図1は、本実施形態に係る車両の走行制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の車両の走行制御装置1は、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一実施の形態でもある。図1に示すように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1は、センサ11と、自車位置検出装置12と、地図データベース13と、車載機器14と、提示装置15と、入力装置16と、通信装置17と、駆動制御装置18と、制御装置19とを備える。これらの装置は、相互に情報の送受信を行うために、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
センサ11は、自車両の走行状態を検出する。たとえば、センサ11として、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の左右の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー、自車両の車速を検出する車速センサ、およびドライバーを撮像する車内カメラなどが挙げられる。なお、センサ11として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ11の検出結果は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成され、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12により検出された対象車両の位置情報は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む地図情報を記憶している。具体的には、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報が、地図情報とともに記憶されている。地図データベースに格納された地図情報は、制御装置19により参照可能となっている。
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーにより操作されることで動作する。このような車載機器としては、ステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、オーディオ装置、エアーコンディショナー、ハンズフリースイッチ、パワーウィンドウ、ワイパー、ライト、方向指示器、クラクション、特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14がドライバーにより操作された場合に、その操作状況を示す車室内情報が制御装置19に出力される。
提示装置15は、たとえば、ナビゲーション装置が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ、オーディオ装置が備えるスピーカー、および振動体が埋設された座席シート装置などの装置である。提示装置15は、制御装置19の制御に従って、後述する提示情報および走行制御実行情報をドライバーに報知する。なお、走行制御実行情報には、車両の車線変更制御に関する情報、車両の右折走行制御若しくは左折走行制御に関する情報、又は、車両の本線道路からの離脱走行制御若しくは本線道路への進入走行制御に関する情報などが含まれる。
入力装置16は、たとえば、ドライバーの手動操作による入力が可能なダイヤルスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置16を操作することで、提示装置15により提示された提示情報に対する応答情報を入力することができる。たとえば、本実施形態では、方向指示器やその他の車載機器14のスイッチを入力装置16として用いることもでき、制御装置19からの自動走行制御を実行又は変更するかの問い合わせに対して、ドライバーが方向指示器のスイッチをオンにすることで、自動走行制御の実行又は変更の承諾乃至許可を入力する構成とすることもできる。なお、入力装置16により入力された応答情報は、制御装置19に出力される。
通信装置17は、自車両の外部の通信機器と、自車両の車室内にある携帯端末と通信を行う。たとえば、通信装置17は、他車両との間で車々間通信を行ったり、路肩に設置された機器との間で路車間通信を行ったり、又は車両の外部に設置された情報サーバとの間で無線通信を行ったりすることで、各種の情報を外部機器から取得することができる。また、通信装置17は、車室内にある携帯端末と通信を行うことにより、各種の情報を携帯端末から取得し、あるいは各種の情報を携帯端末に送信する。なお、通信装置17により取得された情報は、制御装置19に出力される。
駆動制御装置18は、自車両の走行を制御する。たとえば、駆動制御装置18は、自車両が先行車両に追従走行制御する場合には、自車両と先行車両との車間距離が一定距離となるように、加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作を制御する。また、自車両が走行する車線(以下、自車線ともいう。)のレーンマークを検出し、自車両が自車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御を行う場合、自車両が先行車両の追い越しや走行方向の変更などの車線変更制御を行う場合、交差点などにおいて右折又は左折する自動走行制御を行う場合には、加減速度および車速を実現するための駆動機構の動作並びにブレーキ動作に加えて、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。なお、駆動制御装置18は、後述する制御装置19の指示により自車両の走行を制御する。また、駆動制御装置18による走行制御方法として、その他の周知の方法を用いることもできる。
制御装置19は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
制御装置19は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行状態に関する情報を取得する走行情報取得機能と、自車両の車室内の状況に関する車室内情報を取得する車室内情報取得機能と、自車両の走行シーンを判定する走行シーン判定機能と、自車両の走行を制御する走行制御機能と、車線変更の可否を判断し、車線変更を制御する車線変更制御機能と、自動走行制御の実行又は変更に関する走行制御実行情報をドライバーに提示する走行制御実行情報提示機能と、提示された走行制御実行情報に対してドライバーが自動走行制御の実行又は変更を承諾したか否かを確認する承諾確認機能と、を実現する。以下、制御装置19が備える各機能について説明する。
制御装置19の走行情報取得機能は、自車両の走行状態に関する走行情報を取得する機能である。たとえば、制御装置19は、走行情報取得機能により、センサ11に含まれる前方カメラおよび後方カメラにより撮像された車両外部の画像情報や、前方レーダー、後方レーダー、および側方レーダーによる検出結果を、走行情報として取得する。また、制御装置19は、走行情報取得機能により、センサ11に含まれる車速センサにより検出された自車両の車速情報や、車内カメラにより撮像されたドライバーの顔の画像情報も走行情報として取得する。
さらに、制御装置19は、走行情報取得機能により、自車両の現在位置の情報を走行情報として自車位置検出装置12から取得する。また、制御装置19は、走行情報取得機能により、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置、サービスエリア(SA)/パーキングエリア(PA)などの位置情報を走行情報として地図データベース13から取得する。加えて、制御装置19は、走行情報取得機能により、ドライバーによる車載機器14の操作情報を、走行情報として車載機器14から取得する。
制御装置19の車室内情報取得機能は、自車両の車室内の状況に関する車室内情報を取得する機能である。たとえば、制御装置19は、車室内情報取得機能により、車載機器14のステアリング、アクセルペダル、ブレーキペダル、ナビゲーション装置、オーディオ装置、エアーコンディショナー、ハンズフリースイッチ、パワーウィンドウ、ワイパー、ライト、方向指示器、クラクション、特定のスイッチなどの操作状況に関する車室内情報を取得する。
また、制御装置19の車室内情報取得機能は、センサ11の車内カメラで撮影した車室内の画像も車室内情報として取得することができる。車室内の画像は、自動走行制御の実行中にドライバーによって行われている、車両の周囲確認ができない行為(以下、周囲確認不可行為ともいう)の検出に用いられる。ここで、車両の周囲確認ができない行為とは、自車両の自動走行制御中や停車中にドライバーに許される行為であり、より詳しくは、自車両の運転や走行に関する自車両の操作や、運転や走行のために自車両の周囲を確認、監視するなどの車両の周囲確認ができる状態にある行為以外の作業やタスクである。例えば、ドライバーが車室内で飲食を行う行為、携帯端末を操作する行為などが、車両の周囲確認ができない行為に該当する。
制御装置19の走行シーン判定機能は、制御装置19のROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両が走行している走行シーンを判定する機能である。図2は、走行シーンの判定に用いられるテーブルの一例を示す図である。図2に示すように、テーブルには、車線変更に適した走行シーンとその判定条件が、走行シーンごとに記憶されている。制御装置19は、走行シーン判定機能により、図2に示すテーブルを参照して、自車両の走行シーンが、車線変更に適した走行シーンであるか否かを判定する。
たとえば、図2に示す例では、「先行車両への追いつきシーン」の判定条件として、「前方に先行車両が存在」、「先行車両の車速<自車両の設定車速」、「先行車両への到達が所定時間以内」、および「車線変更の方向が車線変更禁止条件になっていない」の4つの条件が設定されている。制御装置19は、走行シーン判定機能により、たとえば、センサ11に含まれる前方カメラや前方レーダーによる検出結果、車速センサにより検出された自車両の車速、および自車位置検出装置12による自車両の位置情報などに基づいて、自車両が上記条件を満たすか否かを判断し、上記条件を満たす場合に、自車両が「先行車両への追いつきシーン」であると判定する。同様に、制御装置19は、走行シーン判定機能により、図2に示すシーン判定テーブルに登録された全ての走行シーンについて判定条件を満たすか否かを判定する。
なお、車線変更禁止条件としては、たとえば、「車線変更禁止区域を走行している」、「車線変更方向に障害物が存在する」、「センターライン(道路中央線)を跨ぐごととなる」、および「路肩に入る、または、道路端を跨ぐこととなる」などを挙げることができる。また、「緊急退避シーン」において路肩などでの緊急停車を認めている道路では、「緊急退避シーン」においては、「路肩に入る、または、道路端を跨ぐこととなる」との条件を許容することもできる。なお、図2に示すテーブルのうち、車線変更の必要度、制限時間、および車線変更の方向については後述する。
また、制御装置19は、走行シーン判定機能により、自車両の走行シーンが複数の走行シーンに該当する場合には、車線変更の必要度が高い方の走行シーンを、自車両の走行シーンとして判定する。たとえば、図2に示すテーブルにおいて、自車両の走行シーンが、「先行車両の追いつきシーン」および「目的地への車線乗換シーン」に該当し、「先行車両の追いつきシーン」における車線変更の必要度X1が、「目的地への車線乗換シーン」における車線変更の必要度X8よりも低いものとする(X1<X8)。この場合には、制御装置19は、走行シーン判定機能により、車線変更の必要度がより高い「目的地への車線乗換シーン」を、自車両の走行シーンとして判定する。なお、「目的地への車線乗換シーン」とは、複数車線を有する道路の分岐地点や出口の手前などで、現在自車両が走行している車線から、目的とする分岐方向又は出口方向の車線へ乗り換えるために車線変更するシーンをいう。
制御装置19の走行制御機能は、自車両の走行を制御する機能である。たとえば、制御装置19は、走行制御機能により、センサ11の検出結果に基づいて、自車両が走行する自車線のレーンマークを検出し、自車両が自車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御を行う。この場合、制御装置19は、走行制御機能により、自車両が適切な走行位置を走行するように、駆動制御装置18にステアリングアクチュエータなどの動作を制御させる。また、制御装置19は、走行制御機能により、先行車両と一定の車間距離を空けて、先行車両に自動で追従する追従走行制御を行うこともできる。この追従走行制御を行う場合、制御装置19は、走行制御機能により、自車両と先行車両とが一定の車間距離で走行するように、駆動制御装置18に制御信号を出力し、エンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御させる。なお、以下においては、レーンキープ制御、追従走行制御、右左折走行制御、車線変更制御を含めて、自動走行制御として説明する。
