データ(20)は、ディスプレイ(52)に表示される。補綴物形状データ(20A)と補綴物形状データ(20B)の間の移動は、操作者が、ディスプレイ(52)を見ながら、コンピュータ(51)のマウスを用いて行うことができる。
一元化された座標において、ワークデータ(31)は、実サイズのミルブランクを任意の倍率で拡大又は縮小したサイズで表されてもよい。一元化された座標において、補綴物形状データ(20)は、実サイズの補綴物を任意の倍率で拡大又は縮小したサイズて表されてもよい。両倍率は、例えば、コンピュータ(51)の操作者によって適切に設定され得る。具体的には、ミルブランクの材料の焼成に伴うサイズ変更を考慮して(詳細は後述)、両倍率の比率は適切に設定され得る。
図7に戻って、ステップS5において、補綴物形状データ(20)の外側表面(25)及び内側表面(21)が定義される。
図12に示すように、内側表面(21)は、補綴物形状データ(20)のうち、領域(12)に面する面である。外側表面(25)は、補綴物形状データ(20)のうち、内側表面(21)からみて領域(12)とは反対側に面する面である。
内側表面(21)は、例えば、以下のようにして定義される。まず、補綴物形状データ(20)から、領域(12)に面する複数の内側点(22)が抽出される。図12において、内側点(22)は、「○」のマークで模式的に示されている。典型的には、抽出される内側点(22)の数は、3つ以上である。これらの内側点(22)を含む面が作成される。こうして作成された面が、内側表面(21)として定義される。
一具体例では、図15に示すように、近接する3つの内側点(22)を頂点とする三角形のセル(23)が、複数個構成される。図15において、複数のセル(23)のうちの1つにハッチングを付している。複数のセル(23)によって、メッシュ(24)が構成される。メッシュ(24)によって、内側表面(21)が構成される。
外側表面(25)は、例えば、以下のようにして定義される。まず、補綴物形状データ(20)から、内側表面(21)からみて領域(12)とは反対側に面する複数の外側点(26)が抽出される。図12において、外側点(26)は、「×」のマークで模式的に示されている。典型的には、抽出される外側点(26)の数は、3つ以上である。これらの外側点(26)を含む面が作成される。こうして作成された面が、外側表面(25)として定義される。
一具体例では、図16に示すように、近接する3つの外側点(26)を頂点とする三角形のセル(27)が、複数個構成される。図16において、複数のセル(27)のうちの1つにハッチングを付している。複数のセル(27)によって、メッシュ(28)が構成される。メッシュ(28)によって、外側表面(25)が構成される。
図7に戻って、ステップS6において、ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)との相対位置が仮決定される。
具体的には、補綴物形状データ(20)の内側表面(21)と、外層(32)と内層(33)との境界(35)と、補綴物形状データ(20)の外側表面(26)と、がこの順に並ぶように、相対位置が調整される。そして、これらの要素の位置が、この調整がなされた位置に仮決定される。
この例では、相対位置の調整は、操作者が、ディスプレイ(52)を見ながら、コンピュータ(51)のマウスを用いて補綴物形状データ(20)を移動させることによって行う。ただし、相対位置の調整は、コンピュータ(51)によって自動的に行われてもよい。
図17において、上記の仮決定がなされた状態における境界(35)の位置を、点線で模式的に示している。図12は断面図であるため、境界(35)は線状に表されているが、実際には、境界(35)は面状に拡がっている。
補綴物形状データ(20)の全体が、内側表面(21)と境界(35)と外側表面(26)とがこの順に並ぶという条件を満たしていてもよい。補綴物形状データ(20)の一部の領域がこの条件を満たしていなくてもよい。
ステップS6のように相対位置が調整された調整状態においては、境界(35)が、内側表面(21)と境界(35)と外側表面(26)との間に配置される。以下、内側表面(21)と境界(35)との間の距離を、内側距離Liと称することがある。外側表面(25)と境界(35)との間の距離を、外側距離Loと称することがある。
図7のステップS7においては、内側距離Li及び外側距離Loが、コンピュータ(51)によって計算される。
内側距離Li及び外側距離Loの計算について、図18を参照しながら説明する。なお、図18では、図面の見易さを考慮して、ワークデータ(31)の外層(32)の図示を省略している。また、図18では、境界(35)に含まれた1つの点に「△」マークを付している。図18は、その「△」マークの点の周囲の拡大図も含んでいる。
内側距離Liとして、内側点(22)と境界(35)との間の最短距離を採用できる。内側点(22)と境界(35)の間に存するピクセル又はボクセルの個数から概算される距離を、内側距離Liとして採用してもよい。
内側距離Liとして、複数の距離の平均値を採用してもよい。例えば、内側距離Liとして、第1内側点(22)と境界(35)との間の最短距離と、第2内側点(22)と境界(35)との間の最短距離と、・・・第M内側点(22)と境界(35)との間の最短距離と、の平均値を採用してもよい。ここで、Mは、2以上の自然数である。こうして得られた平均値である内側距離Liは、典型的には、内側表面(21)におけるこれら複数の内側点(22)に囲まれた部分と、境界(35)と、の間の距離として扱われる。
外側距離Loとして、外側点(26)と境界(35)との間の最短距離を採用できる。外側点(26)と境界(35)の間に存するピクセル又はボクセルの個数から概算される距離を、外側距離Loとして採用してもよい。
外側距離Loとして、複数の距離の平均値を採用してもよい。例えば、外側距離Loとして、第1外側点(26)と境界(35)との間の最短距離と、第2外側点(26)と境界(35)との間の最短距離と、・・・第N外側点(26)と境界(35)との間の最短距離と、の平均値を採用してもよい。ここで、Nは、2以上の自然数である。こうして得られた平均値である外側距離Loは、典型的には、外側表面(26)におけるこれら複数の外側点(26)に囲まれた部分と、境界(35)と、の間の距離として扱われる。
ステップS6のように相対位置が調整された調整状態においては、ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)との重複部分が現れる。以下、この重複部分を、仮想補綴物と称することがある。仮想補綴物の表面の色調を、仮想色調と称することがある。
仮想補綴物の形状は、相対位置をミルブランク部の加工に反映させれば得られることが想定される計算上の補綴物の形状である。仮想色調は、当該計算上の補綴物の表面色調である。
ミルブランク部の材料には、焼成により色調が変化するものと変化しないものとがある。典型的には、レジンは焼成されても色調が変化せず、セラミックは焼成されると色調が変化する。例えば、ジルコニアは、焼成されると色調が変化する。仮想色調に、焼成による色調の変化を反映させることができる。この例では、ミルブランク部の材料として焼成により色調が変化する材料を用いる場合、仮想色調は、その色調変化後の材料に基づいた表面色調を表す。
ステップS8において、仮想色調が、コンピュータ(51)によって計算される。
