以下、搬送装置を備える記録システムの一実施形態について図を参照して説明する。
図1、図2に示すように、記録システム1000は、媒体に記録を行う記録装置の一例であるプリンター100と、媒体の一例である用紙Pを搬送する外部装置の一例としての搬送装置200とを含んで構成されている。本実施形態においては、さらに、用紙Pに後処理を行う外部装置の一例としての後処理装置300も含んで構成されている。記録システム1000は、図1における左右方向Xの右側から左側へ順に、プリンター100、搬送装置200、後処理装置300が並んで配置されることで構成されている。すなわち、本実施形態では、記録された用紙Pの搬送方向となる左右方向Xを並び方向として、プリンター100と搬送装置200とが互いに隣接するとともに、搬送装置200と後処理装置300とが互いに隣接し、プリンター100と後処理装置300との間に搬送装置200が介在されている。
プリンター100は、媒体の一例としての用紙Pに液体の一例としてのインクを付着させることで文字や写真などの画像を記録するインクジェット式プリンターであり、直方体状の記録装置側筐体101を有している。鉛直方向Zにおいて、記録装置側筐体101の上部には、プリンター100の各種の操作を行うための操作部102が取り付けられている。
プリンター100には、鉛直方向Zにおいて、プリンター100の中央部から下部に亘って用紙カセット103が設けられている。本実施形態において、用紙カセット103は、鉛直方向Zに4つ並んで配置され、それぞれにプリンター100が記録を行う用紙Pを積層状態で収容している。そして、用紙カセット103における左右方向Xの中央部には、ユーザーが把持可能な把持部103aがそれぞれ形成されている。すなわち、用紙カセット103は、左右方向X及び鉛直方向Zの双方と交差する前後方向Yにおいて記録装置側筐体101に対して挿抜可能に構成されている。なお、それぞれの用紙カセット103に収容される用紙Pは、それぞれ異なる種別のものでもよいし、同じ種別のものであってもよい。
鉛直方向Zにおいて、最上段の用紙カセット103と隣り合う位置には、矩形状の前板カバー104が設けられている。前板カバー104は、用紙カセット103と隣り合う長辺を基端として回動可能に設けられ、基端とは反対側となる先端側がプリンター100から離間する開位置と、記録装置側筐体101の一部を構成する閉位置との2位置間で回動自在に構成されている。前板カバー104が開位置をとると、プリンター100を構成するフレーム105の一部が露出する。フレーム105には、前板カバー104よりも面積の小さい矩形状のフレームカバー105aが設けられている。フレームカバー105aは、前板カバー104と同様に、鉛直方向Zにおいて下側となる一辺を基端として開位置と閉位置との間で回動自在に構成されている。フレームカバー105aが開位置をとると、フレーム105に形成された開口部105bが露出する。この開口部105bは、ユーザーの手が差し入れ可能な程度の大きさでフレーム105に開口している。
プリンター100において、搬送装置200が取り付けられる面であって左右方向Xにおいて左側の面である左側面には、記録装置側筐体101の側壁の一部を構成するとともに記録装置側筐体101から引き出し可能に設けられた引出面部106が設けられている。引出面部106において鉛直方向Zにおける上部には、ユーザーが手を掛けることが可能な手掛部107が形成されている。引出面部106が、左右方向Xにおいて左向きとなる引出方向に沿って記録装置側筐体101から引き出されると、これと連動し、後述する引出ユニット170が記録装置側筐体101から引き出される(図8、図9参照)。
また、図3に示すように、引出面部106において、手掛部107における鉛直方向Zの下側となる位置には、記録が行われた用紙Pが排出される排出口108が形成されている。そして、さらにその下側には、左右方向Xにおいて左向きに延びる排紙トレイ(載置部)109が必要に応じて取り付け可能に設けられている。すなわち、排出口108を介して排出された用紙Pは、排紙トレイ109上に載置される。なお、この排紙トレイ109は、引出面部106に対して着脱可能に構成され、引出面部106に接続される基端から、基端とは反対側となる先端に向かうにつれて上向きに傾斜する上り勾配(図3では左上がり)の形状(すなわち、上昇形状)を有している。
図1及び図2に戻って、並び方向である左右方向Xにおいて、プリンター100の左側面に取り付けられる搬送装置200は、直方体状の搬送装置側筐体(筐体)201を有している。搬送装置側筐体201は、プリンター100により記録された用紙Pが導入される導入部202と、導入部202よりも左右方向Xにおいて左側(搬送方向の下流側)に位置して後処理装置300へ用紙Pを導出する導出部203とを含んで構成されている。導入部202は、左右方向Xにおいて、導出部203よりも大きくなるよう設けられ、また鉛直方向Zにおいては、導出部203よりも小さくなるよう設けられている。
また、プリンター100と左右方向Xに並んで配置される状態において、導入部202の高さは、鉛直方向Zにおいて、プリンター100が有する最上段の用紙カセット103の上部と、引出面部106の下部との間となるよう設けられ、導出部203の高さは、プリンター100と略同一となるよう設けられている。すなわち、導入部202は、左右方向Xで隣接するプリンター100に取り付けられた状態において、引出面部106の引出方向における移動と干渉しないように鉛直方向Zでの高さが低くされている。また、導出部203の上部には、プリンター100側に向かうように、左右方向Xにおいて右向きに延びる板状の天板部204が必要に応じて取り付け可能に設けられている。天板部204は、鉛直方向Zにおいて、引出面部106の上部よりも高い位置に形成され、引出面部106が移動したときに干渉しないよう構成されている。さらに、天板部204の下方に位置する排紙トレイ109は、その屈曲した上昇形状により、導出部203を避けるように設けられている。
並び方向である左右方向Xにおいて、搬送装置200の左側面に取り付けられる後処理装置300は、直方体状の後処理装置側筐体301を有している。後処理装置300は、プリンター100により記録され、搬送装置200により搬送された用紙Pに対して後処理を行う。後処理としては、例えば、裁断や紙折り、パンチ穴あけやステープルなどがある。そして、後処理を行われた用紙Pは、後処理装置300の左側面から左向きに延びるスタッカー(本実施形態においては2つ)302に載置される。
次に、プリンター100の構造について説明する。
図3に示すように、プリンター100が有する記録装置側筐体101内には、用紙Pに対して鉛直方向Zの上側から記録を行う記録部110と、用紙Pを搬送経路120に沿って搬送する搬送部130とが設けられている。搬送経路120は、前後方向Yに沿う方向を用紙(媒体)Pの幅方向としたときに、この幅方向と交差する方向を搬送方向として用紙Pが搬送されるように形成されている。
記録部110は、用紙Pの幅方向の略全域に亘って同時にインクを吐出可能なラインヘッド型の記録ヘッド111を下部に備えている。記録部110は、記録ヘッド111から吐出されるインクが用紙Pにおいて記録ヘッド111と対向する記録面(画像を印刷される面)に付着されることで、用紙Pに画像を形成する。
