JP7121818B1 - プログラム、画像処理装置及び画像処理方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 0007121818000001
【課題】被験者の負担を軽減しつつ診断精度を向上させることを可能にすること。
【解決手段】設定部3は、スムージング処理が行われる前の断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、断層画像データに対して、心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定する。抽出部4は、関心領域に基づいて、断層画像データから心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出する。画像処理部5は、心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う。
【選択図】図1

Description

本開示は、核医学用の画像処理技術に関する。
放射性医薬品を被験者に投与し、その放射性医薬品から放出される放射線を検出して3次元の核医学画像を取得するSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射断層撮影)又はPET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)と呼ばれる技術を用いて心臓を検査する心臓核医学検査が注目されている。
心臓核医学検査では、心筋に集積した放射性医薬品からの放射線に応じた核医学画像が取得され、その核医学画像に基づいて、心臓の検査が行われる。しかしながら、放射性医薬品は、生理的に肝臓にも集積され、消化管を介して排出されるため、肝臓及び消化管などの横隔膜下の臓器である横隔膜下臓器に集積した放射性医薬品からの放射線による虚像(アーチファクト)が核医学画像に生じてしまい、心筋、特に横隔膜下臓器に隣接する心筋下壁の画像に影響が生じるという問題がある。
例えば、横隔膜下臓器からの放射線と心筋下壁からの放射線とが部分容積効果の影響を受けて、心筋下壁の放射線カウント値が増加してしまうことがある。この場合、心筋下壁における欠陥が覆い隠されたり、心筋下壁以外の領域で放射線カウント値が低下しているように認識されたりする恐れがある。また、フィルタ補正逆投影法(Filtered Back-projection:FBP)による画像再構成が行われると、心筋下壁の放射線カウント値が低下してしまうこともある(非特許文献1参照)
非特許文献2には、心筋の核医学画像における放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を除去するための方法が記載されている。具体的には、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積が減少又は移動するまで撮影を繰り返す方法と、通常の仰臥位撮像に加えて、腹臥位撮像を追加する方法とが記載されている。腹臥位撮像では、心臓と横隔膜下臓器との距離が離れるため、横隔膜下臓器の集積による虚像を低減することができる。
Steven Burrell, et al. "Artifacts and Pitfalls in Myocardial PerfusionImaging", Journal of Nuclear Medicine Technology, 2006 Dec;34(4):193-211. Ryan A Dvorak, et al. "Interpretation of SPECT/CT Myocardial Perfusion Images: Common Artifacts and Quality Control Techniques", Radiographics, Nov-Dec 2011;31(7):2041-57.
しかしながら、非特許文献1及び2に記載の方法では、心筋の核医学画像における放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を必ずしも低減できるとは限らず、却って診断精度が低下する恐れがある。また、撮影を複数回行う必要があるため、検査時間が長くなり、被験者の負担が大きいという問題もある。
本開示は、上記問題を鑑みてなされたものであり、被験者の負担を軽減しつつ診断精度を向上させることが可能なプログラム、画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
本開示の一態様に従うプログラムは、心筋及び横隔膜下臓器に集積した放射性医薬品の分布を示し、かつ、スムージング処理が行われる前の断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、前記断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定する設定部と、前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出する抽出部と、前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う画像処理部と、をコンピュータに実現させる。
