JP7109075B2 - 演算装置及びプログラム - Google Patents
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これに関し、仮想3次元空間内において弾性体の形状、さらには拘束力及び拘束モーメントを推定する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
以下、図面を参照して本実施形態の演算装置10について説明する。
図1は、本実施形態の演算装置10の機能構成の一例を示す図である。この演算装置10は、弾性体ERの推定形状SPや、弾性体ERのティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fn、弾性体ERのベース部BSを固定するためのベース力fb、ベースモーメントmbを算出する。以下の説明において、弾性体ERの推定形状SP、弾性体ERのティップ部TPの推定位置pn、推定姿勢Fn、弾性体ERのベース部BSを固定するためのベース力fb、ベースモーメントmbを総称して「弾性体ERの状態」とも記載する。
図2を参照して弾性体ERについて説明する。
図2は、本実施形態の弾性体ERを把持しているロボットRBの外観の一例を示す図である。この一例では、ロボットRBとは、単腕多関節ロボットであり、腕の先端に把持部HDを備えている。この把持部HDは、種々の物体を把持可能である。この一例では、把持部HDは、弾性体ERのティップ部TPを把持する。
この一例において、弾性体ERは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリイミドなどの合成樹脂や、鋼板などの金属などの可撓性を有する材料によって構成され、例えば、全体が均一な厚みと幅によって形成されている。弾性体ERの端部のうち、位置及び姿勢が固定されている側をベース部BSと、ロボットRBの把持部HDに把持されて移動可能である側をティップ部TPという。以下の説明において、ベース部BSを弾性体ERの固定端ともいい、ティップ部TPを弾性体ERの移動端ともいう。この弾性体ERは、その全長にわたって各部が互いにほぼ等しいばね乗数を有する。
ベース部BSの位置及び姿勢が固定されている状態においてティップ部TPの位置及び姿勢を変化させると、弾性体ERは、弾性体ERの性状(形状、材質など)と、ベース部BSの位置及び姿勢とティップ部TPの位置及び姿勢との相対関係によって定まる形状に変化する。
弾性体ERのベース部BS(固定端)の位置及び姿勢を固定する固定部には、弾性体ERの弾性力に基づく力及びモーメントが加わる。この弾性体ERから固定部に対して加わる力及びモーメントを、ベース力fb及びベースモーメントmbとよぶ。このベース力fb及びベースモーメントmbは、ティップ部TPの位置及び姿勢の変化に伴い、すなわち弾性体ERの形状変化に伴い変化する。ここで、ベース部BS及びティップ部TPの位置及び姿勢について図3を参照して説明する。
演算装置10の具体的な機能構成及び動作について説明する。
図1に戻り、演算装置10は、取得部110と、形状算出部120と、誤差算出部130と、力モーメント算出部140と、イタレーション制御部150と、判定部160と、出力部170と、記憶部180とを備える。なお、この一例においては、演算装置10が記憶部180を内蔵するものとして説明するが、これに限られない。例えば、記憶部180がクラウドサーバなどによって実現されるなど、演算装置10と記憶部180とが別々の装置として構成されてもよい。
記憶部180には、モデル情報MDLが記憶されている。モデル情報MDLとは、弾性体ERを複数のばね関節と剛体リンクとが交互に連なる構造体として離散化モデリングした情報である。具体的には、モデル情報MDLは、弾性体ERを疑似的に、ある単位長さlの疑似剛体と、疑似剛体どうしを繋ぐ関節と、この関節において疑似剛体どうしを3次元方向にわたって繋ぐ所定のばね定数を有するばねとを含む、ばね関節と剛体リンクとが交互に連なる構造体と見なしてモデリングされている。
弾性体ERのベース部BSからティップ部TPまでの長さ(すなわち弾性体ERの全長)をLとし、弾性体ERを上述のばね関節によって疑似的に分割する所定の分割数をnとする。この場合、上述の疑似剛体の長さlはそれぞれL/nである。なお、疑似剛体の長さlは、疑似剛体ごとに互いに異なっていてもよい。
