JP7122739B2 - 定量分析方法 - Google Patents

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本発明は、蛍光X線分析装置を用いて毛髪又は動物毛に含まれる分析対象元素の濃度を算出する定量分析方法に関する。
人間の身体は、臓器や組織を円滑に働かせるために、カルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅などの必須ミネラルを必要とする。身体中の必須ミネラルの過不足を知ることは健康管理のために重要である。特にカルシウムは情報伝達物質の1つであり、カルシウム過不足は疾患の原因となる場合がある。しかし、血液中のカルシウム濃度は、ホメオスタシスにより一定に保たれており、血液中のカルシウム濃度を測定することにより、身体中のカルシウムの過不足を調べることができない。
一方、毛髪は、身体中のミネラルを取り込み、保持している。このため、毛髪のミネラル濃度を調べることにより、ミネラルの過不足を調べることができる。
ICP発光・質量分析法、原子吸光法などを用いて毛髪中のミネラル濃度を調べる方法が知られている。しかし、これらの方法では、多量の毛髪を必要とする。また、毛髪を酸溶液に溶解させる必要があり、分析に多くの時間と労力を必要とする。
また、蛍光X線分析法を用いて毛髪に含まれるミネラルの濃度を測定する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。蛍光X線分析法を用いると、分析に必要な毛髪の必要量を抑えることができること、手間のかかる前処理を省略することができることなどの利点を有する。
WO2014/132383A1
蛍光X線分析法を用いた従来の毛髪分析では、毛髪に含まれる硫黄由来のピークを内部標準として用いている。しかし、毛髪の硫黄濃度には個人差がある。また、硫黄由来のピーク強度は、カルシウム、亜鉛、鉄などのピーク強度に比べかなり大きい。このため、硫黄由来のピークは内部標準として用いるのに適していない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、毛髪又は動物毛に含まれる分析対象元素の濃度を簡便に定量分析することができる定量分析方法を提供する。
本発明は、蛍光X線分析装置を用いて分析試料に一次X線を照射することにより前記分析試料で発生する蛍光X線(XRF)を含む二次X線を検出することにより得られる第1XRFスペクトルと、前記蛍光X線分析装置の試料をブランクとして一次X線を照射することにより得られる第2XRFスペクトルと、検量線とから前記分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出する定量分析方法であって、前記分析試料は、毛髪又は動物毛であり、下記の式(1)を用いて強度比を算出するステップと、前記検量線を用いて前記強度比から前記分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出するステップとを含む定量分析方法。
強度比=(第1ネットX線強度-第2ネットX線強度)/(第1バックグラウンド強度-第2バックグラウンド強度)・・・(1)、ここで、第1バックグラウンド強度は分析対象元素由来の蛍光X線のピークのエネルギー範囲における前記分析対象元素由来の蛍光X線以外の原因により第1XRFスペクトルに加わった強度であり、第2バックグラウンド強度は前記エネルギー範囲における前記分析対象元素由来の蛍光X線以外の原因により第2XRFスペクトルに加わった強度であり、第1ネットX線強度は、前記エネルギー範囲における第1XRFスペクトルの測定X線強度から第1バックグラウンド強度を差し引いたピーク強度であり、第2ネットX線強度は、前記エネルギー範囲における第2XRFスペクトルの測定X線強度から第2バックグラウンド強度を差し引いたピーク強度である。
本発明の定量分析方法は、分析試料の第1XRFスペクトルと、ブランク試料の第2XRFスペクトルと、検量線とから分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出する。
本発明の定量分析方法は式(1)を用いて強度比を算出するステップを含む。式(1)の分子の式では、第1ネットX線強度から第2ネットX線強度を引き第3ネットX線強度を算出する(第1ネットX線強度-第2ネットX線強度=第3ネットX線強度)。第1ネットX線強度は、分析試料に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量と、蛍光X線分析装置の構成部材に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量との合計を表すと考えられ、第2ネットX線強度は、蛍光X線分析装置の構成部材に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量を表すと考えられる。このため、第3ネットX線強度は、分析試料に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量を表すと考えられる。第3ネットX線強度は、分析試料の量が増えると大きくなる。
