JP7118909B2 - 熟成風味を有する豚肉加工食品の製造方法 - Google Patents

熟成風味を有する豚肉加工食品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、豚肉加工食品の製造方法に関し、より具体的には、熟成風味を有する豚肉加工食品を短縮化した工程で製造する方法に関する。本発明はまた、上記本発明の方法によって製造された、熟成風味を有する豚肉加工食品に関する。
ソーセージ等の豚肉加工食品の製造において、原料となる豚肉に食塩等の塩せき剤を加えて混ぜ、低温でじっくりねかす「熟成」工程を含むことが多い。一定期間熟成させることで、ハムやソーセージ、ベーコン等に特有の風味を十分醸成させることができる。
特定JAS規格が定義付ける熟成ソーセージの熟成期間は「3日間以上」とされているが、時間だけでなく、熟成には温度、湿度などの管理も重要であり、一定の品質を有するソーセージを大量生産するには専用熟成庫(冷蔵庫)が必要となってくる。
一方、豚肉を原料とする加工食品の風味は原料肉自体の風味とは異なっており、消費者に好まれる風味を有する加工食品の製造にあたっては、官能評価に依存する状況であった。すなわち、個々の食品特有の風味に寄与する成分については特定されておらず、製造条件によってどのような風味が付与されるのかもあいまいなままであった。
そこで、特定JAS規格で定義されるソーセージのような熟成風味を有する豚肉加工食品を、熟成風味に寄与する成分量を考慮しながら簡略化された工程で提供することが望まれていた。
本発明者等は、豚肉加工食品の熟成風味に寄与する成分を探索し、熟成風味の発現要因について検討し、その結果、特定の成分が特定の含量で含まれる場合に好ましい熟成風味が得られることを見出した。そして、そのような組成の食品を得るための製法について種々検討を重ね、本発明に到った。
すなわち、本発明は以下を提供するものである。
1. 豚赤身肉と豚脂とを含む豚肉加工食品の製造方法であって、
(i)豚脂の一部又は全部を低温で酸化させる工程、及び
(ii)酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきする工程
を含む、上記製造方法。
2. 工程(i)が、0~4℃で6時間~3日間酸化させる工程である、上記1記載の方法。
3. 熟成工程を含まない、上記1又は2記載の方法。
4. 工程(i)で酸化させる豚脂が、原料肉中の豚脂の10~100重量%の範囲である、上記1~3のいずれか記載の方法。
5. 工程(i)が、豚脂と豚赤身肉とを混合して実施するものであり、該工程での豚赤身肉/豚脂(meat/fat、M/F)比が0.3~0.7の範囲内である、上記1~4のいずれか記載の方法。
6. 加工食品中における(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)の総含量が0.05~0.27ppmの範囲内である、上記1~5のいずれかに記載の方法。
7. 工程(i)に供する前の豚脂の過酸化物価(POV)が5meq/kg未満である、上記1~6のいずれか記載の方法。
8. 上記1~7のいずれか記載の方法によって製造された、熟成風味を有する豚肉加工食品。
9. (E)-2-オクテナール、1-オクテン-3-オール、メチオナール、(E,E)-2,4-ノナジエナール、(E,Z)-2,4-デカジエナール、及び(E,E)-2,4-デカジエナールをそれぞれ含有し、それらの総含量が食品中0.05~0.27ppmの範囲内である、熟成風味を有する豚肉加工食品。
本発明により、塩せき後の熟成期間を設けなくても塩せき熟成風味が付与できるため、専用熟成庫を使用する必要がなく、また製造工程の短縮化がもたらされる。
単一成分での評価でにおい強度が高い成分を中心に分画した画分1~6のGCクロマトグラム上での位置を示す。縦軸はシグナル強度、横軸は時間(分)を示す。 熟成条件(温度、酸素の有無、熟成日数)の違いによる6種の成分の総含量を示す。 原料肉として豚赤身肉のみを含む試験区1、及び原料肉として豚赤身肉と豚脂とを含む試験区2における熟成風味についての官能評価の評価点を、原料肉として豚赤身肉と豚脂とを用い、塩せき熟成を行っていない製品に対する相対評価の結果として示す。 試験区3及び試験区4における熟成風味及び酸化臭についての官能評価の評価点を、塩せき熟成を行っていない製品に対する相対評価の結果として示す。 豚脂の25%を酸化させた豚脂と置換した場合(A)と、10%を酸化させた豚脂と置換した場合(B)とで、コントロールと識別できるか否かを3点識別法で評価した結果を示す。*:有意差あり、n.s.:有意差なし。
本発明は、豚赤身肉と豚脂とを含む豚肉加工食品の製造方法であって、
(i)豚脂の一部又は全部を低温で酸化させる工程、及び
(ii)酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきする工程
を含む、上記製造方法を提供する。
本発明によって、従来の製造方法において使用されていた熟成工程を経なくても、好適な熟成風味を有する加工食品を提供することができる。
本明細書において、豚肉加工食品とは、製造工程中に塩せきを行い、更に熟成工程を含むことがある食品をいい、具体的には、ハム、ソーセージ、ベーコン、サラミ等が含まれる。