また、好適な態様では、前記設定部は、心腔内の所定の位置から立体放射状に伸びた複数の放射状線のそれぞれに沿って前記断層画像データの画素値を計測し、前記放射状線ごとに、画素値が極大、かつ、前記基準画素値の一定割合以上となる画素である高集積画素に基づいて、前記断層画像データにおける前記心筋の外壁に対応する心筋外壁位置を特定し、前記心筋外壁位置に基づいて前記関心領域を設定する。
また、好適な態様では、前記設定部は、前記高集積画素が1つの場合、前記高集積画素から外側に向かって一定距離離れた位置を前記心筋外壁位置として特定し、前記高集積画素が2つ以上の場合、前記所定の位置に最も近い前記高集積画素と、前記所定の位置に2番目に近い前記高集積画素との間における最小の画素値を有する画素の位置を前記心筋外壁位置として特定する。
また、好適な態様では、前記設定部は、各放射状線における前記心筋外壁位置を繋いだ領域である略心臓形領域、又は、前記略心臓形領域の形状を楕円体に近似した楕円体領域を前記関心領域として設定する。
また、好適な態様では、前記抽出部は、前記関心領域の外周上の画素である外周画素ごとに、当該外周画素から外側に向かった外向き線に沿って、当該外周画素から特定距離までの間に、画素値が極大、かつ、前記基準画素値の一定割合以上となる画素である外側集積画素が存在する場合、前記外向き線に沿った画素値に基づいて、前記外向き線上の画素の画素値から前記横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品に応じた画素値である横隔膜下の集積の画素値を差し引くことで、前記心筋断層画像データを抽出する。
また、好適な態様では、前記抽出部は、前記外向き線に沿った前記外周画素から前記外側集積画素までの画素値の変化をガウス関数で近似し、当該ガウス関数で表される画素値を前記横隔膜下の集積の画素値として前記外向き線上の画素の画素値から差し引く。
また、好適な態様では、前記抽出部は、前記関心領域における前記外向き線に沿った画素値の変化をガウス関数で近似し、当該ガウス関数で表される画素値を前記外向き線上の画素の画素値から前記横隔膜下の集積の画素値を差し引いた画素値とする。
また、好適な態様では、前記抽出部は、前記外周画素ごとに、前記外側集積画素が存在する場合、前記外向き線に沿った前記外側集積画素よりも外側の領域の画素値を全て零にし、前記外側集積画素が存在しない場合、前記断層画像データの前記外周画素から外側に向かって特定距離離れた位置よりも外側の領域の画素値を全て零にする。
また、好適な態様では、前記画像処理部は、前記心筋断層画像データを投影データに逆変換し、当該投影データに基づく心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う。
本開示の一態様に従う画像処理装置は、心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示し、かつ、スムージング処理が行われる前の断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、前記断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定する設定部と、前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出する抽出部と、前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う画像処理部と、を有する。
本開示の一態様に従う画像処理方法は、心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示し、かつ、スムージング処理が行われる前の断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、前記断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定し、前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し、前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う。
本開示によれば、被験者の負担を軽減しつつ診断精度を向上させることが可能となる。
