例となる実施形態をさらに詳細に記載する前に、以下の定義を示して記載で使用される用語の意味及び範囲を説明し、定義する。定義されていない用語は当該技術で認識されているその意味を有する。
開示されている化合物を合成するために有用な一般に知られる化学合成のスキーム及び条件を提供している多数の一般的な参考文献が利用できる(たとえば、Smith及びMarch,March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,Fifth Edition,Wiley-Interscience,2001;またはVogel,A Textbook of Practical Organic Chemistry, Including Qualitative Organic Analysis,Fourth Edition,New York:Longman,1978を参照のこと)。
本明細書に記載されている化合物が1つ以上のキラル中心及び/または二重結合異性体(たとえば、幾何異性体)、エナンチオマーまたはジアステレオマーを含有する場合、立体異性体で純粋な形態(たとえば、幾何的に純粋な、エナンチオマーで純粋なまたはジアステレオマーで純粋な)及びエナンチオマーと立体異性体との混合物を含む化合物の考えられるすべてのエナンチオマー及び立体異性体が本明細書の化合物の記載に含まれる。エナンチオマーと立体異性体との混合物は技量がある熟練者に周知の分離法またはキラル合成法を用いてその成分であるエナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。化合物はまた、エノール形態、ケト形態及びそれらの混合物を含む幾つかの互変異性体形態で存在することもできる。従って、本明細書で記載される化学構造は説明される化合物の考えられる互変異性体形態すべてを包含する。記載されている化合物はまた、1個以上の原子が従来自然界で見いだされる原子質量とは異なる原子質量を有する同位体で標識された化合物も含む。本明細書で開示されている化合物に組み込むことができる同位体の例には2H、3H、11C、13C、14C、15N、18O、17O等が挙げられるが、これらに限定されない。化合物は非溶媒和形態と同様に水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。一般に、化合物は水和することができ、または溶媒和することができる。特定の化合物は複数の結晶形態または非晶質形態で存在することができる。一般に、物理的形態はすべて本明細書で熟考される使用について同等であり、本開示の範囲内にあるように意図される。
「アルキル」は1~10の炭素原子、たとえば、1~6の炭素原子または1~5または1~4または1~3の炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語には例として直鎖及び分岐鎖のヒドロカルビル基、たとえば、メチル(CH3-)、エチル(CH3CH2-)、n-プロピル(CH3CH2CH2-)、イソプロピル((CH3)2CH-)、n-ブチル(CH3CH2CH2CH2-)、イソブチル((CH3)2CHCH2-)、sec-ブチル((CH3)(CH3CH2)CH-)、t-ブチル((CH3)3C-)、n-ペンチル(CH3CH2CH2CH2CH2-)、及びネオペンチル((CH3)3CCH2-)が含まれる。
用語「置換されたアルキル」は、アルキル鎖における1個以上の炭素原子が、たとえば、-O-、-N-、-S-、-S(O)n-(nは0~2である)、-NR-(Rは水素またはアルキルである)のようなヘテロ原子によって任意で置き換えられている本明細書で定義されているようなアルキル基及びアルコキシ、置換されたアルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換されたチオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-アリール、-SO2-ヘテロアリール、及び-NRaRbからなる群から選択される1~5の置換基を有する本明細書で定義されているようなアルキル基を指し、その際、R’及びR”は同一であっても異なっていてもよく、水素、任意で置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環から選択される。
「アルケニル」はそれ自体または別の置換基の一部として、アルケンの単一炭素原子からの水素原子1つの取り外しによって導出される少なくとも1つの炭素・炭素二重結合を有する不飽和の分岐鎖、直鎖または環状のアルキルラジカルを指す。その基は二重結合(複数可)についてシスまたはトランスの構造のいずれであってもよい。場合によっては、アルケニル基には、エテニル、プロペニル、たとえば、プロパ-1-エン-1-イル、プロパ-1-エン-2-イル、プロパ-2-エン-1-イル(アリル)、プロパ-2-エン-2-イル、シクロプロパ-1-エン-1-イル、シクロプロパ-2-エン-1-イル、ブテニル、たとえば、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、2-メチル-プロパ-1-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、ブタ-1,3-ジエン-1-イル、ブタ-1,3-ジエン-2-イル、シクロブタ-1-エン-1-イル、シクロブタ-1-エン-3-イル、シクロブタ-1、3-ジエン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。
アルキニルはそれ自体または別の置換基の一部として、アルキンの単一炭素原子からの水素原子1つの取り外しによって導出される少なくとも1つの炭素・炭素三重結合を有する不飽和の分岐鎖、直鎖または環状のアルキルラジカルを指す。場合によっては、アルキニル基には、エチニル、プロピニル、たとえば、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イル等、ブチニル、たとえば、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イル等が挙げられるが、これらに限定されない。
「アシル」は基H-C(O)-、アルキル-C(O)-、置換されたアルキル-C(O)-、アルケニル-C(O)-、置換されたアルケニル-C(O)-、アルキニル-C(O)-、置換されたアルキニル-C(O)-、シクロアルキル-C(O)-、置換されたシクロアルキル-C(O)-、シクロアルケニル-C(O)-、置換されたシクロアルケニル-C(O)-、アリール-C(O)-、置換されたアリールC(O)-、ヘテロアリール-C(O)-、置換されたヘテロアリール-C(O)-、ヘテロシクリル-C(O)-、及び置換されたヘテロシクリル-C(O)-を指し、その際、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環は本明細書で定義されたとおりである。たとえば、アシルには「アセチル」基CH3C(O)-が含まれる。
「アルコキシ」は基-O-アルキルを指し、その際、アルキルは本明細書で定義されたとおりである。アルコキシには例としてメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ等が挙げられる。用語「アルコキシ」はまた、基アルケニル-O-、シクロアルキル-O-、シクロアルケニル-O-、及びアルキニル-O-も指し、その際、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、及びアルキニルは本明細書で定義されたとおりである。用語「置換されたアルコキシ」は、基置換されたアルキル-O-、置換されたアルケニル-O-、置換されたシクロアルキル-O-、置換されたシクロアルケニル-O-、及び置換されたアルキニル-O-を指し、その際、置換されたアルキル、置換されたアルケニル、置換されたシクロアルキル、置換されたシクロアルケニル及び置換されたアルキニルは本明細書で定義されたとおりである。
「アミノ」は基-NH2を指す。用語「置換されたアミノ」は基-NRRを指し、その際、各Rは、少なくとも一方のRが水素ではないという条件で、水素、アルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリルからなる群から独立して選択される。
「アミノスルホニル」は基-SO2NR21R22を指し、その際R21及びR22は独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、置換された複素環からなる群から選択され、且つR21及びR22は任意で、それに結合される窒素と一緒に連結されて複素環基または置換された複素環基を形成し、且つ、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環は本明細書で定義されたとおりである。
「スルホニルアミノ」は基-NR21SO2R22を指し、その際、R21及びR22は独立して水素、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、置換されたアリール、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環からなる群から選択され、且つR21及びR22はそれに結合される原子と一緒に連結されて複素環基または置換された複素環基を形成し、その際、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アリール、置換されたアリールヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環は本明細書で定義されたとおりである。
「アリール」または「Ar」は、単環(フェニル基で存在するような)を有する、または連結の点が芳香族環の原子を介するという条件で縮合環が芳香族であってもよいもしくは芳香族でなくてもよい複数の縮合環を有する環系(そのような芳香族環系の例にはナフチル、アントリル及びインダニルが挙げられる)を有する6~18の炭素原子の一価芳香族炭素環式の基を指す。この用語には、例としてフェニル及びナフチルが含まれる。アリール置換基の定義によって制約されない限り、そのようなアリール基は任意で、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたアルキル、置換されたアルコキシ、置換されたアルケニル、置換されたアルキニル、置換されたシクロアルキル、置換されたシクロアルケニル、アミノ、置換されたアミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリル、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換されたチオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換されたアルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換されたアルキル、-SO2-アリール、-SO2-ヘテロアリール及びトリハロメチルから選択される1~5の置換基または1~3の置換基によって置換することができる。
「カルボキシル」、「カルボキシ」または「カルボキシレート」は-CO2Hまたはその塩を指す。
「カルボキシルエステル」または「カルボキシエステル」または用語「カルボキシアルキル」または「カルボキシルアルキル」は、基-C(O)O-アルキル、-C(O)O-置換されたアルキル、-C(O)O-アルケニル、-C(O)O-置換されたアルケニル、-C(O)O-アルキニル、-C(O)O-置換されたアルキニル、-C(O)O-アリール、-C(O)O-置換されたアリール、-C(O)O-シクロアルキル、-C(O)O-置換されたシクロアルキル、-C(O)O-シクロアルケニル、-C(O)O-置換されたシクロアルケニル、-C(O)O-ヘテロアリール、-C(O)O-置換されたヘテロアリール、-C(O)O-複素環、及び-C(O)O-置換された複素環を指し、その際、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環は本明細書で定義されたとおりである。
「(カルボキシルエステル)オキシ」または「カーボネート」は、基-O-C(O)O-アルキル、-O-C(O)O-置換されたアルキル、-O-C(O)O-アルケニル、-O-C(O)O-置換されたアルケニル、-O-C(O)O-アルキニル、-O-C(O)O-置換されたアルキニル、-O-C(O)O-アリール、-O-C(O)O-置換されたアリール、-O-C(O)O-シクロアルキル、-O-C(O)O-置換されたシクロアルキル、-O-C(O)O-シクロアルケニル、-O-C(O)O-置換されたシクロアルケニル、-O-C(O)O-ヘテロアリール、-O-C(O)O-置換されたヘテロアリール、-O-C(O)O-複素環、及び-O-C(O)O-置換された複素環を指し、その際、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環は本明細書で定義されたとおりである。
「シアノ」または「ニトリル」は基-CNを指す。
「シクロアルキル」は、縮合環系、架橋環系及びスピロ環系を含む単一のまたは複数の環状環を有する3~10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。好適なシクロアルキル基の例には、たとえば、アダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等が挙げられる。そのようなシクロアルキル基には、例として、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル等のような単環構造、または、たとえば、アダマンタニル等のような複数環構造が挙げられる。
用語「置換されたシクロアルキル」は、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換されたアミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、オキソ、チオケト、カルボキシル、カルボキシルアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換されたチオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、-SO-アルキル、-SO-置換されたアルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換されたアルキル、-SO2-アリール及び-SO2-ヘテロアリールから選択される1~5の置換基または1~3の置換基を有するシクロアルキル基を指す。
「複素環」、「複素環の」、「ヘテロシクロアルキル」及び「ヘテロシクリル」は、単環または縮合環、架橋環及びスピロ環の系を含む複数の縮合環を有し、且つ1~10個のヘテロ原子を含む3~20個の環原子を有する飽和または不飽和の基を指す。これらの環原子は窒素、イオウまたは酸素からなる群から選択され、縮合環系では、連結の点が非芳香族環を介するという条件で環の1つ以上はシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであることができる。特定の実施形態では、複素環基の窒素及び/またはイオウの原子(複数可)は任意で酸化されてN-酸化物、-S(O)-、または-SO2-の部分を提供する。
「ヘテロアリール」は、環内で1~15個の炭素原子、たとえば、1~10個の炭素原子と酸素、窒素及びイオウからなる群から選択される1~10個のヘテロ原子との芳香族基を指す。そのようなヘテロアリール基は単環を有することができ(たとえば、ピリジニル、イミダゾリルまたはフリル)または環系にて複数の縮合環を有することができ(たとえば、インドリジニル、キノリニル、ベンゾフラン、ベンズイミダゾリルまたはベンゾチエニルのような基のような)、その際、連結の点が芳香族環の原子を介するという条件で環系内の少なくとも1つの環が芳香族である及び環系内の少なくとも1つの環が芳香族である。特定の実施形態では、ヘテロアリール基の窒素及び/またはイオウの環原子(複数可)が任意で酸化されてN-酸化物(N→O)、スルフィニル、またはスルホニルの部分を提供する。この用語には例としてピリジニル、ピロリル、インドリル、チオフェニル、及びフラニルが含まれる。ヘテロアリール置換基の定義によって拘束されない限り、そのようなヘテロアリール基は任意で、アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたアルキル、置換されたアルコキシ、置換されたアルケニル、置換されたアルキニル、置換されたシクロアルキル、置換されたシクロアルケニル、アミノ、置換されたアミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリル、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、カルボキシルアルキル、シアノ、ハロゲン、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換されたチオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、-SO-アルキル、-SO-置換されたアルキル、-SO-アリール、-SO-ヘテロアリール、-SO2-アルキル、-SO2-置換されたアルキル、-SO2-アリール及び-SO2-ヘテロアリール、及びトリハロメチルから選択される1~5の置換基または1~3の置換基によって置換することができる。
用語「置換された複素環」、「置換された複素環の」、「置換された複素環基」及び「置換されたヘテロシクロ」は、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、オキソ、アリール、置換されたアリール、ヘテロシクロ、置換されたヘテロシクロ、カルボシクロ(任意で置換された)、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ(任意で置換された)、アリールオキシ(任意で置換された)、アルカノイル(任意で置換された)、アロイル(任意で置換された)、アルキルエステル(任意で置換された)、アリールエステル(任意で置換された)、シアノ、ニトロ、アミド、アミノ、置換されたアミノ、ラクラム、尿素、ウレタン、スルホニル等から好ましくは選択される1つ以上の基によって置換された複素環、複素環の及びヘテロシクロの基を指し、その際、任意で、それらが結合される原子と一緒に置換基の1つ以上の対が3~7員環の環を形成する。
複素環及びヘテロアリールの例には、アゼチジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、ジヒドロインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、フタルイミド、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン、チアゾール、チアゾリジン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、モルフォリニル、チオモルフォリニル(チアモルフォリニルとも呼ばれる)、1,1-ジオキソチオモルフォリニル、ピペリジニル、ピロリジン、テトラヒドロフラニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
「スルホニル」は基SO2-アルキル、SO2-置換されたアルキル、SO2-アルケニル、SO2-置換されたアルケニル、SO2-シクロアルキル、SO2-置換されたシクロアルキル、SO2-シクロアルケニル、SO2-置換されたシクロアルケニル、SO2-アリール、SO2-置換されたアリール、SO2-ヘテロアリール、SO2-置換されたヘテロアリール、SO2-複素環、及びSO2-置換された複素環を指し、その際、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、置換されたシクロアルケニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環は本明細書で定義されたとおりである。スルホニルには例としてメチル-SO2-、フェニル-SO2-、及び4-メチルフェニル-SO2-が挙げられる。
本明細書での個々の用語に関連して開示されている基に加えて、特定された基またはラジカルにおける飽和炭素原子上の1個以上の水素(単一炭素上での任意の2つの水素は=O、=NR70、=N-OR70、=N2または=Sで置き換えることができる)を置換するための置換基は、特定されない限り、-R60、ハロ、=O、-OR70、-SR70、-NR80R80、トリハロメチル、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、=N2、-N3、-SO2R70、-SO2O-M+、-SO2OR70、-OSO2R70、-OSO2O-M+、-OSO2OR70、-P(O)(O-)2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)2、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)O-M+、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)O-M+、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70CO2
-M+、-NR70CO2R70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70及び-NR70C(NR70)NR80R80であり、その際、R60は任意で置換されたアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール及びヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、各R70は独立して水素またはR60であり、各R80は独立してR70であり、または代わりに2つのR80’はそれらが結合される窒素原子と一緒になって、O、N及びSからなる群から選択される1~4の同一または異なる追加のヘテロ原子を任意で含んでもよく、そのNが-HまたはC1-C3のアルキル置換を有してもよい5-、6-、または7-員環のヘテロシクロアルキルを形成し、各M+は正味の単一正電荷を持つ対イオンである。各M+は独立して、たとえば、アルカリイオン、たとえば、K+、Na+、Li+、アンモニウムイオン、たとえば、+N(R60)4、またはアルカリ土類イオン、たとえば、[Ca2+]0.5、[Mg2+]0.5、または[Ba2+]0.5であってもよい(下付き0.5は、そのような二価のアルカリ土類イオンについての対イオンの一方が本発明の化合物のイオン化された形態であることができ、他方が塩化物のような典型的な対イオンであること、または本明細書で開示されている2つのイオン化された化合物がそのような二価のアルカリ土類イオンについての対イオンとして役立つことができること、または本発明の二重にイオン化された化合物がそのような二価のアルカリ土類イオンについての対イオンとして役立つことができることを意味する)。具体例として、-NR80R80には、-NH2、-NH-アルキル、N-ピロリジニル、N-ピペラジニル、4N-メチル-ピペラジン-1-イル及びN-モルフォリニルが挙げられることにする。
