JP7120587B1 - 飛行体の姿勢制御方法および飛行体 - Google Patents

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Abstract

Figure 0007120587000001
【課題】奇数個の推進ロータを有する機体であっても、機体を水平に維持することができる飛行体の制御方法および飛行体を提供する。
【解決手段】飛行体UVAの制御方法は、機体Bと、奇数個の推進ロータRと、を有する飛行体UVAの制御方法であって、奇数個の推進ロータRは、推進ロータRの回転軸の機体Bに対する傾きが変更可能に設けられており、奇数個の推進ロータRが発生する反動トルクに起因する機体Bを重心回りに回転させるトルクFAを相殺するトルクFBを発生させる水平方向分力が発生するように、奇数個の推進ロータRの回転数および奇数個の推進ロータRの回転軸の機体Bに対する傾きを調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、飛行体の姿勢制御方法および飛行体に関する。
近年、自律飛行制御装置を搭載した小型無人航空機の開発、実用化が進められている。これらの小型無人航空機は、複数のロータを有していることから、マルチコプターと呼ばれている。例えば、図9(A)に示すように、3つのロータを有するマルチコプターは、トライコプタと呼ばれる。
かかるマルチコプターはトンネル、橋梁、構造物等(以下これらを構造物等という場合がある)の点検に使用されている。例えば、構造物等のひび割れや塗装剥離等の点検にもマルチコプターは使用されている。
また、マルチコプターはインフラ構造物の健全度評価への使用されている。例えば、マルチコプターに搭載した撮影装置(例えば、デジタルカメラや赤外線カメラ等)を使用して撮影した画像から3Dモデルおよび展開(オルソ)画像を作成することが行われている。かかる3Dモデルおよび展開(オルソ)画像が作成できれば、インフラ構造物の点検作業の効率化や点検の高精度化が可能になる。
マルチコプターを使用して上述したような点検作業を行う場合には、構造物等に対してある程度近接した空間、つまり、限られた空間内でマルチコプターを飛行させることが必要になる。
また、インフラ構造物の点検に対する要求精度は高くなってきており、かかる要求に応じるためには、マルチコプターの飛行性能(近接性、反復性など)をさらに向上させる必 要になる。例えば、インフラ構造物に対してマルチコプターを5mの距離に近接し、そこから距離を一定に保ちながら水平・垂直飛行での正対撮影や、以前撮影した画像と精密に一致する同一画角での撮影が可能となる程度の飛行性能を有するマルチコプターが求められている。
しかし、屋外で点検作業を行う場合、風が吹くことは避けられず、風の影響によって飛行中のマルチコプターが揺れたり傾いたりすれば、点検が適切に行えない可能性がある。例えば、マルチコプターの位置や姿勢が所定の位置や姿勢から大きくズレて所望の位置を撮影できなかったり、撮影自体を行うことができなくなったりする可能性がある。
風の影響によるマルチコプターの位置や姿勢の変化を防止する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1には、4つのロータを姿勢安定補助機構によって機体に対して平面内二軸周り(ロール軸周り及びピッチ軸周り)で傾き可能に取り付けたマルチコプターが開示されている。そして、特許文献1には、4つのロータを機体に対して傾けることによって風が吹いてもマルチコプターを所定の位置に維持でき、機体を任意姿勢に維持できる旨が記載されている。
特開2017-193208号公報
ところで、4つのロータを有しており4つのロータが機体の重心を中心とする同一円周上に設けられているマルチコプター(以下、単に4つのロータを有するマルチコプターという)の場合には、特許文献1の技術はある程度有効と考える。しかし、マルチコプターが、機体の重心を中心とする同一円周上に3つのロータを有しているトライコプタTCの場合には、特許文献1の技術では十分な姿勢制御を行うことは難しい。
例えば、4つのロータを有するマルチコプターの場合、時計回りに回転するロータの数と反時計回りに回転するロータの数とを同じにすれば、複数のロータの回転に起因する反動トルクを互いに相殺することができる。すると、各ロータの作動を制御するだけでロータの反動トルクによるマルチコプターの回転を防止できるので、特許文献1の技術でも任意の姿勢に機体を維持することができる。
一方、3つのロータを有するトライコプタでは、時計回りに回転するロータの数と反時計回りに回転するロータの数のいずれかが1つ多くなる。例えば、図9(A)のように、トライコプタTCの3つのロータR1~R3を回転させた場合には(矢印a~c)、3つのロータR1~R3の回転に起因して発生する反動トルクによって、機体Bを時計回りに回転させるトルクFAが生じる(図9(B)。トライコプタTCでは、通常、テールロータ(図9(A)ではロータR3)にその回転軸を傾斜させることができるティルトロータが設けられており、ロータR3が発生する水平方向分力T3hによってトルクFAと逆向きかつトルクFAと同じ大きさのトルクFBが発生するようロータR3を傾斜させれば(図9(A)であれば右に傾斜させれば)、機体Bの回転を停止させることはできる。しかし、ロータR3が発生する水平方向分力T3hによって機体Bの回転は止めることができても、この水平方向分力T3hによって機体全体としては水平方向(図9(A)では右方向)に移動しようとする。すると、ホバリング状態や前方(図9(A)では上方)への直進時には、機体全体を水平方向分力T3hと逆に傾けて左右方向の推力を相殺しなければならない(図9(C))。したがって、トライコプタTCでは、ホバリング状態や前方への直進時に機体を水平に維持することが難しい。トライコプタTCに限られず、機体の重心を中心とする同一円周上に奇数個のロータを有するマルチコプターでは同様の問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑み、奇数個の推進ロータを有する機体であっても、機体を水平に維持することができる飛行体の制御方法および飛行体を提供することを目的とする。