具体的には、仮想色調は、内側距離Liと、外側距離Loと、外層(32)の色調データと、内層(33)の色調データと、に基づいて、コンピュータ(51)によって計算される。ここで、「・・・の色調データに基づいて」は、色調データを構成する全ての要素を用いる態様のみならず、色調データを構成する一部の要素を用いる態様を含む概念である。各色調データは、上述の記録部から読み出され得る。
ここで、内側距離Liと外側距離Loとの合計を総距離Ltと定義する。この例では、総距離Ltに対する外側距離Loの比率Lo/Ltが大きいほど、外層(32)の色調データの少なくとも一要素を、仮想色調に強く反映させる。総距離Ltに対する内側距離Liの比率Li/Ltが大きいほど、内層(33)の色調データの少なくとも一要素を、仮想色調に強く反映させる。要素は、例えば、上述のL*、a*、b*、c*などである。要素は、L*a*b*表色系以外の要素であってもよい。
仮想色調のある要素の計算において、外層(32)又は内層(33)の色調データを無視してもよい。
一具体例において、仮想色調の計算は、以下のようになされる。色調のある要素を、要素Eとする。外層(32)の要素Eを表す数値を、voとする。内層(33)の要素Eを表す数値を、viとする。仮想色調の要素Eを表す数値を、veとする。数値vo及び数値viは、色調データの要素に該当する。仮想色調の要素Eを表す数値veは、総距離Ltと、内側距離Liと、外側距離Loと、数値viと、数値voと、係数Kiと、係数Koとから、以下の数式に従って計算される。
ve=Ki・vi・Li/Lt+Ko・vo・Lo/Lt
本発明者は、仮想色調を数式で表現できることを、実際にペレットを作製することにより確認した。ペレットの作製方法は、以下のとおりである。まず、ボディ層(3)を構成する材料でできた円柱状の第1層と、エナメル層(1)を構成する材料でできた円柱状の第2層と、の積層体を作成する。次に、この積層体を焼結することによって、総厚み1.5mmのペレットを得る。このような作製方法により、総厚み1.5mmのペレットを複数個作製した。各ペレットでは、第1層と第2層の厚みを変更した。つまり、作製した各ペレットでは、総厚みは1.5mmで同じであるものの、第2層の厚みW2に対する第1層の厚みW1の比率W1/W2が異なる。
図19の横軸は、比率W1/W2である。縦軸は、c*である。各プロットは、実際に作製した各ペレットの比率W1/W2及びc*の関係を表す。図19の直線は、最小二乗法により求めたこれらのプロットの近似直線である。図19から、近似直線からの各プロットの乖離は小さいことが読み取れ、c*を数式で表現することが妥当であることが分かる。なお、図19の近似直線は、y=0.279x+9.815である。yは、c*である。xは、比率W1/W2である。
図7に戻って、ステップS9において、コンピュータ(51)によって、仮想色調が表示される。
具体的には、コンピュータ(51)は、仮想色調をディスプレイ(52)に表示させる。より具体的には、コンピュータ(51)は、仮想色調を表す信号をディスプレイ(52)に送信する。仮想色調の表示の態様は、特に限定されない。仮想色調の表示は、色調が付された画像の表示であってもよく、色調を表すテキストの表示であってもよい。
ステップS10において、仮想色調が適切か否かが判断される。仮想色調が適切である場合、ステップS11に進む。仮想色調が適切でない場合、ステップS6に進み、そのステップS6において、前回のステップS6とは異なる相対位置への調整がなされ、その相対位置の仮決定がなされる。
この例では、ステップS10の判断は、コンピュータ(51)の操作者によってなされる。
ただし、ステップS10の判断は、コンピュータ(51)によって自動的になされてもよい。例えば、仮想色調の1又は複数の要素を表す数値が各々の閾値範囲に収まっているか否かに基づいて、そのような自動的な判断をすることができる。そのような自動的は判断が行われる場合、ステップS9は省略可能である。
ステップS11において、相対位置が本決定される。
具体的には、ステップS11では、直近のステップS6で仮設定された相対位置が、適切な相対位置として、本決定される。そして、本決定された相対位置に基づく仮想補綴物が反映された加工データが作成される。別の言い方をすると、加工データは、そのような仮想補綴物が反映された情報を含む。加工データは、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられる。この加工データは、加工機(60)によって認識可能である。
ステップS12において、加工データが出力される。
具体的には、ステップS12では、加工データが、コンピュータ(51)から出力される。この出力の態様は、特に限定されない。例えば、出力は、コンピュータ(51)に取り付けられた外付け記録媒体をコンピュータ(51)から取り外すことを伴ってもよい。また、出力は、加工データの無線又は有線による送信によってなされてもよい。
ステップS13において、加工データが加工機(60)に入力される。
具体的には、ステップS13の入力の態様は、特に限定されない。例えば、入力は、上記外付け記録媒体を加工機(60)に取り付けることによって、なされてもよい。また、入力は、加工データの無線又は有線による受信によってなされてもよい。
ステップS14において、ミルブランク部が加工機(60)で加工される。
具体的には、ステップS14では、ステップS13で入力された加工データに従って、ミルブランク部が加工機(60)で加工される。加工データには、ステップS11で本決定された相対位置に基づいた仮想補綴物が反映されている。そのような加工データが用いられるため、ステップS14では、仮想補綴物に対応する補綴物が得られるように、ミルブランク部が加工され得る。加工は、例えば、切削である。
この例では、上述のようにステップS2で複数の候補から選択されたミルブランクが、加工機(60)にセットされる。セットするべきミルブランクが容易に分かるように、加工データには、セットされるべきミルブランクの情報(型番など)が紐づけられていてもよい。そのような情報が加工データとともに出力されるようにコンピュータ(51)を構成することも可能である。例えば、歯科技工士などの人間が、そのような情報を参照し、適切なミルブランクをセットする。
この例では、第1座標系の原点(以下、ワークデータ原点と称することがある)は、加工機(60)の座標系の原点(以下、加工原点と称することがある)を表している。第1座標系に補綴物形状データ(20)がインポートされることによってステップS4の座標系の一元化がなされているため、一元化された座標系の原点はワークデータ原点と同じである。ステップS14では加工機(60)に加工データが与えられ、加工データは、仮想補綴物が反映されており、かつ、ワークデータ原点を表す情報を含んでいる。このため、加工機(60)は、加工データから、仮想補綴物の形状が反映された被加工体(ミルブランク部の加工したもの)の絶対位置を容易に認識できる。別の言い方をすると、加工機(60)は、加工データから、ミルブランク部における加工により取り除かれるべき領域の絶対位置を容易に決定できる。このことは、ステップS14においてミルブランク部を適切に加工する観点から有利である。
ただし、ステップS4において、第2座標系にワークデータ(31)がインポートされることによって、座標系の一元化を行うこともできる。