本発明の開示に加えて、「置換された」アルケン基、アルキン基、アリール基及びヘテロアリール基における不飽和炭素原子上の水素のための置換基は、特定されない限り、-R60、ハロ、-O-M+、-OR70、-SR70、-S-M+、-NR80R80、トリハロメチル、-CF3、-CN、-OCN、-SCN、-NO、-NO2、-N3、-SO2R70、-SO3
-M+、-SO3R70、-OSO2R70、-OSO3
-M+、-OSO3R70、-PO3
-2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)2、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-CO2
-M+、-CO2R70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OCO2
-M+、-OCO2R70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70CO2
-M+、-NR70CO2R70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70及び-NR70C(NR70)NR80R80であり、その際、R60、R70、R80及びM+は、置換されたアルケンまたはアルキンの場合、置換基が-O-M+、-OR70、-SR70、または-S-M+ではないという条件で以前定義されたとおりである。
本明細書での個々の用語に関連して開示されている基に加えて、「置換された」ヘテロアルキル基及びシクロヘテロアルキル基における窒素原子上の水素のための置換基は、特定されない限り、-R60、-O-M+、-OR70、-SR70、-S-M+、-NR80R80、トリハロメチル、-CF3、-CN、-NO、-NO2、-S(O)2R70、-S(O)2O-M+、-S(O)2OR70、-OS(O)2R70、-OS(O)2O-M+、-OS(O)2OR70、-P(O)(O-)2(M+)2、-P(O)(OR70)O-M+、-P(O)(OR70)(OR70)、-C(O)R70、-C(S)R70、-C(NR70)R70、-C(O)OR70、-C(S)OR70、-C(O)NR80R80、-C(NR70)NR80R80、-OC(O)R70、-OC(S)R70、-OC(O)OR70、-OC(S)OR70、-NR70C(O)R70、-NR70C(S)R70、-NR70C(O)OR70、-NR70C(S)OR70、-NR70C(O)NR80R80、-NR70C(NR70)R70及び-NR70C(NR70)NR80R80であり、その際、R60、R70、R80及びM+は以前定義されたとおりである。
本明細書の開示に加えて、特定の実施形態では、置換される基は、1、2、3もしくは4の置換基、1、2もしくは3の置換基、1もしくは2の置換基、または1の置換基を有する。
用語「薬学上許容できる塩」は、たとえば、哺乳類のような患者への投与について許容できる塩(所与の投与量計画について許容できる哺乳類の安全性を有する対イオンを持つ塩)を意味する。そのような塩は薬学上許容できる無機または有機の塩基及び薬学上許容できる無機または有機の酸に由来することができる。「薬学上許容できる塩」は化合物の薬学上許容できる塩を指し、その塩は、当該技術で周知の種々の有機及び無機の対イオンに由来し、それらには例としてのみ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等が挙げられ、分子が基本的な官能性を含有する場合、有機酸または無機酸の塩、たとえば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、ベシル酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩等が挙げられる。
「薬学上有効な量」及び「治療上有効な量」は所望の治療効果(たとえば、特定された障害または疾患または1つ以上のその症状の治療及び/または疾患または障害の発生の予防)を引き出すために十分な化合物の量を指す。ポリグルタミン疾患に関して、薬学上または治療上有効な量には、とりわけ、対象の脳におけるタンパク性の沈着を防ぐまたはその低下を引き起こすために十分な量が挙げられる。
用語「その塩」は、酸のプロトンがカチオン、たとえば、金属カチオンまたは有機カチオン等で置き換えられると形成される化合物を意味する。該当する場合、これは患者への投与の対象としない中間体化合物の塩には必要とされないが、塩は薬学上許容できる塩である。例として、本化合物の塩には、無機酸または有機酸によって化合物がプロトン化されてカチオンを形成し、無機酸または有機酸のコンジュゲート塩基が塩のアニオン成分であるものが挙げられる。
「溶媒和物」は溶媒分子の溶質の分子またはイオンとの結合によって形成される複合体を指す。溶媒は有機化合物、無機化合物、または双方の混合物であることができる。溶媒の一部の例には、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
「立体異性体(単数)」及び「立体異性体(複数)」は同一の原子連結性を有するが、空間にて異なる原子配列を有する化合物を指す。立体異性体には、シス・トランス異性体、E及びZ異性体、エナンチオマー及びジアステレオマーが挙げられる。
互変異性体は、原子の電子結合及び/またはプロトンの位置でのみ異なる分子の代替形態、たとえば、エノール・ケト及びイミン・エナミンの互変異性体、または-N=C(H)-NH-環原子の配置を含有するヘテロアリール基、たとえば、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール及びテトラゾールの互変異性体形態を指す。当業者は他の互変異性体の環原子の配置が可能であることを認識する。
方法の実施形態で使用するために活性剤として関心があるものはまたプロドラッグである。そのようなプロドラッグは一般に、生体内で必要とされる化合物に容易に変換できる化合物の機能的な誘導体である。従って、本開示の方法では、用語「投与すること」は、具体的に開示されている化合物を投与すること、または具体的に開示されていなくてもよいが、それを必要とする対象に投与した後、生体内で特定された化合物に変換する化合物を投与することを包含する。好適なプロドラッグ誘導体の選択及び調製についての従来の手順は、たとえば、Wermuth,“Designing Prodrugs and Bioprecursors”in Wermuth,ed.The Practice of Medicinal Chemistry,2d Ed.,pp.561-586(Academic Press,2003)に記載されている。プロドラッグには、生体内(たとえば、ヒト体内)で加水分解して本開示の方法及び組成物に好適な本明細書に記載されている化合物を生じるエステル類が挙げられる。好適なエステル基には限定しないで、各アルキルまたはアルケニルの部分が6個以下の炭素原子を有する薬学上許容できる脂肪族カルボン酸、特にアルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸、及びアルカンジオン酸に由来するものが挙げられる。説明に役立つエステルには、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、クエン酸エステル、コハク酸エステル及びエチルコハク酸エステルが挙げられる。
用語「試料」は本明細書で使用されるとき、必ずしも流体、すなわち、水性形態ではないが、対象とする1つ以上の成分を通常含有する物質または物質の混合物を指す。試料は種々の供給源、たとえば、食料品、環境物質、生体試料または生体固形物、たとえば、血漿、血清、脊髄液、精液、リンパ液、皮膚、呼吸器、腸及び泌尿生殖器の外部区画、涙液、唾液、乳汁、血液細胞、腫瘍、臓器を含むが、これらに限定されない、個体から単離された組織または流体、及び試験管内細胞培養構成成分(細胞培養培地における細胞の増殖の結果生じる調整培地、推定上ウイルス感染した細胞、組換え細胞及び細胞成分を含むが、これらに限定されない)の試料に由来してもよい。方法の特定の実施形態では、試料には細胞が含まれる。方法の一部の例では、細胞は試験管内にある。方法の一部の例では、細胞は生体内にある。
用語の他の定義は本明細書の全体を通して現れてもよい。
上記で要約されているように、本開示の態様には、細胞を有効量のテトラヒドロカルバゾールアミン化合物と接触させることによって細胞における標的遺伝子の有害効果、たとえば、細胞における変異伸長ヌクレオチド反復(NR)を含有する標的遺伝子の有害活性を低減する方法が含まれる。たとえば、標的遺伝子によってコードされた毒性発現産物(たとえば、RNAまたはタンパク質)の産生または活性を減らすこと(及び一部の例では、選択的に、を含む差別的に減らすこと)によって変異伸長NRを含有する標的遺伝子の有害活性(たとえば、それによってコードされた産物の毒性及び/または機能性不全)を低下させてもよい。主題の方法を実践するためのキット及び組成物も提供される。本発明の方法、キット及び組成物は、変異伸長ヌクレオチド反復、たとえば、変異伸長トリヌクレオチド反復を含有する遺伝子の存在に関連する病状、たとえば、ハンチントン病(HD)の予防または治療を含む種々の異なる適用で使用される。
本発明を詳細に記載する前に、本発明は記載されている特定の実施形態に限定されず、そのようなものとして当然変更してもよいことが理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のためのものであって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定すると意図されるものではないことも理解されるべきである。
値の範囲が提供される場合、文脈が明瞭に指示しない限り、下端の単位の10分の1までの、その範囲の上端と下端との間の各介在する値、及びその言及された範囲における他の言及されたまたは介在する値は本発明の範囲内に包含される。言及された範囲にて具体的に排除される端に依存して、これらのさらに小さい範囲の上端及び下端は独立してさらに小さい範囲に含まれてもよく、本発明の範囲内にも包含される。言及された範囲が一方または双方の端を含む場合、それらの含まれる端のいずれかまたは双方を排除する範囲も本発明に含まれる。
特定の範囲は、用語「約」が先行する数値によって本明細書で提示される。用語「約」は、それが先行する正確な数について文字通りの支援と同様にその用語が先行する数に近いまたは近似する数を提供するために本明細書で使用される。数が具体的に引用された数に近いまたは近似するか否かを判定することにおいて、近いまたは近似する引用されていない数は、それが提示される文脈で、具体的に引用された数の実質的な同等物を提供する数であってもよい。
特に定義されない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語は本発明が属する当該技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似するまたはそれと同等の方法及び物質を本発明の実践及び試験にて使用することもできるが、代表的な説明に役立つ方法及び物質が現在記載されている。
本明細書で引用されている出版物及び特許はすべて、各個々の出版物または特許が参照によって組み入れられるように具体的に且つ個々に指示されたかのように参照によって本明細書に組み入れられ、且つそれと関連して出版物が引用される方法及び/または物質を開示し、記載するために参照によって本明細書に組み入れられる。出版物の引用は出願日に先立つその開示のためであって、本発明が従来の発明のせいでそのような出版物に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される出版の日付は独立して確認される必要があってもよい実際の出版日と異なっていてもよい。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形態「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に指示しない限り、複数の指示対象を含むことが言及される。特許請求の範囲は任意の要素を除外するように起草されてもよいことがさらに言及される。そのようなものとして、この言及は特許請求の範囲の要素の引用に関連した「単に」、「のみ」等のような独占用語の使用、または「否定的な」限定の使用の先行詞として役立つように意図される。
本開示を読む際に当業者に明らかなように、本明細書で記載され、説明されている個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他の幾つかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよく、またはそれと容易に組み合わせてもよい個別の成分及び特徴を有する。引用された方法は引用された事象に順に、または論理的に可能である他の任意の順に実施することができる。
テトラヒドロカルバゾールアミン化合物
本開示の態様には、伸長ヌクレオチド反復(NR)を含む標的遺伝子の細胞における有害効果の低減に使用されるテトラヒドロカルバゾールアミン化合物が含まれる。テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は、都合が良い位置(単数)または位置(複数)でさらに置換することができるテトラヒドロ-1H-カルバゾール-1-アミンのコア構造を有する化合物である。主題の化合物はアミノ置換された2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-カルバゾール-1-アミン化合物であることができ、その際、1-アミン基はアルキル、置換されたアルキル、シクロアルキル、置換されたシクロアルキル、複素環、置換された複素環、アリール、置換されたアリール、アラルキル及び置換されたアラルキルによって置換される。2,3,4,9-テトラヒドロ-1H-カルバゾール-1-アミンのコア構造はカルバゾール環構造の都合が良い炭素にてさらに置換することができる。対象とする置換基にはアルキルが挙げられるが、これに限定されない。含まれるものはまた、インドール環に縮合された5員環または7員環の炭素環式の環を含む、本明細書に記載されているテトラヒドロカルバゾールアミン化合物のいずれかのシクロペンタ[b]インドール-3-アミン誘導体及びシクロヘプタ[b]インドール-6-アミン誘導体である。
一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(I)の構造を有し、
式中、
nは0、1または2であり、
R1、R2及びR3は独立してH、アルキル、置換されたアルキル、アシル、置換されたアシル、スルホニル、置換されたスルホニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環から選択され、
R5~R8は独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、且つ
各R4は独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、mは0、1、2、3または4である。
式(I)の特定の例では、化合物は、以下ではない。
式(I)の一部の例では、R3はアルキル、置換されたアルキル、アシル、置換されたアシル、スルホニル、置換されたスルホニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択される。式(I)の特定の例では、R3はアルキル及び置換されたアルキルから選択される。式(I)の特定の実施形態では、R3はシクロアルキル及び置換されたシクロアルキルから選択される。式(I)の特定の実施形態では、R3はアラルキル及び置換されたアラルキルから選択される。式(I)の特定の実施形態では、R3はヘテロアリール-アルキル及び置換されたヘテロアリール-アルキルから選択される。式(I)の一部の場合では、R3はアシル、置換されたアシル、スルホニル及び置換されたスルホニルから選択される。式(I)の特定の場合では、R3はアシル及び置換されたアシルから選択される。これらの実施形態の一部の場合では、R1及びR2はHである。一部の例では、R1及びR2は独立してH、アルキルまたは置換されたアルキルである。一部の例では、R1はHであり、且つR2はアルキルまたは置換されたアルキルである。一部の例では、R1はHであり、且つR2はメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルである。
式(I)の特定の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(II)の構造を有し、
式中、
R1~R8及びmは式(I)について定義したとおりであり、
pは0、1、2、3または4であり、且つ
R11はアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択される。
式(II)の特定の例では、化合物は、以下ではない。
式(II)の一部の例では、R11はアルキルまたは置換されたアルキルである。式(II)の特定の例では、R11はアリールまたは置換されたアリールである。式(II)の一部の場合では、R11はヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである、式(II)の特定の場合では、R11は複素環または置換された複素環である。式(II)の一部の実施形態では、pは0である。式(II)の特定の実施形態では、pは1である。式(II)の一部の例では、pは2である。式(II)の特定の例では、pは3である。式(II)の一部の例では、pは0または1であり、且つR11はアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール及び置換されたヘテロアリールから選択される。式(II)の一部の例では、pは0または1であり、且つR11はアリール、置換されたアリール、ヘテロアリール及び置換されたヘテロアリールから選択される。
式(II)の一部の場合では、pは0であり、且つR11はアルキルまたは置換されたアルキルである。式(II)の一部の場合では、pは0であり、且つR11は低級アルキルである。式(II)の一部の場合では、pは0であり、且つR11は置換されたアルキルである。式(II)の一部の場合では、pは0であり、且つR11は置換された低級アルキルである。式(II)の一部の場合では、pは0であり、且つR11はヒドロキシで置換された低級アルキル、アルコキシまたは置換されたアルコキシである。式(II)の一部の場合では、pは0であり、且つR11は-(CH2)a-OR31であり、その際、R31はHまたは低級アルキルであり、aは1、2、3、4、5または6である。式(II)の一部の場合では、pは0であり、且つR11はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、iso-ブチルまたはtert-ブチルである。
式(II)の特定の実施形態では、pは0であり、且つR11はシクロアルキルまたは置換されたシクロアルキルである。式(II)の特定の実施形態では、pは0であり、且つR11はシクロペンチルまたは置換されたシクロペンチルである。式(II)の特定の実施形態では、pは0であり、且つR11はシクロヘキシルまたは置換されたシクロヘキシルである。
式(II)の一部の例では、pが2以上である場合、R11はアリールまたは置換されたアリールではない。式(II)の一部の例では、pが2以上である場合、R11はフェニルまたは置換されたフェニルではない。式(II)の一部の例では、pが2以上である場合、R11はフェニルではない。式(II)の一部の例では、pが2である場合、R11はアリールまたは置換されたアリールではない。式(II)の一部の例では、pが2である場合、R11はフェニルまたは置換されたフェニルではない。式(II)の一部の例では、pが2である場合、R11はフェニルではない。
式(II)の一部の例では、pが0である場合、R11は複素環または置換された複素環ではない。式(II)の一部の例では、pが0である場合、R11はピペリジニルまたは置換されたピペリジニルではない。式(II)の一部の例では、pが0である場合、R11は置換された4-ピペリジニルではない。式(II)の一部の例では、pが0である場合、R11はアラルキル-置換された4-ピペリジニル(たとえば、N-(2-フェニルエチル)-置換された4-ピペリジニル)ではない。
式(II)の特定の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(III)の構造を有し、
式中、
R1~R2、R4~R8及びmは式(I)について定義されたとおりであり、
nは0、1または2であり、且つ
各R22は独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、qは0、1、2、3または4である。
式(III)の一部の例では、nは0である。式(III)の一部の場合では、nは1である。式(III)の特定の例では、nは2である。式(III)の一部の例では、qは0である。式(III)の一部の場合では、qは1である。式(III)の特定の例では、qは2である。式(III)の一部の例では、qは3である。式(III)の一部の場合では、qは4である。式(III)の特定の例では、nは2である。
式(III)の特定の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(IV)または(V)の構造を有し、
式中、
R1~R2、R5~R8は式(III)について定義されたとおりである。