<飛行体の制御方法>
第1発明の飛行体の制御方法は、機体と、奇数個の推進ロータと、を有する飛行体における前記機体の重心周りの回転と該機体の水平移動の両方を防止する制御方法であって、前記奇数個の推進ロータは、該推進ロータの回転軸の機体に対する傾きが変更可能に設けられており、前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転軸を鉛直方向に対して傾けて全ての推進ロータの回転数を調整することを特徴とする。
第2発明の飛行体の制御方法は、第1発明において、前記奇数個の推進ロータは、前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、前記機体のホバリング状態を維持する際において、全ての推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように全ての推進ロータの回転数を調整し、全ての推進ロータを、全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させることを特徴とする。
第3発明の飛行体の制御方法は、第1発明において、前記奇数個の推進ロータは、前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、前記機体を水平移動させる際には、全ての推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように全ての推進ロータの回転数を調整しかつ全ての推進ロータを全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させたホバリング状態から、全ての推進ロータを同じ方向に同じ角度だけ傾斜させる前記機体を水平移動させる場合には、全ての推進ロータを、全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させたホバリング状態から、全ての推進ロータを同じ方向に同じ角度だけ傾斜させることを特徴とする。
第4発明の飛行体の制御方法は、第1から第3発明のいずれかにおいて、前記機体に、該機体に対する回転軸の傾きが固定された固定ロータが設けられており、該固定ロータが発生する反動トルクおよび前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転数および全ての推進ロータの回転軸の機体に対する傾きを調整することを特徴とする。
第5発明の飛行体の制御方法は、第1から第4発明のいずれかにおいて、前記推進ロータを3つ備えていることを特徴とする。
<飛行体>
第6発明の飛行体は、機体と、該機体に設けられた奇数個の推進ロータと、該奇数個の推進ロータの機体に対する姿勢を調整する姿勢調整機構と、前記奇数個の推進ロータおよび前記姿勢調整機構の作動を制御する制御手段と、を備え、該制御手段は、前記機体の重心周りの回転と前記機体の水平移動の両方を防止する際に、前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転数および全ての推進ロータの回転軸の機体に対する傾きを調整する機能を有していることを特徴とする。
第7発明の飛行体は、第6発明において、前記奇数個の推進ロータは、前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、前記制御手段は、前記機体をホバリング状態または垂直移動させるホバリング機能を有しており、該ホバリング機能は、全ての推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように全ての推進ロータの回転数を調整し、全ての推進ロータを、全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させることを特徴とする。
第8発明の飛行体は、第6発明において、前記奇数個の推進ロータは、前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、前記制御手段は、前記機体を水平移動させる水平移動機能を有しており、該水平移動機能は、前記奇数個の推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように該奇数個の推進ロータの回転数を調整し、前記機体を水平移動させる場合には、全ての推進ロータを、全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させたホバリング状態から、全ての推進ロータを同じ方向に同じ角度だけ傾斜させることを特徴とする。
第9発明の飛行体の制御方法は、第6から第8発明のいずれかにおいて、前記機体には、該機体に対する回転軸の傾きが固定された固定ロータが設けられており、前記制御手段は、該固定ロータが発生する反動トルクおよび前記前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転数および全ての推進ロータの回転軸の機体に対する傾きを調整する機能を有していることを特徴とする。
第10発明の飛行体の制御方法は、第6から第9発明のいずれかにおいて、前記推進ロータを3つ備えていることを特徴とする。
<飛行体の制御方法>
第1発明によれば、奇数個の推進ロータを有する飛行体であっても、奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体の回転を防止できる。しかも、機体の回転を防止したことに起因する機体の水平方向への移動も防止できるので、機体を所定の姿勢に維持できる。 第2発明によれば、奇数個の推進ロータの回転数や傾きの制御が容易になる。しかも、機体を所定の姿勢に維持したままで、ホバリングや垂直移動が可能になる。
第3発明によれば、奇数個の推進ロータの回転数や傾きの制御が容易になる。しかも、機体を所定の姿勢に維持したままで、水平移動や旋回が可能になる。
第4発明によれば、固定ロータを設けても、機体の回転を防止でき、機体を所定の姿勢に維持できる。
第5発明によれば、機体がコンパクトになるので、機体の姿勢制御が容易になる。
