JP7107497B2 - Dna鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体 - Google Patents

Dna鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体 Download PDF

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Description

本発明は、デオキシリボ核酸(DNA)上の酸化的損傷部位に含まれるアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)に特異的に結合する抗体ならびにその抗原結合断片に関する。
細胞中のDNAは、放射線などの外部因子や内部因子による活性酸素からの攻撃を受け、鎖切断、8-オキソデオキシグアニン構造の形成、およびサイクロプリン構造の形成など様々なDNA損傷を生じる。これらのDNA損傷は、老化、神経障害、およびがんなどの発症原因となる。例えば、色素性乾皮症A群は常染色体劣性遺伝病であり、DNA損傷修復機構の一つを欠損する。色素性乾皮症A群が発症する進行性の神経障害は、DNA鎖上のサイクロプリンの蓄積による神経細胞死と関連すると考えられている。
DNA鎖上の酸化的損傷部位に含まれるサイクロプリンは、活性酸素が引き起こすDNA損傷の一つのグループの総称である。サイクロプリンは、DNA鎖上のアデノシン部位に形成されるアデノシン型サイクロプリン、すなわち、8,5’-サイクロ-2’-デオキシアデノシン(Cyclo-dA)と、DNA鎖上のグアノシン部位に形成されるグアノシン型サイクロプリン、すなわち、8,5’-サイクロ-2’-デオキシグアノシン(Cyclo-dG)に大別される。それぞれに 5’Rと5’Sの立体異性体が存在するため、下記の化学式に示すように、4つの異なる構造が存在する。
Figure 0007107497000001
現在、これら4種類のサイクロプリンを最も高感度・高精度に検出・定量できるのは、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)である。しかしながら、サイクロプリン構造の検出・定量にLC-MS/MSを用いるには、DNAサンプルをモノヌクレオチドまで完全に分解するという極めて困難な作業が必須となる。またDNAサンプルの抽出時点で組織サンプルを破壊してしまい、組織サンプル中のDNA損傷部位を視覚化することができない。
組織サンプル中のDNA損傷部位を視覚化するためには、DNAサンプルの抽出の必要がない特異的結合分子が利用できればよい。特異的結合分子の常套手段として、抗体の作製が考えられるが、DNA鎖上のサイクロプリンに対する抗体の作製は長らく困難であった。
DNA鎖上のサイクロプリンに対する抗体を採ろうとする試みの初見は、非特許文献1である。非特許文献1には、サイクロプリンのモデル化合物8,5’-サイクロアデノシン-5’-モノホスフェート(8,5’-cyclo-AMP)に対するポリクローナル抗体が作製されたことが示されている。しかしながら、ポリクローナル抗体は混合物であり、抗原特異性には問題があった。また、DNA鎖上のサイクロプリンの検出もできていない。
非特許文献2には、5’Rおよび5’Sの両異性体を含むアデノシン型サイクロプリン、すなわち、8,5’-サイクロ-2’-デオキシアデノシン(Cyclo-dA)を認識するマウスモノクローナル抗体を作製したと報告されているが、物質としての詳細が明らかでない。非特許文献2では、更に、該抗体を酵素標識免疫法(ELISA)に応用し、X線照射やフェントン反応処理したDNA鎖上にCyclo-dAが形成されることを見出しているが、該抗体はLC-MS/MSと比べても検出感度が1~2桁低く、検出・定量に用いるには難があった。
Radiation Research 104, 272-283 (1985) Photochemistry and Photobiology,2014,90:829-836
以上のように、DNA鎖の酸化的損傷部位に含まれるサイクロプリンの検出・定量には、LC-MS/MSしか手段がなく、煩雑で、かつ、組織サンプルを破壊してしまうという課題があった。また、アデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)を特異的に認識する公知のモノクローナル抗体は、感度が低すぎてLC-MS/MSの代替手段とはならなかった。本発明は、組織サンプルから破壊的にDNAサンプルを抽出したり、モノヌクレオチドまで完全に分解することが必須ではなく、かつ、公知の抗体よりも感度が高く簡便に使用することができる、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)に特異的に結合するモノクローナル抗体ならびにその抗原結合断片を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究した結果、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する新規なモノクローナル抗体を作製することに成功した。さらに、かかる抗体は、公知の抗体よりも感度が高いことが示された。
すなわち、本発明は、
[1]それぞれ3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VH領域のCDR1のアミノ酸配列がGly-Tyr-Ser-Ile-Thr-Ser-Gly-Tyr-Ser(配列番号1)であり、
VH領域のCDR2のアミノ酸配列がIle-His-Tyr-Ser-Gly-Arg-Thr(配列番号2)であり、
VH領域のCDR3のアミノ酸配列がAla-Thr-Tyr-Asp-Tyr-Asp-Gly-Tyr-Tyr-Val-Met-Asp-Tyr(配列番号3)であり、
VL領域のCDR1のアミノ酸配列がGln-Ser-Ile-Val-Asn-Ser-Asn-Gly-Asn-Thr-(配列番号4)であり、