図7のフローチャートに従った方法は、ワークデータ(31)が図1のミルブランク部を表すデータである場合のみならず、ワークデータ(31)が図3のミルブランク部を表すデータである場合にも適用可能である。つまり、外層がエナメル層(1)を表し、内層が中間層(2)及びボディ層(3)の組み合わせを表す場合にも適用可能である。
以上の説明から理解されるように、本発明に係る方法は、コンピュータ(51)で実行される方法であって、調整状態において、内側距離Liを計算することと、外側距離Loを計算することと、仮想色調を、内側距離Liと、外側距離Loと、外層(32)の色調データと、内層(33)の色調データと、に基づいて計算することと、を含む。このような方法によれば、得られるであろう補綴物の表面の色調をコンピュータ(51)により推定できる。このため、この方法は、複数の層を含み適切な表面色調を有する補綴物を得るのに役立つ。具体的には、内側距離Li、外側距離Lo及び仮想色調は、コンピュータ(51)によって計算される。
具体的には、上記方法は、仮想色調を表示することを含む。そのようにすれば、コンピュータ(51)の操作者は、仮想色調を認識できる。具体的には、仮想色調は、コンピュータ(51)によって、ディスプレイ(52)に表示される。
外側表面(25)は、唇に面する部分を表す唇側部を含んでいてもよい。このようにすれば、唇側部の色調を表示することができる。このことは、補綴物における唇に面する部分に現れるであろう色調を確認できることを意味する。そのような確認ができれば、人の目につき易い当該部分の審美性を確保し易い。
仮想色調を、歯牙データ(12)の色調データに基づいて計算してもよい。ここで、歯牙データ(12)は、歯牙を表すデータである。外層(32)及び内層(33)の色調データに加え、歯牙データ(12)の色調データを利用すれば、仮想色調を正確に計算し易い。
図12に示すように、内側表面(21)は、歯牙データ(12)との間に隙間(17)が生じるように形成されていてもよい。現実には、歯牙と補綴物とは、それらの間に介在するセメントによって接合される。隙間(17)を考慮して内側表面(21)を形成することにより、セメントの介在を考慮した補綴物形状データ(20)を得ることができる。
仮想色調を、セメントデータの色調データに基づいて生成してもよい。ここで、セメントデータは、歯牙と補綴物の間に介在されるセメントを表すデータである。外層(32)及び内層(33)の色調データに加え、セメントデータの色調データを利用すれば、仮想色調を正確に計算し易い。
歯牙データ(12)及びセメントデータの色調データは、外層(32)及び内層(33)の色調データと同様、上記記録部に記録され得る。
図20に示すように、内側表面(21)は、凹面(21c)を有していてもよい。ワークデータ(31)は、ミルブランク部を切削するための加工機(60)におけるスピンドルが延びる方向を表すZ軸(15)を有していてもよい。調整状態は、切削可能条件が成立するように、相対位置が調整された状態であってもよい。ここで、切削可能条件は、Z軸(15)に平行に延び凹面(21c)と交差する全ての直線(SL)が、凹面(21c)と1回だけ交差するという条件である。このようにすれば、スピンドルによる切削により、凹面(21c)に対応する凹面を形成できる。図21に、切削可能条件を満たしていない例を示す。図21では、凹面(21c)と2回交差する直線(SL)が存在する。図21の例では、凹面(21c)のうち矢印NG1と矢印NG2の間の部分は、実際にはスピンドルでは形成できない。しかし、切削可能条件が満たされていれば、そのような部分は生じない。
内側表面(21)が凹面(21c)を有している場合において、スピンドルで形成できない部分を発生させないあるいは少なくする観点から、凹面(21c)の開口面(20оf)の法線からのZ軸(15)のずれを、例えば、0~35°にすることができる。なお、スピンドルで形成できない部分は、歯科技工士などの人間が形成できる。
方法は、切削可能条件が成立していない場合において警告を行うことを含んでいてもよい。そのようにすれば、コンピュータ(51)の操作者は、現在の調整状態では、スピンドルによる切削により凹面を形成できないことを知ることができる。警告は、情報の表示により行われてもよく、音により行われてもよい。具体的には、警告は、コンピュータ(51)によって行われる。
情報の表示による警告は、コンピュータ(51)がディスプレイ(52)に情報を表示させることによって実行できる。音による警告は、コンピュータ(51)が装置(50)における図示しないスピーカーに音を発せさせることによって実行できる。これらは、他の場合に行われる警告についても同様である。
上記の例では、方法は、ミルブランク部の加工に用いられる加工データを出力することを含む。加工機(60)においてミルブランク部を加工するのに用いられる加工座標系の原点を加工原点と定義し、ワークデータ(30)を表すのに用いられる第1座標系の原点をワークデータ原点と定義したとき、ワークデータ原点は、加工原点を表す。仮想補綴物は、第1座標系で表されている。加工データには、仮想補綴物が反映されている。さらに、加工データは、ワークデータ原点を表す情報を含む。このようにすれば、加工機(60)は、加工データから、ミルブランク部における加工により取り除かれるべき領域の絶対位置を容易に決定できる。このことは、ミルブランク部を適切に加工する観点から有利である。
なお、この例では、「仮想補綴物が反映された加工データ」は、仮想補綴物の形状を表す情報を含むデータである。「仮想補綴物が反映された加工データ」は、以下の第1の場合と、第2の場合と、を包含した表現である。第1の場合は、仮想補綴物が表されている座標系における仮想補綴物のサイズが、加工データに基づいて得られる被加工体のサイズと同じである場合である。第2の場合は、仮想補綴物が表されている座標系における仮想補綴物のサイズが、加工データに基づいて得られる被加工体のサイズと異なる場合である。
補綴物は、ミルブランク部を加工して被加工体を形成し、被加工体を焼成してサイズを1/X倍に変化させることによって得られるものであってもよい。具体的には、ミルブランク部の材料によっては、その被加工体は、焼成されるとサイズが変化することがある。例えば、ミルブランク部の材料がジルコニアなどのセラミックである場合、ミルブランク部の被加工体は、焼成されると収縮することがある。これを踏まえ、ワークデータ(31)及び補綴物形状データ(20)が表される座標系において、ワークデータ(31)が、加工前かつ焼成前の実サイズのミルブランク部の1/Y倍のサイズで表され、補綴物形状データ(20)が、実サイズの補綴物のZ倍のサイズで表されるようにしてもよい。ここで、Xは、1を除く正の値である。Yは、1を含む正の値である。Zは、1を含む正の値である。X=Y×Zである。このようにすれば、焼成によるサイズ変更を考慮した上で、ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)との重複部分が適切に現れる。
方法は、X=Y×Zを満たすように、Y及びZを調整することを含んでいてもよい。この調整は、例えば、コンピュータ(51)の操作者によって行われる。
コンピュータ(51)の操作者がY及びZの一方を変化させると、X=Y×Zの関係が維持されるようにY及びZの他方が自動的に変化するように、コンピュータ(51)が構成されていてもよい。また、コンピュータ(51)は、X=Y×Zの関係が満たされるように、Y及びZを自動的に決定するように構成されていてもよい。