式(IV)及び(V)の特定の実施形態では、R1はHであり、且つR5~R8は独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド及び置換されたスルホンアミドから選択される。式(IV)及び(V)の特定の実施形態では、R1はHであり、且つR5~R8は独立してH、ハロゲン、アルキル及び置換されたアルキルから選択される。
式(II)の特定の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(VI)の構造を有し、
式中、
R1~R2、R4~R8は式(III)について定義されたとおりであり、且つ
R23は、H、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アシル、置換されたアシル、スルホニル及び置換されたスルホニルから選択される。
式(VI)の一部の例では、R23はアルキル及び置換されたアルキルから選択される。式(VI)の特定の例では、R23はアリール、置換されたアリール、ヘテロアリール及び置換されたヘテロアリールから選択される。式(VI)の特定の場合では、R23はアシル及び置換されたアシルから選択される。式(VI)の特定の例では、R23は低級アルキルである。式(VI)の一部の場合では、R23は置換された低級アルキルである。式(VI)の一部の例では、R23はメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルである。式(VI)の特定の例では、R23は置換されたアルキルではない。式(VI)の特定の例では、R23はアリール置換された低級アルキルではない。式(VI)の特定の例では、R23はフェニル置換されたエチル(Ph-CH2CH2-)ではない。
式(VI)の特定の例では、化合物は、以下ではない。
式(I)の一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(VII)の構造を有し、
式中、
R1~R2、R4~R8及びmは式(I)について定義されたとおりであり、且つ
R12はアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択される。
式(VII)の特定の実施形態では、R12はアルキルまたは置換されたアルキルである。式(VII)の特定の例では、R12はアリールまたは置換されたアリールである。式(VII)の一部の例では、R12は複素環または置換された複素環である。式(VII)の特定の場合では、R12はヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである。
式(VII)の特定の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(VIII)の構造を有し、
式中、
R1~R2、R4~R8及びmは式(I)について定義されたとおりであり、
Z2、Z3及びZ4は独立してN、CHまたはCR23であり、且つ
各R23は独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択される。
式(VIII)の特定の例では、Z2はNであり、且つZ3及びZ4はCHまたはCR23である。式(VIII)の特定の場合では、Z3はNであり、且つZ2及びZ4はCHまたはCR23である。式(VIII)の一部の例では、Z4はNであり、且つZ2及びZ3はCHまたはCR23である。式(VIII)の特定の例では、R23はHである。式(VIII)の一部の例では、mは0である。式(VIII)の特定の場合では、mは1である。式(VIII)の一部の場合では、mは2である。式(VIII)の一部の実施形態では、mは3である。式(VIII)の特定の例では、mは4である。式(VIII)の特定の例では、R23はハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ及び置換されたアルコキシから選択される。
式(VIII)の特定の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(IX)の構造を有し、
式中、
R1~R2、R4~R8及びmは式(I)について定義されたとおりである。
式(II)の一部の場合では、pは1であり、且つR11はアリールまたは置換されたアリールである。式(II)の特定の場合では、pは2であり、且つR11はアリールまたは置換されたアリールである。式(II)の一部の例では、pは3であり、且つR11はアリールまたは置換されたアリールである。式(II)の一部の場合では、pは1であり、且つR11はヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである。式(II)の特定の場合では、pは2であり、且つR11はヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである。式(II)の一部の例では、pは3であり、且つR11はヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリールである。
式(II)の一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(X)の構造を有し、
式中、
R1~R2、R4~R8、m及びpは式(II)について定義されたとおりであり、且つ
各R21は独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、qは0、1、2、3、4または5である。
式(II)の特定の例では、化合物は、以下ではない。
式(X)の特定の実施形態では、pは1である。式(X)の特定の例では、pは2である。式(X)の特定の場合では、pは3である。式(X)の一部の実施形態では、qは0である。式(X)の一部の例では、qは1である。式(X)の一部の例では、qは2である。式(X)の一部の場合では、qは3である。式(X)の特定の実施形態では、pは1であり、且つR2はアルキルまたは置換されたアルキルである。式(X)の特定の実施形態では、pは1であり、且つR2はアルキルまたは置換されたアルキルである。
式(X)の一部の例では、pは0または1である。式(X)の一部の例では、qは1以上であり、且つR21はHではない。式(X)の一部の例では、R6はハロゲンまたはニトロではない。式(X)の一部の例では、R6はハロゲンではない。式(X)の一部の例では、R6は臭素ではない。
式(X)の一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(XI)の構造を有し、
式中、
R2、R5~R8、R21、p及びqは式(X)について定義されたとおりである。
式(XI)の特定の例では、化合物は、以下ではない。
式(XI)の特定の実施形態では、R2はHであり、且つpは1である。式(XI)の一部の例では、R2はアルキルまたは置換されたアルキルであり、且つpは1である。式(XI)の一部の例では、R2はメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルであり、且つpは1である。式(XI)の一部の実施形態では、R2はHであり、且つpは2である。式(XI)の特定の例では、R2はアルキルまたは置換されたアルキルであり、且つpは2である。式(XI)の特定の場合では、qは0である。式(XI)の特定の場合では、qは1であり、且つR21はアルキルまたは置換されたアルキルである。式(XI)の一部の場合では、qは1であり、且つR21は4-メチル、4-エチル、4-プロピルまたは4-イソプロピルである。
式(XI)の一部の例では、pは0または1である。式(XI)の一部の例では、qは1以上であり、且つR21はHではない。式(XI)の一部の例では、R6はハロゲンまたはニトロではない。式(XI)の一部の例では、R6はハロゲンではない。式(XI)の一部の例では、R6は臭素ではない。
式(I)、(II)、(X)及び(XI)の一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は式(XII)の構造を有し、
式中、
R6はH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環であり、
R31及びR32はそれぞれ独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環であり、且つ
R21~R25はそれぞれ独立してH、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環または-NR’R’’であり、その際、R’及びR’’はそれぞれ独立してH、アルキル及び置換されたアルキルであり、またはR’及びR’’は環状に連結されて任意で置換された5-もしくは6-員環の複素環の環を提供し、及び/またはR21~R25の任意の2つが環状に連結されて縮合されたアリールもしくはヘテロアリールの環を提供し、その縮合環は任意でさらにR21基によって置換される。
式(XII)の一部の実施形態では、R21~R25はそれぞれ独立してH、アルキル、置換されたアルキル、シアノ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、もしくは-NR’R’’であり、またはR21~R25の任意の2つが環状に連結されて縮合したアリールもしくはヘテロアリールの環を提供し、その縮合環は任意でさらに置換される。式(XII)の一部の例では、R21~R25はそれぞれ独立してH、アルキルまたは置換されたアルキルである。式(XII)の一部の例では、R22、R23、R24及びR25はそれぞれHである。
式(XII)の一部の例では、R31及びR32はそれぞれ独立してH、アルキルまたは置換されたアルキルである。式(XII)の一部の例では、R31及びR32はそれぞれHである。
上記に記載されている式(I)~(XII)の種々の実施形態では、基R1~R8及びmは存在するならば、以下の実施形態のいずれかに従ってさらに定義されてもよいことが理解される。
式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R1はHである。式(I)~(XI)の特定の例では、R1はアルキルである。式(I)~(XI)の一部の例では、R1はメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルである。式(I)~(XI)の特定の場合では、R1は置換されたアルキルである。式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R2はHである。式(I)~(XI)の特定の例では、R2はアルキルである。式(I)~(XI)の一部の例では、R2はメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルである。式(I)~(XI)の特定の場合では、R2は置換されたアルキルである。
式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R5~R8の1つ及びたった1つはHである。式(I)~(XI)の特定の例では、R5~R8のうちの2つはHである。式(I)~(XI)の特定の場合では、R5~R8のすべてはHである。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、R5はHである。式(I)~(XI)の一部の例では、R6はHである。式(I)~(XI)の一部の場合では、R7はHである。式(I)~(XI)の特定の例では、R8はHである。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、R5、R7及びR8はそれぞれHである。
式(I)~(XII)の特定の実施形態では、R6はハロゲンである。式(I)~(XII)の特定の実施形態では、R6はブロモである。式(I)~(XII)の特定の実施形態では、R6はクロロである。式(I)~(XII)の特定の実施形態では、R6はアルコキシまたは置換されたアルコキシである。式(I)~(XII)の特定の実施形態では、R6はイソプロピルオキシである。式(I)~(XII)の一部の実施形態では、R6はヒドロキシである。式(I)~(XII)の一部の例では、R6はメトキシである。式(I)~(XII)の一部の場合では、R6はエトキシである。式(I)~(XII)の特定の実施形態では、R6はアルキルまたは置換されたアルキルである。式(I)~(XII)の特定の例では、R6はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルまたはtert-ブチルである。式(I)~(XII)の特定の場合では、R6はメチルである。
式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R6はハロゲンであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R6はブロモであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R6はクロロであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R6はアルコキシまたは置換されたアルコキシであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R6はイソプロピルオキシであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、R6はヒドロキシであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の一部の例では、R6はメトキシであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の一部の場合では、R6はエトキシであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R6はアルキルまたは置換されたアルキルであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の特定の例では、R6はメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルまたはtert-ブチルであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。式(I)~(XI)の特定の場合では、R6はメチルであり、且つR5、R7及びR8はそれぞれHである。場合によっては、R8は水素であり、且つR5、R6及びR7はそれぞれ独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ及びヒドロキシから選択される。
式(I)~(XI)の特定の実施形態では、R8は水素であり、且つR5、R6及びR7はそれぞれ独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、アルコキシ、置換されたアルコキシ及びヒドロキシから選択される。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、R8は水素であり、且つR5、R6及びR7はそれぞれ独立してアルコキシ、置換されたアルコキシ及びヒドロキシから選択される。式(I)~(XI)の特定の例では、R8は水素であり、且つR5、R6及びR7はそれぞれ独立してメトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ及びイソプロピルオキシから選択される。式(I)~(XI)の特定の場合では、R8は水素であり、且つR5、R6及びR7はそれぞれイソプロピルオキシである。
式(I)~(XI)の一部の実施形態では、mは0である。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、mは1である。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、mは2である。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、mは3である。式(I)~(XI)の一部の実施形態では、mは4である。式(I)~(XI)の一部の例では、各R4は独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ及び置換されたアルコキシから選択される。式(I)~(XI)の一部の場合では、各R4は独立してアルキル及び置換されたアルキルから選択される。
一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は以下の構造の1つを有する。
一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は以下の構造を有する。
一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は以下の構造を有する。
一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は以下の構造の化合物ではない。
一部の実施形態では、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物は以下の構造の化合物ではない。
特定の例では、対象とするテトラヒドロカルバゾールアミン化合物、たとえば、本明細書に記載されている適用で使用される化合物は表1の化合物1~17の1つである。
本開示の態様には、テトラヒドロカルバゾールアミン化合物(たとえば、本明細書に記載されているような)、その塩(たとえば、薬学上許容できる塩)、及び/またはその溶媒和物、水和物及び/またはプロドラッグの形態が含まれる。加えて、1つ以上のキラル中心(たとえば、1-アミノ炭素中心)を有する本明細書に記載されている任意の化合物では、絶対的な立体化学が明白に示されていなければ、そのときは、各中心は独立してR配置またはS配置またはそれらの混合物のものであってもよいことが理解される。塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ及び立体異性体の入れ替えすべては本開示によって包含されることになることが十分に理解される。
一部の実施形態では、主題の化合物またはそのプロドラッグ形態は薬学上許容できる塩の形態で提供される。ヘテロアリール基を含有するアミンまたは窒素を含有する化合物は塩基性の性質であってもよいので、幾つもの無機酸または有機酸と反応して薬学上許容できる酸付加塩を形成してもよい。そのような塩を形成するために一般に採用される酸には、たとえば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸及びリン酸のような無機酸、同様にたとえば、パラ-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラ-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸及び酢酸のような有機酸、ならびに関連する無機酸及び有機酸が挙げられる。従って、そのような薬学上許容できる塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-,4-ジオエート、ヘキシン-1、6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩、ヒプル酸塩、グルコン酸塩、ラクトビオン酸塩、及び類似の塩が挙げられる。特定の具体的な実施形態では、薬学上許容できる酸付加塩には、たとえば、塩酸及び臭化水素酸のような鉱酸と共に形成されるもの、ならびにたとえば、フマル酸及びマレイン酸のような有機酸と共に形成されるものが挙げられる。
一部の実施形態では、主題の化合物はプロドラッグの形態で提供される。「プロドラッグ」は、活性剤を放出するために体内での変換を必要とする活性剤の誘導体を指す。特定の実施形態では、変換は酵素変換である。プロドラッグは、必ずしもではないが、活性剤に変換されるまで薬理学的に不活性であることが多い。「プロ部分」は活性剤内で官能基を隠すために使用される場合、活性剤をプロドラッグに変換する保護基の形態を指す。場合によっては、プロ部分は、生体内で酵素手段または非酵素手段によって切断される結合(複数可)を介して薬剤に連結される。主題の化合物の都合が良いプロドラッグの形態は、たとえば、Rautio,et al.(“Prodrugs:design and clinical applications”,Nature Reviews Drug Discovery,7,255-270(February,2008))によって記載された戦略及び方法に従って調製することができる。
一部の実施形態では、主題の化合物、そのプロドラッグ、立体異性体または塩は溶媒和物(たとえば、水和物)の形態で提供される。用語「溶媒和物」は本明細書で使用されるとき、溶質、たとえば、そのプロドラッグまたは薬学上許容できる塩の1個以上の分子と溶媒の1個以上の分子とによって形成される複合体または凝集体を指す。そのような溶媒和物は通常、溶質と溶媒との実質的に固定されたモル比を有する結晶性固形物である。代表的な溶媒には例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸等が挙げられる。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物である。
医薬品製剤
提供されるものはまた医薬品製剤である。医薬品製剤は、薬学上許容できる溶剤に存在するテトラヒドロカルバゾールアミン化合物(たとえば、本明細書に記載されているような)(たとえば、単独での、または1つ以上の追加の活性剤の存在下での主題の化合物の1つ以上)を含む組成物である。「薬学上許容できる溶剤」は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって認可された、または米国薬局方もしくはヒトのような哺乳類での使用について一般に認識された他の薬局方にてリストにされた溶剤であってもよい。用語「溶剤」は、哺乳類への投与のためにそれと共に本開示の化合物が製剤化される希釈剤、補助剤、賦形剤またはキャリアを指す。そのような医薬溶剤は液体、たとえば、水、及び石油、動物、植物または合成が起源のもの、たとえば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油等を含む油であることができる。医薬溶剤は、生理食塩水、アラビアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素等であることができる。加えて、補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤及び着色剤が使用されてもよい。