本開示の一実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。 本開示の一実施形態の画像処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。 関心領域抽出処理の一例を説明するためのフローチャートである。 スライス画像における放射状線の一例を示す図である。 心筋外壁位置を特定する処理を説明するための図である。 心筋抽出処理の一例を説明するためのフローチャートである。 横隔膜下臓器の集積の画素値を特定する処理を説明するための図である。 本開示の画像処理方法と参考例の画像処理方法とを示す図である。 本開示の画像処理方法による心筋断層画像データと参考例の画像処理方法による心筋断層画像データとを示す図である。
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置100は、例えば、プロセッサ(コンピュータ)及びメモリ(共に図示せず)を備えたコンピュータシステムにより構成される。この場合、以下で説明する画像処理装置100の各構成要素及び各機能は、例えば、プロセッサがプログラムを読み取り、その読み取ったプログラムを実行することで実現される。プログラムは、メモリのようなコンピュータにて読み取り可能な記録媒体に記録可能である。
また、画像処理装置100は、入出力装置101と、補助記憶装置102とに接続されている。入出力装置101は、キーボード、タッチパネル及びポインティングデバイスのような画像処理装置100を利用するユーザから種々の情報を受け付ける入力装置と、ディスプレイ装置及びプリンタのようなユーザに対して種々の情報を出力する出力装置とを有する。また、入出力装置101は、インターネットなどの通信網を介して種々の情報の送受信を行うネットワークインタフェース装置を含んでもよい。補助記憶装置102は、例えば、大容量記憶装置のような種々の情報を記憶する記憶装置である。
画像処理装置100は、取得部1と、再構成部2と、設定部3と、抽出部4と、画像処理部5とを有する。
取得部1は、処理対象のデータとして、放射性医薬品を投与した被験者からの放射線に基づく投影データを取得する。投影データは、被験者に放射性医薬品を投与してから一定時間後に、放射線検出器を用いて被験者を撮影することで生成される。投影データは、具体的には、被験者の周りを回転する検出器の所定の回転角度ごとに、2次元に配置された複数の画素と、各画素の画素値とを含むデータである。画素値は、画素に対応する被験者の部位からの放射線をカウントしたカウント値に応じて定まる値である。画素値は、例えば、カウント値そのものでもよい。
本実施形態では、投影データは、心筋核医学検査用の投影データである。この場合、カウント値には、通常、心筋からの放射線だけでなく、肝臓などの横隔膜下臓器に集積した放射性医薬品からの放射線の影響が表れる。また、放射性医薬品は、心筋SPECT検査又は心筋PET検査に用いられる放射性医薬品であれば、特に限定されない。
再構成部2は、取得部1にて取得された投影データに基づいて、断層画像データを生成する。具体的には、再構成部2は、投影データに対して画像再構成処理を行い、心筋の水平断層像(体軸横断層像)を示す水平断層画像データを生成し、その水平断層画像データに対して断面変換処理を行うことで、断面の向きが異なる複数の断層画像データを生成する。断層画像データは、本実施形態では、心筋の水平長軸断層像を示す水平長軸断層画像データと、心筋の垂直長軸断層像を示す垂直長軸断層画像データと、心筋の短軸像を示す短軸断層画像データを断層画像データとを含む。
各断層画像データには、心筋に集積した放射性医薬品の分布だけでなく、心臓に隣接する肝臓や消化管のような横隔膜下臓器に集積した放射性医薬品の分布が反映されている。また、各断層画像データは、心臓の中心(より具体的には、心臓の左室の中心)が画像の中心に配置されるように生成される。なお、各断層画像データは、複数のスライス画像の集合である。
画像再構成処理は、本実施形態では、MLEM(Maximum Likelihood Expectation Maximization)法及びOSEM(Ordered Subset Expectation Maximization method)法のような、分解能補正を含む統計的画像再構成法を用いた画像再構成処理である。この場合、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による心筋下壁への影響を少なくすることができる。また、後述する抽出部4による心筋断層画像データの抽出が容易になる。ただし、画像再構成処理は、分解能補正を含まない統計的画像再構成法を用いた画像処理でもよいし、従来のフィルタ補正逆投影法(Filtered Back-projection:FBP)を用いた画像処理などでもよい。
なお、特に心筋SPECT検査用の断層画像データは、情報量が比較的少なく、統計ノイズが比較的多いため、通常、視認性を向上させるために、画像再構成処理の前又は後に、画像上の画素値の変化を滑らかにするスムージング処理が行われる。しかしながら、スムージング処理が行われると、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による心筋下壁への影響が強調されてしまう。このため、本実施形態では、再構成部2は、スムージング処理を行わない。