一例では、Xの値は、ミルブランク部の各候補に紐づけられた状態で記録部に記録されている。別例では、Xの値は、キーボードなどによってコンピュータ(51)に入力される。Xとして、1を含む任意の正の値を用いることができる。上述のように、Xが1を除く正の値である場合に、焼成によるサイズ変更を考慮した重複部分が得られるという効果がもたらされる。
上記の例では、方法は、ミルブランク部の加工に用いられる加工データを出力することを含む。加工データは、被加工体を表すデータであって仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含んでいてもよい。このような加工データを加工機(60)に与えれば、加工機(60)において、焼成によるサイズ変更を考慮した被加工体を得ることができ、ちょうどよいサイズの補綴物を得ることができる。例えば、焼成が収縮を伴う場合、補綴物のサイズよりも大きいサイズの被加工体を得ることができ、被加工体の焼成による収縮によりちょうどよいサイズの補綴物を得ることができる。具体的には、出力は、コンピュータ(51)によって行われる。
焼成が収縮を伴う場合、Xは、1よりも大きい。焼成が拡大を伴う場合、Xは、1よりも小さい。Xは、1よりも大きくてもよく、1よりも小さくてもよい。Xは、例えば、1/2~2である。
一具体例では、Y=Xであり、Z=1である。このようにすれば、ワークデータを、焼成による被加工体のサイズ変化倍率の分だけ、加工前かつ焼成前のミルブランク部をサイズ変更したデータとすることができる。また、補綴物形状データを、補綴物と同じサイズの形状を表すデータとすることができる。別の言い方をすると、焼成後のサイズを有する各種データが得られる。
別の具体例では、Y=1であり、Z=Xである。このようにすれば、ワークデータを、加工前かつ焼成前のミルブランク部と同じサイズのデータとすることができる。また、補綴物形状データを、被加工体と同じサイズの形状を表すデータとすることができる。別の言い方をすると、焼成前のサイズを有する各種データが得られる。
方法は、補綴物形状データ(20)がワークデータ(31)からはみ出している場合において、警告を行うことを含んでいてもよい。そのようにすれば、コンピュータ(51)の操作者は、現在の調整状態における補綴物形状データ(20)に対応する補綴物を得ることができないことを知ることができる。警告は、情報の表示により行われてもよく、音により行われてもよい。具体的には、警告は、コンピュータ(51)によって行われる。
本発明は、上記方法を実行するための装置(50)であって、コンピュータ(51)を含む、装置(50)を開示する。
一具体例では、ワークデータ(31)及び補綴物形状データ(20)が表される座標系において、ワークデータ(31)は、加工前かつ焼成前の実サイズのミルブランク部の1/Y倍のサイズで表される。この座標系において、補綴物形状データ(20)は、実サイズの補綴物のZ倍のサイズで表される。コンピュータ(51)は、Y及びZを調整できるように構成されている。Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値である。
先に述べたように、補綴物は、ミルブランク部を加工して被加工体を形成し、被加工体を焼成してサイズを1/X倍に変化させることによって得られるものであってもよい。この場合において、コンピュータ(51)の操作者がY及びZの一方を変化させると、X=Y×Zの関係が維持されるようにY及びZの他方が自動的に変化するように、コンピュータ(51)が構成されていてもよい。また、コンピュータ(51)は、X=Y×Zの関係が満たされるように、Y及びZを自動的に決定するように構成されていてもよい。
先に述べたように、一例では、Xの値は、ミルブランク部の各候補に紐づけられた状態で記録部に記録されている。別例では、Xの値は、キーボードなどによってコンピュータ(51)に入力される。Xとして、1を含む任意の正の値を用いることができる。
一具体例では、コンピュータ(51)は、ミルブランク部を加工して被加工体を形成するのに用いられる加工データを出力する。加工データは、被加工体を表すデータであって仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む。
本発明は、上記装置(50)と、加工機(60)と、を備えたシステム(100)であって、加工機(60)は、仮想補綴物が反映された加工データに基づいて、ミルブランク部を加工する、システム(100)を開示する。
本発明は、コンピュータ(51)による実行時において、上記の方法をコンピュータ(51)に実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムを開示する。
一具体例では、ワークデータ(31)及び補綴物形状データ(20)が表される座標系において、ワークデータ(31)は、加工前かつ焼成前の実サイズのミルブランク部の1/Y倍のサイズで表される。この座標系において、補綴物形状データ(20)は、実サイズの補綴物のZ倍のサイズで表される。コンピュータプログラムは、コンピュータ(51)を、Y及びZを調整できるようにする。Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値である。
先に述べたように、補綴物は、ミルブランク部を加工して被加工体を形成し、被加工体を焼成してサイズを1/X倍に変化させることによって得られるものであってもよい。この場合において、コンピュータ(51)の操作者がY及びZの一方を変化させると、X=Y×Zの関係が維持されるようにY及びZの他方が自動的に変化するように、コンピュータプログラムが構成されていてもよい。また、コンピュータプログラムは、X=Y×Zの関係が満たされるように、Y及びZをコンピュータ(51)が自動的に決定するように構成されていてもよい。
先に述べたように、一例では、Xの値は、ミルブランク部の各候補に紐づけられた状態で記録部に記録されている。別例では、Xの値は、キーボードなどによってコンピュータ(51)に入力される。Xとして、1を含む任意の正の値を用いることができる。
一具体例では、コンピュータプログラムは、コンピュータ(51)に、ミルブランク部を加工して被加工体を形成するのに用いられる加工データの出力を実行させる。加工データは、被加工体を表すデータであって仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む。
本発明は、上記のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体を開示する。記録媒体は、オフラインの記録媒体であってもよく、オンライン上の記録媒体であってもよい。オフラインの記録媒体は、例えば、HDD、SDカード、USBメモリなどの半導体記録媒体、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、MOなどの光磁気記録媒体、CD、DVDなどの光学記録媒体、などである。オンライン上の記録媒体は、例えば、クラウドサーバー、FTPサーバー、ネットワークストレージなどである。
本発明は、メモリとプロセッサとを含む装置(50)であって、