制御装置19の車線変更制御機能は、自車両の走行シーンや、自車両の周辺に存在する障害物の情報に基づいて、車線変更を行うか否かを判断する機能である。また、車線変更制御機能は、車線変更を行うと判断した場合には、駆動制御装置18に、エンジンやブレーキなどの駆動機構の動作及びステアリングアクチュエータの動作を制御させる機能でもある。さらに、車線変更制御機能は、自車両の走行状態やドライバーの状態に基づいて、車線変更制御を開始する開始タイミングを設定し、設定した開始タイミングに従って車線変更制御を実行する機能でもある。なお、車線変更制御機能による車線変更制御の詳細については後述する。
制御装置19の走行制御実行情報提示機能は、レーンキープ制御、追従走行制御、右左折走行制御、車線変更制御などを含む自動走行制御による自車両の走行動作に関する走行制御実行情報を、提示装置15を介してドライバーに提示する機能である。たとえば、レーンキープ制御を実行中に、前方に道路の分岐地点が存在したり、自動車専用道路の出口又はサービスエリアが存在したりすると、自車両の走行方向を変更して車線変更が必要になることがある。また、先行車両の追従走行制御を実行中に、先行車両が車線変更をするとこれにしたがって自車両も車線変更することがある。また、目的地への経路の途中に交差点などで右折又は左折する走行方向の変更が必要になることがある。こうした走行方向の変更を自動走行制御にて実行する場合には、走行方向の変更が可能か否かを判断するとともに、走行方向の変更が可能な場合にはドライバー自身による安全確認を促すために、制御装置19は、走行制御実行情報提示機能により自動走行制御の実行情報をドライバーに提示する。走行制御実行情報の提示タイミングは、ドライバー自身による安全確認を目的とするので、少なくとも自動走行制御の実行又は変更の開始前であればよい。
ここで、自動走行制御の実行又は変更の開始前に、ドライバーに提示される走行制御実行情報の一例を説明する。図3は、本発明の実施形態に係る車線変更のシーンを示す平面図であって、左側通行の片側3車線L1,L2,L3の道路において、自車両V0が前方を走行中の他車両V1を追い越すシーンである。図3の左図は、現在自車両V0が走行中の車線L2から隣接車線L3に車線変更を実行する車線変更制御の例を示す平面図であり、図3の右図は、他車両V1を追い越してから再び車線L2に戻るための車線変更制御の例を示す平面図である。
本実施形態では、複数回の車線変更を行う場合において、1回目の車線変更制御を行う前に、車線変更を行う旨の走行制御実行情報を提示装置15に提示する。また、この提示に対してドライバーが承諾する旨の意思を示した場合には、1回目の車線変更を実行したのち、2回目の車線変更制御を行う前に、2回目の車線変更を行う旨の走行制御実行情報を提示装置15に提示する。図3に示す例では2回の車線変更であるが、3回以上の車線変更を行う場合には、同様にして、次の車線変更を行う前に、その車線変更を行う旨の走行制御実行情報を提示装置15に提示して、ドライバーの承諾を確認する。このように、本実施形態の制御装置19は、走行制御実行提示機能により、1回の車線変更を行う度にドライバー自身による安全確認を促す。
なお、走行制御実行情報提示機能による提示装置15への提示形態は、提示装置15がディスプレイを備える場合には、画像や言語などを含む視覚パターンの表示のほか、提示装置15がスピーカーを備える場合には、車線変更制御により自車両が移動する幅員方向の向きを含む走行制御実行情報(たとえば左方向または右方向の車線に車線変更する旨のガイダンス情報)を、聴覚情報(音声や音)としてドライバーに提示してもよい。また、提示装置15がインストルメントパネルなどに設置された1または複数の警告ランプを備える場合には、特定の警告ランプを特定の提示態様で点灯させることで、車線変更制御により自車両が移動する幅員方向の向きを含む走行制御実行情報を、ドライバーに提示してもよい。さらに、提示装置15が複数の振動体を埋設した座席シート装置を備える場合には、特定の振動体を特定の提示態様で振動させることで、車線変更制御により自車両が移動する幅員方向の向きを含む走行制御実行情報を、ドライバーに提示してもよい。
このように、走行変更情報を、視覚情報としてディスプレイに表示することに代えて、又は視覚情報としてディスプレイに表示することに加え、音声や音などの聴覚情報、警告ランプの表示による視覚情報、若しくは振動による触覚情報として、ドライバーに提示することにより、走行制御実行情報をより直感的にドライバーに把握させることができる。なお、本実施形態の車両の走行制御装置1では、提示装置15に提示される走行制御実行情報に対し、ドライバーが承諾するための動作について煩わしさを感じさせないようにするために、1回の走行制御の変更を実行する毎のドライバーの承諾動作を、走行制御実行情報の提示との関係において、次のように設定している。
制御装置19の承諾確認機能は、走行制御実行情報提示機能により提示された走行制御実行情報に対してドライバーが当該走行制御の実行又は変更を承諾したか否かを確認する機能である。制御装置19の承諾確認機能は、走行制御実行情報提示機能により走行制御実行情報を提示した際に、ドライバーが自車両の周囲確認ができない行為、すなわち周囲確認不可行為を行っているか否かを検出し、ドライバーが周囲確認不可行為を行っていることが検出された場合に、走行制御実行情報の提示後、提示に応じて行為を中止又は中断するか否かを検出する。そして、ドライバーが周囲確認不可行為を中止又は中断したことが検出された場合には、ドライバーによって自動走行制御の実行又は変更が承諾されたものと判定する。
すなわち、ドライバーは、走行制御実行情報で提示された自動走行制御の変更について承諾する際に、承諾を示す特別な操作や動作などを行う必要がなく、実行中の周囲確認不可行為を中止又は中断するだけで承諾を示すことができ、承諾動作に伴うドライバーの煩わしさを低減することが可能である。また、ドライバーが周囲確認不可行為を中止又は中断しない場合には、自動走行制御の実行又は変更を拒絶(非承諾)したと判定するので、ドライバーが周囲確認不可行為を行っている状態で自動走行制御が実行又は変更されることはない。したがって、自動走行制御の安全性がより一層高まる。
図4A~図4Dは、走行制御実行情報提示機能により提示される各種形態の走行制御実行情報の例を示す図であり、提示装置15のディスプレイとスピーカーを利用して走行制御実行情報が提示された例を示す。なお、上述したとおり、本実施形態の走行制御実行情報には、車線変更情報のほかにも、右左折走行制御に関する走行制御実行情報や、本線道路からの離脱走行制御若しくは本線道路への進入走行制御に関する走行制御実行情報が含まれるが、図4A~図4Dにおいては、図3に示す2回の車線変更制御のうち、車線L2から車線L3へ移動する1回目の車線変更、すなわち、自動走行制御を実行又は変更する前に走行制御実行情報を提示する例を示すものとする。
ちなみに、本発明の「自動走行制御を変更」とは、図4A~図4Dに示す例でいえば、実行中の「レーンキープ制御」を、「1回目の車線変更制御」に変更する内容に相当する。ただし、実行中の自動走行制御と、変更する自動走行制御は、レーンキープ制御と車線変更制御のように異なる自動走行制御であってもよいし、連続して車線変更を行う場合のように、同じ種類の走行制御間で変更する場合であってもよい。たとえば、実行中の自動走行制御が車線変更制御であり、変更する自動走行制御が左折走行制御である場合や、本線道路からの離脱走行制御への変更などであってもよい。要するに、ドライバーの承諾が必要な自動走行制御の変更が発生するシーンであればよい。また、本発明の「自動走行制御を変更」とは、車両の停車状態、あるいは車両のドライバーによる手動運転状態から、自動走行制御を実行する場合を言う。
図4Aの左図は、図3に示すように中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に提示装置15に提示される第1走行制御実行情報Td1aを示す。また、図4Aの右図は、第1走行制御実行情報Td1aに応じてドライバーが実行中の周囲確認不可行為を中止し、車線変更が承諾されたと判定された場合に提示装置15に提示される第2走行制御実行情報Td2aを示す。本例では、中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に、図4Aの左図に示すように、提示装置15のディスプレイに自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データが表示され、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V0の車線変更先と、OKマーク及びCancelマークと、が表示される。OKマーク及びCancelマークは、ドライバーに第1走行制御実行情報Td1aに対する選択肢を示すものであり、図4Aの左図では、どちらも非選択状態であることを表すように薄い濃度で表示されている。また、図4Aの左図では、この表示と共に、「車線変更を開始する場合には、周囲を確認してください」といったメッセージが、音声データによりスピーカーから出力される。なお、このメッセージは、ディスプレイに文字データとして表示してもよい。
ドライバーは、図4Aの左図に示す第1走行制御実行情報Td1aに対して、車線変更してもよいと判断した場合には、実行中の周囲確認不可行為を中止して周囲の状況などを自分で目視確認する。これにより、制御装置19は、図4Aの右図に示す第2走行制御実行情報Td2aを提示装置15に提示する。第2走行制御実行情報Td2aでは、ドライバーにより車線変更が承諾されたことを示すために、OKマークの濃度が濃く表示される。また、図4Aの右図では、この表示と共に、「右方向への車線変更を開始します」といったメッセージが、音声データによりスピーカーから出力される。なお、このメッセージは、ディスプレイに文字データとして表示してもよい。
図4Aに示す例では、自動走行制御の変更に際し、第1走行制御実行情報Td1aにより周囲の確認を促す例について説明したが、実行中の周囲確認不可行為を具体的に指摘し、その行為を中止するように促してもよい。図4Bの左図は、図3に示すように中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に提示装置15に提示される第1走行制御実行情報Td1bを示す。図4Bの右図は、第1走行制御実行情報Td1bに応じてドライバーが実行中の周囲確認不可行為を中止し、車線変更が承諾されたと判定された場合に提示装置15に提示される第2走行制御実行情報Td2bを示す。本例では、中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に、図4Bの左図に示すように、提示装置15のディスプレイに自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データが表示され、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V0の車線変更先と、OKマーク及びCancelマークと、が表示される。OKマーク及びCancelマークは、ドライバーに第1走行制御実行情報Td1bに対する選択肢を示すものであり、図4Aの左図では、どちらも非選択状態であることを表すように薄い濃度で表示されている。また、図4Bの左図では、この表示と共に、「車線変更を開始する場合には、スマートフォンの操作を終了してください」といったメッセージが、音声データによりスピーカーから出力される。このように、音声データにより実行中の周囲確認不可行為を具体的に指摘し、その行為を中止するように促している。なお、このメッセージは、ディスプレイに文字データとして表示してもよい。
ドライバーは、図4Bの左図に示す第1走行制御実行情報Td1bに対して、車線変更してもよいと判断した場合には、実行中の周囲確認不可行為を中止する。その後、ドライバーは周囲の状況などを確認する。これにより、制御装置19は、図4Bの右図に示す第2走行制御実行情報Td2bを提示装置15に提示する。第2走行制御実行情報Td2bでは、ドライバーにより車線変更が承諾されたことを示すために、OKマークの濃度が濃く表示される。また、図4Aの右図では、この表示と共に、「右方向への車線変更を開始します」といったメッセージが、音声データによりスピーカーから出力される。なお、このメッセージは、ディスプレイに文字データとして表示してもよい。この時点で、ドライバーが周囲確認の結果、車線変更制御を中止したい場合には、キャンセルボタンを押したり、ドライバーがハンドル、ブレーキ、アクセルなどの運転操作を行うことで、車線変更制御を中止することができる。
