JP7122058B2 - シミュレーション方法及びシミュレーション装置 - Google Patents

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Description

本発明は、シミュレーション方法及びシミュレーション装置に関する。
特許文献1には、電池モデル同定方法が記載されている。この方法では、電池に入力される電流波形を電流センサを用いて測定し、電池の端子電圧の電圧波形を電圧センサを用いて測定する。そして、システム同定演算部が、これらの電流波形及び電圧波形に基づいて、電池モデルのシステム同定を行う。
特開2016-3963号公報
現在、車載用蓄電デバイスとして、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタといった様々な蓄電デバイスが用いられている。そして、これらの電池を組み合わせて、様々な種類のハイブリッド方式が実用化されている。例えば、メイン蓄電デバイスとは別に、減速の際のエネルギー回生及び補機への給電のためのサブ蓄電デバイスを設ける、いわゆるμHEV(Hybrid Electric Vehicle)方式が近年特に有用とされている。一方、例えば車両の燃費シミュレーションにおいては、エンジン及び蓄電デバイスといった様々な動力源並びに負荷をモデル化し、規定の走行パターンを該モデルに入力して燃費を算出することが行われている。ハイブリッド方式における複雑化した蓄電デバイスを新たに設計する際には、例えばこのような燃費シミュレーション等に含まれる蓄電デバイスのシミュレーション結果を利用して、蓄電デバイスを適切に設計することが望まれる。しかしながら従来のシミュレーションにおいては、蓄電デバイスの等価回路に含まれる特性パラメータを端子電圧等の実測値に基づくフィッティングにより直接的に求めているので、蓄電デバイスをどのように設計変更すればより好ましいシミュレーション結果が得られるのかがわかりにくく、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に反映し難いという問題がある。
本発明は、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に容易に反映させることができるシミュレーション方法及びシミュレーション装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態によるシミュレーション方法は、蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う方法であって、等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定ステップと、等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて等価回路モデルの端子電圧を計算するステップと、を含む。パラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの特性パラメータを、当該特性パラメータと蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定する。
また、本発明の一実施形態によるシミュレーション装置は、蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う装置であって、等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定部と、等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて等価回路モデルの端子電圧を計算する電圧計算部と、を備える。パラメータ設定部は、少なくとも一つの特性パラメータを、当該特性パラメータと蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定する。
これらのシミュレーション方法及びシミュレーション装置では、少なくとも一つの特性パラメータを、当該特性パラメータと蓄電デバイスの設計変数との相関に基づいて設定する。これにより、蓄電デバイスの設計変数がシミュレーション結果に対してどのように影響しているのかを設計者が直感的且つ容易に理解できる。従って、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に容易に反映させることができる。
上記のシミュレーション方法において、設計変数は、電極の対向面積、電極厚さ、電極の活物質量のうち少なくとも一つを含んでもよい。これらの設計変数は、蓄電デバイスの特性パラメータの変動に対して比較的大きな影響を与える。従って、これらの設計変数との相関に基づいて特性パラメータを算出することにより、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に更に容易に反映させることができる。
上記のシミュレーション方法のパラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの特性パラメータを、当該特性パラメータと蓄電デバイスの動作履歴を表す履歴変数との相関に基づいて設定してもよい。蓄電デバイスのシミュレーションにおいて、蓄電デバイス構成を正確にモデル化することは、シミュレーションを精度よく行うために極めて重要である。しかしながら、従来のシミュレーションにおいては、蓄電デバイスの使用による劣化を考慮せずに蓄電デバイスをモデル化しているので、劣化したときの蓄電デバイスの特性を精度良く推定するためには、モデルの特性パラメータを同定する際に、実際に劣化した蓄電デバイスを用意する必要がある。このような課題に対し、蓄電デバイスの動作履歴を表す履歴変数との相関に基づいて特性パラメータを算出すれば、蓄電デバイスの劣化度合いを特性パラメータに容易に反映させることができる。従って、実際に劣化した蓄電デバイスを用いなくても、劣化した蓄電デバイスのシミュレーションを精度良く行うことができる。
上記のシミュレーション方法において、履歴変数は、エンジン始動回数、総充電量、総放電量、経過時間、及びパターンサイクル数のうち少なくとも一つを含んでもよい。これらの履歴変数は、蓄電デバイスの劣化に対して比較的大きな影響を与える。従って、これらの履歴変数との相関に基づいて特性パラメータを算出することにより、蓄電デバイスのシミュレーションを更に精度良く行うことができる。総充電量及び総放電量は、下記の数式によって表される。
Figure 0007122058000001

Figure 0007122058000002

また、経過時間は、例えば蓄電池を交換してからの時間に相当し、駐車中の時間も含まれる。
上記のシミュレーション方法のパラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの特性パラメータを、当該特性パラメータと想定電流パターンのパラメータとの相関に基づいて設定してもよい。このように、想定電流パターンのパラメータとの相関に基づいて特性パラメータを算出することによっても、蓄電デバイスの劣化度合いを特性パラメータに容易に反映させることができる。従って、劣化した蓄電デバイスのシミュレーションを精度良く行うことができる。この場合、想定電流パターンのパラメータは、定電圧充電時の電圧値、定電圧充電時の電流値、定電流放電時の電流値、充電電荷量、及び暗電流放電時間のうち少なくとも一つを含んでもよい。これらのパラメータは、蓄電デバイスの劣化に対して比較的大きな影響を与える。従って、これらのパラメータとの相関に基づいて特性パラメータを算出することにより、蓄電デバイスのシミュレーションを更に精度良く行うことができる。
上記のシミュレーション方法において、蓄電デバイスは鉛蓄電池であってもよい。これにより、鉛蓄電池の設計を容易に行うことができる。この場合、設計変数は、電解液の比重、電解液の液量、及び不織布の種類のうち少なくとも一つを含んでもよい。これらの設計変数は、蓄電デバイスの特性パラメータの変動に対して比較的大きな影響を与える。従って、これらの設計変数との相関に基づいて特性パラメータを算出することにより、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に更に容易に反映させることができる。
本発明によるシミュレーション方法及びシミュレーション装置によれば、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に容易に反映させることができる。