式(1)の分母の式では、第1バックグラウンド強度から第2バックグラウンド強度を引き第3バックグラウンド強度を算出する(第1バックグラウンド強度-第2バックグラウンド強度=第3バックグラウンド強度)。第1バックグラウンド強度は、分析試料に含まれる元素による散乱線の量と、蛍光X線分析装置の構成部材に含まれる元素による散乱線の量との合計を表すと考えられ、第2バックグラウンド強度は、蛍光X線分析装置の構成部材に含まれる元素による散乱線の量との合計を表すと考えられる。このため、第3バックグラウンド強度は、分析試料に含まれる元素による散乱線の量を表すと考えられる。第3バックグラウンド強度は、分析試料の量が増えると大きくなる。
さらに、式(1)では、第3ネットX線強度を、第3バックグラウンド強度で割り強度比を算出する。第3ネットX線強度及び第3バックグラウンド強度は共に分析試料の量が増えると大きくなるため、この割り算により分析試料の量(例えば毛髪の太さ)の変動を補正することができる。従って、算出される強度比は、分析試料に含まれる分析対象元素の濃度に対応した値になると考えられる。
本発明の定量分析方法は、検量線を用いて強度比から分析対象元素の濃度を算出するステップを含む。このステップにより分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出することができる。
分析試料は、毛髪又は動物毛である。従って、本発明の定量分析方法により、毛髪又は動物毛に含まれる分析対象元素の濃度を簡便に定量分析することができる。
本発明の定量分析方法で用いる蛍光X線分析装置の概略断面図である。 本発明の定量分析方法によるXRFスペクトルの解析の説明図である。 分析試料として用いた毛髪の直径とバックグラウンド強度との関係を示すグラフである。 分析試料のXRFスペクトルとブランク試料のXRFスペクトルである。 (a)は毛髪中の硫黄(S)の濃度と強度比との関係を示す検量線であり、(b)は毛髪中のカルシウム(Ca)の濃度と強度比との関係を示す検量線であり、(c)は毛髪中の鉄(Fe)の濃度と強度比との関係を示す検量線であり、(d)は毛髪中の亜鉛(Zn)の濃度と強度比との関係を示す検量線である。
本発明の定量分析方法は、蛍光X線分析装置を用いて分析試料に一次X線を照射することにより前記分析試料で発生する蛍光X線を含む二次X線を検出することにより得られる第1XRFスペクトルと、前記蛍光X線分析装置の試料をブランクとして一次X線を照射することにより得られる第2XRFスペクトルと、検量線とから前記分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出する定量分析方法であって、前記分析試料は、毛髪又は動物毛であり、下記の式(1)を用いて強度比を算出するステップと、前記検量線を用いて前記強度比から前記分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出するステップとを含む。
強度比=(第1ネットX線強度-第2ネットX線強度)/(第1バックグラウンド強度-第2バックグラウンド強度)・・・(1)、ここで、第1バックグラウンド強度は分析対象元素由来の蛍光X線のピークのエネルギー範囲における前記分析対象元素由来の蛍光X線以外の原因により第1XRFスペクトルに加わった強度であり、第2バックグラウンド強度は前記エネルギー範囲における前記分析対象元素由来の蛍光X線以外の原因により第2XRFスペクトルに加わった強度であり、第1ネットX線強度は、前記エネルギー範囲における第1XRFスペクトルの測定X線強度から第1バックグラウンド強度を差し引いたピーク強度であり、第2ネットX線強度は、前記エネルギー範囲における第2XRFスペクトルの測定X線強度から第2バックグラウンド強度を差し引いたピーク強度である。
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
図1は本実施形態の定量分析方法に用いる蛍光X線分析装置10の概略断面図である。蛍光X線分析装置10は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置である。