図4A及び図4Bに示す例では、自車両V0の提示装置15に走行制御実行情報を提示する例について説明したが、ドライバーに対して、ドライバーが所有する携帯端末から走行制御実行情報を提示してもよい。図4Cの左図は、図3に示すように中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に、ドライバーの携帯端末20の表示部21に提示される第1走行制御実行情報Td1cを示す。図4Cの右図は、第1走行制御実行情報Td1cに応じて、ドライバーが携帯端末20をスリープ状態あるいは電源をオフにした場合、すなわち、携帯端末20を操作するという周囲確認不可行為を中止した状態を示す。図4Cの左図の第1走行制御実行情報Td1cには、「車線変更を開始する場合には、スマートフォンの操作を終了してください」といったメッセージが表示される。このメッセージでは、実行中の周囲確認不可行為を具体的に指摘してその行為を中止するよう促しているが、図4Aの左図に示す例のように、「車線変更を開始する場合には、周囲を確認してください」というメッセージを表示してもよい。また、文字によるメッセージの表示とともに、携帯端末20から音声データでメッセージを出力してもよい。
図4Cの左図に示す第1走行制御実行情報Td1cに代えて、図4Dの左図に示すような第1走行制御実行情報Td1dを、ドライバーに対して携帯端末20から提示させてもよい。すなわち、携帯端末20の表示部21から、自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データを備え、矢印などの視覚パターンで自車両V0の車線変更先を示した第1走行制御実行情報Td1dを提示してもよい。この場合、携帯端末20から、「車線変更を開始する場合には、スマートフォンの操作を終了してください」といったメッセージを、音声データによりスピーカーから出力してもよい。
本例の携帯端末20は、いわゆるスマートフォンであり、図5に示すように、LCDパネルなどの表示部21と、タッチパネルなどの入力部22と、携帯電話通信網に接続して通信を行う携帯電話通信部23と、通話に利用される受話部24及び送話部25などを備える。また、携帯端末20は、WIFI(登録商標)などの無線LANや、Bluetooth(登録商標)などの短距離無線通信を利用して通信を行う無線通信部26を備える。さらに、携帯端末20は、オペレーティングシステムやアプリケーションプログラムなどを記憶する記憶部27と、これらを統括的に制御するCPU28とを備える。
携帯端末20は、無線通信部26により自車両V0の通信装置17と接続することにより、制御装置19の走行制御実行情報提示機能と連系して、上述した第1走行制御実行情報を提示する。そのため、携帯端末20には、無線通信部26を自車両V0の通信装置17と接続するために、車両接続用アプリケーション29が予めインストールされ、記憶部27に格納されている。
車両接続用アプリケーション29は、CPU28により実行されることにより、通信装置17を介して自車両V0の外部の通信ネットワークと通信を行う外部通信機能と、制御装置19の走行制御実行情報提示機能と連系して第1走行制御実行情報Td1c又はTd1dを提示する連系提示機能と、外部通信機能による携帯端末20の通信状況や、入力部22の操作状況などを監視して、携帯端末20が操作中であるか否かを検出する操作検出機能などを備える。操作検出機能は、制御装置19の承諾確認機能と連系し、ドライバーが第1走行制御実行情報Td1c又はTd1dに応じて、携帯端末20の操作を中止又は中断したかを検出するために利用される。
なお、上記では、周囲確認不可行為の1つとして携帯端末20の操作を挙げたが、周囲確認不可行為は、携帯端末20の操作を含む複数種類の行為に類型化されている。図6は、周囲確認不可行為の類型と、その周囲確認不可行為が実行可能(許可される)な自動走行制御と、周囲確認不可行為の中止を検出する検出時間とが、周囲確認不可行為の類型毎に設定された類型テーブルを示している。類型テーブルは、制御装置19のROMに記憶されており、ドライバーの周囲確認不可行為を検出する際に参照される。
なお、検出時間とは、制御装置19の承諾確認機能により、ドライバーが周囲確認不可行為を中止するのを検出するための時間である。この検出時間内にドライバーが周囲確認不可行為を中止しなかった場合には、自動走行制御の実行又は変更に承諾しなかったものと判定する。また、周囲確認不可行為が実行可能な自動走行制御は、「交差点の右左折制御」>「車線変更制御」>「レーンキープ制御」の順に、制御難度が高くなっており、制御難度に応じて実行可能な周囲確認不可行為が設定されている。さらに、類型テーブルでは、周囲確認不可行為をA1~A5の5つに類型化しているが、A5>A4>A3>A2>A1の順に、中止又は中断に時間がかかる行為、あるいは実行するために高い集中力が要求される行為となっている。そのため、中止又は中断に時間がかかる行為、あるいは高い集中力が要求される行為は、実行可能な自動走行制御の種類が少なく、かつ、制御難度の高い自動走行制御の実行中には行えないように設定されている。
類型A1は、行為イメージに示すように、例えば、車室内に設置されたディスプレイで映像を試聴するような行為である。この類型A1の映像を試聴する行為は、手元(触覚)を使用せず、話す動作も伴わない受動的な行為なので、比較的軽度の集中力で行うことができ、短時間で中止又は中断することができる。そのため、レーンキープ制御及び車線変更制御時に行うことができ、検出時間Dt1も数十秒と比較的短時間に設定されている。
類型A2は、行為イメージに示すように、例えば、ハンズフリーのヘッドセットを用いて他者と通話を行う行為や、携帯電話などの携帯端末20を用いて通話を行う行為、ウェアラブル端末などのヘッドアップディスプレイを使用する行為などである。類型A2の通話を行う行為は、類型A1と同様に、手元(触覚)を使用せず、比較的軽度の集中力で行うことができるので、レーンキープ制御及び車線変更制御時に行うことが可能である。なお、類型A2は、ドライバーが通話を行う点で類型A1に比べて能動的な行為であり、類型A1よりも集中力を必要とするため、検出時間Dt2は類型A1の検出時間Dt1よりも長く設定されている。
類型A3は、行為イメージに示すように、例えば、視覚及び手元(触覚)を用いて携帯端末20を操作する行為である。携帯端末20の操作内容としては、例えば、インターネット、メール、ゲームなどをする行為が含まれる。類型A3の携帯端末20を操作する行為は、手元(触覚)を用いる点で類型A1、A2に比べて能動的な行為であり、類型A1、A2よりも行為に集中力を必要とする。そのため、レーンキープ制御時にのみ行うことができ、検出時間Dt3は類型A2の検出時間Dt2よりも長く設定されている。
類型A4は、行為イメージに示すように、例えば、手で持った本を読む行為であり、他の類型A1~A3に比べて高い集中力を要するため、レーンキープ制御時にのみ行うことができる。また、類型A4の行為は、比較的高い集中力で本を読む行為であるため、この行為を中止又は中断する必要がある状況、例えば、第1走行制御実行情報の提示に気が付くのが多少遅れる可能性がある。そのため、類型A4の検出時間Dt4は、類型A3の検出時間Dt3よりも長く設定されている。
類型A5は、行為イメージに示すように、例えば、手元(触覚)、味覚、臭覚を用いる行為、つまり飲食を行う行為である。飲食を行う行為を中止又は中断するには、飲食物または食器を車内の安定した位置に置く必要がある。そのため、飲食を行う行為を中止又は中断するには、比較的時間がかかるので、レーンキープ制御時にのみ行うことができ、検出時間Dt5は全ての類型A1~A5の検出時間のなかで最も長く設定されている。
なお、周囲確認不可行為は、上述したものに限定されず、車室内で行われる可能性がある様々な行為を周囲確認不可行為として類型化してもよく、例えば、喫煙なども周囲確認不可行為として追加可能である。
ところで、ドライバーは、複数種類の周囲確認不可行為を同時に行う場合がある。例えば、他者と通話をしながら、飲食を行う場合も考えられ、この場合には、類型A2とA5の周囲確認不可行為が同時に行われることになる。このような場合には、同時に行われている複数種類の行為のうち、最も検出時間が長い行為の検出時間を適用してもよいし、複数種類の行為の検出時間を加算した検出時間を適用してもよい。具体的には、ドライバーが、類型A2と類型A5の行為を行っている場合には、検出時間として、T5を設定してもよいし、T2+T5を検出時間としてもよい。なお、複数種類の類型の検出時間を加算する場合には、検出時間の上限値を予め設定しておくことが好ましい。
上述した周囲確認不可行為の検出には、車室内情報取得機能により取得された車室内情報が用いられる。例えば、類型A1のディスプレイで映像を試聴する周囲確認不可行為を検出する場合には、制御装置19は、承諾確認機能により、車室内情報としてディスプレイの動作状態に関する情報を取得し、ディスプレイに映像が映し出されている場合には類型A1の周囲確認不可行為が行われているものと判定する。また、制御装置19は、承諾確認機能により、車室内情報として取得したディスプレイの動作状態が、映像を映し出している状態から、映像が停止された状態、あるいは映像が写し出されていない状態に変化した場合に、類型A1の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。
また、類型A2~A5の周囲確認不可行為を検出する場合には、制御装置19は、承諾確認機能により、車室内情報としてセンサ11の車内カメラの画像を取得する。図5に示すように、例えば、自車両V0のダッシュボードV0aの上には、運転席V0bに着座したドライバーDの上半身を撮影し、撮影した画像を制御装置19に送信する車内カメラ111が設置されている。制御装置19の承諾確認機能は、車内カメラ111から送信された画像を画像認識処理などにより解析し、図6に示す類型テーブルと比較することにより、ドライバーが類型A2~A5の周囲確認不可行為を行っているのか、また、ドライバーが類型A2~A5の周囲確認不可行為を中止又は中断したかを検出する。車内カメラ111は、本発明の行動監視装置に相当する。
具体的には、類型A2の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーがヘッドセットで通話を行っている状態、あるいは携帯端末20で通話を行っている状態などが検出された場合に、類型A2の周囲確認不可行為が行われていると判定する。また、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーがヘッドセットや携帯端末20を耳から遠ざけた状態、あるいはヘッドセットや携帯端末20の電源をオフにする状態などが検出された場合には、類型A2の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。なお、ヘッドセットや携帯端末20を用いた通話が、車両接続用アプリケーション29の外部通信機能を利用して行われている場合には、車室内情報として、通信装置17の通信状況に関する情報を取得し、取得した通信状況に関する情報に基づいて、類型A2の実行状況について検出してもよい。
類型A3の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが携帯端末20を手に持って操作している状態が検出された場合には、類型A3の周囲確認不可行為が行われていると判定する。また、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが携帯端末20の電源をオフまたはスリープさせる状態、携帯端末20のカバーを閉じる状態、携帯端末20を車載ホルダにセットする状態、プレイ中のゲームをポーズさせた状態、携帯端末20に一定時間以上触れていない状態などが検出された場合には、類型A3の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。なお、携帯端末20が車両接続用アプリケーション29の外部通信機能を利用して通信を行っている場合には、車室内情報として、通信装置17の通信状況に関する情報を取得し、取得した通信状況に関する情報に基づいて、類型A3の周囲確認不可行為の実行状況について検出してもよい。
類型A4の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが本を手に持って読んでいる状態が検出された場合には、類型A4の周囲確認不可行為が行われていると判定する。また、車内カメラ111で撮影した画像から、本を閉じる状態、本をダッシュボードや助手席などに置く状態などが検出された場合には、類型A4の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。