燃費シミュレーションを行う装置の概略構成を示す図である。 蓄電デバイスの電圧を計算するための等価回路モデルを示す図である。 一実施形態に係る蓄電デバイスシミュレータの概略構成を示す図である。 図3の蓄電デバイスシミュレータのハードウェア構成の例を示す図である。 入力部から入力される充放電電流の波形の例を概念的に示すグラフである。 シミュレーション装置が実行する端子電圧の計算処理の例を示すフローチャートである。 細分化された特性パラメータの例を示す図表である。 蓄電デバイスとしての鉛蓄電池の構造例を示す斜視図である。 鉛蓄電池が備える極板群を説明するための分解斜視図である。 設計変数の例を示す図表である。 履歴変数の例を示す図表である。 充放電パターンパラメータの例を示す図表である。 ルックアップテーブルを概念的に示す図である。 同定した各特性パラメータを概念的に示す図である。 作成されたテーブルを概念的に示す図である。 作成されたテーブルを概念的に示す図である。 作成されたテーブルを概念的に示す図である。 作成されたテーブルを概念的に示す図である。
以下、添付図面を参照しながら本発明によるシミュレーション方法及びシミュレーション装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、蓄電デバイスを流れる電流とは、蓄電デバイスに入力される充電電流および蓄電デバイスから出力される放電電流の双方を指し、電流の符号が正である場合は充電を表し、電流の符号が負である場合は放電を表す。
一実施形態に係るシミュレーション方法及びシミュレーション装置は、たとえば、蓄電デバイスが搭載された車両の燃費シミュレーションにおいて用いられる。この蓄電デバイスは、例えばμHEV方式を採用した車両に搭載されるメイン蓄電デバイス、若しくはメイン蓄電デバイスとは別に設けられたサブ蓄電デバイスである。蓄電デバイスがサブ蓄電デバイスである場合、蓄電デバイスは、車両に搭載された12V系の補機の消費電流を賄うために用いられる。
[燃費シミュレーション装置の概要]
図1は、燃費シミュレーションを行う装置の概略構成を示す図である。図1に示されるように、燃費シミュレーション装置90は、その機能ブロックとして、入力部91と、制御部92と、出力部93とを含む。入力部91は、燃費シミュレーションに必要なデータを入力する。入力データの例は、車両の走行パターンである。それ以外にも、車両に搭載されるエンジンなどの各種デバイスの特性を定めるパラメータ、蓄電デバイスの充放電の制御方法の種類、蓄電デバイスの構造、車両に搭載される補機の消費電力、および車両の重量などのデータが入力され得る。制御部92は、入力部91によって入力されたデータを用いて、燃費シミュレーションを行う。燃費シミュレーションの具体的な手法は特に限定されないが、たとえば、次のような手順で行われる。
まず、制御部92は、入力部91によって入力された走行パターンなどから、たとえば区間ごとに、車両が走行するために要求されるパワー(以下、単に「要求パワー」という)および補機の消費電流を算出する。区間としては、停止区間、加速区間、定速走行区間、および減速区間などがある。要求パワーは、加速区間では比較的大きく、定速走行区間では比較的小さい。要求パワーは、停止区間および減速区間では0であってもよい。補機の消費電流は、補機の種類によって異なる。たとえばオーディオ機器など連続的に使用される補機の消費電流の大きさは、区間によらずほぼ一定である。これに対し、エンジンの点火装置など一時的に使用される補機の消費電流の大きさは、使用時のみ大きくなる。
次に、制御部92は、区間ごとのエンジンの出力を算出する。エンジンの出力は、たとえば、停止区間ではエンジンが停止して0となり、それ以外の区間では所定の出力とされる。エンジンの出力のうち、要求パワーを上回る分の出力が、オルタネータによって電力に変換され、オルタネータから補機および蓄電デバイスに向かって供給される。オルタネータから供給される電力が補機の消費電力を上回ると、オルタネータから蓄電デバイスに電流が流れ、蓄電デバイスが充電される。オルタネータから供給される電力が補機の消費電力を下回ると、蓄電デバイスから補機に電流が流れ、蓄電デバイスが放電する。ここで、蓄電デバイスの端子電圧は、蓄電デバイスのSOCおよび充放電電流の大きさなどに依存する。この蓄電デバイスの端子電圧が、たとえば、蓄電デバイスの端子電圧を計算するための等価回路モデルを用いて推定される。端子電圧の推定の詳細については後述する。蓄電デバイスの充放電電流および蓄電デバイスの端子電圧から、制御部92は、区間ごとの蓄電デバイスの充放電電力も算出する。
その後、制御部92は、全区間におけるエンジンの出力および蓄電デバイスの充放電電力の積算値を算出する。全区間におけるエンジンの出力の積算値は、入力部91によって入力された走行パターンで車両が走行した場合に、エンジンが消費するであろうエネルギー量を示す。全区間における蓄電デバイスの充放電電力の積算値は、入力部91によって入力された走行パターンで車両が走行した場合に、蓄電デバイスにおいて増減するであろうエネルギー量の大きさを示す。エンジンが消費するであろうエネルギー量と、蓄電デバイスにおいて減少するであろうエネルギー量との合計のエネルギー量は、入力部91によって入力された走行パターンの車両の走行に要するエネルギー量となる。走行パターンから車両の走行距離も分かるので、当該走行距離とそれに要するエネルギー量とに基づいて、制御部92は、所定エネルギー量当たりに走行可能な距離を燃費として算出する。
出力部93は、制御部92によって算出された燃費を出力する。これにより、入力部91によって入力された走行パターンなどに基づく燃費シミュレーションの結果が得られる。
上述のように、燃費シミュレーションにおいては、蓄電デバイスの端子電圧が推定される。蓄電デバイスの端子電圧の推定精度を向上させることによって燃費シミュレーションの精度も向上するので、たとえば燃費の計算精度を向上させることを目的として、実施形態に係るシミュレーション装置が用いられてもよい。なお、以下の説明において、蓄電デバイスとしては、単一の鉛蓄電池が用いられる。蓄電デバイスは、鉛蓄電池に限られず、他の蓄電デバイスであってもよく、複数の蓄電デバイスを組み合わせた複合型の蓄電デバイスであってもよい。
本実施形態では、シミュレーション装置は、蓄電デバイスの端子電圧を計算するための蓄電デバイスモデルを用いて、蓄電デバイスの端子電圧を推定する。本実施形態では、蓄電デバイスモデルとして、蓄電デバイスの等価回路モデルを用いる。まず、等価回路モデルの例について、図2を参照して説明する。
[蓄電デバイスの等価回路モデル]
図2に示される例では、等価回路モデル40は、互いに逆極性のノードNおよびノードNの間に直列に接続された、回路10と、回路20と、定電圧源30とを含む。ノードNおよびノードNは、蓄電デバイスの外部の要素と電気的に接続される部分であり、等価回路モデル40に発生する電圧を与える。等価回路モデル40に発生する電圧は、蓄電デバイスの端子電圧V(t)である。ノードNはアノードであり、蓄電デバイスに流入する電流I(t)を与える。なお、電圧および電流などの時間変化する物理量を示す符号に(t)などを付す場合があるが、このように示された物理量は、時刻tにおける当該物理量の値を意味するものとする。また、時刻tは、0以上の整数であり、端子電圧V(t)の推定の開始時刻からの経過時間を示す。時刻t=0は、端子電圧V(t)の推定の開始時刻である。
[回路10および直流抵抗電圧Vdc(t)]
回路10は、蓄電デバイスの直流インピーダンス(直流抵抗成分)を模擬する直流抵抗部である。回路10は、抵抗器を含む。本実施形態では、回路10はさらに並列接続されたコンデンサおよびスイッチング素子を含む。図2に示される例では、抵抗器11と、抵抗器12と、互いに並列接続されたコンデンサ13およびスイッチング素子14とが、互いに直列に接続されている。
抵抗器11は、蓄電デバイスの線形直流抵抗成分を模擬している。線形直流抵抗成分としては、電極の抵抗が挙げられる。抵抗器11の抵抗値Rは定数である。抵抗器12は、蓄電デバイスの非線形直流抵抗成分を模擬している。非線形直流抵抗成分としては、液抵抗が挙げられる。抵抗器12の抵抗値R(I)は可変である。抵抗値R(I)は、電流I(t)に応じて変化し、たとえば充電時と放電時とで異なる。コンデンサ13とスイッチング素子14とが並列に接続された回路であるガッシング部は、蓄電デバイスにおけるガッシングに基づく直流抵抗成分を模擬している。コンデンサ13の容量値Cは可変である。スイッチング素子14は、電気的な開閉を切り替え可能な要素である。すなわち、スイッチング素子14の両端の間が、導通状態である閉状態と、遮断状態である開状態と、に切り替えられる。スイッチング素子14の一端は、コンデンサ13のノードN側の一端に接続され、スイッチング素子14の他端は、コンデンサ13のノードN側の他端に接続される。端子電圧V(t)が閾値電圧Vthよりも大きい場合には、スイッチング素子14は開状態となり、端子電圧V(t)が閾値電圧Vth以下の場合には、スイッチング素子14は閉状態となる。