蛍光X線分析装置10は、X線を発生させるX線管5と、分析試料2を分析視野にセットするための試料ホルダー3と、蛍光X線を検出するための検出器6とを備える。検出器6は半導体検出器である。
分析試料2は、毛髪又は動物毛である。また、分析対象元素は、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛又は銅である。
X線管5で発生させた一次X線8は、分析視野にセットした分析試料2に照射される。分析試料2に照射された一次X線8は、分析試料2に含まれる元素の内殻電子を外殻にはじき出す。そして空いた内殻に外殻電子が落ちてくるとき、余ったエネルギーが蛍光X線(固有X線)として放出される。この蛍光X線を含む二次X線9を検出器6で検出することによりXRFスペクトルを得ることができる。蛍光X線は元素固有の波長(エネルギー)を有するため、XRFスペクトルのエネルギーから分析試料2に含まれる元素を定性分析することができ、そのエネルギーのX線強度から分析試料2に含まれる元素を定量分析することができる。
検出器6に入射する二次X線9には、分析試料2に含まれる元素で発生した蛍光X線、分析試料2に含まれる元素による散乱線(一次X線が散乱されたX線)、蛍光X線分析装置10の構成部材(装置部材、試料ホルダーなど)に含まれる元素で発生した蛍光X線、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる元素による散乱線などが含まれる。検出器6の出力から得られるXRFスペクトルは、これらの蛍光X線の量及びこれらの散乱線の量の合計を表す。
蛍光X線は元素固有の波長(エネルギー)を有するため、XRFスペクトルではそのエネルギー範囲における強度ピークとして表れる。散乱線は主に波長が連続的に分布したX線であるため、XRFスペクトルではバックグラウンド強度として表れる。
図2は、XRFスペクトルを模式的に示した図である。二次X線9に含まれる分析対象元素由来の蛍光X線の量は図2に示した分析対象元素のピークのネットX線強度として表れ、二次X線9に含まれる散乱線の量は図2に示したバックグラウンド強度として表れる。
バックグラウンド強度は分析対象元素由来の蛍光X線のピークのエネルギー範囲における分析対象元素由来の蛍光X線以外の原因によりXRFスペクトルに加わった強度である。蛍光X線以外の原因は主に散乱線である。また、バックグラウンド強度は、前記エネルギー範囲における積分強度である。検出器6の検出強度がカウント数で表される場合、図2の斜線で示したバックグラウンド強度の範囲のカウント数を合算することにより積分強度を算出することができる。また、検出器6の検出強度が任意強度で表される場合、図2の斜線で示したバックグラウンド強度の範囲の面積を積分強度とすることができる。
バックグラウンド強度は、主に散乱線の量を表すため、一次X線を散乱する物質が多いほど大きくなる。つまり、バックグラウンド強度は、分析試料2の量が増えると増加する。
分析対象元素由来の蛍光X線のピークのエネルギー範囲は、蛍光X線分析においてROIで示されるエネルギー範囲である。例えば、分析対象元素が硫黄(S)である場合、エネルギー範囲は2.19keV~2.43keVである。例えば、分析対象元素がカルシウム(Ca)である場合、エネルギー範囲は3.55keV~3.83keVである。例えば分析対象元素が鉄(Fe)である場合、エネルギー範囲は6.22keV~6.57keVである。例えば、分析対象元素が亜鉛(Zn)である場合、エネルギー範囲は8.43keV~8.83keVである。
ネットX線強度は、分析対象元素由来の蛍光X線のピークのエネルギー範囲におけるXRFスペクトルの測定X線強度からバックグラウンド強度を差し引いたピーク強度である。ネットX線強度は、前記エネルギー範囲における積分強度である。
検出器6の検出強度がカウント数で表される場合、図2の斜線で示したネットX線強度の範囲のカウント数を合算することにより積分強度を算出することができる。また、検出強度が任意強度で表される場合、図2の斜線で示したネットX線強度の範囲の面積を積分強度とすることができる。
ネットX線強度は、分析対象元素からの蛍光X線の量を表すと考えられるため、蛍光X線を発生させる分析対象元素が多いほど大きくなる。つまり、ネットX線強度は、分析試料2の量が増えると増加する。例えば、分析試料2が毛髪である場合、同じ長さ・同じ組成の毛髪でも、毛髪の太さの違いによって得られるネットX線強度が異なる。
本実施形態の定量分析方法は、分析試料2を蛍光X線分析装置10の分析視野にセットして第1XRFスペクトルを得る。例えば、図1に示したような蛍光X線分析装置10の分析視野に毛髪(分析試料)をセットしてX線管5で発生させた一次X線8を分析試料2に照射し、分析試料2からの二次X線9を検出器6で検出することにより第1XRFスペクトルを得ることができる。