本明細書において、「熟成」とは、例えば牛肉等の生肉及び魚等で用いられる熟成とは異なり、上記の塩せき工程の後に行われる熟成工程でもたらされるものであり、従って、「塩せき熟成」と記載することもできる。また、本明細書において「風味」とは、喫食時の口腔内から鼻へ抜ける香り(レトロネーザルアロマ)を意味するものとする。
本発明者等はまず、豚肉加工食品の「熟成風味」、「特有の風味」といっても、人によって感じ方、捉え方が異なることから、共通認識を持つために、(塩せき)熟成によって変化した味、香りを一つ一つピックアップした結果、「温めたバターのようなまろやかさ(バター感)」、「香ばしさ」、「風味の複雑さ」が熟成によって増大していることが分かった。従って、特に限定するものではないが、熟成によるこれらの項目の変化を「熟成風味」とすることができると考えた。尚、「複雑さ」については、熟成していないものでは喫食中の風味が単調でシンプルであるのに対して、熟成したものでは食べはじめから食べ終わりまでの風味の変化が大きいことから、これらを「風味の複雑さ」とした。
豚肉加工食品の一般的な製造工程は、当業者にはよく知られている。例えば、豚肉を原料とするソーセージの場合には、原料肉をひき肉(ミンチ)にした後、食塩、亜硝酸ナトリウム等の塩せき剤、香辛料等を配合する(塩せき工程)。次いで、混合物を熟成させ、適宜味付けした後に羊腸等に腸詰にしてから加熱し、冷却して製品とすることができる。
本発明の豚肉加工食品は、豚赤身肉と豚脂とを含むものである。特に限定するものではないが、本発明の豚肉加工食品の原料に使用する豚赤身肉としては、クッション肉、ウデ肉、バラ肉、ロース肉、肩ロース肉、モモ肉、シーズンドポーク等を挙げることができる。豚脂としては、特に限定するものではないが、背脂等を使用することが好適である。
本発明の豚肉加工食品中の豚赤身肉と豚脂との重量比(meat/fat(M/F)比)は、豚肉加工食品において通常用いられる範囲であれば良く、特に限定するものではないが、例えば1.2~2.5の範囲内であり得る。また、製品中での原料肉の比率は、特に限定するものではないが、例えば0.75~0.85の範囲内であり得る。
本発明の方法は、豚脂の一部又は全部を低温で酸化させる工程(i)を含むことを特徴とする。
ここで、「酸化させる」とは、酸素及び酸化剤との接触を強制的に行うことを意図するものではなく、酸素の存在下に一定時間置くこと(静置すること)を意味する。
すなわち、本発明の方法は、従来原料肉として使用されていた豚脂の全量又は一部を予め酸化させた豚脂に置き換えて用いることを特徴とするが、酸化させた豚脂として、例えば冷蔵庫に1~3日間置いた豚脂を使用することができる。あるいは、酸化させた豚脂として、塩漬けにした豚脂を使用することもできる。塩漬けは、粉末状の食塩、又は食塩を水に溶解させた食塩水を豚脂に均一にすりこんだものであり得る。食塩水をすりこむ場合、タンブラーなどの回転式真空攪拌機を用いることができる。
上記工程(i)は、限定するものではないが、例えば0~4℃で6時間~3日間酸化させる工程である。工程(i)における温度は、例えば0~4℃、例えば0℃、1℃、2℃、3℃、又は4℃であって良く、好ましくは約4℃である。また、工程(i)における時間は、例えば6時間~3日間、6~30時間、又は12~24時間であって良く、好ましくは約24時間、すなわち1日間である。
上記の工程(i)を含めることで、本発明の方法は、熟成工程を含む従来法で製造された食品と同等の熟成風味をもたらすことができる。従って、本発明の方法は、特定JAS規格によって「3日目以上」とされている塩せき後の熟成工程を含まないものとすることができ、それによって製造工程を短縮化することができる。
工程(i)で酸化させる豚脂は、原料肉中の豚脂の10~100重量%とすることができる。好ましくは、酸化させる豚脂は、原料肉中の豚脂の20重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上であり得る。
本発明の方法では、次いで、工程(i)で酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきする工程(ii)を行う。熟成風味の発現を調節するために工程(i)で豚赤身肉の一部を用いることができるが、その場合、工程(ii)で混合する豚赤身肉は、その残量となることは理解されるであろう。また、工程(i)で豚脂の一部を酸化させる場合、残りの豚脂は工程(ii)で混合されることも理解されるであろう。
本発明で意図される熟成風味効果を発現するためには、加工食品(製品)中における(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)の総含量が0.05~0.27ppmの範囲内であることが好ましく、0.15~0.24ppmの範囲内がより好ましい。尚、本明細書中において、「ppm」は重量/重量の値(mg/kg)である。
また、上記の各成分の含有量は、それぞれ以下のような範囲であることが好ましい。
(E)-2-オクテナールは、加工食品中で0.01~0.024ppmの範囲であることがより好ましく、0.013~0.020ppmが特に好ましい。