搬送部130は、搬送経路120に沿って配置されている複数の搬送ローラー対131と、記録部110の直下に設けられるベルト搬送部132とを有している。すなわち、ベルト搬送部132によって搬送されている用紙Pに対して、記録ヘッド111からインクが吐出され、記録が行われる。
ベルト搬送部132は、記録ヘッド111よりも搬送方向上流側に配置されている駆動ローラー133と、記録ヘッド111よりも搬送方向下流側に配置されている従動ローラー134と、これらの各ローラー133、134に掛けられた無端状をなす環状のベルト135とを有している。駆動ローラー133が駆動回転することによりベルト135が周回し、その周回するベルト135によって用紙Pが下流側へ搬送される。すなわち、ベルト135の外周面が、記録が行われる用紙Pを支持する支持面として機能する。
搬送経路120は、記録部110へ向けて用紙Pが搬送される供給経路140と、記録部110により記録が行われ、記録済とされた用紙Pが搬送される排出経路150と、排出経路150から分岐する分岐経路160とを有している。
供給経路140は、第1供給経路141と、第2供給経路142と、第3供給経路143とを有している。第1供給経路141では、記録装置側筐体101の右側面に備えられたカバー141aを開けることによって露出する挿入口141bから挿入される用紙Pが記録部110へ搬送される。すなわち、挿入口141bから挿入された用紙Pは、第1駆動ローラー対144の回転駆動によって記録部110へ向かって直線的に搬送される。
第2供給経路142では、鉛直方向Zにおいて、記録装置側筐体101の下部に備えられた用紙カセット103にそれぞれ収容された用紙Pが、記録部110へ搬送される。すなわち、用紙カセット103に積層状態で収容された用紙Pは、最上位の用紙Pがピックアップローラー142aにより送り出され、分離ローラー対145で一枚ずつに分離された後、鉛直方向Zにおける姿勢が反転されながら、第2駆動ローラー対146の回転駆動によって記録部110へ向かって搬送される。
第3供給経路143では、用紙Pに対して両面に画像を記録する両面印刷を行う場合に、記録部110によって片面が記録済とされた用紙Pが、再び記録部110へ搬送される。すなわち、記録部110よりも搬送方向下流側には、排出経路150から分岐する分岐経路160が設けられている。すなわち、両面印刷を行う際、用紙Pは、排出経路150の途中に設けられた分岐機構147の動作によって分岐経路160へ搬送される。また、分岐経路160には、正転と逆転の双方の回転が可能な分岐経路ローラー対161が分岐機構147よりも下流側に設けられている。
両面印刷に際して、一面が印刷された用紙Pは、分岐機構147により一旦この分岐経路160へ案内され、正転する分岐経路ローラー対161によって分岐経路160内を下流側に搬送される。その後、分岐経路160へ搬送された用紙Pは、逆転する分岐経路ローラー対161によって分岐経路160内を下流側から上流側へ逆搬送される。すなわち、分岐経路160を搬送される用紙Pは搬送の向きが反転される。
分岐経路160から逆搬送される用紙Pは第3供給経路143へ搬送され、複数の搬送ローラー対131によって記録部110へ向かって搬送される。第3供給経路143を搬送されることによって、用紙Pは印刷されていない他面が記録部110と対向するように反転され、第3駆動ローラー対148の回転駆動によって記録部110へ向かって搬送される。すなわち、第3供給経路143は、鉛直方向Zにおける用紙Pの姿勢を反転させながら搬送する反転搬送経路して機能する。
各供給経路141、142、143のうち、第2供給経路142及び第3供給経路143は、鉛直方向Zにおいて用紙Pの姿勢が湾曲されながら記録部110へ向けて用紙Pが搬送される。その一方で、第1供給経路141は、第2供給経路142及び第3供給経路143と比較して、用紙Pの姿勢が大きく湾曲されることなく記録部110へ向けて用紙Pが搬送される。
各供給経路141、142、143を搬送される用紙Pは、記録部110よりも搬送方向の上流側に配設された整列ローラー対149まで搬送されたのち、回転が停止した整列ローラー対149にその先端が突き当たる。そして、用紙Pは、このような整列ローラー対149へ突き当たった状態によって搬送方向に対する傾きが補正(スキュー取り)される。そして傾きが補正された用紙Pは、その後の整列ローラー対149の回転駆動によって、整列状態となって記録部110へ搬送される。
記録部110により片面又は両面に記録が行われ、記録が完了された用紙Pは、搬送ローラー対131により搬送経路120の下流部を構成する排出経路150に沿って搬送される。排出経路150は、分岐経路160と分岐する位置よりも下流となる位置で、第1排出経路151、第2排出経路152、第3排出経路153に分岐している。すなわち、記録が完了された用紙Pは、排出経路150の上流部を構成する共通排出経路(上流排出経路)154を搬送された後、共通排出経路154の下流端に設けられた案内機構(切替案内部)180により、排出経路150の下流部を構成する第1~第3の各排出経路(下流排出経路)151、152、153のうち何れかの経路へ案内される。
第1排出経路(上方排出経路)151は、記録装置側筐体101の上方へ向かうとともに、分岐経路160に沿うように湾曲して延びて設けられている。第1排出経路151を搬送される用紙Pは、第1排出経路151の終端となるように記録装置側筐体101の一部に開口する排出口155から排出される。そして、排出口155から排出された用紙Pは、鉛直方向Z下側へ落下し、図3において二点鎖線で示すように、積層された状態で載置台156に排紙される。なお、排出経路150の複数箇所に配置された搬送ローラー対131により、用紙Pは、排出口155から片面印刷時における記録面が鉛直方向Zにおいて下を向く姿勢にて載置台156に排紙される。
載置台156は、左右方向Xにおける右方向に向かうにつれて、鉛直方向Z上側に上昇する先上がりの傾斜した形状を有し、この載置台156に用紙Pが積層状態で載置される。このとき、載置台156に載置された各用紙Pは、載置台156の傾斜に沿って左方向に移動し、記録装置側筐体101の排出口155の下側に設けられた縦側壁157に接近して載置される。
また、第1排出経路151は、記録部110により記録された用紙Pが排出口155まで搬送される間において、その用紙Pの表裏を反転させる湾曲反転経路151aを有している。すなわち、湾曲反転経路151aは、記録部110により記録された用紙Pの記録面を内側にして湾曲させるとともに、その用紙Pの記録面が鉛直方向Zにおいて鉛直方向Z上側に向く状態から鉛直方向Z下側に向く状態に用紙Pを反転させる。したがって、排出経路150では、用紙Pは、この湾曲反転経路151aを通ることによって片面印刷時における記録面が載置台156と対峙する状態となって排出口155から排出される。
第2排出経路152は、第1排出経路151よりも鉛直方向Z下側に分岐し、記録部110から記録装置側筐体101の一部を形成する引出面部106に向かって直線的に延びている。そのため、第2排出経路152を搬送される用紙Pは、第1排出経路151のように湾曲した姿勢で搬送されず、その姿勢が記録部110を通過したときと同様に一定に保たれたまま直線的に搬送され、引出面部106に形成された排出口108から引出面部106に取り付けられた排紙トレイ109に排出される。すなわち、第2排出経路152は、鉛直方向における用紙Pの姿勢を反転させることなく排紙トレイ109へ向けて用紙Pを搬送する非反転排出経路として機能する。