この一例において各ばね関節は3自由度を有し、それぞれの角度を(θT,i)、(θN,i)、(θB,i)∈Cとする。ここでインデックスiは、ばね関節および剛体リンクの配列の順番を示し、その値は1(ベース部BS側)からn(ティップ部TP側)までである。ばね関節の角度をθiによって表す。ここで、θi=[θT,iθN,iθB,i]Tである。ベース部BS側から数えてi番目の剛体リンクの姿勢及び(i-1)番目のばね関節の位置は、式(1)及び式(2)によって示される。
なお、以下の説明において、ベース部BSを0番目の疑似剛体とし、ティップ部TPを(n+1)番目の疑似剛体とする。また、ベース部BSの位置を基準位置p0と、ベース部BSの姿勢を基準姿勢F0とも称する。なお、pnはティップ部の位置となる。
取得部110は、取得した基準位置p0及び基準姿勢F0を形状算出部120に出力する。また、取得部110は、取得した目標位置p*及び目標姿勢F*を誤差算出部130に出力する。
形状算出部120は、上述の式(10)に基づいて、ベース部BS側からティップ部TPまでの各ばね関節の位置及び姿勢をベース部BS側から順に求めることにより、ティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fnを算出する。また、形状算出部120は、算出した各ばね関節の位置及び姿勢(すなわち、θi)をインデックス順に算出することにより、ベース部BSからティップ部TPまでの弾性体ERの推定形状SPを算出する。
形状算出部120は、算出したティップ部TPの推定位置pn、推定姿勢Fn及び弾性体ERの推定形状SPを出力部170に出力する。
誤差算出部130は、算出した誤差eを力モーメント算出部140及び判定部160に出力する。
また、判定部160は、誤差eの大きさが所定の許容範囲TOL内でないと判定した場合(ステップS40;NO)には、処理をステップS50に進める。
ここで、記憶部180には、ヤコビ行列Jが記憶されている。本実施形態のヤコビ行列Jとは、ベース部BSにおいて固定部に加わるベース力fb及びベースモーメントmbと、ティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fnとの関係を示す写像のヤコビ行列であり、6行×6列の行列である。
このヤコビ行列Jは、式(12)~式(19)に示すように、3n行×3n列の行列Mと、3n行×6列の行列b及びcからなる。
演算装置10の機能構成について説明を続ける。イタレーション制御部150は、イタレーション演算の実行を制御する。本実施形態でいうイタレーションとは、上述したステップS20からステップS50までを反復して実行することにより、ティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fnを、ステップS10において取得されるティップ部TPの目標位置p*及び目標姿勢F*に近づけていく手順をいう。また、イタレーション演算とは、イタレーション1回あたりに実行されるステップS20からステップS50までの一連の演算をいう。
力モーメント算出部140は、今回(例えば、イタレーション回数N=0)のイタレーション演算によって算出された誤差eに基づいて固定部に加わるベース力fb及びベースモーメントmbを算出する。
イタレーション制御部150は、力モーメント算出部140によってベース力fb及びベースモーメントmbが算出されると、イタレーション回数Nに1を加算(例えば、イタレーション回数N=1に)する。イタレーション制御部150は、今回(例えば、イタレーション回数N=0)のイタレーション演算によって算出されたベース力fb及びベースモーメントmbを形状算出部120に対して供給することにより、次回(例えば、イタレーション回数N=1)のイタレーション演算を実行させる。すなわち、イタレーション制御部150は、次回のイタレーション演算として、処理をステップS20に戻して各ステップSを反復して実行させる。
また、出力部170は、上述のイタレーション演算が収束した場合の、力モーメント算出部140が算出したベース力fb及びベースモーメントmbを、出力デバイスに対して出力してもよい。ここで、イタレーション演算が収束した場合とは、ティップ部TPの目標位置p*及び目標姿勢F*に対して、算出された推定位置pn及び推定姿勢Fnが許容範囲TOL内になった場合をいう。すなわちこの場合、出力部170は、推定位置pn及び推定姿勢Fnが許容範囲TOL内になった場合の、ベース力fb及びベースモーメントmbを出力する。