また、取得部1は、処理対象のデータとして、投影データの代わりに断層画像データを取得してもよい。この場合、再構成部2にて画像再構成処理を行う必要はない。また、取得部1が取得する断層画像データには、スムージング処理が行われていないものとする。
設定部3は、断層画像データに対して、心筋に集積した放射性薬品の分布である心筋分布を写した3次元の領域を関心領域として設定する。具体的には、設定部3は、断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する上側領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、断層画像データに対して、心筋分布を写した領域を関心領域として設定する。
抽出部4は、設定部3にて設定された関心領域に基づいて、断層画像データから心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出する。
画像処理部5は、抽出部4にて抽出された心筋断層画像データに対して種々の画像処理を行って出力する。画像処理は、例えば、スムージング処理、及び、断面変換処理などである。また、画像処理は、心筋断層画像データを投影データに逆変換し、その投影データに対して画像再構成処理、断面変換処理及びスムージング処理を行うことで、所望の断層画像データを生成するものでもよい。この場合、断面の向きを所望の向きとした断層画像データなどを生成することが可能になる。
図2は、画像処理装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
先ず、取得部1は、処理対象のデータを取得する(ステップS101)。例えば、取得部1は、放射線検出器を用いて被験者を撮影する撮影装置などの任意の外部装置から入出力装置101を介してデータを取得してもよいし、補助記憶装置102に記憶されたデータを取得してもよい。
取得部1は、取得したデータが投影データか否かを判断する(ステップS102)。
取得したデータが投影データである場合、再構成部2は、その投影データに基づいて断層画像データを生成する(ステップS103)。一方、取得したデータが投影データでない場合、つまり、取得したデータが断層画像データの場合、再構成部2によるステップS103の処理はスキップされる。なお、断層画像データに対してはスムージング処理が行われていないとする。
設定部3は、取得部1が取得した断層画像データ、又は、再構成部2が生成した断層画像データに対して関心領域を設定する関心領域抽出処理(図3~図5参照)を実行する(ステップS104)
抽出部4は、設定部3にて設定された関心領域に基づいて、断層画像データから心筋断層画像データを抽出する心筋抽出処理(図6~図7参照)を実行する(ステップS105)。
画像処理部5は、心筋断層画像データから投影データを生成するか否かを判断する(ステップS106)。例えば、投影データを生成するか否かが予め指定されていてもよいし、画像処理部5がこの段階でユーザに投影データを生成するか否かを問い合わせてもよい。
投影データを生成しない場合、画像処理部5は、心筋断層画像データに対してスムージング処理を含む所定の画像処理を行う(ステップS107)。そして、画像処理部5は、画像処理を行った心筋断層画像データを入出力装置101に表示し(ステップS108)、処理を終了する。なお、画像処理部5は、心筋集積データを入出力装置101に表示する代わりに、入出力装置101を介して外部装置(図示せず)に送信してもよいし、補助記憶装置102に記憶してもよい。
一方、投影データを生成する場合、画像処理部5は、心筋断層画像データから投影データを生成する(ステップS109)。そして、画像処理部5は、生成した投影データから所望の断層画像データを心筋断層画像データとして生成し、その心筋断層画像データに対してスムージング処理を含む所定の画像処理を行う(ステップS110)。そして、画像処理部5は、ステップS108の処理に移行する。
図3は、ステップS104の関心領域抽出処理の一例を説明するためのフローチャートである。
関心領域抽出処理では、設定部3は、先ず、関心領域を精密に設定する精密設定を行うか否かを判断する(ステップS201)。例えば、精密設定を行うか否かが予め指定されていてもよいし、設定部3がこの段階でユーザに精密設定を行うか否かを問い合わせてもよい。
精密設定を行わない場合、設定部3は、関心領域を簡易的に設定する簡易設定を行い(ステップS202)、処理を終了する。関心領域を簡易設定する方法としては、例えば、各断層画像データの中央を中心として所定の大きさの楕円体領域を関心領域として設定する方法、ユーザに手動で関心領域を設定させる方法などである。