スイッチング素子14としては、たとえばダイオードが用いられ得る。この場合、ダイオードのカソードは、コンデンサ13のノードN側の一端に接続され、ダイオードのアノードは、コンデンサ13のノードN側の他端に接続される。ダイオードは、アノードとカソードとの間に印加される電圧がダイオードの順方向電圧未満の場合には抵抗値が無限大となり、アノードとカソードとの間に印加される電圧がダイオードの順方向電圧以上の場合には抵抗値が0となる、理想的なダイオードである。後述するように、端子電圧V(t)が閾値電圧Vthよりも大きい場合には、アノードとカソードとの間に印加される電圧は、ダイオードの順方向電圧未満となり、端子電圧V(t)が閾値電圧Vth以下の場合には、アノードとカソードとの間に印加される電圧は、ダイオードの順方向電圧以上となる。
つまり、回路10によって模擬される直流抵抗成分は、抵抗器11によって模擬される線形直流抵抗成分と、抵抗器12によって模擬される非線形直流抵抗成分と、コンデンサ13およびスイッチング素子14によって模擬されるガッシング部と、を含む。回路10中の各抵抗器の抵抗値、コンデンサ13の容量値Cおよびスイッチング素子14の閾値電圧Vthによって、回路10のインピーダンスが定まる。回路10のインピーダンスが定まれば、等価回路モデル40に電流I(t)が流れたときに、その電流I(t)が回路10にも流れるので、電流I(t)と回路10のインピーダンスとから、回路10に発生する電圧(直流抵抗電圧Vdc(t))が計算できる。
直流抵抗電圧Vdcは、抵抗器11に発生する電圧Vdc1(t)と、抵抗器12に発生する電圧Vdc2(t)と、コンデンサ13およびスイッチング素子14に発生する電圧Vg(t)との合計電圧である。すなわち、回路10において、以下の関係式(1)が成立する。
Figure 0007122058000003
[回路20および分極電圧Vpol]
回路20は、蓄電デバイスの分極インピーダンス成分を模擬する分極モデル部である。回路20は、並列接続された抵抗器およびコンデンサ(RC並列回路)を含む。図2に示される例では、3つのRC並列回路が直列に接続されている。具体的に、並列接続された抵抗器21およびコンデンサ22(第1のRC並列回路)と、並列接続された抵抗器23およびコンデンサ24(第2のRC並列回路)と、並列接続された抵抗器25およびコンデンサ26(第3の並列回路)とが、直列に接続されている。第1のRC並列回路を構成する抵抗器21の抵抗値およびコンデンサ22の容量値は可変である。抵抗器21は、蓄電デバイスの分極抵抗成分を模擬し、コンデンサ22は、蓄電デバイスの分極容量成分を模擬している。第2のRC並列回路を構成する抵抗器23の抵抗値およびコンデンサ24の容量値は定数である。抵抗器23は蓄電デバイスの分極抵抗成分を模擬し、コンデンサ24は蓄電デバイスの分極容量成分を模擬している。第3のRC並列回路を構成する抵抗器25の抵抗値およびコンデンサ26の容量値は定数である。抵抗器25は蓄電デバイスの分極抵抗成分を模擬し、コンデンサ26は蓄電デバイスの分極容量成分を模擬している。なお、図2に示される例では、回路20は第1~第3の3つのRC並列回路を含むが、回路20は、少なくとも第1のRC並列回路(抵抗器21およびコンデンサ22)を含んでいればよい。また、回路20は、4つ以上のRC並列回路を含んでいてもよい。
回路20中の各抵抗器の抵抗値および各コンデンサの容量値によって、回路20のインピーダンスが定まる。回路20のインピーダンスが定まれば、等価回路モデル40に電流I(t)が流れたときに、その電流I(t)が回路20にも流れるので、電流I(t)と回路20のインピーダンスとから、回路20に発生する電圧(分極電圧Vpol(t))が計算できる。分極電圧Vpolは、抵抗器21およびコンデンサ22に発生する第1分極電圧Vp1(t)と、抵抗器23およびコンデンサ24に発生する第2分極電圧Vp2(t)と、抵抗器25およびコンデンサ26に発生する第3分極電圧Vp3(t)との合計電圧である。すなわち、回路20において、以下の関係式(2)が成立する。
Figure 0007122058000004
ここで、抵抗器21およびコンデンサ22から構成される第1のRC並列回路の時定数を時定数τ1とすると、時定数τ1は、抵抗器21の抵抗値とコンデンサ22の容量値とを乗じた値として定められる。時定数τ1は、抵抗器21およびコンデンサ22に発生する第1分極電圧Vp1(t)の時間変化に反映される。たとえば、時定数τ1が大きいほど、第1分極電圧Vp1(t)の時間変化は遅くなる。同様に、抵抗器23およびコンデンサ24から構成される第2のRC並列回路の時定数を時定数τ2とすると、時定数τ2は、抵抗器23およびコンデンサ24に発生する第2分極電圧Vp2(t)の時間変化に反映される。抵抗器25およびコンデンサ26から構成される第3のRC並列回路の時定数を時定数τ3とすると、時定数τ3は、抵抗器25およびコンデンサ26に発生する第3分極電圧Vp3(t)の時間変化に反映される。時定数τ1、時定数τ2および時定数τ3は互いに異なる値に設定されてよい。回路20が複数の異なる時定数を有するRC並列回路を含むことにより、分極電圧Vpol(t)の時間変化をより正確に表すことができる。各時定数は、たとえば、τ1<τ2<τ3となるように設定されてよい。
[定電圧源30および開放電圧Vocv(t)]
定電圧源30は、一定の直流(DC)電圧を有する。定電圧源30の有する電圧は、蓄電デバイスの開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)Vocv(t)である。定電圧源30のインピーダンスは0である。開放電圧Vocv(t)は、たとえば、蓄電デバイスのSOCから求められる。その場合、開放電圧Vocv(t)は、SOCを引数とする関数となる。蓄電デバイスの温度なども、引数に含まれてもよい。
以上に説明した、回路10に発生する直流抵抗電圧Vdc(t)、回路20に発生する分極電圧Vpol(t)および定電圧源30が有する開放電圧Vocv(t)と、端子電圧V(t)との間には、以下の関係式(3)が成立する。以上に説明した蓄電デバイスの等価回路モデル40を用いて、実施形態に係るシミュレーション装置は、蓄電デバイスの端子電圧V(t)を推定する。
Figure 0007122058000005
図3は、一実施形態に係るシミュレーション装置1の概略構成を示す図である。シミュレーション装置1は、その機能ブロックとして、入力部2と、SOC計算部3と、パラメータ設定部4と、直流抵抗計算部5と、分極計算部6と、OCV計算部7と、端子電圧計算部8とを含む。
図4は、図3のシミュレーション装置1のハードウェア構成の例を示す図である。図4に示されるように、シミュレーション装置1は、物理的には、一または複数のCPU(Central Processing Unit)51と、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)52およびROM(Read Only Memory)53と、データ送受信デバイスである通信モジュール54と、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどの補助記憶装置55と、キーボードなどのユーザの入力を受け付ける入力装置56と、ディスプレイなどの出力装置57と、を備えるコンピュータとして構成されている。図3に示されるシミュレーション装置1の各機能は、CPU51およびRAM52などのハードウェア上に一または複数の所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU51の制御のもとで通信モジュール54、入力装置56、および出力装置57を動作させるとともに、RAM52および補助記憶装置55におけるデータの読み出しおよび書き込みを行うことで実現される。なお、上記の説明はシミュレーション装置1のハードウェア構成として説明したが、燃費シミュレーション装置90がCPU51、RAM52およびROM53などの主記憶装置、通信モジュール54、補助記憶装置55、入力装置56、および出力装置57などを含む通常のコンピュータシステムとして構成されてもよい。