VL領域のCDR2のアミノ酸配列がLys-Val-Ser(配列番号5)であり、
VL領域のCDR3のアミノ酸配列がPhe-Gln-Gly-Ser-His-Val-Pro-Arg-Thr(配列番号6)である、
DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、あるいは配列番号1、3、4および6からなる群から選択される1以上のアミノ酸配列において1~3個の保存的アミノ酸置換を含む前記抗体または抗原結合断片の機能保存的変異体、
[2]配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むVH領域または配列番号7で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むVL領域または配列番号8で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含む、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片、および
[3]IgG、Fab、Fab’、F(ab’)2、または単鎖抗体のいずれかの形態である、[1]または[2]記載の抗体、機能保存的アミノ酸置換抗体、または抗原結合断片
を提供する。
本発明によれば、組織サンプルから破壊的にDNAサンプルを抽出したり、モノヌクレオチドまで完全に分解することが必須ではなく、かつ、公知の抗体よりも感度が高く簡便に使うことができる、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)に特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片、ならびに前記抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体を提供する。
競合ELISA法によりサイクロプリン立体異性体と本発明抗体の結合を確認した図。 ELISA法により異なるサイクロプリンと本発明抗体の結合を確認した図。 ELISA法により本発明抗体の感度を測定した結果を示した図。 ELISA法により本発明抗体を用いてXP-Aマウスの生体サンプル中のDNA鎖上のアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)の蓄積量を測定した結果を示した図。 Cyclo-dAを含むオリゴヌクレオチドを導入した細胞の蛍光免疫染色結果を示した図。 対照オリゴヌクレオチドを導入した細胞の蛍光免疫染色結果を示した図。 本発明のscFvの一例を示す。図7において、一重下線部は6つのCDRであり、二重下線部がリンカーである。
1.用語
「抗体」とは、イムノグロブリンであり、2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖という計4本のポリペプチド鎖からなるサブ構造を有するポリペプチドである。重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)には、抗体間でそのアミノ酸配列が非常に高く類似する定常領域、および抗体間でそのアミノ酸配列が大きく異なる可変領域が存在する。定常領域の内、軽鎖定常領域をCL領域、および重鎖定常領域をCH領域という。重鎖定常領域には第一定常(CH1)領域、第二定常(CH2)領域ならびに第三定常(CH3)領域が存在する。可変領域の内部でアミノ酸配列が特に大きく変化する部分は限られており、相補性決定領域(complementarity-determining region; CDR)と呼ばれる。CDRは抗原に対する特異性を決定する。重鎖可変領域(VH領域)に3つのCDR(VH CDR1、VH CDR2、VH CDR3)、軽鎖可変領域(VL領域)に3つのCDR(VL CDR1、VL CDR2、VL CDR3)が存在する。CDR以外の可変領域をフレームワークといい、アミノ酸がほとんど変化せずにCDR領域を構造的に支える役割をする。
「Fc領域」とは、抗体をパパインで切断した際に得られる2種の断片のうち、抗原結合能を有しない断片に相当する領域のことを言う。Fc領域は、典型的には、一般にヒンジ領域の一部を含み、重鎖第二定常(CH2)領域ならびに同第三定常(CH3)領域からなる、抗体の重鎖のC末端領域を意味する。
「モノクローナル抗体」とは、ただ一組の抗体遺伝子(軽鎖1種と重鎖1種)に由来する、タンパク質レベルで実質的に均一な抗体の集団をいう。集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在する可能性がある突然変異(例えば自然に生じる突然変異など)を除いて同一である。また、モノクローナル抗体の作製方法は限定されず、様々な常法に従い作製することができる。それらの作製方法には、例えば、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ技術、ならびに、ヒト免疫グロブリン座の一部もしくは全部またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物にヒトまたはヒト様抗体を生成させる技術、などが含まれる。
「Fv」は、重鎖および軽鎖の可変領域からなる、抗原認識および抗原結合部位を保持する最小抗原結合断片である。
「Fab」とは、抗体をパパイン処理した時に得られる2種の断片のうち、N末端側の産物であり、重鎖可変領域由来のものと軽鎖可変領域由来のものを含む。Fabは、典型的には、軽鎖および重鎖の可変領域(VLおよびVH領域)を含み、且つ軽鎖の定常(CL)領域と重鎖の第一定常(CH1)領域を含む。
「Fab’」および「F(ab’)2」は、抗体をペプシンおよびパパインなどのプロテアーゼで処理することによって得られる断片であり、2つの重鎖の各々において、ヒンジ領域間に存在するジスルフィド結合付近で消化されることによって生成される断片である。「F(ab’)2」は、VL領域およびCL領域からなる軽鎖断片、およびVH領域およびCH1領域からなる重鎖断片がジスルフィド結合を介してそれらのC末端領域で、またはヒンジ領域で連結した2つの相同性抗原結合断片からなる。2つの相同性抗原結合断片の各々が「Fab’」である。