精密設定を行う場合、設定部3は、先ず、断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する上側領域の最大の画素値である基準画素値を求める(ステップS203)。上側領域は放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を受けにくい領域であるため、基準画素値を、横隔膜下臓器の集積による影響を受けない最大の画素値とみなすことができる。上側領域は、本実施形態では、短軸断層画像データの上半分の領域であるとする。この場合、基準画素値をより適切に設定することができる。
なお、上側領域は、心臓の中心よりも上側であればよく、例えば、短軸断層画像データの上半分の領域の一部などに限定されていてもよい。また、上側領域の長軸方向の範囲は、心臓の長軸に沿った全長を100%、心尖部を起点としたときに、心尖部から心基部まで(0%から100%まで)の範囲に限らず、より好ましくは30%から90%までの範囲などに限定されてもよい。
続いて、設定部3は、心臓の中心から立体放射状に伸びた複数の放射状線のそれぞれに沿って断層画像データの画素値を計測する(ステップS204)。本実施形態では、設定部3は、断層画像データである水平長軸断層画像データ、垂直長軸断層画像データ及び短軸断層画像データのそれぞれの中央のスライス画像において、画像中心から一定角度ごとに放射状に伸びた複数の放射状線のそれぞれに沿って、画像中心から外側に向かって画素値を計測する。一定角度は、例えば、3度である。なお、放射状線の起点は心臓の中心に限らず、心腔内の位置であればよい。また、立体放射状の起点は、心臓の中心に限らず、心腔内の所定の位置であればよい。
図4は、1つのスライス画像における放射状線の一例を示す図である。図4の例では、一定角度を9度として、心臓の中心Oから伸びる40本の放射状線Xが示されている。
図3の説明に戻る。各放射状線の画素値を計測すると、設定部3は、放射状線ごとに、画素値が極大、かつ、基準画素値の一定割合(例えば、20%)である閾値以上となる画素の位置を、放射性医薬品が集積した高集積位置として特定する(ステップS205)。なお、高集積位置は、心筋内に対応する位置であると考えられる。
設定部3は、放射状線ごとに、高集積位置に基づいて、心筋の外壁に対応する位置である心筋外壁位置を特定する(ステップS206)。具体的には、設定部3は、放射状線ごとに、高集積位置の数を確認し、高集積位置とその数に基づいて、心筋外壁位置を特定する。
図5は、心筋外壁位置を特定する処理を説明するための図であり、放射状線に沿った画素値の変化が示されている。なお、図5では、横軸を心臓の中心Oを0とした放射状線に沿った位置を示し、縦軸は画素値を示す。また、閾値をTとしている。
図5(a)は、高集積位置が1つの場合の例を示す。この場合、設定部3は、放射状線に沿った方向に横隔膜下臓器に集積がないと判断して、高集積位置Mから外側に向かって一定距離Lだけ離れた位置を心筋外壁位置Wとして特定する。一定距離Lは、例えば、2cmである。
図5(b)は、高集積位置が2つ以上の場合の例を示す。この場合、設定部3は、心臓の中心Oに最も近い高集積位置M1を心筋の位置、心臓の中心Oから2番目に近い高集積位置M2を放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積の位置と判断して、高集積位置M1と高集積位置M2との間における最小の画素値の位置を心筋外壁位置Wとして特定する。このとき、高集積位置M1と高集積位置M2との間が所定距離(例えば、2cm)以上ある場合、設定部3は、高集積位置M1から外側に向かって所定距離だけ離れた位置を心筋外壁位置Wとして特定してもよい。なお、所定距離は、図4(a)に示した一定距離Lと同じでもよい。
図5(c)は、高集積位置が0の場合の例を示す。この場合、設定部3は、放射状線に沿った方向に心筋がないと判断して、心筋外壁位置Wの特定を行わない。
図3の説明に戻る。放射状線ごとに心筋外壁位置を特定すると、設定部3は、各放射状線の心筋外壁位置に基づいて、関心領域を設定し(ステップS207)、処理を終了する。
関心領域は、各断層画像データの各放射状線の心筋外壁位置を繋いだ略心臓形領域、又は、略心臓形領域の形状を楕円体に近似した楕円体領域である。略心臓形領域を楕円体領域に近似する方法は、特に限定されないが、例えば、最小二乗法などである。関心領域を略心臓形領域と楕円体領域とのどちらにするかは、予め設定されていてもよいし、ユーザにて設定可能であってもよい。
なお、関心領域は手動にて調整されてもよい。例えば、関心領域が楕円体領域の場合、関心領域の調整は、関心領域全体の移動、楕円体の3軸の移動、変形及び回転などである。また、関心領域が略心臓形領域の場合、関心領域の調整は、メッシュ変形、関心領域全体の移動、画素ごとに修正などである。
図6は、ステップS105の心筋抽出処理の一例を説明するためのフローチャートである。