再び図3を参照して、シミュレーション装置1の各機能の詳細を説明する。入力部2は、蓄電デバイスへの指定値(bat_demand)を入力する部分である。指定値は、たとえば上述の燃費シミュレーション装置90による燃費計算において蓄電デバイスに要求される、充放電電流の大きさ、および充放電電力の大きさなどを含む。入力部2は、入力した指定値を直流抵抗計算部5に出力する。図5は、入力部2から入力される充放電電流の波形の例を概念的に示すグラフである。図5において、横軸は時間を表し、縦軸は電流量を表す。この例に示される波形は、エンジン始動期間A1、定電圧充電期間A2、定電流放電期間A3、及び休止期間A4が含まれる。そして、これらの期間A1~A5をそれぞれ定められた回数だけ含む周期A0を1サイクルとして、複数のサイクルにわたって同じ波形を繰り返す。
SOC計算部3は、蓄電デバイスのSOCを計算する部分である。たとえば、蓄電デバイスの初期のSOC(0)と、その後の蓄電デバイスの充放電電気量とから、蓄電デバイスのSOC(t)が計算される。蓄電デバイスの初期のSOC(0)の値は特に限定されず、適宜設定されてよい。蓄電デバイスの充放電電気量は、蓄電デバイスの充放電電流を充放電時間で積算することによって求められる。蓄電デバイスのSOC(t)は、時刻tにおける蓄電デバイスの充放電電気量と蓄電デバイスの満充電容量とに基づいて求められる。時刻tのSOC(t)の計算において、蓄電デバイスに流れる電流として、等価回路モデル40を時刻0から時刻tまでに流れた電流Iが用いられ得る。この場合、SOC計算部3は、たとえば以下の式(4)によってSOC(t)を計算する。SOC計算部3は、計算したSOC(t)をパラメータ設定部4、分極計算部6、およびOCV計算部7にそれぞれ出力する。
Figure 0007122058000006

但し、s=容量(単位Ah)×3600(C/Ah)である。
パラメータ設定部4は、蓄電デバイスの端子電圧の推定に必要な種々の特性パラメータの値を設定する部分である。特性パラメータには、例えば、抵抗器11の抵抗値、抵抗器21の抵抗値、時定数τ1、抵抗器23の抵抗値、時定数τ2、抵抗器25の抵抗値、及び時定数τ3が含まれる。各特性パラメータの値は、蓄電デバイスのSOC、蓄電デバイスの設計変数、蓄電デバイスの履歴変数、及び、想定電流パターンのパラメータ(以下、充放電パターンパラメータと称する)に基づいて設定される。設計変数は、蓄電デバイスの構造を表す変数である。蓄電デバイスが鉛蓄電池である場合、設計変数には、例えば、電極の対向面積、電極厚さ、電極の活物質量、電解液の比重、電解液の液量、及び不織布の種類のうち少なくとも一つが含まれる。履歴変数は、蓄電デバイスの動作履歴を表す変数である。履歴変数には、例えば、エンジン始動回数、総充電量、総放電量、経過時間、及びパターンサイクル数のうち少なくとも一つが含まれる。充放電パターンパラメータは、図5に示された想定電流パターンを構成するパラメータである。充放電パターンパラメータには、例えば、定電圧充電期間A2における電圧値及び電流値、定電流放電期間A3における電流値、定電圧充電期間A2における充電電荷量、及び暗電流放電時間(すなわち休止期間A4の時間長さ)のうち少なくとも一つが含まれる。
各特性パラメータと、蓄電デバイスのSOC、設計変数、履歴変数、及び充放電パターンパラメータとの相関は、ルックアップテーブルとしてまとめられている。パラメータ設定部4は、ルックアップテーブルを参照することによって、各特性パラメータの値を設定する。なお、各特性パラメータの値は、蓄電デバイスの温度に更に基づいて設定されてもよい。その場合には、さらに、蓄電デバイスの温度も考慮して、各パラメータのルックアップテーブルが用意される。パラメータ設定部4は、設定した各パラメータの値を直流抵抗計算部5および分極計算部6に出力する。なお、ルックアップテーブルの詳細については後述する。
直流抵抗計算部5は、等価回路モデル40中の回路10に発生する直流抵抗電圧Vdc(t)を計算する。また、直流抵抗計算部5は、入力部2によって入力された指定値(bat_demand)から、等価回路モデル40に流れる電流I(t)を計算する。分極計算部6は、等価回路モデル40中の回路20に発生する分極電圧Vpol(t)を計算する。OCV計算部7は、蓄電デバイスの開放電圧Vocv(t)を計算する。先に説明したように、開放電圧Vocv(t)は、蓄電デバイスのSOCから求められる。たとえば、各SOCの値と開放電圧Vocvの値とを対応付けたテーブルが予め準備されている。OCV計算部7は、当該テーブルを参照することによって、SOC計算部3から受け取ったSOC(t)から開放電圧Vocv(t)を計算する。なお、上述のテーブルが、温度ごとに準備されていてもよく、その場合には、さらに、蓄電デバイスの温度も考慮して、開放電圧Vocv(t)が計算される。
端子電圧計算部8は、蓄電デバイスの端子電圧V(t)を計算する部分である。先に説明したように、直流抵抗計算部5によって計算された直流抵抗電圧Vdc(t)、分極計算部6によって計算された分極電圧Vpol(t)、およびOCV計算部7によって計算された開放電圧Vocv(t)が端子電圧計算部8に送られる。端子電圧計算部8は、直流抵抗電圧Vdc(t)、分極電圧Vpol(t)、および開放電圧Vocv(t)に基づいて、端子電圧V(t)を計算する。具体的には、端子電圧計算部8は、上記式(2)に示されるように、直流抵抗電圧Vdc(t)、分極電圧Vpol(t)、および開放電圧Vocv(t)を加算し、その合計電圧を端子電圧V(t)として計算する。端子電圧計算部8は、計算した端子電圧V(t)をシミュレーション装置1の外部および直流抵抗計算部5に出力する。
次に、図6を参照して、シミュレーション装置1が実行する端子電圧V(t)の計算処理(シミュレーション方法)を説明する。図6は、シミュレーション装置1が実行する端子電圧V(t)の計算処理の例を示すフローチャートである。図6に示されるフローチャートの処理は、たとえば燃費シミュレーション装置90の燃費計算において、ある時刻tにおける蓄電デバイスの端子電圧を推定する際に実行される。
まず、入力部2が指定値(bat_demand)を入力する(ステップS01)。たとえば、入力部2は、シミュレーション装置1の外部装置から指定値を受け取ることにより、その指定値を入力する。そして、入力部2は、入力した指定値を直流抵抗計算部5に出力する。そして、SOC計算部3は、蓄電デバイスのSOCを計算する(ステップS02)。SOC計算部3は、たとえば、上述された式(3)を用いてSOC(t)を計算する。そして、SOC計算部3は、計算したSOC(t)をパラメータ設定部4、分極計算部6、およびOCV計算部7に出力する。
続いて、パラメータ設定部4は、等価回路モデル40の各特性パラメータを設定する(ステップS03)。ステップS03において設定される特性パラメータは、たとえば、抵抗器11の抵抗値、抵抗器21の抵抗値、時定数τ1、抵抗器23の抵抗値、時定数τ2、抵抗器25の抵抗値、及び時定数τ3である。前述したように、各特性パラメータの値は、蓄電デバイスのSOC、蓄電デバイスの設計変数、蓄電デバイスの履歴変数、及び充放電パターンパラメータに基づいて設定される。パラメータ設定部4は、各特性パラメータと、蓄電デバイスのSOC、設計変数、履歴変数、及び充放電パターンパラメータとの相関が記載されたルックアップテーブルを参照することによって、各特性パラメータの値を設定する。そして、パラメータ設定部4は、設定した各パラメータの値を直流抵抗計算部5および分極計算部6に出力する。
続いて、直流抵抗計算部5は、パラメータ設定部4から提供された抵抗器11の抵抗値を用いて、電流I(t)および直流抵抗電圧Vdc(t)を計算する(ステップS04)。直流抵抗計算部5は、充放電モードが定電流放電モード(端子電圧V(t)によらず、一定の電流を流すモード)である場合には、入力部2によって入力された指定値に含まれる指定電流を電流I(t)に設定する。そして、直流抵抗計算部5は、この電流I(t)に基づいて直流抵抗電圧Vdc(t)を計算する。また、直流抵抗計算部5は、充放電モードが定電圧充電モード(蓄電デバイスを充電するための電圧源(たとえばオルタネータ)の出力電圧を一定にした状態で蓄電デバイスを充電するモード)である場合には、まず直流抵抗電圧Vdc(t)を計算する。そして、この直流抵抗電圧Vdc(t)に基づいて、等価回路モデル40に流れる電流I(t)を計算する。