1-オクテン-3-オールは、加工食品中で0.007~0.041ppmの範囲であることがより好ましく、0.013~0.028ppmが特に好ましい。
メチオナールは、加工食品中で0.011~0.082ppmの範囲であることがより好ましく、0.025~0.070ppmが特に好ましい。
(E,E)-2,4-ノナジエナールは、加工食品中で0.002~0.012ppmの範囲であることがより好ましく、0.003~0.008ppmが特に好ましい。
(E,Z)-2,4-デカジエナールは、加工食品中で0.003~0.033ppmの範囲であることがより好ましく、0.021~0.033ppmが特に好ましい。
(E,E)-2,4-デカジエナールは、加工食品中で0.012~0.097ppmの範囲であることがより好ましく、0.058~0.097ppmが特に好ましい。
本発明者等は、上記6種の成分が特定の割合で食品中に存在することで、従来の方法で製造された食品と同程度の熟成風味が感じられることを初めて見出した。これらの成分は豚脂単体の酸化でも生成し、かつ豚脂単体ではその生成速度が早まることから、従来の塩せき熟成法(熟成3日間以上)に比べて短時間で熟成風味を有する加工食品を提供することができる。
本発明の方法で得られた豚肉加工食品の熟成風味は、例えば熟練した評価者による官能検査によって評価することができる。あるいはまた、熟成風味は、本発明者等が見出した上記6種の寄与成分の含量を測定することによって、確認することができる。
上記の工程(i)は、豚脂のみを酸化させる工程とすることもできるが、豚脂のみでは上記の6種の成分の生成速度が速くなるため、豚脂と豚赤身肉とを混合して熟成風味の発現を調節することができる。該工程での豚赤身肉/豚脂(meat/fat、M/F)の重量比は、例えば0.3~0.7の範囲内、好適には0.34~0.68の範囲内とすることが好ましい。M/F比が低いほど、熟成風味の発現が促進され得る。
更に、本発明の方法において、熟成風味の発現を調節する因子として、工程(i)に供する前の豚脂の品質が考えられる。豚脂の品質評価の指標としては過酸化物価(POV)が知られている。
例えば、工程(i)において、POVが高い豚脂(5meq/kg以上)を使用した場合、豚脂のみを1日間酸化させて使用すると異臭が生じる場合があり得る。しかしながら、酸化させた豚脂に置換する比率を抑えることで、好適な塩せき熟成風味を発現することが可能である。
従って、酸化させた豚脂への好ましい置換率は、豚脂原料のPOVに依存し得る。例えば、POVが5(meq/kg)以上の場合、10~20重量%、例えば10重量%程度の置換が好ましく、POVが2~5(meq/kg)の場合、10~75重量%の範囲の置換とすることが好ましい。POVが2(meq/kg)未満の場合は、10~100重量%の置換が可能である。置換率は上記6種の成分の総含量を指標として決定することができる。
工程(i)の時間についても、上記6種の成分の総含量が0.05~0.27ppmの範囲に入るように1~3日間の間で調節することが望ましい。
工程(i)を豚脂のみで行う場合は、豚赤身肉が混在する場合よりも熟成風味の発現が早くなることから、POVが5(meq/kg)未満の豚脂を使う場合は1日で熟成風味の発現が確認される。一方、POVが2(meq/kg)未満の豚脂を使うことで1~3日間の間で工程(i)を実施することができる。従って、本発明の一態様において、使用する豚脂はPOVが5(meq/kg)未満のものとすることができる。本発明の別の態様において、使用する豚脂はPOVが2(meq/kg)未満のものとすることができる。
従って、原料肉として使用する豚脂のPOVに応じて豚赤身肉/豚脂の比率(M/F比)を変えて熟成風味の発現を調節するのが望ましい。M/F比は、上記6種の成分の総含量を指標として決定することができ、例えば、POVが5(meq/kg)以上の場合、M/F比を0.3~0.7、好ましくは0.34~0.68の範囲に調整して、加工品中で6種の成分の総含量が0.05~0.27ppmの範囲であるように調節するのが望ましい。
上記より、本発明の方法において、工程(i)に供する前の豚脂は過酸化物価(POV)が5(meq/kg)未満のものとすることが好ましい。POVが2(meq/kg)以上の品質の豚脂を使用した場合、M/F比を0.34~0.68に調整して酸化させることで、熟成風味の好適な発現が期待できる。
本発明の一態様は、工程(i)において、原料肉として用いる豚脂、好ましくはPOV 5未満の豚脂の全部を約4℃で1日間酸化させ、酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきすることを含む。
本発明の一態様は、工程(i)において、原料肉として用いるPOV 2未満の豚脂の全部を約4℃で1~3日間酸化させ、酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきすることを含む。
本発明の一態様は、工程(i)において、原料肉として用いる豚脂の10~20重量%を約4℃で1日間酸化させ、酸化させた豚脂を残りの豚脂及び豚赤身肉と混合して塩せきすることを含む。
本発明の別の一態様は、工程(i)において、原料肉として用いる豚脂、例えばPOV5以上の豚脂の全部を豚赤身肉とM/F比0.3~0.7の範囲で混合して約4℃で1日間酸化させ、酸化させた豚脂(豚赤身肉を含む)を残りの豚赤身肉と混合して塩せきすることを含む。