<飛行体>
第6発明によれば、姿勢調整機構によって奇数個の推進ロータの機体に対する姿勢を調整すれば、奇数個の推進ロータを有する飛行体であっても、奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体の回転を防止できる。しかも、機体の回転を防止したことに起因する機体の水平方向への移動も防止できるので、機体を所定の姿勢に維持できる。
第7発明によれば、奇数個の推進ロータの回転数や傾きの制御が容易になる。しかも、機体を所定の姿勢に維持したままで、ホバリングや垂直移動が可能になる。
第8発明によれば、奇数個の推進ロータの回転数や傾きの制御が容易になる。しかも、機体を所定の姿勢に維持したままで、水平移動や旋回が可能になる。
第9発明によれば、固定ロータを設けても、機体の回転を防止でき、機体を所定の姿勢に維持できる。
第10発明によれば、機体がコンパクトになるので機体の姿勢制御が容易になるし、飛行体による構造物等の点検等が行い易くなる。
(A)は本実施形態の飛行体UAVの概略平面図であり、(B)は本実施形態の飛行体UAVに発生するトルクFA、FBおよび水平方向分力T3hの概略説明図であり、(C)は本実施形態の飛行体UAVを後方から見た概略説明図である。 本実施形態の飛行体UAVの概略ブロック図である。 本実施形態の飛行体UAVのホバリング状態維持の理論を説明するための図であり、(A)は飛行体UAVの概略平面図であり、(B)は推進ロータRに発生する力の関係を示す説明図であり、(C)は水平面内の力のバランスを示す説明図である。 3つ以上の推進ロータRを設けた場合における力の関係を示した概略説明図であり、(A)は推進ロータRに発生する力の関係を示す説明図であり、(B)は水平面内の力のバランスを示す説明図である。 固定ロータRRを有する飛行体UAVの概略ブロック図である。 固定ロータRRを有する飛行体UAVのホバリング状態維持の理論を説明するための図であり、(A)は飛行体UAVの概略平面図であり、(B)は推進ロータRに発生する力の関係を示す説明図であり、(C)は水平面内の力のバランスを示す説明図である。 実験結果を示した図である。 実験結果を示した図である。 (A)は従来のトライコプタTCの概略平面図であり、(B)は従来のトライコプタTCに発生するトルクFA、FBおよび水平方向分力T3hの概略説明図であり、(C)は従来のトライコプタTCを後方から見た概略説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の飛行体の制御方法は、奇数個の推進ロータを有する飛行体の飛行状態を制御する方法であって、機体の回転を防止しつつ機体を所望の姿勢に維持できるようにしたことに特徴を有している。
<飛行体UVA>
まず、本実施形態の飛行体の制御方法について説明する前に、本実施形態の飛行体UAVについて説明する。
なお、本実施形態の飛行体UAVは奇数個の推進ロータRを有していればよく、推進ロータRの数はとくに限定されない。以下の説明では、本実施形態の飛行体UAVが推進ロータRを3つ有している場合を代表として説明する。
<機体B>
図1(A)示すように、飛行体UAVは機体Bを備えている。この機体Bは、機体本体BBと、機体本体BBの下方に設けられた飛行体UAVを地上に載置するための脚部BLと、機体本体BBから側方に伸びた後述する3つの推進ロータR1~R3が設けられる3本のアームBAと、を備えている。
機体本体BBには、3つの推進ロータR1~R3を駆動するための動力源となるバッテリや、飛行体UAVの作動を制御するための制御手段C等が設けられている。また、機体本体BBには、制御手段Cが備えるセンサや外部との通信を行う通信機器も設けられている。制御手段Cが備えるセンサとしては、例えば、Inertial Measurement Unit((慣性計測装置:IMU)や加速度センサ、圧力センサ、ジャイロセンサ、磁気コンパス等のセンサを挙げることができる。また、機体本体BBには、GPSや測域センサ、デプスカメラ等を設けてもよい。
図1(A)示すように、機体Bは機体本体BBから側方に延びる3本のアームBAを備えている。この3本のアームBAは、3つの推進ロータR1~R3が設けられる部材である。
<推進ロータR1~R3>
図1(A)に示すように、飛行体UAVは、同じ大きさ構造を有する3つの推進ロータR1~R3を備えている。この3つの推進ロータR1~R3は、プロペラPと、プロペラPを回転させるモータm(図示せず)と、を備えている。3つの推進ロータR1~R3は、モータmは制御手段Cに電気的に接続されており、制御手段Cによって3つの推進ロータR1~R3のモータmは作動(例えば回転数やトルク等)が制御されている。
この3つの推進ロータR1~R3は、上述した機体Bの3本のアームBAの先端部に姿勢調整機構RT1~RT3を介して設けられている。より詳しくいえば、機体Bの重心Gを中心とする同一円周CF(以下単に円周CFという場合がある)上に等角度間隔となるように、姿勢調整機構RT1~RT3を介して3つの推進ロータR1~R3が設けられている。しかも、機体Bを水平な面に載置した状態(言い換えれば機体Bが水平になった状態)で、姿勢調整機構RT1~RT3によって3つの推進ロータR1~R3の回転軸を鉛直にすると、3つの推進ロータR1~R3のプロペラPが同一面内で回転するように設けられている。なお、この状態を以下では3つの推進ロータR1~R3が同じ面内に位置するという場合がある。
なお、制御手段Cは、3つの推進ロータR1~R3の作動を制御する機能であるロータ制御機能を有している。
また、3つの推進ロータR1~R3は、必ずしも3本のアームBAの先端部に設けなくてもよい。3つの推進ロータR1~R3は、機体Bの重心Gを中心とする同一円周CF上に等角度間隔となりかつ3つの推進ロータR1~R3が同じ面内に位置するように設けられていればよい。例えば、機体本体BBに3つの推進ロータR1~R3を設けてもよい。
さらに、3つの推進ロータR1~R3は、同じ大きさ構造を有するもの、つまり、同じ回転数でプロペラPを回転させれば同じ推進力を発生させるものが望ましい。しかし、同じ推進力を発生させることができるのであれば、3つの推進ロータR1~R3は必ずしも同じ大きさ構造を有するものでなくてもよい。