続いて、分極計算部6は、分極電圧Vpol(t)を計算する(ステップS05)。具体的には、分極計算部6は、パラメータ設定部4から提供された抵抗器21の抵抗値、時定数τ1、抵抗器23の抵抗値、時定数τ2、抵抗器25の抵抗値、時定数τ3を用いて、第1分極電圧Vp1(t)、第2分極電圧Vp2(t)、及び第3分極電圧Vp3(t)を計算する。そして、分極計算部6は、それら第1分極電圧Vp1(t)、第2分極電圧Vp2(t)および第3分極電圧Vp3(t)の合計値を、分極電圧Vpol(t)として計算する。
続いて、OCV計算部7は、開放電圧Vocv(t)を計算する(ステップS06)。たとえば、OCV計算部7は、各SOCの値と開放電圧Vocvの値とを対応付けたテーブルを参照することによって、SOC計算部3から受け取ったSOC(t)から開放電圧Vocv(t)を計算する。そして、OCV計算部7は、計算した開放電圧Vocv(t)を端子電圧計算部8に出力する。
続いて、端子電圧計算部8は、端子電圧V(t)を計算する(ステップS07)。具体的には、端子電圧計算部8は、直流抵抗計算部5によって計算された直流抵抗電圧Vdc(t)、分極計算部6によって計算された分極電圧Vpol(t)、およびOCV計算部7によって計算された開放電圧Vocv(t)に基づいて、端子電圧V(t)を計算する。より具体的には、端子電圧計算部8は、上記式(2)に示されるように、直流抵抗電圧Vdc(t)、分極電圧Vpol(t)、および開放電圧Vocv(t)を加算し、その合計電圧を端子電圧V(t)として計算する。そして、端子電圧計算部8は、計算した端子電圧V(t)をシミュレーション装置1の外部、および直流抵抗計算部5に出力する。以上のようにして、時刻tにおける端子電圧V(t)の計算処理が終了する。なお、ステップS05の処理とステップS06の処理とは、並行して行われてもよく、実施される順番が逆になってもよい。
ここで、パラメータ設定部4及びパラメータ設定ステップS03について更に詳細に説明する。前述したように、等価回路モデル40を構成する特性パラメータは、例えば、抵抗器11の抵抗値、抵抗器21の抵抗値、時定数τ1、抵抗器23の抵抗値、時定数τ2、抵抗器25の抵抗値、及び時定数τ3であるが、実際のシミュレーションにおいては、これらの特性パラメータをより細分化したものが使用される。図7は、細分化された特性パラメータの例を示す図表である。図7において、項番1~3は抵抗器11の抵抗値に関するパラメータであり、項番4は抵抗器12の抵抗値に関するパラメータであり、項番5~21は時定数τ1に関するパラメータであり、項番22~24は抵抗器21の抵抗値に関するパラメータであり、項番25,26は時定数τ2に関するパラメータであり、項番27~30は抵抗器23の抵抗値に関するパラメータであり、項番31,32は時定数τ3に関するパラメータであり、項番33~36は抵抗器25の抵抗値に関するパラメータであり、項番37はコンデンサ13の容量値に関するパラメータである。
前述したように、本実施形態の特性パラメータの値は、蓄電デバイスの設計変数に基づいて設定される。図8は、蓄電デバイスとしての鉛蓄電池100の構造例を示す斜視図である。図8に示すように、この鉛蓄電池100は、上面が開口している電槽102と、電槽102の開口を閉じる蓋103と、電槽102に収容された複数の極板群104及び希硫酸等の電解液(図示せず)と、蓋103から電槽102内に延びる正極柱(図示せず)及び負極柱105と、を備える液式鉛蓄電池である。蓋103は、正極端子107及び負極端子108と、蓋103に設けられた複数の注液口をそれぞれ閉塞する複数の液口栓110とを備えている。正極端子107は、正極柱の一端に接続されている。同様に、負極端子108は、負極柱105の一端に接続されている。
図9は、鉛蓄電池100が備える極板群104を説明するための分解斜視図である。図9に示すように、極板群104は、複数の正極板111、負極板112及びセパレータ113が、電槽102の側壁と略垂直な方向に積層されてなる。正極板111は、正極集電体114と、正極集電体114に保持された正極活物質115とを備えている。正極集電体114は、その一端から電槽102の開口側に向けて突出した正極耳部114aを有している。負極板112は、負極集電体116と、負極集電体116に保持された負極活物質117とを備えている。負極集電体116は、その一端から電槽102の開口側に向けて突出した負極耳部116aを有している。なお、「正極活物質」とは正極板から正極集電体を除いたものを意味し、「負極活物質」とは負極板から負極集電体を除いたものを意味する。正極集電体114及び負極集電体116は、それぞれ、例えば、鉛-カルシウム-錫合金、鉛-カルシウム合金、鉛-アンチモン合金等で形成されている。これらの鉛合金を重力鋳造法、エキスパンド法、打ち抜き法等で格子状に形成することにより、正極耳部114aを有する正極集電体114及び負極耳部116aを有する負極集電体116がそれぞれ得られる。図8に示されるように、正極耳部114a同士は、正極ストラップ118において集合溶接されている。同様に、負極耳部116a同士は、負極ストラップ119において集合溶接されている。負極ストラップ119は、接続部材120を介して、負極端子108から電槽102内に延びる負極柱105と接続されている。同様に、正極ストラップ118は、接続部材を介して、正極端子107から電槽102内に延びる正極柱と接続されている。正極活物質115は、Pb成分としてPbOを含み、必要に応じて、PbO以外のPb成分(例えばPbSO)及び添加剤を更に含む。負極活物質117は、Pb成分としてPb単体を含み、必要に応じてPb単体以外のPb成分(例えばPbSO)及び添加剤を更に含む。図9に示す極板群104における電極板(正極板111及び負極板112)の枚数は、正極板7枚に対して負極板8枚であるが、これに限定されない。例えば、電極板の枚数は、正極板5枚に対し負極板6枚であってもよく、正極板6枚に対し負極板7枚であってもよい。
セパレータ113は、平板(シート)状のベース部113a、ベース部113aの外側面上に形成された複数のリブ113b及び複数のミニリブ113cとを備えている。セパレータ113は、袋状に形成されており、負極板112を収容している。他の一実施形態では、セパレータ113が正極板111を収容していてよい。また、セパレータ113は袋状に形成されていなくてもよい。セパレータ113は、例えば、ガラス、パルプ、及び合成樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の材料を含む。また、正極板111と負極板112との間には、図示しないスペーサが設けられる。スペーサは、正極板111とセパレータ113との間に設けられていてよく、負極板112とセパレータ113との間に設けられていてもよい。スペーサは、例えば、シート状に形成されている。スペーサは、例えば多孔性の膜(多孔膜)であり、例えば不織布である。スペーサの構成材料は、電解液に対して耐性を有する材料であれば、特に制限されるものではない。スペーサの構成材料としては、具体的には、有機繊維、無機繊維、パルプ、無機酸化物粉末等が挙げられる。スペーサの構成材料として、無機繊維及びパルプを含む混合繊維を用いてもよく、有機繊維及び無機繊維を含む有機無機混合繊維を用いてもよい。有機繊維としては、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、ポリエチレンテレフタレート繊維などが挙げられる。無機繊維としては、ガラス繊維等が挙げられる。
図10は、設計変数の例を示す図表である。図10に示されるように、蓄電デバイスの設計変数には、電極の対向面積、電極厚さ、電極の活物質量、電解液の比重、電解液の液量、及び不織布の種類のうち少なくとも一つが含まれる。一例では、設計変数にはこれら全てが含まれる。なお、電極の対向面積とは、正極集電体114と負極集電体116とが対向する総面積を意味する。正極板111がa枚、負極板112が(a+1)枚設けられる場合、正極集電体114及び負極集電体116の1つあたりの面積をSとすると、電極の対向面積はa×2×Sで表される。正極集電体114及び負極集電体116の板面に垂直な方向から見た形状が長方形状で或る場合、正極集電体114及び負極集電体116の面積Sは、横幅Wと高さHとの積(W×H)として表される。高さHと横幅Wとの組み合わせ(H,W)は、例えば(111mm,100mm)及び(116mm,142mm)から選択される。正極板111の枚数aは、例えば5~9から選択される。