本発明の更に別の一態様は、工程(i)において、POV 5(meq/kg)未満の豚脂の10~100重量%、例えば10~75重量%を約4℃で1日間酸化させ、酸化させた豚脂を残りの豚脂及び豚赤身肉と混合して塩せきすることを含む。
本発明の更に別の一態様は、工程(i)において、POV 2(meq/kg)未満の豚脂の10~100重量%を約4℃で1~3日間酸化させ、酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきすることを含む。
本発明の方法は、上記の工程(i)及び(ii)を含むことを特徴とする以外は、当分野において通常用いられる製造工程をとることができ、当業者であれば、本明細書の記載及び当分野の技術常識に基づき、本発明の方法を実施することができる。
本発明の方法はまた、豚赤身肉と豚脂とを含む豚肉加工食品の製造方法であって、
(i)豚脂の一部又は全部を低温で酸化させる工程、及び
(ii)酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきする工程
を含み、更に
(iii)食品中の(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)の総含量が0.05~0.27ppmの範囲内であることを確認する工程
を含む、上記製造方法も提供する。
上記の方法は、豚肉加工食品の製造方法の評価、あるいは製造される豚肉加工食品の品質評価のために使用することができる。例えば、上記の工程(iii)において、上記総含量が上記範囲よりも少ない場合は、製造される食品の熟成風味が意図されるよりも弱いことが示唆され、従って工程(i)における豚脂の酸化を更に進めることが好ましいことが示される。一方、上記総含量が上記範囲よりも多い場合は、製造される食品の熟成風味が意図されるよりも強くなり過ぎていることが示唆され、従って工程(i)における豚脂の酸化を抑制することが好ましいことが示される。
本発明はまた、上記の本発明の方法によって製造された、熟成風味を有する豚肉加工食品を提供する。
本発明はまた、(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)をそれぞれ含有し、それらの総含量が食品中0.05~0.27ppmの範囲内である、熟成風味を有する豚肉加工食品を提供する。該豚肉加工食品は、上記の本発明の方法によって製造することができる。
以下に、特にソーセージにおける実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[試験例1 塩せき熟成風味の官能評価項目の選定]
本発明者等はまず、塩せき熟成あり/なしによる風味の変化を調査し、塩せき熟成を行うことでどのような風味の変化があるのか検討した。
<製造方法>
原料肉として、豚脂と、脂と筋を取り除いた豚赤身肉とを使用した。凍結した原料肉を一晩氷水で解凍した後、豚脂と豚赤身肉とを下記表1に示す量で混合し、グラインダーを用いて5mmにミンチ状にした。次いで、表1の配合割合の添加物をミキサーに投入して練り混ぜ、粘りが出てきたところで回収した。
Figure 0007118909000001
上記で塩せきしたミンチ肉をそのまま、又は4℃で7日間熟成させたものに、味付けのための調味料・香辛料等を更に加え、ミキサーを使用して混合・ミキシング処理を行った後、羊腸に充填し、蒸煮による加熱処理を行ってから冷却し、ソーセージを製造した。
<官能検査による評価>
80℃で加温したソーセージを5名のパネルが食し、塩せき後の熟成を行わない場合を基準として、4℃で7日間熟成させたものについての「バター感」、「香ばしさ」、「風味の複雑さ」の3つの評価項目について7段階で評価し、5人のパネルによる評点の平均点を算出した。その結果、4℃で7日間の熟成によって、バター感、香ばしさ、風味の複雑さのいずれもが強くなる傾向がみられた(データは示さない)。
従って、これらの風味が増した好ましい香りの変化を統合して「塩せき熟成風味」(以降、熟成風味)として評価することとした。
[試験例2 熟成条件の検討]
本試験例では、塩せき熟成風味に対する熟成条件(温度、時間、酸素)の影響を検討した。
試験例1と同じ割合で混合して得られたミンチ肉を、0℃、4℃、又は8℃で、1日間、4日間、7日間、又は14日間、酸素あり(大気下)又は酸素なし(真空包装:VP)の条件で熟成させた後、充填・加熱してソーセージを製造した。
試験例1と同様に、80℃で加温したソーセージを5名のパネルが食し、熟成風味について、熟成を行わない場合と比較して非常に変化が大きいものを「+++」、変化が大きいものを「++」、やや変化があるものを「+」、ほとんど変化がないものを「-」、異臭があるものを「×」として、それぞれ評価した。
表2に各パネルの評価結果の中央値を示す。熟成日数に応じて熟成風味の発現強度は強くなる傾向がみられ、その発現スピードは温度と酸素に影響を受けることが示された。
Figure 0007118909000002