「単鎖抗体(scFv)」には、抗体のVH領域およびVL領域が含まれる。これらの領域は単一のポリペプチド鎖中に存在する(Huston, J. S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1988) 85, 5879‐5883)。scFvは、さらに、VH領域とVL領域との間にポリペプチドリンカーを含んでいてもよい。
「リンカー」とは、ある分子と別の分子とを連結させる際に用いられる連結分子を意味し、様々なものが当該技術分野で公知である。
2.本発明の抗体および抗原結合断片
本発明は、3つのCDRを含むVH領域および3つのCDRを含むVL領域を含み、
VH CDR1のアミノ酸配列がGly-Tyr-Ser-Ile-Thr-Ser-Gly-Tyr-Ser(配列番号1)であり、
VH CDR2のアミノ酸配列がIle-His-Tyr-Ser-Gly-Arg-Thr(配列番号2)であり、
VH CDR3のアミノ酸配列がAla-Thr-Tyr-Asp-Tyr-Asp-Gly-Tyr-Tyr-Val-Met-Asp-Tyr(配列番号3)であり、
VL CDR1のアミノ酸配列がGln-Ser-Ile-Val-Asn-Ser-Asn-Gly-Asn-Thr-Tyr(配列番号4)であり、
VL CDR2のアミノ酸配列がLys-Val-Ser(配列番号5)であり、
VL CDR3のアミノ酸配列がPhe-Gln-Gly-Ser-His-Val-Pro-Arg-Thr(配列番号6)である、
DNA上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片(以下、「本発明の抗体および抗原結合断片」という)を提供する。
上記のVH領域の例として、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むVH領域が挙げられる。上記のVL領域の例として、配列番号8のアミノ酸配列を含むVL領域が挙げられる。したがって、本発明の抗体および抗原結合断片の一態様として、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むVH領域および配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むVL領域を含む、DNA上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片が提供される。本発明の抗体および抗原結合断片のさらなる態様として、配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるVH領域および配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるVL領域を含む、DNA上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体およびその抗原結合断片が提供される。
本発明の抗原結合断片は、本発明の抗体の免疫学的に活性な部分または抗原結合ドメインを含有する抗原結合断片であり、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する。本発明の抗原結合断片には、例えば、上記のVH CDR1~3(配列番号1~3)およびVL CDR1~3(配列番号4~6)から選択される1以上のCDR領域が含まれ、好ましくは上記のVH CDR1~3(配列番号1~3)およびVL CDR1~3(配列番号4~6)の6つの全てのCDR領域が含まれる。
一般に、抗体の抗原に対する結合特性は、CDRによって決定される。そのため、CDRを任意のフレームワークに移植することによって、抗体の抗原に対する結合特性を再構成することができる。したがって、本発明の抗原結合断片は、本発明の抗体のVH領域のCDR1、VH領域のCDR2、VH領域のCDR3、VL領域のCDR1、VL領域のCDR2、VL領域のCDR3の6つのCDRを継承することにより、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに対する特異結合性を継承する。
本発明の抗原結合断片には、例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、単鎖抗体(scFv)、ダイアボディー、ミニボディー等が包含される。いずれも、当該技術分野で周知の断片であり、常法により得ることができる。例えば、ペプシン、パパインなどのプロテアーゼで抗体を処理することによって製造するだけでなく、化学的ペプチド合成によって製造することもできる。また、本発明の抗原結合断片がscFvである場合、該scFvはリンカーを含んでいてもよい。
scFvを構成するリンカーのアミノ酸配列は、H鎖とL鎖の可変領域を1本鎖に連結したときに、抗体としての結合特性が維持される限り限定されない。このようなリンカーとしては、限定するものではないが、例えば、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)×3、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Arg-Ala-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)×4などが知られている。
scFvにおけるVH領域およびVL領域の連結順序も、抗体としての結合特性が維持される限り限定されない。具体的には、N末端から順に[VH領域]-[リンカー]-[VL領域]の順に結合されたscFvは、本発明のscFvとして好ましいが、[VL領域]-[リンカー]-[VH領域]であってもかまわない。すなわち本発明における好ましい改変抗体は、以下の構造を有する1本鎖のポリペプチドによって構成される。
NH-[VH領域]-[リンカー]-[VL領域]-COOH