加工に供されるミルブランク部を表すデータであってエナメル層(1)を表す外層(32)と外層(32)の内側に存在する内層(33)とを有するデータをワークデータ(31)と定義し、ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データ(20)と定義したとき、
補綴物形状データ(20)の内側表面(21)と、外層(32)と内層(33)との境界(35)と、補綴物形状データ(20)の外側表面(25)と、がこの順に並ぶように、ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)の相対位置が調整された調整状態において、プロセッサは、
内側表面(21)と境界(35)との間の距離である内側距離Liを計算し、
外側表面(25)と境界(35)との間の距離である外側距離Loを計算し、
ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)との重複部分を仮想補綴物と定義し、仮想補綴物の表面の色調を仮想色調と定義したとき、仮想色調を、内側距離Liと、外側距離Loと、外層(32)の色調データと、内層(33)の色調データと、に基づいて計算する、装置(50)を開示する。
本発明は、メモリとプロセッサとを含む装置(50)と、加工機(60)と、を備えたシステム(100)であって、
加工に供されるミルブランク部を表すデータであってエナメル層(1)を表す外層(32)と外層(32)の内側に存在する内層(33)とを有するデータをワークデータ(31)と定義し、ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データ(20)と定義したとき、
補綴物形状データ(20)の内側表面(21)と、外層(32)と内層(33)との境界(35)と、補綴物形状データ(20)の外側表面(25)と、がこの順に並ぶように、ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)の相対位置が調整された調整状態において、プロセッサは、
内側表面(21)と境界(35)との間の距離である内側距離Liを計算し、
外側表面(25)と境界(35)との間の距離である外側距離Loを計算し、
ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)との重複部分を仮想補綴物と定義し、仮想補綴物の表面の色調を仮想色調と定義したとき、仮想色調を、内側距離Liと、外側距離Loと、外層(32)の色調データと、内層(33)の色調データと、に基づいて計算し、
加工機(60)は、仮想補綴物が反映された加工データに基づいて、ミルブランク部を加工する、システム(100)を開示する。
本発明は、コンピュータプログラムであって、
加工に供されるミルブランク部を表すデータであってエナメル層(1)を表す外層(32)と外層(32)の内側に存在する内層(33)とを有するデータをワークデータ(31)と定義し、ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データ(20)と定義したとき、
補綴物形状データ(20)の内側表面(21)と、外層(32)と内層(33)との境界(35)と、補綴物形状データ(20)の外側表面(25)と、がこの順に並ぶように、ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)の相対位置が調整された調整状態において、コンピュータ(51)に、
内側表面(21)と境界(35)との間の距離である内側距離Liを計算することと、
外側表面(25)と境界(35)との間の距離である外側距離Loを計算することと、
ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)との重複部分を仮想補綴物と定義し、仮想補綴物の表面の色調を仮想色調と定義したとき、仮想色調を、内側距離Liと、外側距離Loと、外層(32)の色調データと、内層(33)の色調データと、に基づいて計算することと、を実行させる、コンピュータプログラムを開示する。
本発明は、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体であって、
加工に供されるミルブランク部を表すデータであってエナメル層(1)を表す外層(32)と外層(32)の内側に存在する内層(33)とを有するデータをワークデータ(31)と定義し、ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データ(20)と定義したとき、
補綴物形状データ(20)の内側表面(21)と、外層(32)と内層(33)との境界(35)と、補綴物形状データ(20)の外側表面(25)と、がこの順に並ぶように、ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)の相対位置が調整された調整状態において、コンピュータ(51)に、
内側表面(21)と境界(35)との間の距離である内側距離Liを計算することと、
外側表面(25)と境界(35)との間の距離である外側距離Loを計算することと、
ワークデータ(31)と補綴物形状データ(20)との重複部分を仮想補綴物と定義し、仮想補綴物の表面の色調を仮想色調と定義したとき、仮想色調を、内側距離Liと、外側距離Loと、外層(32)の色調データと、内層(33)の色調データと、に基づいて計算することと、を実行させるコンピュータプログラムが記録された記録媒体を開示する。記録媒体は、オフラインの記録媒体であってもよく、オンライン上の記録媒体であってもよい。オフラインの記録媒体は、例えば、HDD、SDカード、USBメモリなどの半導体記録媒体、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、MOなどの光磁気記録媒体、CD、DVDなどの光学記録媒体、などである。オンライン上の記録媒体は、例えば、クラウドサーバー、FTPサーバー、ネットワークストレージなどである。
[参考実施形態1:学習器を用いた加工データの作成]
図7などを参照して説明した上記実施形態では、距離Li、距離Lo及び仮想色調の計算結果に基づいて、加工用の加工データを作成した。しかし、加工データを、学習器(200)を用いて作成することもできる。以下、図22を参照しつつ、学習器(200)を用いて加工データを作成する参考実施形態1について、説明する。なお、参考実施形態1では、図7などを参照して説明した上記実施形態と同様の内容については、説明を省略することがある。
学習器(200)は、教師データ及び正解ラベルの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を行う。図22の例では、教師データは、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する。正解ラベルは、加工データに対応する。学習器(200)は、教師あり学習後において、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに基づいて加工データを作成する。