類型A5の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが食物や飲料を手に持って飲食している状態が検出された場合には、類型A5の周囲確認不可行為が行われていると判定する。また、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが食物をダッシュボードや助手席に置いたり、飲料をドリンクホルダに戻したりしている状態などが検出された場合には、類型A5の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。
また、周囲確認不可行為全般の中止又は中断の判定として、例えば、ステアリングに手を触れていなかったドライバーが、第1走行制御実行情報の提示に応じてステアリングに手を触れた場合に、周囲確認不可行為を中止又は中断したものと判定してもよい。
次に、図8A~図8Eを参照して、本実施形態に係る車線変更制御処理について説明する。図8A~図8Eは、本実施形態に係る車線変更制御処理を示すフローチャートである。なお、以下に説明する車線変更制御処理は、制御装置19により所定時間間隔で実行される。また、以下においては、制御装置19の走行制御機能により、図3に示す車線変更制御のシーンについて、自車両V0が自車線L2内を走行するように、自車両V0の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御が行われている間に、先行する他車両V1を車線L3から追い越したのち、再び元の車線L2に戻るものとして説明する。
まず、図8AのステップS1では、制御装置19は、走行情報取得機能により、自車両の走行状態に関する走行情報を取得する。続くステップS2では、制御装置19は、走行シーン判定機能により、ステップS1で取得された走行情報に基づいて、自車両の走行シーンを判定する。
ステップS3では、制御装置19は、走行シーン判定機能により、ステップS2で判定された自車両の走行シーンが、車線変更に適した走行シーンであるか否かを判断する。具体的には、走行シーン判定機能は、自車両の走行シーンが、図2に示すいずれかの走行シーンである場合に、自車両の走行シーンが、車線変更に適した走行シーンであると判定する。自車両の走行シーンが車線変更に適した走行シーンではない場合には、ステップS1に戻り、走行シーンの判定を繰り返す。一方、自車両の走行シーンが車線変更に適した走行シーンである場合には、ステップS4に進む。
ステップS4では、制御装置19は、車線変更制御機能により、対象範囲の検出が行われる。具体的には、制御装置19は、車線変更制御機能により、センサ11に含まれる前方カメラおよび後方カメラにより撮像された車両外部の画像情報や、前方レーダー、後方レーダー、および側方レーダーによる検出結果を含む走行情報に基づいて、自車両の周辺に存在する障害物を検出する。そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両の側方に位置し、かつ、障害物が存在しない範囲を、対象範囲として検出する。
なお、本実施形態の「対象範囲」とは、自車両が現在の速度で走行した場合の走行位置を基準とする相対的な範囲であり、自車両の周囲に存在する他車両が自車両と同じ速度で直進する場合には、対象範囲は変化しないこととなる。また、「自車両の側方」とは、自車両が車線変更する場合に、車線変更の目標位置(なお、この目標位置も自車両が現在の速度で走行した場合の走行位置を基準した相対位置となる。)としてとり得る範囲であり、その範囲(方向、広さ、角度など)は適宜設定することができる。以下に、図9A~図9Fを参照して、対象範囲OSの検出方法について説明する。なお、図9A~図9Fは、対象範囲OSを説明するための平面図である。
図9Aに示す例は、自車両V0が走行する車線L2に隣接する左右それぞれの隣接車線L1,L3に障害物である他車両V1が存在していないシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、この隣接車線L1,L3を対象範囲OSとして検出する。なお、路肩RSは、原則として車線変更を行うことができない範囲であるため、対象範囲OSからは除かれる。ただし、自車両V0の走行シーンが「緊急退避シーン」であり、緊急時に路肩RSへの停車などが許容されている道路においては、路肩RSを対象範囲OSに含めることができる(以下、同様。)。
図9Bに示す例は、自車両V0が走行する車線L2に隣接する左側の隣接車線L1には他車両V1が存在しないが、右側の隣接車線L3には、障害物となる他車両V1,V1が存在しているシーンである。ただし、隣接車線L3の、自車両V0が走行する車線L2に隣接するよりも前方の他車両V1と後方の他車両V1との間に、他車両V1,V1が存在しない範囲があるシーンである。制御装置19は、車線変更制御機能により、左側の隣接車線L1と、右側の隣接車線L3の他車両が存在しない範囲とを対象範囲OSとして検出する。
図9Cに示す例は、図9Bに示す例と同様に右側の隣接車線L3に他車両V1,V1が存在しない範囲があり、左側の隣接車線L1においても、前方および後方の他車両V1,V1の間に他車両が存在しない範囲があるシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、左側の隣接車線L1において他車両V1,V1が存在しない範囲と、右側の隣接車線L3において他車両V1,V1が存在しない範囲とを、対象範囲OSとして検出する。
図9Dに示す例は、図9Cに示す例と同様に左側の隣接車線L1に他車両V1,V1が存在しない範囲があり、右側の隣接車線L3には他車両は存在しないが、当該隣接車線L3に工事区間や事故車など、自車両V0が走行できない範囲RAが存在するシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、工事区間や事故車など、自車両V0が走行できない範囲RAを、対象範囲OSから除いて、対象範囲OSを検出する。自車両V0が走行できない範囲RAとしては、工事区間の他に、他車両V1が駐車または停車している範囲や、交通規制などにより車両の走行が禁止されている範囲などがある。なお、図9Dに示すように、工事区間などにより自車両V0が走行できない範囲RAが、たとえば隣接車線L3の半分以上(幅員方向において半分以上)である場合には、残りの半分未満の範囲を対象範囲OSから除外してもよい。
図9Eに示す例は、左側の隣接車線L1に他車両V1,V1が存在しない範囲があるが、右側の隣接車線L3には他車両V1が連続して走行しており、当該隣接車線L3に車線変更可能なスペースがないシーンである。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、右側の隣接車線L3には対象範囲OSを検出できないと判断する。
図9Fに示す例は、隣接車線L2から隣隣接車線L3への車線変更が、車線変更禁止マークRLにより禁止されているシーンである。このような道路において、制御装置19は、車線変更制御機能により、右側の隣接車線L3には対象範囲OSを検出できないと判断する。
なお、本実施形態の制御装置19は、車線変更制御機能により、左右方向のうち、自車両V0の走行シーンにおいて車線変更しようとする方向について、車線変更に適した方向の対象範囲OSを検出する。本実施形態では、各走行シーンにおいて車線変更に適した方向が、図2に示すテーブルに予め記憶されている。制御装置19は、車線変更制御機能により、図2に示すテーブルを参照して、自車両の走行シーンにおける「車線変更の方向」の情報を取得する。たとえば、自車両の走行シーンが「先行車両への追いつきシーン」である場合、車線変更制御機能により、図2を参照して、「車線変更の方向」として「追い越し車線側」を取得する。そして、車線変更制御機能により、取得した「車線変更の方向」において対象範囲OSを検出する。
また、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両V0の側方において、対象範囲OSを検出する。たとえば、左側の隣接車線L1及び右側の隣接車線L3に障害物が存在しない範囲が検出される場合でも、当該範囲が自車両V0の現在位置から所定距離以上離れた、自車両の後方側または前方側に位置する場合には、このような範囲に車線変更を行うことは困難であるため、対象範囲OSとしては検出しない。
図8Aに戻り、ステップS5では、車線変更制御機能により、車線変更の目標位置の設定が行われる。図10は、車線変更の目標位置の設定方法を説明するための図である。たとえば、制御装置19は、車線変更制御機能により、図10に示すように、ステップS4で検出した右側の隣接車線L3の対象範囲OS内の位置であって、自車両V0の現在位置よりも少し後方にずれた位置を、車線変更の目標位置として設定する(たとえば、図10に示す車両V01の位置)。車線変更の目標位置(自車両V01の位置)は、自車両V0が走行する位置に対する相対位置である。すなわち、自車両V0が現在の速度のまま走行した場合の位置を基準位置とした場合に、基準位置よりも少し後側方となる位置を、車線変更の目標位置として設定する。これにより、自車両V0を車線変更の目標位置に移動させる際に、自車両V0を加速させることなく、自車両V0を右側の隣接車線L3に車線変更することができる。
なお、制御装置19は、車線変更制御機能により、右側の隣接車線L3の対象範囲OS内に自車両V0が移動可能な範囲があることや、自車両V0の周囲に対象範囲OSに進入する可能性のある他車両V1が存在しないことなど、車線変更のし易さを加味して、車線変更の目標位置を設定してもよい。たとえば、車線変更制御機能により、対象範囲OSの周囲に存在する他車両V1が対象範囲OSの方向にウィンカーを出している場合や、対象範囲OS側に寄って走行している場合には、他車両V1が対象範囲OSに進入する可能性があると判断し、他車両V1が進入する可能性がより少ない対象範囲OS内の別の位置を、目標位置として設定してもよい。また、車線変更の目標位置を隣接車線L3の対象範囲OSのうち自車両V0よりも後方の位置に設定する例を示したが、車線変更の目標位置を隣接車線L3の対象範囲OSのうち自車両V0よりも前方の位置に設定してもよい。また、ステップS5においては、車線変更の目標位置に代えて、車線変更を行うための目標経路を設定してもよい。
図8Aに戻り、ステップS6では、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更の所要時間T1の予測を行う。たとえば、車線変更制御機能により、自車両の車速や加速度に基づいて、自車両の現在位置から車線変更の目標位置までの移動に要する時間を所要時間T1として予測する。そのため、たとえば、車線の幅員が広い場合、道路が混雑している場合、本例のように連続する車線変更を行う場合には、所要時間T1は長い時間で予測されることとなる。
ステップS7では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS6で予測した所要時間T1後における対象範囲OSを予測する。具体的には、車線変更制御機能により、自車両V0の周辺に存在する他車両V1の速度および加速度に基づいて、所要時間T1後の他車両V1の走行位置を予測する。たとえば、制御装置19は、車線変更制御機能により、他車両V1の位置情報を繰り返し検出することで、図11Aに示すように、他車両V1の速度ベクトルv0、加速度ベクトルa0、および位置ベクトルp0を演算する。
ここで、図11Aに示すように、自車両V0の進行方向をX軸、道路の幅員方向をY軸とした場合、他車両V1の速度ベクトルv0は、下記式(1)で表される。
v0=vx0i+vy0j ・・・(1)
なお、上記式(1)において、vx0は他車両V1の速度ベクトルv0のうちX軸方向の速度成分であり、vy0は他車両V1の速度ベクトルv0のうちY軸方向の速度成分である。また、iはX軸方向の単位ベクトルであり、jはY軸方向の単位ベクトルである(下記式(2),(3),(6)においても同様)。
また、他車両V1の加速度ベクトルa0は、下記式(2)に示すように求めることができ、他車両V1の位置ベクトルp0は、下記式(3)に示すように求めることができる。
a0=ax0i+ay0j ・・・(2)
p0=px0i+py0j ・・・(3)
なお、上記式(2)において、ax0は他車両V1の加速度ベクトルa0のうちX軸方向の加速度成分であり、ay0は他車両V1の加速度ベクトルa0のうちY軸方向の加速度成分である。また、上記式(3)において、px0は他車両V1の位置ベクトルp0のうちX軸方向の位置成分であり、py0は他車両V1の位置ベクトルp0のうちY軸方向の位置成分である。
そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、図11Bに示すように、所要時間T1後における他車両V1の位置ベクトルpT1を算出する。具体的には、車線変更制御機能により、下記式(4)~(6)に基づいて、所要時間T1後における他車両V1の位置ベクトルpT1を算出する。