哺乳類に投与される場合、本開示の化合物及び組成物ならびに薬学上許容できる溶剤、賦形剤または希釈剤は無菌であってもよい。一部の例では、主題の化合物が静脈内に投与される場合、水性媒体、たとえば、水、生理食塩水、及び水性デキストロース及びグリセロール溶液が溶剤として採用される。
医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、丸薬、ペレット剤、トローチ剤、粉剤、顆粒剤、シロップ、エリキシル、溶液、懸濁液、エマルション、坐薬の形態、またはその徐放性製剤、または哺乳類に投与するために好適な他の形態を取ることができる。一部の例では、医薬組成物はヒトへの経口または静脈内の投与に適合する医薬組成物として日常の手順に従って投与用に製剤化される。好適な医薬溶剤及びその製剤化の方法の例は、参照によって本明細書に組み入れられるRemington:The Science and Practice of Pharmacy,Alfonso R.Gennaro ed.,Mack Publishing Co.Easton,Pa.,19th ed.,1995,Chapters 86,87,88,91,及び92に記載されている。賦形剤の選択は組成物を投与するために使用される特定の方法と同様に特定の化合物によってある程度決定される。従って、主題の医薬組成物の多種多様な好適な製剤がある。
主題の化合物の投与は全身性であってもよいし、または局所性であってもよい。特定の実施形態では、哺乳類への投与は本開示の化合物の全身性の放出(たとえば、血流への)を生じる。投与の方法には、経腸経路、たとえば、経口、頬内、舌下及び直腸、局所投与、たとえば、経皮及び皮内、ならびに非経口投与が挙げられてもよい。好適な非経口経路には、皮下注射針またはカテーテルを介した注射、たとえば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、動脈内、脳室内、髄腔内、及び前房内の注射、ならびに非注射経路、たとえば、膣内、直腸または鼻内の投与が挙げられる。特定の実施形態では、本開示の化合物及び組成物は皮下に投与される。特定の実施形態では、本開示の化合物及び組成物は経口で投与される。特定の実施形態では、本開示の1つ以上の化合物を治療が必要な領域に局所で投与することが望ましくてもよい。これは、たとえば、手術中の局所点滴、たとえば、術後の創傷包帯と併せた局所適用によって、注射によって、カテーテルによって、坐薬によって、または埋没物によって達成されてもよく、該埋没物は、たとえば、シリコン剤の膜のような膜または繊維を含む多孔性、非多孔性、またはゼラチン様物質のものである。
化合物は、水性または非水性の溶媒、たとえば、植物油または他の類似の油、合成の脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステルまたはプロピレングリコールにて、且つ所望であれば、従来の添加剤、たとえば、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存剤と共にそれらを溶解する、懸濁するまたは乳化することによって注射用製剤に製剤化することができる。
主題の化合物は経口投与用に製剤化されてもよい。経口医薬製剤については、好適な賦形剤には、医薬等級のキャリア、たとえば、マンニトール、ラクトース、グルコース、スクロース、デンプン、セルロース、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム及び/または炭酸マグネシウムが挙げられる。経口液体製剤での使用については、組成物は、たとえば、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、またはエタノール、好ましくは水または普通の生理食塩水のような水性キャリアにおける水和に好適な固体または液体の形態で供給される溶液、懸濁液、エマルションまたはシロップとして調製されてもよい。所望であれば、組成物は軽微な量の非毒性の補助物質、たとえば、湿潤剤、乳化剤または緩衝液も含有してもよい。一部の実施形態では、経口投与に好適な製剤には、(a)液状溶液、たとえば、水または生理食塩水のような希釈剤に溶解した有効量の化合物、(b)それぞれ所定の量の有効成分を固形物または顆粒として含有するカプセル剤、サシェ剤または錠剤、(c)適当な液体における懸濁液、及び(d)好適なエマルションを挙げることができる。錠剤形態は、ラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微細結晶セルロース、アラビアガム、ゼラチン、コロイド状二酸化珪素、クロスカメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸の1つ以上、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、保湿剤、保存剤、風味剤、及び薬理学的に適合性の賦形剤を含むことができる。トローチ形態は、風味剤、普通、スクロース及びアラビアガムまたはトラガカントガムにおける有効成分と同様に、有効成分に加えて本明細書に記載されているような賦形剤を含有する、たとえば、ゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアカシアガム、エマルション、ゲル等のような不活性基剤にて有効成分を含むトローチを含むことができる。
主題の製剤は吸入を介して投与される噴霧製剤にすることができる。これらの噴霧製剤は加圧された許容できる高圧ガス、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等に入れることができる。それらは、たとえば、吸入器または噴霧器で使用するための非加圧製剤用の医薬品としても製剤化されてもよい。
一部の実施形態では、非経口投与に好適な製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性の等張無菌の注射溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含むことができる水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。製剤は、たとえば、アンプル及びバイアルのような単位用量または複数回用量で密封した容器にて提示することができ、使用直前に無菌の液体賦形剤、たとえば、注射用水の添加のみを必要とする凍結・乾燥(凍結乾燥)の状態で保存することができる。即時注射の溶液及び懸濁液は以前記載されている種類の無菌の粉末、顆粒剤及び錠剤から調製することができる。
局所投与に好適な製剤は、有効成分に加えて適宜そのようなキャリアを含有するクリーム、ジェル、ペーストまたは泡状物として提示されてもよい。一部の実施形態では、局所製剤は、構造化剤、増粘剤またはゲル化剤、及び皮膚軟化剤または潤滑剤から選択される1つ以上の成分を含有する。頻繁に採用される構造化剤には、長鎖アルコール、たとえば、ステアリルアルコール、及びグリセリルエーテルまたはエステル及びオリゴ(酸化エチレン)エーテルまたはそのエステルが挙げられる。増粘剤及びゲル化剤には、たとえば、アクリル酸またはメタクリル酸及びそのエステルのポリマー、ポリアクリルアミド、及び天然に存在する増粘剤、たとえば、寒天、カラーギーナン、ゼラチン及びグアーガムが挙げられる。皮膚柔軟剤の例には、トリグリセリドエステル、脂肪酸エステル及びアミド、たとえば、蜜蝋、鯨蝋、またはカルナウバ蝋のような蝋状物質、レシチンのようなリン脂質、及びステロール及びその脂肪酸エステルが挙げられる。局所製剤はさらに、他の成分、たとえば、収斂剤、芳香剤、色素、皮膚浸透増強剤、日焼け止め剤(たとえば、日焼け防止剤)等を含んでもよい。
シロップ、エリキシル及び懸濁液のような経口投与用または直腸投与用の単位剤形が提供されてもよく、その際、各投与量単位、たとえば、小さじ1杯、大さじ1杯の錠剤または坐薬は1つ以上の阻害剤を含有する所定の量の組成物を含有する。同様に、注射用または静脈内投与用の単位剤形は、無菌水、普通の生理食塩水または別の薬学上許容できるキャリアにおける溶液としての組成物にて阻害剤(複数可)を含んでもよい。
用語「単位剤形」は本明細書で使用されるとき、ヒト対象及び動物対象に好適な単位投与量としての物理的に別個の単位を指し、各単位は薬学上許容できる希釈剤、キャリアまたは溶剤と関連して所望の効果を生じるために十分な量で算出された所定の量の本開示の化合物を含有する。本開示の新規の単位剤形の明細は、採用される特定の化合物及び達成される効果、及び宿主における各化合物に関連する薬物動態に左右される。医薬剤形では、化合物は遊離の塩基の形態、それらの薬学上許容できる塩の形態で投与されてもよく、またはそれらは単独で使用されてもよく、または薬学上活性がある他の化合物と関連して、同様にそれとの併用で使用されてもよい。
用量レベルは具体的な化合物、送達溶剤の性質等の関数として変化することができる。所与の化合物の所望の投与量は種々の手段によって容易に決定できる。本発明の開示の内容で動物、特にヒトに投与される用量は、たとえば、本明細書でさらに詳細に記載されているように理に適った時間枠にわたって動物にて予防反応または治療反応を達成するために十分であるべきである。投与量は、採用される特定の化合物の強度、動物の状態、及び動物の体重、同様に病気の重症度及び疾患のステージを含む種々の因子に左右される。用量の多少は、特定の化合物の投与に伴って起き得る有害な副作用の存在、性質及び程度によっても決定される。
方法
本開示の態様には、有効量の主題のテトラヒドロカルバゾールアミン化合物(たとえば、本明細書に記載されているような)と細胞とを接触させることによって、伸長ヌクレオチド反復(NR)を含む標的遺伝子の細胞における有害効果を低減する方法が含まれる。主題の化合物が使用される方法のさらなる態様は、その開示が全体として参照によって本明細書に組み入れられるWO2016/196012にてCohen,et alによって記載されている。本開示の実施形態には、細胞にて伸長ヌクレオチド反復を含有する標的遺伝子の有害(たとえば、害を及ぼすまたは傷つける)な活性を低減する方法が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「有害効果」は標的遺伝子に関連するまたは起因する害を及ぼすまたは傷つける活性及びそのような活性から生じてもよい細胞に対する望ましくない効果を指す。本明細書で使用されるとき、用語「有害活性」は標的遺伝子に関連するまたは起因する害を及ぼすまたは傷つける活性を指す。「有害効果を低減すること」または「有害活性を低減すること」によって、害を及ぼすもしくは傷つける活性またはその望ましくない効果のレベルを、対照に比べて、たとえば、対象とする主題の化合物に接触していない細胞に比べて、統計的に有意な量、及び一部の例では2倍以上、たとえば、5倍以上、10倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、またはもっと大きく低減することを意味する。ある場合には、「有害効果を低減すること」または「有害活性を低減すること」によって、害を及ぼすもしくは傷つける活性またはその望ましくない効果のレベルを、対照に比べて、たとえば、対象とする主題の化合物に接触していない細胞に比べて、統計的に有意な量、及び一部の例では10%以上、たとえば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上低減することを意味する。主題の化合物によって低減される標的遺伝子の有害効果または有害活性は変化してもよく、それには、細胞毒性、細胞生存率の低下、細胞機能の喪失、タンパク質凝集体の形成等が挙げられてもよいが、これらに限定されない。主題の方法及び化合物は、その開示が全体として参照によって本明細書に組み入れられるCheng,Cohen,et al.“Selective reduction of the deleterious activity of extended tri-nucleotide repeat containing genes”WO2012078906,及びCohen,et al.WO2016196012によって記載された方法を介して細胞における標的遺伝子の有害効果または有害活性を低減してもよい。
特定の実施形態では、方法は、標的遺伝子の有害効果を差別的に低減することによって伸長NRを含有する標的遺伝子の有害効果を低減してもよい。一部の実施形態では、主題の化合物は遺伝子からのRNA及び/またはタンパク質の発現を調節するので、それは標的遺伝子からのRNAまたはタンパク質の発現をある程度変化させる。方法の特定の実施形態では、主題の化合物は標的遺伝子からのタンパク質の発現を調節する。方法の特定の場合では、主題の化合物は差別的に、且つ一部の例では選択的に標的遺伝子の転写を減らして標的遺伝子によってコードされるタンパク質の細胞における毒性を低減する。都合が良いアッセイを用いて、対照、たとえば、対象とする化合物と接触していない細胞と比べて主題の化合物を用いた細胞における転写の低減を決定してもよく、その際、転写の低減の大きさは10%以上、たとえば、20%以上、30%以上、50%以上、100%以上、たとえば、2倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、またはさらに大きくてもよい。方法の一部の例では、主題の化合物は差別的に、且つ一部の例では選択的に標的遺伝子の転写を減らして細胞におけるタンパク質の機能性を高める。機能性を高めることによって、対照、たとえば、対象とする化合物と接触していない細胞と比べて標的遺伝子によってコードされるタンパク質の天然の、望ましい機能または活性を10%以上、たとえば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、たとえば、2倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、またはさらに大きく高めることを意味する。都合が良いアッセイを利用して対象とするタンパク質の機能または活性のレベルを決定してもよい。標的遺伝子の転写を差別的に減らすことによって、非標的遺伝子、たとえば、対応する野生型遺伝子の低減よりも大きな程度に標的遺伝子の転写が低減されることを意味する。化合物に投与から生じる転写における差異の大きさは変化してもよく、その際、一部の例では、対応する非標的遺伝子の転写と比べた標的遺伝子の転写の低減の大きさは、2倍以上、5倍以上、10倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、またはさらに大きい。一部の例では、標的遺伝子の転写が低減される一方で、化合物の投与は、もしあれば、対応する非標的遺伝子の転写の低減を実質的にほとんど生じない。そのような例では、化合物の投与は標的遺伝子の転写を選択的に低減すると見なされてもよい。
特定の実施形態では、方法は、標的遺伝子の有害効果を選択的に低減することによって伸長NRを含有する標的遺伝子の有害効果を低減してもよい。これらの実施形態の方法は標的遺伝子の有害効果、すなわち、有害活性を選択的に低減する方法であるので、それらはそのように行う一方で、標的遺伝子が有害活性を生じる変異伸長ヌクレオチド反復(たとえば、トリヌクレオチド反復)を含んでいない細胞である正常なまたは野生型の細胞に存在するような遺伝子の活性を意味する、標的遺伝子の正常なまたは野生型の、たとえば、有益な活性の少なくとも実質的に測定できる量を保持する。従って、これらの実施形態では、主題の方法は、標的遺伝子の有害活性の選択的な低減にもかかわらず、標的遺伝子の生理的に望ましい活性を維持してもよく、または復元してもよい。方法の一部の例では、化合物は標的遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を調節する。方法の一部の実施形態では、標的遺伝子からのタンパク質の発現は標的遺伝子の正常な対立遺伝子(たとえば、標的遺伝子の正常な対立遺伝子は8~25のCAG反復を含む)からの発現に比べて選択的に調節される。特定の場合では、標的遺伝子の正常な対立遺伝子の活性は細胞にて維持され、たとえば、対象とする化合物と接触していない対照細胞の対応する活性の20%以内(たとえば、10%以内、5%以内、2%以内、または1%以内)である活性を有する。
さらに他の実施形態では、方法は、標的遺伝子の正常な活性と同様に有害効果を低減することによって伸長NRを含有する標的遺伝子の細胞における有害効果を低減してもよい。これらの実施形態の方法は標的遺伝子の有害効果、すなわち、有害活性を非選択的に低減する方法であるので、それらは標的遺伝子の有害効果を低減する一方で、標的遺伝子が有害活性を生じる変異伸長ヌクレオチド反復(たとえば、TNR)を含んでいない細胞である正常なまたは野生型の細胞に存在するような遺伝子の活性を意味する、標的遺伝子の正常なまたは野生型の、たとえば、有益な活性も完全まではいかないにせよある程度低減する。
場合によっては、害があるまたは傷つける活性は標的遺伝子によってコードされるタンパク質産物の機能不全であり、その際、機能不全は標的遺伝子の正常な対立遺伝子には存在しないタンパク質産物の望ましくない活性(たとえば、細胞毒性)を指す。一部の例では、有害活性を生じる変異伸長ヌクレオチド反復を含まない標的遺伝子を標的遺伝子の正常な対立遺伝子と呼ぶ。標的遺伝子の正常な対立遺伝子は望ましい数のヌクレオチド反復(NR)を含んでもよい。NRがTNRである特定の例では、正常な対立遺伝子は25以下、たとえば、20以下、または10以下のトリヌクレオチド反復(TNR)を含む。特定の場合では、標的遺伝子の正常な対立遺伝子は8~25のTNRを含む。一部の例では、正常な対立遺伝子は8~25のCAG反復を含む。
方法の特定の実施形態では、標的遺伝子の有害効果はタンパク質の毒性であり、化合物は細胞におけるタンパク質の毒性を低減する。一部の例では、毒性は望ましくないタンパク質の凝集の結果である。そのようなものとして一部の例では、主題の方法は標的遺伝子に起因する毒性の低減を生じ、その際、毒性低減の大きさは変化してもよく、一部の例では、たとえば、好適な対照、たとえば、対象とする化合物と接触していない細胞と比べて2倍以上、たとえば、5倍以上、10倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、またはそれ以上である。以下でさらに詳細に記載されているように、毒性は特定の標的遺伝子に依存してもよい多数の異なる方法で低減されてもよい。一部の例では、たとえば、標的遺伝子が標的遺伝子によってコードされる産物にて伸長ポリQドメインの存在を生じる伸長CAG反復を含む場合、毒性の低減は標的遺伝子によってコードされる産物の凝集の低減を伴う。方法の一部の実施形態では、タンパク質は細胞にて凝集体を形成し、26以上のグルタミン残基、たとえば、30以上のグルタミン残基、35以上、40以上、50以上、または60以上のグルタミン残基を伴ったポリグルタミンの区間を含む。
そのような例では、凝集の低減の大きさは変化してもよく、一部の例では、低減の大きさは、たとえば、好適な対照、たとえば、対象とする化合物と接触していない細胞と比べて2倍以上、たとえば、5倍以上、10倍以上、20倍以上、50倍以上、100倍以上、またはそれ以上である。ある場合では、凝集の低減の大きさは変化してもよく、一部の例では、低減の大きさは、たとえば、好適な対照、たとえば、対象とする化合物と接触していない細胞と比べて10%以上、たとえば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上である。タンパク質の凝集は、そのプロトコールの開示が参照によって本明細書に組み入れられる公開された米国特許出願番号20110130305に記載されたプロトコールを含むが、これらに限定されない都合が良いプロトコールを用いてアッセイされてもよい。
特定の実施形態では、本発明の方法によって低減される有害効果または有害活性は標的遺伝子によってコードされる産物の機能の喪失であってもよい。特定のこれらの実施形態では、標的遺伝子は伸長トリヌクレオチド反復を含むので、標的遺伝子によってコードされる産物の野生型または正常の活性は完全とまではいかないまでも少なくとも部分的に損傷される。これらの例では、標的遺伝子の産物の所望の機能を増強することによって機能の喪失は完全とまではいかないまでも少なくとも部分的に元に戻される。コードされる産物の所望の機能は、好適な対照、たとえば、対象とする化合物と接触していない細胞と比べて統計的に有意な量に増強されてもよく、その際、所望の活性の増強の大きさは2倍以上、たとえば、10倍以上を含む5倍以上であってもよい。
特定の実施形態では、主題の化合物は、細胞生存率アッセイによって決定されるとき、たとえば、細胞を本開示の化合物と接触させ、均質法、たとえば、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイを用いて培養物における生細胞の数を決定することによって決定されるとき、好適な対照と比べて細胞の生存率を高める。
標的遺伝子は、たとえば、TNRのような変異伸長NRを含む遺伝子であり、その際、変異伸長ヌクレオチド反復ドメインは遺伝子の正常な型には存在しない。用語「遺伝子」は本明細書で使用されるとき、産物の産生をコードするまたは可能にする且つプロモーター、イントロン、エクソン及びエンハンサーを含む染色体の定義された領域または部分である。変異伸長ヌクレオチド反復(NR)によって、2つ以上のヌクレオチドの単位の複数の隣接する反復を含む遺伝子のドメイン(すなわち、領域)を意味し、その際、ヌクレオチドの所与の反復単位は、一部の例では2から10ヌクレオチドに及んで、たとえば、3から6ヌクレオチドに及んで長さで変化してもよく、反復単位の長さの例には、2ヌクレオチド(たとえば、変異伸長ヌクレオチド反復がジヌクレオチド反復である場合)、3ヌクレオチド(たとえば、変異伸長ヌクレオチド反復がトリヌクレオチド反復である場合)、4ヌクレオチドの単位(たとえば、変異伸長ヌクレオチド反復がテトラヌクレオチド反復である場合)、5ヌクレオチド(たとえば、変異伸長ヌクレオチド反復がペンタヌクレオチド反復である場合)、または6ヌクレオチド(たとえば、変異伸長ヌクレオチド反復がヘキサヌクレオチド反復である場合)の単位が挙げられる。所与のドメインの範囲内で、ドメインは、ドメインを構成する反復単位の性質に関して均質であってもよいし、または不均質であってもよい。たとえば、所与のドメインは単一型の反復単位で構成されてもよいので、すなわち、ドメインの反復単位すべてが同じ(すなわち、同一の)配列のヌクレオチドを共有するので、それは均質な変異NRドメインである。あるいは、所与のドメインは2つ以上の異なる型の反復単位、すなわち、異なる配列を有する反復単位で構成されるので、それは不均質な変異NRドメインである。変異伸長ヌクレオチド反復ドメインは標的遺伝子のコーディング領域または非コーディング領域に存在してもよい。一部の例では、伸長ヌクレオチド反復ドメインは標的遺伝子のコーディング領域に存在する。一部の例では、伸長ヌクレオチド反復ドメインは標的遺伝子の非コーディング領域に存在する。変異伸長ヌクレオチド反復の長さ及び特定の配列は変化してもよい。