<姿勢調整機構RT1~RT3>
上述したように、3つの推進ロータR1~R3は、3つの姿勢調整機構RT1~RT3によって3本のアームBAにそれぞれ連結されている。より詳しく言えば、3つの推進ロータR1~R3のモータmが3つの姿勢調整機構RT1~RT3によって3本のアームBAにそれぞれ連結されている。この3つの姿勢調整機構RT1~RT3は、例えば、ジンバル機構などであり、3本のアームBAに対する3つの推進ロータR1~R3の姿勢、つまり、機体Bに対する3つの推進ロータR1~R3の姿勢を調整する機能を有している。より詳しくいえば、3つの姿勢調整機構RT1~RT3によって、機体Bに対する3つの推進ロータR1~R3のモータmの回転軸の傾きを調整できるようになっている。
なお、制御手段Cは、3つの姿勢調整機構RT1~RT3の作動を制御する機能である姿勢調整機能を有している。
また、3つの姿勢調整機構RT1~RT3はジンバル機構に限られず、機体Bに対する3つの推進ロータR1~R3のモータmの回転軸の傾きを調整できる構造であればよく、とくに限定されない。
<本実施形態の飛行体UAVの作動について>
本実施形態の飛行体UAVは上記のごとき構成を有しているので、以下のように制御すれば、機体Bの重心Gまわりの回転を防止しつつ、機体Bの姿勢を所望の姿勢、例えば、機体Bが水平になった状態で、飛行体UAVに所望の動きをさせることができる。
<ホバリング>
まず、飛行体UAVをホバリング状態とする場合には、制御手段Cは、3つの推進ロータR1~R3が同じ推力を発生するように3つの推進ロータR1~R3のモータmを作動させる。すると、3つの推進ロータR1~R3の推力に起因して、機体Bの重心Gを中心として機体Bを回転させるトルクが生じる。例えば、図1(A)のように3つの推進ロータR1~R3を回転させた場合(矢印a~c)、3つの推進ロータR1~R3のモータmの回転軸が互いに平行かつ鉛直と平行になっていれば、3つの推進ロロータR1~R3の回転に起因して発生する反動トルクによって機体Bの重心Gを中心として機体Bを時計回りに回転させるトルクFAが生じる(図1(B))。
一方、制御手段Cは、機体Bを時計回りに回転させるトルクFAを相殺するためのトルクFBを発生させる水平方向分力が発生するように、3つの姿勢調整機構RT1~RT3を作動させて3つの推進ロータR1~R3を機体Bに対して(鉛直に対して)傾斜させる(図1(C)参照)。具体的には、3つの推進ロータR1~R3を、そのプロペラPの回転面が円周CFに対して鉛直方向に対して同じ角度だけで傾くように3つの姿勢調整機構RT1~RT3の作動を制御する。より詳しくいえば、3つの推進ロータR1~R3の推進力の水平方向分力F1h~F3hの方向が、3つの推進ロータR1~R3が設けられている位置における円周CFの接線と一致するように、3つの推進ロータR1~R3を機体Bに対して傾斜させる。しかも、水平方向分力F1h~F3hに起因して機体Bの重心Gを中心としてトルクFAと逆向きかつ同じ大きさのトルクFBが発生するように、3つの推進ロータR1~R3を機体Bに対して傾斜させる。すると、トルクFAと釣り合う力FBを発生させることができる(図1(B))。
このようにすれば、飛行体UAVが3つの推進ロータR1~R3を有していても、3つの推進ロータR1~R3の反動トルクFAに起因する機体Bの重心Gまわりの機体Bの回転を防止しつつ、機体Bが水平方向に移動することも防止できる。したがって、飛行体UAVを安定して(同じ位置で)ホバリングさせることができる。
<垂直移動>
飛行体UAVを垂直移動する場合には、上述したホバリング状態から、3つの推進ロータR1~R3の推力、つまり、モータmの回転数を増減すればよい。つまり、3つの推進ロータR1~R3の推力を同じだけ増加させれば、飛行体UAVを垂直方向に上昇させることができる。また、3つの推進ロータR1~R3の推力を同じだけ減少させれば、飛行体UAVを垂直方向に下降させることができる。
<水平方向移動>
飛行体UAVをホバリング状態から水平方向に移動させる場合には、ホバリング状態から、3つの姿勢調整機構RT1~RT3によって3つの推進ロータR1~R3の傾きを調整する。具体的には、ホバリング状態になっている3つの推進ロータR1~R3を、ホバリング状態から、飛行体UAVを移動させたい方向に同じ角度だけ傾斜させる。すると、ホバリング状態の飛行体UAVを、3つの推進ロータR1~R3を傾斜させた方向に沿って水平方向に移動させることができる。
<旋回向移動>
飛行体UAVをホバリング状態から機体Bを旋回移動させる場合には、ホバリング状態から、3つの姿勢調整機構RT1~RT3によって3つの推進ロータR1~R3の傾きを調整する。具体的には、ホバリング状態になっている3つの推進ロータR1~R3を、ホバリング状態から、飛行体UAVを旋回させたい方向に傾斜させる。より詳しくは、飛行体UAVを旋回させる方向と、3つの推進ロータR1~R3が発生する水平方向分力F1h~F3hと、が平行になるように、3つの推進ロータR1~R3を傾斜させる。すると、3つの推進ロータR1~R3を傾斜させた方向に沿って、飛行体UAVを旋回させることができる。
<ホバリング状態維持の理論>
上述した方法によって、機体Bの回転を防ぎつつ機体Bを水平にした状態でホバリング状態を維持できることを理論的に説明する。
以下では、図3(A)に示すように、飛行体UAVが、3つの推進ロータR1~R3を有し3つの姿勢調整機構RT1~RT3によって3つの推進ロータR1~R3がアームBAに対して姿勢を調整できるものとし、飛行体UAVをホバリング状態とする場合を説明する。
なお、前提条件として、以下の条件を設定する。
まず、各推進ロータR1~R3は、平面視で、推進ロータR1のプロペラPが時計回りに回転し、推進ロータR2および推進ロータR3のプロペラPが反時計回りに回転するものとする。
また、各推進ロータR1~R3の反動トルクの大きさを、それぞれT1~T3とする。
上記場合であれば、飛行体UAVがホバリングする状態では、各推進ロータR1~R3のプロペラPの回転数は等しいので反動トルクの大きさも等しくなる。したがって、以下の関係が成立する。