pxT1=px0+vx0T1+1/2(ax0T1)2 ・・・(4)
pyT1=py0+vy0T1+1/2(ay0T1)2 ・・・(5)
pT1=pxT1i+pyT1j ・・・(6)
なお、上記式(4),(5)において、pxT1は、所要時間T1後の他車両V1の位置ベクトルpT1のうちX軸方向の位置成分であり、pyT1は、所要時間T1後の他車両V1の位置ベクトルpT1のうちY軸方向の位置成分である。また、vx0T1は所要時間T1後における他車両V1のX軸方向の移動速度であり、vy0T1は所要時間T1後における他車両V1のY軸方向の移動速度である。さらに、ax0T1は所要時間T1後における他車両V1のX軸方向における加速度であり、ay0T1は所要時間T1後における他車両V1のY軸方向における加速度である。
次に、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両V0の周囲に存在する全ての他車両V1について、所要時間T1後における位置を予測する。そして、車線変更制御機能により、所要時間T1後の他車両V1の位置に基づいて、所要時間T1後の対象範囲OSを予測する。また、車線変更制御機能により、所要時間T1後の車線規制状況、路上障害物の存在、隣接車線L3の閉塞の有無、および工事区間など自車両が移動できない区間の存在などをさらに加味して、所要時間T1後の対象範囲OSを予測する。なお、車線変更制御機能により、ステップS4と同様に、所要時間T1後の対象範囲OSを予測することができる。
ステップS8では、制御装置19は、車線変更制御機能により、要求範囲RRの情報の取得を行う。この要求範囲RRとは、自車両V0が車線変更を行う際に必要な大きさの範囲であり、少なくとも自車両V0が路面に占める大きさ以上の大きさを有する範囲である。本実施形態では、車線変更の目標位置に要求範囲RRを設定した場合に、隣接車線L3の対象範囲OSが要求範囲RRを含む場合に、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが存在すると判断し、隣接車線L3への車線変更が許可される。本実施形態では、制御装置19のメモリに要求範囲RRの形状、大きさを含む情報が記憶されており、車線変更制御機能により、制御装置19のメモリから要求範囲RRの情報を取得する。
ステップS9では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS7で予測した所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、ステップS8で取得した要求範囲RRに相当するスペースがあるか否かの判断が行われる。具体的には、車線変更制御機能により、図12Aに示すように、ステップS5で設定した車線変更の目標位置(自車両V01の位置)に要求範囲RRを設定する。そして、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに、要求範囲RRが含まれるか否かを判断する。
たとえば、図12Aに示す例では、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに、要求範囲RRの後方側が含まれていないため、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースがないと判断する。一方、図12Bに示すように、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに、要求範囲RRが含まれる場合には、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRに相当するスペースがあると判断する。所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRに相当するスペースがある場合には、図8Bに示すステップS11に進み、スペースがない場合には、ステップS10に進む。
なお、ステップS10では、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRが含まれず、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースが検出できないと判断されている。そのため、ステップS10では、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更の目標位置の変更が行われる。具体的には、車線変更制御機能により、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRを含むように、車線変更の目標位置を再設定する。たとえば、図12Aに示すように、要求範囲RRの後方部分が所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に含まれない場合には、車線変更の目標位置を前方に変更する。これにより、図12Bに示すように、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内の両方に要求範囲RRが含まれ、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースが検出できると判断されることとなる。なお、ステップS10の後は、ステップS6に戻り、再度、対象範囲OSの検出などが行われる。
一方、図8AのステップS9において、所要時間T1後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRが含まれると判断された場合には、図8Bに示すステップS11に進む。図5BのステップS11では、制御装置19は、車線変更制御機能により、1回目の車線変更制御の承諾要求処理を行う。このステップS11では、制御装置19は、ステップS1~S9の処理において、車線L2から車線L3への車線変更が可能な状況であると判断し、当該車線変更を実際に実行する前に、ドライバー自身に安全確認を促すために、当該ドライバーに対して、車線変更制御の実行を承諾するか否かの回答を要求する。これが、本発明に係る走行制御実行情報の提示に相当する。
図8Dは、ステップS11にて実行される車線変更制御の承諾要求及び承諾確認処理のサブルーチンを示すフローチャートである。図8DのステップS111では、制御装置19は、走行制御実行報提示機能により、第1走行制御実行情報をドライバーに提示する。すなわち、本例では、図4A~図4Dの各左図を参照して説明した第1走行制御実行情報を提示する。
図4Aの例では、制御装置19は、走行制御実行情報提示機能により、図3に示すように中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に、図4Aの左図に示すように、提示装置15のディスプレイに自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データを表示し、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V0の車線変更先と、OKマーク及びCancelマークと、を含む第1走行制御実行情報Td1aを表示する。また、この表示と共に、「車線変更を開始する場合には、周囲を確認してください」といったメッセージを、音声データによりスピーカーから出力する。このメッセージにより、周囲の確認を促すことにより、周囲確認不可行為の中止又は中断も促す。
また図4Bの例では、制御装置19は、走行制御実行情報提示機能により、中央の車線L2から最右端の車線L3への車線変更を開始する前に、図4Bの左図に示すように、提示装置15のディスプレイに自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データを表示し、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V0の車線変更先と、OKマーク及びCancelマークと、を含む第1走行制御実行情報Td1bを表示する。また、この表示と共に、「車線変更を開始する場合には、スマートフォンの操作を終了してください」といったメッセージを、音声データによりスピーカーから出力する。このメッセージにより、実行中の周囲確認不可行為を具体的に指摘し、その行為を中止するように促す。
また図4Cの例では、制御装置19は、走行制御実行情報提示機能により、車両接続用アプリケーション29の連系提示機能と連系して、ドライバーの携帯端末20の表示部21に、「車線変更を開始する場合には、スマートフォンの操作を終了してください」といったメッセージを含む第1走行制御実行情報Td1cを表示する。すなわち、携帯端末20を操作中のドライバーに対し、操作中の携帯端末20に第1走行制御実行情報Td1cを表示することにより、ドライバーに対して、その中止又は中断を促す。
また図4Dに示す例では、制御装置19は、走行制御実行情報提示機能により、車両接続用アプリケーション29の連系提示機能と連系して、ドライバーの携帯端末20の表示部21に、自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データと、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V0の車線変更先とを含む第1走行制御実行情報Td1dを表示する。また、この表示と共に、「車線変更を開始する場合には、スマートフォンの操作を終了してください」といったメッセージを、音声データによりスピーカーから出力する。すなわち、携帯端末20を操作中のドライバーに対し、操作中の携帯端末20に第1走行制御実行情報Td1dを表示することにより、その中止又は中断を促す。
次のステップS112では、制御装置19は、承諾確認機能により、ドライバーが周囲確認不可行為を行っているか否かを検出する。例えば、ドライバーがディスプレイで映像を試聴する類型A1の周囲確認不可行為を検出する場合には、車室内情報としてディスプレイの動作状態に関する情報を取得し、この情報によりディスプレイに映像が映し出されている場合には、類型A1の周囲確認不可行為が行われているものと判定する。
また、類型A2~A5の周囲確認不可行為を検出する場合には、制御装置19は、承諾確認機能により、車室内情報としてセンサ11の車内カメラ111の画像を取得し、取得した画像を画像認識処理などにより解析し、図6に示す類型テーブルと比較することにより、ドライバーが類型A2~A5の周囲確認不可行為を行っているかを検出する。
具体的には、ドライバーが通話を行う類型A2の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーがヘッドセットで通話を行っている状態、携帯端末20で通話を行っている状態などが検出された場合に、類型A2の周囲確認不可行為が行われていると判定する。なお、ヘッドセットや携帯端末20を用いた通話が、上述した車両接続用アプリケーション29の外部通信機能を利用して行われている場合には、車室内情報として、通信装置17の通信状況に関する情報を取得し、取得した通信状況に関する情報に基づいて、類型A2の周囲確認不可行為が行われていることを検出してもよい。
また、ドライバーが携帯端末20を操作する類型A3の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが携帯端末20を手に持って操作している状態などが検出された場合に、類型A3の周囲確認不可行為が行われていると判定する。なお、携帯端末20が車両接続用アプリケーション29の外部通信機能を利用して通信を行っている場合には、車室内情報として、通信装置17の通信状況に関する情報を取得し、取得した通信状況に関する情報に基づいて、類型A3の周囲確認不可行為が行われていることを検出してもよい。
ドライバーが読書を行う類型A4の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが本を手に持って読んでいる状態が検出された場合には、類型A4の周囲確認不可行為が行われていると判定する。さらに、ドライバーが飲食を行う類型A5の周囲確認不可行為ついては、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが食物や飲料を手に持って飲食している状態が検出された場合には、類型A5の周囲確認不可行為が行われていると判定する。
ステップS112において、ドライバーが類型A1~A5の周囲確認不可行為を行っていることが検出された場合には、次のステップS113を経由してステップS114に進む。ステップS114では、ドライバーが、第1走行制御実行情報に応じて周囲確認不可行為を中止又は中断したかを検出する。例えば、ドライバーがディスプレイで映像を試聴する類型A1の周囲確認不可行為については、車室内情報として取得したディスプレイの動作状態に関する情報が、映像を映し出している状態から、映像が停止された状態、あるいは映像が写し出されていない状態に変化した場合に、類型A1の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。