図5は、本実施形態の演算装置10に実装されるアルゴリズムの一例を示す図である。ここで、記号||e||とは、式(11)に示した誤差eのノルムである。演算装置10は、誤差eのノルムが、許容範囲TOL(同図中に示すεtol)以上である場合には、以下の演算を繰り返す。すなわち、演算装置10は、ベース力fb及びベースモーメントmbについての漸化式(すなわち、式(20))によってベース力fb及びベースモーメントmbを更新する。
演算装置10は、i番目のばね関節において生じる局所的なトルクτi、ばね関節の角度θi=[θT,iθN,iθB,i]T、(i-1)番目の関節の推定位置(すなわち、推定位置pi)及びi番目の剛体リンクの推定姿勢(すなわち、推定姿勢Fi)をすべてのばね関節および剛体リンクについて順次算出することにより、ティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fnを算出する。
さらに、演算装置10は、算出したティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fnと、目標位置p*及び目標姿勢F*との誤差eを、上述した式(11)に基づいて算出する。
演算装置10は、算出した誤差eのノルムが、許容範囲TOL(同図中に示すεtol)未満になれば、算出したティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fnを演算結果RSとして出力する。
図6は、本実施形態の演算装置10による演算結果RSの一例を示す図である。演算対象の弾性体ERの初期形状を図6(a)に示す。図6(a)に示す初期形状に対して、ベース部BSの位置及び姿勢を変化させることなく、ティップ部TPの位置及び姿勢を変化させた場合の、変化後の弾性体ERの形状を図6(b)に示す。本実施形態の演算装置10は、図6(a)に示すベース部BSの基準位置p0と基準姿勢F0、及び図6(b)に示すティップ部TPの位置と姿勢(すなわち、目標位置p*と目標姿勢F*)が与えられた場合に、ベース部BSからティップ部TPまでの弾性体ERの形状を「推定形状SP」として算出する。演算装置10は、算出した推定形状SPに基づいて図6(b)に示す弾性体ERの形状を描画する。
この場合、イタレーション制御部150は、ベース力fb及びベースモーメントmbを初期値に戻して、形状算出部120にティップ部TPの推定位置pn及び推定姿勢Fnを算出させる。このように構成することにより、イタレーション制御部150は、特異点の存在により演算結果RSの精度が低下する状況を回避できるため、演算結果RSの精度を向上させることができる。
この場合において、力モーメント算出部140は、所定の分割数n以下の分割数n_Jによる積分演算によってヤコビ行列Jの演算を行うことにより、ベース力fb及びベースモーメントmbを算出する。一例として、所定の分割数n=50とした場合、力モーメント算出部140は、分割数n_J=25としてベース力fb及びベースモーメントmbを算出する。
一方、本実施形態の演算装置10は、ヤコビ行列Jを陽に表現し、かつヤコビ行列Jの積分演算の分割数n_Jを、弾性体ERの離散化モデリングの分割数n以下にしているため、有限差分によってヤコビ行列Jを数値計算的に計算する従来手法に比べて、計算量を低減させることができる。
すなわち、本実施形態の演算装置10は、弾性体ERの形状推定の高精度化と、形状推定のための計算量の低減とを両立することができる。
さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
Claims (5)
- 弾性体の一端であるベース部の位置及び姿勢と、前記弾性体の他端であるティップ部の目標位置及び目標姿勢とをそれぞれ取得する取得部と、
前記取得部が取得する前記ベース部の位置及び姿勢と、前記ベース部の位置及び姿勢を固定する固定部に前記ベース部から加わる力及びモーメントと、前記弾性体が複数のばね関節と剛体リンクとが交互に連なる構造体として離散化モデリングされたモデル情報とに基づいて、前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢と、前記ベース部から前記ティップ部までの前記弾性体の推定形状とを算出する形状算出部と、
前記取得部が取得する前記ティップ部の目標位置及び目標姿勢と、前記形状算出部が算出する前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢との誤差を算出する誤差算出部と、