第1XRFスペクトルは、分析試料2に含まれる元素で発生した蛍光X線の量、分析試料2に含まれる元素による散乱線の量、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる元素で発生した蛍光X線の量、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる元素による散乱線の量の合計を表すと考えられる。
第1XRFスペクトルから分析対象元素のピークの第1ネットX線強度と、そのエネルギー範囲における第1バックグラウンド強度とを算出する。また、分析対象元素が複数ある場合、各分析対象元素について算出する。分析対象元素のピークは、Kα線のピークを用いることができる。
本実施形態の定量分析方法は、分析試料2を蛍光X線分析装置10にセットせずに試料をブランクとして第2XRFスペクトルを得る。第2XRFスペクトルの測定条件は第1XRFスペクトルの測定条件と同じにする。例えば、図1に示したような蛍光X線分析装置10の分析視野に分析試料2をセットせずにブランクとしてX線管5で一次X線8を発生させ二次X線9を検出器6で検出することにより第2XRFスペクトルを得ることができる。
第2XRFスペクトルは、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる元素で発生した蛍光X線の量、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる元素による散乱線の量の合計を表すと考えられる。
第2XRFスペクトルから分析対象元素のピークの第2ネットX線強度と、そのエネルギー範囲における第2バックグラウンド強度とを算出する。また、分析対象元素が複数ある場合、各分析対象元素について算出する。分析対象元素のピークは、Kα線のピークを用いることができる。
分析対象元素について算出された第1及び第2ネットX線強度と第1及び第2バックグラウンド強度を式(1)に当てはめ強度比を算出する。分析対象元素が複数ある場合、各分析対象元素について強度比を算出する。
強度比=(第1ネットX線強度-第2ネットX線強度)/(第1バックグラウンド強度-第2バックグラウンド強度)・・・(1)
式(1)の分子の式では、第1ネットX線強度から第2ネットX線強度を引き第3ネットX線強度を算出する(第1ネットX線強度-第2ネットX線強度=第3ネットX線強度)。第1ネットX線強度は、分析試料2に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量と、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量との合計を表すと考えられ、第2ネットX線強度は、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量を表すと考えられる。このため、第3ネットX線強度は、分析試料2に含まれる分析対象元素で発生した蛍光X線の量を表すと考えられる。第3ネットX線強度は、分析試料2の量が増えると大きくなる。
ブランク試料の第2XRFスペクトルに分析対象元素のピークが表れていない場合、第2ネットX線強度はゼロとする。
式(1)の分母の式では、第1バックグラウンド強度から第2バックグラウンド強度を引き第3バックグラウンド強度を算出する(第1バックグラウンド強度-第2バックグラウンド強度=第3バックグラウンド強度)。第1バックグラウンド強度は、分析試料2に含まれる元素による散乱線の量と、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる元素による散乱線の量との合計を表すと考えられ、第2バックグラウンド強度は、蛍光X線分析装置10の構成部材に含まれる元素による散乱線の量との合計を表すと考えられる。このため、第3バックグラウンド強度は、分析試料2に含まれる元素による散乱線の量を表すと考えられる。第3バックグラウンド強度は、分析試料2の量が増えると大きくなる。
式(1)では、第3ネットX線強度を、第3バックグラウンド強度で割り強度比を算出する。第3ネットX線強度及び第3バックグラウンド強度は共に分析試料2の量が増えると大きくなるため、この割り算により分析試料2の量の変動を補正することができる。従って、算出される強度比は、分析試料2に含まれる分析対象元素の濃度に対応した値となると考えられる。例えば、分析試料2が毛髪の場合、式(1)により毛髪の太さを補正することができる。
算出した強度比から、検量線を用いて分析対象元素の濃度を算出する。このステップにより分析試料2に含まれる分析対象元素の濃度を算出することができる。