また、ドライバーが通話を行う類型A2の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーがヘッドセットや携帯端末20を耳から遠ざけた状態、あるいはヘッドセットや携帯端末20の電源をオフにする状態などが検出された場合には、類型A2の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。なお、ヘッドセットや携帯端末20を用いた通話が、車両接続用アプリケーション29の外部通信機能を利用して行われている場合には、車室内情報として、通信装置17の通信状況に関する情報を取得し、取得した通信状況に関する情報に基づいて、類型A2の実行状況について検出する。
ドライバーが携帯端末20を操作する類型A3の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが携帯端末20の電源をオフまたはスリープさせる状態、プレイ中のゲームをポーズさせた状態、携帯端末20のカバーを閉じる状態、携帯端末20を車載ホルダにセットする状態などが検出された場合には、類型A3の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。なお、携帯端末20が車両接続用アプリケーション29の外部通信機能を利用して通信を行っている場合には、車室内情報として、通信装置17の通信状況に関する情報を取得し、取得した通信状況に関する情報に基づいて、類型A3の周囲確認不可行為の実行状況について検出する。
ドライバーが読書を行う類型A4の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが本を閉じる状態、本をダッシュボードや助手席などに置く状態などが検出された場合に、類型A4の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。ドライバーが飲食を行う類型A5の周囲確認不可行為については、車内カメラ111で撮影した画像から、ドライバーが食物をダッシュボードや助手席に置いたり、飲料をドリンクホルダに戻したりしている状態が検出された場合に、類型A5の周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。
ステップS114において、ドライバーが類型A1~A5の周囲確認不可行為を中止又は中断したことが検出された場合には、次のステップS115に進む。ステップS115では、制御装置19は、走行制御実行報提示機能により、第1走行制御実行情報に対するドライバーの承諾結果を示す第2走行制御実行情報をドライバーに提示する。すなわち、本例では、ドライバーが第1走行制御実行情報に応じて周囲確認不可行為を中止し、走行制御の実行又は変更に承諾したと判定された場合には、図4A、図4Bの各右図を参照して説明した第2走行制御実行情報を提示装置15により提示する。
図4Aの右図に示す例では、制御装置19は、走行制御実行情報提示機能により、提示装置15のディスプレイに自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データを表示し、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V0の車線変更先と、濃度が濃くされたOKマークと、を含む第2走行制御実行情報Td2aを表示する。また、この表示と共に、「右方向への車線変更を開始します」といったメッセージを、音声データによりスピーカーから出力する。なお、図4Bの右図に示す例は、図4Aの右図に示す例と同様の構成であるため、詳しい説明は省略する。
なお、図4C及び図4Dに示す例は、ドライバーの携帯端末20に走行制御実行情報を提示する例であるため、ドライバーが携帯端末20の操作を中止又は中断した場合、その携帯端末20に第2走行制御実行情報を提示することはできない、そのため、例えば、自車両V0の提示装置15に第2走行制御実行情報を提示することにより、ドライバーに自動走行制御の変更の承諾結果を報知してもよい。
次に、図8DのステップS113に戻って説明する。ステップS113において、ドライバーによる周囲確認不可行為が検出されなかった場合には、ステップS116に進む。このステップS116では、制御装置19は、走行制御実行情報提示機能により、ドライバーが走行制御の変更に対する承諾について入力を行えるようにするために、第3走行制御実行情報を提示装置15に提示する。
第3走行制御実行情報には、例えば、図4Aの左図に示す第1走行制御実行情報Td1aと同様に、提示装置15のディスプレイに自車両V0と、車線L1、L2,L3を含む前方視界の画像データを表示し、矢印などの視覚パターンを用いた自車両V0の車線変更先と、OKボタン及びCancelボタンとが表示される。OKボタン及びCancelボタンは、提示装置15のディスプレイが備えるタッチパネルによってタッチ操作が可能となっている。また、この第3走行制御実行情報の提示とともに、「車線変更を開始する場合には、OKボタンを押してください」といったメッセージを音声データによってスピーカーから出力する。
次のステップS117では、制御装置19は、承諾確認機能により、ドライバーがOKボタンを操作したか否かを検出する。ドライバーがOKボタンを操作した場合には、ステップS115に進む。また、ドライバーがCancelボタンを操作した場合には、ステップS119に進み、車線変更が中止される。
次に、図8DのステップS114に戻って説明する。ステップS114において、ドライバーが周囲確認不可行為を中止又は中断しなかった場合には、ステップS118に進む。このステップS118では、制御装置19は、承諾確認機能により、ドライバーが行っている周囲確認不可行為に設定されている検出時間の計測を行う。すなわち、検出時間が経過するまではステップS114に戻り、ドライバーが周囲確認不可行為を中止又は中断するのを検出する。また、検出時間が経過した場合には、ドライバーにより車線変更が承諾されなかったものと判定して、次のステップS119に進み、車線変更を中止する。
以上で説明したように、図8Dに示すステップS11のサブルーチンで、ドライバーDが車線変更について承諾した否かが判定され、その判定終了後、図8Bに示すステップS12に進む。
図8Bに戻り、ステップS12では、制御装置19は、ステップS11の承諾要求に対して、ドライバーDが車線L2から車線L3への車線変更を承諾した場合には、ステップS13に進み、一方、ドライバーが車線変更を承諾しない場合には、車線変更制御を実行することなくステップS1に戻る。
ステップS13では、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更の制限時間Zを取得する。本実施形態では、図2に示すように、自車両が各走行シーンにおいて車線変更が困難となる地点に接近するまでの時間が、制限時間Zとしてテーブルに記憶されている。制御装置19は、車線変更制御機能により、図2に示すテーブルを参照し、自車両の走行シーンにおける制限時間Zを取得する。たとえば、図2に示す例のうち、「先行車両への追いつきシーン」においては、制限時間が、先行車両までの到達時間-α秒として記憶されている。この場合、制御装置19は、走行制御機能により、図2に示すテーブルを参照して、先行車両までの到達時間を算出し、算出した先行車両までの到達時間-α秒を制限時間Zとして取得する。なお、αは所定の秒数(たとえば5秒など)であり、走行シーンごとに適宜設定することもできる。たとえば、先行車両までの到達時間が30秒であり、αが5秒である場合には、車線変更の制限時間Zは25秒となる。
ステップS14では、車線変更制御の開始処理が行われる。この車線変更制御の開始処理において、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更制御を開始する開始タイミングLを設定する。開始タイミングLの設定方法は、特に限定されず、たとえば以下の(1)~(8)に示す方法で設定することができる。すなわち、(1)固有のタイミングを、車線変更制御の開始タイミングLとして設定する。たとえば、ドライバーが車線変更を承諾してから所定の時間後(たとえば6秒後)のタイミングを、車線変更制御の開始タイミングLとして設定する。(2)図2に示す車線変更の必要度に基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、図2に示すテーブルから自車両の走行シーンにおける車線変更の必要度を取得し、車線変更の必要度が所定値以上である場合には、車線変更の必要度が所定値未満である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(3)図2に示す車線変更の制限時間Zに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、図2に示すテーブルから自車両の走行シーンにおける車線変更の制限時間Zを取得し、車線変更の制限時間Zが所定時間Zth未満である場合には、車線変更の制限時間Zが所定時間Zth以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(4)車線変更の所要時間T1に基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、図8AのステップS6で予測した車線変更の所要時間T1が所定時間Tth未満である場合には、車線変更の制限時間Zが所定時間Tth以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。
(5)車線変更の制限時間Zおよび所要時間T1に基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。具体的には、車線変更の所要時間T1と、車線変更の制限時間Zとから、余裕時間Yを求め(たとえば、制限時間Z-所要時間T1=余裕時間Y)、余裕時間Yが所定時間Yth未満である場合には、余裕時間Yが所定時間Yth以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(6)ドライバーが運転に関心を示している度合である注意度(傾倒度)Oに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。たとえば、車載マイクやハンズフリー装置などの入力装置16により、ドライバーの音声を検出することで、ドライバーが会話やハンズフリーで電話を行っているかを判断し、ドライバーが会話やハンズフリーで電話を行っている場合には、ドライバーの注意度0は閾値Oth未満と判断し、ドライバーの注意度が閾値Oth以上である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを遅いタイミングに設定する。
(7)交通混雑度Kに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。たとえば、先行車両との車間距離、後方車両との車間距離、周辺車両の数、VICS(登録商標)情報に含まれる混雑度、法定速度と自車両の実際の車速との乖離度に基づいて、交通混雑度Kを判断し、先行車両との車間距離が短いほど、後方車両との車間距離が短いほど、周辺車両の数が多いほど、VICS情報に含まれる混雑度が高いほど、または、法定速度と自車両の実際の車速との乖離度が大きいほど、交通混雑度Kを高く判断し、交通混雑度Kが所定値Kth以上である場合には、交通混雑度Kが所定値Kth未満である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。(8)車線変更の尤度Bに基づいて、車線変更制御の開始タイミングLを設定する。たとえば、目的地の設定の有無、先行車両との車間距離に基づいて、自車両が車線変更を行うと確信できる度合を尤度Bとして求めることができる。具体的には、目的地が設定されており、自車両が目的地に到達するために、車線変更を行う必要がある場合には、車線変更の尤度Bが閾値Bth以上であると判断する。また、先行車両との車間距離が所定距離未満である場合には、ドライバーが車線変更を希望すると判断し、車線変更の尤度Bを閾値Bth以上であると判断する。そして、車線変更の尤度Bが閾値Bth以上である場合には、車線変更の尤度Bが閾値Bth未満である場合と比べて、車線変更制御の開始タイミングLを早いタイミングに設定する。以上のように、車線変更制御の開始タイミングLが設定される。なお、上述した(1)~(8)は、開始タイミングLの設定方法の一例であり、上述した構成に限定されるものではない。また、開始タイミングLを設定したら、制御装置19は、車線変更制御の開始前に、車線変更を開始する旨の車線変更情報を提示する予告提示タイミングPを設定してもよい。