このようにすれば、補綴物形状データ及びリファレンス色調データが反映された加工データを作成できる。具体的には、適切な教師データ及び正解ラベルにより学習器(200)に教師あり学習を行わせることによって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから加工データを適切に作成できる学習器(200)を得ることができる。そのようにして得られた学習器(200)によれば、適切な表面色調を有する補綴物を得ることができる。このため、参考実施形態1の方法は、複数の層を含み適切な表面色調を有する補綴物を得るのに役立つ。
リファレンス色調データとして、歯牙データ(12)の色調データを用いることができる。リファレンス色調データは、人為的に定められた目標色調データであってもよい。
教師データ及び正解ラベルは、例えば、図7などを参照して説明した上記実施形態で加工データを作成しているときに、得ることができる。具体的には、教師データとして、図7のステップS3で作成した補綴物形状データと、歯牙データ(12)の色調データと、を採用できる。また、教師データとして、図7のステップS3で作成した補綴物形状データと、コンピュータ(51)の操作者が定めた目標色調データと、を採用できる。正解ラベルとして、ステップS12で出力される加工データを採用できる。
図7のステップS2に関して説明したとおり、ミルブランク部の候補が複数存在する場合がある。学習器(200)は、その候補を予め認識していてもよい。そのようにすれば、有限個の候補のいずれかのミルブランク部が採用されるという制約が課されるため、学習器(200)による計算がシンプル化され、結果的に適切な表面色調を有する補綴物を得易くなる。図7を参照して説明した実施形態と同様、加工データには、セットされるべきミルブランク部の情報(型番など)が紐づけられていてもよい。そのような情報が加工データとともに出力されるように学習器(200)を構成することも可能である。
学習機(200)は、上記複数の候補に対応するワークデータ(31)の候補を予め有していてもよい。そして、学習機(200)は、加工データに対応する仮想色調を表示するように構成されていてもよい。具体的には、学習機(200)は、そのような表示をディスプレイに表示させるように構成されていてもよい。より具体的には学習機(200)は、仮想色調を表す信号をディスプレイに送信するよう構成されていてもよい。
学習器(200)は、プロセッサと、メモリと、によって構成できる。学習器(200)は、例えば、ニューラルネットワークである。
参考実施形態1に係る方法は、コンピュータプログラムによって実行され得る。コンピュータプログラムは、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体によって記録され得る。
参考実施形態1から、以下の発明が導かれる。
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を行うことを含む、学習方法。
参考実施形態1から、以下の発明が導かれる。
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成することを含む、方法。
参考実施形態1から、以下の発明が導かれる。
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を行うことと、
教師あり学習後において、学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成することと、を含む、方法。
参考実施形態1は、上記のいずれかの方法を実行するための学習器(200)を開示する。
上記学習器(200)と、加工機(60)とを備え、加工機(60)は、加工データに基づいてミルブランク部を加工する、システム(300)を構成することもできる。
参考実施形態1は、コンピュータによる実行時において、上記のいずれかの方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムを開示する。
参考実施形態1は、上記のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体を開示する。記録媒体は、オフラインの記録媒体であってもよく、オンライン上の記録媒体であってもよい。オフラインの記録媒体は、例えば、HDD、SDカード、USBメモリなどの半導体記録媒体、フレキシブルディスクなどの磁気記録媒体、MOなどの光磁気記録媒体、CD、DVDなどの光学記録媒体、などである。オンライン上の記録媒体は、例えば、クラウドサーバー、FTPサーバー、ネットワークストレージなどである。
参考実施形態1に係る発明は、メモリとプロセッサとを含む装置であって、
メモリ及びプロセッサを含む学習器(200)が構成され、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)は、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を行う、装置を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、メモリとプロセッサとを含む装置であって、
メモリ及びプロセッサを含む学習器(200)が構成され、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)は、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成する、装置を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、メモリとプロセッサとを含む装置であって、
メモリ及びプロセッサを含む学習器(200)が構成され、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)は、
補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を行い、
教師あり学習後において、学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成する、装置を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、メモリとプロセッサとを含む装置と、加工機(60)と、を備えたシステム(300)であって、
メモリ及びプロセッサを含む学習器(200)が構成され、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
加工機(60)は、加工データに基づいて、ミルブランク部を加工し、
学習器(200)は、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を行う、システム(300)を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、メモリとプロセッサとを含む装置と、加工機(60)と、を備えたシステム(300)であって、
メモリ及びプロセッサを含む学習器(200)が構成され、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)は、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成し、
加工機(60)は、加工データに基づいて、ミルブランク部を加工する、システム(300)を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、メモリとプロセッサとを含む装置と、加工機(60)と、を備えたシステム(300)であって、