T1=T2=T3
各推進ロータR1~R3を作動した場合に発生する反動トルクの符号を、プロペラPが時計回りに回転する場合をプラスとし、プロペラPが反時計回りに回転する場合をマイナスとする。すると、推進ロータR1~R3が発生する反動トルクの合計は、以下の関係が成立する。つまり、飛行体UAVには、時計回りの反動トルクTが発生する。

T1-T2-T3=-T
この反動トルクTを打ち消すために、アームBAの先端(つまり推進ロータR1~R3)から機体Bの重心G方向を見て時計回りに推進ロータR1~R3を同じ角度θだけ傾ける。つまり、図3(B)に示すように、推進ロータR1~R3のプロペラPを同じ角度θだけ傾ける。
推進ロータR1~R3のプロペラPの回転により発生する推力のベクトルをF1~F3とすると、プロペラPを角度θだけ傾けた場合には、推力のベクトルF1~F3の水平方向成分はF1h,F2h,F3h、直角方向(鉛直方向)の成分はF1v,F2v,F3vとなる(図3(B)参照)。なお、ベクトルとスカラーとの関係は以下のようになる。

|F1|=F1, |F2|=F2, |F3|=F3
|F1h|=F1h, |F2h|=F2h, |F3h|=F3h
|F1v|=F1v, |F2v|=F2v, |F3v|=F3v
図3(A)に示すように、機体Bの重心Gから推進ロータR1~R3までの距離、つまり、機体Bの重心GからプロペラPの回転軸までの距離をrとすると、反動トルクを打ち消すための式は、以下の式(1)になる。

式(1):T1-T2-T3+|F1h|r+|F2h|r+|F3h|r=0
推進ロータR1~R3の推力および角度θは全て等しいので式(2)が成立し、式(3)の関係を仮定すると、式(1)に基づいて、式(4)の関係が成立する。

式(2):|F1h|=|F2h|=|F3h|
式(3):|Fh|=|F1h|=|F2h|=|F3h|
式(4):|Fh|=T/3r
推力のベクトルF1~F3の水平方向成分F1h,F2h,F3hを合成すると図3(C)に示すように正三角形となり、ベクトルの総和は0になる。即ち、推進ロータR1~R3の反動トルクを打ち消すためにアームBAの先端、つまり、推進ロータR1~R3から機体Bの重心G方向を見て、反時計回りに推進ロータR1~R3を同じ角度だけ傾けた場合には、機体Bには水平方向の力が発生しない。つまり、機体Bの重心Gまわりの回転を防ぎつつ、上述した機体Bを水平にした状態でホバリング状態を維持できる。
<複数の推進ロータRを有する場合>
上記説明では、3つの推進ロータR1~R3を設けた場合において機体Bの回転を防ぎつつ機体Bを水平にした状態でホバリング状態を維持できることを理論的に説明した。以下では、3つ以上の奇数個の推進ロータRを有する場合でも、機体Bの回転を防ぎつつ機体Bを水平にした状態でホバリング状態を維持できることを理論的に説明する。
まず、飛行体UAVが、(2n+1)個の推進ロータRを有し(2n+1)個の姿勢調整機構RTによって(2n+1)個の推進ロータRが機体Bに対して姿勢を調整できるものとし、飛行体UAVをホバリング状態とする場合を説明する。
なお、前提条件として、以下の条件を設定する。
まず、(2n+1)個の推進ロータRは、平面視で、時計回りに回転する推進ロータRと反時計回りに回転する推進ロータRとを有し、時計回りに回転する推進ロータRと反時計回りに回転する推進ロータRとの差が1つまでとする。
また、時計回りに回転する推進ロータRと反時計回りに回転する推進ロータRの配置は限定されない。例えば、時計回りに回転する推進ロータRと反時計回りに回転する推進ロータRとが交互に並ぶ場合と、ランダムに配置されている場合とを含むものとする。
また、(2n+1)個の推進ロータRの反動トルクの大きさを、それぞれT(2n+1)とする。
上記場合であれば、飛行体UAVがホバリング状態では、各推進ロータR1~R3のプロペラPの回転数は等しいので反動トルクの大きさも等しくなる。したがって、以下の関係が成立する。

T1=T2=…=T(2n+1)
(2n+1)個の推進ロータRを作動した場合に発生する反動トルクの符号を、プロペラPが時計回りに回転する場合をプラスとし、プロペラPが反時計回りに回転する場合をマイナスとする。すると、(2n+1)個の推進ロータRが発生する反動トルクの合計は、以下の関係が成立する。つまり、飛行体UAVには、時計回りの反動トルクTまたは反時計回りの反動トルクTが発生する。