第3排出経路(下方排出経路)153は、第2排出経路152よりも鉛直方向Z下側に分岐し、記録装置側筐体101の下方へ向かうように、鉛直方向Zにおいて斜め下側に向かって延びている。そして、その下流端は、搬送装置200が有する導入経路211の上流端と記録装置側筐体101内にて接続されている。すなわち、第3排出経路153を搬送される用紙Pは、搬送装置200へ排出される。
排出経路150の一部及び分岐経路160の一部は、記録装置側筐体101に設けられた引出ユニット170に取り付けられている。この引出ユニット170は、引出面部106と一体的に取り扱い可能に接続されている。そのため、引出ユニット170は、引出面部106が引き出されることによって記録装置側筐体101から引き出され、記録装置側筐体101から露出する。
引出ユニット170には、第1排出経路151の湾曲した内側のガイド面の一部及び分岐経路160の湾曲した外側のガイド面の一部を構成する第1経路形成部171と、分岐経路160の湾曲した内側のガイド面の一部を構成する第2経路形成部172とが、引出ユニット170に設けられた軸173を中心に回動可能に取り付けられている。すなわち、引出ユニット170を引き出した状態において、各経路形成部171、172が軸173を中心として図3における時計回り方向に回動することにより、分岐経路160及び第1排出経路151の内部が露出される(図8、図9参照)。
図4~図6に示すように、案内機構180は、第1案内部181と第2案内部182とを有している。各案内部181、182は、共通排出経路154の下流端から第1~第3の各排出経路151、152、153に分岐する分岐位置190に設けられ、記録部110からの用紙Pの搬送方向となる左右方向Xにおいて、第1案内部181が上流側となる右側、第2案内部182が下流側となる左側に位置するように、ずれて配置されている。また、鉛直方向Zにおいても、第1案内部181が下側、第2案内部182が上側に位置するように、ずれて配置されている。
また、各案内部181、182は、搬送方向となる左右方向Xにおいて下流側となる左側の部分である基端部183、184にそれぞれ軸185、186を有し、それぞれの軸185、186を中心に回動可能に設けられている。各案内部181、182は、それぞれが有する軸185、186を中心に回動することで、搬送方向となる左右方向Xにおいて上流側となる右側の部分であって、基端部183、184とは反対側となる先端部187、188の位置が鉛直方向Zにおいて上下に変位する。すなわち、各案内部181、182は、用紙Pの搬送方向において上流側に位置するそれぞれの先端部187、188が第1経路形成部171に接近する上位置と、第1経路形成部171から離間する下位置の2位置間で回動自在に設けられている。ちなみに、図4に示すように、第1案内部181の先端部187は、第2案内部182の先端部188よりも、用紙Pの搬送方向において上流側に位置する。
換言すると、各案内部181、182は、それぞれ上位置又は下位置に選択的に切り替えられ、共通排出経路154を搬送される用紙Pに対して接触することで、用紙Pを第1~第3の各排出経路151、152、153の何れかへ案内する。ちなみに、各案内部181、182は、互いの回動動作を阻害しないように、例えば基端部183、184から先端部187、188にかけて櫛歯状に形成されることで、互いに干渉しないように構成されている。なお、各案内部181、182におけるこの回動動作は、プリンター100が備える図示しない制御部により制御される。
図4は、第1案内部181の先端部187及び第2案内部182の先端部188の何れもが下位置に位置するときの図である。このとき、第1案内部181の先端部187は、第3排出経路153の上流端を塞ぐように位置し、第2案内部182の先端部188は、第2排出経路152の上流端を塞ぐように位置する。つまり、図4の状態において、案内機構180は、共通排出経路154を搬送される用紙Pを第1排出経路151へ案内する。
図5は、第1案内部181の先端部187が下位置で、第2案内部182の先端部188が上位置に位置するときの図である。このとき、第1案内部181の先端部187は、第3排出経路153の上流端を塞ぐように位置し、第2案内部182の先端部188は、第1排出経路151の上流端を塞ぐように位置する。つまり、図5の状態において、案内機構180は、共通排出経路154を搬送される用紙Pを第2排出経路152へ案内する。
図6は、第1案内部181の先端部187及び第2案内部182の先端部188の何れもが上位置に位置するときの図である。このとき、第1案内部181の先端部187は、第1排出経路151の上流端及び第2排出経路152の上流端を塞ぐように位置し、第2案内部182の先端部188は、第1排出経路151の上流端を塞ぐように位置する。つまり、図6の状態において、案内機構180は、共通排出経路154を搬送される用紙Pを第3排出経路153へ案内する。
次に、搬送装置200について説明する。
図7に示すように、搬送装置200が有する搬送装置側筐体201内には、用紙Pを中間搬送経路(中間経路)210に沿って搬送する中間搬送部220が設けられている。中間搬送経路210は、前後方向Yに沿う方向である媒体の幅方向と交差する方向を搬送方向として用紙Pが湾曲しながら搬送されるように形成されている。
中間搬送部220は、中間搬送経路210に沿って設けられた複数の中間搬送ローラー対221を有している。すなわち、中間搬送ローラー対221が、用紙Pを表裏両側から挟み込んで支持した状態で回転駆動することにより、用紙Pは中間搬送経路210に沿って搬送される。
中間搬送経路210は、その上流端に、プリンター100が有する第3排出経路153の下流端と接続され、搬送装置側筐体201内に用紙Pを導入する導入経路211を有している。導入経路211は、導入部202において鉛直方向Zの上方位置に設けられ、搬送方向において上流側となる記録装置側筐体101内から下流側となる搬送装置側筐体201内に向かって鉛直方向Zと交差する斜め下向きにまっすぐ延びている。すなわち、導入経路211は、記録装置側筐体101の左側面を構成する側壁の一部及び搬送装置側筐体201の右側面を構成する側壁の一部を貫通するように設けられている。また、導入経路211のうち搬送装置側筐体201内に位置する下流部には、導入経路211を搬送される用紙Pを検出するセンサー222が設けられている。
斜め下向きに延びた導入経路211の下流端には、第1分岐経路212の上流端と第2分岐経路213の上流端とがそれぞれ接続されている。第1分岐経路212は、導入経路211の下流端から上向き(図7では左向き)に分岐し、途中で下向きに湾曲するように延びている。第2分岐経路213は、導入経路211の下流端から更に下向き(図7では右向き)に湾曲しながら分岐し、その後は蛇行するように下方へ延びている。すなわち、中間搬送経路210は、導入経路211の下流端である分岐点Aから第1分岐経路212及び第2分岐経路213に分岐する。そして、導入経路211を搬送される用紙Pは、分岐点Aに設けられた案内フラップ(案内部)223の動作によって、第1分岐経路212及び第2分岐経路213の何れかへ案内される。なお、この案内フラップ223は、センサー222が用紙Pを検出した際に送信する信号に基づいて駆動し、導入経路211を搬送される用紙Pを第1分岐経路212へ案内する位置と、第2分岐経路213へ案内する位置との間で位置が切り替えられる。