メモリ及びプロセッサを含む学習器(200)が構成され、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
学習器(200)は、
補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を行い、
教師あり学習後において、学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成し、
加工機(60)は、加工データに基づいて、ミルブランク部を加工する、システム(300)を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、コンピュータプログラムであって、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
コンピュータに、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を実行させる、コンピュータプログラムを開示する。
参考実施形態1に係る発明は、コンピュータプログラムであって、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
コンピュータに、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成することを実行させる、コンピュータプログラムを開示する。
参考実施形態1に係る発明は、コンピュータプログラムであって、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
コンピュータに、
補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習と、
教師あり学習後において、学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成することと、を実行させる、コンピュータプログラムを開示する。
参考実施形態1に係る発明は、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体であって、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
コンピュータに、補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習を実行させる、コンピュータプログラムが記録された記録媒体を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体であって、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
コンピュータに、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成することを実行させる、コンピュータプログラムが記録された記録媒体を開示する。
参考実施形態1に係る発明は、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体であって、
ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義し、補綴物を得るためのミルブランク部の加工に用いられるデータを加工データと定義したとき、
コンピュータに、
補綴物形状データ及びリファレンス色調データに対応する教師データと加工データに対応する正解ラベルとの組み合わせを複数組用いた教師あり学習と、
教師あり学習後において、学習器(200)によって、補綴物形状データ及びリファレンス色調データから、加工データを作成することと、を実行させる、コンピュータプログラムが記録された記録媒体を開示する。
[参考実施形態2]
参考実施形態1では、教師データとして、補綴物形状データ及びリファレンス色調データを用いていた。ただし、他の教師データを用いることもできる。参考実施形態2は、参考実施形態1の教師データを変更した形態である。
具体的には、参考実施形態2では、教師データとして、プラットホームデータ(11)が用いられる。学習器(200)は、教師あり学習後において、プラットホームデータ(11)に基づいて加工データを作成する。このようにしても、参考実施形態1と同様、適切に加工データを作成できる。
上述の説明から理解されるように、プラットホームデータ(11)は、歯牙データ(12)を含み得る。また、プラットホームデータ(11)は、歯牙データ(12)とともに、他の領域のデータを含み得る。当該他の領域のデータは、例えば、歯牙データ(12)の周辺のデータ(以下、周辺環境データと称することがある)である。周辺環境データは、歯牙データ(12)に隣接する歯牙のデータ、及び/又は、歯牙データ(12)に対合する歯牙のデータを含み得る。図7を参照して説明した実施形態と同様、プラットホームデータ(11)は、形状データ及び/又は色調データを含み得る。具体的には、歯牙データ(12)と同様、周辺環境データも、形状データ及び/又は色調データを含み得る。プラットホームデータ(11)は、歯牙データ(12)を含まず、上記他の領域のデータを含んでいてもよい。
[参考実施形態3]
参考実施形態3は、参考実施形態1の教師データを変更した形態である。具体的には、参考実施形態3では、教師データとして、ワークデータ(31)及び補綴物形状データ(20)が用いられる。学習器(200)は、教師あり学習後において、ワークデータ(31)及び補綴物形状データ(20)に基づいて加工データを作成する。このようにしても、参考実施形態1と同様、適切に加工データを作成できる。
図7などを参照して説明した実施形態の技術と、各参考実施形態の技術とを、任意に組み合わせることができる。
本発明の方法は、複数の層を含み適切な表面色調を有する補綴物を得るのに役立つ。
1 エナメル層
2 中間層
3 ボディ層
4 仮想第一切断層
5 仮想第二切断層
11 プラットホームデータ
12 領域(歯牙データ)
13 区画点
14 点線
15 Z軸
17 隙間
20,20A,20B 補綴物形状データ
20оf 開口面
21 内側表面
21c 凹面
22 内側点
23,27 セル
24,28 メッシュ
25 外側表面
26 外側点
31 ワークデータ
32 外層
33 内層
35 境界
39 支持部データ
40 設計装置
50 装置
51 コンピュータ
52 ディスプレイ
60 加工機
100,300 システム
200 学習器

Claims (22)

  1. コンピュータにより実行される方法であって、
    加工に供されるミルブランク部を表すデータであってエナメル層を表す外層と前記外層の内側に存在する内層とを有するデータをワークデータと定義し、前記ミルブランク部から得られる補綴物の形状を表すデータを補綴物形状データと定義したとき、
    前記補綴物形状データの内側表面と、前記外層と前記内層との境界と、前記補綴物形状データの外側表面と、がこの順に並ぶように、前記ワークデータと前記補綴物形状データの相対位置が調整された調整状態において、
    前記内側表面と前記境界との間の距離である内側距離を計算することと、
    前記外側表面と前記境界との間の距離である外側距離を計算することと、