本発明のscFvのアミノ酸配列の一例として、配列番号9で示される単鎖抗体が挙げられる(図7)。該単鎖抗体は、リンカーとして「(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)×3」、VH領域として配列番号7で示される配列、およびVL領域として配列番号8で示される配列を使用し、[VH領域]-[リンカー]-[VL領域]の順に結合することにより、常法にしたがって製造した。
本発明の抗体および抗原結合断片は、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに対する特異的結合性を維持できる範囲で、抗体および抗原結合断片を構成するアミノ酸配列の一部の、例えば、1~数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加等の変異を伴うことができる(本明細書において「機能保存的変異体」という)。ここで、「数個」とは、2~10個程度をいい、全長のアミノ酸配列の長さにもよるが、好ましくは2~7個程度、例えば3個、4個、5個、または6個をいう。本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体は、限定するものではないが、典型的には、本発明の抗体および抗原結合断片を構成するアミノ酸配列の全長に対して95%以上、例えば、96%以上、97%以上、98%以上、または99%以上の配列同一性を有する。
本発明において、アミノ酸残基の置換は、保存的アミノ酸置換であってもよい。保存的アミノ酸置換は、化学的性質が似通ったアミノ酸による置換であり、当業者に既知である。例えば、各アミノ酸が有する側鎖の性質に基づいてグループ分けされた、同じグループに属するアミノ酸同士の置換が挙げられる。保存的アミノ酸置換の一例として、例示的な置換残基と好ましい置換残基を表1にまとめた。抗体および抗原結合断片の全長のうち1~数個の保存的アミノ酸置換を含む変異体は、もとの抗体および抗原結合断片の結合性を保存する可能性がきわめて高い。したがって、本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体は、好ましくは、保存的アミノ酸置換を含む。
Figure 0007107497000002
本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体における変異の位置は、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに対する結合性を維持できる限り限定されず、1以上の変異がCDR領域またはCDR領域以外の領域に存在していてもよく、あるいはCDR領域とCDR領域以外の領域(例えば、フレームワーク領域、定常領域等)の両方に変異が存在していてもよい。
例えば、限定するものではないが、本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体は、配列番号1~6で示される6つのCDR領域から選択される1以上のCDR領域において変異、好ましくは保存的アミノ酸置換を含んでいてもよい。例えば、本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体は、VH CDR1(配列番号1)、VH CDR3(配列番号3)、VL CDR1(配列番号4)およびVL CDR3(配列番号6)からなる群から選択される1以上のCDR領域内に1~数個、例えば1~3個のアミノ酸残基の変異、好ましくは保存的アミノ酸置換を含んでいてもよい。例えば、本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体は、配列番号1で示されるVH CDR1のアミノ酸配列における9番目のセリン(Ser)、配列番号4で示されるVL CDR1のアミノ酸配列における1番目のグルタミン(Gln)、配列番号4で示されるVL CDR1のアミノ酸配列における5番目のアスパラギン(Asn)、配列番号6で示されるVL CDR3のアミノ酸配列における8番目のアルギニン(Arg)、および配列番号6で示されるVL CDR3のアミノ酸配列における9番目のトレオニン(Thr)からなる群から選択される1以上のアミノ酸残基の位置に変異を含んでいてもよく、好ましくは、上記の群から選択される1以上のアミノ酸残基が保存的に置換されていてもよい。例えば、限定するものではないが、本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体は、配列番号1の9番目のセリン(Ser)のトレオニン(Thr)への置換、配列番号4の1番目のグルタミン(Gln)のアスパラギン(Asn)への置換、配列番号4の5番目のアスパラギン(Asn)のヒスチジン(His)への置換、配列番号6の8番目のアルギニン(Arg)のリシン(Lys)への置換、および配列番号6の9番目のトレオニン(Thr)のセリン(Ser)への置換からなる群から選択される1以上保存的アミノ酸置換を含んでいてもよい。なお、本明細書において、アミノ酸残基の位置はアミノ酸配列のN末端側から数えた位置である。
さらに、本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体の例として、
(a)配列番号7で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および
(b)配列番号8で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域
を含む、アデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。またさらに、本発明の抗体および抗原結合断片の機能保存的変異体の例として、
(a)配列番号7で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVH領域、および