図7に示すように、第1分岐経路212の下流端には、第1スイッチバック経路214の上流端が接続されている。第1スイッチバック経路214は、その途中から左右方向Xにおいて右向きにやや湾曲した後、鉛直方向Zにおいて搬送装置側筐体201の底面215aに接近するよう下向きに延びている。すなわち、第1スイッチバック経路214の下流端は、第1スイッチバック経路214において最も下方に位置している。また、搬送方向における第1スイッチバック経路214の経路長は、プリンター100が記録可能な用紙Pの搬送方向における媒体長以上に構成されている。
第1スイッチバック経路214において、湾曲箇所よりも下流となる下流部は、左右方向Xにおいて右向きにやや湾曲して搬送される用紙Pを鉛直方向Z下側から支持するガイド214aで構成されている。そして、第1スイッチバック経路214において、湾曲箇所よりも上流となる上流部には、第1スイッチバック経路214を搬送される用紙Pを検出するセンサー224が1つと、正転方向及び逆転方向に回転可能な第1反転ローラー対225が2対設けられている。2対設けられた第1反転ローラー対225は、センサー224が用紙Pを検出した際に送信する信号に基づいて、正転駆動又は逆転駆動を行う。すなわち、第1スイッチバック経路214を搬送される用紙Pは、第1反転ローラー対225によって用紙Pの搬送される向きが反転されたうえで搬送(スイッチバック)される。
また、第1分岐経路212の下流端には、第1分岐経路212から第1スイッチバック経路214への用紙Pの移動を許容する一方、第1スイッチバック経路214から第1分岐経路212への用紙Pの移動を規制する第1規制フラップ226が設けられている。第1規制フラップ226は、図示しない付勢部材による付勢力によって第1分岐経路212の下流端を塞ぐように付勢されている。
一方、図7に示すように、第2分岐経路213の下流端には、第2スイッチバック経路215の上流端が接続されている。第2スイッチバック経路215は、その途中から左右方向Xにおいて右向きに湾曲した後、鉛直方向Zにおいて下向きに延びるように設けられている。第2スイッチバック経路215において、湾曲箇所を含む上流部の下流端は、搬送装置側筐体201の右内側面に向かって開放されている。この下流端と対向する位置には、搬送装置側筐体201の右内側面から搬送装置側筐体201の底面215aに亘って湾曲して延びるガイド部215bが設けられている。すなわち、第2スイッチバック経路215を用紙Pが搬送されると、用紙Pの先端は、その開放された下流端から突出し、突出した用紙Pの先端はガイド部215bにより案内され、搬送装置側筐体201の底面215aへと第1スイッチバック経路214の下流端の下方へ潜り込むように導かれる。
つまり、第2スイッチバック経路215は、ガイド部215bと搬送装置側筐体201の底面215aとを含んで構成されている。また、搬送方向における第2スイッチバック経路215の経路長は、第1スイッチバック経路214の場合と同様に、プリンター100が記録可能な用紙Pの搬送方向における媒体長以上となるように構成されている。もちろん、ガイド部215b及び搬送装置側筐体201の底面215aから構成される第2スイッチバック経路215の下流部は、上流部と同様の構成であってもよいし、ガイド部215bのみで構成されていてもよい。
そして、第2スイッチバック経路215の上流部において、湾曲箇所よりも上流となる位置には、第2スイッチバック経路215を搬送される用紙Pを検出するセンサー227が1つと、正転方向及び逆転方向に回転可能な第2反転ローラー対228が1対設けられている。また、第2反転ローラー対228は、第2スイッチバック経路215の上流部において、湾曲箇所よりも下流となる位置にもう1対設けられている。2対設けられた第2反転ローラー対228は、センサー227から送信される信号に基づいて、正転駆動又は逆転駆動を行う。すなわち、第2スイッチバック経路215を搬送される用紙Pは、第2反転ローラー対228によって用紙Pの搬送される向きが反転されたうえで搬送(スイッチバック)される。
また、第2分岐経路213の下流端には、第2分岐経路213から第2スイッチバック経路215への用紙Pの移動を許容する一方、第2スイッチバック経路215から第2分岐経路213への用紙Pの移動を規制する第2規制フラップ229が設けられている。第2規制フラップ229は、図示しない付勢部材による付勢力によって第2分岐経路213の下流端を塞ぐように付勢されている。
図7に示すように、第1スイッチバック経路214の上流端には、第1合流経路216の上流端が接続されている。すなわち、第1分岐経路212の下流端と第1スイッチバック経路214の上流端とが接続される第1接続点Bから第1合流経路216が左右方向Xにおいて右方向へ湾曲しながら延びている。また、第2スイッチバック経路215の上流端には、第2合流経路217の上流端が接続されている。すなわち、第2分岐経路213の下流端と第2スイッチバック経路215の上流端とが接続される第2接続点Cから第2合流経路217が左右方向Xにおいて左方向へ湾曲しながら延びている。そして、第1スイッチバック経路214と第2スイッチバック経路215との間に位置する合流点Dにて第1合流経路216及び第2合流経路217が合流している。
つまり、第1分岐経路212から第1スイッチバック経路214へ用紙Pが搬送される際には、用紙Pの先端が接触することで第1規制フラップ226が第1分岐経路212の下流端を開くように変位される。一方、第1スイッチバック経路214から用紙Pが反転搬送(スイッチバック)される際には、第1規制フラップ226により第1分岐経路212へ搬送されることが規制され、用紙Pは第1合流経路216へ案内される。また、第2分岐経路213から第2スイッチバック経路215へ用紙Pが搬送される際には、用紙Pの先端が接触することで第2規制フラップ229が第2分岐経路213の下流端を開くように変位される。一方、第2スイッチバック経路215から用紙Pが反転搬送(スイッチバック)される際には、第2規制フラップ229により第2分岐経路213へ搬送されることが規制され、用紙Pは第2合流経路217へ案内される。
そして、第1合流経路216の下流端と第2合流経路217の下流端とが接続される合流点Dには、導出経路218の上流端が接続されている。導出経路218は、後処理装置300へ向けて第1スイッチバック経路214と第2スイッチバック経路215の間を通過するように湾曲しながら下向きに延びた後、第1スイッチバック経路214の下流端の下側を回り込むように迂回して、導出部203の上部へと延びている。導出経路218の下流端は、搬送装置側筐体201における左側の側壁の一部を貫通し、後処理装置300に向けて延びる。すなわち、中間搬送経路210は、導入経路211、第1分岐経路212、第2分岐経路213、第1スイッチバック経路214、第2スイッチバック経路215、第1合流経路216、第2合流経路217及び導出経路218を有している。また、各点A、B、C、Dの位置関係は、鉛直方向Zにおいて上から「A、B、D、C」の順に配置され、左右方向Xにおいて右から「C、A、D、B」の順に配置されている。
なお、本実施形態において、第1分岐経路212と第2分岐経路213の搬送方向における経路長は、互いに略同一の長さとなっている。また、第1合流経路216と第2合流経路217の経路長もまた互いに略同一の長さとなっている。