具体的には、熟成温度が4℃の場合、酸素存在下では4日間熟成したもので明らかな熟成風味の発現が確認されたが、VP(真空包装区)では4日間の熟成までは熟成風味の発現が見られず、7日間の熟成で確認されたことから、熟成風味の発現には酸素の有無が大きく影響することが推測された。
また、熟成温度が0℃の場合、熟成風味の発現は14日間熟成した場合に確認されたが、8℃で熟成した場合、1日間の熟成でも熟成風味が確認された。ただし、熟成期間が4日間以上になると酸化臭などの異臭が確認され、熟成過多になり得ることが判明した。
以上の結果から、熟成風味に寄与する成分の発現程度と成分量のバランスが好適な熟成風味に重要である可能性が考えられた。
[試験例3 GC-におい嗅ぎ(GC-O)分析]
本試験例では、香気成分の探索のために、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC-MS)と共に、一般的に用いられるGC-におい嗅ぎ(GC-O(Olfactometry))分析により、熟成風味に寄与する香気成分の探索を行った。
GC-におい嗅ぎ分析(GC-O)とは、香気抽出液を溶媒で順次希釈しながら、その一定量をGC-MS分析に供し、検出器の直前でキャリアガスを分割し、一方を検出器に、他方を外部に取り出し、溶出してくるピークのにおいを嗅ぐ方法である(sniffing)。
香気成分の場合、成分によってにおいの強度が異なり、少量でもにおいを強く発するものもあり、逆に、多量に含まれていても全くにおいを発しない成分もある。
MSではにおいの質までは識別できないが、GC-O分析を使えば、成分のにおいの有無、質、強度などの情報が得られる。MS検出器とSniffingポートに同じ流量で成分を分岐させているため、それぞれのリテンションタイムは一致する。
<香気成分の抽出(前処理)>
試験例2と同様の方法でソーセージの製造を行い、塩せき熟成0日間(対照)と熟成7日間のソーセージを使用した。
製造したソーセージはフードプロセッサーを用いてミンチ状にした後、20mLバイアル瓶に3gずつ精秤した。各バイアル瓶に6mLのジクロロメタンを加え、250rpmで10分間、振とうした後、冷凍庫で5分間静置した。新しいバイアル瓶に漏斗と濾紙を用いてサンプルを含むジクロロメタンを濾過し、濾液を回収して香気成分抽出液とした。抽出液は分析まで-20℃で保管した。
<香気成分分析>
香気成分の分析にあたっては質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC-MS)を用いた。香気成分捕集装置として、ゲステル社製Dynamic Head Space(DHS)を用いた。
上記で前処理した香気成分抽出液0.5mLを10mL容バイアルに採取し、30℃、85mL/分で10分間パージした後、目的成分をcarbopack B/Xに吸着させてGC-MSへ導入した。
GCへの導入は、ゲステル社製TDU-CIS4システムを用いて、TDUを720℃/分で300℃まで昇温し、carbopack B/Xに吸着された香気成分の加熱脱着を行った。脱着された香気成分は10℃に冷却されたCIS4内のTenax管にクライオフォーカスさせ、その後CIS4を12℃/分で240℃まで上昇させることによりGCカラムに導入した。
GC-MS分析はアジレント社製7890A/5975Cを用いて行った。カラムはアジレント社製DB-waxを用いた。カラム温度は40℃で6分間保持した後、7℃/分で250℃まで昇温させ、5分間保持した。
検出された成分の同定は、装置付属のデータベースを用いたライブラリーサーチにより行った。また、GCの結果から保持指標(Retention index、RI)を算出し、標準品との比較、もしくは、ほぼ同条件で分析、算出された文献値を参考にすることでも行った。香気成分の分析条件は以下の通りであった。
GC-MS分析条件
カラム:DB-WAX(長さ30m × 内径0.25mm × 0.25μm)
キャリアガス:He, 378kPa(constant pressure)
カラムオーブン温度:40℃(6分)-7℃/分-250℃(5分)
トランスファーライン温度:250℃
イオン源温度:230℃
イオン化電圧:70ev(電子イオン化法)
GC-O分析条件
MS検出器とSniffingのスプリット比は1:1と設定した。
においが検出された成分については、各成分の相対的におい強度も算出した。におい強度はAroma Extract Dilution Analysis分析法(AEDA法)で測定した。すなわち、香気成分抽出液をジクロロメタンで4n倍に希釈した溶液について、GC-Oによりにおいを感じなくなるまで繰り返しにおい嗅ぎを行い、においを感じることができた最も高い希釈倍率の係数をFD(Flavor Dilution)ファクターとしてにおい強度を求めた。
<結果>
試験例2において、熟成によって風味が強くなることが認められたことから、寄与成分は熟成期間が長くなるにつれて成分量として増加していると予測した。そこで塩せき熟成0日間と比較した場合に、7日間の熟成で増加した成分であり、かつAEDA分析により匂いの強度(FDファクター)が増加した成分を調べた結果、表3に記載の28成分が同定された。
Figure 0007118909000003
[試験例4 複合臭の分析]