制御装置19は、設定された開始タイミングLになったら、車線変更制御機能により、車線変更制御を開始する。具体的には、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両が、図8AのステップS5またはステップS10で設定した車線変更の目標位置まで移動するように、駆動制御装置18にステアリングアクチュエータの動作の制御を開始させる。なお、車線変更制御が開始されると、車線変更制御の実行中である旨の車線変更情報の提示を提示装置15に行ってもよい。
図8CのステップS15~S17では、図8AのステップS4,S6~S7と同様に、現在の対象範囲OSと自車両V0が、1回目の車線変更(図10の車線L2から車線L3への車線変更)に係る目標位置に移動する所要時間T2後の対象範囲OSの検出が行われる。そして、ステップS18において、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS17で予測した所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、ステップS8で取得した要求範囲RRに相当するスペースがあるか否かの判断を行う。そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、1回目の車線変更の目標位置に要求範囲RRを設定し、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSが、要求範囲RRを含む場合には、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがあると判断し、ステップS20に進む。一方、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがないと判断した場合には、ステップS19へ進む。なお、ステップS19の処理及びこれに続く処理は、図8Eを参照して後述する。
ステップS20では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS14で1回目の車線変更制御を開始してから、ステップS13で取得した制限時間Zを経過したか否かを判断する。1回目の車線変更制御を開始してからの経過時間S1が制限時間Zを超えた場合、すなわち、車線変更制御を開始してから制限時間Zが経過しても1回目の車線変更の目標位置に到達できないには、ステップS22に進む。このステップS22では、制御装置19は、車線変更制御機能により、1回目の車線変更制御の中止処理を行う。具体的には、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更制御を中止する旨の情報を、ドライバーに報知する。たとえば、提示装置15を介して、「タイムアウトのため車線変更を中断します」とのメッセージをドライバーに報知した後、車線変更制御を終了する。なお、車線変更制御の中止処理においては、自車両の幅員方向における走行位置を、車線変更制御の終了時の位置のままとしてもよいし、車線変更制御開始時の位置まで戻してもよい。車線変更制御開始時の位置まで戻す場合には、たとえば、「タイムアウトのため元の位置に戻ります」などのメッセージをドライバーに報知してもよい。
一方、ステップS20において、車線変更制御を開始してからの経過時間S1が制限時間Zを超えていない場合には、ステップS21に進む。ステップS21では、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両が1回目の車線変更の目標位置に到達したか否かを判断する。自車両が1回目の車線変更の目標位置に到達した場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、車線変更制御機能による1回目の車線変更制御が完了したため、1回目の車線変更が完了した旨の車線変更情報が提示装置15に提示される。なお、ステップS21において、自車両が1回目の車線変更の目標位置に到達していないと判断された場合には、ステップS15に戻り、車線変更制御を継続する。
さて、図8CのステップS18において、所要時間T2後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがないと判断された場合には、ステップS19に進む。すなわち、車線変更制御を開始するステップS9の時点においては隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースは存在したが、1回目の車線変更制御の開始後に、隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースがなくなった場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、車線変更において自車両が跨ぐレーンマーク(以下、対象レーンマークともいう。)と、自車両との幅員方向における位置関係の検出が行われる。
たとえば、図13は、自車両V0が、図において矢印で示す方向に(図中、左側の車線から右側の車線へと)車線変更を行うシーンを例示する。この場合、制御装置19は、車線変更制御機能により、図13(A)に示すように、自車両V0の一部も対象レーンマークCLを跨いでいない状態、図13(B)に示すように、自車両V0の一部が対象レーンマークCLを跨いでいるが自車両V0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいない状態、図13(C)に示すように、自車両V0の全体が対象レーンマークCLを跨いでいないが自車両V0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいる状態、図13(D)に示すように、自車両V0の全体が対象レーンマークCLを跨いでいる状態のいずれの状態であるかを判断する。
図8Eに示すステップS51では、制御装置19は、車線変更制御機能により、図8CのステップS19で判定した対象レーンマークCLと自車両V0との幅員方向における位置関係に基づいて、車線変更を中止または継続するための制御処理を行う。具体的には、対象レーンマークCLと自車両V0との幅員方向における位置関係に基づいて、(a)車線変更を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法、(b)車線変更を中止または継続した後の制御、(c)車線変更を中止または継続した場合の自車両V0の走行位置を決定する。
たとえば、(a)車線変更を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法として、(a1)時間制限なしでドライバーに車線変更の中止または継続の選択肢を選択させるための情報を提示し、ドライバーがいずれかの選択肢を選択した場合に、ドライバーが選択した選択肢の制御(車線変更の中止または継続)を実行する、(a2)時間制限つきでドライバーに車線変更の中止または継続の選択肢を選択させるための情報を提示し、制限時間内にドライバーがいずれかの選択肢を選択した場合には、ドライバーが選択した選択肢の制御(車線変更の中止または継続)を実行し、制限時間内にドライバーがいずれの選択肢も選択しない場合には、車線変更制御の中止および継続のうち予め定められた選択肢の方の制御(デフォルト制御)を実行する、(a3)自動で車線変更の中止または継続を実行し、ドライバーには自動で実行した車線変更の中止または継続をキャンセルする方法を明示する、および、(a4)自動で車線変更の中止または継続を実行し、ドライバーには自動で実行した車線変更の中止または継続をキャンセルする方法を明示しない、の4つの方法のいずれかを行う。
また、(b)車線変更の中止または継続後の制御内容として、(b1)車線変更を中止するとともに自動走行制御も中止する、(b2)車線変更制御のみを解除し自動走行制御は継続する、(b3)隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出されるまで、車線変更制御を中断して待機状態とし、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出された場合に、車線変更制御を再開する、の3つの制御のいずれかを実行する。
さらに、(c)車線変更制御を中止または継続した場合の自車両の走行位置として、(c1)車線変更開始前の位置まで自車両を戻す、(c2)車線変更開始前に自車両が走行していた車線のうち対象レーンマークCLの近傍の位置まで自車両を移動させる、(c3)現在位置を維持する、の3つの位置調整のいずれかを実行する。
そして、制御装置19は、車線変更制御機能により、対象レーンマークCLと自車両V0との幅員方向における位置関係に基づいて、(a)車線変更を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法、(b)車線変更の中止または継続後の制御内容、(c)車線変更を中止または継続した場合の自車両の走行位置を、適宜組み合わせて、車線変更の中止または継続のための制御処理を行う。
たとえば、図13(A)に示すように、自車両V0が対象レーンマークCLを跨いでいない場合には、(a4)車線変更の中止を自動で実行し、ドライバーには車線変更の中止をキャンセルする方法を明示しない構成とすることができる。またこの場合、車線変更制御機能は、(b1)車線変更の中止とともに自動走行制御も中止し、(c1)車線変更開始前の位置まで自車両を戻す構成とすることができる。また、このような場合において、「車線変更スペースがなくなりそうなため、もとの位置に戻ります。」、「もとの位置に戻ったら自動走行制御をキャンセルします。」のように、これから行う車線変更中止の制御内容をドライバーに報知することができる。この場合、処理は図8CのステップS23に進み、車線変更制御を終了する。
また、図13(B)に示すように、自車両V0の一部は対象レーンマークCLを跨いでいるが、自車両V0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいない場合には、(a3)車線変更の中止を自動で実行し、ドライバーには車線変更の中止をキャンセルする方法を明示する構成とすることができる。またこの場合、車線変更制御機能は、(c2)車線変更開始前に自車両が走行していた車線のうち対象レーンマークCLの近傍の位置に自車両V0を移動させた後、(b2)車線変更制御のみを中止し、自動走行制御を継続する構成とすることができる。また、このような場合において、「車線変更スペースがなくなりそうなため、もとの車線内に戻ります。」、「もとの位置に戻ったら以前の自動走行制御を継続します。」のように、これから行う車線変更中止の制御内容をドライバーに報知することができる。また、「車線変更を継続したい場合は以下のボタンを押してください。」とのメッセージとともに、車線変更を継続するためのボタンをディスプレイに表示することもできる。ドライバーが車線変更を継続するためのボタンを押下した場合には、処理は図8EのステップS52に進み、一方、ドライバーが車線変更を継続するためのボタンを押下しない場合には、処理は図8CのステップS23に進む。
さらに、図13(C)に示すように、自車両V0の全体は対象レーンマークCLを跨いでいないが自車両V0の中心線VCは対象レーンマークCLを跨いでいる場合には、(a4)車線変更の継続を自動で実行し、ドライバーには車線変更の継続をキャンセルする方法を明示しない構成とすることができる。またこの場合、(c3)自車両の走行位置を現在位置のまま維持して待機し、(b3)隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースを再度検出するまで車線変更を中断し、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出された場合に、車線変更制御を再開する構成とすることができる。たとえば、この場合、「車線変更スペースがなくなりそうなため、現在の場所で待機します。」、「車線変更スペースが空きそうな場合は車線変更制御を再開します。」のように、これから行う車線変更継続の制御内容をドライバーに報知することができる。この場合、処理は図8EのステップS52に進む。
また、図13(D)に示すように、自車両V0の全体が対象レーンマークCLを跨いでいる場合には、(a4)車線変更の中止を自動で実行し、ドライバーには車線変更制御の中止をキャンセルする方法を明示しない構成とすることができる。またこの場合、(c3)自車両の走行位置を現在位置のまま維持し、(b2)車線変更制御のみを中止して、自動走行制御を継続する構成とすることができる。この場合、「車線変更スペースがなくなりそうなため、現在の場所で待機します。」、「以前の自動走行制御を継続します。」のように、これから行う車線変更中止の制御内容をドライバーに報知することができる。この場合、処理は図8CのステップS23に進み、走行制御処理を終了する。