次に、プリンター100、及びプリンター100と搬送装置200とを含んで構成される記録システム1000における用紙Pの搬送不良を解消する際の作用について説明する。
図3に示すプリンター100のように、用紙Pのようなシート状の媒体に記録を行い、搬送する記録装置においては、用紙Pが経路に沿って搬送される途中で紙詰まりなどの搬送不良を生じてしまうことがある。特に、インクなどの液体を媒体に吐出することで記録を行う記録装置においては、用紙Pの記録面が膨張し、記録面を凸形状とするカールが発生し易くなるため、記録部110よりも下流側にて搬送不良が生じ易い。そこで、本実施形態のプリンター100は、そうした搬送途中で紙詰まりなどした用紙Pを取り出しやすくするために、排出経路150の一部及び分岐経路160の一部を記録装置側筐体101から引き出し可能な構成としている。
図8に示すように、排出経路150及び分岐経路160にて用紙Pの紙詰まりが生じた際には、まず引出面部106に取り付けられた排紙トレイ109を取り外した後に、ユーザーが引出面部106に形成された手掛部107に手を掛けて、用紙Pの搬送方向となる左右方向Xにおいて左方向である引出方向に沿って引出面部106を引き出す。引出面部106が引出方向に沿って引き出されると、引出面部106とともに引出ユニット170が記録装置側筐体101から引き出される。すなわち、排出経路150を構成する湾曲反転経路151a、第2排出経路152、第3排出経路153及び分岐経路160の一部が引き出される。さらに、共通排出経路154の下流端である分岐位置190に設けられた案内機構180も記録装置側筐体101外へ引き出される。
このとき、プリンター100の左側に取り付けられた搬送装置200を構成する導入部202の高さは、引出面部106の下部よりも低くなるよう形成されているため、導入部202は引出ユニット170が引き出される際に引出面部106及び引出ユニット170と干渉しない。また、導入部202は、その左右方向Xにおける長さが、引出ユニット170が左右方向Xに移動する領域(移動領域)、つまり引出ユニット170が記録装置側筐体101から引き出される長さよりも長くなるよう形成されている。そのため、導入部202よりも高くなるよう形成されている導出部203は、引出ユニット170が引き出される際に引出面部106及び引出ユニット170と干渉しない。すなわち、搬送装置200は、引出ユニット170が記録装置側筐体101から引き出される際の移動領域を避けるように形成されている。なお、仮に、引出ユニット170を用紙Pの搬送方向と交差する方向に引き出し可能な構成とすると、引出ユニット170を引き出す際に、紙詰まりの生じた用紙Pが経路内で千切れてしまう虞があるため、引出ユニット170は用紙Pの搬送方向に沿う方向に引き出し可能な構成であることが好ましい。
図9に示すように、引出ユニット170を記録装置側筐体101から引き出した後、引出ユニット170に取り付けられた第1経路形成部171及び第2経路形成部172を、軸173を中心に時計回り方向に回動させる。そうすると、第1排出経路151を構成する湾曲反転経路151aの内側のガイド面が外側のガイド面から離間し、また分岐経路160の外側のガイド面と内側のガイド面とが離間する。湾曲反転経路151a及び分岐経路160の外側のガイド面と内側のガイド面とがそれぞれ離間することで、経路内が開放され、経路内で紙詰まりを起こした用紙Pを取り出し可能な状態となる。また、引出ユニット170を引き出す際に、引出ユニット170にではなく記録装置側筐体101に用紙Pが残る場合がある。この場合には、用紙カセット103の上方に形成された開口部105bから手を差し入れることで用紙Pを引き抜き、搬送不良を解消する。なお、プリンター100のフレーム105に形成された開口部105bは、引出ユニット170が記録装置側筐体101から引き出されていない状態において、前後方向Yからみて引出ユニット170と少なくとも一部が重なる位置に形成されている。
次に、プリンター100が用紙Pに対して記録を行う際の作用について説明する。
図3に示すように、プリンター100において、用紙Pに記録を行う際には、用紙カセット103に収容される用紙P又は挿入口141bから挿入される用紙Pの何れかに記録を行う。このとき、用紙カセット103に収容できない媒体、特に厚紙のような剛性の大きな媒体に記録を行うとすると、厚紙は挿入口141bから挿入され、第1供給経路141を通って記録部110へ搬送される。厚紙のような媒体は、剛性が大きいことから湾曲させ難いため、湾曲の程度が大きな搬送経路120を搬送されると紙詰まりなどの搬送不良を引き起こしてしまうことがある。そのため、第1供給経路141は、第2供給経路142と比較して湾曲の程度が小さく、記録部110へ向かって真っ直ぐ延びる直線的な経路となっている。
記録部110により記録を行われた厚紙は、排出経路150を構成する第1排出経路151、第2排出経路152及び第3排出経路153の何れかへ搬送されることとなる。ここで、記録済とされた厚紙を、載置台156に載置しようとすると、第1排出経路151を搬送されることとなる。しかし、第1排出経路151は、大きく湾曲した湾曲反転経路151aを有しているため、厚紙が搬送されると、搬送不良が生じる虞がある。また、第3排出経路153から搬送装置200を介して後処理装置300が有するスタッカー302へ厚紙を載置しようとすると、搬送装置200に湾曲の程度が小さな経路を設ける必要が生じるため、搬送装置200が有する中間搬送経路210の設計の自由度を低下させてしまう虞がある。
そこで、本実施形態のプリンター100は、共通排出経路154に沿って真っ直ぐ延びるように形成された第2排出経路152が設けられている。すなわち、第2供給経路142から記録部110を通過して共通排出経路154及び第2排出経路152を搬送される厚紙は、挿入口141bに挿入される際に鉛直方向Z上側となる一面が常に上側を向いた状態で搬送される。そして、記録面となる一面が上側を向いたまま、排出口108から排出され、排紙トレイ109に載置される。
次に、搬送装置200が用紙Pを搬送する際の作用について説明する。
図3に示すように、プリンター100が有する記録部110により記録が行われた用紙Pに後処理を行う場合、用紙Pは搬送装置200を介して後処理装置300へ搬送される。すなわち、記録済とされた用紙Pは、分岐機構147により共通排出経路154から第3排出経路153へ案内され、記録装置側筐体101内にて導入経路211に導入される。
図10(a)に示すように、搬送装置側筐体201内へ導入される1枚目の用紙P1は、導入経路211に沿って下流側へ搬送される。そして、導入経路211の下流端に設けられた案内フラップ223が、第2分岐経路213の上流端を塞ぐように位置することで、用紙P1は第1分岐経路212へ案内される。続いて、用紙P1が導入経路211を通り過ぎると、導入経路211へ2枚目の用紙P2が導入される。
図10(b)に示すように、第1分岐経路212を搬送される用紙P1は、正転駆動する第1反転ローラー対225により第1スイッチバック経路214へと搬送される。一方、導入経路211を搬送される用紙P2は、案内フラップ223が第1分岐経路212の上流端を塞ぐように位置することで、第2分岐経路213へ案内される。第2分岐経路213へ搬送される用紙P2は、正転駆動する第2反転ローラー対228により第2スイッチバック経路215へ搬送される。続いて、用紙P2が導入経路211を通り過ぎると、導入経路211へ3枚目の用紙P3が導入される。