前記ティップ部の位置及び姿勢のイタレーション演算毎の変化と、前記弾性体の弾性力によって前記固定部に加わる力及びモーメントのイタレーション演算毎の変化との間の関係を示すヤコビ行列と、前記誤差算出部が算出する前記誤差とに基づいて、前記固定部に加わる力及びモーメントを算出する力モーメント算出部と、
今回のイタレーション演算によって算出された前記誤差に基づいて前記力モーメント算出部によって算出された前記固定部に加わる力及びモーメントを前記形状算出部に対して供給することにより、当該力及びモーメントに基づく前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢を次回のイタレーション演算として前記形状算出部に算出させるイタレーション制御部と、
を備える演算装置。 - 前記誤差算出部が算出する前記誤差が所定の許容範囲内であるか否かを判定する判定部
をさらに備え、
前記イタレーション制御部は、
今回のイタレーション演算によって算出された前記誤差が、前記許容範囲内でないと前記判定部によって判定された場合に、前記次回のイタレーション演算として前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢を算出させる
請求項1に記載の演算装置。 - 前記イタレーション制御部は、
前記力モーメント算出部が算出する前記力及びモーメントが前記弾性体の状態の特異点を示す場合には、前記力及びモーメントを初期値に戻して、前記形状算出部に前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢を算出させる
請求項1または請求項2に記載の演算装置。 - 前記形状算出部は、
所定の分割数の積分演算によって前記推定形状を算出し、
前記力モーメント算出部は、
前記所定の分割数以下の分割数による積分演算によって前記ヤコビ行列の演算を行うことにより、前記固定部に加わる力及びモーメントを算出する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の演算装置。 - 演算装置が備えるコンピュータに、
弾性体の一端であるベース部の位置及び姿勢と、前記弾性体の他端であるティップ部の目標位置及び目標姿勢とをそれぞれ取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得される前記ベース部の位置及び姿勢と、前記ベース部の位置及び姿勢を固定する固定部に前記ベース部から加わる力及びモーメントと、前記弾性体が複数のばね関節と剛体リンクとが交互に連なる構造体として離散化モデリングされたモデル情報とに基づいて、前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢と、前記ベース部から前記ティップ部までの前記弾性体の推定形状とを算出する形状算出ステップと、
前記取得ステップにおいて取得される前記ティップ部の目標位置及び目標姿勢と、前記形状算出ステップにおいて算出される前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢との誤差を算出する誤差算出ステップと、
前記ティップ部の位置及び姿勢のイタレーション演算毎の変化と、前記弾性体の弾性力によって前記固定部に加わる力及びモーメントのイタレーション演算毎の変化との間の関係を示すヤコビ行列と、前記誤差算出ステップにおいて算出される前記誤差とに基づいて、前記固定部に加わる力及びモーメントを算出する力モーメント算出ステップと、
今回のイタレーション演算によって算出された前記誤差に基づいて前記力モーメント算出ステップにおいて算出された前記固定部に加わる力及びモーメントに基づく前記ティップ部の推定位置及び推定姿勢を次回のイタレーション演算として算出させるイタレーション制御ステップと、
を実行させるためのプログラム。
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▲高▼須 亮輔 Ryosuke Takasu,閉ループ弾性体の形状計算アルゴリズム Shape Computation Algorithm for Closed Elastica,日本ロボット学会誌 第32巻 第4号 Journal of the Robotics Society of Japan,日本,一般社団法人日本ロボット学会,2014年05月21日,第32巻,pp.49-55 |
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