(b)配列番号8で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるVL領域
を含む、アデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。上記機能保存的変異体のVH領域およびVL領域は、それぞれ配列番号7および配列番号8に対し、規定する配列同一性を維持する範囲内でいずれの変異を有していてもよい。かかる変異は、VH領域およびVL領域中のいずれの位置にあってもよい。また、上記機能保存的変異体において、VH領域およびVL領域のいずれか一方は、配列番号7または配列番号8で示されるアミノ酸配列に対して100%の配列同一性を有していてもよい。
本発明の抗体および抗原結合断片、ならびにそれらの機能保存的変異体は、好ましくは、モノクローナル抗体およびその抗原結合断片である。本発明において、モノクローナル抗体には、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒト、ハムスター等の動物由来のモノクローナル抗体だけでなく、キメラ抗体、ヒト化抗体など人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。
本発明の抗体は、IgG、IgA、IgM、IgD、またはIgEのいずれの形態であってもよい。好ましくは、IgG抗体であり、例えば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgG4であってもよい。本発明の抗原結合断片もまた、IgG、IgA、IgM、IgD、またはIgEのいずれの形態の抗体に由来していてもよい。好ましくは、IgG抗体由来であり、例えば、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、またはIgG4由来であってもよい。
本発明の抗体および抗原結合断片、ならびにそれらの機能保存的変異体において、フレームワーク領域は、マウス由来に限らず、例えば、ヒトや他の動物由来であってもよい。また、本発明の抗体および抗原結合断片ならびにそれらの機能保存的変異体における定常領域も、マウス由来に限らず、例えば、ヒトや他の動物由来であってもよい。本発明の抗体および抗原結合断片ならびにそれらの機能保存的変異体において、Fc領域は、マウス由来のFcに限定されない。例えば、ヒト由来のFcに置換することができる。また、Fcは、CH3を構成するアミノ酸配列を含むFcの断片とすることもできる。
また、特に本発明の抗原結合断片またはその機能保存的変異体がFc領域を含む場合、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN結合した分岐オリゴ糖修飾を含みうる(例えば、Wright et al., (1997) Trends Biotechnol. 15: 26-32を参照のこと)。オリゴ糖は様々な炭水化物、例えばマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム部」のGlcNAcに結合したフコースを含みうる。
本発明の抗体および抗原結合断片、ならびにそれらの機能保存的変異体により特異的に認識され、結合されるDNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンには、5’Rと5’Sの両方の立体異性体が包含される。
3.本発明の抗体および抗原結合断片の製造
本発明の抗体および抗原結合断片は、当該分野で既知のいずれかの方法によって製造することができる。例えば、本発明の抗体および抗原結合断片は、ハイブリドーマ細胞、または抗体あるいは抗原結合断片を発現するように遺伝子を組換えた細胞(例えば、動物細胞、魚類細胞、昆虫細胞、および植物細胞)および微生物(ファージ、細菌、酵母などを含む)などから産生され得る。本発明の抗体および抗原結合断片は、また、無細胞タンパク質合成系を使用して製造することもできる。
また、本発明に基づけば、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、これらポリヌクレオチドを発現可能に保持したベクター、および本発明のポリペプチドを産生する細胞(例えば、動物細胞、魚類細胞、昆虫細胞、および植物細胞)および微生物(ファージ、細菌、酵母などを含む)を作製できることは、当業者にとって自明である。よって、本発明はこれらの態様も包含する。
また、本発明の機能保存的変異体を作成することは、当業者にとっては技術的にそう困難なことではない。例えば、分子生物学的手法で行うのが当該分野での常法である。具体的には、当該抗体遺伝子中の配列をPCRにより改変するか、化学合成した変異配列で置き換えること等が一般に行われる。PCRの場合は、抗体発現ベクターに本発明の抗体の軽鎖および重鎖を組み込んだDNAを鋳型に、変異部分を含むprimerをtail to tail になるよう設計し、inverse PCRした後、self ligation することで作製が可能である。また合成配列の場合は、変異部分を含む配列を化学人工合成し、制限酵素部位等を使って組み込むことが可能である。こうして作製した変異抗体を組み込んだ発現ベクターを、哺乳動物細胞など発現させる細胞にトランスフェクションし、変異抗体を得ることができる(Nucleic Acids Res. 17(16) 6545-6551(1989))。
かくして、本発明の抗体および抗原結合断片、ならびにそれらの機能保存的変異体は、細胞等の生体から単離、または合成されたものである。
4.本発明の抗体および抗原結合断片の利用
本発明は、さらに、本発明の抗体またはその抗原結合断片、またはそれらの機能保存的変異体を含む、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンを測定または検出するための試薬を提供する。かかる試薬は、当業者の知る常法により製造できる。該試薬は、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、化学発光免疫測定法(CIA)、免疫比濁法、免疫比ろう法、ラテックス凝集法、ラテックス比濁法、赤血球凝集反応、粒子凝集反応、ウェスタンブロット法、免疫染色、免疫沈降法、イムノクロマト法、酵素標識免疫法(ELISA)などに利用できる。