±T1±T2±…±T(2n+1)=±T
この反動トルクTを打ち消すために、(2n+1)個の推進ロータRから機体Bの重心G方向を見て時計回りまたは反時計回りに(2n+1)個の推進ロータRを同じ角度θだけ傾ける。つまり、図4(A)では、(2n+1)個の推進ロータRのプロペラPを同じ角度θだけ同じ方向に傾ける。
(2n+1)個の推進ロータRのプロペラPの回転により発生する推力のベクトルをF1,F2,…,F(2n+1)とすると、プロペラPを角度θだけ傾けた場合には、推力のベクトルF1,F2,…,F(2n+1)の水平方向成分はF1h,F2h,…,F(2n+1)h、直角方向(鉛直方向)の成分はF1v,F2v,…,F(2n+1)vとなる(図4(B)参照)。なお、ベクトルとスカラーとの関係は以下のようになる。

|F1|=F1, |F2|=F2,…,|F(2n+1)|=F(2n+1)
|F1h|=F1h, |F2h|=F2h,…,|F(2n+1)h|=F(2n+1)h
|F1v|=F1v, |F2v|=F2v,…,|F(2n+1)v|=F(2n+1)v
機体Bの重心Gから(2n+1)個の推進ロータRまでの距離、つまり、機体Bの重心Gから(2n+1)個の推進ロータRのプロペラPの回転軸までの距離をrとすると、反動トルクを打ち消さすための式は、以下の式(5)になる。

式(5):
Figure 0007120587000002
(2n+1)個の推進ロータRの推力および角度θは全て等しいので式(6)が成立し、式(7)の関係を仮定すると、式(5)に基づいて、式(8)の関係が成立する。

式(6):|F1h|=|F2h|=…=|F(2n+1)h|
式(7):|Fh|=|F1h|=|F2h|=…=|F(2n+1)h|
式(8):|Fh|=T/(2n+1)r
推力のベクトルF1h,F2h,…,F(2n+1)hを合成すると図4(B)に示すように正2n+1角形となり(nが無限なら円)、ベクトルの総和は0になる。即ち、(2n+1)個の推進ロータRの反動トルクを打ち消すために(2n+1)個の推進ロータRから機体Bの重心G方向を見て、時計回りまたは反時計回りに(2n+1)個の推進ロータRを同じ角度だけ傾けた場合には、機体Bには水平方向の力が発生しない。つまり、(2n+1)個の推進ロータRを設けても、機体Bの重心Gまわりの回転を防ぎつつ、上述した機体Bを水平にした状態でホバリング状態を維持できる。
<飛行体UAVが固定ロータRRを有する場合>
飛行体UAVには、推進ロータR以外に、固定ロータRRを設けてもよい。つまり、推進ロータR以外に飛行体UAVに揚力を発生させる固定ロータRRを設けてもよい。この場合には、奇数個の推進ロータRが発生する反動トルクに加えて、固定ロータRRが発生する反動トルクも機体Bを回転させる力になる。したがって、固定ロータRRが発生する反動トルクと奇数個の推進ロータRが発生する反動トルクとに起因する機体Bを重心回りに回転させるトルクと相殺するトルクが発生する水平方向分力を発生させるように、奇数個の推進ロータRの回転数および奇数個の推進ロータRの回転軸の機体Bに対する傾きを調整する。すると、推進ロータR以外に固定ロータRRを設けた場合でも、機体Bの重心Gまわりの回転を防ぎつつ、上述した機体Bを水平にした状態を維持することができる。
なお、固定ロータRRの設置位置や設置姿勢はとくに限定されないが、機体Bを水平にした状態において、回転軸が鉛直方向と平行になるように設けられていることが望ましい。とくに、固定ロータRRの回転軸が機体Bの重心Gを通過するように配置することが望ましい(図6(A)参照)。
<固定ロータRRを設けた場合におけるホバリング状態維持の理論>
上述した方法によって、固定ロータRRを有する飛行体UVAが、機体Bの回転を防ぎつつ機体Bを水平にした状態でホバリング状態を維持できることを理論的に説明する。
まず、図6(A)に示すように、飛行体UAVが、3つの推進ロータR1~R3を有し3つの姿勢調整機構RT1~RT3(図示せず)によって3つの推進ロータR1~R3がアームBAに対して姿勢を調整できるものとし、飛行体UAVがホバリング状態とする場合を説明する。
また、機体Bの浮力を補助することを目的とした固定ロータRRが機体Bに設けられているものとする。
なお、前提条件として、以下の条件を設定する。
まず、各推進ロータR1~R3は、平面視で、推進ロータR1のプロペラPが時計回りに回転し、推進ロータR2および推進ロータR3のプロペラPが反時計回りに回転するものとする。
固定ロータRRも反時計回りに回転するものとする。
また、各推進ロータR1~R3の反動トルクの大きさをそれぞれT1~T3とし、固定ロータRRの反動トルクの大きさはTsとする。
以下の説明は、固定ロータRRが時計回りに回転する場合で説明するが、固定ロータRRが反時計回りに回転する場合には反動トルクの符号を逆にすればよい。
上記場合であれば、飛行体UAVがホバリング状態では、各推進ロータR1~R3のプロペラPの回転数は等しいので反動トルクの大きさも等しくなる。したがって、以下の関係が成立する。