一部の例では、変異伸長ヌクレオチド反復は変異伸長トリヌクレオチド反復である。変異伸長トリヌクレオチド反復によって、同じ3つのヌクレオチドの複数の隣接する反復を含む遺伝子のドメイン(すなわち、領域)を意味し、変異伸長トリヌクレオチド反復の長さ及び特定の配列は変化してもよく、変異伸長トリヌクレオチド反復ドメインは遺伝子の正常型には存在しない。伸長トリヌクレオチド反復ドメインは標的遺伝子のコーディング領域または非コーディング領域に存在してもよい。一部の例では、伸長トリヌクレオチド反復ドメインは標的遺伝子のコーディング領域に存在する。一部の例では、伸長トリヌクレオチド反復ドメインは標的遺伝子の非コーディング領域に存在する。実施形態では、たとえば、筋強直性ジストロフィー(DM)につながる筋緊張性異栄養症-タンパク質キナーゼ遺伝子の3’非翻訳領域に位置するCTGの増加のような変異反復ドメインは標的遺伝子の非コーディング領域に存在する。一部の例では、変異反復ドメインは標的遺伝子のコーディング領域に存在するので、一部の例では、標的遺伝子におけるその存在はその遺伝子によってコードされる産物にて対応するドメインまたは領域(たとえば、ポリQドメイン)を生じる。方法の一部の例では、変異伸長TNRドメインはCTG反復ドメインである。特定の場合では、変異伸長トリヌクレオチド反復ドメインは26以上のCTG反復(たとえば、30以上、35以上等)を含む。
変異伸長トリヌクレオチド反復はヌクレオチドの組成及び長さという点で変化してもよい。対象とする具体的なトリヌクレオチドには、CAG、CTG、CGG、GCC、GAA等が挙げられるが、これらに限定されない。一部の例では、変異伸長トリヌクレオチド反復ドメインはCAG反復ドメインである。反復ドメイン(たとえば、CAG反復ドメイン)の特定の長さは、それが有害活性を生じる限り、具体的な標的遺伝子に関して変化してもよく、一部の例では、25反復以上、たとえば、26反復以上、35反復以上、40反復以上、50反復以上、またはさらに60反復以上を含めて30反復以上である。対象とする具体的な標的遺伝子及び発現されるタンパク質、それらに関連する疾患及び対象とする伸長CAG反復の反復配列の具体的な長さには、以下の表2で提供されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
示されている病原性反復の長さは近似であり、病原性反復の長さの最も一般的な範囲を表す。各病原性反復の長さについて示されている2つの数の低い方は増加の病原性効果が発生し始める長さを示す。NR疾患に関与する常染色体遺伝子の双方の細胞性コピーがNRドメインを含有してもよいが、一般に標的遺伝子の一方のコピーが変異して増加したNRセグメントを有するのに対して、他のコピー(すなわち、対立遺伝子)は増加しないNRを含有する。
上記で要約されているように、変異伸長NRを含有する標的遺伝子の有害活性(たとえば、それによってコードされる産物の毒性及び/または機能性不全)は、種々の異なる方法での主題の化合物によって、たとえば、以下でさらに詳細に記載されているように、標的遺伝子によってコードされる毒性発現産物(たとえば、RNAまたはタンパク質)の産生または活性を低減すること(及び一部の例では、選択的に低減すること)によって低減されてもよい。
方法の一部の実施形態では、主題の化合物は標的遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を調節する。たとえば、ポリQ反復に関して、特定の実施形態では、標的遺伝子は、SCA1、SCA2、SCA3、SCA7、SCA17、DRPLA、ケネディ病、及びハンチントン病の疾患を生じる遺伝子から選択される。特定の例では、標的とされる疾患はSCA1である。特定の例では、標的疾患はSCA2である。特定の例では、標的疾患はSCA3である。特定の例では、標的疾患はSCA7である。特定の例では、標的疾患はSCA17である。特定の例では、標的疾患はDRPLAである。特定の例では、標的疾患はケネディ病である。特定の例では、標的疾患はハンチントン病である。これらの疾患を生じる遺伝子及びそのコードされるタンパク質は上記表2で一覧にされている。標的遺伝子によってコードされるタンパク質は、翻訳後修飾されるタンパク質を含めて調節されてもよい。調節されたタンパク質は遺伝子の発現された産物またはその翻訳後修飾された型であってもよい。場合によっては、タンパク質はHttタンパク質である。特定の場合では、タンパク質は変異体Httタンパク質である。対象とするハンチンチン(Htt)タンパク質の翻訳後修飾が調節されてもよい。対象とするタンパク質の翻訳後修飾はタンパク質の安定性、局在化、機能及び他の分子とのその相互作用を調節してもよい。SUMO化、リン酸化、パルミトイル化、アセチル化、等を含む翻訳後修飾はアミノ酸残基での化学修飾として発生してもよい。翻訳後修飾は酵素的切断を含んでもよい。翻訳後修飾は、種々の細胞プロセス、たとえば、Httの代謝、タンパク質・タンパク質の相互作用及び細胞毒性の調節及び制御に関与してもよい。
一部の例では、主題の化合物は、たとえば、発現に続くタンパク質の機能性、たとえば、結合特性、活性等を調節するので、化合物は、標的遺伝子からのタンパク質の発現に続く標的遺伝子によってコードされたタンパク質の機能性を変化させるものである。場合によっては、化合物は、コードされたタンパク質の有害な機能性、たとえば、凝集を差別的に低減するが、コードされたタンパク質の有益な活性を少なくとも検出できるレベルに保持するまたは増強するものであってもよい。場合によっては、化合物は、コードされたタンパク質の有害な機能性、たとえば、凝集を選択的に低減するが、コードされたタンパク質の有益な活性を少なくとも検出できるレベルに保持するまたは増強するものであってもよい。特定の実施形態では、そのような化合物はタンパク質の凝集の阻害剤ではないが、代わりに、別のメカニズムを介して、たとえば、凝集に利用できる細胞におけるタンパク質の量を減らすことによって、その凝集傾向等とは無関係に細胞に有害であるタンパク質の産生を減らすことによってタンパク質の有害な活性または機能性を選択的に低減する。
場合によっては、主題の化合物は遺伝子産物、たとえば、RNAまたはタンパク質の発現を変化させてもよい。方法の特定の実施形態では、主題の化合物は機能性を調節することによって、たとえば、細胞におけるSPT4タンパク質の結合相互作用を変化させることによって有害効果を低減する。用語SPT4タンパク質は、酵母のSpt4タンパク質だけでなく、哺乳類のホモログ、たとえば、ヒトSUPT4H、マウスSupt4h等をまとめて指すために本明細書で使用される。そのようなものとして、その活性が選択的SPT4調節化合物によって調節されてもよい対象とするSPT4タンパク質には、S.cerevisiaeのSpt4、ヒトのSUPT4H及びマウスのSupt4hが挙げられるが、これらに限定されない。主題の化合物はSPT4調節剤と呼ばれてもよい。SPT4調節剤は細胞にてSPT4活性を変化させる、たとえば、SPT4活性を低下させる化合物である。化合物は選択的SPT4調節剤であってもよい。一部の例では、活性化合物によって調節される、たとえば、低減される標的SPT4活性は転写活性であり、具体的には、長いトリヌクレオチド反復ドメイン、たとえば、長いCAG反復ドメインを介してRNAポリメラーゼIIの処理能力を促進する活性である。そのような化合物によって調節される標的SPT4活性はSPT4タンパク質から生じる活性である。
本発明の方法で採用される主題の化合物がSPT4調節剤である場合、採用される化合物は細胞への導入の際、細胞におけるSPT4の機能性を変化させてもよく、且つ対象にて伸長トリヌクレオチド反復が介在するSPT4転写活性を少なくとも差別的に低減してもよい。SPT4調節剤は種々の方法で、たとえば、SPT4タンパク質の別のタンパク質、たとえば、SPT4と相互作用するタンパク質(たとえば、SPT5タンパク質、たとえば、Spt5またはSUPT5H)等への結合を阻害することによって機能性を調節してもよい。一部の例では、主題の化合物はSPT4タンパク質と第2のタンパク質との相互作用を低下させる。特定の例では、第2のタンパク質はSPT5タンパク質である。用語SPT5タンパク質は酵母のSpt5タンパク質だけでなく、哺乳類のホモログ、たとえば、ヒトSUPT5H、マウスSupt5h等をまとめて指すために本明細書で使用される。方法の特定の実施形態では、主題の化合物はSupt4hとSupt5hとの間の相互作用を低下させる。ヒトSupt4hは、その酵母オルソログが転写伸長を調節してもよいようにSupt5hとの複合体を形成してもよい(Guo,et al.,“Core structure of the yeast spt4-spt5 complex:a conserved module for regulation of transcription elongation,”Structure(2008),16:1649-1658;Hatzog,et al.,“Evidence that Spt4,Spt5,and Spt6 control transcription elongation by RNA polymerase II in Saccharomyces cerevisiae,”Genes Dev.(1998),23:357-369;Wada,et al.,“DSIF,a novel transcription elongation factor that regulates RNA polymerase II processivity,is composed of human Spt4 and Spt5 homologs,”Genes Dev.(1998)12:343-356;Wenzel,et al.,“Crystal structure of the human transcription elongation factor DSIF hSpt4 subunit in complex with the hSpt5 dimerization interface,”Biochem.J.(2009),425:373-380)。方法の特定の実施形態では、化合物はSupt5hとRNAポリメラーゼIIとの間の相互作用を低下させる。たとえば、主題の化合物はSupt5hのRNAポリメラーゼIIへの結合を妨害してもよく、Supt4hとSupt5hとの間の相互作用に対するその効果は間接的であってもよい。
提供されるものはまた、SPT4タンパク質と第2のタンパク質との相互作用を選択的ではないにしても差別的に低下させる化合物(たとえば、本明細書に記載されているような)の有効量と試料とを接触させることによって試料にてSPT4タンパク質(たとえば、本明細書に記載されているような)と第2のタンパク質との相互作用を低下させる方法である。特定の例では、第2のタンパク質はSPT5タンパク質(たとえば、本明細書に記載されているような)である。「相互作用を低下させる」によって、SPT4タンパク質の第2のタンパク質への結合の程度(たとえば、SPT4全体と比べた結合したSPT4の画分)を、たとえば、好適な対照、たとえば、対象とする化合物と接触していない細胞と比べて10%以上、たとえば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%低下させることを意味する。任意の都合が良い方法を利用してSPT4タンパク質の第2のタンパク質への結合の程度を決定してもよい。方法の特定の実施形態では、化合物はSupt4hとSupt5hとの間の相互作用を低下させる。化合物は具体的にはSPT4タンパク質に結合し、SPT4タンパク質のSPT5タンパク質との相互作用を邪魔する。一部の例では、化合物は具体的にはSPT5タンパク質に結合し、SPT4タンパク質とSPT5タンパク質との間の相互作用を邪魔する。
一部の例では、化合物の有効量は、相互作用を低下させる量、すなわち、化合物の非存在下でのSPT4複合体の形成と比べて、SPT4複合体(たとえば、SPT4/SPT5複合体)の形成を20%以上、たとえば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、またはさらに90%以上阻害する化合物の量である。たとえば、アッセイ方法の開示が参照によって本明細書に組み入れられるCheng,et al.“Selective reduction of the deleterious activity of extended tri-nucleotide repeat containing genes”WO2012078906によって記載されたそれらの方法のような、複合体形成の阻害または競合阻害をアッセイする任意の都合が良い方法が利用されてもよい。
主題の方法での使用のために任意の都合が良い細胞が標的とされてもよい。一部の例では、化合物が活性を示す細胞の型は、変異伸長トリヌクレオチド反復を含有する標的遺伝子を含むものである。方法の一部の実施形態では、細胞は動物細胞または酵母細胞である。特定の例では、細胞は哺乳類細胞である。
特定の実施形態に従って方法を実践することにおいて、有効量の化合物、たとえば、SPT4調節剤が標的細胞(単数)または標的細胞(複数)にて提供される。一部の例では、細胞を化合物と接触させることによって有効量の化合物が細胞にて提供される。細胞の調節剤との接触は都合が良いプロトコールを用いて生じてもよい。プロトコールは、標的細胞の位置に応じて調節剤との試験管内または生体内での接触を提供してもよい。一部の例では、細胞は試験管内にある。特定の例では、細胞は生体内にある。接触は細胞への化合物の侵入を含んでもよいし、または含まなくてもよい。たとえば、標的細胞が単離された細胞であり、調節剤がSPT4の発現を調節する作用物質である場合、標的細胞の生存性に寛容な細胞培養条件下で調節剤は直接細胞に導入されてもよい。方法の選択は一般に、接触される細胞の型及び化合物の性質、及びそのもとで形質転換が起きる状況(たとえば、試験管内、生体外または生体内)に依存する。
あるいは、標的細胞(単数)または標的細胞(複数)が多細胞生物の一部である場合、調節剤は、たとえば、生体内または生体外のプロトコールを介して、化合物が標的細胞(複数可)に接触できるような方法で生物または対象に投与されてもよい。「生体内」によって、標的構築物が動物の生体に投与されることを意味する。「生体外」によって、細胞または臓器が体外で操作されることを意味する。そのような細胞または臓器は場合によっては、生体に戻される。
特定の実施形態では、方法は、標的遺伝子の有害効果を選択的に低減して対象にて標的遺伝子から生じる疾患の進行を緩和する主題の化合物の有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む生体内の方法である。用語「治療すること」または「治療」は本明細書で使用されるとき、(a)疾患もしくは病状の発生を防ぐこと、たとえば、対象の予防的治療、(b)疾患もしくは病状を改善すること、たとえば、患者にて疾患もしくは病状を排除することもしくはその退縮を引き起こすこと、(c)疾患もしくは病状を抑制すること、たとえば、患者にて疾患もしくは病状の発生を減速することもしくは停止すること、または(d)患者にて疾患もしくは病状の症状を緩和することを含む、たとえば、哺乳類(たとえば、ヒト)のような患者における疾患もしくは病状を治療することまたはその治療を意味する。
本明細書で使用されるとき、用語「宿主」、「対象」、「個体」及び「患者」は相互交換可能に使用され、開示されている方法に係るそのような治療を必要とする任意の哺乳類を指す。そのような哺乳類には、たとえば、ヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、マウス及びラットが挙げられる。特定の実施形態では、対象は非ヒト哺乳類である。一部の実施形態では、対象は家畜である。他の実施形態では、対象はペットである。一部の実施形態では、対象は哺乳類である。特定の例では、対象はヒトである。他の対象には、ヒトに馴れたペット(たとえば、イヌ及びネコ)、家畜(たとえば、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ等)、齧歯類(たとえば、疾患の動物モデルで見られるようなたとえば、マウス、モルモット及びラット)、同様に非ヒト霊長類(たとえば、チンパンジー及びサル)を挙げることができる。
投与される化合物の量は、薬学上許容できる希釈剤、キャリアまたは溶剤と関連して所望の効果を生じるために十分な量であるように都合が良い方法を用いて決定することができる。本開示の単位剤形についての明細は、採用される特定の化合物及び達成される効果、及び宿主における各化合物に関連する薬物動態に左右される。
一部の実施形態では、主題の化合物の有効量は、約50ng/mlから約50μg/mlまで(たとえば、約50ng/ml~約40μg/ml、約30ng/ml~約20μg/ml、約50ng/ml~約10μg/ml、約50ng/ml~約1μg/ml、約50ng/ml~約800ng/ml、約50ng/ml~約700ng/ml、約50ng/ml~約600ng/ml、約50ng/ml~約500ng/ml、約50ng/ml~約400ng/ml、約60ng/ml~約400ng/ml、約70ng/ml~約300ng/ml、約60ng/ml~約100ng/ml、約65ng/ml~約85ng/ml、約70ng/ml~約90ng/ml、約200ng/ml~約900ng/ml、約200ng/ml~約800ng/ml、約200ng/ml~約700ng/ml、約200ng/ml~約600ng/ml、約200ng/ml~約500ng/ml、約200ng/ml~約400ng/ml、または約200ng/ml~約300ng/ml)に及ぶ量である。
一部の実施形態では、主題の化合物の有効量は、約10pgから約100mgまでに及ぶ、たとえば、約10pg~約50pg、約50pg~約150pg、約150pg~約250pg、約250pg~約500pg、約500pg~約750pg、約750pg~約1ng、約1ng~約10ng、約10ng~約50ng、約50ng~約150ng、約150ng~約250ng、約250ng~約500ng、約500ng~約750ng、約750ng~約1μg、約1μg~約10μg、約10μg~約50μg、約50μg~約150μg、約150μg~約250μg、約250μg~約500μg、約500μg~約750μg、約750μg~約1mg、約1mg~約50mg、約1mg~約100mg、または約50mg~約100mgに及ぶ量である。量は単回投与量であることができ、または1日合計量であることができる。1日合計量は10pgから100mgに及ぶことができ、または100mgから約500mgに及ぶことができ、または500mgから約1000mgに及ぶことができる。
一部の実施形態では、単回用量の主題の化合物が投与される。他の実施形態では、複数回用量の主題の化合物が投与される。複数回用量がある期間にわたって投与される場合、RAS調節化合物は1日2回(qid)、毎日(qd)、2日に1回(qod)、3日に1回、週に3回(tiw)、または週に2回(biw)ある期間にわたって投与される。たとえば、化合物は、qid、qd、qod、tiwまたはbiwで1日から約2年以上の期間にわたって投与される。たとえば、種々の因子に応じて、化合物は前述の頻度のいずれかで1週間、2週間、1ヵ月間、2ヵ月間、6ヵ月間、1年間または2年間以上投与される。
種々の方法のいずれかを用いて治療法が有効であるか否かを決定することができる。たとえば、主題の方法で治療されている個体から得られた生体試料を、変異伸長ヌクレオチド反復(NR)を含有する標的遺伝子を含む細胞の存在及び/またはレベルについてアッセイすることができる。対象における治療の方法の有効性の評価は、都合が良い方法を用いた治療前、治療中及び/または治療後の対象の評価を含むことができる。主題の方法の態様はさらに対象の治療に対する治療反応を評価するステップを含む。
一部の実施形態では、方法は、治療される対象とする疾患または状態(たとえば、本明細書に記載されているような)に関連する対象の1つ以上の症状を診断すること、または評価することを含む、対象の状態を評価することを含む。一部の実施形態では、方法は、対象から生体試料を得ることと、たとえば、対象とする疾患または状態(たとえば、本明細書に記載されているような)に関連する標的遺伝子もしくは遺伝子産物の存在について、または細胞の存在について試料をアッセイすることとを含む。試料は細胞試料であることができる。場合によっては、試料は生検である。主題の方法の評価ステップ(複数可)は、都合が良い方法を用いて、主題の化合物の投与前、投与中及び/または投与後に1回以上実施することができる。特定の場合では、評価ステップは変異伸長ヌクレオチド反復(NR)を含有する標的遺伝子を含む細胞の同定を含む。特定の例では、対象を評価することは対象が対象とする疾患または状態を有するか否かを診断することを含む。
一部の例では、方法は疾患に関連した症状の発生を遅延させる。特定の例では、疾患に関連した症状の大きさを軽減する。対象とする病状には、変異伸長トリヌクレオチド反復ドメインを含有する遺伝子の有害活性に関連するものが挙げられる。用語「進行を緩和する」は、進行の速度の低減(たとえば、病状の1つ以上の症状の発生の遅延で現れるような)、同様に病状の治癒を含む進行の好転(たとえば、病状の1つ以上の症状の大きさの軽減で現れるような)の双方を包含するために採用される。場合によっては、疾患または状態は神経変性疾患である。特定の例では、疾患または状態は神経筋機能不全疾患である。本発明の方法及び組成物が使用される具体的な病状には、前述の一覧したものが挙げられるが、これらに限定されず、ポリQの病状、たとえば、脊髄小脳失調1型、脊髄小脳失調2型、脊髄小脳失調3型、脊髄小脳失調7型、脊髄小脳失調17型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、球脊髄性筋委縮症、及びハンチントン病、他のトリヌクレオチド反復疾患、たとえば、脆弱性X症候群、脆弱性XEMR、脆弱X関連振戦/失調症候群(FXTAS)、筋強直性ジストロフィー、Friedreich失調症、脊髄小脳失調8型(SCA8)及び脊髄小脳失調12型(SCA12)、ポリアラニン増加疾患、たとえば、筋強直性ジストロフィー2型、脊髄小脳失調10型、脊髄小脳失調31型、進行性ミオクローヌスてんかん、ヘキサヌクレオチド反復の病状、たとえば、常染色体優性前頭側頭型認知症(FTD)及び筋委縮性脊索硬化症(ALS)等が挙げられる。