図10(c)に示すように、第1スイッチバック経路214を下流側に搬送され、第1スイッチバック経路214内に収められた用紙P1は、逆転駆動する第1反転ローラー対225により、第1スイッチバック経路214の下流側から上流側へ向かって搬送され、第1合流経路216を通って、導出経路218へと搬送される。一方、第2スイッチバック経路215を搬送される用紙P2は、その先端が、第2スイッチバック経路215の開放された下流端から突出し、ガイド部215bに沿って搬送装置側筐体201の底面215aまで導かれる。なお、第2スイッチバック経路215を搬送される用紙Pの搬送方向における媒体長によっては、搬送装置側筐体201の底面215aまで導かれないこともある。また、導入経路211を搬送される用紙P3は、案内フラップ223により第1分岐経路212へ案内される。続いて、用紙P3が導入経路211を通り過ぎると、導入経路へ4枚目の用紙P4が導入される。
図11(a)に示すように、第2スイッチバック経路215内に収められた用紙P2は、逆転駆動する第2反転ローラー対228により、第2スイッチバック経路215の下流側から上流側へ向かって搬送され、第2合流経路217を通って、導出経路218へと搬送される。一方、第1分岐経路212を搬送される用紙P3は第1スイッチバック経路214へ搬送される。
図11(b)に示すように、第1スイッチバック経路214を搬送される用紙P3は、第1反転ローラー対225により第1合流経路216を通って導出経路218へと搬送される。一方、導入経路211を搬送される用紙P4は、案内フラップ223により、第2分岐経路213へ案内され、第2スイッチバック経路215へ搬送される。
すなわち、導入経路211を次々と搬送される各用紙P1、P2、P3、P4は、案内フラップ223によって第1分岐経路212、第2分岐経路213へ交互に案内される。例えば、1枚目の用紙P1が第2分岐経路213へ案内される場合には、2枚目の用紙P2は、第1分岐経路212へ搬送されることとなる。
このようにして、プリンター100にて記録が行われた用紙Pは、搬送装置200によってその姿勢を反転され、片面印刷時における記録面が鉛直方向Z下側を向いた状態で後処理装置300へと搬送される。また、その際に、用紙Pにカールが生じた状態で後処理装置300へ搬送されることは好ましくないため、搬送装置側筐体201内において中間搬送経路210は、湾曲し、蛇行するように延びる経路形状とすることで用紙Pの搬送方向における経路長を確保している。
すなわち、記録部110が有する記録ヘッド111にインクが付着されることで生じる用紙Pのカールは、時間の経過とともに徐々に収まっていくことが知られている。そのため、搬送装置200は、中間搬送経路210の経路長を確保することで、用紙Pに生じるカールの程度が所定以下となるまでに要する時間を、用紙Pが中間搬送経路210を搬送されるために要する時間として確保している。その後、用紙Pは、後処理装置300にて、裁断やステープルなどの後処理が行われる。
特にラインヘッド型の記録ヘッド111により用紙Pに高速印字をして高速搬送をするものであるから、用紙Pは十分に乾燥されることなく搬送される可能性がある。すなわちカールが十分に収まらない状態で後処理装置300へと搬送されてしまい、後処理を正しくできない恐れがある。しかしながら、乾燥時間を確保するために中間搬送経路210における搬送速度を落としてしまうと、記録時には高速で搬送された用紙が中間搬送経路210にて先行する用紙と衝突することのないように用紙間距離をとることになってしまうため全体的なスループットが落ちてしまう。特に先行する用紙が後処理を行っている最中に後続の用紙が先行する用紙と衝突する可能性がある。
そこで、搬送装置200においては、上述した第1スイッチバック経路214及び第2スイッチバック経路215といった複数のスイッチバック経路を設けることにより、搬送装置200内の大型化を抑制しつつ中間搬送経路210の経路長を確保して乾燥時間を設けることができる。また、用紙の記録時においても用紙間距離を不必要に広げずに済み、スループットを低下させないことと、を両立することが可能である。また、上記した通り、湾曲し、蛇行するように延びる経路形状を中間搬送経路210に用いることで、より一層、乾燥時間を稼ぐこともできる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)プリンター100が有する引出ユニット170が引き出される際の移動領域は、記録システム1000を構成する搬送装置200及び後処理装置300を避けるように構成されている。したがって、プリンター100における用紙Pの搬送不良を解消する際に、媒体の除去を容易に行うことができる。
(2)排出経路150及び分岐経路160において用紙Pの搬送不良が生じた際に、引出ユニット170を記録装置側筐体101から引き出すことで、経路内に残った用紙Pの搬送不良を解消するが、引き出す際に用紙Pが記録装置側筐体101内に残ることがある。このような場合であっても、記録装置側筐体101に形成された開口部105bからユーザーが手を差し入れることによって、容易に用紙Pを記録装置側筐体101内から取り出すことができる。
(3)引出ユニット170に設けられ、湾曲反転経路151aの一部を構成する第1経路形成部171及び分岐経路160の一部を構成する第2経路形成部172が、軸173を中心として回動可能に設けられている。したがって、湾曲反転経路151a及び分岐経路160における用紙Pの搬送不良を容易に解消できる。
(4)引出ユニット170は、第1経路形成部171の回動支点である軸173が記録装置側筐体101から露出する位置まで引き出し可能に構成されているため、第1経路形成部171を回動させる際に、第1経路形成部171の先端が記録装置側筐体101と干渉してしまう虞を抑制できる。
(5)記録装置側筐体101から引き出される引出ユニット170が、用紙Pの搬送不良が生じ易い分岐位置190に設けられた案内機構180とともに、記録装置側筐体101から引出可能に構成されている。したがって、プリンター100における用紙Pの搬送不良を解消する際に用紙Pの除去を容易に行うことができる。
(6)厚紙のように剛性が大きく、後処理の不要な用紙Pに対して記録を行う場合、プリンター100には、鉛直方向Zにおける用紙Pの姿勢を反転されることなく用紙Pが搬送される非反転排出経路としての第2排出経路152が設けられている。すなわち、厚紙は、下方排出経路としての第3排出経路153を介して後処理装置300へ向けて搬送される必要がないため、用紙Pを搬送するに際して無駄な時間がかからない。したがって、用紙Pに対して後処理を行う後処理装置300がプリンター100に取り付けられた場合であっても剛性が大きく後処理の不要な用紙Pに対して搬送時間を短縮することができる。
(7)第2排出経路152は、共通排出経路154が延びる方向に沿って直線的に延びているため、厚紙のように剛性の大きな媒体が搬送される場合であっても搬送不良が生じる虞を低減することができる。
(8)第2排出経路152は、鉛直方向Zにおいて第3排出経路153の上方を延びて設けられているため、第2排出経路152を搬送される用紙Pが排出される排紙トレイ109の下方に搬送装置200や後処理装置300などの外部装置を設けることができる。したがって、プリンター100に外部装置が取り付けられた場合において、鉛直方向Z上側から見たときに、装置全体の設置面積の増加を抑制することができる。