心筋抽出処理では、抽出部4は、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積の関心領域への影響を除去する推定除去を行うか否かを判断する(ステップS301)。例えば、推定除去を行うか否かがが予め指定されていてもよいし、抽出部4がこの段階でユーザに推定除去を行うか否かを問い合わせてもよい。
推定除去を行わない場合、抽出部4は、各断層画像データの関心領域以外の領域の画素値を全て零に設定することで、心筋断層画像データを抽出して(ステップS302)、処理を終了する。
推定除去を行う場合、抽出部4は、断層画像データを解析して、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による画素値を推定する(ステップS303)。
具体的には、先ず、抽出部4は、断層画像データにおける関心領域の外周上の画素である外周画素ごとに、その外周画素から外側に向かって伸びる外向き線に沿って画素値を計測する。外向き線は、具体的には、外周画素と関心領域の中心とを通る線、又は、外周画素を通る関心領域の外周に垂直な線である。
続いて、抽出部4は、外周画素ごとに、外向き線に沿って特定距離(例えば、1cm)だけ離れた位置までの間に、画素値が極大、かつ、基準画素値の一定割合(例えば、20%)である閾値以上となる画素である外側集積画素が存在するか否かを判断する。
外側集積画素が存在しない場合、抽出部4は、外向き線上には横隔膜下臓器の集積による画素値がないと判断して、横隔膜下臓器の集積の画素値の推定を行わない。
一方、外側集積画素が存在する場合、抽出部4は、外向き線上における外周画素から外側集積画素までの画素値に基づいて、横隔膜下臓器の集積の画素値を推定する。
図7は、外周画素から外側集積画素までの画素値に基づいて横隔膜下臓器の集積の画素値を推定する処理を説明するための図である。図7では、横軸を外向き線に沿った位置を示し、縦軸は画素値を示す。また、閾値をT、特定距離をR、外周画素をC、外側集積画素をDとしている。
抽出部4は、外向き線上における外周画素Cから外側集積画素Dまでの画素値の変化Fをガウス関数で近似するフィッティングを行い、変化Fを近似したガウス関数Gを求める。そして、抽出部4は、ガウス関数Gで表される画素値を横隔膜下臓器の集積の画素値として特定する。なお、変化Fを近似する関数にはガウス関数以外の関数を用いてもよい。
図6の説明に戻る。横隔膜下臓器の集積の画素値を推定すると、抽出部4は、断層画像データの画素値から、各外周画素に対応する横隔膜下臓器の集積の画素値を差し引いて、心筋画像データを抽出し(ステップS304)、処理を終了する。図7の例では、画素値の変化Fで表される画素値からガウス関数Gで表される横隔膜下臓器の集積の画素値を差し引いた曲線Hで表される画素値が心筋画像データの画素値となる。
なお、ステップS304では、抽出部4は、断層画像データの画素値から横隔膜下臓器の集積の画素値を差し引いた値が負となる画素が存在する場合、その画素の画素値を零とする。また、抽出部4は、外側集積画素よりも外側、又は、外周画素から外向き線に沿って特定距離離れた位置よりも外側を零とする。
また、ステップS303では、外周画素Cから外側集積画素Dまでの画素値の変化Fをガウス関数Gで近似していたが、例えば、関心領域内の高集積位置Mから外周画素Cまでの画素値の変化をガウス関数で近似してもよい。この場合、高集積位置Mよりも外側の画素をガウス関数で表される画素に置き換えることで、心筋画像データを抽出する。
以上説明したように本実施形態によれば、設定部3は、スムージング処理が行われる前の断層画像データにおける心臓の中心よりも上側に対応する領域の最大の画素値である基準画素値に基づいて、断層画像データに対して、心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定する。抽出部4は、関心領域に基づいて、断層画像データから心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出する。画像処理部5は、心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う。したがって、断層画像データから心筋分布を示す心筋断層画像データが抽出された後にスムージング処理が行われる。したがって、被験者に対する撮影を複数回行わなくても、断層画像データにおける放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積の影響を除去しつつ、視認性の高い画像データを生成することが可能になるため、被験者の負担を軽減しつつ診断精度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、設定部3は、心臓の中心から立体放射状に伸びた複数の放射状線のそれぞれに沿って断層画像データの画素値を計測し、前記放射状線ごとに、画素値が極大、かつ、前記基準画素値の一定割合以上となる画素である高集積画素に基づいて、断層画像データにおける心筋の外壁に対応する心筋外壁位置を特定し、心筋外壁位置に基づいて関心領域を設定する。このため、関心領域を適切に設定することが可能となる。