用語「代替マーカー」は、臨床試験における具体的な疾患治療の効果の評価基準を指す、または結果を予測するために従来の意味で採用される。代替マーカーは、臨床的に意味がある評価項目の代替として治療試験で使用される検査室測定または身体的兆候として定義することができる。第III相の臨床試験で厳密に検証された信頼できる代替マーカーは患者がどのように感じ、機能し、または生存するかに基づいて治療法の長期効果を予測することができる(Katz,“Biomarkers and Surrogate Markers:an FDA Perspective,”NeuroRx,(2004)1:189-95)。これらのマーカーを用いて試験間の薬剤有効性を比較してもよく、これらのマーカーは新しい薬剤が市場取引のために規制当局の認可を得る基礎とさえなってもよい(Twaddell,“Surrogate outcome markers in research and clinical practice,”Australian Prescriber,(2009),32:47-50)。それらの使用は大型試験または臨床試験のサイズ、持続時間及びコストを減らすことができるので、予測される薬剤の効果が死亡を阻止し、他の臨床的に重要な結果を促進するのであれば、これらのマーカーは特に価値がある。一部の進行性の疾患については、代替マーカーは疾患のステージを決定することができてもよい(Weston,“The use of surrogate end points in cardiovascular disease and diabetes,”The British Journal of Cardiology,(2008),15:S6-S7)。具体的な病状に応じて、代替マーカーは広く変化してもよい。従って、本開示の実施形態には、たとえば、本明細書に記載されているような化合物を投与して病状の1つ以上の代替マーカーを調節する、たとえば、改善することが含まれる。
たとえば、治療される標的の病状がハンチントン病である場合、種々の異なる代替マーカーを採用して疾患及びそれに対する治療法の効果をモニターしてもよい。一部の例では、評価されてもよい代替マーカーには、変異体ハンチンチンのタンパク質、DNAまたはRNAが挙げられ、プロトコールはこれらのマーカーの1つ以上についてアッセイすることを含んでもよい。ハンチントン病の臨床上の特徴及び経過を評価する標準法と見なされるプロトコールは統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)である。方法は、4つの領域である運動機能、認知機能、行動異常及び機能的能力にてハンチントン病患者を評価する。運動区分は、眼球運動機能、構音障害、舞踏病、筋失調症、歩行及び姿勢の安定性を評価するための0~4に及ぶ尺度を提供する。高い合計スコアはさらに重度の運動損傷を示す。次に、患者の認知機能は、音声の発話流暢性試験、記号デジタルモダリティ試験及びストループ干渉試験である3つの試験によって評価される。ここで、各試験に由来する高い生スコアは良好な認知性能を示す。プロトコールの行動部分は、行動の非存在を表す0及び行動の重度の症状を表す4と共に0~4に及ぶ尺度で気分、行動及び精神障害での異常の頻度及び重症度を測定する。行動の全スコアは反応すべての合計であり、高いスコアは重症度が大きい行動症状を示す。行動のセクションはまた、患者が混乱、認知症またはうつ病の証拠を示すか否かを評価者が判定するように促す。疾患の進行のX線写真による評価基準を組み込んで、機能的評価は機能的能力の全スコア、自立尺度、及び作業課題のチェックリストを含む。機能的能力の全スコアは0から2または3に及ぶ尺度に由来し、0は正常に操作する能力がないことを表し、2または3は正常の機能的能力を表す。自立尺度は0から100に及び、各10の増分は特定のケア、支援及び監督の必要性の低下を表す。作業課題を実施する患者の能力に関する質問のチェックリストは、1からすべて「はい」の返答のスコアを与えることによって合計される。高いスコアは低いスコアよりも良好な患者の機能性を表す(Kieburtz,et al.,“Unified Huntington’s Disease Rating Scale: Reliability and Consistency,”Movement Disorders,(1996),11:136-42)。方法の実施形態の実践はUHDRSのパラメーターすべてを含む1以上にて改善を生じ、その際、改善は一部の例では、5%以上、たとえば、10%以上であり、一部の例では、100%以上であってもよい。
他の行動と作業課題との完成試験の結果は本開示の実施形態ではハンチントン病の代替マーカーとして役立ってもよい。目から心を読む試験(RMET)は、たとえば、ハンチントン病の疾患ステージすべてにわたって臨床的に有用な扁桃体機能の代理測定である。それは、自分自身とはまたは現実とは異なることができる他の人々における考え、感覚、意図及び関心の存在を理解する個体の能力に基づく。患者は目の絵を示され、絵の周りに置かれた4つの感情的な/精神的な状態の単語のうちどれが目で表現されている考えまたは感覚を最もよく捉えているかを決定するように促される。正しい反応の総数によって判定されるこの試験の成績は、疾患の発症に近づくことと負に相関することが見いだされ、疾患の各ステージで進行性に悪化した(Mason,et al.,“The role of the amygdala during emotional processing in Huntington’s disease:From pre-manifest to late stage disease,”Neuropsychologia,(2015),70:80-9)。患者の話し方もハンチントン病のマーカーとして使用するために分析されている。患者は一節を読むようにまたは独白を生じるように促され得る。研究は、健常個体と比べて、変異体ハンチンチン(Htt)遺伝子を持つ患者が遅速性の会話を示し、単語を発する際に長くかかり、単語間で及び単語内で長い沈黙を生じることを示している(Vogel,et al.,“Speech acoustic markers of early stage and prodromal Huntington’s disease:a marker of disease onset?,”Neurospychologia,(2012),50:3273-8)。他のマーカーには二重課題動作試験が挙げられ、その際、ハンチントン病の患者は、単純作業課題を単独でまたは一緒に行うこと、及び眼球運動を行うことで遅く、精度が低く、それらは疾患の重症度及び進行についての情報を提供することができる(Vaportzis,et al.,“Effects of task difficulty during dual-task circle tracing in Huntington’s disease,”Journal of Neurology,(2015),262:268-76)、(Anderson及びMacAskill,“Eye movements in patients with neurodegenerative disorders,”Nature Reviews.Neurology,(2013),9:74-85)。他のマーカーには、繊細な動きの機能不全を評価するための選択反応作業課題、エピソード記憶を評価するHopkins言語学習試験、空間視覚処理を評価するコンピューター化心的回転作業課題、及びセットシフティング作業課題(Rosas,et al.,“PRECREST:a phase II prevention and biomarker trial of creatine in at-risk Huntington disease,”Neurology,(2014),82:850-7)、(Beste,et al.,“A novel cognitive-neurophysiological state biomarker in premanifest Huntington’s disease validated on longitudinal data,”Sci.Rep.(2013),3:1-8)が挙げられるが、これらに限定されない。方法の実施形態の実践は、採用される特定の試験で測定されるパラメーターの改善を生じることができ、改善は一部の例では、5%以上、たとえば、10%以上であり、一部の例では、100%以上であってもよい。
一部の例では、ハンチントン病患者の血液、組織及び体液から採取される試料を代替マーカーについて分析する。これらのマーカーは変化してもよく、その際、そのようなマーカーの例には血清または身体測定で見いだされる検査対象、たとえば、pHまたは血液容量が挙げられる。体液及び組織におけるそのようなマーカーの濃度、レベルまたは定量測定はハンチントン病の症状の出現に対応することが見いだされることが多い。たとえば、遊離の24S-ヒドロキシコレステロールのようなオキシステロール及び24S-ヒドロキシコレステロール/総コレステロールの比の高い血清レベルは精神運動速度及び実行機能を評価する作業課題における損傷の大きなリスクと関連する。一方、高いレベルの遊離の27-ヒドロキシコレステロール及び27-ヒドロキシコレステロール/総コレステロールの比は遅延記憶損傷の大きなリスクと関連する(Bandaru及びHaughey,“Quantitative detection of free 24S-hydroxycholesterol,and 27-hydroxycholesterol from human serum,”BMC Neuroscience,(2014),15:137)。体液で見いだされるマーカーの別の例はコルチゾールであり、唾液におけるその高い濃度は前期または早期のハンチントン病患者における低下した情報の符号化及び記憶検索及び上昇した運動兆候の重症度に強く関連する(Shirbin,et al.,“The relationship between cortisol and verbal memory in the early stages of Huntington’s Disease,”Journal of Neurology,(2013),260:891-902)。身体的評価基準を代替マーカーとして使用してもよいことを実証して、試験は前駆期または早期のハンチントン病患者における神経細胞pH及び脳血液量の上昇を見いだす(Hua,et al.,“Elevated arteriolar cerebral blood volume in prodromal Huntington’s Disease,”Movement Disorders,(2014),29:396-401)、(Chaumeil,et al.,“pH as a biomarker of neurodegeneration in Huntington’s disease:a translational rodent-human MRS study,”Journal of Cerebral Blood Flow,(2012),32:771-9)。分子代替のさらに別の例は、転写物発現であり、具体的には、健常個体と比べたハンチントン病対象における当初高いレベルで発現された遺伝子の発現の治療後の低下である(Borovecki,et al,“Genome-wide expression profiling of human blood reveals biomarkers for Huntington’s Disease,”PNAS,(2005),102:11023-028)。体液における他の代替マーカーには、C反応性タンパク質、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)/白血球(WBC)の比、インターロイキン-6(IL-6)、チオレドキシン還元酵素-1(TrRd-1)、チオレドキシン-1(Trx-1)及び筋アデノシン三リン酸が挙げられるが、これらに限定されない(Sanchez-Lopez,et al.,“Oxidative stress and inflammation biomarkers in the blood of patients with Huntington’s disease,”Neurological Research,(2012),34:721-4)、(Lodi,et al.,“Abnormal in vivo skeletal muscle energy metabolism in Huntington’s disease and dentatorubropallidoluysian atrophy,”Annals of Neurology,(2000),48:72-6)。方法の実施形態の実践は採用される特定の試験で測定されるマーカー(複数可)における改善を生じることができ、その際、改善は一部の例では、5%以上、たとえば、10%以上であり、一部の例では、100%以上であってもよい。
さらに、ハンチントン病についての代替マーカーは画像化マーカー、たとえば、神経画像検査及び磁気共鳴画像検査(MRI)によって得られるマーカーであってもよい。画像化を用いて脳の領域にわたる白質及び灰白質における萎縮の容量、レベル、及び活性についての情報を提供する。van den Bogaard,et al.,“MRI biomarkers in Huntington’s Disease,”Frontiers in Bioscience,(2012),4:1910-25によって記載されたように、一般的なMRI法には、構造MRI、拡散テンソル画像化、磁化移動画像化、磁気共鳴分光法、及び機能的MRIが挙げられる。構造的なまたは容量測定のMRIは皮質リボンの局所の進行性の菲薄化ならびに灰白質及び白質の減少を明らかにすることができる。構造的MRI走査は、脳の領域、特に尾状核、淡蒼球及び果核における萎縮の量及び比率も検出することができ、それらは前期または早期の病状で発生すると思われる。種々の半自動から全自動までの技法、たとえば、ボクセルに基づく形態計測(VBM)、境界シフト積分(BSI)及びFMRIBの統合登録と分割法(FIRST)が記載されている(van den Bogaard,et al.,“MRI biomarkers in Huntington’s Disease,”Frontiers in Bioscience,(2012),4:1910-25)。拡散テンソル画像化(DTI)によって、組織物質の完全性は細胞内及び細胞外の空間におけるプロトンの拡散特性に基づいて評価される。白質及び灰白質における異方性比率(FA)、見かけの拡散係数(ADC)、平均拡散率(MD)及び全拡散率(トレースD)の撹乱はDTI走査の間に測定される。0に近いFA値は全方向での同等の拡散を表す。対照的に1に近いまたは等しいFA値は高度に方向性がある拡散を表す。高いMD値は制約されない拡散を表し、低いMD値は制約された拡散を示唆する。脳の幾つかの領域におけるMD値及びFA値の上昇は、皮質下の灰白質及び白質における接続の選択的変性をまとめて実証したが、それはハンチントン病における線条体中型有棘神経細胞の死のせいである可能性がある(Douaud,et al.,“In vivo evidence for the selective subcortical degeneration in Huntington’s disease,”NeuroImage,(2009),46:958-66)、(van den Bogaard,et al.,“MRI biomarkers in Huntington’s Disease,”Frontiers in Bioscience,(2012),4:1910-25)。別の技法である磁化移動画像化(MTI)は組織構造を調べる方法を提供する。その技法は自由流体におけるプロトンと高分子に結合したプロトンとの間の相互作用に依拠する。高分子内での磁化の飽和及び緩和は観察できるシグナルに影響を及ぼす。飽和と不飽和とのデータ取得間でのMRシグナルにおける変動の比率を表す磁化移動比(MTR)は臨床試験で使用される評価基準である。2つの主な結果評価基準である、ヒストグラム解析に由来する平均MTR及びMTRピーク高さが報告される。ハンチントン病保因者の試験では、MTRは果核を除くすべての皮質下構造で有意に低下したということは、皮質下及び皮質の灰白質の変性を明らかにしている(Ginestroni,et al.,“Magnetization transfer MR imaging demonstrates degeneration of the subcortical and cortical gray matter in Huntington’s Disease,”American Journal of Neuroradiology,(2010),31:1807-12)、(van den Bogaard,et al., “MRI biomarkers in Huntington’s Disease,”Frontiers in Bioscience,(2012),4:1910-25)。さらに別の技法は磁気共鳴分光法(MRS)である。MRSは代謝産物濃度を測定する際に水素プロトンを使用する。前の技法とは異なって、MRSは生理的過程における変化についての情報を与える。調べられる最も一般的な代謝産物は、ニューロン及び軸索の完全性のマーカーであるN-アセチルアスパラギン酸塩、脳のエネルギー代謝のマーカーであるクレアチン、膜の代謝回転を反映するマーカーであるコリン、オスモライト及びアストロサイトのマーカーであるミオ-イノシトール、酸化過程の中止及び嫌気性解糖の開始のマーカーである乳酸塩、及び神経伝達物質であるグルタミン酸塩である。様々な脳の領域にわたるクレアチンとN―アセチルアスパラギン酸塩との低下したレベル及び乳酸塩の上昇したレベルは不顕性期ハンチントン病の試験で報告されている(van den Bogaard,et al.,“MRI biomarkers in Huntington’s Disease,”Frontiers in Bioscience,(2012),4:1910-25)。最終的に、機能的MRI(fMRI)は活性化が変化した脳の領域を区別する際に血中酸素濃度依存性(BOLD)のシグナルを使用する。脳の領域の活性化はエネルギーの増加、その結果、fMRIで測定される血液需要を必要とする。たとえば、時計を読む作業課題、言語作業記憶課題、サイモン課題、またはPorteus迷路作業課題のような様々な機能的作業課題をfMRI走査の間に採用することができる。異常な結合性パターン及び活性化パターンは不顕性期及び顕性期のハンチントン病に関連する。たとえば、不顕性期のハンチントン病患者は幾つかの領域で活性化の上昇を示すことが多い一方で、「発症に近い」不顕性遺伝子の保因者では一般に活性化の低下がある(van den Bogaard,et al.,“MRI biomarkers in Huntington’s Disease,”Frontiers in Bioscience,(2012),4:1910-25)。Van den Bogaardによれば、容量測定の評価基準及び白質の拡散テンソル画像完全性の評価基準はハンチントン病の不顕性ステージを評価するための最良の技法である。早期の顕性ハンチントン病については、磁気移動画像化及び脳全体の萎縮の測定がさらに適切である(van den Bogaard,et al.,“MRI biomarkers in Huntington’s Disease,”Frontiers in Bioscience,(2012),4:1910-25)。方法の実施形態の実践は採用される特定の画像化試験で測定されるパラメーターで改善を生じることができ、その際、改善は一部の例では、5%以上、たとえば、10%以上であり、一部の例では、100%以上であってもよい。
MRI走査から離れて、不顕性期のハンチントン病患者にてベースラインで及びその後の数年間に脳の代謝活性を測定するためにポジトロン放射断層撮影(PET)走査が採用されている。脳の代謝ネットワーク解析は、神経変性を経験している患者にて特徴的な空間共分散パターンの発現を測定するためにますます使用されている。[18F]フルオロデオキシグルコース走査によって測定されて、代謝ネットワーク活性は、表現型転換(phenoconversion)とも呼ばれる、ハンチントン病の臨床発症の間での早い速度の進行と高い発現とによって示されるような疾患の進行に感受性であると判明した。特定の閾値を上回るベースライン代謝活性の異常な上昇はこの先数年間のうちでの表現型転換の高い可能性を示す(Tang,et al.,“Metabolic network as a progression biomarker of premanifest Huntington’s disease,”The Journal of Clinical Investigation,(2013),123:4076-88)。両側性の前頭、側頭及び頭頂葉の皮質における皮質グルコース代謝の低下は、早期ステージのハンチントン病患者における疾患進行のさらに早い形態を同定する予測因子としても示唆されている(Shin,et al.,“Decreased Metabolism in the Cerebral Cortex in Early-Stage Huntington’s Disease:A Possible Biomarker of Disease Progression?,”Journal of Clinical Neurology,(2013),9:21-5)。方法の実施形態の実践は採用される特定の画像化試験で測定されるパラメーターでの改善を生じることができ、その際、改善は一部の例では、5%以上、たとえば、10%以上であり、一部の例では、100%以上であってもよい。