(9)第1排出経路151の一部及び分岐経路160の一部が取り付けられた引出ユニット170を記録装置側筐体101から引き出すことで、経路内の用紙Pを容易に取り出すことができる。したがって、第1排出経路151及び分岐経路160において生じる用紙Pの搬送不良を解消することができる。
(10)排紙トレイ109は、搬送方向下流側に向かうにつれて鉛直方向Z上側に上昇する先上がりの傾斜した上昇形状を有しているため、すでに載置された用紙Pが、後から排出される用紙Pに押し出されて落下してしまう虞を低減することができる。
(11)中間搬送経路210を有する搬送装置200をプリンター100と後処理装置300との間に設けることで、後処理の必要な用紙Pが搬送される搬送時間を稼ぐことができる。すなわち、用紙Pの搬送時間を稼ぐことで、記録部110による記録に起因して用紙Pに生じるカールの程度を抑えることができる。
(12)第1スイッチバック経路214及び第2スイッチバック経路215は、湾曲し、蛇行するように延びた経路形状であるため、各スイッチバック経路214、215の経路長を確保しつつも、比較的に小さな空間内に収めることができ、搬送装置側筐体201の小型化に貢献できる。
(13)排紙トレイ109は、前後方向Yから見たときに、中間搬送経路210と鉛直方向で重なる部分を有しつつも、上昇形状により、鉛直方向Zにおいて中間搬送経路210の最も高い部分を避けて配置されている。そのため、排紙トレイ109の上昇形状を確保しつつも、高い位置で後処理装置300に用紙Pを搬送することができる。後処理装置300に対して高い位置で用紙Pを受け渡すことで、スタッカー302の積載量や、導出経路218の経路長を確保することができる。
(14)搬送装置200は、導入経路211から導入される用紙Pの処理速度を向上させるために、用紙Pをスイッチバックさせるスイッチバック経路を二つ、つまり第1スイッチバック経路214と第2スイッチバック経路215とを有している。ここで、用紙Pに後処理を行う後処理装置300が搬送装置200に取り付けられることを考慮すると、鉛直方向Zにおいて、高い位置で後処理装置300に用紙Pを導出することが好ましい。そのために、導出経路218は、第1スイッチバック経路214の下流端を迂回するように延びる構成となるため、鉛直方向Zにおいて搬送装置200の寸法が大きくなってしまう虞があった。
そこで、第1分岐経路212の下流端と第1スイッチバック経路214の上流端とが接続される第1接続点Bが、第2分岐経路213の下流端と第2スイッチバック経路215の上流端とが接続される第2接続点Cよりも鉛直方向Zにおいて上側となるように設けられている。すなわち、第1スイッチバック経路214の下流端が鉛直方向Zにおいて引き上げられるため、導出経路218が第1スイッチバック経路214の下流端を迂回するように延びる構成であっても鉛直方向Zにおける搬送装置200の高さ寸法を抑えることができる。したがって、用紙Pの処理速度を向上させつつも、装置の大型化を抑制することができる。
(15)第1スイッチバック経路214の上流端が接続される第1接続点Bは、導入経路211の下流端から第1分岐経路212及び第2分岐経路213に分岐する分岐点Aよりも鉛直方向Zにおいて下方に位置しているため、第1接続点Bが分岐点Aよりも上方に位置することによって搬送装置200が大型化する虞を低減することができる。
(16)導入経路211は、鉛直方向Zと交差する斜め下向きに延びて設けられているため、図7に示すように、導入経路211の下流端から左向きに分岐する第1分岐経路212及び下向きに分岐する第2分岐経路213へと比較的容易に分岐させることができる。
(17)導入経路211は、搬送装置側筐体201において、鉛直方向Z上側に設けられているため、鉛直方向Z下向きに延びる第1スイッチバック経路214及び第2スイッチバック経路215を設けるにあたって、導入経路211を短く形成することができる。したがって、搬送装置側筐体201内における中間搬送経路210の経路形状の自由度を向上させることができる。
(18)第2スイッチバック経路215の下流側となる部分は、ガイド部215bと搬送装置側筐体201の底面215aとから構成されているため、製造に要するコストを低減させることができる。
(19)第2スイッチバック経路215の下流側となる部分は、搬送装置側筐体201の底面215aを含んで構成されているため、第2スイッチバック経路215が、第1スイッチバック経路214と同様に鉛直方向Zにおいて下向き延びる構成と比べて、搬送装置200が大型化してしまう虞を低減することができる。
(20)中間搬送経路210は、経路全体が蛇行するように湾曲することで経路長を確保している。経路長を確保することで、用紙Pに生じるカールが、中間搬送経路210を搬送される間に所定以下に収まり、カールが収まった状態で後処理装置300に導出することができる。したがって、搬送装置200は、用紙Pに生じるカールの程度を抑えた状態で排出することができる。
(21)搬送装置200において、複数の用紙Pを連続して処理する場合、第1スイッチバック経路214と第2スイッチバック経路215の二つのスイッチバック経路が設けられているため、搬送装置200に導入される2枚目の用紙P2は、先行する1枚目の用紙P1が導出されるまで待機する必要がない。したがって、用紙P1に続いて次々と用紙P2、P3、P4を導出することができるため、用紙Pの処理速度を向上させることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、図12に示すように、第2分岐経路213の下流端と第2スイッチバック経路215の上流端とが接続される第2接続点Cが、左右方向Xにおいて、導入経路211の下流端から第1分岐経路212及び第2分岐経路213へ分岐する分岐点Aよりも左側に配置される構成であってもよい。この構成によれば、図7に示す実施形態と比べて、中間搬送経路210の経路長を確保しつつも、左右方向X及び鉛直方向Zにおける中間搬送経路210の寸法を小さくすることができる。
・上記実施形態において、プリンター100が有する引出ユニット170は、図13に示すように、記録装置側筐体101に対して回動可能に設けられた回動ユニット174として構成されていてもよい。この構成において、回動ユニット174は、記録装置側筐体101に設けられた回動軸175を中心に回動することで、排出経路150の一部が露出される。このとき、回動ユニット174は、第1排出経路151が有する湾曲反転経路151aの外側のガイドのガイド面を構成しているため、湾曲反転経路151aの経路内が開放される。また、案内機構180も回動ユニット174に取り付けられているため、回動ユニット174とともに記録装置側筐体101に対して回動される。すなわち、案内機構180が回動ユニット174とともに記録装置側筐体101外へ移動することで、用紙Pの搬送不良が生じ易い位置である分岐位置190が、左右方向Xにおける左方向から見たときに露出されるようになっている。したがって、記録装置における媒体の搬送不良を解消する際に媒体の除去を容易に行うことができる。なお、回動ユニット174が回動する際に互いに干渉する虞のある部材は、櫛歯状に形成するなどして互いに干渉しないよう構成される。