また、本実施形態では、設定部3は、高集積画素が1つの場合、高集積画素から外側に向かって一定距離離れた位置を心筋外壁位置として特定し、高集積画素が2つ以上の場合、中心に最も近い高集積画素と、中心に2番目に近い高集積画素との間における最小の画素値を有する画素の位置を心筋外壁位置として特定する。このため、心筋外壁位置を適切に特定することが可能となるため、関心領域をより適切に設定することが可能となる。
また、本実施形態では、関心領域は、放射状線における心筋外壁位置を繋いだ領域である略心臓形領域、又は、略心臓形領域の形状を楕円体に近似した楕円体領域である。このため、関心領域を、心臓を写した適切な領域に設定することが可能となる。
また、本実施形態では、抽出部4は、関心領域の外周上の画素である外周画素ごとに、当該外周画素から外側に向かった外向き線に沿って、当該外周画素から特定距離までの間に、画素値が極大、かつ、基準画素値の一定割合以上となる画素である外側集積画素が存在する場合、外向き線に沿った画素値に基づいて、外向き線上の画素の画素値から横隔膜下臓器に集積した放射性医薬品に応じた画素値である横隔膜下臓器の集積の画素値を差し引くことで、心筋断層画像データを抽出する。このため、心筋断層画像データを適切に抽出することができる。
また、本実施形態では、抽出部4は、外向き線に沿った外周画素から外側集積画素までの画素値の変化をガウス関数で近似し、当該ガウス関数で表される画素値を横隔膜下臓器の集積の画素値として外向き線上の画素の画素値から差し引く。このため、横隔膜下臓器の集積の画素値を適切に求めることが可能になるため、心筋断層画像データをより適切に抽出することができる。
また、本実施形態では、抽出部4は、外周画素ごとに、外側集積画素が存在する場合、外向き線に沿った外側集積画素よりも外側の領域の画素値を全て零にし、外側集積画素が存在しない場合、断層画像データの外周画素から外側に向かって特定距離離れた位置よりも外側の領域の画素値を全て零にする。このため、心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を適切に抽出することが可能となる。
また、本実施形態では、画像処理部5は、心筋断層画像データを投影データに逆変換し、当該投影データに基づく心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う。このため、所望の心筋断層画像を生成することが可能となる。
ここでは、心筋断層画像データに対する放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積による影響を評価するために、本開示の画像処理方法による心筋断層画像データと、参考例の画像処理方法による心筋断層画像データを比較した。
図8は、本開示の画像処理方法と参考例の画像処理方法とを示す図である。具体的には、図8(a)は、参考例の画像処理方法を示し、図8(b)は、本開示の画像処理方法を示す。
図8(a)に示す参考例の画像処理方法では、再構成処理により生成した断層画像データに対してスムージング処理を行った後に、断面変換処理と心筋抽出処理とを行っている。一方、図8(b)に示す本開示の画像処理方法では、実施形態で説明したように、再構成処理により生成した断層画像データに対して断面変換処理と心筋抽出処理とを行った後に、スムージング処理を行っている。なお、心筋抽出処理では、放射性医薬品の横隔膜下臓器の集積の関心領域への影響を除去する推定除去を行わずに、各断層画像データの関心領域以外の領域の画素値を全て零に設定している。
図9は、参考例の画像処理方法による心筋断層画像データと本開示の画像処理方法による心筋断層画像データとを示す図である。
なお、投影データを取得する撮影装置には、低エネルギー高分解能型コリメータを装着したSiemens社製Symbia T6を使用し、データ処理にはSiemens社製核医学画像処理ワークステーションSYNGO Mi Apps(version.VA60C)と、富士フイルム富山化学社製DRIP及びcardioBULLとを使用した。ドーズキャリブレータには、アロカ社製キュリーメータIGC―7を使用した。
また、被写体としては、京都化学社製の心臓肝臓HL型ファントムを使用し、その左室心筋の下壁外側に、横隔膜下臓器の集積を模擬したポリプロピレン製の円柱容器(内腔の直径3.5cm、長さ10.0cm、容積100.0mL)を密着させるように装着した。また、左室心筋に欠損がない場合と、左室心筋の下壁中央に直径2.0cmの円形欠損チップを装着した場合の2種類の被写体を用意した。なお、以下では、左室心筋に欠損がない場合に取得された断層画像データを欠損のないデータ、円形欠損チップを装着した場合に取得された断層画像データを欠損のあるデータと呼ぶこともある。