体液に基づくマーカー及び画像化マーカーを超えて、ハンチントン病のための代替マーカーには、種々の食生活、ミネラル蓄積及び包含検出の評価基準が挙げられる。試験の1つは、地中海食への執着の表現型転換に対する影響を評価し、顕性ハンチントン病のさらに早い進行と関連する高い尿酸塩レベルのリスクの上昇との乳製品の高い消費の間での若干の相関を見いだす(Marder,et al.,“Relationship of Mediterranean diet and caloric intake to phenoconversion in Huntington’s Disease,”JAMA Neurology,(2013),70:1382-8)。別個の試験では、鉄の蓄積は前期ハンチントン病及び症候性の患者の双方における淡蒼球にて検出される(Sanchez-Castaneda,et al.,“Seeking Huntington’s disease biomarkers by multimodal,cross-sectional basal ganglia imaging,”Human Brain Mapping,(2013),34:1625-35)。別の代替マーカーには、ハンチンチンタンパク質と増加したポリグルタミン反復を含有するタンパク質断片との神経細胞内凝集体の評価が含まれる(Sieradzan,et al.,“The selective vulnerability of nerve cells in Huntington’s disease,”Neuropathology and Applied Neurobiology,(2001),27:1-21)、(Huang,et al.,“Inducing huntingtin inclusion formation in primary neuronal cell culture and in vivo by high-capacity adenoviral vectors expressing truncated and full-length huntingtin with polyglutamine expansion,”The Journal of Gene Medicine,(2008),10:269-79)。マウスでは、歩行解析、抗体EM48による免疫染色及びフィルタートラップアッセイを一緒に採用して線条体ニューロンにおける変異体ハンチンチンタンパク質またはタンパク質断片の早期の核蓄積がその後の線条体変性及び運動障害と相関することを示す。従って、線条体の表現型は、疾患の進行が変異体ハンチンチンタンパク質断片によって加速されることを具体的に実証しているが、それはハンチントン病の発症を予測する代替マーカーとして役立ってもよい(Wheeler,et al.,“Early phenotypes that presage late-onset neurodegenerative disease allow testing of modifiers in Hdh CAG knock-in mice,”Human Molecular Genetics,(2002),11:633-40)。グルタミン残基の長い区間を検出することができるモノクローナル抗体1C2のような抗体の免疫染色パターンもハンチントン病の死後の中枢神経系の分析で診断支援を提供する潜在力を有する(Herndon,et al.,“Neuroanatomical Profile of Polyglutamine Immunoreactivity in Huntington Disease Brains,” Journal of neuropathology and experimental neurology,(2009),68:250-61)。方法の実施形態の実践は採用される特定の試験にて測定されるパラメーターで改善を生じることができ、その際、改善は一部の例では、5%以上、たとえば、10%以上であり、一部の例では、100%以上であってもよい。
主題の方法では、化合物(本明細書に記載されているような)は所望の活性を生じることができる都合が良い投与プロトコールを用いて標的とされる細胞に投与されてもよい。従って、主題の化合物は治療用投与のために種々の製剤、たとえば、薬学上許容できる溶剤に組み込むことができる。上記で概説されたように、主題の方法は標的細胞(単数)または標的細胞(複数)における伸長トリヌクレオチド反復遺伝子の有害活性の低減を生じ、その際、標的細胞(複数可)は試験管内または生体内にあってもよい。特定の実施形態では、主題の方法は、たとえば、標的細胞(複数可)におけるそれによってコードされるタンパク質の凝集の低減を介して標的遺伝子の毒性の低減を生じる。特定の実施形態では、主題の方法は標的遺伝子によってコードされるタンパク質の機能の増強を生じる。
上記の方法は種々の異なる適用で使用される。特定の適用は以下の有用性の項で概説される。
有用性
主題の方法及び化合物組成物は変異伸長トリヌクレオチド反復ドメインを含有する遺伝子の有害活性の低減が所望である種々の適用で使用される。そのようなものとして、本発明の態様には、それを必要とする対象にて、たとえば、上記結果の1つ以上を達成することによって治療することができる状態であると診断されている対象にて、本明細書に記載されているようなそのような遺伝子によってコードされるタンパク質の毒性を低減すること及び/または機能性を増強することが含まれる。関心があるものは、変異伸長トリヌクレオチド反復ドメインを含有する遺伝子の有害活性に関連する病状の進行を緩和するための主題の方法及び組成物の使用である。語句「進行を緩和する」は、進行の速度の低下(たとえば、病状の1つ以上の症状の発生の遅延で現れるような)、同様に病状の治癒を含む進行の好転(たとえば、病状の1つ以上の症状の大きさの低下で現れるような)の双方を包含するために採用される。本発明の方法及び組成物が使用される具体的な病状には、ポリQの病状、たとえば、脊髄小脳失調1型、脊髄小脳失調2型、脊髄小脳失調3型、脊髄小脳失調7型、脊髄小脳失調17型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、球脊髄性筋委縮症、及びハンチントン病が挙げられるが、これらに限定されない。
一部の例では、主題の方法の実践は病状についての対象の治療を生じる。治療によって、対象を苦しめる病状に関連する1つ以上の症状の少なくとも改善を意味し、その際、改善は、パラメーター、たとえば、治療される病的状態に関連する症状、たとえば、認知機能の喪失等の大きさの少なくとも軽減を指すために広い意味で使用される。そのようなものとして、治療には、病的状態または少なくともそれに関連する症状が完全に抑制される、たとえば、発生することを阻止される、または停止される、たとえば、終結されるので、対象はもはや病的状態または少なくとも病的状態を特徴付ける症状を患わない状況も含まれる。治療はまた、たとえば、上記に記載されているような、病状の代替マーカーの調節の形態で現れてもよい。
主題の方法に従って、種々の宿主が治療可能である。一般にそのような宿主は「哺乳類」または「哺乳動物」であり、その際、これらの用語は広く使用されて食肉目(たとえば、イヌ及びネコ)、齧歯目(たとえば、マウス、モルモット及びラット)、及び霊長目(たとえば、ヒト、チンパンジー及びサル)を含む哺乳動物綱の範囲内である生物を記載する。一部の実施形態では、宿主はヒトである。
併用療法
主題の化合物は単独で、または追加の、すなわち、第2の活性剤との併用で対象に投与することができる。そのようなものとして、場合によっては、主題の方法はさらに、少なくとも1つの追加の化合物を対象に投与することを含む。ウイルス感染を治療するために有用な化合物を含む都合が良い作用物質が利用されてもよい。用語「作用物質」、「化合物」及び「薬剤」は本明細書では相互交換可能に使用される。たとえば、選択的SPT4阻害性化合物は、単独で、またはポリQ疾患の治療で採用される薬剤のような1つ以上の他の薬剤と併せて投与することができる。一部の実施形態では、方法はさらに第2の作用物質を同時にまたは順次、併用投与することを含む。対象とする考えられる第2の作用物質には、ドーパミン枯渇剤(たとえば、テトラベナジン(キセナジン)またはレセルピン)、ドーパミン受容体アンタゴニスト(たとえば、ニューロレプティック)、アマンタジン、レベチラセタム、抗けいれん剤(たとえば、バルプロ酸)、抗精神病薬、たとえば、リスペリドン、ハロペリドール(ハルドール)及びクロザピン(クロザリル)、抗けいれん剤、ベンゾジアゼピン(たとえば、クロナゼパム(クロノピン))及び抗不安薬、たとえば、ジアゼパム(バリウム)、エスシタロプラム(レクサプロ)、フルオキセチン(プロザック、サラフェム)及びセルトラリン(ゾロフト)のような薬剤を含む抗うつ剤、ラキニモド、プリドピジン、ラサギリン、汎PPARアゴニスト(たとえば、ベゾフィブラート)、核酸サイレンシング剤、たとえば、HTT一塩基多型(SNP)を標的とする、たとえば、RNAサイレンシング剤等が挙げられるが、これらに限定されない。SUPT4Hに対して向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは干渉RNAも併用療法の一部であってもよい。対象とする第2の活性剤には、たとえば、ハンチントン病のような神経変性の状態または疾患に対して使用される都合が良い薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
用語「共投与」及び「との併用で」には、同時に、付随してまたは特定の時間制限内ではなく順にいずれかで2つ以上の治療剤を投与することが含まれる。一実施形態では、作用物質は細胞内にもしくは対象の体内に同時に存在する、またはその生物学的効果もしくは治療効果を同時に発揮する。一実施形態では、治療剤は同一の組成物または単位剤形にある。他の実施形態では、治療剤は別々の組成物または単位剤形にある。特定の実施形態では、第1の治療剤は第2の治療剤の投与に先立って(たとえば、数分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前に)、同時に、またはそれに続いて(たとえば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後に)投与することができる。
既知の治療剤の本開示の医薬組成物との「付随投与」は、既知の薬剤と本発明の組成物との双方が治療効果を有するような時間での化合物及び第2の作用物質の投与を意味する。そのような付随投与には、主題の化合物の投与に関して薬剤の同時(すなわち、同じ時)の、前もってのまたはそれに続く投与が含まれてもよい。2つの作用物質の投与の経路は変更してもよく、その際、投与の代表的な経路は以下で詳細に記載されている。当業者は、特定の薬剤及び本発明の化合物についての投与の適切なタイミング、順序及び投与量を決定するために困難を有することはない。
一部の実施形態では、化合物(たとえば、主題の化合物及び少なくとも1つの追加の化合物)は互いに24時間以内に、たとえば、互いに12時間以内に、互いに6時間以内に、互いに3時間以内に、または互いに1時間以内に対象に投与される。特定の実施形態では、化合物は互いに1時間以内に投与される。特定の実施形態では、化合物は実質的に同時に投与される。実質的に同時に投与されるによって、化合物が互いに約10分以下以内に、たとえば、互いに約5分以下、または1分以下以内に対象に投与されることを意味する。
場合によっては、第2の活性剤はヌクレオシド剤である。対象とするヌクレオシド剤には、細胞にて変異伸長トリヌクレオチド反復を含有する標的遺伝子の有害活性を低減する都合が良い作用物質が挙げられる。本明細書で使用されるとき、用語「ヌクレオシド剤」には、リン含有作用物質(たとえば、O-リン酸置換糖部分を含むヌクレオシド剤)及びリン部分を欠く作用物質が含まれることにする。対象とするヌクレオシド剤には、糖部分に対する都合が良い修飾、たとえば、天然に存在するヒドロキシル基がハロゲン原子もしくは脂肪族基で置き換えられる、またはエーテル、アミン等として官能化される修飾が含まれてもよい。ヌクレオシド剤は、ヌクレオシド剤の任意の部分(複数可)に独立して連結される1個以上の保護基(たとえば、ヒドロキシル保護基、二座ジオール保護基または複素環塩基保護基)を含有してもよい。
任意の都合が良いヌクレオシド剤が主題の方法及び組成物で使用されてもよい。そのようなヌクレオシド剤は、他にも方法があるが、そのスクリーニング法の開示が参照によって本明細書に組み入れられるCheng,et al.“Selective reduction of the deleterious activity of extended tri-nucleotide repeat containing genes”,WO2012078906によって記載されたスクリーニング法を用いて評価されてもよい。対象とするヌクレオシド剤には、5-フルオロウラシル(5-FU)、テガフール及び5’-デオキシフルオロウリジンを含む5-FUプロドラッグ、フルオロウリジン、2’-デオキシフルオロウリジン、フルオロウリジンまたは2’-デオキシフルオロウリジンのプロドラッグ誘導体、フルオロシトシン、トリフルオロ-メチル-2’-デオキシウリジン、アラビノシルシトシン、アラビノシルシトシンのプロドラッグ、シクロシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、アラビノシル5-アザシトシン、6-アザシチジン、N-ホスホノアセチル-L-アスパラギン酸(PALA)、ピラゾフリン、6-アザウリジン、アザリビン、チミジン、3-デアザウリジン、トリアセチルウリジン、エトキシカルボニルウリジン、トリアセチルシチジン、シクロシチジン、5-アザ-2’-デオキシシチジン、アラビノシル5-アザシトシン、6-アザシチジン、ベンジラシクロウリジン、ベンジルオキシベンジラシクロウリジン、アミノメチル-ベンジラシクロウリジン、アミノメチル-ベンジルオキシベンジラシクロウリジン-、ヒドロキシメチル-ベンジラシクロウリジン、ヒドロキシメチル-ベンジルオキシベンジラシクロウリジン、2,2’-アンヒドロ-5-エチルウリジン、バルビツール酸5-ベンジル、バルビツール酸5-ベンジルオキシベンジル、バルビツール酸5-ベンジルオキシベンジル-1-[(1-ヒドロキシ-2-エトキシ)m-エチル]、バルビツール酸5-ベンジルオキシベンジラセチル-1-[(1-ヒドロキシ-2-エトキシ)メチル]、5-メトキシベンジラセチラシクロバルビツール酸、5-エチニルウラシル、ブロモビニルウラシル、シアノジヒドロピリジン、ウラシル、チミン、チミジン及びベンジルオキシベンジルウラシルが挙げられるが、これらに限定されない。主題のヌクレオシド剤の都合が良いプロドラッグを主題の方法で利用してもよい。プロドラッグは、必ずしもではないが、活性剤に変換されるまで薬理学的に不活性であることが多い。一部の例では、ヌクレオシド剤は、その開示が参照によって本明細書に組み入れられるCohen,et al.in WO 2016/196012によって記載されたような6-デアザプリンリボヌクレオシド及び6-アザウリジンリボヌクレオシドから選択されるリボヌクレオシド剤である。
提供されるものはまた、主題の化合物及び第2の活性剤の医薬品製剤である。医薬剤形では、化合物は薬学上許容できる塩の形態で投与されてもよく、またはそれらは単独で使用されてもよく、もしくは他の薬学上活性がある化合物との適当な関連で、同様に併用で使用されてもよい。
1日当たり約0.01mg~約140mg/体重のkg、または代わり1日当たり患者当たり約0.5mg~約7gの桁の投与量レベルが代表的な実施形態で有用である。当業者は、用量レベルが具体的な化合物、症状の重症度及び対象の副作用に対する感受性の関数として変化することができることを容易に十分に理解する。所与の化合物についての投与量は種々の手段により当業者によって容易に決定可能である。
キャリア物質と組み合わせて単一剤形を生じてもよい有効成分の量は治療される宿主及び投与の特定の方式に応じて変化する。たとえば、ヒトの経口投与を対象とした製剤は、組成物全体の約5~約95パーセント変化してもよい適当で都合が良い量のキャリア物質と組み合わせられた0.5mg~5gの活性剤を含有してもよい。単位剤形は一般に約1mg~約500mgの間の有効成分、たとえば、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、または1000mgの有効成分を含有する。
しかしながら、特定の患者のための具体的な用量レベルは、年齢、体重、全身状態、性別、食事、投与の時間、投与の経路、排泄の速度、薬剤の併用及び治療を受けている特定の疾患の重症度を含む種々の因子に左右されることが理解される。
そのようなものとして、たとえば、シロップ、エリキシル及び懸濁液のような経口投与用または直腸投与用の単位剤形が提供されてもよく、その際、各投与量単位の、たとえば、小さじ1杯の、大さじ1杯の錠剤または坐薬は1つ以上の阻害剤を含有する所定の量の組成物を含有する。同様に、注射用または静脈内投与用の単位剤形は、無菌水、普通の生理食塩水または別の薬学上許容できるキャリアにおける溶液としての組成物にて阻害剤(複数可)を含んでもよい。用語「単位剤形」は本明細書で使用されるとき、ヒト対象及び動物対象のための単一投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は薬学上許容できる希釈剤、キャリアまたは溶剤と関連して所望の効果を生じるために十分な量で計算された所定の量の本発明の化合物を含有する。本発明の新規の単位剤形の明細は、採用される特定のペプチド模倣性化合物及び達成される効果、及び宿主における各化合物に関連する薬物動態に左右される。当業者は用量レベルが具体的な化合物、送達溶剤の性質等の関数として変化することができることを容易に十分に理解する。所与の化合物及び作用物質についての好まれる投与量は種々の手段により当業者によって容易に決定可能である。
キット及びシステム
提供されるものはまた、上記に記載されているもののような方法の実施形態を実践することにおいて使用されるキット及びシステムである。用語「システム」は本明細書で採用されるとき、主題の方法を実践する目的で一緒にされる、単一のまたは異なる組成物に存在する2つ以上の異なる活性剤の集まりを指す。用語「キット」はパッケージ化した活性剤(単数)または活性剤(複数)を指す。一部の実施形態では、主題のシステムまたはキットには、変異伸長ヌクレオチド反復を含有する遺伝子の有害活性に関連する疾患または状態について対象を治療するために有効な量で単回用量の主題の化合物(たとえば、本明細書に記載されているような)と単回用量の第2の活性剤(たとえば、本明細書に記載されているような)とが含まれる。
特定の例では、第2の活性剤は、ヌクレオシド剤(たとえば、本明細書に記載されているような)、ドーパミン枯渇剤(たとえば、テトラベナジンまたはレセルピン)、ドーパミン受容体アンタゴニスト(たとえば、ニューロレプティック)、アマンタジン、レベチラセタム、抗けいれん剤(たとえば、バルプロ酸)、ベンゾジアゼピン剤(たとえば、クロナゼパム)、ラキニモド、プリドピジン、ラサギリン、汎PPARアゴニスト(たとえば、ベゾフィブラート)、抗精神病薬(たとえば、リスペリドンまたはハロペリドール)及びHTT一塩基多型(SNP)を標的とするRNAサイレンシング剤から選択される。主題の方法を実践するためのキット及びシステムは1つ以上の医薬製剤を含んでもよい。そのようなものとして、特定の実施形態では、キットは1つ以上の単位投与量として存在する単一の医薬組成物を含んでもよく、その際、組成物は1つ以上のヌクレオシド化合物(たとえば、本明細書に記載されているような)を含んでもよい。一部の実施形態では、キットは、少なくともその1つがヌクレオシド化合物(たとえば、本明細書に記載されているような)である、それぞれ異なる活性剤を含有する2つ以上の別々の医薬組成物を含んでもよい。
関心があるものはまた、たとえば、上記に記載されているような主題の方法で使用されるキット及びシステムである。そのようなキット及びシステムは主題の方法の1つ以上の成分、たとえば、ヌクレオシド剤、細胞、対象とするタンパク質をコードするベクター、酵素基質、染料、緩衝液等を含んでもよい。種々のキット成分が容器、たとえば、無菌容器に存在してもよく、その際、成分は同一容器または異なる容器に存在してもよい。
上述の成分に加えて、主題のキットはさらに、たとえば、主題の方法を実践するためにキット成分を使用するための指示書を含んでもよい。指示書は一般に好適な記録媒体に記録される。たとえば、指示書は、紙またはプラスチック等のような基材上に印刷されてもよい。そのようなものとして、指示書は、添付文書としてキットに、キットまたはその成分の容器のラベル付け(すなわち、包装または分包と関連して)等に存在してもよい。他の実施形態では、指示書は、好適なコンピューター読み取り保存媒体、たとえば、CD-ROM、ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)、携帯用フラッシュドライブ等に存在する電子保存データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の指示書はキットには存在しないが、たとえば、インターネットを介して遠隔供給源から指示書を入手する手段が提供される。この実施形態の例は、指示書を見ることができる及び/または指示書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。指示書と同様に、指示書を入手するこの手段は好適な基材に記録される。
説明の目的で且つ限定の目的ではない以下の実施例が提供される。
実施例I.候補化合物の特性評価
A.材料及び方法
1.分割Gaussiaルシフェラーゼ相補性アッセイ
a.プラスミドの構築
i:pNBR-X1-Supt4-Gluc1及びpNEBR-X1-NGN-Gluc2
プラスミドpHA-Supt4h-YC及びpFlag-NGN-YNを用いたPCRによってHA-Supt4h及びFlag-NGNの断片を増幅し、pcDNA3.1-Gluc1及びpcDNA3.1-Gluc2に個々にサブクローニングする(Nat.Methods.2006,Dec;3(12):977-9.Epub,2006,Nov.12にて公開された“A highly sensitive protein-protein interaction assay based on Gausssia luciferase”に記載された)。次いで、HA-Supt4h-Gluc1及びFlag-NGN-Gluc2をPCRによって増幅し、pNEBR-X1-Hygro(New England BioLabs)に挿入するが、それはRheoSwitchリガンドの制御下でRheoSwitch応答配列を含有する。
ii:pNEBR-X1-Supt4h-G1-NGN-G2
pNEBR-X1-NGN-G2における5XREからポリAまでの配列を含有するPCR産物をPciI部位にてpNEBR-X1-Supt4h-G1に挿入し、同一プラスミドにてそれ自体のRheoSwitch応答配列及びポリAのもとで二方向性のSupt4h-G1及びNGN-G2を生成する。
b.安定なクローニングされた細胞株
i:293-R1は、pNEBR-R1プラスミド(New England BioLabs)でHEK293細胞に形質移入することによってRSL1受容体/活性化因子を構成的に発現するように操作され、ブラスチシジンで選択されるクローニングされた細胞である。