熟成風味の特徴である「バター感」及び「香ばしさ」に寄与する成分を精査するために、試験例3で確認された成分のうち、単一成分での評価でにおい強度が高い成分を中心にGC画分を6つに分画し(画分1~6)、においの質と強さを評価した。図1にGCクロマトグラム上での画分1~6の位置を示す。
複合臭の分画のために、ゲステル社製Preparative Fraction Collector(PFC)を使用した。すなわち、検出器の流路の前にPFCを接続し、目的成分が検出される時間でバルブをPFC側に切り替え、-20℃で冷却された100μlガラス管で分取した。
複合臭の官能検査については、2名のにおい評価に熟練した者が分取したガラス管中のにおいを嗅ぎ、各画分のにおいの質と強さについて、塩せき熟成期間が7日間のサンプルを熟成しなかったサンプル(0日)と比較した。
その結果、4℃で7日間熟成させたサンプルにおいて、画分1及び2のにおいは0日のサンプルと同等の強さであり、画分3及び4のにおいは0日より強かった。画分5及び6では0日のサンプルよりもにおいが弱く感じられた。
そこで、7日間の塩せき熟成でにおいが強くなった画分3及び4を中心に寄与成分の探索を行った結果、これらの画分には(E)-2-オクテナール(表3におけるNo.9)、1-オクテン-3-オール(No. 20)、メチオナール(No.11)、(E,E)-2,4-ノナジエナール(No.5)、(E,Z)-2,4-デカジエナール(No.12)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール(No.7)が含まれていることが明らかとなった。また、これらの成分を中心に更に分画した結果、「バター感」及び「香ばしさ」が連想できるにおいであったことから、これらの成分群が熟成風味に寄与する主要成分であることを見出した。
[試験例5 熟成風味に寄与する主要成分の定量]
試験例2と同様の方法でソーセージの製造を行い、試験例3で特定された6種の成分について、試験例3と同様の条件のGC-MSによりそれぞれ定量した。定量は各成分の標準試薬の検量線から算出した。尚、本結果で用いられるppmは重量/重量の値である(mg/kg)。
結果を表4及び図2に示すように、6成分の総含量はいずれの熟成条件においても経時的に増加し、温度が高いほど、また酸素不在下よりも酸素存在下で増加傾向にあることが確認された。
Figure 0007118909000004
具体的には、4℃で熟成した場合、1日間の熟成では8℃で熟成した場合よりも総含量は少ないが、4日目で同程度まで生成し、それ以降は緩やかに増加する傾向がみられた。
4℃ VPでは4日目以降に急激に増加する傾向がみられ、0℃では最も緩やかな増加を示した。
試験例2及び本試験例の結果を考慮すると、熟成風味効果を発現するために必要な6種の成分の総含量は、加工品中で0.05~0.27ppmの範囲内が好ましいことが明らかとなった。
[試験例6 塩せき熟成風味形成要因の探索]
次に、塩せき熟成風味の寄与成分が豚赤身肉由来なのか豚脂由来なのかを検討した。
豚赤身肉のみ、又は豚赤身肉と豚脂とを下記表5に示す量で用い、グラインダーを用いて5mmにミンチ状にした。次いで、表5の配合割合の添加物をミキサーに投入して練り混ぜ、粘りが出てきたところで回収した。
Figure 0007118909000005
上記で塩せきしたミンチ肉を4℃で3日間熟成させたものを充填・加熱してソーセージを製造した。
80℃で加温したソーセージを5名のパネルが食し、塩せき熟成0日(試験区2と同じ配合割合の豚赤身肉+豚脂)を基準(0点)とし、熟成風味について7段階(-3:弱い~3:強い)の相対尺度で評価した。結果は5人のパネルによる評点の平均点を算出した。
また、試験例5と同様にしてGC-MSによる定量分析を行った。
<結果>
図3に示す官能検査の結果より、熟成0日目(豚赤身肉+豚脂)に比べ、3日目では豚赤身肉+豚脂(試験区2)では熟成風味が強くなる一方、豚赤身肉のみ(試験区1)では増強効果は確認されず、逆に弱まることが示された。つまり、熟成風味の発現には豚脂が存在することが重要であることが示された。
一方、表5に示すように、成分量の比較を行った結果、豚脂を添加することで6種の熟成風味寄与成分が増加することが確認され、これらの成分は主として豚脂由来の分解物であることが示唆された。
このことから、塩せき熟成による風味の変化は添加している豚脂が大きく影響していると考えられる。
[実施例1]
上記の試験例の検討から、塩せき熟成風味の発現には豚脂由来の特に6種の成分が寄与していることが判明した。
従って、本発明者等は次に、熟成工程を豚脂のみに対して行ったとしても、最終製品を喫食したときに感じる好ましい風味が得られると想定して検討し、以下の通りに実証した。
試験区3として、上記試験例6で検討した表5の試験区2と同じ配合割合(豚赤身肉+豚脂)で、4℃で3日間熟成させたものを充填・加熱してソーセージを製造した(塩せき熟成3日間)。
試験区4として、試験区3で配合したものと同量の豚脂(シート状)を4℃で3日間冷蔵庫に置いた後に豚赤身肉と混合する以外は試験区3と同様にしてソーセージを製造した。尚、豚脂はPOV 5(meq/kg)の品質のものを使用した。
また、試験区5として、豚脂(シート状)を4℃で1日間冷蔵庫に置く以外は試験区4と同様にしてソーセージを製造した。