分析対象元素が複数ある場合、分析対象元素ごとに濃度を算出することができる。例えば、分析試料2が毛髪で、分析対象元素がS,Ca,Fe,Znである場合、毛髪中のこれらの元素の濃度を算出することができる。
検量線は、検出対象元素の濃度が予めわかっている分析試料2(標準試料など)についての第1XRFスペクトルを測定し、第1XRFスペクトルとブランク試料の第2XRFスペクトルを用いて式(1)から強度比を算出し、予めわかっている元素濃度と算出した強度比とから作成することができる。
また、第1XRFスペクトルを測定した後の分析試料についてICP発光分析を行い元素濃度を測定して検量線を作成してもよい。
検量線は、強度比と濃度との関係を示す式とすることができる。
第1XRF分析実験
卓上型蛍光X線分析装置を用いて、太さの異なる毛髪を分析試料としてXRF分析を行った。試料には、同じ人の太さの異なる7本の毛髪(直径が65μm~95μm)を用いた。
この実験では、円筒状の試料ホルダー(プラスチック製)の開口に毛髪1本をピンと張り直線状の毛髪が分析視野に入るように毛髪(分析試料)を試料ホルダーにテープで固定した。そして、それぞれの太さの異なる毛髪についてXRF分析をしてXRFスペクトルを得た。毛髪を直線状に張ることにより、分析視野に入る毛髪の長さが同じになり、毛髪の太さにより分析視野中の毛髪の体積が変化する。なお、ポリプロピレンフィルムは用いていない。
X線管のターゲットにはロジウム(Rh)を用い、X線管の管電圧は50kVとし、管電流は1.0mAとした。また、NDフィルターを用い、コリメータ径を9mmとした。また、大気雰囲気下で600秒間分析を行った。
分析結果であるXRFスペクトルから10keV~11keVのエネルギー範囲におけるバックグラウンド強度(積分強度)を算出した。分析試料に用いた毛髪の太さと算出したバックグラウンド強度との関係を図3に示す。
図3からわかるように、毛髪の太さが太くなるほどバックグラウンド強度は増加することがわかった。一次X線が毛髪に入射すると、一次X線が毛髪中に含有される元素により散乱され散乱線が放出される。毛髪の太さが太くなるほど毛髪中に含有される元素の量も多くなるため、散乱線が増加すると考えられる。この散乱線の増加に伴い、バックグラウンド強度が増加したと考えられる。従って、分析試料の体積とバックグラウンド強度との間には相関関係があることがわかった。
第2XRF分析実験
質量を変化させた分析試料1~6についてXRF分析を行った。分析試料には、国立環境研究所製の頭髪標準試料(NIES CRM No. 13頭髪)を用いた。標準試料における硫黄(S)の濃度は5000ppmであり、カルシウム(Ca)の濃度は746ppmであり、鉄(Fe)の濃度は127ppmであり、亜鉛(Zn)の濃度は157ppmである。標準試料は粉末試料(粒径100μm以下)であり、図1に示したように、円筒状の試料ホルダーの下にポリプロピレンフィルム(厚さ:4μm)の配置し、このフィルム上に5.32mg、11.7mg、24.8mg、34.5mg、48.7mg又は53.8mgの分析試料をおいてそれぞれXRF分析を行った。また、フィルム上に分析試料を置かないでブランク試料としてXRF分析を行った。
X線管のターゲットにはロジウム(Rh)を用い、X線管の管電圧は50kVとした。管電流は0.1mA~1.0mAの範囲で測定試料ごとに最適化とした。また、NDフィルターを用い、コリメータ径を9mmとした。また、大気雰囲気下で60秒間分析を行った。
図4に、分析試料の質量を53.8mgとしたときの分析結果であるXRFスペクトルと、ブランク試料の分析結果であるXRFスペクトルとを示す。分析試料のXRFスペクトルでは、硫黄、カルシウム、鉄、銅、亜鉛などのピークが確認された。また、ブランク試料のXRFスペクトルにおいても鉄、銅などのピークが確認された。このピークは、蛍光X線分析装置の構成部材に含まれる鉄や銅から発生する蛍光X線を検出したものと考えられる。またバックグラウンド強度は、概して分析試料のXRFスペクトルのほうがブランク試料のXRFスペクトルよりも大きかった。このバックグラウンド強度の差は、分析試料の散乱光により生じると考えられる。
次に、得られたXRFスペクトルから硫黄、カルシウム、鉄、亜鉛のピークのネットX線強度及びバックグラウンド強度を算出した。そして、各元素のピークのエネルギー範囲において、次式で表される強度比を算出した。
強度比=(分析試料のネットX線強度-ブランク試料のネットX線強度)/(分析試料のバックグラウンド強度-ブランク試料のバックグラウンド強度)・・・(2)
また、分析試料1~6の各元素の強度比について平均値、標準偏差、相対標準偏差を算出した。算出結果を表1に示す。
Figure 0007122739000001