放射性医薬品の核種を99mTcとし、左室心筋(容量120mL)への99mTcの封入量は、臨床において投与量の約2%が心筋に集積することを想定し、740MBq投与時に対応する集積量14.8MBq(123kBq/mL)とした。円柱容器には、左室心筋に対する円柱容器の放射濃度比が0(水のみ)、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、2.0、3.0となるように99mTcを封入し、図9では、それらの心筋断層画像データ(具体的には、短軸断層画像データの中央スライス)が示されている。なお、左室内腔、右室内腔、縦隔、肝臓及び胃には、水のみを封入した。また、画像再構成処理に用いる画像再構成法として、FBP、OSEM、分解能補正(Resolution Recovery:RR)付きのOSEMであるOSEM―PR、減弱補正(Attenuation Correction:AC)、散乱補正(Scatter Correction:SC)及び分解能補正(Resolution Recovery:PR)付きのOSEMであるOSEM―ACSCRRを用い、図9では、各画像再構成法による心筋断層画像データが示されている。
以下のように各心筋断層画像データを評価した。
具体的には、短軸断層画像データの中央スライスにおいて、関心領域内で1度間隔のCPC(サーカムフェレンシャル・プロファイル・カーブ:Circumferential Profile Curve)を作成し、上半分の領域の最大の画素値を100%として規格化した。臨床においては、最大の画素値に対する画素値の比率である%Uptakeが70%以下であると、有意な血流異常と判断されることが多いため、ここでは、欠損のあるデータについては、下壁側90度の領域の最小値が70%以上になった場合に横隔膜下臓器の集積の影響が有意であるとし、欠損のないデータについては、下壁側90度の領域の最大値が143(100/0.7)以上となった場合に、下壁以外の壁が血流異常に見える可能性があるため、横隔膜下臓器の集積の影響が有意であるとした。
欠損のあるデータについては、参考例の画像処理方法では、画像再構成法がFBP及びOSEMの場合、円柱容器の放射濃度比が0.75以上で、%Uptakeが70%以上となり、画像再構成法がPRを使用したOSEM―PR及びOSEM―ACSCPRの場合、円柱容器の放射濃度比が1.0以上で70%以上となった。
一方、本開示の画像処理方法では、画像再構成法がFBPの場合、円柱容器の放射濃度比が1.75以上で%Uptakeが70%以上、画像再構成法がOSEMの場合、円柱容器の放射濃度比が1.25以上で%Uptakeが70%以上、画像再構成法がOSEM―PRの場合、円柱容器の放射濃度比が3.0以上で%Uptakeが70%以上となった。また、画像再構成法がOSEM―ACSCPRの場合、全ての放射濃度比で%Uptakeが70%未満となった。
また、欠損のないデータについては、参考例の画像処理方法では、画像再構成法がFBPの場合、円柱容器の放射濃度比が2.0以上で%Uptakeが143%以上となり、それ以外の方法の場合、円柱容器の放射濃度比が1.5以上で%Uptakeが143%以上となった。一方、本開示の画像処理方法では、全ての画像再構成法において、Uptakeが143%未満となった。
したがって、本開示の画像処理方法では、横隔膜下臓器の集積の影響を軽減することができ、診断精度が向上することが示された。
上述した本開示の実施形態及び実施例は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本開示を実施することができる。
1:取得部、2:再構成部、3:設定部、4:抽出部、5:画像処理部、100:画像処理装置、101:入出力装置、102:補助記憶装置

Claims (5)

  1. 心筋及び横隔膜下の臓器に集積した放射性医薬品の分布を示す断層画像データに対して、前記心筋に集積した放射性医薬品の分布である心筋分布を写した領域を関心領域として設定し、
    前記関心領域に基づいて、前記断層画像データから前記心筋分布を示す心筋断層画像データを抽出し、
    前記心筋断層画像データに対してスムージング処理を行う、画像処理方法。
  2. 前記関心領域の設定では、ユーザにて指定された領域を前記関心領域として設定する、請求項1に記載の画像処理方法。
  3. 前記心筋断層画像データの抽出では、前記関心領域以外の領域の画素値を零に設定することで、前記心筋断層画像データを抽出する、請求項1又は2に記載の画像処理方法。
  4. 前記断層画像データは、スムージング処理が行われる前の断層画像データである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理方法。
  5. 前記スムージング処理は、画像上の画素値の変化を滑らかにする処理である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理方法。
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