80℃で加温したソーセージを5名のパネルが食し、塩せき熟成0日を基準(0点)とし、試験区3及び4の熟成風味及び酸化臭について7段階(-3:弱い~3:強い)の相対尺度で評価した。結果は5人のパネルによる評点の平均点を算出した。
また、試験例5と同様にしてGC-MSによる定量分析を行った。
<結果>
官能検査の結果を図4に、製品中の6種の熟成風味寄与成分の含量を表6に示した。
Figure 0007118909000006
表6に示すように、試験区3及び4は、4℃で保管した日数は同じであるが、豚脂のみ酸化させた試験区4のほうが、6種の熟成風味寄与成分がいずれも増加することがわかった。ただし、官能検査の結果、試験区4では酸化臭などの異臭が確認された。熟成風味の評価点が低いのは、酸化臭などの異臭が支配的になっているためと考えられる。したがって、試験区4のように豚脂単体を3日間酸化させてしまうと、生成量が多すぎて異臭として感じてしまうことが示された。
[実施例2]
実施例1の結果を踏まえ、1日間酸化させた豚脂を用いて、熟成風味を早期に発現させることを検討した。豚脂の一部を酸化豚脂に置換することで熟成風味の変化を比較した。本実施例において、豚脂はPOV 5~6(meq/kg)の品質のものを使用した。
<製造方法>
原料肉として豚赤身肉、豚脂、及びシート状の豚脂を4℃で1日間冷蔵庫に置いた酸化豚脂を使用した。
試験区6として、豚赤身肉と豚脂を表7に示す配合割合で混合・塩せきしたミンチ肉を4℃で3日間熟成させたものを充填・加熱してソーセージを製造した(塩せき熟成3日間)。
試験区7及び8では、試験区6の豚脂の一部を酸化させた豚脂に置き換え、塩せき熟成工程を行わない以外は試験区6と同様に製造した(塩せき熟成0日間)。豚脂の置換率は試験区7は10%、試験区8は25%とした。
Figure 0007118909000007
<官能検査>
80℃で加温した試験区6~8のソーセージを5名のパネルが食した。試験区7及び8について、塩せき熟成3日(試験区6、コントロール)と識別できるか否かを判断するため、3点識別法を実施した(6回繰り返し実施)。
具体的には、例えば、以下の3本のソーセージ:A:コントロール(試験区6)、B:試験区7又は8、C:コントロール(試験区6)を喫食し、1つだけ異なると思われるものを選択して、Bを選択した場合は正解、AもしくはCを選択した場合は不正解とし、正解人数、不正解人数の総数を加算した。
<GC-MSによる定量分析>
試験例5と同様の方法で行った。
<結果>
官能検査の結果を図5に、成分含量を表7に示した。
図5の結果から明らかな通り、25%置換と塩せき熟成3日(コントロール)では識別できるだけの差があることが示された。これは、25%置換のサンプルでは酸化臭などの異臭が感じられることが原因と思われた。
一方、10%の置換では認知できるだけの差がない、つまりコントロールと同等の塩せき熟成風味が得られていることが示された。
[実施例3]
本実施例では、塩漬けした豚脂を4℃未満で1~3日置くことで熟成風味を発現させた。本実施例では、豚脂はPOV 2(meq/kg)未満の品質のものを使用した(POV実測値:0.9(meq/kg)、3日間冷蔵庫に放置してもPOV 1.3程度(meq/kg))。
<製造方法>
原料肉として豚赤身肉、豚脂、及び塩漬けして4℃で1~3日間冷蔵庫に置いた豚脂を使用した。
試験区9として、豚赤身肉と豚脂を表8に示す配合割合で混合・塩せきしたミンチ肉を熟成させずに充填・加熱してソーセージを製造した(塩せき熟成0日間)。
試験区10及び11では、シート状の豚脂を水洗後、細切れにカットして塩漬けした。その際、添加物として記載した表8の食塩のうち、豚脂重量に対して約1%を塩漬けに使用した。本実施例では粉末状の食塩を豚脂に均一に馴染ませた。
塩漬けした豚脂はスタフレンシートに包み、冷蔵庫(1~4℃)で1日間(試験区10)又は3日間(試験区11)静置した。
その後、塩漬けした豚脂を豚赤身肉と混ぜ込んでミンチ状にして、塩せき・味付け・充填・加熱を行ってソーセージを製造した。
Figure 0007118909000008
<官能検査>
試験区9~11のソーセージを用いて30代~50代の53名のパネルによる喫食試験を実施した。
<GC-MSによる定量分析>
試験例5と同様の方法で行った。
<結果>
試験区9~11のソーセージ中の6種の熟成風味寄与成分含量を表8に示す。その結果、豚脂を4℃で1~3日間塩漬けしたものを使用して、6種の熟成風味寄与成分が増加することがわかった。
また、官能検査でも、試験区10及び11では試験区9のソーセージと比較して風味が向上しているとの結果が得られた。本実施例では、原料肉の豚脂の全量を4℃で1~3日間塩漬けした後に使用したが、酸化臭などの異臭は感じられなかった。
[実施例4]
実施例1~3において、豚脂単体で酸化させた場合、豚赤身肉と共に塩せき熟成させた場合と比較して、熟成風味寄与成分の含量がより短時間で上昇することが確認された。そこで、酸化させる際に豚赤身肉が存在していればこの上昇速度を調節できると考えられたため、豚赤身肉を用いて熟成風味の発現量を調節することを検討した。
<製造方法>
原料肉として豚脂と、脂と筋を取り除いた豚赤身肉とを使用した。豚脂はPOV 5(meq/kg)未満の品質のものを使用した。