T1=T2=T3
各推進ロータR1~R3および固定ロータRRを作動した場合に発生する反動トルクの符号を、プロペラPが時計回りに回転する場合をプラスとし、プロペラPが反時計回りに回転する場合をマイナスとする。すると、推進ロータR1~R3および固定ロータRRが発生する反動トルクの合計は、以下の関係が成立する。つまり、飛行体UAVには、時計回りの反動トルクTが発生する。

T1-T2-T3-Ts=-T
この反動トルクTを打ち消すために、アームBAの先端(つまり推進ロータR1~R3)から機体Bの重心G方向を見て時計回りに推進ロータR1~R3を同じ角度θだけ傾ける。つまり、図6(B)では、推進ロータR1~R3のプロペラPを同じ角度θだけ傾ける。
推進ロータR1~R3のプロペラPの回転により発生する推力のベクトルをF1~F3とすると、プロペラPを角度θだけ傾けた場合には、推力のベクトルF1~F3の水平方向成分はF1h,F2h,F3h、直角方向(鉛直方向)の成分はF1v,F2v,F3vとなる(図6(B)参照)。なお、ベクトルとスカラーとの関係は以下のようになる。

|F1|=F1, |F2|=F2, |F3|=F3
|F1h|=F1h, |Fh2h|=F2h, |F3h|=F3h
|F1v|=F1v, |F2v|=F2v, |F3v|=F3v
図6(A)に示すように、機体Bの重心Gから推進ロータR1~R3までの距離、つまり、機体Bの重心GからプロペラPの回転軸までの距離をrとすると、反動トルクを打ち消さすための式は、以下の式(9)になる。

式(9):T1-T2-T3-Ts+|F1h|r+|F2h|r+|F3h|r=0
推進ロータR1~R3の推力および角度θは全て等しいので式(10)が成立し、式(11)の関係を仮定すると、式(9)に基づいて、式(12)の関係が成立する。

式(10):|F1h|=|F2h|=|F3h|
式(11):|Fh|=|F1h|=|F2h|=|F3h|
式(12):|Fh|=T/3r
推力のベクトルF1~F3の水平方向成分F1h,F2h,F3hを合成すると図6(C)に示すように正三角形となり、ベクトルの総和は0になる。即ち、推進ロータR1~R3の反動トルクを打ち消すためにアームBA先端、つまり、推進ロータR1~R3から機体Bの重心G方向を見て、反時計回りに推進ロータR1~R3を同じ角度だけ傾けた場合には、機体Bには水平方向の力が発生しない。この点は、固定ロータRRを設けた場合でも同様である。つまり、固定ロータRRを設けた場合でも、機体Bの重心Gまわりの回転を防ぎつつ、上述した機体Bを水平にした状態でホバリング状態を維持できる。
本発明の飛行体の制御方法によって、奇数個の推進ロータを有する飛行体の姿勢制御を適切に実施できることを確認した。
実験では、図1(A)に示す構造を有する飛行体、つまり、3つ推進ロータが機体の重心を中心とする円周上に等角度間隔で配設された飛行体(実験機)で実施した。
実験機の機体は推進ロータが設けられるアームをカーボンパイプで形成し、機体の他の部分はベニア材やバルサ材等を使用して製作した。
実験機で使用した推進ロータには、モータ(T-Motor社製:型番MN5008 (Kv400))に16インチ×5.4インチのプロペラを取り付けたものを使用した。この推進ロータを機体の重心を中心とする半径38cmの円周上に120度ピッチで配置した。なお、スピードコントロータ(ESC)には、T-Motor社製のFLAME70Aを使用した。
姿勢調整機構には,機体のアームの軸周りにサーボマウントごと傾斜させるピッチ軸と、サーボマウントに対しモータマウントを傾斜させるロール軸の2軸構成となったものを使用した。なお、ピッチ軸とロール軸は直交するように配設されている。
機体の位置を把握するためにGPSを機体に設けた。GPSにはネットワーク型RTK-GPS(iシステムリサーチ社製:型番Sept-SOI)を使用した。
また、バッテリには6セル6000mAHのリチウムポリマーバッテリを二本並列にして使用した
機体の制御をするフライトコントローラには、CUAV社製V5+にオープンソースのファームウェアArduCopter4.0.7を使用し、ArduCopterに姿勢調整機構の操作機能を加えたものをインストールして実施した。
ArduCopterには、複数のフライトモードが用意されている。例をあげると、オペレータの指示に従って姿勢制御のみを行うStabilizeモードや,姿勢制御に加えて高度維持制御を行うAlt一Hddモード、GPS等の位置情報を用いて位置保持制御と高度維持制御を行うPos一Holdモード、あらかじめ設定されたWP(Way Point:通過点)に沿って自動航行を行うAutoモードがある。これらの各モードでは、姿勢制御プログラム(AC_AttitudeControl関数)を下請けとして呼び出して使用した。
実験では、姿勢制御プログラムを姿勢調整機構に対応させて、3つの推進ロータのうち一つのみを傾ける方式(以下、通常方式という場合がある。図9参照)と、全ての推進ロータの傾きを制御する方式(以下、ティルト方式という場合がある)を任意に切り替えができるようにした。これによりArduCopterの全ての機能においてもティルト方式が使用可能になった。
以下に実験結果を示す。
まず、Pos一Holdモードにおいてホバリングを通常方式で行い、途中からティルト方式に切り替え、機体姿勢の変化について検証を行った。
図7(A)に示すように、通常方式では,風に対抗するためにGPSで計測した位置・速度の情報から機体の目標傾斜が決定され、それに従う形で機体が傾斜したことが示されている。
一方、ティルト方式では、姿勢制御の目標値はロール・ピッチ軸とも0度となっており、それに対して機体姿勢は±2度以内を達成している。つまり、機体姿勢を傾ける代わりに推進ロータを傾斜させることで機体の位置が保持されていることが確認できる。
次に、ティルト方式を採用したPos一Holdモードでの位置保持実験を行った。
実験は、西からの風(約5m/s)がふいている状況で、Pos一Holdモードで10秒間のホバリングを行った。
図8(B)には、RTK-GPSによる測位結果をプロットしたものを示しているが、10秒間のホバリング時の飛行軌跡では、目標地点に対し最大47cmの振れ幅(つまり、目標地点に対して±23.5cmの位置保持性能を発揮していることが確認された。
また、ティルト方式を採用したPos一Holdモードでの位置保持実験を行った際における一分間の高度変化(図7(B)参照)を確認すると、目標高度に対し±8.5cmの高度維持性能を発揮していることが確認できた。
以上の結果より、本発明の飛行体の制御方法によって、奇数個の推進ロータを有する飛行体であっても、機体の傾きを防止しつつ機体の位置が保持できること、および、位置保持性能や高度維持性能を発揮できることが確認された。
本発明の飛行体の制御方法は、奇数個の推進ロータを有する飛行体の姿勢制御に適している。
UVA 飛行体
B 機体
BB 機体本体
BA アーム
R ロータ
RR 固定ロータ
RT 姿勢調整機構
C 制御手段
G 重心
T 反動トルク
F 推進力
CF 円周