電極厚さとは、正極板111及び負極板112の配列方向における、正極集電体114及び負極集電体116の1つあたりの厚さを意味する。電極厚さは、例えば0.9mm及び1.1mmから選択される。また、電極の活物質量とは、単位面積当たりの正極活物質115及び負極活物質117の質量を意味する。正極活物質115の活物質量は、例えば0.0042~0.0066(g/シート/mm)の範囲内で選択される。負極活物質117の活物質量は、例えば0.0031~0.0047(g/シート/mm)の範囲内で選択される。
電解液の比重とは、電槽102に収容された希硫酸等の電解液の比重を意味する。電解液の比重は、例えば1.28g/ml及び1.29g/mlから選択される。また、電解液の液量とは、電槽102に収容された希硫酸等の電解液の液量を意味する。電解液の液量は、例えば315~860mlの範囲内で選択される。また、不織布の種類とは、正極板111と負極板112との間に設けられるスペーサの構成材料を意味する。
なお、図10の設計変数には、上述した各設計変数に加えて、電極格子デザイン(正極格子デザイン及び負極格子デザイン)、並びに電極仕様(正極仕様及び負極仕様)が含まれている。電極格子デザインは、正極集電体114及び負極集電体116の格子の粗さ(開口率)を意味する。電極格子デザインは、例えば小メッシュ及び中メッシュから選択される。電極仕様は、活物質の密度、添加剤の種類および添加量を意味する。電極仕様は、例えば10PB、12PB、及び16PBから選択される。
前述したように、本実施形態の特性パラメータの値は、更に履歴変数に基づいて設定される。図11は、履歴変数の例を示す図表である。図11に示されるように、蓄電デバイスの履歴変数には、エンジン始動回数、総充電量、総放電量、経過時間、及びパターンサイクル数のうち少なくとも一つが含まれる。一例では、履歴変数にはこれら全てが含まれる。なお、エンジン始動回数とは、時刻0から時刻tまでの期間におけるエンジン始動期間A1(図5を参照)の発生回数を意味する。総充電量とは、蓄電デバイスへの充電量を時刻0から時刻tまで積算した値を意味する。総放電量とは、蓄電デバイスからの放電量を時刻0から時刻tまで積算した値を意味する。経過時間とは、時刻0から時刻tまでの時間を意味する。パターンサイクル数とは、図5に示された期間A1~A5をそれぞれ定められた回数だけ含む周期A0を1サイクルとしたときの繰り返しサイクル数を意味する。
また、前述したように、本実施形態の特性パラメータの値は、更に充放電パターンパラメータに基づいて設定される。図12は、充放電パターンパラメータの例を示す図表である。図12に示されるように、充放電パターンパラメータには、定電圧充電時の電流値、定電流放電時の電流値、充電電荷量、定電圧充電時の電圧値(CV電圧)、及び暗電流放電時間のうち少なくとも一つが含まれる。一例では、履歴変数にはこれら全てが含まれる。なお、定電圧充電時の電流値とは、図5に示された定電圧充電期間A2において蓄電デバイスに流れる電流値を意味する。定電流放電時の電流値とは、図5に示された定電流放電期間A3において蓄電デバイスに流れる電流値を意味する。充電電荷量とは、図5に示された1回の定電流放電期間A3の間に充電される電荷量(すなわち電流値の積算値)を意味する。定電圧充電時の電圧値(CV電圧)とは、図5に示された定電圧充電期間A2における蓄電デバイスの両端電位差を意味する。暗電流放電時間とは、図5に示された休止期間A4の1回あたりの時間長さを意味する。
ここで、説明の便宜のため、特性パラメータをP~P(Iは特性パラメータの個数、図7に示された例ではI=37)とし、設計変数をY~Y(Nは設計変数の個数、図10に示された例ではN=12)とし、5つの履歴変数(エンジン始動回数、総充電量、総放電量、経過時間、及びパターンサイクル数)をT~Tとし、想定電流パターンを構成する5つの充放電パターンパラメータ(定電圧充電時の電流値、定電流放電時の電流値、充電電荷量、CV電圧、及び暗電流放電時間)をX~Xとする。このとき、特性パラメータP~Pを求める手順としては、少なくとも下記の7通りがある。
(1)各特性パラメータP(i=1,2,…,I)を設計変数Y~Yの関数とする。
(2)各特性パラメータPを設計変数Y~Yの関数とし、各設計変数Y(n=1,2,…,N)の係数を履歴変数T~Tの関数とし、各履歴変数T(k=1,2,3,4,5)の係数を充放電パターンパラメータX~Xの関数とする。
(3)各特性パラメータPを設計変数Y~Yの関数とし、各設計変数Yの係数を充放電パターンパラメータX~Xの関数とし、各充放電パターンパラメータX(j=1,2,3,4,5)の係数を履歴変数T~Tの関数とする。
(4)各特性パラメータPを履歴変数T~Tの関数とし、各履歴変数Tの係数を設計変数Y~Yの関数とし、各設計変数Yの係数を充放電パターンパラメータX~Xの関数とする。
(5)各特性パラメータPを履歴変数T~Tの関数とし、各履歴変数Tの係数を充放電パターンパラメータX~Xの関数とし、各充放電パターンパラメータXの係数を設計変数Y~Yの関数とする。
(6)各特性パラメータPを充放電パターンパラメータX~Xの関数とし、各充放電パターンパラメータXの係数を設計変数Y~Yの関数とし、各設計変数Yの係数を履歴変数T~Tの関数とする。
(7)各特性パラメータPを充放電パターンパラメータX~Xの関数とし、各充放電パターンパラメータXの係数を履歴変数T~Tの関数とし、各履歴変数Tの係数を設計変数Y~Yの関数とする。
上記の(1)は、各特性パラメータP(i=1,2,…,I)を設計変数Y~Yに基づいて設定する方法である。上記の(2)~(7)は、各特性パラメータP(i=1,2,…,I)を設計変数Y~Y、履歴変数T~T及び充放電パターンパラメータX~Xに基づいて設定する方法である。
ここで、上記の(2)の手順を例に、特性パラメータの設定方法を説明する。まず、各特性パラメータPiを設計変数Y~Y(n=1,2,…,N)の関数とする。関数は、例えば以下の数式(5)として表してもよい。但し、r,r,・・・,rは係数である。この例では、特性パラメータPiを設計変数Y~Yの線形和として表している。対数を用いてPを表現した理由は、Pは正の値のため、線形和では負の値になるおそれがあるからである。なお、正値になるという保障があればPをYの線形和としても構わない。
Figure 0007122058000007

次に、各設計変数Yの係数rを履歴変数T~Tの関数とする。関数は、例えば以下の数式(6)として表される。なお、r(0)は新品時の係数(定数)であり、Rは係数である。この例では、係数rを、ネイピア数eを底とする履歴変数T~Tの指数関数を含む関数として表している。式(6)は、Σをexpの中に入れた式であり、rが飽和することを意識した式である。
Figure 0007122058000008

次に、各履歴変数T(k=1,…,5)の係数κn,k及びRを、充放電パターンパラメータX~Xの関数とする。関数は、例えば以下の数式(7)として表される。但し、cn,k,0,cn,k,1,・・・,cn,k,5及びdn,0,dn,1,・・・,dn,5は係数である。この例では、係数κn,k及びRを充放電パターンパラメータX~Xの線形和として表している。
Figure 0007122058000009
係数cn,k,0,cn,k,1,・・・,cn,k,5及びdn,0,dn,1,・・・,dn,5に関しては、実物の蓄電デバイスを用いて同定された値を含むルックアップテーブルが予め用意される。図13は、このルックアップテーブルを概念的に示す図である。なお、以下に示される図において、表中のXXXは適切な数値を表している。同図に示されるように、ルックアップテーブルは各特性パラメータ毎かつSOC毎に用意される。また、このルックアップテーブルでは、係数ck,0,ck,1,・・・,ck,5及びd,d,・・・,dを一方の項目とし、r,r,・・・,rを他方の項目として、それらの項目に対応する特性パラメータの値がテーブル状に記憶される。
図13に示されたルックアップテーブルから特性パラメータを求める際には、まず、SOCと、設計変数Y~Yと、充放電パターンパラメータX~Xと、充放電パターンパラメータX~X以外の履歴変数T~Tとを決定する。そして、特定したSOCに対応するルックアップテーブルの中から、各係数r,r,・・・,rそれぞれに対応する係数ck,0,ck,1,・・・,ck,5及びd,d,・・・,dを選択する。これらの係数ck,0,ck,1,・・・,ck,5及びd,d,・・・,dを用いて、係数κn,k及びRを数式(7)を用いて算出する。そして、数式(6)を用いて各係数r,・・・,rそれぞれを算出する。最後に、数式(5)を用いて特性パラメータPを算出する。このような処理を全ての特性パラメータP~Pに関して行うことにより、蓄電デバイスの等価回路モデルが完成する。