なお、対象レーンマークCLと自車両V0との幅員方向における位置関係は、図13(A)~(D)に示す4つに限定されず、5以上としてもよいし、3以下としてもよい。また、それぞれの位置関係に対する制御の組み合わせは、上述した組み合わせに限定されず、(a)車線変更制御を中止または継続する際のドライバーへの情報の提示方法、(b)車線変更制御の中止または継続後の制御内容、(c)車線変更を中止または継続した場合の自車両の走行位置をそれぞれ適宜組み合わせることができる。
次に、図8EのステップS51において、車線変更の継続が実行された場合について説明する。ステップS51において車線変更の継続が開始されると、ステップS52に進む。ステップS52では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS51で車線変更制御が待機状態となってからの経過時間S2の測定を行う。すなわち、本実施形態では、ステップS51で車線変更が継続されると、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが再度検出されるまで、車線変更は中断され、車線変更制御は待機状態となる。ステップS52では、このように車線変更制御の待機が開始されてからの経過時間S2が測定される。
ステップS53では、制御装置19は、車線変更制御機能により、自車両が現在位置から車線変更の目標位置に移動するまでの所要時間T3の予測を行う。なお、所要時間T3は、図8AのステップS6と同様の方法で予測することができる。
ステップS54では、制御装置19は、車線変更制御機能により、ステップS52で測定された経過時間S2と、ステップS53で予測された所要時間T3との合計時間(S2+T3)が、図8BのステップS13で取得した制限時間Zを超えるか否かの判断を行う。合計時間(S2+T3)が制限時間Zを超える場合には、ステップS55に進み、車線変更制御機能により、車線変更制御の待機状態を解除し、車線変更開始前の自車両の走行位置まで自車両を移動する。その後、図8CのステップS23に進み、車線変更制御を終了する。一方、合計時間(S2+T3)が制限時間Zを超えない場合には、ステップS56に進む。
ステップS56では、制御装置19は、車線変更制御の待機状態を継続し、続くステップS57~S58では、図8AのステップS4,S7と同様に、現在の対象範囲および所要時間T3後の対象範囲を検出する。そして、ステップS59では、図8AのステップS9と同様に、ステップS58で予測した所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OS内に、要求範囲RRに相当するスペースがあるか否かを判断する。ステップS59において、制御装置19は、車線変更の目標位置に要求範囲RRを設定し、所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OSが要求範囲RRを含む場合に、所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OS内に要求範囲RRに相当するスペースがあると判断し、ステップS60に進む。ステップS60では、隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースが検出されているため、制御装置19は、車線変更制御機能により、車線変更制御の待機状態を解除し、車線変更制御を再開する。この場合の処理は、図8CのステップS15に戻る。一方、ステップS59において、所要時間T3後の隣接車線L3の対象範囲OSに要求範囲RRに相当するスペースがないと判断された場合には、ステップS61に進み、車線変更制御の待機状態を継続してステップS52に戻る。
次に、上述した図3の左図に示す車線L2から車線L3への車線変更が実行されたのち、図3の右図に示す車線L3から車線L2への車線変更制御について、図8A~図8Eを参照しながら説明する。図3の左図に示す車線変更が実行されると、図8CのステップS23の処理を実行したのち、図8AのステップS1に戻る。そして、ステップS1~S10の各処理が、図3の右図に示す車線変更制御について実行される。なお、これらの処理は、上述した図3の左図に示す車線変更制御の処理と同じであるため、その説明は省略する。
図8BのステップS11では、制御装置19は、車線変更制御機能により、今回(2回目)の車線変更制御の承諾要求及び承諾確認処理を行う。このステップS11では、制御装置19は、ステップS1~S9の処理において、車線L3から車線L2への車線変更が可能な状況であると判断し、当該車線変更を実際に実行する前に、ドライバー自身に安全確認を促すために、当該ドライバーに対して、車線変更制御の実行を承諾するか否かの回答を要求する。なお、ステップS11は、上述した図7DのステップS111~S124の処理と同じであるため、その説明は省略する。
図8BのステップS13から図8CのステップS23までの処理は、上述した図3の左図に示す車線変更制御の処理と同じであるため、その説明は省略するが、これらの処理を実行することで、図3の右図示す車線L3から車線L2への車線変更が完了する。
以上のように、本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両V0が自動走行制御を実行又は変更する前に、自動走行制御の実行又は変更に承諾するか否かの第1走行制御実行情報をドライバーに提示し、ドライバーが自車両V0の周囲確認ができない行為、すなわち周囲確認不可行為を行っているか否かを検出する。ドライバーが自車両V0の周囲確認ができない行為を行っていることが検出された場合に、第1走行制御実行情報の提示に応じて、車両の周囲確認ができない行為を中止又は中断したことを検出し、ドライバーが車両の周囲確認ができない行為を中止又は中断したことが検出された場合には、ドライバーにより自動走行制御の実行又は変更が承諾されたものと判定している。すなわち、ドライバーは、自動走行制御実行情報で提示された自動走行制御の実行又は変更について承諾する際に、承諾を示す特別な操作や動作などを行う必要がなく、実行中の周囲確認不可行為を中止又は中断するだけで承諾を示すことができ、承諾動作に伴うドライバーの煩わしさを低減することが可能である。また、ドライバーが周囲確認不可行為を中止又は中断しない場合には、自動走行制御の変更の非承諾と判定するので、ドライバーが周囲確認不可行為を行っている状態で自動走行制御が実行又は変更されることはない。したがって、自動走行制御の安全性がより一層高まる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、ドライバーが行っている自車両V0の周囲確認ができない行為を指摘し、自車両V0の周囲確認ができない行為を中止又は中断するよう促す情報を提示している。すなわち、ドライバーが無意識に周囲確認不可行為を行っているような場合、単に自動走行制御の実行又は変更を提示するだけでは、ドライバーは自身が周囲確認不可行為を行っていることに気が付かず、周囲確認不可行為の中止又は中断に時間がかかる可能性がある。しかしながら、ドライバーが行っている周囲確認不可行為を指摘して中止又は中断するよう促すことで、このような問題を解決することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両V0の通信装置17と、車室内にあるドライバーの携帯端末20とで通信を行い、ドライバーが車両の周囲確認ができない行為として、携帯端末20を操作している場合に、通信装置17を介して携帯端末20から第1走行制御実行情報を提示している。これにより、携帯端末20を操作しているドライバーに第1走行制御実行情報を確実に通知することができるので、ドライバーは、自動走行制御の実行又は変更に承諾する場合には、すぐに携帯端末20の操作を中止又は中断することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両V0の通信装置17と携帯端末20との通信状況に関する情報を取得し、記通信状況に関する情報に基づいて、ドライバーが携帯端末20の操作していることと、ドライバーが携帯端末20の操作を中止又は中断したこととを検出している。これにより、ドライバーが携帯端末20を操作しているのか否かが通信状況に基づいて明確に判定し、ドライバーによる携帯端末20の操作状況が誤検出されるのを防ぐことができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両V0の車室内に関する車室内情報を取得し、車室内情報に基づいて、ドライバーが自車両V0の周囲確認ができない行為を行っていることと、ドライバーが車両の周囲確認ができない行為を中止又は中断したこととを検出している。これにより、車室内で行われているドライバーの様々な行為から、周囲確認不可行為を検出することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両V0の車室内にドライバーの行動を監視する行動監視装置である車内カメラ111を設置し、車内カメラ111から取得した監視情報である画像に基づいて、ドライバーが自車両V0の周囲確認ができない行為を行っていることと、ドライバーが自車両V0の周囲確認ができない行為を中止又は中断したこととを検出している。これにより、車室内で行われているドライバーの様々な行為から、周囲確認不可行為を検出することができる。
また本実施形態に係る車両の走行制御装置1及び走行制御方法によれば、自車両V0の周囲確認ができない行為は複数種類に類型化されており、自車両V0の周囲確認ができない行為の中止又は中断を検出するための検出時間は類型毎に設定されている。これにより、行為の中断又は中止に時間がかかる周囲確認不可行為や、高い集中力が必要で中断又は中止が遅れがちになる周囲確認不可行為の検出時間を長くしたり、行為の中断又は中止が容易な周囲確認不可行為や、高い集中力が不要な周囲確認不可行為の検出時間を短くするなど、周囲確認不可行為の内容、属性に応じて最適な検出時間を設定することができる。したがって、ドライバーが周囲確認不可行為を行っているか否かが、その行為に応じた最適な検出時間内で判定することができるので、自動走行制御の変更に遅れなどが生じず、自動走行制御の安全性がより一層高まる。
なお、自動走行制御が可能な車両には、自動走行制御中の車室内でドライバーが寛げるようにするために、車載機器14の位置や動作状態などを変更できるようにした車両が存在する。例えば、自動走行制御の実行中にドライバーが運転席で寛げるようにするために、ステアリングを運転操作が可能な所定位置から、ドライバーの邪魔にならないように収納される収納位置へ移動可能にしたものがある。また、自動走行制御の実行中にドライバーが運転席で寛げるようにするために、座席シートを後ろに下げたり、リクライニングできるようにしたものがある。さらには、自動走行制御の実行中にドライバーが運転席で寛げるようにするために、電子ミラーをオフ状態にすることが可能なものがある。なお、電子ミラーとは、車両の周囲を撮影する撮影装置と、この撮影装置で撮影された画像を表示する表示装置とから構成されており、従来のルームミラーやサイドミラーに代わりに用いられる。
上記のような車両においては、ステアリングが邪魔にならないように収納位置に移動させている状態、座席シートを後ろにスライドさせ、あるいはリクライニングさせている状態、電子ミラーをオフにしている状態などは、ドライバーが車両の走行に関与しないようにして寛いでおり、車両の周囲確認ができない行為を行っている状態、すなわち、周囲確認不可行為を行っている状態に相当する。したがって、これらの行為を類型A1~A5、あるいは新たな類型として分類し、自動走行制御を変更する際の承諾の判定に利用してもよい。
ステアリング、座席シート又は電子ミラーの状態からドライバーの周囲確認不可行為を検出する場合には、制御装置19は、車室内情報取得機能により、ステアリングの位置や、座席シートのスライド位置及びリクライニング位置、電子ミラーのオン/オフ状態などに関する情報を取得する。そして、制御装置19は、承諾確認機能により、ステアリングが収納位置にある場合、座席シートが後ろにスライドされあるいはリクライニングされている場合、電子ミラーがオフにされている場合に、ドライバーによって周囲確認不可行為が行われていると判定する。また、制御装置19は、承諾確認機能により、ステアリングが運転操作可能な位置にある場合、座席シートのスライド位置及びリクライニングが元の位置に戻されている場合、電子ミラーがオンにされた場合に、ドライバーによって周囲確認不可行為が中止又は中断されたものと判定する。