Claims (10)

  1. 機体と、奇数個の推進ロータと、を有する飛行体における前記機体の重心周りの回転と該機体の水平移動の両方を防止する制御方法であって、
    前記奇数個の推進ロータは、
    該推進ロータの回転軸の機体に対する傾きが変更可能に設けられており、
    前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転軸を鉛直方向に対して傾けて全ての推進ロータの回転数を調整する
    ことを特徴とする飛行体の制御方法。
  2. 前記奇数個の推進ロータは、
    前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、
    前記機体のホバリング状態を維持する際において、
    全ての推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように全ての推進ロータの回転数を調整し、
    全ての推進ロータを、全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させる
    ことを特徴とする請求項1記載の飛行体の制御方法。
  3. 前記奇数個の推進ロータは、
    前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、
    前記機体を水平移動させる際には、
    全ての推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように全ての推進ロータの回転数を調整しかつ全ての推進ロータを全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させたホバリング状態から、全ての推進ロータを同じ方向に同じ角度だけ傾斜させる
    ことを特徴とする請求項1記載の飛行体の制御方法。
  4. 前記機体に、該機体に対する回転軸の傾きが固定された固定ロータが設けられており、
    該固定ロータが発生する反動トルクおよび前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転数および全ての推進ロータの回転軸の機体に対する傾きを調整する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の飛行体の制御方法。
  5. 前記推進ロータを3つ備えている
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の飛行体の制御方法。
  6. 機体と、
    該機体に設けられた奇数個の推進ロータと、
    該奇数個の推進ロータの機体に対する姿勢を調整する姿勢調整機構と、
    前記奇数個の推進ロータおよび前記姿勢調整機構の作動を制御する制御手段と、を備え、
    該制御手段は、
    前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転数および全ての推進ロータの回転軸の機体に対する傾きを調整して、前記機体の重心周りの回転と前記機体の水平移動の両方を防止する機能を有している
    ことを特徴とする飛行体。
  7. 前記奇数個の推進ロータは、
    前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、
    前記制御手段は、
    前記機体をホバリング状態または垂直移動させるホバリング機能を有しており、
    該ホバリング機能は、
    全ての推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように全ての推進ロータの回転数を調整し、
    全ての推進ロータを、全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させる
    ことを特徴とする請求項6記載の飛行体。
  8. 前記奇数個の推進ロータは、
    前記機体の重心を中心とする同一円周上に等角度間隔で設けられており、
    前記制御手段は、
    前記機体を水平移動させる水平移動機能を有しており、
    該水平移動機能は、
    全ての推進ロータが発生する推力が同じ大きさになるように全ての推進ロータの回転数を調整し、
    前記機体を水平移動させる場合には、前記奇数個の推進ロータを、全ての推進ロータが並ぶ同一円周方向かつ同じ方向に同じ角度だけ傾斜させたホバリング状態から、全ての推進ロータを同じ方向に同じ角度だけ傾斜させる
    ことを特徴とする請求項6記載の飛行体。
  9. 前記機体には、該機体に対する回転軸の傾きが固定された固定ロータが設けられており、
    前記制御手段は、
    該固定ロータが発生する反動トルクおよび前記奇数個の推進ロータが発生する反動トルクに起因する機体を重心回りに回転させるトルクを相殺するトルクを発生させる水平方向分力が発生するように、全ての推進ロータの回転数および全ての推進ロータの回転軸の機体に対する傾きを調整する機能を有している
    ことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の飛行体。
  10. 前記推進ロータを3つ備えている
    ことを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の飛行体。
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