ii:M2-8はRSL1の添加によってpNEBR-X1-Supt4h-G1-NGN-G2を誘導可能に発現することができるクローニングされた293-R1細胞である。J.Biomol.Screen.2013,Jul;18(6):647-58にて公開された“A high-throughput cell-based Gaussia luciferase reporter assay for identifying modulators of fibulin-3 secretion”に従って良好な安定性のために2つの点突然変異(M43I及びM110I)がGL1及びGL2に導入される。細胞株はハイグロマイシンによって選択される。
c.細胞培養及び形質移入の条件
HEK293細胞及び派生した細胞クローンのすべては、10%FBSに加えて対応する抗生剤(250μg/mLのハイグロマイシンB、10μg/mLのブラスチシジン、またはその双方)を含有するDMEMにて37℃、5%CO2で維持される。形質移入はすべて製造元の指示に従ってリポフェクトアミン2000(Invitrogen)を用いて行う。
d.細胞溶解物における生物発光アッセイ
製造元の指示に従ってリポフェクトアミン2000を用いて、組織培養処理した24穴プレートに播かれた293-R1細胞に1:1の比にて、Gluc1及びGluc2を内部に持つプラスミドで同時形質移入する。安定な細胞M2-8については、細胞を96穴または384穴の白色プレートに直接入れる。24時間後、試験化合物の有無と一緒に、RheoSwitchリガンドを誘導/薬剤処理のために細胞に加える。24時間後、細胞をPBSで洗浄し、プレートを-20℃のフリーザーに一晩入れた。フリーザーからプレートを取り出した後、10μg/mLのネイティブのセレンテラジン(Nanolight Technology)を伴う溶解緩衝液(30mMのTris-HCl,pH8.0,5mMのNaCl,0.1%のTriton X-100)を直ちに細胞に加える。細胞を暗所にて室温で1時間、溶解する。約1分間振盪した後、40μLの細胞溶解物を白色96穴プレートに移す。白色マイクロプレートにおけるM2-8については移動の必要はない。シグナル強度(統合した100ms)をTecan無限M200またはM1000で読み取った。
2.誘導多能性幹細胞(iPSC)における変異体HTT活性のアッセイ
ハンチントン病患者のiPSC(Coriell InstituteのND36999)をAccutase(AccutaseのAT104)によって単個細胞に分離し、マトリゲル(Corningの354277)で被覆した24穴プレートに入れた。細胞の集密度が約70%に達すると化合物を細胞の培養培地StemMACS(MiltenyiBiotecの130104368)に加え、細胞を1日間インキュベートした。次いで培地を取り除き、細胞をPBSで洗浄した。液体すべてを取り除いた後、プレートを-80℃に一晩置いた。プレートをフリーザーから取り出した後、完全なプロテイナーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrichの5892791001)と共に溶解緩衝液(30mMのTris-HCl,pH8.0,5mMのNaCl,0.1%のTritonX-100)を直ちに細胞に加えた。細胞試料を氷上で10分間溶解した。遠心(14Krpmで10分間)の上清を回収した。BCAアッセイ(Pierce,ThermoFisher)によってタンパク質濃度を決定した。等量のタンパク質を4~12%のゲルに負荷した。電気泳動の後、湿式移行によって35Vで16時間、ゲルをニトロセルロース膜に移した。変異体HTT、全HTT及びチューブリンのタンパク質レベルを抗ポリグルタミン(MilliporeのMAB1574)、抗ハンチンチンタンパク質(MilliporeのMAB2166)及び抗アルファチューブリン(ABGENTのAJ1034a)による免疫ブロットによって決定した。Li-Cor Odyssey赤外線撮像装置でブロットを画像化した。バンドの強度をLi-Cor Odysseyソフトウェアによって決定した。
B.結果
たとえば、上記に記載されている方法を用いて対象とする例となる化合物を調べ、細胞における変異伸長ヌクレオチド反復(NR)を含有する遺伝子の有害活性の低減を含むその生物活性を評価した。結果を表3に提示する。
未処理のM2-8細胞に由来するGaussiaルシフェラーゼの生物発光シグナルを100%と設定し、化合物のIC50をシグナル強度を50%に減らす化合物の濃度として定義した。
Gaussiaの分割ルシフェラーゼ相補性アッセイはSupt4hとNGNとの間での相互作用を測定する。NGNはSupt4hに結合するSupt5hのサブユニットである。上記で提供されたデータは化合物1がSupt4hとNGNとの間での相互作用を妨害することを示している。Supt4h及びSupt5hの機能的複合体の存在はヌクレオチド反復の増加を含有する遺伝子領域を介してRNAポリメラーゼIIが効率的に続行するために必要とされることが以前示されている。分割Gaussiaアッセイによって実証されるような化合物1によるSupt4h/NGN相互作用の妨害は化合物1がSupt4h/Supt5hの複合体の形成を妨害することを示している。従って、化合物1の投与は変異ヌクレオチド反復を含む遺伝子によってコードされる変異タンパク質の産生の低下を生じる。
上記で報告されたプロトコールを用いてiPSCを種々の用量での化合物1で24時間処理した。細胞を回収し、タンパク質の定量のために溶解した。等量のタンパク質をウエスタンブロット用のSDS-PAGEゲルに適用した。変異体HTTタンパク質をポリQ抗体(MilliporeのMAB1574)によって認識した一方で野生型HTTタンパク質は抗ハンチンチン抗体(MilliporeのMAB2166)によってブロットした。双方のタンパク質を走査し、Li-Cor Odysseyによって定量し、チューブリンによって基準化した。結果を図1A及び1Bに示す。図1A及び1Bで説明しているように、化合物1はハンチントン病患者に由来するiPSCにて変異体HTTタンパク質を減らす。
実施例II.化合物1はショウジョウバエHDモデルにて変異体Httのニューロン変性表現型を緩和
A.材料及び方法
1.ハエのストック
実験のこの設定で使用したDrosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)HDモデルは97のCAG反復を伴ったヒトHttのエクソン1のコーディング配列を持ってハンチントン病(HD)の変異体Httを模倣する。Drosophila複眼のニューロンで主として変異体Httを発現しているGmr::Htt97Qのハエは光受容器のニューロンで重度の変性及び表現形質「複眼異常(ラフアイ)」を有する。elav::Htt97Qのハエは具体的にDrosophilaの胚性CNSにおける神経芽細胞及びグリア細胞にて変異タンパク質を発現し、羽化に対して実質的に負の効果を生じる。ハエのストック及び遺伝的交雑のすべては標準コーンミール酵母寒天培地にて25℃で維持した。
2.眼の形態(複眼異常)の分析
10μMまたは100μMの濃度での試験化合物である化合物1を伴った標準の酵母寒天培地を含有するバイアルにて、15匹の成熟オスのハエ(Gmr-Htt97Q/Gmr-Htt97QまたはGmr/Gmr)を15匹の未交尾メスのハエW1118(+/+)と交配させた。先ず親ハエを7日目にバイアルから取り除き、その後、新しく孵化したハエを「複眼異常」の分析のために回収した。デジタルカメラを装備したLeica DMR正立顕微鏡(CoolSNAP5.0,Photometrics)を用いて複眼の形態を捉えた。視野の深さを増すために、画像化ソフトウェアを用いてモンタージュ複合画像を作り出した(Helicon Focus,HeliconSoft)。それぞれ個々の条件にて合計10匹のハエを分析用に回収し、生物実験を2回行った。化合物1の試薬溶媒であるDMSOを対照として含めた。
3.羽化率の分析
15匹のオスのハエ(elav-gal4/cyo)及び15匹の未交尾メスのハエ(UAS-Htt97Q/UAS-Htt97Q)の群を化合物1の有無にかかわらず、標準の酵母寒天培地を含有するバイアルで養った。7日目に親ハエをバイアルから取り除き、次いで羽化の3~4日後、新しく孵化したハエを回収した。羽化率は、各実験条件で回収した合計100匹のハエのうち非HDハエの数に対するHDハエの数によって決定した。
B.結果
Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)HDモデルはよく認識されており、HDの症状に対する化学薬品の治療効果を評価するために広範に使用される着実な動物モデルである(Marsh,J.L.,J.Pallos及びL.M.Thompson,(2003),“Fly models of Huntington’s disease.”Hum.Mol.Genet.12,Spec,No.2:R187-193)。ここで我々は、97個のCAG反復を伴ったヒトHttのエクソン1のコーディング配列を発現してHDの変異体Httを模倣するトランスジェニックDrosophila melanogaster系統、Gmr-Htt97Qを採用した。ヒト遺伝子は主としてDrosophilaの複眼のニューロンで発現され、光受容器のニューロンの重度の変性及び表現形質「複眼異常(ラフアイ)」を生じる。加えて、我々は、具体的にDrosophilaの胚性CNSにおける神経芽細胞及びグリア細胞にて変異体遺伝子を発現し、羽化で重度の欠陥を示す別のHD系統elav::Htt97Qを採用した。ニューロンの変性から生じるこれらの表現型欠陥はHD患者の脳における変異体Httによるニューロンの喪失に類似する。
HDハエ(Gmr-Htt97Q/+)の「複眼異常」の表現型は化合物1の処理によって緩和されることが見いだされた。この表現型欠陥の発生率は100μMの化合物1への曝露の後、未処理群の70パーセントに減った。(図2A)。さらに、相対的に低い羽化率はHDハエ(elav::Htt97Q)にて化合物1によって好転した(図2B)。表現型欠陥を緩和する化合物の用量はハエの生存率に影響を与えなかった。これらのデータは化合物1が、生体内にて変異体Httが原因で生じるニューロンの変性を阻止するために有効であることを示した。
添付の条項にもかかわらず、本明細書で示されている開示は以下の条項によっても定義される。
1.変異伸長ヌクレオチド反復を含有する標的遺伝子の有害効果に関連する疾患または状態について対象を治療する方法であって、
変異伸長ヌクレオチド反復を含有する標的遺伝子の前記有害効果に関連する疾患または状態について前記対象を治療するために、必要とする前記対象に、有効量の式(I)の構造を有する化合物
(式中、
nは0、1または2であり、
R1、R2及びR3は独立してH、アルキル、置換されたアルキル、アシル、置換されたアシル、スルホニル、置換されたスルホニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環から選択され、
R5~R8は独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、且つ
各R4は独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、mは0、1、2、3または4である)
または薬学上許容できるその塩を投与することを含み、
ただし、前記化合物は、以下ではないという条件がある、
方法。
方法。
2.前記疾患または状態が神経変性疾患である条項1に記載の方法。
3.前記疾患または状態がハンチントン病である条項2に記載の方法。
4.前記疾患または状態が神経筋機能不全である条項1に記載の方法。
5.前記疾患または状態が、脊髄小脳失調、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、筋委縮性脊索硬化症(ALS)、球脊髄性筋委縮症、筋強直性ジストロフィー1型、及び筋強直性ジストロフィー2型から選択される条項1に記載の方法。
6.さらに、前記対象の細胞にて前記標的遺伝子の発現を評価することを含む条項1~5のいずれか一項に記載の方法。
7.前記化合物が式(II)の構造を有し、
式中、
pが0であるときにR11は置換された複素環ではないという条件で、
pが0または1であり、且つ
R11がアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択される
条項1~6のいずれか一項に記載の方法。
8.pが0であり、R11がシクロアルキルまたは置換されたシクロアルキルである条項7に記載の方法。
9.前記化合物が式(III)の構造を有し、
式中、
nが0、1または2であり、且つ
各R22が独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、qが0、1、2、3または4である
条項7に記載の方法。
10.前記化合物が式(IV)または(V)の構造を有する条項9に記載の方法。
11.R1がHであり、且つR5~R8が独立してH、ハロゲン、アルキル及び置換されたアルキルから選択される条項10に記載の方法。
12.前記化合物が以下の構造の一方を有する条項11に記載の方法。
13.pが0であり、且つR11が複素環または置換された複素環である条項7に記載の方法。
14.前記化合物が式(VI)の構造を有し、
式中、R23がH、アルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、アシル、置換されたアシル、スルホニル及び置換されたスルホニルから選択される
条項7に記載の方法。
15.R23は置換されたアルキルではないという条件がある条項14に記載の方法。
16.前記化合物が以下の構造を有する条項15に記載の方法。
17.前記化合物が式(X)の構造を有し、
式中、各R21が独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、qが0または1である条項7に記載の方法。
18.前記化合物が式(XI)の構造を有する条項17に記載の方法。
19.前記化合物が式(XII)の構造を有し、
式中、
R31及びR32がそれぞれ独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環であり、且つ
R21~R25がそれぞれ独立してH、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環または-NR’R’’であり、その際、R’及びR’’はそれぞれ独立してH、アルキル及び置換されたアルキルであり、またはR’及びR’’は環状に連結されて任意で置換された5員環または6員環の複素環の環を提供し、及び/またはR21~R25の任意の2つが環状に連結されて縮合アリールまたはヘテロアリールの環を提供し、その縮合環は任意でさらにR21基によって置換される
条項1または18に記載の方法。
20.前記化合物が以下の構造の1つを有する条項18または19に記載の方法。
21.pが0であり、且つR11が低級アルキルまたは置換された低級アルキルである条項7に記載の方法。
22.前記化合物が以下の構造の一方を有する条項21に記載の方法。
23.前記化合物が式(VII)の構造を有し、
式中、R12がアルキル、置換されたアルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択される
条項1~6のいずれか一項に記載の方法。
24.前記化合物が式(VIII)の構造を有し、
式中、
Z2、Z3及びZ4が独立してN、CHまたはCR23であり、且つ
各R23が独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択される
条項23に記載の方法。
25.前記化合物が式(IX)の構造を有する条項24に記載の方法。
26.前記化合物が以下の構造を有する条項25に記載の方法。
27.R5、R7及びR8がそれぞれHであり、且つR6がハロゲン、アルキル及び置換されたアルキルから選択される条項1~11、13、14、17、18、19、21及び23~25のいずれか一項に記載の方法。
28.R8が水素であり、且つR5、R6及びR7がそれぞれ独立してハロゲン、アルキル及び置換されたアルキルから選択される条項1~11、13、14、17、18、19、21及び23~25のいずれか一項に記載の方法。
29.細胞における標的遺伝子の有害効果を低減する方法であって、
変異伸長ヌクレオチド反復(NR)ドメインを含む標的遺伝子の前記細胞における前記有害効果を低減するために、前記細胞を有効量の式(I)の化合物
(式中、
nは0、1または2であり、
R1、R2及びR3は独立してH、アルキル、置換されたアルキル、アシル、置換されたアシル、スルホニル、置換されたスルホニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環から選択され、
R5~R8は独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、且つ
各R4は独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、mは0、1、2、3または4である)
またはその塩と接触させることを含み、
ただし、前記化合物は以下ではないという条件がある、
方法。
30.化合物が前記標的遺伝子の毒性の発現産物の発現を低減させる条項29に記載の方法。
31.前記毒性の発現産物がリボ核酸発現産物である条項30に記載の方法。
32.前記毒性の発現産物が変異体タンパク質である条項30に記載の方法。
33.前記変異伸長NRドメインが変異トリヌクレオチド反復(TNR)ドメインである条項29~32のいずれか一項に記載の方法。
34.前記標的遺伝子が、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、TBP、アトロフィン1、アンドロゲン受容体タンパク質、ハンチンチンタンパク質(HTT)、C9ORF72及びDMPK(たとえば、DMPK-1)からなる群から選択される条項29~33のいずれか一項に記載の方法。
35.前記遺伝子がHTT遺伝子である条項34に記載の方法。
36.前記化合物が前記細胞にてSPT4タンパク質の機能を調節する条項29~34のいずれか一項に記載の方法。
37.前記化合物が前記細胞にてSPT4タンパク質とSPT5タンパク質との相互作用を選択的に低下させる条項36に記載の方法。
38.前記化合物がSupt4hとSupt5hとの間の相互作用を選択的に低下させる条項37に記載の方法。
39.前記方法が試験管内で行われる条項29~38のいずれか一項に記載の方法。
40.前記化合物が式(II)~(XII)の1つの化合物である条項29~39のいずれか一項に記載の方法。
41.キットであって、
変異伸長ヌクレオチド反復を含有する標的遺伝子の有害効果に関連する疾患または状態について対象を治療するために有効な量で1回分の式(I)の構造を有する化合物
(式中、
nは0、1または2であり、
R1、R2及びR3は独立してH、アルキル、置換されたアルキル、アシル、置換されたアシル、スルホニル、置換されたスルホニル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環、及び置換された複素環から選択され、
R5~R8は独立してH、ハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、シアノ、ニトロ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、且つ
各R4は独立してハロゲン、アルキル、置換されたアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、置換されたアルコキシ、カルボキシ、カルボキシアミド、置換されたカルボキシアミド、-SO3H、スルホンアミド、置換されたスルホンアミド、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリール、複素環及び置換された複素環から選択され、その際、mは0、1、2、3または4であるが、ただし、前記化合物は、以下ではないという条件がある)
または薬学上許容できるその塩と、
変異伸長ヌクレオチド反復を含有する標的遺伝子の前記有害効果に関連する疾患または状態について対象を治療するために有効な量で1回分の第2の活性剤と
を含む、キット。
42.前記第2の活性剤が、標的遺伝子に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチド剤、ヌクレオシド剤、ドーパミン枯渇剤、ドーパミン受容体アンタゴニスト、アマンタジン、レベチラセタム、抗けいれん剤、抗精神病薬、抗てんかん剤、ベンゾジアゼピン、抗不安剤、抗うつ剤、ラキニモド、プリドピジン、ラサギリン、汎PPARアゴニスト及びHTT一塩基多型(SNP)を標的とするRNAサイレンシング剤から選択される条項41に記載のキット。
43.前記第2の活性剤がハンチントン病の作用物質である条項41または42に記載のキット。
44.前記化合物が、本明細書で定義されているような式(II)~(XII)の1つの化合物である条項41~43のいずれか一項に記載のキット。
前述の発明は理解の明瞭さの目的で説明及び例示を手段として多少詳しく記載されているが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく特定の変更及び修正をそれに対して行ってもよいことは本発明の教示に照らせば当業者に容易に明らかである。
従って、前述のことは単に発明の原理を説明している。当業者は、本明細書には明白に記載されていないまたは示されていないが、本発明の原理を具体化し、その精神及び範囲内に含まれる種々の配置を考案することができることが十分に理解される。さらに、本明細書で引用される例示及び条件付き言語はすべて基本的に、本発明の原理及び本発明者らによって技術拡大に寄与する概念を理解することにおいて読者を助けるように意図され、そのような具体的に引用された例示及び条件に対して限定はないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様及び実施形態、同様にそれらの具体例を引用する本明細書における言及はすべて、それらの構造的な及び機能的な同等物の双方を包含するように意図される。従って、そのような同等物は、現在既知の同等物及び将来開発される同等物、すなわち、構造にかかわらず同一の機能を実施する開発される要素の双方を含むことが意図される。従って、本発明の範囲は、本明細書に示され、記載されている例となる実施形態に限定されるようには意図されない。むしろ、本発明の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲によって具体化される。
関連出願への相互参照
米国特許法第119条(e)に従って、本出願は、その出願の開示が参照によって本明細書に組み入れられる2017年6月19日に出願された米国仮特許出願番号62/522,000の出願日に対する優先権を主張する。