なお、図13に示されたルックアップテーブルを作成する際には、まずSOCと、設計変数Y~Yと、充放電パターンパラメータX~Xと、履歴変数T~Tとを予め定めた上で、実物の蓄電デバイスを用いて各特性パラメータP~Pを同定する。図14は、同定した各特性パラメータP~Pを概念的に示す図である。次に、数式(5)に基づいて最小二乗法などによるフィッティングを行うことにより、各特性パラメータP~Pを一方の項目とし、係数r,r,・・・,rを他方の項目とするテーブルを作成する。図15は、作成されたテーブルを概念的に示す図である。続いて、履歴変数T~Tを変化させつつ上記の処理を繰り返すことによって、履歴変数T~Tを一方の項目とし、係数r,r,・・・,rを他方の項目とする、各特性パラメータP~Pのそれぞれに対応したI枚のテーブルを作成する。なお、該テーブルの一方の項目は、時間を表しているともいえる。図16は、作成されたテーブルを概念的に示す図である。続いて、数式(6)に基づいて最小二乗法などによるフィッティングを行うことにより、各係数κn,k及びRを一方の項目とし、各係数r(n=1,…,N)を他方の項目とする、各特性パラメータP~Pのそれぞれに対応したI枚のテーブルを作成する。図17は、作成されたテーブルを概念的に示す図である。次に、係数κn,k及びRを充放電パターンパラメータX~Xを用いて関数近似するために、充放電パターンパラメータX~Xを一方の項目とし、係数r(n=1,…,N)ごとの係数κn,k及びRを他方の項目とする、各特性パラメータP~Pのそれぞれに対応したI枚のテーブルを作成する。図18は、作成されたテーブルを概念的に示す図である。最後に、数式(7)に基づいて最小二乗法などによるフィッティングを行うことにより、各係数cn,k,0,cn,k,1,・・・,cn,k,5及びdn,0,dn,1,・・・,dn,5にκn,k及びRを一方の項目とし、各係数r(n=1,…,N)を他方の項目とする、各特性パラメータP~Pのそれぞれに対応したI枚のテーブルを作成する。このI枚のテーブルが、図13に示されたルックアップテーブルである。
以上に説明した、本実施形態によるシミュレーション方法及びシミュレーション装置によって得られる効果について説明する。本実施形態では、各特性パラメータP(i=1,2,…,I)を、当該特性パラメータPと蓄電デバイスの設計変数Y~Yとの相関に基づいて設定する。これにより、蓄電デバイスの設計変数Y~Yがシミュレーション結果に対してどのように影響しているのかを設計者が直感的且つ容易に理解できる。従って、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に容易に反映させることができる。
また、本実施形態のように、設計変数Y~Yは、電極の対向面積、電極厚さ、電極の活物質量、電解液の比重、電解液の液量、及び不織布の種類のうち少なくとも一つを含んでもよい。これらの設計変数は、蓄電デバイスの特性パラメータP~Pの変動に対して比較的大きな影響を与える。従って、これらの設計変数Y~Yとの相関に基づいて特性パラメータP~Pを算出することにより、シミュレーション結果を蓄電デバイスの設計に更に容易に反映させることができる。
また、本実施形態のように、各特性パラメータP(i=1,2,…,I)を、当該特性パラメータPと履歴変数T~Tとの相関に基づいて設定してもよい。蓄電デバイスのシミュレーションにおいて、蓄電デバイス構成を正確にモデル化することは、シミュレーションを精度よく行うために極めて重要である。しかしながら、従来のシミュレーションにおいては、蓄電デバイスの使用による劣化を考慮せずに蓄電デバイスをモデル化しているので、劣化したときの蓄電デバイスの特性を精度良く推定するためには、モデルの特性パラメータP~Pを同定する際に、実際に劣化した蓄電デバイスを用意する必要がある。このような課題に対し、蓄電デバイスの動作履歴を表す履歴変数T~Tとの相関に基づいて特性パラメータP~Pを算出すれば、蓄電デバイスの劣化度合いを特性パラメータP~Pに容易に反映させることができる。従って、実際に劣化した蓄電デバイスを用いなくても、劣化した蓄電デバイスのシミュレーションを精度良く行うことができる。
また、本実施形態のように、履歴変数T~Tは、エンジン始動回数、総充電量、総放電量、経過時間、及びパターンサイクル数のうち少なくとも一つを含んでもよい。これらの履歴変数は、蓄電デバイスの劣化に対して比較的大きな影響を与える。従って、これらの履歴変数との相関に基づいて特性パラメータP~Pを算出することにより、蓄電デバイスのシミュレーションを更に精度良く行うことができる。
また、本実施形態のように、各特性パラメータP(i=1,2,…,I)を、当該特性パラメータPと充放電パターンパラメータX~Xとの相関に基づいて設定してもよい。蓄電デバイスの劣化度合いは、繰り返される想定電流パターンの形状(電流値、電圧値など)に応じて変化する。従って、充放電パターンパラメータX~Xとの相関に基づいて特性パラメータP~Pを算出することによっても、蓄電デバイスの劣化度合いを特性パラメータP~Pに容易に反映させることができる。故に、劣化した蓄電デバイスのシミュレーションを精度良く行うことができる。また、この場合、充放電パターンパラメータX~Xは、定電圧充電時の電圧値、定電圧充電時の電流値、定電流放電時の電流値、充電電荷量、及び暗電流放電時間のうち少なくとも一つを含んでもよい。これらの充放電パターンパラメータは、蓄電デバイスの劣化に対して比較的大きな影響を与える。従って、これらの充放電パターンパラメータとの相関に基づいて特性パラメータP~Pを算出することにより、蓄電デバイスのシミュレーションを更に精度良く行うことができる。
また、本実施形態のように、蓄電デバイスは鉛蓄電池であってもよい。その場合、シミュレーション結果に基づいて設計変数Y~Yを調整することにより、鉛蓄電池の設計を容易に行うことができる。
本発明によるシミュレーション方法及びシミュレーション装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、全ての特性パラメータP~Pを設計変数Y~Yとの相関に基づいて設定しているが、特性パラメータP~Pのうち少なくとも1つを設計変数Y~Yとの相関に基づいて設定してもよい。また、設計変数は図10に示された例に限られず、蓄電デバイスの構造を表す様々な変数を設計変数に含めることができる。また、履歴変数は図11に示された例に限られず、蓄電デバイスの動作履歴を表す様々な変数を履歴変数に含めることができる。また、充放電パターンパラメータは図12に示された例に限られず、想定電流パターンを構成する様々なパラメータを充放電パターンパラメータに含めることができる。また、上述した実施形態では蓄電デバイスとして鉛蓄電池を例示したが、例えばリチウムイオン電池、ニッケル亜鉛電池といった他の蓄電デバイスに上述したシミュレーション方法及びシミュレーション装置を適用してもよい。
また、上記の説明では(2)の方法を例に、特性パラメータの具体的な設定方法を示したが、他の(1)または(3)~(7)のいずれかの方法によって特性パラメータを設定してもよい。また、上記の説明では、各特性パラメータPiを設計変数Y~Y(n=1,2,…,N)の関数とする際に特性パラメータPiを設計変数Y~Yの線形和として表し、各設計変数Yの係数rを履歴変数T~Tの関数とする際にネイピア数eを底とする履歴変数T~Tの指数関数として係数rを表し、係数κn,k及びRを充放電パターンパラメータX~Xの線形和として表している。しかしながら、これらの変数間の関係式は任意に設定することができる。すなわち、特性パラメータP~P、設計変数Y~Y、履歴変数T~T、及び充放電パターンパラメータX~Xのうち一つの変数又はパラメータと、他の一つの変数又はパラメータとの関係式は、線形和であってもよく、ネイピア数eを底とする指数関数を含む関数であってもよく、平方根を含む関数であってもよく、飽和関数を含む関数であってもよく、或いは他の関数であってもよい。具体的には、一つの変数又はパラメータをA(p=1,…,P)とし、他の一つの変数又はパラメータをB(q=1,…,Q)としたときに、これらの関係式は例えば下記の数式(8)であってもよく、下記の数式(9)であってもよく、下記の数式(10)であってもよい。また、ニューラルネットワークによる関数近似を用いても良い。なお、h,…,h、m,…,m、Uは係数である。
Figure 0007122058000010

Figure 0007122058000011

Figure 0007122058000012