また、こうした試薬と組み合わせるデバイスとしては、特に限定されないが、例えば、マイクロウェルプレート、アレイ、チップ、フローサイトメーター、表面プラズモン共鳴装置、イムノクロマトグラフィーストリップなどが利用できる。
またさらに、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合断片、またはそれらの機能保存的変異体を使用して、試料においてDNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンを測定または検出する方法を提供する。試料としては、微生物から高等ほ乳類までの様々なDNAサンプルが挙げられる。また、例えば、対象が癌、心臓病、脳卒中、肝障害、神経障害(色素性乾皮症A群等)等の疾患に罹患しているかの診断においても使用できる。
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
〔DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体の樹立〕
〔操作1〕抗原の作製
分子中に1個の5’S-cyclo-dAを含む20-merオリゴヌクレオチドにビオチンを標識した合成品(日本遺伝子研究所製)を購入した。配列は5’-biotin-TsCsTsCsCsCNXNGsCsGsTsGsCsGsCsCsTsT-3’であり、Xは、5’S-cyclo-dAであり、Nは、G、C、A、Tの4塩基のいずれかである。sは、ホスホロチオエート(phosphorothioate)結合を示す。購入したビオチン標識オリゴヌクレオチドとアビジンを1:1の比率で混合し、抗原として用いた。
〔操作2〕マウスへの免疫
操作1により得られた抗原と完全フロイントアジュバント(Difco製)を1:1の比率で混合して乳化し、7週齢BALB/cマウス(雌)の腹腔内へ注射し免疫付けを行った。注射は初回、初回から2週間後、4週間後、6週間後および8週間後の合計5回実施した。
〔操作3〕スクリーニング
最終免疫1週間後にマウスから外科的な方法で脾臓を摘出し、単個細胞にした後、等量のミエローマ細胞(P3X3Ag8.653)と50%ポリエチレングリコール1500を用いて融合した。96穴培養プレートに10個ずつ融合細胞を入れ、HATを含む培地を交換しながら選択培養した。
アデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)を含むオリゴヌクレオチドに結合する抗体を産生するハイブリドーマの選択は、その培養上清を用いて酵素標識免疫法(ELISA)により行った。アデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)を含むオリゴヌクレオチドに反応し、且つ、Cyclo-dAを含まないオリゴヌクレオチドには反応しないウェルのハイブリドーマを選択した。
〔操作4〕クローニング
スクリーニングにより選択した陽性ウェルのハイブリドーマを、限界希釈法により1細胞/穴になるように96穴細胞培養用プレートに播種した。2週間程度培養し、その培養上清を用いてELISA法によりアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)を含むオリゴヌクレオチドに反応し、且つ、Cyclo-dAを含まないオリゴヌクレオチドには反応しないウェルのハイブリドーマを選択した。この作業を2回繰り返し、最終的に1種類のハイブリドーマ株を樹立した。
〔操作5〕抗体の作製
当該ハイブリドーマ細胞を培養し、抗体を含む培養上清と飽和硫安溶液を1:1の比率で混合し、沈殿物のみを回収した。沈殿物を超純水で再溶解後、PBSで透析し、粗精製された抗体溶液を得た。
〔操作6〕競合ELISA法によるサイクロプリン立体異性体への結合確認
硫酸プロタミンをコートした96穴プレートに、5ng/穴の5’S-cyclo-dAを含むオリゴヌクレオチド 5’S-cyclo-dA-oligo20(5’-TCTCCCNXNGCGTGCGCCTT-3’、ただし、Xは5’S-cyclo-dAであり、NはG、C、A、Tのいずれかの塩基である)を一晩37℃で吸着させた。ブロッキング処理後、プレートに固定したCyclo-dAを含むオリゴヌクレオチドの約半数と結合する濃度の本発明抗体(操作5で得られた粗精製抗体をPBSにより50,000倍希釈)と、0、5、50、または500ng/穴の競合阻害剤5’S-cyclo-dA-oligo14(5’-ACTGTGXCTGATCT-3’、ただし、Xは5’S-cyclo-dA)、5’R-cyclo-dA-oligo14(5’-ACTGTGYCTGATCT-3’、ただし、Yは5’R-cyclo-dA)、またはcontrol-oligo14(5’-ACTGTGACTGATCT-3’を混合し、37℃で30分間反応させた。続いて、ビオチン標識抗マウスIgG-F(ab’)2抗体(Rockland製)を反応させた。さらに、ポリペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(SDT製)を反応させシグナルを増幅した。最後にOPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩)基質液を用いて492nmの吸光度を測定した。
競合阻害率は、[1-(A2-A3)/(A1-A3)]×100の式から求めた。ただし、A1は競合阻害剤がないときの吸光度、A2は競合阻害剤があるときの吸光度、A3は抗体がないときの吸光度である。
結果を図1に示した。この結果から、本発明抗体はDNA中の5’S-cyclo-dAおよび5’R-cyclo-dAにほぼ同等に結合することがわかった。
〔操作7〕ELISA法による他のサイクロプリンへの結合確認