分析試料の質量を変化させた場合、分析試料1~6の強度比は、多少のバラツキがあるが、同じような値になることがわかった。従って、上記の式(2)のように、ネットX線強度をバックグラウンド強度で補正することにより、分析試料の量を適切に補正できることがわかった。つまり、式(2)の補正により、毛髪の太さや試料の量などを適切に補正できる。
次に、表1に示した各元素についての分析試料1~6の強度比の平均値と、分析試料(標準試料)の各元素の濃度とを用いて検量線を作成した。作成した検量線を図5(a)~(d)に示す。
定量分析実験
XRF分析により毛髪に含まれるミネラル元素の定量分析を行った。前頭部の毛髪1本(約2.5cm)を4つに切断した分析試料7を図1に示したようなポリプロピレンフィルム上に配置してXRF分析を5回繰り返し行った。また、同じ人の毛髪2本(約2.5cm)をそれぞれ4つに切断した分析試料8(計8本)を図1に示したようなポリプロピレンフィルム上に配置してXRF分析を5回繰り返し行った。また、フィルム上に分析試料を置かないでブランク試料としてXRF分析を行った。
X線管のターゲットにはロジウム(Rh)を用い、X線管の管電圧は50kVとし、管電流は1.0mAとした。また、NDフィルターを用い、コリメータ径を9mmとした。また、大気雰囲気下で600秒間分析を行った。
次に、得られたXRFスペクトルから硫黄、カルシウム、鉄、亜鉛のピークのネットX線強度及びバックグラウンド強度を算出し、各元素のピークのエネルギー範囲において、上記の式(2)により強度比を算出した。そして、算出した強度比と図5に示した検量線から分析試料7、8に含まれる各元素の濃度を算出した。また、分析試料7、8の各元素の濃度について平均値、標準偏差、相対標準偏差を算出した。分析試料7についての算出結果を表2に示し、分析試料8についての算出結果を表3に示す。
Figure 0007122739000002
Figure 0007122739000003
表2、3に示した硫黄(S)の濃度から強度比と検量線を用いた定量法の正確さを確認することができた。また、カルシウム(Ca)の濃度、亜鉛(Zn)の濃度のバラツキを小さくすることができた。また、毛髪量の多い分析試料8では、分析試料7と比べて定量精度が高くなることが確認できた。
算出した鉄(Fe)の濃度にはバラツキがあることがわかった。これは、毛髪に含まれる鉄の濃度が低く、ブランク試料での鉄のピークのネットX線強度が大きいためと考えられる。
2: 分析試料 3:試料ホルダー 4:ポリプロピレンフィルム 5:X線管 6:検出器 7:カメラ 8:一次X線 9:二次X線 10:蛍光X線分析装置

Claims (2)

  1. 蛍光X線分析装置を用いて分析試料に一次X線を照射することにより前記分析試料で発生する蛍光X線を含む二次X線を検出することにより得られる第1XRFスペクトルと、前記蛍光X線分析装置の試料をブランクとして一次X線を照射することにより得られる第2XRFスペクトルと、検量線とから前記分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出する定量分析方法であって、
    前記分析試料は、毛髪又は動物毛であり、
    下記の式(1)を用いて強度比を算出するステップと、
    前記検量線を用いて前記強度比から前記分析試料に含まれる分析対象元素の濃度を算出するステップとを含む定量分析方法。
    強度比=(第1ネットX線強度-第2ネットX線強度)/(第1バックグラウンド強度-第2バックグラウンド強度)・・・(1)
    ここで、第1バックグラウンド強度は分析対象元素由来の蛍光X線のピークのエネルギー範囲における前記分析対象元素由来の蛍光X線以外の原因により第1XRFスペクトルに加わった強度でありかつ前記エネルギー範囲における積分強度であり
    第2バックグラウンド強度は前記エネルギー範囲における前記分析対象元素由来の蛍光X線以外の原因により第2XRFスペクトルに加わった強度でありかつ前記エネルギー範囲における積分強度であり
    第1ネットX線強度は、前記エネルギー範囲における第1XRFスペクトルの測定X線強度から第1バックグラウンド強度を差し引いたピーク強度でありかつ前記エネルギー範囲における積分強度であり
    第2ネットX線強度は、前記エネルギー範囲における第2XRFスペクトルの測定X線強度から第2バックグラウンド強度を差し引いたピーク強度でありかつ前記エネルギー範囲における積分強度である
  2. 前記分析対象元素は、カルシウム、カリウム、マグネシウム、硫黄、鉄、亜鉛又は銅である請求項1に記載の定量分析方法。
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