    前記ワークデータと前記補綴物形状データとの重複部分を仮想補綴物と定義し、前記仮想補綴物の表面の色調を仮想色調と定義したとき、前記仮想色調を、前記内側距離と、前記外側距離と、前記外層の色調データと、前記内層の色調データと、に基づいて計算することと、を含む、方法。
  2. 前記仮想色調を表示することを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記内側距離と前記外側距離との合計を総距離と定義したとき、
    前記総距離に対する前記外側距離の比率が大きいほど、前記仮想色調の計算において、前記外層の色調データの少なくとも一要素を、前記仮想色調に強く反映させる、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記内側距離と前記外側距離との合計を総距離と定義したとき、
    前記総距離に対する前記内側距離の比率が大きいほど、前記仮想色調の計算において、前記内層の色調データの少なくとも一要素を、前記仮想色調に強く反映させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記外側表面は、唇に面する部分を表す唇側部を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 歯牙を表すデータを歯牙データと定義したとき、
    前記内側表面は、前記歯牙データとの間に隙間が生じるように形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記仮想色調は、前記歯牙と前記補綴物の間に介在されるセメントを表すセメントデータの色調データに基づいて計算される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記仮想色調は、歯牙を表す歯牙データの色調データに基づいて計算される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記ワークデータを表示しつつ、前記ワークデータに相対的な前記補綴物形状データの位置及び姿勢の少なくとも一方の変更を表示することを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記内側表面は、凹面を有し、
    前記ワークデータは、前記ミルブランク部を切削するための加工機におけるスピンドルが延びる方向を表すZ軸を有し、
    前記調整状態は、切削可能条件が成立するように、前記相対位置が調整された状態であり、
    前記切削可能条件は、前記Z軸に平行に延び前記凹面と交差する全ての直線が、前記凹面と1回だけ交差するという条件である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ミルブランク部の加工に用いられる加工データを出力することを含み、
    加工機において前記ミルブランク部を加工するのに用いられる加工座標系の原点を加工原点と定義し、前記ワークデータを表すのに用いられる第1座標系の原点をワークデータ原点と定義したとき、
    前記ワークデータ原点は、前記加工原点を表し、
    前記仮想補綴物は、前記第1座標系で表されおり、
    前記加工データは、前記仮想補綴物が反映されており、かつ、前記ワークデータ原点を表す情報を含んでいる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記補綴物は、前記ミルブランク部を加工して被加工体を形成し、前記被加工体を焼成してサイズを1/X倍に変化させることによって得られるものであり、
    前記ワークデータ及び前記補綴物形状データが表される座標系において、
    前記ワークデータは、加工前かつ焼成前の実サイズの前記ミルブランク部の1/Y倍のサイズで表され、
    前記補綴物形状データは、実サイズの前記補綴物のZ倍のサイズで表される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
    ここで、Xは、1を除く正の値であり、Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値であり、X=Y×Zである。
  13. 前記ミルブランク部の加工に用いられる加工データを出力することを含み、
    前記加工データは、前記被加工体を表すデータであって前記仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む、請求項12に記載の方法。
  14. 前記補綴物形状データが前記ワークデータからはみ出している場合において、警告を行うことを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置であって、
    前記コンピュータを含む、装置。
  16. 前記ワークデータ及び前記補綴物形状データが表される座標系において、
    前記ワークデータは、加工前かつ焼成前の実サイズの前記ミルブランク部の1/Y倍のサイズで表され、
    前記補綴物形状データは、実サイズの前記補綴物のZ倍のサイズで表され、
    前記コンピュータは、Y及びZを調整できるように構成されている、請求項15に記載の装置。
    ここで、Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値である。
  17. 前記コンピュータは、前記ミルブランク部を加工して被加工体を形成するのに用いられる加工データを出力し、
    前記加工データは、前記被加工体を表すデータであって前記仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む、請求項16に記載の装置。
  18. 請求項15~17のいずれか一項に記載の装置と、加工機と、を備えたシステムであって、
    前記加工機は、前記仮想補綴物が反映された加工データに基づいて、前記ミルブランク部を加工する、システム。
  19. コンピュータによる実行時において、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラム。
  20. 前記ワークデータ及び前記補綴物形状データが表される座標系において、
    前記ワークデータは、加工前かつ焼成前の実サイズの前記ミルブランク部の1/Y倍のサイズで表され、
    前記補綴物形状データは、実サイズの前記補綴物のZ倍のサイズで表され、
    前記コンピュータを、Y及びZを調整できるようにする、請求項19に記載のコンピュータプログラム。
    ここで、Yは、1を含む正の値であり、Zは、1を含む正の値である。
  21. 前記コンピュータに、前記ミルブランク部を加工して被加工体を形成するのに用いられる加工データの出力を実行させ、
    前記加工データは、前記被加工体を表すデータであって前記仮想補綴物をY倍にサイズ変更したデータを含む、請求項20に記載のコンピュータプログラム。
  22. 請求項19~21のいずれか一項に記載のコンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体。
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