硫酸プロタミンをコートした96穴プレートに50ng/穴の5’S-cyclo-dA-oligo20、5’S-cyclo-dG-oligo20(5’-TCTCCCNZNGCGTGCGCCTT-3’、ただし、Zは5’S-cyclo-dGであり、NはG、C、A、Tのいずれかの塩基である)、およびcontrol-oligo20(5’-TCTCCCNANGCGTGCGCCTT-3’、ただし、NはG、C、A、Tのいずれかの塩基)を一晩37℃で吸着させた。ブロッキング処理後、本発明の抗体(操作5で得られた粗精製抗体をPBSにより10,000倍希釈)を加え37℃で30分間反応させた。続いて、ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体を反応させた後、OPD基質液を用いて492nmの吸光度を測定した。
結果を図2に示した。この結果から、本発明抗体はDNA鎖上の5’S-cyclo-dGに対しては結合しないことがわかった。
〔相補性決定領域のアミノ酸配列の決定〕
本発明のモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマより、NucleoSpin RNAII(TAKARA製)を用いてTotal RNAを抽出し、逆転写酵素ReverTra Ace(TOYOBO製)でcDNAを合成した。当該ハイブリドーマのサブクラスが、重鎖はIgG2a、軽鎖がκであることから、cDNA合成の際のプライマーに、重鎖の場合はMuIgGVH3’-2 (CCCAAGCTTCCAGGGRCCARKGGATARACIGRTGG、I=inosine,K=GまたはT,R=AまたはG)、軽鎖の場合は MuIgκVL3’-1 (CCCAAGCTTACTGGATGGTGGGAAGATGGAを使用した。
得られたcDNAを鋳型にPCRを行い、重鎖および軽鎖可変領域をコードするcDNAを増幅した。この際のプライマーには、Mouse Ig-Primers Set (Novagen製)を、また耐熱性DNAポリメラーゼには、KOD-Plus-Neo(TOYOBO製)およびKOD-FX-Neo(TOYOBO製)を使用した。増幅したDNA断片をアガロースゲルより回収し、pUC19ベクターにクローニング後、遺伝子配列を決定した。シーケンス反応には、BigDye Terminators v1.1 cycle sequencing kit (アプライドバイオシステムズ社製)を使用し、同社のプロトコールに従って3130ジェネティックアナライザー(アプライドバイオシステムズ社製)により行った。得られた重鎖および軽鎖可変領域の塩基配列から、重鎖および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を決定した(配列番号7および8)。
得られた重鎖可変領域および軽鎖可変領域の塩基配列をIMGT/V-QUEST[Brochet, X. et al., Nucl. Acids Res. 36, W503-508(2008),Giudicelli,V.,Brochet, X., Lefranc, M.-P., Cold Spring Harb Protoc. 2011 Jun 1;2011(6).]で解析し、相補性決定領域(CDR)を決定した。得られた結果を表2に示す。
Figure 0007107497000003
〔ELISA法による感度の確認〕
硫酸プロタミンをコートした96穴プレートに100,000塩基当たり0、0.1、0.2、0.5、1あるいは2個のアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)を含む20merオリゴヌクレオチドを1μg/穴の濃度で加え、一晩37℃で吸着させた。ブロッキング処理後、本発明抗体(実施例1の操作5で得られた粗精製抗体をPBSにより30,000倍希釈)を加え37℃で30分間反応させた。続いて、ビオチン標識抗マウスIgG-F(ab’)2抗体(Rockland製)を反応させた。さらに、ポリペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(SDT製)を反応させシグナルを増幅した。最後にOPD基質液を用いて492nmの吸光度を測定し当該吸光度により、感度の確認を行った。
結果を図3に示した。その結果、本発明抗体はアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)を含むオリゴヌクレオチドの吸着量に正比例して結合量を増加させた。また、その測定感度は100,000塩基当たり0.1個となった。非特許文献2の抗体の感度は100,000塩基当たり1個と書かれていることから、本発明抗体はDNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合し、非特許文献2の抗体の10倍高い感度を持つことがわかった。
〔XP-Aマウスの生体サンプルのDNA鎖上のアデノシン型サイクロプリン(Cyclo-dA)の蓄積量の測定〕
5ヶ月齢の色素性乾皮症A群のモデルマウス(XP-Aマウス)から臓器を取り出した。臓器をすりつぶした後、DNA EXTRACTOR TIS kit(和光純薬)を用いてDNAを抽出した。硫酸プロタミンをコートした96穴プレートに臓器DNAを1μg/穴の濃度で加え、一晩37℃で吸着させた。同時に、検量線用のCyclo-dAオリゴヌクレオチド(100,000塩基中に0、1、2、5あるいは10のCyclo-dAを含む)やDNA非特異結合測定用の仔牛胸腺DNAも1μg/穴の濃度で吸着させた。ブロッキング処理後、本発明抗体(PBSにより30,000倍希釈)を加え、37℃で30分間反応させた。続いて、ビオチン標識抗マウスIgG-F(ab’)2抗体(Rockland製)を反応させた。さらに、ポリペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(SDT製)を反応させシグナルを増幅した。最後にOPD基質液を用いて492nmの吸光度を測定した。臓器DNA中のCyclo-dAの蓄積量は、サンプルの吸光度から仔牛胸腺DNA吸光度を差し引いた値を検量線と比較することにより求めた。