また、上述した実施形態では各特性パラメータPiの関数において各設計変数Y~Yが互いに独立して含まれているが、これらを相互に乗算したもの、これらを相互に除算したもの(例えば図10のY/Y12、Y/Y12、Y10/Y12など)が各特性パラメータPiの関数に含まれてもよい。
1…シミュレーション装置、2…入力部、3…SOC計算部、4…パラメータ設定部、5…直流抵抗計算部、6…分極計算部、7…OCV計算部、8…端子電圧計算部、10,20…回路、11,12,21,23,25…抵抗器、13…コンデンサ、14…スイッチング素子、22,24,26…コンデンサ、30…定電圧源、40…等価回路モデル、51…CPU、52…RAM、53…ROM、54…通信モジュール、55…補助記憶装置、56…入力装置、57…出力装置、90…燃費シミュレーション装置、91…入力部、92…制御部、93…出力部、100…鉛蓄電池、102…電槽、103…蓋、104…極板群、105…負極柱、107…正極端子、108…負極端子、110…液口栓、111…正極板、112…負極板、113…セパレータ、113a…ベース部、113b…リブ、113c…ミニリブ、114…正極集電体、114a…正極耳部、115…正極活物質、116…負極集電体、116a…負極耳部、117…負極活物質、118…正極ストラップ、119…負極ストラップ、120…接続部材、A1…エンジン始動期間、A2…定電圧充電期間、A3…定電流放電期間、A4…休止期間、N…ノード、N…ノード、P~P37…特性パラメータ、T~T…履歴変数、Vdc…直流抵抗電圧、Vdc1,Vdc2…電圧、Vg…電圧、Vocv…開放電圧、Vp1,Vp2,Vp3…分極電圧、Vpol…分極電圧、Vth…閾値電圧、X~X…充放電パターンパラメータ、Y~Y12…設計変数。

Claims (10)

  1. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う方法であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定ステップと、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算するステップと、
    を含み、
    前記パラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定
    前記設計変数は、電極の対向面積、電極厚さ、電極の活物質量のうち少なくとも一つを含む、シミュレーション方法。
  2. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う方法であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定ステップと、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算するステップと、
    を含み、
    前記パラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定し、
    前記パラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの動作履歴を表す履歴変数との相関に基づいて設定する、シミュレーション方法。
  3. 前記履歴変数は、エンジン始動回数、総充電量、総放電量、経過時間、パターンサイクル数のうち少なくとも一つを含む、請求項に記載のシミュレーション方法。
  4. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う方法であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定ステップと、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算するステップと、
    を含み、
    前記パラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定し、
    前記パラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと想定電流パターンのパラメータとの相関に基づいて設定する、シミュレーション方法。
  5. 前記想定電流パターンのパラメータは、定電圧充電時の電圧値、定電圧充電時の電流値、定電流放電時の電流値、充電電荷量、及び暗電流放電時間のうち少なくとも一つを含む、請求項に記載のシミュレーション方法。
  6. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う方法であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定ステップと、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算するステップと、
    を含み、
    前記パラメータ設定ステップにおいて、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定し、
    前記蓄電デバイスは鉛蓄電池であり、
    前記設計変数は、電解液の比重、電解液の液量、及び不織布の種類のうち少なくとも一つを含む、シミュレーション方法。
  7. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う装置であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定部と、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算する電圧計算部と、
    を備え、
    前記パラメータ設定部は、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定
    前記設計変数は、電極の対向面積、電極厚さ、電極の活物質量のうち少なくとも一つを含む、シミュレーション装置。
  8. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う装置であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定部と、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算する電圧計算部と、
    を備え、
    前記パラメータ設定部は、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定し、
    前記パラメータ設定部において、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの動作履歴を表す履歴変数との相関に基づいて設定する、シミュレーション装置。
  9. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う装置であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定部と、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算する電圧計算部と、
    を備え、
    前記パラメータ設定部は、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定し、
    前記パラメータ設定部において、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと想定電流パターンのパラメータとの相関に基づいて設定する、シミュレーション装置。
  10. 蓄電デバイスの等価回路モデルを用いてシミュレーションを行う装置であって、
    前記等価回路モデルに含まれる複数の特性パラメータを設定するパラメータ設定部と、
    前記等価回路モデルを流れる想定電流に基づいて前記等価回路モデルの端子電圧を計算する電圧計算部と、
    を備え、
    前記パラメータ設定部は、少なくとも一つの前記特性パラメータを、当該特性パラメータと前記蓄電デバイスの構造を表す設計変数との相関に基づいて設定し、
    前記蓄電デバイスは鉛蓄電池であり、
    前記設計変数は、電解液の比重、電解液の液量、及び不織布の種類のうち少なくとも一つを含む、シミュレーション装置。

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