試験区12では、豚脂と豚赤身肉とを下記表9に示す量で混合し、グラインダーを用いて5mmにミンチ状にした。次いで、表9の配合割合の添加物を添加して混合・塩せきし、4℃で3日間熟成させたものを充填・加熱してソーセージを製造した(塩せき熟成3日)。
試験区13~17では、豚脂を酸化させる際に一部の豚赤身肉と混合し、グラインダーを用いて5mmにミンチ状にした。このときの豚赤身肉と豚脂の比率(meat/fat(M/F)比)を1.36、0.64、0.34、0.17、0とした。各比率で混合したものを4℃で1日酸化させた後、残りの豚赤身肉と混合し、塩せき後、充填・加熱した(塩せき熟成日数0日)。
試験区12~17について、いずれも最終M/F比は1.36になるようにした。尚、酸化時に豚赤身肉を用いない試験区17(豚脂酸化時のM/F=0)は、ミンチ状にすることが困難であるため、酸化時はシート状のままとした。
Figure 0007118909000009
<官能検査>
80℃で加温したソーセージを13名のパネルが食し、塩せき熟成3日間(試験区12)を基準(0点)とし、熟成風味について7段階(-3:弱い~3:強い)の相対尺度で評価した。結果は13人のパネルによる評点の平均点を算出した。
<GC-MSによる定量分析>
試験例5と同様の方法で行った。
<結果>
官能検査の結果及び成分含量を表9に示す。
官能検査の結果、豚脂酸化時のM/F比が1.36に比べて、0.68、0.34と低くなるほど、塩せき熟成3日の熟成風味に近づいていくことがわかった。M/F比0.17の場合(試験区16)は評価点が下がってしまったが、これはおそらく酸化臭などの異臭が強くなり、相対的に熟成風味が感じられなくなったためと思われる。
さらに、成分含量を比較してみても、M/F比が低いほど、6種の熟成風味寄与成分が増加することがわかった。
本発明により、従来品と比較して短縮された工程で熟成風味を有する豚肉加工食品を提供することができる。

Claims (8)

  1. 豚赤身肉と豚脂とを含む豚肉加工食品の製造方法であって、
    (i)原料肉として使用する豚脂の10~75重量%を0~4℃で1日間酸化させる工程、及び
    (ii)酸化させた豚脂を残りの原料肉と混合して塩せきする工程
    を含み、工程(i)に供する前の豚脂の過酸化物価(POV)がmeq/kg未満であり、かつ加工食品中における(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)の総含量が0.05~0.27ppmの範囲内である、上記製造方法。
  2. 豚赤身肉と豚脂とを含む豚肉加工食品の製造方法であって、
    (i)原料肉として使用する豚脂の10~20重量%を0~4℃で1日間酸化させる工程、及び
    (ii)酸化させた豚脂を残りの原料肉と混合して塩せきする工程
    を含み、工程(i)に供する前の豚脂の過酸化物価(POV)が2~5meq/kgであり、かつ加工食品中における(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)の総含量が0.05~0.27ppmの範囲内である、上記製造方法。
  3. 豚赤身肉と豚脂とを含む豚肉加工食品の製造方法であって、
    (i)塩漬けされた豚脂の全部を0~4℃で~3日間酸化させる工程、及び
    (ii)酸化させた豚脂を豚赤身肉と混合して塩せきする工程
    を含み、工程(i)に供する前の豚脂の過酸化物価(POV)が2meq/kg未満であり、かつ加工食品中における(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)の総含量が0.05~0.27ppmの範囲内である、上記製造方法。
  4. 豚赤身肉と豚脂とを含む豚肉加工食品の製造方法であって、
    (i)豚脂の全部を豚赤身肉/豚脂(meat/fat、M/F)比が0.3~0.7の範囲内で豚赤身肉の一部と混合して0~4℃で6時間~3日間酸化させる工程、及び
    (ii)酸化させた豚脂と豚赤身肉の混合物を残りの原料肉と混合して塩せきする工程
    を含み、工程(i)に供する前の豚脂の過酸化物価(POV)が5meq/kg未満であり、かつ加工食品中における(E)-2-オクテナール((E)-2-Octenal)、1-オクテン-3-オール(1-Octen-3-ol)、メチオナール(Methional)、(E,E)-2,4-ノナジエナール((E,E)-2,4-Nonadienal)、(E,Z)-2,4-デカジエナール((E,Z)-2,4-Decadienal)、及び(E,E)-2,4-デカジエナール((E,E)-2,4-Decadienal)の総含量が0.05~0.27ppmの範囲内である、上記製造方法。
  5. 工程(i)で酸化させる豚脂が、原料肉中の豚脂の10~100重量%の範囲である、請求項記載の方法。
  6. 工程(i)に供する前の豚脂の過酸化物価(POV)が2meq/kg未満である、請求項4又は5記載の方法。
  7. 熟成工程を含まない、請求項1~のいずれか1項記載の方法。
  8. 請求項1~のいずれか1項記載の方法によって製造された、熟成風味を有する豚肉加工食品。
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