結果を図4に示した。その結果、本発明抗体は色素性乾皮症A群のモデルマウス(XP-Aマウス)の生体サンプル中のDNA鎖上のCyclo-dAの蓄積量を検出できることがわかった。
〔蛍光免疫染色によるCyclo-dAの視覚化〕
ヒト骨肉腫(U2OS)細胞2×10個を35mmガラス底ディッシュ(MatTek)に植え、24時間培養後、Cyclo-dAを含むオリゴヌクレオチド、あるいは対照オリゴヌクレオチド10μgをjetPRIME細胞導入試薬(Polyplus-Transfection)と共に4時間処理した。正常培地に交換し、24時間培養後、細胞を4%ホルマリンで10分間室温処理により固定し、さらに氷冷0.5%Triton-Xで5分間処理により浸透化した。20%牛胎児血清でブロッキング後、本発明抗体(PBSにて30,000倍希釈)、続いてAlexa488標識抗マウスIgG-F(ab’)2抗体(Invitrogen,200倍希釈)をそれぞれ37℃で30分間反応させ、Cyclo-dAを染色した。さらに、細胞骨格(F-actin)の染色のため、Alexa594-phalloidin(Invitrogen)を4℃で20分間反応させ、細胞核DNA染色のために0.05μg/mlのDAPIを室温で5分間反応させた。カバーグラスで包埋後、蛍光顕微鏡を用いて3波長の蛍光画像を撮影し、Adobe Photoshopにより画像を重合した。
Cyclo-dAを含むオリゴヌクレオチドを導入した細胞の蛍光免疫染色画像を図5に、対照オリゴヌクレオチドを導入した細胞の蛍光免疫染色画像を図6に示した。図5および図6において、白い繊維状の部分は細胞骨格(F-actin)を示し、大きな楕円部分はDAPIで染色された細胞核DNAを示す。図5において、細胞内に導入されたCyclo-dAを含むオリゴヌクレオチドは、本発明抗体および蛍光染色二次抗体により染色され、ハイライト部分(例として矢印で示した箇所)に点在していることがわかった。一方、図6において、細胞内に導入された対照オリゴヌクレオチドの蛍光染色は観察されなかった。それ故、本発明抗体を用いれば、細胞サンプルを破壊することなく、細胞内のDNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンを特異的に視覚化できることがわかった。
SEQ ID NO.9: ScFv
SEQ ID NO.10: Control-oligo14
SEQ ID NO.11: Control-oligo20, wherein n is a, c, g, or t.
SEQ ID NO.12: Primer MuIgGVH3’-2, wherein n is inosine.
SEQ ID NO.13: Primer MuIgκVL3’-1

Claims (3)

  1. それぞれ3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
    VH領域のCDR1のアミノ酸配列がGly-Tyr-Ser-Ile-Thr-Ser-Gly-Tyr-Ser(配列番号1)であり、
    VH領域のCDR2のアミノ酸配列がIle-His-Tyr-Ser-Gly-Arg-Thr(配列番号2)であり、
    VH領域のCDR3のアミノ酸配列がAla-Thr-Tyr-Asp-Tyr-Asp-Gly-Tyr-Tyr-Val-Met-Asp-Tyr(配列番号3)であり、
    VL領域のCDR1のアミノ酸配列がGln-Ser-Ile-Val-Asn-Ser-Asn-Gly-Asn-Thr-Tyr(配列番号4)であり、
    VL領域のCDR2のアミノ酸配列がLys-Val-Ser(配列番号5)であり、
    VL領域のCDR3のアミノ酸配列がPhe-Gln-Gly-Ser-His-Val-Pro-Arg-Thr(配列番号6)である、
    DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片
  2. 配列番号7で示されるアミノ酸配列を含むVH領域または配列番号7で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および配列番号8で示されるアミノ酸配列を含むVL領域または配列番号8で示されるアミノ酸配列に対し少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を含み、DNA鎖上のアデノシン型サイクロプリンに特異的に結合する、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片
  3. IgG、Fab、Fab’、F(ab’)2、または単鎖抗体のいずれかの形態である、請求項1または2記載の抗体またはその抗原結合断片
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Takaaki Iwamoto et al.,Quantitative and in situ Detection of Oxidatively Generated DNA Damage 8,5'-Cyclo-2'-Deoxyadenosine Using an Immunoassay with a Novel Monoclonal Antibody,Photochemistry and Photobiology,2014年,Vol.90,pp.829-836
岩本 顕聡,色素性乾皮症A群患者の神経障害に及ぼす酸化的DNA損傷サイクロプリンの役割,[online],科学研究費助成事業 研究成果報告書,2016年06月03日,課題番号:24790895,インターネット<URL:https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-24790895/24790895seika.pdf>[検索日:2021年10月22日]

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