・上記実施形態において、図7の破線で示す箇所に、ユーザーが手を差し入れ可能な開口部230が形成されていてもよい。この構成によれば、搬送装置200内で紙詰まりなどの搬送不良が生じた際には、搬送装置200の外観を構成する開閉カバーを開け、中間搬送経路210を形成する側壁に設けられた開口部230から手を差し入れて紙詰まりを生じた用紙Pを引き出すことにより搬送不良を解消することができる。
・上記実施形態において、搬送装置200は、鉛直方向Zにおける導入部202の大きさを引出面部106の下部よりも低くなるよう形成されることで、引出ユニット170の移動領域を避ける構成に限らない。例えば、搬送装置200が、引出面部106の上部よりも高い位置に取り付けられる構成であってもよい。
・上記実施形態において、記録システム1000は、プリンター100が有する記録装置側筐体101内に、搬送装置200が有する中間搬送経路210が設けられる構成であってもよい。つまり、プリンター100と搬送装置200とが一体化された構成であってもよい。
・上記実施形態において、搬送装置200を構成する導出部203は、鉛直方向Zにおいて導入部202よりも高くなるよう形成される構成に限らない。例えば、導入部202と略同一となる高さや、導入部202よりも低くなるよう形成される構成であってもよい。
・上記実施形態において、引出ユニット170は、引出面部106を引き出すことにより間接的に引き出される構成に限らない。例えば、引出面部106の代わりに、スライド式の扉や開閉式のカバーを設けて、引出ユニット170に直接手を掛けて引き出す構成であってもよい。
・上記実施形態において、引出ユニット170は、手掛部107に手を掛けることにより、手動で引き出される構成に限らない。例えば、操作部102を介して自動的に引出ユニット170が引き出される構成であってもよい。
・上記実施形態において、後処理装置300は、搬送装置200から搬送される用紙Pに対して、後処理装置側筐体301内にて後処理を行わずに、そのままスタッカー302に載置する構成であってもよい。
・上記実施形態において、案内機構180は、プリンター100が備える図示しない制御部により制御される構成に限らない。例えば、記録装置側筐体101に案内機構180を動作させるレバーを設けて、案内機構180を構成する第1案内部181と第2案内部182の上位置と下位置とを手動により切り替える構成であってもよい。
・上記実施形態において、第1排出経路151、第2排出経路152及び第3排出経路153は、一つの分岐位置190から分岐する構成に限らない。例えば、共通排出経路154の途中から第3排出経路153に分岐し、共通排出経路154の下流端で、第1排出経路151と第2排出経路152とに分岐する構成であってもよい。また、共通排出経路154の途中から第1排出経路151に分岐し、共通排出経路154の下流端で第2排出経路152と第3排出経路153とに分岐する構成であってもよい。
・上記実施形態において、第2排出経路152は、共通排出経路154に沿って更に真っ直ぐ延びる構成に限らない。例えば、鉛直方向Zにおいて、やや上向きに傾斜して延びる構成や、下向きに傾斜して延びる構成であってよいし、やや湾曲して延びる構成であってもよい。
・上記実施形態において、導入経路211は、搬送装置側筐体201の側面を貫通して延びる構成に限らない。例えば、上面を貫通して延びる構成であってもよい。
・上記実施形態において、導入経路211は、搬送装置側筐体201内において、鉛直方向Z上側に設けられる構成に限らない。例えば、下側に設けられる構成であってもよい。
・上記実施形態において、ガイド部215b及び搬送装置側筐体201の底面215aから構成される第2スイッチバック経路215の下流部は、第1スイッチバック経路214と同様に、用紙Pを片面から支持するガイドから構成されていてもよい。
・上記実施形態において、分岐点A、第1接続点B、第2接続点C、合流点Dの位置関係は一例を示しただけであり、これに限らない。例えば、第1接続点Bが分岐点Aよりも鉛直方向Zにおいて上側に位置していてもよいし、合流点Dが分岐点Aよりも左右方向Xにおいて右側に位置していてもよい。第1接続点Bが第2接続点Cよりも上側に位置していればよい。
・上記実施形態において、第1スイッチバック経路214は、第1スイッチバック経路214の下流端が、第1スイッチバック経路214において最下方に位置するように延びる構成に限らない。例えば、第1スイッチバック経路214は、第1スイッチバック経路214の途中部分が最下方に位置するように湾曲して延びる構成であってもよい。
・上記実施形態において、第1分岐経路212の経路長と第2分岐経路213の経路長とは、それぞれ異なっていてもよい。中間搬送ローラー対221による搬送速度を変えることで、中間搬送経路210を搬送される2枚目の用紙P2が、先行する1枚目の用紙P1と干渉する虞を低減できる。
・上記実施形態において、第1合流経路216の経路長と第2合流経路217の経路長とは、それぞれ異なっていてもよい。中間搬送ローラー対221による搬送速度を変えることで、中間搬送経路210を搬送される2枚目の用紙P2が、先行する1枚目の用紙P1と干渉する虞を低減できる。
・上記実施形態において、搬送装置200が有する中間搬送経路210は、導入経路211の下流端から導出経路218の上流端へ接続される直線経路を備えていてもよい。直線経路を搬送されることにより、用紙Pは搬送される向きが反転されないため、片面印刷時における記録面が鉛直方向Zにおいて上側向いたまま、用紙Pを後処理装置300に導出することができる。
・上記実施形態において、プリンター100は、分岐経路160と第1排出経路151とが、一つの経路で共用される構成であってもよい。
・上記実施形態において、第3供給経路143は、鉛直方向Zにおいて記録部110の下側を通るように延びる構成であってもよい。
・上記実施形態において、記録部110が用紙Pに記録を行う際は、ベルト搬送部132が有するベルト135の外周面を支持面として用紙Pを支持する構成に限らず、例えば支持台を設け、その支持台の鉛直方向Z上側となる面を支持面として用紙Pを支持する構成であってもよい。
・上記実施形態において、用紙Pを搬送経路120に沿って搬送する搬送部130は、搬送ローラー対131に限らず、例えば、コンベヤで構成されていてもよい。
・上記実施形態において、第1経路形成部171及び第2経路形成部172は、軸173を中心に回動させる構成に限らず、引出ユニット170から着脱可能な構成であってもよい。
・上記実施形態において、排紙トレイ109が有する上昇形状とは、鉛直方向Zにおいて上向きに上昇するよう傾斜した形状に限らず、湾曲しながら上昇する形状であってもよい。
・上記実施形態において、記録部110が有する記録ヘッド111は、ラインヘッド型に限らず、用紙Pの搬送方向と交差する幅方向に沿って移動可能なシリアルヘッド型であってもよい。
・上記実施形態において、記録装置は、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を)噴射したり吐出したりして記録を行う流体噴射装置であってもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射して記録を行う液状体噴射装置であってもよい。また、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。なお、本明細書において「流体」とは、気体のみからなる流体を含まない概念であり、流体には、例えば液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。